説明

鞍乗車両

【課題】専用のブラケットを用いることなく、リヤクッションの取付部を高強度・高剛性とすることが可能である。
【解決手段】車体フレーム2にエンジン20を搭載し、リヤアーム21を介して後輪23を上下動自在に懸架し、エンジン20のエンジンケース29とリヤアーム21との間にリヤクッション25を支持する鞍乗車両であって、リヤクッション25の一端をエンジンケース29の後輪に対する出力取出軸33の近傍に支持している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リヤアームとリンク機構及びリヤクッションを介して後輪を上下動自在に懸架するリヤサスペンションを備える鞍乗車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鞍乗車両として例えば自動二輪車には、車体フレームにエンジンを搭載し、車体フレームとリヤアームとの間にリンク機構を設け、エンジンのエンジンケースとリンク機構とにリヤクッションを支持し、リヤアームを介して後輪を上下動自在に懸架するものがある(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−106155号公報(第1頁〜第8頁、図1〜図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この特許文献の自動二輪車では、リヤクッションをエンジンケースに支持する際に、専用のブラケットを用いて支持しており、専用のブラケットを用いてエンジンケースのリヤクッションの取付部の強度・剛性を確保する分、部品点数が増加する等の問題がある。
【0004】
この発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、専用のブラケットを用いることなく、リヤクッションの取付部を高強度・高剛性とすることが可能な鞍乗車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成した。
【0006】
請求項1に記載の発明は、車体フレームにエンジンを搭載し、リヤアームを介して後輪を上下動自在に懸架し、前記エンジンのエンジンケースと前記リヤアームとの間にリヤクッションを支持する鞍乗車両であって、
前記リヤクッションの一端を前記エンジンケースの後輪に対する出力取出軸の近傍に支持したことを特徴とする鞍乗車両である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記リヤクッションの一端の取付位置は、前記出力取出軸に隣接する前記エンジンの前記車体フレームヘのエンジン側取付部またはその近傍であることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗車両である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記エンジンケース内にて前記出力取出軸と共に変速機を構成する変速主軸を、前記出力取出軸より上方に配置し、
前記リヤクッションの取付部は、前記出力取軸の上方位置としたことを特徴とする請求項2に記載の鞍乗車両である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、前記変速主軸の後方に変速機構を配置したことを特徴とする請求項3に記載の鞍乗車両である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、前記リヤクッションの一端を、前記エンジンの車体フレームヘのエンジン車体側取付部とは別軸に取り付けたことを特徴とする請求項2に記載の鞍乗車両である。
【0011】
請求項6に記載の発明は、前記リヤクッションの一端を、前記エンジンの車体フレームヘのエンジン車体側取付部の後方に取り付けたことを特徴とする請求項5に記載の鞍乗車両である。
【0012】
請求項7に記載の発明は、エンジン車体側取付部の車幅方向寸法は、前記エンジンの車体フレームヘのエンジン車体側取付部がリヤクッションの取付部と同等寸法またはそれ以上の寸法であることを特徴とする請求項5に記載の鞍乗車両である。
【発明の効果】
【0013】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、リヤクッションの一端をエンジンケースの後輪に対する出力取出軸の近傍に支持し、このリヤクッションの一端の支持はクランクケース上部・下部でもよい。また、リヤクッションの長手方向が鉛直、または水平の何れでもよい。この出力取出軸は、後輪側、エンジンにとっての外部から駆動反力を受ける。例えば、チェーン、ベルト、シャフト駆動等何れの場合であってもよく、このような駆動反力を受けるため、エンジンケースの出力取出軸の支持部近傍は通常強固に形成しており、リヤクッションの取付部は専用のブラケット等を用いることなく、高強度・高剛性とすることができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に加え、リヤクッションの一端の取付位置は、出力取出軸に隣接するエンジンの車体フレームヘのエンジン側取付部またはその近傍であり、エンジンに加わった駆動反力は、出力取出軸に隣接するエンジンの車体フレームヘのエンジン側取付部にも作用するため、出力取出軸に隣接するエンジンの車体フレームヘのエンジン側取付部は通常強固に形成するため、リヤクッションの取付部を高強度・高剛性とすることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に加え、エンジンケース内にて出力取出軸と共に変速機を構成する変速主軸を、出力取出軸より上方に配置し、リヤクッションの取付部は、出力取出軸の上方位置とし、出力取出軸に隣接するエンジンの車体フレームヘの取付部は、リヤアームの揺動に伴うチェーン、ベルト等の駆動力伝達部材の揺動との干渉を避けるため、出力取出軸との間には所定の距離を隔てる必要があるが、エンジンケースの後部の上下方向寸法が大きくなり、エンジンの車体フレームヘの取付のためのブラケットの上下方向の大型化が避けられ、その結果、リヤクッションの取付部を高強度・高剛性とすることが容易である。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3に加え、変速主軸の後方に変速機構を配置したことで、エンジンケースの後面上部が後方に突出することになり、エンジンの車体フレームヘの取付のためのブラケットの後方への大型化が避けられ、その結果、リヤクッションの取付部を高強度・高剛性とすることが容易である。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、請求項2に加え、リヤクッションの一端を、エンジンの車体フレームヘのエンジン車体側取付部とは別軸に取り付けたことで、エンジンを車体フレームに取付けたまま、リヤクッションのみを、そのメンテ・調整のために取外すことができる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、請求項5に加え、リヤクッションの一端を、エンジンの車体フレームヘのエンジン車体側取付部の後方に取り付けたことで、リヤクッションの着脱作業は通常後方から行うが、その作業の際にエンジンの車体フレームヘのエンジン車体側取付部が邪魔にならず、作業性が良好である。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、請求項5に加え、エンジンの車体フレームヘのエンジン車体側取付部がリヤクッションの取付部と同等寸法またはそれ以上の寸法であり、エンジン車体側取付部に対して、一体的にリヤクッションの取付部を形成することが容易で、単純な形状とすることができ、リヤクッションの取付部を、高強度・高剛性とすることが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明の鞍乗車両の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。この実施の形態では、鞍乗車両として自動二輪車を示すが、自動三輪車、あるいはバギー車等にも同様に適用できる。
【0022】
図1は自動二輪車の側面図、図2は車体フレームの側面図、図3は車体フレームの平面図、図4は車体フレームの斜視図、図5は車体フレームの前側部の拡大平面図、図6は図5のVI−VI線に沿う断面図、図7はエンジンの懸架及びリヤクッションの取付を示す拡大側面図、図8はリヤクッションの上部取付部の側面図、図9はリヤクッションの上部取付部の平面である。
【0023】
この実施の形態の自動二輪車1は、ヘッドパイプ3と、ヘッドパイプ3から後方に延びるメインフレーム4と、このメインフレーム4の後部から下方に延びるリヤアームブラケット5とを少なくとも含む車体フレーム2と有する。メインフレーム4は、ヘッドパイプ3から左右後方に延びる2本のフレーム部4aを有し、この2本のフレーム部4aの後部が下方に延びて左右のリヤアームブラケット5と接続されている。2本のフレーム部4aの下部には下方に延びるエンジン車体側取付部4bが形成され、また後部には下側にエンジン車体側取付部4cが形成されている。また、リヤアームブラケット5は、左右の上部5aと下部5dにエンジン車体側取付部5e,5fが形成されている。
【0024】
リヤアームブラケット5は、左右の上部5aにシートレール取付部5bとバックステー取付部5cとが形成され、シートレール取付部5bにシートレール6の前側部が取り付けられ、バックステー取付部5cにはバックステー7が取り付けられ、シートレール6の後部とバックステー7の後部が連結されている。
【0025】
メインフレーム4は、図2乃至図6に示すように、2本のフレーム部4aがヘッドパイプ3から左右側方へ延び、さらに屈曲して後方へ延び、この2本のフレーム部4aのヘッドパイプ接続部には左右両側に吸気ダクト挿通開口4a1が形成されている。メインフレーム4は、2本のフレーム部4aのヘッドパイプ側から左右の屈曲部4a2まで延び、左右のメインフレーム同士を連結する第1の板状部材4hと、ヘッドパイプ3のパイプ軸方向に接続し、このヘッドパイプ3から後方に延び、第1の板状部材4hに接続される第2の板状部材4iとを有する。
【0026】
この実施の形態では、第1の板状部材4hがメインフレーム4の左右のフレーム部4aの下寄りの一方側のみに配置し、この第1の板状部材4hの前側部4h11がヘッドパイプ3に接続され、左右両側部4h12が左右のフレーム部4aに接続され、後側部4h13がクロスメンバ4h4に接続されている。また、第2の板状部材4iがヘッドパイプ3の後部中心から後方へ延びるように配置され、この第2の板状部材4iの前側部4i11がヘッドパイプ3の後部中心位置に接続され、下部4i12が第1の板状部材4hに接続され、後側部4i13がクロスメンバ4h4の中央部に接続されている。
【0027】
この第1の板状部材4hは、板状部4h2と、この板状部4h2より剛性が高い高剛性部4h3とを有し、この高剛性部4h3がリブ機能となり剛性がより向上する。この高剛性部4h3はクロスメンバ4h4に連結することによって構成される。
【0028】
また、第1の板状部材4hは、フレーム部4aの下寄りの一方側のみに配置され、メインフレーム4の高さ方向に延びる部分4h1を有しているが、第1の板状部材4hは、フレーム部4aの上寄りの一方側のみに配置してもよい。このように、第1の板状部材4hが上下寄りの一方側から他方側へ延びる部分を有し、一方側から他方側へ延びる部分がリブ機能となり剛性がより向上する。
【0029】
また、第1の板状部材4hがメインフレーム4の上下寄りの一方側のみに配置され、第1の板状部材4hを配置しない側を例えば他部品の配置場所として使用することができる。また、第1の板状部材4hをヘッドパイプ3に直接的に接続しているが、取付ブラケット等を介して間接的に接続してもよい。
【0030】
第2の板状部材4iは、ヘッドパイプ側長さL10がヘッドパイプ3の長さL11と略同じであり、ヘッドパイプ3の後側中央から後方へ延び、クロスメンバ4h4に接続され、ヘッドパイプ回りの剛性がより向上する。
【0031】
第1の板状部材4hと第2の板状部材4iは、車両前後方向に延びる接続部4jを有し、この接続部4jによって第1の板状部材4hと第2の板状部材4iが一体化され、よってメインフレーム4の前側が高剛性になっている。
【0032】
このように、メインフレーム4のヘッドパイプ側から少なくとも左右の屈曲部4a2までが、第1の板状部材4hと第2の板状部材4iとによって補強され、ヘッドパイプ回りの剛性がより向上する。従って、急加速、急減速を行うとともに、急旋回を行うことがあり、前後方向の力ばかりでなく、ねじれが加わった場合でも、メインフレーム4のヘッドパイプ3の変形が抑えられる。
【0033】
ヘッドパイプ3にはフロントフォーク10が枢支されており、フロントフォーク10の上端には操向ハンドル11が設けられ、下端には前輪12が設けられている。メインフレーム4の上部には燃料タンク13が配置され、燃料タンク13の後方にはシート14がシートレール6の上に載置されている。燃料タンク13は、タンクカバー13aで覆われており、燃料タンク13はエンジン20の上方に配置されている。
【0034】
メインフレーム4とリヤアームブラケット5とにエンジン20が懸架されている。エンジン20は、この実施の形態では水冷式4サイクル並列4気筒型のものであり、気筒軸が車体前方に少し傾斜されていると共に、クランク軸30を収容するエンジンケース29が車幅方向に向けて車体フレーム2に懸架支持されている。
【0035】
エンジン20の気筒の前側には排気管80が接続され、この排気管80はエンジン20の気筒の前側から下方を通り後方へ延び、その後部にはマフラー81が接続されている。また、エンジン20の気筒の後側には、吸気管82が接続され、この吸気管82にはエアクリーナ83が接続され、さらにエアクリーナ83には吸気ダクト84が接続されている。
【0036】
エアクリーナ83の前側には、図3に示すように、左右一対の空気導入開口部83aが形成され、吸気ダクト84には、前側に空気導入開口部84aが形成され、後側には左右一対の空気排出開口部84bが形成されている。エアクリーナ83の左右一対の空気導入開口部83aと吸気ダクト84の左右一対の空気排出開口部84bが接続されている。エアクリーナ83の左右一対の空気導入開口部83aの間の空間K1に第2の板状部材4iが位置している。また、吸気ダクト84の左右一対の空気排出開口部84bの間の空間K2にヘッドパイプ3及び第2の板状部材4iの前側が位置している。走行風が吸気ダクト84の空気導入開口部84aから導入され、左右一対の空気排出開口部84bからエアクリーナ83の空気導入開口部83aを介してエアクリーナ83内に導入され、空気を吸気管82に導くようになっている。
【0037】
このエアクリーナ83はメインフレーム4の2本のフレーム部4aの間に配置され、燃料タンク13の前側に位置してタンクカバー13aで覆われている。エンジン20の気筒には、燃料噴射装置86が備えられ、気筒の燃焼室87に燃料を噴射して供給する。
【0038】
このエンジン20の懸架支持構造は、エンジン20のエンジン側取付部20a,20bをメインフレーム4のエンジン車体側取付部4b,4cに支持し、エンジン側取付部20c,20dをリヤアームブラケット5のエンジン車体側取付部5e,5fに支持している。
【0039】
また、エンジン20のエンジンケース29には、クランク軸30、カウンタ軸31、変速機32、出力取出軸33が収納されている。クランク軸30に平行にカウンタ軸31が配置され、クランク軸30の動力をカウンタ軸31から取り出して変速機32を構成する変速主軸32aに伝達し、この変速主軸32aから出力取出軸33に伝達する。エンジンケース29内にて出力取出軸33と共に変速機32を構成する変速主軸32aを、出力取出軸33より上方に配置している。 エンジンケース29には、シフトペダル45が設けられ、シフトペダル45によってシフトロッド46によってシフト操作レバー47を回転する。このシフト操作レバー47によって変速機構48を作動し、変速機32の複数段の変速ギヤの切換を行う。
【0040】
出力取出軸33には、図1及び図7に示すように、駆動スプロケット40が設けられ、この駆動スプロケット40と後輪23に設けたドリブンスプロケット41とにチェーン42が巻回されている。これにより、エンジン動力がチェーン42を介して後輪23に伝達される。
【0041】
リヤアームブラケット5にはエンジン車体側取付部4b,4cの間の位置にリヤアーム枢支部5gが形成されている。このリヤアーム枢支部5gには、リヤアーム21の前端部21aがピボット軸22を介して上下揺動可能に枢支されており、リヤアーム21の後端部21bには後輪23が支持されている。リヤアーム21は、リンク機構24とリヤクッション25を介して支持されている。リンク機構24は、車体側リンク24aとリヤアーム側リンク24bを有する。車体側リンク24aの一端部24a1は、リヤアームブラケット5のリンク取付部5hに回動可能に連結され、リヤアーム側リンク24bの一端部24b1はリヤアーム21のリンク取付部21cに回動可能に連結され、この車体側リンク24aの中央部24a2とリヤアーム側リンク24bの他端部24b2とが回動可能に連結されている。
【0042】
リヤクッション25は、オイルを注入したシリンダ部25aと、このシリンダ部25a内に移動自在に挿入したピストン25bと、このピストン25bに取付けたピストンロッド25cと、シリンダ部25aの端部に設けたリンク取付部25dと、ピストンロッド25cの端部に設けたリンク取付部25eと、これらのリンク取付部25d及びリンク取付部25eのそれぞれの間に介在させたスプリング25fとからなる。また、オイルを注入したシリンダ部25aには、サブタンク25gが設けられている。
【0043】
この実施の形態では、図7乃至図9に示すように、リヤクッション25は、リンク取付部25dの上端25d1をエンジンケース29の後部29aでかつ上部29bの突出部29b1に支持ピン50を介して支持している。突出部29b1がリヤクッション25の取付部を構成している。リンク取付部25eの下端25e1は、車体側リンク24aの端部24a3に支持ピン51を介して支持している。このリンク機構24の車体側リンク24aは、リヤアーム21のリヤアーム枢支部5gの下方位置に配置され、リヤクッション25の摺動方向Aが鉛直方向Bに対して所定の角度θで略垂直に配置されている。このリヤクッション25の配置によってリヤクッション25の自重がシリンダ部25aやピストン25b等の摺動部に対して曲げ方向の力として加わることがない。このため、リヤクッション25のシリンダ部25aとピストン25bの摺動抵抗が小さくなり、作動性が良好である。
【0044】
また、エンジンケース29の後部29aは、図7及び図8に示すように、その後面に形成されたリヤアーム枢支部5gに対向する凹部29cの上方位置にて後方に突出する突出部29b1が形成されている。この突出部29b1の両側は、図3及び図6に示すようにリヤアームブラケット5に形成したエンジン車体側取付部5eを当てがい、締付ボルト60によって締付固定して支持され、この突出部29b1にリンク取付部25dの上端25d1を支持ピン50によって支持している。
【0045】
また、この実施の形態では、エンジンケース29内にて出力取出軸33と共に変速機32を構成する変速主軸32aを、出力取出軸33より上方に配置してエンジン20の車両前後方向の幅を短縮し、この変速主軸32aを収納する変速主軸収納部29b2に突出部29b1を形成している。変速機32の変速機構48を、変速主軸32aの後方に配置し、変速機構収納部29b2により突出部29b1を形成したことで、突出部29b1を形成するにあたり、エンジンケース29を利用でき構造を簡潔にできる。
【0046】
さらに、変速主軸32aを出力取出軸33より上方に配置し、リヤクッションの取付部は、エンジンケース29の変速主軸収納部近傍に形成したことで、エンジンケース29の後部29aの上下方向寸法が大きくなり、リヤクッション25の長手方向を垂直とする場合の配置自由度が増すことができる。
【0047】
また、この実施の形態では、車体フレーム2を構成するリヤアームブラケット5は、リヤアーム枢支部5gから下方に延びる延長部5d1が下部5dに形成され、この延長部5d1にリンク取付部5hが形成されている。このリンク取付部5hに車体側リンク24aが取付られることで、リンク機構24をリヤアーム枢支部5gの下方に配置するにあたり、フレーム構成が簡潔で、リヤクッション25の長手方向を垂直として摺動方向を略垂直とすることが容易である。
【0048】
さらに、延長部5d1は、エンジン20を車体フレーム2へ取り付けるリヤアームブラケット5のエンジン車体側取付部5e,5fのうち、リヤアーム枢支部5gより下方に位置するエンジン取付部5fより、更に下方まで延長されていることで、エンジン20も剛性メンバーとして作用するので、リンク機構24の支持をより強固にできる。
【0049】
この実施の形態では、リヤクッション25の上端25d1を、図7及び図8に示すように、エンジンケース29の後輪に対する出力取出軸33の近傍に支持している。エンジン動力が出力取出軸33がチェーン42を介して後輪23に伝達され、出力取出軸33は後輪側から駆動反力を受けるため、エンジンケース29の出力取出軸33の支持部近傍は通常強固に形成するため、リヤクッション25の取付部は専用のブラケット等を用いることなく、高強度・高剛性とすることができる。
【0050】
また、リヤクッション25の上端25d1の取付位置は、出力取出軸33に隣接するエンジン20の車体フレーム2ヘのエンジン側取付部20cの近傍である。なお、リヤクッション25の上端25d1の取付位置は、エンジン側取付部20cにしてもよい。エンジン20に加わった駆動反力は、出力取出軸33に隣接するエンジン20の車体フレーム2ヘのエンジン側取付部20cにも作用するため、出力取出軸33に隣接するエンジン20の車体フレーム2ヘのエンジン側取付部20cは通常強固に形成するため、リヤクッション25の取付部を高強度・高剛性とすることができる。
【0051】
また、この実施の形態では、エンジンケース29内にて出力取出軸33と共に変速機32を構成する変速主軸32aを、出力取出軸33より上方に配置し、リヤクッション25の取付部は、出力取出軸33の上方位置とし、突出部29b1で構成している。この出力取出軸33に隣接するエンジン20の車体フレーム2ヘの取付部は、リヤアーム21の揺動に伴うチェーン、ベルト等の駆動力伝達部材の揺動との干渉を避けるため、出力取出軸33との間には所定の距離を隔てる必要があるが、エンジンケース29の後部の上下方向寸法が大きくなり、エンジン20の車体フレーム2ヘの取付のためのブラケットの上下方向の大型化が避けられ、その結果、リヤクッション25の取付部を高強度・高剛性とすることが容易である。
【0052】
また、変速主軸32aの後方に変速機構48が配置されており、エンジンケース29の後面上部が後方に突出することになり、エンジン20の車体フレーム2ヘの取付のためのブラケットの後方への大型化が避けられ、その結果、リヤクッション25の取付部を高強度・高剛性とすることが容易である。
【0053】
また、リヤクッション25の上端25d1を、エンジンケース29の後部29aでかつ上部29bの突出部29b1に支持ピン50を介して支持し、エンジン20の車体フレーム2ヘのエンジン車体側取付部20cとは別軸に取り付けたことで、エンジン20を車体フレーム2に取付けたまま、リヤクッション25のみを、そのメンテ・調整のために取外すことができる。
【0054】
また、リヤクッション25の上端25d1を、エンジン20の車体フレーム2ヘのエンジン車体側取付部5eの後方に取り付けたことで、リヤクッション25の着脱作業は通常後方から行うが、その作業の際にエンジン20の車体フレーム2ヘのエンジン車体側取付部5eが邪魔にならず、作業性が良好である。
【0055】
また、エンジン車体側取付部5eの車幅方向寸法は、図3及び図9に示すように、エンジン20の車体フレームヘのエンジン車体側取付部5eの寸法L1≧リヤクッション25の取付部の寸法L2としたことで、エンジン車体側取付部5eに対して、一体的にリヤクッション25の取付部を形成することが容易で、単純な形状とすることができ、リヤクッション25の取付部を、高強度・高剛性とすることが容易である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
この発明は、リヤクッションの一端をエンジンケースの後輪に対する出力取出軸の近傍に支持し、この出力取出軸は、後輪側、エンジンにとっての外部から駆動反力を受けるため、エンジンケースの出力取出軸の支持部近傍は通常強固に形成しており、リヤクッションの取付部は専用のブラケット等を用いることなく、高強度・高剛性とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】自動二輪車の側面図である。
【図2】車体フレームの側面図である。
【図3】車体フレームの平面図である。
【図4】車体フレームの斜視図である。
【図5】車体フレームの前側部の拡大平面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿う断面図である
【図7】エンジンの懸架及びリヤクッションの取付を示す拡大側面図である。
【図8】リヤクッションの上部取付部の側面図である。
【図9】リヤクッションの上部取付部の平面である。
【符号の説明】
【0058】
2 車体フレーム
5g リヤアーム枢支部
20 エンジン
21 リヤアーム
23 後輪
24 リンク機構
25 リヤクッション
29 エンジンケース
29a エンジンケース29の後部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームにエンジンを搭載し、リヤアームを介して後輪を上下動自在に懸架し、前記エンジンのエンジンケースと前記リヤアームとの間にリヤクッションを支持する鞍乗車両であって、
前記リヤクッションの一端を前記エンジンケースの後輪に対する出力取出軸の近傍に支持したことを特徴とする鞍乗車両。
【請求項2】
前記リヤクッションの一端の取付位置は、前記出力取出軸に隣接する前記エンジンの前記車体フレームヘのエンジン側取付部またはその近傍であることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗車両。
【請求項3】
前記エンジンケース内にて前記出力取出軸と共に変速機を構成する変速主軸を、前記出力取出軸より上方に配置し、
前記リヤクッションの取付部は、前記出力取出軸の上方位置としたことを特徴とする請求項2に記載の鞍乗車両。
【請求項4】
前記変速主軸の後方に変速機構を配置したことを特徴とする請求項3に記載の鞍乗車両。
【請求項5】
前記リヤクッションの一端を、前記エンジンの車体フレームヘのエンジン車体側取付部とは別軸に取り付けたことを特徴とする請求項2に記載の鞍乗車両。
【請求項6】
前記リヤクッションの一端を、前記エンジンの車体フレームヘのエンジン車体側取付部の後方に取り付けたことを特徴とする請求項5に記載の鞍乗車両。
【請求項7】
エンジン車体側取付部の車幅方向寸法は、前記エンジンの車体フレームヘのエンジン車体側取付部がリヤクッションの取付部と同等寸法またはそれ以上の寸法であることを特徴とする請求項5に記載の鞍乗車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−123654(P2006−123654A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−313053(P2004−313053)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】