説明

鞍乗型車両

【課題】、本発明は、ハンドルによる転舵の影響を受けにくい連動装置を備え、設計の自由度を大きくできる鞍乗型車両を提供する。
【解決手段】鞍乗型車両1は、ヘッドパイプ2aと、ヘッドパイプ2aに回動可能に支持されるステアリング軸3と、ステアリング軸3と、前輪7を回転可能に支持するフロントフォーク6の上部とが接続されるブリッジ5と、前輪ブレーキ8に制動力を与える前輪ブレーキ操作子と、連動ブレーキ操作子と、ステアリング軸3に支持され、前輪ブレーキ操作子及び連動ブレーキ操作子が設けられるハンドルと、連動ブレーキ操作子の操作に応じて、前輪ブレーキに及び後輪ブレーキに制動力を与える連動装置14と、を備え、連動装置14は、ブリッジ5に支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキシステムに連動装置を備える鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鞍乗型車両として、後輪ブレーキのブレーキ操作子を操作すると、後輪ブレーキに制動力を与えるとともに、前輪ブレーキにも制動力を与えることができる連動装置を備えた自動二輪車が知られている。
例えば、特許文献1に記載の連動装置は、ヘッドパイプにブラケットを介して取り付けられている。二輪車や三輪車のブレーキ操作子は、ヘッドパイプに回動自在に取り付けられるステアリング軸とともに回動するハンドルに取り付けられている。そのため、ハンドルによって転舵することにより、ヘッドパイプに取り付けられている連動装置と、回動するハンドルに取り付けられたブレーキ操作子とは、相対距離が変化し、これらの間を接続されるケーブルの撓み量も変化する。このことは、前輪ブレーキと連動装置との相対距離についても、同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−83892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような配置を採用する場合、ブレーキ操作子と連動装置との間を接続するケーブルや液圧配管を配設する際に、ハンドルによる転舵の影響を考慮して、十分な撓みを持たせる等の工夫が必要であり、設計の自由度が小さくなる傾向にあった。
【0005】
そこで、本発明は、ハンドルによる転舵の影響を受けにくい連動装置を備え、設計の自由度を大きくできる鞍乗型車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、ヘッドパイプと、前記ヘッドパイプに回動可能に支持されるステアリング軸と、前記ステアリング軸と、前輪を回転可能に支持するフロントフォークの上部とが接続されるブリッジと、前輪ブレーキに制動力を与える前輪ブレーキ操作子と、連動ブレーキ操作子と、前記ステアリング軸に支持され、前記前輪ブレーキ操作子及び連動ブレーキ操作子が設けられるハンドルと、前記連動ブレーキ操作子の操作に応じて、前記前輪ブレーキ及び後輪ブレーキに制動力を与える連動装置と、を備える鞍乗型車両において、前記連動装置は、前記ブリッジに支持されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記連動装置は、前記ブリッジの後面に支持ステイを介して支持されることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記ブリッジは、少なくとも前記ヘッドパイプの下方に設けられるボトムブリッジを含み、前記連動装置は、前記ボトムブリッジの後面に支持ステイを介して支持されることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の構成に加えて、前記連動ブレーキ操作子から前記連動装置まで延びる第1伝達部材と、前記連動装置から前記前輪ブレーキまで延びる第2伝達部材と、前記連動装置から前記後輪ブレーキまで延びる第3伝達部材と、を備え、前記連動装置は、車体幅方向の側面視において、前記連動装置の上部が前記ヘッドパイプの方向に傾斜するように支持されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の構成に加えて、前記連動装置は、前記第1伝達部材が挿通される入口と、前記第2伝達部材が挿通される第1出口と、前記第3伝達部材が挿通される第2出口と、を有し、前記連動ブレーキ操作子及び前記前輪ブレーキは、車体幅方向の一方側に設けられ、前記入口は、車体前後方向の前面視において、前記ステアリング軸の上下中心軸から車体幅方向の他方側に傾斜した方向に指向し、前記第1出口及び前記第2出口は、車体前後方向の前面視において、前記ステアリング軸の上下中心軸から車体幅方向の一方側に傾斜した方向に指向していることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項3から請求項5までのいずれか1項に記載の構成に加えて、前記ヘッドパイプから車体下後方に延びるダウンフレーム部を有するメインフレームを備え、前記連動装置は、少なくとも一部が、車体幅方向の側面視において、前記ヘッドパイプの軸線と、前記ダウンフレーム部の軸線と、前記ボトムブリッジの底面の前後延長線と、によって形成される三角形の領域内に配置されることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項2から請求項6までのいずれか1項に記載の構成に加えて、前記ヘッドパイプから車体下後方に延びるダウンフレーム部と、前輪の上方を覆うフ口ントフェンダと、前記フ口ントフェンダの車体後方で前記ダウンフレーム部の前面を覆うインナーカバーと、を備え、前記フ口ントフェンダは、前記連動装置に対応する凹部を有し、前記連動装置は、前記インナーカバー内に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、ブリッジがステアリング軸に接続され、連動装置がブリッジに支持されている。このため、ハンドルによって転舵した場合に、前輪ブレーキ及びブリッジが一緒に回動し、さらにブリッジに支持されている連動装置も回動するので、前輪ブレーキ及びハンドルと連動装置との相対位置が変化せず、これらの間の距離も変化しない。これにより、これらの間に接続されている配管、配線等は、ハンドルによる転舵の影響を受けにくくなり、配管等にかかるストレス等を低減でき、設計の自由度を向上できる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、連動装置は、ブリッジの後面に支持ステイを介して支持され、ブリッジの後面側に配置される。このため、連動装置に、車体前側から外力の影響を受けにくくすることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、連動装置をヘッドパイプの下方側のボトムブリッジに設けたので、ヘッドパイプの上方周辺に、種々の機能部品が配置されていても、ボトムブリッジの後面側に連動装置を配置できる。このため、ヘッドパイプの前面側上方の設計の自由度を向上できる。また、連動装置をボトムブリッジの後面側に配置できるので、連動装置に、車体前側から外力の影響を受けにくくすることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、連動装置は、車体幅方向の側面視において、連動装置の上部がヘッドパイプの方向に傾斜するように支持されているので、第1、第2及び第3伝達部材を、それぞれ曲率半径が大きくなるように配置できる。このため、各伝達部材にかかるストレス等を低減できるので、小さい曲率半径に対応していない伝達部材でも採用でき、伝達部材のコストを低減できる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、車体前後方向の前面視において、入口が、ステアリング軸の上下中心軸から車体幅方向の他方側に傾斜した方向に指向し、第1及び第2出口が、ステアリング軸の上下中心軸から車体幅方向の一方側に傾斜した方向に指向しているので、第1、第2及び第3伝達部材を、それぞれ曲率半径が大きくなるように配置できる。このため、各伝達部材にかかるストレス等を低減できるので、小さい曲率半径に対応していない伝達部材でも採用でき、伝達部材のコストを低減できる。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、連動装置は、少なくとも一部が、車体前後方向の前面視において、ヘッドパイプの軸線と、ダウンフレーム部の軸線と、ボトムブリッジの底面の前後延長線と、によって形成される三角形の領域内に配置される。このため、連動装置の地上高(地上からの高さ)を確保しつつ、ヘッドパイプの後側、かつ、ダウンフレーム部の前側のスペースを有効に活用することができる。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、連動装置がインナーカバー内に配置されるため、連動装置を保護でき、例えば、前輪が巻き上げた飛石等から保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の自動二輪車の実施形態を示す左側面図である。
【図2】実施形態のブレーキシステムの系統図である。
【図3】実施形態の連動装置の構造を説明する図であり、連動装置をステアリング軸に直交する方向のうち車体前側から見た図である。
【図4】実施形態の自動二輪車が直進状態における連動装置周辺の構成を示す左側面図である。
【図5】実施形態の連動装置周辺の構成を、ステアリング軸に直交する方向のうち車体前側から見た図である。
【図6】実施形態の連動装置周辺の構成を、ステアリング軸の軸方向上側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の自動二輪車の実施形態を示す左側面図である。
なお、以下の説明における前後、左右及び上下の方向の記載は、特に明記がない限り、自動二輪車に乗車する乗員(運転者)から見た方向に従う。また、図中、矢印FRは車両の前方を示し、矢印LHは車両の左方を示し、矢印UPは車両の上方を示す。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の自動二輪車(鞍乗型車両)1は、車体前側に配置された前輪7と、車体後側に配置された後輪10とを備え、エンジン51を原動機として後輪10を駆動して走行する自動二輪車である。
自動二輪車1は、メインフレーム2と、ステアリング軸3と、ハンドル4と、ボトムブリッジ5と、フロントフォーク6と、前輪7と、前輪ブレーキユニット8と、後輪ブレーキユニット9と、後輪10と、リアサスペンション50と、エンジン51と、カウル54と、シート55とを備える。
【0023】
メインフレーム2は、ヘッドパイプ2a、ダウンフレーム2bを備え、複数種の鋼材等が溶接等により一体的に結合されて構成される。
ヘッドパイプ2aは、メインフレーム2の車体前側部分を構成する円筒状の部材である。ヘッドパイプ2aは、中心軸の方向が車体前下方に向かう傾斜角度で傾斜している。
ダウンフレーム2bは、ヘッドパイプ2aのほぼ中央から車体下後方に延びるように配置されている。
【0024】
ステアリング軸3は、中心軸3aの回りに回転可能にヘッドパイプ2aに支持されている。中心軸3aは、ヘッドパイプ2aの中心軸と同軸である。ステアリング軸3の最大回転角度、つまり左右方向の最大転舵角度は、ストッパ(図示せず)等によって、予め設定されている。
ハンドル4は、ステアリング軸3の上端部に取り付けられる。ハンドル4は、運転者の転舵操作に応じて、ステアリング軸3を一体で回転させる。
ボトムブリッジ5は、フロントフォーク6を支持する部材である。ボトムブリッジ5は、ステアリング軸3の下端に設けられており、ステアリング軸3と一体で回転する。このため、ステアリング軸3の回転に応じて、フロントフォーク6が回転するようになっている。
【0025】
フロントフォーク6は、前輪7を回転可能に支持する棒状の部材である。フロントフォーク6は、側面視において、ヘッドパイプ2aと同様な傾斜角度で傾斜している。フロントフォーク6の先端には、前輪ブレーキユニット8が設けられている。
前輪ブレーキユニット8は、前輪7を制動するドラム式のブレーキ装置である。前輪ブレーキユニット8は、車体左側に配置されている。
後輪ブレーキユニット9は、後輪10を制動するドラム式のブレーキ装置である。後輪ブレーキユニット9は、車体左側に配置されている。
【0026】
リアサスペンション50は、後輪10が路面から受けるショックを吸収するための部材である。リアサスペンション50は、バネ、オイルダンパ等を備えている。
エンジン51は、燃料としてガソリン用いる原動機であり、車体前後方向の略中央部に搭載される。エンジン51は、シリンダヘッドに連結された吸気部(図示せず)から外気を吸入して燃焼し、燃焼後の排気を、チャンバ52等を備える排気部から車体後方に流出する。
エンジン51の出力は、ベルト等を備える変速機構53を経由して出力され、後輪10に伝達される。
カウル54は、走行時の空気抵抗を減少させたり、車体内部の部品を保護するため等に設けられるカバー部材である。カウル54は、車体を覆うように設けられている。カウル54は、樹脂等により形成されている。
【0027】
シート55は、走行時に運転者が着座するための座であり、エンジン51の上側に設けられている。
【0028】
図2は、実施形態のブレーキシステムの系統図である。
図2に示すように、実施形態のブレーキシステムは、前輪ブレーキ操作子としての右ブレーキレバー11Aと、連動ブレーキ操作子としての左ブレーキレバー11Bと、第1伝達部材としての右ブレーキケーブル12Aと、左ブレーキケーブル12Bと、第2伝達部材としての前側連動ブレーキケーブル12Cと、第3伝達部材としての後側連動ブレーキケーブル12Dと、連動装置(イコライザ)14と、前述した前輪ブレーキユニット8と、後輪ブレーキユニット9とを備える。
右ブレーキレバー11Aは、ハンドル4の車体右側に配置され、運転者が右手で操作できる。
左ブレーキレバー11Bは、ハンドル4の車体左側に配置され、運転者が左手で操作できる。
【0029】
右ブレーキケーブル12Aは、右ブレーキレバー11A及び前輪ブレーキユニット8の間を接続するケーブルである。
左ブレーキケーブル12Bは、左ブレーキレバー11B及び連動装置14の間を接続するケーブルである。
前側連動ブレーキケーブル12Cは、連動装置14及び前輪ブレーキユニット8の間を接続するケーブルである。
後側連動ブレーキケーブル12Dは、連動装置14及び後輪ブレーキユニット9の間を接続するケーブルである。
【0030】
連動装置14は、左ブレーキケーブル12Bから伝達された左ブレーキレバー11Bのブレーキ操作力を、2系統に分配する装置である。連動装置14は、左ブレーキケーブル12B、前側連動ブレーキケーブル12C及び後側連動ブレーキケーブル12Dが接続されている。連動装置14は、分配したブレーキ操作力の一方を、前側連動ブレーキケーブル12Cを介して前輪ブレーキユニット8に伝達し、他方を、後側連動ブレーキケーブル12Dを介して後輪ブレーキユニット9に伝達する。これにより、連動装置14は、左ブレーキレバー11Bの操作に応じて、前輪ブレーキユニット8及び後輪ブレーキユニット9に制動力を与える。
【0031】
図3は、実施形態の連動装置の構造を説明する図であり、連動装置14をステアリング軸3に直交する方向のうち車体前側(図1に示す矢印A方向)から見た図である。図3には、直進状態(ハンドル4を真っ直ぐにして自動二輪車1が直進する状態)におけるステアリング軸3及びヘッドパイプ2aも図示している。
図3に示すように、連動装置14は、ケース14aと、入口14bと、第1出口としての前輪側出力部14cと、第2出口としての後輪側出力部14dと、バネ14eと、イコライザ14fとを備える。
【0032】
ケース14aは、連動装置14の筐体であり、直方体状に形成されている。
入口14bは、ケース14aの上面に設けられている。入口14bには、左ブレーキケーブル12Bが挿通される。入口14bは、左ブレーキレバー11Bのプレーキ操作力を、左ブレーキケーブル12Bを介して連動装置14に入力する入力部である。
【0033】
前輪側出力部14c及び後輪側出力部14dは、入口14bから入力されたブレーキ操作力を、連動装置14から出力する出力部である。
イコライザ14fの一端の接続部14hには、前側連動ブレーキケーブル12Cが接続され、他端の接続部14iには、後側連動ブレーキケーブル12Dが接続され、一端の接続部14hと他端の接続部14iとの中間に設けられる接続部14gには、左ブレーキケーブル12Bが接続される。
前輪側出力部14c及び後輪側出力部14dは、ケース14aの底面に、車体左側からこの順番で配置されている。
前輪側出力部14cには、前側連動ブレーキケーブル12Cが挿通される。
後輪側出力部14dには、後側連動ブレーキケーブル12Dが挿通される。
【0034】
入口14bから左ブレーキケーブル12Bが延びる方向、前輪側出力部14cから前側連動ブレーキケーブル12Cから延びる方向、及び後輪側出力部14dから後側連動ブレーキケーブル12Dが延びる方向は、平行である。
また、連動装置14は、正面視において、これらの3つの方向が、ステアリング軸3の中心軸3aよりも右回りに角度θ(図3中左回り)だけ傾くように配置されている。角度θは、例えば、5〜45°の範囲であるが、これに限定されず適宜設定できる。連動装置14の配置等については、後述する。
【0035】
バネ14eは、イコライザ14fの一端部を初期位置に付勢する圧縮コイルバネである。バネ14eは、後側連動ブレーキケーブル12Dの作動に対して、前側連動ブレーキケーブル12Cの作動を遅延させるディレイスプリングとして機能する。
イコライザ14fは、左ブレーキケーブル12Bからブレーキ操作力が入力されることにより、前側連動ブレーキケーブル12C及び後側連動ブレーキケーブル12Dを引っ張るための部材である。イコライザ14fは、ケーブルが延びる方向にほぼ平行に移動しながらに左回りに回転して、前側連動ブレーキケーブル12C及び後側連動ブレーキケーブル12Dを引っ張る量を調整する。イコライザ14fは、接続部14g,14h,14iを備える。
【0036】
接続部14gは、3つの接続部14g,14h,14iのうち中間に配置されている。接続部14gは、接続部14hまでの長さが、接続部14iまでの長さよりも大きくなるように、配置されている。接続部14gには、左ブレーキケーブル12Bが接続されている。
接続部14hは、3つの接続部のうち車体左側に配置されている。接続部14hには、前側連動ブレーキケーブル12Cが接続されている。
接続部14iは、3つの接続部のうち車体右側に配置されている。接続部14iには、後側連動ブレーキケーブル12Dが接続されている。
【0037】
連動装置14の動作を説明する。
入口14bからブレーキ操作力が入力されると、左ブレーキケーブル12Bが接続部14gをケーブルが延びる方向の上側に引っ張る。
この際、イコライザ14fの一端側は、バネ14eにより付勢されているので、まず、他端側の接続部14iに接続された後側連動ブレーキケーブル12Dがイコライザ14fにより引っ張られる。これにより、連動装置14は、後輪ブレーキユニット9に制動力を与える。
【0038】
そして、さらに、左ブレーキケーブル12Bが引っ張られることにより、ディレイスプリングとして機能するバネ14eがセット荷重を超えると、一端側の接続部14hに接続された前側連動ブレーキケーブル12Cがイコライザ14fにより引っ張られる。これにより、連動装置14は、前輪ブレーキユニット8に制動力を与える。
以上のように、連動装置14は、入力されるブレーキ操作力に応じて、前輪側出力部14c及び後輪側出力部14dに出力されるタイミングを変化させながら、制動力を発生できる。
【0039】
図4は、実施形態の自動二輪車が直進状態における連動装置周辺の構成を示す左側面図である。
図4に示すように、自動二輪車1は、支持ステイ30と、フ口ントフェンダ32と、インナーカバー33とを備えている。
支持ステイ30は、ボトムブリッジ5の後面から後方に延びるように、ボトムブリッジ5に固定されている(図6参照)。支持ステイ30は、車体左側及び右側にそれぞれ設けられている。連動装置14は、車体左右方向から支持ステイ30に挟み込むように配置され、ボルト31によって支持ステイ30に固定される。
これにより、連動装置14は、ステアリング軸3と一体で回転する。
【0040】
フ口ントフェンダ32は、前輪7の車体上側を覆うための部材である。フ口ントフェンダ32は、例えば、雨天走行時に前輪7が巻き上げた水しぶきが後方に流れること等を防止する。フ口ントフェンダ32は、連動装置14をインナーカバー33の内部に収容できるように、連動装置14に対応する部分を、連動装置14とは反対側に窪ませた凹部32aを有している。
【0041】
インナーカバー33は、フ口ントフェンダ32の車体後方に配置され、ダウンフレーム2bの車体前側を覆うためのカバー部材である。インナーカバー33は、メインフレーム2に固定されている。インナーカバー33は、車体内部に異物が入り込むことを防止したり、その内部に配置された連動装置14等の部品を外力から保護する。
【0042】
図4(左側面図)における連動装置14及び各ケーブルの配置について説明する。
連動装置14は、直立状態に配置された状態から、その上部がヘッドパイプ2aの方向に傾斜するように、支持ステイ30に取り付けられている。
【0043】
左ブレーキケーブル12Bは、左ブレーキレバー11B(図2参照)から連動装置14に延びているので、ヘッドパイプ2aを車体前後方向に交差するように配設する必要がある。この理由は、左ブレーキレバー11Bがハンドル4の車体前側に配置されているため(図2参照)、左ブレーキレバー11Bから延びる左ブレーキケーブル12Bは、一旦、ヘッドパイプ2aの車体前側に配設されるからである。このため、この左ブレーキケーブル12Bを連動装置14に接続するためには、ヘッドパイプ2aを交差するように配設することなる。
連動装置14は、前述したように傾斜して配置されているので、入口14bから出た左ブレーキケーブル12Bは、連動装置14からヘッドパイプ2aを交差するように、自然に配設されることになる。これにより、自動二輪車1は、左ブレーキケーブル12Bを曲率半径が大きくなるように配置できる。
【0044】
また、前側連動ブレーキケーブル12Cは、連動装置14から前輪ブレーキユニット8まで延びており、かつ、前輪ブレーキユニット8に車体後方から入力される(図1参照)。このため、前側連動ブレーキケーブル12Cは、前輪側出力部14cから出た後に、一旦、ヘッドパイプ2a及びフロントフォーク6から車体後側に離れる方向に配設して、前輪ブレーキユニット8の後方に配設する必要がある。
同様に、後側連動ブレーキケーブル12Dは、連動装置14から後輪ブレーキユニット9まで延びるように配設されるので、後輪側出力部14dから出た後に、ヘッドパイプ2aから車体後側に離れる方向に配設する必要がある。
【0045】
この場合にも、連動装置14が傾斜して配置されているので、前輪側出力部14cから出た前側連動ブレーキケーブル12C及び後輪側出力部14dから出た後側連動ブレーキケーブル12Dは、ヘッドパイプ2a及びフロントフォーク6から車体後側に離れる方向に、自然に配設されることになる。これにより、自動二輪車1は、前側連動ブレーキケーブル12C及び後側連動ブレーキケーブル12Dを曲率半径が大きくなるように配置できる。
【0046】
このように、自動二輪車1は、側面視において、各ブレーキケーブルを曲率半径が大きくなるように配置できる。
【0047】
連動装置14は、その一部が、ヘッドパイプ2aの軸線2cと、ダウンフレーム2bの軸線2dと、ボトムブリッジ5の底面の前後延長線5aと、によって形成される三角形の領域S1の内側に配置されている。
通常、ヘッドパイプ2aよりも車体前側の領域S2は、例えば、バッテリケース35内に収容されたバッテリに接続する電気ケーブル等、多くの部品等を配置することが多い。これに対して、前述の三角形の領域S1は、これらの部品等を配置することが、領域S2に比べて少ない。このため、自動二輪車1は、通常あまり利用しない領域S1を有効に利用して、連動装置14を配置できる。
【0048】
次に、車体前面視及び上面視における連動装置14周辺の配置等について説明する。
図5は、実施形態の連動装置周辺の構成を、ステアリング軸に直交する方向のうち車体前側(図1に示す矢印A方向)から見た図である。図5では、直進状態におけるボトムブリッジ5を破線で示し、直進状態における連動装置14を実線で示し、右転舵した状態(最も右側にハンドルによって転舵した状態)の連動装置14の外形を二点鎖線で示している。
図6は、実施形態の連動装置周辺の構成を、ステアリング軸の軸方向上側(図1に示す矢印B方向)から見た図である。図6(a)は、直進状態を示す図である。図6(b)は、右転舵した状態を示す図である。
【0049】
直進状態における連動装置14及び各ケーブルの配置について説明する。
左ブレーキケーブル12Bは、左ブレーキレバー11Bに対して車体右側から接続される(図2参照)。
このため、図5に示すように、左ブレーキケーブル12Bは、前輪側出力部14cから出た後に、一旦、ヘッドパイプ2a及びフロントフォーク6から車体右側に離れる方向に配設し、左ブレーキレバー11Bに向けて湾曲するように配設する必要がある。
【0050】
連動装置14は、直進状態において、入口14bがステアリング軸3の中心軸3aから車体右側に傾斜した方向に指向するように配置される。つまり、連動装置14は、入口14bから左ブレーキケーブル12Bが延びる方向が、ステアリング軸3の中心軸3aに対して右回りに角度θ傾くように、配置される。
【0051】
このため、入口14bから出た左ブレーキケーブル12Bは、ケーブルが延びる方向が、ステアリング軸3から車体右側(図中左側)に傾斜した上側方向に指向するように、自然に配置される。これにより、自動二輪車1は、左ブレーキケーブル12Bを曲率半径が大きくなるように配置できる。
【0052】
また、入口14bは、ステアリング軸3よりも、車体右側に配置されている。このため、自動二輪車1は、入口14b及び左ブレーキケーブル12Bを、ヘッドパイプ2a、ダウンフレーム2b等の構造部品に干渉することなく配設できる(図6(a)参照)。
【0053】
前側連動ブレーキケーブル12Cは、車体左側に配置された前輪ブレーキユニット8に接続される。同様に、後側連動ブレーキケーブル12Dは、車体左側に配置された後輪ブレーキユニット9に接続される。このため、前輪側出力部14cから出た前側連動ブレーキケーブル12C及び後輪側出力部14dから出た後側連動ブレーキケーブル12Dは、ステアリング軸3の中心軸3aよりも車体左側に向かうように配設する必要がある。
【0054】
この場合にも、連動装置14が傾斜して配置されているので、前輪側出力部14c及び後輪側出力部14dは、ステアリング軸3の中心軸3aから車体左側に傾斜した方向に指向するように配置される。
【0055】
このため、前輪側出力部14cから出た前側連動ブレーキケーブル12C及び後輪側出力部14dから出た後側連動ブレーキケーブル12Dは、ケーブルが延びる方向が、ステアリング軸3から車体左側(図中右側)に傾斜した下側方向に指向するように、自然に配置される。これにより、自動二輪車1は、前側連動ブレーキケーブル12C及び後側連動ブレーキケーブル12Dを曲率半径が大きくなるように配置できる。
【0056】
このように、自動二輪車1は、側面視だけでなく前面視においても、各ブレーキケーブルを曲率半径が大きくなるように配置できる。
【0057】
次に、右転舵した状態を説明する。
図5に二点鎖線で示すように、右転舵した状態であっても、連動装置14は、前述したように、傾斜して配置され、かつ、車体右側に配置されているので、ヘッドパイプ2a、ダウンフレーム2b等の構造部品に干渉することがない。
なお、図6(b)では、入口14b及びダウンフレーム2bは、重複して示されているが、図4に示すように、これらの間には上下方向に隙間があるので、干渉することはない。
【0058】
また、連動装置14は、ボトムブリッジ5に取り付けられているので、ハンドル4と一体で回転する。このため、連動装置14及び左ブレーキレバー11Bの互いの位置関係は、直進状態と右転舵した状態とで変わることがないので、左ブレーキケーブル12Bの撓み量は、変化しない。
同様に、連動装置14及び前輪ブレーキユニット8の互いの位置関係も、変わることがないので、前側連動ブレーキケーブル12Cの撓み量は、変化しない。
【0059】
また、図6(a)に示すように、連動装置14は、予め車体左回りに角度を付けて、ボトムブリッジ5に取り付けられている。このため、右転舵した状態において、左ブレーキケーブル12Bは、ダウンフレーム2bに干渉することがなく、撓み等の発生を防止できる。
【0060】
以上説明したように、実施形態の自動二輪車1によれば、ボトムブリッジ5がステアリング軸3に接続され、連動装置14がボトムブリッジ5に支持されている。このため、ハンドルによって転舵した場合に、前輪ブレーキユニット8及びボトムブリッジ5が一緒に回動し、ボトムブリッジ5に支持されている連動装置14も回動するので、前輪ブレーキユニット8及びハンドル4と連動装置14とは相対位置が変化せず、これらの間の距離も変化しない。このため、これらの間に接続されているケーブル等は、ハンドルによる転舵の影響を受けにくくなり、ケーブル等にかかるストレス等を低減でき、設計の自由度を向上できる。
【0061】
また、実施形態の自動二輪車1によれば、連動装置14は、ボトムブリッジ5の後面に支持ステイ30を介して支持されるので、ボトムブリッジ5の後面側に配置される。このため、連動装置14に、車体前側から外力の影響を受けにくくすることができる。
【0062】
また、実施形態の自動二輪車1によれば、連動装置14をヘッドパイプ2aの下方側にボトムブリッジ5に設けたので、ヘッドパイプ2aの上方周辺に、種々の機能部品が配置されていても、連動装置14を配置できる。このため、ヘッドパイプ2aの上方の設計の自由度を向上できる。
【0063】
また、実施形態の自動二輪車1によれば、連動装置14は、車体幅方向の側面視において、連動装置14の上部がヘッドパイプ2aの方向に傾斜するように支持されているので、左ブレーキケーブル12B、前側連動ブレーキケーブル及び後側連動ブレーキケーブル12Dを、それぞれ曲率半径が大きくなるように配置できる。このため、各ブレーキケーブルにかかるストレス等を低減できるので、小さい曲率半径に対応していないブレーキケーブルを採用でき、ブレーキケーブルのコストを低減できる。
【0064】
また、実施形態の自動二輪車1によれば、車体前後方向の前面視において、入口14bが、ステアリング軸3の上下中心軸から車体幅方向の右側に傾斜した方向に指向し、第1及び後輪側出力部14dが、ステアリング軸3の上下中心軸3aから車体幅方向の左側に傾斜した方向に指向しているので、左ブレーキケーブル12B、前側連動ブレーキケーブル及び後側連動ブレーキケーブル12Dを、それぞれ曲率半径が大きくなるように配置できる。このため、各ブレーキケーブルにかかるストレス等を低減できるので、小さい曲率半径に対応していないブレーキケーブルを採用でき、ブレーキケーブルのコストを低減できる。
【0065】
また、実施形態の自動二輪車1によれば、連動装置14は、少なくとも一部が、車体前後方向の前面視において、ヘッドパイプ2aの軸線2cと、ダウンフレーム2bの軸線2dと、ボトムブリッジ5の底面の前後延長線5aと、によって形成される三角形の領域S1内に配置される。このため、連動装置14の地上高を確保しつつ、ヘッドパイプ2aの後側、かつ、ダウンフレーム2bの前側のスペースを有効に活用することができる。
【0066】
また、実施形態の自動二輪車1によれば、連動装置14がインナーカバー33内に配置されるため、連動装置14を外力から保護でき、例えば、前輪7が巻き上げた飛石等から保護できる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる
例えば、実施形態において、ボトムブリッジに連動装置を取り付けた例を説明したが、これに限定されない。例えば、大型の自動二輪車のようにトップブリッジを備える場合には、このトップブリッジに連動装置を取り付けてもよい。
【0068】
また、実施形態において、ブレーキ操作力の伝達は、ブレーキケーブルを用いた例を説明したが、これに限定されない。例えば、油圧駆動のブレーキ装置を利用する場合には、ブレーキ操作力は、ブレーキホース、ブレーキライン(配管)を介して伝達される。
【符号の説明】
【0069】
1 自動二輪車(鞍乗型車両)
2 メインフレーム
2a ヘッドパイプ
2b ダウンフレーム
3 ステアリング軸
3a 回転軸
4 ハンドル
5 ボトムブリッジ
8 前輪ブレーキユニット
9 後輪ブレーキユニット
11A 右ブレーキレバー(前輪ブレーキ操作子)
11B 左ブレーキレバー(連動ブレーキ操作子)
12A 右ブレーキケーブル(第1伝達部材)
12B 左ブレーキケーブル
12C 前側連動ブレーキケーブル(第2伝達部材)
12D 後側連動ブレーキケーブル(第3伝達部材)
14 連動装置
14b 入口
14c 前輪側出力部(第1出口)
14d 後輪側出力部(第2出口)
30 支持ステイ
32 フ口ントフェンダ
33 インナーカバー
S1 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドパイプ(2a)と、
前記ヘッドパイプ(2a)に回動可能に支持されるステアリング軸(3)と、
前記ステアリング軸(3)と、前輪(7)を回転可能に支持するフロントフォーク(6)の上部とが接続されるブリッジ(5)と、
前輪ブレーキ(8)に制動力を与える前輪ブレーキ操作子(11A)と、
連動ブレーキ操作子(11B)と、
前記ステアリング軸(3)に支持され、前記前輪ブレーキ操作子(11A)及び連動ブレーキ操作子(11B)が設けられるハンドル(4)と、
前記連動ブレーキ操作子(11B)の操作に応じて、前記前輪ブレーキ(8)及び後輪ブレーキ(9)に制動力を与える連動装置(14)と、
を備える鞍乗型車両(1)において、
前記連動装置(14)は、前記ブリッジ(5)に支持されている鞍乗型車両(1)。
【請求項2】
前記連動装置(14)は、前記ブリッジ(5)の後面に支持ステイ(30)を介して支持される請求項1に記載の鞍乗型車両(1)。
【請求項3】
前記ブリッジ(5)は、少なくとも前記ヘッドパイプ(2a)の下方に設けられるボトムブリッジ(5)を含み、
前記連動装置(14)は、前記ボトムブリッジ(5)の後面に支持ステイ(30)を介して支持される請求項1に記載の鞍乗型車両(1)。
【請求項4】
前記連動ブレーキ操作子(11B)から前記連動装置(14)まで延びる第1伝達部材(12B)と、
前記連動装置(14)から前記前輪ブレーキ(8)まで延びる第2伝達部材(12C)と、
前記連動装置(14)から前記後輪ブレーキ(9)まで延びる第3伝達部材(12D)と、を備え、
前記連動装置(14)は、車体幅方向の側面視において、前記連動装置(14)の上部が前記ヘッドパイプ(2a)の方向に傾斜するように支持されている請求項3に記載の鞍乗型車両(1)。
【請求項5】
前記連動装置(14)は、
前記第1伝達部材(12B)が挿通される入口(14b)と、
前記第2伝達部材(12C)が挿通される第1出口(14c)と、
前記第3伝達部材(12D)が挿通される第2出口(14d)と、を有し、
前記連動ブレーキ操作子(11B)及び前記前輪ブレーキ(8)は、車体幅方向の一方側に設けられ、
前記入口(14b)は、車体前後方向の前面視において、前記ステアリング軸(3)の上下中心軸(3a)から車体幅方向の他方側に傾斜した方向(θ)に指向し、
前記第1出口(14c)及び前記第2出口(14d)は、車体前後方向の前面視において、前記ステアリング軸(3)の上下中心軸(3a)から車体幅方向の一方側に傾斜した方向に指向している請求項4に記載の鞍乗型車両(1)。
【請求項6】
前記ヘッドパイプ(2a)から車体下後方に延びるダウンフレーム部(2b)を有するメインフレーム(2)を備え、
前記連動装置は、少なくとも一部が、車体幅方向の側面視において、前記ヘッドパイプ(2a)の軸線(3a)と、前記ダウンフレーム部(2b)の軸線(2d)と、前記ボトムブリッジ(5)の底面の前後延長線(5a)と、によって形成される三角形の領域内(S1)に配置される請求項3から請求項5までのいずれか1項に記載の鞍乗型車両(1)。
【請求項7】
前記ヘッドパイプ(2a)から車体下後方に延びるダウンフレーム部(2b)と、
前輪(7)の上方を覆うフ口ントフェンダ(32)と、
前記フ口ントフェンダ(32)の車体後方で前記ダウンフレーム部(2b)の前面を覆うインナーカバー(33)と、を備え、
前記フ口ントフェンダ(32)は、前記連動装置(14)に対応する凹部(32a)を有し、
前記連動装置(14)は、前記インナーカバー(33)内に配置される請求項2から請求項6までのいずれか1項に記載の鞍乗型車両(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−178225(P2011−178225A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42760(P2010−42760)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】