面形状測定機、面形状測定方法、及び面形状の測定値の解析方法
【課題】軸を中心として回転対称な非球面部材における非球面の輪郭形状の測定において、軸を挟んだ対称な有効径の範囲全体を対象とすることなく、短い時間で輪郭形状の誤差を高精度に測定可能な面形状測定機、測定方法及び面形状の測定値の解析方法を提供する。
【解決手段】軸Aを挟んだ非対称な範囲Mにおいて、軸Aの一方の側の所定位置から他方の側の別の所定位置までの非球面の輪郭形状を測定し、範囲Mにおける非球面の輪郭形状の測定値を用いて、測定値を得ていない軸Aを挟んだ他方の側の所定範囲に仮測定値として補完し、次いで、軸Aを挟んだ非対称な範囲と仮測定値を補完された範囲とを合わせた範囲において、測定値と仮測定値と非球面の輪郭形状の設計値とを用いて、所定の収束条件を満たすまで収束計算を行なうことにより、非球面の輪郭形状の誤差を算出する。
【解決手段】軸Aを挟んだ非対称な範囲Mにおいて、軸Aの一方の側の所定位置から他方の側の別の所定位置までの非球面の輪郭形状を測定し、範囲Mにおける非球面の輪郭形状の測定値を用いて、測定値を得ていない軸Aを挟んだ他方の側の所定範囲に仮測定値として補完し、次いで、軸Aを挟んだ非対称な範囲と仮測定値を補完された範囲とを合わせた範囲において、測定値と仮測定値と非球面の輪郭形状の設計値とを用いて、所定の収束条件を満たすまで収束計算を行なうことにより、非球面の輪郭形状の誤差を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面形状測定機、面形状の測定方法、及び面形状の測定値の解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学素子やその金型、部品などの面形状を測定し、評価するために、面形状測定機が利用されている。特に、被測定物が軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材(以下、非球面部材とする。)である場合、非球面の全体形状は、その軸から片側の輪郭形状をその軸を中心として一回転させた形状に略等しくなる。
【0003】
一般に、非球面部材は、旋盤などの回転加工機を介して加工されている。回転加工機は、軸を中心として被加工物を回転させた状態で、刃物を被加工物に当てながら、軸方向及び回転半径方向に動かすことによって、被加工物を回転対称な非球面形状に加工する。
このため、非球面部材を被測定物とした場合、その軸から片側の輪郭形状を測定し、測定値と設計値とを所定の演算を介して比較することにより、輪郭形状の誤差を偏差として算出できる。そして、この算出結果を回転加工機にフィードバックすることで、被測定物の非球面の形状を補正しながら高精度に加工することができる。
【0004】
ここで、回転加工機について、さらに詳しく説明する。回転加工機は、軸を中心として回転させている被加工物に刃物を当てながら、軸から所定量離れた位置から軸の位置まで回転半径方向に移動させることで、有効径を含む部材の面全体を加工する。
このため、回転加工機へフィードバックするための面形状補正用のデータは、被測定物における軸を通る一つの輪郭形状のうち、その軸から片側の範囲についての輪郭形状の誤差の算出結果で足りる。
【0005】
言い換えれば、非球面部材においては、少なくとも軸から片側の範囲についての輪郭形状の誤差を算出すれば、面形状の評価および補正加工が可能である。
しかし、非球面部材における輪郭形状の誤差を精度良く算出するためには、軸を挟んだ両側の範囲についての輪郭形状の測定値が必要となる。
【0006】
その理由を以下に、図29を用いて詳細に説明する。
図29は軸を中心として回転対称な非球面を持つ光学部材における軸を通る一つの輪郭形状の所定範囲(X)を対象として測定し、測定した範囲において、輪郭形状の測定値と輪郭形状の設計値とを所定の演算を介して比較した結果を輪郭形状の誤差(ΔZ)として示すグラフであり、(a)はその軸を挟んだ対称な有効径の範囲を対象としたときのグラフ、(b)はその軸で隔てた一方の側の最外径位置から他方の側の所定位置までの軸を挟んだ非対称な範囲を対象として、アライメント誤差を取り除いたときのグラフ、(c)は(b)で算出した輪郭形状の誤差に対して、さらに収束計算を実施した結果を示すグラフである。
【0007】
通常、面形状の測定は面形状測定機を介して、被測定物における軸を通る一つの輪郭形状を、その軸に対称な有効径の範囲を対象として測定する。そして、その輪郭形状の評価を行なう際は、輪郭形状の測定値と輪郭形状の設計値とを所定の演算を介して比較することで形状の誤差を算出する。所定の演算では、最小二乗法やニュートン法という計算手法を用いて、例えば、特許文献3に示す収束条件や、RMS値(二乗平均平方根)が最小となるように収束計算(通称:フィッティング)を行なう。そして、この収束計算により、被測定物の設置姿勢(通称:アライメント)による誤差を取り除いて、形状のみの誤差を算出できる。
【0008】
ここで、例えば、軸を中心として回転対称な非球面を持つ光学部材を被測定物とし、その軸を通る一つの輪郭形状のうち、その一つの輪郭形状における軸を挟んだ非対称な範囲の輪郭形状を測定した場合について考える。その場合には、一部の範囲において輪郭形状の測定値が得られない。そして、軸を挟んだ非対称な範囲を対象として、測定値と設計値とから、上述したような収束計算を行なうと、所望する形状の誤差の値とは異なる値の誤差が算出されてしまう。これは、収束計算において、輪郭形状の全体の範囲についての設計値を定める設計式に対して、輪郭形状の測定値が欠落または不足している範囲を考慮せずに、例えば、RMS値(二乗平均平方根)が最小となるように収束させてしまうからである。その結果、測定値が欠落または不足する範囲Cがある場合には、図29(b)に示すように、輪郭形状の誤差の値が、図29(a)に示すような本来の輪郭形状の誤差の値から、大きくずれたものとなってしまう。
さらに、非球面の輪郭形状の誤差の評価に際しては、上述したような被測定物の設置姿勢の誤差を取り除くための収束計算に加えて、特許文献1に示されるように、設計式中のR(曲率半径)を変化させることによって、非球面の輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)を求める収束計算を行なう場合がある。この評価を、測定値が欠落または不足する範囲Cがある図29(b)に示す測定結果に対して実施すると、図29(c)に示すように、輪郭形状の誤差の値が、さらに大きくずれたものとなってしまう。
【0009】
このため、従来一般の面形状測定機においては、軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材を被測定物とするその非球面の輪郭形状の評価に際しては、被測定物の軸を通る一つの輪郭形状における、その軸を挟んだ対称な有効径の範囲全体を対象として、輪郭形状を測定し、その範囲における輪郭形状の測定値と設計値とを上述したような所定の演算を介して比較することによって、輪郭形状の誤差を算出していた(特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第2885422号公報
【特許文献2】特許第3321210号公報
【特許文献3】特許第2520202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、軸を挟んで両側の範囲の輪郭形状を測定すると、測定時間が長くなる。
しかも、特許文献1に記載の面形状測定機を含め、従来の面形状測定機では、上述したように、軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材における、その非球面の輪郭形状の測定においては、被測定物の軸を通る一つの輪郭形状における、その軸を挟んだ対称な有効径の範囲全体を対象としなければ、輪郭形状の誤差を高精度に評価することができない。
【0012】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材における非球面の輪郭形状の測定において、軸を挟んだ対称な有効径の範囲全体を対象とすることなく、短い時間で輪郭形状の誤差を高精度に測定することが可能な面形状測定機、面形状測定方法、及び面形状の測定値の解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明による面形状測定機は、軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材の面形状測定機であって、前記非球面の輪郭形状を測定する輪郭形状測定手段と、前記非球面の輪郭形状の設計値との形状誤差を算出する形状誤差算出手段とを備え、前記輪郭形状測定手段は、前記軸を挟んだ非対称な範囲において、前記軸を挟んだ一方の側の所定位置から他方の側の別の所定位置までの前記非球面の輪郭形状を測定し、前記形状誤差算出手段は、前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値を用いて、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に仮測定値として補完し、次いで、前記軸を挟んだ非対称な範囲と前記仮測定値を補完された範囲とを合わせた範囲において、前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値と前記仮測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とを用いて、所定の収束条件を満たすまで収束計算を行なうことを特徴としている。
【0014】
また、本発明による面形状測定方法は、軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材の面形状測定方法であって、前記軸を挟んだ非対称な範囲において、前記軸を挟んだ一方の側の所定位置から他方の側の別の所定位置までの前記非球面の輪郭形状を測定し、次いで、前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値を用いて、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に仮測定値として補完し、次いで、前記軸を挟んだ非対称な範囲と前記仮測定値を補完された範囲とを合わせた範囲において、前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値と前記仮測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とを用いて、所定の収束条件を満たすまで収束計算を行なうことを特徴としている。
【0015】
また、本発明による面形状の測定値の解析方法は、軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材の面形状の測定値の解析方法であって、前記軸を挟んだ非対称な範囲において測定された、前記軸を挟んだ一方の側の所定位置から他方の側の別の所定位置までの前記非球面の輪郭形状の測定値を用いて、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に仮測定値として補完し、次いで、前記軸を挟んだ非対称な範囲と前記仮測定値を補完された範囲とを合わせた範囲において、前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値と前記仮測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とを用いて、所定の収束条件を満たすまで収束計算を行なうことを特徴としている。
【0016】
また、本発明による面形状測定機は、上記面形状測定機において、前記形状誤差算出手段は、前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値を前記軸に対して軸対称に反転させて、反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値とが重なり合う範囲において、前記反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と前記反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値との誤差が最小となるように座標変換して、前記反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と前記反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値とを重ね合わせることにより前記仮測定値として補完することを特徴としている。
【0017】
また、本発明による面形状測定方法は、上記面形状測定方法において、前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値を前記軸に対して軸対称に反転させて、反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値とが重なり合う範囲において、前記反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と前記反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値との誤差が最小となるように座標変換して、前記反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と前記反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値とを重ね合わせることにより前記仮測定値として補完することを特徴としている。
【0018】
また、本発明による面形状の測定値の解析方法は、上記面形状の測定値の解析方法において、前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値を前記軸に対して軸対称に反転させて、反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値とが重なり合う範囲において、前記反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と前記反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値との誤差が最小となるように座標変換して、前記反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と前記反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値とを重ね合わせることにより前記仮測定値として補完することを特徴としている。
【0019】
また、本発明による面形状測定機は、軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材の面形状測定機であって、前記非球面の輪郭形状を測定する輪郭形状測定手段と、前記非球面の輪郭形状の設計値との形状誤差を算出する形状誤差算出手段とを備え、前記輪郭形状測定手段は、前記軸を挟んだ非対称な範囲において、前記軸を挟んだ一方の側の所定位置から他方の側の別の所定位置までの前記非球面の輪郭形状を測定し、前記形状誤差算出手段は、前記輪郭形状測定手段が測定した前記非球面の輪郭形状の測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とが所定の収束条件を満たすまで第一の収束計算を行ない、前記第一の収束計算後の非球面の輪郭形状の測定値のうち、前記軸を挟んだ対称な範囲を除いた範囲の測定値を、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に軸対称に仮測定値として補完する第一の処理工程と、前記軸を挟んだ第一の収束計算後の非対称な範囲の輪郭形状の測定値と前記補完された範囲の仮測定値との境界部に段差がある場合、前記軸を挟んだ第一の収束計算後の非対称な範囲の輪郭形状の測定値と前記補完された範囲の仮測定値とを合わせた範囲において、前記非球面の輪郭形状の設計値を用いて、所定の収束条件を満たすまで第二の収束計算を行なう工程と、前記補完された範囲の測定値を削除する工程と、前記軸を挟んだ第二の収束計算後の非対称な範囲の測定値のうち、前記軸を挟んだ第二の収束計算後の対称な範囲を除いた範囲の測定値を、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に軸対称に補完する工程とからなる処理を、前記段差が所定の一致条件を満足するまで繰り返す第二の処理工程と、前記第一の処理工程及び第二の処理工程を介して得た、前記非球面の輪郭形状の測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とから前記非球面の輪郭形状の誤差を算出する第三の処理工程と、を有することを特徴としている。
【0020】
また、本発明による面形状測定方法は、軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材の面形状測定方法であって、前記軸を挟んだ非対称な範囲において、前記軸を挟んだ一方の側の所定位置から他方の側の別の所定位置までの前記非球面の輪郭形状を測定し、前記非球面の輪郭形状の測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とが所定の収束条件を満たすまで第一の収束計算を行ない、前記第一の収束計算後の非球面の輪郭形状の測定値のうち、前記軸を挟んだ対称な範囲を除いた範囲の測定値を、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に軸対称に仮測定値として補完する第一の処理工程と、前記軸を挟んだ第一の収束計算後の非対称な範囲の輪郭形状の測定値と前記補完された範囲の仮測定値との境界部に段差がある場合、前記軸を挟んだ第一の収束計算後の非対称な範囲の輪郭形状の測定値と前記補完された範囲の仮測定値とを合わせた範囲において、前記非球面の輪郭形状の設計値を用いて、所定の収束条件を満たすまで第二の収束計算を行なう工程と、前記補完された範囲の測定値を削除する工程と、前記軸を挟んだ第二の収束計算後の非対称な範囲の測定値のうち、前記軸を挟んだ第二の収束計算後の対称な範囲を除いた範囲の測定値を、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に軸対称に補完する工程とからなる処理を、前記段差が所定の一致条件を満足するまで繰り返す第二の処理工程と、前記第一の処理工程及び第二の処理工程を介して得た、前記非球面の輪郭形状の測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とから前記非球面の輪郭形状の誤差を算出する第三の処理工程と、を有することを特徴としている。
【0021】
また、本発明による面形状の測定値の解析方法は、軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材の面形状の測定値の解析方法であって、前記軸を挟んだ非対称な範囲において測定された、前記軸を挟んだ一方の側の所定位置から他方の側の別の所定位置までの前記非球面の輪郭形状の測定値を用いて、前記軸を挟んだ非対称な範囲において、前記軸を挟んだ一方の側の所定位置から他方の側の別の所定位置までの前記非球面の輪郭形状の測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とが所定の収束条件を満たすまで第一の収束計算を行ない、前記第一の収束計算後の非球面の輪郭形状の測定値のうち、前記軸を挟んだ対称な範囲を除いた範囲の測定値を、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に軸対称に仮測定値として補完する第一の処理工程と、前記軸を挟んだ第一の収束計算後の非対称な範囲の輪郭形状の測定値と前記補完された範囲の仮測定値との境界部に段差がある場合、前記軸を挟んだ第一の収束計算後の非対称な範囲の輪郭形状の測定値と前記補完された範囲の仮測定値とを合わせた範囲において、前記非球面の輪郭形状の設計値を用いて、所定の収束条件を満たすまで第二の収束計算を行なう工程と、前記補完された範囲の測定値を削除する工程と、前記軸を挟んだ第二の収束計算後の非対称な範囲の測定値のうち、前記軸を挟んだ第二の収束計算後の対称な範囲を除いた範囲の測定値を、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に軸対称に補完する工程とからなる処理を、前記段差が所定の一致条件を満足するまで繰り返す第二の処理工程と、前記第一の処理工程及び第二の処理工程を介して得た、前記非球面の輪郭形状の測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とから前記非球面の輪郭形状の誤差を算出する第三の処理工程と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材における非球面の輪郭形状の測定において、軸を挟んだ対称な有効径の範囲全体を対象とすることなく、短い時間で輪郭形状の誤差を高精度に測定することが可能な面形状測定機、面形状測定方法、及び面形状の測定値の解析方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は本発明の一実施形態にかかる面形状測定機を用いて、軸を中心として回転対称な非球面を持つ光学部材におけるその非球面の輪郭形状を測定する様子を示す説明図、(b)は(a)に示す面形状測定機を用いて測定したときの測定結果を示す説明図である
【図2】従来の面形状測定機において一般に行われている収束計算における、測定値(測定結果)と設計値(設計式)との関係を示すグラフであり、(a)は収束計算実施前の測定範囲における測定値と設計値を各々示すグラフ、(b)は収束計算実施前の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフ、(c)は収束計算実施後の測定範囲における測定値と設計値を各々示すグラフ、(d)は収束計算実施後の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフである。
【図3】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】図3に示した処理手順で処理を行なう本発明の面形状測定機の収束計算における、測定値(測定結果)と設計値(設計式)との関係を示すグラフであり、(a)は収束計算実施前の測定範囲における測定値と設計値を各々示すグラフ、(b)は収束計算実施前の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフ、(c)は収束計算実施後の測定範囲における測定値と設計値を各々示すグラフ、(d)は収束計算実施後の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフである。
【図5】図3に示した処理手順で処理を行なう本発明の面形状測定機の収束計算における、図4に示した処理工程以降での測定値と設計値との関係を示すグラフであり、(a)は収束計算実施後の測定範囲における測定値の一部を不足範囲に設計座標の基準軸に対して補完したときの測定値と設計値を各々示すグラフ、(b)は(a)の補完処理後、収束計算実施前の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフ、(c)は(a)の補完処理及び収束計算実施後の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフ、(d)は(a)の補完処理及び収束計算実施後の測定範囲における測定値と設計値を各々示すグラフ、(e)は(d)の収束計算実施後の測定範囲から、不足範囲を削除したときの測定値と設計値を各々示すグラフである。
【図6】図3に示した処理手順で処理を行なう本発明の面形状測定機の収束計算における、図5に示した処理工程以降の測定値と設計値との関係を示すグラフであり、(a)は収束計算実施後の測定範囲における測定値の一部を不足範囲に設計座標の基準軸に対して補完したときの測定値と設計値を各々示すグラフ、(b)は(a)の補完処理後、収束計算実施前の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフ、(c)は(a)の補完処理及び収束計算実施後の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフ、(d)は収束計算実施後の測定範囲からの不足範囲を削除する工程、収束計算実施後の測定範囲における測定値の一部の不足範囲へ補完する工程、収束計算する工程からなる処理を段差が最小になるまで繰り返した後に、非球面の輪郭形状の測定値と非球面の輪郭形状の設計値とを所定の演算を介して比較した結果を輪郭形状の誤差として示すグラフである。
【図7】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の図3の例に対する一変形例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の図3の例に対する他の変形例を示すフローチャートである。
【図9】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の図3の例に対するさらに他の変形例を示すフローチャートである。
【図10】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の他の例を示すフローチャートである。
【図11】図10のフローチャートにおける各ステップでの測定値と設計式との差分を示すグラフであり、(a)は軸Aに対して対称な範囲Maの測定値のみを対象として、設計式に収束させたときの範囲M全体の測定値を設計値との差分で示すグラフ、(b)は測定値を得ていない範囲に、軸Aに対して非対称な範囲Mから軸Aに対して対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を設計座標の基準軸に対して軸対称に仮測定値として補完し、これらの範囲を合わせた全範囲の測定値を設計値との差分で示すグラフ、(c)は(b)に示す全範囲の測定値を対象として、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なっときの設計値に対する測定値の差分を示すグラフ、(d)は(c)における補完されている所定範囲Cに補完された範囲の測定値を削除し、座標変換後の軸を挟んだ非対称な測定値のうち、軸を挟んだ対称な範囲を除いた範囲の測定値を、所定範囲Cに、設計座標における一つの座標軸Zに対して軸対称に補完したときの設計値に対する測定値の差分を示すグラフ、(e)は(d)に示す座標変換後の新たな有効径全体の測定値の範囲を対象として、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なっときの設計値に対する測定値の差分を示すグラフ、(f)は(e)における補完されている所定範囲Cに補完された範囲の測定値を削除し、座標変換後の軸を挟んだ非対称な測定値のうち、軸を挟んだ対称な範囲を除いた範囲の測定値を、所定範囲Cに、設計座標における一つの座標軸Zに対して対称に仮測定値として補完し、座標変換後の新たな有効径全体の測定値の範囲を対象として、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なっときの設計値に対する測定値の差分を示すグラフである。
【図12】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の図10の例に対する一変形例を示すフローチャートである。
【図13】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の図10の例に対する他の変形例を示すフローチャートである。
【図14】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の図10の例に対するさらに他の変形例を示すフローチャートである。
【図15】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の他の例を示すフローチャートである。
【図16】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の図15の例に対する一変形例を示すフローチャートである。
【図17】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の図15の例に対する他の変形例を示すフローチャートである。
【図18】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の図15の例に対するさらに他の変形例を示すフローチャートである。
【図19】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の他の例を示すフローチャートである。
【図20】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の図19の例に対する一変形例を示すフローチャートである。
【図21】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の図19の例に対する他の変形例を示すフローチャートである。
【図22】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の図19の例に対するさらに他の変形例を示すフローチャートである。
【図23】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図24】図23に示した処理手順で処理を行なう本発明の面形状測定機の収束計算における、測定値と設計値との関係を示すグラフであり、(a)は軸に対して測定値を反転させたときの測定値と設計値を各々示すグラフ、(b)は(a)の反転処理時の測定値と設計値との差を示すグラフ、(c)は(a)の反転処理後、反転前の測定値と反転後の測定値とが重なり合う範囲において、反転前の測定値と反転後の測定値との誤差が最小となるように座標変換したときの測定値と設計値との差を示すグラフ、(d)は座標変換後の非球面の輪郭形状の測定値と非球面の輪郭形状の設計値とを所定の演算を介して比較した結果を輪郭形状の誤差として示すグラフである。
【図25】図1(a)に示した面形状測定機の保持部を傾斜させたときの状態を示す説明図であり、傾斜角度の大きい被測定物を測定する様子を示す図である。
【図26】面形状測定機の保持部を傾斜させて測定することが必要な被測定物を測定するときの測定手順を示すフローチャートである。
【図27】図1(a)に示した面形状測定機を用いた面形状の測定方法において保持部の回動台の回転中心と被測定物の被測定面における軸付近の曲率中心とが一致しない場合における、測定の様子を示す説明図であり、(a)は傾斜角度0度に設定された保持部における回動台の載置部の中心部に被測定部を載置した状態を示す図、(b)は保持部における回動台を所定の傾斜角度だけ傾斜させた状態を示す図である。
【図28】本発明の他の実施形態にかかる面形状測定機、及び面形状測定方法を用いて被測定物の非球面の輪郭形状を測定する様子を示す説明図であり、(a)は傾斜角度0度に設定されたプローブ先端の位置とプローブを傾斜させる手段の回転中心の位置関係を示す図、(b)はプローブを一定の傾斜角度だけ傾斜させた状態を示す図である。
【図29】軸を中心として回転対称な非球面を持つ光学部材における軸を通る一つの輪郭形状の所定範囲を対象として測定し、測定した範囲において、輪郭形状の測定値と輪郭形状の設計値とを所定の演算を介して比較した結果を輪郭形状の誤差として示すグラフであり、(a)はその軸に対して対称な有効径の範囲を対象としたときのグラフ、(b)その軸で隔てた一方の側の最外径位置から他方の側の所定位置までの軸を挟んだ非対称な範囲を対象として、アライメント誤差を取り除いたときのグラフである。(c)は(b)で算出した輪郭形状の誤差に対して、さらに収束計算を実施した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
まず、本発明において本質的部分をなす面形状の測定値の解析方法について基本概念を説明し、次いで、本発明の実施形態にかかる面形状の測定値の解析方法を実施するための構成を備えた面形状測定機、及び面形状の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法について説明する。
【0025】
本発明による面形状の測定値の解析方法は、軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材(以下、単に非球面部材とする。)におけるその非球面の輪郭形状の測定において、従来は被測定物の軸を挟んだ対称な有効径の範囲全体を対象としなければ輪郭形状の誤差の評価ができなかったことに鑑み、軸を挟んだ対称な有効径の範囲全体を測定しなくても輪郭形状の誤差を高精度に評価するための方法である。この方法は、本発明の面形状測定機における形状誤差算出手段を構成するソフトウェアとして、図示を省略した演算処理装置に備えられている。なお、非球面を持つ光学部材の場合の回転対称な軸は、その光学部材の光軸と同じ位置に位置する。
【0026】
図1(a)は本発明の面形状測定機を用いて、軸を中心として回転対称な非球面を持つ光学部材におけるその非球面の輪郭形状を測定する様子を示す説明図である。なお、以下の説明では、軸Aを中心として回転対称な非球面を持つ光学部材Oを、単に非球面部材Oと称する。
面形状測定機10は、プローブ11を有している。このプローブ11は、被測定物の輪郭形状を測定するための輪郭形状測定手段である。
プローブ11は、公知の機構(図示省略)を介してX軸方向及びZ軸方向に移動可能に構成されている。
ここで、本発明の断面形状測定機10は、図1(a)に示すように、プローブ11を介して、被測定物である、非球面部材Oの非球面における所定の軸対称な輪郭形状(例えば、軸Aの位置又は軸Aの位置の近傍を通る軸対称な輪郭形状)のうち、軸Aを挟んだ非対称な範囲Mの輪郭形状を測定する。この非対称な範囲Mは、軸Aを挟んだ一方の側の最外径の位置P1から他方の側の所定位置P2までの範囲である。
【0027】
範囲Mを対象とした輪郭形状の測定値をグラフ化すると、測定結果は、図1(b)に実線で示すように、軸Aを挟んで非対称になる。なお、図1(b)中、二点鎖線は、輪郭形状の有効径の範囲全体についての設計値を示している。
【0028】
被測定物のアライメント誤差が大きい場合には、この測定値(測定結果)に対して設計値又は設計式(設計座標における設計値を結んだ線を示す式)を用いるか、或いは設計値又は設計式に対して測定値(測定結果)を用いて、所定の収束条件を満たすまで収束計算を行なうことで、被測定物のアライメント誤差を取り除いた被測定物の面形状の誤差が算出される。収束計算では、最小二乗法やニュートン法等の計算手法を用いて、例えば特許文献3に開示されている収束条件や、RMS値(二乗平均平方根)等が最小となるようにすれば良い。
【0029】
ここで、本発明による断面形状の測定値の解析方法では、軸を挟んだ非対称な範囲における非球面の輪郭形状の測定値を軸に対して軸対称に反転させて、反転前の非球面の輪郭形状の測定値と反転後の非球面の輪郭形状の測定値とが重なり合う範囲において、反転前の非球面の輪郭形状の測定値と反転後の非球面の輪郭形状の測定値との誤差が最小となるように座標変換して、反転前の非球面の輪郭形状の測定値と反転後の非球面の輪郭形状の測定値とを重ね合わせることにより仮測定値として補完する。
このようにすれば、軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材における非球面の輪郭形状の測定において、軸を挟んだ対称な有効径の範囲全体を対象とすることなく、短い時間で輪郭形状の誤差を高精度に測定することが可能となる。
以下、この点について詳しく説明する。
【0030】
例えば、本発明による断面形状の測定値の解析方法では、この計算手法において繰り返される所定の第一の収束計算の際、又は所定の第一の収束計算の後に、所定の第一の収束計算後の非球面の輪郭形状の測定値のうち、軸Aを挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、測定値を得ていない軸Aで隔てた他方の側の所定範囲Cに設計座標における一つの座標軸(Z座標軸、なお、図1では説明の便宜上、軸AはZ座標軸に一致した位置に示してある。)に対して軸対称に仮測定値として補完する(以上の処理工程を以下、第一の処理工程とする。)。
【0031】
次いで、軸Aを挟んだ非対称な範囲Mの測定値と補完された範囲Cの仮測定値との境界部に段差がある場合、この軸Aを挟んだ非対称な範囲Mの測定値と補完された範囲Cの仮測定値とを合わせた範囲を対象として、非球面の輪郭形状の測定値と非球面の輪郭形状の設計値とを用いて所定の第二の収束計算を行なう工程と、補完された範囲Cの仮測定値を削除する工程と、第二の収束計算後の非球面の輪郭形状の測定値のうち、軸Aを挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、測定値を得ていない軸Aで隔てた他方の側の所定範囲Cに設計座標における一つの座標軸(図1ではZ座標軸)に対して軸対称に仮測定値として補完する工程からなる処理とを、この境界部の段差が所定の一致条件を満足するまで繰り返す(以上の処理工程を以下、第二の処理工程とする。)。
【0032】
次いで、上記第一の処理工程及び第二の処理工程を介して得た、非球面の輪郭形状の測定値と非球面の輪郭形状の設計値とから非球面の輪郭形状の誤差を算出する。
このように、本発明の面形状の測定値の解析方法では、軸Aを挟んだ非対称な範囲Mの測定値のうち、軸Aを挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、測定値を得ていない範囲Cに、設計座標における一つの座標軸に対して軸対称に補完する際に生じる誤差(即ち、上記境界部の段差)に着目し、その誤差が収束するまで、上記のような所定の収束計算、補完された範囲の仮測定値の削除、収束計算後の測定値を用いた補完処理を繰り返すようにしている。
【0033】
このようにすると、測定値を得ていない範囲に測定値を補完しても高精度な輪郭形状の誤差が得られるようになる。
【0034】
ここで、本発明による面形状の測定値の解析方法における処理を従来の面形状測定機において一般に行われている測定値と設計値との収束計算の処理と対比して説明する。
本発明に対する比較例として、従来の面形状測定機において一般に行われている、軸に対して対称な有効径の範囲全体を対象とした、測定値と設計値とを用いた収束計算を、図2を用いて説明する。
図2は従来の面形状測定機において一般に行われている収束計算における、測定値(測定結果)と設計値(設計式)との関係を示すグラフであり、(a)は収束計算実施前の測定範囲における測定値と設計値を各々示すグラフ、(b)は収束計算実施前の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフ、(c)は収束計算実施後の測定範囲における測定値と設計値を各々示すグラフ、(d)は収束計算実施後の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフである。
なお、説明の便宜上、図2では測定座標(被測定物の測定値の基準となる座標)の座標軸と設計座標(設計値の基準となる座標)の座標軸とが一致するように示してある。
【0035】
従来の面形状測定機において一般に行われている収束計算では、設計値又は設計式(測定範囲における設計値を結んだ線を示す式)に対して測定値、又は測定値に対して設計値を、平行移動や傾きが変化するように座標変換させながら、収束させていく。なお、収束計算は、通常、一回では収束せず、繰り返し行なわれる。測定値と設計値との差分(図2(b))は、収束計算を繰り返すことによって小さくなる。このように、測定値と設計値の一方を他方に対し平行移動や傾きが変化するように座標変換をさせる収束計算を行なうと、図2(a)に示した被測定物のアライメント誤差(被測定物を測定機に配置したときの測定座標における被測定物の平行方向や傾きなどの位置ズレ)が図2(c)に示すように取り除かれていく。そして、最終的に所定の収束条件を満たしたときの算出結果である図2(d)が非球面の輪郭形状の誤差となる。なお、ここでの所定の収束条件は、求められる誤差の精度に応じて決める。例えば、特許文献3に開示されている収束条件や、RMS値等が規格値になったとき等の条件が適用できる。
【0036】
さらに、非球面の輪郭形状の誤差の評価に際しては、上記したような被測定物のアライメント誤差を取り除くための収束計算に加えて、特許文献1及び特許文献2に開示されているように、設計式のR(曲率半径)や非球面係数を変化させることによって、非球面の輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を求める収束計算を行なう。
そして、面形状の測定値の解析においては、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算の後に、非球面の輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を求める収束計算を行なう処置手順と、これらの収束計算を同時に行なう処理手順を取り得る。
【0037】
そこで、本発明の面形状の測定値の解析方法において、まず、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算と、非球面の輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を求める収束計算とを別々に実施する処置手順の一例について図3を用いて説明する。また、その処理手順における各ステップでの測定値と設計値との差分を図4に示すこととする。
図3は本発明の面形状の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4は図3に示した処理手順で処理を行なう本発明の面形状測定機の収束計算における、測定値と設計値との関係を示すグラフであり、(a)は収束計算実施前の測定範囲における測定値と設計値を各々示すグラフ、(b)は収束計算実施前の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフ、(c)は収束計算実施後の測定範囲における測定値と設計値を各々示すグラフ、(d)は収束計算実施後の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフである。図5は図3に示した処理手順で処理を行なう本発明の面形状測定機の収束計算における、図4に示した処理工程以降での測定結果と設計式との関係を示すグラフであり、(a)は収束計算実施後の測定範囲における測定値の一部を不足範囲に設計座標の基準軸に対して補完したときの測定値と設計値を各々示すグラフ、(b)は(a)の補完処理後、収束計算実施前の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフ、(c)は(a)の補完処理及び収束計算実施後の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフ、(d)は(a)の補完処理及び収束計算実施後の測定範囲における測定値と設計値を各々示すグラフ、(e)は(d)の収束計算実施後の測定範囲から、不足範囲を削除したときの測定値と設計値を各々示すグラフである。図6は図3に示した処理手順で処理を行なう本発明の面形状測定機の収束計算における、図5に示した処理工程以降の測定結果と設計式との関係を示すグラフであり、(a)は収束計算実施後の測定範囲における測定値の一部を不足範囲に設計座標の基準軸に対して補完したときの測定値と設計値を各々示すグラフ、(b)は(a)の補完処理後、収束計算実施前の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフ、(c)は(a)の補完処理及び収束計算実施後の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフ、(d)は収束計算実施後の測定範囲からの不足範囲を削除する工程、収束計算実施後の測定範囲における測定値の一部の不足範囲へ補完する工程、収束計算する工程からなる処理を段差が最小になるまで繰り返した後に、非球面の輪郭形状の測定値と非球面の輪郭形状の設計値とを所定の演算を介して比較した結果を輪郭形状の誤差として示すグラフである。
なお、説明の便宜上、図4では測定座標(被測定物の測定値の基準となる座標)の座標軸と設計座標(設計値の基準となる座標)の座標軸とが一致するように示してある。また、図4におけるグラフでは、軸を挟んだ対称な有効径の範囲全体における設計値に対する図1で示した範囲Mにおける測定値の差を表している。
【0038】
まず、図4(a)に示す範囲Mにおける測定結果(xi、zi)[iは範囲Mにおける所定の測定点で各々得られた測定値の個数:1、2、・・・n]と設計式Yを収束計算(フィッティング)させる(ステップS11〜S21)。ここでは、設置誤差を除くための収束計算を所定の収束条件を満たすまで実施させている。
この収束計算を介して、測定結果に対して設計値、または設計値に対して測定値を、平行移動や傾きが変化するように座標変換させる。ここでは、設計値に対して測定値の座標を変換させて、図4(c)に示すように、座標変換後の測定値(xij、zij)[ここでは、j=1(ステップS11)]を得ている。
【0039】
次いで、座標変換後の軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値(xij、zij)のうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、測定値を得ていない軸で隔てた他方の側の所定範囲Cに設計座標における一つの座標軸Zに対して軸対称に仮測定値として補完して、有効径全体の測定値(xij+、zij+)を作成する(ステップS31)。
本来、軸を中心として回転対称な非球面を持つ光学部材の非球面を測定すれば、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部には段差が生じないはずである。
しかし、実際の面形状の測定においては、被測定物の測定値の基準軸と設計値の基準軸が一致していないために、収束計算をしても正確な収束ができず、上記境界部に段差Δが生じ易い。
【0040】
そこで、この段差Δを低減するために、有効径全体の測定値(xij+、zij+)の範囲を対象として、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を実施して、座標変換された測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)を得る。そして、座標変換後の軸に対して非対称な範囲Mの測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)のうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、それ以前の処理工程において補完されている測定値と入れ替える。即ち、まず、座標変換後の測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)のうち、それ以前の工程において補完されている所定範囲Cに補完された仮測定値を削除する。そして、座標変換後の軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値(xi(j+1)、zi(j+1))のうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、所定範囲Cに、設計座標における一つの座標軸Zに対して軸対称に補完する。これにより、有効径全体の測定値(xij+、zij+)[ここでは、j=j+1]を作成する。そして、この被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を実施する工程、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、それ以前の処理工程において補完されている仮測定値と入れ替える工程を段差が最小(略なくなる)と認められるための所定の一致条件(例えば、段差が所定の値以下になる)を満足するまで繰り返す。
【0041】
段差が最小になるまで収束させたとき、測定座標の基準軸と設計座標の基準軸が略完全に一致し、被測定物の設置誤差が取り除かれたことになる。
これにより、測定値は、設計座標の基準軸に対して略軸対称に存在することになるので、測定値と設計値との偏差を計算することで、加工機等にフィードバックできる非球面の輪郭形状の誤差と評価結果を得ることができるようになる。
【0042】
なお、この段差が最小と認められると認められるための所定の一致条件を満足するまで繰り返す工程において行なう、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算は、1回でもよいし、所定の収束条件を満たすまで行なってもよい。また、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックは、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算の前、後いずれに行なってもよい。
【0043】
図3の例では、繰り返し工程(ステップS31〜S71)において、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算は、所定の収束条件を満たすまで行なっている(ステップS41)。
また、繰り返し工程において、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックを、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算の後に行なっている(ステップS51)。
【0044】
このときの測定座標と設計座標の関係を図5(d)に示す。
繰り返し工程においては、収束計算(ステップS41)を経て座標変換後の測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)のうち、それ以前の工程において補完されている所定範囲Cに補完された仮測定値を削除する(ステップS61、図5(e))。
そして、座標変換後の軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値(xij、zij)[j=j+1(ステップS71)]のうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、所定範囲Cに、設計座標における一つの座標軸Zに対して軸対称に仮測定値として補完する(ステップS31)。これにより、座標変換後の新たな有効径全体の範囲の測定値(xij+、zij+)が得られる。
そして、再度、設計式に対し、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なう(ステップS41)。このときの測定値と設計値との関係は、図6(a)、図6(b)のようになる。
【0045】
そして、このステップS31〜S71の処理工程を繰り返すと、図6(c)に示すように、段差が次第に収束し、最終的には、所定範囲Cに補完された仮測定値又はそれを結ぶ線は、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と境界部において殆ど段差がなく一致する。
【0046】
つまり、このような状態になったときに、測定座標の基準軸と設計座標の基準軸が略完全に一致し、被測定物の軸を挟んで対称となる有効径の範囲全体に測定値(xij、zij)が設定されたことになる。なお、ここで、jは収束計算の回数を示している。なお、段差が収束したことの確認は、段差Δ近傍のRMS値や重なる測定値の差分より行なうことができる。
【0047】
段差の一致条件を満たして、繰り返し工程を終了後に、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を介して座標変換された非球面の輪郭形状の測定値と、非球面の輪郭形状の設計値とから非球面の輪郭形状の誤差を算出する(ステップS81)。この算出値は、被測定物の設置誤差が取り除かれた正確な誤差として評価することができる。この非球面の輪郭形状の誤差の算出時における測定値と設計値との差を図6(d)に示す。
【0048】
さらに、有効径全体の測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)の範囲を対象として、ステップS81で算出された非球面の輪郭形状の誤差に対して、誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を所定の収束条件を満たすまで行なう(ステップS91)。このようにすれば、輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を評価することができる。
【0049】
変形例1
図7は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の図3の例に対する一変形例を示すフローチャートである。
図7の例では、繰り返し工程(ステップS32〜S72)において、被測定物の設置誤差を取り除くために行なう収束計算の回数を1回にしている(ステップS42)。
即ち、図7の例では、1回の収束計算ごとに、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、それ以前の処理工程において補完されている仮測定値と入れ替えている(ステップS62、S72、S32)。
また、図7の例では、段差の一致条件を満たして、繰り返し工程を終了後に、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なっている(ステップS82)。
その他の処理手順は、図3の例と略同じである。
【0050】
変形例2
図8は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の図3の例に対する他の変形例を示すフローチャートである。
図8の例では、繰り返し工程(ステップS33〜S73)において、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックを、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算の前に行なっている(ステップS43)。
その他の処理手順は、図3の例と略同じである。
【0051】
変形例3
図9は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の図3の例に対するさらに他の変形例を示すフローチャートである。
図9の例では、繰り返し工程(ステップS34〜S74)において、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックを、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算の前に行なっている(ステップS44)。
また、図9の例では、繰り返し工程において、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算の回数を1回にしている(ステップS54)。
即ち、図9の例では、1回の収束計算ごとに、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、それ以前の処理工程において補完されている仮測定値と入れ替えている(ステップS64、S74、S34)。
また、図9の例では、段差の一致条件を満たして、繰り返し工程を終了後に、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なっている(ステップS84)。
その他の処理手順は、図3の例と略同じである。
【0052】
上述した図3、図7〜図9の例において、被測定物の設置誤差を取り除く収束計算を行なった後に、輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を求める収束計算を行なう処理手順を示したが、本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法は、この処理手順に限定されるものではない。被測定物の設置誤差を取り除く収束計算と、輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を求める収束計算を同時に行なうようにしても良い。
そこで、次に、被測定物の設置誤差を取り除く収束計算と、輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を求める収束計算を同時に行なう処理手順を備えた例について説明する。
【0053】
図10は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の他の例を示すフローチャートである。
収束計算は、一般には、所定の収束条件を示すまで繰り返し行なう。しかし、測定値が得られていない領域Cが存在する状態で、設置誤差を取り除くための収束計算に加えて輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を求める収束計算を同時に所定の収束条件を満たすまで繰り返すと、設置誤差を含んだ輪郭形状の誤差に対して、その輪郭形状の誤差が最小となる間違ったR(曲率半径)や非球面係数が算出されてしまう。
【0054】
そこで、図10の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法においては、測定値が得られていない領域Cが存在する状態での、設置誤差を取り除くための収束計算と輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を求める収束計算とを同時に1回のみ行なうようにし、その収束計算の結果に基づいて、データ不足部への補完処理、収束計算処理、不足部からのデータ削除処理からなる処理を段差が最小となるまで繰り返すようにしている。
【0055】
まず、測定値(xi、zi)[iは測定データ数:1、2、・・・n]を得た軸を挟んだ非対称な範囲Mを対象として、測定値(xi、zi)[iは範囲Mにおける所定の測定点で各々得られた測定値の個数:1、2、・・・n]と設計式Yを収束(フィッティング)させる(ステップS111〜S121)。ここでは、設計値に対して設置誤差を取り除くための収束計算と、輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を求める収束計算とを同時に1回のみ行なう。
この収束計算を介して、測定値に対して設計値、または設計値に対して測定値を、平行移動や傾きが変化するように座標変換させると同時に、設計式のR(曲率半径)を変形させる。
ところで、上述したように、通常、収束計算は、1回では収束条件を満たさない。このため、設計値の基準軸を挟んで非対称な状態となる。ここでは、設計値に対して測定結果の座標を変換させて、図11(a)に示すように、座標変換後の測定結果(xij、zij)[ここでは、j=1(ステップS111)]を得ている。
【0056】
次いで、図11(b)に示すように、座標変換後の軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値(xij、zij)のうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、測定値を得ていないこの軸で隔てた他方の側の所定範囲Cに設計座標における一つの座標軸Zに対して軸対称に仮測定値として補完して、有効径全体の範囲の測定値(xij+、zij+)を作成する(ステップS131)。
なお、図11(b)においては、説明を簡略化するため便宜的に、設計値に対する測定値の差分を所定範囲Cに仮測定値として補完しているように示してあるが、実際には、差分ではなく測定値を所定範囲Cに補完するデータ処理を行なう。
【0057】
上述したように、軸を中心として回転対称な非球面を持つ光学部材の非球面を測定すれば、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部には段差が生じないはずである。
段差が生じる原因は、実際の面形状の測定において、被測定物の測定結果の基準軸と設計式の基準軸が一致していないため、収束計算をしても正確な収束ができていないことにある。
【0058】
そこで、この段差Δを低減するために、有効径全体の測定値(xij+、zij+)の範囲を対象として、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を実施し、座標変換した測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)を得る。そして、座標変換後の軸に対して非対称な範囲Mの測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)のうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、それ以前の処理工程において補完されている測定値と入れ替える。即ち、まず、座標変換後の測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)のうち、それ以前の工程において補完されている所定範囲Cに補完された仮測定値を削除する。そして、座標変換後の軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値(xi(j+1)、zi(j+1))のうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、所定範囲Cに、設計座標における一つの座標軸Zに対して軸対称に補完する。これにより、有効径全体の範囲の測定値(xij+、zij+)[ここでは、j=j+1]を作成する。そして、この被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を実施する工程、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、それ以前の処理工程において補完されている仮測定値と入れ替える工程を段差が最小(略なくなる)と認められるための所定の一致条件(例えば、段差が所定の値以下になる)を満足するまで繰り返す。
【0059】
段差が最小になるまで収束させたとき、測定座標の基準軸と設計座標の基準軸が略完全に一致し、被測定物の設置誤差が取り除かれたことになる。
これにより、測定値は、設計座標の基準軸に対して略対称に存在することになるので、測定値と設計値との偏差を計算することで、加工機等にフィードバックできる非球面の輪郭形状の誤差と評価結果を得ることができるようになる。
【0060】
なお、この段差が最小と認められるための所定の一致条件を満足するまで繰り返す工程において行なう、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算は、1回でもよいし、所定の収束条件を満たすまで行なってもよい。また、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックは、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算の前、後いずれに行なってもよい。
【0061】
図10の例では、繰り返し工程(ステップS131〜S171)において、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なっている(ステップS141)。
また、繰り返し工程において、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックを、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算の後に行なっている(ステップS151)。
【0062】
このときの設計値に対する測定値の差分を図11(c)に示す。
繰り返し工程においては、収束計算(ステップS141)を経て座標変換後の測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)のうち、それ以前の工程において補完されている所定範囲Cに補完された範囲の仮測定値を削除する(ステップS161)。
そして、図11(d)に示すように、座標変換後の軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値(xij、zij)[j=j+1(ステップS171)]のうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、所定範囲Cに、設計座標における一つの座標軸Zに対して軸対称に仮測定値として補完する(ステップS131)。これにより、座標変換後の新たな有効径全体の範囲の測定値(xij+、zij+)が得られる。
そして、再度、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なう(ステップS141)。
【0063】
そして、このステップS131〜S171の処理工程を繰り返すと、設計値に対する測定値の差分は、図11(c)、図11(d)、図11(e)、図11(f)に示すように、段差が次第に収束し、最終的には、所定範囲Cに補完された仮測定値又はそれを結ぶ線は、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と境界部において殆ど段差がなく一致する。
【0064】
つまり、このような状態になったときに、測定座標の基準軸と設計座標の基準軸が略完全に一致し、被測定物の軸を挟んだ対称となる有効径の範囲全体に測定値(xij、zij)が設定されたことになる。なお、ここで、jは収束計算の回数を示している。なお、段差が収束したことの確認は、段差Δ近傍のRMS値や重なる測定値の差分より行なうことができる。
【0065】
段差の一致条件を満たして、繰り返し工程を終了後に、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を介して座標変換された非球面の輪郭形状の測定値と、非球面の輪郭形状の設計値とから非球面の輪郭形状の誤差を算出する(ステップS181)。この算出値は、被測定物の設置誤差が取り除かれた正確な誤差として評価することができる。
【0066】
変形例4
図12は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の図10の例に対する一変形例を示すフローチャートである。
図12の例では、繰り返し工程(ステップS132〜S172)において、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を1回にしている(ステップS142)。
即ち、図12の例では、1回の収束計算ごとに、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、それ以前の処理工程において補完されている仮測定値と入れ替えている(ステップS162、S172、S132)。
また、図12の例では、段差の一致条件を満たして、繰り返し工程を終了後に、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なっている(ステップS182)。
その他の処理手順は、図10の例と略同じである。
【0067】
変形例5
図13は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の図10の例に対する他の変形例を示すフローチャートである。
図13の例では、繰り返し工程(ステップS133〜S173)において、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックを、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算の前に行なっている(ステップS143)。
その他の処理手順は、図10の例と略同じである。
【0068】
変形例6
図14は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の図10の例に対するさらに他の変形例を示すフローチャートである。
図14の例では、繰り返し工程(ステップS134〜S174)において、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックを、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算の前に行なっている(ステップS144)。
また、図14の例では、繰り返し工程において、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を1回にしている(ステップS154)。
即ち、図14の例では、1回の収束計算ごとに、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、それ以前の処理工程において補完されている測定値と入れ替えている(ステップS164、S174、S134)。
また、図14の例では、段差の一致条件を満たして、繰り返し工程を終了後に、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なっている(ステップS184)。
その他の処理手順は、図10の例と略同じである。
【0069】
上述した図3、図7〜図9、図10、図12〜図14に示した処理手順の例では、測定値の一部を設計座標の基準軸に対して対称に補完する前に、軸を挟んだ非対称な範囲を対象として、設計値に対して設置誤差を取り除くための収束計算を少なくとも1回行なっている。なお、測定値に対して設計値を収束計算した場合は、設計式Yは設計式Y1に変化する。そこで、設計式Y1の基準軸に対して対称に測定結果(x、z)の一部を補完することになる。
【0070】
なお、本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法は、被測定物の設置誤差(特に、シフト誤差)を小さくすることが可能な測定機においては、測定値の一部を設計座標の基準軸に対して軸対称に補完した後に、補完した範囲を含む有効径の全範囲の測定値を対象として、設計値に対して設置誤差を取り除くための収束計算を行なうような処理手順を採用することも可能である。
【0071】
被測定物の設置誤差(特に、シフト誤差)が大きいと、測定座標と設計座標のずれが大きくなる。そのような場合に、(被測定物の)軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値のうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、設計値を得ていない軸で隔てた他方の側の所定範囲Cに設計座標の一つの基準軸Zに対して軸対称に仮測定値として補完すると、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部が大きく離れることになり、設計値に対して設置誤差を取り除くための収束計算を行なった結果を用いて得られる形状の誤差の精度が悪くなる。
しかし、測定前に、被測定物の軸近傍で、測定座標の原点を作る(即ち、プローブの位置座標をゼロに設定する)作業を実施することができれば、被測定物の設置誤差(特に、シフト誤差)を小さくすることができる。具体的には、プローブの位置は、リニアスケールやレーザで測長しているため、リニアスケールやレーザをゼロに設定するようにすることで可能となる。
そこで、本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法において、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値のうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を設計座標の一つの基準軸に対して軸対称に仮測定値として補完した後に、補完した範囲を含む有効径の全範囲を対象として、設計値に対して設置誤差を取り除くための収束計算を行なう処理手順を採用した例について説明する。
【0072】
図15は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の他の例を示すフローチャートである。
図15の例の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法では、まず、測定値(xi、zi)[iは測定データ数:1、2、・・・n]を得た軸を挟んだ非対称な範囲Mのうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、測定値を得ていないこの軸で隔てた他方の側の所定範囲Cに設計座標における一つの座標軸Zに対して軸対称に仮測定値として補完して、有効径全体の測定値(xij+、zij+)[ここでは、j=1(ステップS211)]を作成する(ステップS221)。
【0073】
次いで、有効径全体の測定値(xij+、zij+)[iは測定データ数:1、2、・・・n]の範囲を対象として、測定値(xij+、zij+)と設計式Yを収束計算(フィッティング)させる(ステップS231)。ここでは、設計式に対して設置誤差を取り除くための収束計算を所定の収束条件を満たすまで実施させている。
この収束計算を介して、測定値に対して設計式、または設計式に対して測定値を、平行移動や傾きが変化するように座標変換させる。ここでは、設計式に対して測定結果の座標を変換させて、座標変換後の測定結果(xi(j+1)+、zi(j+1)+)[ここでは、j=1(ステップS211)]を得ている。
【0074】
次いで、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックを行なう(ステップS241)。
上述したように、軸を中心として回転対称な非球面を持つ光学部材の非球面を測定すれば、軸に非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部には段差が生じないはずである。
段差が生じる原因は、実際の面形状の測定において、被測定物の測定結果の基準軸と設計式の基準軸が一致していないため、収束計算をしても正確な収束ができていないことにある。
【0075】
そこで、この段差Δを低減するために、座標変換後の軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)のうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、それ以前の処理工程において補完されている測定値と入れ替える。即ち、まず、座標変換後の測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)のうち、それ以前の工程において補完されている所定範囲Cに補完された仮測定値を削除する。そして、座標変換後の軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値(xij、zij)[ここでは、j=j+1]のうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、所定範囲Cに、設計座標における一つの座標軸Zに対して軸対称に仮測定値として補完する。これにより、有効径全体の範囲の測定値(xij+、zij+)を作成する。そして、この軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、それ以前の処理工程において補完されている仮測定値と入れ替える工程、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を実施する工程を段差が最小(略なくなる)と認められるための所定の一致条件(例えば、段差が所定の値以下になる)を満足するまで繰り返す。
【0076】
段差が最小になるまで収束させたとき、測定座標の基準軸と設計座標の基準軸が略完全に一致し、被測定物の設置誤差が取り除かれたことになる。
これにより、測定値は、設計座標の基準軸に対して略対称に存在することになるので、測定値と設計値との偏差を計算することで、加工機等にフィードバックできる非球面の輪郭形状の誤差と評価結果を得ることができるようになる。
【0077】
なお、この段差が最小と認められると認められるための所定の一致条件を満足するまで繰り返す工程において行なう、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算は、1回でもよいし、所定の収束条件を満たすまで行なってもよい。また、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックは、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算の前、後いずれに行なってもよい。
【0078】
図15の例では、繰り返し工程(ステップS231〜S271)において、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なっている(ステップS231)。
また、繰り返し工程において、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックを、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算の後に行なっている(ステップS241)。
【0079】
繰り返し工程においては、収束計算(ステップS241)を経て座標変換後の測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)のうち、それ以前の工程において補完されている所定範囲Cに補完された範囲の仮測定値を削除する(ステップS251)。
そして、座標変換後の軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値(xij、zij)[j=j+1(ステップS261)]のうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、所定範囲Cに、設計座標における一つの座標軸Zに対して軸対称に仮測定値として補完する(ステップS271)。これにより、座標変換後の新たな有効径全体の範囲の測定値(xij+、zij+)が得られる。
そして、再度、設計式に対し、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なう(ステップS231)。
【0080】
そして、このステップS231〜S271の処理工程を繰り返すと、設計値に対する測定値の差分は、段差が次第に収束し、最終的には、所定範囲Cに補完された仮測定値又はそれを結ぶ線は、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と境界部において殆ど段差がなく一致する。
【0081】
つまり、このような状態になったときに、測定座標の基準軸と設計座標の基準軸が略完全に一致し、被測定物の軸を挟んだ対称となる有効径の範囲全体に測定値(xij、zij)が設定されたことになる。なお、ここで、jは収束計算の回数を示している。なお、段差が収束したことの確認は、段差Δ近傍のRMS値や重なる測定値の差分より行なうことができる。
【0082】
段差の一致条件を満たして、繰り返し工程を終了後に、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を介して座標変換された非球面の輪郭形状の測定値と、非球面の輪郭形状の設計値とから非球面の輪郭形状の誤差を算出する(ステップS281)。この算出値は、被測定物の設置誤差が取り除かれた正確な誤差として評価することができる。
【0083】
さらに、有効径全体の測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)の範囲を対象として、ステップS281で算出された非球面の輪郭形状の誤差に対して、誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を所定の収束条件を満たすまで行なう(ステップS291)。このようにすれば、輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を評価することができる。
【0084】
変形例7
図16は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の図15の例に対する一変形例を示すフローチャートである。
図16の例では、繰り返し工程(ステップS232〜S272)において、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を1回にしている(ステップS232)。
即ち、図16の例では、1回の収束計算ごとに、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、それ以前の処理工程において補完されている測定値と入れ替えている(ステップS252、S262、S272)。
また、図16の例では、段差の一致条件を満たして、繰り返し工程を終了後に、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なっている(ステップS292)。
その他の処理手順は、図15の例と略同じである。
【0085】
変形例8
図17は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の図15の例に対する他の変形例を示すフローチャートである。
図17の例では、繰り返し工程(ステップS233〜S273)において、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックを、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算の前に行なっている(ステップS233)。
なお、測定値(xi、zi)[iは測定データ数:1、2、・・・n]を得た軸を挟んだ非対称な範囲Mのうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、測定値を得ていないこの軸で隔てた他方の側の所定範囲Cに設計座標における一つの座標軸Zに対して軸対称に仮測定値として補完して、有効径全体の範囲の測定値(xij+、zij+)[ここでは、j=1(ステップS213)]を作成した(ステップS223)ときに、所定範囲Cに補完された仮測定値又はそれを結ぶ線は、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と境界部において殆ど段差がなく一致した場合には、繰り返し工程を経ず、収束計算を1回も行なっていないことになる。そこで、そのような場合には、有効径全体の測定値(xij+、zij+)の範囲を対象として、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を所定の収束条件を満たすまで行ない、座標変換した測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)を得る(ステップS293)。
その他の処理手順は、図15の例と略同じである。
【0086】
変形例9
図18は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の図15の例に対するさらに他の変形例を示すフローチャートである。
図18の例では、繰り返し工程(ステップS234〜S274)において、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックを、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算の前に行なっている(ステップS234)。
また、図18の例では、繰り返し工程において、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算の回数を1回にしている(ステップS254)。
即ち、図18の例では、1回の収束計算ごとに、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、それ以前の処理工程において補完されている仮測定値と入れ替えている(ステップS254、S264、S274)。
また、図18の例では、段差の一致条件を満たして、繰り返し工程を終了後に、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なっている(ステップS284)。
その他の処理手順は、図15の例と略同じである。
【0087】
上述した図15〜図18の例において、被測定物の設置誤差を取り除く収束計算を行なった後に、輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を求める収束計算を行なう処理手順を示したが、上述したように、本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法は、この処理手順に限定されるものではない。被測定物の設置誤差を取り除く収束計算と、輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を求める収束計算を同時に行なうようにしても良い。
そこで、次に、被測定物の設置誤差を取り除く収束計算と、輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を求める収束計算を同時に行なう処理手順を備えた例について説明する。
【0088】
図19は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の他の例を示すフローチャートである。
収束計算は、一般には、所定の収束条件を示すまで繰り返し行なう。しかし、測定値が得られていない領域Cが存在する状態で、設置誤差を取り除くための収束計算に加えて輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を求める収束計算を同時に所定の収束条件を満たすまで繰り返すと、設置誤差を含んだ輪郭形状の誤差に対して、その輪郭形状の誤差が最小となる間違ったR(曲率半径)や非球面係数が算出されてしまう。
【0089】
そこで、図19の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法においては、測定値が得られていない領域Cが存在する状態での、設置誤差を取り除くための収束計算と輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を求める収束計算とを同時に1回のみ行なうようにし、その収束計算の結果に基づいて、データ不足部への補完処理、収束計算処理、不足部からのデータ削除処理からなる処理を段差が最小となるまで繰り返すようにしている。
【0090】
まず、測定値(xi、zi)[iは測定データ数:1、2、・・・n]を得た軸に対して非対称な範囲Mのうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、測定値を得ていないこの軸で隔てた他方の側の所定範囲Cに設計座標における一つの座標軸Zに対して軸対称に仮測定値として補完して、有効径全体の範囲の測定値(xij+、zij+)[ここでは、j=1(ステップS411)]を作成する(ステップS421)。
【0091】
次いで、有効径全体の測定値(xij+、zij+)[iは測定データ数:1、2、・・・n]の範囲を対象として、測定値(xij+、zij+)と設計式Yを収束計算(フィッティング)させる(ステップS431)。ここでは、設計式に対して設置誤差を取り除くための収束計算と、輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を求める収束計算とを同時に1回のみ行なう。
この収束計算を介して、測定値に対して設計式、または設計式に対して測定値を、平行移動や傾きが変化するように座標変換させると同時に、設計式のR(曲率半径)を変形させる。
ところで、上述したように、通常、収束計算は、1回では収束条件を満たさない。このため、設計式の基準軸に対して非対称な状態となる。ここでは、設計式に対して測定結果の座標を変換させて、座標変換後の測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)[ここでは、j=1(ステップS411)]を得ている。
【0092】
上述したように、軸を中心として回転対称な非球面を持つ光学部材の非球面を測定すれば、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部には段差が生じないはずである。
段差が生じる原因は、実際の面形状の測定において、被測定物の測定値の基準軸と設計式の基準軸が一致していないため、収束計算をしても正確な収束ができていないことにある。
【0093】
そこで、この段差Δを低減するために、座標変換後の軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)のうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、それ以前の処理工程において補完されている測定値と入れ替える。即ち、まず、座標変換後の測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)のうち、それ以前の工程において補完されている所定範囲Cに補完された仮測定値を削除する。そして、座標変換後の軸に対して非対称な範囲Mの測定値(xi(j+1)、zi(j+1))のうち、軸に対して対称な範囲を除いた範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、所定範囲Cに、設計座標における一つの座標軸Zに対して軸対称に仮測定値として補完する。これにより、有効径全体の範囲の測定値(xij+、zij+)[ここでは、j=j+1]を作成する。さらに、有効径全体の測定値(xij+、zij+)の範囲を対象として、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を実施し、座標変換した測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)を得る。そして、この軸を挟んだ対称な範囲を除いた範囲の測定値を、それ以前の処理工程において補完されている測定値と入れ替える工程、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を実施する工程、を段差が最小(略なくなる)と認められるための所定の一致条件(例えば、段差が所定の値以下になる)を満足するまで繰り返す。
【0094】
段差が最小になるまで収束させたとき、測定座標の基準軸と設計座標の基準軸が略完全に一致し、被測定物の設置誤差が取り除かれたことになる。
これにより、測定値は、設計座標の基準軸に対して略軸対称に存在することになるので、測定結果と設計式の偏差を計算することで、加工機等にフィードバックできる非球面の輪郭形状の誤差と評価結果を得ることができるようになる。
【0095】
なお、この段差が最小と認められると認められるための所定の一致条件を満足するまで繰り返す工程において行なう、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算は、1回でもよいし、所定の収束条件を満たすまで行なってもよい。また、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックは、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算の前、後いずれに行なってもよい。
【0096】
図19の例では、繰り返し工程(ステップS441〜S481)において、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算は、所定の収束条件を満たすまで行なっている(ステップS481)。
また、繰り返し工程において、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックを、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算の後に行なっている(ステップS441)。
【0097】
繰り返し工程においては、座標変換後の測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)のうち、それ以前の工程において補完されている所定範囲Cに補完された仮測定値を削除する(ステップS451)。
そして、座標変換後の軸に対して非対称な範囲Mの測定値(xij、zij)[j=j+1(ステップS461)]のうち、軸に対して対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、所定範囲Cに、設計座標における一つの座標軸Zに対して軸対称に仮測定値として補完する(ステップS471)。これにより、座標変換後の新たな有効径全体の測定値(xij+、zij+)が得られる。
そして、再度、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なう(ステップS481)。
【0098】
そして、このステップS441〜S481の処理工程を繰り返すと、設計値に対する測定値の差分は、段差が次第に収束し、最終的には、所定範囲Cに補完された測定値又はそれを結ぶ線は、軸に非対称な測定値又はそれを結ぶ線と境界部において殆ど段差がなく一致する。
【0099】
つまり、このような状態になったときに、測定座標の基準軸と設計座標の基準軸が略完全に一致し、被測定物の軸に対して対称となる有効径の範囲全体に測定値(xij、zij)が設定されたことになる。なお、ここで、jは収束計算の回数を示している。なお、段差が収束したことの確認は、段差Δ近傍のRMS値や重なる測定値の差分より行なうことができる。
【0100】
段差の一致条件を満たして、繰り返し工程を終了後に、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を介して座標変換された非球面の輪郭形状の測定値と、非球面の輪郭形状の設計値とから非球面の輪郭形状の誤差を算出する(ステップS491)。この算出値は、被測定物の設置誤差が取り除かれた正確な誤差とすることができる。
【0101】
変形例10
図20は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の図19の例に対する一変形例を示すフローチャートである。
図20の例では、繰り返し工程(ステップS432〜S472)において、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を1回にしている(ステップS432)。
即ち、図20の例では、1回の収束計算ごとに、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、それ以前の処理工程において補完されている仮測定値と入れ替えている(ステップS452、S462、S472)。
また、図20の例では、段差の一致条件を満たして、繰り返し工程を終了後に、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なっている(ステップS482)。
その他の処理手順は、図19の例と略同じである。
【0102】
変形例11
図21は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の図19の例に対する他の変形例を示すフローチャートである。
図21の例では、繰り返し工程(ステップS433〜S473)において、軸に非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックを、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算の前に行なっている(ステップS433)。
なお、測定値(xi、zi)[iは測定データ数:1、2、・・・n]を得た軸を挟んだ非対称な範囲Mのうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、測定値を得ていない該軸で隔てた他方の側の所定範囲Cに設計座標における一つの座標軸Zに対して軸対称に補完して、有効径全体の測定値(xij+、zij+)[ここでは、j=1(ステップS413)]を作成した(ステップS423)ときに、所定範囲Cに補完された測定値又はそれを結ぶ線は、軸に非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と境界部において殆ど段差がなく一致した場合には、繰り返し工程を経ず、収束計算を1回も行なっていないことになる。そこで、そのような場合には、有効径全体の測定値(xij+、zij+)の範囲を対象として、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を所定の収束条件を満たすまで行ない、座標変換した測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)を得る(ステップS493)。
その他の処理手順は、図19の例と略同じである。
【0103】
変形例12
図22は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の図19の例に対するさらに他の変形例を示すフローチャートである。
図22の例では、繰り返し工程(ステップS434〜S474)において、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックを、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算の前に行なっている(ステップS434)。
また、図22の例では、繰り返し工程において、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を1回にしている(ステップS444)。
即ち、図22の例では、1回の収束計算ごとに、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、それ以前の処理工程において補完されている測定値と入れ替えている(ステップS454、S464、S474)。
また、図22の例では、段差の一致条件を満たして、繰り返し工程を終了後に、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なっている(ステップS484)。
その他の処理手順は、図19の例と略同じである。
【0104】
上述した図15〜図22に示した処理手順の例では、測定値の一部を設計座標の基準軸に対して軸対称に仮測定値として補完した後に、軸を挟んだ非対称な範囲を対象として、設計式に対して設置誤差を取り除くための収束計算を少なくとも1回行なっている。なお、測定結果に対して設計式を収束計算した場合は、設計式Yは設計式Y1に変化する。そこで、設計式Y1の基準軸に対して軸対称に測定結果(x、z)の一部を仮測定値として補完することになる。
【0105】
次に、本発明の面形状の測定値の解析方法における処理手順の一例を図23を用いて説明する。また、その処理手順における各ステップでの測定値と設計値との差分を図24に示すこととする。
図23は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図24は図23に示した処理手順で処理を行なう本発明の面形状測定機の収束計算における、測定値と設計値との関係を示すグラフであり、(a)は軸に対して測定値を反転させたときの測定値と設計値を各々示すグラフ、(b)は(a)の反転処理時の測定値と設計値との差を示すグラフ、(c)は(a)の反転処理後、反転前の測定値と反転前の測定値とが重なり合う範囲において、反転前の測定値と反転後の測定値との誤差が最小となるように座標変換したときの測定値と設計値との差を示すグラフ、(d)は座標変換後の非球面の輪郭形状の測定値と非球面の輪郭形状の設計値とを所定の演算を介して比較した結果を輪郭形状の誤差として示すグラフである。
【0106】
本発明の測定値の解析方法では、軸Aを挟んだ非対称な範囲Mの測定値(xi、zi)[iは範囲Mにおける所定の測定点で各々得られた測定値の個数:1、2、・・・n]の全部又は一部を、もとの測定値(xi、zi)と一部で重なるように、軸Aに対して軸対称に反転して、有効径全体の測定値(xi+、zi+)を作成する(ステップS51)。なお、図23、図24の例では、軸Aを挟んだ非対称な範囲Mの測定値(xi、zi)のうち、軸Aを隔てて有効径の測定値を得ている側の値を反転させたが、もとの測定値(xi、zi)と一部で重なるように反転させることで有効径全体の測定値が作成できれば、反転させる範囲は限定されない。例えば、軸Aを挟んだ非対称な範囲Mの測定値(xi、zi)の全部を反転させても良い。
本来、軸を中心として回転対称な非球面を持つ光学部材の非球面を測定すれば、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、反転した範囲の測定値又はそれを結ぶ線とには段差が生じないはずである。
しかし、実際の面形状の測定においては、被測定物の測定値の基準軸と設計値の基準軸が一致していないために、収束計算をしても正確な収束ができず、段差Δが生じ易い。
【0107】
そこで、この段差Δを低減するために、有効径全体の測定値(xi+、zi+)の範囲のうち、反転前の非球面の輪郭形状の測定値と反転後の非球面の輪郭形状の測定値とが重なり合う範囲において、反転前の非球面の輪郭形状の測定値と反転後の非球面の輪郭形状の測定値との誤差が最小となるように座標変換して補完し、これらの範囲を合わせた全範囲の測定値(xi1+、Zi1+)を得る(ステップS52)。
【0108】
次いで、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を介して座標変換された非球面の輪郭形状の測定値と、非球面の輪郭形状の設計値とから非球面の輪郭形状の誤差を算出する(ステップS53)。この算出値は、被測定物の設置誤差が取り除かれた正確な誤差として評価することができる。この非球面の輪郭形状の誤差の算出時における測定値と設計値との差を図24(d)に示す。
【0109】
このとき、測定座標の基準軸と設計座標の基準軸が略完全に一致し、被測定物の設置誤差が取り除かれたことになる。
これにより、測定値は、設計座標の基準軸に対して略軸対称に存在することになるので、測定値と設計値との偏差を計算することで、加工機等にフィードバックできる非球面の輪郭形状の誤差と評価結果を得ることができるようになる。
【0110】
さらに、有効径全体の測定値(xi1+、zi1+)の範囲を対象として、ステップS54で算出された非球面の輪郭形状の誤差に対して、誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を所定の収束条件を満たすまで行なう(ステップS54)。このようにすれば、輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を評価することができる。
【0111】
なお、被測定物のアライメント誤差が大きい場合には、図3のステップS21に示すのと同様の設置誤差を除くための収束計算を行なうようにしてもよい。
即ち、上述したステップS51の処理に先立ち、例えば、まず、図4(a)に示した範囲Mにおける測定結果(xi、zi)[iは範囲Mにおける所定の測定点で各々得られた測定値の個数:1、2、・・・n]と設計式Yを収束計算(フィッティング)させ(ステップS11〜S21)、設置誤差を除くための収束計算を所定の収束条件を満たすまで実施させる。
この収束計算を介して、測定結果に対して設計値、または設計値に対して測定値を、平行移動や傾きが変化するように座標変換させる。例えば、設計値に対して測定値の座標を変換させて、図4(c)に示したように、座標変換後の測定値(xi1、zi1)を得る。
そして、この座標変換後の測定値(xi1、zi1)を用いて、上述したステップS51〜S54と同様の処理を行なう。
【0112】
次に、本発明の面形状の測定値の解析方法を行なう本発明の面形状測定機の実施形態について図を用いて説明する。なお、本発明の面形状測定機は、以下の実施形態に限定されるものではない。
図1(a)は本発明の一実施形態にかかる面形状測定機における被測定物の保持部を表す説明図である。
保持部12は、基台12aと回動台12bを有している。回動台12bは、被測定物Oを載置する載置部12b1と、X−Z面に対して垂直な所定の軸Bを回転中心とした曲率を有する摺動面12b2を有している。基台12aは固定されている。基台12aの内側は、摺動面12b2が摺動に合わせた曲率を有する摺動面12a1を有している。そして、保持部12は、基台12aに対して回動台12bが所定の軸Bを中心として回動し、例えば、図25に示すように、測定用のプローブ11に対し被測定物Oを傾斜させることが可能となっている。
なお、本実施形態では、プローブ11は、接触式のものを用いているが、非接触式のものを用いてもよい。また、被測定物Oは、軸を中心として回転対称な非球面を持つ光学部材であれば、凹面、凸面のいずれの面形状を持つものでもよい。
【0113】
図25はプローブ11の先端部を接触させたときの接触する面の法線と軸Aとのなす角度aが90度となるように、保持部12の回動台12bを傾斜させて、被測定物Oである軸を中心として回転対称な非球面を持つ光学部材におけるその非球面の輪郭形状を測定する様子を示す説明図である。図25中、Dは保持部12の中心軸、Bは回動台12bの回転中心である。
【0114】
ここで、回動台12bの回転中心Bと被測定物Oの被測定面における軸A付近の曲率中心とが一致するように配置すれば、被測定物における所定の範囲Mを測定しやすくなるので望ましい。
しかし、そのためには、非球面形状の異なる被測定物を測定するたびに、保持部12に回動台12bの回転中心Bと被測定物の被測定面における軸A付近の曲率中心とを一致させるための治具が必要になり、現実的ではない。
このため、本実施形態の面形状測定機を用いた面形状測定方法においては、回動台12bの回転中心Bと被測定物Oの被測定面における軸A付近の曲率中心とが一致しない場合についても、輪郭形状の測定が可能にしている。なお、その方法については後述する。
【0115】
本実施形態の面形状測定機を用いた面形状測定方法について図26を用いて説明する。
図26は本実施形態にかかる面形状測定機を用いた面形状測定方法における輪郭形状の測定手順を示す説明図である。
まず、被測定物Oの設計式を用いて、プローブ11と被測定面との最大接触角度(即ち、プローブ11の先端部を接触させたときの接触する面の法線と軸Aとのなす角度a)を算出する(ステップS61)。次いで、算出した接触角度が、面形状測定機において測定可能な範囲であるか否かを判断する(ステップS62)。なお、初期状態においては、保持部12の回動台12bは、図1(a)に示すように、被測定物Oを載置する面を水平に保った状態にして配置されている。
算出した接触角度が面形状測定機において測定可能な範囲内の場合、被測定物Oの姿勢を補正せずに測定する。すなわち、保持部12の回動台12bにおける被測定物Oを載置する面を水平に保った状態のまま、被測定物Oにおける被測定面の輪郭形状を測定する(ステップS64)。
【0116】
算出した接触角度が面形状測定機において測定可能な範囲外の場合、即ち、被測定物の被測定面において面形状測定機の測定可能範囲外となる部位については、被測定物の姿勢を補正(ステップS63)して測定する。すなわち、保持部12における基台12aに対し、被測定物Oを載置した回動台12bを、水平状態から所定角度αだけ傾斜させる。これに伴い、被測定物Oは、水平状態から所定角度αだけ傾斜する。
【0117】
ここで、被測定物の姿勢を補正するための傾斜角度αの決定は、次のようにして行なう。
通常、接触式のプローブの測定可能範囲は、プローブの先端部に対して接触する面の法線と軸Aとのなす角度(接触角度)aが60度以内となっている。
また、非接触式のプローブの測定可能範囲は、プローブの先端部に対して接触する面の法線と軸Aとのなす角度aが30度以内となっている。
ここで、被測定物Oの設計式より算出される、プローブの先端部に対して接触する面の法線と軸Aとのなす最大接触角度をbとすると、次のように傾斜角度αを決定することができる。
b≦aのとき、保持部12における回動台12bは、水平状態を保ち、傾斜角度α=0となる。
b>aであり、且つ、
b/2<aのとき、保持部12における回動台12bの傾斜角度αは、b−a≦α<aとなる。
b/2≧aのとき、傾斜角度αは、測定可能範囲内で測定値が重畳する角度が測定毎に選択される。
【0118】
例えば、接触式のプローブを有する面形状測定機(プローブの先端部に対して接触する被測定物の面の法線と軸Aとのなす角度aが60度以内)を介して、プローブの先端部に対して接触する面の法線と軸Aとのなす最大接触角度bが90度となる被測定物Oを測定する場合、b>a、且つ、b/2<aであり、傾斜角度αはb−a≦α<aであるから30度以上60度未満である。図25の例では、回動台12bを傾斜角度α=30度で傾斜させている。
【0119】
ここで、回動台12bの回転中心Bと被測定物Oの被測定面における軸A付近の曲率中心とが一致しない場合の測定方法について、図27を用いて説明する。
プローブ11先端の位置Pと回動台12bの回転中心Bは、面形状測定機の設計値から容易に分かる。そこで、図27(a)に示すように、傾斜角度α=0に設定された保持部12における回動台12bの載置部12b1の中心部に被測定物Oを載置する。次いで、プローブ11を被測定物Oにおける光軸A位置近傍に接触させて、プローブ先端の位置情報を取得する。
プローブ11先端の位置Pと、保持部12における回動台12bの回転中心Bの位置関係(距離S)は既知であることから、被測定面までのプローブ11の移動量Lがわかれば、被測定物Oの位置関係も明確になり、プローブ11と被測定物Oの位置関係が把握できる。
つまり、図27(b)に示すように、保持部12における回動台12bを所定の傾斜角度αだけ傾斜させたときの被測定物Oの面頂位置の横方向の移動量Δxは、式(1)に従って計算できる。その結果、被測定物Oの測定面の測定位置を正確に把握することができる。
ここで、距離Sは、プローブ11先端の位置Pに対して、被測定物Oの方向に保持部12における回動台12bの回転中心BがあればS>0とし、逆方向にある場合はS<0とする。
(数1)
被測定物Oの面頂位置のずれ:
Δx=|L−S|sinα …(1)
【0120】
被測定物Oの姿勢を補正後、輪郭形状を測定する(ステップS64)。
このステップS61〜ステップS64の処理を、軸Aで隔てた一方の側の最外径の位置P1から他方の側の所定位置P2までの軸Aを挟んだ非対称な範囲Mについて行なう(ステップS65,S66)。
【0121】
次いで、輪郭形状の測定結果を評価するため、上述した解析方法による解析処理を行なう。
このため、本実施形態によれば、軸を挟んだ対称な有効径の範囲のうち、軸を挟んだ対称な一方の側の一部を測定しなくても、輪郭形状の誤差を高精度に算出・評価することができる。
【0122】
上述した、本発明の実施形態においては、プローブ11の先端部に対して接触する被測定物Oの面の法線と軸Aとのなす最大角度bが、面形状測定機での測定可能範囲を超えた場合、被測定物の姿勢を変化させるため保持部12の回動台12aを所定の傾斜角度αだけ傾斜させた例について説明した。
ところで、面形状測定機での測定可能範囲を超えた場合、基本的にはプローブ11と被測定物Oとの相対的な角度を変化させればよい。このため、被測定物に対するプローブ11の傾斜角度αを変化させる構成、測定方法としてもよい。本発明の解析方法は、いずれの構成・方法による測定値に対しても用いることができる。
【0123】
そこで、本発明の他の実施形態として被測定物に対するプローブの所定の傾斜角度αを変化させる例について説明する。この場合、傾斜角度αを変化させた場合のプローブと被測定物の位置関係の算出方法が、上述した算出方法とは異なる。
そこで、この場合におけるプローブと被測定物の位置関係の算出方法を、図28を用いて説明する。
図28は本発明の他の実施形態にかかる面形状測定機、及び面形状測定方法を用いて被測定物の非球面の輪郭形状を測定する様子を示す説明図であり、(a)は傾斜角度0度に設定されたプローブ先端の位置とプローブを傾斜させる手段の回転中心の位置関係を示す図、(b)はプローブを一定の傾斜角度だけ傾斜させた状態を示す図である。
本実施形態の測定方法では、プローブ11を被測定物Oに対し、傾斜させている。
まず、プローブ11の軸A’と被測定物Oの軸Aとのなす角度(傾斜角度)を角度α’とする。ここで、プローブ11を傾斜させる手段は、不図示のエアースピンドル、ゴニオステージなど、特に限定されない。
【0124】
まず、α’=0のとき、被測定物Oの面頂にプローブ11を接触させてプローブ11先端の位置情報を取得する。
図28(a)に示す傾斜角度0度に設定されたプローブ11先端の位置Pとプローブ11を傾斜させる手段の回転中心OPの位置関係(距離SP)は、設計上既知であることから、図28(b)に示すプローブ11を一定の傾斜角度α’だけ変化させたときのプローブ11の位置の横方向の移動量Δx’は式(2)に従って計算することができる。その結果、被測定物Oの測定面の測定位置を正確に把握することができる。
ここで、距離SPは、プローブ11を傾斜させる手段の回転中心OPが、プローブ11先端の位置Pに対して被測定物Oの方向に位置するときはSP>0、逆方向に位置するときはSP<0とする。
(数2)
プローブの接触点と被測定物の面頂位置のずれ:
Δx’=|LP−SP|sinα’ …(2)
【0125】
プローブ11の傾斜角度を補正後、輪郭形状を測定する。そして、上述したステップS61〜S64の処理を、軸Aで隔てた一方の側の最外径の位置P1から他方の側の所定位置P2までの軸Aを挟んだ非対称な範囲Mについて行なう。
次いで、輪郭形状の誤差を測定するため、上述した解析方法による解析処理を行なう。
【0126】
従って、本発明の面形状の測定装置によれば、従来のように、軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材における、その非球面の輪郭形状の測定において、軸を挟んだ対称な有効径の範囲全体を対象として測定することなく輪郭形状の誤差を高精度に評価することができる。
そして、軸を挟んだ対称な有効径の範囲全体を対象として測定しなくて済む結果、プローブとの接触角度が測定機の許容傾斜角度の範囲以上となる輪郭形状を持つ被測定物に対し、その被測定物を傾けて有効径の範囲を測定する場合において、測定回数、測定時間を大幅に低減することができる。
なお、測定後の解析における収束計算は、コンピュータを介して行なうため、収束計算結果を瞬時に得ることができる。このため、仮に、本発明における収束計算の繰り返し回数が、従来の有効径の範囲全体を対象として測定した測定結果に対して収束計算を行なう場合の繰り返し回数より増えたとしても、処理時間に及ぼす影響は殆どなく、測定時間を低減する効果を損ねることはない。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明は、軸を中心として回転対称な非球面を持つ光学部材やその金型、部品などの面形状を測定し、評価することが求められる分野に有用である。
【符号の説明】
【0128】
10 面形状測定機
11 プローブ
12 保持部
12a 基台
12b 回動台
12a1 摺動面
12b1 載置部
12b2 摺動面
A 被測定物の軸
A’ プローブの軸
B 回動台の回転中心
C 測定値が欠落または不足する範囲
M 軸Aを挟んだ非対称な範囲
Ma 範囲Mのうち、軸Aを挟んだ対称な範囲
Mb 範囲Mのうち、範囲Maを除いた範囲
O 被測定物
P プローブ先端の位置
P1 軸Aで隔てた一方の側の最外径の位置
P2 他方の側の所定位置
a プローブの先端部に対して接触する面の法線と軸Aとのなす角度
α 回動台の傾斜角度
α’ プローブの傾斜角度
【技術分野】
【0001】
本発明は、面形状測定機、面形状の測定方法、及び面形状の測定値の解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学素子やその金型、部品などの面形状を測定し、評価するために、面形状測定機が利用されている。特に、被測定物が軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材(以下、非球面部材とする。)である場合、非球面の全体形状は、その軸から片側の輪郭形状をその軸を中心として一回転させた形状に略等しくなる。
【0003】
一般に、非球面部材は、旋盤などの回転加工機を介して加工されている。回転加工機は、軸を中心として被加工物を回転させた状態で、刃物を被加工物に当てながら、軸方向及び回転半径方向に動かすことによって、被加工物を回転対称な非球面形状に加工する。
このため、非球面部材を被測定物とした場合、その軸から片側の輪郭形状を測定し、測定値と設計値とを所定の演算を介して比較することにより、輪郭形状の誤差を偏差として算出できる。そして、この算出結果を回転加工機にフィードバックすることで、被測定物の非球面の形状を補正しながら高精度に加工することができる。
【0004】
ここで、回転加工機について、さらに詳しく説明する。回転加工機は、軸を中心として回転させている被加工物に刃物を当てながら、軸から所定量離れた位置から軸の位置まで回転半径方向に移動させることで、有効径を含む部材の面全体を加工する。
このため、回転加工機へフィードバックするための面形状補正用のデータは、被測定物における軸を通る一つの輪郭形状のうち、その軸から片側の範囲についての輪郭形状の誤差の算出結果で足りる。
【0005】
言い換えれば、非球面部材においては、少なくとも軸から片側の範囲についての輪郭形状の誤差を算出すれば、面形状の評価および補正加工が可能である。
しかし、非球面部材における輪郭形状の誤差を精度良く算出するためには、軸を挟んだ両側の範囲についての輪郭形状の測定値が必要となる。
【0006】
その理由を以下に、図29を用いて詳細に説明する。
図29は軸を中心として回転対称な非球面を持つ光学部材における軸を通る一つの輪郭形状の所定範囲(X)を対象として測定し、測定した範囲において、輪郭形状の測定値と輪郭形状の設計値とを所定の演算を介して比較した結果を輪郭形状の誤差(ΔZ)として示すグラフであり、(a)はその軸を挟んだ対称な有効径の範囲を対象としたときのグラフ、(b)はその軸で隔てた一方の側の最外径位置から他方の側の所定位置までの軸を挟んだ非対称な範囲を対象として、アライメント誤差を取り除いたときのグラフ、(c)は(b)で算出した輪郭形状の誤差に対して、さらに収束計算を実施した結果を示すグラフである。
【0007】
通常、面形状の測定は面形状測定機を介して、被測定物における軸を通る一つの輪郭形状を、その軸に対称な有効径の範囲を対象として測定する。そして、その輪郭形状の評価を行なう際は、輪郭形状の測定値と輪郭形状の設計値とを所定の演算を介して比較することで形状の誤差を算出する。所定の演算では、最小二乗法やニュートン法という計算手法を用いて、例えば、特許文献3に示す収束条件や、RMS値(二乗平均平方根)が最小となるように収束計算(通称:フィッティング)を行なう。そして、この収束計算により、被測定物の設置姿勢(通称:アライメント)による誤差を取り除いて、形状のみの誤差を算出できる。
【0008】
ここで、例えば、軸を中心として回転対称な非球面を持つ光学部材を被測定物とし、その軸を通る一つの輪郭形状のうち、その一つの輪郭形状における軸を挟んだ非対称な範囲の輪郭形状を測定した場合について考える。その場合には、一部の範囲において輪郭形状の測定値が得られない。そして、軸を挟んだ非対称な範囲を対象として、測定値と設計値とから、上述したような収束計算を行なうと、所望する形状の誤差の値とは異なる値の誤差が算出されてしまう。これは、収束計算において、輪郭形状の全体の範囲についての設計値を定める設計式に対して、輪郭形状の測定値が欠落または不足している範囲を考慮せずに、例えば、RMS値(二乗平均平方根)が最小となるように収束させてしまうからである。その結果、測定値が欠落または不足する範囲Cがある場合には、図29(b)に示すように、輪郭形状の誤差の値が、図29(a)に示すような本来の輪郭形状の誤差の値から、大きくずれたものとなってしまう。
さらに、非球面の輪郭形状の誤差の評価に際しては、上述したような被測定物の設置姿勢の誤差を取り除くための収束計算に加えて、特許文献1に示されるように、設計式中のR(曲率半径)を変化させることによって、非球面の輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)を求める収束計算を行なう場合がある。この評価を、測定値が欠落または不足する範囲Cがある図29(b)に示す測定結果に対して実施すると、図29(c)に示すように、輪郭形状の誤差の値が、さらに大きくずれたものとなってしまう。
【0009】
このため、従来一般の面形状測定機においては、軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材を被測定物とするその非球面の輪郭形状の評価に際しては、被測定物の軸を通る一つの輪郭形状における、その軸を挟んだ対称な有効径の範囲全体を対象として、輪郭形状を測定し、その範囲における輪郭形状の測定値と設計値とを上述したような所定の演算を介して比較することによって、輪郭形状の誤差を算出していた(特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第2885422号公報
【特許文献2】特許第3321210号公報
【特許文献3】特許第2520202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、軸を挟んで両側の範囲の輪郭形状を測定すると、測定時間が長くなる。
しかも、特許文献1に記載の面形状測定機を含め、従来の面形状測定機では、上述したように、軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材における、その非球面の輪郭形状の測定においては、被測定物の軸を通る一つの輪郭形状における、その軸を挟んだ対称な有効径の範囲全体を対象としなければ、輪郭形状の誤差を高精度に評価することができない。
【0012】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材における非球面の輪郭形状の測定において、軸を挟んだ対称な有効径の範囲全体を対象とすることなく、短い時間で輪郭形状の誤差を高精度に測定することが可能な面形状測定機、面形状測定方法、及び面形状の測定値の解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明による面形状測定機は、軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材の面形状測定機であって、前記非球面の輪郭形状を測定する輪郭形状測定手段と、前記非球面の輪郭形状の設計値との形状誤差を算出する形状誤差算出手段とを備え、前記輪郭形状測定手段は、前記軸を挟んだ非対称な範囲において、前記軸を挟んだ一方の側の所定位置から他方の側の別の所定位置までの前記非球面の輪郭形状を測定し、前記形状誤差算出手段は、前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値を用いて、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に仮測定値として補完し、次いで、前記軸を挟んだ非対称な範囲と前記仮測定値を補完された範囲とを合わせた範囲において、前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値と前記仮測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とを用いて、所定の収束条件を満たすまで収束計算を行なうことを特徴としている。
【0014】
また、本発明による面形状測定方法は、軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材の面形状測定方法であって、前記軸を挟んだ非対称な範囲において、前記軸を挟んだ一方の側の所定位置から他方の側の別の所定位置までの前記非球面の輪郭形状を測定し、次いで、前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値を用いて、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に仮測定値として補完し、次いで、前記軸を挟んだ非対称な範囲と前記仮測定値を補完された範囲とを合わせた範囲において、前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値と前記仮測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とを用いて、所定の収束条件を満たすまで収束計算を行なうことを特徴としている。
【0015】
また、本発明による面形状の測定値の解析方法は、軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材の面形状の測定値の解析方法であって、前記軸を挟んだ非対称な範囲において測定された、前記軸を挟んだ一方の側の所定位置から他方の側の別の所定位置までの前記非球面の輪郭形状の測定値を用いて、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に仮測定値として補完し、次いで、前記軸を挟んだ非対称な範囲と前記仮測定値を補完された範囲とを合わせた範囲において、前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値と前記仮測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とを用いて、所定の収束条件を満たすまで収束計算を行なうことを特徴としている。
【0016】
また、本発明による面形状測定機は、上記面形状測定機において、前記形状誤差算出手段は、前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値を前記軸に対して軸対称に反転させて、反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値とが重なり合う範囲において、前記反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と前記反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値との誤差が最小となるように座標変換して、前記反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と前記反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値とを重ね合わせることにより前記仮測定値として補完することを特徴としている。
【0017】
また、本発明による面形状測定方法は、上記面形状測定方法において、前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値を前記軸に対して軸対称に反転させて、反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値とが重なり合う範囲において、前記反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と前記反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値との誤差が最小となるように座標変換して、前記反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と前記反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値とを重ね合わせることにより前記仮測定値として補完することを特徴としている。
【0018】
また、本発明による面形状の測定値の解析方法は、上記面形状の測定値の解析方法において、前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値を前記軸に対して軸対称に反転させて、反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値とが重なり合う範囲において、前記反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と前記反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値との誤差が最小となるように座標変換して、前記反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と前記反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値とを重ね合わせることにより前記仮測定値として補完することを特徴としている。
【0019】
また、本発明による面形状測定機は、軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材の面形状測定機であって、前記非球面の輪郭形状を測定する輪郭形状測定手段と、前記非球面の輪郭形状の設計値との形状誤差を算出する形状誤差算出手段とを備え、前記輪郭形状測定手段は、前記軸を挟んだ非対称な範囲において、前記軸を挟んだ一方の側の所定位置から他方の側の別の所定位置までの前記非球面の輪郭形状を測定し、前記形状誤差算出手段は、前記輪郭形状測定手段が測定した前記非球面の輪郭形状の測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とが所定の収束条件を満たすまで第一の収束計算を行ない、前記第一の収束計算後の非球面の輪郭形状の測定値のうち、前記軸を挟んだ対称な範囲を除いた範囲の測定値を、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に軸対称に仮測定値として補完する第一の処理工程と、前記軸を挟んだ第一の収束計算後の非対称な範囲の輪郭形状の測定値と前記補完された範囲の仮測定値との境界部に段差がある場合、前記軸を挟んだ第一の収束計算後の非対称な範囲の輪郭形状の測定値と前記補完された範囲の仮測定値とを合わせた範囲において、前記非球面の輪郭形状の設計値を用いて、所定の収束条件を満たすまで第二の収束計算を行なう工程と、前記補完された範囲の測定値を削除する工程と、前記軸を挟んだ第二の収束計算後の非対称な範囲の測定値のうち、前記軸を挟んだ第二の収束計算後の対称な範囲を除いた範囲の測定値を、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に軸対称に補完する工程とからなる処理を、前記段差が所定の一致条件を満足するまで繰り返す第二の処理工程と、前記第一の処理工程及び第二の処理工程を介して得た、前記非球面の輪郭形状の測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とから前記非球面の輪郭形状の誤差を算出する第三の処理工程と、を有することを特徴としている。
【0020】
また、本発明による面形状測定方法は、軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材の面形状測定方法であって、前記軸を挟んだ非対称な範囲において、前記軸を挟んだ一方の側の所定位置から他方の側の別の所定位置までの前記非球面の輪郭形状を測定し、前記非球面の輪郭形状の測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とが所定の収束条件を満たすまで第一の収束計算を行ない、前記第一の収束計算後の非球面の輪郭形状の測定値のうち、前記軸を挟んだ対称な範囲を除いた範囲の測定値を、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に軸対称に仮測定値として補完する第一の処理工程と、前記軸を挟んだ第一の収束計算後の非対称な範囲の輪郭形状の測定値と前記補完された範囲の仮測定値との境界部に段差がある場合、前記軸を挟んだ第一の収束計算後の非対称な範囲の輪郭形状の測定値と前記補完された範囲の仮測定値とを合わせた範囲において、前記非球面の輪郭形状の設計値を用いて、所定の収束条件を満たすまで第二の収束計算を行なう工程と、前記補完された範囲の測定値を削除する工程と、前記軸を挟んだ第二の収束計算後の非対称な範囲の測定値のうち、前記軸を挟んだ第二の収束計算後の対称な範囲を除いた範囲の測定値を、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に軸対称に補完する工程とからなる処理を、前記段差が所定の一致条件を満足するまで繰り返す第二の処理工程と、前記第一の処理工程及び第二の処理工程を介して得た、前記非球面の輪郭形状の測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とから前記非球面の輪郭形状の誤差を算出する第三の処理工程と、を有することを特徴としている。
【0021】
また、本発明による面形状の測定値の解析方法は、軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材の面形状の測定値の解析方法であって、前記軸を挟んだ非対称な範囲において測定された、前記軸を挟んだ一方の側の所定位置から他方の側の別の所定位置までの前記非球面の輪郭形状の測定値を用いて、前記軸を挟んだ非対称な範囲において、前記軸を挟んだ一方の側の所定位置から他方の側の別の所定位置までの前記非球面の輪郭形状の測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とが所定の収束条件を満たすまで第一の収束計算を行ない、前記第一の収束計算後の非球面の輪郭形状の測定値のうち、前記軸を挟んだ対称な範囲を除いた範囲の測定値を、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に軸対称に仮測定値として補完する第一の処理工程と、前記軸を挟んだ第一の収束計算後の非対称な範囲の輪郭形状の測定値と前記補完された範囲の仮測定値との境界部に段差がある場合、前記軸を挟んだ第一の収束計算後の非対称な範囲の輪郭形状の測定値と前記補完された範囲の仮測定値とを合わせた範囲において、前記非球面の輪郭形状の設計値を用いて、所定の収束条件を満たすまで第二の収束計算を行なう工程と、前記補完された範囲の測定値を削除する工程と、前記軸を挟んだ第二の収束計算後の非対称な範囲の測定値のうち、前記軸を挟んだ第二の収束計算後の対称な範囲を除いた範囲の測定値を、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に軸対称に補完する工程とからなる処理を、前記段差が所定の一致条件を満足するまで繰り返す第二の処理工程と、前記第一の処理工程及び第二の処理工程を介して得た、前記非球面の輪郭形状の測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とから前記非球面の輪郭形状の誤差を算出する第三の処理工程と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材における非球面の輪郭形状の測定において、軸を挟んだ対称な有効径の範囲全体を対象とすることなく、短い時間で輪郭形状の誤差を高精度に測定することが可能な面形状測定機、面形状測定方法、及び面形状の測定値の解析方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は本発明の一実施形態にかかる面形状測定機を用いて、軸を中心として回転対称な非球面を持つ光学部材におけるその非球面の輪郭形状を測定する様子を示す説明図、(b)は(a)に示す面形状測定機を用いて測定したときの測定結果を示す説明図である
【図2】従来の面形状測定機において一般に行われている収束計算における、測定値(測定結果)と設計値(設計式)との関係を示すグラフであり、(a)は収束計算実施前の測定範囲における測定値と設計値を各々示すグラフ、(b)は収束計算実施前の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフ、(c)は収束計算実施後の測定範囲における測定値と設計値を各々示すグラフ、(d)は収束計算実施後の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフである。
【図3】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】図3に示した処理手順で処理を行なう本発明の面形状測定機の収束計算における、測定値(測定結果)と設計値(設計式)との関係を示すグラフであり、(a)は収束計算実施前の測定範囲における測定値と設計値を各々示すグラフ、(b)は収束計算実施前の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフ、(c)は収束計算実施後の測定範囲における測定値と設計値を各々示すグラフ、(d)は収束計算実施後の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフである。
【図5】図3に示した処理手順で処理を行なう本発明の面形状測定機の収束計算における、図4に示した処理工程以降での測定値と設計値との関係を示すグラフであり、(a)は収束計算実施後の測定範囲における測定値の一部を不足範囲に設計座標の基準軸に対して補完したときの測定値と設計値を各々示すグラフ、(b)は(a)の補完処理後、収束計算実施前の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフ、(c)は(a)の補完処理及び収束計算実施後の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフ、(d)は(a)の補完処理及び収束計算実施後の測定範囲における測定値と設計値を各々示すグラフ、(e)は(d)の収束計算実施後の測定範囲から、不足範囲を削除したときの測定値と設計値を各々示すグラフである。
【図6】図3に示した処理手順で処理を行なう本発明の面形状測定機の収束計算における、図5に示した処理工程以降の測定値と設計値との関係を示すグラフであり、(a)は収束計算実施後の測定範囲における測定値の一部を不足範囲に設計座標の基準軸に対して補完したときの測定値と設計値を各々示すグラフ、(b)は(a)の補完処理後、収束計算実施前の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフ、(c)は(a)の補完処理及び収束計算実施後の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフ、(d)は収束計算実施後の測定範囲からの不足範囲を削除する工程、収束計算実施後の測定範囲における測定値の一部の不足範囲へ補完する工程、収束計算する工程からなる処理を段差が最小になるまで繰り返した後に、非球面の輪郭形状の測定値と非球面の輪郭形状の設計値とを所定の演算を介して比較した結果を輪郭形状の誤差として示すグラフである。
【図7】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の図3の例に対する一変形例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の図3の例に対する他の変形例を示すフローチャートである。
【図9】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の図3の例に対するさらに他の変形例を示すフローチャートである。
【図10】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の他の例を示すフローチャートである。
【図11】図10のフローチャートにおける各ステップでの測定値と設計式との差分を示すグラフであり、(a)は軸Aに対して対称な範囲Maの測定値のみを対象として、設計式に収束させたときの範囲M全体の測定値を設計値との差分で示すグラフ、(b)は測定値を得ていない範囲に、軸Aに対して非対称な範囲Mから軸Aに対して対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を設計座標の基準軸に対して軸対称に仮測定値として補完し、これらの範囲を合わせた全範囲の測定値を設計値との差分で示すグラフ、(c)は(b)に示す全範囲の測定値を対象として、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なっときの設計値に対する測定値の差分を示すグラフ、(d)は(c)における補完されている所定範囲Cに補完された範囲の測定値を削除し、座標変換後の軸を挟んだ非対称な測定値のうち、軸を挟んだ対称な範囲を除いた範囲の測定値を、所定範囲Cに、設計座標における一つの座標軸Zに対して軸対称に補完したときの設計値に対する測定値の差分を示すグラフ、(e)は(d)に示す座標変換後の新たな有効径全体の測定値の範囲を対象として、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なっときの設計値に対する測定値の差分を示すグラフ、(f)は(e)における補完されている所定範囲Cに補完された範囲の測定値を削除し、座標変換後の軸を挟んだ非対称な測定値のうち、軸を挟んだ対称な範囲を除いた範囲の測定値を、所定範囲Cに、設計座標における一つの座標軸Zに対して対称に仮測定値として補完し、座標変換後の新たな有効径全体の測定値の範囲を対象として、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なっときの設計値に対する測定値の差分を示すグラフである。
【図12】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の図10の例に対する一変形例を示すフローチャートである。
【図13】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の図10の例に対する他の変形例を示すフローチャートである。
【図14】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の図10の例に対するさらに他の変形例を示すフローチャートである。
【図15】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の他の例を示すフローチャートである。
【図16】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の図15の例に対する一変形例を示すフローチャートである。
【図17】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の図15の例に対する他の変形例を示すフローチャートである。
【図18】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の図15の例に対するさらに他の変形例を示すフローチャートである。
【図19】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の他の例を示すフローチャートである。
【図20】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の図19の例に対する一変形例を示すフローチャートである。
【図21】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の図19の例に対する他の変形例を示すフローチャートである。
【図22】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の図19の例に対するさらに他の変形例を示すフローチャートである。
【図23】本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図24】図23に示した処理手順で処理を行なう本発明の面形状測定機の収束計算における、測定値と設計値との関係を示すグラフであり、(a)は軸に対して測定値を反転させたときの測定値と設計値を各々示すグラフ、(b)は(a)の反転処理時の測定値と設計値との差を示すグラフ、(c)は(a)の反転処理後、反転前の測定値と反転後の測定値とが重なり合う範囲において、反転前の測定値と反転後の測定値との誤差が最小となるように座標変換したときの測定値と設計値との差を示すグラフ、(d)は座標変換後の非球面の輪郭形状の測定値と非球面の輪郭形状の設計値とを所定の演算を介して比較した結果を輪郭形状の誤差として示すグラフである。
【図25】図1(a)に示した面形状測定機の保持部を傾斜させたときの状態を示す説明図であり、傾斜角度の大きい被測定物を測定する様子を示す図である。
【図26】面形状測定機の保持部を傾斜させて測定することが必要な被測定物を測定するときの測定手順を示すフローチャートである。
【図27】図1(a)に示した面形状測定機を用いた面形状の測定方法において保持部の回動台の回転中心と被測定物の被測定面における軸付近の曲率中心とが一致しない場合における、測定の様子を示す説明図であり、(a)は傾斜角度0度に設定された保持部における回動台の載置部の中心部に被測定部を載置した状態を示す図、(b)は保持部における回動台を所定の傾斜角度だけ傾斜させた状態を示す図である。
【図28】本発明の他の実施形態にかかる面形状測定機、及び面形状測定方法を用いて被測定物の非球面の輪郭形状を測定する様子を示す説明図であり、(a)は傾斜角度0度に設定されたプローブ先端の位置とプローブを傾斜させる手段の回転中心の位置関係を示す図、(b)はプローブを一定の傾斜角度だけ傾斜させた状態を示す図である。
【図29】軸を中心として回転対称な非球面を持つ光学部材における軸を通る一つの輪郭形状の所定範囲を対象として測定し、測定した範囲において、輪郭形状の測定値と輪郭形状の設計値とを所定の演算を介して比較した結果を輪郭形状の誤差として示すグラフであり、(a)はその軸に対して対称な有効径の範囲を対象としたときのグラフ、(b)その軸で隔てた一方の側の最外径位置から他方の側の所定位置までの軸を挟んだ非対称な範囲を対象として、アライメント誤差を取り除いたときのグラフである。(c)は(b)で算出した輪郭形状の誤差に対して、さらに収束計算を実施した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
まず、本発明において本質的部分をなす面形状の測定値の解析方法について基本概念を説明し、次いで、本発明の実施形態にかかる面形状の測定値の解析方法を実施するための構成を備えた面形状測定機、及び面形状の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法について説明する。
【0025】
本発明による面形状の測定値の解析方法は、軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材(以下、単に非球面部材とする。)におけるその非球面の輪郭形状の測定において、従来は被測定物の軸を挟んだ対称な有効径の範囲全体を対象としなければ輪郭形状の誤差の評価ができなかったことに鑑み、軸を挟んだ対称な有効径の範囲全体を測定しなくても輪郭形状の誤差を高精度に評価するための方法である。この方法は、本発明の面形状測定機における形状誤差算出手段を構成するソフトウェアとして、図示を省略した演算処理装置に備えられている。なお、非球面を持つ光学部材の場合の回転対称な軸は、その光学部材の光軸と同じ位置に位置する。
【0026】
図1(a)は本発明の面形状測定機を用いて、軸を中心として回転対称な非球面を持つ光学部材におけるその非球面の輪郭形状を測定する様子を示す説明図である。なお、以下の説明では、軸Aを中心として回転対称な非球面を持つ光学部材Oを、単に非球面部材Oと称する。
面形状測定機10は、プローブ11を有している。このプローブ11は、被測定物の輪郭形状を測定するための輪郭形状測定手段である。
プローブ11は、公知の機構(図示省略)を介してX軸方向及びZ軸方向に移動可能に構成されている。
ここで、本発明の断面形状測定機10は、図1(a)に示すように、プローブ11を介して、被測定物である、非球面部材Oの非球面における所定の軸対称な輪郭形状(例えば、軸Aの位置又は軸Aの位置の近傍を通る軸対称な輪郭形状)のうち、軸Aを挟んだ非対称な範囲Mの輪郭形状を測定する。この非対称な範囲Mは、軸Aを挟んだ一方の側の最外径の位置P1から他方の側の所定位置P2までの範囲である。
【0027】
範囲Mを対象とした輪郭形状の測定値をグラフ化すると、測定結果は、図1(b)に実線で示すように、軸Aを挟んで非対称になる。なお、図1(b)中、二点鎖線は、輪郭形状の有効径の範囲全体についての設計値を示している。
【0028】
被測定物のアライメント誤差が大きい場合には、この測定値(測定結果)に対して設計値又は設計式(設計座標における設計値を結んだ線を示す式)を用いるか、或いは設計値又は設計式に対して測定値(測定結果)を用いて、所定の収束条件を満たすまで収束計算を行なうことで、被測定物のアライメント誤差を取り除いた被測定物の面形状の誤差が算出される。収束計算では、最小二乗法やニュートン法等の計算手法を用いて、例えば特許文献3に開示されている収束条件や、RMS値(二乗平均平方根)等が最小となるようにすれば良い。
【0029】
ここで、本発明による断面形状の測定値の解析方法では、軸を挟んだ非対称な範囲における非球面の輪郭形状の測定値を軸に対して軸対称に反転させて、反転前の非球面の輪郭形状の測定値と反転後の非球面の輪郭形状の測定値とが重なり合う範囲において、反転前の非球面の輪郭形状の測定値と反転後の非球面の輪郭形状の測定値との誤差が最小となるように座標変換して、反転前の非球面の輪郭形状の測定値と反転後の非球面の輪郭形状の測定値とを重ね合わせることにより仮測定値として補完する。
このようにすれば、軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材における非球面の輪郭形状の測定において、軸を挟んだ対称な有効径の範囲全体を対象とすることなく、短い時間で輪郭形状の誤差を高精度に測定することが可能となる。
以下、この点について詳しく説明する。
【0030】
例えば、本発明による断面形状の測定値の解析方法では、この計算手法において繰り返される所定の第一の収束計算の際、又は所定の第一の収束計算の後に、所定の第一の収束計算後の非球面の輪郭形状の測定値のうち、軸Aを挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、測定値を得ていない軸Aで隔てた他方の側の所定範囲Cに設計座標における一つの座標軸(Z座標軸、なお、図1では説明の便宜上、軸AはZ座標軸に一致した位置に示してある。)に対して軸対称に仮測定値として補完する(以上の処理工程を以下、第一の処理工程とする。)。
【0031】
次いで、軸Aを挟んだ非対称な範囲Mの測定値と補完された範囲Cの仮測定値との境界部に段差がある場合、この軸Aを挟んだ非対称な範囲Mの測定値と補完された範囲Cの仮測定値とを合わせた範囲を対象として、非球面の輪郭形状の測定値と非球面の輪郭形状の設計値とを用いて所定の第二の収束計算を行なう工程と、補完された範囲Cの仮測定値を削除する工程と、第二の収束計算後の非球面の輪郭形状の測定値のうち、軸Aを挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、測定値を得ていない軸Aで隔てた他方の側の所定範囲Cに設計座標における一つの座標軸(図1ではZ座標軸)に対して軸対称に仮測定値として補完する工程からなる処理とを、この境界部の段差が所定の一致条件を満足するまで繰り返す(以上の処理工程を以下、第二の処理工程とする。)。
【0032】
次いで、上記第一の処理工程及び第二の処理工程を介して得た、非球面の輪郭形状の測定値と非球面の輪郭形状の設計値とから非球面の輪郭形状の誤差を算出する。
このように、本発明の面形状の測定値の解析方法では、軸Aを挟んだ非対称な範囲Mの測定値のうち、軸Aを挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、測定値を得ていない範囲Cに、設計座標における一つの座標軸に対して軸対称に補完する際に生じる誤差(即ち、上記境界部の段差)に着目し、その誤差が収束するまで、上記のような所定の収束計算、補完された範囲の仮測定値の削除、収束計算後の測定値を用いた補完処理を繰り返すようにしている。
【0033】
このようにすると、測定値を得ていない範囲に測定値を補完しても高精度な輪郭形状の誤差が得られるようになる。
【0034】
ここで、本発明による面形状の測定値の解析方法における処理を従来の面形状測定機において一般に行われている測定値と設計値との収束計算の処理と対比して説明する。
本発明に対する比較例として、従来の面形状測定機において一般に行われている、軸に対して対称な有効径の範囲全体を対象とした、測定値と設計値とを用いた収束計算を、図2を用いて説明する。
図2は従来の面形状測定機において一般に行われている収束計算における、測定値(測定結果)と設計値(設計式)との関係を示すグラフであり、(a)は収束計算実施前の測定範囲における測定値と設計値を各々示すグラフ、(b)は収束計算実施前の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフ、(c)は収束計算実施後の測定範囲における測定値と設計値を各々示すグラフ、(d)は収束計算実施後の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフである。
なお、説明の便宜上、図2では測定座標(被測定物の測定値の基準となる座標)の座標軸と設計座標(設計値の基準となる座標)の座標軸とが一致するように示してある。
【0035】
従来の面形状測定機において一般に行われている収束計算では、設計値又は設計式(測定範囲における設計値を結んだ線を示す式)に対して測定値、又は測定値に対して設計値を、平行移動や傾きが変化するように座標変換させながら、収束させていく。なお、収束計算は、通常、一回では収束せず、繰り返し行なわれる。測定値と設計値との差分(図2(b))は、収束計算を繰り返すことによって小さくなる。このように、測定値と設計値の一方を他方に対し平行移動や傾きが変化するように座標変換をさせる収束計算を行なうと、図2(a)に示した被測定物のアライメント誤差(被測定物を測定機に配置したときの測定座標における被測定物の平行方向や傾きなどの位置ズレ)が図2(c)に示すように取り除かれていく。そして、最終的に所定の収束条件を満たしたときの算出結果である図2(d)が非球面の輪郭形状の誤差となる。なお、ここでの所定の収束条件は、求められる誤差の精度に応じて決める。例えば、特許文献3に開示されている収束条件や、RMS値等が規格値になったとき等の条件が適用できる。
【0036】
さらに、非球面の輪郭形状の誤差の評価に際しては、上記したような被測定物のアライメント誤差を取り除くための収束計算に加えて、特許文献1及び特許文献2に開示されているように、設計式のR(曲率半径)や非球面係数を変化させることによって、非球面の輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を求める収束計算を行なう。
そして、面形状の測定値の解析においては、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算の後に、非球面の輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を求める収束計算を行なう処置手順と、これらの収束計算を同時に行なう処理手順を取り得る。
【0037】
そこで、本発明の面形状の測定値の解析方法において、まず、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算と、非球面の輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を求める収束計算とを別々に実施する処置手順の一例について図3を用いて説明する。また、その処理手順における各ステップでの測定値と設計値との差分を図4に示すこととする。
図3は本発明の面形状の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4は図3に示した処理手順で処理を行なう本発明の面形状測定機の収束計算における、測定値と設計値との関係を示すグラフであり、(a)は収束計算実施前の測定範囲における測定値と設計値を各々示すグラフ、(b)は収束計算実施前の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフ、(c)は収束計算実施後の測定範囲における測定値と設計値を各々示すグラフ、(d)は収束計算実施後の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフである。図5は図3に示した処理手順で処理を行なう本発明の面形状測定機の収束計算における、図4に示した処理工程以降での測定結果と設計式との関係を示すグラフであり、(a)は収束計算実施後の測定範囲における測定値の一部を不足範囲に設計座標の基準軸に対して補完したときの測定値と設計値を各々示すグラフ、(b)は(a)の補完処理後、収束計算実施前の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフ、(c)は(a)の補完処理及び収束計算実施後の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフ、(d)は(a)の補完処理及び収束計算実施後の測定範囲における測定値と設計値を各々示すグラフ、(e)は(d)の収束計算実施後の測定範囲から、不足範囲を削除したときの測定値と設計値を各々示すグラフである。図6は図3に示した処理手順で処理を行なう本発明の面形状測定機の収束計算における、図5に示した処理工程以降の測定結果と設計式との関係を示すグラフであり、(a)は収束計算実施後の測定範囲における測定値の一部を不足範囲に設計座標の基準軸に対して補完したときの測定値と設計値を各々示すグラフ、(b)は(a)の補完処理後、収束計算実施前の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフ、(c)は(a)の補完処理及び収束計算実施後の測定範囲における測定値と設計値との差を示すグラフ、(d)は収束計算実施後の測定範囲からの不足範囲を削除する工程、収束計算実施後の測定範囲における測定値の一部の不足範囲へ補完する工程、収束計算する工程からなる処理を段差が最小になるまで繰り返した後に、非球面の輪郭形状の測定値と非球面の輪郭形状の設計値とを所定の演算を介して比較した結果を輪郭形状の誤差として示すグラフである。
なお、説明の便宜上、図4では測定座標(被測定物の測定値の基準となる座標)の座標軸と設計座標(設計値の基準となる座標)の座標軸とが一致するように示してある。また、図4におけるグラフでは、軸を挟んだ対称な有効径の範囲全体における設計値に対する図1で示した範囲Mにおける測定値の差を表している。
【0038】
まず、図4(a)に示す範囲Mにおける測定結果(xi、zi)[iは範囲Mにおける所定の測定点で各々得られた測定値の個数:1、2、・・・n]と設計式Yを収束計算(フィッティング)させる(ステップS11〜S21)。ここでは、設置誤差を除くための収束計算を所定の収束条件を満たすまで実施させている。
この収束計算を介して、測定結果に対して設計値、または設計値に対して測定値を、平行移動や傾きが変化するように座標変換させる。ここでは、設計値に対して測定値の座標を変換させて、図4(c)に示すように、座標変換後の測定値(xij、zij)[ここでは、j=1(ステップS11)]を得ている。
【0039】
次いで、座標変換後の軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値(xij、zij)のうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、測定値を得ていない軸で隔てた他方の側の所定範囲Cに設計座標における一つの座標軸Zに対して軸対称に仮測定値として補完して、有効径全体の測定値(xij+、zij+)を作成する(ステップS31)。
本来、軸を中心として回転対称な非球面を持つ光学部材の非球面を測定すれば、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部には段差が生じないはずである。
しかし、実際の面形状の測定においては、被測定物の測定値の基準軸と設計値の基準軸が一致していないために、収束計算をしても正確な収束ができず、上記境界部に段差Δが生じ易い。
【0040】
そこで、この段差Δを低減するために、有効径全体の測定値(xij+、zij+)の範囲を対象として、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を実施して、座標変換された測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)を得る。そして、座標変換後の軸に対して非対称な範囲Mの測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)のうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、それ以前の処理工程において補完されている測定値と入れ替える。即ち、まず、座標変換後の測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)のうち、それ以前の工程において補完されている所定範囲Cに補完された仮測定値を削除する。そして、座標変換後の軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値(xi(j+1)、zi(j+1))のうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、所定範囲Cに、設計座標における一つの座標軸Zに対して軸対称に補完する。これにより、有効径全体の測定値(xij+、zij+)[ここでは、j=j+1]を作成する。そして、この被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を実施する工程、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、それ以前の処理工程において補完されている仮測定値と入れ替える工程を段差が最小(略なくなる)と認められるための所定の一致条件(例えば、段差が所定の値以下になる)を満足するまで繰り返す。
【0041】
段差が最小になるまで収束させたとき、測定座標の基準軸と設計座標の基準軸が略完全に一致し、被測定物の設置誤差が取り除かれたことになる。
これにより、測定値は、設計座標の基準軸に対して略軸対称に存在することになるので、測定値と設計値との偏差を計算することで、加工機等にフィードバックできる非球面の輪郭形状の誤差と評価結果を得ることができるようになる。
【0042】
なお、この段差が最小と認められると認められるための所定の一致条件を満足するまで繰り返す工程において行なう、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算は、1回でもよいし、所定の収束条件を満たすまで行なってもよい。また、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックは、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算の前、後いずれに行なってもよい。
【0043】
図3の例では、繰り返し工程(ステップS31〜S71)において、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算は、所定の収束条件を満たすまで行なっている(ステップS41)。
また、繰り返し工程において、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックを、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算の後に行なっている(ステップS51)。
【0044】
このときの測定座標と設計座標の関係を図5(d)に示す。
繰り返し工程においては、収束計算(ステップS41)を経て座標変換後の測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)のうち、それ以前の工程において補完されている所定範囲Cに補完された仮測定値を削除する(ステップS61、図5(e))。
そして、座標変換後の軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値(xij、zij)[j=j+1(ステップS71)]のうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、所定範囲Cに、設計座標における一つの座標軸Zに対して軸対称に仮測定値として補完する(ステップS31)。これにより、座標変換後の新たな有効径全体の範囲の測定値(xij+、zij+)が得られる。
そして、再度、設計式に対し、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なう(ステップS41)。このときの測定値と設計値との関係は、図6(a)、図6(b)のようになる。
【0045】
そして、このステップS31〜S71の処理工程を繰り返すと、図6(c)に示すように、段差が次第に収束し、最終的には、所定範囲Cに補完された仮測定値又はそれを結ぶ線は、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と境界部において殆ど段差がなく一致する。
【0046】
つまり、このような状態になったときに、測定座標の基準軸と設計座標の基準軸が略完全に一致し、被測定物の軸を挟んで対称となる有効径の範囲全体に測定値(xij、zij)が設定されたことになる。なお、ここで、jは収束計算の回数を示している。なお、段差が収束したことの確認は、段差Δ近傍のRMS値や重なる測定値の差分より行なうことができる。
【0047】
段差の一致条件を満たして、繰り返し工程を終了後に、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を介して座標変換された非球面の輪郭形状の測定値と、非球面の輪郭形状の設計値とから非球面の輪郭形状の誤差を算出する(ステップS81)。この算出値は、被測定物の設置誤差が取り除かれた正確な誤差として評価することができる。この非球面の輪郭形状の誤差の算出時における測定値と設計値との差を図6(d)に示す。
【0048】
さらに、有効径全体の測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)の範囲を対象として、ステップS81で算出された非球面の輪郭形状の誤差に対して、誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を所定の収束条件を満たすまで行なう(ステップS91)。このようにすれば、輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を評価することができる。
【0049】
変形例1
図7は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の図3の例に対する一変形例を示すフローチャートである。
図7の例では、繰り返し工程(ステップS32〜S72)において、被測定物の設置誤差を取り除くために行なう収束計算の回数を1回にしている(ステップS42)。
即ち、図7の例では、1回の収束計算ごとに、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、それ以前の処理工程において補完されている仮測定値と入れ替えている(ステップS62、S72、S32)。
また、図7の例では、段差の一致条件を満たして、繰り返し工程を終了後に、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なっている(ステップS82)。
その他の処理手順は、図3の例と略同じである。
【0050】
変形例2
図8は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の図3の例に対する他の変形例を示すフローチャートである。
図8の例では、繰り返し工程(ステップS33〜S73)において、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックを、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算の前に行なっている(ステップS43)。
その他の処理手順は、図3の例と略同じである。
【0051】
変形例3
図9は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の図3の例に対するさらに他の変形例を示すフローチャートである。
図9の例では、繰り返し工程(ステップS34〜S74)において、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックを、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算の前に行なっている(ステップS44)。
また、図9の例では、繰り返し工程において、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算の回数を1回にしている(ステップS54)。
即ち、図9の例では、1回の収束計算ごとに、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、それ以前の処理工程において補完されている仮測定値と入れ替えている(ステップS64、S74、S34)。
また、図9の例では、段差の一致条件を満たして、繰り返し工程を終了後に、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なっている(ステップS84)。
その他の処理手順は、図3の例と略同じである。
【0052】
上述した図3、図7〜図9の例において、被測定物の設置誤差を取り除く収束計算を行なった後に、輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を求める収束計算を行なう処理手順を示したが、本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法は、この処理手順に限定されるものではない。被測定物の設置誤差を取り除く収束計算と、輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を求める収束計算を同時に行なうようにしても良い。
そこで、次に、被測定物の設置誤差を取り除く収束計算と、輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を求める収束計算を同時に行なう処理手順を備えた例について説明する。
【0053】
図10は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の他の例を示すフローチャートである。
収束計算は、一般には、所定の収束条件を示すまで繰り返し行なう。しかし、測定値が得られていない領域Cが存在する状態で、設置誤差を取り除くための収束計算に加えて輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を求める収束計算を同時に所定の収束条件を満たすまで繰り返すと、設置誤差を含んだ輪郭形状の誤差に対して、その輪郭形状の誤差が最小となる間違ったR(曲率半径)や非球面係数が算出されてしまう。
【0054】
そこで、図10の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法においては、測定値が得られていない領域Cが存在する状態での、設置誤差を取り除くための収束計算と輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を求める収束計算とを同時に1回のみ行なうようにし、その収束計算の結果に基づいて、データ不足部への補完処理、収束計算処理、不足部からのデータ削除処理からなる処理を段差が最小となるまで繰り返すようにしている。
【0055】
まず、測定値(xi、zi)[iは測定データ数:1、2、・・・n]を得た軸を挟んだ非対称な範囲Mを対象として、測定値(xi、zi)[iは範囲Mにおける所定の測定点で各々得られた測定値の個数:1、2、・・・n]と設計式Yを収束(フィッティング)させる(ステップS111〜S121)。ここでは、設計値に対して設置誤差を取り除くための収束計算と、輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を求める収束計算とを同時に1回のみ行なう。
この収束計算を介して、測定値に対して設計値、または設計値に対して測定値を、平行移動や傾きが変化するように座標変換させると同時に、設計式のR(曲率半径)を変形させる。
ところで、上述したように、通常、収束計算は、1回では収束条件を満たさない。このため、設計値の基準軸を挟んで非対称な状態となる。ここでは、設計値に対して測定結果の座標を変換させて、図11(a)に示すように、座標変換後の測定結果(xij、zij)[ここでは、j=1(ステップS111)]を得ている。
【0056】
次いで、図11(b)に示すように、座標変換後の軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値(xij、zij)のうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、測定値を得ていないこの軸で隔てた他方の側の所定範囲Cに設計座標における一つの座標軸Zに対して軸対称に仮測定値として補完して、有効径全体の範囲の測定値(xij+、zij+)を作成する(ステップS131)。
なお、図11(b)においては、説明を簡略化するため便宜的に、設計値に対する測定値の差分を所定範囲Cに仮測定値として補完しているように示してあるが、実際には、差分ではなく測定値を所定範囲Cに補完するデータ処理を行なう。
【0057】
上述したように、軸を中心として回転対称な非球面を持つ光学部材の非球面を測定すれば、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部には段差が生じないはずである。
段差が生じる原因は、実際の面形状の測定において、被測定物の測定結果の基準軸と設計式の基準軸が一致していないため、収束計算をしても正確な収束ができていないことにある。
【0058】
そこで、この段差Δを低減するために、有効径全体の測定値(xij+、zij+)の範囲を対象として、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を実施し、座標変換した測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)を得る。そして、座標変換後の軸に対して非対称な範囲Mの測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)のうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、それ以前の処理工程において補完されている測定値と入れ替える。即ち、まず、座標変換後の測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)のうち、それ以前の工程において補完されている所定範囲Cに補完された仮測定値を削除する。そして、座標変換後の軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値(xi(j+1)、zi(j+1))のうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、所定範囲Cに、設計座標における一つの座標軸Zに対して軸対称に補完する。これにより、有効径全体の範囲の測定値(xij+、zij+)[ここでは、j=j+1]を作成する。そして、この被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を実施する工程、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、それ以前の処理工程において補完されている仮測定値と入れ替える工程を段差が最小(略なくなる)と認められるための所定の一致条件(例えば、段差が所定の値以下になる)を満足するまで繰り返す。
【0059】
段差が最小になるまで収束させたとき、測定座標の基準軸と設計座標の基準軸が略完全に一致し、被測定物の設置誤差が取り除かれたことになる。
これにより、測定値は、設計座標の基準軸に対して略対称に存在することになるので、測定値と設計値との偏差を計算することで、加工機等にフィードバックできる非球面の輪郭形状の誤差と評価結果を得ることができるようになる。
【0060】
なお、この段差が最小と認められるための所定の一致条件を満足するまで繰り返す工程において行なう、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算は、1回でもよいし、所定の収束条件を満たすまで行なってもよい。また、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックは、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算の前、後いずれに行なってもよい。
【0061】
図10の例では、繰り返し工程(ステップS131〜S171)において、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なっている(ステップS141)。
また、繰り返し工程において、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックを、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算の後に行なっている(ステップS151)。
【0062】
このときの設計値に対する測定値の差分を図11(c)に示す。
繰り返し工程においては、収束計算(ステップS141)を経て座標変換後の測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)のうち、それ以前の工程において補完されている所定範囲Cに補完された範囲の仮測定値を削除する(ステップS161)。
そして、図11(d)に示すように、座標変換後の軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値(xij、zij)[j=j+1(ステップS171)]のうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、所定範囲Cに、設計座標における一つの座標軸Zに対して軸対称に仮測定値として補完する(ステップS131)。これにより、座標変換後の新たな有効径全体の範囲の測定値(xij+、zij+)が得られる。
そして、再度、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なう(ステップS141)。
【0063】
そして、このステップS131〜S171の処理工程を繰り返すと、設計値に対する測定値の差分は、図11(c)、図11(d)、図11(e)、図11(f)に示すように、段差が次第に収束し、最終的には、所定範囲Cに補完された仮測定値又はそれを結ぶ線は、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と境界部において殆ど段差がなく一致する。
【0064】
つまり、このような状態になったときに、測定座標の基準軸と設計座標の基準軸が略完全に一致し、被測定物の軸を挟んだ対称となる有効径の範囲全体に測定値(xij、zij)が設定されたことになる。なお、ここで、jは収束計算の回数を示している。なお、段差が収束したことの確認は、段差Δ近傍のRMS値や重なる測定値の差分より行なうことができる。
【0065】
段差の一致条件を満たして、繰り返し工程を終了後に、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を介して座標変換された非球面の輪郭形状の測定値と、非球面の輪郭形状の設計値とから非球面の輪郭形状の誤差を算出する(ステップS181)。この算出値は、被測定物の設置誤差が取り除かれた正確な誤差として評価することができる。
【0066】
変形例4
図12は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の図10の例に対する一変形例を示すフローチャートである。
図12の例では、繰り返し工程(ステップS132〜S172)において、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を1回にしている(ステップS142)。
即ち、図12の例では、1回の収束計算ごとに、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、それ以前の処理工程において補完されている仮測定値と入れ替えている(ステップS162、S172、S132)。
また、図12の例では、段差の一致条件を満たして、繰り返し工程を終了後に、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なっている(ステップS182)。
その他の処理手順は、図10の例と略同じである。
【0067】
変形例5
図13は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の図10の例に対する他の変形例を示すフローチャートである。
図13の例では、繰り返し工程(ステップS133〜S173)において、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックを、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算の前に行なっている(ステップS143)。
その他の処理手順は、図10の例と略同じである。
【0068】
変形例6
図14は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の図10の例に対するさらに他の変形例を示すフローチャートである。
図14の例では、繰り返し工程(ステップS134〜S174)において、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックを、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算の前に行なっている(ステップS144)。
また、図14の例では、繰り返し工程において、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を1回にしている(ステップS154)。
即ち、図14の例では、1回の収束計算ごとに、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、それ以前の処理工程において補完されている測定値と入れ替えている(ステップS164、S174、S134)。
また、図14の例では、段差の一致条件を満たして、繰り返し工程を終了後に、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なっている(ステップS184)。
その他の処理手順は、図10の例と略同じである。
【0069】
上述した図3、図7〜図9、図10、図12〜図14に示した処理手順の例では、測定値の一部を設計座標の基準軸に対して対称に補完する前に、軸を挟んだ非対称な範囲を対象として、設計値に対して設置誤差を取り除くための収束計算を少なくとも1回行なっている。なお、測定値に対して設計値を収束計算した場合は、設計式Yは設計式Y1に変化する。そこで、設計式Y1の基準軸に対して対称に測定結果(x、z)の一部を補完することになる。
【0070】
なお、本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法は、被測定物の設置誤差(特に、シフト誤差)を小さくすることが可能な測定機においては、測定値の一部を設計座標の基準軸に対して軸対称に補完した後に、補完した範囲を含む有効径の全範囲の測定値を対象として、設計値に対して設置誤差を取り除くための収束計算を行なうような処理手順を採用することも可能である。
【0071】
被測定物の設置誤差(特に、シフト誤差)が大きいと、測定座標と設計座標のずれが大きくなる。そのような場合に、(被測定物の)軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値のうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、設計値を得ていない軸で隔てた他方の側の所定範囲Cに設計座標の一つの基準軸Zに対して軸対称に仮測定値として補完すると、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部が大きく離れることになり、設計値に対して設置誤差を取り除くための収束計算を行なった結果を用いて得られる形状の誤差の精度が悪くなる。
しかし、測定前に、被測定物の軸近傍で、測定座標の原点を作る(即ち、プローブの位置座標をゼロに設定する)作業を実施することができれば、被測定物の設置誤差(特に、シフト誤差)を小さくすることができる。具体的には、プローブの位置は、リニアスケールやレーザで測長しているため、リニアスケールやレーザをゼロに設定するようにすることで可能となる。
そこで、本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法において、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値のうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を設計座標の一つの基準軸に対して軸対称に仮測定値として補完した後に、補完した範囲を含む有効径の全範囲を対象として、設計値に対して設置誤差を取り除くための収束計算を行なう処理手順を採用した例について説明する。
【0072】
図15は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の他の例を示すフローチャートである。
図15の例の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法では、まず、測定値(xi、zi)[iは測定データ数:1、2、・・・n]を得た軸を挟んだ非対称な範囲Mのうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、測定値を得ていないこの軸で隔てた他方の側の所定範囲Cに設計座標における一つの座標軸Zに対して軸対称に仮測定値として補完して、有効径全体の測定値(xij+、zij+)[ここでは、j=1(ステップS211)]を作成する(ステップS221)。
【0073】
次いで、有効径全体の測定値(xij+、zij+)[iは測定データ数:1、2、・・・n]の範囲を対象として、測定値(xij+、zij+)と設計式Yを収束計算(フィッティング)させる(ステップS231)。ここでは、設計式に対して設置誤差を取り除くための収束計算を所定の収束条件を満たすまで実施させている。
この収束計算を介して、測定値に対して設計式、または設計式に対して測定値を、平行移動や傾きが変化するように座標変換させる。ここでは、設計式に対して測定結果の座標を変換させて、座標変換後の測定結果(xi(j+1)+、zi(j+1)+)[ここでは、j=1(ステップS211)]を得ている。
【0074】
次いで、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックを行なう(ステップS241)。
上述したように、軸を中心として回転対称な非球面を持つ光学部材の非球面を測定すれば、軸に非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部には段差が生じないはずである。
段差が生じる原因は、実際の面形状の測定において、被測定物の測定結果の基準軸と設計式の基準軸が一致していないため、収束計算をしても正確な収束ができていないことにある。
【0075】
そこで、この段差Δを低減するために、座標変換後の軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)のうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、それ以前の処理工程において補完されている測定値と入れ替える。即ち、まず、座標変換後の測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)のうち、それ以前の工程において補完されている所定範囲Cに補完された仮測定値を削除する。そして、座標変換後の軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値(xij、zij)[ここでは、j=j+1]のうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、所定範囲Cに、設計座標における一つの座標軸Zに対して軸対称に仮測定値として補完する。これにより、有効径全体の範囲の測定値(xij+、zij+)を作成する。そして、この軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、それ以前の処理工程において補完されている仮測定値と入れ替える工程、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を実施する工程を段差が最小(略なくなる)と認められるための所定の一致条件(例えば、段差が所定の値以下になる)を満足するまで繰り返す。
【0076】
段差が最小になるまで収束させたとき、測定座標の基準軸と設計座標の基準軸が略完全に一致し、被測定物の設置誤差が取り除かれたことになる。
これにより、測定値は、設計座標の基準軸に対して略対称に存在することになるので、測定値と設計値との偏差を計算することで、加工機等にフィードバックできる非球面の輪郭形状の誤差と評価結果を得ることができるようになる。
【0077】
なお、この段差が最小と認められると認められるための所定の一致条件を満足するまで繰り返す工程において行なう、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算は、1回でもよいし、所定の収束条件を満たすまで行なってもよい。また、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックは、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算の前、後いずれに行なってもよい。
【0078】
図15の例では、繰り返し工程(ステップS231〜S271)において、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なっている(ステップS231)。
また、繰り返し工程において、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックを、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算の後に行なっている(ステップS241)。
【0079】
繰り返し工程においては、収束計算(ステップS241)を経て座標変換後の測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)のうち、それ以前の工程において補完されている所定範囲Cに補完された範囲の仮測定値を削除する(ステップS251)。
そして、座標変換後の軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値(xij、zij)[j=j+1(ステップS261)]のうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、所定範囲Cに、設計座標における一つの座標軸Zに対して軸対称に仮測定値として補完する(ステップS271)。これにより、座標変換後の新たな有効径全体の範囲の測定値(xij+、zij+)が得られる。
そして、再度、設計式に対し、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なう(ステップS231)。
【0080】
そして、このステップS231〜S271の処理工程を繰り返すと、設計値に対する測定値の差分は、段差が次第に収束し、最終的には、所定範囲Cに補完された仮測定値又はそれを結ぶ線は、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と境界部において殆ど段差がなく一致する。
【0081】
つまり、このような状態になったときに、測定座標の基準軸と設計座標の基準軸が略完全に一致し、被測定物の軸を挟んだ対称となる有効径の範囲全体に測定値(xij、zij)が設定されたことになる。なお、ここで、jは収束計算の回数を示している。なお、段差が収束したことの確認は、段差Δ近傍のRMS値や重なる測定値の差分より行なうことができる。
【0082】
段差の一致条件を満たして、繰り返し工程を終了後に、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を介して座標変換された非球面の輪郭形状の測定値と、非球面の輪郭形状の設計値とから非球面の輪郭形状の誤差を算出する(ステップS281)。この算出値は、被測定物の設置誤差が取り除かれた正確な誤差として評価することができる。
【0083】
さらに、有効径全体の測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)の範囲を対象として、ステップS281で算出された非球面の輪郭形状の誤差に対して、誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を所定の収束条件を満たすまで行なう(ステップS291)。このようにすれば、輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を評価することができる。
【0084】
変形例7
図16は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の図15の例に対する一変形例を示すフローチャートである。
図16の例では、繰り返し工程(ステップS232〜S272)において、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を1回にしている(ステップS232)。
即ち、図16の例では、1回の収束計算ごとに、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、それ以前の処理工程において補完されている測定値と入れ替えている(ステップS252、S262、S272)。
また、図16の例では、段差の一致条件を満たして、繰り返し工程を終了後に、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なっている(ステップS292)。
その他の処理手順は、図15の例と略同じである。
【0085】
変形例8
図17は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の図15の例に対する他の変形例を示すフローチャートである。
図17の例では、繰り返し工程(ステップS233〜S273)において、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックを、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算の前に行なっている(ステップS233)。
なお、測定値(xi、zi)[iは測定データ数:1、2、・・・n]を得た軸を挟んだ非対称な範囲Mのうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、測定値を得ていないこの軸で隔てた他方の側の所定範囲Cに設計座標における一つの座標軸Zに対して軸対称に仮測定値として補完して、有効径全体の範囲の測定値(xij+、zij+)[ここでは、j=1(ステップS213)]を作成した(ステップS223)ときに、所定範囲Cに補完された仮測定値又はそれを結ぶ線は、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と境界部において殆ど段差がなく一致した場合には、繰り返し工程を経ず、収束計算を1回も行なっていないことになる。そこで、そのような場合には、有効径全体の測定値(xij+、zij+)の範囲を対象として、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を所定の収束条件を満たすまで行ない、座標変換した測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)を得る(ステップS293)。
その他の処理手順は、図15の例と略同じである。
【0086】
変形例9
図18は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の図15の例に対するさらに他の変形例を示すフローチャートである。
図18の例では、繰り返し工程(ステップS234〜S274)において、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックを、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算の前に行なっている(ステップS234)。
また、図18の例では、繰り返し工程において、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算の回数を1回にしている(ステップS254)。
即ち、図18の例では、1回の収束計算ごとに、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、それ以前の処理工程において補完されている仮測定値と入れ替えている(ステップS254、S264、S274)。
また、図18の例では、段差の一致条件を満たして、繰り返し工程を終了後に、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なっている(ステップS284)。
その他の処理手順は、図15の例と略同じである。
【0087】
上述した図15〜図18の例において、被測定物の設置誤差を取り除く収束計算を行なった後に、輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を求める収束計算を行なう処理手順を示したが、上述したように、本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法は、この処理手順に限定されるものではない。被測定物の設置誤差を取り除く収束計算と、輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を求める収束計算を同時に行なうようにしても良い。
そこで、次に、被測定物の設置誤差を取り除く収束計算と、輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を求める収束計算を同時に行なう処理手順を備えた例について説明する。
【0088】
図19は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の他の例を示すフローチャートである。
収束計算は、一般には、所定の収束条件を示すまで繰り返し行なう。しかし、測定値が得られていない領域Cが存在する状態で、設置誤差を取り除くための収束計算に加えて輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を求める収束計算を同時に所定の収束条件を満たすまで繰り返すと、設置誤差を含んだ輪郭形状の誤差に対して、その輪郭形状の誤差が最小となる間違ったR(曲率半径)や非球面係数が算出されてしまう。
【0089】
そこで、図19の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法においては、測定値が得られていない領域Cが存在する状態での、設置誤差を取り除くための収束計算と輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を求める収束計算とを同時に1回のみ行なうようにし、その収束計算の結果に基づいて、データ不足部への補完処理、収束計算処理、不足部からのデータ削除処理からなる処理を段差が最小となるまで繰り返すようにしている。
【0090】
まず、測定値(xi、zi)[iは測定データ数:1、2、・・・n]を得た軸に対して非対称な範囲Mのうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、測定値を得ていないこの軸で隔てた他方の側の所定範囲Cに設計座標における一つの座標軸Zに対して軸対称に仮測定値として補完して、有効径全体の範囲の測定値(xij+、zij+)[ここでは、j=1(ステップS411)]を作成する(ステップS421)。
【0091】
次いで、有効径全体の測定値(xij+、zij+)[iは測定データ数:1、2、・・・n]の範囲を対象として、測定値(xij+、zij+)と設計式Yを収束計算(フィッティング)させる(ステップS431)。ここでは、設計式に対して設置誤差を取り除くための収束計算と、輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を求める収束計算とを同時に1回のみ行なう。
この収束計算を介して、測定値に対して設計式、または設計式に対して測定値を、平行移動や傾きが変化するように座標変換させると同時に、設計式のR(曲率半径)を変形させる。
ところで、上述したように、通常、収束計算は、1回では収束条件を満たさない。このため、設計式の基準軸に対して非対称な状態となる。ここでは、設計式に対して測定結果の座標を変換させて、座標変換後の測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)[ここでは、j=1(ステップS411)]を得ている。
【0092】
上述したように、軸を中心として回転対称な非球面を持つ光学部材の非球面を測定すれば、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部には段差が生じないはずである。
段差が生じる原因は、実際の面形状の測定において、被測定物の測定値の基準軸と設計式の基準軸が一致していないため、収束計算をしても正確な収束ができていないことにある。
【0093】
そこで、この段差Δを低減するために、座標変換後の軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)のうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、それ以前の処理工程において補完されている測定値と入れ替える。即ち、まず、座標変換後の測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)のうち、それ以前の工程において補完されている所定範囲Cに補完された仮測定値を削除する。そして、座標変換後の軸に対して非対称な範囲Mの測定値(xi(j+1)、zi(j+1))のうち、軸に対して対称な範囲を除いた範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、所定範囲Cに、設計座標における一つの座標軸Zに対して軸対称に仮測定値として補完する。これにより、有効径全体の範囲の測定値(xij+、zij+)[ここでは、j=j+1]を作成する。さらに、有効径全体の測定値(xij+、zij+)の範囲を対象として、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を実施し、座標変換した測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)を得る。そして、この軸を挟んだ対称な範囲を除いた範囲の測定値を、それ以前の処理工程において補完されている測定値と入れ替える工程、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を実施する工程、を段差が最小(略なくなる)と認められるための所定の一致条件(例えば、段差が所定の値以下になる)を満足するまで繰り返す。
【0094】
段差が最小になるまで収束させたとき、測定座標の基準軸と設計座標の基準軸が略完全に一致し、被測定物の設置誤差が取り除かれたことになる。
これにより、測定値は、設計座標の基準軸に対して略軸対称に存在することになるので、測定結果と設計式の偏差を計算することで、加工機等にフィードバックできる非球面の輪郭形状の誤差と評価結果を得ることができるようになる。
【0095】
なお、この段差が最小と認められると認められるための所定の一致条件を満足するまで繰り返す工程において行なう、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算は、1回でもよいし、所定の収束条件を満たすまで行なってもよい。また、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックは、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算の前、後いずれに行なってもよい。
【0096】
図19の例では、繰り返し工程(ステップS441〜S481)において、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算は、所定の収束条件を満たすまで行なっている(ステップS481)。
また、繰り返し工程において、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックを、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算の後に行なっている(ステップS441)。
【0097】
繰り返し工程においては、座標変換後の測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)のうち、それ以前の工程において補完されている所定範囲Cに補完された仮測定値を削除する(ステップS451)。
そして、座標変換後の軸に対して非対称な範囲Mの測定値(xij、zij)[j=j+1(ステップS461)]のうち、軸に対して対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、所定範囲Cに、設計座標における一つの座標軸Zに対して軸対称に仮測定値として補完する(ステップS471)。これにより、座標変換後の新たな有効径全体の測定値(xij+、zij+)が得られる。
そして、再度、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なう(ステップS481)。
【0098】
そして、このステップS441〜S481の処理工程を繰り返すと、設計値に対する測定値の差分は、段差が次第に収束し、最終的には、所定範囲Cに補完された測定値又はそれを結ぶ線は、軸に非対称な測定値又はそれを結ぶ線と境界部において殆ど段差がなく一致する。
【0099】
つまり、このような状態になったときに、測定座標の基準軸と設計座標の基準軸が略完全に一致し、被測定物の軸に対して対称となる有効径の範囲全体に測定値(xij、zij)が設定されたことになる。なお、ここで、jは収束計算の回数を示している。なお、段差が収束したことの確認は、段差Δ近傍のRMS値や重なる測定値の差分より行なうことができる。
【0100】
段差の一致条件を満たして、繰り返し工程を終了後に、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を介して座標変換された非球面の輪郭形状の測定値と、非球面の輪郭形状の設計値とから非球面の輪郭形状の誤差を算出する(ステップS491)。この算出値は、被測定物の設置誤差が取り除かれた正確な誤差とすることができる。
【0101】
変形例10
図20は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の図19の例に対する一変形例を示すフローチャートである。
図20の例では、繰り返し工程(ステップS432〜S472)において、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を1回にしている(ステップS432)。
即ち、図20の例では、1回の収束計算ごとに、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、それ以前の処理工程において補完されている仮測定値と入れ替えている(ステップS452、S462、S472)。
また、図20の例では、段差の一致条件を満たして、繰り返し工程を終了後に、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なっている(ステップS482)。
その他の処理手順は、図19の例と略同じである。
【0102】
変形例11
図21は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の図19の例に対する他の変形例を示すフローチャートである。
図21の例では、繰り返し工程(ステップS433〜S473)において、軸に非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックを、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算の前に行なっている(ステップS433)。
なお、測定値(xi、zi)[iは測定データ数:1、2、・・・n]を得た軸を挟んだ非対称な範囲Mのうち、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、測定値を得ていない該軸で隔てた他方の側の所定範囲Cに設計座標における一つの座標軸Zに対して軸対称に補完して、有効径全体の測定値(xij+、zij+)[ここでは、j=1(ステップS413)]を作成した(ステップS423)ときに、所定範囲Cに補完された測定値又はそれを結ぶ線は、軸に非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と境界部において殆ど段差がなく一致した場合には、繰り返し工程を経ず、収束計算を1回も行なっていないことになる。そこで、そのような場合には、有効径全体の測定値(xij+、zij+)の範囲を対象として、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を所定の収束条件を満たすまで行ない、座標変換した測定値(xi(j+1)+、zi(j+1)+)を得る(ステップS493)。
その他の処理手順は、図19の例と略同じである。
【0103】
変形例12
図22は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状測定方法における処理手順の図19の例に対するさらに他の変形例を示すフローチャートである。
図22の例では、繰り返し工程(ステップS434〜S474)において、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、補完された所定範囲Cの仮測定値又はそれを結ぶ線との境界部の段差チェックを、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算、及び非球面の輪郭形状の誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算の前に行なっている(ステップS434)。
また、図22の例では、繰り返し工程において、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を1回にしている(ステップS444)。
即ち、図22の例では、1回の収束計算ごとに、軸を挟んだ対称な範囲Maを除いた範囲Mbの測定値を、それ以前の処理工程において補完されている測定値と入れ替えている(ステップS454、S464、S474)。
また、図22の例では、段差の一致条件を満たして、繰り返し工程を終了後に、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を、所定の収束条件を満たすまで行なっている(ステップS484)。
その他の処理手順は、図19の例と略同じである。
【0104】
上述した図15〜図22に示した処理手順の例では、測定値の一部を設計座標の基準軸に対して軸対称に仮測定値として補完した後に、軸を挟んだ非対称な範囲を対象として、設計式に対して設置誤差を取り除くための収束計算を少なくとも1回行なっている。なお、測定結果に対して設計式を収束計算した場合は、設計式Yは設計式Y1に変化する。そこで、設計式Y1の基準軸に対して軸対称に測定結果(x、z)の一部を仮測定値として補完することになる。
【0105】
次に、本発明の面形状の測定値の解析方法における処理手順の一例を図23を用いて説明する。また、その処理手順における各ステップでの測定値と設計値との差分を図24に示すこととする。
図23は本発明の測定値の解析方法を備えた面形状の測定方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図24は図23に示した処理手順で処理を行なう本発明の面形状測定機の収束計算における、測定値と設計値との関係を示すグラフであり、(a)は軸に対して測定値を反転させたときの測定値と設計値を各々示すグラフ、(b)は(a)の反転処理時の測定値と設計値との差を示すグラフ、(c)は(a)の反転処理後、反転前の測定値と反転前の測定値とが重なり合う範囲において、反転前の測定値と反転後の測定値との誤差が最小となるように座標変換したときの測定値と設計値との差を示すグラフ、(d)は座標変換後の非球面の輪郭形状の測定値と非球面の輪郭形状の設計値とを所定の演算を介して比較した結果を輪郭形状の誤差として示すグラフである。
【0106】
本発明の測定値の解析方法では、軸Aを挟んだ非対称な範囲Mの測定値(xi、zi)[iは範囲Mにおける所定の測定点で各々得られた測定値の個数:1、2、・・・n]の全部又は一部を、もとの測定値(xi、zi)と一部で重なるように、軸Aに対して軸対称に反転して、有効径全体の測定値(xi+、zi+)を作成する(ステップS51)。なお、図23、図24の例では、軸Aを挟んだ非対称な範囲Mの測定値(xi、zi)のうち、軸Aを隔てて有効径の測定値を得ている側の値を反転させたが、もとの測定値(xi、zi)と一部で重なるように反転させることで有効径全体の測定値が作成できれば、反転させる範囲は限定されない。例えば、軸Aを挟んだ非対称な範囲Mの測定値(xi、zi)の全部を反転させても良い。
本来、軸を中心として回転対称な非球面を持つ光学部材の非球面を測定すれば、軸を挟んだ非対称な範囲Mの測定値又はそれを結ぶ線と、反転した範囲の測定値又はそれを結ぶ線とには段差が生じないはずである。
しかし、実際の面形状の測定においては、被測定物の測定値の基準軸と設計値の基準軸が一致していないために、収束計算をしても正確な収束ができず、段差Δが生じ易い。
【0107】
そこで、この段差Δを低減するために、有効径全体の測定値(xi+、zi+)の範囲のうち、反転前の非球面の輪郭形状の測定値と反転後の非球面の輪郭形状の測定値とが重なり合う範囲において、反転前の非球面の輪郭形状の測定値と反転後の非球面の輪郭形状の測定値との誤差が最小となるように座標変換して補完し、これらの範囲を合わせた全範囲の測定値(xi1+、Zi1+)を得る(ステップS52)。
【0108】
次いで、被測定物の設置誤差を取り除くための収束計算を介して座標変換された非球面の輪郭形状の測定値と、非球面の輪郭形状の設計値とから非球面の輪郭形状の誤差を算出する(ステップS53)。この算出値は、被測定物の設置誤差が取り除かれた正確な誤差として評価することができる。この非球面の輪郭形状の誤差の算出時における測定値と設計値との差を図24(d)に示す。
【0109】
このとき、測定座標の基準軸と設計座標の基準軸が略完全に一致し、被測定物の設置誤差が取り除かれたことになる。
これにより、測定値は、設計座標の基準軸に対して略軸対称に存在することになるので、測定値と設計値との偏差を計算することで、加工機等にフィードバックできる非球面の輪郭形状の誤差と評価結果を得ることができるようになる。
【0110】
さらに、有効径全体の測定値(xi1+、zi1+)の範囲を対象として、ステップS54で算出された非球面の輪郭形状の誤差に対して、誤差が最小となる曲率や非球面係数を求めるための収束計算を所定の収束条件を満たすまで行なう(ステップS54)。このようにすれば、輪郭形状の誤差が最小となるR(曲率半径)や非球面係数を評価することができる。
【0111】
なお、被測定物のアライメント誤差が大きい場合には、図3のステップS21に示すのと同様の設置誤差を除くための収束計算を行なうようにしてもよい。
即ち、上述したステップS51の処理に先立ち、例えば、まず、図4(a)に示した範囲Mにおける測定結果(xi、zi)[iは範囲Mにおける所定の測定点で各々得られた測定値の個数:1、2、・・・n]と設計式Yを収束計算(フィッティング)させ(ステップS11〜S21)、設置誤差を除くための収束計算を所定の収束条件を満たすまで実施させる。
この収束計算を介して、測定結果に対して設計値、または設計値に対して測定値を、平行移動や傾きが変化するように座標変換させる。例えば、設計値に対して測定値の座標を変換させて、図4(c)に示したように、座標変換後の測定値(xi1、zi1)を得る。
そして、この座標変換後の測定値(xi1、zi1)を用いて、上述したステップS51〜S54と同様の処理を行なう。
【0112】
次に、本発明の面形状の測定値の解析方法を行なう本発明の面形状測定機の実施形態について図を用いて説明する。なお、本発明の面形状測定機は、以下の実施形態に限定されるものではない。
図1(a)は本発明の一実施形態にかかる面形状測定機における被測定物の保持部を表す説明図である。
保持部12は、基台12aと回動台12bを有している。回動台12bは、被測定物Oを載置する載置部12b1と、X−Z面に対して垂直な所定の軸Bを回転中心とした曲率を有する摺動面12b2を有している。基台12aは固定されている。基台12aの内側は、摺動面12b2が摺動に合わせた曲率を有する摺動面12a1を有している。そして、保持部12は、基台12aに対して回動台12bが所定の軸Bを中心として回動し、例えば、図25に示すように、測定用のプローブ11に対し被測定物Oを傾斜させることが可能となっている。
なお、本実施形態では、プローブ11は、接触式のものを用いているが、非接触式のものを用いてもよい。また、被測定物Oは、軸を中心として回転対称な非球面を持つ光学部材であれば、凹面、凸面のいずれの面形状を持つものでもよい。
【0113】
図25はプローブ11の先端部を接触させたときの接触する面の法線と軸Aとのなす角度aが90度となるように、保持部12の回動台12bを傾斜させて、被測定物Oである軸を中心として回転対称な非球面を持つ光学部材におけるその非球面の輪郭形状を測定する様子を示す説明図である。図25中、Dは保持部12の中心軸、Bは回動台12bの回転中心である。
【0114】
ここで、回動台12bの回転中心Bと被測定物Oの被測定面における軸A付近の曲率中心とが一致するように配置すれば、被測定物における所定の範囲Mを測定しやすくなるので望ましい。
しかし、そのためには、非球面形状の異なる被測定物を測定するたびに、保持部12に回動台12bの回転中心Bと被測定物の被測定面における軸A付近の曲率中心とを一致させるための治具が必要になり、現実的ではない。
このため、本実施形態の面形状測定機を用いた面形状測定方法においては、回動台12bの回転中心Bと被測定物Oの被測定面における軸A付近の曲率中心とが一致しない場合についても、輪郭形状の測定が可能にしている。なお、その方法については後述する。
【0115】
本実施形態の面形状測定機を用いた面形状測定方法について図26を用いて説明する。
図26は本実施形態にかかる面形状測定機を用いた面形状測定方法における輪郭形状の測定手順を示す説明図である。
まず、被測定物Oの設計式を用いて、プローブ11と被測定面との最大接触角度(即ち、プローブ11の先端部を接触させたときの接触する面の法線と軸Aとのなす角度a)を算出する(ステップS61)。次いで、算出した接触角度が、面形状測定機において測定可能な範囲であるか否かを判断する(ステップS62)。なお、初期状態においては、保持部12の回動台12bは、図1(a)に示すように、被測定物Oを載置する面を水平に保った状態にして配置されている。
算出した接触角度が面形状測定機において測定可能な範囲内の場合、被測定物Oの姿勢を補正せずに測定する。すなわち、保持部12の回動台12bにおける被測定物Oを載置する面を水平に保った状態のまま、被測定物Oにおける被測定面の輪郭形状を測定する(ステップS64)。
【0116】
算出した接触角度が面形状測定機において測定可能な範囲外の場合、即ち、被測定物の被測定面において面形状測定機の測定可能範囲外となる部位については、被測定物の姿勢を補正(ステップS63)して測定する。すなわち、保持部12における基台12aに対し、被測定物Oを載置した回動台12bを、水平状態から所定角度αだけ傾斜させる。これに伴い、被測定物Oは、水平状態から所定角度αだけ傾斜する。
【0117】
ここで、被測定物の姿勢を補正するための傾斜角度αの決定は、次のようにして行なう。
通常、接触式のプローブの測定可能範囲は、プローブの先端部に対して接触する面の法線と軸Aとのなす角度(接触角度)aが60度以内となっている。
また、非接触式のプローブの測定可能範囲は、プローブの先端部に対して接触する面の法線と軸Aとのなす角度aが30度以内となっている。
ここで、被測定物Oの設計式より算出される、プローブの先端部に対して接触する面の法線と軸Aとのなす最大接触角度をbとすると、次のように傾斜角度αを決定することができる。
b≦aのとき、保持部12における回動台12bは、水平状態を保ち、傾斜角度α=0となる。
b>aであり、且つ、
b/2<aのとき、保持部12における回動台12bの傾斜角度αは、b−a≦α<aとなる。
b/2≧aのとき、傾斜角度αは、測定可能範囲内で測定値が重畳する角度が測定毎に選択される。
【0118】
例えば、接触式のプローブを有する面形状測定機(プローブの先端部に対して接触する被測定物の面の法線と軸Aとのなす角度aが60度以内)を介して、プローブの先端部に対して接触する面の法線と軸Aとのなす最大接触角度bが90度となる被測定物Oを測定する場合、b>a、且つ、b/2<aであり、傾斜角度αはb−a≦α<aであるから30度以上60度未満である。図25の例では、回動台12bを傾斜角度α=30度で傾斜させている。
【0119】
ここで、回動台12bの回転中心Bと被測定物Oの被測定面における軸A付近の曲率中心とが一致しない場合の測定方法について、図27を用いて説明する。
プローブ11先端の位置Pと回動台12bの回転中心Bは、面形状測定機の設計値から容易に分かる。そこで、図27(a)に示すように、傾斜角度α=0に設定された保持部12における回動台12bの載置部12b1の中心部に被測定物Oを載置する。次いで、プローブ11を被測定物Oにおける光軸A位置近傍に接触させて、プローブ先端の位置情報を取得する。
プローブ11先端の位置Pと、保持部12における回動台12bの回転中心Bの位置関係(距離S)は既知であることから、被測定面までのプローブ11の移動量Lがわかれば、被測定物Oの位置関係も明確になり、プローブ11と被測定物Oの位置関係が把握できる。
つまり、図27(b)に示すように、保持部12における回動台12bを所定の傾斜角度αだけ傾斜させたときの被測定物Oの面頂位置の横方向の移動量Δxは、式(1)に従って計算できる。その結果、被測定物Oの測定面の測定位置を正確に把握することができる。
ここで、距離Sは、プローブ11先端の位置Pに対して、被測定物Oの方向に保持部12における回動台12bの回転中心BがあればS>0とし、逆方向にある場合はS<0とする。
(数1)
被測定物Oの面頂位置のずれ:
Δx=|L−S|sinα …(1)
【0120】
被測定物Oの姿勢を補正後、輪郭形状を測定する(ステップS64)。
このステップS61〜ステップS64の処理を、軸Aで隔てた一方の側の最外径の位置P1から他方の側の所定位置P2までの軸Aを挟んだ非対称な範囲Mについて行なう(ステップS65,S66)。
【0121】
次いで、輪郭形状の測定結果を評価するため、上述した解析方法による解析処理を行なう。
このため、本実施形態によれば、軸を挟んだ対称な有効径の範囲のうち、軸を挟んだ対称な一方の側の一部を測定しなくても、輪郭形状の誤差を高精度に算出・評価することができる。
【0122】
上述した、本発明の実施形態においては、プローブ11の先端部に対して接触する被測定物Oの面の法線と軸Aとのなす最大角度bが、面形状測定機での測定可能範囲を超えた場合、被測定物の姿勢を変化させるため保持部12の回動台12aを所定の傾斜角度αだけ傾斜させた例について説明した。
ところで、面形状測定機での測定可能範囲を超えた場合、基本的にはプローブ11と被測定物Oとの相対的な角度を変化させればよい。このため、被測定物に対するプローブ11の傾斜角度αを変化させる構成、測定方法としてもよい。本発明の解析方法は、いずれの構成・方法による測定値に対しても用いることができる。
【0123】
そこで、本発明の他の実施形態として被測定物に対するプローブの所定の傾斜角度αを変化させる例について説明する。この場合、傾斜角度αを変化させた場合のプローブと被測定物の位置関係の算出方法が、上述した算出方法とは異なる。
そこで、この場合におけるプローブと被測定物の位置関係の算出方法を、図28を用いて説明する。
図28は本発明の他の実施形態にかかる面形状測定機、及び面形状測定方法を用いて被測定物の非球面の輪郭形状を測定する様子を示す説明図であり、(a)は傾斜角度0度に設定されたプローブ先端の位置とプローブを傾斜させる手段の回転中心の位置関係を示す図、(b)はプローブを一定の傾斜角度だけ傾斜させた状態を示す図である。
本実施形態の測定方法では、プローブ11を被測定物Oに対し、傾斜させている。
まず、プローブ11の軸A’と被測定物Oの軸Aとのなす角度(傾斜角度)を角度α’とする。ここで、プローブ11を傾斜させる手段は、不図示のエアースピンドル、ゴニオステージなど、特に限定されない。
【0124】
まず、α’=0のとき、被測定物Oの面頂にプローブ11を接触させてプローブ11先端の位置情報を取得する。
図28(a)に示す傾斜角度0度に設定されたプローブ11先端の位置Pとプローブ11を傾斜させる手段の回転中心OPの位置関係(距離SP)は、設計上既知であることから、図28(b)に示すプローブ11を一定の傾斜角度α’だけ変化させたときのプローブ11の位置の横方向の移動量Δx’は式(2)に従って計算することができる。その結果、被測定物Oの測定面の測定位置を正確に把握することができる。
ここで、距離SPは、プローブ11を傾斜させる手段の回転中心OPが、プローブ11先端の位置Pに対して被測定物Oの方向に位置するときはSP>0、逆方向に位置するときはSP<0とする。
(数2)
プローブの接触点と被測定物の面頂位置のずれ:
Δx’=|LP−SP|sinα’ …(2)
【0125】
プローブ11の傾斜角度を補正後、輪郭形状を測定する。そして、上述したステップS61〜S64の処理を、軸Aで隔てた一方の側の最外径の位置P1から他方の側の所定位置P2までの軸Aを挟んだ非対称な範囲Mについて行なう。
次いで、輪郭形状の誤差を測定するため、上述した解析方法による解析処理を行なう。
【0126】
従って、本発明の面形状の測定装置によれば、従来のように、軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材における、その非球面の輪郭形状の測定において、軸を挟んだ対称な有効径の範囲全体を対象として測定することなく輪郭形状の誤差を高精度に評価することができる。
そして、軸を挟んだ対称な有効径の範囲全体を対象として測定しなくて済む結果、プローブとの接触角度が測定機の許容傾斜角度の範囲以上となる輪郭形状を持つ被測定物に対し、その被測定物を傾けて有効径の範囲を測定する場合において、測定回数、測定時間を大幅に低減することができる。
なお、測定後の解析における収束計算は、コンピュータを介して行なうため、収束計算結果を瞬時に得ることができる。このため、仮に、本発明における収束計算の繰り返し回数が、従来の有効径の範囲全体を対象として測定した測定結果に対して収束計算を行なう場合の繰り返し回数より増えたとしても、処理時間に及ぼす影響は殆どなく、測定時間を低減する効果を損ねることはない。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明は、軸を中心として回転対称な非球面を持つ光学部材やその金型、部品などの面形状を測定し、評価することが求められる分野に有用である。
【符号の説明】
【0128】
10 面形状測定機
11 プローブ
12 保持部
12a 基台
12b 回動台
12a1 摺動面
12b1 載置部
12b2 摺動面
A 被測定物の軸
A’ プローブの軸
B 回動台の回転中心
C 測定値が欠落または不足する範囲
M 軸Aを挟んだ非対称な範囲
Ma 範囲Mのうち、軸Aを挟んだ対称な範囲
Mb 範囲Mのうち、範囲Maを除いた範囲
O 被測定物
P プローブ先端の位置
P1 軸Aで隔てた一方の側の最外径の位置
P2 他方の側の所定位置
a プローブの先端部に対して接触する面の法線と軸Aとのなす角度
α 回動台の傾斜角度
α’ プローブの傾斜角度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材の面形状測定機であって、
前記非球面の輪郭形状を測定する輪郭形状測定手段と、前記非球面の輪郭形状の設計値との形状誤差を算出する形状誤差算出手段とを備え、
前記輪郭形状測定手段は、前記軸を挟んだ非対称な範囲において、前記軸を挟んだ一方の側の所定位置から他方の側の別の所定位置までの前記非球面の輪郭形状を測定し、
前記形状誤差算出手段は、
前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値を用いて、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に仮測定値として補完し、
次いで、前記軸を挟んだ非対称な範囲と前記仮測定値を補完された範囲とを合わせた範囲において、前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値と前記仮測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とを用いて、所定の収束条件を満たすまで収束計算を行なうことを特徴とする面形状測定機。
【請求項2】
軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材の面形状測定方法であって、
前記軸を挟んだ非対称な範囲において、前記軸を挟んだ一方の側の所定位置から他方の側の別の所定位置までの前記非球面の輪郭形状を測定し、
次いで、前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値を用いて、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に仮測定値として補完し、
次いで、前記軸を挟んだ非対称な範囲と前記仮測定値を補完された範囲とを合わせた範囲において、前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値と前記仮測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とを用いて、所定の収束条件を満たすまで収束計算を行なうことを特徴とする面形状測定方法。
【請求項3】
軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材の面形状の測定値の解析方法であって、
前記軸を挟んだ非対称な範囲において測定された、前記軸を挟んだ一方の側の所定位置から他方の側の別の所定位置までの前記非球面の輪郭形状の測定値を用いて、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に仮測定値として補完し、
次いで、前記軸を挟んだ非対称な範囲と前記仮測定値を補完された範囲とを合わせた範囲において、前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値と前記仮測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とを用いて、所定の収束条件を満たすまで収束計算を行なうことを特徴とする面形状の測定値の解析方法。
【請求項4】
前記形状誤差算出手段は、前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値を前記軸に対して軸対称に反転させて、反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値とが重なり合う範囲において、前記反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と前記反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値との誤差が最小となるように座標変換して、前記反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と前記反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値とを重ね合わせることにより前記仮測定値として補完することを特徴とする請求項1に記載の面形状測定機。
【請求項5】
前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値を前記軸に対して軸対称に反転させて、反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値とが重なり合う範囲において、前記反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と前記反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値との誤差が最小となるように座標変換して、前記反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と前記反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値とを重ね合わせることにより前記仮測定値として補完することを特徴とする請求項2に記載の面形状測定方法。
【請求項6】
前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値を前記軸に対して軸対称に反転させて、反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値とが重なり合う範囲において、前記反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と前記反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値との誤差が最小となるように座標変換して、前記反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と前記反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値とを重ね合わせることにより前記仮測定値として補完することを特徴とする請求項3に記載の面形状の測定値の解析方法。
【請求項7】
軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材の面形状測定機であって、
前記非球面の輪郭形状を測定する輪郭形状測定手段と、前記非球面の輪郭形状の設計値との形状誤差を算出する形状誤差算出手段とを備え、
前記輪郭形状測定手段は、前記軸を挟んだ非対称な範囲において、前記軸を挟んだ一方の側の所定位置から他方の側の別の所定位置までの前記非球面の輪郭形状を測定し、
前記形状誤差算出手段は、
前記輪郭形状測定手段が測定した前記非球面の輪郭形状の測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とが所定の収束条件を満たすまで第一の収束計算を行ない、
前記第一の収束計算後の非球面の輪郭形状の測定値のうち、前記軸を挟んだ対称な範囲を除いた範囲の測定値を、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に軸対称に仮測定値として補完する第一の処理工程と、
前記軸を挟んだ第一の収束計算後の非対称な範囲の輪郭形状の測定値と前記補完された範囲の仮測定値との境界部に段差がある場合、前記軸を挟んだ第一の収束計算後の非対称な範囲の輪郭形状の測定値と前記補完された範囲の仮測定値とを合わせた範囲において、前記非球面の輪郭形状の設計値を用いて、所定の収束条件を満たすまで第二の収束計算を行なう工程と、前記補完された範囲の測定値を削除する工程と、前記軸を挟んだ第二の収束計算後の非対称な範囲の測定値のうち、前記軸を挟んだ第二の収束計算後の対称な範囲を除いた範囲の測定値を、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に軸対称に補完する工程とからなる処理を、前記段差が所定の一致条件を満足するまで繰り返す第二の処理工程と、
前記第一の処理工程及び第二の処理工程を介して得た、前記非球面の輪郭形状の測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とから前記非球面の輪郭形状の誤差を算出する第三の処理工程と、
を有することを特徴とする面形状測定機。
【請求項8】
軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材の面形状測定方法であって、
前記軸を挟んだ非対称な範囲において、前記軸を挟んだ一方の側の所定位置から他方の側の別の所定位置までの前記非球面の輪郭形状を測定し、
前記非球面の輪郭形状の測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とが所定の収束条件を満たすまで第一の収束計算を行ない、
前記第一の収束計算後の非球面の輪郭形状の測定値のうち、前記軸を挟んだ対称な範囲を除いた範囲の測定値を、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に軸対称に仮測定値として補完する第一の処理工程と、
前記軸を挟んだ第一の収束計算後の非対称な範囲の輪郭形状の測定値と前記補完された範囲の仮測定値との境界部に段差がある場合、前記軸を挟んだ第一の収束計算後の非対称な範囲の輪郭形状の測定値と前記補完された範囲の仮測定値とを合わせた範囲において、前記非球面の輪郭形状の設計値を用いて、所定の収束条件を満たすまで第二の収束計算を行なう工程と、前記補完された範囲の測定値を削除する工程と、前記軸を挟んだ第二の収束計算後の非対称な範囲の測定値のうち、前記軸を挟んだ第二の収束計算後の対称な範囲を除いた範囲の測定値を、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に軸対称に補完する工程とからなる処理を、前記段差が所定の一致条件を満足するまで繰り返す第二の処理工程と、
前記第一の処理工程及び第二の処理工程を介して得た、前記非球面の輪郭形状の測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とから前記非球面の輪郭形状の誤差を算出する第三の処理工程と、
を有することを特徴とする面形状測定方法。
【請求項9】
軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材の面形状の測定値の解析方法であって、
前記軸を挟んだ非対称な範囲において測定された、前記軸を挟んだ一方の側の所定位置から他方の側の別の所定位置までの前記非球面の輪郭形状の測定値を用いて、前記軸を挟んだ非対称な範囲において、前記軸を挟んだ一方の側の所定位置から他方の側の別の所定位置までの前記非球面の輪郭形状の測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とが所定の収束条件を満たすまで第一の収束計算を行ない、
前記第一の収束計算後の非球面の輪郭形状の測定値のうち、前記軸を挟んだ対称な範囲を除いた範囲の測定値を、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に軸対称に仮測定値として補完する第一の処理工程と、
前記軸を挟んだ第一の収束計算後の非対称な範囲の輪郭形状の測定値と前記補完された範囲の仮測定値との境界部に段差がある場合、前記軸を挟んだ第一の収束計算後の非対称な範囲の輪郭形状の測定値と前記補完された範囲の仮測定値とを合わせた範囲において、前記非球面の輪郭形状の設計値を用いて、所定の収束条件を満たすまで第二の収束計算を行なう工程と、前記補完された範囲の測定値を削除する工程と、前記軸を挟んだ第二の収束計算後の非対称な範囲の測定値のうち、前記軸を挟んだ第二の収束計算後の対称な範囲を除いた範囲の測定値を、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に軸対称に補完する工程とからなる処理を、前記段差が所定の一致条件を満足するまで繰り返す第二の処理工程と、
前記第一の処理工程及び第二の処理工程を介して得た、前記非球面の輪郭形状の測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とから前記非球面の輪郭形状の誤差を算出する第三の処理工程と、
を有することを特徴とする面形状の測定値の解析方法。
【請求項1】
軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材の面形状測定機であって、
前記非球面の輪郭形状を測定する輪郭形状測定手段と、前記非球面の輪郭形状の設計値との形状誤差を算出する形状誤差算出手段とを備え、
前記輪郭形状測定手段は、前記軸を挟んだ非対称な範囲において、前記軸を挟んだ一方の側の所定位置から他方の側の別の所定位置までの前記非球面の輪郭形状を測定し、
前記形状誤差算出手段は、
前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値を用いて、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に仮測定値として補完し、
次いで、前記軸を挟んだ非対称な範囲と前記仮測定値を補完された範囲とを合わせた範囲において、前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値と前記仮測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とを用いて、所定の収束条件を満たすまで収束計算を行なうことを特徴とする面形状測定機。
【請求項2】
軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材の面形状測定方法であって、
前記軸を挟んだ非対称な範囲において、前記軸を挟んだ一方の側の所定位置から他方の側の別の所定位置までの前記非球面の輪郭形状を測定し、
次いで、前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値を用いて、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に仮測定値として補完し、
次いで、前記軸を挟んだ非対称な範囲と前記仮測定値を補完された範囲とを合わせた範囲において、前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値と前記仮測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とを用いて、所定の収束条件を満たすまで収束計算を行なうことを特徴とする面形状測定方法。
【請求項3】
軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材の面形状の測定値の解析方法であって、
前記軸を挟んだ非対称な範囲において測定された、前記軸を挟んだ一方の側の所定位置から他方の側の別の所定位置までの前記非球面の輪郭形状の測定値を用いて、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に仮測定値として補完し、
次いで、前記軸を挟んだ非対称な範囲と前記仮測定値を補完された範囲とを合わせた範囲において、前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値と前記仮測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とを用いて、所定の収束条件を満たすまで収束計算を行なうことを特徴とする面形状の測定値の解析方法。
【請求項4】
前記形状誤差算出手段は、前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値を前記軸に対して軸対称に反転させて、反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値とが重なり合う範囲において、前記反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と前記反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値との誤差が最小となるように座標変換して、前記反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と前記反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値とを重ね合わせることにより前記仮測定値として補完することを特徴とする請求項1に記載の面形状測定機。
【請求項5】
前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値を前記軸に対して軸対称に反転させて、反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値とが重なり合う範囲において、前記反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と前記反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値との誤差が最小となるように座標変換して、前記反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と前記反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値とを重ね合わせることにより前記仮測定値として補完することを特徴とする請求項2に記載の面形状測定方法。
【請求項6】
前記軸を挟んだ非対称な範囲における前記非球面の輪郭形状の測定値を前記軸に対して軸対称に反転させて、反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値とが重なり合う範囲において、前記反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と前記反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値との誤差が最小となるように座標変換して、前記反転前の前記非球面の輪郭形状の測定値と前記反転後の前記非球面の輪郭形状の測定値とを重ね合わせることにより前記仮測定値として補完することを特徴とする請求項3に記載の面形状の測定値の解析方法。
【請求項7】
軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材の面形状測定機であって、
前記非球面の輪郭形状を測定する輪郭形状測定手段と、前記非球面の輪郭形状の設計値との形状誤差を算出する形状誤差算出手段とを備え、
前記輪郭形状測定手段は、前記軸を挟んだ非対称な範囲において、前記軸を挟んだ一方の側の所定位置から他方の側の別の所定位置までの前記非球面の輪郭形状を測定し、
前記形状誤差算出手段は、
前記輪郭形状測定手段が測定した前記非球面の輪郭形状の測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とが所定の収束条件を満たすまで第一の収束計算を行ない、
前記第一の収束計算後の非球面の輪郭形状の測定値のうち、前記軸を挟んだ対称な範囲を除いた範囲の測定値を、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に軸対称に仮測定値として補完する第一の処理工程と、
前記軸を挟んだ第一の収束計算後の非対称な範囲の輪郭形状の測定値と前記補完された範囲の仮測定値との境界部に段差がある場合、前記軸を挟んだ第一の収束計算後の非対称な範囲の輪郭形状の測定値と前記補完された範囲の仮測定値とを合わせた範囲において、前記非球面の輪郭形状の設計値を用いて、所定の収束条件を満たすまで第二の収束計算を行なう工程と、前記補完された範囲の測定値を削除する工程と、前記軸を挟んだ第二の収束計算後の非対称な範囲の測定値のうち、前記軸を挟んだ第二の収束計算後の対称な範囲を除いた範囲の測定値を、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に軸対称に補完する工程とからなる処理を、前記段差が所定の一致条件を満足するまで繰り返す第二の処理工程と、
前記第一の処理工程及び第二の処理工程を介して得た、前記非球面の輪郭形状の測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とから前記非球面の輪郭形状の誤差を算出する第三の処理工程と、
を有することを特徴とする面形状測定機。
【請求項8】
軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材の面形状測定方法であって、
前記軸を挟んだ非対称な範囲において、前記軸を挟んだ一方の側の所定位置から他方の側の別の所定位置までの前記非球面の輪郭形状を測定し、
前記非球面の輪郭形状の測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とが所定の収束条件を満たすまで第一の収束計算を行ない、
前記第一の収束計算後の非球面の輪郭形状の測定値のうち、前記軸を挟んだ対称な範囲を除いた範囲の測定値を、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に軸対称に仮測定値として補完する第一の処理工程と、
前記軸を挟んだ第一の収束計算後の非対称な範囲の輪郭形状の測定値と前記補完された範囲の仮測定値との境界部に段差がある場合、前記軸を挟んだ第一の収束計算後の非対称な範囲の輪郭形状の測定値と前記補完された範囲の仮測定値とを合わせた範囲において、前記非球面の輪郭形状の設計値を用いて、所定の収束条件を満たすまで第二の収束計算を行なう工程と、前記補完された範囲の測定値を削除する工程と、前記軸を挟んだ第二の収束計算後の非対称な範囲の測定値のうち、前記軸を挟んだ第二の収束計算後の対称な範囲を除いた範囲の測定値を、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に軸対称に補完する工程とからなる処理を、前記段差が所定の一致条件を満足するまで繰り返す第二の処理工程と、
前記第一の処理工程及び第二の処理工程を介して得た、前記非球面の輪郭形状の測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とから前記非球面の輪郭形状の誤差を算出する第三の処理工程と、
を有することを特徴とする面形状測定方法。
【請求項9】
軸を中心として回転対称な非球面を持つ部材の面形状の測定値の解析方法であって、
前記軸を挟んだ非対称な範囲において測定された、前記軸を挟んだ一方の側の所定位置から他方の側の別の所定位置までの前記非球面の輪郭形状の測定値を用いて、前記軸を挟んだ非対称な範囲において、前記軸を挟んだ一方の側の所定位置から他方の側の別の所定位置までの前記非球面の輪郭形状の測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とが所定の収束条件を満たすまで第一の収束計算を行ない、
前記第一の収束計算後の非球面の輪郭形状の測定値のうち、前記軸を挟んだ対称な範囲を除いた範囲の測定値を、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に軸対称に仮測定値として補完する第一の処理工程と、
前記軸を挟んだ第一の収束計算後の非対称な範囲の輪郭形状の測定値と前記補完された範囲の仮測定値との境界部に段差がある場合、前記軸を挟んだ第一の収束計算後の非対称な範囲の輪郭形状の測定値と前記補完された範囲の仮測定値とを合わせた範囲において、前記非球面の輪郭形状の設計値を用いて、所定の収束条件を満たすまで第二の収束計算を行なう工程と、前記補完された範囲の測定値を削除する工程と、前記軸を挟んだ第二の収束計算後の非対称な範囲の測定値のうち、前記軸を挟んだ第二の収束計算後の対称な範囲を除いた範囲の測定値を、測定値を得ていない前記軸で隔てた他方の側の所定範囲に軸対称に補完する工程とからなる処理を、前記段差が所定の一致条件を満足するまで繰り返す第二の処理工程と、
前記第一の処理工程及び第二の処理工程を介して得た、前記非球面の輪郭形状の測定値と前記非球面の輪郭形状の設計値とから前記非球面の輪郭形状の誤差を算出する第三の処理工程と、
を有することを特徴とする面形状の測定値の解析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2010−210289(P2010−210289A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54108(P2009−54108)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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