説明

鞍乗型車両の車両制御装置

【課題】 メンテナンス等の利便性に優れ、かつ車両盗難防止のセキュリティの高い鞍乗型車両の車両制御装置を提供することにある。
【解決手段】 携帯機10から送信された信号を受信して認証を行なう認証手段22を備え、認証が適合と判断されたとき、制御ユニット20からステアリングロック30に供電されるとともに、制御ユニット20とステアリングロック30間で暗号化信号の交信を行い、暗号化信号の照合が一致したとき、ステアリングロック30の解錠手段(アクチュエータ)31を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両の車両制御装置に関し、特に、盗難防止機能を備えた車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般の自動二輪車では、エンジンの始動・停止、あるいはステアリングロックの施錠・解錠等は、機械式のキー操作で行なわれるが、必ずキー穴に差し込んでキー操作を行なわなければならないという煩わしがある。そこで、携帯可能な送信機(携帯機)を所有者が保持し、この携帯機から車両に信号を送ることにより、エンジンの始動やステアリングロックの解錠等を遠隔操作する方式が提案されている。この方式は、送信する信号をコード化し、受信する車両側でコード照合を行なう認証機能をもたすことによって、セキュリティが確保されている。
【0003】
特開平3−21575号公報には、このような認証がなされたときに、走行用電源回路がオンされ、この状態で、エンジン始動回路やステアリングロック等の解施アクチュエータが作動可能状態になり、各始動スイッチ、解除スイッチを手動操作することによって、エンジンの始動や、ステアリングロック等の解除が行なわれる技術が記載されている。この方式によれば、認証が適合しなければ、走行用電源回路がオンしないので、その結果、エンジンの始動や、ステアリングロック等の解除も実行できないので、これにより車両の盗難防止機能が図られている。
【0004】
また、特開平6−247260号公報には、非接触型ICカードを用いて認証を行い、認証が適合すれば、ステアリングロックが解除されると共に、ステアリングロック解除に連動して、エンジンが始動可能な状態に設定される技術が記載されている。そして、このエンジンの始動状態設定手段が、ステアリングロック解除手段と共に、堅牢なステアリングロックユニットに収容されているので、これにより不正者によるエンジンの強制スタートの防止を図っている。
【特許文献1】特開平3−21575号公報
【特許文献2】特開平6−247260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開平3−21575号公報に記載された発明は、認証が適合と判断された場合、エンジン始動回路やステアリングロック等の解錠アクチュエータが作動可能状態になるが、実際に、エンジンの始動やステアリングロック等の解除を行なうには、始動スイッチや解除スイッチを手動操作する必要がある。従って、エンジンは始動させずに、メンテナンス等の目的で車両を動かして作業を行いたい場合でも、認証が適合と判断された後に、ステアリングロックを解除するために、解除スイッチを手動操作しなければならず、その操作が煩わしい。
【0006】
一方、特開平6−247260号公報に記載された発明は、認証が適合と判断された場合、ステアリングロックの解除まで行なわれるので、上記の煩わしさは生じないが、セキュリチィを確保するために、エンジンの始動状態設定手段をステアリングロックユニットに収納させるため、その容量が大きくなり、配置が制約されるという欠点がある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたもので、メンテナンス等の利便性に優れ、かつ車両盗難防止のセキュリティの高い鞍乗型車両の車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の鞍乗型車両の車両制御装置は、携帯機から送信された信号を受信して認証を行なう認証手段を備えた鞍乗型車両の車両制御装置であって、前記認証が適合と判断されたとき、制御ユニットからステアリングロックに供電され、前記制御ユニットと前記ステアリングロック間で暗号化信号の交信を行い、該暗号化信号の照合が一致したとき、前記ステアリングロックの解錠手段を作動させることを特徴とする。
【0009】
ある好適な実施形態において、前記携帯機は、車両側に設けられた起動スイッチの操作により送信されたリクエスト信号を受信したときに、コード信号を送信し、前記認証手段は、前記コード信号を受信してコード照合を行なうことにより前記認証の適合を判断する。
【0010】
前記解錠手段は、アクチュエータであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る鞍乗型車両の車両制御装置は、携帯機から送信された信号が適合と認証したとき、制御ユニットからステアリングロックに供電されるとともに、制御ユニットとステアリングロック間で暗号化信号の交信を行い、当該暗号化信号の照合が一致したときに、ステアリングロックの解錠を実行するので、不正者によるステアリングロックの強制解錠を防止することができ、車両盗難防止のセキュリティを高めることができる。また、エンジンを始動させなくても、ステアリングロックが解錠され、車両を動かすことができるので、メンテナンス等の作業が煩わしくなく実行できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、説明の簡略化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
(実施の形態1)
【0013】
図1は、本発明の実施形態1における自動二輪車の車両制御装置100の基本的な構成を示すブロック図である。
【0014】
本発明の車両制御装置100は、ライダーが携行する携帯機10から送信されたコード信号を、車両側に搭載された受信器21で受信し、これを認証手段22によってコード照合を行い、ライダーが当該車両の所有者であるか否かの認証を行なう認証システムを構成している。
【0015】
ここで、携帯機10としては、非接触型ICカードやリモコンスイッチ等を使用することができる。例えば、非接触型ICカードを用いる場合には、コード信号を予め非接触型ICカードに記憶させておき、このICカードを受信器21に近づけてコード信号を読み取らせ、これを認証手段22に取り込むことによってコード照合を行なうことができる。また、リモコンスイッチを用いる場合には、スイッチ操作をすることによって、コード信号に対応した赤外線信号が送信され、これを受信器21で受信することによって、コード信号を認証手段22に取り込んでコード照合を行なうことができる。
【0016】
本認証システムにおいて、コード照合が一致したときに、制御ユニット20からステアリングロック30に供電(電源24がオン)されるとともに、制御ユニット20とステアリングロック30間で、通信線40を介して暗号化信号の交信を行い、この暗号化信号の照合が一致したときに、ステアリングロックの解錠制御部24は、ステアリングロック30の解錠手段(アクチュエータ)31を作動させ、ステアリングロック30が解錠される。
【0017】
ここで、通信線40を介した暗号化信号の照合システムは、一般に用いられるCAN(Controller Area Network)システムにより構築することができる。ステアリングロック30の解錠は、このCANを使った照合システムで実行されるので、仮に、ステアリングロック30の解錠手段(アクチュエータ)31に不正な配線を行なっても、CANシステムによる照合がされないため、ステアリングロック30を強制的に解錠させることはできない。これにより、車両盗難防止のセキュリティを高めることができる。また、正規な照合が実行されれば、エンジンを始動させなくても、ステアリングロックが解錠され、車両を動かすことができるので、メンテナンス等の作業が煩わしくなく実行できる。なお、CANの代わりに、コスト的に安いシリアル通信を用いてもよい。
【0018】
次に、図1に示した車両制御装置100を用いた車両制御方法について、図2に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0019】
まず、ライダーが携行する携帯機10からコード信号が送信され、それを車両側に設けられた受信器21で受信すると(ステップS1)、予め認証手段22に設定された基準コードとの認証を行なう(ステップS2)。
【0020】
認証が適合と判断された場合、ライダーが当該車両の所有者であることを認証したことになるので、制御ユニット20からステアリングロック30に供電されるとともに、(ステップS3)、制御ユニット20とステアリングロック30間でCANシステムを用いた暗号化信号の照合を行い(ステップS4)、この暗号化信号の照合が一致したとき、ステアリングロック30の解錠が行われる(ステップS5)。この状態で、ライダーは、車両を動かすことが可能になるので、車両の点検やメンテナス等の作業にすぐ移ることができる。もちろん、照合が一致しない場合は、ステアリングロック30は解除されないので、車両の盗難防止も図られている。
(実施の形態2)
【0021】
図3は、本発明の実施形態2における自動二輪車の車両制御装置110の基本的な構成を示すブロック図である。
【0022】
本発明の車両制御装置110は、車両側に設けられた起動スイッチ26が操作されると、制御ユニット20の電源23がオンされるとともに、送受信器21'からライダーが携行する携帯機10にリクエスト信号が送信され、そのリクエスト信号に反応して携帯機10から発信されたコード信号を、送受信器21'で受信し、これを認証手段22によってコード照合を行い、ライダーが当該車両の所有者であるか否かの認証を行なう認証システムを構成している。なお、リクエスト信号は送信せず、車両側から常にコード信号を発信するようにしてもよい。
【0023】
この認証システムは、携帯機10を、非接触型ICカードのように受信器21に近づける必要もなく、また、リモコンスイッチのように一々取り出してスイッチを操作することもなく、携帯機10をポケット等に保持したまま、車両に取り付けられた起動スイッチを操作するだけで、セキュリティの高い認証が実行されるので、非常に使い勝手がよい。
【0024】
本認証システムにおいて、コード照合が一致したときに、制御ユニット20からステアリングロック30に供電(電源24がオン)される。この状態で、解錠スイッチ33が操作されると、制御ユニット20とステアリングロック30間で、通信線40を介して暗号化信号の交信が行なわれ、この暗号化信号の照合が一致したときに、ステアリングロックの解錠制御部24は、ステアリングロック30の解錠手段(アクチュエータ)31を作動させ、ステアリングロックが解錠される。
【0025】
ここで、通信線40を介した暗号化信号の照合システムは、図1に示した車両制御装置100と同じCANシステム、あるいはシリアル通信を用いることができる。従って、ステアリングロック30の解錠手段(アクチュエータ)31に不正な配線を行なっても、ステアリングロック30を強制的に解錠させることはできないため、車両盗難防止のセキュリティを高めることができる。また、正規な照合がされれば、エンジンを始動させなくても、ステアリングロックが解錠され、車両を動かすことができるので、メンテナンス等の作業が煩わしくなく実行できる。さらに、ステアリングロック30の解錠は、ライダーの意思を反映した解錠スイッチ33の操作によって起動されるので、よりセキュリティを高めることができる。
【0026】
次に、図3に示した車両制御装置110を用いた車両制御方法について、図4に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0027】
まず、車両側に設けられた起動スイッチ26をライダーが押すことによって(ステップS1)、制御ユニット20の電源23がオンされるとともに、車両側に設けられた送受信器21'からリクエスト信号が発信される(ステップS2)。ライダーが携行する携帯機10がリクエスト信号を受信すると、携帯機10から自動的にコード信号が返信され、これを車両側に設けられた送受信機21'で受信すると(ステップS3)、予め認証手段22に設定された特定の基準コードとの認証を行なう(ステップS4)。
【0028】
認証が適合と判断されると、制御ユニット20からステアリングロック30に供電される(ステップS5)。この状態で、解錠スイッチ33が操作されると(ステップS6)、制御ユニット20とステアリングロック30間で、通信線40を介したCANシステムによる暗号化信号の照合が行なわれ(ステップS7)、照合が一致したとき、ステアリングロック30の解錠が行われる(ステップS8)。この状態で、ライダーは、車両を動かすことが可能になるので、車両の点検やメンテナス等の作業にすぐ移ることができる。もちろん、照合が一致しない場合は、ステアリングロック30は解除されないので、車両の盗難防止も図られている。
【0029】
以上、図1〜図4を用いて、本発明に係る自動二輪車の車両制御装置100、110の特徴的な構成を説明したが、本装置100、110を自動二輪車120に搭載した例を図5に示す。
【0030】
本装置においては、制御ユニット20とステアリングロック30を、別個の構成として扱うことができるので、比較的自由に車両内に配置することができる。図5に示した例では、制御ユニット20は、比較的スペースに余裕のあるシート50の下側に設置され、ステアリングロック30は、ハンドル60の近傍に設置されている。そして、制御ユニット20とステアリングロック30間は、CANシステムを構成する通信線40で結ばれている。
【0031】
なお、図3に示した車両制御装置110では、制御ユニット20を起動させるため、また、ライダーの認証を確認後、ステアリングロック30を解錠させるために、それぞれ起動スイッチ26及び解錠スイッチ33を操作することになるが、これらのスイッチを同一の機構で構成しておけば、操作が簡単になる。例えば、スイッチを2段階の押しボタン式にしておき、一段階に押した場合には起動スイッチとして働き、2段階に押した場合には解錠スイッチとして働くようにしておくこともできる。
【0032】
ここで、本実施形態における「自動二輪車」とは、モーターサイクルの意味であり、原動機付自転車(モーターバイク)、スクータを含み、具体的には、車体を傾動させて旋回可能な車両のことをいう。したがって、前輪および後輪の少なくとも一方を二輪以上にして、タイヤの数のカウントで三輪車・四輪車(またはそれ以上)としても、それは「自動二輪車」に含まれ得る。
【0033】
また、自動二輪車に限らず、本発明の効果を利用できる他の車両にも適用でき、例えば、自動二輪車以外に、四輪バギー(ATV:All Terrain Vehicle(全地形型車両))や、スノーモービルを含む、いわゆる鞍乗型車両に適用することができる。
【0034】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば、メンテナンス等の利便性に優れ、かつ車両盗難防止のセキュリティの高い鞍乗型車両の車両制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態1における自動二輪車の車両制御装置の基本的な構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態1における車両制御装置を用いた車両制御方法を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態2における自動二輪車の車両制御装置の基本的な構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態2における車両制御装置を用いた車両制御方法を説明するフローチャートである。
【図5】本発明に係る自動二輪車の車両制御装置を自動二輪車に搭載した例を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
10 携帯機
20 制御ユニット
21 受信器
21' 送受信器
22 認証手段
23 制御ユニットの電源
24 ステアリングロックの電源
26 起動スイッチ
30 ステアリングロック
31 解錠手段(アクチュエータ)
33 解錠スイッチ
40 通信線
50 シート
60 ハンドル
100、110 車両制御装置
120 自動二輪車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯機から送信された信号を受信して認証を行なう認証手段を備えた鞍乗型車両の車両制御装置であって、
前記認証が適合と判断されたとき、制御ユニットからステアリングロックに供電され、
前記制御ユニットと前記ステアリングロック間で暗号化信号の交信を行い、該暗号化信号の照合が一致したとき、前記ステアリングロックの解錠手段を作動させることを特徴とする、鞍乗型車両の車両制御装置。
【請求項2】
前記携帯機は、車両側に設けられた起動スイッチの操作により送信されたリクエスト信号を受信したときに、コード信号を送信し、
前記認証手段は、前記コード信号を受信してコード照合を行なうことにより前記認証の適合を判断することを特徴とする、請求項1に記載の鞍乗型車両の車両制御装置。
【請求項3】
前記解錠手段は、アクチュエータであることを特徴とする、請求項1に記載の鞍乗型車両の車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−321453(P2006−321453A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−148595(P2005−148595)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】