説明

面状発熱体

【課題】本発明は、所定形状の板状部材における外周面に沿って巻回されるように配置された薄膜状の発熱抵抗素子を備える面状発熱体を提供することを目的とする。
【解決手段】面状発熱体1は、絶縁性の板状部材21と、板状部材21の外周面に巻回されるように配置される薄膜状の発熱抵抗素子20と、記板状部材21の第1の面210Aに配置される絶縁性の第1のカバー部材3と、板状部材21の第2の面210Bに配置される絶縁性の第2のカバー部材4と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜状の発熱抵抗素子を用いた面状発熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、発熱抵抗素子を用いた平面ヒータは幅広い分野で利用されている。このような平面ヒータにおいては、例えば、所定形状に成形された発熱抵抗素子が用いられるが、この発熱抵抗素子を所定形状に成形するためには、例えば、エッチング法による加工や、プレス加工などの打ち抜き加工が必要である。
【0003】
このように発熱抵抗素子を所定形状に成形する場合において、上記のように成形加工の工程が複雑であるなどの作業面における困難性や、該成形加工時に発熱抵抗素子に無駄が生じるなどのコスト面における課題が存在することが認識されていた。
【0004】
そこで、複数の帯状発熱抵抗素子を平行に並列配置し、その端部に導体小片を配置して蛇行形状に成形した発熱抵抗体を用いた平面ヒータが発明されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−313536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の平面ヒータでは、複数の帯状発熱抵抗素子を平行に配置して、その端部に導電小片を配置して蛇行状の発熱抵抗体を成形している。これにより、一体的な蛇行状の発熱抵抗体を成形する場合に比べ、成形加工時に生じる発熱抵抗素子の無駄などは軽減される。しかし、発熱抵抗素子を所定形状に成形するための処理工程は複雑になっている。また、特許文献1に記載の平面ヒータにおいては、蛇行形状とは異なる形状に発熱抵抗体を成形することは困難である。そして、これらのことが、本発明の課題といってよい。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、所定形状の板状部材における外周面に沿って巻回されるように配置された薄膜状の発熱抵抗素子を備える面状発熱体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、薄膜状の発熱抵抗素子を所定形状の板状部材における外周面に沿って巻回されるように配置することで簡易に所定形状に成形できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
(1) 絶縁性の板状部材と、前記板状部材の外周面に沿って巻回されるように配置される薄膜状の発熱抵抗素子であって、前記板状部材における第1の面に沿うように配置される複数の第1平面部、前記第1の面とは反対側の面である第2の面に沿うように配置される複数の第2平面部、及びそれぞれが前記複数の第1平面部のぞれぞれと前記複数の第2平面部のそれぞれとを繋ぎ前記板状部材における側面に配置される複数の折り返し部と、を備える発熱抵抗素子と、前記複数の第1平面部を覆うように前記第1の面に配置される絶縁性の第1のカバー部材と、前記複数の第2平面部を覆うように前記第2の面に配置される絶縁性の第2のカバー部材と、を備える面状発熱体。
【0009】
(1)の発明における面状発熱体は、絶縁性の板状部材と、板状部材の外周面に沿って巻回されるように配置される薄膜状の発熱抵抗素子を備える。発熱抵抗素子は、板状部材における第1の面に沿うように配置される複数の第1平面部、第1の面とは反対側の面である第2の面に沿うように配置される複数の第2平面部、及びそれぞれが複数の第1平面部のぞれぞれと複数の第2平面部のそれぞれとを繋ぎ板状部材における側面に配置される複数の折り返し部と、を備える。そして、複数の第1平面部を覆うように前記第1の面に配置される絶縁性の第1のカバー部材と、複数の第2平面部を覆うように前記第2の面に配置される絶縁性の第2のカバー部材とを備える。これにより、例えば、発熱抵抗素子を所定形状の板状部材における外周面に沿うように巻回すだけで、所定形状に成形された発熱抵抗素子を備える面状発熱体を得ることができる。また、例えば、発熱抵抗素子の巻回パターンを変更することで、発熱抵抗素子により成形される所定形状を適宜変更させることができる。また、板状部材の形状を変更させることで、発熱抵抗素子により形成される所定形状を、適宜変更することができる。
【0010】
(2) 前記発熱抵抗素子は、略等幅の帯状である(1)に記載の面状発熱体。
【0011】
(2)の発明における面状発熱体は、発熱抵抗素子が、略等幅の帯状である。これにより、汎用性の高い帯状の発熱抵抗素子を所定形状の板状部材における外周面に沿うように巻回すだけで所定形状に成形された発熱抵抗素子を備える面状発熱体を得ることができる。
【0012】
(3) 前記板状部材の前記側面は、所定間隔で形成される複数の凹部を備え、前記複数の折り返し部のそれぞれは、前記複数の凹部のそれぞれに嵌合するように配置される(1)又は(2)に記載の面状発熱体。
【0013】
(3)の発明による面状発熱体は、板状部材の側面は、所定間隔で形成される複数の凹部を備える。そして、複数の折り返し部のそれぞれは、複数の凹部のそれぞれに嵌合するように配置される。これにより、好適に発熱抵抗素子を板状部材における外周面に沿うように巻回することができる。複数の折り返し部が複数の凹部に勘合するように発熱抵抗素子を巻回することで、確実に発熱抵抗素子を所定形状に成形することができる。また、複数の凹部に発熱抵抗素子が勘合した状態であるので、一度成形された所定形状を好適に維持することができる。更には、複数の凹部の配置や深さを調整することで、発熱抵抗素子により成形される所定形状を適宜調整することができる。
【0014】
(4) 前記第1のカバー部材と、前記第2のカバー部材とは、熱伝導性が異なる(1)から(3)のいずれかに記載の面状発熱体。
【0015】
(4)の発明による面状発熱体は、第1のカバー部材と、第2のカバー部材との熱伝導性が異なる。例えば、第1のカバー部材を熱伝導性に優れた材料で構成し、第2のカバー部材を断熱性に優れた材料で構成することができる。これにより、例えば、発熱抵抗素子により発生する熱を第1のカバー部材側に好適に伝えることができる。
【0016】
(5) 絶縁性の板状部材と、前記板状部材の外周面に沿って巻回されるように配置される薄膜状の発熱抵抗素子であって、前記板状部材における第1の面に沿うように配置される複数の第1平面部、前記第1の面とは反対側の面である第2の面に沿うように配置される複数の第2平面部、及びそれぞれが前記複数の第1平面部のぞれぞれと前記複数の第2平面部のそれぞれとを繋ぎ前記板状部材における側面に配置される複数の折り返し部を備える発熱抵抗素子と、を備える発熱抵抗部材。
【0017】
(5)の発明による発熱抵抗部材は、絶縁性の板状部材と、板状部材の外周面に沿って巻回されるように配置される薄膜状の発熱抵抗素子を備える。発熱抵抗素子は、板状部材における第1の面に沿うように配置される複数の第1平面部、第1の面とは反対側の面である第2の面に沿うように配置される複数の第2平面部、及びそれぞれが複数の第1平面部のぞれぞれと複数の第2平面部のそれぞれとを繋ぎ板状部材における側面に配置される複数の折り返し部、を備える。これにより、例えば、発熱抵抗素子を所定形状の板状部材における外周面に沿うように巻回すだけで、所定形状に成形された発熱抵抗素子を得ることができる。また、例えば、発熱抵抗素子の巻回パターンを変更することで、発熱抵抗素子により成形される所定形状を適宜変更させることができる。また、板状部材の形状を変更させることで、発熱抵抗素子により形成される所定形状を、適宜変更することができる。
【0018】
(6) 前記発熱抵抗素子は、略等幅の帯状である(5)に記載の発熱抵抗部材。
【0019】
(6)の発明における発熱抵部材は、発熱抵抗素子が、略等幅の帯状である。これにより、汎用性の高い帯状の発熱抵抗素子を所定形状の板状部材における外周面に沿うように巻回すだけで所定形状に成形された発熱抵抗素子を備える発熱抵抗部材部材を得ることができる。
【0020】
(7)前記板状部材の前記側面は、所定間隔で形成される複数の凹部を備え、前記複数の折り返し部のそれぞれは、前記複数の凹部のそれぞれに嵌合するように配置される(5)又は(6)に記載の発熱抵抗部材。
【0021】
(7)の発明による発熱抵抗部材は、板状部材の側面は、所定間隔で形成される複数の凹部を備える。そして、複数の折り返し部のそれぞれは、複数の凹部のそれぞれに嵌合するように配置される。これにより、好適に発熱抵抗素子を板状部材における外周面に沿うように巻回することができる。複数の折り返し部が複数の凹部に勘合するように発熱抵抗素子を巻回することで、確実に発熱抵抗素子を所定形状に成形することができる。また、複数の凹部に発熱抵素子が勘合した状態であるので、一度成形された所定形状を好適に維持することができる。更には、複数の凹部の配置や深さを調整することで、発熱抵抗素子により成形される所定形状を適宜調整することができる。
【0022】
(8) (1)から(4)のいずれかに記載の面状発熱体と、前記面状発熱体を収納可能な筐体と、前記筐体に収納された状態における前記面状発熱体の該筐体側の面と反対側の面に配置される伝熱部材と、を備える加熱装置。
【0023】
(8)の発明による加熱装置は、(1)から(4)のいずれかに記載の面状発熱体と、面状発熱体を収納可能な筐体と、前記筐体に収納された状態における前記面状発熱体の該筐体側の面と反対側の面に配置される伝熱部材と、を備える。これにより、本発明の面状発熱体を用いた加熱装置を得ることができる。
【0024】
(9) 薄膜状の発熱抵抗素子を、絶縁性の板状部材における外周面に沿って巻回するように配置する工程を含む面状発熱体の製造方法。
【0025】
(9)の発明による面状発熱体の製造方法は、薄膜状の発熱抵抗素子を、絶縁性の板状部材における外周面に沿って巻回するように配置する工程を含む。これにより、例えば、薄膜状の発熱抵抗素子を絶縁性の板状部材における外周面に沿って巻回するように配置するだけで製造上の困難性なく発熱抵抗素子を様々な形状に成形することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、所定形状の板状部材における外周面に沿って巻回されるように配置された薄膜状の発熱抵抗素子を備える面状発熱体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0028】
図1は、本発明の面状発熱体における第1実施形態の構成を説明する斜視図である。図2は、本発明の面状発熱体における第1実施形態の構成を説明する側面図である。図3は、本発明の面状発熱体における第1実施形態に用いられる発熱抵抗部材の平面図である。図4は、本発明の面状発熱体における第2実施形態に用いられる発熱抵抗部材の平面図である。図5は、本発明の面状発熱体における第3実施形態の構成を説明する斜視図である。図6は、本発明の面状発熱体における第1実施形態の面状発熱体を備える加熱装置の構造を説明する斜視図である。図7は、本発明の面状発熱体における第1実施形態の面状発熱体が複数配置された加熱装置の構造を説明する斜視図である。図8は、本発明の面状発熱体における第1実施形態の面状発熱体における発熱抵抗素子の昇温グラフである。
【0029】
「1」第1実施形態
図1から図3に示す第1実施形態の面状発熱体1に基づいて、本発明の面状発熱体及び発熱抵抗部材について説明する。
【0030】
「1.1」面状発熱体の全体構造
図1及び図2に示すように、面状発熱体1は、発熱抵抗部材2と、発熱抵抗部材2の上面側に配置される絶縁性の第1のカバー部材3と、発熱抵抗部材2の下面側に配置される絶縁性の第2のカバー部材4と、電力を供給する電力供給線90、93と、を備える。
【0031】
発熱抵抗部材2は、絶縁性の板状部材21と、該板状部材21の外周面に沿って巻回されるように配置される一本の略等幅である帯状の発熱抵抗素子20と、を備える。発熱抵抗素子20には、電力供給線90、93を通じて電力が供給され、所定の電力が供給される。これにより、該発熱抵抗素子20が発熱する。発熱抵抗素子20における発熱量(温度)は、該発熱抵抗素子20の材質と供給される電力量とにより調整される。
【0032】
第1のカバー部材3は、発熱抵抗部材2の第1の面210A側に配置される略板状の部材である。第1のカバー部材3は、発熱抵抗部材2の外周面に沿って巻回されるように配置される発熱抵抗素子20が外側に露出しないように配置される。具体的には、第1のカバー部材3は、後述する板状部材21における第1の面210Aに沿うように配置される複数の第1平面部25を覆うように配置される。また、第1のカバー部材3は、発熱抵抗素子20における複数の第1平面部25からの電流を外部に伝えないように絶縁性の材料で構成される。
【0033】
第2のカバー部材4は、発熱抵抗部材2の第2の面210B側に配置される略板状の部材である。第2のカバー部材4は、第1のカバー部材3と同様に、発熱抵抗部材2の外周面に沿って巻回されるように配置される発熱抵抗素子20が外側に露出しないように配置される。具体的には、第2のカバー部材4は、後述する板状部材21における第2の面210Bに沿うように配置される複数の第2平面部26を覆うように配置される。また、第2のカバー部材4は、発熱抵抗素子20における複数の第2平面部26からの電流を外部に伝えないように絶縁性の材料で構成される。
【0034】
ここで、例えば、発熱抵抗部材2における第1の面210A側が加熱側である場合には、第1のカバー部材3は、発熱抵抗部材2からの熱を好適に伝熱するため熱伝導性に優れた材料で構成される。これに対し、第2のカバー部材4は、発熱抵抗部材2の第2の面210B側に配置される発熱抵抗素子20における複数の第2平面部26から発生する熱が第2のカバー部材4を通じて外部に放熱されることを抑制すると共に加熱側である第1のカバー部材3に熱を伝熱させるため、断熱性に優れた材料で構成される。
【0035】
「1.2」発熱抵抗部材
図3に示すように、発熱抵抗部材2は、絶縁性の板状部材21と、該板状部材21の外周面に沿って巻回されるように配置される一本の略等幅である帯状の発熱抵抗素子20を備える。板状部材21は、幅方向における略中央に所定幅の切り込み部210が形成され、該切り込み部210の両側に略同一幅の巻回部21A及び巻回部21Bが形成される。
【0036】
巻回部21A及び巻回部21Bは、幅方向における両側面に形成された複数の凹部30に形成されている。本実施形態においては、一本の略等幅である帯状の発熱抵抗素子20が、所定の凹部30に嵌合しながら巻回部21A及び巻回部21Bにおけるそれぞれの外周面に沿って巻回されるように配置される。ここで、切り込み部210の一端側に開口部210Pを形成することで、発熱抵抗素子20を巻回部21A及び巻回部21Bに巻回する作業効率が向上するので好ましい。
【0037】
板状部材21における第1の面210Aには、発熱抵抗素子20が該第1の面210Aに沿うように複数の第1平面部25が形成される。また、板状部材21における第2の面210Bには、発熱抵抗素子20が該第2の面210Bに沿うように複数の第2平面部26が形成される。また、板状部材21の側面には、複数の第1平面部25のぞれぞれと複数の第2平面部26のそれぞれとを繋ぐ折り返し部27が形成される。この複数の折り返し部27は、板状部材21の側面に形成される複数の凹部30に嵌合するように配置される。
【0038】
そして、上述のように、第1のカバー部材3は、板状部材21における第1の面210Aに配置される複数の第1平面部25を覆おうように配置される。また、第2のカバー部材4は、板状部材21における第2の面210Bに配置される複数の第2平面部26を覆うように配置される。
【0039】
本実施形態において、発熱抵抗素子20は一本の略等幅である帯状の発熱抵抗素子20であるが、本発明においてはこれに限定されず、他の形状の発熱抵抗素子20を用いても良く、また、複数の発熱抵抗素子20を用いても良い。更には、発熱抵抗素子20を自己温度制御が可能な材料で構成しても良く、また、自己温度制御が可能となるよう所定の表面処理等がされた発熱抵抗素子20を用いても良い。
【0040】
発熱抵抗素子20は、板状部材21の外周面に沿って巻回されるように配置することで所定形状に成形される。そして該所定形状は、例えば、所定の凹部30とこれに隣接する凹部30との間隔Wや、凹部30の深さd3等を調整することにより調整することができる。
【0041】
また、発熱抵抗素子20の幅dや、上記凹部30同士の間隔Wを、求められる発熱特性に応じて調整することができる。具体的には、迅速な昇温や均一な温度保持が求められる場合には、発熱抵抗素子20の総表面積を大きく、かつ、発熱抵抗素子20が密になるように巻回して配置することができる。この場合、例えば、発熱抵抗素子20の幅dを広くし、凹部30同士の間隔Wを狭くすることができる。ここで、凹部30の幅d2は、発熱抵抗素子20に幅dよりも大きければ良く、特に制限されない。
【0042】
「2」第2実施形態
図4に示すように、第2実施形態の面状発熱体に用いられる発熱抵抗部材2Aは、リング状の板状部材21と、該リング状の板状部材21の外周面に沿って巻回されるように配置される一本の略等幅である帯状の発熱抵抗素子20と、発熱抵抗素子20に電気的に接続され該発熱抵抗素子20に電力を供給する電力供給線90、93と、を備える。
【0043】
リング状の板状部材21は、外側面である外周部及び内周部のそれぞれに所定間隔で形成される複数の凹部30A及び30Bを備える。発熱抵抗素子20は、リング状の板状部材21の外周部に形成される複数の凹部30Aと内周部に形成される複数の凹部30Bとのに嵌合するように配置されると共に、リング状の板状部材21の外周面に沿って巻回されるように配置される。
【0044】
リング状の板状部材21における第1の面210Aには、発熱抵抗素子20が該第1の面210Aに沿うように複数の第1平面部25が形成される。また、板状部材21における第2の面210Bには、発熱抵抗素子20が該第2の面210Bに沿うように複数の第2平面部26が形成される。また、板状部材21の側面には、複数の折り返し部27が形成される。折り返し部27は、第1平面部25と第2平面部26とを繋ぐ。この複数の折り返し部27は、板状部材21の側面に形成される複数の凹部30A及び30Bに嵌合するように配置される。
【0045】
そして、上述のように、不図示の第1のカバー部は、板状部材21における第1の面210Aに配置される複数の第1平面部25を覆おうように配置される。また、不図示の第2のカバー部材は、板状部材21における第2の面210Bに配置される複数の第2平面部26を覆うように配置される。ここで、例えば、第1のカバー部材及び第2のカバー部材の形状を略円状とすることで略円状の面状発熱体を得ることができる。
【0046】
「3」第3実施形態
図5に示すように、第3実施形態における面状発熱体1Bは、略並列に配置される複数の第1実施形態の面状発熱体1における発熱抵抗部材2と、該複数の発熱抵抗部材2の第1の面210側に配置される床マット状である絶縁性の第1のカバー部材3Bと、複数の発熱抵抗部材2の第2の面210B側に配置される絶縁性の第2のカバー部材4Bとを備える。
【0047】
本実施形態における面状発熱体1Bは、例えば、床暖房部材として使用することができる。この場合、発熱抵抗素子20は、床暖房として、言い換えると、人体を暖めるのに使用可能な温度に昇温される材料で構成される。
【0048】
また、床マット状である絶縁性の第1のカバー部材3Bは、複数の発熱抵抗部材2からの熱を該第1のカバー部材3Bにおける上面に好適に伝熱可能であり、且つ、複数の発熱抵抗部材2からの熱に耐えることができる材質で構成される。
【0049】
絶縁性の第2のカバー部材4Bは、発熱抵抗部材2の第2の面210B側に配置される発熱抵抗素子20からの熱が外方に放熱されないように断熱性に優れた材料で構成することができる。これにより、発熱抵抗部材2における第2のカバー部材4側に配置される発熱抵抗素子20から生じる熱も、第1のカバー部材3の側に伝熱させることができる。
【0050】
「4」加熱装置
図6及び図7に示す加熱装置に基づいて、本発明の面状発熱体を用いた加熱装置について説明する。
【0051】
「4.1」
図6に示すように、加熱装置10Aは、第1実施形態の面状発熱体1と、該面状発熱体1を収納可能な収納部6が形成された筐体5と、面状発熱体1の上面側に配置される伝熱部材7とを備える。
【0052】
面状発熱体1は、上述の通り、発熱抵抗部材2と、発熱抵抗部材2の第1の面210A側に配置される第1のカバー部材3と、発熱抵抗部材2の第2の面210B側に配置される第2のカバー部材4とを備える。
【0053】
筐体5は、薄型の略直方体であって、その上面側には面状発熱体1を収納可能に形成された凹状の収納部6を備える。また、幅方向に延びる側面に発熱抵抗部材2の発熱抵抗素子20に供給される電力量を調整可能な調整部8が配置される。
【0054】
伝熱部材7は、外縁が上方に立ち上がるように形成される部材であって、面状発熱体1からの熱を伝熱可能な材料で構成される。伝熱部材7は、面状発熱体1からの熱により、該伝熱部材7の上面に当接される物体等を加熱することができる。
【0055】
加熱装置10Aは、例えば、加熱調理装置として使用することができる。この場合、発熱抵抗素子20を加熱調理が可能な温度まで発熱可能な材料で構成すると共に、第1のカバー部材3及び第2のカバー部材4を該高温に耐えられる材料で構成する。そして、調整部8により発熱抵抗素子20に供給する電力を調整することで、伝熱部材7における加熱度合いを調整し、所望の条件で加熱調理することができる。
【0056】
「4.2」
図7に示すように、加熱装置10Bは、本発明における面状発熱体1Cと、該面状発熱体1Cを収納可能な収納部6が形成された筐体5と、面状発熱体1Cの上面側に配置される伝熱部材7とを備える。
【0057】
本発明の面状発熱体1Cは、発熱抵抗部材2A及び発熱抵抗部材2Bを有する発熱抵抗部材2と、発熱抵抗部材2における第1の面210A側に配置される第1のカバー部材3と、発熱抵抗部材2の第2の面210B側に配置される第2のカバー部材4とを備える。
【0058】
発熱抵抗部材2は、発熱抵抗部材2Aと発熱抵抗部材2Bとの間に形成され幅方向に延びるように形成される所定幅の断熱部材28を備える。
【0059】
また、第1のカバー部材3は、該第1のカバー部材3の長手方向における略中央に幅方向に延びるように形成される所定幅の断熱部材31を備える。この断熱部材31の一方側に形成される第1部33は発熱抵抗部材2Aの上面に配置され、他方側に形成される第2部35は発熱抵抗部材2Bの上面に配置される。
【0060】
筐体5は、薄型の略直方体であって、その上面側には面状発熱体1Cを収納可能に形成された凹状の収納部6を備える。また、長手方向の側面には、発熱抵抗部材2Aにおける発熱抵抗素子20に供給される電力量を調整可能な調整部8A及び、発熱抵抗部材2Bにおける発熱抵抗素子20に供給される電力量を調整可能な調整部8Bが配置される。
【0061】
伝熱部材7は、外縁が上方に立ち上がるように形成される部材であって、面状発熱体1からの熱を伝熱可能な材料で構成される。伝熱部材7は、該伝熱部材7の長手方向における略中央に幅方向に延びるように形成される所定幅の断熱部材71を備える。断熱部材71の一方側に形成される第1伝熱部73は第1のカバー部材3における第1部33の上面に配置され、他方側に形成される第2伝熱部75は第1のカバー部材3における第2部35の上面に配置される。伝熱部材7は、面状発熱体1Cからの熱により、該伝熱部材7の上面に当接される物体等を加熱することができる。
【0062】
上記のように構成される加熱装置10Bは、第1伝熱部73と第2伝熱部75とにおいて、異なる条件で所定の物体を加熱することができる。具体的には、例えば、調整部8Aにより発熱抵抗部材2Aにおける発熱抵抗素子20に供給する電力量を調整することで、該発熱抵抗素子20における発熱量を調整できる。発熱抵抗部材2Aにおける発熱抵抗素子20で発熱された熱は、第1のカバー部材3における第1部33を介して、伝熱部材7における第1伝熱部73に伝熱される。これにより、第1伝熱部73に当接する物体等を加熱することができる。
【0063】
ここで、発熱抵抗部材2Aと発熱抵抗部材2Bとの間には断熱部材28が配置され、第1部33と第2部35との間には断熱部材31が配置され、第1伝熱部73と第2伝熱部75との間には断熱部材71が配置されているので、発熱抵抗部材2Aにおける発熱抵抗素子20で発生した熱は、伝熱部材7における第1伝熱部73側に伝熱される。
【0064】
上記と同様に、発熱抵抗部材2Bにおける発熱抵抗素子20で発生した熱は、伝熱部材7における第2伝熱部75側に伝熱される。これにより、本実施形態における加熱装置10Bは、第1伝熱部73と、第2伝熱部75とにおいて異なる条件で所定の物体を加熱することができる。
【0065】
ここで、加熱装置10Bは、例えば、加熱調理装置として使用することができる。この場合、発熱抵抗素子20を加熱調理が可能な温度まで発熱可能な材料で構成すると共に、第1のカバー部材3及び第2のカバー部材4を該高温に耐えられる材料で構成する。そして、調整部8A及び調整部8Bにより発熱抵抗部材2A及び発熱抵抗部材2Bにおける発熱抵抗素子20に供給する電力を調整することで、伝熱部材7の第1伝熱部73及び第2伝熱部75における加熱度合いを調整し、第1伝熱部73及び第2伝熱部75のそれぞれにおいて、所望の条件で加熱調理することができる。
【0066】
「5」実施例
図8において、第1実施形態の面状発熱体1における発熱抵抗素子20の温度変化を示す。
<条件>
板状部材 :外形 200mm×310mm
:厚さ 0.5mm
:材料 マイカ
:凹部 d2=7mm、d3=2mm、W=30mm
:切り込み部210=16mm
発熱抵抗素子 :材料 SUS50
:幅6mm×厚さ0.06mm
定格電圧 :100V
定格電流 :9.53A
定格抵抗 :10.5Ω±0.6Ω
【0067】
図8に示すように、面状発熱体1は、短時間で約230℃に昇温できることがわかった。例えば、所定の加熱調理に使用できる温度まで短時間で昇温可能であることがわかった。また、第1のカバー部材及び第2のカバー部材の表面温度を不図示の表面温度モニターで観察した結果、該面状発熱体1の表面は略均一に加熱されることが観察された。
【0068】
「6」製造方法
本発明の面状発熱体1の製造方法として、薄膜状の発熱抵抗素子20を、絶縁性の板状部材21における外周面に沿って巻回するように配置する工程を含む製造方法を例示できる。更に、図1に示す面状発熱体1における板状部材21の第1の面210Aに沿うように配置される複数の第1平面部25を覆うように絶縁性の第1のカバー部材3を配置する工程と、板状部材21の第2の面210Bに沿うように配置される複数の第2平面部26を覆うように絶縁性の第2のカバー部材4を配置する工程と、を更に含むことができる。
【0069】
また、例えば、発熱抵抗素子が略等幅で帯状の発熱抵抗素子20である場合には、ロール状に巻かれた帯状の発熱抵抗素子20を連続して繰り出すと共に、この繰り出された帯状の発熱抵抗素子20を板状部材21の外周面に沿って巻回されるように配置される。そして、絶縁性の第1のカバー部材3を、板状部材21における第1の面210Aに形成される複数の第1平面部25を覆うように配置すると共に、絶縁性の第2のカバー部材4を所定面と反対側の面である第2の面210Bに形成される複数の第2平面部26を覆うように配置することで、本発明の面状発熱体1を製造することができる。
【0070】
これにより、例えば、製造上の困難性なく様々な形状の発熱抵抗素子を形成することができる。また、例えば、打ち抜きなどで所定形状に成形する場合に比べて、この成形時に生じる発熱抵抗素子の無駄を抑制することができる。
【0071】
「7」各種構成物
上述した実施例や応用例における各種構成物について以下に説明する。発熱抵抗素子20は、所要の熱エネルギーを発生可能なものであれば特にその種類は限定されず、面状発熱体の用途により適宜選択して用いることができる。例えば、常温で固体であり所要の比抵抗を有する金属や合金(例えば、JISに規定の合金など)などが適用できる。具体的には、銅−マンガン系合金(例えば、マンガン12〜15重量%、ニッケル2〜4重量%、残部が銅の合金など)、銅−ニッケル系合金(例えば、銅55重量%、ニッケル45重量%からなる合金など)、ニッケル−クロム系合金(例えば、ニッケル80重量%、クロム20重量%からなる合金など)、ニッケル−リン系合金(例えば、リン1〜20重量%、残部がニッケルの合金など)、ニッケル−ホウ素−リン系合金(例えば、ホウ素2重量%、リン8〜16重量%、残部がニッケルの合金など)、鉄−クロム系合金(例えば、クロム20重量%、アルミニウム3重量%、残部が鉄の合金など)、鉄−ニッケル系合金、鉄−炭素系合金、ステンレス合金(例えば、SUS304、ニッケル・酸化スズ・インジュームなどを加えた合金)などを適用することができる。また、発熱抵抗素子20は、所定の温度範囲で自己制御する材料で構成することができる。また、発熱抵抗素子20は、電解箔や圧延箔などを用いることもできる。
【0072】
発熱抵抗素子20は、例えば20℃で21〜300μΩ・cm、好ましくは、21〜100μΩ・cmを例示できる。また、発熱抵抗素子20の厚みは、面状発熱体の用途により適宜設定することができ、例えば、1〜1000μm、好ましくは10〜100μmを例示できる。
【0073】
板状部材21は、絶縁性に優れたものであれば特にその種類は限定されず、面状発熱体の用途により、適宜選択することができる。板状部材21の材料として、例えば、樹脂、板ガラス、耐熱ガラス、セラミックス、シリコンラバー、メルトーチ、マイカ、石綿等を使用することができる。発熱抵抗素子20の発熱温度が高温となる場合には、例えば、マイカ、石綿、セラミックスなどを単独で用いたもの又はこれらを接着材料で接着したものを用いることができる。
【0074】
第1のカバー部材3及び第2のカバー部材4は、絶縁性に優れたものであれば特にその種類は限定されず、面状発熱体の用途により、適宜選択することができる。第1のカバー部材3及び第2のカバー部材4の材料として、例えば、上述のシート部と同様の材料を用いることができる。ここで、上述の通り、第1のカバー部材3及び第2のカバー部材4の断熱性は、加熱面側に配置されるカバー部材の断熱性を低くし、加熱面側ではない側に配置されたカバー部材の断熱性を高くすることができる。言い換えると、加熱面側のカバー部材の伝熱性を高くし、加熱面側ではない側のカバー部材の断熱性を高くすることができる。これにより、発熱抵抗素子20で生じる熱を効率的に加熱対象側に伝えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の面状発熱体における第1実施形態の構成を説明する斜視図である。
【図2】本発明の面状発熱体における第1実施形態の構成を説明する側面図である。
【図3】本発明の面状発熱体における第1実施形態に用いられる発熱抵抗部材の平面図である。
【図4】本発明の面状発熱体における第2実施形態に用いられる発熱抵抗部材の平面図である。
【図5】本発明の面状発熱体における第3実施形態の構成を説明する斜視図である。
【図6】本発明の面状発熱体における第1実施形態の面状発熱体を備える加熱装置の構造を説明する斜視図である。
【図7】本発明の面状発熱体における第1実施形態の面状発熱体が複数配置された加熱装置の構造を説明する斜視図である。
【図8】本発明の面状発熱体における第1実施形態の面状発熱体における発熱抵抗素子の昇温グラフである。
【符号の説明】
【0076】
1 面状発熱体
2 発熱抵抗部材
3 第1のカバー部材
4 第2のカバー部材
20 発熱抵抗素子
21 板状部材
25 第1平面部
26 第2平面部
27 折り返し部
210A 第1の面
210B 第2の面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の板状部材と、
前記板状部材の外周面に沿って巻回されるように配置される薄膜状の発熱抵抗素子であって、前記板状部材における第1の面に沿うように配置される複数の第1平面部、前記第1の面とは反対側の面である第2の面に沿うように配置される複数の第2平面部、及びそれぞれが前記複数の第1平面部のぞれぞれと前記複数の第2平面部のそれぞれとを繋ぎ前記板状部材における側面に配置される複数の折り返し部と、を備える発熱抵抗素子と、
前記複数の第1平面部を覆うように前記第1の面に配置される絶縁性の第1のカバー部材と、
前記複数の第2平面部を覆うように前記第2の面に配置される絶縁性の第2のカバー部材と、を備える面状発熱体。
【請求項2】
前記発熱抵抗素子は、略等幅の帯状である請求項1に記載の面状発熱体。
【請求項3】
前記板状部材の前記側面は、所定間隔で形成される複数の凹部を備え、
前記複数の折り返し部のそれぞれは、前記複数の凹部のそれぞれに嵌合するように配置される請求項1又は2に記載の面状発熱体。
【請求項4】
前記第1のカバー部材と、前記第2のカバー部材とは、熱伝導性が異なる請求項1から3のいずれかに記載の面状発熱体。
【請求項5】
絶縁性の板状部材と、
前記板状部材の外周面に沿って巻回されるように配置される薄膜状の発熱抵抗素子であって、前記板状部材における第1の面に沿うように配置される複数の第1平面部、前記第1の面とは反対側の面である第2の面に沿うように配置される複数の第2平面部、及びそれぞれが前記複数の第1平面部のぞれぞれと前記複数の第2平面部のそれぞれとを繋ぎ前記板状部材における側面に配置される複数の折り返し部を備える発熱抵抗素子と、を備える発熱抵抗部材。
【請求項6】
前記発熱抵抗素子は、略等幅の帯状である請求項5に記載の発熱抵抗部材。
【請求項7】
前記板状部材の前記側面は、所定間隔で形成される複数の凹部を備え、
前記複数の折り返し部のそれぞれは、前記複数の凹部のそれぞれに嵌合するように配置される請求項5又は6に記載の発熱抵抗部材。
【請求項8】
請求項1から4のいずれかに記載の面状発熱体と、
前記面状発熱体を収納可能な筐体と、
前記筐体に収納された状態における前記面状発熱体の該筐体側の面と反対側の面に配置される伝熱部材と、を備える加熱装置。
【請求項9】
薄膜状の発熱抵抗素子を、絶縁性の板状部材における外周面に沿って巻回するように配置する工程を含む面状発熱体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−157488(P2007−157488A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350533(P2005−350533)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(391000092)株式会社サンケイ技研 (26)
【Fターム(参考)】