説明

音伝達装置

【課題】聴取者の音定位の精度を向上させることができる音伝達装置を提供する。
【解決手段】スピーカPnから出力音を出力させて車両3の運転者へ伝達する音伝達装置であって、運転者の顔位置に基づいて出力音の音圧を調整する音圧制御部13と、運転者の顔方向に存在するスピーカPnの位置を示す視覚情報を出力する発行素子Lnとを備えることで、運転者の音定位の範囲を狭めることができ、音定位方向をより明確とすることが可能となるため、運転者の音定位の精度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音を伝達する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、音を伝達する装置として、車両内に出力される音声を調整する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の装置は、車両内の人物を赤外線カメラで撮影して顔位置を演算し、顔位置に応じてスピーカから出力される音声の音響調整を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−236397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の装置にあっては、例えば、車両内装形状により音の反射や吸収が異なったり、聴取者の能力に個人差があったりするため、聴取者が音源の位置を正確に知覚することができないおそれがある。
【0005】
そこで、本発明はこのような技術課題を解決するためになされたものであって、聴取者の音定位の精度を向上させることができる音伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る音伝達装置は、音源から出力音を出力させて車両内の聴取者へ伝達する音伝達装置であって、前記聴取者の顔位置に基づいて前記出力音の音圧を調整する音圧調整手段と、前記聴取者の顔方向に存在する前記音源の位置を示す視覚情報を出力する視覚情報出力手段とを備えることを特徴として構成される。
【0007】
本発明に係る音伝達装置では、音圧調整手段により聴取者の顔位置に基づいて音源からの出力音の音圧が調整され、視覚情報出力手段により聴取者の顔方向に存在する音源の位置を示す視覚情報が出力される。このため、聴取者の顔位置に基づいて聴取者にとって最適な音響を聴取者へ提供することができるとともに、聴取者が音定位しようとする位置を誘導させることが可能となる。よって、聴取者の音定位の精度を向上させることが可能となる。
【0008】
ここで、前記視覚情報出力手段は、前記聴取者の顔方向と前記聴取者を基準とする前記音源の方向との差が、最も小さい前記音源の位置を示す視覚情報を出力することが好適である。このように構成することで、聴取者の音定位の精度を一層向上させることができる。
【0009】
また、前記視覚情報出力手段は、赤外線カメラによる前記聴取者の画像に基づいて前記聴取者の顔方向を取得してもよい。
【0010】
また、前記視覚情報出力手段は、前記音源付近に配置された発光素子を発光させることが好適である。このように構成することで、音源の方向を視覚誘導させることができるので、聴取者が音源の位置を正確に知覚することができる。
【0011】
さらに、前記音圧調整手段は、顔位置に応じた音圧が記録された音圧マップを用いて前記出力音の音圧を調整することが好適である。このように構成することで、聴取者の顔位置に依存することなく比較的均一な音を提供することができる。
【0012】
また、本発明に係る音伝達装置は、聴取者の顔位置に応じて車両内に配置された各音源の出力音圧を調整し、かつ、前記聴取者の顔位置に近い音源を示す視覚的刺激を発生させることを特徴として構成される。このように構成することで、聴取者が音定位しようとする位置を誘導させることが可能となるので、聴取者の音定位の精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、聴取者の音定位の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係る音伝達装置を備える車両の構成概要を示すブロック図である。
【図2】実施形態に係る音伝達装置が有する音圧マップである。
【図3】実施形態に係る音伝達装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】実施形態に係る音伝達装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】実施形態に係る音伝達装置の動作を説明するための概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
本実施形態に係る音伝達装置は、例えば車両の乗員(聴取者)に対して音声や音を用いて情報を提供する場合に好適に採用されるものである。
【0017】
最初に、本実施形態に係る音伝達装置を備える車両の概要から説明する。図1は、本実施形態に係る音伝達装置1を備える車両の構成概要を示すブロック図である。図1に示す車両3は、撮像カメラ20、集音マイク21、ECU(Electronic Control Unit)10及びスピーカ群Gを備えている。ECUは、電子制御する自動車デバイスのコンピュータであり、CPU(Central ProcessingUnit)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリ、及び入出力インターフェイスなどを備えて構成されている。
【0018】
撮像カメラ20は、運転者(聴取者)の顔を撮像する機能を有している。また、撮像カメラ20は、運転者の距離情報(位置情報)を取得する機能を有している。撮像カメラ20として、例えば距離計測機能を有するステレオカメラや赤外線カメラが用いられる。また、撮像カメラ20は、ECU10に接続されており、取得した映像及び位置情報をECU10へ出力する機能を有している。
【0019】
集音マイク21は、車両3室内に出力される出力音の音圧を取得する機能を有している。例えば、集音マイク21は、運転者の耳近傍に設けられ、運転者が聞き取る音の音圧を取得する機能を有している。また、集音マイク21は、ECU10に接続されており、取得した音圧に関する情報をECU10へ出力する機能を有している。
【0020】
ECU10は、顔位置・顔方向計測部11、個人認証部12、音圧制御部13、音圧マップ作成部14及び音圧マップDB15を備えている。
【0021】
顔位置・顔方向計測部11は、運転者の顔位置や顔方向を計測する機能を有している。例えば、顔位置・顔方向計測部11は、撮像カメラ20により取得された映像に基づいて、運転者の顔の特徴点を取得し、特徴点の変動量を算出することで顔位置の変位や顔の向き(顔方向)を取得する機能を有している。特徴量の取得には、例えばテンプレートマッチングが用いられる。さらに、顔位置・顔方向計測部11は、取得した顔位置の変位や顔の向きに関する情報を音圧制御部13へ出力する機能を有している。
【0022】
個人認証部12は、運転者の認証を行う機能を有している。例えば、個人認証部12は、撮像カメラ20により取得された映像に基づいて、運転者の顔の特徴点を取得し、取得された運転者の顔の特徴点と、ECU10のメモリ等に格納された登録済みの運転者の顔の特徴点とをマッチング処理し、運転者が登録済みの運転者であるか否かを認証する機能を有している。また、個人認証部12は、認証結果を音圧制御部13へ出力する機能を有している。
【0023】
音圧マップDB15は、運転者のアイポイントを基準とした顔の横変位、顔の縦変位、耳の高さ変位に依存した音圧を示す音圧マップが格納されたデータベースである。図2を用いて、音圧マップDB15及び音圧マップの詳細について説明する。図2に示すように、音圧マップDB15には、複数の運転者に係る音圧マップが、個人ID(A、B…)に関連付けされて格納されている。また、音圧マップDB15には、1人の運転者に係る音圧マップが、例えば顔方向θ(−π≦θ≦π、正面θ=0)に関連付けされて格納されている。図2では、個人IDがAの運転者であり、顔方向θがaの場合の音圧マップを示している。音圧マップは、例えば、運転者に係るアイポイントを原点Oとし、原点Oからの顔の横変位x、顔の縦変位y、耳の高さ変位zを定めると1つの座標点K(x、y、z)を特定できるように構成されている。座標点Kには、運転者の顔位置が、原点Oから横変位x、縦変位y、耳の高さ変位zとなる場合に、運転者にとって聞き取り易い最適な音圧が関連付けされている。例えば、後述するスピーカ群Gに備わるスピーカPn(n:整数)それぞれにより出力される音圧が関連付けされている。音圧マップDB15に格納された音圧マップを参照することで、運転者の顔位置及び顔方向に基づいて最適な音圧を設定することができる。
【0024】
音圧マップ作成部14は、音圧マップDB15に格納された音圧マップを作成する機能を有している。音圧マップ作成部14は、音圧マップを用いた音圧制御前に、例えば個人認証部12の認証対象者として登録する際に、認証対象者の音圧マップを作成する機能を有している。音圧マップ作成部14は、例えば、集音マイク21が出力した運転者の可動範囲の全ての位置における音の音圧を入力し、運転者の体勢や姿勢に関らず音圧が均一になるように音圧マップを作成する機能を有している。
【0025】
音圧制御部13は、スピーカ群Gから出力される出力音の音圧を調整する機能を有している。音圧制御部13は、例えば、上述した顔位置・顔方向計測部11及び個人認証部12に接続されており、音圧マップDB15を参照可能に構成されている。そして、音圧制御部13は、例えば、個人認証部12の認証結果に基づいて運転者の個人IDを取得し、顔位置・顔方向計測部11により出力された顔方向及び取得した個人IDに基づいて音圧マップDB15から処理に用いる音圧マップを動的に選択し、顔位置・顔方向計測部11により出力された運転者の顔位置に基づいて最適な音圧を動的に取得する機能を有している。そして、音圧制御部13は、最適な音圧を用いてスピーカ群Gを動作させる機能を有している。また、音圧制御部13は、運転者の顔方向に存在するスピーカPnの位置を示す視覚情報を、スピーカ群Gに出力させる機能を有している。
【0026】
スピーカ群Gは、少なくとも1対のスピーカPn及び発光素子Ln(n:整数)を備えており、運転者に対して必要な情報を音により伝達する機能を有している。スピーカPnは、音圧制御部13によって音出力可能に構成されている。また、発光素子Lnは、スピーカPnの本体又はその近傍に設けられており、音圧制御部13によって点灯、点滅可能に構成されている。発光素子Lnの点灯又は点滅は、スピーカPnの位置を示す視覚情報となる。発光素子Lnとして、例えばLED(Light Emitting Diode)が用いられる。
【0027】
上述した、撮像カメラ20、顔位置・顔方向計測部11、個人認証部12、音圧制御部13、音圧マップDB15及びスピーカ群Gを備えて音伝達装置1が構成されている。
【0028】
次に、本実施形態に係る音伝達装置1の動作について説明する。最初に、音伝達装置1の音圧マップ生成動作を説明する。図3は、本実施形態に係る音伝達装置1の音圧マップ生成動作を示すフローチャートである。図3に示す制御処理は、例えば、後述する図4の処理前に実行される。
【0029】
図3に示すように、音伝達装置1は、撮像処理から開始する(S10)。S10の処理は、撮像カメラ20が実行し、運転者の顔を撮像する処理である。S10の処理が終了すると、個人認証処理へ移行する(S12)。
【0030】
S12の処理は、個人認証部12が実行し、運転者の認証を行う処理である。個人認証部12は、S10の処理で取得した映像に基づいて、運転者の顔の特徴点を抽出し、個人認証を行う。既に登録されている運転者である場合には、個人認証部12は、登録されている個人IDを入力する。一方、未だ登録されていない運転者である場合には、個人認証部12は、新たな個人IDを割り当てる。S12の処理が終了すると、登録処理へ移行する(S14)。
【0031】
S14の処理は、音圧マップ作成部14が実行し、音圧マップDB15を構築する処理である。音圧マップ作成部14は、S12の処理で割り当てた個人IDを音圧マップDB15に登録する。また、S12の処理で既に登録されている運転者であるとされた場合には、前回以前の処理において個人IDが既に登録されている。このため、音圧マップ作成部14は、個人IDが重複する場合には、登録処理を行わない。S14の処理が終了すると、マップ作成処理へ移行する(S16)。
【0032】
S16の処理は、音圧マップ作成部14及び集音マイク21が実行し、当該運転者の音圧マップを作成する処理である。集音マイク21は、例えば、運転者の顔の横位置、縦位置、耳の高さ、顔の向きを変化させた場合における運転者が聞き取る音を、運転者の可動範囲内において取得する。そして、音圧マップ作成部14は、集音マイク21が取得した音の音圧に基づいて、運転者の可動範囲内において音圧が一定となるように音圧マップを作成する。そして、音圧マップ作成部14は、作成した音圧マップを個人IDに関連付けて音圧マップDB15へ格納する。S16の処理が終了すると、図3に示す制御処理を終了する。
【0033】
以上、図3に示す制御処理を実行することで、個々の運転者にとって最適な音圧マップが作成される。
【0034】
次に、音伝達装置1の音伝達動作を説明する。図4は、本実施形態に係る音伝達装置1の音伝達動作を示すフローチャートである。図4に示す制御処理は、例えば、図3に示す制御処理の実行後であって、イグニッションONされたタイミングから所定の間隔で繰り返し実行される。
【0035】
図4に示すように、音伝達装置1は、撮像処理から開始する(S20)。S20の処理は、撮像カメラ20が実行し、運転者の顔の監視を開始する処理である。例えば、撮像カメラ20は、所定の間隔で運転者の顔の画像を取得する処理を開始したり、運転者の映像の取得を開始する。S20の処理が終了すると、個人認証処理へ移行する(S22)。
【0036】
S22の処理は、個人認証部12が実行し、運転者の認証を行う処理である。個人認証部12は、S20の処理で取得した映像に基づいて、運転者の顔の特徴点を抽出し、個人認証を行い、当該運転者の個人IDを入力する。S22の処理が終了すると、音圧マップ取得処理へ移行する(S24)。
【0037】
S24の処理は、音圧制御部13が実行し、運転者の音圧マップを取得する処理である。音圧制御部13は、S24の処理で入力した個人IDに基づいて、音圧マップDB15を参照し、当該運転者の音圧マップを取得する。S24の処理が終了すると、出力判定処理へ移行する(S26)。
【0038】
S24の処理は、音圧制御部13が実行し、運転者へ音による情報伝達を実行する必要が有るか否かを判定する処理である。音圧制御部13は、例えば、接続される他のシステムからの出力要求信号が入力されたか否かに基づいて、音(音声)を出力する事象が発生したか否かを判定する。S24の処理において、音を出力する事象が発生していないと判定した場合には、図4に示す制御処理を終了する。一方、S24の処理において、音を出力する事象が発生していると判定した場合には、顔位置計測処理へ移行する(S28)。
【0039】
S28の処理は、顔位置・顔方向計測部11が実行し、運転者の顔位置、顔方向を計測する処理である。顔位置・顔方向計測部11は、例えば、S20の処理で撮像カメラ20により取得された画像や映像を入力し、運転者の顔の特徴点を抽出し、特徴点の変動量に基づいて運転者の顔位置、顔方向を計測する。S28の処理が終了すると、音圧取得処理へ移行する(S30)。
【0040】
S30の処理は、音圧制御部13が実行し、スピーカ群Gの出力音の音圧を取得する処理である。音圧制御部13は、例えば、S28の処理で計測された顔位置や顔方向に基づいて、S24の処理で取得した音圧マップからスピーカ群Gの出力音の音圧を取得する。例えば、音圧制御部13は、顔の向き、アイポイントからの顔の横変位x、顔の縦変位y、耳の高さ変位zの計測結果に基づいて、図2に示す音圧マップから1つの座標点を特定する。そして、特定した座標点に関連付けされた各スピーカPnの音圧を取得する。なお、計測した顔の向きにおける音圧マップが存在しない場合や、特定した座標点に各スピーカPnの音圧が関連付けされていない場合もある。この場合には、音圧を取得せずにS30の処理を終了する。S30の処理が終了すると、判定処理へ移行する(S32)。
【0041】
S32の処理は、音圧制御部13が実行し、S30の処理でスピーカ群Gの出力音の音圧を取得したか否かを判定する処理である。S32の処理において、S30の処理で各スピーカPnにより出力されるべき音の音圧を取得していないと判定した場合には、図4に示す制御処理を終了する。一方、S32の処理において、S30の処理で各スピーカPnにより出力されるべき音の音圧を取得したと判定した場合には、LED点灯処理へ移行する(S34)。
【0042】
S34の処理は、音圧制御部13が実行し、発光素子Lnを点灯(点滅)させる処理である。音圧制御部13は、例えば、S28の処理で取得した運転者の顔向きに基づいて、複数のスピーカPnのうち、運転者の顔方向に存在するスピーカPm(m⊆n)を決定し、スピーカPm近傍の発光素子Lmを点灯させる。ここで、顔方向に存在するスピーカPmが複数ある場合には、それぞれの発光素子Lmを点灯させてもよいし、複数のスピーカPmのうち、運転者の顔方向と運転者を基準とするスピーカPmの方向との差が最も小さいスピーカPmを決定し、決定したスピーカPmのみを点灯させてもよい。S34の処理が終了すると、出力処理へ移行する(S36)。
【0043】
S36の処理は、音圧制御部13が実行し、スピーカ群Gの出力音の音圧を制御する処理である。音圧制御部13は、例えば、各スピーカPnの出力音がS30の処理で取得した各スピーカPnの出力音の音圧となるように、各スピーカPnの音の強弱を調整する。S36の処理が終了すると、図4に示す制御処理を終了する。
【0044】
以上で図4に示す制御処理を終了する。図4に示す制御処理を実行することにより、運転者の顔の位置(前後左右高さ)に関らず、比較的均一な音が運転者に提供される。ところで、運転者の顔向きに関らず均一な音が運転者に提供されると、運転者は顔向き方向から音が到来していると感じるが正確な音定位を行うことが困難となる。例えば、図5(a)に示すように、運転者の顔が左側を向いている場合には、運転者は左方向(顔を向けた正面)から音が聞こえるが正確な出力位置を認識することが困難となる。これに対して、図4に示す制御処理を実行することによって、顔向き方向のスピーカPn近傍に設けられた発光素子Lnが点灯するため、運転者が音定位を行っている付近のスピーカPnへ、運転者が視覚誘導される。すなわち、運転者は、図5(b)に示すように、点灯した発光素子Ln付近のスピーカPnから音が出ているかのような先入観をもって当該スピーカPnに意識を集中させる。このため、なんとなくこっちから音が聞こえるという意識を、絶対にここから音が聞こえるという意識に変えることができる。よって、当該スピーカPnから音が出ているかのような錯覚を引き起こすことが可能となり、運転者の音定位の精度を向上させることができる。運転者の音定位の精度を向上させることで、情報の伝達確度を向上させることができる。
【0045】
上述したように、本実施形態に係る音伝達装置1によれば、音圧制御部13により運転者の顔位置に基づいてスピーカPnからの出力音の音圧が調整され、音圧制御部13及び発光素子Lnにより運転者の顔方向に存在するスピーカPnの位置を示す視覚情報が出力される。このため、運転者の顔位置に基づいて運転者にとって最適な音響を運転者へ提供することができるとともに、運転者が音定位しようとする位置をスピーカPnの位置へ誘導させることが可能となる。すなわち、運転者の音定位の範囲を狭めることができ、音定位方向をより明確とすることが可能となる。よって、運転者の音定位の精度を向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態に係る音伝達装置1によれば、音圧制御部13及び発光素子Lnが、運転者の顔方向と運転者を基準とするスピーカPnの方向との差が最も小さいスピーカPnの位置を示す視覚情報を出力することができる。このため、顔向きに配置された1つのスピーカPnに運転者の意識を集中させることが可能となるので、運転者の音定位の精度を一層向上させることができる。
【0047】
さらに、本実施形態に係る音伝達装置1によれば、個人ごとに音圧マップを作成し、作成した音圧マップを用いて制御するため、運転者にとって最適な音響を提供することができる。
【0048】
なお、上述した実施形態は本発明に係る音伝達装置の一例を示すものである。本発明に係る音伝達装置は、実施形態に係る音伝達装置1に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、実施形態に係る音伝達装置を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0049】
例えば、上述した実施形態では、音伝達装置1が個人認証部12を備える例を説明したが、個人認証部12は音伝達の精度を向上させるべく設けられたものであるので、要求される性能に応じて個人認証部12は設けなくてもよい。同様に、図3に示す制御処理を必ずしも実行する必要はなく、あらかじめ用意された共通の音圧マップを用いてもよい。
【0050】
また、例えば、上述した実施形態では、運転者の顔位置に基づいて音圧を調整する例を説明したが、ドライバの意識レベルに応じて音の強弱を変更してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…音伝達装置、3…車両、10…ECU、13…音圧制御部(音圧調整手段)、Pn…スピーカ、Ln…発光素子(視覚情報出力手段)、G…スピーカ群。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音源から出力音を出力させて車両内の聴取者へ伝達する音伝達装置であって、
前記聴取者の顔位置に基づいて前記出力音の音圧を調整する音圧調整手段と、
前記聴取者の顔方向に存在する前記音源の位置を示す視覚情報を出力する視覚情報出力手段と、
を備えることを特徴とする音伝達装置。
【請求項2】
前記視覚情報出力手段は、前記聴取者の顔方向と前記聴取者を基準とする前記音源の方向との差が、最も小さい前記音源の位置を示す視覚情報を出力する請求項1に記載の音伝達装置。
【請求項3】
前記視覚情報出力手段は、赤外線カメラによる前記聴取者の画像に基づいて前記聴取者の顔方向を取得する請求項1又は2に記載の音伝達装置。
【請求項4】
前記視覚情報出力手段は、前記音源付近に配置された発光素子を発光させる請求項1〜3の何れか一項に記載の音伝達装置。
【請求項5】
前記音圧調整手段は、顔位置に応じた音圧が記録された音圧マップを用いて前記出力音の音圧を調整する請求項1〜4の何れか一項に記載の音伝達装置。
【請求項6】
聴取者の顔位置に応じて車両内に配置された各音源の出力音圧を調整し、かつ、前記聴取者の顔位置に近い音源を示す視覚的刺激を発生させることを特徴とする音伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−245946(P2010−245946A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93988(P2009−93988)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】