説明

顔料分散液および着色感光性組成物

【課題】コントラストおよび塗布安定性に優れた着色レジストを与える、優れた分散性および粘度安定性を有する顔料分散液および着色レジストを提供すること。
【解決手段】少なくとも顔料と、バインダーと、分散剤と、分散助剤とを分散溶媒中に含有してなり、上記分散助剤が、炭素数1〜5の脂肪族飽和アルコール(a1)および/または下記一般式(1)で表わされる化合物(a2)であり、全顔料分散液中に1質量%〜10質量%を占める量で含有されていることを特徴とする顔料分散液。
R1−O−R2−OH (1)
(上記一般式(1)において、R1およびR2は炭素数が1〜5のアルキル基またはアルキレン基を表わす。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルター用着色感光性組成物(以下単に「着色レジスト」という場合がある)の製造に使用される顔料分散液に関し、さらに詳しくは、コントラストおよび塗布安定性(以下これらの特性を纏めて「レジスト特性」という場合がある)に優れた着色レジストを与える、分散性および粘度安定性(以下これらの特性を纏めて「分散度特性」という場合がある)に優れた顔料分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラーフィルターが使用されている液晶ディスプレイの用途は、従来のノートパソコン用途に加えて、カラー携帯電話・カーナビゲーションに代表されるモバイル用途、CRT代替えのモニター・テレビ用途の市場へと急拡大している。市場拡大に伴い、カラーフィルターの製造に使用される着色レジストは、より高性能化が必要となってきている。特に、近年、高輝度、高コントラストの着色レジストが要望されている。上記の高性能化において前記レジスト特性のレベルアップが必要になってきており、前記レジスト特性を満たすためには、その着色剤である顔料分散液の分散度特性をより上げる必要がある。
【0003】
しかしながら、従来の顔料分散液は、顔料の均一な高分散が一般に困難であり、場合によっては顔料分散液の粘度安定性が悪くなり、粘度が上昇して得られる着色レジストのスリットノズルコーターなどの塗布機による塗布が困難であった。また、塗布時に、スリットノズルコーターの塗布部に乾燥して付着した着色レジスト片が溶剤に再溶解せずカラーフィルターとした場合に異物欠陥となるなどの塗布安定性が低下する。また、安定した顔料分散液の調製のために、分散剤の量を増やすと溶剤再溶解性が悪化し塗布安定性が低下する。また、現像残渣も悪化するという問題が生じた。
【0004】
上記の着色レジストに使用される顔料分散液としては、ある種の有機顔料分散液(特許文献1)や、顔料分散組成物(特許文献2)などが開示されている。上記特許文献1の有機顔料分散液は、該顔料分散液を用いて製造した着色レジストをスリットノズルコーター方式で塗布した場合、そのスリットノズル先端部分で、着色レジストの溶剤再溶解性が悪くなり、顔料分散液中の顔料が凝集しやすく、また、凝集した部分が塗布中に塗布面に混入し、均一な着色膜が得にくいなどの塗布安定性が著しく低下するという問題がある。
【0005】
また、前記の特許文献2の顔料分散組成物は、顔料、特定分散剤、および特定の混合溶剤より構成されており、得られる着色レジストに耐熱性に優れた色純度の高い画素の形成を付与している。しかしながら、上記顔料分散組成物は、顔料が特定の分散剤および混合溶剤中に分散して調製されている。このために、一般に、使用されている公知の分散剤や、その他バインダーを使用する場合には、上記の顔料分散組成物仕様では十分な分散度特性が得られない。また、カラーフィルターの製造の際に、スリットノズルコーター方式に適合したレジスト特性を有する着色レジストが得にくい。
【0006】
上述のことから、前記レジスト特性に優れた着色レジストを与える分散度特性が優れた顔料分散液が要望されている。
【0007】
【特許文献1】特開平8−259876号公報
【特許文献2】特開2004−182787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、レジスト特性に優れた着色レジストを与える優れた分散度特性を有する顔料分散液および着色レジストを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、少なくとも顔料と、バインダーと、分散剤と、分散助剤とを分散溶媒中に含有してなり、上記分散助剤が、炭素数1〜5の脂肪族飽和アルコール(a1)および/または下記一般式(1)で表わされる化合物(a2)であり、全顔料分散液中に1質量%〜10質量%占める量で含有されていることを特徴とする顔料分散液、および該顔料分散液を含むカラーフィルター用着色レジストを提供する。
R1−O−R2−OH (1)
(上記一般式(1)において、R1およびR2は炭素数が1〜5のアルキル基またはアルキレン基を表わす。)
【0010】
本発明者は、前記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、上記の特定の分散助剤を使用した上記の顔料分散液が、顔料に対する濡れを一段と向上させ、顔料粒子の周囲の空気層をなくすことにより、分散度特性が著しく向上し、優れたレジスト特性を有する着色レジストが得られることを見いだした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特定の分散助剤を使用した優れた分散度特性を有する顔料分散液を用いることで、優れたレジスト特性を有する着色レジストが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に発明を実施するための最良の形態を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。本発明を主として特徴づける分散助剤は、炭素数1〜5の脂肪族飽和アルコール(a1)および/または下記一般式(1)で表わされる化合物(a2)(以下、a成分という)である。
R1−O−R2−OH (1)
(上記一般式(1)において、R1およびR2は炭素数が1〜5のアルキル基またはアルキレン基を表わす。)
上記の分散助剤は、a1またはa2は各々単独でも、或いは2種以上を混合して使用することができる。
【0013】
上記の分散助剤は、分散液調製の際に、顔料に対する濡れ性を良くし、また顔料粒子の周囲の空気を追い出し、より分散度特性を向上させ、優れたレジスト特性を付与する顔料分散液を得る目的で使用する。
【0014】
前記の分散助剤における炭素数1〜5の脂肪族飽和アルコール(a1)としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロパノール)、1−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールなど、およびこれらの混合物が挙げられる。上記の分散助剤a1において、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノールが好ましく使用される。
【0015】
また、前記の分散助剤における化合物a2としては、例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−プロポキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノールなどのプロピレングリコールモノアルキルエーテル、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノールなどのエチレングリコールモノアルキルエーテルなどのエーテル類、好ましくはプロピレングリコールモノアルキルエーテルである。
【0016】
前記の分散助剤であるa成分は、全顔料分散液中に1質量%〜10質量%、好ましくは3質量%〜7質量%を占める量で含有されている。上記の分散助剤の含有量が、多過ぎると、得られる顔料分散液および着色レジストの粘度が上昇して、レジスト特性が低下する。特に、塗布性、および粘度安定性が著しく低下する。一方、上記の分散助剤の含有量が少な過ぎると、顔料に対するバインダーおよび分散剤の濡れ性が低下して、顔料粒子の周囲の空気を追い出しにくくなり、十分な分散度特性が得られない。
【0017】
前記の分散助剤であるa成分の表面張力は、好ましくは20dyn/cm〜30dyn/cm(20℃)、特に好ましくは22dyn/cm〜25dyn/cm(20℃)である。上記の表面張力が高すぎても、一方、低過ぎても十分な分散助剤としての効果が得られず、レジスト特性が低下する。上記の表面張力を有する分散助剤としては、例えば、メタノール(22.5dyn/cm)、エタノール(22.27dyn/cm)、1−プロパノール(23.8dyn/cm)、2−プロパノール(21.7dyn/cm)、1−ペンタノール(25.6dyn/cm)、3−ペンタノール(24.6dyn/cm)、1−メトキシ−2−プロパノール(27.1dyn/cm)などが挙げられる。
【0018】
前記の分散助剤は、好ましくは全分散溶媒中で0.1質量%〜17質量%、特に好ましくは5質量%〜12質量%を占める量が含有されている。全分散溶媒中における分散助剤の含有量が多くなると、得られる着色レジストの粘度が上昇する。一方、少な過ぎると、分散助剤としての効果が得られない。
【0019】
本発明で使用するバインダーとしては、例えば、分子内にエチレン性不飽和二重結合を有する光硬化性樹脂のアクリル系樹脂、あるいは、非光硬化性ポリマーであり、アルカリ現像が可能なアルカリ可溶性であるアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、アミド系樹脂、アルキッド系樹脂、フェノール系樹脂など、好ましくは光硬化性アクリル系樹脂が挙げられる。上記バインダーの配合量は、全分散液中に1質量%〜5質量%である。上記のバインダーは、顔料の分散媒体となり、また着色レジストを構成する感光性樹脂組成物との相溶性を良好にするために使用する。
【0020】
上記の光硬化性アクリル系樹脂は、例えば、(メタ)アクリル酸と、アクリル酸エステルおよびこれらと共重合可能なモノマーを含むモノマーの混合物の共重合体であり、分子内に少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する共重合体である。上記の光硬化性アクリル系樹脂の具体例としては、例えば、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート/メタクリル酸/メタクリル酸メチル/メタクリル酸シクロヘキシル共重合体(モル組成比率(%)5/30/45/20)に、メタクリル酸の1/2モルに相当するメタクリル酸グリシジルを付加させた共重合体(樹脂は鎖中にテトラヒドロピラン環を有している。);N−ベンジルマレイミド/メタクリル酸/メタクリル酸メチル/メタクリル酸ベンジル共重合体(モル組成比率(%)5/30/45/20)にメタクリル酸の1/2モルに相当するメタクリル酸グリシジルを付加させた共重合体などが挙げられる。
【0021】
また、本発明で使用する分散剤としては、公知の顔料分散液に使用されるものであればいずれのものも使用することができ、例えば、ノニオン、カチオンおよびアニオン系界面活性剤、ポリエステル系高分子分散剤、アクリル系高分子分散剤、ポリウレタン系高分子分散剤など、好ましくはアクリル系高分子分散剤、ポリウレタン系高分子分散剤が挙げられる。上記の分散剤は、単独でも、あるいは2種以上を混合して使用することができる。上記の分散剤としては、例えば、ビックケミー社からDisperbyk(161、162、163、164、165、166、168、170、171、174、180、182、183、184、185、2000、2001、2020、2050、2070、2096、2150、101、102、103、106、108、109、110、111、112、116、130、140、142、145など)、また、味の素ファインテクノ(株)からアジスパー(PB821、PB711、PB822、PB823、PB824、PB827、PN411、PA111、など)、また、Cognis社からテキサホール(P61、P63、T−964など)、また、エフカケミカルズ社からEFKA(4046、4047、4060、4300、4330など)の商品名で入手して本発明で使用することができる。
【0022】
また、本発明で使用する顔料は、カラーフィルターを形成する各画素の着色剤として、コントラスト、着色力、透明性、耐候性、耐薬品性などに優れている顔料であればいずれのものも使用することができる。上記の顔料としては、例えば、キナクリドン系、インジゴ系、アンタンクロン系、スレン系、アゾ・ジアゾ・多縮合アゾ系、イミダゾール系、アリルアマイド(アシルアミノ系)ペリレン系、イソインドリン系、ペリノン系、フタロシアニン系、メチン・アゾメチン系、ジオキサジン系、アントラピリミジン系、アニリン系、ピラントロン系、プランバントロン系、インダスロン系、イソビオルパントラン系、フタロン系、キノフタロン系、ジアントラキノン系などの有機顔料が挙げられる。上記顔料の具体例としては、C.I.ピグメントレッド9、97、122、123、149、176、177、179、180、209、215、254;C.I.ピグメントグリーン7、36;C.I.ピグメントブルー(15:6)、(15:1)、(15:3);C.I.ピグメントイエロー83、93、138、139、150、180、185、213、219;C.I.ピグメントバイオレット23;C.I.ピグメントオレンジ36、43、51;C.Iピグメントブラウン23、25;C.I.ピグメントブラック1、7などが挙げられる。
【0023】
また、本発明で使用する分散溶媒は、前記のバインダー、分散剤、分散助剤および顔料を均一に溶解分散できる従来公知のもので問題なく、エステル類、エーテル類、ケトン類、芳香族類、ハロゲン化炭化水素類、ニトロ炭化水素類、アミン類などが使用できる。これらは、単独で用いても、2種以上を混合して使用してもよい。
【0024】
上記の分散溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテートなどのエステル類、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アセチルアセトンなどのケトン類、トルエン、キシレンなどの芳香族類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテル類、ジクロロメタン、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。
【0025】
上記の分散溶媒は、さらに、下記一般式(2)で表わされる化合物(b成分)を含有するのが好ましい。

(上記一般式(2)において、R3はアルキル基を、R4は水素原子またはアルキル基、nは1〜4の整数を表わす。)
上記のb成分は、前記の分散溶媒の溶解分散性をより向上させ、前記のバインダー、分散剤、分散助剤および顔料をより均一に溶解分散でき、レジスト特性を向上させる。
【0026】
上記のb成分としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなど、好ましくはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテートが挙げられる。上記のb成分は、分散溶媒として単独でも使用することができるが、他の分散溶媒と併用する場合は、全分散溶媒中に10〜98質量%含有するのが好ましい。
【0027】
本発明の顔料分散液の調製は、例えば、適宜に配合された前記の顔料と、バインダーと、分散剤と、分散助剤とを、前記の分散溶媒中でディゾルバーを用いて1時間予備混合した後、0.3mmのジルコニアビーズを用いてペイントシェーカー(浅田鉄工(株)社製)にて6時間分散させて行うことができる。上記の分散助剤の配合割合は、前記の全顔料分散液中に占める質量の値の範囲内である。
【0028】
本発明の顔料分散液は、必要に応じて、本発明の目的を妨げない範囲において、密着性向上のためのシランカップリング剤、その他、消泡剤、ハジキ防止剤、酸化防止剤、凝集防止剤、紫外線吸収剤などを添加することができる。
【0029】
前記のように調製された本発明の顔料分散液は、その粘度が、3mPa・s〜50mPa・s(25℃)が好ましい。上記の粘度が高過ぎると、着色レジストを調製する際に、顔料分散液の分散性および得られる着色レジストの塗布性が低下する。一方、上記の粘度が、低過ぎると顔料分散性が不安定となる。なお、本発明における粘度は、B型粘度計による測定値である。
【0030】
本発明の顔料分散液を、カラーフィルター用感光性樹脂組成物と配合することによりカラーフィルターの製造に使用される本発明の着色レジストが得られる。上記のカラーフィルター用感光性樹脂組成物は、ポリマーと、光重合性モノマーと、光重合開始剤と、有機溶媒とを配合して得られる。該有機溶媒は、前記分散溶媒と同様のものが好ましい。上記のポリマー、光重合性モノマー、光重合開始剤、および有機溶媒は従来公知のもので問題ない。また、必要に応じて、本発明の目的を妨げない範囲において、前記の種々の添加剤を配合することができる。上記のポリマーとしては、例えば、重量平均分子量10,000、酸価75mgKOH/gのスチレン/アクリル酸共重合体などのアクリル系樹脂など、また、前記の顔料分散液に使用したバインダーも使用することができる。また、上記の光重合性モノマーとしては、例えば、東亜合成化学(株)から、アロニックスM−402、アロニックスTO1382などの商品で入手して本発明で使用することができる。また、上記の光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1、2,4−ジエチルチオキサントン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノ−フェニル)ブタノン−1、2−イソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。
【0031】
本発明の着色レジストは、本発明の顔料分散液と、前記のカラーフィルター用感光性樹脂組成物と、上記の顔料分散液調製時に使用した分散溶媒および必要に応じて添加剤を適宜に配合して、公知の混合機、分散機により混合分散することによって得られる。上記の混合分散は、例えば、ビーズミル、ボールミル、ディゾルバー、ニーダー、ロール、高圧分散機など、好ましくはビーズミルを使用して行われ、得られた着色レジストは、好ましくは濾過して調製される。
【0032】
上記の添加剤としては、得られる着色レジストのガラス基板への密着性を向上させるためにアクリル系シランカップリング剤などのシランカップリング剤、その他、2,2−チオビス(4−メチル−6−tブチルフェノール)などの酸化防止剤、アルコキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤、フッ素系界面活性剤、消泡剤、凝集防止剤などが挙げられる。
【0033】
前記の着色レジストは、該着色レジスト全量中に前記の分散助剤が0.1質量%〜3質量%含有されているのが好ましい。上記の着色レジスト全量中の分散助剤の量が、多過ぎると、得られる着色レジストの粘度が上昇して、塗布安定性が低下し、十分なレジスト特性が得られない。一方、分散助剤の量が少な過ぎると、分散助剤の効果が低下し、十分な分散性が得られず、レジスト特性、特にコントラストの向上が得られない。
【0034】
また、前記の着色レジストは、その粘度が25℃において2mPa・s〜20mPa・sであるのが好ましい。上記の粘度が高過ぎると、特に、スリットノズルコーター方式では塗布安定性が低下する。一方、上記粘度が低過ぎると、十分な着色レジストの塗膜性が得られない。
【0035】
前記のように調製された着色レジストは、例えば、これを用いて、遮光層の金属系薄膜のブラックマトリックスが形成されたカラーフィルター用のガラス基板に、回転塗布、スリットノズルコート、流延塗布、浸漬塗布、ロール塗布等の公知の塗布方法により塗布し、加熱乾燥して1〜3μm(乾燥膜厚)の塗布膜を得る。得られた塗布膜に所望の画素を形成するためのネガ型のフォトマスクを介して露光ギャップ150μm、高圧水銀灯あるいは超高圧水銀灯(60mJ/cm2光量)などにより紫外線を照射して露光する。露光後、光硬化した塗膜を無機あるいは有機のアルカリ化合物を含有するアルカリ水溶液からなるアルカリ現像液を使用してスプレイ法や浸漬法にて現像し、未露光部を溶解して所望の画素を得ることができる。なお、必要に応じて、現像後、150℃〜250℃で15分〜60分程度後硬化処理することができる。
【0036】
上記の画素を得る工程を、カラーフィルターに必要とされる色の数だけ繰り返すことによって所望とするカラーフィルターが得られる。上記のカラーフィルターは、通常、赤、緑および青の各画素を遮光層がパターン形成されたカラーフィルター用のガラス基板上に配置したものである。
【0037】
上記の現像に使用されるアルカリ現像液は、無機あるいは有機のアルカリ化合物と、必要に応じて界面活性剤を含有するアルカリ性水溶液である。上記のアルカリ性水溶液の濃度は、0.01質量%〜10質量%、好ましくは0.03質量%〜0.07質量%である。上記の無機アルカリ化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、燐酸水素ナトリウム、燐酸水素アンモニウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。また、有機アルカリ化合物としては、例えば、モノエチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどのアミン化合物が挙げられる。
【実施例】
【0038】
次に本発明の顔料分散液F1〜F6と比較例の顔料分散液G1〜G2を挙げ、また、それらを用いた本発明の着色レジストH1〜H6および比較例の着色レジストJ1〜J2を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。なお、文中「部」または「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0039】
[実施例1〜6](顔料分散液F1〜F6)
顔料a、バインダーb、分散剤c、分散助剤dおよび分散溶媒eの各々の成分を表1に示すように配合し、ディゾルバーを用いて1時間予備混合した後、0.3mmのジルコニアビーズを用いてペイントシェーカーで3時間分散させ本発明の顔料分散液F1〜F6を調製した。
【0040】
上記の各々の成分は下記の通りである。
・顔料a
a1:C.I.ピグメントブルー(15:6)、a2:C.I.ピグメントバイオレット23、a3:C.I.ピグメントレッド254
【0041】
・バインダーb溶液
b1:アクリル系樹脂*42部をプロピレングリコールメチルエーテルアセテートに溶解した42%溶液。
b2:アクリル系樹脂*30部をプロピレングリコールメチルエーテルアセテートに溶解した30%溶液。
上記のb1およびb2のアクリル系樹脂*は、下記の共重合体の樹脂である。 ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート/メタクリル酸/メタクリル酸メチル/メタクリル酸シクロヘキシル共重合体(モル組成比率(%)5/30/45/20)に、メタクリル酸の1/2モルに相当するメタクリル酸グリシジルを付加させた樹脂(重量平均分子量10,000、酸価75mgKOH/g)。上記の樹脂は鎖中にテトラヒドロピラン環を有している。
【0042】
・分散剤c
c1:ポリアクリル系分散剤(ビックケミー社製、Disperbyk2001)、c2:ポリウレタン系高分子分散剤(ビックケミー社製、Disperbyk161)
【0043】
・分散助剤d
d1:1−エトキシ−2−プロパノール、d2:メタノール、d3:2−プロパノール
【0044】
・分散溶媒e
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0045】

【0046】
[比較例1](顔料分散液G1)
実施例1において、分散助剤d1を配合せず、分散溶媒eの配合部数を65にする以外は実施例1と同様にして顔料分散液G1を調製した。上記顔料分散液の調製から5時間後の粘度は11.2mPa・s、また20日後の粘度は15.0mPa・s(25℃)であった。
【0047】
[比較例2](顔料分散液G2)
実施例6において、分散助剤d1を配合せず、分散溶媒eの配合部数を59にする以外は実施例6と同様にして顔料分散液G2を調製した。上記顔料分散液の調製から5時間後の粘度は11.7mPa・s、また20日後の粘度は13.0mPa・s(25℃)であった。
【0048】
前記の各々の顔料分散液を使用して、該分散液の分散性および粘度安定性に関して、下記の方法で測定し評価した。評価結果を表2示す。
(顔料分散液の分散性)
顔料分散液の着色力および発色性を目視により評価し、顔料分散液の分散性を下記の評価基準により判定した。
○:着色力および発色性が良好で、顔料分散液の分散性良好である。
△:着色力および発色性が若干劣り、顔料分散液の分散性やや劣る。
【0049】
(顔料分散液の粘度安定性)
前記の各々の顔料分散液の、調製5時間後の顔料分散液のB型粘度計による初期粘度と、20日間放置後の粘度から粘度変化率を求め、その粘度変化率より粘度安定性を下記の基準で評価した。
○:粘度変化率が、0〜5%未満であり、粘度安定性良好である。
△:粘度変化率が、5〜12%未満であり、粘度安定性やや劣る。
×:粘度変化率が、12%以上であり、粘度安定性劣る。
【0050】

【0051】
[実施例7〜12](着色レジストH1〜H6)
前記の顔料分散液F1〜F6を使用して、下記の感光性樹脂組成物AまたはBを表3のように配合し、均一に混合分散して本発明の着色レジストH1〜H6を調製した。
【0052】
(感光性樹脂組成物A)
上記の感光性樹脂組成物Aは、下記の各々の成分を均一に混合分散して調製した。
・アクリル系樹脂 16.0部
(重量平均分子量10,000、酸価75mgKOH/gのスチレン/アク
リル酸共重合体42%のプロピレングリコールメチルエーテルアセテート
溶液)
・モノマー(東亜合成化学(株)製、アロニックスM−402) 8.0部
・2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプ
ロパノン−1 3.0部
・2,4−ジエチルチオキサントン 1.4部
・フッ素系界面活性剤 0.8部
(住友スリーエム(株)製、フロラードFC−431)
・アクリル系シランカップリング剤 0.8部
(信越化学工業(株)製、KBE−503)
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 70.0部
【0053】
(感光性樹脂組成物B)
上記の感光性樹脂組成物Bは、下記の各々の成分を均一に混合分散して調製した。
・アクリル系樹脂 14.0部
(重量平均分子量10,000、酸価75mgKOH/gのスチレン/アク
リル酸共重合体30%のプロピレングリコールメチルエーテルアセテート
溶液)
・モノマー(東亜合成化学(株)製、アロニックスTO1382)8.0部
・2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプ
ロパノン−1 1.5部
・2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノ−フェニル
)ブタノン−1 1.5部
・2−イソプロピルチオキサントン 0.4部
・フッ素系界面活性剤 0.8部
(住友スリーエム(株)製、フロラードFC−431)
・アクリル系シランカップリング剤 0.8部
(信越化学工業(株)製、KBE−503)
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 73.0部
【0054】

【0055】
[比較例3](着色レジストJ1)
実施例7における顔料分散液F1をG1に置き換える以外は、実施例7の着色レジストH1の調製と同様にして、着色レジストJ1を調製した。上記着色レジストJ1の調製から5時間後の粘度は4.05mPa・s、また20日後の粘度は3.84mPa・s(25℃)であった。
【0056】
[比較例4](着色レジストJ2)
実施例12における顔料分散液F6をG2に置き換える以外は、実施例12の着色レジストH6の調製と同様にして、着色レジストJ2を調製した。上記着色レジストJ2の調製から5時間後の粘度は4.04mPa・s、また20日後の粘度は3.60mPa・s(25℃)であった。
【0057】
前記の実施例および比較例で得られた各々の着色レジストを用いて、カラーフィルター用のガラス基板上にスピンコートし(乾燥厚み2μm)、70℃で3分間ホットプレートにて予備乾燥させた後、プロキシ露光機にてクロムマスクを介して、露光ギャップ150μm、超高圧水銀灯で60mJ/cm2の光量で露光し、次に、0.05%の水酸化カリウム水溶液でアルカリ現像を行い、現像後、230℃で30分間硬化処理して画素を形成した基板を作製した。上記の基板の画素のコントラスト、および塗布安定性(溶剤再溶解性)に関して下記の測定方法により評価した。評価結果を表3に示す。
【0058】
(コントラスト)
上記の画素が形成された基板を2枚の偏光板(日東電工製、NPF−G 1220DU)で挟み、バックライト(東芝製、メロウ5D FL10Ex−D−H 色温度6500K)を点灯し、偏光板の直交時と平行時の輝度を輝度計(ミノルタ製、SL−100)により測定したコントラスト比の値である。コントラスト比は輝度の測定値を用い以下の式より導き出した。
コントラスト比=平行輝度(cd/m2)/直交輝度(cd/m2
【0059】
(塗布安定性)
前記で得られた各々の着色レジストを使用して、5mm幅の短冊状のガラス板の先端に浸漬塗布し、23℃、湿度70%の恒温恒湿槽で30分間乾燥させ、乾燥後、着色レジストを構成する溶剤5gに15秒間浸漬して再溶解させ、再溶解後、カラービューアーを使用して、溶解してない着色レジスト片の有無を目視にて測定し、下記の評価方法で塗布安定性を評価した。
○:着色レジスト片が全く認められず、塗布安定性が、良好である。
×:着色レジスト片が認められ、塗布安定性が劣る。
なお、上記の塗布安定性の評価は、スリットノズルコーター法で、着色レジストをカラーフィルター用ガラス基板に塗布した場合に、着色レジストの溶剤再溶解性が十分の場合、その不溶物による異物欠陥発生が起こらず塗布安定性が良好であり、一方、着色レジストの溶剤再溶解性が劣ると、上記の異物欠陥発生が起きることにより、塗布安定性が劣るという、溶剤再溶解性からの代替え評価である。
【0060】

【0061】
前記の評価結果から、分散助剤を用いた本発明の顔料分散液は、分散特性が優れており、レジスト特性に優れた着色レジストを与えることが実証されている。一方、分散助剤を使用しない比較例の顔料分散液は、分散特性が劣り、また、比較例1の顔料分散液から得られる青色着色レジストおよび比較例2の顔料分散液から得られる赤色着色レジストは各々のコントラストが実施例の着色レジストに比べて劣っており、また、塗布安定性も劣っている。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の顔料分散液は、分散特性が優れており、感光性樹脂組成物と配合することにより、カラーフィルター製造するためのレジスト特性に優れた着色レジストが得られることから、着色レジスト用の顔料分散液として有効に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも顔料と、バインダーと、分散剤と、分散助剤とを分散溶媒中に含有してなり、上記分散助剤が、炭素数1〜5の脂肪族飽和アルコール(a1)および/または下記一般式(1)で表わされる化合物(a2)であり、全顔料分散液中に1質量%〜10質量%を占める量で含有されていることを特徴とする顔料分散液。
R1−O−R2−OH (1)
(上記一般式(1)において、R1およびR2は炭素数が1〜5のアルキル基またはアルキレン基を表わす。)
【請求項2】
前記分散助剤が、全分散溶媒中で0.1質量%〜17質量%を占める量である請求項1に記載の顔料分散液。
【請求項3】
前記分散助剤の表面張力が、20dyn/cm〜30dyn/cm(20℃)である請求項1または2に記載の顔料分散液。
【請求項4】
粘度が、3mPa・s〜50mPa・s(25℃)である請求項1〜3のいずれか1項に記載の顔料分散液。
【請求項5】
前記化合物a2が、プロピレングリコールモノアルキルエーテルである請求項1〜4のいずれか1項に記載の顔料分散液。
【請求項6】
さらに、前記分散溶媒が、下記一般式(2)で表わされる化合物(b成分)を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の顔料分散液。

(上記一般式(2)において、R3はアルキル基を、R4は水素原子またはアルキル基、nは1〜4の整数を表わす。)
【請求項7】
前記b成分が、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテートである請求項6に記載の顔料分散液。
【請求項8】
前記のバインダーが、光硬化性のアクリル系樹脂である請求項1に記載の顔料分散液。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の顔料分散液を含有することを特徴とするカラーフィルター用着色感光性組成物。
【請求項10】
前記分散助剤が、0.1質量%〜3質量%を占める量で含有されている請求項9に記載のカラーフィルター用着色感光性組成物。
【請求項11】
粘度が、2mPa・s〜20mPa・s(25℃)である請求項9または10のいずれか1項に記載のカラーフィルター用着色感光性組成物。

【公開番号】特開2008−248109(P2008−248109A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91817(P2007−91817)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000183923)ザ・インクテック株式会社 (268)
【Fターム(参考)】