説明

非還流型反応器ストリッパー

少なくとも1種の有機化合物を含有する供給ストリームを触媒的に処理するためのプロセスであって、蒸留反応システムであって、この蒸留反応システムの頂部に配置された反応区画と、リボイラおよび/またはガスストリッピング区画とを有する蒸留反応システムを準備するステップであって、このリボイラおよび/またはガスストリッピング区画は、残留物ストリームの少なくとも一部分を気化させて上記残留物ストリームの気化された部分を上記蒸留反応システムの底部に戻すためのものであるステップと、有機物供給ストリームを上記最上部の反応区画の下で蒸留反応システムに導入するステップと、必要に応じて、ガス状反応物質供給ストリームを上記反応区画の最上部の下で上記蒸留反応システムに導入するステップと、オーバーヘッド生成物ストリームの実質的な還流もしくは再循環なく、または所望の生成物を再循環させる可能性があるあらゆる他の液体ストリーム、もしくは還流させることが望ましくない任意の他の化合物を上記最上部の反応区画に供給することなく、オーバーヘッド生成物ストリームを上記最上部の反応区画の上の上記蒸留反応システムの一部から除去するステップとを含む、プロセスが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物の触媒的蒸留用装置、より具体的には、少なくとも1種の有機化合物を含有する供給ストリームを触媒的に処理するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
同時に化学反応を実施して、反応生成物を分離するために蒸留塔内で触媒を使用することはかなり長い間行われてきた。この触媒的蒸留塔反応器の使用は、液相での可逆反応に対して特によく役に立つ。この組合せは、沸点差から生じる分別蒸留によって液相の反応物質から反応生成物を迅速に分離することに起因して、有用である。従って、逆反応は抑制される。それは、生成した1種以上の化合物が、それが反応混合物中に留まると悪影響を引き起こす液相反応に対しても有用である。それゆえ、かかる成分を迅速にその反応混合物から除去することが有益である。
【0003】
反応混合物の選択された成分を触媒的蒸留において反応帯から除去することは、それら成分の相対的な揮発性物が大きく異なる場合には、迅速である。しかしながら、この利点は、より高い揮発性成分を反応帯に戻す分留の還流によって、またはより低い揮発性成分を反応帯に戻すリボイラによって、その選択された成分が反応帯へと戻ることで、かなりの程度、減少される可能性がある。それら成分の相対的揮発性が1.0に近い場合は特にそうである。
【0004】
例示的な用途では、ますます厳しくなる規制が、モーター用燃料から芳香族化合物を除去するための精製装置に対して圧力をかけている。直鎖炭化水素を高オクタン、分枝パラフィンへと骨格異性化することは、芳香族化合物の除去に伴うオクタン損失を補うための有効なルートである。n−ヘプタンまたはモノ分枝C7パラフィンを、モーター用燃料のオクタンに良好な寄与を提供するために使用することができるジ分枝C7パラフィンまたはトリ分枝C7パラフィンに変換することは望ましい。例えば、下の表1は、C7パラフィンについてのオクタン価(RON)を示す。
【0005】
表1
【表1】

【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、n−ヘプタンの異性化は、多くの理由から困難であることが分かっている。第1に、このC7異性体の揮発性がn−ヘプタンの揮発性に近く(表1を参照)、このため分離がより困難となる。第2に、従来の異性化触媒は、そのC7化合物の望ましくないクラッキングを生じる傾向もある。所望の異性体を蒸留反応システム(distillative reaction system)容器からより速く分離および除去することを提供する蒸留反応システムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
少なくとも1種の有機化合物を含有する供給ストリームを触媒的に処理するためのプロセスが本願明細書に提供される。このプロセスは、(a)蒸留反応システムであって、この蒸留反応システムの頂部に配置された少なくとも1つの最上部の反応区画と、リボイラおよび/またはガスストリッピング区画とを有する蒸留反応システムを準備するステップであって、このリボイラおよび/またはガスストリッピング区画は、残留物ストリームの少なくとも一部分を気化させてこの残留物ストリームの気化された部分を上記蒸留反応システムの底部に戻すためのものであるステップと、(b)有機物供給ストリームを上記最上部の反応区画の下で上記蒸留反応システムに導入するステップと、(c)任意の生成物含有ストリームの実質的な還流もしくは再循環なく、または還流させることが望ましくない任意の他の化合物を上記最上部の反応区画に供給することなく、オーバーヘッド生成物ストリームを上記最上部の反応区画の上の上記蒸留反応システムの一部から除去するステップとを含む。必要に応じて、ガス状反応物質供給ストリームは、またはこの最上部の反応区画の下でこの蒸留反応システムに導入することができる。
【0008】
このプロセスは、有利に、高揮発性成分が反応区画の最上部の部分に戻ること、および所望の生成物の結果として起こる望ましくないクラッキングを防止する。
【0009】
本発明の種々の他の特徴、態様、および利点は、以下の例示的な実施形態の詳細な説明および添付の特許請求の範囲を参照して、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の例示的実施形態の概略的なプロセス流れ図である。
【図1A】本発明の別の例示的実施形態の概略的なプロセス流れ図である。
【図1B】本発明の別の例示的実施形態の概略的なプロセス流れ図である。
【図2】本発明のさらに別の例示的実施形態の概略的なプロセス流れ図である。
【図3】本発明のさらに別の例示的実施形態の概略的なプロセス流れ図である。
【図3A】本発明の別の例示的実施形態の概略的なプロセス流れ図である。
【図4】本発明のなおさらに別の例示的実施形態の概略的なプロセス流れ図である。
【図4A】本発明の別の例示的実施形態の概略的なプロセス流れ図である。
【図4B】本発明の別の例示的実施形態の概略的なプロセス流れ図である。
【図5】本発明のさらに別の例示的実施形態の概略的なプロセス流れ図である。
【図6】本発明のさらに別の例示的実施形態の概略的なプロセス流れ図である。
【図6A】本発明のなおさらに別の例示的実施形態の概略的なプロセス流れ図である。
【図7】本発明のさらに別の例示的実施形態の概略的なプロセス流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明では、類似の数字は本発明の類似の特徴を表す。
【0012】
本発明の例示的実施形態によれば、少なくとも1種の有機化合物を含有する供給ストリームを触媒的に処理するためのプロセスであって、蒸留反応システムであって、この蒸留反応システムの頂部に配置された反応区画と、リボイラおよび/またはガスストリッピング区画とを有する蒸留反応システムを準備するステップであって、このリボイラおよび/またはガスストリッピング区画は、残留物ストリームの少なくとも一部分を気化させて上記残留物ストリームの気化された部分を上記蒸留反応システムの底部に戻すためのものであるステップと、有機物供給ストリームを上記最上部の反応区画の下で蒸留反応システムに導入するステップと、必要に応じて、ガス状反応物質供給ストリームを上記反応区画の最上部の下で上記蒸留反応システムに導入するステップと、オーバーヘッド生成物ストリーム、または所望の生成物を再循環させる可能性があるあらゆる他の液体ストリームの実質的な部分をまったく還流させることなく、または還流させることが望ましくない任意の他の化合物を上記反応区画の最上部の部分に供給することなく、オーバーヘッド生成物ストリームを上記反応区画の上の上記蒸留反応システムの一部から除去するステップとを含む、プロセスが提供される。
【0013】
ここで図1のプロセス流れ図を参照すると、本発明の例示的実施形態は、少なくとも1種のパラフィンの異性化のための蒸留反応システム10を含むシステム101備える。蒸留反応システム10は、反応区画11の上で任意の実質的な還流がない反応区画11を備える。この反応区画11は、少なくとも1つの触媒床を備える。
【0014】
この例示的な応用のために適切な触媒は、所望の反応に対して適切であることが当該技術分野で公知の任意の従来の触媒であってよい。例えば、パラフィンの異性化のための有用な触媒は、式
1/R4/R2−R3
(式中、R1は金属、金属合金、またはバイメタル系であり、R2は任意の金属ドーパントであり、R3は金属酸化物または任意の金属酸化物の混合物であり、R4はWOx、MoOx、SO4-2またはPO4-3であり、xは2もしくは3、またはそれらの間の任意の分数である)に対応する。この種の触媒は、米国特許第6,767,859号に開示され記載されている。この特許文献の内容全体を参照により本願明細書に援用する。
【0015】
この触媒は、任意の適切な形態(例えば粉末、ペレット、リング、押し出し成形品、球など)にあってもよい。本発明の例示的実施形態によれば、反応区画11の触媒床は、蒸留「パッケージング」になっている触媒の固定床である。
【0016】
異性化できる少なくとも1種のパラフィンを含む炭化水素供給は、供給ストリームF−1および/またはF−2を介して蒸留反応システム10に導入される。少なくとも1種のパラフィンを含む炭化水素供給は、液体および/または蒸気として蒸留反応システム10に導入することができる。このパラフィンは、モーター用燃料のためのオクタン寄与(contribution)を得るための異性化のこの例では、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、3−エチルペンタン、あるいはC5、C6、C7、C8、および/もしくはC9、C10、C11のノルマルパラフィンまたは一置換パラフィンのいずれかからなる群から選択されてよい。
【0017】
この異性化の例では、ストリッピングガスとしての役割も果たすガス状反応物質供給H2(これは、他の構成成分も含んでよい)は、供給ストリームF−2および/またはF−1を介して蒸留反応システム10に供給される。
【0018】
残留物ストリーム21は、蒸留反応システム10の下方部分から引き抜かれ、リボイラBに送られ、そこでこの残留物ストリームの少なくとも一部分は気化されて、ライン22を介して蒸留反応システム10の下方部分に戻される。残留物ストリーム21の気化されなかった部分は、ライン23を介して液体として引き抜かれてよい。
【0019】
オーバーヘッドストリーム24は、蒸留反応システム101の頂部から引き抜かれる。しかしながら、オーバーヘッドストリーム24の任意の実質的な部分の還流は起こらない。つまり、より高揮発性の所望の生成物の出口を邪魔することを回避するため、および所望の生成物の任意の望ましくない反応(例えば、クラッキング)を最小にするために、オーバーヘッドストリーム24は実質的にまったく蒸留反応システムの頂部に戻されることはなく、凝縮および内部還流を引き起こす実質的な冷却もまったくなく、反応区画11への還流の戻り(reflux down)を引き起こすようなやり方で反応区画11の上に供給される実質的な他の液体ストリームもまったくない。
【0020】
この異性化プロセスは、典型的には、n−ヘプタンなどのn−パラフィンをモノ分枝イソヘプタンに変換する。このモノ分枝イソヘプタンは、さらに、ジ分枝C7パラフィンおよびトリ分枝C7パラフィンへと異性化される。
【0021】
例として、F−1および/またはF−2の供給ストリームは、n−ヘプタン(付随する化合物も含まれる)である。残留物ストリーム21は、未反応のn−ヘプタンおよび非常に少量の重質の反応副生成物およびn−ヘプタンほどに重質であるかまたはそれより重質であった任意の供給化合物(例えば、ジメチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、トルエン、C8+炭化水素)、およびある量の、n−ヘプタンよりもわずかに軽質の炭化水素(例えば、メチルヘキサン)を含有する。リボイラは、ストリーム22を、ストリーム21中のより軽質の化合物(すなわち、ジメチルシクロペンタン、メチルヘキサンおよびさらに軽質のもの)とともに、所望量のn−ヘプタン(リボイリングが増加する場合にはより高い割合(%)が戻される)を含んで戻し、他方で最も重質の化合物をストリーム23で送り出す。ストリーム23は、n−ヘプタンよりも重質の化合物(重質の反応副生成物、C8+炭化水素、トルエン、メチルシクロヘキサン)、いくらかの量のn−ヘプタンおよびさらに何らかの量のメチルヘキサン(およびエチルペンタンおよびジメチルシクロペンタン)を含み、極端な「全リボイル」では、ストリーム23は、ゼロフローとなる可能性があり、ストリーム22は、ストリーム21のすべてを蒸留反応システム10に戻す。最も軽質の化合物は蒸留反応システム10を登り、ストリーム24を通って離れる。これは、残存するH2、軽質のクラッキング生成物(主に、プロパンおよびイソブタン)、C5−C7イソパラフィン(最も所望の多種のイソヘプタン生成物を含み、これらは蒸留反応システム10の頂部から素早く除去することが求められる)、任意のn−ペンタン、n−ヘキサン、ベンゼンおよびシクロヘキサン、加えて何らかの量のメチルヘキサン(およびエチルペンタンおよびジメチルシクロペンタン)およびさらにはいくらかのn−ヘプタンを含む。C7パラフィンについて表1に列挙された沸点から、2,3−ジメチルペンタンは2−メチルヘキサンと一緒に蒸留されることが分かる。
【0022】
オーバーヘッド生成物、または所望の生成物を再循環させる可能性がある任意の他の液体ストリーム、または還流させることが所望されない任意の他の化合物の実質的な還流がなく蒸留反応システムで異性化プロセスを実施することで、生成物は素早く除去され、これにより、実質的な望ましくないクラッキングが防止される。(n−パラフィンからモノ分枝イソパラフィンへの)第1の反応ステップの生成物の一部分を戻すことが所望されるかも知れないが、このプロセスは、還流が実施される場合よりも(モノ分枝化合物からジ分枝化合物およびトリ分枝化合物への)第2のステップに対して良好な結果をもたらす。
【0023】
さらに、反応区画をオーバーヘッド還流と連結していないことで、反応条件を最適化するためのより多くの融通性が得られる。例えば、還流およびリボイルの両方を伴う従来のプロセスでは、分留塔の中心部での混合物の気化の割合(%)は、分留機能に固有の相対的に狭い範囲(約50%)に限定されるであろう。実質的な還流がない本発明の操作は、例えば、10%〜80%の任意の気化レベルで行うことができ、例えば70%〜80%の高気化レベルでは、(a)流体力学的恩恵、および(b)気相へのそして反応帯から外へのより高い揮発性成分(例えば、生成物であるイソヘプタン異性体)の高められた移動の両方に起因して、改善された反応結果を提供することができる。より低い揮発性成分(例えば、供給n−ヘプタン)は、液相でより濃縮され、それらの反応はより高い揮発性成分の反応よりも高まる。高沸騰性の混合相系は、液相と気相との間の、およびまた乱れによって引き起こされる強い混合による液相内での物質移動の高まりに起因して、動きの少ない混合相系よりも流体力学的に有利である(より強固な反応を提供する)。圧力、温度、異なる供給の比率などの反応条件もまた、蒸留条件に適合するように制約されずに、最適化することができる。
【0024】
あるいは、図1Aに示すように、システム102は、リボイラBの代わりにガスストリッピング区画13を有する蒸留反応システム10Aを備える。
【0025】
ストリッピング区画13は、泡鐘段(bubble cap tray)、網目板などの1種以上の段を備えてよい。蒸留塔に適切な段は当該技術分野で周知であり、それらを本発明で用いることができる。あるいは、ストリッピング区画13は、不活性材料(セラミックまたは金属リング、鞍型(saddle)、ペレット、構造化されたパッキングなど)が充填された床であってよい。
【0026】
ストリッピングガスは、供給ストリームF−1を介する可能なさらなるガスとともに、供給ストリームF−2を介して蒸留反応システム10Aに導入される。ガス状反応物質供給は、供給ストリームF−2および/またはF−1を介して1つ以上の場所で蒸留反応システム10Aに導入されてよい。好ましくは、このガス状反応物質供給の実質的にすべて、または少なくとも一部分は、ストリッピング区画13の底部、もしくはその下で蒸留反応システム10Aに導入され、ストリッピングガスならびに異性化反応物質としての機能を果たす。
【0027】
少なくとも1種のパラフィン系炭化水素を含む1種以上の炭化水素供給ストリームは、供給ストリームF−1および/またはF−2を介して蒸留反応システム10Aに導入される。炭化水素供給ストリーム(複数も可)のすべてまたは一部分は、ストリッピング区画13の頂部、下、または中間部で蒸留反応システム10Aに導入することができる。炭化水素供給ストリーム(複数も可)の好ましい位置(複数も可)は、そ(れら)の組成に依存する。供給ストリーム(複数も可)F−1およびF−2は、液体(複数種も可)および/または蒸気(複数種も可)として導入することができる。
【0028】
必要に応じて、側方ストリーム(複数も可)(示さず)を使用して、ストリッピング帯13の頂部、中間部および/または底部などの位置で蒸留反応システム10Aから、選択された炭化水素成分(複数種も可)を引き抜くことができる。
【0029】
図1Bを参照すると、別の例示的な実施形態によれば、システム103は、ストリッピング区画13を有する蒸留反応システム10Aを備え、またリボイラBも有する。
【0030】
図2を参照すると、さらに別の例示的な実施形態によれば、システム104は、(システム101−103のいずれかのように)ストリッピング区画13および/またはリボイラBを有する蒸留反応システム10Aを備え、さらに、第1の流出液26および第2の流出液27が引き抜かれるところであるオーバーヘッド流出液分離器25を備える。蒸留反応システム10Aからのオーバーヘッドストリーム24は、反応区画11の上での実質的な還流はまったくなしにオーバーヘッド流出液分離器25に送られる。オーバーヘッド流出液分離器25、および後述する流出液分離器のいずれかは、蒸留塔、モレキュラーシーブなどであってよい。第1の流出液26は、所望の生成物を含有する。第2の流出液27は、未変換のおよび/または部分的に変換されたパラフィンを含有する。それは、オーバーヘッド流出液分離器25から引き抜かれ、反応区画11の下で供給ストリームF−1を介して蒸留反応システム10Aに戻される。あるいは、第2の流出液27は、(他の供給とは別に)供給ストリームF−2またはF−3を介して戻される。
【0031】
図3に示すように、別の実施形態では、システム105は、ストリッピング区画13および/またはリボイラBを有し、(システム101−104のいずれかのような)オーバーヘッド流出液分離器25を有するかまたは有しない蒸留反応システム10Aを備え、さらに、ストリーム23を介してリボイラBに連結された別の(残留物)流出液分離器30を備える。残留物流出液分離器30は、第1の流出液31および第2の流出液32を含む。第1の流出液31は、低揮発性供給および/またはパージされる必要がある副生成物化合物を含む。第2の流出液32は、さらなる反応のために再循環することが求められ、かつF−1および/またはF−2(またはF−3)を介して蒸留反応システム10Aに戻される低揮発性化合物を含有する。
【0032】
ここで図3Aを参照すると、システム106は、蒸留反応システム10A、リボイラB、および1つの複合流出液分離器36を備える。蒸留反応システム10Aからのオーバーヘッドストリーム24およびリボイラBからの残留物ストリーム23の一部分またはすべては、別々に流出液分離器36に供給され、かつ/または流出液分離器36に供給されるストリーム34へと混合される。流出液分離器36からの第1の流出液35は、さらなる処理のために送られる。流出液分離器36からの第2の流出液37は、F−1および/またはF−2(またはF−3)を介して蒸留反応システム10Aに戻される。
【0033】
ここで図4を参照して、少なくとも1種のパラフィンの異性化についてのプロセス流れ図は、最上部の反応区画47および下方反応区画45を有する蒸留反応システム40を備えるシステム107を描写する。反応区画45および47の各々は、少なくとも1種の触媒床を備える。
【0034】
この例示的な実施形態で用いることができる適切な触媒は、本願明細書上記に記載されている。別の例示的な実施形態によれば、反応区画45および/または47の触媒床は、蒸留「パッケージング」の触媒の固定床である。2つ(またはこれより多く)の床についての触媒は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0035】
蒸留反応システム40は、さらに反応区画45と反応区画47との間に蒸留区画46を備えてよい。蒸留区画46は、泡鐘段、網目板などの1つ以上の段、またはパッキングを備えてよい。さらに、本発明で用いることができる適切な段またはパッキングは、当該技術分野で周知の触媒的蒸留塔で使用される任意の段またはパッキングである。あるいは、反応区画45と反応区画47との間に蒸留区画46はまったくなくてもよい。
【0036】
少なくとも1種のパラフィンを含有する供給ストリームは、供給ストリームF−1、F−2、F−3および/またはF−4を介して蒸留反応システム40に導入される。供給F−1は、蒸留区画46の上で蒸留反応システム40に導入されてもよい。供給F−2は、蒸留区画46の下、またはその中間点であるが反応区画45の上で蒸留反応システム40に導入されてもよい。供給F−3およびF−4は、反応区画45の下で蒸留反応システム40に導入されてもよい。好ましい実施形態では、供給ストリームはF−1および/またはF−2を介して蒸留反応システム40に導入され、下方反応区画45は第1段階反応器であり、上方反応区画47は第2段階反応器である。少なくとも1種のパラフィンを含有する供給ストリームは、液体および/または蒸気として蒸留反応システム40に導入される。
【0037】
必要に応じて、1種以上の側方ストリームS−1を使用して、所望の生成物を引き抜くか、またはそうしなければこの帯または隣接する帯に蓄積するかも知れない化合物を蒸留反応システム40の蒸留区画46からパージすることができる。
【0038】
ガス状反応物質ストリームおよび/またはストリッピングガスは、供給ストリームF−1、F−2、F−3および/またはF−4を介して蒸留反応システム40に導入される。第1の好ましい実施形態では、ガス状反応物質ストリームは、F−3および/またはF−4を介して蒸留反応システム40に導入され、第2の好ましい実施形態では、F−1および/またはF−2を介したさらなる量とともにF−3および/またはF−4を介して導入される。
【0039】
残留物ストリーム41は、蒸留反応システム40の下方部分から引き抜かれてリボイラBに送られ、そこでこの残留物ストリームの一部分は気化されて、ライン42を介して蒸留反応システム40の下方部分に戻される。残留物ストリーム41の気化されなかった部分は、ライン43を介して液体として引き抜かれる。
【0040】
オーバーヘッドストリーム48は、実質的に還流なしに蒸留反応システム40の頂部から引き抜かれる。換言すれば、任意の望ましくない反応(例えば、クラッキング)を最小にするために、オーバーヘッドストリーム48、または所望の生成物を再循環させかねない任意の他の液体ストリーム、または還流させることが所望されない任意の他の化合物の実質的にいずれも、上方反応区画47の上で蒸留反応システム40の頂部に戻されることはなく、凝縮および内部還流を引き起こす実質的な冷却もまったくなく、反応区画47への還流の戻り(reflux down)を引き起こすようなやり方で反応区画47の上に供給される実質的な他の液体ストリームもまったくない。
【0041】
一実施形態では、システム107を利用する異性化プロセスは、典型的には、反応区画45でn−ヘプタンなどのパラフィンをモノ分枝イソヘプタン(いくつかのさらなる異性体を含む)に変換し、次いで反応区画47でモノ分枝イソヘプタンをジ分枝C7パラフィンおよびトリ分枝C7パラフィンに異性化する。オーバーヘッドの実質的な還流なしに蒸留反応システムでパラフィン(複数種も可)を処理することで、生成物を蒸留反応システムから素早く除去することが可能になり、これによって生成物、特に最終のほとんど異性化した最高オクタンのイソパラフィンのあらゆる望ましくないクラッキングが最小になる。
【0042】
ここで図4Aを参照すると、システム108は、2つの反応区画45および47ならびにリボイラB(システム107のように)を有する蒸留反応システム40を備え、また第1の流出液E1および第2の流出液E2を有するオーバーヘッド流出液分離器50Aをも有する。蒸留反応システム40からのオーバーヘッドストリーム48はオーバーヘッド流出液分離器50Aに送られる。第1の流出液E1は所望の生成物を含有する。
【0043】
第2の流出液E2は、変換されなかったおよび/または部分的に変換されたパラフィンを含有する。それはオーバーヘッド流出液分離器50Aから引き抜かれ、F−1、F−2、F−3および/またはF−4を介して蒸留反応システム40に戻される。
【0044】
ここで図4Bを参照すると、システム109は、2つの反応区画45および47を有し、かつリボイラ41の代わりに、底部蒸留区画49として示されるガスストリッピングを有する蒸留反応システム40Aを備える。必要に応じて、側方ストリームS−1および/またはS−2を使用して、下方反応区画45の上または下から、生成物として、または堆積を回避するためにパージする必要がある成分(複数種も可)を引き抜くことができる。
【0045】
図5は、本発明のさらに別の例示的実施形態の概略的なプロセス流れ図である。図5を参照すると、システム110は、反応器区画45および47、蒸留区画46および49、ならびにリボイラBを有する蒸留反応システム40Aを備える。システム110はまた、流出液分離器50Aおよび50Bをも備える。オーバーヘッド流出液分離器50Aと蒸留反応システム40Aとの関係は、図4A(システム108)に関して本願明細書中上記で考察した関係と同様であり、ここでは繰り返さない。
【0046】
システム110では、蒸留反応システム40AのリボイラBからの液体ストリーム43は、第1の流出液E3および第2の流出液E4を有する残留物流出液分離器50Bに導入される。第1の流出液E3は、パージされる必要がある低揮発性供給および/または副生成物化合物である。流出液分離器50Bの第2の流出液E4は、さらなる反応のために再循環することが求められ、かつF−1、F−2、F−3および/またはF−4を介して蒸留反応システム40Aに戻される低揮発性化合物(複数種も可)を含有する。
【0047】
ここで図6を参照すると、ナフサを異なる沸点範囲を有する複数の構成成分に分離して、図1〜図5に関して本願明細書中で上述したプロセスのうちの1つ以上を使用して構成成分の1種以上を異性化するシステム111が示される。特に、分離器51は、ストリーム52を介してナフサを含有するストリームを供給される。ナフサは、C5〜C10炭化水素構成成分またはその一部を含む。ナフサの複数の構成成分は、生成物ストリーム53、54および55を介して分離器51から引き抜かれ、これらの生成物ストリームの各々は異なる組成および沸点範囲を有する。生成物ストリーム53、54および55は、それぞれ、処理器56A、56Bおよび56Cに導入される。処理器56A、56Bおよび56Cのうちの少なくとも1つ以上は、図1〜図5に関して本願明細書中で上述したプロセスのうちの1つを使用する。
【0048】
別の例示的な実施形態によれば、生成物ストリーム53、54および55は、それぞれ、主にC5−C6構成成分、C7−C8構成成分およびC9−C10構成成分を含む。一実施形態では、生成物ストリーム53、54および55は、それぞれ処理器56A、56Bおよび56Cに導入され、そこで、上記プロセスは独立に、図1〜図5に関して上述したプロセスのいずれかから選択される。第2の実施形態では、処理器56A、56Bおよび56Cのうちの少なくとも1つは上記の処理器のうちの1つから選択され、他はC5−C6、C7−C8またはC9−C10構成成分のいずれかの異性化のための任意の公知の従来の方法から選択されるか、またはこの他のストリームは、適切な場合、まったく異なる処理(例えば、異性化ではない)に供されてよい。
【0049】
ここで図6Aを参照すると、別の例示的な実施形態によれば、システム112はシステム111と類似しているが、さらに図6Aに示すような第1の生成物ストリーム61および第2の生成物ストリーム62を有する流出液分離器60を備える。流出液分離器60の第2の生成物は、処理器56A、56Bおよび56Cへの再循環のためにストリーム62を介して供給分離器51に導入される。あるいは、各処理器は、それ自身の流出液分離器(複数も可)を有して再循環してもよい。さらにあるいは、流出液分離器および供給分離器は、複合されていてもよい。
【0050】
ここで図7を参照すると、システム113は、1種以上の蒸留反応ユニットに送るための供給化合物の分離を含む種々の選択肢を描写する。それは少なくとも1種の分離器システム70を備える。分離器システム70は、1つの分離器ユニットであってもよいし、それは複数の分離器を含むシステムであってもよいし、分別蒸留および/または例えば吸着もしくは浸透による物理的分離、を利用する分離器(複数も可)からなっていてもよい。分離器システム70への供給は1つのストリームであってもよいし、それはいくつかのストリーム、例えば、図7に描かれるようなストリーム71、72、73であってもよい。分離器システム70は、少なくとも2種の流出液を生成する。図7では、システム70は、流出液ストリーム、74、75、...80を生成するとして描かれている。
【0051】
分離器システム70の例は、例えば、
ストリーム74:主に、ペンタンおよびイソヘキサン
ストリーム75:主に、n−ヘキサン
ストリーム76:主に、環状C6およびC7イソパラフィン
ストリーム77:主に、n−ヘプタン
ストリーム78:主に、環状C7およびC8イソパラフィン
ストリーム79:主に、n−オクタン
ストリーム78:主に、環状C8およびC9+化合物
へのC5+ナフサストリームの分離である。
【0052】
かかる分離は絶対的なものではないし(すなわち、いくつかの隣接する化合物が各ストリームに存在するであろう)、また、これを認識すれば、かかる分離は、[a]蒸留ユニット(複数も可)のみ;[b]蒸留ユニット(複数も可)、次いで物理的分離ユニット(複数も可);および[c]物理的分離ユニット(複数も可)次いで蒸留ユニット(複数も可)を含めた種々の可能な手法によって、成し遂げられ得ることは、理解されるであろう。
【0053】
本発明のこの実施形態では、ストリーム74−80の1つ以上は、図1〜図5に関して本願明細書中で上述したプロセスのうちの1つに供給される。図7では、ストリーム75、77および79は、それぞれ各々それ自身の別々の処理器81A、81Bおよび81Cに導入され、そこでプロセスは、独立に、図1〜図5に関して上述したプロセスのうちのいずれかから選択されることが描かれている。あるいは、少なくとも1種が上記のものであれば、処理器81A、81Bおよび81Cのすべてが上記のものであることは必要ではない。例えば、他の処理器は、上記構成成分の異性化のための任意の公知の従来の方法から選択することができるし、またはそのストリームは、適切な場合、まったく異なる処理(例えば、異性化ではない)に供されてよい。
【0054】
図7では、処理器81A、81Bおよび81Cからの流出液がストリーム82A、83A、82B、83B、82C、および83Cで、さらなる処理に送られることが描かれている。図1〜図5を参照すると、これらのストリームの各々は、処理器ユニット81A、81Bおよび81C内の分離および/または組合せ後の正味の流出液ストリームであることは理解されるであろう。
【0055】
さらなる選択肢として、処理器81A、81Bおよび81Cからの流出液のいずれも、全体を、または一部を分離器システム70に再循環させることができる。これは、ストリーム84A、85A、84B、85B、84Cおよび/または85Cを介して描かれている。
【0056】
供給分離および組合せについての代替形態に関するなお別の選択肢は、上記ストリーム、例えば、ストリーム77および79、または別の供給源からのストリームの2種以上を混合して、その混合された供給を処理する蒸留反応ユニットに供給することである。
【0057】
上記の記載は多くの具体例を含んでいるが、これらの具体例は、本発明を限定するものとして解釈されるべきではなく、単に本発明の好ましい実施形態の例示として解釈されるべきである。当業者は、添付の特許請求の範囲によって画定される本発明の範囲および趣旨に含まれる多くの他の実施形態を想起するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の有機化合物を含有する供給ストリームを触媒的に処理するためのプロセスであって、
a)蒸留反応システムであって、前記蒸留反応システムの頂部に配置された少なくとも1つの最上部の反応区画と、リボイラおよび/またはガスストリッピング区画とを有する蒸留反応システムを準備するステップであって、前記リボイラおよび/またはガスストリッピング区画は、残留物ストリームの少なくとも一部分を前記リボイラおよび/または前記ガスストリッピング区画によって気化させて前記残留物ストリームの前記気化された部分を前記蒸留反応システムの底部に戻すためのものであるステップと、
b)有機物供給ストリームを前記最上部の反応区画の下で前記蒸留反応システムに導入するステップと、
c)任意の生成物含有ストリームの実質的な還流もしくは再循環なく、または還流させることが望ましくない任意の他の化合物を前記反応区画の前記最上部の部分に供給することなく、オーバーヘッド生成物ストリームを前記最上部の反応区画の上の前記蒸留反応システムの一部から除去するステップと
を含む、プロセス。
【請求項2】
さらに、ガス状反応物質および/またはストリッピングガス供給を前記最上部の反応区画の下の位置で前記蒸留反応システムに導入するステップを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記ガス状供給がH2である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記有機物供給ストリームが少なくとも1種のパラフィンを含有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記蒸留反応システムが蒸留区画を備える、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記蒸留反応システムが第2の反応区画を備える、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記最上部の反応区画と前記第2の反応区画との間に配された蒸留区画が存在する、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記蒸留反応システムが前記ガスストリッピング区画を備え、かつ前記有機物供給の少なくとも一部が、前記ガスストリッピング区画の頂部と前記第2の反応区画の底部との間の位置で前記蒸留反応システムに導入される、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記蒸留反応システムが、前記ガスストリッピング区画および/または蒸留区画を備え、かつ前記ストリッピング区画および/または蒸留区画が1種以上の段もしくはパッキングを備える、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記蒸留反応システムが、前記蒸留区画および/またはガスストリッピング区画に位置する1種以上の側方ストリームを備える、請求項5に記載のプロセス。
【請求項11】
前記蒸留反応システムが前記ガスストリッピング区画を備え、かつ前記ガス状反応物質供給が、前記ガスストリッピング区画の下の位置で前記蒸留反応システムに導入される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
さらに、
前記残留物ストリームの前記液体部分を流出液分離器へと導入するステップであって、前記液体残留物ストリームは第1の生成物および第2の生成物に分離されるステップと、
前記流出液分離器の前記第2の生成物を、前記最上部の反応区画の下の位置で前記蒸留反応システムに導入するステップと
を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
さらに、
前記オーバーヘッド生成物ストリームを流出液分離器に導入するステップであって、前記オーバーヘッド生成物ストリームは第1の生成物および第2の生成物へと分離されるステップと、
前記流出液分離器の前記第2の生成物を、前記最上部の反応区画の下の位置で前記蒸留反応システムに導入するステップと
を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
さらに、前記供給ストリーム中の前記少なくとも1種の有機化合物を異性化するステップを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項15】
前記少なくとも1種の有機化合物がパラフィンである、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記パラフィンが、C5、C6、C7、C8、C9およびC10の炭化水素からなる群から選択される、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記少なくとも1種の有機化合物がC7パラフィンである、請求項16に記載のプロセス。

【図1】
image rotate

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図4】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2010−510351(P2010−510351A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537232(P2009−537232)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/024120
【国際公開番号】WO2008/063584
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(500443589)ラマス テクノロジ インコーポレイテッド (17)
【Fターム(参考)】