説明

面発光合わせガラス及びその製造方法

【課題】面発光が可能であり、耐熱性及び防火性に優れた面発光合わせガラスを提供する。
【解決手段】第1ガラス板2と第2ガラス板7との間に導光板4が封止樹脂6で封止されてなる面発光合わせガラス1であって、第1ガラス板2と第2ガラス板7との間に、第1光学フィルム3、導光板4及び第2光学フィルム5がこの順番で積層され、第1ガラス板2と第1光学フィルム3との間、及び第2ガラス板7と第2光学フィルム5との間に封止樹脂6が充填され、第1光学フィルム3と導光板4との間、及び導光板4と第2光学フィルム5との間に封止樹脂6が充填されていない空間を有し、かつ、第1光学フィルム3及び第2光学フィルム5の端部が第1ガラス板2の端部よりも内側にあることを特徴とする面発光合わせガラス1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板とガラス板との間に導光板が積層されて封止樹脂で封止されてなる面発光合わせガラス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電飾看板等に使用されるバックライトとして、直下型やエッジライト型のバックライトが知られている。直下型のバックライトは、大型液晶テレビなどに使用される場合が多く、エッジライト型のバックライトは厚みを薄くすることができるため、ノートパソコンなどに使用される場合が多い。このようなエッジライト型のバックライトとしては、導光板の表面に光拡散フィルムや反射フィルムなどの光学フィルムが積層されたものが知られている。例えば、特開2006−208582号公報(特許文献1)には、少なくとも一つの側端部を光入射面とし、これと略直交する両側の面を光出射面とする、ヘーズ(JIS K7136:2000)が2%以上の導光板と、前記導光板の少なくとも一つの側端部に配置された光源とからなることを特徴とする電飾看板用バックライトについて記載されている。これによれば、両側の面を光出射面とする、ヘーズ(JIS K7136:2000)が2%以上の導光板を用いることから、バックライトの厚みが薄くなり、電飾看板とした際の厚みを薄くすることができるとされている。しかしながら、このようにして得られた電飾看板は、防火性が要求される用途に用いることができず改善が望まれていた。
【0003】
一方、面発光合わせガラスとして、ガラス板とガラス板との間に発光体を封じた合わせガラスが知られている。例えば、特開平4−9995号公報(特許文献2)には、微小な間隙を残して面を対向させたガラスのような2つの透明体の間に発光体を介在させ、この発光体を2つの透明体の間に充填して固化させた透明な高分子樹脂により固定したことを特徴とする合わせガラスディスプレイ装置について記載されている。これによれば、奥行寸法が小さく、建築物の窓ガラス等としても兼用できるような薄型のディスプレイ装置を提供することができるとされている。しかしながら、導光板を封止して合わせガラスにした例はなく、そのような合わせガラスの提供が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−208582号公報
【特許文献2】特開平4−9995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、面発光が可能であり、耐熱性及び防火性に優れた面発光合わせガラスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、第1ガラス板と第2ガラス板との間に導光板が封止樹脂で封止されてなる面発光合わせガラスであって、第1ガラス板と第2ガラス板との間に、第1光学フィルム、導光板及び第2光学フィルムがこの順番で積層され、第1ガラス板と第1光学フィルムとの間、及び第2ガラス板と第2光学フィルムとの間に封止樹脂が充填され、第1光学フィルムと導光板との間、及び導光板と第2光学フィルムとの間に封止樹脂が充填されていない空間を有し、かつ、第1光学フィルム及び第2光学フィルムの端部が第1ガラス板の端部よりも内側にあることを特徴とする面発光合わせガラスを提供することによって解決される。
【0007】
このとき、第1光学フィルムが反射フィルムであり、第2光学フィルムが拡散フィルムであることが好適であり、第1光学フィルム及び第2光学フィルムが拡散フィルムであることが好適である。第1光学フィルム及び/又は第2光学フィルムの導光板に対向する面が凹凸を有することが好適であり、第1光学フィルムと導光板との間、及び/又は導光板と第2光学フィルムとの間に密着防止フィルムを介して積層されてなることが好適である。また、封止樹脂がポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びポリビニルブチラールからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂であることも好適な実施態様である。
【0008】
また、上記課題は、第1ガラス板と第2ガラス板との間に導光板を封止樹脂で封止する面発光合わせガラスの製造方法であって、第1ガラス板、第1封止樹脂シート、第1光学フィルム、導光板、第2光学フィルム、第2封止樹脂シート及び第2ガラス板をこの順番で積層し、第1光学フィルム及び第2光学フィルムの端部が第1ガラス板の端部よりも内側になるように第1光学フィルム及び第2光学フィルムを配置し、導光板を構成する樹脂の融点又は軟化点以下の温度で加熱して第1封止樹脂シート及び第2封止樹脂シートを溶融させてから冷却して封止することを特徴とする面発光合わせガラスの製造方法を提供することによっても解決される。このとき、加熱温度が180℃以下であることが好適な実施態様である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の面発光合わせガラスは、第1光学フィルムと導光板との間、及び導光板と第2光学フィルムとの間に封止樹脂が充填されていない空間を有するため、導光性能が良好であり、耐熱性及び防火性に優れた面発光合わせガラスである。こうして得られた面発光合わせガラスは、厚みが小さく様々な形状や寸法への対応が容易である。また、第1ガラス板と第1光学フィルムとの間、及び第2ガラス板と第2光学フィルムとの間が封止樹脂を介して固着されているため、第1ガラス板及び第2ガラス板のどちらの面が破壊されたとしてもガラスが飛散しにくく安全性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】封止操作後の面発光合わせガラスの一例の断面模式図である。
【図2】封止操作前の積層体の一例の断面模式図である。
【図3】封止処理装置の一例の模式図である。
【図4】実施例1における封止処理時の温度と圧力を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明をより具体的に説明する。図1は、本発明の面発光合わせガラス1の一例の断面模式図である。図2は、封止処理前の積層体の一例を示した断面模式図であり、第1ガラス板2、第1封止樹脂シート8、第1光学フィルム3、導光板4、第2光学フィルム5、第2封止樹脂シート9及び第2ガラス板7がこの順番に積層されてなる例である。
【0012】
本発明の面発光合わせガラス1は、第1ガラス板2と第2ガラス板7との間に、第1光学フィルム3及び第2光学フィルム5により両面が保護された導光板4が封止樹脂6で封止されており、第1光学フィルム3と導光板4との間、及び導光板4と第2光学フィルム5との間に封止樹脂6が充填されていない空間を有する。ここで、封止樹脂6が充填されていない空間とは、第1光学フィルム3と導光板4、及び導光板4と第2光学フィルム5がそれぞれ光学的に接触(オプティカルコンタクト)していない状態であればよい。このように、導光板4の両表面が第1光学フィルム3や第2光学フィルム5でそれぞれ保護されて封止樹脂6が充填されていない空間を有することにより、導光板4の側端部に設けられた光源から入射された光が導光板4の内部を伝搬し、導光板4の両表面から均一に出射するので、導光板4が面光源として機能する。ここで、発光体が直接樹脂に接触して固定された合わせガラスについての特開平4−9995号公報(特許文献2)に記載された方法と同様に、導光板4の表面が直接封止樹脂6で覆われた合わせガラスを作製した場合、導光板4の表面から均一に光を出射することが困難となることを本発明者らは確認している。したがって、本発明の構成を採用する意義が大きい。
【0013】
本発明の面発光合わせガラス1は、第1ガラス板2と第2ガラス板7との間に第1光学フィルム3、導光板4及び第2光学フィルム5がこの順番で積層されて、第1ガラス板2と第1光学フィルム3との間、及び第2光学フィルム5と第2ガラス板7との間に封止樹脂6が充填されてなるものである。このように、第1ガラス板2と第1光学フィルム3との間、及び第2光学フィルムと第2ガラス板7との間が封止樹脂6を介して固着されているため、第1ガラス板2及び第2ガラス板7のどちらかの面が破壊されたとしてもガラスが飛散しにくく安全性に優れている。更に、本発明の面発光合わせガラス1を住宅やビル等の窓ガラスとして用いた場合、窓ガラスの外側からガラス面を破壊して不法侵入を試みたとしても、短時間で封止樹脂6のみならず第1光学フィルム、導光板4及び第2光学フィルム5までを破ることは容易ではないため防犯効果に優れており、また、導光板4や封止樹脂6が充填されていない空間を有するので防音効果にも優れている。また、上述のように第1光学フィルム3と導光板4との間、及び導光板4と第2光学フィルム5との間が封止樹脂6で充填されていない空間を有するため、本発明の面発光合わせガラス1は断熱効果も期待できる。
【0014】
本発明で用いられる導光板4としては、その表裏面で全反射させることによって光を伝搬することができるものであればよく特に限定されない。ここで、導光板4としては、少なくとも一端部を光入射面とし、導光板4の表裏面の少なくとも一方を光出射面とするように成形された略平板状からなるものであることが好ましい。このような導光板4は、光入射面から入射した光が光出射面から効率良く出射できるように、表面(光出射面)に凹凸処理やドットパターン状等の拡散層の印刷を施したもの、あるいは導光板中に微粒子を練りこんだものがあげられる。導光板4の厚みは、1〜20mmであることが好ましく、5〜15mmであることがより好ましい。また、導光板4の端部に配置される光源としては、例えば、冷陰極管等が挙げられる。
【0015】
導光板4を構成する樹脂としては特に限定されず、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、セルロース系樹脂、アセタール系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂などの樹脂が挙げられる。中でも、耐候性を有するとともに透明性が高い観点からアクリル系樹脂が好適に用いられる。
【0016】
また、導光板4中に練り込む微粒子としては、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸アルミニウム、酸化チタン、合成ゼオライト、アルミナ、スメクタイトなどの無機微粒子や、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂などからなる有機微粒子が挙げられる。
【0017】
本発明で用いられる第2光学フィルム5は、導光板4と第2光学フィルム5との間に封止樹脂が充填されていない空間を形成でき、透明性を有するものであれば特に限定されず、拡散フィルムの他、プリズムシート、レンズシート等の輝度向上フィルム等が挙げられる。また、第2光学フィルム5は、単層フィルムであっても多層フィルムであっても構わない。導光板4の表面から出射される光を均一に面発光させるためには、拡散フィルムであることが好ましい。
【0018】
拡散フィルムとしては、光拡散性が高いという観点から、例えば、透明支持体上にバインダー樹脂及び光拡散剤からなる光拡散層が形成されたフィルム、透明支持体の表面がサンドブラスト処理されてなるフィルム等が好適に採用される。中でも、導光板4と光学的に接触しないようにする観点から、透明支持体の表面がサンドブラスト処理されてなるフィルムがより好適に用いられる。
【0019】
上記拡散フィルムにおいて用いられる透明支持体としては特に限定されず、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム等の透明プラスチックフィルム等が挙げられる。中でも強度や耐久性の観点からポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく用いられる。
【0020】
また、上記拡散フィルムにおいて用いられる光拡散剤としては特に限定されず、導光板4からの出射光を拡散させてそのムラを消去させつつもできるだけそのまま正面方向に対して透過させる性能を付与する樹脂粒子が好ましく用いられる。このような樹脂粒子としては、形状が実質的に真球状であって、平均粒子径が1〜50μmのものが好ましく用いられる。平均粒子径は、コールターカウンター法によって測定した値である。
【0021】
上記樹脂粒子としては、例えば、アクリル系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子、ナイロン系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、ポリエチレン系樹脂粒子、ベンゾグアナミン系樹脂粒子、ウレタン系樹脂粒子等が挙げられる。
【0022】
上記拡散フィルムにおいて用いられるバインダー樹脂としては特に限定されず、導光板4を構成する樹脂の説明のところで例示されたものと同様のものを用いることができる。中でも、耐候性を有するとともに透明性が高い観点からアクリル系樹脂が好適に用いられる。また、導光板4と光学的に接触しないようにする観点からは、バインダー樹脂としては電離放射線硬化型樹脂が好ましく用いられる。
【0023】
また、透明支持体の表面がサンドブラスト処理されてなるフィルムにおいて、サンドブラスト処理とは、珪砂のような高硬度の砂状物(ショット材)を高速回転翼でフィルムの表面にたたきつけたり、水流中に混ぜて高圧ポンプでフィルムの表面にたたきつけたりして、フィルムの表面を物理的に削り取るというものである。このように、フィルム表面に凹凸形状を形成することにより、導光板4との密着防止効果が期待できる。サンドブラスト処理は、ショット材の種類(硬さ)、大きさ、噴射量、基材フィルムにたたきつける速度、時間、装置と基材フィルムまでの距離などの条件を変更することによって表面形状を変えることができる。一例として、ポリエチレンテレフタレートの表面を算術平均粗さ(Ra)(JIS B0601:2001)が0.5μm程度に処理する場合の条件は、ショット材の種類:珪砂、ショット材の大きさ:平均粒径200μm、噴射量:2.0〜2.5l/sec、周速:40〜50m/sec、処理時間:30〜60sec、装置とフィルムの距離:430mmである。
【0024】
本発明で用いられる第2光学フィルム5の厚さは特に限定されず、板状のものからフィルム状のものまで使用することができる。第2光学フィルム5の厚さは、10〜300μmであることが好ましい。第2光学フィルム5の厚さが10μm未満の場合、第2光学フィルム5の強度が低下して封止作業が困難となるおそれがあり、50μm以上であることがより好ましい。一方、第2光学フィルム5の厚さが300μmを超える場合、重量やコストが上昇するおそれがあり、200μm以下であることがより好ましい。
【0025】
本発明で用いられる第1光学フィルム3は、第1光学フィルム3と導光板4との間に封止樹脂が充填されていない空間を有するのであれば、透明性を有するフィルムであっても反射性を有するフィルムであっても構わない。第1光学フィルム3が光透過性を有するフィルムである場合、上述の第2光学フィルム5の説明のところで例示されたものと同様のものを用いることができる。例えば、第1光学フィルム3及び第2光学フィルム5が拡散フィルムである場合は、導光板4の側端部から入射された光が導光板4の表裏面から出射されるため、両面発光型の面発光合わせガラス1が得られる。一方、第1光学フィルム3が反射フィルムであり、第2光学フィルム5が拡散フィルムである場合は、導光板4の側端部から入射された光は第2光学フィルム5が積層された側からのみ出射されるため、片面発光型の面発光合わせガラス1が得られることになる。
【0026】
上記反射特性を有するフィルムとしては、発泡白色フィルム、金属蒸着フィルム、白色顔料練り込みフィルム、白色塗装フィルムなどが挙げられる。中でも、導光板4と光学的に接触しにくい発泡白色フィルムが好適に用いられ、具体的には樹脂フィルム中に微細な気泡が多数形成されたフィルムがより好適に用いられる。樹脂フィルムとしては、上述の拡散フィルムのところで説明したものと同様の熱可塑性樹脂が好適に用いられる。中でも、強度や耐久性の観点からポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル樹脂が特に好適に用いられる。
【0027】
本発明で用いられる第1光学フィルム3の厚さは特に限定されず、板状のものからフィルム状のものまで使用することができる。第1光学フィルム3の厚さは、10〜300μmであることが好ましい。第1光学フィルム3の厚さが10μm未満の場合、第1光学フィルム3の強度が低下して封止作業が困難となるおそれがあり、50μm以上であることがより好ましい。一方、第1光学フィルム3の厚さが300μmを超える場合、重量やコストが上昇するおそれがあり、200μm以下であることがより好ましい。
【0028】
ここで、本発明で用いられる第1光学フィルム3及び/又は第2光学フィルム5の導光板4に対向する面が凹凸を有することが好ましい。このことにより、第1光学フィルム3と導光板4との間や導光板4と第2光学フィルム5との間に空間が形成されて光学的に接触しないため、より均一な面発光が可能となる本発明の面発光合わせガラス1を得ることができる。ここで、第1光学フィルム3及び第2光学フィルム5に凹凸形状を形成する方法としては特に限定されず、例えば、エンボスロールを用いて成形してもよいし、物理的あるいは化学的にエッチングして形成してもよいし、粒子を含むコーティング処理を施したり、サンドブラスト処理を施してもよい。また、凹凸は、第1光学フィルム3及び/又は第2光学フィルム5として例示した、拡散シートの拡散層の面、プリズムシートのプリズム面、レンズシートのレンズ面、反射フィルムの反射層の面であってもよい。
【0029】
また、凹凸面の表面粗さは、導光板4の両表面に第1光学フィルム3と第2光学フィルム5とをそれぞれ積層した際に、第1光学フィルム3と導光板4との間、及び導光板4と第2光学フィルム5との間に封止樹脂6で充填されていない空間、すなわち第1光学フィルム3と導光板4、及び導光板4と第2光学フィルム5が光学的に接触しない程度であれば特に限定されない。具体的には、算術平均粗さ(Ra)(JIS B0601:2001)が0.1〜4.0μmであることが好ましい。算術平均粗さ(Ra)は0.15μm以上であることがより好ましい。一方、算術平均粗さ(Ra)が4.0μmを超える場合、第1光学フィルム3と導光板4との間、及び導光板4と第2光学フィルム5との間に封止樹脂6が流入してしまうおそれがあり、3.5μm以下であることがより好ましい。
【0030】
また、本発明の面発光合わせガラス1において、第1光学フィルム3と導光板4との間、及び/又は導光板4と第2光学フィルム5との間が密着防止フィルムを介して積層されてなることが好ましい。このことにより、第1光学フィルム3と導光板4との密着や、導光板4と第2光学フィルム5との密着を防止して干渉縞(ニュートンリング)が発生しないようにすることができるため、より均一な面発光が可能となる本発明の面発光合わせガラス1を得ることができる。
【0031】
このような密着防止フィルムとしては特に限定されず、例えば、フィルムの両表面がサンドブラスト処理されたものであってもよいし、フィルムの両表面に粒子を含む塗布液がコーティング処理されたものであってもよい。中でも、密着防止とともに透明性が要求される観点からは、フィルム表面に粒子を含む塗布液がコーティング処理されたものが好適に採用され、特に透明性に優れる樹脂粒子をバインダーに分散した塗布液によりコーティング処理されたものがより好適に用いられる。用いられるバインダーとしては特に限定されず、拡散フィルムの説明のところで例示された電離放射線硬化型樹脂が好適に用いられる。同様に、透明支持体及び樹脂粒子としては特に限定されず、拡散フィルムの説明のところで例示されたものが好適に用いられる。
【0032】
本発明で使用するガラス板は特に限定されず、用途や目的に応じて選択される。通常、第1ガラス板2と第2ガラス板7とは実質的に同じ形状であるが、厚みや素材は異なっていてもよい。ガラス板の厚みは、1mm以上であることが好ましい。薄すぎる場合、製造中にガラス板が破損するおそれがある。また、ガラス板が厚い場合、上下からの荷重の影響が大きく、加熱時の熱伝導にも時間を要するため、封止操作の工夫が必要な場合がある。ガラス板の厚みは、より好適には3mm以上である。一方、ガラス板の厚みは、好適には20mm以下であり、より好適には10mm以下である。また、ガラス板の面積は用途によって様々であるが、本発明によれば、1m以上の大型の面発光合わせガラス1を製造することも容易である。
【0033】
本発明で使用するガラス板としては、貼り合わせ時に破損しにくく安全性や防犯性に優れる点から強化ガラスが好適に用いられる。具体的には、表面圧縮応力が20MPa以上のガラス板を用いることが好ましい。ここで、ガラス板の表面圧縮応力は、JIS R3222に準じて測定される値である。表面圧縮応力が20MPa以上のガラス板としては、具体的には、倍強度ガラス、強化ガラス、超強化ガラスなどが挙げられる。倍強度ガラスは表面圧縮応力が通常20〜60MPaのものであり、強化ガラスは表面圧縮応力が通常90〜130MPaのものであり、超強化ガラスは表面圧縮応力が通常180〜250MPaのものである。また、表面圧縮応力を大きくするほど、強度は向上するが、反りが大きくなりやすい。
【0034】
本発明の面発光合わせガラス1は、第1光学フィルム3及び第2光学フィルム5の端部が第1ガラス板2の端部よりも内側にあることを特徴とする。このことにより、得られる面発光合わせガラス1の接着強度が良好となる。第1光学フィルム3及び第2光学フィルム5の端部と第1ガラス板2の端部との距離については得られる面発光合わせガラス1の大きさにより適宜調節する必要があるが、2mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましい。一方、第1光学フィルム3及び第2光学フィルム5の端部と第1ガラス板2の端部との距離は、通常、100mm以下である。
【0035】
本発明で用いられる封止樹脂6の材質は、透明であって熱可塑性及び接着性を有するものであれば特に限定されないが、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びポリビニルブチラールからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂が好適に使用される。中でも、柔軟性に優れるのでガラスとプラスチックのように熱膨張係数の大きく異なる材料を組み合わせて使用する際にも剥離が生じにくい利点を有する観点から、封止樹脂6の材質がポリウレタンであることがより好ましい。特に、本発明のように第1ガラス板2と第2ガラス板7との間に導光板4が配置されており、第1ガラス板2及び第2ガラス板7の端部にまで導光板4の端部が存在する場合に特に好適である。更に、導光板4を構成する樹脂の融点又は軟化点が比較的低く、該樹脂が溶けない温度で封止処理を行う観点からも封止樹脂6の材質がポリウレタンであることがより好ましい。また、ポリウレタンは、貫通強度にも優れている。
【0036】
また、本発明で用いられる封止樹脂6の材質は、架橋可能な熱可塑性樹脂、特に加熱することによって架橋反応が進行する樹脂であることが強度や耐久性の面からは好ましい。したがって、このような樹脂をシートの形態で第1ガラス板2と第1光学フィルム3との間、及び第2光学フィルム5と第2ガラス板7との間に挟み、加熱溶融してから、必要に応じて架橋反応を進行させ、その後冷却固化させることにより、第1光学フィルム3、導光板4及び第2光学フィルム5を封止する。加熱によって架橋されるものを使用することによって、耐久性や接着性に優れたものとすることができる。架橋可能な熱可塑性樹脂としては、加熱した時に架橋反応が進行するものであれば特に限定されない。例えば、ポリウレタンであればイソシアネート基と水酸基とを反応させることによって架橋させることができるし、エチレン−酢酸ビニル共重合体であれば、架橋剤を配合して加熱することで架橋させることができる。
【0037】
本発明の面発光合わせガラス1を製造するにあたっては、封止樹脂シートを第1ガラス板2と第1光学フィルム3との間、及び第2光学フィルム5と第2ガラス板7との間に挟み、加熱溶融してから冷却固化させて、第1光学フィルム3、導光板4及び第2光学フィルム5を封止する。
【0038】
封止樹脂シートは、その片面又は両面に適当なエンボスを有していてもよく、このことにより、ブロッキングを防止でき、気泡残りも抑制しやすくなる。封止樹脂シートの厚さは0.1mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることがより好ましい。一定以上の厚みとすることで、第1ガラス板2と第1光学フィルム3、第ガラス板7と第2光学フィルム5とが均一に接着される。一方、封止樹脂シートの厚さは、通常、5mm以下であり、3mm以下であることが好ましい。封止樹脂シートは1枚又は複数枚重ねて厚みを調節して使用することができる。
【0039】
以上説明した、第1光学フィルム3、導光板4、第2光学フィルム5、ガラス板及び樹脂シートを用いて面発光合わせガラス1が製造される。以下に具体的な製造方法について説明する。
【0040】
まず、図2を用いて積層構成について説明する。図2は、封止処理前の積層体の一例を示した断面模式図であり、第1ガラス板2、第1封止樹脂シート8、第1光学フィルム3、導光板4、第2光学フィルム5、第2封止樹脂シート9及び第2ガラス板7がこの順番で積層されている。
【0041】
第1ガラス板2の上に実質的にその全面を覆うように第1封止樹脂シート8を重ねる。第1封止樹脂シート8は第1光学フィルム3の裏面と接するものである。引き続き、第1封止樹脂シート8の上に、第1光学フィルム3の凹凸面が導光板4と接するようにして第1光学フィルム3と導光板4をこの順番で積層する。更に、導光板4の上に第2光学フィルム5の凹凸面が導光板4と接するようにして導光板4の上に第2光学フィルム5を積層する。このとき、第1光学フィルム3及び第2光学フィルム5の端部が第1ガラス板2の端部よりも内側にあるように配置される。このことにより、得られる面発光合わせガラス1の接着強度が良好となる。配置する方法としては、第1光学フィルム3、導光板4及び第2光学フィルム5の中心が一致するように配置することが好ましい。また、このとき、ガラス板の対向する少なくとも2辺において、第1光学フィルム3又は第2光学フィルム5の端部をガラス板の端部よりも内側にして導光板4とガラス板とを直接接着させる。接着強度をより向上させる観点からはガラス板の4辺すべてが導光板4と直接接着されていることが好ましいが、ガラス板の対向する2辺(並行)又は3辺(コの字型)において、導光板4とガラス板とが直接接着されていてもよい。また、4辺よりも3辺(コの字型)において導光板4とガラス板とが直接接着されている方がより均一な面発光が得られることを本発明者らは確認している。
【0042】
次に、第2光学フィルム5の上に第2封止樹脂シート9と第2ガラス板7とが積層されて封止処理前の積層体10が得られる。このとき、第1光学フィルム3又は第2光学フィルム5の周縁部に追加の樹脂シート片を配置してもよく、このことにより、第2光学フィルム5の周縁部の空間を封止樹脂で容易に満たすことが出来、得られる面発光合わせガラス1の接着強度を向上させることができる。
【0043】
本発明の面発光合わせガラス1の製造方法は、導光板4を構成する樹脂の融点又は軟化点以下の温度で積層体10を加熱して第1封止樹脂シート8及び第2封止樹脂シート9を溶融させてから冷却して封止することを特徴とする。このとき、第1ガラス板2と第1光学フィルム3との間、及び第2光学フィルム5と第2ガラス板7との間の空気を排出してから溶融させることが好ましい。一方、第1光学フィルム3と導光板4との間、及び導光板4と第2光学フィルム5との間にある封止樹脂6が充填されていない空間には空気が残存したままでも構わない。
【0044】
図3は、封止処理装置の一例の模式図である。この封止処理装置は、積層体10を内部に収容する複数の封止処理容器11を有し、封止処理容器内の空気の排出操作や、封止処理装置内の加熱操作及び圧力調整操作の可能なものである。封止処理容器11はその一部又は全部が気体非透過性の柔軟な膜からなるものである。当該膜の素材は、気体非透過性の柔軟な膜であれば良く、一定以上の柔軟性と強度があって、膜の内部が真空になった時や膜の外部が加圧状態になった時に外気圧が積層体10全体に均一にかかるようになるものであれば特に限定されず、ゴムや樹脂のシートやフィルムが使用できる。このとき、全体が気体非透過性の柔軟な膜からなる袋を使用することが好ましい。この場合には、封止処理容器11は単なる袋であるから、様々な形状や寸法の面発光合わせガラス1を製造する際に柔軟に対応することが可能であり、建材や内装材など、多様な寸法の製品を製造することが要求される用途に対して好適である。
【0045】
特に、積層体10においてこのような封止処理容器11を使用した場合には、封止処理容器11の内部を減圧して上下からの荷重が積層体10にかかった時に、ガラス板が割れるのを防止することができる。この場合には、封止処理容器11である袋を、ガラス板の表面に沿わせてから封止するのが好ましい。
【0046】
また、積層体10が、取付け金具などのようにガラス板から外側へ突出した部材を有する場合にも、このような封止処理容器11を使用することが好ましい。この場合にも、封止処理容器11である袋を、突出した部材の形状に沿わせてから封止することが好ましい。突出した部材の形状によっては、その形状に対応したポケットを有する袋を使用してもよい。また、突出部に過剰の荷重がかかるのを防止するために、突出部を、減圧時に変形しにくいカバーで覆ってから、封止処理容器11の中に導入することも好ましい。こうすることによって封止処理容器11の破損を防止することもできる。
【0047】
積層体10を封止処理容器11に導入する際には、積層体10の外縁を通気性のある素材からなるブリーダー12で覆って、積層体10内部の溶融樹脂が流出するのを防ぐとともに、積層体10内部からの空気の排出ルートを確保することが好ましい。ブリーダー12に使用される素材としては、織布、編地、不織布などの布帛が使用可能である。
【0048】
このようにして積層体10が入れられた複数の封止処理容器11をオートクレーブ13内に導入して相互に間隔をあけて平行に配置する。これによって、封止処理容器11内の積層体10は相互に平行に配置されることになる。複数の封止処理容器11は、上下方向に間隔をあけて重ねて配置されることが好ましい。所定の間隔をあけて配置する方法は特に限定されず、所定の間隔を有する棚をオートクレーブ13内に設ける方法などが例示される。
【0049】
オートクレーブ13内において積層体10と平行の向きに熱風を流すことによって積層体10を加熱する。積層体10と平行の向きに熱風を流すことによって、積層体10に効率良くかつ均一に熱を伝えることが可能である。このとき、封止処理容器11の下面にも熱風が接触するようにすることが好ましく、そのためには、封止処理容器11と棚との間にスペーサーを配置する方法や、棚自体を網棚にする方法などが好適に採用される。熱風を供給する方法は特に限定されず、オートクレーブ13内にヒーターを設けて、ファンを用いて積層体10と平行の向きに熱風を流しても良い。しかしながら、オートクレーブ13の外部にヒーターを設けて、熱風をオートクレーブ13内に導入する方法が、均一に加熱しやすくて好ましい。この場合、オートクレーブ13が、熱風導入口と、その反対側に設けられた熱風導出口とを有し、熱風導入口から熱風導出口へと流れる通路の間に複数の封止処理容器11が配置されることが好ましい。
【0050】
封止処理に際しては、前記封止処理容器11内を減圧して第1ガラス板2と第2ガラス板7との間の空気を排出する。図3の封止処理装置では、それぞれの封止処理容器11に排気するためのパイプ14が接続されている。パイプ14は、3本まとめられてパイプ15に接続されている。さらにこのようにまとめられたパイプ15が6本(一部図示を省略)、タンク16に接続されている。タンク16は真空ポンプ17に接続されており、これによって封止処理容器11内部の空気を排出することが可能である。封止処理容器11の数は、複数であれば特に限定されないが、生産効率を考慮すれば、6個以上であることが好ましく、12個以上であることがより好ましい。
【0051】
6本のパイプ15のそれぞれには、バルブ18を介して圧力計19が接続され、またパイプ15中の流れを遮断することの可能な圧力調整弁20が設けられている。これによって、パイプ15に接続された封止処理容器11のいずれかに漏れが発生した場合に、圧力計19が圧力の上昇を検知し、制御回路21が圧力調整弁20に信号を送って圧力調整弁20を閉じる。これによって、封止操作の途中で一つの封止処理容器11に漏れが発生しても、他の封止処理容器11にその悪影響が及ぶのを防止することができる。本発明で使用する封止処理容器11は、柔軟なシートからなるものであるし、装飾合わせガラス1の形態にしたがってさまざまな形状のものを準備する必要があるので、漏れが発生するおそれがある。したがって、このような制御方法を採用することが好ましい。図3の例では、3つの封止処理容器11ごとに一つの制御を行っているが、これは設備コストと効果とのバランスに基づくものである。圧力計19と圧力調整弁20のセットは、2セット以上あればよいが、好適には3セット以上、より好適には5セット以上である。制御回路21からアラーム信号を出して、オペレーターに知らせることもできる。
【0052】
6本のパイプ15はタンク16に接続されており、圧力調整弁20が開いている状態では、全ての封止処理容器11がタンク16と連通している。タンク16の空気は真空ポンプ17によって排出される。また、タンク16にはコントロールバルブ22を介して外気を導入することができる。
【0053】
図3の封止処理装置においては、タンク16内の圧力を制御することによって全ての封止処理容器11の内部の圧力を同時に制御することができる。タンク16内部の圧力は、バルブ23を介して接続された圧力計24で計測され、この圧力データを受け取った制御回路25がコントロールバルブ22に信号を送って外気を取り入れながら所望の圧力に微調整する。この間真空ポンプ17は運転を継続している。比較的容量の大きなタンク16に対して外気を取り込みながら制御することで封止処理容器11内の圧力の微調整が可能である。
【0054】
また、封止処理容器11内の減圧操作を開始する前に、圧力調整弁20及びコントロールバルブ22を閉めた状態で真空ポンプ17の運転を行うことによって、タンク16内を予め減圧しておくこともできる。この場合には、圧力調整弁20を開くことによって迅速に封止処理容器11内の空気を排出することができる。これによって、真空ポンプ17の排気能力が小さい場合であっても、封止処理容器11内を迅速に減圧するのに役立つ。
【0055】
タンク16の容量は特に限定されるものではないが、10リットル以上であることが好ましく、20リットル以上であることがより好ましい。また、容量が大きすぎる場合には、コントロールバルブ22による圧力制御が迅速にできなくなるおそれがあるので、500リットル以下であることが好ましい。後に説明する実施例で使用した封止処理装置は、50リットルのタンク16を備えていた。
【0056】
以上説明したような封止処理装置を用いて第1ガラス板2と第2ガラス板7との間の空気を排出し、加熱して樹脂を溶融させてから冷却して封止する。このときの温度条件としては、導光板4を構成する樹脂の融点又は軟化点以下の温度で加熱されるのであれば特に限定されず、封止樹脂を溶融することの可能な温度条件にて加熱すれば良い。また、封止樹脂が架橋可能な熱可塑性樹脂であれば、架橋可能な温度まで上昇させて、所定の時間架橋可能な温度に保持する。圧力も積層体10内の空気を排出できて気泡残りが低減できるような圧力まで減圧できるのであればその圧力は特に限定されないが、できるだけ気泡残りを防ぐ観点からは、減圧度を上げて真空排気することが好ましく、真空排気と同時に封止処理容器11の周囲に加圧を行っても良い。また、第1光学フィルム3と導光板4との間、及び導光板4と第2光学フィルム5との間に封止樹脂が浸入するのを防ぐ観点からは、封止樹脂が溶融又は軟化したところで、減圧度を下げて圧力を上昇させる操作を行ってもよい。
【0057】
具体的には、封止処理容器11内で封止するに際して、封止処理容器11内を減圧する工程(工程1)、封止処理容器11内を減圧下に保ったまま封止樹脂の融点以上の温度まで加熱する工程(工程2)、封止樹脂の融点以上の温度を維持するとともにオートクレーブ13内の圧力を上昇する工程(工程3)、冷却する工程(工程4)、オートクレーブ13内の圧力を減圧する工程(工程5)、及び封止処理容器11内の圧力を上昇する工程(工程6)の各工程からなる封止操作を行うことが好適である。
【0058】
工程1は、封止処理容器11内を減圧する工程である。このとき、封止処理容器11内の圧力は、好適には0.01MPa以下、より好適には0.005MPa以下まで減圧される。十分に減圧することによって封止後の気泡残りを効果的に抑制することができる。
【0059】
工程2は、封止処理容器11内を減圧下に保ったまま封止樹脂の融点以上の温度まで加熱する工程であり、工程1に引き続いて行われる工程である。封止樹脂を昇温すると融点(以下「Tm」と略記することがある)(℃)付近で弾性率が大きく低下し高粘度の液体へと変化することになるが、工程2は、そのような温度に到達するまで減圧したままにする工程である。工程2の昇温操作で到達する温度の下限値は、好適には(Tm+10)℃以上であり、より好適には(Tm+15)℃以上である。多くの封止樹脂において好適な下限値は80℃以上であり、より好適には85℃以上である。封止樹脂が融点を有しない場合には、ここでいう融点をガラス転移点又は軟化点と置き換えて考えればよい。
【0060】
ここで、昇温する際には、導光板4を構成する樹脂の融点又は軟化点以下の温度で加熱することが好ましく、このことにより、導光板4が破損するのを防ぐことができる。具体的には、上限値が180℃以下であることが好ましく、特に導光板4を構成する樹脂の融点又は軟化点が比較的低く、該樹脂が溶けない温度で昇温する観点からは110℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることが更に好ましい。
【0061】
工程2で昇温する速度はゆっくりであることが好ましく、室温から上記温度まで昇温するのにかかる時間が5分以上であることが好ましく、10分以上であることがより好ましい。ゆっくり昇温すると周縁部が先に溶融しにくく中央部に気泡が残らない。このとき、途中で昇温速度を変化させてもよいし、昇温を停止して積層体10の内部の温度分布を解消させる、バランシング操作を施しても良い。生産性の観点から、昇温時間は、通常10時間以下であり、好適には6時間以下である。
【0062】
工程3は、封止樹脂の融点以上の温度を維持するとともにオートクレーブ13内の圧力を上昇する工程であり、工程2に引き続いて行われる工程である。こうすることによって、徐々に流動性を増していく過程で、積層体10にかかる圧力を徐々に増やすことができ、残留気泡の発生を抑制しながら封止樹脂の接着強度を向上させるのに効果的である。
【0063】
工程4は冷却する工程であり、工程3に引き続いて行われる工程である。工程4においては、通常、室温付近まで冷却するが、冷却速度が早すぎるとガラス板が割れるおそれがある。また、得られる面発光合わせガラス1に反りが発生するおそれもある。したがって、好適には10分以上、より好適には30分以上かけて冷却する。中でも、封止樹脂を溶融させてから冷却するに際し、(Tm+10)℃から(Tm−20)℃まで冷却するのに要する時間が20分以上であることが好ましく、30分以上であることがより好ましい。融点近傍においてゆっくりと冷却することによって、残留応力を抑制することができる利点を有する。
【0064】
工程5は、オートクレーブ13内の圧力を減圧する工程、すなわちオートクレーブ13内に加圧した圧力を開放する工程であり、工程4に引き続いて行われる工程である。
【0065】
また、工程6は封止処理容器11内の圧力を上昇させる工程である。工程6は、工程5に引き続いて行われる工程であり、通常、大気圧と実質的に同じ圧力(0.1MPa)まで昇圧する。工程5に引き続いて行われる場合のように、室温付近まで冷却した後に圧力を上昇させるのであれば、短時間で昇圧することが可能である。
【0066】
こうして得られた本発明の面発光合わせガラス1は、周縁部まで封止樹脂6が充填されており、接着性や耐久性に優れた封止樹脂6で周縁部まで封止することができるので、信頼性の高い面発光合わせガラス1を提供することができる。特に本発明では、第1光学フィルム3及び第2光学フィルム5の端部が第1ガラス板2の端部よりも内側になるように第1光学フィルム3及び第2光学フィルム5が配置されているので、封止樹脂層の周縁に第1光学フィルム3及び第2光学フィルム5の端面が露出せず、より信頼性の高い面発光合わせガラス1を提供することができる。
【0067】
また、気体不透過性の柔軟なシートからなる封止処理容器内で封止するという、上記製造方法によれば、第1ガラス板2又は第2ガラス板7の少なくとも一方が湾曲したガラス板である場合であっても、封止操作が容易である。この場合、曲げガラスにはさまれた面発光合わせガラス1を提供することができるので、建築物等のデザインの多様化の要求に応えることができる。
【0068】
上述のように本発明は、第1光学フィルム3と導光板4との間、及び導光板4と第2光学フィルム5との間に封止樹脂6が充填されていない空間を有するため、導光性能が良好であり、耐熱性及び防火性に優れた面発光合わせガラス1が得られる。こうして得られた本発明の面発光合わせガラス1は、厚みが小さく様々な形状や寸法への対応が容易なので、建築物の外壁、屋根、窓、天井、内壁、間仕切、装飾などに好適に使用される。
【実施例】
【0069】
以下図面に基づいて本発明の実施例を説明する。図1は本発明の面発光合わせガラスの一例の断面模式図であり、図2は封止操作前の積層体の一例の断面模式図である。図1及び図2中の第1ガラス板2及び第2ガラス板7はソーダ石灰ガラスであり、縦290mm、横210mm、厚さ5mmの表面圧縮応力100MPaの強化ガラス板を用いた。第1ガラス板2上に合わせガラス接着用中間膜である第1封止樹脂シート8を積層した。第1封止樹脂シート8は第1ガラス板2と同じ寸法のものを使用した。本実施例では合わせガラス用中間膜としてシエラシン社製のポリウレタンシート(S−123a)の厚さ1.3mmのものを使用した。本実施例において封止樹脂シートは全て同じ物を使用した。
【0070】
次に第1封止樹脂シート8上に、第1光学フィルム3として、厚さが188μmであり、表面の算術平均粗さが0.17μmのポリエチレンテレフタレート製発泡白色反射フィルム(レフホワイトRW:きもと社)を縦270mm、横190mmにカットしたものを重ねた。続いて、縦290mm、横210mm、厚さ6mmの導光板4(パネビーL:きもと社)を重ねた。更に、該導光板4上に第2光学フィルム5として、厚さが100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に光拡散層を有する拡散フィルム(ライトアップGM2:きもと社、算術平均粗さ:3.4μm)を縦270mm、横190mmにカットしたものを重ねた。ここで、第1光学フィルム3として用いた反射フィルム及び第2光学フィルム5として用いた拡散フィルムは、第1ガラス板2と比較して周辺部の余白が10mmとなるように小さくカットした物を用い、反射フィルム及び拡散フィルムはそれぞれ中心が一致するようにして重ねた。
【0071】
次に拡散フィルム上に第2封止樹脂シート9を重ねた。第2封止樹脂シート9は、第1ガラス板2と同じ寸法のものを使用した。続いて、縦290mm、横210mm、厚さ5mmの第2ガラス板7を重ねて積層体10を得た。
【0072】
こうして得られた積層体10を用い、図3に示す封止処理装置を用いて封止操作を行った。まず、積層体10の外縁の全周をブリーダー12で覆い、封止処理容器11の中に投入しパイプ14と接続してオートクレーブ13に入れた。
【0073】
以上のようにセッティングしてから、以下の工程1〜6の封止処理操作を行った。このときの温度と圧力は、表1及び図4に示すように制御した。このとき温度はオートクレーブ13内の温度であり、圧力は圧力調整弁20で設定した圧力である。
【0074】
工程1:「封止処理容器11内を減圧する工程」
室温(20℃)から昇温を開始するとともに減圧を開始した。約10分後に圧力を0.005MPa未満まで減圧し、その後240分間0.005MPa未満の圧力を維持した。
【0075】
工程2:「封止処理容器11内を減圧下に保ったまま封止樹脂の融点以上の温度まで加熱する工程」
封止処理容器11内を減圧下に保ったまま、昇温開始から240分後に95℃となるように加熱を継続した。
【0076】
工程3:「封止樹脂の融点以上の温度を維持するとともにオートクレーブ13内の圧力を上昇する工程」
続いて、95℃まで加熱された状態で210分間維持した。この間0atm(ゲージ圧)であった圧力を8atmの圧力まで60分かけて昇圧し、その後、30分間かけて12atmまで昇圧し、120分間12atmに保った。
【0077】
工程4:「冷却する工程」
240分かけて95℃から25℃まで冷却した。この間、封止処理容器11内の圧力を0.005MPaに維持し、オートクレーブ13内の圧力を12atmに維持した。
【0078】
工程5:「オートクレーブ13内の圧力を減圧する工程」
工程4から引き続き、25℃で90分間維持した。この間、封止処理容器11内の圧力を0.005MPaに維持し、オートクレーブ13内の圧力を30分かけて12atmから8atmまで減圧し、引き続き30分かけて8atmから0atmまで減圧を行い、そのまま0atmを30分間維持した。
【0079】
工程6:「封止処理容器11内の圧力を上昇する工程」
工程5から引き続き25℃を維持しながら、0.005MPa未満であった圧力を0.1MPa(大気圧)まで約10分かけて昇圧して、オートクレーブ13から取り出した。
【0080】
こうして得られた本発明の面発光合わせガラス1に対して発光試験を行ったところ、面発光状態が良好であることが確認された。
【0081】
【表1】

【符号の説明】
【0082】
1 面発光合わせガラス
2 第1ガラス板
3 第1光学フィルム
4 導光板
5 第2光学フィルム
6 封止樹脂
7 第2ガラス板
8 第1封止樹脂シート
9 第2封止樹脂シート
10 積層体
11 容器
12 ブリーダー
13 オートクレーブ
14、15 パイプ
16 タンク
17 真空ポンプ
18、23 バルブ
19、24 圧力計
20 圧力調整弁
21、25 制御回路
22 コントロールバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ガラス板と第2ガラス板との間に導光板が封止樹脂で封止されてなる面発光合わせガラスであって、
第1ガラス板と第2ガラス板との間に、第1光学フィルム、導光板及び第2光学フィルムがこの順番で積層され、
第1ガラス板と第1光学フィルムとの間、及び第2ガラス板と第2光学フィルムとの間に封止樹脂が充填され、
第1光学フィルムと導光板との間、及び導光板と第2光学フィルムとの間に封止樹脂が充填されていない空間を有し、かつ、
第1光学フィルム及び第2光学フィルムの端部が第1ガラス板の端部よりも内側にあることを特徴とする面発光合わせガラス。
【請求項2】
第1光学フィルムが反射フィルムであり、第2光学フィルムが拡散フィルムである請求項1記載の面発光合わせガラス。
【請求項3】
第1光学フィルム及び第2光学フィルムが拡散フィルムである請求項1記載の面発光合わせガラス。
【請求項4】
第1光学フィルム及び/又は第2光学フィルムの導光板に対向する面が凹凸を有する請求項1〜3のいずれか記載の面発光合わせガラス。
【請求項5】
第1光学フィルムと導光板との間、及び/又は導光板と第2光学フィルムとの間に密着防止フィルムを介して積層されてなる請求項1〜4のいずれか記載の面発光合わせガラス。
【請求項6】
封止樹脂がポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びポリビニルブチラールからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂である請求項1〜5のいずれか記載の面発光合わせガラス。
【請求項7】
第1ガラス板と第2ガラス板との間に導光板を封止樹脂で封止する面発光合わせガラスの製造方法であって、
第1ガラス板、第1封止樹脂シート、第1光学フィルム、導光板、第2光学フィルム、第2封止樹脂シート及び第2ガラス板をこの順番で積層し、
第1光学フィルム及び第2光学フィルムの端部が第1ガラス板の端部よりも内側になるように第1光学フィルム及び第2光学フィルムを配置し、
導光板を構成する樹脂の融点又は軟化点以下の温度で加熱して第1封止樹脂シート及び第2封止樹脂シートを溶融させてから冷却して封止することを特徴とする面発光合わせガラスの製造方法。
【請求項8】
加熱温度が180℃以下である請求項7記載の面発光合わせガラスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−202442(P2010−202442A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48839(P2009−48839)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(501382786)中島硝子工業株式会社 (19)
【出願人】(000125978)株式会社きもと (167)
【Fターム(参考)】