説明

非破壊検査装置及び当該装置での輝度データの補正方法

【課題】2段に重ねられた検出器の画素間での対応がとれなくなったことを検出し、画素間での対応がとれるように輝度データを補正する非破壊検査装置を提供すること。
【解決手段】非破壊検査装置1は、X線照射器20、低エネルギ検出器32、高エネルギ検出器42、低エネルギ透過率算出部72、高エネルギ透過率算出部74、検出部76及び補正部78を備えている。算出部72は、透過X線の低エネルギ範囲における透過率を示す値を算出する。算出部74は、透過X線の高エネルギ範囲における透過率を示す値を算出する。検出部76は、両算出部72,72で算出された透過率の比に基づいてX線照射器20の位置ずれ内容を検出する。補正部78は、検出部76でX線照射器20の位置ずれ内容が検出された場合に、当該位置ずれ内容に応じて、検出器32,42で検出されたX線の輝度データを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非破壊検査装置及び当該装置での輝度データの補正方法に関する。特に本発明は、非破壊検査に用いられる放射線源の位置ずれ内容に応じて輝度データを補正できる非破壊検査装置及び当該装置での輝度データの補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や工業製品などの被検査物にX線などの放射線を照射し、被検査物を透過した放射線を低エネルギ範囲と高エネルギ範囲といった異なる範囲で検出し、非破壊検査を行うデュアルエナジータイプの検査装置が知られている。このような非破壊検査装置によれば、低エネルギ範囲の放射線画像と高エネルギ範囲の放射線画像とを同時に取得することができる。
【0003】
そして、これら異なるエネルギ範囲で取得された放射線画像間で所定の演算(割り算や差分、加算、乗算など)を行うことにより、例えばベルトコンベアで搬送される被検査物の非破壊検査において、複雑に混ざり合う成分分布の計測やコントラストの付きにくい異物の検出などを高精度で行うことができるようになっている。このような検査装置は、異なるエネルギ範囲で放射線画像を取得するため、各エネルギ範囲に対応する検出器をそれぞれ備えており、これら検出器を例えば縦に配置する構成を採用している(特許文献1の第9図参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平04−002907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このように検出器を2段に重ねた構成の検査装置では、放射線源が点光源であり、また放射線の照射方向における上流側の検出器に含まれる撮像素子と下流側の検出器に含まれる撮像素子との間に距離があることから、それぞれの撮像素子で取得される画像の間でずれが生じてしまう(図3の(b)参照)。このため、キャリブレーション部材などを用いて上流側の検出器の各画素と下流側の検出器の各画素との対応を事前にとっておき、非破壊検査を行う際、上流側の検出器の各画素と下流側の検出器の各画素とが対応する放射線画像を取得できるようにしている。
【0006】
しかしながら、非破壊検査を連続して行っていると、放射線源や非破壊検査装置の温度による変位・変形(熱膨張)により放射線源の光源位置が移動(焦点移動)し、対応させてあった上流側の検出器の各画素と下流側の検出器の各画素との対応がとれなくなってしまう場合があった。このように各検出器の画素間での対応がとれなくなると、放射線画像間で所定の演算を行った際に、演算結果に生じる疑似エッジの発生などにより適正な放射線演算画像を取得できなくなり、非破壊検査の計測精度を低下させてしまうといった問題が生じてしまう。特にインラインで連続して非破壊検査を行う場合には、検査のたびにキャリブレーションを行うことが困難であり、画素間での対応がとれなくなった場合に、そのことを早期に検出し、画素間での対応がとれるように放射線画像を補正する必要があった。
【0007】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、2段に重ねられた放射線検出器の画素間での対応がとれなくなったことを早期に検出し、画素間での対応がとれるように輝度データを補正することができる非破壊検査装置及び当該装置での輝度データの補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る非破壊検査装置は、搬送手段と、放射線源と、第1及び第2の放射線検出器と、第1及び第2の算出手段と、検出手段と、補正手段とを備えた装置である。搬送手段は、被検査物を所定の方向に搬送する。放射線源は、搬送手段による搬送方向と交差するように搬送手段に向けて放射線を照射する。第1の放射線検出器は、放射線源から照射された放射線を第1のエネルギ範囲で検出する。第2の放射線検出器は、放射線の照射方向において第1の放射線検出器よりも下流側に位置し、放射線源から照射された放射線を第1のエネルギ範囲よりも高い第2のエネルギ範囲で検出する。
【0009】
第1の算出手段は、放射線源から照射されて被検査物を透過した放射線の第1のエネルギ範囲における第1の透過率を示す値を、第1の放射線検出器で検出された放射線の輝度データから算出する。第2の算出手段は、放射線源から照射されて被検査物を透過した放射線の第2のエネルギ範囲における第2の透過率を示す値を、第2の放射線検出器で検出された放射線の輝度データから算出する。検出手段は、第1の算出手段で算出された第1の透過率を示す値と第2の算出手段で算出された第2の透過率を示す値との比又は差に基づいて放射線源の位置ずれ内容を検出する。補正手段は、検出手段で放射線源の位置ずれ内容が検出された場合に、当該位置ずれ内容に応じて第1及び第2の放射線検出器で検出された放射線の輝度データの少なくとも一方を補正する。
【0010】
また、本発明に係る補正方法は、被検査物を所定の方向に搬送する搬送手段と、搬送手段による搬送方向と交差するように搬送手段に向けて放射線を照射する放射線源と、放射線源から照射された放射線を第1のエネルギ範囲で検出する第1の放射線検出器と、放射線の照射方向において第1の放射線検出器よりも下流側に位置し、放射線源から照射された放射線を第1のエネルギ範囲よりも高い第2のエネルギ範囲で検出する第2の放射線検出器とを備えた非破壊検査装置において、第1及び第2の放射線検出器で検出された輝度データの少なくとも一方を補正する補正方法である。
【0011】
この補正方法は、第1の算出ステップと、第2の算出ステップと、検出ステップと、補正ステップとを備えている。第1の算出ステップでは、放射線源から照射されて被検査物を透過した放射線の第1のエネルギ範囲における第1の透過率を示す値を、第1の放射線検出器で検出された放射線の輝度データから算出する。第2の算出ステップでは、放射線源から照射されて被検査物を透過した放射線の第2のエネルギ範囲における第2の透過率を示す値を、第2の放射線検出器で検出された放射線の輝度データから算出する。検出ステップでは、第1の算出ステップで算出された第1の透過率を示す値と第2の算出ステップで算出された第2の透過率を示す値との比又は差に基づいて放射線源の位置ずれ内容を検出する。補正ステップでは、検出ステップで放射線源の位置ずれ内容が検出された場合に、当該位置ずれ内容に応じて第1及び第2の放射線検出器で検出された放射線の輝度データの少なくとも一方を補正する。
【0012】
上記した非破壊検査装置及び当該検査装置での輝度データの補正方法によれば、被検査物を透過した放射線の第1及び第2のエネルギ範囲における各透過率を示す値を輝度データから算出し、これら透過率を示す値の比又は差に基づいて放射線源の位置ずれ内容を検出している。X線などの放射線は、エネルギが高いほど物体を透過しやすいといった性質があるが、互いに画素等が対応するよう調整された両検出器での物体の透過率を示す値の比又は差を参照することで、検出器の画素間における対応関係が崩れた状態を検出すると共に当該対応関係がどのように崩れたのかを検出でき、これにより、放射線源の位置ずれ内容を知ることができる。その結果、本発明によれば、2段に重ねられた放射線検出器の画素間での対応がとれなくなったことを早期に検出し、画素間での対応が再びとれるように検出器からの輝度データを補正することができる。
【0013】
しかも、上記した非破壊検査装置及び当該検査装置での輝度データの補正方法によれば、放射線の第1及び第2のエネルギ範囲における各透過率を示す値を、輝度データを利用して算出している。この場合、非破壊検査装置の放射線検出器で通常取得される輝度データを利用しているので、透過率を求めることが容易に実行でき、新たな検出器を別途設ける必要がない。なお、第2の放射線検出器で検出される第2のエネルギ範囲は、範囲全体として第1のエネルギ範囲よりも高ければよく、その一部が第1のエネルギ範囲とオーバラップしていてもよい。
【0014】
上記の非破壊検査装置及び補正方法において、検出手段は、被検査物の放射線透過率に基づいて設定される上限及び下限の2つの閾値を格納しており、第1及び第2の透過率を示す値の比又は差を上限及び下限の両閾値と比較することにより放射線源の位置ずれ内容を検出するようにしてもよい。この場合、放射線源の位置ずれ内容を検出するために、被検査物毎に異なる放射線透過率に基づいて閾値を設定していることになり、放射線源の位置ずれ内容をより確実に知ることができる。
【0015】
上記の非破壊検査装置及び補正方法において、第1及び第2の放射線検出器は、搬送方向及び照射方向に交差する検出方向に伸びる検出領域をそれぞれ有しており、検出手段は、検出領域に対応し且つ第1及び第2の透過率を示す値の比又は差の集合から構成される透過率パターンを上限及び下限の両閾値と比較して、放射線源の位置ずれ内容を検出するようにしてもよい。この場合、透過率パターンと閾値との比較処理によって放射線源の位置ずれ内容を検出できるため、検出処理を簡易にすることが可能である。
【0016】
上記の非破壊検査装置及び補正方法において、検出手段は、透過率パターンにおいて被検査物の一端に対応する箇所が上限の閾値よりも高くなり、且つ、透過率パターンにおいて被検査物の他端に対応する箇所が下限の閾値よりも小さくなった場合に、放射線源が検出方向にずれたと判定してもよい。そして、補正手段は、検出手段によって放射線源が検出方向にずれたと判定された場合、第1及び第2の放射線検出器からの輝度データを互いに対応させるための基準画素のうち少なくとも一方の基準画素を他の画素に移動させて新たな基準画素を設定する再設定処理を行うことにより、第1及び第2の放射線検出器からの輝度データの少なくとも一方を補正するようにしてもよい。
【0017】
また、補正手段は、検出手段によって放射線源が検出方向にずれたと判定された場合、第1及び第2の放射線検出器を構成する各画素の拡大率を再調整する再調整処理を行うことにより、第1及び第2の放射線検出器からの輝度データの少なくとも一方を補正するようにしてもよい。この場合、放射線源の検出方向のずれを確実に検出できると共に、当該ずれに応じて輝度データの補正を行うことができる。
【0018】
上記の非破壊検査装置及び補正方法において、検出手段は、透過率パターンにおいて被検査物の両端に対応する箇所のそれぞれが下限の閾値よりも低くなった場合、又は、透過率パターンにおいて被検査物の両端に対応する箇所のそれぞれが上限の閾値よりも高くなった場合に、放射線源が照射方向にずれたと判定してもよい。そして、補正手段は、検出手段によって放射線源が照射方向にずれたと判定された場合、第1及び第2の放射線検出器を構成する各画素の拡大率を再調整する再調整処理を行うことにより、第1及び第2の放射線検出器からの輝度データの少なくとも一方を補正するようにしてもよい。
【0019】
また、補正手段は、検出手段によって放射線源が照射方向にずれたと判定された場合、第1及び第2の放射線検出器からの輝度データを互いに対応させるための基準画素のうち少なくとも一方の基準画素を他の画素に移動させて新たな基準画素を設定する再設定処理を行うことにより、第1及び第2の放射線検出器からの輝度データの少なくとも一方を補正するようにしてもよい。この場合、放射線源の照射方向のずれを確実に検出できると共に、当該ずれに応じて輝度データの補正を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、2段に重ねられた放射線検出器の画素間での対応がとれなくなったことを早期に検出し、画素間での対応がとれるように輝度データを補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係る非破壊検査装置の斜視図である。
【図2】図1に示した非破壊検査装置の概略構成図である。
【図3】各検出器の画素間での対応関係を表す図であり、(a)が側面図であり、(b)が正面図である。
【図4】(a)は、対応する画素間での拡大率を説明するための図であり、(b)は、補正データの作成手法の例を示す図である。
【図5】被検査物を透過したX線の輝度データの一例を示す図である。
【図6】シェーディング補正の概要を示す図であり、(a)は補正前、(b)は補正後を示す。
【図7】暗電流補正の概要を示す図であり、(a)は補正前、(b)は補正後を示す。
【図8】それぞれの透過率パターンを示す図である。
【図9】図1に示した非破壊検査装置においてX線源が検出方向Xの一方にずれた場合を示す図であり、(a)は、ずれる前、(b)は、ずれた後を示す図である。
【図10】図9の(b)の一部を拡大した図である。
【図11】図1に示した非破壊検査装置においてX線源が照射方向Zの下方にずれた場合を示す図であり、(a)は、ずれる前、(b)は、ずれた後を示す図である。
【図12】図11の(b)の一部を拡大した図である。
【図13】図1に示した非破壊検査装置においてX線源が照射方向Zの上方にずれた場合を示す図であり、(a)は、ずれる前、(b)は、ずれた後を示す図である。
【図14】図13の(b)の一部を拡大した図である。
【図15】図1に示した非破壊検査装置での補正出方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0023】
図1及び図2に示されるように、非破壊検査装置1は、X線源からのX線(放射線)を照射方向Zへ向けて被検査物Sに照射し、照射されたX線のうち被検査物Sを透過した透過X線を複数のエネルギ範囲で検出する装置である。非破壊検査装置1は、透過X線画像を用いて被検査物Sに含まれる異物検査や手荷物検査などを行う。このような非破壊検査装置1は、ベルトコンベア10(搬送手段)、X線照射器20(放射線源)、低エネルギ画像取得部30、高エネルギ画像取得部40、制御部50、画像処理装置60及び解析装置70を備えている。低エネルギ画像取得部30、高エネルギ画像取得部40及び制御部50から、デュアル画像取得装置80が構成される。
【0024】
ベルトコンベア10は、図1に示されるように、被検査物Sが載置されるベルト部12を有する。ベルトコンベア10は、ベルト部12を搬送方向Yに移動させることで、被検査物Sを所定の搬送速度で搬送方向Yに搬送する。被検査物Sの搬送速度は、例えば48m/分である。ベルトコンベア10は、必要に応じて、例えば24m/分や96m/分といった搬送速度に速度を変更することができる。ベルトコンベア10で搬送される被検査物Sとしては、例えば、食肉やレトルト等の食品、タイヤなどのゴム製品、手荷物検査のための手荷物、樹脂製品、ワイヤなどの金属製品、鉱物など資源材料、分別や資源回収のための廃棄物、電子部品等など広くあげることができる。
【0025】
X線照射器20は、被検査物Sに向けて、X線を照射方向Zに照射する装置であり、X線源として機能する。X線照射器20は、点光源であり、照射方向Z及び搬送方向Yに直交する検出方向Xに所定の角度範囲でX線を拡散させる照射を行う。X線照射器20は、X線の照射方向Zがベルト部12に向けられると共に、拡散するX線が被検査物Sの幅方向(検出方向X)全体に及ぶように、ベルト部12から所定の距離を離れてベルト部12の上方に配置される。X線照射器20は、被検査物Sの長さ方向(搬送方向Y)においては、長さ方向における所定の分割範囲Sが照射範囲とされ(図3の(a)参照)、被検査物Sがベルトコンベア10で搬送方向Yに搬送されることにより、被検査物Sの長さ方向全体に対してX線が照射されるようになっている。
【0026】
低エネルギ画像取得部30は、低エネルギ検出器32(第1の放射線検出器)と、低エネルギ画像補正部34とを有している。
【0027】
低エネルギ検出器32は、X線の入射方向Zにおいて上流側に位置し、X線照射器20から照射されたX線のうち被検査物Sの所定の分割範囲Sを透過した低エネルギ範囲(第1のエネルギ範囲)のX線を検出して(図3の(a)参照)、低エネルギ画像データを生成する。低エネルギ検出器32は、X線照射器20から照射されたX線のうち被検査物Sがない状態でベルトコンベア10を透過した低エネルギ範囲のX線も同様に検出可能となっている。
【0028】
低エネルギ検出器32は、低エネルギ用のシンチレータ層と低エネルギ用のラインセンサとを含んで構成される。低エネルギ用のシンチレータ層は、検出方向Xに沿って延在し、低エネルギ範囲のX線の像を光像に変換する。低エネルギ用のラインセンサは、検出方向Xに沿って配列された複数の画素32(n=1〜N:Nは整数)を有し(図3の(b)参照)、シンチレータ層で変換された光像による低エネルギ画像を取得する。ラインセンサで取得される低エネルギ画像は、ラインセンサの画素32毎に取得される輝度データの集合体から構成される。
【0029】
低エネルギ画像補正部34は、低エネルギ検出器32で画素毎に生成された低エネルギ範囲の輝度データをそれぞれ増幅及び補正して、増幅補正された低エネルギ画像を取得する部分である。低エネルギ画像補正部34は、低エネルギ範囲の輝度データを増幅するアンプ34a、アンプ34aで増幅された低エネルギ範囲の輝度データをA/D変換するA/D変換部34b、A/D変換部34bで変換された輝度データに対して所定の補正処理を行う補正回路34c、補正回路34cで補正された輝度データを低エネルギ画像データとして外部に出力する出力インターフェイス34dと、を有している。
【0030】
高エネルギ画像取得部40は、高エネルギ検出器42(第2の放射線検出器)と、高エネルギ画像補正部44とを有している。
【0031】
高エネルギ検出器42は、X線の入射方向Zにおいて低エネルギ検出器32よりも下流側に位置し、X線照射器20から照射されたX線のうち被検査物Sの所定の分割範囲S及び低エネルギ検出器32を透過した高エネルギ範囲(第2のエネルギ範囲)のX線を検出して、高エネルギ画像データを生成する。高エネルギ検出器42は、X線照射器20から照射されたX線のうち被検査物Sがない状態でベルトコンベア10を透過した高エネルギ範囲のX線も同様に検出可能となっている。なお、低エネルギ検出器32で検出される低エネルギ範囲と高エネルギ検出器42で検出される高エネルギ範囲とは、明確に区別されるものではなく、エネルギ範囲がある程度、重なるようになっていてもよい。
【0032】
高エネルギ検出器42は、高エネルギ用のシンチレータ層と高エネルギ用のラインセンサとを含んで構成される。高エネルギ用のシンチレータ層は、検出方向Xに沿って延在し、高エネルギ範囲のX線の像を光像に変換する。高エネルギ用のラインセンサは、検出方向Xに沿って配列された複数の画素42(n=1〜N:Nは整数)を有し(図3の(b)参照)、シンチレータ層で変換された光像による高エネルギ画像を取得する。ラインセンサで取得される高エネルギ画像は、ラインセンサの画素42毎に取得される輝度データの集合体から構成される。なお、低エネルギ検出器32のラインセンサと高エネルギ検出器42のラインセンサとが同じセンサから構成され、シンチレータ層を異ならせること等により、両者をそれぞれ低エネルギ検出器32と高エネルギ検出器42とにするようにしてもよい。
【0033】
高エネルギ画像補正部44は、高エネルギ検出器42で画素毎に生成された高エネルギ範囲の輝度データをそれぞれ増幅及び補正して、増幅補正された高エネルギ画像を取得する部分である。高エネルギ画像補正部44は、高エネルギ範囲の輝度データを増幅するアンプ44a、アンプ44aで増幅された高エネルギ範囲の輝度データをA/D変換するA/D変換部44b、A/D変換部44bで変換された輝度データに対して所定の補正処理を行う補正回路44c、補正回路44cで補正された輝度データを高エネルギ画像データとして外部に出力する出力インターフェイス44dと、を有している。
【0034】
制御部50は、被検査物Sの搬送方向Yにおける分割範囲Sが両検出器32,42による検出で互いに対応するように、低エネルギ検出器32での透過X線の検出タイミングと高エネルギ検出器42での透過X線の検出タイミングとを制御する。この制御部50による検出タイミングの制御により、低エネルギ画像データと高エネルギ画像データとをサブトラクション処理した際に生じる画像ずれを低減させることができる。
【0035】
また、X線照射器20が点光源でありX線が放射状に広がることから、低エネルギ検出器32の各画素32と高エネルギ検出器42の各画素42とがZ方向における上下で完全に対応しない箇所が出てくる。即ち、検出方向Xの端に向かうに従って、低エネルギ検出器32の各画素32と高エネルギ検出器42の各画素42との対応関係が検出方向Xにずれることになる。そこで、制御部50は、被検査物Sの検出方向Xにおける低エネルギ検出器32の画素32と高エネルギ検出器42の画素42とがそれぞれ対応するように、補正回路34c,44c等に制御信号を出力し、低エネルギ検出器32の画素毎の各輝度データと高エネルギ検出器42の画素毎の各輝度データとの対応関係を制御する。
【0036】
具体的には、例えば図3に示されるように、被検査物Sとしてのキャリブレーション部材をベルトコンベア10で搬送させ、この被検査物SにX線照射器20からX線を照射する。そして、同図の(b)に示されるように、制御部50は、被検査物Sの一端(図示左端)に対応する低エネルギ検出器32の画素32100(最左端から100番目の画素)を第1の基準画素として設定すると共に、被検査物Sの一端に対応する高エネルギ検出器42の画素4298(最左端から98番目の画素)を第2の基準画素として設定する。第1及び第2の基準画素は、互いに対応する画素であり、検出方向Xに数画素分ずれている。
【0037】
一方、被検査物Sの他端(図示右側)でも画素の対応関係は同様にずれており、例えば、被検査物Sの他端に対応する低エネルギ検出器32の画素が321100(最左端から1100番目の画素)であるのに対し、被検査物Sの他端に対応する高エネルギ検出器42の画素が421003(最左端から1003番目の画素)となっている。対応画素がこのように検出方向Xにずれることにより、被検査物Sに対応する画素領域が、低エネルギ検出器32では画素32100〜321100の1000画素分であるのに対し、高エネルギ検出器42では画素4298〜421103の1005画素分と異なることになる。そこで、制御部50は、このように互いに異なる、低エネルギ検出器32の対応画素領域(画素32100〜321100の1000画素)と高エネルギ検出器42の対応画素領域(画素4298〜421103の1005画素)とをそれぞれ設定する。
【0038】
互いに画素数が異なる対応画素領域を設定した制御部50は、低エネルギ検出器32からの輝度データと高エネルギ検出器42からの輝度データとを対応させるため、例えば、図4の(a)に示されるように、低エネルギ検出器32からの輝度データのデータ数を100.5%に増加補正する処理を行う。制御部50は、逆に高エネルギ検出器42からの輝度データのデータ数を99.5%に減少補正する処理を行ってもよい。このようにデータ数を補正(増減)する処理の一例としては、図4の(b)に示される、いわゆる線形補間と呼ばれる手法があり、この手法を用いてデータ数を変更してもよい。図4の(b)に示される例では、3つの実測データAを線で結び、補間が必要されるデータ数となるように実測データを繋いだ仮想線を等分に分割し、例えば4つの補正データVを取得している。
【0039】
このような手法を用いることにより、制御部50は、低エネルギ検出器32から取得された1000個の輝度データを補正して1005個の輝度データを取得する。制御部50は、このように補正して得た低エネルギ検出器32からの輝度データと高エネルギ検出器42からの輝度データとを一対一で対応させる制御を行うことが可能となる。このような補正処理を拡大率の補正処理といい、このような処理を行った両輝度データに所定の演算処理を行うことにより、例えば、図5に示されるように、被検査物Sに対応する輝度データを取得することができる。図5の輝度データでは、被検査物Sの両端がエッジL、エッジRとして表される。
【0040】
画像処理装置60は、低エネルギ画像取得部30で検出及び生成された低エネルギ画像データと高エネルギ画像取得部40で検出及び生成された高エネルギ画像データとの差分データを求める演算処理(サブトラクション処理)を行い、合成画像であるサブトラクション像を生成する装置である。画像処理装置60に入力される両エネルギ画像データは、制御部50により、搬送方向Yにおける互いの画像データが対応するように検出タイミングが制御されおり、また各画素間での対応関係も制御されている。
【0041】
画像処理装置60は、このような演算処理により生成したサブトラクション像をディスプレイ等に出力表示する。この出力表示により、被検査物Sを破壊することなく被検査物Sに含まれる異物等を目視で確認することができる。なお、サブトラクション像を出力表示せずにデータの出力のみを行い、画像データ上での検出処理により画像データから直接、被検査物Sに含まれる異物等を検出するようにしてもよい。
【0042】
解析装置70は、低エネルギ検出器32と高エネルギ検出器42とで検出した被検査物Sの対応箇所SのX線透過率の比の集合である透過率パターンから、X線照射器20の位置ずれ内容を検出して、検出された位置ずれ内容に応じた補正処理を行う装置である。非破壊検査装置1では、異物検査等を続けていると熱膨張等によりX線照射器20の焦点位置がずれ、制御部50によって事前調整した各画素32と各画素42との間の対応関係(例えば上述した拡大率補正等)がずれてしまい、被検査物Sの両端に対応する輝度データであるエッジL/R(図5参照)において、疑似エッジが発生する場合がある。
【0043】
本実施形態では、解析装置70によってX線照射器20の位置ずれ内容を検出して輝度データの補正処理を行うことで、疑似エッジの発生を抑制している。このような解析装置70は、図2に示されるように、低エネルギ透過率算出部72(第1の算出手段)、高エネルギ透過率算出部74(第2の算出手段)、検出部76(検出手段)及び補正部78(補正手段)を有している。
【0044】
低エネルギ透過率算出部72は、低エネルギ検出器32で検出されたX線の輝度データから、低エネルギ範囲における被検査物SのX線透過率を対応領域S毎に算出する。低エネルギ透過率算出部72は、補正値算出部72a、記憶部72b、輝度補正部72c及び透過率算出部72dを含んで構成される。
【0045】
補正値算出部72aは、被検査物Sが存在しない状態(ベルトコンベア10のみが設置された状態)での低エネルギ範囲におけるX線の輝度データを低エネルギ検出器32からまずは取得する。取得した低エネルギ範囲におけるX線の生輝度データRL(n=1〜N:Nは整数)は、低エネルギ検出器32の検出方向Xに沿って配置された画素32それぞれに対応するデータであり、例えば図6の(a)に示されるように、ばらついている。
【0046】
なお、図6の(a)では、128画素を有するラインセンサがX方向に10個連結されて低エネルギ検出器32が構成された場合の例(つまり1280画素)を示している。被検査物Sが存在しない状態にも拘わらずこのようなバラツキが発生するのは、X線照射器20からのX線の検出方向Xに沿った強さバラツキや低エネルギ検出器32での検出感度のバラツキなどがあるためである。
【0047】
そこで、補正値算出部72aは、シェーディング補正等を行うことにより、図6の(b)に示されるように、画素32毎の輝度バラツキを補正してすべての生輝度データRLを例えば輝度値3200に標準化する。この標準化された輝度値をDL、補正係数をFLとすると、これらの関係は以下の式(1)で表すことができる。
DL=FL×RL・・・(1)
【0048】
そして、補正値算出部72aは、輝度値DLに標準化する際の補正に用いられた補正関数FLを上記の式(1)より算出する。補正関数FLは、すべての画素32からの生輝度データRLに対応する関数であり、補正値算出部72aは、算出した補正関数FLを記憶部72bに出力する。また、補正値算出部72aは、基礎輝度データとして、標準化された輝度値DLを記憶部72bに出力する。輝度値DLとしては、生輝度データの平均値を用いてもよいし、最小値や最大値を用いてもよく、適宜設定することができる。X線の生輝度データRLを取得する前処理として、図7に示されるような暗電流補正を行って初期ノイズを除去しておいてもよく(同図の(b)参照)、この場合、より精度良い測定を行うことができる。
【0049】
記憶部72bは、補正値算出部72aから出力された補正関数FL及び標準化された輝度値DLを格納する。記憶部72bは、後述する輝度補正部72cや透過率算出部72dからの呼び出しに応じて、補正関数FL又は標準化された輝度値DLを輝度補正部72cや透過率算出部72dに出力する。
【0050】
輝度補正部72cは、被検査物Sが存在する状態での低エネルギ範囲におけるX線の生輝度データRL’(n=1〜N:Nは整数)を低エネルギ検出器32から対応領域S毎に取得する。X線の生輝度データRL’は、低エネルギ検出器32の画素32にそれぞれ対応しており、被検査物Sの対応箇所S毎に順に取得される。
【0051】
輝度補正部72cは、低エネルギ範囲におけるX線の生輝度データRL’を対応領域S毎に取得すると、上述したシェーディング補正と同様の補正を行うため、補正関数FLを記憶部72bから呼びだし、下記の式(2)に示すように、各生データに補正関数FLを乗じ、補正後の各輝度データDL’(n=1〜N:Nは整数)を取得する。
DL’=FL×RL’・・・(2)
輝度補正部72cは、補正後の各輝度データDL’を取得すると、取得した輝度データDL’を透過率算出部72dに出力する。
【0052】
透過率算出部72dは、補正後の輝度データDL’を取得すると、記憶部72bから標準化された輝度値DLを取得し、低エネルギ範囲における透過率PL=DL’/DL(第1の透過率)を算出する。透過率算出部72dは、算出した透過率PLを検出部76に出力する。
【0053】
高エネルギ透過率算出部74は、高エネルギ検出器42で検出されたX線の輝度データから、高エネルギ範囲における被検査物SのX線透過率を対応領域S毎に算出する。高エネルギ透過率算出部74で算出される各輝度データは、低エネルギ透過率算出部72で算出される各輝度データと被検査物Sの対応領域Sが同じとなるように調整されたデータであり、互いに対応している。高エネルギ透過率算出部74は、補正値算出部74a、記憶部74b、輝度補正部74c及び透過率算出部74dを含んで構成される。
【0054】
補正値算出部74aは、被検査物Sが存在しない状態(ベルトコンベア10のみが設置された状態)での高エネルギ範囲におけるX線の輝度データを高エネルギ検出器42から取得する。取得した高エネルギ範囲におけるX線の生輝度データRH(n=1〜N:Nは整数)は、高エネルギ検出器42の検出方向Xに沿って配置された画素42それぞれに対応するデータであり、低エネルギ検出器32からのデータと同様に、ばらついている。
【0055】
そこで、補正値算出部74aは、補正値算出部72aと同様に、シェーディング補正等を行うことにより、画素42毎の輝度バラツキを補正してすべての生輝度データRHを例えば輝度値3200に標準化する。この標準化された輝度値をDH、補正係数をFHとすると、これらの関係は以下の式(3)で表すことができる。
DH=FH×RH・・・(3)
【0056】
そして、補正値算出部74aは、輝度値DHに標準化する際の補正に用いられた補正関数FHを上記の式(3)より算出する。補正関数FHは、すべての画素42からの生輝度データRHに対応する関数であり、補正値算出部74aは、算出した補正関数FHを記憶部74bに出力する。また、補正値算出部74aは、基礎輝度データとして、標準化された輝度値DHを記憶部74bに出力する。
【0057】
記憶部74bは、補正値算出部74aから出力された補正関数FH及び標準化された輝度値DHを格納する。記憶部74bは、後述する輝度補正部74cや透過率算出部74dからの呼び出しに応じて、補正関数FH又は標準化された輝度値DHを輝度補正部74cや透過率算出部74dに出力する。
【0058】
輝度補正部74cは、被検査物Sが存在する状態での高エネルギ範囲におけるX線の生輝度データRH’(n=1〜N:Nは整数)を高エネルギ検出器42から対応領域S毎に連続して取得する。X線の生輝度データRH’は、高エネルギ検出器42の画素42にそれぞれ対応しており、被検査物Sの対応箇所S毎に順に取得される。
【0059】
輝度補正部74cは、高エネルギ範囲におけるX線の生輝度データRH’を対応領域S毎に取得すると、上述したシェーディング補正と同様の補正を行うため、補正関数FHを記憶部74bから呼びだし、下記の式(4)に示すように、各生データに補正関数FHを乗じて、補正後の輝度データDH’(n=1〜N:Nは整数)を取得する。
DH’=FH×RH’・・・(4)
輝度補正部74cは、補正後の各輝度データDH’を取得すると、取得した輝度データDH’を透過率算出部74dに出力する。
【0060】
透過率算出部74dは、補正後の輝度データDH’を取得すると、記憶部74bから標準化された輝度値DHを取得し、高エネルギ範囲における透過率PH=DH’/DH(第2の透過率)を算出する。透過率算出部74dは、算出した透過率PHを検出部76に出力する。
【0061】
検出部76は、低エネルギ透過率算出部72で算出された透過率PL(=DL’/DL)と、高エネルギ透過率算出部74で算出された透過率PH(=DH’/DH)との比を算出して、X線照射器20の位置ずれ内容を検出する。この比は、以下の式(5)で表される。
透過率の比=PH/PL・・・(5)
【0062】
検出部76は、上述した式(5)に基づいた透過率の比PH/PLの領域S毎のデータ列としての透過率パターンが、図8の(a)〜(d)に示す何れかのパターンに合致するか否かを判定する。つまり、検出部76は、透過率の比PH/PLが閾値A(下限の閾値)よりも小さくなっている箇所や、閾値B(上限の閾値)よりも大きくなっている箇所があるか否かを判定する。
【0063】
図8に示す各パターンとX線照射器20の位置ずれ内容との詳細な関係については後述するが、図8の(a)に示すパターンは、X線照射器20が検出方向Xの一方(左側)にずれた場合を示しており、図8の(b)に示すパターンは、X線照射器20が検出方向Xの他方(右側)にずれた場合を示しており、図8の(c)に示すパターンは、X線照射器20が照射方向Zの下方にずれた場合を示しており、図8の(d)に示すパターンは、X線照射器20が照射方向Zの上方にずれた場合を示している。
【0064】
なお、本実施形態では、閾値Aとして「1」を設定しているが、この理由について簡単に説明する。X線は、エネルギが高いほど物体を透過しやすいため、仮に被検査物Sで同じ経路(つまり同じ材料部分)をたどったX線を低エネルギ範囲と高エネルギ範囲とで検出すると、高エネルギ範囲の透過率の方が必ず高くなる。例えば、ワイヤを透過したX線の透過率を低エネルギ範囲と高エネルギ範囲とでそれぞれ検出すると、低エネルギ範囲の透過率が0.181であるのに対し、高エネルギ範囲の透過率は0.327となり、その透過率の比PH/PLは1.807となり、1よりも大きくなる。
【0065】
つまり、透過率の比PH/PLが1よりも大きいと、被検査物Sで同じ経路(同じ材料部分)をたどったX線を低エネルギ範囲と高エネルギ範囲とで検出している可能性が高くなり、低エネルギ検出器32の画素32と高エネルギ検出器42の画素42とで対応するように事前調整されている対応関係が維持されていると判定することができる。一方、高エネルギ範囲の透過性の方が低エネルギ範囲の透過性よりも低くなる場合は、被検査物Sで同じ経路をたどっていない(異なる材料部分を通過した)X線を比較している可能性が高く、低エネルギ検出器32の画素32と高エネルギ検出器42の画素42とで対応するように調整されている対応関係が維持されていないと判定することができる。
【0066】
また、本実施形態では、キャリブレーション部材として、アルミ製のテストピースを用いている。アルミに対するX線の透過率に基づくと、アルミ製のテストピースにX線を照射した際の透過率の比PH/PLは、例えば1.1〜2の範囲に収まる。そこで、本実施形態では、下限の閾値Aに加え、上限である閾値Bとして「2」を設定している。上限の閾値Bは、X線を照射する部材毎に変更され、それぞれの部材に適した範囲となるように調整される。上限の閾値Bは、X線を照射する被検査物Sの材料におけるX線透過率によって異なる値とすることが好ましく、被検査物SのX線透過率に基づいて適宜設定される。
【0067】
ここで、図8の(a)〜(d)に示した各パターンとX線照射器20の位置ずれ内容との関係について、図9〜図14を参照して、より詳細に説明する。
【0068】
まず、X線照射器20が検出方向Xの一方(図示左側)にずれた場合について、図9及び図10を参照して説明する。X線照射器20が、図9の(a)に示す位置から図9の(b)に示す位置にずれると、X線照射器20を照射した際に被検査物Sの両端付近を検出する検出器32,42の画素もそれぞれずれることになる。具体的には、X線照射器20がずれる前、被検査物Sの左端に対応する箇所では検出器32の画素32aと検出器42の画素42aとが対応しており、被検査物Sの右端に対応する箇所では検出器32の画素32sと検出器42の画素42sとが対応していた。
【0069】
ところが、X線照射器20が検出方向Xの左側にずれることにより、被検査物Sの左端に対応する箇所では検出器32の画素32bと検出器42の画素42cとが対応し、被検査物Sの右端に対応する箇所では検出器32の画素32tと検出器42の画素42uとが対応することになる。ところで、各検出器32,42では、上述したように制御部50により拡大率の補正等が行われて各画素の対応がとられており、検出器32の画素32bに対応する検出器42の画素として画素42bが割り当てられており、また、検出器32の画素32tに対応する検出器42の画素として画素42tが割り当てられている。
【0070】
この検出器32の画素32bは、被検査物Sを検出するが、画素32bに対応する検出器42の画素42bは、被検査物Sが存在しない状態(空気)を検出する。その結果、例えば、被検査物Sを検出する画素32bからの透過率PLが33%となるのに対し、被検査物Sを検出しない画素42bからの透過率PHがほぼ100%となり、これら透過率の比PH/PLは、3.03となる。つまり、被検査物Sの一端に対応する箇所が上限の閾値Bよりも高くなる。
【0071】
また、検出器32の画素32tは、被検査物Sが存在しない状態(空気)を検出するが、画素32tに対応する検出器42の画素42tは、被検査物Sを検出する。その結果、例えば、被検査物Sを検出しない画素32tからの透過率PLがほぼ100%となるのに対し、被検査物Sを検出する画素42tからの透過率PHが33%となり、これら透過率の比PH/PLは、0.33となる。つまり、被検査物Sの他端に対応する箇所が下限の閾値Aよりも小さくなる。
【0072】
このように、X線照射器20が検出方向Xの左側にずれると、図8の(a)に示されるような、被検査物Sの左端に対応する箇所で上限の閾値Bよりも高くなり、且つ、被検査物Sの右端に対応する箇所で下限の閾値Aよりも小さくなる、といった透過率パターンが現れることになる。また、逆に、X線照射器20が検出方向Xの右側にずれると、図8の(b)に示されるような、図8の(a)と線対称な透過率パターンとなり、被検査物Sの右端に対応する箇所で上限の閾値Bよりも高くなり、且つ、被検査物Sの左端に対応する箇所で下限の閾値Aよりも小さくなる、といった透過率パターンが現れることになる。
【0073】
続いて、X線照射器20が照射方向Zの下方にずれた場合について、図11及び図12を参照して説明する。X線照射器20が、図11の(a)に示す位置から図11の(b)に示す位置にずれると、X線照射器20を照射した際に被検査物Sの両端付近を検出する検出器32,42の画素もそれぞれずれることになる。具体的には、X線照射器20がずれる前、被検査物Sの左端に対応する箇所では検出器32の画素32aと検出器42の画素42aとが対応しており、被検査物Sの右端に対応する箇所では検出器32の画素32sと検出器42の画素42sとが対応していた。
【0074】
ところが、X線照射器20が照射方向Zの下方にずれることにより、被検査物Sの左端に対応する箇所では検出器32の画素32bと検出器42の画素42cとが対応し、被検査物Sの右端に対応する箇所では検出器32の画素32tと検出器42の画素42uとが対応することになる。ところで、各検出器32,42では、上述したように制御部50により拡大率の補正等が行われて各画素の対応がとられており、検出器32の画素32bに対応する検出器42の画素として画素42bが割り当てられており、また、検出器32の画素32tに対応する検出器42の画素として画素42tが割り当てられている。
【0075】
この検出器32の画素32bは、被検査物Sが存在しない状態(空気)を検出するが、画素32bに対応する検出器42の画素42bは、被検査物Sを検出する。その結果、例えば、被検査物Sを検出しない画素32bからの透過率PLがほぼ100%となるのに対し、被検査物Sを検出する画素42bからの透過率PHが33%となり、これら透過率の比PH/PLは、0.33となる。つまり、被検査物Sの一端に対応する箇所が下限の閾値Aよりも小さくなる。
【0076】
また、検出器32の画素32tは、被検査物Sが存在しない状態(空気)を検出するが、画素32tに対応する検出器42の画素42tは、被検査物Sを検出する。その結果、例えば、被検査物Sを検出しない画素32tからの透過率PLがほぼ100%となるのに対し、被検査物Sを検出する画素42tからの透過率PHが33%となり、これら透過率の比PH/PLは、0.33となる。つまり、被検査物Sの他端に対応する箇所も下限の閾値Aよりも小さくなる。このように、X線照射器20が照射方向Zの下方にずれると、図8の(c)に示されるような、被検査物Sの左右両端に対応する箇所で下限の閾値Aよりも小さくなる、といった透過率パターンが現れることになる。
【0077】
続いて、X線照射器20が照射方向Zの上方にずれた場合について、図13及び図14を参照して説明する。X線照射器20が、図13の(a)に示す位置から図13の(b)に示す位置にずれると、X線照射器20を照射した際に被検査物Sの両端付近を検出する検出器32,42の画素もそれぞれずれることになる。具体的には、X線照射器20がずれる前、被検査物Sの左端に対応する箇所では検出器32の画素32aと検出器42の画素42aとが対応しており、被検査物Sの右端に対応する箇所では検出器32の画素32sと検出器42の画素42sとが対応していた。
【0078】
ところが、X線照射器20が照射方向Zの上方にずれることにより、被検査物Sの左端に対応する箇所では検出器32の画素32bと検出器42の画素42cとが対応し、被検査物Sの右端に対応する箇所では検出器32の画素32tと検出器42の画素42uとが対応することになる。ところで、各検出器32,42では、上述したように制御部50により拡大率の補正等が行われて各画素の対応がとられており、検出器32の画素32bに対応する検出器42の画素として画素42bが割り当てられており、また、検出器32の画素32tに対応する検出器42の画素として画素42tが割り当てられている。
【0079】
この検出器32の画素32bは、被検査物Sを検出するが、画素32bに対応する検出器42の画素42bは、被検査物Sが存在しない状態(空気)を検出する。その結果、例えば、被検査物Sを検出する画素32bからの透過率PLが33%となるのに対し、被検査物Sを検出しない画素42bからの透過率PHがほぼ100%となり、これら透過率の比PH/PLは、3.03となる。つまり、被検査物Sの一端に対応する箇所が上限の閾値Bよりも大きくなる。
【0080】
また、検出器32の画素32tは、被検査物Sを検出するが、画素32tに対応する検出器42の画素42tは、被検査物Sが存在しない状態(空気)を検出する。その結果、例えば、被検査物Sを検出する画素32tからの透過率PLが33%となるのに対し、被検査物Sを検出しない画素42tからの透過率PHがほぼ100%となり、これら透過率の比PH/PLは、3.03となる。つまり、被検査物Sの他端に対応する箇所も上限の閾値Bよりも大きくなる。このように、X線照射器20が照射方向Zの上方にずれると、図8の(d)に示されるような、被検査物Sの左右両端に対応する箇所で上限の閾値Bよりも大きくなる、といった透過率パターンが現れることになる。
【0081】
そして、検出部76は、取得した透過率の比PH/PLの集合から構成される透過率パターンが図8のいずれのパターンに該当するか、または、いずれのパターンにも該当せず閾値A,B間に収まっているかといった検出結果を生成し、当該結果を補正部78に出力する。
【0082】
補正部78は、X線照射器20の位置ずれ内容についての検出結果を検出部76から受け取ると、その位置ずれ内容に応じて低エネルギ検出器32及び高エネルギ検出器42で検出されたX線の輝度データの少なくとも一方を補正するための補正指示信号を生成する。
【0083】
補正部78で生成する信号としては、例えば、検出部76によってX線照射器20が検出方向Xにずれたと判定された場合、検出器32,42からの輝度データを互いに対応させるための基準画素32a,42aの一方の基準画素42aを、X線照射器20が検出方向Xでずれた側とは逆側に1画素ずつ動かすといった指示信号がある。なお、補正信号として、他方の基準画素32aを、X線照射器20が検出方向Xでずれた側と同じ側に1画素ずつ動かすといった補正信号としてもよく、0.1画素ずつ動かすといったサブピクセル単位で移動させるようにしてもよい。
【0084】
また、このように基準画素を再設定したことに伴って、両検出器32,42を構成する各画素の拡大率を再調整する再調整処理を行う補正指示をこの補正信号に含ませてもよい。
【0085】
また、補正部78で生成する補正指示信号として、例えば、検出部76によってX線照射器20が照射方向Zにずれたと判定された場合、検出器32,42を構成する各画素の拡大率を再調整する再調整処理を行うといった信号がある。この信号では、X線照射器20が照射方向Zの下方にずれた場合、低エネルギ検出器32の画素の拡大率を上げたり、逆に照射方向Zの上方にずれた場合、低エネルギ検出器32の画素の拡大率を下げたりする。
【0086】
また、このように拡大率を再調整する前に、X線照射器20が照射方向Zの下方にずれた場合には、検出部32,42からの輝度データを互いに対応させるための基準画素32a,42aの一方の基準画素42aを外側に1画素ずつ動かす、または、他方の基準画素32aを内側に1画素ずつ動かすといった補正信号としてもよい。一方、X線照射器20が照射方向Zの上方にずれた場合には、検出部32,42からの輝度データを互いに対応させるための基準画素32a,42aの一方の基準画素42aを内側に1画素ずつ動かす、または、他方の基準画素32aを外側に1画素ずつ動かすといった補正信号としてもよい。
【0087】
補正部78は、このような補正信号を制御部50に出力し、制御部50及び制御部50によって制御される補正回路34c,44c等において、基準画素の再設定や拡大率の再調整といった処理を実行させ、検出器32,42からの輝度データを補正する。
【0088】
ところで、上記実施形態では、低エネルギ透過率算出部72で用いられる輝度値DLと、高エネルギ透過率算出部74で用いられる輝度値DHとが同じ値になるように補正処理を行っている。この場合、算出される各透過率の分母が同じになるため、透過率を直接算出する必要がなくなり、両透過率算出部72,74が透過率算出部72d,74dを含まない構成とすることもできる。この構成では、輝度補正部72cから輝度データDL’を検出部76にそのまま出力し、輝度補正部74cから輝度データDH’を検出部76にそのまま出力する。なお、ここでいう、補正後の輝度データDL’は、低エネルギ範囲における透過率を示す値の1つとして機能し、補正後の輝度データDH’は、高エネルギ範囲における透過率を示す値の1つとして機能することになる。
【0089】
上記の場合、検出部76では、輝度補正部72cから補正後の輝度データDL’を取得し、輝度補正部74cから補正後の輝度データDH’を取得すると、これらの輝度データから透過率の比=PH/PLを算出する。輝度値DLとDHとが同じ値であることから、透過率の比PH/PLは、以下の式(7)で表される。
透過率の比=PH/PL=DH’/DL’・・・(7)
そして、検出部76は上述した処理と同様の検出処理を行って、X線照射器20の位置ずれ内容を検出する。
【0090】
続いて、非破壊検査装置1において、X線照射器20の位置ずれ内容を検出して輝度データを補正する補正方法を、図15を参照して説明する。なお、以下の説明では、透過率PLとして、補正後の輝度データDL’を利用し、透過率PHとして、補正後の輝度データDH’をそのまま利用している。
【0091】
まず、補正値算出部72aによって、被検査物Sが存在しない状態での低エネルギ範囲におけるX線の輝度データRLを低エネルギ検出器32から取得する。その後、補正値算出部72aによってこれら輝度データRLにシェーディング補正等を行うことにより、画素32毎の輝度バラツキを補正してすべての生輝度データRLを例えば輝度値3200に標準化する。そして、補正値算出部72aによって、輝度値DLに標準化する際の補正に用いられた補正関数FLを上記の式(1)より算出する(ステップS1)。
【0092】
続いて、輝度補正部72cによって、被検査物Sが存在する状態での低エネルギ範囲におけるX線の生輝度データRL’を低エネルギ検出器32から取得する。輝度補正部72cによって、低エネルギ範囲におけるX線の生輝度データRL’を取得すると、補正関数FLを記憶部72bから呼びだし、上述した式(2)に示すように、各生データに補正関数FLを乗じ、補正後の各輝度データDL’を取得する(ステップS2)。補正後の各輝度データDL’が取得されると、取得した輝度データDL’が検出部76に出力される。
【0093】
また、補正値算出部74aによって、被検査物Sが存在しない状態での高エネルギ範囲におけるX線の輝度データRHを高エネルギ検出器42から取得する。その後、補正値算出部74aによってこれら輝度データRHにシェーディング補正等を行うことにより、画素42毎の輝度バラツキを補正してすべての生輝度データRHを例えば輝度値3200に標準化する。そして、補正値算出部74aによって、輝度値DHに標準化する際の補正に用いられた補正関数FHを上記の式(3)より算出する(ステップS3)。
【0094】
続いて、輝度補正部74cによって、被検査物Sが存在する状態での高エネルギ範囲におけるX線の生輝度データRH’を高エネルギ検出器42から取得する。輝度補正部74cによって、高エネルギ範囲におけるX線の生輝度データRH’を取得すると、補正関数FHを記憶部74bから呼びだし、上述した式(4)に示すように、各生データに補正関数FHを乗じ、補正後の各輝度データDH’を取得する(ステップS4)。補正後の各輝度データDH’が取得されると、取得した輝度データDH’が検出部76に出力される。
【0095】
続いて、検出部76によって、低エネルギ透過率算出部72で算出された透過率PL(=DL’)と、高エネルギ透過率算出部74で算出された透過率PH(=DH’)とから、透過率の比PH/PLの領域S毎のデータ列としての透過率パターンが算出される(ステップS5)。そして、検出部76によって、算出された透過率パターンが、図8の(a)〜(d)に示す何れかのパターンに合致するか否か、または、何れのパターンにも合致しないといったことが判定される。
【0096】
ステップS6での判定により、透過率パターンが図8の(a)〜(d)の何れかのパターンに合致する場合、ステップS7に進み、上述したような、各パターンに応じた輝度データの補正が行われる。輝度データの補正例としては、例えば、検出部76によってX線照射器20が検出方向Xにずれたと判定された場合、検出器32,42からの輝度データを互いに対応させるための基準画素32a,42aの一方の基準画素42aを、X線照射器20が検出方向Xでずれた側とは逆側に1画素ずつ動かすといった補正が行われる。また、このように基準画素を再設定したことに伴って、両検出器32,42を構成する各画素の拡大率を再調整する再調整処理を行ってもよい。
【0097】
一方、ステップS6での判定により、透過率パターンが図8の(a)〜(d)の何れのパターンにも合致しない場合には、ステップS1,S3に戻り、同様の処理を繰り返す。
【0098】
以上により、非破壊検査装置1において、2段に重ねられた検出器32,42の画素間での対応がとれなくなったことを早期に検出し、画素32,42間での対応が再びとれるように輝度データを補正することができる。
【0099】
このように、本実施形態の非破壊検査装置1によれば、被検査物Sを透過したX線の両エネルギ範囲における各透過率を示す値を輝度データから算出し、これら透過率を示す値の比に基づいてX線照射器20の位置ずれ内容を検出している。X線などの放射線は、エネルギが高いほど物体を透過しやすいといった性質があるが、互いに画素等が対応するよう調整された両検出器での物体の透過率を示す値の比を参照することで、検出器32,42の画素間における対応関係が崩れた状態を検出できると共に、当該対応関係がどのように崩れたのかを検出でき、これにより、X線照射器20の位置ずれ内容を知ることができる。その結果、非破壊検査装置1によれば、2段に重ねられた検出器32,42の画素間での対応がとれなくなったことを早期に検出し、画素間での対応が再びとれるように検出器32,42からの輝度データを補正することができる。
【0100】
しかも、非破壊検査装置1によれば、X線の両エネルギ範囲における各透過率を示す値を、輝度データを利用して算出している。このため、透過率を求めることが容易に実行でき、新たな検出器を別途設ける必要がない。
【0101】
また、非破壊検査装置1及び補正方法において、検出部76は、被検査物SのX線透過率に基づいて設定される上限及び下限の2つの閾値A,Bを格納しており、両透過率を示す値の比をこれら両閾値A,Bと比較することによりX線照射器20の位置ずれ内容を検出するようになっている。この場合、X線照射器20の位置ずれ内容を検出するために、被検査物S毎に異なる放射線透過率に基づいて閾値を設定していることになり、X線照射器20の位置ずれ内容をより確実に知ることができる。
【0102】
また、非破壊検査装置1及び補正方法において、検出器32,42は、搬送方向及び照射方向に交差する検出方向に伸びる検出領域をそれぞれ有しており、検出部76は、検出領域に対応し且つ両透過率を示す値の比の集合から構成される透過率パターンを上限及び下限の両閾値A,Bと比較して、放射線源の位置ずれ内容を検出している。このため、透過率パターンと閾値との比較処理によって放射線源の位置ずれ内容を検出でき、検出処理を簡易に行うことができる。
【0103】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、解析装置70において、透過率の比PH/PLを閾値A,Bと比較してX線照射器20の位置ずれを判定していたが、下記の式(8)に示すように、低エネルギ範囲における透過率PLと高エネルギ範囲における透過率PHとの差を閾値A,Bと比較して、X線照射器20の位置ずれ内容を検出するようにしてもよい。
閾値B>PH―PL>閾値A・・・(8)
【0104】
この場合、例えば、PH―PLの集合体からなる透過率パターンが閾値Aである0よりも小さい箇所と、PH―Plが閾値Bよりも大きい箇所とを検出し、これに基づいて、補正部78によって所定の補正処理を行うようにすればよい。なお、この場合の閾値Bも、被検査物SのX線透過率に基づいて適宜設定できる。また、透過率の比PH/PLに代えて、逆となる透過率の比PL/PHを基準にした場合等でも同様である。
【0105】
また、上記実施形態では、基礎となる輝度データDLとDHとが同じになるように補正関数FL,FHを設定していたが、取得される輝度データによっては、基礎となる輝度データDLとDHとが同じ値にならないように補正関数FL,FHを設定してもよい。但し、この場合は、透過率の分母を省略することはできないので、透過率同士で比較する必要がある。比較検出は、上述した実施形態と同様である。
【0106】
また、上記実施形態では、透過率PH,PLを算出する基礎となる輝度データを、被検査物Sが存在しない状態(ベルトコンベア10のみが設置された状態)での範囲におけるX線の輝度データとしているが、ベルトコンベア10上に載置されるコンベアとは別のトレイ内に被検査物Sが収められたものを検査する場合には、透過率PH,PLを算出する基礎となる輝度データとして、ベルトコンベア10に加えトレイも含めた状態、言い換えると、被検査物Sに含まれない部分でのX線の輝度データを求め、これを用いて各透過率を算出するようにしてもよい。
【0107】
また、上記実施形態では、検出器32,42の対応関係を個別の画素32、42毎に比較していたが、複数の画素からなる所定の領域毎に比較し、これを基準として、基準画素の設定や拡大率の設定などを行ってもよい。この場合には、ノイズ等による誤差を検出してしまうことを防止できる。また、上記実施形態では、検出器32,42の左端に対応する左エッジを基準として基準画素32100と4298を設定していたが、検出器32,42の右端に対応する右エッジを基準として基準画素を設定したり、中心点を基準として基準画素を設定したりしてももちろんよい。
【0108】
また、上記実施形態では、画像補正部34,44と透過率算出部72,74とを別々に設けた場合で説明したが、画像補正部34,44の出力インターフェースから出力されるデータを用いて、透過率算出部72,74で算出される透過率を算出するようにしてもよい。つまり、透過率算出部72,74の機能の一部又は全部と画像補正部34,44とが共用される構成であってもよい。
【符号の説明】
【0109】
1…非破壊検査装置、10…ベルトコンベア、20…X線照射器、32…低エネルギ検出器、42…高エネルギ検出器、50…制御部、70…解析装置、72…低エネルギ透過率算出部、74…高エネルギ透過率算出部、76…検出部、78…補正部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物を所定の方向に搬送する搬送手段と、
前記搬送手段による搬送方向と交差するように前記搬送手段に向けて放射線を照射する放射線源と、
前記放射線源から照射された放射線を第1のエネルギ範囲で検出する第1の放射線検出器と、
前記放射線の照射方向において前記第1の放射線検出器よりも下流側に位置し、前記放射線源から照射された放射線を前記第1のエネルギ範囲よりも高い第2のエネルギ範囲で検出する第2の放射線検出器と、
前記放射線源から照射されて前記被検査物を透過した放射線の前記第1のエネルギ範囲における第1の透過率を示す値を、前記第1の放射線検出器で検出された放射線の輝度データから算出する第1の算出手段と、
前記放射線源から照射されて前記被検査物を透過した放射線の前記第2のエネルギ範囲における第2の透過率を示す値を、前記第2の放射線検出器で検出された放射線の輝度データから算出する第2の算出手段と、
前記第1の算出手段で算出された前記第1の透過率を示す値と前記第2の算出手段で算出された前記第2の透過率を示す値との比又は差に基づいて前記放射線源の位置ずれ内容を検出する検出手段と、
前記検出手段で前記放射線源の位置ずれ内容が検出された場合に、当該位置ずれ内容に応じて前記第1及び第2の放射線検出器で検出された放射線の輝度データの少なくとも一方を補正する補正手段と、
を備える非破壊検査装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記被検査物の放射線透過率に基づいて設定される上限及び下限の2つの閾値を格納しており、前記第1及び第2の透過率を示す値の比又は差を前記上限及び下限の両閾値と比較することにより前記放射線源の位置ずれ内容を検出する、請求項1に記載の非破壊検査装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の放射線検出器は、前記搬送方向及び前記照射方向に交差する検出方向に伸びる検出領域をそれぞれ有しており、
前記検出手段は、前記検出領域に対応し且つ前記第1及び第2の透過率を示す値の比又は差の集合から構成される透過率パターンを前記上限及び下限の両閾値と比較して、前記放射線源の位置ずれ内容を検出する、請求項2に記載の非破壊検査装置。
【請求項4】
前記検出手段は、前記透過率パターンにおいて前記被検査物の一端に対応する箇所が前記上限の閾値よりも高くなり、且つ、前記透過率パターンにおいて前記被検査物の他端に対応する箇所が前記下限の閾値よりも小さくなった場合に、前記放射線源が前記検出方向にずれたと判定する、請求項3に記載の非破壊検査装置。
【請求項5】
前記補正手段は、前記検出手段によって前記放射線源が前記検出方向にずれたと判定された場合、前記第1及び第2の放射線検出器からの輝度データを互いに対応させるための基準画素のうち少なくとも一方の基準画素を他の画素に移動させて新たな基準画素を設定する再設定処理を行うことにより、前記第1及び第2の放射線検出器からの輝度データの少なくとも一方を補正する、請求項4に記載の非破壊検査装置。
【請求項6】
前記補正手段は、前記検出手段によって前記放射線源が前記検出方向にずれたと判定された場合、前記第1及び第2の放射線検出器を構成する各画素の拡大率を再調整する再調整処理を行うことにより、前記第1及び第2の放射線検出器からの輝度データの少なくとも一方を補正する、請求項4又は5に記載の非破壊検査装置。
【請求項7】
前記検出手段は、前記透過率パターンにおいて前記被検査物の両端に対応する箇所のそれぞれが前記下限の閾値よりも低くなった場合、又は、前記透過率パターンにおいて前記被検査物の両端に対応する箇所のそれぞれが前記上限の閾値よりも高くなった場合に、前記放射線源が前記照射方向にずれたと判定する、請求項3〜6の何れか一項に記載の非破壊検査装置。
【請求項8】
前記補正手段は、前記検出手段によって前記放射線源が前記照射方向にずれたと判定された場合、前記第1及び第2の放射線検出器を構成する各画素の拡大率を再調整する再調整処理を行うことにより、前記第1及び第2の放射線検出器からの輝度データの少なくとも一方を補正する、請求項7に記載の非破壊検査装置。
【請求項9】
前記補正手段は、前記検出手段によって前記放射線源が前記照射方向にずれたと判定された場合、前記第1及び第2の放射線検出器からの輝度データを互いに対応させるための基準画素のうち少なくとも一方の基準画素を他の画素に移動させて新たな基準画素を設定する再設定処理を行うことにより、前記第1及び第2の放射線検出器からの輝度データの少なくとも一方を補正する、請求項7又は8に記載の非破壊検査装置。
【請求項10】
被検査物を所定の方向に搬送する搬送手段と、前記搬送手段による搬送方向と交差するように前記搬送手段に向けて放射線を照射する放射線源と、前記放射線源から照射された放射線を第1のエネルギ範囲で検出する第1の放射線検出器と、前記放射線の照射方向において前記第1の放射線検出器よりも下流側に位置し、前記放射線源から照射された放射線を前記第1のエネルギ範囲よりも高い第2のエネルギ範囲で検出する第2の放射線検出器とを備えた非破壊検査装置において、前記第1及び第2の放射線検出器で検出された輝度データの少なくとも一方を補正する補正方法であって、
前記放射線源から照射されて前記被検査物を透過した放射線の前記第1のエネルギ範囲における第1の透過率を示す値を、前記第1の放射線検出器で検出された放射線の輝度データから算出する第1の算出ステップと、
前記放射線源から照射されて前記被検査物を透過した放射線の前記第2のエネルギ範囲における第2の透過率を示す値を、前記第2の放射線検出器で検出された放射線の輝度データから算出する第2の算出ステップと、
前記第1の算出ステップで算出された前記第1の透過率を示す値と前記第2の算出ステップで算出された前記第2の透過率を示す値との比又は差に基づいて前記放射線源の位置ずれ内容を検出する検出ステップと、
前記検出ステップで前記放射線源の位置ずれ内容が検出された場合に、当該位置ずれ内容に応じて前記第1及び第2の放射線検出器で検出された放射線の輝度データの少なくとも一方を補正する補正ステップと、
を備える補正方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−101042(P2013−101042A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244682(P2011−244682)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】