説明

音情報の処理・利用システム

【課題】 携帯端末を有する者が発したハミング、歌声等を適正かつ正確な音階の楽曲に構成し、この楽曲を着信メロディー等に利用する。
【解決手段】 端末1を介して発信された発信者の歌声、ハンミング等は管理者2の音声解析手段4を介して楽譜データ5が付与され、かつ音楽化処理手段6において、リズムデータ7、楽器データ8、スキャット処理手段10により、適正な音節及び正確な音階を有する所望の楽曲、即ち、歌、ハミング、楽器の演奏音等に変成される。このようにして変成された楽曲等の音楽は音楽データ11として、端末機所有者毎にファイルされて保存される。端末機所有者は、このようにして蓄積された自己の音楽データのうちから所望の楽曲を選択して自己の携帯端末の着信メロデーィとして利用する等、適宜利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯電話等の通信端末機を用いて、人の歌声、ハミング、自然の音、人工の音等をデータ化し、電話等の通信時にこれらのデータ化された音を適宜利用することができるよう構成したシステムであって、より詳細には音声処理を行いかつこの処理を行った音データを利用するシステムである。
【背景技術】
【0002】
電話機能を中心とした従来の携帯電話も昨今では多数の情報対象にアクセスできる多機能端末機として機能するよう構成されているものが多くなり、この多機能性を生かして各種のサービスが提供されている。
【0003】
この様な技術的背景の下、発明者等は携帯電話等の通信端末(以下実施例も含めて「端末機」とする)を利用して端末機所有者等が自己の鼻唄、ハミング等の人声、或いは波の音、小鳥のさえずり、川の流れの音等の自然の音、更にはアナウンスを含めた空港内の音や競技場等の音等の人工的な音をデータ化し、かつ人声では適宜音楽的に処理し、この音データを電話の着信音や自己聴取用に利用するシステムを発明した。
【0004】
発明者等は上記観点から先行記述を調査したが、このような技術的目的に立脚して成された先行技術は発見されなかった。
下記文献は本願発明とは技術目的及びその構成も異なるものであるが、携帯電話等の端末機を利用する点と音声処理を行っている点において一応の共通項が認められるものである。
【特許文献1】特開2005−208394
【特許文献2】特開2004−301884
【特許文献3】特開2004−310054
【0005】
上記文献のうち、特許文献1は合成音声により歌声を生成するシステムであって、本願のような人の肉声等を楽曲処理する場合と逆の関係にあるシステムであり、特許文献2は端末機にカラオケ機能を持たせるようにして歌にカラオケを重畳したものであり、また特許文献3は人の歌声にBGM(バック・グラウンド・ミュージック)を重畳させてファイル化するものであり、これも一種のカラオケシステムである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来技術とは異なり、人が適宜に(或いは「適当」に)発声した歌声、ハミング(鼻唄)、スキャット等の音声を、音声解析して、音楽的に適正な楽節、音階からなる音声に近似させ、この処理音声をデータ化し、かつ人声の他の自然音、人工音も収録編集することにより、これらの音データを電話着信時の着信音として利用する等、適宜利用可能なシステムを得ることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明は基本的に以下の構成を有している。
即ち、本システムは携帯電話等の端末機と、この端末機が電話等の通信を行う場合に、所謂通信電話会社等の通信システムを管理する者(以下実施例をも含めて「管理者」とする)との間に成立するシステムであって、端末機は通常の携帯電話と同様、マイクロフォン等の音声を入力する手段を有し、かつ管理者は受信した音声を解析する手段と、解析された音声データを楽曲に編集する手段と、編集された楽曲データをストックしたデータベースとを有する第1の構成と、
端末が発信するのは自然音或いは人工音であって、これらの音を分類する手段と、分類された音を格納する手段と、格納した音を目的に応じて適宜出力する手段とを有し、要すれば前記第1の発明における楽曲を出力するときにこの出力される楽曲に対して、選択された自然音或いは人工音を重畳させる手段とを有することを特徴とする第2の構成から成るものである。
【発明の効果】
【0008】
端末機所有者が発した音声が適正な楽曲になったり、収録した自然音や人工音を用いた音データを利用して、システム利用者は唯一無二の音データを作成し、この音データを着信音等に適宜利用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
端末機は携帯電話とし、管理者はこの携帯電話の通信事業を行う携帯電話会社とすることにより、携帯電話により本発明の内容を現時点のシステムをそのまま用いて実施することが可能である。
【実施例1】
【0010】
以下本発明の実施例を図面を参考に説明する。
図1は本発明の第1の構成を示す。
本発明は特定の個人が所有する端末機1と、この端末機1の通信システムを統括する管理者2との間に構成されるシステムである。
【0011】
先ず端末機1の所有者はこの端末機1を用いて自己の音声をハミング或いはスキャット、場合によっては歌声等の音声情報としてとして端末機1に入力する。この場合、後述の手段により音声情報は既存の曲も当然処理可能であるが、所有者が自分が思うままに口ずさんだハミング或いはスキャットであれば、最終的な音楽データが所有者のオリジナルとなるため本システムの効果をより一層発揮することができる。
【0012】
端末機1に入力された音声情報はリアルタイムに、或いは端末機1に一端録音された後に管理者2のシステムに送信される。送信された音声情報は1/Oポート3を経て音声解析手段4に入力される。この音声解析手段4は入力した音声情報を例えばフーリエ変換してデジタル化し、音の高低情報をグラフ化或いは数値化する。
【0013】
次にこの音高低情報は楽譜データ5により音譜で表現可能な音情報に処理され、音楽化処理手段6に入力される。音楽化処理手段6においては楽譜表現された音情報を、音楽の構成に則して小節等が割り振られ、元の音情報に近似させながら正確な楽曲構成を持った音情報に再構成される。
【0014】
音楽化処理手段6における楽曲の構成においては、リズムデータ7、楽器音データ8、人声データ9等を用いて所望の楽曲に構成することが可能である。例えばリズムデータ7から所定のリズムを選択して、例えば楽曲をタンゴにしたりボレロにしたりワルツにしたりすることが可能である。またこの楽曲に対して楽器音データ8のデータを用いてピアノのタンゴ、バイオンリンのワルツにする等の編曲が自由に設定できる。
【0015】
また、この楽曲を人声データ9から女性の声又は男性の声とし、さらにその声をソプラノ、アルト、ベース等と設定することもできる。更にスキッャット処理手段10を起動させることによりこの人声楽曲を「ルルルルルル」「ララララララ」等の発音により音階を成すスキッャットに構成することも可能である。このように構成された人声楽曲は音楽データ11として格納され、例えば着信音として端末機1にダウンロードされたり、この端末機1の所有者が端末機1を用いて管理者2側に格納されている各種の音楽データを聴取するなど色々な利用が可能となる。
【0016】
図2は上記構成におけるシステムの実施状態の一例を示すものである。
即ち、管理者2において特定の端末機所有者からの音情報を音楽化をする旨の音楽化設定情報が受信(SA1)されたならば、この音情報が図1に示す音楽化処理システムに出力されるようセットされ、この状態でハミング等の音情報が入力される(SA2)。なお、音楽化設定情報は発信者が音情報を送る前に、予め定められたコードを管理者に発信する等により設定できる。
【0017】
以後は、音声解析手段4において受信した音情報を解析し(SA3)、楽譜データ5を用いて解析した音情報を楽譜化処理する(SA4)。さらに楽譜化処理された音情報に対して前記リズムデータ7、楽器音データ8、人声データ9、スキャット処理手段10等のデータを加えて所望の楽曲データを合成し(SA5)、音楽データを作成する(SA6)。
【0018】
この音楽データはサンプルデータとして発信者に送信される(SA7)。発信者は送信されてきた楽曲サンプルの評価を行い(SA8)、よければ音楽データ11として設定され、気に入らなければ、例えば楽器音をバイオリンからピアノに変更したり、リズムをワルツからボレロにする等の指定を行う。管理者2側のシステムはこの指定に対応して再度音楽データ6を作成し、最終的に発信者が了承したならば音楽データ11として設定する(SA9)。
【実施例2】
【0019】
図3は第2の実施例を示す。
前記実施例が人の音声を処理するものであるのに対して、本実施例は自然音、人工音等を処理するシステムとして構成されている。
【0020】
先ず自然音とは例えば川の流れの音(せせらぎ)、波の音、虫の音、雨垂れ等自然の営みにより発生する音を指し、人工音とは人の営みにより発生する音であるが、データとして記録し利用するものである以上、騒音等のように人が不快に感じる音は対象から除外される。この様な点から人工音は競技場での歓声を中心とした音、ジェット音を背景とした空港のアナウンス音等ある程度限られたものとなると考えられる。また当然のことながら自然音も聞き心地のよいものが中心となる。
【0021】
端末機1の所有者は、例えば海岸において波の音を収録し、この収録した音を管理者2に出力する。出力した音情報はI/Oポート3を経て情報処理手段12に入力される。この場合、入力された音情報12aは例えば前記実施例の音声解析手段4におけるようにフーリエ変換して波形分析し、この波形分析結果と予め入力しておいた波形パターンから波の音、風の音、虫の音等の分類を行いこの分類情報12bに基づいて分類コード付与手段13により分類コード14を付して音データベースに格納する。
【0022】
また、入力した音情報が当該情報処理手段12において分類できなかった場合には、端末機1の利用者に対して「送信された音情報が分類出来なかった」旨の情報を例えば電子メールで送信する。この場合送信者は理者との間で予め取り決められたコードをい用いて、送信した音情報の種類を送信する。たとえば数字の1は自然音、2は人工音に分類し、次に自然音1を前提として1は川の音、2は波の音、3は風の音・・・・・・、同様に人工音2を前提として、1は空港、2はサッカー場、3は自動車レース場・・・・等と設定しておく。これにより例えば電子メールで1−1と送信すればこの音情報は自然音でかつ川の音、また2−3とすれば人工音でかつ自動車レース場の音と指定できる。情報処理部12はこの指定情報に基づいて分類不能であった音情報を分類して音データベース15にその分類コードと共に格納する。
【0023】
16は用途別データであって音データベース15に格納されている音情報をその用途に対応して引き出して利用するよう予め設定されている。より具体的には端末機1の利用者が、例えば波の音を着信音として利用したい場合に、利用者は用途別利用情報17を管理者2に出力する。管理者2側はこの用途別利用情報17に基づいて音データベース15から所定の音情報を引出し、端末機1に出力する。端末機1の利用者はこの音情報を着信音としてインストールし、以後着信音として利用する等である。またこの場合、単に収録した音情報だけでなく、前記実施例で作成した音楽データ11のうち所望の音楽データをこのこの音情報に重畳して着信音とする等、音情報の加工も可能である。符号18はこの音楽データ11から出力された特定の音楽情報を着信音に重畳させるための重畳手段である。以上の各構成が、主として音情報を分類、蓄積、或いは加工する部分であって、図の点線で区分された部分の上部側の設定部に対応する構成である。
【0024】
一方、上記設定部に蓄積された音情報は例えば次のように利用される。
端末機1の利用者は、管理者2において蓄積された音情報の利用形態を利用情報19として管理者2に出力する。この利用情報19により管理者2のシステムのうち利用部は、音情報の利用形態を確認し、その利用形態に対応した音情報を音データベース15から引出し、かつ用途別データ16において各音情報を用途を設定し、更に用途に対応した音情報の送信先を送信先決定手段20により決定し、決定された送信先に送信する。
【0025】
例えば、音情報の送信先が端末機1の利用者の通話先である場合にはこの端末機1の通話先である第三者の端末機21にこの音情報を送信する。また端末機1の利用者が、例えば就寝する前に波の音を聞きたい等の理由で利用情報19を出力したときは、音データベース15から選択された波の音情報を用途別データの「自己利用」に設定し、かつ送信先決定手段20を介して端末機1に出力する等である。
【0026】
図4は図3に示す構成の実施状態の一例を示すフロー図である。
同図において、管理者2側において、端末機1で収録された分類情報を受信し(SB1)、かつこれに続いて或いは同時に音情報が受信される(SB2)。各音情報は前記分類情報に対応したコードが付与され(SB3)、音データベース15が作成される (SB4)。
【0027】
次に用途別利用情報17を受信したとき(SB5)は、この用途別利用情報17に対応した音データを音データベース15から引出して用途別データを作成し(SB6)、かつ音楽データの付加要求があるか否かを確認し(S7)、音楽データの付加要求がある場合には音楽データの付加を行った音データを、またこの要求がない場合にはそのままの音情報を用途別データとして記録することにより設定を完了する(SB9)。
【0028】
この状態において端末機1の利用者から利用情報17を受信したならば(SB10)、利用別データ16からその利用情報に対応したデータを選択し(SB11)、送信先決定手段20においてこの利用情報に対応した送信先を選定し(SB12)、選定された送信先に選択された音情報を送信する(SB13)。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係るシステムはモバイル端末の全ての種類で実施可能であるが、特に携帯電話機能を中心とした端末で最も効果的に実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施例を示す人声を処理・利用するシステムを構成するブロック図である。
【図2】図1に示すシステムの利用状態の一例を示すフロー図である。
【図3】本発明の第2の実施例を示す自然音・人工音を処理・利用するシステムを構成するブロック図である。
【図4】図3に示すシステムの利用状態の一例を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0031】
1 端末機
2 管理者
3 I/Oボート
4 音声解析手段
5 楽譜データ
6 音楽化処理手段
7 リズムデータ
8 楽器音データ
9 人声データ
10 スキャット処理手段
11 音楽データ
12 情報処理手段
12a 音情報
12b 分類情報
13 分類コード付与手段
14 分類コード
15 音データベース
16 用途別データ
17 用途別利用情報
18 重畳手段
19 利用情報
21 第三者の端末機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯電話機能を有する端末機とこの端末機の機能を管理する管理者との間に成立するシステムであって、端末機を介して管理者に送信される音データは、ハミング、スキャット、歌声等の人声であり、管理者側には送信された人声を解析する音声解析手段と、音声解析手段で解析された音声データを、音楽を構成する規約に則って当該音声データに近似して改編する音楽化処理手段と、この音楽化処理手段から出力された音楽データを蓄積する手段とを有し、蓄積された音楽データのうちから端末機利用者の要求に応じて、所定の音楽データを所定の対象に出力するよう構成したことを特徴とする音情報の処理・利用システム。
【請求項2】
前記音楽化処理手段にはリズムデータを格納した手段が接続し、音楽化処理された音楽データを選択された特定のリズムで構成するようにしたことを特徴とする請求項1記載の音情報の処理・利用システム。
【請求項3】
前記音楽化処理手段には楽器音データを格納した手段が接続し、音楽化処理された音楽データを特定の楽器音で構成するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の音情報の処理・利用システム。
【請求項4】
前記音楽化処理手段には人声データを格納した手段が接続し、音楽化処理された音楽データを特定の人声で構成するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の音情報の処理・利用システム。
【請求項5】
携帯電話機能を有する端末機とこの端末機の機能を管理する管理者との間に成立するシステムであって、端末機を介して管理者に送信される音データは、自然音又は人工音であり、管理者側には送信された自然音又は人工音に対してその種類毎に分類するコードを付与する手段と、分類された音情報をこのコードに基づいて格納する音データベースと、端末機利用者から発信される用途別利用情報により前記分類された音情報を用途別に区分する用途別データとを有し、蓄積された音データのうちから端末機利用者の要求に応じて、所定の音データを所定の対象に出力するよう構成したことを特徴とする音情報の処理・利用システム。
【請求項6】
前記用途別データを蓄積した手段に対して音楽データを重畳させる手段が接続することを特徴とする請求項5記載の音情報の処理・利用システム。
【請求項7】
前記用途別データに対しては管理者に出力された利用情報に対応して送信先を決定する手段が接続し、端末機利用者の利用情報に対応して所定の音情報を所定の送信先に送信するよう構成したことを特徴とする請求項5又は6記載の音情報の処理・利用システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−44162(P2010−44162A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207004(P2008−207004)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(592082527)井上電気株式会社 (3)
【Fターム(参考)】