説明

非破壊欠陥検査システム

【課題】 X線を用いた非破壊欠陥検査システムであって、内部の欠損や空孔の有無および位置を自動的に短時間で検出する非破壊欠陥検査システムを提供する。
【解決手段】 サンプル1を差し挟む位置にX線源2とX線検出器3を配し、サンプル1に2個以上の超音波探傷子4、5を付設し、X線検出器3から得られる投影画像および超音波探傷子4、5から得られる探傷エコーデータを基に演算装置7で処理を行うことにより欠陥の位置を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の内部欠陥を非破壊で検査する検査システムに関し、特にX線と超音波で非破壊検査を行う非破壊欠陥検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属の鋳物を鋳造する際には鋳造過程で内部に巣と呼ばれる空孔が生じることがある。例えば鋳造品がアルミ鋳物によるオートバイ汎用機エンジンの場合、巣が発生していてもエンジン機能に支障がない時はそのまま製品として出荷される。しかし、例えば冷却水流路の近傍に巣が形成されていると、エンジン運転中に高圧で流通する冷却水が流路の壁を圧壊して流路と巣を連通させることがある。流路と巣の連通により冷却水漏れが生じて冷却性能が低下し、最悪の場合エンジンが損壊する可能性がある。
【0003】
そこで、エンジン製造の最終工程で冷却水流路に実際に高圧水を流通させて流路近傍の巣の存在をチェックし、不適合成品をラインから排除している。また、冷却水流路以外でも巣の発生部位によっては同様の危険性があるため、それぞれ検査工程が設けられており、不適合製品はピックアップされ、廃棄されている。
【0004】
しかし、この製造工程では、エンジンを組み上げた後に各種の検査を行っているため、鋳造時に不適合が発生していてもエンジンの組み上げ工程が完了するまで不適合が判明しない。したがって、不適合品も一様に製造工程を通過しており、大変なコストロスが生じている。そこで、鋳造品内部に発生した巣の位置を初期段階で非破壊検査し、巣が製品性能に影響を与える部位に生じているか判断することができれば、欠陥エンジンを工程の早い段階で選別することができ、大幅なコストダウンにつながる。
【0005】
同様の問題は、エンジン製造に限らずあらゆる工業分野で課題となっている。そこで、X線や超音波を用いて試料内部の探傷を行う機器、システムが開発されている。従来はX線や超音波で得たサンプル画像を点検員が目視により検査していたが、最近は例えば特許文献1のようにデジタル画像を画像処理することにより自動で点検するシステムも提供されている。
【0006】
図5は特許文献1に開示された発明を説明する概念図である。X線源からサンプルにX線を照射し、イメージングプレート上に透過X線分布を得る。イメージングプレート上のX線分布をデータ処理用PCでA/D変換しデジタル画像化する。得られたデジタル画像を画像処理用PCで画像処理して評価し、サンプル内部の密度差や欠損を検出する。
このシステムによれば、微細な密度差や欠損を検出できるためより正確な検査が行える上、ライン上の工業製品を自動で検査することができるため、検査員が不要になり、コストを大幅に削減することができる。
【0007】
しかし、このシステムではX線の2次元画像による検査を行っているため、密度差や欠損の有無を検出できても、瑕疵の位置を特定することは困難である。X線検査装置を2基用いて縦横2方向からX線透過画像を得、2枚の2次元画像から3次元画像を再構成して瑕疵の位置を特定することも考えられるが、例えばサンプル内に同種の瑕疵が2箇所以上ある場合は位置の確定が不可能になる。
【0008】
そこで、同特許文献には、図6により説明されるX線CTを用いた非破壊内部検査システムも開示されている。開示発明のX線CT検査は、サンプルを回転させながらX線を照射することで1断面についてあらゆる方面からのX線透過画像を得、得られた多数の透過画像を再構成処理することで試料内部を1断面を詳細に映像化するものである。サンプルを断層的にCT撮影すると、サンプル内部の密度分布や欠損を非常に明確に検出できる。X線CT検査は工業的には半導体チップ等の内部検査に広く用いられるようになっている。
【0009】
【特許文献1】特開2001−201465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、X線CT検査はサンプルを様々な角度から撮影するために撮影時間が非常に長くかかる。現在の一般的な装置では1断面の画像を得るために数分かかるため、例えば30cmのサンプルを0.2mm刻みで撮影すれば数十時間必要になる。よって、数分あるいは数十秒での判別が要求されるライン検査に適用することは不可能である。
【0011】
そこで、本発明が解決しようとする課題はX線を用いた非破壊欠陥検査システムであって、内部の欠損や空孔の有無および位置を自動的に短時間で検出する非破壊欠陥検査システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の非破壊欠陥検査システムは、投影撮影装置と測距装置と演算装置とからなる。
投影撮影装置は線源、受像装置、画像処理装置で構成され、サンプルを差し挟む位置に線源と受像装置をそれぞれ配し、線源からサンプルおよび受像装置に向けて透過線を照射し、サンプル内を透過させて受像装置上に投影させて得た画像を画像処理装置によりデジタル画像として取り込み、画像処理を行ってサンプル内部の欠陥の有無および2次元的位置を算出する。
測距装置は波源と検出器からなり、波源からサンプル内部に向けて探傷波を発し、欠陥で反射されたエコーを検出器により検知して検出点から欠陥までの距離を測定するものである。本発明ではサンプルの表面に2個以上の測距装置を当接するように配置して2点以上の検出点を設け、それぞれの検出点から欠陥までの距離を測定する。
【0013】
演算装置は、画像処理装置により算出された2次元的位置から線源と欠陥を結ぶ直線を求め、この直線と測距装置により求めた検出点から欠陥までの距離とから欠陥の位置を算出する。演算装置は、欠陥の有無、個数およびその位置を提示する。
投影撮影装置に用いられる透過線は、サンプルの素材や形状により強光線やγ線、好ましくはX線が用いられる。また、測距装置に用いられる探傷波は、音波、衝撃波などが利用できるが、特に複数の探傷子を同時に使用するときは波長の選択性が良い超音波を利用するのが好ましい。投影撮影装置は2次元撮影装置を用いてもよいが、大型のサンプルを対照する際は2次元撮影装置も大型のものを使用すると装置が高額になるため、1次元撮影装置を用い、1次元撮影装置を走査して撮影することで2次元撮影を行ってもよい。
【0014】
本発明の非破壊欠陥検査システムでは、透過線による投影撮影により投影像として内部の欠陥の2次元的位置を検出している。この2次元的位置は線源と欠陥を結ぶ直線が受像装置に到達する位置として得られる。したがって例えば欠陥が1カ所の場合、投影撮影により欠陥が検出された受像装置上の2次元的位置と線源とを結ぶ1本の直線が得られ、その直線上のどこかに欠陥が存在することがわかる。
【0015】
また、測距装置は反射波を使って検出点から欠陥までの距離を測定するものである。したがって欠陥があると、欠陥毎に検出点を中心とし測定距離を半径とする1個の球が得られる。その球上に欠陥が存在する。測距装置を2個用いた場合、異なる2点の検出点から欠陥までの距離を測定するため、それぞれの測距装置について球の方程式が1個ずつ得られ、2個の球の方程式の共通解として欠陥が存在する円の方程式が算出される。
【0016】
したがって、投影撮影により得られた直線と探傷により得られた円の交わる点として欠陥の存在位置を算出できる。算出結果をサンプル上に置き直すことでサンプル内部の欠陥の位置を確認できる。
なお、欠陥と測定装置との相対的位置によっては、投影撮影により得られる直線が探傷により得られた円を含む面の上に来て探傷円と2点で交わり欠陥の位置が一意に決められないことがある。このようなケースはまれであるが、探傷円の面に透過線が一致し難くするためには、2個の測距装置はサンプルの対向面に対称的に配置するより、前後に位置をずらしたり、同じ面に並べて配置するなど、適切な配慮をすることが好ましい。
また、欠陥は大きさをもつため、投影撮影により得られた直線の方程式と2個の測距装置により得られた2本の球の方程式は厳密には共通解を持たない。したがって、位置の算出には欠陥の大きさに相当する許容範囲を持たせている。
【0017】
なお、上に説明した手法では、初めに2つの測距装置から得た距離情報に基づいて欠陥が存在する可能性のある円を算出して、その後に投影撮影装置から得られた線源と欠陥を通る直線との交点を求めているが、初めに1つの測距装置により得られた欠陥が表面に存在する球と線源と欠陥を通る直線との交点を求め、次にもう1個の測距装置により求められた球が通る方の交点を欠陥が存在する真の交点と判断する方法など、色々の解法がある。
【0018】
欠陥が2個以上ある場合は、投影撮影装置、測距装置ともに最大で欠陥の個数分の結果が得られる。しかし、各測距装置で得られた距離情報はそれぞれどの欠陥に対応するかは分からない。そこで、投影撮影装置、2個の測距装置により得られた方程式のすべての組み合わせについて計算を行い、共通解を持つ組み合わせを見出すことにより、同一の欠陥を表す式と判断する。
例えば、欠陥が欠陥1、欠陥2の2個の場合、投影撮影装置により欠陥1、欠陥2それぞれを表す直線式A1,A2が得られる。また、2個の測距装置より球B1,B2,C1,C2が得られる。この時点では、測距装置から得られる球がどの欠陥に係るものかの判断は出来ない。3個の検査デバイスから得られた式A1〜C2からそれぞれのデバイスごとに式を選出すると8通りの組み合わせが得られる。このすべての組み合わせについて共通解の計算を行うと、[A1,B1,C1]、[A2,B2,C2]の2通りの組み合わせについて互いに重なる共通解が得られる。この2個の共通解が欠陥の存在位置である。
【0019】
実計算上は、まず投影撮影装置から得られた方程式と1方の測距装置から得られた方程式の共通解を求め、得られたそれぞれの解について、もう1方の測距装置から得られた方程式の解となりうるかを判定して結果を判断すればよい。
例えば3個の検査デバイスから得られた式A1〜C2の中から欠陥の位置を検出する場合、1例としてまずA1とB1の共通解を算出し、得られる2個の共通解についてそれぞれC1およびC2の解となりうるかを計算することで、3本の方程式の共通解を算出する。共通解が存在する3本の方程式の組み合わせが同一の欠陥を示す方程式である。
【0020】
欠陥は3次元的に分布しているので、欠陥の数が少ない場合は実際に欠陥が存在しない組み合わせで共通解が存在する可能性はほとんど無い。また、解がサンプル内部に存在するかを検討することで、大抵の偽の解を排除することができる。したがって、実用上は2個の測距装置を用いれば十分である。しかし、ポーラスセラミック材料など気孔を多量に含んでいるサンプルを用いる場合や、非常に小型のサンプルを検査する場合など、偽の解が発生するおそれがある場合は測距装置を3個以上に増やして検査を行うことで偽の解の発生を回避することができる。
【0021】
なお、投影撮影装置は透過線がサンプルを通過する際の吸収・散乱係数の差を用いてサンプル内部の欠陥を検出するものである。受像装置上に投射された透過線の投影画像を、A/D変換して例えば各画素につき10ビット程度のデジタル画像データに変換して画像処理装置に取り込み、画像処理装置上で画像解析を行い、透過線の濃度差を基にサンプルの形状と区別することにより、欠陥の有無と位置を判断する。
【0022】
この際、画像処理装置にあらかじめ欠陥のないマスター画像データを格納しておき、検査により得られたサンプル画像とマスター画像の差分を取って欠陥を検出すると、微少な欠陥も明確に検出できる。マスター画像は、欠陥を持たないサンプルを特別に作製して撮影することで得られるが、多数のサンプル画像の平均を取ることで欠陥を平準化して得ることもできるし、欠陥を持つサンプル画像から欠陥部分を差し引いて欠陥が存在しないマスター画像を得ることもできる。
【0023】
また、測距装置により検出する探傷波データには、欠陥のほかにサンプル外壁から反射するエコーや、サンプル内部の正常な空孔から反射するエコーも含まれるため、多量のエコーの中に欠陥エコーが埋没して検出が困難になることがある。したがって、測距装置をサンプル上の定められた位置に設置して検査を行い、サンプルデータと欠陥のないサンプルや平準化演算などから得られるマスターデータの差分を取って欠陥エコーを明確化するとよい。
【0024】
上記のように本発明の非破壊欠陥検査システムによれば、サンプル内部の欠陥の位置を自動で算出することができる。また、透過線による単純撮影および探傷波による探傷のみで結果を得ることができるため、数十秒程度で検査が完了する。したがって、本発明の非破壊欠陥検査システムを用いれば、検査時間およびコストを大幅に削減することができる。
【0025】
また、本発明の非欠陥検査システムに、欠陥が生じると問題になる部位をあらかじめ設定しておき、かかる部位に欠陥が生じている時だけ不適合信号を発出するようにするとより便利である。例えば検査対象がアルミニウム製汎用機エンジンの場合、冷却水流路の近傍など欠陥としての空孔が生じると問題になる部位が限られ、他の部位に空孔が生じていても製品としてのエンジンの性能に影響を与えない。したがって、問題となる部位に欠陥が存在する時のみ不適合信号を発出させることで、欠陥製品のみをラインから排出することができる。
本発明の非欠陥検査システムを製造ライン上に設置し、欠陥を検出した際に欠陥製品を排除する手段を備えれば、インラインで非破壊検査を行い、自動的に不適合製品をラインから排除することができる。
【0026】
特に、汎用機エンジンの製造ラインにおいて、アルミニウムの鋳造工程の下流に本発明の非破壊欠陥検査システムを配置すると、鋳造アルミニウム内に欠陥として発生する空孔の有無および位置を早期に検出することができる。したがって、エンジンの性能上問題となる欠陥が鋳造アルミニウムに生じていた場合に、その後の組み立て工程に進む前に欠陥を検出し排除することができるため、無駄な組み立てを行う必要が無くなり、コストを大幅に削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、実施例を用いて本発明の非破壊欠陥検査システムを詳細に説明する。
図1は本実施例の非破壊欠陥検査システムの原理を示す略式平面図、図2はその略式立面図である。本実施例はX線を用いた投影撮影装置と超音波を用いた測距装置とからなる非破壊欠陥検査システムである。
サンプル1を差し挟む位置にX線源2とX線検出器3を配し、また、サンプル1に超音波探傷子4,5を当接するように配置する。X線検出器3には画像処理装置6が付属し、演算装置7が画像処理装置6と超音波探傷子4,5に接続されている。演算装置7は表示装置を備え、演算結果は表示装置を介してオペレータに提示される。また、製造装置のインライン検査装置として使用されるときには、演算結果は製造装置の制御装置に送信される。
【0028】
なお、画像処理装置6と演算処理装置7はそれぞれその全てあるいは一部を同じ電子計算機内に構成することができる。また、超音波探傷子4,5の検出回路もソフトウエア化して同じ電子計算機内に置くことができる。
X線源2から照射されたX線はサンプル1を透過してX線検出器3に投射される。X線検出器3で検出されたX線濃度はA/D変換され、例えば各画素につき10ビット程度のデジタル画像データとして画像処理装置6に入力される。超音波探傷子4,5は検出命令があると超音波をサンプル内に発射し、エコーを検出し、応答時間に基づいてターゲットまでの距離を算出して検出データを演算装置7に入力する。
【0029】
画像処理装置6にはあらかじめ欠陥のないサンプルのX線投影画像データおよび探傷エコーデータが記憶してある。画像処理装置6は、画像データおよびエコーデータが入力されると、あらかじめ記憶されたデータと入力されたデータの差分をとり、差が大きい部位を検出する。
サンプル内に異物あるいは空孔などの欠陥8が存在する場合、サンプル1を組成する物質と欠陥部分8とでX線の透過係数が異なるため、X線検出器3に投射されるX線の濃度差があらわれる。この濃度差を持つ部位がX線検出器3に投影され濃淡差信号9として表われ、欠陥8が存在する位置の2次元表現となる。また、異物や空孔などの欠陥8が存在すると、サンプル組成物質と欠陥部の境界部分で超音波が反射されるため、超音波探傷子4,5において超音波エコーとして欠陥8の存在が検出され、探傷子4,5と欠陥8の距離が算出される。
【0030】
図3はサンプル1の断面上に検出結果を模式的に表した概念図である。
X線検出器3からのX線投影画像データでは、X線検出器3上のX線濃度差として欠陥が存在する2次元的位置9が表出される。これは、サンプル1内部であって、X線検出器3上に検出された2次元的位置と線源2を結ぶ直線10上のいずれかの位置に欠陥が存在することを示している。
また、超音波探傷子4,5からの探傷データでは、探傷波エコーの帰還時間すなわちそれぞれの探傷子から欠陥までの距離が検出される。これは、探傷子を中心とし得られた距離を半径とする球11,12上に欠陥が存在することを示している。
【0031】
したがって、X線検出器3により得られた直線10上であり、かつ2個の超音波探傷子4,5で得られた2個の球11,12の表面上にある点に欠陥が存在することになる。本実施例の非破壊欠陥検査システムは、この条件に従い、X線検出器3および超音波探傷子4,5から得られる存在可能点を全て満たす点を算出することで欠陥の存在位置を検出するものである。
【0032】
図3に示すように、X線検出器3の測定結果から、欠陥8を投影した2次元的位置9とX線源2を結んだ直線10が得られる。また、第1の超音波探傷子4での検査により超音波探傷子4を中心とし検出された距離を半径とする球11が、同様に第2の超音波探傷子5により球12が得られる。直線10、球11、球12の交点13が欠陥が存在する位置である。したがって、直線10、球11、球12を表す方程式の共通解を求めることで欠陥の存在位置を算出できる。
【0033】
サンプル内の欠陥が1個の場合は、上記の方法で欠陥の存在位置を算出できる。しかし、欠陥が複数存在する場合は、X線検出器3、第1超音波探傷子4、第2超音波探傷子5それぞれについて最大で欠陥の個数分の直線、球の方程式が存在する。この時点では、それぞれの方程式がどの欠陥に対応するかは未確定である。
図4は複数の欠陥が存在するときの処理手法を説明する概念図である。
例えば欠陥が2個存在する場合、図4に示した通り、X線検出器3により2つの直線20,21が、第1超音波探傷子4により2つの球22,23が、第2超音波探傷子5により2つの球24,25がそれぞれ得られる。この場合は、直線20が、第1超音波探傷子4により得られた2つの球22,23の両方と交わっており、どちらの交点が欠陥を示す解となるのか判断することができない。そこで、第2超音波探傷子5により検知された2つの球24,25についても同じ位置に交点を持つかを判定して真の欠陥の位置を確認する。
【0034】
まず、直線20の方程式と第1の球22の方程式、第2の球23の方程式それぞれの共通解26,27を計算する。続いて、得られた第1の共通解26と第2の共通解27のそれぞれについて、第2超音波探傷子5により得られる2つの球24,25の解となりうるかを順に検証する。図4中では、直線20と第1の球22の第1共通解26が第2超音波探傷子による第4の球25の解となっており、この第1共通解26が欠陥の存在位置を示している。それ以外の組み合わせ[第1共通解26、第2超音波探傷子による第3の球24]、[第2共通解27、第3球24]、[第2共通解27、第4球25]については球の表面上に共通解が存在しないので、実際の欠陥を示さない偽の解と判断できる。
他の直線についても同様に計算を行い、全ての欠陥を検出する。図4上では第2の直線21は第2球23、第3球24と1点で交わっていて他の位置では球と交差していないため、交点28が欠陥の位置を示していることに疑いがないが、直線が球との交点を複数有する場合は同様に検証を行って欠陥の存在位置を決定する。なお、1本の直線が1個の球と2点で交わっている場合でも同様の解法で存在位置を確定できる。
【0035】
図5は本実施例におけるアルゴリズムに従った検査手順のフロー図である。
検査開始指令により検査が開始され(S1)、サンプル1の位置が検出器に対して適正かを判断する(S2)。位置が正しくない場合は処理を中断し、画面にサンプル1のセッティングをやり直すよう表示する(S3)。
サンプル1の位置が適正である場合は演算装置7から各検出器に計測開始指令を発出する(S4)。計測開始指令によりX線源2からサンプル1に向けてX線を照射し(S5)、X線検出器3がX線を検出し(S6)、結果を演算装置6に転送する(S7)。同様に超音波探傷子4,5でそれぞれ超音波エコーの検出を行い(S8、S10)、結果を演算装置7に転送する(S9、S11)。
【0036】
演算装置7では、3個の検出装置からデータを得(S12)、あらかじめ記憶してある欠陥がないサンプルのX線投影画像データおよび探傷エコーデータとの差分を取って演算を行い(S13)、欠陥の有無を判断する(S14)。欠陥がなければ欠陥がない旨を画面に表示し、処理を完了する(S15)。
欠陥がある場合は、演算装置7によりX線検出器3からの検出結果デジタル映像を基に欠陥が存在する可能直線を算出し、データαとする(S16)。続いて超音波探傷子4,5からの超音波エコーデータを基に超音波探傷子から欠陥までの距離を算出し、データβ、γとする(S17、S18)。データα〜γから欠陥の存在位置を算出し(S19)、処理を完了し画面に欠陥の存在位置を表示する(S20)。
【0037】
以上のように、本実施例の非破壊欠陥検査システムでは、X線検出器3、複数の超音波探傷子4,5からの検出結果を基にサンプル1内部の欠陥の位置を算出する。本実施例の非破壊欠陥検査システムは、サンプルを固定したまま1回のX線照射及び2点以上の検出点からの超音波探傷により内部検査を行うものであるため、非常に迅速に検査結果を得られる。1回の検査に要する時間は数十秒以下になる。また、検出開始から欠陥位置の算出までを全て演算装置が統率するため、点検員の負担が効果的に軽減される。
【0038】
さらに、本実施例の非破壊欠陥検査システムでは、欠陥の有無だけでなく欠陥の存在位置も特定することができる。したがって、例えばアルミニウム製汎用エンジンなど、欠陥の位置により製品の適合不適合が分かれる製品の点検に非常に適しており、その応用範囲は工業全般に及ぶ。
【0039】
本実施例の非破壊欠陥検査システムを製造ラインに組み込むと効率的に欠陥検査を行うことができる。本態様の製造ラインは、非破壊欠陥検査システムとサンプルの排除手段を備え、非破壊欠陥検査システムの検出結果をラインにフィードバックしてライン上の製品の選別をする。
サンプルがライン上流から非破壊欠陥検査システムの検査領域に流れてきたら、サンプルの位置調整を行い、検出器をセットする。サンプルの位置決めが完了したらX線及び超音波で内部検査を行い、欠陥がなければライン下流に搬出する。欠陥があれば欠陥存在位置の検定を行う。あらかじめ欠陥の存在を容認できない領域を指定しておき、欠陥がかかる範囲内にある場合はサンプルを不適合品として選別し除外し、これ以外の部位にある場合はサンプルを適合品としてライン下流に搬出する。
このように本態様の製造ラインは、組立前にサンプルの非破壊内部検査を行い、不適合品があれば自動的にラインから排除することができるので、無駄な組立作業を省いて効率よく製品の製造を行うことができる。
【0040】
以上詳細に説明したとおり、本実施例の非破壊欠陥検査システムによれば内部の欠損や空孔の有無および位置を自動的に短時間で検知することができる。また、本実施例の非破壊欠陥検査システムを製造ラインに設置すれば、サンプルの非破壊内部検査をインラインで行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施例の非破壊欠陥検査システムの略式平面図である。
【図2】本実施例の非破壊欠陥検査システムの略式立面図である。
【図3】サンプルの断面上に検出結果を模式的に表した概念図である。
【図4】サンプルの断面上に検出結果を模式的に表した別の概念図である。
【図5】本実施例の非破壊欠陥検査システムの検査手順を表すアルゴリズム図である。
【図6】従来発明の非破壊欠陥検査システムを説明する概念図である。
【図7】従来発明の他の態様の非破壊欠陥検査システムを説明する概念図である。
【符号の説明】
【0042】
1 サンプル
2 X線源
3 X線検出器
4 超音波探傷子
5 超音波探傷子
6 画像処理装置
7 演算装置
8 欠陥
9 欠陥の2次元位置表示
10,20,21 直線
11,12,22,23,24,25 球
13 交点
26,27 共通解
28 交点
S1〜S20 ステップ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
線源と受像装置と画像処理装置を備えて透過線でサンプルの内部を投影撮影する投影撮影装置、欠陥までの距離を検知する測距装置、および演算装置からなる非破壊欠陥検査システムであって、前記サンプルを差し挟む位置に前記線源と前記受像装置をそれぞれ配し、該受像装置が該線源から発し該サンプル内を透過した透過線を受信して2次元透過像を得て、前記画像処理装置が該透過像を画像として取り込んで前記欠陥の2次元的位置を算出し、前記測距装置を前記サンプルの表面位置に2個以上当接させて2個以上の検出点とし、該測距装置が該検出点から前記欠陥までの距離を検出し、前記演算装置が前記投影撮影装置により得られた前記欠陥の2次元位置に基づいて該欠陥と前記線源を結ぶ直線を求めて、該直線と前記測距装置により得られた前記検出点から前記欠陥までの距離に基づいて該欠陥の位置を算定して提示することを特徴とする非破壊欠陥検査システム。
【請求項2】
前記投影撮影装置がX線を利用して前記サンプル内部の透過像を得るものであることを特徴とする請求項1に記載の非破壊欠陥検査システム。
【請求項3】
前記X線による投影撮影装置が1次元X線検出器であり、該1次元X線検出器を走査することにより前記サンプルの2次元透過像を得ることを特徴とする請求項2に記載の非破壊欠陥検査システム。
【請求項4】
前記画像処理装置に欠陥のない標準サンプルの透過像を記憶しておき、検査によって得られた透過像と記憶された標準サンプルの透過像との差分を得ることで欠陥の位置を算出することを特徴とする請求項1から3に記載の非破壊欠陥検査システム。
【請求項5】
前記測距装置が超音波探傷子であることを特徴とする請求項1から4に記載の非破壊欠陥検査システム。
【請求項6】
前記測距装置を前記サンプルに対して相対的に定められた位置に付設し、欠陥のない標準サンプルの探傷データを記憶しておき、検査によって得られた探傷データと記憶された標準サンプルの探傷データの差分を得ることで前記検出点から該欠陥までの距離を検出することを特徴とする請求項1から5に記載の非破壊欠陥検査システム。
【請求項7】
前記サンプル内部の特定の部位をあらかじめ登録しておき、該特定の部位に該欠陥が生じているか否かを判定することを特徴とする請求項1から6に記載の非破壊欠陥検査システム。
【請求項8】
請求項1から7に記載の非破壊欠陥検査システムを製造ライン上に備え、インラインで製品の非破壊欠陥検査を行うことを特徴とする製造ライン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−189349(P2006−189349A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−1955(P2005−1955)
【出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】