説明

頭髪用剤

【課題】発毛,育毛,増毛,養毛などに有効な頭髪用剤を提供する。
【解決手段】エルゴチオネインを含むキノコ抽出液を、1日4〜8cc程度頭の頂部に塗布した。その結果、(A)の状態の頭髪が、およそ2ヵ月後に(B)に示すようになり、頭の頂部全体にわたって増毛の効果を確認することができた。エルゴチオネインが頭髪の毛根細胞ないし毛母細胞に作用した結果、それらが活性化し、その結果毛髪が発生ないし増殖したものと考えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養毛,発毛,育毛,増毛などを促進する頭髪用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
発毛等を促進する頭髪用剤としては、各種のものが知られている。例えば、下記特許文献1には、発毛・育毛の効果に優れ、かつ長期にわたる使用に十分耐え得る安全性を備えた、育毛・養毛剤及び哺乳類の育毛・養毛を促進することを目的とし、毛髪成長期維持タンパク質を有効成分として含有する育毛・養毛剤が開示されている。
【特許文献1】特開2006−256976公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、最近、非常に優れた坑酸化作用がある物質としてエルゴチオネインが着目されている。エルゴチオネインは、植物由来のアミノ酸で、無色ないし淡黄色の液体である。強力な抗酸化作用があり、過酸化脂質の生成を抑制するとともに、生体のエネルギー生成を担うミトコンドリアにエネルギー源である脂肪酸を運ぶカルニチンのような働きをする。紫外線によるDNA損傷抑制,エラスチンを分解する酵素であるエラスターゼ活性阻害による光老化やシワ防止効果があるとされている。更に、エルゴチオネインには、皮膚細胞に作用して活性化する効果があり、これを頭髪に適用することで毛根細胞ないし毛母細胞が活性化し、養毛などへの効果が期待できる。
【0004】
本発明は、以上の点に着目したもので、発毛,育毛,増毛,養毛などに有効な頭髪用剤を提供することを、その目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明は、ホンシメジの子実体,菌糸体,又は菌糸の培養液,のいずれかの抽出物を含むことを特徴とする。他の発明は、エリンギの子実体,菌糸体,又は菌糸の培養液,のいずれかの抽出物を含むことを特徴とする。更に他の発明は、シイタケの子実体,菌糸体,又は菌糸の培養液,のいずれかの抽出物を含むことを特徴とする。主要な形態の一つは、前記抽出物が水又は熱水で抽出されたものであることを特徴とする。更に他の発明は、エルゴチオネインもしくはその誘導体を有効成分とすることを特徴とする。主要な形態の一つは、塗布もしくは経口のいずれかの方法で前記頭髪用剤を摂取することを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、エルゴチオネインが毛根細胞ないし毛母細胞に作用してそれらを活性化するため、優れた発毛効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0008】
最初に、図1を参照しながら、本実施例の頭髪用剤の抽出方法について説明する。エルゴチオネインを含有するものとしてはキノコがある。本実施例では、キノコとして例えばホンシメジやエリンギやシイタケを使用し、その子実体を水とともにミキサに入れて粉砕した(ステップSA)。そして、得られた水とキノコ粉砕物との混合物を加熱した(ステップSB)。具体的には、混合物を入れた容器を蒸し器の中において蒸気により加熱した。次に、加熱後の混合物をろ紙を用いてろ過し、固形物を除去した(ステップSC)。これにより、キノコの子実体に含まれている各種成分が抽出される。
【0009】
抽出液には、上述したエルゴチオネインの他に、ナイアシン,パントテン酸が含まれている(ステップSD)。ナイアシンは、糖質,脂質,たんぱく質から細胞でエネルギーを産生する際に働く酵素を補助し、体の末梢部分での血管の拡張作用がある。また、パントテン酸は、前記ナイアシンと協働し、皮膚や毛髪などの健康維持を助ける効果がある。キノコ1グラムからおよそ1ccの抽出液が得られる。本発明に関連して抽出したキノコ抽出液サンプルに含まれるエルゴチオネインの含有量の測定結果は、以下の通りであった。
a,サンプル1:0.1952グラムのキノコ抽出液に対して、エルゴチオネインの濃度は67.0ppm,
b,サンプル2:0.2013グラムのキノコ抽出液に対して、エルゴチオネインの濃度は、69.8ppm,
【0010】
なお、サンプル1及びサンプル2の原料はエリンギの子実体であり、製造手順は図1に示したとおりである。
【0011】
次に、以上のようにして得たキノコ抽出液を、頭髪に使用したところ、図2及び図3に示すような結果が得られた。図2の例は、頭の頂部に本実施例のキノコ抽出液を塗布したもので、(A)は塗布前の状態を示す。この状態から、1日4〜8cc程度のキノコ抽出液を頭の頂部に塗布した。その結果、およそ2ヵ月後は、同図(B)に示すようになった。同図(A)及び(B)を比較すれば明らかなように、頭の頂部全体にわたって増毛の効果を確認することができる。図3の例は、頭の前頭部に本実施例のキノコ抽出液を塗布したもので、(A)は塗布前,(B)は塗布後6ヶ月経過時点の様子を示す。これら図3(A)及び(B)を比較すれば、同様に頭の前頭部全体にわたって増毛の効果を確認することができる。
【0012】
これは、エルゴチオネインが頭髪の毛根細胞ないし毛母細胞に作用した結果、それらが活性化し、その結果毛髪が発生ないし増殖したものと考えられる。また、キノコ抽出液に含まれているナイアシンやパントテン酸による効果が前記エルゴチオネインによる効果に相乗的に作用したものと考えられる。
【0013】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例では、キノコとしてエリンギを使用したが、他にホンシメジやシイタケも有効である。また、キノコの子実体のかわりに、菌糸体や菌糸の培養液を原料としてもよい。
(2)前記実施例では、キノコ抽出液を直接頭部に塗布したが、経口摂取することを妨げるものではない。
(3)前記実施例は、エルゴチオネインを有効成分として含むキノコ抽出液の例であるが、エルゴチオネインを含有すればどのような動植物を原料としてもよい。また、動植物の抽出物のみならず、動植物の抽出物からエルゴチオネインを単離・精製したものを用いてもよいし、エルゴチオネインの誘導体であってもよい。
(4)前記実施例は、抽出物を液体として使用したが、水分をなくして粉末状などとして使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明によれば、発毛,育毛,養毛,増毛に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のキノコ抽出液の製造過程を示す図である。
【図2】本発明の実施例のキノコ抽出液による発毛効果を示す図である。(A)は塗布前,(B)は塗布後の状態を示す。
【図3】本発明の実施例のキノコ抽出液による他の発毛効果を示す図である。(A)は塗布前,(B)は塗布後の状態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホンシメジの子実体,菌糸体,又は菌糸の培養液,のいずれかの抽出物を含むことを特徴とする頭髪用剤。
【請求項2】
エリンギの子実体,菌糸体,又は菌糸の培養液,のいずれかの抽出物を含むことを特徴とする頭髪用剤。
【請求項3】
シイタケの子実体,菌糸体,又は菌糸の培養液,のいずれかの抽出物を含むことを特徴とする頭髪用剤。
【請求項4】
前記抽出物が水又は熱水で抽出されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の頭髪用剤。
【請求項5】
エルゴチオネインもしくはその誘導体を有効成分とすることを特徴とする頭髪用剤。
【請求項6】
塗布もしくは経口のいずれかの方法で摂取することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の頭髪用剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−275027(P2009−275027A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327823(P2008−327823)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(508118625)
【Fターム(参考)】