説明

音感訓練装置及び音感訓練プログラム

【課題】ゲーム性の向上を図ると共に高度な音感トレーニングを行うことができる音感訓練装置を提供する。
【解決手段】 親となる端末T1は、生成した課題データを演奏制御部18から発音させて問題の提示を行い、正解したら、その課題データを修正して他の1台の端末T2にローカル通信ネットワークを介して送信する。課題データを受信した端末T2は、同様に課題の提示を行い、正解したらさらにその課題を修正して他の1台の端末T3に送信する。以上を繰り返し、課題データが端末T1〜TNに順番に転送される。そして、最後の1台の端末TNが、課題データを受信すると、同様に課題の提示を行い、正解したらその課題を修正して最初の1台の端末T1に送信する。この最初に課題データを生成した端末T1には、N台分の端末T2〜TNにて修正された課題データが戻ってくる。このループを誰かが不正解となるまで繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音感訓練装置及び音感訓練プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子鍵盤楽器を始めとする電子音楽装置のアプリケーションとして音感(聴感)トレーニング(音当てゲーム)がある。このトレーニングでのゲーム性を向上させた一例として特許文献1に記載された音楽ゲーム装置が提案されている。この音楽ゲーム装置は、複数人交替で演奏され、以前の人が演奏して「いない」音を弾けば正解、演奏してしまった場合不正解とするゲームができるようになっている。
【0003】
また、上記音楽ゲーム装置は、複数人交替で演奏され、前の人が弾いたフレーズ(音)を完全に弾き、かつ、以前に発音されていない音を押したら正解とするゲームもできるようになっている。さらに、上記音楽ゲーム装置は、複数人交替で演奏され、最初の人が弾いたフレーズを完全に弾けば正解とするゲームもできるようになっている。
【特許文献1】特開平10−314443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の音楽ゲーム装置は、一つの装置を交替で演奏する必要がある。このため、前の人が演奏している姿を次の人が見てしまい、視覚に頼ってしまい音感トレーニング(訓練)には適さないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記のような問題点に着目し、ゲーム性の向上を図ると共に高度な音感トレーニングを行うことができる音感訓練装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、各種操作が行われる操作子群と、演奏データに応じた音を発生させる発音手段とを備えた音感訓練装置において、他の装置との通信を可能とする通信手段と、前記操作子群の操作によって親モード及び子モードに何れか一方のモード選択を可能とするモード選択手段と、前記親モードが選択されているとき、前記演奏データから構成される課題データを生成する課題生成手段と、前記子モードが選択されているとき、前記通信手段に前記他の装置から送信される課題データを受信させる課題受信手段と、前記生成又は前記受信された課題データに応じた音を前記発音手段に発生させて問題を提示する問題提示手段と、前記操作子群に音高及び/又は音色を割り当てる割当手段と、前記問題提示後かつ前記割当後に前記操作子群の操作によって入力された演奏データ、及び、前記生成又は前記受信された課題データ、の両データを比較して一致しているときは正解と判定し、一致していないときは不正解と判定する判定手段と、前記判定手段により正解と判定されると前記通信手段に前記生成又は前記受信された課題データを送信させる課題送信手段と、を備えたことを特徴とする音感訓練装置である。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記判定手段により正解と判定された後であって前記課題送信手段により前記課題データを送信させる前に、又は、前記課題受信手段により前記課題データが受信された後であって前記問題提示手段により前記問題を提示する前に、前記生成又は前記受信された課題データを修正する修正手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の音感訓練装置である。
【0008】
請求項3記載の発明は、各種操作が行われる操作子群と、演奏データに応じた音を発生させる発音手段とを備えた音感訓練装置内に備えられたコンピュータのプログラムであって、前記コンピュータに、前記操作子群の操作によって親モード及び子モードに何れか一方のモード選択を可能とする工程と、前記親モードが選択されているとき、前記演奏データから構成された課題データを生成する工程と、前記子モードが選択されているとき、他の装置との通信を可能とする通信手段に前記他の装置から送信される課題データを受信させる工程と、前記生成又は前記受信された課題データに応じた音を前記発音手段に発生させて問題を提示する工程と、前記操作子群に音高及び/又は音色を割り当てる工程と、前記問題提示後かつ前記割当後に前記操作子群の操作によって入力された演奏データ、及び、前記生成又は前記受信された課題データ、の両データを比較して一致しているときは正解と判定し、一致していないときは不正解と判定する工程と、前記工程により正解と判定されると通信手段に前記生成又は前記受信された課題データを送信させる工程と、を行わせることを特徴とする音感訓練プログラムである。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、課題受信手段が通信手段に他の装置から送信される課題データを受信させ、課題送信手段が判定手段により正解と判定されると通信手段に生成又は受信された課題データを送信させるので、複数の装置間で課題データをバケツリレー方式で回して課題データを他のユーザと共有することができるため、ゲーム性が増し、持続的な訓練が期待できる。また、複数のユーザが各装置毎に操作を行うため相手の操作が見えない又は見え難くなり、高度な音感訓練を行うことができる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、修正手段が、判定手段により正解と判定された後でかつ課題送信手段により課題データを送信させる前に、又は、課題受信手段により課題データが受信された後であって問題提示手段により問題を提示する前に、生成又は受信された課題データを修正するので、ゲーム性の向上が図れると共に総じて音感(聴感)の訓練効果を増すことができる。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、コンピュータに通信手段を用いて他の装置から送信される課題データを受信させ、正解と判定されると通信手段を用いて生成又は受信された課題データを送信させるので、複数の装置間で課題データをバケツリレー方式で回して課題データを他のユーザと共有することができるため、ゲーム性が増し、持続的な訓練が期待できる。また、複数のユーザが各装置毎に操作を行うため相手の操作が見えない又は見え難くなり、高度な音感訓練を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の音感訓練装置を組み込んだ携帯電話端末の一実施の形態を示すブロック図である。図2は、N台の図1に示す携帯電話端末で構成された音楽ゲームシステムの概念図である。図1に示すように、携帯電話端末(以下端末と略記する)は各々、CPU11、ROM12、RAM13、ストレージ14、タイマ15、表示部16、操作部17、演奏制御部18、及び、通信部19を有し、これらはバスラインBLによって互いに接続されている。
【0013】
上記CPU11は、プログラムに従って各種の処理を行うコンピュータの一構成要素を成す処理手段である。ROM12は、CPU11が行う処理のプログラムなどを格納した読み出し専用のメモリである。RAM13は、CPU11での各種の処理過程で利用するワークエリア、各種データを格納するデータ格納エリアなどを有する読み出し書き込み自在のメモリである。
【0014】
ストレージ14は、SDカード等の着脱可能な記憶媒体である。タイマ15は、演奏データの発音時間、音間隔などを計測するものである。本発明の音感訓練プログラムは、上述したROM12、RAM13、ストレージ14などのメモリに格納されている。この音感訓練プログラムは、端末に予め組み込まれていても良いし、サーバから配信、購入したものでもよい。
【0015】
表示部16は、液晶ディスプレイなどの表示器16Aと、CPU11からの表示データに基づいて表示器16Aを駆動する駆動回路16Bとから構成されている。
【0016】
操作部17は、ユーザによって操作される操作子群17Aを有し、この操作子郡17Aの操作状態に応じた信号を出力する。操作子群17Aは、例えば10キー、方向キー、確定キー、ファンクションキーなどから構成されている。発音手段としての演奏制御部18は、不図示の音源手段(音楽生成手段)、スピーカ18Aを有し、CPU11からの演奏データに基づいて音楽信号を生成してスピーカ18Aを駆動し、演奏データに応じた音を発生させるものである。
【0017】
通信手段としての通信部19は、他の端末との無線通信を可能とするものである。この通信部19としては、例えばIrDA、IrSimple等のLAN用の赤外線通信回路、Bluetooth(登録商標)、IEEE802.11a/b/g等に対応した通信回路、又は、携帯電話端末本来の無線通信回路などから構成される。
【0018】
上記通信部19によって、図2に示すN台の各携帯電話端末T1〜TN(以下端末と略記する)は、互いにローカル通信ネットワーク(赤外線通信、Bluetooth、IEEE802.11a/b/g等)で相互に接続される。
【0019】
次に、上記端末T1〜TN間で行われる音楽ゲームの手順を図2を参照して簡単に説明する。まず、親となる最初の1台の端末T1が、例えば乱数を発生し、この乱数に応じた演奏データを課題データとして生成する。端末T1は、生成した課題データを演奏制御部18から発音させて問題の提示を行い、ユーザが操作子群17Aを操作して入力した演奏入力が、提示した課題に対して「正解」であれば、その課題データを修正して他の1台の端末T2にローカル通信ネットワークを介して送信する。
【0020】
課題データを受信した端末T2は、同様に課題の提示を行い、ユーザが操作子群17Aを操作して入力した演奏入力が、提示した課題に対して「正解」であればさらにその課題を修正して他の1台の端末T3に送信する。以上の動作により、課題データが端末T1〜TNに順番に転送される。そして、最後の1台の端末TNが、課題データを受信すると、同様に課題の提示を行い、ユーザが操作子群17Aを操作して入力した演奏入力が、提示した課題に対して「正解」であればその課題を修正して最初の1台の端末T1に送信する。最初に課題データを生成した端末T1には、N台分の端末T1〜TNにて修正された課題データが戻ってくる。端末T1〜TNは、ユーザが操作子群17Aを操作して入力した演奏入力が、提示した課題に対して「不正解」であればゲームオーバーとなり、音楽ゲームを終了する。
【0021】
次に、上記概略で説明した端末T1〜TNの詳細な動作について図3及び図4を参照して以下説明する。図3は、音感訓練プログラムに従いCPU11が行う処理手順を示すフローチャートである。図4は、音感訓練プログラムを実行したときの表示器16Aの表示遷移を示すフローチャートである。
【0022】
まず、操作子群17Aの操作によって音感訓練プログラムの実行が選択されると、CPU11は、ROM12、RAM13、ストレージ14などのメモリに格納された音感訓練プログラムを読み出して、音感訓練プログラムを実行する。まず、CPU11は、初期設定を行う(ステップS1)。この初期設定において、CPU11は、例えば音色の初期設定や、課題データを生成する際に用いる乱数系列の初期化を行う。
【0023】
次に、CPU11は、モード選択手段として働き、図4のステップS21に示すような画面を表示器16Aに表示させて、ユーザに操作子群17Aの操作によって親モード及び子モードの何れか一方のモード選択を促す(ステップS2)。操作子群17Aの操作によって親モードが選択されると(ステップS3で親)、CPU11は、課題生成手段として働き、課題データを生成する(ステップS4)。
【0024】
上記課題データは、SMF(Standard MIDI File)あるいはこれに類似した形式の演奏データで構成されている。演奏データは、イベントとして音楽再生情報(発音開始指示(NOTE ON)、発音終了指示(NOTE OFF)、音色指示(Prog.Chg.)等)と、イベント間の相対時間とから構成される。そして、演奏制御部18は、イベント間の相対時間が経過する毎に順次イベントを実行することで時系列的に演奏データに応じた発音を行う。
【0025】
ここで、この課題データの生成手順の一例について以下説明する。CPU11は、図5に示すように、課題データの構成音数、発音時間、音間隔、同時発音数、音色、音階を順番に乱数で決定する。詳しくは、CPU11は、まず構成音数を乱数で決定する。例えば、乱数3が発生すれば、構成音数を3と決定する。
【0026】
次に、CPU11は、発音時間を乱数で決定する。例えば構成音数が3に決定されている場合、CPU11は、3回乱数を発生させて、3音それぞれの発音時間を決定する(例えば、1音目は8分音符(テンポ120で0.25秒)、2音目は4分音符(テンポ120で0.5秒)、3音は4分音符など、ゲートタイムを符長で示す)。
【0027】
また、CPU11は、音間隔を乱数で決定する。例えば構成音数が3に決定されている場合、CPU11は、2回乱数を発生させて、1音目と2音目との間、2音目と3音目との間、それぞれの音間隔を決定する(例えば、1音目と2音目との間が4分音符、2音目と3音目との間が2分音符(テンポ120で1秒など)。なお、予め乱数には発音時間、音間隔が対応付けされている(図5に示す例では、乱数1には8分音符、乱数2には4分音符、乱数3には2分音符が対応付けてある)。
【0028】
また、CPU11は、同時発音数を乱数で決定する。例えば構成音数が3に決定されている場合、CPU11は、3回乱数を発生させて、3音それぞれの同時発音数を決定する。例えば、乱数が1、1、2の順で発生すれば、1音目の同時発音数を1、2音目の同時発音数を1、3音の同時発音数を2と決定する。
【0029】
また、CPU11は、音色を乱数で決定する。例えば、構成音数が3に、同時発音数が1、1、2の順で決定されている場合、CPU11は、4回乱数を発生させて各発音数それぞれの音色を決定する(例えば、1音目がピアノ、2音目がギター、3音目がトランペットとクラリネット)。なお、予め乱数には音色が対応付けされている(図5に示す例では、乱数1にはピアノ、乱数25にはギター、乱数57にはトランペット、乱数72にはクラリネットが対応付けてある)。
【0030】
また、CPU11は、音階を乱数で決定する。例えば、構成音数が3に、同時発音数が1、1、2の順で決定されている場合、CPU11は、4回乱数を発生させて各発音数それぞれの音階を決定する(例えば、1音目がレ、2音目がミ、3音目がドとソ)。なお、予め乱数には音階が対応付けされている(図5に示す例では、乱数1〜8それぞれに、ド、レ、ミ…が対応付けてある)。
【0031】
なお、図5に示す課題データは、構成音数、発音時間及び音間隔といったリズムと、同時発音数と、音色と、音階との4つの要素を当てる課題データを生成していたが、本発明はこれに限ったものではない。課題データとしては、構成音数、発音時間及び音間隔といったリズムと、同時発音数と、音色と、音階とのうち1つ又は複数の組合せを当てるようなものを生成すればよい。以下説明を簡単にするために、構成音数、発音時間及び音間隔といったリズムと、同時発音数と、音階との3つの要素を当てる課題データを生成する場合について説明する。
【0032】
フローチャートの説明に戻ると、ステップS2のモード選択により操作子群17Aの操作によって子モードが選択されると(ステップS3で子)、CPU11は、課題受信手段として働き、通信部19に他の端末から送信される課題データを受信させると共に図4のステップS22に示すような画面を表示器16Aに表示させて課題データ受信中の旨を報知する(ステップS5)。
【0033】
その後、課題データを生成又は受信すると、CPU11は、問題提示手段として働き、図4のステップS23に示すような画面を表示器16Aに表示させて問題提示を予告した後、生成又は受信した課題データに応じた音を演奏制御部18に発生させて問題を提示する(ステップS6)。
【0034】
その後、CPU11は、割当手段として働き、操作子群17Aに音高及び/又は音色を割り当てた後、図4のステップS24に示すような画面を表示器16Aに表示させてその割当を報知する(ステップS7)。次に、CPU11は、ユーザが操作子群17Aを操作して演奏データを入力すると(ステップS8で入力開始)、判定手段として働き、操作子群17Aの操作によって入力された演奏データ、及び、生成又は受信された課題データ、の両データを比較して一致しているときは正解と判定し、一致していないときは不正解と判定する(ステップS9)。
【0035】
詳しくは、ステップS9において、CPU11は、最初に操作されてから入力終了(図4のステップS24の例だと「0」のキーを押した時点)までの操作子群17Aの操作を時系列的に記憶し、課題データと同様の演奏データに変換する。また、CPU11は、操作子群17Aの操作に応じた発音指示イベントを演奏制御部18に出力して操作された音の発生を行わせる。CPU11は、この変換した課題データと生成又は受信された課題データとを比較して判定を行う。
【0036】
CPU11は、判定結果が正解であれば(ステップS10でY)、図4のステップS25に示す画面を表示器16Aに表示させて正解である旨を報知した後に、親モードであるか子モードであるか判断する(ステップS11)。そして、CPU11は、親モードである場合(ステップS11で親)、子モードに設定し直した後に(ステップS12)、ステップS13に進む。一方、子モードである場合(ステップS11で子)、直接ステップS13に進む。
【0037】
ステップS13においてCPU11は、修正手段として働き、生成又は修正した課題データを修正する。次に、この課題データの修正手順の一例について以下説明する。先ず、CPU11は、ステップS4と同様に動作して新たな課題データを生成し、その新たな課題データを生成又は受信した課題データの末尾に付加するように修正する。
【0038】
また、別の修正方法として、CPU11は、生成又は受信した課題データの構成音数を増やして、その構成音数の課題データを新たに生成するように修正する。例えば生成又は受信した課題データの構成音数が3であった場合、構成音数を4にして、その後、ステップS4と同様に動作して、発音時間、音間隔、同時発音数、音色、音階を乱数で生成する。
【0039】
その後、CPU11は、課題送信手段として働き、図4のステップS26に示す画面を表示器16Aに表示させて課題データを送信する旨を報知した後に、通信部19に修正した課題データを送信させた後(ステップS14)、ステップS5に戻る。ここで、他の端末に課題データを転送する際には、通信部19の仕様に従って、周知の通り通信部19の機能を利用して、他の端末とのコネクションの確立などを行う。また、ステップS14においては、CPU11は、ユーザから送信操作があって始めて課題データを送信しても良いし、自動的に所定期間(数秒間)、コネクションの確立とデータ転送の試行を繰り返し行うようにしても良い。
【0040】
これに対して、ステップS6の問題提示後、一定時間経過しても演奏データが入力されなかったり(ステップS8でタイムアウト)、ステップS9で不正解であると判定されると(ステップS10でN)、図4のステップS27に示す画面を表示器16Aに表示させて不正解である旨を報知すると共にゲームを継続するか否かを選択させる(ステップS15)。そして、ユーザによりゲームを継続する旨の操作が行われると(ステップS15でY)、ステップS3に戻る。このとき、本端末を自動的に「親モード」に設定するようにしてもよい。一方、ゲームを終了する旨の操作が行われると(ステップS15、S21でN)、音感訓練プログラムを終了させる。
【0041】
上述した端末によれば、CPU11が通信部19に他の端末から送信される課題データを受信させ、課題データと操作子群17Aによって入力された演奏データとが一致して正解と判定されると通信部19に生成又は受信された課題データを送信させるので、複数の端末T1〜TN間で課題データをバケツリレー方式で回して課題データを他のユーザと共有することができるため、ゲーム性が増し、持続的な訓練が期待できる。また、複数のユーザが各端末T1〜TN毎に操作を行うため相手の操作が見えない又は見え難くなり、高度な音感訓練を行うことができる。
【0042】
また、上述した端末によれば、CPU11が、正解と判定した後(ステップS10でY)でかつ課題データを送信させる前(ステップS14)に、生成又は受信された課題データを修正する(ステップS13)ので、ゲーム性の向上が図れると共に総じて音感(聴感)の訓練効果を増すことができる。また、上述したように新たな課題データを追加したり、課題データの構成音数を増やす修正の場合は、正解すればするほど問題の難易度が増してよりゲーム性の向上を図ることができる。
【0043】
なお、上述した実施形態では、通信部19として、他の端末と直接的に通信を可能とするものを用いていたが、本発明はこれに限ったものではない。通信部19としては、例えば広域ネットワーク上のサーバを中継して間接的に他の端末と通信を可能とするものであってもよい。
【0044】
また、上述した実施形態では、端末T1〜TNは、演奏入力に基づく演奏データと課題データとを対比して演奏データが不正解であると判定した場合、ゲームを終了していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、演奏入力に基づく演奏データと課題データとを対比して演奏データが不正解であると判定した場合に、端末T1〜TNは再度解答する機会を与えてもよい。この場合、課題データを再提示する際に、課題データの各発音タイミングに合わせて、表示器16Aに音階を表示するなどヒントを表示するようにしてもよい。
【0045】
また、上述した実施形態では、構成音数、発音時間及び音間隔といったリズムと、同時発音数と、音階との3つの要素を当てる課題データを生成していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、構成音数、発音時間及び音間隔といったリズムと、同時発音数と、音色とを当てるような課題データを作成してもよい。この場合、操作子群17Aの10キーに各音色(ピアノ、オルガン、ギター、バイオリン、トランペット、クラリネットなど)をそれぞれ割り当てるようにしてもよい。
【0046】
また、図5に示すように、構成音数、発音時間及び音間隔といったリズムと、同時発音数と、音色と、音階との4つの要素を当てる課題データを生成したときは、例えば3音色の場合、各10キーに対して、1〜3にピアノ、4〜6にオルガン、7〜9にバイオリン、1、4、7をド、2、5、8をミ、3、6、9をソに割り当てる。
【0047】
また、上述した実施形態では、課題データと演奏データとが完全に一致したときに正解と判定していたが本発明はこれに限ったものではない。例えば、図6に示すように、正解との判定基準を複数段階に変更できるようにしてもよい。その場合、ステップS2のモード選択時に判定基準を選択できるようにしてもよいし、課題のクリア状況に応じて自動的に上げ下げするようにしてもよい。
【0048】
これにより、図6に例示するように演奏データと課題データとが同時音数でのみ一致している場合でも、判定基準10、11に設定されているときは正解にすることができる。
【0049】
ここで、上記判定基準の選択を含めた発明の要旨をまとめると以下のようになる。
各種操作が行われる操作子群と、演奏データに応じた音を発生させる発音手段と、演奏データから構成される課題データに応じた音を前記発音手段に発生させて問題を提示する問題提示手段と、前記操作子群に音高及び/又は音色を割り当てる割当手段と、前記問題提示後かつ前記割当後に前記操作子群の操作によって入力された演奏データ、及び、前記課題データ、の両データを比較して一致しているときは正解と判定し、一致していないときは不正解と判定する判定手段とを備えた音感訓練装置において、
複数段階設定された判定基準の一つを選択する判定基準選択手段をさらに備え、そして、
前記判定手段が、前記選択した判定基準に応じて前記判定を行うものである
ことを特徴とする音感訓練装置。
【0050】
このように、判定基準選択手段が、複数段階設定された判定基準の一つを選択し、判定手段が、選択した判定基準に応じて判定を行うことにより、下の方の判定基準であれば操作が不慣れであったり音感が十分にトレーニングされていないユーザであっても(多少の間違いには目をつぶり)正解することができる。
【0051】
また、判定基準を複数段設定する以外にも例えば、特定の音階に対して組み合わされるパラメータ幅を制限することにより、(例えば、ミの発音にはピアノとオルガンしか設定できない、など)音色をヒントに音階を特定して操作(演奏)することも可能である。
【0052】
また、上述した実施形態では、正解したら課題データのみを転送していたが本発明はこれに限ったものではない。例えば、音色・音高の割当マップに関する情報(各ボタンに割り当てる音高あるいは音色の情報)や上記判定基準に関する情報を合わせて転送するようにしてもよい。また、ショートメッセージを合わせて転送するようにしてもよい。このショートメッセージは転送先で正解したときのみ表示するようにすればゲーム性の更なる向上が期待できる。
【0053】
また、不正解だった場合ヒントを表示して、再解答の機会を与えてもよい。この場合、課題データの再提示乃至再解答にて正解と判定された場合には、正解時に表示するショートメッセージの一部を隠して(例えばショートメッセージが「おめでとう」という文字列の場合、「お○で○う」)表示するようにしてもよい。
【0054】
また、上述した実施形態では、複数の端末T1〜TN間で課題データをバケツリレー式に転送していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、スタンドアローンで動作できるようにしてもよい。この場合、正解した後に他の端末に転送する代わりに自機において課題の再提示を行えばよい。また、課題データを他の複数の端末へ同時に送信(あるいは複数回送信)してもよい。
【0055】
また、上述した実施形態では、乱数を発生させて課題データを自動的に修正していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、ユーザの操作子群17Aの操作によって課題データを修正できるようにしてもよい。
【0056】
また、上述した実施形態では、課題データの修正を送信元の端末、即ち、正解と判定された後であって課題データを送信させる前に行っていたが、本発明はこれに限ったものではない。課題データの修正は受信先の端末、即ち、課題データが受信された後であって問題を提示する前に修正してもよい。
【0057】
また、上述した実施形態では、音感訓練装置として携帯電話端末を想定して説明していたが、本発明はこれに限ったものではない。他の装置(例えばポータブルゲーム機等ワイヤード/ワイヤレスを問わず、他の同種の装置とローカルな通信を行えるもの)でもよい。また、タッチパネル操作に応じて音高(音色)を指定するようなものであってもよい。
【0058】
また、上述した実施形態では、ステップS13で課題データを修正していたが、本発明はこれに限ったものではない。点線で示すように課題データを修正せずにそのまま課題データを送信するようにしてもよい。
【0059】
また、上述した実施形態では、親端末T1は、課題データを生成したら、その課題データをクリアしないと転送できなかったが、本発明はこれに限ったものではない。親端末T1は、課題データを生成したら直ぐに他の端末T1〜TNに課題データを送信するようにしてもよい。
【0060】
また、親となる端末は、課題データの生成と送信のみを行い、子となる端末は、受信した課題データの提示とユーザが操作子群17Aを操作して入力した演奏入力が提示した課題に対して「正解」か「不正解」かの判定のみを行えるように、親/子の機能を端末毎に分けてもよい。
【0061】
ここで、上記親子機能を分けた場合の発明の要旨をまとめると以下のようになる。
各種操作が行われる操作子群と、演奏データに応じた音を発生させる発音手段とを備えた音感訓練装置において、
他の装置との通信を可能とする通信手段と、
前記操作子群の操作によって親モード及び子モードに何れか一方のモード選択を可能とするモード選択手段と、
前記親モードが選択されているとき、前記演奏データから構成される課題データを生成する課題生成手段と、
前記親モードが選択されているとき、前記生成された課題データを前記通信手段に送信させる課題送信手段と、
前記子モードが選択されているとき、前記通信手段に前記他の装置から送信される課題データを受信させる課題受信手段と、
前記子モードが選択されているとき、前記受信された課題データに応じた音を前記発音手段に発生させて問題を提示する問題提示手段と、
前記子モードが選択されているとき、前記操作子群に音高及び/又は音色を割り当てる割当手段と、
前記子モードが選択されているとき、前記問題提示後かつ前記割当後に前記操作子群の操作によって入力された演奏データ、及び、前記生成又は前記受信された課題データ、の両データを比較して一致しているときは正解と判定し、一致していないときは不正解と判定する判定手段と、
を備えたことを特徴とする音感訓練装置。
【0062】
この場合も同様に、コンピュータに通信手段を用いて他の装置から送信される課題データを受信させるので、複数の装置間で課題データを同時に共有することができるため、ゲーム性が増し、持続的な訓練が期待できる。また、複数のユーザが各装置毎に操作を行うため相手の操作が見えない又は見え難くなり、高度な音感訓練を行うことができる。
【0063】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の音感訓練装置を組み込んだ携帯電話端末の一実施の形態を示すブロック図である。
【図2】N台の図1に示す携帯電話端末で構成された音楽ゲームシステムの概念図である。
【図3】音感訓練プログラムに従いCPUが行う処理手順を示すフローチャートである。
【図4】音感訓練プログラムを実行したときの表示器の表示遷移を示すフローチャートである。
【図5】課題データの生成手順を説明するための図である。
【図6】判定基準の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0065】
11…CPU(モード選択手段、課題生成手段、課題受信手段、問題提示手段、割当手段、判定手段、課題送信手段)、17A…操作子群、18…演奏制御部(発音手段)、19…通信部(通信手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種操作が行われる操作子群と、演奏データに応じた音を発生させる発音手段とを備えた音感訓練装置において、
他の装置との通信を可能とする通信手段と、
前記操作子群の操作によって親モード及び子モードに何れか一方のモード選択を可能とするモード選択手段と、
前記親モードが選択されているとき、前記演奏データから構成される課題データを生成する課題生成手段と、
前記子モードが選択されているとき、前記通信手段に前記他の装置から送信される課題データを受信させる課題受信手段と、
前記生成又は前記受信された課題データに応じた音を前記発音手段に発生させて問題を提示する問題提示手段と、
前記操作子群に音高及び/又は音色を割り当てる割当手段と、
前記問題提示後かつ前記割当後に前記操作子群の操作によって入力された演奏データ、及び、前記生成又は前記受信された課題データ、の両データを比較して一致しているときは正解と判定し、一致していないときは不正解と判定する判定手段と、
前記判定手段により正解と判定されると前記通信手段に前記生成又は前記受信された課題データを送信させる課題送信手段と、
を備えたことを特徴とする音感訓練装置。
【請求項2】
前記判定手段により正解と判定された後であって前記課題送信手段により前記課題データを送信させる前に、又は、前記課題受信手段により前記課題データが受信された後であって前記問題提示手段により前記問題を提示する前に、前記生成又は前記受信された課題データを修正する修正手段を
さらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の音感訓練装置。
【請求項3】
各種操作が行われる操作子群と、演奏データに応じた音を発生させる発音手段とを備えた音感訓練装置内に備えられたコンピュータのプログラムであって、
前記コンピュータに、前記操作子群の操作によって親モード及び子モードに何れか一方のモード選択を可能とする工程と、
前記親モードが選択されているとき、前記演奏データから構成された課題データを生成する工程と、
前記子モードが選択されているとき、他の装置との通信を可能とする通信手段に前記他の装置から送信される課題データを受信させる工程と、
前記生成又は前記受信された課題データに応じた音を前記発音手段に発生させて問題を提示する工程と、
前記操作子群に音高及び/又は音色を割り当てる工程と、
前記問題提示後かつ前記割当後に前記操作子群の操作によって入力された演奏データ、及び、前記生成又は前記受信された課題データ、の両データを比較して一致しているときは正解と判定し、一致していないときは不正解と判定する工程と、
前記工程により正解と判定されると通信手段に前記生成又は前記受信された課題データを送信させる工程と、
を行わせることを特徴とする音感訓練プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−134538(P2008−134538A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321786(P2006−321786)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】