説明

顔料分散組成物、着色硬化性組成物、固体撮像素子用カラーフィルタ及びその製造方法、並びに固体撮像素子

【課題】支持体上に着色パターン形成する際に現像条件を強化した場合であっても、支持体に対する着色パターンの密着性維持と残渣の発生抑制とを両立しうる着色硬化性組成物に好適な顔料分散組成物の提供。
【解決手段】一般式(1)で表されるアゾ顔料と、酸性官能基を有する、有機色素誘導体、アントラキノン誘導体、及びトリアジン誘導体から選択される少なくとも一種の化合物と、分散剤とを含有する顔料分散組成物〔G:水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基;R:アミノ基、脂肪族オキシ基、脂肪族基、アリール基、又はヘテロ環基;R:置換基;A:ヘテロ環基;m:0〜5の整数;n:1〜4の整数;一般式(1)中にイオン性親水性基を有することはない。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料分散組成物、着色硬化性組成物、固体撮像素子用カラーフィルタ及びその製造方法、並びに固体撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子や液晶表示素子をカラー化するために用いられるカラーフィルタとしては、基板上に同一平面に隣接して形成された赤色フィルタ層、緑色フィルタ層、及び青色フィルタ層から構成されるカラーフィルタや、イエローフィルタ層、マゼンタフィルタ層、及びシアンフィルタ層からなるカラーフィルタが知られている(本明細書中では、上記各色の着色フィルタ層を「着色パターン」ともいう)。
【0003】
近年、カラーフィルタにおいては、更なる高精細化が望まれている。
しかし、従来の顔料分散系においては解像度が向上せず、また、顔料の粗大粒子による色ムラが発生する等の問題点を有しているために、固体撮像素子のような微細パターンが要求される用途には適さなかった。この問題点を解決するために従来から染料の使用が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
例えば、カラーフィルタの赤色のフィルターアレイには赤染料が用いられることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかし、染料により得られた着色パターンは、耐熱性、耐光性が十分でないため、耐熱性、耐光性に優れた有機顔料を用いたカラーフィルタについて検討されている。
有機顔料を用いたカラーフィルタの製造方法としては、例えば、有機顔料を感光性樹脂中に分散した組成物を露光し、現像することによってパターニングする工程を所要の回数繰り返し行う、フォトリソグラフィー法(例えば、特許文献3参照)、有機顔料を含有するインクを用いるオフセット印刷、インクジェット印刷などの印刷方法などが挙げられる。
【0005】
カラーフィルタ用有機顔料として、アントラキノン系、ジケトピロロピロール系、キナクリドン系、イソインドリン系、ペリノン系、ペリレン系、縮合アゾ系などの耐熱性及び耐光性に優れた有機顔料の使用が検討されている。
そして、特許文献4には、ナフタレン環を含むモノアゾ化合物を含むカラーフィルタ用赤色インク組成物について提案されている。こうした種々の顔料を使用し、良好な分光特性を持つカラーフィルタを得る検討がなされている。
【0006】
一方、近年のカラーフィルタは、従来にも増してさらに微細化が進行している。こうした微細なカラーフィルタの作製工程では、形成される着色パターンが小さいことに由来して、残渣が発生し易くなっており、こうした残渣がカラーフィルタの性能に悪影響を与え、問題となることが多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−75375号公報
【特許文献2】特開平5−5067号公報
【特許文献3】特開平1−152449号公報
【特許文献4】国際公開第05/052074号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
こうした中で、着色パターン形成時における残渣をより少なくする手段として、現像工程の強化(アルカリ濃度の高い現像液の使用、現像時間の延長、現像工程を数回繰り返す等)により残渣を減少させる場合がある。しかし、このような現像工程の強化を行った場合、基材から着色パターンが剥がれ易くなり、歩留まりが悪くなるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、支持体上に着色パターン形成する際に現像条件を強化した場合であっても、支持体に対する着色パターンの密着性維持と残渣の発生抑制とを両立しうる着色硬化性組成物に好適な顔料分散組成物、及び該顔料分散組成物を含有する着色硬化性組成物を提供することにある。
また、本発明の目的は、剥がれ欠陥及び残渣欠陥の少ない着色パターンを有する固体撮像素子用カラーフィルタ、及び該カラーフィルタを備えた固体撮像素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 一般式(1)で表されるアゾ顔料と、酸性官能基を有する有機色素誘導体、酸性官能基を有するアントラキノン誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と、分散剤とを含有する顔料分散組成物。
【0011】
【化1】

【0012】
一般式(1)中、Gは、水素原子、脂肪族基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、Rは、アミノ基、脂肪族オキシ基、脂肪族基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、Rは置換基を表す。
Aは、下記一般式(A−1)〜(A−32)で表される基のいずれかを表す。
mは0〜5の整数を表し、nは1〜4の整数を表す。
n=2の場合、一般式(1)は、R、R、A又はGを介した2量体を表す。
n=3の場合、一般式(1)は、R、R、A又はGを介した3量体を表す。
n=4の場合、一般式(1)は、R、R、A又はGを介した4量体を表す。
一般式(1)中にイオン性親水性基を有することはない。
【0013】
【化2】

【0014】
一般式(A−1)〜(A−32)中、R51〜R59は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基を表し、隣接する置換基は互いに結合し、5〜6員環を形成していてもよい。*は一般式(1)中のアゾ基との結合位置を表す。
【0015】
<2> 前記一般式(1)で表されるアゾ顔料が、下記一般式(2)で表されるアゾ顔料である<1>に記載の顔料分散組成物。
【0016】
【化3】

【0017】
一般式(2)中、R21は、アミノ基、脂肪族オキシ基、脂肪族基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、R22は置換基を表す。R55及びR59は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を表す。
mは0〜5の整数を表し、nは1〜4の整数を表す。
Zはハメットのσp値が0.2以上の電子求引性基を表す。
n=2の場合、一般式(2)は、R21、R22、R55、R59又はZを介した2量体を表す。
n=3の場合、一般式(2)は、R21、R22、R55、R59又はZを介した3量体を表す。
n=4の場合、一般式(2)は、R21、R22、R55、R59又はZを介した4量体を表す。
一般式(2)中にイオン性親水性基を有することはない。
【0018】
<3> 前記酸性官能基を有する有機色素誘導体、酸性官能基を有するアントラキノン誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物が、スルホ基又はカルボキシ基を有するトリアジン誘導体である<1>〜<2>に記載の顔料分散組成物。
<4> 前記分散剤が、窒素原子を含有する分散剤である<1>〜<3>に記載の顔料分散組成物。
<5> 前前記分散剤が、(i)窒素原子を有する主鎖部と、(ii)pKaが14以下である官能基を有し、該主鎖部に存在する窒素原子と結合する基「X」と、(iii)数平均分子量が500〜1,000,000であるオリゴマー鎖又はポリマー鎖「Y」を含む側鎖と、を有する樹脂である<1>〜<4>に記載の顔料分散組成物。
<6> 前記一般式(1)で表されるアゾ顔料が、ソルベントソルトミリングされたアゾ顔料である<1>〜<5>のいずれか1項に記載の顔料分散組成物。
<7> 更に、レッド、イエロー、オレンジ、及びバイオレットから選択される色相を有する顔料を含有する<1>〜<6>のいずれか1項に記載の顔料分散組成物。
【0019】
<8> <1>〜<7>のいずれか1項に記載の顔料分散組成物と、光重合開始剤と、重合性化合物を含有する着色硬化性組成物。
<9> 前記光重合開始剤が、オキシム系光重合開始剤である<8>に記載の着色硬化性組成物。
【0020】
<10> 支持体上に、<8>又は<9>に記載の着色硬化性組成物を付与して着色硬化性組成物層を形成する工程と、前記着色硬化性組成物層をマスクを介して露光する工程と、露光後の着色硬化性組成物層を現像して着色パターンを形成する工程と、を含むことを特徴とする固体撮像素子用カラーフィルタの製造方法。
<11> <10>に記載の固体撮像素子用カラーフィルタの製造方法により製造された固体撮像素子用カラーフィルタ。
<12> <11>に記載の固体撮像素子用カラーフィルタを備えた固体撮像素子。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、支持体上に着色パターン形成する際に現像条件を強化した場合であっても、支持体に対する着色パターンの密着性維持と残渣の発生抑制とを両立しうる着色硬化性組成物に好適な顔料分散組成物、及び該顔料分散組成物を含有する着色硬化性組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、剥がれ欠陥及び残渣欠陥の少ない着色パターンを有する固体撮像素子用カラーフィルタ、及び該カラーフィルタを備えた固体撮像素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[顔料分散組成物]
本発明の顔料分散組成物は、一般式(1)で表されるアゾ顔料と、酸性官能基を有する有機色素誘導体、酸性官能基を有するアントラキノン誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と、分散剤とを含有する。
【0023】
【化4】

【0024】
一般式(1)中、Gは、水素原子、脂肪族基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、Rは、アミノ基、脂肪族オキシ基、脂肪族基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、Rは置換基を表す。
Aは、下記一般式(A−1)〜(A−32)で表される基のいずれかを表す。
mは0〜5の整数を表し、nは1〜4の整数を表す。
n=2の場合、一般式(1)は、R、R、A又はGを介した2量体を表す。
n=3の場合、一般式(1)は、R、R、A又はGを介した3量体を表す。
n=4の場合、一般式(1)は、R、R、A又はGを介した4量体を表す。
一般式(1)中にイオン性親水性基を有することはない。
【0025】
【化5】

【0026】
一般式(A−1)〜(A−32)中、R51〜R59は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基を表し、隣接する置換基は互いに結合し、5〜6員環を形成していてもよい。*は一般式(1)中のアゾ基との結合位置を表す。
【0027】
本発明の顔料分散組成物は、カラーフィルタ等が有する着色パターンの形成に用いうる着色硬化性組成物として好適であり、その特徴的な構成の一つは、酸性官能基を有する特定の誘導体を含有することである。かかる構成を有することにより、本発明の顔料分散組成物を含有する着色硬化性組成物(本発明の着色硬化性組成物)は、これを用いて支持体上に着色パターン形成する際に現像条件を強化した場合であっても、支持体に対する着色パターンの密着性を維持しつつも、残渣の発生を抑制することができる。
【0028】
本発明の顔料分散組成物を適用することにより、支持体に対する着色パターンの密着性の維持と残渣の発生抑制とが現像条件を強化した場合であっても両立する作用については定かではないが、本発明における特徴的な成分の一つである酸性官能基を有する特定の誘導体は、着色パターンの非形成領域においては、酸性官能基の存在に起因して現像性の向上に大きく寄与するため残渣の発生を効果的に抑制することができ、その一方で、着色パターン(硬化膜)の形成領域においては、当該特定の誘導体が有する酸性官能基が支持体と相互作用することで基材に対する着色パターンの密着性が向上するためと推定している。
【0029】
<一般式(1)で表されるアゾ顔料>
本発明の顔料分散組成物及び着色硬化性組成物は、下記一般式(1)で表されるアゾ顔料を含有する。
【0030】
【化6】

【0031】
一般式(1)中、Gは、水素原子、脂肪族基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、Rは、アミノ基、脂肪族オキシ基、脂肪族基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、Rは置換基を表す。
Aは、下記一般式(A−1)〜(A−32)で表される基のいずれかを表す。
mは0〜5の整数を表し、nは1〜4の整数を表す。
n=2の場合、一般式(1)は、R、R、A又はGを介した2量体を表す。
n=3の場合、一般式(1)は、R、R、A又はGを介した3量体を表す。
n=4の場合、一般式(1)は、R、R、A又はGを介した4量体を表す。
一般式(1)中にイオン性親水性基を有することはない。
【0032】
【化7】

【0033】
一般式(A−1)〜(A−32)中、R51〜R59は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、隣接する置換基は互いに結合し、5〜6員環を形成していてもよい。*は一般式(1)のアゾ基との結合位置を表す。
【0034】
一般式(1)で表される化合物は、その特異的な構造により色素分子の分子間相互作用を形成しやすく、水又は有機溶媒等に対する溶解性が低く、アゾ顔料することができる。
顔料は、水や有機溶媒等に分子分散状態で溶解させて使用する染料とは異なり、溶媒中に分子集合体等の固体粒子として微細に分散させて用いるものである。
【0035】
ここで、アゾ顔料を含む顔料に関して説明する。
顔料は、色素分子間の強力な相互作用による凝集エネルギーによって、分子同士がお互いに強固に結合しあっている状態のことである。この状態を作るには、分子間のファンデルワールス力、分子間水素結合が必要であることが、例えば、日本画像学会誌、43巻、10頁(2004年)等に記載されている。
分子間のファンデルワールス力を強めるには、分子への芳香族基、極性基及び/又はヘテロ原子の導入等が考えられる。また、分子間水素結合を形成させるには、分子へのヘテロ原子に結合した水素原子を含有する置換基の導入及び/又は電子供与性の置換基の導入等が考えられる。更に分子全体の極性が高い方が好ましいと考えられる。そのためには、アゾ顔料においては、例えば、アルキル基等鎖状の基は短い方が好ましく、分子量/アゾ基の値は小さい方が好ましいと考えられる。
これらの観点から、顔料分子は、アミド結合、スルホンアミド結合、エーテル結合、スルホン基、オキシカルボニル基、イミド基、カルバモイルアミノ基、ヘテロ環、ベンゼン環等を含有することが好ましい。
【0036】
また、下記一般式(1)で表されるアゾ顔料は、特定の構造を有することにより、着色力、色相等の色彩的特性において優れた特性を示し、かつ耐光性、耐オゾン性等の耐久性にも優れた特性を示すことができる。
具体的には、一般式(1)で表されるアゾ顔料を含有する本発明の顔料分散組成物を用いて形成されたカラーフィルタの赤色パターンは、赤色として良好な分光特性を示す。
ここで、「赤色として良好な分光特性」とは、例えば以下の性質の少なくとも1つを指す。下記2つの性質を全て満たす分光特性が最も優れている。
・650nm〜750nmの波長領域における透過率が高い。
・540nm未満の波長領域(特に、350nm〜400nm)における透過率が低い。
【0037】
以下、一般式(1)で表されるアゾ顔料について、詳細に説明する。
まず、一般式(1)における脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、及び置換基について説明する。
【0038】
一般式(1)における脂肪族基として、その脂肪族部位は直鎖、分岐鎖及び環状のいずれであってもよい。また、飽和であっても不飽和であってもよい。具体的には、例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等を挙げることができる。さらに、脂肪族基は無置換であっても置換基を有していてもよい。
【0039】
一般式(1)におけるアリール基は、単環であっても縮合環であってもよい。また、該アリール基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。
一般式(1)におけるヘテロ環基は、そのヘテロ環部位が環内にヘテロ原子(例えば、窒素原子、イオウ原子、酸素原子)を持つものであればよく、飽和環であっても、不飽和環であってもよい。また、該ヘテロ環部位は、単環であっても縮合環であってもよい。さらに、該ヘテロ環基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。
【0040】
また、一般式(1)における置換基とは、置換可能な基であればよく、例えば、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、脂肪族スルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロ環スルホニル基、脂肪族スルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、ヘテロ環スルホニルオキシ基、スルファモイル基、脂肪族スルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環オキシカルボニルアミノ基、脂肪族スルフィニル基、アリールスルフィニル基、脂肪族チオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、脂肪族オキシアミノ基、アリールオキシアミノ基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ハロゲン原子、スルファモイルカルバモイル基、カルバモイルスルファモイル基、ジ脂肪族オキシホスフィニル基、ジアリールオキシホスフィニル基等を挙げることができる。これらの置換基は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、以上に説明した置換基から選択される基を挙げることができる。
【0041】
置換基がアシル基である場合、該アシル基は、脂肪族カルボニル基であっても、アリールカルボニル基であっても、ヘテロ環カルボニル基であってもよく、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、上記置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。例えばアセチル、プロパノイル、ベンゾイル、3−ピリジンカルボニル等が挙げられる。
【0042】
一般式(1)で表されるアゾ顔料は、溶解性の観点からイオン性親水性基(例えば、カルボキシ基、スルホ基、ホスホノ基及び4級アンモニウム基)を置換基として含有することはない。
【0043】
一般式(1)中、Gで表される脂肪族基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。該置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、Gで表される脂肪族基に置換可能な基であれば何でもよく、好ましい置換基としては、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基である。Gで表される脂肪族基として、好ましくは総炭素原子数1〜8の脂肪族基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜4のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、ビニル、シクロヘキシル、カルバモイルメチル等が挙げられる。
【0044】
一般式(1)中、Gで表されるアリール基としては、縮環していてもよく、置換基を有していてもよい。該置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、Gで表されるアリール基に置換可能な基であれば何でもよく、好ましい置換基としては、ニトロ基、ハロゲン原子、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基である。Gで表されるアリール基として、好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、より好ましくは総炭素原子数6〜10のアリール基であり、例えばフェニル、4−ニトロフェニル、4−アセチルアミノフェニル、4−メタンスルホニルフェニル等が挙げられる。
【0045】
一般式(1)中、Gで表されるヘテロ環基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、縮環していてもよい。該置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、Gで表されるヘテロ環基に置換可能な基であれば何でもよく、好ましい置換基としてはハロゲン原子、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基である。Gで表されるヘテロ環基として、好ましくは総炭素原子数2〜12の炭素原子で結合したヘテロ環基であり、より好ましくは炭素原子で結合した総炭素原子数2〜10の5〜6員へテロ環であり、例えば2−テトラヒドロフリル、2−ピリミジル等が挙げられる。
【0046】
Gとして好ましくは、水素原子である。これは分子内水素結合又は分子内交叉水素結合を形成しやすくなるためである。
【0047】
で表されるアミノ基としては、置換基を有していてもよい。該置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、Rで表されるアミノ基に置換可能な基であれば何でもよく、好ましい置換基としては、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基等が挙げられる。
これらの置換基は、更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、脂肪族基、ヒドロキシ基、アミド結合、エーテル結合、オキシカルボニル結合、チオエーテル結合等を有する置換基が好ましく、ヘテロ原子と水素原子の結合を有する置換基が、分子間水素結合等の分子間相互作用をし易くする観点でより好ましい。
で表される置換基を有してもよいアミノ基として、好ましくは無置換のアミノ基、総炭素原子数1〜10のアルキルアミノ基、総炭素原子数2〜10のジアルキルアミノ基(ジアルキル基が互いに結合し、5〜6員環を形成していてもよい)、総炭素原子数6〜12のアリールアミノ基、総炭素原子数2〜12の飽和であっても、不飽和であってもよいヘテロ環アミノ基であり、より好ましくは、無置換のアミノ基、総炭素原子数1〜8のアルキルアミノ基、総炭素原子数2〜8のジアルキルアミノ基、総炭素原子数6〜10のアリールアミノ基、総炭素原子数2〜12の飽和であっても、不飽和であってもよいヘテロ環アミノ基であり、例えばメチルアミノ、N,N−ジメチルアミノ、N−フェニルアミノ、N−(2−ピリミジル)アミノ等が挙げられる。
更に好ましくは、置換基を有していてもよい総炭素原子数6〜13のアリールアミノ基及び置換基を有していてもよい総炭素原子数2〜12の飽和であっても、不飽和であってもよいヘテロ環アミノ基である。
【0048】
がアリールアミノ基である場合、アリール基上の置換基が、アミノ基との結合位置からパラ位に置換基を有する場合が好ましく、パラ位にのみ置換基を有する場合が最も好ましい。その置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、Rで表されるアリールアミノ基に置換可能な基であれば何でもよく、好ましくは、総炭素原子数1〜7、より好ましくは総炭素原子数1〜4の置換基を有していてもよい脂肪族基(例えばメチル、エチル、アリル、(i)−プロピル、(t)−ブチル等)、総炭素原子数1〜7の置換基を有していてもよい脂肪族オキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、(i)−プロピルオキシ、アリルオキシ等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、総炭素原子数1〜7の置換基を有していてもよいカルバモイル基(例えば、カルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N−メチルカルバモイル等)、総炭素原子数1〜7、より好ましくは総炭素原子数1〜4の置換基を有していてもよいウレイド基(例えば、ウレイド、N−メチルウレイド、N,N−ジメチルウレイド、N−4−ピリジルウレイド、N−フェニルウレイド等)、ニトロ基、総炭素原子数1〜7の該アリール基と縮環したヘテロ環(例えば、イミダゾロン)、ヒドロキシ基、総炭素原子数1〜7、より好ましくは総炭素原子数1〜4の置換基を有していてもよい脂肪族チオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、(i)−プロピルチオ、アリルチオ、(t)−ブチルチオ等)、総炭素原子数2〜7、より好ましくは総炭素原子数2〜4の置換基を有していてもよいアシルアミノ基(例えば、アセトアミノ、プロピオニルアミノ、ピバロイルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、総炭素原子数2〜7、より好ましくは総炭素原子数2〜4の置換基を有していてもよい脂肪族オキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ、プロピルオキシカルボニルアミノ等)、総炭素原子数2〜7、より好ましくは総炭素原子数2〜4の置換基を有していてもよい脂肪族オキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、総炭素原子数2〜7、より好ましくは総炭素原子数2〜4の置換基を有していてもよいアシル基(脂肪族カルボニル基であっても、アリールカルボニル基であっても、ヘテロ環カルボニル基であってもよく、置換基を有していてもよく、該置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、該アシル基に置換可能な基であれば何でもよい。好ましくは総炭素原子数2〜7のアシル基であり、より好ましくは総炭素原子数2〜4のアシル基であり、例えばアセチル、プロパノイル、ベンゾイル、3−ピリジンカルボニル等が挙げられる。)等が挙げられる。
【0049】
アリールアミノ基のアリール基上の置換基が、アミノ基との結合位置からパラ位に置換した場合、置換基が分子の末端にあるために、分子間水素結合等の分子間相互作用をし易く、そのために色相がシャープになる。該アリール基上の置換基が更に置換基を有する場合は、脂肪族基、ヒドロキシ基、アミド結合、エーテル結合、オキシカルボニル結合、チオエーテル結合等を有する置換基が好ましく、ヘテロ原子と水素原子の結合を有する置換基が、分子間水素結合等の分子間相互作用をし易くする観点でより好ましい。
【0050】
がへテロ環アミノ基の場合、その置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、Rで表されるへテロ環アミノ基に置換可能な基であれば何でもよく、前記アリールアミノ基の場合と同じ置換基が好ましいが、該ヘテロ環基上の置換基が更に置換基を有する場合は、脂肪族基、ヒドロキシ基、アミド結合、エーテル結合、オキシカルボニル結合、チオエーテル結合等を有する置換基が好ましく、ヘテロ原子と水素原子の結合を有する置換基が、分子間水素結合等の分子間相互作用をし易くする観点でより好ましい。
【0051】
が、アリールアミノ基、へテロ環アミノ基である場合のより好ましい置換基としては、脂肪族基、脂肪族オキシ基、ハロゲン原子、カルバモイル基、該アリール基と縮環したへテロ環、脂肪族オキシカルボニル基である。置換基として更に好ましくは総炭素原子数1〜4の脂肪族基、総炭素原子数1〜4の脂肪族オキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、総炭素原子数1〜4のカルバモイル基、総炭素原子数2〜4の脂肪族オキシカルボニル基である。
【0052】
で表される脂肪族オキシ基としては、置換基を有していてもよく、該置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、Rで表される脂肪族オキシ基に置換可能な基であれば何でもよく、好ましい置換基としては、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基である。Rで表される脂肪族オキシ基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルコキシ基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜4のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ、エトキシ、(t)−ブトキシ、メトキシエトキシ、カルバモイルメトキシ等が挙げられる。
【0053】
で表される脂肪族基としては、置換基を有していてもよく、該置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、Rで表される脂肪族基に置換可能な基であれば何でもよく、好ましい置換基としては、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基である。R表される脂肪族基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは総炭素数数1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、(s)−ブチル、メトキシエチル、カルバモイルメチル等が挙げられる。
【0054】
で表されるアリール基としては、置換基を有していてもよく、該置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、Rで表されるアリール基に置換可能な基であれば何でもよく、好ましい置換基としては、脂肪族基、脂肪族オキシ基、ハロゲン原子、カルバモイル基、該アリール基と縮環したへテロ環、脂肪族オキシカルボニル基である。Rで表されるアリール基として、好ましくは総炭素原子数6〜12のアリール基であり、より好ましくは総炭素原子数6〜10のアリール基であり、例えば、フェニル、4−メチルフェニル、3−クロルフェニル等が挙げられる。
【0055】
で表されるヘテロ環基としては、飽和ヘテロ環であっても、不飽和ヘテロ環基であってもよく、置換基を有していてもよい。該置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、Rで表されるヘテロ環基に置換可能な基であれば何でもよく、好ましい置換基としては、脂肪族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、該へテロ基と縮環したへテロ環、脂肪族オキシカルボニル基である。Rで表されるヘテロ環基として、好ましくは総炭素原子数2〜10のヘテロ環基であり、より好ましくは総炭素原子数2〜8の窒素原子で結合した5〜6員環の非芳香族ヘテロ環基であり、例えば、1−ピペリジル、4−モルホリニル、1−キノイル、2−ピリミジル、4−ピリジル等が挙げられる。
【0056】
として好ましくは、置換基を有していてもよいアミノ基、脂肪族オキシ基、窒素原子で結合した5〜6員環の非芳香族ヘテロ環基の場合であり、より好ましくは、置換基を有していてもよいアミノ基、脂肪族オキシ基、更に好ましくは置換基を有していてもよいアミノ基である。
【0057】
としてより好ましくは、置換基を有していてもよいアミノ基の場合である。
【0058】
で表される置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、Rとして置換可能な基であれば何でもよく、好ましくは、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、カルボキシ基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、置換基を有していてもよいカルバモイルアミノ基、置換基を有していてもよいスルファモイル基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、アシルアミノ基、置換基を有していてもよいカルバモイルアミノ基、脂肪族オキシ基、ハロゲン原子であり、最も好ましくは、脂肪族オキシ基である。
これらの置換基が更に置換基を有する場合は、脂肪族基、ヒドロキシ基、アミド結合、エーテル結合、オキシカルボニル結合、チオエーテル結合等を有する置換基が好ましく、ヘテロ原子と水素原子の結合を有する置換基が、分子間水素結合等の分子間相互作用をし易くする観点でより好ましい。
【0059】
mは、0〜3である場合が好ましく、0〜1である場合はより好ましく、0である場合は更に好ましい。
nは1又は2である場合が好ましい。
【0060】
で表される脂肪族基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。該置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、Rで表される脂肪族基に置換可能な基であれば何でもよい。Rで表される脂肪族基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、i−プロピル、シクロヘキシル、t−ブチル等が挙げられる。
【0061】
で表されるアリール基としては、置換基を有していてもよい。該置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、Rで表されるアリール基に置換可能な基であれば何でもよい。Rで表されるアリール基として、好ましくは総炭素原子数6〜12のアリール基であり、より好ましくは総炭素原子数6〜10のアリール基であり、例えば、フェニル、3−メトキシフェニル、4−カルバモイルフェニル等が挙げられる。
【0062】
で表されるヘテロ環基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、縮環していてもよい。該置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、Rで表されるヘテロ環基に置換可能な基であれば何でもよい。Rで表されるヘテロ環基として、好ましくは総炭素原子数2〜16のヘテロ環基であり、より好ましくは総炭素原子数2〜12の5〜6員環のヘテロ環基であり、例えば、1−ピロリジニル、4−モルホリニル、2−ピリジル、1−ピロリル、1−イミダゾリル、1−ベンゾイミダゾリル等が挙げられる。
【0063】
で表される脂肪族オキシカルボニル基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。該置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、Rで表される脂肪族オキシカルボニル基に、置換可能な基であれば何でもよい。Rで表される脂肪族オキシカルボニル基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルコキシカルボニル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル、i−プロピルオキシカルボニル、カルバモイルメトキシカルボニル等が挙げられる。
【0064】
で表されるカルバモイル基としては、置換基を有していてもよい。該置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、Rで表されるカルバモイル基に置換可能な基であれば何でもよく、好ましくは、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基等である。Rで表される置換基を有していてもよいカルバモイル基として、好ましくはカルバモイル基、総炭素原子数2〜9のアルキルカルバモイル基、総炭素原子数3〜10のジアルキルカルバモイル基、総炭素原子数7〜13のアリールカルバモイル基、総炭素原子数3〜12のヘテロ環カルバモイル基であり、より好ましくはカルバモイル基、総炭素原子数2〜7のアルキルカルバモイル基、総炭素原子数3〜6のジアルキルカルバモイル基、総炭素原子数7〜11のアリールカルバモイル基、総炭素原子数3〜10のヘテロ環カルバモイル基であり、例えば、カルバモイル、メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、フェニルカルバモイル、4−ピリジンカルバモイル等が挙げられる。
【0065】
で表されるアシルアミノ基としては、置換基を有していてもよく、脂肪族であっても、芳香族であっても、ヘテロ環であってもよい。該置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、Rで表されるアシルアミノ基に置換可能な基であれば何でもよい。Rで表されるアシルアミノ基として、好ましくは総炭素原子数2〜12のアシルアミノ基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜8のアシルアミノ基であり、更に好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキルカルボニルアミノ基であり、例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、2−ピリジンカルボニルアミノ、プロパノイルアミノ等が挙げられる。
【0066】
で表されるスルホンアミド基としては、置換基を有していてもよく、脂肪族であっても、芳香族であっても、ヘテロ環であってもよい。該置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、Rで表されるスルホンアミド基に置換可能な基であれば何でもよい。Rのスルホンアミド基として、好ましくは総炭素原子数1〜12のスルホンアミド基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜8のスルホンアミド基であり、更に好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキルスルホンアミド基であって、例えばメタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、2−ピリジンスルホンアミド等が挙げられる。
【0067】
で表されるカルバモイルアミノ基としては置換基を有していてもよい。該置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、Rで表されるカルバモイルアミノ基に置換可能な基であれば何でもよく、好ましくは、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基等である。Rの置換基を有していてもよいカルバモイルアミノ基として、好ましくはカルバモイルアミノ基、総炭素原子数2〜9のアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3〜10のジアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数7〜13のアリールカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3〜12のヘテロ環カルバモイルアミノ基であり、より好ましくはカルバモイルアミノ基、総炭素原子数2〜7のアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3〜6のジアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数7〜11のアリールカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3〜10のヘテロ環カルバモイルアミノ基であり、例えば、カルバモイルアミノ、メチルカルバモイルアミノ、N,N−ジメチルカルバモイルアミノ、フェニルカルバモイルアミノ、4−ピリジンカルバモイルアミノ等が挙げられる。
【0068】
で表されるスルファモイル基としては置換基を有していてもよい。該置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、Rで表されるスルファモイル基に置換可能な基であれば何でもよく、好ましくは、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基等である。Rの置換基を有していてもよいスルファモイル基として、好ましくはスルファモイル基、総炭素原子数1〜9のアルキルスルファモイル基、総炭素原子数2〜10のジアルキルスルファモイル基、総炭素原子数7〜13のアリールスルファモイル基、総炭素原子数2〜12のヘテロ環スルファモイル基であり、より好ましくはスルファモイル基、総炭素原子数1〜7のアルキルスルファモイル基、総炭素原子数3〜6のジアルキルスルファモイル基、総炭素原子数6〜11のアリールスルファモイル基、総炭素原子数2〜10のヘテロ環スルファモイル基であり、例えば、スルファモイル、メチルスルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイル、4−ピリジンスルファモイル等が挙げられる。
【0069】
で表される脂肪族オキシ基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。該置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、Rで表される脂肪族オキシ基に置換可能な基であれば何でもよい。Rで表される脂肪族オキシ基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルコキシ基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ、エトキシ、i−プロピルオキシ、シクロヘキシルオキシ、メトキシエトキシ等が挙げられる。
【0070】
で表される脂肪族チオ基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。該置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、Rで表される脂肪族チオ基に置換可能な基であれば何でもよい。Rで表される脂肪族チオ基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキルチオ基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ、エチルチオ、カルバモイルメチルチオ、t−ブチルチオ等が挙げられる。
【0071】
で表されるハロゲン原子としては、好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子であり、より好ましくは塩素原子が挙げられる。
本発明の効果の点で、Rは、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基である場合が好ましい。
【0072】
Aで表される一般式(A−1)〜(A−32)について説明する。一般式(A−1)〜(A−32)で表される基は、好ましくは、総炭素原子数2〜15であって、より好ましくは総炭素原子数2〜12である。
【0073】
51〜R54で表される置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、R51〜R54として置換可能な基であれば何でもよい。R51〜R54で表される置換基として、好ましくは脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基等であり、より好ましくは脂肪族基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、脂肪族オキシ基、シアノ基等である。
【0074】
本発明の効果の点で、R51〜R54は、水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基等である場合が好ましく、水素原子、脂肪族基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、脂肪族オキシ基、シアノ基である場合がより好ましい。
【0075】
55で表される置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、R55として置換可能な基であれば何でもよい。R55で表される置換基として、好ましくは脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基等であり、より好ましくは脂肪族基、アリール基、窒素原子との結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員ヘテロ環基である。
【0076】
本発明の効果の点で、R55としては、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基である場合が好ましく、脂肪族基、アリール基、窒素原子との結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員ヘテロ環基である場合がより好ましく、窒素原子との結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員ヘテロ環基である場合が更に好ましい。R55が窒素原子との結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員ヘテロ環基あることにより、色素分子の分子間相互作用だけでなく、分子内相互作用を強固に形成しやすくなる。それにより安定な分子配列の顔料を構成しやすくなり、良好な色相、高い堅牢性(耐光・ガス・熱・水等)を示す点で好ましい。
【0077】
本発明の効果の点で、R55として好ましい、窒素原子との結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員ヘテロ環基は、置換基を有していてもよい。該置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、該芳香族5〜6員ヘテロ環基に置換可能な基であれば何でもよく、好ましい置換基としては、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基であり、飽和へテロ環であっても不飽和へテロ環であっても、縮環へテロ環であってもよく、好ましくは総炭素原子数2〜12の窒素原子との結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員ヘテロ環基であり、より好ましくは総炭素原子数2〜10の窒素原子との結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員ヘテロ環基である。例えば、2−チアゾリル、2−ベンゾチアゾリル、2−オキサゾリル、2−ベンゾオキサゾリル、2−ピリジル、2−ピラジニル、3−ピリダジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、2−イミダゾリル、2−ベンズイミダゾリル、2−トリアジニル等が挙げられ、これらのヘテロ環基は置換基と共に互変異性体構造であってもよい。
【0078】
本発明の効果の点で、R55として好ましいアリール基としては、置換基を有していてもよい。該置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、該アリール基に置換可能な基であれば何でもよく、好ましい置換基としては、ヒドロキシ基、ニトロ基、脂肪族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基である。R55のアリール基として、好ましくは総炭素原子数6〜12のアリール基であり、より好ましくは総炭素原子数6〜10のアリール基であり、例えばフェニル、3−メトキシフェニル、4−カルバモイルフェニル等が挙げられ、フェニル基が好ましい。
【0079】
本発明の効果の点で、R55として好ましい脂肪族基としては、置換基を有していてもよい。該置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、該脂肪族基に置換可能な基であれば何でもよく、好ましい置換基としては、ヒドロキシ基、ニトロ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基である。
55として好ましい脂肪族基として、好ましくは総炭素原子数1〜6のアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜4の脂肪族基であり、例えばメチル、エチル、メトキシエチル、カルバモイルメチル等が挙げられ、メチル基が好ましい。
【0080】
一般式(1)中、R55としては、下記一般式(Y−1)〜(Y−13)で表される基のいずれかである場合が好ましく、分子内水素結合構造をとり易い構造にするために6員環である下記一般式(Y−1)〜(Y−6)で表される基のいずれかである場合はより好ましく、下記一般式(Y−1)、(Y−3)、(Y−4)、及び(Y−6)で表される基のいずれかである場合が更に好ましく、下記(Y−1)又は(Y−4)で表される基である場合が特に好ましい。
下記一般式(Y−1)〜(Y−13)中の*は、ピラゾール環のN原子との結合部位を表す。Y〜Y11は水素原子又は置換基を表す。下記一般式(Y−13)におけるG11は5〜6員ヘテロ環を構成する事ができる非金属原子群を表し、G11で表されるヘテロ環は無置換であっても、置換基を有していてもよく、ヘテロ環は単環であっても縮環していてもよい。一般式(Y−1)〜(Y−13)は置換基と共に互変異性体構造であってもよい。
【0081】
【化8】

【0082】
〜Y11で表される置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、Y〜Y11でとして置換可能な基であれば何でもよい。Y〜Y11で表される置換基として、好ましくは、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基等であり、より好ましくは、脂肪族基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基等である。Y〜Y11中、隣接する2つの置換基は5〜6員環を形成していてもよい。
本発明の効果の点で、Y〜Y11は、水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基等である場合が好ましく、水素原子、脂肪族基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、脂肪族オキシ基、シアノ基である場合はより好ましい。
本発明の効果の点で、Aは、色相の点から5員環へテロ環である場合が好ましく、含窒素あるいは含硫黄5員へテロ環である場合がより好ましく、ヘテロ原子を2個以上含有する5員へテロ環である場合が更に好ましい。
【0083】
56〜R57、R59で表される置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、R56〜R57、R59として置換可能な基であれば何でもよい。R56〜R57、R59で表される置換基として、好ましくは、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基等であり、より好ましくは、脂肪族基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基等である。
【0084】
本発明の効果の点で、R56〜R57、R59は、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基等である場合が好ましく、脂肪族基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基である場合がより好ましい。
【0085】
58で表される置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、R58として置換可能な基であれば何でもよい。本発明の効果の点で、R58として、好ましくは、ヘテロ環基、ハメットの置換基定数σp値が0.2以上の電子求引性基であり、σp値が0.3以上の電子求引性基であることが好ましい。上限としては1.0以下の電子求引性基である。
【0086】
ここで、本明細書中で用いられるハメットの置換基定数σp値について説明する。
ハメット則はベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年L.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば、J.A.Dean編、「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版、1979年(Mc Graw−Hill)や「化学の領域」増刊、122号、96〜103頁、1979年(南光堂)に詳細に記載されている。なお、本発明において各置換基をハメットの置換基定数σpにより限定したり説明したりするが、これは上記の成書で見出せる、文献既知の値がある置換基にのみ限定されるという意味ではなく、その値が文献未知であってもハメット則に基づいて測定した場合にその範囲内に含まれるであろう置換基をも含むことはいうまでもない。本発明における一般式(1)で表されるアゾ顔料はベンゼン誘導体ではないが、置換基の電子効果を示す尺度として、置換位置に関係なくσp値を使用する。本発明においては今後、σp値をこのような意味で使用する。
【0087】
σp値が0.2以上の電子求引性基であるR58の具体例としては、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアリールホスフィニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリールオキシ基、ハロゲン化アルキルアミノ基、ハロゲン化アルキルチオ基、σp値が0.20以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アゾ基、又はセレノシアネート基が挙げられる。
【0088】
また、本発明の効果の点で、R58が、前記一般式(Y−1)〜(Y−13)で表される基である場合も好ましく、分子内水素結合構造をとり易い構造にするために6員環の下記一般式(Y−1)〜(Y−6)で表される基のいずれかである場合がより好ましく、前記一般式(Y−1)、(Y−3)、(Y−4)、(Y−6)で表される基のいずれかである場合が更に好ましく、前記一般式(Y−1)、又は(Y−4)で表される基である場合が特に好ましい。
Aとして挙げられた一般式(A−1)〜(A−32)で表される複素環基の中でも、アゾ基に結合する炭素原子に隣接する原子がヘテロ原子であれば、光、熱堅牢性が高い方向であり、このような構造的特徴を有する顔料をカラーフィルタに用いることで、高いコントラストを示すカラーフィルタを得ることができるため好ましい。
【0089】
本発明の効果の点で、一般式(1)で表されるアゾ顔料は、Gが水素原子であって、Rが置換基を有していてもよいアミノ基、又は窒素原子で結合した飽和ヘテロ環基であって、mが0又は1であって、mが1の場合は、Rが脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、又は脂肪族オキシ基であって、Aが、一般式(A−1)、(A−10)〜(A−17)、(A−20)〜(A-23)、(A−27)、(A−28)、(A−30)〜(A−32)で表される基のいずれかであって、nが1又は2である場合が好ましく、Gが水素原子であって、Rが置換基を有していてもよいアミノ基、又は窒素原子で結合した飽和ヘテロ環基であって、mが0又は1であって、mが1の場合は、Rが脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、又は脂肪族オキシ基であって、Aが、一般式(A−1)、(A−10)、(A−11)、(A−13)〜(A−17)、(A−20)、(A−22)〜(A-23)、(A−27)、(A−28)、(A−30)〜(A−32)で表される基のいずれかであって、nが1又は2である場合がより好ましく、Gが水素原子であって、Rが置換基を有していてもよいアミノ基、又は窒素原子で結合した飽和ヘテロ環基であって、mが0であって、Aが、一般式(A−10)、(A−11)、(A−13)〜(A−17)、(A−20)、(A−22)〜(A−23)、(A−27)、(A−28)、(A−30)〜(A−32)で表される基のいずれかであって、nが1又は2である場合がさらに好ましく、Gが水素原子であって、Rが置換基を有していてもよいアミノ基であって、mが0であって、Aが、一般式(A−16)〜(A−17)、(A−20)、(A−28)、(A−32)で表される基のいずれかであって、nが1又は2である場合が特に好ましく、Gが水素原子であって、Rが置換基を有していてもよいアミノ基であって、mが0であって、Aが一般式(A−16)で表される基であって、nが1又は2である場合が最も好ましい。
【0090】
本発明の効果の点で、一般式(1)で表されるアゾ顔料は、下記一般式(2)で表されるアゾ顔料であることがより好ましい。また、一般式(2)で表されるアゾ顔料としては、その互変異性体、それらの塩又は水和物を包含する。
一般式(2)で表されるアゾ顔料は、ZあるいはR55とナフタレン環のヒドロキシ基と、アゾ基で交叉水素結合を形成し、顔料構造の平面性を上げ、分子内、分子間相互作用が強くなり、その結果、光堅牢性、熱堅牢性、耐溶剤性等が大幅に向上するため好ましい。
【0091】
以下、一般式(2)で表されるアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩又は水和物について詳細に説明する。
【0092】
【化9】

【0093】
一般式(2)中、R21、R22、R55、R59、m、及びnは、一般式(1)で定義したR、R、R55、R59、m、及びnと同じである。Zはハメットのσp値が0.2以上の電子求引性基を表す。n=2の場合は、一般式(2)、R21、R22、R55、R59又はZを介した2量体を表す。n=3の場合、一般式(2)は、R21、R22、R55、R59又はZを介した3量体を表す。n=4の場合、一般式(2)は、R21、R22、R55、R59又はZを介した4量体を表す。一般式(2)中にイオン性親水性基を有することはない。
【0094】
Zで表されるハメットのσp値が0.2以上の置換基としては、前述の一般式(1)のR58の説明で述べた基が挙げられる。
【0095】
一般式(2)で表されるアゾ顔料のR21、R22、R55、R59、m、nの好ましい置換基、範囲は、一般式(1)のR、R、R55、R59、m、及びnと同じである。
本発明の効果の点で、Zとしては、アシル基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、スルファモイル基が好ましく、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基がより好ましく、シアノ基である場合が最も好ましい。
【0096】
本発明の効果の点で、一般式(2)で表されるアゾ顔料は、R21が置換基を有していてもよいアミノ基であって、mが0又は1であって、mが1の場合は、R22が脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、又は脂肪族オキシ基であって、R55が、該結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員ヘテロ環基であって、R59が水素原子又は脂肪族基であって、Zがアシル基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、又はスルファモイル基であって、nが1又は2である場合が好ましく、R21が置換基を有していてもよいアミノ基であって、mが0であって、R55が、一般式(Y−1)〜(Y−13)で表される基のいずれかであって、R59が水素原子又は脂肪族基であって、Zがカルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、又はシアノ基であって、nが1又は2である場合がより好ましく、R21が置換基を有していてもよいアミノ基であって、mが0であって、R55が、一般式(Y−1)〜(Y−6)で表される基のいずれかであって、R59が水素原子又は脂肪族基であって、Zがカルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、又はシアノ基であって、nが1又は2である場合が更に好ましく、R21が置換基を有していてもよいアミノ基であって、mが0であって、R55が、一般式(Y−1)、(Y−4)、又は(Y−6)で表される基であって、R59が水素原子であって、Zがシアノ基であって、nが1又は2である場合が更に好ましい。
【0097】
本発明の効果の点で、一般式(1)又は一般式(2)で表されるアゾ顔料は、「総炭素数/アゾ基の数」が40以下であることが好ましく、30以下である場合はより好ましい。本発明の効果の点で、一般式(1)又は一般式(2)で表されるアゾ顔料は、「分子量/アゾ基の数」が700以下であることが好ましい。本発明の効果の点で、一般式(1)又は一般式(2)で表されるアゾ顔料は、スルホ基、カルボキシ基の等イオン性置換基が置換していない場合が好ましい。
【0098】
一般式(1)で表されるアゾ化合物は、他の態様においては、Aが一般式(A−1)〜(A−9)、(A−11)〜(A−13)、(A−17)、(A−20)〜(A−23)、(A−27)、(A−28)、(A−30)〜(A−32)で表される基であることが好ましく、一般式(A−11)〜(A−13)、(A−17)、(A−20)〜(A−23)、(A−27)、(A−28)、(A−30)〜(A−32)であることがより好ましく、(A−17)、(A−20)、(A−22)〜(A−23)、(A−27)、(A−28)、(A−31)、(A−32)で表される基であることがより好ましく、一般式(A−20)、(A−28)、(A−32)で表される基であることが更に好ましく、一般式(A−20)で表される基であることが最も好ましい。また、一般式(A−20)で表される基のR56が、一般式(2)におけるR59であることが特に好ましい。
【0099】
本発明は、一般式(1)又は一般式(2)で表されるアゾ顔料の互変異性体もその範囲に含むものである。一般式(1)又は一般式(2)は、化学構造上取りうる数種の互変異性体の中から極限構造式の形で示しているが、記載された構造以外の互変異性体であってもよく、複数の互変異性体を含有した混合物として用いてもよい。
例えば、一般式(1)で表されるアゾ顔料には、下記一般式(1’)で表されるアゾ−ヒドラゾンの互変異性体が含まれる。
本発明は、一般式(1)で表されるアゾ顔料の互変異性体である以下の一般式(1’)で表される顔料もその範囲に含むものである。
【0100】
【化10】

【0101】
一般式(1’)中、G、R、R、m、n、及びAは、一般式(1)で定義したものと同じである。
【0102】
一般式(1)で表されるアゾ顔料のうち、前述したように特に好ましいアゾ顔料の一般式の例としては、下記一般式(3−1)〜一般式(3−4)で表されるアゾ顔料を挙げることができる。一般式(1)で表されるアゾ顔料は、下記一般式(3−1)〜一般式(3−4)で表されるアゾ顔料であることが好ましい。
一般式(3−1)〜一般式(3−4)により表されるアゾ顔料は、その互変異性体、それらの塩又は水和物を包含する。
以下、一般式(3−1)〜一般式(3−4)により表されるアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩又は水和物について詳細に説明する。
【0103】
【化11】

【0104】
一般式(3−1)〜一般式(3−4)中、R、R、m、及びnは、一般式(1)及び一般式(2)で定義したものと同じである。Xは炭素原子又は窒素原子を表し、Ax及びBxは、X及び該炭素原子と共に芳香族5〜6員ヘテロ環基を表し、詳しくは一般式(1)のAで定義した一般式(A−1)〜(A−32)で表される基の中で該当するものを表す。Yxは該窒素原子及び炭素原子と共に一般式(1)のR55で定義したへテロ環基のうち該当するものを表す。R23は、一般式(1)で規定したR51、R54、R57、R58等の置換基の内、該当する置換基からカルボニル基を除いた基に相当する置換基を表す。R'は、一般式(1)で規定したRのアミノ基から−NH−を除いた相当する置換基を表す。)
【0105】
一般式(1)、(2)、(3−1)〜(3−4)で表されるアゾ顔料においては、多数の互変異性体が考えられる。
また、本発明において、一般式(1)で表されるアゾ顔料は、分子内水素結合又は分子内交叉水素結合を形成する置換基を有することが好ましい。少なくとも1個以上の分子内水素結合を形成する置換基を有することがより好ましく、少なくとも1個以上の分子内交叉水素結合を形成する置換基を有することが特に好ましい。
【0106】
この構造が好ましい要因としては、一般式(3−1)〜(3−4)で示すように、アゾ顔料構造に含有するヘテロ環基を構成する窒素原子、ナフタレン置換基のヒドロキシ基の水素原子及び酸素原子、及びアゾ基又はその互変異性体であるヒドラゾン基の窒素原子、あるいはアゾ顔料構造に含有するアゾ成分に置換するカルボニル基、ナフタレン置換基のヒドロキシ基の水素原子及び酸素原子、及びアゾ基又はその互変異性体であるヒドラゾン基の窒素原子が、分子内の交叉水素結合を容易に形成し易いことが挙げられる。
その結果、分子の平面性が上がり、更に分子内・分子間相互作用が向上し、一般式(3−1)又は一般式(3−4)で表されるアゾ顔料の結晶性が高くなり(高次構造を形成し易くなり)、顔料としての要求性能である、光堅牢性、熱安定性、湿熱安定性、耐水性、耐ガス性及び又は耐溶剤性が大幅に向上するため、更に好ましい例となる。
この観点からも、一般式(1)で表されるアゾ顔料は、一般式(2)、(3−1)〜(3−4)で表される顔料であることが好ましく、一般式(2)、(3−1)又は(3−2)で表される顔料がより好ましく、一般式(2)で表されるアゾ顔料が特に好ましい。
【0107】
以下に、一般式(1)で表されるアゾ顔料の具体例を以下に示すが、本発明に用いられるアゾ顔料は、下記の例に限定されるものではない。また、以下の具体例の構造は化学構造上取りうる数種の互変異性体の中から極限構造式の形で示されるが、記載された構造以外の互変異性体構造であってもよいことは言うまでもない。
【0108】
【化12】

【0109】
【化13】

【0110】
【化14】

【0111】
【化15】

【0112】
【化16】

【0113】
【化17】

【0114】
【化18】

【0115】
【化19】

【0116】
【化20】

【0117】
【化21】

【0118】
【化22】

【0119】
【化23】

【0120】
【化24】

【0121】
【化25】

【0122】
【化26】

【0123】
【化27】

【0124】
【化28】

【0125】
【化29】

【0126】
【化30】

【0127】
【化31】

【0128】
【化32】

【0129】
【化33】

【0130】
【化34】

【0131】
一般式(1)で表されるアゾ顔料は、化学構造式が一般式(1)若しくは一般式(2)又はその互変異性体であればよく、多形とも呼ばれるいかなる結晶形態の顔料であってもよい。
【0132】
結晶多形は、同じ化学組成を有するが、結晶中におけるビルディングブロック(分子又はイオン)の配置が異なることを言う。結晶構造によって化学的及び物理的性質が決定され、各多形は、レオロジー、色、及び他の色特性によってそれぞれ区別することができる。また、異なる多形は、X−Ray Diffraction(粉末X線回折測定結果)やX−Ray Analysis(X線結晶構造解析結果)によって確認することもできる。
【0133】
一般式(1)又は一般式(2)で表されるアゾ顔料に結晶多形が存在する場合、どの多形であってもよく、また2種以上の多形の混合物であってもよいが、結晶型が単一のものを主成分とすることが好ましい。すなわち結晶多形が混入していないものが好ましく、単一の結晶型を有するアゾ顔料の含有量はアゾ顔料全体に対し70%〜100%、好ましくは80%〜100%、より好ましくは90%〜100%、更に好ましくは95%〜100、特に好ましくは100%である。単一の結晶型を有するアゾ顔料を主成分とすることで、色素分子の配列に対して規則性が向上し、分子内・分子間相互作用が強まり高次な3次元ネットワークを形成しやすくなる。その結果として色相の向上・光堅牢性・熱堅牢性・湿度堅牢性・酸化性ガス堅牢性及び耐溶剤性等、顔料に要求される性能の点で好ましい。
アゾ顔料における結晶多形の混合比は、単結晶X線結晶構造解析、粉末X線回折(XRD)、結晶の顕微鏡写真(TEM)、IR(KBr法)等の固体の物理化学的測定値から確認できる。
【0134】
上述した互変異性及び/又は結晶多形の制御は、カップリング反応の際の製造条件で制御することができる。
【0135】
また、本発明において一般式(1)で表されるアゾ顔料は、酸基を有する場合には、酸基の一部あるいは全部が塩型のものであってもよく、塩型の顔料と遊離酸型の顔料が混在していてもよい。上記の塩型の例としてNa、Li、K等のアルカリ金属の塩、アルキル基もしくはヒドロキシアルキル基で置換されていてもよいアンモニウムの塩、又は有機アミンの塩が挙げられる。有機アミンの例として、低級アルキルアミン、ヒドロキシ置換低級アルキルアミン、カルボキシ置換低級アルキルアミン及び炭素数2〜4のアルキレンイミン単位を2〜10個有するポリアミン等が挙げられる。これらの塩型の場合、その種類は1種類に限られず複数種混在していてもよい。
【0136】
更に、本発明で使用する顔料の構造において、その1分子中に酸基が複数個含まれる場合は、その複数の酸基は塩型あるいは酸型であり互いに異なるものであってもよい。
【0137】
本発明において、一般式(1)で表されるアゾ顔料は、結晶中に水分子を含む水和物であってもよい。
【0138】
本発明の顔料分散組成物は、一般式(1)で表されるアゾ顔料を二種以上含むものでもよい。
なお、本明細書において、「一般式(1)で表されるアゾ顔料」なる語は、一種の一般式(1)で表されるアゾ顔料のみならず、二種以上の一般式(1)で表されるアゾ化合物の組み合わせ、及び一般式(1)で表されるアゾ顔料と後述する他の顔料の組み合わせを含む意味で用いられる。
【0139】
次に、一般式(1)で表されるアゾ顔料の製造方法の一例について説明する。
一般式(1)で表されるアゾ顔料は、例えば、下記一般式(4)で表されるヘテロ環アミンを非水系酸性でジアゾニウム化し、下記一般式(5)で表される化合物と酸性状態でカップリング反応を行い、常法による後処理を行って本発明の一般式(6)で表されるアゾ顔料を製造することができる。一般式(4)で表されるヘテロ環アミンに代えて一般式(1)におけるAに対応するヘテロ環アミンを用い、同様の操作を行うことにより一般式(1)で表されるアゾ顔料を製造することができる。
【0140】
【化35】

【0141】
一般式(4)中、R55、R58及びR59は、前記一般式(2)で定義したものと同義である。
【0142】
【化36】

【0143】
一般式(5)中、R、R及びmは、前記一般式(1)で定義したものと同義である。
以下に反応スキームを示す。
【0144】
【化37】

【0145】
一般式(4)〜(6)中、G、R、R、R55、R58、R59、m、及びnは、一般式(1)又は一般式(2)で定義したものと同義である。
【0146】
一般式(4)及び(A−1)〜(A−32)のアミノ体で表されるヘテロ環アミンは、市販品で入手することができるものもあるが、一般的には公知慣用の方法、例えば特許第4022271号公報に記載の方法で製造することができる。一般式(5)で表されるヘテロ環カプラ−は、市販品で入手することもできるが、特開2008−13472号公報に記載の方法及びそれに準じた方法で製造することができる。
上記反応スキームで表されるヘテロ環アミンのジアゾニウム化反応は例えば、硫酸、リン酸、酢酸などの酸性溶媒中、亜硝酸ナトリウム、ニトロシル硫酸、亜硝酸イソアミル等の試薬と15℃以下の温度で10分〜6時間程度反応させることで行うことができる。カップリング反応は、上述の方法で得られたジアゾニウム塩と一般式(5)で表される化合物とを40℃以下、好ましくは25℃以下で10分〜12時間程度反応させることで行うことができる。
一般式(1)又は一般式(2)において、nが2以上である形態のアゾ顔料の合成方法は、一般式(4)又は一般式(5)中のR〜R、R55、R59、R58等において、置換可能な2価、3価あるいは4価の置換基を導入した原料を合成し、前記スキームと同様に合成することができる。
このようにして反応させたものは、結晶が析出しているものもあるが、一般的には反応液に水、あるいはアルコール系溶媒を添加し、結晶を析出させ、結晶を濾取することができる。また、反応液にアルコール系溶媒、水等を添加して結晶を析出させて、析出した結晶を濾取することができる。濾取した結晶を必要に応じて洗浄・乾燥して、一般式(1)で表されるアゾ顔料を得ることができる。
【0147】
上記の製造方法によって、一般式(1)又は一般式(2)で表されるアゾ顔料は粗アゾ顔料(クルード)として得られるが、本発明における顔料として用いる場合、後処理を行うことが望ましい。この後処理の方法としては、例えば、ソルベントソルトミリング、ソルトミリング、ドライミリング、ソルベントミリング、アシッドペースティング等の磨砕処理、溶媒加熱処理などによる顔料粒子制御工程、樹脂、界面活性剤及び分散剤等による表面処理工程が挙げられる。
【0148】
粗アゾ顔料として得られた一般式(1)又は一般式(2)で表されるアゾ顔料は、後処理として、溶媒加熱処理及び/又はソルベントソルトミリングを行うことが好ましい。
ソルベントソルトミリングを行うことにより、一般式(1)で表されるアゾ顔料の平均一次粒子径を上記好ましい範囲により容易に調整できる。
溶媒加熱処理に使用される溶媒としては、例えば、水、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の極性非プロトン性有機溶媒、氷酢酸、ピリジン、又はこれらの混合物等が挙げられる。上記で挙げた溶媒に、さらに無機又は有機の酸又は塩基を加えてもよい。溶媒加熱処理の温度は所望する顔料の一次粒子径の大きさによって異なるが、40〜150℃が好ましく、60〜100℃がさらに好ましい。また、処理時間は、30分〜24時間が好ましい。
【0149】
ソルベントソルトミリングとしては、例えば、粗アゾ顔料と、無機塩と、それを溶解しない有機溶剤とを混練機に仕込み、その中で混練磨砕を行うことが挙げられる。
上記無機塩としては、水溶性無機塩が好適に使用でき、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を用いることが好ましい。
また、平均粒子径0.5μm〜50μmの無機塩を用いることがより好ましい。当該無機塩の使用量は、粗アゾ顔料に対して3〜20質量倍とするのが好ましく、5〜15質量倍とするのがより好ましい。
有機溶剤としては、水溶性有機溶剤が好適に使用でき、混練時の温度上昇により溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から高沸点溶剤が好ましい。このような有機溶剤としては、例えばジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングルコール、液体ポリプロピレングリコール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2ー(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール又はこれらの混合物が挙げられる。当該水溶性有機溶剤の使用量は、粗アゾ顔料に対して0.1〜5質量倍が好ましい。混練温度は、20〜130℃が好ましく、40〜110℃が特に好ましい。混練機としては、例えばニーダーやミックスマーラー等が使用できる。
【0150】
また、ソルベントソルトミリングとしては、特開2009−263501号公報の段落0007〜段落0071に記載の方法を用いることも好ましい。
即ち、この好ましいソルベントソルトミリングは、摩砕剤として、平均粒子径が5.5μm以下であり、かつ粒径10.0μm以上の含有量が5体積%以下である顔料摩砕用無水硫酸ナトリウムを用いるソルベントソルトミリングである。
ここで、前記顔料摩砕用無水硫酸ナトリウムは、平均粒子径が2.0μm以上4.0μm以下であり、かつ粒径10.0μm以上の含有量が1体積%以下であることが好ましい。また、前記顔料摩砕用無水硫酸ナトリウムは、水分の含有量が1.0質量%以下であることが好ましい。また、前記顔料摩砕用無水硫酸ナトリウムは、固結防止剤を含有することが好ましい。
【0151】
<その他の顔料>
本発明の顔料分散組成物は、本発明の目的を妨げない範囲において、前記一般式(1)で表されるアゾ顔料とともに、前記一般式(1)で表されるアゾ顔料以外のその他の顔料を含んでいてもよい。
前記その他の顔料としては特に限定はなく、例えば、アゾ系顔料、ジスアゾ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、縮合アゾ系顔料、アゾレーキ系顔料、アントラキノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料などから選択される1種以上の顔料及び/又はその誘導体を使用してもよい。
【0152】
その他の顔料としては、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、すなわち、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを挙げることができる。
C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279、
C.I.Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214、
C.I.Pigment Orange 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73、
C.I.Pigment Green 7,10,36,37、
C.I.Pigment Blue 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,60,64,66,79,79のCl置換基をOHに変更したもの,80、
C.I.Pigment Violet 1,19,23,27,32,37,42、
C.I.Pigment Brown 25,28、
C.I.Pigment Black 1,7等を挙げることができる。
但し、本発明においてはこれらに限定されるものではない。
【0153】
これらの中で好ましく用いることができる顔料として、以下のものを挙げることができる。
C.I.Pigment Yellow 11,24,108,109,110,138,139,150,151,154,167,180,185、
C.I.Pigment Orange 36,71、
C.I.Pigment Red 122,150,171,175,177,209,224,242,254,255,264、
C.I.Pigment Violet 19,23,29,32、
C.I.Pigment Blue 15:1,15:3,15:6,16,22,60,66、
C.I.Pigment Green 7,36,37、
C.I.Pigment Black 1,7
【0154】
また、無機顔料を用いてもよく、その具体例としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等を挙げることができる。本発明において顔料は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0155】
特に、本発明の顔料分散組成物においては、赤色パターン(赤色カラーフィルタ)としての分光特性(色相)をより向上させる観点より、前記一般式(1)で表されるアゾ系顔料とともに、更に、レッド(Red)、イエロー(Yellow)、オレンジ(Orange)、及びバイオレット(Violet)から選択される色相を有する顔料を少なくとも1種含有することが好ましい。これらの顔料としては、上記で例示したC.I.番号が付されている顔料から少なくとも1種を選択して用いることができる。これにより、短波長側(例えば、波長500nm以下(より好ましくは波長400nm以下))の透過率をより抑制し、より良好な赤色の色相を得ることができる。
【0156】
一般式(1)で表されるアゾ顔料以外の他の顔料(特に、レッド、イエロー、オレンジ、及びバイオレットから選択される色相を有する顔料)を併用する場合、その含有量は、本発明の顔料分散組成物(又は、本発明の着色硬化性組成物)中の顔料の総質量中、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが特に好ましい。
他の顔料(特に、レッド、イエロー、オレンジ、及びバイオレットから選択される色相を有する顔料)の含有量の下限には特に限定はないが、分光特性の調整の観点より、5質量%が好ましく、10質量%であることがより好ましい。
【0157】
本発明の顔料分散組成物における顔料(少なくとも一般式(1)で表されるアゾ顔料を含む顔料)の体積平均粒子径は、1nm以上250nm以下であることが好ましい。なお、顔料粒子の体積平均粒子径とは、顔料そのものの粒子径、又は顔料に分散剤等の添加物が付着している場合には、添加物が付着した粒子径をいう。
本発明において、顔料の体積平均粒子径の測定装置には、ナノトラックUPA粒度分析計(UPA−EX150;日機装社製)を用いた。その測定は、顔料分散組成物3mlを測定セルに入れ、所定の測定方法に従って行った。尚、測定時に入力するパラメーターとしては、粘度には顔料分散組成物の粘度を、分散粒子の密度には顔料の密度を用いた。
【0158】
顔料のより好ましい体積平均粒子径は、1nm以上200nm以下であり、更に好ましくは1nm以上150nm以下である。顔料分散組成物中の粒子の体積平均粒子径が250nm以下であれば、光学濃度がより高くなる。
更に、顔料の特に好ましい体積平均粒子径は、分散安定性をより向上させる観点より、2nm以上100nm以下であり、最も好ましい体積平均粒子径は2nm以上50nm以下である。
【0159】
本発明の顔料分散組成物に含まれる顔料の総濃度は、1〜35質量%の範囲であることが好ましく、2〜25質量%の範囲であることがより好ましい。上記範囲であれば、表面張力、粘度等の分散物の物性値を調整しやすく好ましい。
【0160】
<酸性官能基を有する有機色素誘導体、酸性官能基を有するアントラキノン誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物>
本発明の顔料分散組成物は、酸性官能基を有する有機色素誘導体、酸性官能基を有するアントラキノン誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物(以下、適宜「酸性官能基含有誘導体」と総称する場合がある。)を含有する。
【0161】
酸性官能基含有誘導体が有する酸性官能基としては、例えば、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基、アセチルアセトナト基が挙げられ、残渣抑制の観点からは、スルホ基又はカルボキシ基を有するものが好ましい。これらの酸性官能基は塩構造を採るものであってもよい。
以下、本発明における酸性官能基含有誘導体について詳細に説明する。
【0162】
(酸性官能基を有する有機色素誘導体)
酸性官能基を有する有機色素誘導体としては、下記一般式(I)で表される有機色素誘導体が挙げられる。
【0163】
P−[X−(Y)k]m (I)
一般式(I)中、Pは有機色素残基を表す。Xは、単結合、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−NR−、−CONR−、−SONR−、−NRCO−、−NRSO−(ここで、Rは、水素原子、アルキル基、又はヒドロキシアルキル基を表す)、炭素数が1〜12個の直鎖又は枝分かれしたアルキレン基、アルキル基、アミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、若しくはハロゲン原子で置換されていてもよいベンゼン残基又はトリアジン残基、或いはこれらの基を2個以上組み合わせて構成された連結基を表す。Yは、−SO・M/n、又は、−COO・M/nを表し、Mは、水素イオン、1〜3価の金属イオン、又は少なくとも1つがアルキル基で置換されているアンモニウムイオンを表し、nはMの価数を表す。kは1又は2の整数を表し、mは1〜4の整数を表す。
【0164】
一般式(I)中、Pで表される有機色素残基としては、例えば、ジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラトロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素、金属錯体系色素等の色素残基が挙げられる。
これらの中でも、Pとしては、ジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ系色素、キナクリドン系色素の色素残基がより好ましい。
【0165】
一般式(I)中、Yが、−SO・M/nである場合、その具体例としては、例えば、スルホ基、ナトリウムスルホナト基、カルシウムスルホナト基、ストロンチウムスルホナト基、バリウムスルホナト基、アルミニウムスルホナト基、4−(アルミニウムスルホナト)フェニルカルバモイルメチル基、ドデシルアンモニオスルホナト基、オクタデシルアンモニオスルホナト基、トリメチルオクタデシルアンモニオスルホナト基、ジメチルジデシルアンモニオスルホナト基などが挙げられる。
【0166】
一般式(I)中、Yが、−COO・M/nである場合、その具体例としては、例えば、カルボキシ基、2−アンモニウムカルボキシラト−5−ニトロベンズアミドメチル基、4−カルボキシフェニルアミノカルボニル基などが挙げられる。
【0167】
一般式(I)で示される有機色素誘導体としては、Yが、−SO・M/nである場合が好ましく、中でも、Yが、スルホ基、ナトリウムスルホナト基、又はアルミニウムスルホナト基であることが好ましい。中でも特に、Pが、ジケトピロロピロール系色素又はアゾ系色素であり、Yが、スルホ基、又はナトリウムスルホナト基である組み合わせが特に好ましい。
【0168】
(酸性官能基を有するアントラキノン誘導体)
酸性官能基を有するアントラキノン誘導体としては、下記一般式(II)で示されるアントラキノン誘導体が挙げられる。
Q−[X−(Y)k]m (II)
一般式(II)中、Qは、アルキル基、アミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよいアントラキノン残基を表す。Xは、単結合、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−NR−、−CONR−、−SONR−、−NRCO−、−NRSO−(ここで、Rは、水素原子、アルキル基、又はヒドロキシアルキル基を表す)、炭素数が1〜12個の直鎖又は枝分かれしたアルキレン基、アルキル基、アミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、若しくはハロゲン原子で置換されていてもよいベンゼン残基あるいはトリアジン残基、又はこれらの基を2個以上組み合わせて構成された連結基を表す。Yは、−SO・M/n、又は−COO・M/nを表し、Mは水素イオン、1〜3価の金属イオン又は少なくとも1つがアルキル基で置換されているアンモニウムイオンを表し、nはMの価数を表す。kは1又は2の整数を表し、mは1〜4の整数を表す。
【0169】
一般式(II)中、Qで表されるアントラキノン残基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基、アミノ基、ニトロ基、水酸基又はメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基又は塩素等のハロゲン原子で置換されてもよいアントラキノン残基が挙げられる。
【0170】
一般式(II)中、Yが、−SO・M/nである場合、その具体例としては、例えば、スルホ基、ナトリウムスルホナト基、カルシウムスルホナト基、ストロンチウムスルホナト基、バリウムスルホナト基、アルミニウムスルホナト基、4−(アルミニウムスルホナト)フェニルカルバモイルメチル基、ドデシルアンモニオスルホナト基、オクタデシルアンモニオスルホナト基、トリメチルオクタデシルアンモニオスルホナト基、ジメチルジデシルアンモニオスルホナト基などが挙げられる。
【0171】
一般式(II)中、Yが、−COO・M/nである場合、その具体例としては、例えば、カルボキシ基、4−(アルミニウムカルボキシラト)フェニルアミノカルボニル基などが挙げられる。
【0172】
一般式(II)で示されるアントラキノン誘導体としては、Yとしては−SO・M/nである場合が好ましく、中でもスルホ基、ナトリウムスルホナト基、アルミニウムスルホナト基であることが好ましい。中でも特に、Qがアントラキノンである組み合わせが特に好ましい。
【0173】
(酸性官能基を有するトリアジン誘導体)
酸性官能基を有するトリアジン誘導体としては、下記一般式(III)で表されるトリアジン誘導体が挙げられる。
【0174】
【化38】

【0175】
一般式(III)中、Rは、トリアジン残基を表す。X、X及びXは、それぞれ独立に、単結合、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−NR−、−CONR−、−SONR−、−NRCO−、−NRSO−(ここでRは、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基を表す)、炭素の数が1〜12個の直鎖又は枝分かれしたアルキレン基、及びアルキル基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよいベンゼン残基、又はこれらの基を2個以上組み合わせて構成された連結基を表す。Yは−SO・M/n、又は−COO・M/nを表し、Mは水素イオン、1〜3価の金属イオン又は少なくとも1つがアルキル基で置換されているアンモニウムイオンを表し、nはMの価数を表す。YとYは、それぞれ独立に、Yと同じであるか、アルキル基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、又はハロゲン原子、或いは、メチル基、メトキシ基、水酸基等で置換されていてもよいフェニル基を表す。p、q及びrは、それぞれ独立に、1又は2の整数を表す。
【0176】
Rで表されるトリアジン残基におけるトリアジンは、1,3,5−トリアジンであることが好ましい。
【0177】
、Y又はYが、−SO・M/nである場合、その具体例としては、アルミニウムスルホナトエチルアミノ基、4−スルホフェニルアミノ基などが挙げられる。
また、Y、Y又はYが、−COO・M/nである場合、その具体例としては、である場合、その具体例としては、4−カルボキシフェニルアミノ基などが挙げられる。
【0178】
一般式(III)で示されるトリアジン誘導体としては、Y、Y、及びYの少なくとも1つが−SO・M/nである場合が好ましく、中でも、スルホ基、ナトリウムスルホナト基、又はアルミニウムスルホナト基であることが好ましい。中でも特に、Y、Y、及びYの少なくとも1つが−SO・M/nであり、Rが1,3,5−トリアジンである組み合わせが特に好ましい。
【0179】
以下に、一般式(I)で表される有機色素誘導体、一般式(II)で表されるアントラキノン誘導体、及び般式(III)で表されるトリアジン誘導体の具体例としては、以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0180】
【化39】







【0181】
一般式(I)で示される有機色素誘導体、一般式(II)で示されるアントラキノン誘導体、及び一般式(III)で示されるトリアジン誘導体は、例えば、特公昭39−28884号公報、特公昭58−028303号公報、特公昭63−17101号公報、特開昭56−81371号公報、特公平01−34268号公報、特公平01−34269号公報、特公平05−9496号公報、特公平02−62893号公報、特公平07−33485号公報、特許2584515号明細書、特許2906833号明細書、特許3518300号明細書に記載の方法で製造できる。
【0182】
顔料分散組成物は、酸性官能基含有誘導体は、1種のみを含有してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0183】
酸性官能基含有誘導体の中でも、残渣が極めて少なくなるため、スルホ基あるいはカルボキシ基を有する一般式(III)で表されるトリアジン誘導体が最も好ましい。
【0184】
本発明の顔料分散組成物中における酸性官能基含有誘導体の含有量としては、一般式(1)で表されるアゾ顔料を少なくとも含む全顔料に対し、0.1質量%〜80質量%の範囲にあることが好ましく、1質量%〜65質量%の範囲にあることがより好ましく、3質量%〜50質量%の範囲にあることが特に好ましい。酸性官能基含有誘導体の含有量がこの範囲内であると、顔料分散組成物の粘度を低く抑えながら、顔料の分散を良好にしうると共に、分散後の分散安定性を向上させることができる。
【0185】
このような顔料分散組成物をカラーフィルタの製造に適用することで、カラーフィルタの耐熱性を向上させることができる。更に、透過率が高く、優れた色特性を有し、高いコントラストのカラーフィルタを得ることができる。
【0186】
<分散剤>
本発明の顔料分散組成物は、分散剤を少なくとも1種含有する。
分散剤としては特に限定はなく公知の顔料分散剤を用いることができる。
本発明における分散剤としては、窒素原子含有分散剤が好ましい。
窒素原子含有分散剤としては、通常、界面活性剤、高分子分散剤などが使用されるが、特に高分子分散剤が好適である。
好適な高分子分散剤の例としては、ウレタン系分散剤、窒素原子を含有するグラフト共重合体型分散剤、窒素原子を含有するブロック共重合体型分散剤、等が挙げられる。
本発明においては、特に、(i)窒素原子を有する主鎖部と、(ii)pKaが14以下である官能基を有し、該主鎖部に存在する窒素原子と結合する基「X」と、(iii)数平均分子量が500〜1,000,000であるオリゴマー鎖又はポリマー鎖「Y」を含む側鎖と、を有する樹脂(以下、適宜「特定樹脂」とも称する。)が、高分子分散剤として好適である。また、ヒノアクトT−8000E(川研ファインケミカル(株)製)などの両性分散剤も好適に用いることができる。
以下、本発明に好適な高分子分散剤について詳述する。
【0187】
<ウレタン系分散剤>
ウレタン系分散剤としては、(1)ポリイソシアネート化合物、(2)同一分子内に水酸基を1個又は2個有する化合物、(3)同一分子内に活性水素と3級アミノ基を有する化合物とを反応させることによって得られるウレタン系分散樹脂であることが好ましい。
【0188】
(1)ポリイソシアネート化合物
ポリイソシアネート化合物の例としては、パラフェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、ω,ω′−ジイソシネートジメチルシクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、α,α,α′,α′−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニルメタン)、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート等のトリイソシアネート、及びこれらの3量体、水付加物、及びこれらのポリオール付加物等が挙げられる。ポリイソシアネートとして好ましいのは有機ジイソシアネートの三量体で、最も好ましいのはトリレンジイソシアネートの三量体とイソホロンジイソシアネートの三量体であり、これらを単独で用いても、併用してもよい。
【0189】
イソシアネートの三量体の製造方法としては、前記ポリイソシアネート類を適当な三量化触媒、例えば第3級アミン類、ホスフィン類、アルコキシド類、金属酸化物、カルボン酸塩類等を用いてイソシアネート基の部分的な三量化を行い、触媒毒の添加により三量化を停止させた後、未反応のポリイソシアネートを溶剤抽出、薄膜蒸留により除去して目的のイソシアヌレート基含有ポリイソシアネートを得る方法が挙げられる。
【0190】
(2)同一分子内に水酸基を1個又は2個有する化合物
同一分子内に水酸基を1個又は2個有する化合物としては、ポリエーテルグリコール、ポリエステルグリコール、ポリカーボネートグリコール、ポリオレフィングリコール等、及びこれらの化合物の片末端水酸基が炭素数1〜25のアルキル基でアルコキシ化されたもの及びこれら2種類以上の混合物が挙げられる。
【0191】
ポリエーテルグリコールとしては、ポリエーテルジオール、ポリエーテルエステルジオール、及びこれら2種類以上の混合物が挙げられる。
ポリエーテルジオールとしては、アルキレンオキシドを単独又は共重合させて得られるもの、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン−プロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシヘキサメチレングリコール、ポリオキシオクタメチレングリコール及びそれらの2種以上の混合物が挙げられる。
ポリエーテルエステルジオールとしては、エーテル基含有ジオールもしくは他のグリコールとの混合物をジカルボン酸と又はそれらの無水物と反応させるか、又はポリエステルグリコールにアルキレンオキシドを反応させることによって得られるもの、例えばポリ(ポリオキシテトラメチレン)アジペート等が挙げられる。
ポリエーテルグリコールとして最も好ましいものは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール又はこれらの化合物の片末端水酸基が炭素数1〜25のアルキル基でアルコキシ化された化合物である。
【0192】
ポリエステルグリコールとしては、ジカルボン酸(コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸等)又はそれらの無水物とグリコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジーオル、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,8−オクタメチレングリコール、2−メチル−1,8−オクタメチレングリコール、1,9−ノナンジオール等の脂肪族グリコール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン等の脂環族グリコール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール、N−メチルジエタノールアミン等のN−アルキルジアルカノールアミン等)とを重縮合させて得られたもの、例えばポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリエチレン/プロピレンアジペート等、又は前記ジオール類又は炭素数1〜25の1価アルコールを開始剤として用いて得られるポリラクトンジオール又はポリラクトンモノオール、例えばポリカプロラクトングリコール、ポリメチルバレロラクトン及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。ポリエステルグリコールとして最も好ましいのはポリカプロラクトングリコール又は炭素数1〜25のアルコールを開始剤としたポリカプロラクトン、より具体的には、モノオールにε−カプロラクトンを開環付加重合して得られる化合物である。
【0193】
ポリカーボネートグリコールとしてはポリ(1,6−ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。
ポリオレフィングリコールとしてはポリブタジエングリコール、水素添加型ポリブタジエングリコール、水素添加型ポリイソプレングリコール等が挙げられる。
同一分子内に水酸基を1個又は2個有する化合物のうち、特にポリエーテルグリコールとポリエステルグリコールが好ましい。
同一分子内に水酸基を1個又は2個有する化合物の数平均分子量は、通常300〜10,000、好ましくは500〜6,000、さらに好ましくは1,000〜4,000である。
【0194】
(3)同一分子内に活性水素と3級アミノ基を有する化合物
活性水素、即ち、酸素原子、窒素原子又はイオウ原子に直接結合している水素原子としては、水酸基、アミノ基、チオール基等の官能基中の水素原子が挙げられ、中でもアミノ基、特に1級のアミノ基の水素原子が好ましい。
3級アミノ基は特に限定されないが、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基を有するジアルキルアミノ基や、該ジアルキルアミノ基が連結してヘテロ環構造を形成している基、より具体的には、イミダゾール環又はトリアゾール環が挙げられる。
【0195】
このような同一分子内に活性水素と3級アミノ基を有する化合物を例示するならば、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジプロピル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジブチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジプロピルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、N,N−ジエチル−1,4−ブタンジアミン、N,N−ジプロピル−1,4−ブタンジアミン、N,N−ジブチル−1,4−ブタンジアミン等か挙げられる。
【0196】
また、3級アミノ基が窒素含有ヘテロ環であるものとして、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、インドール環、カルバゾール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾチアジアゾール環等のN含有ヘテロ5員環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、アクリジン環、イソキノリン環、等の窒素含有ヘテロ6員環が挙げられる。これらの窒素含有ヘテロ環として好ましいものはイミダゾール環又はトリアゾール環である。
【0197】
これらのイミダゾール環と一級アミノ基を有する化合物を具体的に例示するならば、1−(3−アミノプロピル)イミダゾール、ヒスチジン、2−アミノイミダゾール、1−(2−アミノエチル)イミダゾール等が挙げられる。また、トリアゾール環と一級アミノ基を有する化合物を具体的に例示するならば、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、5−(2−アミノ−5−クロロフェニル)−3−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−4H−1,2,4−トリアゾール−3,5−ジオール、3−アミノ−5−フェニル−1H−1,3,4−トリアゾール、5−アミノ−1,4−ジフェニル−1,2,3−トリアゾール、3−アミノ−1−ベンジル−1H−2,4−トリアゾール等が挙げられる。なかでも、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、1−(3−アミノプロピル)イミダゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾールが好ましい。
【0198】
上述したウレタン系分散樹脂を得るための原料の好ましい配合比率は、ポリイソシアネート化合物100質量部に対し、同一分子内に水酸基を1個又は2個有する化合物が通常10〜200質量部、好ましくは20〜190質量部、さらに好ましくは30〜180質量部、同一分子内に活性水素と3級アミノ基を有する化合物は通常0.2〜25質量部、好ましくは0.3〜24質量部である。
【0199】
ウレタン系分散樹脂のGPCで測定されるポリスチレン換算重量平均分子量は、分散性及び分散安定性、溶解性、反応の制御性の観点から、通常1,000〜200,000、好ましくは2,000〜100,000、より好ましくは3,000〜50,000の範囲である。
【0200】
ウレタン系分散樹脂の製造は、ポリウレタン樹脂製造の公知の方法に従って行われる。
製造する際の溶媒としては、通常、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン等の炭化水素類、ダイアセトンアルコール、イソプロパノール、第二ブタノール、第三ブタノール等一部のアルコール類、塩化メチレン、クロロホルム等の塩化物、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキサイド等の非プロトン性極性溶媒等が用いられる。
【0201】
製造する際の触媒としては、通常のウレタン化反応触媒が用いられる。該触媒としては、例えば、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジオクトエート、スタナスオクトエート等の錫系、鉄アセチルアセトナート、塩化第二鉄等の鉄系、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の3級アミン系等が挙げられる。
【0202】
同一分子内に活性水素と3級アミノ基を有する化合物の導入量は、反応後の分散樹脂のアミン価で1〜100mg
OH/gの範囲に制御するのが好ましい。より好ましくは5〜95mgKOH/gの範囲である。アミン価が上記範囲以下であると分散能力が低下する傾向があり、また、上記範囲を超えると現像性が低下しやすくなる。なお、以上の反応で分散樹脂にイソシアネート基が残存する場合にはさらに、アルコールやアミノ化合物でイソシアネート基を潰すと分散樹脂の経時安定性が高くなるので好ましい。
【0203】
(窒素原子を含有するグラフト共重合体)
窒素原子を含有するグラフト共重合体としては、主鎖に窒素原子を含有する繰り返し単位を有するものが好ましい。中でも、下記式(A)で表される繰り返し単位又は/及び式(B)で表される繰り返し単位を有するものが好ましい。
【0204】
【化40】

【0205】
式(A)中、R1は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、Aは、水素原子又は下記式(C)〜(E)で表される基のいずれかを表す。
式(A)中、Rは、メチレン、エチレン、プロピレン等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜5のアルキレン基を表し、好ましくは炭素数2〜3であり、更に好ましくはエチレン基である。Aは、水素原子又は下記式(C)〜(E)で表される基のいずれかを表し、好ましくは下記式(C)で表される基である。
【0206】
【化41】

【0207】
式(B)中、R及びAは、式(A)中のR及びAと同義である。
【0208】
【化42】

【0209】
式(C)中、W1は炭素数2〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、中でもブチレン、ペンチレン、ヘキシレン等の炭素数4〜7のアルキレン基が好ましい。pは1〜20の整数を表し、好ましくは5〜10の整数である。
【0210】
【化43】

【0211】
式(D)中、Yは2価の連結基を表し、中でもエチレン、プロピレン等の炭素数1〜4のアルキレン基、及びエチレンオキシ、プロピレンオキシ等の炭素数1〜4のアルキレンオキシ基が好ましい。Wはエチレン、プロピレン、ブチレン等の直鎖状又は分岐状の炭素数2〜10のアルキレン基を表し、中でもエチレン、プロピレン等の炭素数2〜3のアルキレン基が好ましい。Yは水素原子又はCO−R(Rはエチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等の炭素数1〜10のアルキル基を表し、中でもエチル、プロピル、ブチル、ペンチル等の炭素数2〜5のアルキル基が好ましい)を表す。qは、1〜20の整数を表し、好ましくは5〜10の整数である。
【0212】
【化44】

【0213】
式(E)中、W3は炭素数1〜50のアルキル基又は水酸基を1〜5有する炭素数1〜50のヒドロキシアルキル基を表し、中でもステアリル等の炭素数10〜20のアルキル基、モノヒドロキシステアリル等の水酸基を1〜2個有する炭素数10〜20のヒドロキシアルキル基が好ましい。
【0214】
前記「窒素原子を含有するグラフト共重合体」における式(A)又は(B)で表される繰り返し単位の含有率は、高い方が好ましく、通常50モル%以上であり、好ましくは70モル%以上である。式(A)で表される繰り返し単位と、式(B)で表される繰り返し単位の、両方を併有してもよく、その含有比率に特に制限は無いが、好ましくは式(A)の繰り返し単位の方を多く含有していた方が好ましい。式(A)又は式(B)で表される繰り返し単位の合計数は、通常1〜100、好ましくは10〜70、更に好ましくは20〜50である。また、式(A)及び式(B)以外の繰り返し単位を含んでいてもよく、他の繰り返し単位としては、例えばアルキレン基、アルキレンオキシ基などが例示できる。前記「窒素原子を含有するグラフト共重合体」は、その末端が−NH及び−R−NH(Rは、前記Rと同義)のものが好ましい。
【0215】
尚、前記「窒素原子を含有するグラフト共重合体」は、主鎖が直鎖状であっても分岐していてもよい。該グラフト共重合体のアミン価は、通常5〜100mgKOH/gであり、好ましくは10〜70mgKOH/gであり、更に好ましくは15〜40mgKOH/g以下である。
アミン価が5mgKOH/g以上であると、分散安定性をより向上させることができ、粘度をより安定にすることができる。アミン価が100mgKOH/g以下であると、残渣をより抑制でき、液晶パネルを形成した後の電気特性の低下をより抑制できる。
【0216】
前記「窒素原子を含有するグラフト共重合体」のGPCで測定した重量平均分子量としては、3000〜100000が好ましく、5000〜50000が特に好ましい。重量平均分子量が3000以上であると、色材の凝集をより抑制でき、高粘度化やゲル化をより抑制できる。100000以下であると、共重合体自体の高粘度化をより抑制でき、また有機溶媒への溶解性の不足をより抑制できる。
【0217】
上記分散剤の合成方法は、公知の方法が採用でき、例えば、特公昭63−30057号公報に記載の方法を用いることができる。
【0218】
(窒素原子を含有するブロック共重合体型分散剤)
窒素原子を含有するブロック共重合体型分散剤のとして用いうる共重合体としては、側鎖に4級アンモニウム塩基を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基を有さないBブロックとからなる、A−Bブロック共重合体及び/又はB−A−Bブロック共重合体が挙げられる。
【0219】
ブロック共重合体を構成するAブロックは、4級アンモニウム塩基、好ましくは−N1a2a3a・Y(但し、R1a、R2a及びR3aは、各々独立に、水素原子、又は置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基を表す。或いは、R1a、R2a及びR3aのうち2つ以上が互いに結合して、環状構造を形成していてもよい。Y−は、対アニオンを表す。)で表わされる4級アンモニウム塩基を有する。この4級アンモニウム塩基は、直接主鎖に結合していてもよいが、2価の連結基を介して主鎖に結合していてもよい。
【0220】
−N1a2a3aにおいて、R1a、R2a及びR3aのうち2つ以上が互いに結合して形成する環状構造としては、例えば5〜7員環の含窒素複素環単環又はこれらが2個縮合してなる縮合環が挙げられる。該含窒素複素環は芳香性を有さないものが好ましく、飽和環であればより好ましい。具体的には、例えば下記に示す含窒素複素環が挙げられる。
【0221】
【化45】

【0222】
上記含窒素複素環中、Rは、R1a〜R3aのうち何れかの基を表す。
これらの環状構造は、更に置換基を有していてもよい。
−N1a2a3aにおけるR1a〜R3aとして、より好ましいものは、置換基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基である。
Aブロックとしては、特に、下記一般式(1A)で表される部分構造を含有するものが好ましい。
【0223】
【化46】

【0224】
一般式(1A)中、R1a、R2a、及びR3aは、各々独立に、水素原子、又は置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基を表す。或いは、R1a、R2a及びR3aのうち2つ以上が互いに結合して、環状構造を形成していてもよい。R4aは、水素原子又はメチル基を表す。Xは、2価の連結基を表し、Yは、対アニオンを表す。
一般式(1A)において、2価の連結基Xとしては、例えば、炭素数1〜10のアルキレン基、アリーレン基、−CONH−R5a−、−COO−R6a−(但し、R5a及びR6aは、直接結合、炭素数1〜10のアルキレン基、又は炭素数1〜10のエーテル基(−R7a−O−R8a−:R7a及びR8aは、各々独立にアルキレン基)を表わす。)等が挙げられ、好ましくは−COO−R6a−である。
【0225】
また、対アニオンであるYとしては、Cl、Br、I−、ClO、BF、CHCOO、PF等が挙げられる。
上記の如き特定の4級アンモニウム塩基を含有する部分構造は、1つのAブロック中に2種以上含有されていてもよい。その場合、2種以上の4級アンモニウム塩基含有部分構造は、該Aブロック中においてランダム共重合又はブロック共重合の何れの態様で含有されていてもよい。また、該4級アンモニウム塩基を含有しない部分構造が、Aブロック中に含まれていてもよく、該部分構造の例としては、後述の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー由来の部分構造等が挙げられる。4級アンモニウム塩基を含まない部分構造のAブロック中の含有量は、好ましくは0〜50質量%、より好ましくは0〜20質量%であるが、4級アンモニウム塩基非含有部分構造はAブロック中に含まれないことが最も好ましい。
【0226】
一方、ブロック共重合体を構成するBブロックとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチルアクリル酸グリシジル、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;(メタ)アクリル酸クロライドなどの(メタ)アクリル酸塩系モノマー;(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド系モノマー;酢酸ビニル;アクリロニトリル;アリルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテル;N−メタクリロイルモルホリン、などのコモノマーを共重合させたポリマー構造が挙げられる。
【0227】
Bブロックとしては、特に、下記一般式(1B)で表される、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー由来の部分構造であることが好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」等は、「アクリル又はメタクリル」、「アクリレート又はメタクリレート」等を意味するものとし、例えば「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸又はメタクリル酸」を意味するものとする。
【0228】
【化47】

【0229】
一般式(1B)中、R9aは、水素原子又はメチル基を表す。R10aは、置換基を有していてもよい環状又は鎖状のアルキル基、置換基を有していてもよいアリル基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基を表す。
【0230】
(メタ)アクリル酸エステル系モノマー由来の部分構造は、1つのBブロック中に2種以上含有されていてもよい。もちろん該Bブロックは、更にこれら以外の部分構造を含有していてもよい。2種以上のモノマー由来の部分構造が、4級アンモニウム塩基を含有しないBブロック中に存在する場合、各部分構造は該Bブロック中においてランダム共重合又はブロック共重合の何れの態様で含有されていてもよい。
Bブロック中に上記(メタ)アクリル酸エステル系モノマー由来の部分構造以外の部分構成を含有する場合、当該(メタ)アクリル酸エステル系モノマー以外の部分構造の、Bブロック中の含有量は、好ましくは0〜50質量%、より好ましくは0〜20質量%であるが、メタ)アクリル酸エステル系モノマー以外の部分構造はBブロック中に含まれないことが最も好ましい。
【0231】
このようなAブロックとBブロックとからなる、A−Bブロック又はB−A−Bブロック共重合体は、例えば以下に示すリビング重合法にて調製される。
【0232】
リビング重合法にはアニオンリビング重合法、カチオンリビング重合法、ラジカルリビング重合法がある。アニオンリビング重合法は、重合活性種がアニオンであり、例えば、下記スキームで示される。
【0233】
【化48】

【0234】
ラジカルリビング重合法、は重合活性種がラジカルであり、例えば下記スキームで示される。
【0235】
【化49】

【0236】
【化50】

【0237】
なお、前記ブロック共重合体を合成するに際しては、特開平9−62002号公報や、P. Lutz, P. Masson et al, Polym. Bull. 12, 79 (1984), B. C. Anderson, G. D. Andrews et al, Macromolecules, 14, 1601 (1981), K. Hatada, K. Ute, et al, Polym. J. 17, 977 (1985), 18, 1037 (1986), 右手浩一、畑田耕一、高分子加工、36、366(1987),東村敏延、沢本光男、高分子論文集、46、189(1989), M. Kuroki, T. Aida, J. Am. Chem. Sic, 109, 4737 (1987), 相田卓三、井上祥平、有機合成化学、43,300(1985),D. Y. Sogoh, W. R. Hertler et al, Macromolecules, 20, 1473 (1987) などに記載の公知の方法を採用することができる。
【0238】
前記ブロック共重合体は、A−Bブロック共重合体であっても、B−A−Bブロック共重合体であっても、より良好な耐熱性と分散性の点からは、その共重合体を構成するAブロック/Bブロック比(質量比)は、通常1/99以上、中でも5/95以上、また、通常80/20以下、中でも60/40以下の範囲であることが好ましい。
【0239】
また、A−Bブロック共重合体、B−A−Bブロック共重合体1g中の4級アンモニウム塩基の量は、より良好な耐熱性と分散性の点からは、通常0.1〜10mmolであることが好ましい。
なお、このようなブロック共重合体中には、通常、製造過程で生じたアミノ基が含有される場合があるが、そのアミン価は1〜100mg−KOH/g程度である。なお、アミン価は、塩基性アミノ基を酸により中和滴定し、酸価に対応させてKOHのmg数で表した値である。
【0240】
(特定樹脂)
本発明における最も好ましい分散剤としては、(i)窒素原子を有する主鎖部と、(ii)pKaが14以下である官能基を有し、該主鎖部に存在する窒素原子と結合する基「X」と、(iii)数平均分子量が500〜1,000,000であるオリゴマー鎖又はポリマー鎖「Y」を含む側鎖と、を有する樹脂(特定樹脂)が挙げられる。
以下、特定樹脂について詳細に説明する。
【0241】
(i)窒素原子を有する主鎖部
特定樹脂は、(i)窒素原子を有する主鎖部から構成される。これにより、顔料表面への吸着力が向上し、且つ顔料間の相互作用が低減できる。
特定樹脂は、公知のアミノ基、より好ましくは、1級又は2級アミノ基を含有するオリゴマー又はポリマーから構成される主鎖部を有することが好ましい。アミノ基を含有するオリゴマー又はポリマーとしては、より具体的には、ポリ(低級アルキレンイミン)、ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン、メタキシレンジアミン−エピクロルヒドリン重縮合物、ポリビニルアミン、(メタ)アクリル酸2−ジアルキルアミノエチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等から選択される主鎖構造であることが好ましい。
ポリ(低級アルキレンイミン)は鎖状であっても網目状であってもよいが、特に網目状であることにより、分散安定性及び素材供給性が高くなる。
【0242】
特定樹脂における主鎖部の数平均分子量は、100〜10,000が好ましく、200〜5,000がさらに好ましく、300〜2,000がより好ましく、特に、数平均分子量が500〜1500の範囲であることが、分散安定性、現像性両立の観点から最も好ましい。主鎖部の分子量は、核磁気共鳴分光法で測定した末端基と主鎖部の水素原子積分値の比率から求めるか、原料であるアミノ基を含有するオリゴマー又はポリマーの分子量の測定により求めることができる。
【0243】
特定樹脂の主鎖部は、特にポリ(低級アルキレンイミン)、又は、ポリアリルアミン骨格から構成されることが好ましい。なお、本発明において、ポリ(低級アルキレンイミン)における低級とは炭素数が1〜5であることを示し、低級アルキレンイミンとは、炭素数1〜5のアルキレンイミンを表す。
【0244】
特定樹脂は、一般式(I−1)で表される繰り返し単位及び一般式(I−2)で表される繰り返し単位を有する構造、或いは、一般式(II−1)で表される繰り返し単位及び一般式(II−2)で表される繰り返し単位を含有する構造を含むことが好ましい。
【0245】
<<一般式(I−1)で表される繰り返し単位、及び、一般式(I−2)で表される繰り返し単位>>
特定樹脂の好ましい構成成分である一般式(I−1)で表される繰り返し単位及び一般式(I−2)で表される繰り返し単位について詳細に説明する。
【0246】
【化51】



【0247】
一般式(I−1)及び(I−2)中、R及びRは、水素原子、ハロゲン原子、又は、アルキル基を表す。aは1〜5の整数を表す。*は繰り返し単位間の連結部を表す。XはpKaが14以下である官能基を含有する基を表す。Yは数平均分子量が500〜1,000,000であるオリゴマー鎖又はポリマー鎖を表す。
【0248】
特定樹脂は、一般式(I−1)又は一般式(I−2)で表される繰り返し単位に加えて、さらに一般式(I−3)で表される繰り返し単位を共重合成分として有することが好ましい。このような繰り返し単位を併用することで、この樹脂を顔料などの微粒子分散剤として用いたときにさらに分散性能が向上する。
【0249】
【化52】

【0250】
一般式(I−3)中、R、R及びaは一般式(I−1)と同義である。Y’はアニオン基を有する数平均分子量が500〜1,000,000であるオリゴマー鎖又はポリマー鎖を表す。上記一般式(I−3)で表される繰り返し単位は、主鎖部に一級又は二級アミノ基を有する樹脂に、アミンと反応して塩を形成する基を有するオリゴマー又はポリマーを添加して反応させることで形成することが可能である。ここで、アニオン基としては、CO又はSOが好ましく、COが最も好ましい。アニオン基は、Y’が有するオリゴマー鎖又はポリマー鎖の末端位にあることが好ましい。
【0251】
一般式(I−1)、一般式(I−2)及び一般式(I−3)において、R及びRは特に水素原子であることが好ましい。aは、2であることが原料入手性の観点から好ましい。
【0252】
特定樹脂は、一般式(I−1)、一般式(I−2)及び一般式(I−3)で表される繰り返し単位以外に、一級又は三級のアミノ基を含有する低級アルキレンイミンを繰り返し単位として含んでいてもよい。なお、そのような低級アルキレンイミン繰り返し単位における窒素原子には、さらに、一般式(I−1)、(I−2)又は(I−3)における前記X、Y又はY’で示される基が結合していてもよい。このような主鎖構造に、Xで示される基が結合した繰り返し単位とYが結合した繰り返し単位の双方を含む樹脂もまた、特定樹脂に包含される。
【0253】
一般式(I−1)で表される繰り返し単位は、pKaが14以下である官能基を含有する基Xを有する繰り返し単位であり、このような繰り返し単位は、保存安定性・現像性の観点から、本発明の樹脂に含まれる全繰り返し単位中、1〜80モル%含有することが好ましく、3〜50モル%含有することが最も好ましい。
【0254】
一般式(I−2)で表される繰り返し単位は、数平均分子量が500〜1,000,000であるオリゴマー鎖又はポリマー鎖Yを有する繰り返し単位であり、このような繰り返し単位は、保存安定性の観点から、本発明の樹脂の全繰り返し単位中、10〜90モル%含有することが好ましく、30〜70モル%含有することが最も好ましい。
両者の含有比について検討するに、分散安定性、及び、親疎水性のバランスの観点からは、繰り返し単位(I−1):(I−2)はモル比で10:1〜1:100の範囲であることが好ましく、1:1〜1:10の範囲であることがより好ましい。
【0255】
なお、所望により併用される一般式(I−3)で表される繰り返し単位は、数平均分子量が500〜1,000,000であるオリゴマー鎖又はポリマー鎖を含む部分構造が、主鎖の窒素原子にイオン的に結合しているものであり、特定樹脂が有する全繰り返し単位中、効果の観点からは、0.5〜20モル%含有することが好ましく、1〜10モル%含有することが最も好ましい。
なお、ポリマー鎖「Y」がイオン的に結合していることは、赤外分光法、酸価滴定や塩基滴定により確認できる。
【0256】
<<一般式(II−1)で表される繰り返し単位、及び、一般式(II−2)で表される繰り返し単位>>
特定樹脂の他の好ましい構成成分である一般式(II−1)で表される繰り返し単位、及び、一般式(II−2)で表される繰り返し単位について詳細に説明する。
【0257】
【化53】

【0258】
一般式(II−1)及び(II−2)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基を表す。*、X及びYは一般式(I−1)及び(I−2)中の*、X及びYと同義である。
【0259】
特定樹脂は、一般式(II−1)で表される繰り返し単位、一般式(II−2)で表される繰り返し単位に加えて、さらに一般式(II−3)で表される繰り返し単位を共重合成分として含むことが好ましい。このような繰り返し単位を併用することで、分散性能が向上する。
【0260】
【化54】

【0261】
一般式(II−3)中、R、R、R及びRは一般式(II−1)と同義である。Y’は一般式(I−3)中のY’と同義である。
【0262】
一般式(II−1)、(II−2)及び(II−3)において、R、R、R及びRは水素原子であることが原料の入手性の観点好ましい。
【0263】
一般式(II−1)はpKaが14以下である官能基Xを含有する基を有する繰り返し単位であり、このような繰り返し単位は、保存安定性・現像性の観点から、本発明の樹脂に含まれる全繰り返し単位中、1〜80モル%含有することが好ましく、3〜50モル%含有することが最も好ましい。
一般式(II−2)は数平均分子量が500〜1,000,000であるオリゴマー鎖又はポリマー鎖Yを有する繰り返し単位であり、このような繰り返し単位は、保存安定性の観点から、本発明の樹脂の全繰り返し単位中、10〜90モル%含有することが好ましく、30〜70モル%含有することが最も好ましい。
【0264】
両者の含有比について検討するに、分散安定性、及び、親疎水性のバランスの観点からは、繰り返し単位(II−1):(II−2)はモル比で10:1〜1:100の範囲であることが好ましく、1:1〜1:10の範囲であることがより好ましい。
所望により併用される一般式(II−3)で表される繰り返し単位は、特定樹脂の全繰り返し単位中、0.5〜20モル%含有することが好ましく、1〜10モル%含有することが最も好ましい。
特定樹脂においては、分散性の観点から、特に一般式(I−1)で表される繰り返し単位と一般式(I−2)で表される繰り返し単位の双方を含むことが最も好ましい。
【0265】
(ii)pKaが14以下である官能基を含有する基「X」
Xは、水温25℃でのpKaが14以下である官能基を含有する基を表す。ここでいう「pKa」とは、化学便覧(II)(改訂4版、1993年、日本化学会編、丸善株式会社)に記載されている定義のものである。
「pKaが14以下である官能基」は、物性がこの条件を満たすものであれば、その構造などは特に限定されず、公知の官能基でpKaが上記範囲を満たすものが挙げられ、具体的には、例えば、カルボン酸(pKa 3〜5程度)、スルホン酸(pKa −3〜−2程度)、りん酸(pKa 2程度)、−COCHCO−(pKa 8〜10程度)、−COCHCN(pKa 8〜11程度)、−CONHCO−、フェノール性水酸基、−RCH2OH又は−(RCHOH(Rはペルフルオロアルキル基を表す pKa 9〜11程度))、スルホンアミド基(pKa 9〜11程度)等が挙げられ、特にカルボン酸(pKa 3〜5程度)、スルホン酸(pKa −3〜−2程度)、−COCHCO−(pKa 8〜10程度)が好ましい。
【0266】
このpKaが14以下である官能基を含有する基「X」は、通常、主鎖構造に含まれる窒素原子に直接結合するものであるが、特定樹脂の主鎖部の窒素原子とXとは、共有結合のみならず、イオン結合して塩を形成する態様で連結していてもよい。
pKaが14以下である官能基を含有する基「X」の分子量は、50〜1000であることが好ましく、50〜500であることが最も好ましい。この分子量の範囲であることにより、現像性・分散性がより良好となる。
【0267】
pKaが14以下である官能基を含有する基「X」としては、特に、下記一般式(V−1)、一般式(V−2)又は一般式(V−3)で表される構造を有するものが好ましい。
【0268】
【化55】

【0269】
一般式(V−1)、一般式(V−2)中、Uは単結合又は二価の連結基を表す。d及びeは、それぞれ独立して0又は1を表す。一般式(V−3)中、Wはアシル基又はアルコキシカルボニル基を表す。
【0270】
Uで表される二価の連結基としては、例えば、アルキレン(より具体的には、例えば、−CH−、−CHCH−、−CHCHMe−、−(CH−、−CHCH(n−C1021)−等)、酸素を含有するアルキレン(より具体的には、例えば、−CHOCH−、−CHCHOCHCH−等)、シクロアルキレン基(例えば、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロオクチレン等)、アリーレン基(例えば、フェニレン、トリレン、ビフェニレン、ナフチレン、フラニレン、ピロリレン等)、アルキレンオキシ(例えば、エチレンオキシ、プロピレンオキシ、フェニレンオキシ等)等が挙げられるが、特に炭素数1〜30のアルキレン基、炭素数5〜20のシクロアルキレン基又は炭素数6〜20のアリーレン基が好ましく、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数5〜10のシクロアルキレン基又は炭素数6〜15のアリーレン基が最も好ましい。また、生産性の観点から、dは1が好ましく、また、eは0が好ましい。
【0271】
Wはアシル基又はアルコキシカルボニル基を表す。Wにおけるアシル基としては、炭素数1〜30のアシル基(例えば、ホルミル、アセチル、n−プロパノイル、ベンゾイル等)が好ましく、特にアセチルが好ましい。Wにおけるアルコキシカルボニル基としては、Wは、特にアシル基が好ましく、アセチル基が製造のし易さ・原料(Xの前駆体X’)の入手性の観点から好ましい。
【0272】
「X」は、主鎖部の窒素原子と結合していることを特徴としている。これにより、顔料の分散性・分散安定性が飛躍的に向上する。この理由は不明であるが、次のように考えている。すなわち、主鎖部の窒素原子はアミノ基、アンモニウム基又はアミド基の構造で存在しており、これらは顔料表面の酸性部と水素結合・イオン結合等の相互作用をして吸着していると考えられる。さらに、本発明の「X」は酸基として機能するため、顔料の塩基性部(窒素原子等)や金属原子(銅フタロシアンの銅等)と相互作用することができる。つまり、本発明の樹脂は、窒素原子と「X」とで、顔料の塩基性部と酸性部の双方を吸着することができるため、吸着能が高まり、分散性・保存安定性が飛躍的に向上したものと考えられる。
【0273】
さらに、「X」はそこに部分構造としてpKaが14以下の官能基を含むであるため、アルカリ可溶性基としても機能する。それにより、この特定樹脂を硬化性組成物などに用い、塗膜にエネルギーを付与して部分的に硬化させ、未露光部を溶解除去してパターンを形成する如き用途に使用する場合、未硬化領域のアルカリ現像液への現像性が向上し、超微細顔料を含有する顔料分散液を用いた着色硬化性組成物、顔料含率の高い顔料分散液及び着色硬化性組成物において、分散性・分散安定性・現像性の鼎立が可能になったと考えられる。
【0274】
XにおけるpKaが14以下の官能基の含有量は特に制限がないが、特定樹脂1gに対し、0.01〜5mmolであることが好ましく、0.05〜1mmolであることが最も好ましい。この範囲において、顔料分散組成物における顔料の分散性、分散安定性が向上し、且つ、該顔料分散組成物を硬化性組成物に用いた場合、未硬化部の現像性に優れることになる。また、酸価の観点からは、特定樹脂の酸価が5〜50mgKOH/g程度となる量、含まれることが、特定樹脂をパターン形成性の硬化性組成物に用いたときの現像性の観点から好ましい。
酸価滴定は、公知の方法により行うことができ、例えば指示薬法(中和点を指示薬により見極める方法)、又は電位差測定法等を用いることができる。また、酸価滴定に用いる滴定液は市販の水酸化ナトリウム水溶液を用いることができるが、比較的高いpKaを有する官能基(例えば、−COCHCO−、フェノール性水酸基等)のように、水酸化ナトリウム水溶液によって酸価が測定しにくい場合は、ナトリウムメトキシド−ジオキサン溶液等の非水系滴定液を調製し、非水系溶媒系で酸価測定することが可能である。
【0275】
(iii)数平均分子量が500〜100,000であるオリゴマー鎖又はポリマー鎖「Y」
「Y」は数平均分子量500〜100,000のオリゴマー鎖又はポリマー鎖を表す。Yは、特定樹脂の主鎖部と連結できるポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリル酸エステル等の公知のポリマー鎖が挙げられる。Yの特定樹脂の主鎖部との結合部位は、末端であることが好ましい。
【0276】
Yは、主鎖部の窒素原子と結合していることが好ましい。Yと主鎖部の結合様式は、共有結合、イオン結合、又は、共有結合及びイオン結合の混合である。Yと主鎖部の結合様式の比率は、共有結合:イオン結合=100:0〜0:100であるが、95:5〜5:95が好ましく、90:10〜10:90がより好ましく、95:5〜80:20の範囲が最も好ましい。共有結合とイオン結合との結合様式をこの好ましい範囲とすることで、分散性・分散安定性が向上し、且つ溶剤溶解性が良好となる。
【0277】
Yは、主鎖部の窒素原子とアミド結合、又はカルボン酸塩としてイオン結合していることが好ましい。
【0278】
Yの数平均分子量は、GPC法によるポリスチレン換算値により測定することができる。Yの数平均分子量は、特に1,000〜50,000が好ましく、1,000〜30,000が分散性・分散安定性・現像性の観点から最も好ましい。
Yで示される側鎖構造は、主鎖部に対し、特定樹脂1分子中に、2つ以上連結していることが好ましく、5つ以上連結していることが最も好ましい。
【0279】
特に、Yは一般式(III−1)で表される構造を有するものが好ましい。
【0280】
【化56】

【0281】
一般式(III−1)中、Zはポリエステル鎖を部分構造として有するポリマー又はオリゴマーであり、下記一般式(IV)で表される遊離のカルボン酸を有するポリエステルからカルボキシ基を除いた残基を表す。
【0282】
【化57】

【0283】
一般式(IV)中、Zは一般式(III−1)中のZと同義である。
【0284】
特定樹脂が一般式(I−3)又は(II−3)で表される繰り返し単位を含有する場合、Y’が一般式(III−2)であることが好ましい。
【0285】
【化58】

【0286】
一般式(III−2)中、Zは一般式(III−1)のZと同義である。
【0287】
片末端にカルボキシ基を有するポリエステル(一般式(IV)で表わされるポリエステル)は、(IV-1)カルボン酸とラクトンの重縮合、(IV-2)ヒドロキシ基含有カルボン酸の重縮合、(IV-3)二価アルコールと二価カルボン酸(もしくは環状酸無水物)の重縮合、により得ることができる。
【0288】
(IV-1)カルボン酸とラクトンの重縮合反応において用いるカルボン酸は、脂肪族カルボン酸(炭素数1〜30の直鎖又は分岐のカルボン酸が好ましく、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、n−ヘキサン酸、n−オクタン酸、n−デカン酸、n−ドデカン酸、パルミチン酸、2−エチルヘキサン酸、シクロヘキサン酸等)、ヒドロキシ基含有カルボン酸(炭素数1〜30の直鎖又は分岐のヒドロキシ基含有カルボン酸が好ましく、例えば、グリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、4−ヒドロキシドデカン酸、5−ヒドロキシドデカン酸、リシノール酸、12−ヒドロキシドデカン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、2,2−ビス(ヒロドキシメチル)酪酸等)が挙げられるが、特に、炭素数6〜20の直鎖脂肪族カルボン酸又は炭素数1〜20のヒドロキシ基含有カルボン酸が好ましい。これらカルボン酸は混合して用いてもよい。ラクトンは、公知のラクトンを用いることができ、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−ヘキサノラクトン、γ−オクタノラクトン、δ−バレロラクトン、δ−ヘキサラノラクトン、δ−オクタノラクトン、ε−カプロラクトン、δ−ドデカノラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン等を挙げることができ、特にε−カプロラクトンが反応性・入手性の観点から好ましい。
これらラクトンは複数種を混合して用いてもよい。
カルボン酸とラクトンの反応時の仕込み比率は、目的のポリエステル鎖の分子量によるため一義的に決定できないが、カルボン酸:ラクトン=1:1〜1:1,000が好ましく、1:3〜1:500が最も好ましい。
【0289】
(IV-2)ヒドロキシ基含有カルボン酸の重縮合におけるヒドロキシ基含有カルボン酸は、前記(IV-1)におけるヒドロキシ基含有カルボン酸と同様であり、好ましい範囲も同様である。
(IV-3)二価アルコールと二価カルボン酸(もしくは環状酸無水物)の重縮合反応における二価アルコールとしては、直鎖又は分岐の脂肪族ジオール(炭素数2〜30のジオールが好ましく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール等)が挙げられ、特に炭素数2〜20の脂肪族ジオールが好ましい。
二価カルボン酸としては、直鎖又は分岐の二価の脂肪族カルボン酸(炭素数1〜30の二価の脂肪族カルボン酸が好ましく、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、グルタル酸、スベリン酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸等)が挙げられ、特に炭素数3〜20の二価カルボン酸が好ましい。また、これら二価カルボン酸と等価な酸無水物(例えば、無水コハク酸、無水グルタル酸等)を用いてもよい。
二価カルボン酸と二価アルコールは、モル比で1:1で仕込むことが好ましい。これにより、末端にカルボン酸を導入することが可能となる。
【0290】
ポリエステル製造時の重縮合は、触媒を添加して行うことが好ましい。触媒としては、ルイス酸として機能する触媒が好ましく、例えばTi化合物(例えば、Ti(OBu)、Ti(O−Pr)等)、Sn化合物(例えば、オクチル酸スズ、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズラウレート、モノブチルスズヒドロキシブチルオキシド、塩化第二スズ、ブチルスズジオキシド等)、プロトン酸(例えば、硫酸、パラトルエンスルホン酸等)等が挙げられる。触媒量は、全モノマーのモル数に対し、0.01〜10モル%が好ましく、0.1〜5モル%が最も好ましい。反応温度は、80〜250℃が好ましく、100〜180℃が最も好ましい。反応時間は、反応条件により異なるが、概ね1〜24時間である。
【0291】
ポリエステルの数平均分子量はGPC法によるポリスチレン換算値として測定することができる。ポリエステルの数平均分子量は、1,000〜1,000,000であるが、2,000〜100,000が好ましく、3,000〜50,000が最も好ましい。分子量がこの範囲にある場合、分散性・現像性の両立ができる。
【0292】
Yにおけるポリマー鎖を形成するポリエステル部分構造は、特に、(IV-1)カルボン酸とラクトンの重縮合、及び、(IV-2)ヒドロキシ基含有カルボン酸の重縮合、により得られるポリエステルであることが、製造容易性の観点から好ましい。
【0293】
また、本発明の顔料分散組成物においては、上述した高分子分散剤の他、以下に示す他の高分子化合物を使用してもよい。
他の高分子化合物としては、天然樹脂、変性天然樹脂、合成樹脂、天然樹脂で変性された合成樹脂等が用いられる。
天然樹脂としてはロジンが代表的であり、変性天然樹脂としては、ロジン誘導体、繊維素誘導体、ゴム誘導体、タンパク誘導体及びそれらのオリゴマーが挙げられる。合成樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。天然樹脂で変性された合成樹脂としては、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂等が挙げられる。
合成樹脂としては、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物が挙げられる。
【0294】
本発明の顔料分散組成物中における分散剤の含有量としては、質量比で、顔料(一般式(1)で表されるアゾ顔料を少なくとも含む全顔料):分散剤=1:0.1〜1:2が好ましく、より好ましくは、1:0.2〜1:1であり、更に好ましくは、1:0.4〜1:0.7である。
【0295】
<溶剤等>
本発明の顔料分散組成物は、溶剤を用いて好適に調製することができる。
溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの脂肪酸エステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコールなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ヘキサントリオールなどのグリコール類;グリセリン;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル類;トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテルなどのアルキレングリコールジアルキルエーテル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3―ジメチル−2−イミダゾリジノンなどの含窒素極性有機溶媒;水などが挙げられる。
【0296】
これらの溶剤のうち水溶性であるものは、水と混合して水性媒体として用いてもよい。また、水を除く上記の溶剤から選ばれる二種以上を混合して油性媒体として用いてもよい。
本発明の顔料分散組成物は、必要に応じ、その他の成分を含有してもよい。
【0297】
<顔料分散組成物の調製>
本発明の顔料分散組成物は、各種の混合機、分散機を使用して混合分散する混合分散工程を経ることによって、調製することができる。
なお、混合分散工程は、混練分散とそれに続けて行う微分散処理からなるのが好ましいが、混練分散を省略することも可能である。
【0298】
本発明の顔料分散組成物は、具体的には、例えば、一般式(1)で表されるアゾ顔料、酸性官能基含有誘導体、分散剤、及び溶剤を、分散装置を用いて分散することで得ることが好ましい。
分散装置としては、簡単なスターラーやインペラー攪拌方式、インライン攪拌方式、ミル方式(例えば、コロイドミル、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ペイントシェイカー、アジテーターミル等)、超音波方式、高圧乳化分散方式(高圧ホモジナイザー;具体的な市販装置としてはゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、DeBEE2000等)を使用することができる。
【0299】
本発明の顔料分散組成物は、より具体的には、例えば、一般式(1)で表されるアゾ顔料、酸性官能基含有誘導体、分散剤、及び溶剤を、縦型若しくは横型のサンドグラインダー、ピンミル、スリットミル、超音波分散機等を用いて、0.01mm〜1mmの粒子径のガラス、ジルコニア等でできたビーズにて微分散処理を行なうことにより得ることができる。
なお、ビーズによる微分散を行なう前に、二本ロール、三本ロール、ボールミル、トロンミル、ディスパー、ニーダー、コニーダー、ホモジナイザー、ブレンダー、単軸若しくは2軸の押出機等を用いて、強い剪断力を与えながら混練分散処理を行なうことも可能である。
【0300】
なお、混練、分散についての詳細は、T.C.Patton著”Paint Flow
and Pigment Dispersion”(1964年 John Wiley and Sons社刊)等に記載されており、本発明においてもここに記載の方法を適用することができる。
【0301】
[着色硬化性組成物]
本発明の着色硬化性組成物は、既述の本発明の顔料分散組成物と、光重合開始剤と、重合性化合物を含有する。
本発明の着色硬化性組成物は、上記構成としたことにより、支持体上に着色パターン形成する際に現像条件を強化した場合であっても、支持体に対する着色パターンの密着性維持と残渣の発生抑制とを両立しうる。
また、本発明の着色硬化性組成物においては、一般式(1)で表されるアゾ顔料の分散安定性が向上し、かつ、着色パターンとしたときに該着色パターンの耐熱性についても向上できる。分散安定性を向上させることにより、形成された着色パターンの耐熱性を向上できる原因については定かではないが、顔料の凝集による透過率減少を抑制できるためと推定される。但し、本発明はこの推定によって限定されることはない。
【0302】
<光重合開始剤>
本発明の着色硬化性組成物は、光重合開始剤を含有する。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、アントラキノン系光重合開始剤、ナフトキノン系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤、及びオキシム系光重合開始剤から選択される1種以上が挙げられる。これらの光重合開始剤とともに、さらに公知の光増感剤を使用してもよい。
上記のうち、パターン形成性(パターン硬化性)向上及び現像残渣抑制等の観点からは、オキシム系光重合開始剤が好ましい。
【0303】
オキシム系光重合開始剤としては、光により分解し、ラジカル重合性モノマーの重合反応を開始、促進する化合物が好ましく、波長300〜500nmの領域に吸収を有するものがより好ましい。オキシム系光重合開始剤が良好な理由は、光による分解効率が極めて高く、より高い硬化性が得られるため、現像後に矩形なパターンが形成できているものと推測している。
【0304】
本発明におけるオキシム系光重合開始剤としては、例えば、J.C.S. Perkin II (1979 )1653−1660)、J.C.S. Perkin II (1979)156−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202−232、特開2000−66385号公報、特開2000−80068号公報(段落番号0004〜0296)、特表1004−534797号公報、特開2001−233842号公報、WO−02/100903A1、特開2006−342166号公報(段落番号0004〜0264)等に記載の化合物等が挙げられる。
【0305】
また、オキシム系開始剤としては、パターン形成性向上及び現像残渣抑制の効果をより効果的に得る観点からは、下記一般式(O−I)で表される化合物が好ましい。
【0306】
【化59】



【0307】
一般式(O−I)中、Rは置換基を有してもよいアルキル基又はアリール基を表す。Rは、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、又は、置換基を有してもよいアセチル基を表す。R、R、R、R及びRは、互いに独立して、水素原子もしくは1価の有機基を表す。R、R、R、R及びRは互いに結合して5員環又は6員環を形成してもよい。
また、ここで、アルキル基、アリール基及びアシル基に導入可能な置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、クロロ基、ブロモ基等が挙げられる。
【0308】
好適なRは炭素数1〜12のアルキル基又は4−(炭素数1〜4のアルキルチオ)フェニル基である。好適なRはアセチル基又はアシル基である。
また、R、R、R、R及びRが1価の有機基を表す場合の好ましい有機基としては、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、チオフェノキシ基が挙げられ、なかでも、フェノキシ基、チオフェノキシ基が好ましい。
なお、R、R、R及びRは水素原子であることが好ましい。Rは−SRで示
される基であることが好ましく、ここで、Rは置換基を有していてもよいフェニル基を示す。より好適なRは下記式で表される基である。
【0309】
【化60】

【0310】
また、一般式(O−I)で表されるオキシム系開始剤のうち、好適なオキシム系開始剤としては下記一般式(O−II)で表される化合物が挙げられる。
【0311】
【化61】

【0312】
一般式(O−II)中、Rは、一般式(O−I)におけるRと同義である。Xは一価の置換基を表し、n2が2〜5の整数を表す場合、複数存在するXは同じでも、互いに異なっていてもよい。Aは二価の有機基を表し、Arはアリール基を表す。n2は1〜5の整数である。
【0313】
一般式(O−II)中、Xで表される一価の有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
一般式(O−II)中、Aで表される二価の有機基としては、炭素数1以上12以下のアルキレン、シクロヘキシレン、アルキニレンが挙げられる。
【0314】
一般式(O−II)中、Arで表されるアリール基としては、炭素数6以上30以下のアリール基が好ましく、アリール基は置換基を有していてもよい。アリール基に導入可能な置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
なかでも、感度を高め、加熱経時による着色を抑制する点から、Arは置換又は無置換のフェニル基が好ましい。
【0315】
本発明において、オキシム系光開始剤として具体的には、下記(I−1)〜(I−6)の化合物が挙げられるが、特に好適な化合物は、一般式(O−I)に含まれる(I−2)〜(I−6)であり、中でも(I−2)がパターン形成時の現像残渣が特に少ないため、最も好適である。
【0316】
【化62】

【0317】
また、本発明において用いることができるオキシム系光重合開始剤の具体的化合物名としては、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ペンタンジオン、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ヘキサンジオン、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ヘプタンジオン、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(エチルフェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(ブチルフェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、1−(O−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、1−(O−アセチルオキシム)−1−[9−メチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、1−(O−アセチルオキシム)−1−[9−プロプル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、1−(O−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−エチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、1−(O−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−ブチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノンなどが挙げられる。但し、これらに限定されない。
【0318】
オキシム系光重合開始剤の特に好ましい具体例としては、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン、1−(O−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノンが挙げられる。このようなオキシム系光重合性開始剤としては、CGI−124、CGI−242(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)が挙げられる。
【0319】
本発明の着色硬化性組成物中における光重合開始剤(例えば、オキシム系光重合開始剤)の含有量としては、全固形分中、1.0質量%〜15.0質量%であることが好ましく、1.0質量%〜12.5質量%であることがより好ましく、1.0質量%〜10.0質量%であることが更に好ましく、1.0質量%〜5.0質量%であることが特に好ましい。この範囲で、より良好な感度とパターン形成性及び塗布膜均一性が得られる。
【0320】
ここで、本明細書において、配合割合を特定するための着色硬化性組成物の固形分とは、溶剤を除く組成物中に含有される全ての成分を含み、常温(25℃)にて液状の成分(例えば、液状の重合性化合物)なども固形分に含まれる。
【0321】
<重合性化合物>
本発明の着色硬化性組成物は、少なくとも1種の重合性化合物を含有する。
重合性化合物としては、公知の重合性化合物を用いることができ、単官能の重合性化合物であってもよいが、パターン形成性をより向上させる観点等からは、多官能の重合性化合物が好ましく、3官能以上の重合性化合物がより好ましい。
また、重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であることが好ましく、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれることがより好ましい。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。重合性化合物は、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。
【0322】
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
また、重合性化合物としては、特開2009−256572号段落番号0118〜0128に記載されている重合性化合物を用いてもよい。
【0323】
また、本発明における重合性化合物としては、パターン形成性等の観点からは、特開2009−244807号公報の段落番号0029〜0056や特開2009−229761号公報の段落番号0038〜0051に記載されている光硬化性化合物(重合性化合物)、例えば、下記一般式(M−i)又は(M−ii)で表される化合物の群から選択される少なくとも1種の重合性化合物であることも好ましい。
【0324】
【化63】

【0325】
一般式(M−i)及び(M−ii)中、Eは、各々独立に、−((CHCHO)−、又は−((CHCH(CH)O)−を表し、yは、各々独立に0〜10の整数を表し、Xは、各々独立に、アクリロイル基、メタクリロイル基、水素原子、又はカルボキシ基を表す。
一般式(M−i)中、アクリロイル基及びメタクリロイル基の合計は3個又は4個であり、mは、各々独立に0〜10の整数を表し、各mの合計は0〜40の整数である。但し、各mの合計が0の場合、Xのうちいずれか1つはカルボキシ基である。
一般式(M−ii)中、アクリロイル基及びメタクリロイル基の合計は5個又は6個であり、nは、各々独立に0〜10の整数を表し、各nの合計は0〜60の整数である。但し、各nの合計が0の場合、Xのうちいずれか1つはカルボキシ基である。
【0326】
一般式(M−i)中、mは、0〜6の整数が好ましく、0〜4の整数がより好ましい。また、各mの合計は、2〜40の整数が好ましく、2〜16の整数がより好ましく、4〜8の整数が特に好ましい。
一般式(M−ii)中、nは、0〜6の整数が好ましく、0〜4の整数がより好ましい。また、各nの合計は、3〜60の整数が好ましく、3〜24の整数がより好ましく、6〜12の整数が特に好ましい。
また、一般式(M−i)又は一般式(M−ii)中の−((CHCHO)−又は−((CHCH(CH)O)−は、酸素原子側の末端がXに結合する形態が好ましい。
【0327】
一般式(M−i)又は(M−ii)で表される化合物は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。特に、一般式(M−ii)において、6個のXすべてがアクリロイル基である形態が好ましい。
【0328】
一般式(M−i)又は(M−ii)で表される化合物は、従来公知の工程である、ペンタエリスリト−ル又はジペンタエリスリト−ルにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを開環付加反応により開環骨格を結合する工程と、開環骨格の末端水酸基に、例えば(メタ)アクリロイルクロライドを反応させて(メタ)アクリロイル基を導入する工程と、から合成することができる。各工程は良く知られた工程であり、当業者は容易に一般式(M−i)又は(M−ii)で表される化合物を合成することができる。
【0329】
一般式(M−i)、(M−ii)で表される化合物の中でも、ペンタエリスリトール誘導体及び/又はジペンタエリスリトール誘導体がより好ましい。具体的には、下記式(a)〜(f)で表される化合物(以下、「例示化合物(a)〜(f)」ともいう)が挙げられ、中でも、例示化合物(a)、(b)、(c)、(f)が好ましい。
【0330】
【化64】

【0331】
【化65】

【0332】
一般式式(M−i)、(M−ii)で表される化合物の市販品としては、例えば、サートマー社製のエチレンオキシ基を4個有する4官能アクリレートであるSR−494、日本化薬株式会社製のペンチレンオキシ基を6個有する6官能アクリレートであるDPCA−60、イソブチレンオキシ基を3個有する3官能アクリレートであるTPA−330などが挙げられる。
【0333】
本発明の着色硬化性組成物中における重合性化合物の含有量としては、全固形分に対し、5質量%〜70質量%であることが好ましく、10質量%〜60質量%であることがより好ましい。
【0334】
<アルカリ可溶性樹脂>
本発明の着色硬化性組成物は、アルカリ可溶性樹脂を含有することが好ましい。
着色硬化性組成物にアルカリ可溶性樹脂を含有する場合には、該着色硬化性組成物をフォトリソ法によるパターン形成に適用した際において、パターン形成性をより向上させることができる。
【0335】
アルカリ可溶性樹脂としては、線状有機高分子重合体であって、分子(好ましくは、アクリル系共重合体、スチレン系共重合体を主鎖とする分子)中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基(例えば、カルボキシ基、リン酸基、スルホン酸基など)を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。このうち、更に好ましくは、有機溶剤に可溶で弱アルカリ水溶液により現像可能なものである。
【0336】
アルカリ可溶性樹脂の製造には、例えば、公知のラジカル重合法による方法を適用することができる。ラジカル重合法でアルカリ可溶性樹脂を製造する際の温度、圧力、ラジカル開始剤の種類及びその量、溶媒の種類等々の重合条件は、当業者において容易に設定可能であり、実験的に条件を定めるようにすることもできる。
【0337】
線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸を有するポリマーが好ましい。例えば、特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号の各公報に記載されているような、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等、並びに側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの等であり、更に側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する高分子重合体も好ましいものとして挙げられる。
【0338】
これらの中では、特に、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体やベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が好適である。
この他、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを共重合したもの等も有用なものとして挙げられる。
【0339】
上記以外に、特開平7−140654号公報に記載の、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクレート/メタクリル酸共重合体などが挙げられる。
【0340】
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂の好適なものとしては、特に、(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他の単量体との共重合体が挙げられる。ここで(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸とを合わせた総称であり、以下も同様に(メタ)アクリレートはアクリレートとメタクリレートの総称である。
【0341】
(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体としては、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。ここで、アルキル基及びアリール基の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。
アルキル(メタ)アクリレート及びアリール(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0342】
また、ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、CH=CR、CH=C(R)(COOR)〔ここで、Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素数6〜10の芳香族炭化水素環を表し、Rは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜12のアラルキル基を表す。〕等を挙げることができる。
【0343】
これら共重合可能な他の単量体は、1種単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
好ましい共重合可能な他の単量体は、CH=CR、CH=C(R)(COOR)、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、及びスチレンから選択される少なくとも1種であり、特に好ましくは、CH=CR、及び/又は、CH=C(R)(COOR)である。
【0344】
アルカリ可溶性樹脂を含有させる場合、着色硬化性組成物中におけるその含有量としては、該組成物の全固形分に対して、1質量%〜30質量%が好ましく、より好ましくは1質量%〜25質量%であり、特に好ましくは2質量%〜20質量%である。
【0345】
<溶剤>
本発明の着色硬化性組成物は、一般に、前述の各成分と共に溶剤を用いることで、好適に調製することができる。
用いられる溶剤としては、エステル類、例えば、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルキルエステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル;3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチルなどの3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等;エーテル類、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート等;ケトン類、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等;芳香族炭化水素類、例えば、トルエン、キシレン;等が挙げられる。
【0346】
これらのうち、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等が好適である。
溶剤は、単独で用いる以外に2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0347】
<界面活性剤>
本発明の着色硬化性性組成物には、塗布性をより向上させる観点から、各種の界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用できる。
【0348】
特に、本発明の着色硬化性組成物は、フッ素系界面活性剤を含有することで、塗布液として調製したときの液特性(特に、流動性)がより向上することから、塗布厚の均一性や省液性をより改善することができる。
即ち、フッ素系界面活性剤を含有する着色硬化性組成物を適用した塗布液を用いて膜形成する場合においては、被塗布面と塗布液との界面張力を低下させることにより、被塗布面への濡れ性が改善され、被塗布面への塗布性が向上する。このため、少量の液量で数μm程度の薄膜を形成した場合であっても、厚みムラの小さい均一厚の膜形成をより好適に行える点で有効である。
【0349】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3質量%〜40質量%が好適であり、より好ましくは5質量%〜30質量%であり、特に好ましくは7質量%〜25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、着色硬化性組成物中における溶解性も良好である。
【0350】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、メガファックF171、同F172、同F173、同F176、同F177、同F141、同F142、同F143、同F144、同R30、同F437、同F475、同F479、同F482、同F554、同F780、同F781(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431、同FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC1068、同SC−381、同SC−383、同S393、同KH−40(以上、旭硝子(株)製)、ソルスパース20000(ゼネカ社製)等が挙げられる。
【0351】
ノニオン系界面活性剤として具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル(BASF社製のプルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2、テトロニック304、701、704、901、904、150R1等が挙げられる。
【0352】
カチオン系界面活性剤として具体的には、フタロシアニン誘導体(商品名:EFKA−745、森下産業(株)製)、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社油脂化学工業(株)製)、W001(裕商(株)製)等が挙げられる。
【0353】
アニオン系界面活性剤として具体的には、W004、W005、W017(裕商(株)社製)等が挙げられる。
【0354】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、東レ・ダウコーニング(株)「トーレシリコーンDC3PA」、「トーレシリコーンSH7PA」、「トーレシリコーンDC11PA」,「トーレシリコーンSH21PA」,「トーレシリコーンSH28PA」、「トーレシリコーンSH29PA」、「トーレシリコーンSH30PA」、「トーレシリコーンSH8400」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製「TSF−4440」、「TSF−4300」、「TSF−4445」、「TSF−4460」、「TSF−4452」、信越シリコーン株式会社製「KP341」、「KF6001」、「KF6002」、ビッグケミー社製「BYK323」、「BYK330」等が挙げられる。
界面活性剤は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
【0355】
<熱重合防止剤>
更に、本発明の着色硬化性組成物には、熱重合防止剤(重合禁止剤)を添加してもよい。
熱重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンゾイミダゾール等が有用である。
【0356】
<その他の成分>
本発明の着色硬化性組成物には、必要に応じて、増感色素、エポキシ樹脂、フッ素系有機化合物、熱重合開始剤、熱重合成分、充填剤、上記アルカリ可溶性樹脂以外の高分子化合物、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤などの各種添加物を含有することができる。
その他の成分としては、例えば、特開2009−256572号公報の段落0155〜段落0217に記載の各成分を用いることができる。
【0357】
本発明の着色硬化性組成物は、既述の本発明の顔料分散組成物に対し、重合性化合物、及び光重合開始剤、更には、必要に応じて、アルカリ可溶性樹脂や溶剤、界面活性剤等の添加剤を加えることで、調製することができる。
【0358】
本発明の着色硬化性組成物は、支持体上に着色パターン形成する際に現像条件を強化した場合であっても、支持体に対する着色パターンの密着性維持と残渣の発生抑制とを両立させることができることから、残渣欠陥等の発生が抑制された微細な着色領域を形成できる。また、一般式(1)で表されるアゾ顔料を含む顔料分散組成物を含むことから、顔料分散性に優れ、また、色特性にも優れる。
そのため、微細且つ良好な色特性が求められるカラーフィルタ(特に固体撮像素子用カラーフィルタ)の着色領域を形成するために用いられることが好ましい。
【0359】
[固体撮像素子用カラーフィルタ及びその製造方法]
本発明の固体撮像素子用カラーフィルタの製造方法は、支持体上に、既述の本発明の着色硬化性組成物を付与して着色硬化性組成物層を形成する工程(以下、「着色硬化性組成物層形成工程」ともいう)と、前記着色硬化性組成物層をマスクを介して露光する工程(以下、「露光工程」ともいう)と、露光後の着色硬化性組成物層を現像して着色パターン(以下、「着色画素」ともいう)を形成する工程(以下、「現像工程」ともいう)と、を含む。
また、本発明の固体撮像素子用カラーフィルタは、本発明の固体撮像素子用カラーフィルタの製造方法によって製造されたものである。
本発明の固体撮像素子用カラーフィルタは、本発明の固体撮像素子用カラーフィルタの製造方法によって製造された赤色パターン(赤色画素)を少なくとも有していればよい。本発明の固体撮像素子用カラーフィルタの具体的形態としては、例えば、前記赤色パターンと他の着色パターンとを組み合わせた多色のカラーフィルタの形態(例えば、前記赤色パターン、青色パターン、及び緑色パターンを少なくとも有する3色以上のカラーフィルタ)が好適である。
以下、固体撮像素子用カラーフィルタを単に「カラーフィルタ」ということがある。
【0360】
<着色硬化性組成物層形成工程>
着色硬化性組成物層形成工程では、支持体上に、本発明の着色硬化性組成物を付与して着色硬化性組成物層を形成する。
本工程に用いうる支持体としては、例えば、基板(例えば、シリコン基板)上にCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の撮像素子(受光素子)が設けられた固体撮像素子用基板を用いることができる。
本発明における着色パターンは、固体撮像素子用基板の撮像素子形成面側(おもて面)に形成されてもよいし、撮像素子非形成面側(裏面)に形成されてもよい。
固体撮像素子用基板における各撮像素子間や、固体撮像素子用基板の裏面には、遮光膜が設けられていてもよい。
また、支持体上には、必要により、上部の層との密着改良、物質の拡散防止或いは基板表面の平坦化のために下塗り層を設けてもよい。
【0361】
支持体上への本発明の着色硬化性組成物の付与方法としては、スリット塗布、インクジェット法、回転塗布、流延塗布、ロール塗布、スクリーン印刷法等の各種の塗布方法を適用することができる。
【0362】
着色硬化性組成物層の膜厚としては、0.1μm〜10μmが好ましく、0.2μm〜5μmがより好ましく、0.2μm〜3μmがさらに好ましい。
【0363】
支持体上に塗布された着色硬化性組成物層の乾燥(プリベーク)は、ホットプレート、オーブン等で50℃〜140℃の温度で10秒〜300秒で行うことができる。
【0364】
<露光工程>
露光工程では、着色硬化性組成物層形成工程において形成された着色硬化性組成物層を、例えば、ステッパー等の露光装置を用い、所定のマスクパターンを有するマスクを介してパターン露光する。
露光に際して用いることができる放射線(光)としては、特に、g線、i線等の紫外線が好ましく(特に好ましくはi線)用いられる。照射量(露光量)は30〜1500mJ/cmが好ましく50〜1000mJ/cmがより好ましく、80〜500mJ/cmが最も好ましい。
【0365】
<現像工程>
次いでアルカリ現像処理を行うことにより、露光工程における光未照射部分の着色硬化性組成物層がアルカリ水溶液に溶出し、光硬化した部分だけが残る。
現像液としては、下地の撮像素子や回路などにダメージを起さない、有機アルカリ現像液が望ましい。現像温度としては通常20℃〜30℃であり、現像時間は従来は20秒〜90秒であった。より残渣を除去するため、近年では120秒〜180秒実施する場合もある。さらには、より残渣除去性を向上するため、現像液を60秒ごとに振り切り、さらに新たに現像液を供給する工程を数回繰り返す場合もある。
【0366】
現像液に用いるアルカリ剤としては、例えば、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−[5、4、0]−7−ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物が挙げられ、これらのアルカリ剤を濃度が0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜1質量%となるように純水で希釈したアルカリ性水溶液が現像液として好ましく使用される。
なお、現像液には無機アルカリを用いてもよく、無機アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウムなどが好ましい。
なお、このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を使用した場合には、一般に現像後純水で洗浄(リンス)する。
【0367】
次いで、乾燥を施した後に加熱処理(ポストベーク)を行うことが好ましい。
多色の着色パターンを形成するのであれば、各色ごとに前記工程を順次繰り返して硬化皮膜を製造することができる。これによりカラーフィルタが得られる。
ポストベークは、硬化を完全なものとするための現像後の加熱処理であり、通常100℃〜240℃、好ましくは200℃〜240℃の熱硬化処理を行う。
このポストベーク処理は、現像後の塗布膜を、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行うことができる。
【0368】
なお、本発明の製造方法は、必要に応じ、上記以外の工程として、固体撮像素子用カラーフィルタの製造方法として公知の工程を有していてもよい。例えば、上述した、着色硬化性組成物層形成工程、露光工程、及び現像工程を行った後に、必要により、形成された着色パターンを加熱及び/又は露光により硬化する硬化工程を含んでいてもよい。
【0369】
また、本発明に係る着色硬化性組成物を用いる場合、例えば、塗布装置吐出部のノズルや配管部の目詰まりや塗布機内への着色硬化性組成物や顔料の付着・沈降・乾燥による汚染等が生じる場合がある。そこで、本発明の着色硬化性組成物によってもたらされた汚染を効率よく洗浄するためには、前掲の本組成物に関する溶剤を洗浄液として用いることが好ましい。また、特開平7−128867号公報、特開平7−146562号公報、特開平8−278637号公報、特開2000−273370号公報、特開2006−85140号公報、特開2006−291191号公報、特開2007−2101号公報、特開2007−2102号公報、特開2007−281523号公報などに記載の洗浄液も本発明に係る着色硬化性組成物の洗浄除去として好適に用いることができる。
上記のうち、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート及びアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。
これら溶媒は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を混合する場合、水酸基を有する溶剤と水酸基を有しない溶剤とを混合することが好ましい。水酸基を有する溶剤と水酸基を有しない溶剤との質量比は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜80/20である。プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)とプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)の混合溶剤で、その比率が60/40であることが特に好ましい。なお、汚染物に対する洗浄液の浸透性を向上させるために、洗浄液には前掲の本組成物に関する界面活性剤を添加してもよい。
【0370】
本発明の固体撮像素子用カラーフィルタは、本発明の着色硬化性組成物を用いているため、剥がれ欠陥及び残渣欠陥が少なく、また、着色パターンの耐熱性に優れている。また、一般式(1)で表されるアゾ顔料を用いて形成されているため、赤色としての分光特性に優れる。
本発明の固体撮像素子用カラーフィルタは、CCD、CMOS等の固体撮像素子に好適に用いることができ、特に100万画素を超えるような高解像度のCCDやCMOS等に好適である。本発明の固体撮像素子用カラーフィルタは、例えば、CCD又はCMOSを構成する各画素の受光部と、集光するためのマイクロレンズと、の間に配置されるカラーフィルタとして用いることができる。
【0371】
固体撮像素子用カラーフィルタにおける着色パターン(着色画素)の膜厚としては、2.0μm以下が好ましく、1.0μm以下がより好ましい。
また、着色パターン(着色画素)のサイズ(パターン幅)としては、2.5μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ましく、1.7μm以下が特に好ましい。
【0372】
[固体撮像素子]
本発明の固体撮像素子は、既述の本発明の固体撮像素子用カラーフィルタを備える。
本発明の固体撮像素子の構成としては、本発明の固体撮像素子用カラーフィルタが備えられた構成であり、固体撮像素子として機能する構成であれば特に限定はないが、例えば、以下のような構成が挙げられる。
【0373】
支持体上に、固体撮像素子(CCDイメージセンサー、CMOSイメージセンサー、等)の受光エリアを構成する複数のフォトダイオード及びポリシリコン等からなる転送電極を有し、前記フォトダイオード及び前記転送電極上にフォトダイオードの受光部のみ開口したタングステン等からなる遮光膜を有し、遮光膜上に遮光膜全面及びフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等からなるデバイス保護膜を有し、前記デバイス保護膜上に、本発明の固体撮像素子用カラーフィルタを有する構成である。
更に、前記デバイス保護層上であってカラーフィルタの下(支持体に近い側)に集光手段(例えば、マイクロレンズ等。以下同じ)を有する構成や、カラーフィルタ上に集光手段を有する構成等であってもよい。
【実施例】
【0374】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、機器、操作等は本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特に断りのない限り「%」及び「部」は、「質量%」及び「質量部」を表し、分子量とは重量平均分子量のことを示す。
【0375】
〔実施例1〕
<顔料分散組成物Pの調製>
(粉砕芒硝(粉砕硫酸ナトリウム)の作製)
乾燥空気を0.65MPaジェットミル(日清エンジニアリング(株)製、気流式粉砕機、スーパージェットミル)に送入し、原料芒硝(三田尻化学工業(株)製、中性無水芒硝、平均粒径20μm)を20kg/hrの速度で供給し、連続粉砕した。粉砕機から排出される粉砕芒硝をバグフィルターで一括捕集した。
粉枠芒硝をイソブチルアルコールに添加し、超音波(1分間)で分散させ、粒子径測定装置(日機装(株)製、マイクロトラック粒度分布測定装置、MT−3300II)で粒度分布を測定して平均粒子径D50を求めたところ、3.19μmであった。更に、粒度分布データから10μm以上の大粒径粒子の体積%は読み取ったところ、0.00体積%であった。
【0376】
(顔料のソルベントソルトミリング)
一般式(1)で表されるアゾ顔料である下記顔料1(赤色顔料)を、ソルベントソルトミリングにより微細化した。詳細を以下に説明する。
【0377】
【化66】

【0378】
顔料1のソルベントソルトミリングは、以下の手順により行った。
まず、双腕型混練機(モリヤマ製、5LニーダーΣ型、以下、ニーダーという。)に、3000gの前記粉砕芒硝を加え、さらに300gの顔料1を加えて5分間混合した。混合物にジエチレングリコール(DEG)((株)日本触媒製)を900g添加して混練した。ニーダー中の混練物の温度が50℃になるように温度コントロールをして10時間混練する(以下、混練物をマグマという。)。以上の操作を微細化工程とした。
【0379】
次に、微細化工程が終了したマグマを取り出し、温調可能なタンク内に移した。タンク内には予め脱イオン水を20L溜めておいた。撹拌装置で、回転数150rpmで2時間撹拌し、マグマを分散させた。得られた分散液をヌッチェに移して濾過した。濾過後、脱イオン水により、洗浄排水の電気伝導度が3μS/cm以下になるまで水洗した(水洗された水分を多く含んだ微細化顔料を顔料ペーストと称す。)。
水洗後の顔料ペーストを取り出し、乾燥用棚(材質 SUS304)に採り、更に乾燥
機に移して80〜105℃、15時間乾燥させた(乾燥後の微細化顔料を乾燥ブロックと称す。)。
乾燥ブロックを粉砕機(協立理工(株)製、小型粉砕機、サンプルミルSK−M2)で粉砕した。
以上のようにして、顔料1のソルベントソルトミリングを行った。以下の顔料分散組成物Pの調製には、以上のソルベントソルトミリング後の顔料1を用いた。
【0380】
(顔料分散組成物Pの調製)
下記組成からなる混合液を、ビーズミルにより2時間混合・分散して赤色顔料分散組成物Pを調製した。
−組成−
・ソルベントソルトミリング後の顔料1と、ピグメントイエロー139(PY139)と、の混合物(質量比〔顔料1/PY139〕=100/30) … 11.80部
・下記化合物1(酸性官能基を有するトリアジン誘導体) … 1.31部
・下記分散剤1 … 6.59部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
… 80.29部
【0381】
上記顔料分散組成物Pでは、顔料1が主顔料であり、ピグメントイエロー139が副顔料である。
【0382】
【化67】

【0383】
【化68】


分散剤1
【0384】
なお、上記分散剤1は、特開2009−203462号公報の段落番号[0245]〜[0247]に記載される合成例に準じて合成することができる。
【0385】
得られた赤色顔料分散組成物Pについて、ナノトラックUPA粒度分析計(UPA−EX150;日機装社製)を用いて体積平均粒子径の測定を行ったところ、10nmであった。
【0386】
<赤色着色硬化性組成物Rの調製>
上記の顔料分散組成物Pを用い、下記組成となるように混合・攪拌して赤色着色硬化性組成物Rを調製した。
(組成)
・顔料分散組成物P … 10.28部
・重合性化合物:例示化合物(b)として前掲した化合物 … 0.15部
・オキシム系光重合開始剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製CGI−124
… 0.07部
・重合禁止剤:p−メトキシフェノール … 0.01部
・樹脂:メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸/メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル共重合体、モル比60/20/20、重量平均分子量15000) … 1.14部
・フッ素系界面活性剤:DIC社製メガファックF781の1.0%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液 … 0.63部
・溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」と称する。) … 2.73部
【0387】
<下塗り層付基板の作製>
8インチのデバイス形成済みシリコンウエハ(固体撮像素子基板)をオーブン中で200℃にて30分加熱処理した。次いで、この基板上にダイセル化学工業(株)製硬化性樹脂液「サイクロマーP ACA Z230AA」を乾燥膜厚0.3μmになるように塗布し、更に230℃のホットプレートで5分間加熱乾燥させて下塗り層を形成し、下塗り層付基板を得た。
【0388】
<赤色カラーフィルタの作製>
上記で調製された赤色着色硬化性組成物Rを、上記にて作製した下塗り層付基板のデバイス形成面側に塗布し、光硬化性の塗布膜を形成した。そして、この塗布膜の乾燥膜厚が1.0μmになるように、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行った。
次いで、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を使用して、365nmの波長で1.0μm四方の赤色画素を形成するためのフォトマスクを通して露光量200mJ/cmにてパターン露光を行った。
その後、照射された塗布膜が形成されているシリコンウエハをスピン・シャワー現像機(DW−30型;(株)ケミトロニクス製)の水平回転テーブル上に載置し、CD−2000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)の60%希釈液を用いて23℃で60秒間パドル現像を3回繰り返して行い、シリコンウエハに赤色パターンを形成した。
【0389】
赤色パターンが形成されたシリコンウエハを真空チャック方式で前記水平回転テーブルに固定し、回転装置によって該シリコンウエハを回転数50rpmで回転させつつ、その回転中心の上方より純水を噴出ノズルからシャワー状に供給してリンス処理を行い、その後スプレー乾燥した。
次に、220℃のホットプレートにて5分間加熱し、シリコンウエハ上に赤色パターン(赤色カラーフィルタ)を得た。
【0390】
<密着性(着色パターンの剥がれ)の評価>
得られた赤色カラーフィルタ付きシリコンウエハを光学顕微鏡(倍率100倍)で観察し、1ウエハーあたり50視野をランダムで抽出し、剥がれているパターンの数を実際にカウントし、着色パターンの剥がれの発生率を算出した。結果を表1に示す。
表1に示されるように、着色パターンの剥がれの発生率は1%未満であり、このことから、本実施例にて得られた赤色カラーフィルタでは、着色パターンの剥がれが十分抑制できていることが確認できた。
着色パターンの剥がれの発生率は、3%以下であることが、実用上問題とならないレベルである。
【0391】
<残渣の評価>
得られた赤色カラーフィルタ付きシリコンウエハをApplied Materials technology社製の欠陥検査装置ComPLUS3にて検査し、欠陥部分を検出し、これら欠陥部位の顕微鏡画像にて残渣欠陥の存在量(個/cm)を算出した。
残渣欠陥の存在量が、3.0個/cm以下であることが、実用上問題とならないレベルである。結果を下記表1に示す。
【0392】
<分光の確認>
赤色カラーフィルタの作製において、8インチのデバイス形成済みシリコンウエハをガラス基板に置き換え、パターン露光を全面露光に変更して赤色膜を形成し、得られた赤色膜の分光特性(各波長における透過率)を、MCPD−3000(大塚電子社製)により測定した。
測定された分光特性では、350nm〜400nmにおける透過率が低減されており、650nm〜750nmの波長領域における透過率が高かった。
即ち、本実施例にて得られたカラーフィルタが有する着色パターンは、赤色として良好な分光特性を示すことが確認された。
【0393】
<耐熱性の評価>
赤色カラーフィルタの作製において、8インチのデバイス形成済みシリコンウエハをガラス基板に置き換え、パターン露光を全面露光に変更して赤色膜を形成した。
得られた赤色膜を大気下、220℃で60分間曝露し、その前後の色差(ΔE*ab)を分光光度計MCPD−3000(大塚電子社製)で測定した。測定された色差(ΔE*ab)に基づき、耐熱性を評価した。
耐熱性は、色差ΔE*abの値が小さいほど良好であることを示す。評価結果を下記表1に示す。
【0394】
〔実施例2〜15、比較例1〕
実施例1中、主顔料、副顔料、顔料誘導体、分散剤の種類を、下記表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして顔料分散組成物、着色硬化性組成物、及び赤色カラーフィルタを作製し、実施例1と同様の評価を行った。
評価結果を下記表1に示す。
【0395】
【表1】



【0396】
表1に記載の各成分の詳細は、以下のとおりである。
【0397】
【化69】



【0398】
顔料4:ピグメントイエロー139
顔料5:ピグメントイエロー150
顔料6:ピグメントイエロー185
顔料7:ピグメントレッド254
顔料8:ピグメントオレンジ71
顔料9:ピグメントバイオレット29
【0399】
【化70】







【0400】
分散剤2:2,4−トリレンジイソシアネートと、ポリブチレンアジペート(分子量2000)と、N,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミンの100/50/2反応物(分子量10,000)
分散剤3:ベンジルメタクリレート/2−エチルヘキシルメタクリレート/2−ジメチルアミノエチルメタクリレート(重量比30/30/40)共重合体(重量平均分子量12,000)
分散剤4:メタクリル酸/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/N−フェニルマレイミド/スチレン/n−ブチルメタクリレート共重合体(共重合比=15/15/15/15/12/23/20、重量平均分子量=12,000)
分散剤5:上記構造の分散剤(重量平均分子量25,000)
【化71】

【0401】
表1に示すように、アゾ顔料、酸性官能基誘導体、及び分散剤を含有する実施例1〜15の顔料分散液を使用した着色硬化性組成物は、形成された着色パターンの密着性が良好で、かつ残渣も少ない良好なパターン形成性を示すものであった。
【0402】
なお、上記実施例では、デバイス形成済みシリコンウエハの上に赤色カラーフィルタを形成した例について説明したが、本発明は上記実施例により限定されるものではない。
【0403】
〔実施例16〕
固体撮像素子を以下のようにして作製した。
<着色硬化性組成物の調製>
緑色着色硬化性組成物を、実施例1において、顔料1をPigmentGreen36に変更した以外は、実施例1と同様にして調製した。
青色着色硬化性組成物を、実施例1において、顔料1をPigmentBlue15:6に、顔料4をPigmentViolet23に変更した以外は、実施例1と同様にして調製した。
赤色着色硬化性組成物としては、実施例1において調製した赤色着色硬化性組成物Rを用いた。
【0404】
<下塗り層付デバイス形成済みシリコンウエハーの作製>
予め公知の方法によりデバイスが形成されたシリコンウエハー上に、実施例1における下塗り層付基板の作製と同様にして下塗り層を形成して、下塗り層付デバイス形成済みシリコンウエハーを作製した。
【0405】
<固体撮像素子の作製>
実施例1における赤色カラーフィルタの作製において、赤色着色硬化性組成物Rに代えて上記で調製した緑色着色硬化性組成物を用い、露光に用いたフォトマスクを1.0μm四方の市松模様が形成できるマスクに変更した以外は、実施例1と同様にして、露光、現像、リンス、ポストベークを行い、下塗り層付デバイス形成済みシリコンウエハーの上に、緑色パターンを形成した。
次いで、緑色パターンが形成されたシリコンウエハーの上に、赤色着色硬化性組成物Rを用いた以外は、緑色パターンの形成と同様にして赤色パターンを形成した。
次いで、緑色パターン及び赤色パターンが形成されたシリコンウエハーの上に、上記で調製した青色着色硬化性組成物を用いた以外は、緑色パターンの形成と同様にして青色パターンを形成した。
以上のようにして、緑色パターン、赤色パターン、及び青色パターンを有する固体撮像素子用カラーフィルタを作製した。
さらに公知の方法に従い、固体撮像素子用カラーフィルタを組み込んだ固体撮像素子を作製した。
得られた固体撮像素子にて画像を取り込み確認した結果、良好な画像であることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるアゾ顔料と、酸性官能基を有する有機色素誘導体、酸性官能基を有するアントラキノン誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と、分散剤とを含有する顔料分散組成物。
【化1】



〔一般式(1)中、Gは、水素原子、脂肪族基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、Rは、アミノ基、脂肪族オキシ基、脂肪族基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、Rは置換基を表す。
Aは、下記一般式(A−1)〜(A−32)で表される基のいずれかを表す。
mは0〜5の整数を表し、nは1〜4の整数を表す。
n=2の場合、一般式(1)は、R、R、A又はGを介した2量体を表す。
n=3の場合、一般式(1)は、R、R、A又はGを介した3量体を表す。
n=4の場合、一般式(1)は、R、R、A又はGを介した4量体を表す。
一般式(1)中にイオン性親水性基を有することはない。〕
【化2】



〔一般式(A−1)〜(A−32)中、R51〜R59は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基を表し、隣接する置換基は互いに結合し、5〜6員環を形成していてもよい。*は一般式(1)中のアゾ基との結合位置を表す。〕
【請求項2】
前記一般式(1)で表されるアゾ顔料が、下記一般式(2)で表されるアゾ顔料である請求項1に記載の顔料分散組成物。
【化3】



〔一般式(2)中、R21は、アミノ基、脂肪族オキシ基、脂肪族基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、R22は置換基を表す。R55及びR59は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を表す。
mは0〜5の整数を表し、nは1〜4の整数を表す。
Zはハメットのσp値が0.2以上の電子求引性基を表す。
n=2の場合、一般式(2)は、R21、R22、R55、R59又はZを介した2量体を表す。
n=3の場合、一般式(2)は、R21、R22、R55、R59又はZを介した3量体を表す。
n=4の場合、一般式(2)は、R21、R22、R55、R59又はZを介した4量体を表す。
一般式(2)中にイオン性親水性基を有することはない。〕
【請求項3】
前記酸性官能基を有する有機色素誘導体、酸性官能基を有するアントラキノン誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物が、スルホ基又はカルボキシ基を有するトリアジン誘導体である請求項1又は請求項2に記載の顔料分散組成物。
【請求項4】
前記分散剤が、窒素原子を含有する分散剤である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の顔料分散組成物。
【請求項5】
前記分散剤が、(i)窒素原子を有する主鎖部と、(ii)pKaが14以下である官能基を有し、該主鎖部に存在する窒素原子と結合する基「X」と、(iii)数平均分子量が500〜1,000,000であるオリゴマー鎖又はポリマー鎖「Y」を含む側鎖と、を有する樹脂である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の顔料分散組成物。
【請求項6】
前記一般式(1)で表されるアゾ顔料が、ソルベントソルトミリングされたアゾ顔料である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の顔料分散組成物。
【請求項7】
更に、レッド、イエロー、オレンジ、及びバイオレットから選択される色相を有する顔料を含有する請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の顔料分散組成物。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の顔料分散組成物と、光重合開始剤と、重合性化合物とを含有する着色硬化性組成物。
【請求項9】
前記光重合開始剤が、オキシム系光重合開始剤である請求項8に記載の着色硬化性組成物。
【請求項10】
支持体上に、請求項8又は請求項9に記載の着色硬化性組成物を付与して着色硬化性組成物層を形成する工程と、前記着色硬化性組成物層をマスクを介して露光する工程と、露光後の着色硬化性組成物層を現像して着色パターンを形成する工程と、を含む固体撮像素子用カラーフィルタの製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の固体撮像素子用カラーフィルタの製造方法により製造された固体撮像素子用カラーフィルタ。
【請求項12】
請求項11に記載の固体撮像素子用カラーフィルタを備えた固体撮像素子。

【公開番号】特開2011−252065(P2011−252065A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126039(P2010−126039)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】