説明

音制御装置及び音発生源

【課題】所定の周波数帯域の音を選択的に増減させることができる音制御装置及び音発生源を提供する。
【解決手段】筐体にスピーカユニット20を有するスピーカ2に接続され、スピーカ2から車内へ出力される音を制御する音制御装置1であって、スピーカユニット20から報知すべき情報に関する報知音を出力させる警報音提供判断部11及び警報音生成部12と、報知音の出力の際に、スピーカユニット20から出力される音のうち所定の周波数帯域に係る音を制御するように、スピーカ2の筐体構成を変更する音環境判定部13、増音制御部14及び減音制御部15と、を備えることで、所定の周波数帯域の音を選択的に増減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音制御装置及び音発生源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、音を制御する装置として、警報メッセージ(警報音)の出力の際に音環境を制御するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載の装置は、第1及び第2のスピーカに接続されており、運転者への警報メッセージを第1スピーカから出力する前に、ミュート信号により第1スピーカから出力される音楽を消音するとともに、ミュート信号により第2のスピーカから出力される音楽を所定量消音するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−73588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の音制御装置にあっては、ミュート信号により音量を下げる以外に積極的に音を減らすことができない。このため、単一のスピーカを用いて警報メッセージ及び音楽等を出力する場合には、例えば警報メッセージの出力前に音楽等を少し小さくするといった音環境の制御を柔軟に行うことができない。このため、警報メッセージ及び音楽等の両方を適切に制御して運転者に聞かせることは困難である。
【0005】
そこで、本発明はこのような技術課題を解決するためになされたものであって、所定の周波数帯域の音を選択的に増減させることができる音制御装置及び音発生源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る音制御装置は、筐体に音発生部を有する音発生源に接続され、前記音発生源から車内へ出力される音を制御する音制御装置であって、前記音発生部から報知すべき情報に関する報知音を出力させる報知音出力手段と、前記報知音の出力の際に、前記音発生部から出力される音のうち所定の周波数帯域に係る音を制御するように、前記音発生源の筐体構成を変更する筐体構成変更手段と、を備えて構成される。
【0007】
本発明に係る音制御装置では、報知音出力手段により報知音が出力される際に、筐体構成変更手段により、音発生源の筐体構成が変更されて所定の周波数帯域に係る音が制御される。このように、所定の周波数帯域に係る音を制御するように音発生源の筐体構成を変更できるので、例えば報知音以外の不要な周波数帯域の音を選択的に軽減したり、報知音のみを増減させたりすることが可能となる。
【0008】
ここで、前記筐体構成変更手段は、前記報知音が前記音発生源から出力される前に、前記音発生源から出力される音の音量を増加させたのち低減させるように前記音発生源の筐体構成を変更することが好適である。
【0009】
このように構成することで、報知音の出力前に聴取者に対して音の変化を顕著に感じさせることができる。このため、定常的な音に慣れることで低下した聴覚感度を向上させることが可能となるとともに、報知音の出力前に聴取者に対して静寂感を効果的に与えることができる。このように、報知音の出力前に音環境を制御することにより、聴取者に対して報知音の出力の前触れを認識させることが可能となるとともに、聴取者にとって聞き取りやすい報知音を出力することができる。
【0010】
また、前記筐体構成変更手段は、前記筐体の共振周波数又は周波数特性が変更されるように前記音発生源の筐体構成を変更することが好適である。このように構成することで、例えば、オーディオから音を出力している状態であっても、オーディオからの音を軽減しながら報知音のみを強調させることができる。
【0011】
また、前記筐体構成変更手段は、車速に基づいて前記音発生源の筐体構成を変更することが好適である。このように構成することで、例えば車速に応じて増加するノイズ等の環境音を低減して報知音を強調することができる。
【0012】
また、前記筐体構成変更手段は、前記音発生源から出力される音の音量を低減させたのちに前記報知音の音量を増加させるように前記音発生源の筐体構成を変更することが好適である。このように構成することで、聴取者の報知音の認識を一層高めることができる。
【0013】
また、本発明に係る音発生源は、音を発生する音発生部を筐体に有する音発生源であって、前記音発生部から報知すべき情報に関する報知音を出力させる報知音出力手段に接続されており、前記音発生部から報知音を出力する際に、前記筐体の共振周波数又は周波数特性が変更されるように筐体構成を変更する筐体構成変更機構を有することを特徴として構成される。
【0014】
本発明に係る音発生源によれば、筐体構成変更機構により筐体の共振周波数又は周波数特性が変更されるように筐体構成を変更できるので、出力する音が選択的に増減される。このため、例えば報知音を聞き取りやすいように音環境を柔軟に制御することができる。
【0015】
また、本発明に係る音制御装置は、音源から発せられる報知音に応じて前記音源の筐体構成を変化させるように構成される。このように構成することで、所定の周波数帯域の音を選択的に増減させて音環境の制御を柔軟に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、所定の周波数帯域の音を選択的に増減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係る音制御装置を備える車両の構成概要を示すブロック図である。
【図2】実施形態に係る音発生源が有する減音機構の一例を示す断面図である。
【図3】実施形態に係る音発生源が有する減音機構の一例を示す断面図である。
【図4】実施形態に係る音発生源が有する減音機構の一例を示す斜視図である。
【図5】実施形態に係る音発生源が有する減音機構の一例を示す断面図である。
【図6】図5の減音機構の動作を説明する概要図である。
【図7】実施形態に係る音発生源が有する減音機構の一例を示す断面図である。
【図8】実施形態に係る音発生源が有する減音機構の一例を示す断面図である。
【図9】実施形態に係る音発生源が有する減音機構の一例を示す断面図である。
【図10】実施形態に係る音発生源が有する減音機構の一例を示す断面図である。
【図11】実施形態に係る音発生源が有する減音機構の一例を示す断面図である。
【図12】実施形態に係る音発生源が有する増音機構の一例を示す断面図である。
【図13】実施形態に係る音発生源が有する増音機構の一例を示す断面図である。
【図14】実施形態に係る音制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
本実施形態に係る音制御装置は、例えば車両の乗員(聴取者)に対して音声や音を用いて情報を提供する場合に好適に採用されるものである。
【0020】
最初に、本実施形態に係る音制御装置を備える車両の概要から説明する。図1は、本実施形態に係る音制御装置1を備える車両の構成概要を示すブロック図である。図1に示す車両3は、オーディオ30、ECU(Electronic Control Unit)10及びスピーカ(音発生源)2を備えている。ECUは、電子制御する自動車デバイスのコンピュータであり、CPU(CentralProcessing Unit)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリ、及び入出力インターフェイスなどを備えて構成されている。
【0021】
オーディオ30は、スピーカ2に接続されており、音を再生するための信号を生成する機能を有している。オーディオ30として、例えば、CD再生ユニット、MD再生ユニット、MP3再生ユニット、ラジオ受信ユニット等が用いられる。
【0022】
ECU10は、スピーカ2に接続されており、警報音提供判断部11、警報音生成部12、音環境判定部13、増音制御部14及び減音制御部15を備えている。
【0023】
警報音提供判断部11は、乗員に対して警報すべき情報に関する警報音(報知すべき情報に関する報知音)を提供するか否かを判定する機能を有している。例えば、警報音提供判断部11は、車両3に備わる図示しないセンサ類やナビゲーション装置等又は車外に配置された路側支援装置等から車両情報や車外情報を取得して、警報すべき事象が発生しているか否かを判定する機能を有している。また、警報音提供判断部11は、警報すべき事象が発生していると判定した場合には、警報内容を警報音生成部12へ出力する機能を有している。
【0024】
警報音生成部12は、警報音提供判断部11が出力した警報内容に基づいて、警報内容を示す音波を再生するための信号を生成する機能を有している。また、警報音生成部12は、生成した信号をスピーカ2へ出力する機能を有している。
【0025】
音環境判定部13は、車内の音環境を判定する機能を有している。例えば、音環境判定部13は、車内に配置された図示しないマイク等から車内の音を入力したり、オーディオ30に接続されてオーディオ30が生成する信号を入力したりすることで、車内の音環境(車内音の音圧等)を判定する機能を有している。また、音環境判定部13は、乗員が警報音を聞き取りやすい音環境となるように、スピーカ2の出力音の増減を決定する機能を有している。例えば、音環境判定部13は、警報音生成部12が警報音の信号をスピーカ2へ出力する前に、スピーカ2の出力音を増音した後減音するように増減タイミングを決定する機能を有している。また、例えば、音環境判定部13は、警報音生成部12が警報音の信号をスピーカ2へ出力する前に、スピーカ2の出力音のうち、所定の周波数帯域に係る音の増減を決定する機能を有している。所定の周波数帯域に係る音としては、例えば、警報音やオーディオ30の出力音である。このように、音環境判定部13は、警報音以外の不要な周波数帯域の音のみを選択的に軽減することを決定したり、あるいは警報音のみを増減することを決定したりして、乗員が警報音を聞き取りやすい音環境を構築する。音環境判定部13は、スピーカ2の出力音の増減を決定すると、制御信号を増音制御部14及び減音制御部15の少なくとも一方へ出力する機能を有している。
【0026】
増音制御部14は、スピーカ2の後述する増音機構を制御可能に構成されている。増音制御部14は、音環境判定部13が出力したスピーカ2の出力音の増加に関する制御信号に基づいて、増音機構を制御する機能を有している。
【0027】
減音制御部15は、スピーカ2の後述する減音機構を制御可能に構成されている。増音制御部14は、音環境判定部13が出力したスピーカ2の出力音の減少に関する制御信号に基づいて、減音機構を制御する機能を有している。
【0028】
上述した警報音提供判断部11及び警報音生成部12が報知音出力手段として機能し、音環境判定部13、増音制御部14及び減音制御部15が筐体構成変更手段として機能する。
【0029】
次に、スピーカ2の構成の概要について説明する。スピーカ2は、オーディオ30及びECU10に接続された音発生源であって、車内へ音を出力する機能を有している。スピーカ2として、例えば、密閉型スピーカのバッフルに穴が形成され、この穴に連通するダクトが筐体内部に設けられたバスレフ型のスピーカが用いられる。スピーカ2は、オーディオ30及びECU10が出力する信号に基づいて音を出力するスピーカユニット20、減音機構21及び増音機構22を備えている。
【0030】
減音機構21は、所定の周波数帯域の音が減音されるように、スピーカ2の筐体構成を変更する機構である。すなわち、減音機構21は、スピーカ2の筐体固有の共振周波数の制御範囲又は周波数特性の制御範囲を変更可能に構成されている。例えば、減音機構21として、筐体の内部容積を可変とする機構、音出力機能を抑制する機構、吸音機能を増大させる機構等が用いられる。
【0031】
以下、図面を用いてスピーカ2の減音機構21の例について詳細を説明する。図2〜図11は、スピーカ2の減音機構21を説明するための概要図である。図2は、バスレフ型のスピーカ2の側断面図である。スピーカ2は略箱状の筐体を有している。筐体の前面側のバッフルには、開口部2aが形成されており、この開口部2aにスピーカユニット20が取り付けられている。また、スピーカ2の前面側のバッフルには、開口部であるポート2bが形成されており、このポート2bに筒状のダクト2cの端部が連結されている。ポート2bの形状は円であってもよいし矩形であってもよい。また、ダクト2cの端部の断面は、ポート2bの形状に合わせて形成されればよい。なお、筐体の内壁に吸音材等を設けても良い。
【0032】
上記バスレフ型のスピーカ2では、信号に基づいてスピーカユニット20から筐体前面側に音が出力されるとともに、スピーカユニット20後面からの音がダクト2cを介して筐体前面側に出力される。このように、ダクト2cを介して筐体内部が外部に連通した構成とされているため、筐体の内容積、ダクト2cの長さ及び断面積等に依存した共振周波数が発生する。
【0033】
ここで、図2に示すスピーカ2には、減音機構21として、筐体内部の容積を変更するための蓋部材21aを有している。蓋部材21aは、例えば、板状を呈し、スピーカユニット20とダクト2cとの間に配置されている。そして蓋部材21aの一方の端部が、前面側のバッフルに当該端部を支点として開閉動作可能に取り付けられている(図中矢印)。すなわち、蓋部材21aは、その開閉動作により筐体の内部を仕切り、内部容積を小さく変更することが可能に構成されている。なお、筐体内部の容積を変更する他の例として、筐体の内部を仕切るシャッタ状の蓋やスリット状の蓋を用いても良い。減音制御部15の信号に基づいて蓋部材21aが開閉され、筐体内部の容積が変更され、筐体の共振周波数が変更される。
【0034】
次に、図3を用いてスピーカ2の減音機構21の一例について詳細を説明する。図3に示すスピーカ2は、減音機構21として、ダクト長の可変機構を備えている。例えば、ダクト2cの端部に、筒状の伸縮用部材21bが取り付けられている。伸縮用部材21bの内径は、ダクト2cの外径とほぼ同一とされている。伸縮用部材21bは、その内部にダクト2cの一端部を収容した状態で、ダクト2cの長手方向にスライド可能に構成されている(図中矢印)。すなわち、伸縮用部材21bによりダクト長を長く変更することが可能に構成されている。減音制御部15の信号に基づいて伸縮用部材21bがスライドされ、ダクト長が変更され、筐体の共振周波数が変更される。また、伸縮用部材21bがスピーカの背面壁まで伸ばされるにより、バスレフ型が密閉型へ変更される。なお、伸縮用部材21bは蛇腹状であってもよい。
【0035】
次に、図4を用いてスピーカ2の減音機構21の一例について詳細を説明する。図4に示すスピーカ2は、減音機構21として、筐体内部の外部への開口の数を可変とする機構を備えている。例えば、筐体の上面に開閉動作可能なスリット状の蓋を有する開口部21cが形成されている。図4(a)ではスリット状の蓋が閉じた状態の開口部21cを示し、図4(b)ではスリット状の蓋が開いた状態の開口部21cを示している。減音制御部15の信号に基づいて開口部21cが開閉され、筐体の共振周波数が変更される。なお、筐体の側面や背面に開口部21cを設けても良いし、複数の開口部21cを設けても良い。
【0036】
次に、図5,6を用いてスピーカ2の減音機構21の一例について詳細を説明する。図5に示すスピーカ2は、減音機構21として、ダクト2cの断面積の可変機構を備えている。例えば、ポート2bに開口の度合いを変更可能に構成された可変シャッタ21dが設けられている。可変シャッタ21dは、複数の板を重ね合わせて構成されており、図6(a)〜(c)に示すように開口の大きさを変更可能に構成されている。図6(a)は、可変シャッタ21dが全開した状態、図6(b)は、可変シャッタ21dが開口の度合いを小さくした状態、図6(c)は、可変シャッタ21dが全閉した状態を示している。図6(c)に示す状態では、バスレフ型から密閉型へ構成変更される。減音制御部15の信号に基づいて可変シャッタ21dが開閉され、ダクト2cの断面積が変更され、筐体の共振周波数が変更される。なお、可変シャッタ21dを板状の蓋部材で構成し、スライド動作によりダクト2cの断面積を変更する構成としてもよい。
【0037】
次に、図7を用いてスピーカ2の減音機構21の一例について詳細を説明する。図7に示すスピーカ2は、減音機構21として、ダクトの断面積の可変機構を備えている。例えば、ポート2bに、底面及び上面の面積が異なる円柱筒状のダクト21eの端部が連結されている。ダクト21eはその底面の面積が上面の面積より大とされ、その底面側の端部がポート2bに接続されている。そして、ダクト21eは、その上面側を動作させることにより、断面積を変更可能に構成されている(図中矢印)。減音制御部15の信号に基づいてダクト21eが動作し、ダクト21eの断面積が変更され、筐体の共振周波数が変更される。
【0038】
次に、図8を用いてスピーカ2の減音機構21の一例について詳細を説明する。図8に示すスピーカ2は、減音機構21として、筐体内部容積及び吸音構造の可変機構を備えている。例えば、スピーカ2の背面側の筐体内部には、音を吸収する吸音突起21fが複数設けられている。また、スピーカ2の背面側の筐体内部には、開口部を複数有する可動板2iが、その開口部に吸音突起21fを挿入した状態で前後動作可能に取り付けられている。そして、可動板2iは、前後動作することにより、筐体内部の容積を変更するとともに、吸音突起21fの筐体内部へ突出した実効的な高さを変更する(図8(a)の矢印)。なお、図8(b)は可動板2iを筐体内部容積が最大となる位置に移動させた場合を示す。減音制御部15の信号に基づいて可動板2iが前後され、筐体内部の容積及び吸音性能が変更され、筐体の共振周波数及び周波数特性が変更される。なお、吸音構造の可変機構として、吸音突起21fをスピーカ2の筐体背面に貫通させた状態で移動可能に取り付ける構成としてもよい。また、吸音突起の高さだけでなく、数や形状を変更させる構成としてもよい。
【0039】
次に、図9を用いてスピーカ2の減音機構21の一例について詳細を説明する。図9に示すスピーカ2は、減音機構21として、吸音構造の可変機構を備えている。例えば、スピーカ2の背面側の筐体内部には、音を吸収する吸音突起21gが複数設けられている。吸音突起21gは、その姿勢を変更可能な可倒機構を有している。例えば、図9(a)に示す倒した状態から図9(b)に示す起き上がった状態へ動作可能に構成されている。減音制御部15の信号に基づいて吸音突起21gの姿勢が変更され、吸音性能が変更され、筐体の周波数特性が変更される。なお、吸音構造の可変機構として、図示しない吸音材の材料として、起毛する材料を採用し、静電気等により吸音材の実効厚さを変更可能に構成してもよい。
【0040】
次に、図10を用いてスピーカ2の減音機構21の一例について詳細を説明する。図10に示すスピーカ2は、減音機構21として、スピーカユニット20に備わるコーン20aの制振機構を有している。例えば、スピーカユニット20に備わるコーン20aには、コーン20aへの接触、非接触を切り替え可能なクリップ部材21hが設けられている。クリップ部材21hは、コーン20aへ接触し、スピーカユニット20の振動を物理的に抑制する。減音制御部15の信号に基づいてクリップ部材21hがコーン20aに接触、非接触され、出力音の周波数特性が変更される。なお、図示しないが、スピーカユニット20に備わるコーン20aの除加湿機構を有しても良い。コーン20aを加湿することにより、スピーカユニット20の出力音を低減することができるとともに、必要に応じてコーン20aを除湿することにより例えば梅雨期におけるカビ等の発生を回避できる。
【0041】
次に、図11を用いてスピーカ2の減音機構21の一例について詳細を説明する。図11に示すスピーカ2は、減音機構21として、スピーカユニット20の出力を抑制する機構を有している。例えば、スピーカユニット20の出力側を覆うことが可能な蓋部材21iが取り付けられている。蓋部材21iは、スピーカユニット20の出力側を物理的に遮って出力音を抑制する。減音制御部15の信号に基づいて蓋部材21iが開閉され、出力音の音量が変更される。なお、スピーカ2の未使用時には、蓋部材21iが閉とされることで、防塵・防滴構造となる。
【0042】
次に、図12を用いてスピーカ2の増音機構22の一例について詳細を説明する。図12に示すスピーカ2は、増音機構22として、筐体内部に共振構造を備えている。例えば、スピーカ2の筐体内に、所定の周波数で共振する共振部材21jが設けられている。共振部材21jは、例えば、スピーカ内部の特定周波数と共振して警報音を出力する。減音制御部15の信号に基づいて共振部材21jの共振機能がONとされ、警報音が筐体内部から生成される。なお、共振部材21jは、警報音と共鳴するように構成され、警報音を増音するように機能してもよい。
【0043】
次に、図13を用いてスピーカ2の増音機構22の一例について詳細を説明する。図13に示すスピーカ2は、増音機構22として、筐体内部に警報音用のスピーカユニット21kを備えている。減音制御部15の信号に基づいてスピーカユニット21kから警報音が出力される。この場合、ポート2bに図5に示す可変シャッタ21dを取り付けて、筐体内で発生させた警報音の音量を調整してもよい。
【0044】
次に、本実施形態に係る音制御装置1の動作について説明する。図14は、本実施形態に係る音制御装置1の動作を示すフローチャートである。図14に示す制御処理は、例えば、イグニッションONされたタイミングから所定の間隔で繰り返し実行される。
【0045】
図14に示すように、音制御装置1は、警報判定処理から開始する(S10)。S10の処理は、警報音提供判断部11が実行し、警報する必要があるか否かを判定する処理である。S10の処理において、警報が不要と判定した場合には、図14に示す制御処理を終了する。一方、S10の処理において、警報が必要と判定した場合には、音環境判定処理へ移行する(S12)。
【0046】
S12の処理は、音環境判定部13が実行し、車内の音環境を判定する処理である。音環境判定部13は、例えば、オーディオ30からの信号や車内マイク等に基づいて、既に車内へ提供している音があるか否かを判定する。S12の処理において、警報前に車内へ音が提供されていないと判定した場合には、警報処理へ移行する(S18)。
【0047】
S18の処理は、警報音生成部12及びスピーカ2が実行し、車内へ警報音を提供する処理である。警報音生成部12からスピーカ2へ警報に関する信号を出力してもよいし、図12に示す共振部材21jを用いて警報音を出力してもよい。S18の処理が終了すると、図14に示す制御処理を終了する。
【0048】
一方、S12の処理において、警報前に車内へ音が提供されていると判定した場合には、音環境制御処理へ移行する(S14,S16)。S14の処理は、音環境判定部13、増音制御部14及び減音制御部15が実行し、音環境を制御する処理である。例えば、既に提供している音を増音し(S14)、その後減音する(S16)。増音の処理としては、図2〜11に示す減音機構の少なくとも1つを用いて、初期状態から減音させておき、徐々に相対的に増音させてもよいし、アンプ回路で音量を増音してもよい。減音の処理としては、図2〜11に示す減音機構の少なくとも1つを用いて減音する。S16の処理が終了すると、警報処理へ移行し(S18)、図14に示す制御処理を終了する。
【0049】
以上で図14に示す制御処理を終了する。図14に示す制御処理を実行することにより、警報音の出力前に音環境が整備されるので、乗員に聞き取り易い警報音が出力されることとなる。また、図2〜図13に示す減音機構・増音機構を組み合わせることにより、図14に示す制御動作以外の音環境動作も当然に実行可能である。例えば、図13に示すスピーカ2であれば、スピーカユニット20から出力される音を減音するとともに、スピーカユニット21kから警報音を出力しながら、可変シャッタ21dの開口面積を除々に大きくするように制御することで、スピーカ2からの音が小さくなるとともに警報音が除々に大きくできるので、乗員にとって一層聞き取り易い警報音を出力することが可能となる。また、車速が大きくなるほど可変シャッタ21dの開口面積を大きく制御することで、車速に応じて大きくなる周囲騒音に警報音が埋もれて聞き取りにくくなることを回避できる。あるいは、車速が大きくなるほどスピーカユニット20から出力される音を減音するように構成してもよい。また、図4〜6に示す開口部21cや可変シャッタ21dを筐体に複数有することで、開閉個数を制御してスピーカの共振周波数を変更し、音量を制御することも可能である。このように、音制御装置1及びスピーカ2により、警告内容や程度、情報量、周囲音、車速等に応じて音量を制御することが可能となる。
【0050】
上述したように、本実施形態に係る音制御装置1によれば、警報音提供判断部11及び警報音生成部12により警報音が出力される際に、音環境判定部13、増音制御部14及び減音制御部15により、スピーカ2の筐体構成が変更されて所定の周波数帯域に係る音が制御される。このように、所定の周波数帯域に係る音を制御するようにスピーカ2の筐体構成を変更できるので、例えば警報音以外の不要な周波数帯域の音を選択的に軽減したり、警報音のみを増減させたりすることが可能となる。
【0051】
また、本実施形態に係る音制御装置1によれば、音環境判定部13、増音制御部14及び減音制御部15により、警報音がスピーカ2から出力される前に、スピーカ2から出力される音の音量を増加させたのち低減させるようにスピーカ2の筐体構成を変更することができるので、警報音の出力前に乗員に対して音の変化を顕著に感じさせることが可能となる。このように、定常的な音に慣れることで低下した聴覚感度を向上させることが可能となるとともに、警報音の出力前に乗員に対して静寂感を効果的に与えることができる。警報音の出力前に音環境を制御することにより、乗員に対して警報音の出力の前触れを認識させることが可能となるとともに、乗員にとって聞き取りやすい警報音を出力することができる。
【0052】
また、本実施形態に係る音制御装置1によれば、音環境判定部13、増音制御部14及び減音制御部15により、筐体の共振周波数又は周波数特性が変更されるようにスピーカ2の筐体構成を変更することができるので、例えば、オーディオ30から音を出力している状態であっても、オーディオ30からの音を軽減しながら警報音のみを強調させることが可能となる。
【0053】
また、本実施形態に係る音制御装置1によれば、音環境判定部13、増音制御部14及び減音制御部15により、車速に基づいてスピーカ2の筐体構成を変更することができるので、例えば車速に応じて増加するノイズ等の環境音を低減して警報音を強調することが可能となる。
【0054】
また、本実施形態に係る音制御装置1によれば、音環境判定部13、増音制御部14及び減音制御部15により、スピーカ2から出力される音の音量を低減させたのちに警報音の音量を増加させるようにスピーカ2の筐体構成を変更することができるので、乗員の警報音の認識を一層高めることが可能となる。
【0055】
また、本実施形態に係るスピーカ2によれば、減音機構21・増音機構22により筐体の共振周波数又は周波数特性が変更されるように筐体構成が変更されるので、出力する音が選択的に増減される。このため、例えば警報音を聞き取りやすいように音環境を柔軟に制御することができる。また、本実施形態に係るスピーカ2によれば、減音機構21・増音機構22により筐体の共振周波数又は周波数特性が変更されるように筐体構成が変更されるので、音の質を大きく損なうことなく、特定の周波数帯域の音量を増減することができる。また、本実施形態に係るスピーカ2によれば、共振部材21jにより警報音を簡便に生成することができる。本実施形態に係るスピーカ2によれば、音の発生箇所が新規に発生しないため、乗員が音の発生位置に悩むことを回避できる。このため、乗員に対して抵抗感を与えることを回避することができる。さらに、本実施形態に係るスピーカ2によれば、音の可変機構をスピーカ内部に備えることにより、搭載性を変更する必要がなく、汎用性に優れている。
【0056】
なお、上述した実施形態は本発明に係る音制御装置及び音発生源の一例を示すものである。本発明に係る音制御装置及び音発生源は、実施形態に係る音制御装置1及びスピーカ2に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、実施形態に係る音制御装置を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0057】
例えば、実施形態で説明した図2〜図13に示す減音機構・増音機構を複数有したり、実施形態で説明していない組み合わせにより音環境を制御したりしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…音制御装置、2…スピーカ(音発生源)、3…車両、10…ECU、11…警報音提供判断部(報知音出力手段)、12…警報音生成部(報知音出力手段)、13…音環境判定部(筐体構成変更手段)、14…増音制御部(筐体構成変更手段)、15…減音制御部(筐体構成変更手段)、20…スピーカユニット、21…減音機構、22…増音機構、30…オーディオ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に音発生部を有する音発生源に接続され、前記音発生源から車内へ出力される音を制御する音制御装置であって、
前記音発生部から報知すべき情報に関する報知音を出力させる報知音出力手段と、
前記報知音の出力の際に、前記音発生部から出力される音のうち所定の周波数帯域に係る音を制御するように、前記音発生源の筐体構成を変更する筐体構成変更手段と、
を備えることを特徴とする音制御装置。
【請求項2】
前記筐体構成変更手段は、前記報知音が前記音発生源から出力される前に、前記音発生源から出力される音の音量を増加させたのち低減させるように前記音発生源の筐体構成を変更する請求項1に記載の音制御装置。
【請求項3】
前記筐体構成変更手段は、前記筐体の共振周波数又は周波数特性が変更されるように前記音発生源の筐体構成を変更する請求項1又は2に記載の音制御装置。
【請求項4】
前記筐体構成変更手段は、車速に基づいて前記音発生源の筐体構成を変更する請求項1〜3の何れか一項に記載の音制御装置。
【請求項5】
前記筐体構成変更手段は、前記音発生源から出力される音の音量を低減させたのちに前記報知音の音量を増加させるように前記音発生源の筐体構成を変更する請求項1に記載の音制御装置。
【請求項6】
音を発生する音発生部を筐体に有する音発生源であって、
前記音発生部から報知すべき情報に関する報知音を出力させる報知音出力手段に接続されており、前記音発生部から報知音を出力する際に、前記筐体の共振周波数又は周波数特性が変更されるように筐体構成を変更する筐体構成変更機構を有すること、
を特徴とする音発生源。
【請求項7】
音源から発せられる報知音に応じて前記音源の筐体構成を変化させる音制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−35707(P2011−35707A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180596(P2009−180596)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】