説明

音声IP化装置

【課題】簡単な回路構成で、音声信号とプレス信号、スケルチ信号の同期をとることができる音声IP化装置を提供することを目的とする。
【解決手段】有無判定部16は、RTPパケット受信部11がRTPパケット受信バッファ12に出力する信号を監視していて、RTPパケット受信部11からRTPパケット受信バッファ12にデータが出力されると、RTPパケットを受信したと判断して、DO端子の出力をオンにする。RTPパケット送信部15は、DI端子からの入力を監視しており、DI端子の入力がオンになると、RTPパケット送信バッファ14からデジタル音声データを読み出して、読み出したデジタル音声データをデータとするRTPパケットを生成し、IP網を介して送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力された音声信号をIPパケットに変換して送信するとともに、受信したIPパケットを音声信号に変換して出力する音声IP化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、音声をパケット化してインターネット等のIP(Internet Protocol)網を介して転送することにより音声通信を実現することが行われている。
【0003】
音声をパケット化して転送する場合、IP網の輻輳等によりパケットが遅延するときがあり、さらに遅延時間は一定ではなく、このパケットの遅延により音声品質が劣化してしまう。
【0004】
パケットの遅延を吸収するため、受信バッファでパケットを一定時間遅延させたり、パケットの到着が遅れた場合に再生を停止させたりするものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、図3に示すような、プレス信号がオンの間だけ音声信号を送信するような無線機3がある。
【0006】
この無線機3は、スイッチ31が閉じられPRS端子に入力されるプレス信号がオンの間、マイク32に入力される音声信号をアンテナ34を介して無線で送信し、アンテナ34で受信した音声信号をスピーカ33から出力するもので、無線により受信した音声信号を出力する間SQ端子の出力であるスケルチ信号をオンにするようになっている。
【特許文献1】特開2006−100933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図3に示すような無線機3を、IP網を介して遠隔から操作できるようにしたい場合、図4に示すように、音声信号、プレス信号、スケルチ信号とパケットデータを相互変換する音声IP化装置4を無線機3とIP網5との間に接続し、同様の音声IP化装置4を遠隔地でIP網5と接続して、無線機3とIP網5を介して通信して遠隔地から操作することが考えられる。
【0008】
図5は、このような音声IP化装置4の構成例を示す図である。図5において、この音声IP化装置4は、IP網から受信したRTP(Real-time Transport Protocol)パケットからデジタル音声データを取り出し、RTPパケット受信バッファ42に格納するRTPパケット受信部41と、IP網から受信したデジタル音声データを一時的に格納するRTPパケット受信バッファ42と、RTPパケット受信バッファ42に格納されているデジタル音声データをアナログ音声信号に変換して出力するとともに、入力されたアナログ音声信号をデジタル音声データに変換してRTPパケット送信バッファ44に格納するコーデック43と、コーデック43で変換されたデジタル音声データを一時的に格納するRTPパケット送信バッファ44と、RTPパケット送信バッファ44のデータをパケット化してIP網に送信するRTPパケット送信部45と、IP網から受信したTCPパケットの接点情報が接点出力オンであればDO端子の出力をオンにするTCPパケット受信部46と、DI端子の入力がオンになったら、接点出力オンの接点情報を含んだTCPパケットを生成して送信するTCPパケット送信部47とを備えている。
【0009】
この音声IP化装置4では、音声信号と接点情報(プレス信号、スケルチ信号)を別々にパケットに相互変換して送受信するようになっている。
【0010】
このようにした場合、IPパケット化による音声信号は、IP網での遅延のゆらぎ吸収等の処理により遅延量が予測困難であり、プレス信号、スケルチ信号もIPパケット化するときのサンプリング時間に対するバラツキやIP網での遅延のゆらぎによって遅延量が大きく異なり、音声信号と接点情報のタイミングがずれ、音声の頭切れ等が発生してしまう。
【0011】
また、音声パケットの中に接点情報を埋め込むことも考えられるが、接点情報を音声信号と同期をとりながらサンプリングしなければならず、回路が複雑になり、コストが増大してしまうという問題があった。
【0012】
そこで、本発明は、簡単な回路構成で、音声信号とプレス信号・スケルチ信号の同期をとることができる音声IP化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する発明は、受信したパケットからデジタル音声データを取り出し、パケット受信バッファに格納するパケット受信部と、受信したデジタル音声データを一時的に格納するパケット受信バッファと、パケット受信バッファに格納されているデジタル音声データをアナログ音声信号に変換して出力するとともに、入力されたアナログ音声信号をデジタル音声データに変換してパケット送信バッファに格納するコーデックと、コーデックで変換されたデジタル音声データを一時的に格納するパケット送信バッファと、入力端子がオンの間パケット送信バッファのデータをパケット化して送信するパケット送信部と、パケット受信部がパケットを受信したかどうかを判定し、パケットを受信したとき出力端子をオンにする有無判定部とを備えることを特徴とするものである。
【0014】
この発明では、パケットの受信により出力端子がオンになるとともに、入力端子がオンの間パケットが送信される。したがって、音声信号と同期してプレス信号・スケルチ信号が出力される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、パケットを受信したことを検出して出力端子をオンにするとともに、入力端子がオンの間パケットを送信しているので、簡単な回路構成で、音声信号とプレス信号・スケルチ信号の同期をとることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を図面を参照して説明する。
【0017】
図1は本発明の一実施形態の音声IP化装置を示す図である。
【0018】
図1において、本実施形態の音声IP化装置は、IP網から受信したRTPパケットからデジタル音声データを取り出し、RTPパケット受信バッファ12に格納するRTPパケット受信部11と、IP網から受信したデジタル音声データを一時的に格納するRTPパケット受信バッファ12と、RTPパケット受信バッファ12に格納されているデジタル音声データをアナログ音声信号に変換して出力するとともに、入力されたアナログ音声信号をデジタル音声データに変換してRTPパケット送信バッファ14に格納するコーデック13と、コーデック13で変換されたデジタル音声データを一時的に格納するRTPパケット送信バッファ14と、DI端子の入力がオンの間、RTPパケット送信バッファ14のデータをパケット化してIP網に送信するRTPパケット送信部15と、RTPパケット受信部11の出力によりRTPパケットを受信したかどうかを判定し、RTPパケットを受信したときDO端子の出力をオンにする有無判定部16とを備えている。
【0019】
このような音声IP化装置において、RTPパケット受信部11は、IP網からRTPパケットを受信すると、受信したパケットを分析し、データとして格納されているデジタル音声データをRTPパケット受信バッファ12へ格納する。
【0020】
有無判定部16は、RTPパケット受信部11がRTPパケット受信バッファ12に出力する信号を監視していて、RTPパケット受信部11からRTPパケット受信バッファ12にデータが出力されると、RTPパケットを受信したと判断して、DO端子の出力をオンにする。
【0021】
RTPパケット受信バッファ12に格納されたデジタル音声データは、コーデック13でアナログ音声信号に変換されOUT端子から出力される。
【0022】
また、有無判定部16は、RTPパケット受信部11からRTPパケット受信バッファ12へのデータの出力が無くなると、DO端子の出力をオフにする。
【0023】
一方、コーデック13は、IN端子から入力されるアナログ音声信号をデジタル音声データに変換して、RTPパケット送信バッファ14に格納する。
【0024】
RTPパケット送信部15は、DI端子からの入力を監視しており、DI端子の入力がオンになると、RTPパケット送信バッファ14からデジタル音声データを読み出して、読み出したデジタル音声データをデータとするRTPパケットを生成し、IP網を介して送信する。
【0025】
また、RTPパケット送信部15は、DI端子の入力がオフになると、RTPパケットの送信を停止する。
【0026】
このように本実施形態においては、音声データのパケット受信により接点出力をオンにするとともに、接点入力のオンにより音声データのパケットを送信しているので、音声データのゆらぎや接点情報のサンプリング時間に対するバラツキに影響されずに、音声信号とプレス信号・スケルチ信号の同期をとることができる。
【0027】
図2は、本実施形態の音声IP化装置の具体的な構成例を示す図である。なお、図1と同様な構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0028】
図2において、CPU21は、モトローラ(登録商標)社製のMPC860Tを使用し、RTPパケット受信部11、RTPパケット受信バッファ12、RTPパケット送信バッファ14、RTPパケット送信部15、有無判定部16はCPU21上で動作するソフトウェアで構成されている。
【0029】
また、CPU21のシリアルポート21aにはPLD(Programmable Logic Device)22を介してコーデック13が接続され、シリアル通信コントローラ(SCC)の制御によりコーデック13と通信して、コーデック13との間でデジタル音声データの送受信を行う。
【0030】
また、CPU21の汎用ポート21bにはDO端子とDI端子が接続され、有無判定部16の出力が汎用ポート21bを介してDO端子に出力され、DI端子からの入力が汎用ポート21bを介してRTPパケット送信部15に入力される。
【0031】
PLD22は、CPU21とコーデック13とのシリアル通信におけるクロック信号や同期信号を生成して、CPU21とコーデック13に供給するもので、発振回路23は、PLD22にクロックを供給するもので、電圧制御水晶発振器(Voltage-Controlled Crystal Oscillator)24は、CPU21からの制御によりPLD22のクロック周波数を狭い範囲で調整するものである。
【0032】
このような音声IP化装置において、PLD22は、CPU21およびコーデック13にクロック信号、同期信号を供給して、CPU21とコーデック13とのシリアル通信の速度を制御し、CPU21が受信しRTPパケット受信バッファ12に格納したデジタル音声データは、シリアル通信によりコーデック13に送られ、コーデック13が変換したデジタル音声データはシリアル通信によりCPU21に送られ、RTPパケット送信バッファ14に格納される。
【0033】
このとき、CPU21は、RTPパケット送信バッファ14の状況を監視し、RTPパケット送信バッファ14の使用量に応じて電圧制御水晶発振器24を制御して、コーデック13との間のシリアル通信の速度を微調整している。
【0034】
また、上述したように、有無判定部16は、RTPパケット受信部11がRTPパケット受信バッファ12に出力する信号を監視していて、RTPパケット受信部11からRTPパケット受信バッファ12にデータが出力されると、RTPパケットを受信したと判断して、汎用ポート21bのDO端子の出力をオンにする。
【0035】
また、上述したように、RTPパケット送信部15は、汎用ポート21bのDI端子からの入力を監視しており、DI端子の入力がオンになると、RTPパケット送信バッファ14からデジタル音声データを読み出して、読み出したデジタル音声データをデータとするRTPパケットを生成し、IP網を介して送信する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態の音声IP化装置を示す図であり、そのブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態の音声IP化装置を示す図であり、その具体的な構成例を示すブロック図である。
【図3】プレス信号がオンの間だけ音声信号を送信するような無線機の例を示す図である。
【図4】無線機をIP網を介して遠隔から操作する場合の構成例を示す図である。
【図5】従来の音声IP化装置の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0037】
11 RTPパケット受信部
12 RTPパケット受信バッファ
13 コーデック
14 RTPパケット送信バッファ
15 RTPパケット送信部
16 有無判定部
21 CPU
21a シリアルポート
21b 汎用ポート
22 PLD(Programmable Logic Device)
23 発振回路
24 電圧制御水晶発振器
3 無線機
31 スイッチ
32 マイク
33 スピーカ
34 アンテナ
4 音声IP化装置
41 RTPパケット受信部
42 RTPパケット受信バッファ
43 コーデック
44 RTPパケット送信バッファ
45 RTPパケット送信部
46 TCPパケット受信部
47 TCPパケット送信部
5 IP網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信したパケットからデジタル音声データを取り出し、パケット受信バッファに格納するパケット受信部と、受信したデジタル音声データを一時的に格納するパケット受信バッファと、パケット受信バッファに格納されているデジタル音声データをアナログ音声信号に変換して出力するとともに、入力されたアナログ音声信号をデジタル音声データに変換してパケット送信バッファに格納するコーデックと、コーデックで変換されたデジタル音声データを一時的に格納するパケット送信バッファと、入力端子がオンの間パケット送信バッファのデータをパケット化して送信するパケット送信部と、パケット受信部がパケットを受信したかどうかを判定し、パケットを受信したとき出力端子をオンにする有無判定部とを備えることを特徴とする音声IP化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−154157(P2008−154157A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342571(P2006−342571)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】