説明

音声出力装置

【課題】組み立て工程の煩雑さを解消し、機器の品質、信頼性を保ちながら小型形状とする。
【解決手段】各機能モジュールに電源供給する電源5と、外部から取得した音声信号に所定の信号処理を施し、信号処理された音声信号を増幅する信号処理モジュール3と、増幅された音声信号を音声として出力するスピーカモジュール4と、電源5、信号処理モジュール3、スピーカモジュール4を組み付けた際に、各形状に応じた組み付け部位を有するとともに、組み付けにより電気的に圧接される電極部位が形成された立体回路基板10とを備えることで実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声信号を増幅して外部に音声として出力する音声出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化に伴い、機器内の組立合理化、省スペース化が要求されている。このような要求に伴い、従来のガラスエポキシプリント基板に代表されるような平面的な形のプリント配線基板では対応しきれない電子機器も増加傾向にある。これに対応する手法として、射出成形品の表面に立体的に直接電気回路を形成する射出成型回路部品(MID:Molded Interconnect Device)技術が考案されている。具体的には、射出成形された基板の表面に立体的に、微細な電気回路を形成する微細複合加工技術(MIPTEC:Microscopic Integrated Processing Technology)が考案、開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
微細複合加工技術は、射出成形された基板上に電気回路や機械的・電気的機能を組み込んだ部品を製造する技術(射出成形回路部品の製造技術)であり、特に、レーザを用いた加工により、極めて微細な3次元の回路形成が可能となり、基板上に形成するパターン変更などの自由度を高めることができる。
【特許文献1】特開平7−66533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、外部から音声を集音して増幅して出力する補聴器や、伝搬している電波に重畳された音声信号を増幅して音声として出力する受信器や、音声信号を記憶した記憶装置を装着して読み出し、音声として出力する再生装置などといった音声出力装置は、直接、耳に装着したり、耳に掛けたりするため、小型形状とすることが非常に好ましく、ユーザからもそのような小型形状とすることが強く望まれている。
【0005】
したがって、上述したような平面形状のプリント配線基板を用いると小型形状とすることが困難となってしまうといった問題がある。また、プリント配線基板と各機能部品とをリード線により接続しなくてはならず、組み立て工程の煩雑さを伴うとともに、配線のミス、断線などにより機器の品質、信頼性の低下を招来してしまうといった問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、組み立て工程の煩雑さを解消し、機器の品質、信頼性を保ちながら小型形状とする音声出力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の音声出力装置は、当該音声出力装置に電源供給する電源と、外部から取得した音声信号に所定の信号処理を施す信号処理手段と、前記信号処理手段によって信号処理された音声信号を増幅する増幅手段と、前記増幅手段によって増幅した音声信号を音声として出力する出力手段と、前記電源、前記増幅手段、前記出力手段を組み付けた際に、各形状に応じた組み付け部位を有するとともに、組み付けにより電気的に圧接される電極部位が形成された立体回路基板とを備えることで、上述の課題を解決する。
【0008】
また、本発明の音声出力装置は、外部から音声を集音する集音手段を備え、前記信号処理手段が、前記集音手段によって外部から集音した音声に対して所定の音声信号処理を施すことで、上述の課題を解決する。
【0009】
また、本発明の音声出力装置は、外部に伝搬している電波を受信する受信手段を備え、前記信号処理手段が、前記受信手段によって受信された電波に重畳された音声信号に対して所定の音声信号処理を施すことで、上述の課題を解決する。
【0010】
さらにまた、本発明の音声出力装置は、音声信号を記憶した記憶装置を装着する装着手段を備え、前記信号処理手段が、前記装着手段に装着された記憶装置から音声信号を読み出し、読み出した音声信号に対して所定の音声信号処理を施すことで、上述の課題を解決する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、組み立て工程の煩雑さを解消し、機器の品質、信頼性を保ちながら小型形状とすることを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
[第1の実施の形態]
まず、図1を用いて、本発明の第1の実施の形態として示す補聴器1の内部構成について説明をする。図1に示すように補聴器1は、マイクロフォンモジュール2と、信号処理モジュール3と、スピーカモジュール4と、電源5と、立体回路基板10とを備えている。図1は、各機能モジュールを立体回路基板10に組み付ける前の状態を示しており、図2では、立体回路基板10に組み付けた後の状態を示している。
【0014】
図1に示すように、マイクロフォンモジュール2は、外部からの音声を集音するマイクロフォン21を備えている。マイクロフォンモジュール2は、立体回路基板10に組み付けるための凸部2Aを備えている。また、凸部2Aには、シリンドリカル状のシリンドリカル凹部2aが凸部2Aの側面に互いに対向するよう形成されている。また、凸部2Aの側面には、立体回路基板10に組み付けた際に、電気的に圧接される電極15が形成されている。
【0015】
信号処理モジュール3は、マイクロフォン21で集音された音声が、当該補聴器1を使用するユーザの聴覚特性に応じた周波数特性となるように音声信号処理をするモジュールである。したがって、信号処理モジュール3は、当該補聴器1の使用ユーザに応じてカスタマイズされることになる。また、信号処理モジュール3の側面には、シリンドリカル状のシリンドリカル凹部3aが互いに対向するように形成されている。また、信号処理モジュール3の側面には、立体回路基板10に組み付けた際に、電気的に圧接される電極15が形成されている。
【0016】
また、信号処理モジュール3に、ノイズをキャンセルするノイズキャンセラー機能を搭載することで、騒音をカットするようにしてもよい。
【0017】
スピーカモジュール4は、図示しないスピーカを備えており、信号処理モジュール3で音声信号処理された音声信号を音声として出力するモジュールである。スピーカモジュール4は、立体回路基板10に組み付けるための凸部4Aを備えている。また、凸部4Aには、シリンドリカル状のシリンドリカル凹部4aが凸部4Aの側面に互いに対向するように形成されている。また、凸部4Aの側面には、立体回路基板10に組み付けた際に、電気的に圧接される電極15が形成されている。
【0018】
電源5は、当該補聴器1を構成する各モジュールに電源供給をする、例えば電池などである。電源5は、供給電源の低下とともに交換して使用する1次電池や充電が可能な蓄電池(2次電池)などであってもよい。
【0019】
立体回路基板10は、絶縁性基材11を目的の形状に射出成型、薄膜形成、レーザビームによる必要なパターンの輪郭部の薄膜除去、必要なパターン部の電気銅メッキ、ソフトエッチングによる余分な薄膜部の除去、ニッケル、金の順で電気メッキするなどして回路形成をすることにより形成される。なお、立体回路基板10のように3次元立体形状となる基板の製造方法については、特開平7−66533号公報に記載されているため詳細な説明を省略をする。
【0020】
立体回路基板10は、絶縁性基材11を射出成型することで、マイクロフォンモジュール2の凸部2A、信号処理モジュール3、スピーカモジュール4の凸部4Aとをそれぞれ互いに組み付ける凹部10A,10B,10Cが形成される。
【0021】
凹部10Aの内壁には、マイクロフォンモジュール2の凸部2Aのシリンドリカル凹部2aと嵌合するシリンドリカル凸部10A1が形成されている。これにより、凹部10Aの内壁に形成された電極15と、凸部2Aの側面に形成された電極15同士が圧接しながら、立体回路基板10の凹部10Aと、マイクロフォンモジュール2の凸部2Aとが嵌合する。
【0022】
また、凹部10Bの内壁には、信号処理モジュール3のシリンドリカル凹部3aと嵌合するシリンドリカル凸部10B1が形成されている。これにより、凹部10Bの内壁に形成された電極15と、信号処理モジュール3の側面に形成された電極15同士が圧接しながら、立体回路基板10の凹部10Bと、信号処理モジュール3とが嵌合する。
【0023】
さらにまた、凹部10Cの内壁には、スピーカモジュール4の凸部4Aのシリンドリカル凹部4aと嵌合するシリンドリカル凸部10C1が形成されている。これにより、凹部10Cの内壁に形成された電極15と、凸部4Aの側面に形成された電極15同士が圧接しながら、立体回路基板10の凹部10Cと、スピーカモジュール4の凸部4Aとが嵌合する。
【0024】
また、立体回路基板10には、凹部10Dが形成されており、電池などである電源5を装着することができる。また、図示しないが、立体回路基板10には、電極15を立体回路基板10内に延接するためのスルーホールがいくつか形成されている。これにより、立体回路基板10に組み付けられた各モジュール間の電気的接続が確保されることになる。
【0025】
[第1の実施の形態の効果]
このように、本発明の第1の実施の形態として示す補聴器1は、立体回路基板10を備えることで、各機能モジュールを立体回路基板10へ組み付けるという極めて簡便な手法で形成することができる。組み立て手法が簡便なことから、機器の品質や機器の信頼性を向上させることができる。また、リード線が不要であることからリード線のスペースを確保する必要がなく、小型形状とすることができる。
【0026】
また、信号処理モジュール3は、ユーザの聴覚特性に応じた周波数特性となるようにカスタマイズする必要がある。したがって、リード線の結線を必要としない立体回路基板10への簡便な組み付けが可能なことから、ユーザに聴覚特性を検査してから商品として渡すことのできる納期を大幅に短縮することができる。
【0027】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態として示すラジオ受信器について説明をする。本発明の第2の実施の形態として示すラジオ受信器は、図示しないが、図1、図2を用いて説明をした補聴器1のマイクロフォンモジュール2を外部に伝搬している電波を受信するアンテナモジュールとし、信号処理モジュール3を任意の周波数の電波を受信して、受信した電波を復調することができるチューナモジュールとすることで実現することができる。
【0028】
もちろん、立体回路基板10に直接アンテナとなる回路を形成し、部品点数の削減と組み立て性の向上を図ることも可能である。
【0029】
[第2の実施の形態の効果]
このように、本発明の第2の実施の形態として示すラジオ受信器は、立体回路基板10を備えることで、各機能モジュールを立体回路基板10へ組み付けるという極めて簡便な手法で形成することができる。組み立て手法が簡便なことから、機器の品質や機器の信頼性を向上させることができる。また、リード線が不要であることからリード線のスペースを確保する必要がなく、小型形状とすることができる。
【0030】
[第3の実施の形態]
続いて、本発明の第3の実施の形態として示す音声再生装置について説明をする。本発明の第3の実施の形態として示す音声再生装置は、図示しないが、図1、図2を用いて説明した補聴器1のマイクロフォンモジュール2を音声信号を記憶させることができる記憶メディアを装着可能なスロットを有する装着モジュールとし、信号処理モジュール3を記憶メディアに記憶された音声信号を読み出して、読み出した音声信号を復調し、増幅することができる再生モジュールとすることで実現することができる。
【0031】
[第3の実施の形態の効果]
このように、本発明の第3の実施の形態として示す音声再生装置は、立体回路基板10を備えることで、各機能モジュールを立体回路基板10へ組み付けるという極めて簡便な手法で形成することができる。組み立て手法が簡便なことから、機器の品質や機器の信頼性を向上させることができる。また、リード線が不要であることからリード線のスペースを確保する必要がなく、小型形状とすることができる。
【0032】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施の形態として示す補聴器について説明するための分解斜視図である。
【図2】同じく本発明の第1の実施の形態として示す補聴器を組み付けた際の様子について示した図である。
【符号の説明】
【0034】
1 補聴器
2 マイクロフォンモジュール
2A 凸部
2a シリンドリカル凹部
3 信号処理モジュール
3a シリンドリカル凹部
4 スピーカモジュール
4A 凸部
4a シリンドリカル凹部
5 電源
10 立体回路基板
10A 凹部
10B 凹部
10C 凹部
10D 凹部
10A1 シリンドリカル凸部
10B1 シリンドリカル凸部
10C1 シリンドリカル凸部
11 絶縁性基材
15 電極
21 マイクロフォン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
当該音声出力装置に電源供給する電源と、
外部から取得した音声信号に所定の信号処理を施す信号処理手段と、
前記信号処理手段によって信号処理された音声信号を増幅する増幅手段と、
前記増幅手段によって増幅した音声信号を音声として出力する出力手段と、
前記電源、前記増幅手段、前記出力手段を組み付けた際に、各形状に応じた組み付け部位を有するとともに、組み付けにより電気的に圧接される電極部位が形成された立体回路基板とを備えること
を特徴とする音声出力装置。
【請求項2】
外部から音声を集音する集音手段を備え、
前記信号処理手段は、前記集音手段によって外部から集音した音声に対して所定の音声信号処理を施すこと
を特徴とする請求項1記載の音声出力装置。
【請求項3】
外部に伝搬している電波を受信する受信手段を備え、
前記信号処理手段は、前記受信手段によって受信された電波に重畳された音声信号に対して所定の音声信号処理を施すこと
を特徴とする請求項1記載の音声出力装置。
【請求項4】
音声信号を記憶した記憶装置を装着する装着手段を備え、
前記信号処理手段は、前記装着手段に装着された記憶装置から音声信号を読み出し、読み出した音声信号に対して所定の音声信号処理を施すこと
を特徴とする請求項1記載の音声出力装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−91554(P2008−91554A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269767(P2006−269767)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】