説明

面状発熱体

【課題】制御装置を使うことなく発熱能力を可変することのできる面状発熱体を提供する。
【解決手段】基板1上に形成された少なくとも3つの第1〜第3電極E1〜E3と、基板1上の第1〜第3電極E1〜E3間に複数形成され、第1〜第3電極E1〜E3から給電されて発熱する第1、第2抵抗発熱体R1、R2とを有し、第1〜第3電極E1〜E3のうち通電させる電極の組み合わせを変えることで第1、第2抵抗発熱体R1、R2での発熱能力を可変するようにしている。
これによれば、従来の一対の櫛歯状電極の間に、少なくとも電極を1つ追加して、これらの電極E1〜E3なかで通電させる電極の組み合わせを切り換えることにより、発熱部位が切り換わって制御装置を使うことなくスイッチ切り換えのみで発熱能力を可変することができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面状発熱体に関するものであり、特に、櫛歯状に配置された一対の電極間に複数の抵抗発熱体を形成したような構造を持つ面状発熱体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、下記特許文献1に示されているように、櫛歯状に配置された一対の電極間に複数の抵抗発熱体を配置し、電極間に通電して抵抗発熱体で発熱させる構造がある。
【特許文献1】特開2003−217904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術の面状発熱体においては、発熱能力を可変するために制御装置が必要になるという問題点を有している。本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目して成されたものであり、その目的は、制御装置を使うことなく発熱能力を可変することのできる面状発熱体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記目的を達成するために、請求項1ないし請求項4に記載の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、基板(1)上に形成された少なくとも3つの第1〜第3電極(E1〜E3)と、
基板(1)上の第1〜第3電極(E1〜E3)間に複数形成され、第1〜第3電極(E1〜E3)から給電されて発熱する第1、第2抵抗発熱体(R1、R2)とを有し、
第1〜第3電極(E1〜E3)のうち通電させる電極の組み合わせを変えることで第1、第2抵抗発熱体(R1、R2)での発熱能力を可変することを特徴としている。
【0005】
この請求項1に記載の発明によれば、従来の一対の櫛歯状電極の間に、少なくとも電極を1つ追加して、これらの電極(E1〜E3)なかで通電させる電極の組み合わせを切り換えることにより、発熱部位が切り換わって制御装置を使うことなくスイッチ切り換えのみで発熱能力を可変することができるようになる。
【0006】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の面状発熱体において、第1電極(E1)と第3電極(E3)との間に配した第1抵抗発熱体(R1)と、第2電極(E2)と第3電極(E3)との間に配した第2抵抗発熱体(R2)とを発熱量の異なる抵抗発熱体としたことを特徴としている。
【0007】
この請求項2に記載の発明によれば、例えば発熱能力を第1抵抗発熱体(R1)<第2抵抗発熱体(R2)とすれば、第1抵抗発熱体(R1)だけ発熱<第2抵抗発熱体(R2)だけ発熱<第1、第2抵抗発熱体(R1、R2)とも発熱と、少なくとも3段階に発熱能力を可変することができるようになる。
【0008】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の面状発熱体において、第1抵抗発熱体(R1)を介した第1電極(E1)と第3電極(E3)との間の間隔(d1)と、第2抵抗発熱体(R2)を介した第2電極(E2)と第3電極(E3)との間の間隔(d2)とを異なるようにしたことを特徴としている。
【0009】
この請求項3に記載の発明によれば、第1抵抗発熱体(R1)と第2抵抗発熱体(R2)とを単位面積あたり同じ発熱能力の抵抗発熱体としても、その抵抗発熱体に電圧を印加する電極間の距離が異なるようにすることにより、電極間の距離が広いほど電極間の抵抗が大きくなって発熱能力が小さくなる。これにより、上記した請求項2と同様に、例えば第1抵抗発熱体(R1)だけ発熱<第2抵抗発熱体(R2)だけ発熱<第1、第2抵抗発熱体(R1、R2)とも発熱と、少なくとも3段階に発熱能力を可変することができるようになる。
【0010】
また、請求項4に記載の発明では、請求項1ないし請求項3のうちいずれか1項に記載の面状発熱体において、第1〜第3電極(E1〜E3)のうちのいずれか2つの電極の一部を、絶縁部材(I)を介して2層構造としたことを特徴としている。
【0011】
この請求項4に記載の発明によれば、3つの第1〜第3電極(E1〜E3)のうちいずれか2つの電極の一部を2層構造とすることにより、いずれか2つの電極と残り1つの電極との間に第1、第2抵抗発熱体(R1、R2)を並べることができるため、効率良く且つコンパクトに発熱体および電極を配置することができるようになる。ちなみに、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態(請求項1〜3の適用例)について添付した図1または図2を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態における電極E1〜E3と抵抗発熱体R1、R2との配置を説明する部分透過平面図であり、図2は、図1中のA−A断面図である。
【0013】
本実施形態の面状ヒータ(面状発熱体)は、床暖房用、乾燥用、自動車のデフロスターなどに用いられるものである。図2に示すように、面状ヒータは、基板1上に、3つの電極E1〜E3と、これらの電極の間に2つ抵抗発熱体R1、R2を形成した構造からなっている。
【0014】
基板1は、例えば厚さ200μm程度のポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称す)のフィルムである。なお基板1は、セラミックや絶縁処理された金属板などで有っても良く、材質や製法を問うものではない。電極E1〜E3は、基板1上に銀やカーボンブラックなどの導電性粒子を樹脂溶液中に分散してなる導電性ペーストをスクリーン印刷して乾燥して形成したものである。なお、電極E1〜E3には銅箔テープなどを用いても良く、材質や製法を問うものではない。
【0015】
そして本実施形態の特徴として、一対の電極としての第1電極E1と第2電極E2とは櫛形を突き合わせた形となっており、その一対の電極の間に、第3電極E3を追加して形成している。より具体的には、図1に示すように、第1電極E1と第2電極E2とから互いに突出する櫛歯の間を縫うようにして第3電極E3を形成している。また、抵抗発熱体R1、R2として、本実施形態では導電性インキ組成物を基板1上に印刷あるいは塗布して任意の厚さおよび形状の塗膜としてPTC系発熱体を形成している(図1に示す斜線部分)。
【0016】
これは、エチレン/酢酸ビニル共重合体とポリエチレン樹脂などの結晶性樹脂からなる高分子ベースポリマー、カーボンブラック、金属粉末、グラファイトなどの導電性物質を溶媒に分散させてなるものなどを用いたPTC(Positive Temperature Coefficient、正温度係数)系発熱体用インクである。
【0017】
この導電性インキ組成物は、温度上昇によって急峻なPTC特性を示す塗膜を形成することができる。このPTC特性は、温度上昇による結晶性高分子の体積膨張により導電性物質の連鎖が切断され、それに伴って抵抗が上昇することによって発現するものである。これは従来から、特殊な形状や小型の発熱体、過電流保護素子として使用されているものである。
【0018】
なおこれも、他の材質の抵抗発熱体であっても良く、材質や製法を問うものではない。そして本実施形態の他の特徴として、上記した3つの電極E1〜E3間において、第1電極E1と第3電極E3との間に第1抵抗発熱体R1、第2電極E2と第3電極E3との間に第2抵抗発熱体R2と、発熱量の異なる抵抗発熱体R1、R2を形成している。これは、特性の異なる発熱体用インクをR1部分とR2部分とに刷り分けても良いし、発熱体用インクの刷り幅や部分的に2度刷りするなどで刷り厚が異なるようにしても良い。
【0019】
また、本実施形態では、図1に示すように、第1抵抗発熱体R1を介した第1電極E1と第3電極E3との間の間隔d1と、第2抵抗発熱体R2を介した第2電極E2と第3電極E3との間の間隔d2とを異なるようにして電極間の通電抵抗を異ならせて抵抗発熱体R1とR2とで発熱量が異なるようにしている。
【0020】
なお、図1では部分的にしか示していないが、電極の長手方向に抵抗発熱体R1、R2が複数(多数)形成されている。そして、基板1上に形成された電極E1〜E3および抵抗発熱体R1、R2の上には、図2に示すように、粘着剤付きのPETのフィルムなどによる被覆材2で覆って保護している。なお、被覆材2の樹脂としてはPETに限らず、ポリウレタン樹脂やポリエステル樹脂あるいはアクリル樹脂などを用いても良い。
【0021】
また、基板1上の電極E1〜E3に給電を行う図示しない給電端子部は、基板1上に形成された電極E1〜E3を平板状の金属製の電極端子と金属板との間に挟む構造となっている。そして、図示しない電源コード(リード線)の芯線が電極端子にハンダ付けなどにより接続されており、電源コードに供給された電気が電極端子に接触している基板1上の電極E1〜E3にバッテリーなどからの電圧を印加できるようになっている。
【0022】
より具体的には、第3電極E3をプラス側とし、第1電極E1をマイナス側としてこれらの電極間に電圧を印加すると、第1抵抗発熱体R1が通電されて発熱するようになる。また、マイナス側を第1電極E1から第2電極E2にスイッチなどで切り換えると、今度は第2抵抗発熱体R2が通電されて発熱するようになる。
【0023】
このように、例えば第1抵抗発熱体R1より第2抵抗発熱体R2の方の発熱量が大きいとすれば、通電を第1電極E1から第2電極E2に切り換えて発熱部を第1抵抗発熱体R1から第2抵抗発熱体R2へ切り換えることにより、簡単に発熱能力を上げるように可変することができる。
【0024】
さらに、マイナス側として第1電極E1と第2電極E2との両方に通電するように切り換えると、第1抵抗発熱体R1と第2抵抗発熱体R2との両方が発熱して発熱能力が最大となるように可変することができる。ちなみに、上記作動でマイナス側としていた第1電極E1と第2電極E2とにおいて、いずれかをプラス側としてこれらの間に電圧を印加するパターンも有りうる。
【0025】
このパターンにおいては、第1抵抗発熱体R1と第2抵抗発熱体R2との両方が発熱するが、電極間の間隔が電気的にはほぼ上記したd1+d2となって通電抵抗が大きくなるため、抵抗発熱体R1、R2の全部を低い発熱量で発熱させることができることとなる。
【0026】
次に、本実施形態での特徴と、その効果について述べる。まず、基板1上に形成された少なくとも3つの第1〜第3電極E1〜E3と、基板1上の第1〜第3電極E1〜E3間に複数形成され、第1〜第3電極E1〜E3から給電されて発熱する第1、第2抵抗発熱体R1、R2とを有し、第1〜第3電極E1〜E3のうち通電させる電極の組み合わせを変えることで第1、第2抵抗発熱体R1、R2での発熱能力を可変するようにしている。
【0027】
これによれば、従来の一対の櫛歯状電極の間に、少なくとも電極を1つ追加して、これらの電極E1〜E3なかで通電させる電極の組み合わせを切り換えることにより、発熱部位が切り換わって制御装置を使うことなくスイッチ切り換えのみで発熱能力を可変することができるようになる。
【0028】
また、第1電極E1と第3電極E3との間に配した第1抵抗発熱体R1と、第2電極E2と第3電極E3との間に配した第2抵抗発熱体R2とを発熱量の異なる抵抗発熱体としている。これによれば、例えば発熱能力を第1抵抗発熱体R1<第2抵抗発熱体R2とすれば、第1抵抗発熱体R1だけ発熱<第2抵抗発熱体R2だけ発熱<第1、第2抵抗発熱体R1、R2とも発熱と、少なくとも3段階に発熱能力を可変することができるようになる。
【0029】
また、第1抵抗発熱体R1を介した第1電極E1と第3電極E3との間の間隔d1と、第2抵抗発熱体R2を介した第2電極E2と第3電極E3との間の間隔d2とを異なるようにしている。これによれば、第1抵抗発熱体R1と第2抵抗発熱体R2とを単位面積あたり同じ発熱能力の抵抗発熱体としても、その抵抗発熱体に電圧を印加する電極間の距離が異なるようにすることにより、電極間の距離が広いほど電極間の抵抗が大きくなって発熱能力が小さくなる。
【0030】
これにより、上記した特徴と同様に、例えば第1抵抗発熱体R1だけ発熱<第2抵抗発熱体R2だけ発熱<第1、第2抵抗発熱体R1、R2とも発熱と、少なくとも3段階に発熱能力を可変することができるようになる。
【0031】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態(請求項4の適用例)における電極E1〜E3と抵抗発熱体R1、R2との配置を説明する部分透過平面図である。上述した第1実施形態と異なる特徴部分を説明する。本実施形態では、第1〜第3電極E1〜E3のうちのいずれか2つの電極の一部を、絶縁部材Iを介して2層構造としている。
【0032】
図3に示した例では第2、第3電極E2、E3を片側に構成して、第2電極E2と第3電極E3との重なる部分の間に、例えばPETのフィルムなどによる絶縁部材Iを挟み込むことで絶縁している。その他は、作動においても第1実施形態と同様である。
【0033】
これによれば、3つの第1〜第3電極E1〜E3のうちいずれか2つの電極の一部を2層構造とすることにより、いずれか2つの電極と残り1つの電極との間に第1、第2抵抗発熱体R1、R2を並べることができるため、効率良く且つコンパクトに発熱体および電極を配置することができるようになる。
【0034】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、3つの第1〜第3電極E1〜E3で構成しているが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば第3電極E3を電極長手方向の一端側のゾーンと他端側のゾーンとに分けるなどして4つ以上の電極で構成して、ゾーン毎で発熱量を可変できるようにしても良い。また、4つ以上の電極とそれらの間の抵抗発熱体との組み合わせで3段階以上の細かい段階で発熱量を切り替えられるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態における電極E1〜E3と抵抗発熱体R1、R2との配置を説明する部分透過平面図である。
【図2】図1中のA−A断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態における電極E1〜E3と抵抗発熱体R1、R2との配置を説明する部分透過平面図である。
【符号の説明】
【0036】
1…基材
2…被覆材
E1…第1電極
E2…第2電極
E3…第3電極
d1、d2…間隔
I…絶縁部材
R1…第1抵抗発熱体
R2…第1抵抗発熱体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(1)上に形成された少なくとも3つの第1〜第3電極(E1〜E3)と、
前記基板(1)上の前記第1〜第3電極(E1〜E3)間に複数形成され、前記第1〜第3電極(E1〜E3)から給電されて発熱する第1、第2抵抗発熱体(R1、R2)とを有し、
前記第1〜第3電極(E1〜E3)のうち通電させる電極の組み合わせを変えることで前記第1、第2抵抗発熱体(R1、R2)での発熱能力を可変することを特徴とする面状発熱体。
【請求項2】
前記第1電極(E1)と前記第3電極(E3)との間に配した前記第1抵抗発熱体(R1)と、前記第2電極(E2)と前記第3電極(E3)との間に配した前記第2抵抗発熱体(R2)とを発熱量の異なる抵抗発熱体としたことを特徴とする請求項1に記載の面状発熱体。
【請求項3】
前記第1抵抗発熱体(R1)を介した前記第1電極(E1)と前記第3電極(E3)との間の間隔(d1)と、前記第2抵抗発熱体(R2)を介した前記第2電極(E2)と前記第3電極(E3)との間の間隔(d2)とを異なるようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の面状発熱体。
【請求項4】
前記第1〜第3電極(E1〜E3)のうちのいずれか2つの電極の一部を、絶縁部材(I)を介して2層構造としたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のうちいずれか1項に記載の面状発熱体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−299546(P2007−299546A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−124255(P2006−124255)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(592150860)富士ネームプレート株式会社 (3)
【Fターム(参考)】