説明

面実装型電子部品

【課題】半田付け強度を確保しつつフラックスの内部への侵入を防止することのできる面実装型電子部品を提供する。
【解決手段】絶縁樹脂からなるハウジング1と、ハウジング1に一体成形された金属板状の端子材2とを有し、端子材2は一端がハウジング1の内面に形成される接点部10に導通し、他端がハウジング1の外部に表出されて面実装半田付け用の端子部20を構成してなる面実装型電子部品において、端子材2はハウジング1に対する埋設部分に板厚方向に窪んだ凹部21を有し、凹部21は端子部20を半田付けする際に侵入するフラックスを溜める角部22を有してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁樹脂からなるハウジングに金属板からなる端子材を埋設し一体成形してなる面実装型電子部品に関し、特に端子材の一端を露出させてなる端子部を半田付けする際に流れるフラックスをハウジング内部に侵入させないようにした面実装型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁樹脂からなるハウジングに金属板からなる端子材を埋設し一体成形してなる面実装型電子部品は、ハウジングから引き出された端子部を基板に対して半田付けすることで面実装がなされる。この半田付けの際には、ハウジングと端子材の間の僅かな隙間から毛細管現象によりフラックスが侵入するため、ハウジングの内面までフラックスが侵入しないように、ハウジング内に埋設される端子材を屈曲して引き回しを長くしたり、端子材に貫通孔を形成することで沿面距離を長くしている。このような面実装型電子部品としては、例えば特許文献1に挙げるようなものがある。
【特許文献1】特開2002−343179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、ハウジング内において端子材を屈曲して引き回しを長くすると、全体の小型化を阻害することになる。また、端子材に貫通孔を形成する場合には、端子材の強度が不足し、特に横方向から操作する電子部品にあっては半田付け強度を充分に確保できないという問題があった。
【0004】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、半田付け強度を確保しつつフラックスのハウジング内部への侵入を防止することのできる面実装型電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係る面実装型電子部品は、絶縁樹脂からなるハウジングと、該ハウジングに一体成形された金属板状の端子材とを有し、該端子材は一端が前記ハウジングの内面に形成される接点部に導通し、他端が前記ハウジングの外部に表出されて面実装半田付け用の端子部を構成してなる面実装型電子部品において、
前記端子材はハウジングに対する埋設部分に板厚方向に窪んだ凹部を有し、該凹部は前記端子部を半田付けする際に侵入するフラックスを溜める角部を有してなることを特徴として構成されている。
【0006】
また、本発明に係る面実装型電子部品は、前記凹部は端子材を横断するように板厚方向に窪んでなることを特徴として構成されている。
【0007】
さらに、本発明に係る面実装型電子部品は、前記凹部は端子材の両面に互い違いに配置されることを特徴として構成されている。
【0008】
さらにまた、本発明に係る面実装型電子部品は、前記凹部は前記端子材の一面側を窪ませそれと対向する他面側を隆起させてなることを特徴として構成されている。
【0009】
そして、本発明に係る面実装型電子部品は、前記凹部は底面を傾斜状として前記角部を鋭角状に形成してなることを特徴として構成されている。
【0010】
また、本発明に係る面実装型電子部品は、前記凹部は端子材をプレス加工により窪ませてなることを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る面実装型電子部品によれば、端子材はハウジングに対する埋設部分に板厚方向に窪んだ凹部を有し、凹部は端子部を半田付けする際に侵入するフラックスを溜める角部を有してなることにより、簡易な構成により端子材の強度を確保しつつフラックスの侵入を防止することができる。
【0012】
また、本発明に係る面実装型電子部品によれば、凹部は端子材を横断するように板厚方向に窪んでなることにより、角部をより広い領域に形成することができて、より確実にフラックスの侵入を防止することができる。
【0013】
さらに、本発明に係る面実装型電子部品によれば、凹部は端子材の両面に互い違いに配置されることにより、端子材の両面からのフラックス侵入を防止することができる。
【0014】
さらにまた、本発明に係る面実装型電子部品によれば、凹部は端子材の一面側を窪ませそれと対向する他面側を隆起させてなることにより、端子材を長手方向に長くすることなく端子材の両面からのフラックス侵入を防止することができる。
【0015】
そして、本発明に係る面実装型電子部品によれば、凹部は底面を傾斜状として角部を鋭角状に形成してなることにより、角部を確実にフラックスを溜めることのできる形状とすることができる。
【0016】
また、本発明に係る面実装型電子部品によれば、凹部は端子材をプレス加工により窪ませてなることにより、加工硬化により端子強度を増すことができ、半田付け強度も充分に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態について、図面に沿って詳細に説明する。図1には本実施形態における面実装型電子部品の側面図を示している。この図に示すように、面実装型電子部品は、絶縁樹脂からなる箱状のハウジング1に、金属板材からなる端子材2が一体形成されているものであって、端子材2の端部がハウジング1の外部に表出されて端子部20を構成すると共に、端子部20が基板5に対して半田6により半田付けされる。
【0018】
ハウジング1には、固定接点11、12と可動接点15とからなる接点部10が納められ、可動接点15は操作部材13の操作により押圧されることで固定接点11と導通する。すなわち、本実施形態の面実装型電子部品は、押釦スイッチとして構成されている。
【0019】
図2には面実装型電子部品の平面図を、図3には図2のA−A断面図を、それぞれ示している。これら各図においては、操作部材13などは省略している。図2に示すように、ハウジング1の内部には接点部10等を収容する収容部14が形成され、収容部14の底面には中央部に内側固定接点11が、周囲部に外側固定接点12が、それぞれ設けられている。また、可動接点15は外側固定接点12に接触するように設けられる。
【0020】
端子材2は、2枚がハウジング1内において互いに平行となるように埋設されており、一方の端子材2の一端部は収容部14に露出して内側固定接点11と導通している。また、他方の端子材2の一端部は収容部14に露出して外側固定接点12と導通している。さらに、両端子材2の他端部は、いずれもハウジング1の底面近傍において外方に向かって突出するように露出し、端子部20を構成している。
【0021】
図4は、端子材2の埋設部分であって、端子部20の近傍について示した拡大断面図である。すなわち図4は、図3の右下方部を拡大したものである。端子材2は、ハウジング1の成形時に金型内に配置されて、いわゆるインサート成形により全体が形成される。この際、図4に示すようにハウジング1と端子材2の間には、成形後に樹脂が収縮することにより、僅かな隙間23が生じ、この隙間23から半田付け時にフラックスが侵入する。
【0022】
そして、端子材2のうち、ハウジング1に埋設された部分の下面には、窪んだ凹部21が形成されている。凹部21は、端子材2の下面を直方体状に窪ませたものであって、その底面と側面の間は角部22によって構成される。また図5には、凹部21が形成された付近の端子材2の平面図を示している。この図に示すように、凹部21は端子材2の所定領域を長方形状に窪ませて形成されている。
【0023】
インサート成形の際には、粘性の高い流動樹脂は角部22に入り込むことができないので、凹部21の角部22は、ハウジング1の樹脂と端子材2間の隙間23よりも大きな空間部となっている。一方、半田付け時にハウジング1の樹脂と端子材2の隙間23から侵入するフラックスは、流動樹脂に比べると粘性が低いため、凹部21の角部22に入り込むことができ、この角部22に溜まることになる。これによってハウジング1において凹部21よりも内部、特に接点部10の部分までフラックスが侵入することを防止することができる。
【0024】
凹部21は、端子材2をプレス加工することにより窪ませて形成する。凹部21をプレス加工により形成することで、その部分は加工硬化して強度を増すことができる。凹部21の部分は端子材2の他の部分と比べて薄肉状となるが、このように加工硬化させることにより、端子強度を充分に確保することができ、半田付け強度も向上させることができる。
【0025】
凹部21の角部22は、フラックスを溜めるためにはできるだけ丸みを帯びることなく直角に近い形状とすることが必要であるが、プレス加工で形成されることにより、丸みを帯びた形状となる場合もある。そこで、図6に示すように、凹部21の底面をハウジング1の外方に向かって深くなる傾斜状として、角部22を鋭角状とすることにより、丸みを帯びにくくしてフラックスを確実に溜められるようにすることもできる。
【0026】
凹部21の形状は、図4及び図5に示したものには限られない。図7の断面図及び図8の平面図には、凹部21の別の形態について示している。これら各図に示すように、凹部21は端子材2を横断するように形成してもよい。このように端子材2を横断するように凹部21を形成することで、より広い範囲に凹部21を形成できるので、フラックスの侵入をより確実に防止することができる。
【0027】
また、図9の断面図及び図10の平面図に示すように、端子材2の両面にそれぞれ互い違いとなるように凹部21を設けてもよい。この場合には、各凹部21にそれぞれ角部22が形成され、各角部22に侵入するフラックスを溜めることができる。これによって端子材2の両面につきフラックスの侵入を防止することができる。
【0028】
端子材2の両面にそれぞれ互い違いとなるように凹部21を設けると、凹部21を設ける領域に長手方向の長さが必要となる。そのため、図11の断面図や図12の平面図に示すように、端子材2の互いに対向する両面について、一方の面を凹部21とし、対向する他方の面を凹部21に対応して隆起させることにより、端子材2の両面にそれぞれ角部22を形成してフラックスの侵入を防ぐことができる。このような形状も、プレス加工により形成することができる。
【0029】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用はこれらの実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施形態における面実装型電子部品の側面図である。
【図2】面実装型電子部品の平面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】端子材の埋設部分であって、凹部付近について示した拡大断面図である。
【図5】端子材の凹部付近平面図である。
【図6】角部を鋭角状とした場合の凹部付近について示した拡大断面図である。
【図7】凹部の第2の形態を示した拡大断面図である。
【図8】凹部の第2の形態を示した端子材の平面図である。
【図9】凹部の第3の形態を示した拡大断面図である。
【図10】凹部の第3の形態を示した端子材の平面図である。
【図11】凹部の第4の形態を示した拡大断面図である。
【図12】凹部の第4の形態を示した端子材の平面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 ハウジング
2 端子材
5 基板
10 接点部
11 内側固定接点
12 外側固定接点
13 操作部材
14 収容部
20 端子部
21 凹部
22 角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁樹脂からなるハウジングと、該ハウジングに一体成形された金属板状の端子材とを有し、該端子材は一端が前記ハウジングの内面に形成される接点部に導通し、他端が前記ハウジングの外部に表出されて面実装半田付け用の端子部を構成してなる面実装型電子部品において、
前記端子材はハウジングに対する埋設部分に板厚方向に窪んだ凹部を有し、該凹部は前記端子部を半田付けする際に侵入するフラックスを溜める角部を有してなることを特徴とする面実装型電子部品。
【請求項2】
前記凹部は端子材を横断するように板厚方向に窪んでなることを特徴とする請求項1記載の面実装型電子部品。
【請求項3】
前記凹部は端子材の両面に互い違いに配置されることを特徴とする請求項1または2記載の面実装型電子部品。
【請求項4】
前記凹部は前記端子材の一面側を窪ませそれと対向する他面側を隆起させてなることを特徴とする請求項1または2記載の面実装型電子部品。
【請求項5】
前記凹部は底面を傾斜状として前記角部を鋭角状に形成してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の面実装型電子部品。
【請求項6】
前記凹部は端子材をプレス加工により窪ませてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の面実装型電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−213880(P2007−213880A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−30491(P2006−30491)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】