説明

音程発生装置及び方法

【課題】初心者であっても所望の音程を容易に、かつ、正確に出すことができる音程発生装置及び方法を提供すること。
【解決手段】音程発生装置1は、本体部10及び当該本体部10と分離自在のコントローラ部20を少なくとも含んで成り、本体部10及びコントローラ部20はその間の距離を測定するために構成する一対の超音波発信部11、超音波受信部21を備え、ユーザによる本体部10及びコントローラ部20の離間、或いは近接操作を受け付けることにより、測定した距離が所定の範囲にある場合に対応する半音階毎の音程を決定し、決定した音程に基づいて電子サウンドを発生し、決定した音程を示す画像を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音程発生装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、音楽を奏でる楽器の中で電子楽器は、電子回路による演算によって波形信号を作り出し、音程、音量及び音色を制御することが知られている。代表的な電子楽器には、電子オルガン、電子ピアノ、シンセサイザー、テルミン等がある。
【0003】
このような電子楽器の中で、テルミンは、テルミン本体に手を接触させることなく、空間中の手の位置によって音程と音量とを調節することができる。このように、楽器の本体に手を接触させることなく音を発する電子楽器は、操作が一見簡単そうなのでさまざまに応用されている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載された発明は、鍵盤等を指で操作するための訓練が必要なく、簡単に音を発することができるようにすることを目的として、対象物との距離を測定する測距センサーと、音源手段と、音源手段を制御する制御回路とを備えている。そして、音階ド〜シに対応する7つの測距センサーが測定した距離に音源データ(オクターブ値、和音コード、効果音又は音の強弱)を対応させている。
【0005】
また、特許文献2に記載された発明は、音程及び音量を制御する媒体として電磁波を用いることなく、人の動きで楽音を制御することができる電子楽器を提供すること、複数の音を同時に発生させて制御することにより和音やユニゾンの演奏を可能にすることを目的として、音程用電極板と、音量用電極板と、楽音信号生成回路と、を備えている。そして、特許文献2に記載された発明は、人体との間の距離に応じて変化する音程用電極板の容量に応じた可聴周波数帯の楽音信号を発生し、この楽音信号の振幅を、人体との間の距離に応じて変化する音量用電極板の容量に応じて変化させるように構成している。
【0006】
特許文献3に記載された発明は、従来楽器のように指先の微妙な操作によって音階制御を行うような操作体験を得ることができることを目的として、測距手段と、音階データに変換する変換器とを備えている。そして、特許文献3に記載された発明は、ギター形状のものを例として、ネック部の所定位置の指までの距離を測定し、測定した距離を用いて音階を決定し、発音している。
【特許文献1】特開2001−117561号公報
【特許文献2】特開2007−155946号公報
【特許文献3】特開2006−145583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、テルミンでは、通常2本のアンテナがのびており、それぞれのアンテナに近付けた手によるわずかな静電容量の違いを演奏に利用するため、演奏環境に依存する部分が大きく、演奏前に綿密なチューニングを必要とし、演奏には熟練を要する。
【0008】
また、特許文献1の発明は、ド〜シに対応する7つの測距センサーが必要なので、手をかざした測距センサー以外の他の測距センサーがユーザの手を誤って認識する場合がある。特許文献2の発明は、人体との間の距離に応じて変化する音程用電極板の容量及び音量用電極板の容量に、応じた音程及び音量を発生するので、環境に依存し、常に安定した音程及び音量を発生するわけではない。特許文献3の発明は、超音波の反射波を使って距離を測定しているので、人差し指が押している場所を検出して欲しくても、他の指や、服のそで、ひじ等を誤検出する可能性がある。このため、所望の音を正確に発生するように操作することはそれほど容易なことではない。
【0009】
そこで、初心者であっても所望の音程を容易に、かつ、正確に出すことができる電子楽器が要望されている。
【0010】
更に、ゲーム等の音楽に用いられているPSG(Programmable Sound Generator)サウンドは、ゲームに慣れ親しんだユーザが特に好む音であるが、その音を音楽として奏でるための手頃な電子楽器が存在しない。そこで、初心者であっても所望の音程を容易に、かつ、正確に出すことができ、ゲームの音源チップを演奏できるユーザフレンドリーな操作インターフェースを持った電子楽器が要望されている。
【0011】
本発明は、初心者であっても所望の音程を容易に、かつ、正確に出すことができる音程発生装置及び方法を提供することを目的とする。
【0012】
更に、本発明は、ゲームの音源チップを演奏できるユーザフレンドリーな操作インターフェースを有する音程発生装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では、以下のような解決手段を提供する。
【0014】
(1) 音楽を奏でるための音程発生装置であって、前記音程発生装置は、本体部及び当該本体部と分離自在のコントローラ部を少なくとも含んで成り、前記本体部及び前記コントローラ部はその間の距離を測定する距離測定手段を構成する一対の超音波発信・受信装置を備え、ユーザによる前記本体部及び前記コントローラ部の離間、或いは近接操作を受け付けることにより、前記距離測定手段が測定した距離が所定の範囲にある場合に対応する半音階毎の音程を決定する音程決定手段と、前記音程決定手段が決定した音程に基づいて電子サウンドを発生する電子サウンド発生手段と、前記音程決定手段が決定した音程を示す画像を表示する表示手段と、を備えることを特徴とする音程発生装置。
【0015】
(1)の構成によれば、本発明に係る音程発生装置は、本体部及び当該本体部と分離自在のコントローラ部を少なくとも含んで成り、本体部及びコントローラ部はその間の距離を測定するために構成する一対の超音波発信・受信装置を備え、ユーザによる本体部及びコントローラ部の離間、或いは近接操作を受け付けることにより、測定した距離が所定の範囲にある場合に対応する半音階毎の音程を決定し、決定した音程に基づいて電子サウンドを発生し、決定した音程を示す画像を表示する。
【0016】
すなわち、本発明に係る音程発生装置は、ユーザによる本体部及びコントローラ部の離間、或いは近接操作を受け付けることにより、測定した距離が所定の範囲にある場合に対応する半音階毎の音程を決定するので、ユーザは、所定の範囲の距離にしさえすれば、所望の音程を半音階毎に正確に出すことができる。そして、本発明に係る音程発生装置は、決定した音程に基づいて電子サウンドを発生し、決定した音程を示す画像を表示するので、ユーザは、自らが演奏している音程が何であるかを視覚的に確認しながら演奏することができる。よって、ユーザが初心者であっても最初から所望の音程を出すことができる。また、ユーザは、当該確認した音程とその時の本体部及びコントローラ部の間の距離を容易に結びつけることができるので、操作している手の位置と音程との関係を容易に記憶することができる。したがって、本発明に係る音程発生装置は、初心者であっても所望の音程を容易に、かつ、正確に出すことができる。
【0017】
(2) 前記ユーザからの操作を受け付けることに応じて、前記電子サウンドの発生・停止を行う電子サウンド制御手段を更に備えることを特徴とする(1)に記載の音程発生装置。
【0018】
(2)の構成によれば、本発明に係る音程発生装置は、(1)において、ユーザからの操作を受け付けることに応じて、電子サウンドの発生・停止を行う電子サウンド制御手段を更に備える。したがって、本発明に係る音程発生装置によれば、ユーザは、初心者であっても所望の音程を容易に、かつ、正確に出し、更に容易に停止することができる。
【0019】
(3) 前記ユーザから電子サウンドにエフェクトをかける操作を受け付けることに応じて、前記電子サウンド発生手段が発生する電子サウンドにエフェクトをかけるエフェクト手段を更に備えることを特徴とする(1)又は(2)に記載の音程発生装置。
【0020】
(3)の構成によれば、本発明に係る音程発生装置は、(1)又は(2)において、ユーザから電子サウンドにエフェクトをかける操作を受け付けることに応じて、電子サウンド発生手段が発生する電子サウンドにエフェクトをかける。したがって、本発明に係る音程発生装置によれば、ユーザは、初心者であっても所望の音程を容易に、かつ、正確に出し、更に、エフェクトをかけることができる。
【0021】
(4) 前記電子サウンド発生手段は、PSGチップを少なくとも含んで成ることを特徴とする(1)から(3)のいずれか一に記載の音程発生装置。
【0022】
(4)の構成によれば、本発明に係る音程発生装置は、(1)から(3)のいずれか一において、電子サウンド発生手段は、PSGチップを少なくとも含んで成る。したがって、本発明に係る音程発生装置によれば、ユーザは、本体部及びコントローラ部の離間、或いは近接操作というユーザフレンドリーな操作インターフェースによって、ゲームの音源チップを演奏できる。
【0023】
(5) 本体部及び当該本体部と分離自在のコントローラ部を少なくとも含み、前記本体部及び前記コントローラ部の間の距離を測定するための一対の超音波発信・受信装置を備えた音程発生装置が音楽を奏でるための方法であって、ユーザによる前記本体部及び前記コントローラ部の離間、或いは近接操作を受け付け、前記超音波発信・受信装置により距離を測定するステップと、前記測定した距離が所定の範囲にある場合に対応する半音階毎の音程を決定するステップと、前記決定した音程に基づいて電子サウンドを発生するステップと、前記決定した音程を示す画像を表示するステップと、を有することを特徴とする方法。
【0024】
(5)の構成によれば、本発明に係る方法は、本体部及び当該本体部と分離自在のコントローラ部を少なくとも含み、本体部及びコントローラ部の間の距離を測定するための一対の超音波発信・受信装置を備えた音程発生装置が音楽を奏でるための方法であって、ユーザによる本体部及びコントローラ部の離間、或いは近接操作を受け付け、超音波発信・受信装置により距離を測定し、測定した距離が所定の範囲にある場合に対応する半音階毎の音程を決定し、決定した音程に基づいて電子サウンドを発生し、決定した音程を示す画像を表示する。したがって、本発明に係る方法によれば、音程発生装置によって、初心者であっても所望の音程を容易に、かつ、正確に出すことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、初心者であっても所望の音程を容易に、かつ、正確に出すことができる。
【0026】
更に、本発明によれば、ユーザフレンドリーな操作インターフェースによってゲームの音源チップを演奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。
【0028】
図1は、本発明の特徴を示す図である。本発明の一実施形態に係る音程発生装置1は、本体部10及び当該本体部10と分離自在のコントローラ部20を少なくとも含んで成る。そして、本体部10は、超音波発信装置として超音波発信部11と、距離測定手段として距離測定部12と、音程決定手段として音程決定部13と、電子サウンド発生手段として電子サウンド発生部14と、表示手段として表示部15と、を備え、コントローラ部20は、超音波受信装置として超音波受信部21を備えている。
【0029】
本体部10と、コントローラ部20とは、コントローラ部20からの信号を伝送する信号ケーブル22によって繋がっている。コントローラ部20と本体部10との距離は、信号ケーブル22の長さの範囲内でユーザの操作によって変化する。本体部10の、超音波を発信する超音波発信部11と、コントローラ部20の、超音波発信部11が発信した超音波を受信する超音波受信部21とは一対を構成する。
【0030】
距離測定部12は、超音波発信部11が超音波を発信した時から、超音波発信部11が発信した超音波を超音波受信部21が受信するまでの到達時間を計測し、計測した時間に基づいて距離を測定する。そして、超音波発信部11が定期的(例えば、10ms毎)に超音波を発信し、その都度、距離測定部12が距離を測定すれば、ユーザの操作によって移動するコントローラ部20と、本体部10との変化する距離を、逐次求めることができる。
【0031】
ここで、超音波とは、人間の耳には聞こえない高い振動数(例えば、20kHz以上)をもつ音波をいう。超音波の伝播速度は速度をV[m/s]、超音波が伝わる媒体の温度をT[℃]とすると、V=331.5+0.60714Tで表される。また、超音波発信部11と、超音波受信部21との距離をd[m]、超音波発信部11が発信した超音波が超音波受信部21に到達する到達時間をt[s]とすると、d=V×tで表される。よって、到達時間を正確に計測することにより、距離を測定することができる。例えば、気温15℃では、V=340.6071m/sであるから、距離1mでは到達時間が2.9359ms、1cmでは0.029359msである。例えば、到達時間を測定するために400kHzのパルス(0.0025msで1パルス)をカウントすると、12個カウントすることにより1cmを計測することができる。
【0032】
超音波発信部11と、超音波受信部21との間の最大距離は1〜2m程度なので、媒体の温度である気温は一定と推定できる。よって、気温による超音波の速度の違いを考慮してもよいが、音程を決定するための相対距離を求めることができればよいので、気温は一定(例えば、15℃)とした超音波の速度に基づいて距離を求めればよい。
【0033】
音程決定部13は、ユーザによる本体部10及びコントローラ部20の離間、或いは近接操作を受け付けることにより、距離測定部12が測定した距離が所定の範囲にある場合に対応する半音階毎の音程を決定する。例えば、超音波発信部11と、超音波受信部21との間の最大距離を数cm毎に区切った範囲を記憶しておき、音程決定部13は、距離測定部12が測定した距離に基づいて、記憶している範囲を求め、求めた範囲に対応する半音階毎の音程を決定する。
【0034】
電子サウンド発生部14は、音程決定部13が決定した音程に基づいて電子サウンドを発生する。電子サウンドは、例えば、ゲーム機等に用いられている音源チップであるPSG(Programmable Sound Generator)チップを用いて作り出される。その他に、例えば、メモリに音を記憶しておく波形メモリ音源を用いてもよい。電子サウンド発生部14は、このような音源を用いることにより、ゲーム等でユーザが慣れ親しんだ音を発生することができる。更に、これらの音源を交換可能としてもよい。音源を交換可能とすることにより、電子サウンド発生部14は、ユーザ毎に慣れ親しんだ好みの音色を発生することができる。
【0035】
表示部15は、音程決定部13が決定した音程を示す画像を表示する。音程を示す画像として、例えば、12音階の音程を表すアルファベット(C、−D、D、−E、E、F、−G、G、−A、A、−B、B)を表示する。また、イタリア音階(ド、−レ、レ、−ミ、ミ、ファ、−ソ、ソ、−ラ、ラ、−シ、シ)や、絵文字(ドーナツのアイコン、レモンのアイコン等)等を表示してもよい。更に、音程を示す画像として五線譜上の音符を表示してもよい。表示部15は、表示する画像によって正確な音程を示すことができるので、ユーザは自己の操作を容易に確認することができる。
【0036】
本体部10とコントローラ部20との間は、信号ケーブル22を用いずに、無線通信により信号を伝送するとしてもよい。本体部10及びコントローラ部20に無線送受信器(例えば、赤外線通信器等)を備え、本体部10から超音波と共に超音波発信開始の無線信号を発信し、本体部10が発信した超音波発信開始の無線信号を受信したコントローラ部20は本体部10が発信した超音波を受信するまでの時間を計測し、超音波を受信した時に計測した時間を無線信号により本体部10に送信することにより距離測定部12は距離を測定することができる。
【0037】
図2は、本発明の一実施形態に係る音程発生装置1の構成を示す構成ブロック図である。音程発生装置1は、図1の特徴に加え、電子サウンド制御手段及びエフェクト手段として制御部16と、操作部17と、音程テーブル30とを備えている。
【0038】
音程テーブル30は、距離の範囲と音程とを対応付けている(後述する図4参照)。音程決定部13は、距離測定部12が測定した距離により、音程テーブル30を検索し、検索した距離の範囲に対応付けられた音程を、距離に対応する音程として決定する。
【0039】
操作部17は、ユーザからの操作を受け付ける。例えば、電子サウンドの発生や停止を行うための操作、電子サウンドにエフェクトをかける操作等を受け付ける。
【0040】
制御部16は、受け付けた操作に基づいて、電子サウンド発生部14を制御し、電子サウンドの発生や停止を行う。また、電子サウンドにエフェクトをかけるための制御を行う。更に、制御部16は、音程決定部13が決定した音程に基づいて、決定した音程を示す画像を生成し、表示部15を制御する。
【0041】
図3は、本発明の一実施形態に係る音程発生装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0042】
図3に示すように、音程発生装置1は、CPU(Central Processing Unit)2011、メモリ2012、操作スイッチ2013、表示器2014、補助記憶部2015、通信I/F2040、電子サウンド発生器2400、コントローラA2500、コントローラB2600、超音波発信器2700、及び基準パルス発振器2800がバスラインBUSにより接続されて構成されている。
【0043】
CPU2011は、音程発生装置1を統括的に制御する部分であり、メモリ2012に記憶された各種プログラムを適宜読み出して実行することにより、上述したハードウェアと協働し、本発明に係る各種機能を実現している。
【0044】
操作スイッチ2013は、各種設定や入力操作を行う操作ボタン群、決定操作ボタン等(例えば、後述する図6のメインスイッチ103、ノートスイッチ106、ボリュームスライダー109等)を備えており、操作スイッチ2013による入力情報はCPU2011の制御下で処理される。
【0045】
表示器2014は、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)によって構成され、各種情報を表示する。例えば、表示器2014は、音程を示すアルファベットや、五線譜及び音符等を表示する。
【0046】
補助記憶部2015は、フラッシュメモリ等により構成され、音程発生装置1が機能するための各種プログラム及び本発明の機能を実行するプログラムを記憶しており、音程テーブル30等の各種データベースを構成可能である。
【0047】
通信I/F2040は、音程発生装置1を他の装置等と接続できるようにするための通信アダプタである。例えば、通信I/F2040を介して、他の表示装置に音符等を表示することができる。
【0048】
超音波発信器2700は、電気信号を超音波に変換し、変換した超音波を発信する。超音波発信器2700は、CPU2011からの指令により超音波の発信を行い、一定時間後に発信を停止する。
【0049】
基準パルス発振器2800は、超音波の到達時間を計測するための基準パルスを発生する。例えば、超音波を発信し、発信した超音波を受信するまでに、CPU2011は、基準パルス発振器2800が発振している400kHzのパルス(0.0025ms毎に1パルス)をカウントすることにより、到達時間を計測することができる。
【0050】
コントローラA2500は、超音波を受信する超音波受信器2750と、操作スイッチ2510(例えば、図6(1)で後述するAボタン2511、Bボタン2512、十字操作ボタン2513等)とを備えている。超音波受信器2750は、超音波発信器2700の振動素子と同じ素子を用いて受信した超音波を電気信号に変換する。コントローラB2600は、操作スイッチ2610(コントローラA2500と同様に、例えば、Aボタン、Bボタン、十字操作ボタン等(図示せず))を備えている。
【0051】
電子サウンド発生器2400は、PSG(Programmable Sound Generator)チップから成る。CPU2011の指令に基づき、電子サウンド発生器2400は、複数の基本波形を合成してさまざまな音色を出し、立ち上がりや余韻等のパターンをも変化させた音を発生させることができる。
【0052】
図4は、本発明の一実施形態に係る音程テーブル30を示す図である。
【0053】
音程テーブル30は、距離の範囲と、音程と、を対応付けて記憶している。距離の範囲は、距離測定部12が測定した距離を音程に対応付けるために設けた所定の範囲である。例えば、図4において、測定した距離が29〜31cm(29cm以上31cm未満)の場合を音程Cに対応付け、同様に5〜7cm(5cm以上7cm未満)の場合を音程Bに対応付けている。音程テーブル30は、予めメーカにより作成されている。また、音程テーブル30は、ユーザの設定により変更可能としてもよい。ユーザの操作方法に合わせた距離の範囲と、音程とを対応付けることにより、ユーザフレンドリーな操作インターフェースを提供することができる。
【0054】
図5は、本発明の一実施形態に係る音程発生装置1の処理内容を示すフローチャートである。なお、本処理は、例えば、電源ONにより開始し、電源OFFにより終了する。
【0055】
ステップS101において、CPU2011は、超音波発信器2700に超音波を発信させる。超音波発信器2700は、指令に従い超音波の発信を開始し、一定時間後に超音波の発信を停止する。CPU2011は、例えば、10ms毎に超音波を発信させる指令を超音波発信器2700に送り、超音波受信器2750が受信するまでの到達時間を計測するための時間カウントを開始する。その後、CPU2011は、処理をステップS102に移す。
【0056】
ステップS102において、CPU2011は、超音波発信器2700が発信した超音波を超音波受信器2750が受信したか否かを判断する。超音波受信器2750が超音波を受信したか否かの判断は、例えば、超音波受信器2750が超音波を受信したことを示す信号をコントローラA2500から受信することによって判断する。この判断がYESの場合は、処理をステップS103に移し、NOの場合は処理をステップS102に移し、信号をコントローラA2500から受信するまでこの判断を繰り返す。なお、信号を一定時間内にコントローラA2500から受信しない場合には、エラーと判断し、ステップS101に移るとしてもよい。
【0057】
ステップS103において、CPU2011は、距離を測定する。より具体的には、CPU2011は、コントローラA2500から超音波受信器2750が超音波を受信したことを示す信号を受信すると同時に、時間カウントを停止し、超音波の到達時間を取得する。そして、到達時間に基づいて距離を求める。その後、CPU2011は、処理をステップS104に移す。
【0058】
ステップS104において、CPU2011は、音程を決定する。より具体的には、CPU2011は、求めた距離により、音程テーブル30を検索し、検索した距離の範囲に対応する音程を取得し、音程を決定する。その後、CPU2011は、処理をステップS105に移す。
【0059】
ステップS105において、CPU2011は、ノートスイッチ106(後述する図6参照)が押下されたか否かを判断する。この判断がYESの場合は、処理をステップS106に移し、NOの場合は処理をステップS109に移す。
【0060】
ステップS106において、CPU2011は、電子サウンド発生器2400に電子サウンドを発生させる。すなわち、CPU2011は、決定した音程及び押下された発生ONの指令を電子サウンド発生器2400に出力する。電子サウンド発生器2400は、音程及び指令に基づいて電子サウンドを生成し、発音する。その後、CPU2011は、処理をステップS107に移す。
【0061】
ステップS107において、CPU2011は、操作スイッチ(例えば、操作スイッチ2013、操作スイッチ2510等)が押下されたか否かを判断する。この判断がYESの場合は、処理をステップS108に移し、NOの場合は処理をステップS101に移す。
【0062】
ステップS108において、CPU2011は、押下された操作スイッチ(例えば、操作スイッチ2013、操作スイッチ2510等)に応じて処理を行う。具体的には、操作スイッチ2013内のボリュームスライダー109(後述する図6参照)が操作された場合には、音量を変化させ、コントローラA2500の操作スイッチ2510内のAボタン2511やBボタン2512等(後述する図6参照)が押下された場合には、エフェクト指令を電子サウンド発生器2400に出力する。その後、CPU2011は、処理をステップS101に移す。
【0063】
ステップS109において、CPU2011は、電子サウンドを停止させる。より具体的には、CPU2011は、電子サウンド発生OFFの指令を電子サウンド発生器2400に出力する。その後、CPU2011は、処理をステップS101に移す。
【0064】
図6は、本発明の一実施形態に係る音程発生装置1の外観を示す図である。図6(1)は、正面外観図、図6(2)は、背面外観図を示している。
【0065】
音程発生装置1は、図6(1)において、音程表示窓101と、コントローラA2500と、メインスイッチ103と、ストラップフック104と、ストラップ105と、ノートスイッチ106と、コントローラB2600と、本体108と、ボリュームスライダー109と、を備え、図6(2)において、内蔵スピーカ110と、ラインアウト111と、コントローラ切替スイッチ112と、ACアダプタジャック113と、を備えている。そして、超音波発信器2700は本体108に内蔵され、超音波は発信窓102から発信され、超音波受信器2750はコントローラA2500に内蔵され、受信窓2501から超音波を受信する。
【0066】
コントローラA2500は、本体108と信号ケーブル114によって接続され、操作スイッチ2510として、Aボタン2511、Bボタン2512及び十字操作ボタン2513を備えている。コントローラB2600は、コントローラA2500と同様に、本体108と信号ケーブル115によって接続され、操作スイッチ2610として、Aボタン、Bボタン及び十字操作ボタン(図示せず)を備えている。
【0067】
メインスイッチ103は、音程発生装置1の電源をON・OFFするためのスイッチである。メインスイッチ103をONにすると音程発生装置1は起動する。電源は内蔵充電池又はACアダプタのどちらでもよい。ACアダプタジャック113を介してACアダプタを接続している時は、内蔵電池は自動的に充電される。
【0068】
ノートスイッチ106は、電子サウンドの発音をON・OFFするためのスイッチである。ノートスイッチ106を押すと、内蔵されたPSGチップが内蔵スピーカ110から音を発生する。すなわち、ノートスイッチ106を押している間は音が鳴り続け、ノートスイッチ106を離した時に音が止まる。ラインアウト111にジャックが挿入されている時は内蔵スピーカ110からは音が出ず、ラインアウト111からの出力のみになる。
【0069】
ボリュームスライダー109は、音量を調節するためのスライダーである。
【0070】
ユーザは、ストラップフック104を介して本体108と接続するストラップ105を肩からギターのようにたすきがけにし、本体108を体の右側に吊り下げ、コントローラA2500を左手に持つ。ユーザがコントローラA2500を本体108に近づけたり遠ざけたりすると、音程発生装置1は、コントローラA2500と、本体108との2点間の距離に応じて、電子サウンドを発音し、音程表示窓101には音程を示す画像を表示する。距離は本体108からの絶対距離で計測されるので、音程発生装置1は、コントローラA2500がどの方向に移動しても本体108との距離に応じて決定した音程を発音する。
【0071】
例えば、ユーザは、左手に持ったコントローラA2500で距離を変化させ、右手でノートスイッチ106をON又はOFFすることにより、任意のメロディーを演奏することができる。また、ユーザは、右手でボリュームスライダー109を前後することにより音量をコントロールすることができる。
【0072】
また、ユーザは、ノートスイッチ106を押して発音させている最中に、左手でコントローラA2500のAボタン2511やBボタン2512を押すことにより発音中の音にエフェクトをかけることができる。エフェクトの内容には、ビブラートやジャンプ音エフェクト等がある。
【0073】
コントローラB2600は、初期設定を変更するために使用する。設定項目としてオクターブ設定、音色等がある。音程発生装置1は、コントローラB2600によって設定されたオクターブ設定、音色等を記憶し、記憶したオクターブ設定、音色等に基づいて、電子サウンドを発生させる。
【0074】
コントローラ切替スイッチ112は、コントローラの機能を切り替えるためのスイッチである。コントローラB2600にも超音波受信器を内蔵している場合には、コントローラ切替スイッチ112を切り替えることによって、コントローラA2500と、コントローラB2600との機能を切り替えることができる。この切替機能により、右利きのユーザであっても、左利きのユーザであっても使いやすい方で演奏することができる。なお、コントローラA2500及びコントローラB2600と、本体108との接続を繋ぎ替えることができるとしてもよい。コントローラ切替スイッチ112を切り替えると共に、コントローラA2500とコントローラB2600とを繋ぎ替えることによって、コントローラB2600が超音波受信器を内蔵していなくても、コントローラA2500と、コントローラB2600とを右利き又は左利きに合わせることができる。
【0075】
図7は、本発明の一実施形態に係る音程発生装置1をユーザが操作し、電子サウンドが発生していることを示す図である。
【0076】
図7の例は、音程発生装置1が、コントローラA2500と、本体108との距離を測定し、測定した距離が所定の範囲にある場合に、対応する半音階毎の音程を決定し、決定した音程に基づいて電子サウンドを出力し、決定した音程を示す画像として平均律のクロマチックスケールの音名(−はフラット記号を示す)を音程表示窓101に表示していることを示している。右手でノートスイッチ106をON・OFFし、左手でコントローラA2500を移動させていることを示している。
【0077】
図8は、本発明の一実施形態に係る音程発生装置1をユーザが操作し、電子サウンドが発生していることを示す別の図である。
【0078】
図8の例は、音程発生装置1が、コントローラA2500と、本体108との距離を測定し、測定した距離が所定の範囲にある場合に、対応する半音階毎の音程を決定し、決定した音程に基づいて電子サウンドを出力し、決定した音程を示す画像として音符を音程表示窓101に表示していることを示している。
【0079】
実施例によれば、本発明に係る音程発生装置1は、本体108及び当該本体108と分離自在のコントローラA2500を少なくとも含んで成り、本体108及びコントローラA2500はその間の距離を測定するために構成する一対の超音波発信器2700、超音波受信器2750を備え、ユーザによる本体108及びコントローラA2500の離間、或いは近接操作を受け付けることにより、測定した距離が所定の範囲にある場合に対応する半音階毎の音程を決定し、決定した音程に基づいて電子サウンドを発生し、決定した音程を示す画像を表示する。したがって、本発明に係る音程発生装置1によれば、ユーザは、初心者であっても最初から所望の音程を容易に、かつ、正確に出すことができる。
【0080】
更に、本発明に係る音程発生装置1は、PSGチップを少なくとも含んで成り、ユーザからの操作を受け付けることに応じて、電子サウンドの発生・停止を行い、電子サウンドにエフェクトをかける。したがって、本発明に係る音程発生装置1によれば、ユーザは、本体108及びコントローラA2500の離間、或いは近接操作というユーザフレンドリーな操作インターフェースによって、ゲームの音源チップを演奏でき、初心者であっても最初から所望の音程を容易に、かつ、正確に出すことができる。
【0081】
なお、実施例では、本体108に超音波発信器2700を備え、コントローラA2500に超音波受信器2750を備えるとしたが、本体108に超音波受信器2750を備え、コントローラA2500に超音波発信器2700を備えるとしてもよい。超音波発信器2700及び超音波受信器2750は一対を構成するので、本体108及びコントローラA2500のどちらに設置されても同様の効果を奏することができる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施例に記載されたものに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の特徴を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る音程発生装置1の構成を示す構成ブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る音程発生装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る音程テーブル30を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る音程発生装置1の処理内容を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態に係る音程発生装置1の外観を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る音程発生装置1をユーザが操作し、電子サウンドが発生していることを示す図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る音程発生装置1をユーザが操作し、電子サウンドが発生していることを示す別の図である。
【符号の説明】
【0084】
1 音程発生装置
10 本体部
11 超音波発信部
12 距離測定部
13 音程決定部
14 電子サウンド発生部
15 表示部
16 制御部
17 操作部
20 コントローラ部
21 超音波受信部
22 信号ケーブル
30 音程テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音楽を奏でるための音程発生装置であって、
前記音程発生装置は、本体部及び当該本体部と分離自在のコントローラ部を少なくとも含んで成り、
前記本体部及び前記コントローラ部はその間の距離を測定する距離測定手段を構成する一対の超音波発信・受信装置を備え、
ユーザによる前記本体部及び前記コントローラ部の離間、或いは近接操作を受け付けることにより、前記距離測定手段が測定した距離が所定の範囲にある場合に対応する半音階毎の音程を決定する音程決定手段と、
前記音程決定手段が決定した音程に基づいて電子サウンドを発生する電子サウンド発生手段と、
前記音程決定手段が決定した音程を示す画像を表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする音程発生装置。
【請求項2】
前記ユーザからの操作を受け付けることに応じて、前記電子サウンドの発生・停止を行う電子サウンド制御手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の音程発生装置。
【請求項3】
前記ユーザから電子サウンドにエフェクトをかける操作を受け付けることに応じて、前記電子サウンド発生手段が発生する電子サウンドにエフェクトをかけるエフェクト手段を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の音程発生装置。
【請求項4】
前記電子サウンド発生手段は、PSGチップを少なくとも含んで成ることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の音程発生装置。
【請求項5】
本体部及び当該本体部と分離自在のコントローラ部を少なくとも含み、前記本体部及び前記コントローラ部の間の距離を測定するための一対の超音波発信・受信装置を備えた音程発生装置が音楽を奏でるための方法であって、
ユーザによる前記本体部及び前記コントローラ部の離間、或いは近接操作を受け付け、前記超音波発信・受信装置により距離を測定するステップと、
前記測定した距離が所定の範囲にある場合に対応する半音階毎の音程を決定するステップと、
前記決定した音程に基づいて電子サウンドを発生するステップと、
前記決定した音程を示す画像を表示するステップと、
を有することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−102059(P2010−102059A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272728(P2008−272728)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(507403274)NeoLAB株式会社 (2)
【Fターム(参考)】