説明

顕微鏡イメージングファントム

本発明は、顕微鏡計測装置、及び顕微鏡画像を解析するのに使用されるソフトウェアをバリデーション、最適化及び較正するためのイメージングファントムに関する。本発明の材料及び方法は、ハイコンテントスクリーニング及びハイコンテント分析において特定の用途がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡画像の分析に使用される顕微鏡計測及びソフトウェアをバリデーション、最適化、及び較正するためのイメージングファントムに関する。
【背景技術】
【0002】
イメージングファントム(生物学的標本の合成モデル)を使用することは、動物及びヒトのイメージング用のX線、CT、PET、超音波及びMRI機器を用いたマクロスケールでの3Dイメージングにおいて一般的である(Pogue,B.W.及びPatterson,M.S.、J.Biomed.Opt.、(2006)、11(4)、041102;J.Neurosurg.、(2004)、101(2)、314〜22)。ファントムにより、新規のイメージング用途を開発及びバリデーションすること、並びに機器較正のための不変の試料を用意することが可能になる。
【0003】
顕微鏡観察の分野において、較正スタンダード及びイメージングスタンダードは、十分に開発されていない。較正用蛍光試料の代用とするために、光源を使用したいくつかの研究が行われており(Lerner,J.M.、Zuckerm,R.M.、Cytometry A.、(2004)、62(1)、8〜34)、フローサイトメトリー較正用に設計されたビーズセット(Schwartz,A.ら、Cytometry、(1998)、33(2)、106〜14)を、強度及び分解能のスタンダードとして使用することができる。しかし、フローサイトメトリーにおいて、計測装置は強度情報のみを測定し、したがって、フローサイトメトリー機器を較正するために開発されたビーズを、蛍光顕微鏡において強度及びアライメントを較正するために使用することができるが、これらは、イメージングファントムにおいて望まれる、複雑な生物学的構造を表示しない。
【0004】
米国特許出願公開第2007/0190566号(Montagu)には、画定された開口部を有する非蛍光物質のマスクを被せた蛍光層を含み、規則正しくパターン形成された蛍光画像を生じる、蛍光イメージングマイクロアレイスキャナーを較正するための平面状のスタンダードが記載されており、これは、イメージング分解能を較正し、求めるために使用することができる。そのようなデバイスは、規則的なパターン中に配置された構造、例えば、核酸マイクロアレイを分解するための顕微鏡又は他の撮像装置の光学的分解能を求めるのに適しているが、スタンダードは、生体試料において固有である自然の変化を表すのに適しておらず、構築方法には、1つのデバイス内で複数の蛍光体(fluor)又は他の造影剤を使用することが含まれない。したがって、米国特許出願公開第2007/0190566号のデバイスは、細胞及び組織のイメージング用途に適した生物学的見本のイメージングファントムとして、著しく制約されている。
【0005】
同様に、米国特許第6984828号(Montagu)及び米国特許第6472671号(Montagu)には、薄い不透明なマスクを被せた固体層の蛍光物質が記載されており、このマスクは、画定された寸法の開口部を有することによって、蛍光の規則的な平面パターンを作り出す。これらのデバイスは、分解能スタンダードとして適しているが、真の生物学的なイメージングファントムとしてかなり制約されている。
【0006】
米国特許出願公開第2006/0134606号(Montagu)には、サザンブロット法及び他の類似の固相分析法において使用されるニトロセルロース膜の代替品として、タンパク質及び核酸などの、分析のための生体物質を固定化するためのデバイスが開示されている。このデバイスは、固体基質上に微孔膜の極薄層を備える。分析される物質は、顕微鏡観察を含めたイメージングによる分析用の顕微鏡スライド又はマルチウェルプレート上に支持された基質に施すことができる。この文献には、イメージング用のスタンダードの調製若しくは使用、又は細胞若しくは組織を表す検出可能な要素を含むスタンダードについて記載されていない。
【0007】
米国特許第7262842号(Ermantrautら)には、フォトリソグラフィー又はスポッティングによって作製された様々な厚さの領域中で、蛍光ポリマーを被せた非蛍光支持体を備えた蛍光強度較正スタンダードが記載されており、蛍光強度は、施された蛍光層の厚さにによって制御される。そのようなデバイスは、イメージング計測装置の検出感度を試験するのに適しているが、作製方法では、複数の蛍光体は使用されず、又は細胞試料若しくは組織試料を表すファントムを作製するのに必要とされる、ランダムな間隔は導入されない。
【0008】
欧州特許第1774292号(Geら)には、コンタクト印刷又はスクリーン印刷によって作製された、ガラススライド上の無機蛍光体のスポットのマイクロアレイを備える蛍光検出機器のための較正スライドが記載されている。このデバイスは、無機蛍光体によって提供される安定な蛍光という利点を有するが、デバイス及び方法について上述したように、生物学的見本のファントムとして同じ制約を受ける。
【0009】
欧州特許第259137号(Schwartz)には、カバーガラスの下の顕微鏡スライド上にゲル中の蛍光ミクロスフェアをのせる方法が記載されており、ここでビーズはランダムに分布される。この方法は、蛍光顕微鏡観察における感度及び画像アライメントを試験するのに使用することができる安定な試料をもたらすが、使用される蛍光源の離散的性質及びこれらの制御されていない分布は、他の構造内で構造が明確に分離及び包含された生物学的構造を表す顕微鏡イメージングファントムを作製することに関して、この方法を不適当なものにする。同様に、国際公開第2006/003423号には、顕微鏡スライド上に、温度応答性ゲル中の蛍光ビーズをのせる方法が記載されており、これは、前述の方法のように、イメージングファントムとして同じ制約を受ける。
【0010】
国際公開第2007/056977号及び米国特許出願公開第2008/0233652号(Kreyenschmidt)には、X線蛍光及びレーザー誘起プラズマ分光の較正において使用するための、クロム、カドミウム、及び他の重金属を含有するプラスチック成形品を備える較正スタンダードが記載されている。記載された較正方法は、ポリマー中の混入物レベル、特に電気デバイス及び電子デバイス中に存在する混入物を求めるために使用することができる。この文献には、イメージング用のスタンダードの作製若しくは使用、又は細胞若しくは組織を表す検出可能な要素を含むスタンダードについて記載されていない。
【0011】
国際公開第98/49537号(Brakenhoffら)には、光学イメージングデバイスを較正するための、光退色性(photo−bleachable)ルミネセンス物質を含有する光学的に透明なポリマーを含む較正層の製作及び使用が記載されている。デバイスの光退色性により、励起光及び放出光の分布を別々に求めることが可能になる。この文献には、細胞又は組織を表す検出可能な要素(構造)を含むスタンダードの作製若しくは使用について記載されていない。国際公開第98/49537号の較正層は、較正下の計測装置内での励起の分布及び/若しくは均一性の分析、並びに/又は検出を実現するのに必要なように、定義により均一であり、したがって、細胞又は組織を表すのに必要な構造的変化を欠く。
【0012】
顕微鏡観察、特にハイコンテントスクリーニング(HCS)(Methods Enzymol.、(2006)、414、468〜83)、及びハイコンテント分析(HCA)(Biotechnol.J.(2007)、2(8)、938〜40)において適用されるような、自動顕微鏡観察において使用するのに適した真のイメージングファントムが欠けている。HCS及びHCA手順は、高処理量の自動顕微鏡、例えば、IN Cell Analyzer 1000(GE Healthcare)を使用することによって、細胞試料又は組織試料の数百又は数千の画像を急速に取得し、これらの画像は、引き続いて分析されることによって、画像解析ソフトウェア、例えば、IN Cell(商標)Investigator(GE Healthcare)を使用して、生物学的プロセスの有益な定量的データが抽出される。
【0013】
これらの手順のために使用される生物試料は、単純な細胞培養物から複雑な幹細胞培養物及び組織切片まで広く変わる。試料は未染色であってもよく、位相差照明によって見てもよい。或いは、試料は、蛍光色素又は他の色素で染色することによって、細胞構造を強調することができる。試料は、特異的な細胞事象の活性、例えば、細胞表面受容体での検査薬の結合に応答し、引き続いて細胞核へシグナル伝達を伝達し、1つ又は複数の遺伝子の発現をもたらす、細胞シグナル伝達経路の活性について報告する目的で、細胞タンパク質と蛍光タンパク質の融合物の、蛍光染色された抗体などの特異的細胞レポーターを、単独又は組合せで更に含むことができる。
【0014】
そのような研究から生じるデータの品質は、顕微鏡によって生じる画像の品質、及び画像のソフトウェア分析の品質の両方に非常に依存する。画像品質を確立及び維持するには、照明及び光フィルターを含めた、自動顕微鏡における複数の構成要素が最適に動作することが必要である。結果として、繰り返して使用して、経時的に、及び異なる機器にわたってシステム性能を較正及びバリデーションすることができる不変の試料が必要である。そのような試料が、自動顕微鏡観察機器によってイメージングされそうな細胞及び組織の寸法及び複雑性を表す場合、特に有利である。
【0015】
同様に、画像解析ソフトウェアについて、生物試料と構造において同様の複雑性を示し、大量に作製することができる不変のイメージングスタンダードを利用できることにより、定量的データを取得するためのソフトウェアパラメータ設定のバリデーションが可能になる。
【0016】
HCS及びHCAについての適当なファントムスタンダードは、以下の通りであるべきである。
i)不変:大量に作製されるスタンダードは、安定、再現可能、及び頑強であることによって、通常の機器セットアップ、較正及びモニタリングの過程において、並びに画像解析ルーチンの開発において経時的に大量の分析が可能になるべきである。
ii)柔軟:スタンダードは、様々な形式で製造されることによって、広範囲の機器設定及び分析パラメータの試験を可能にすることができるべきである。
iii)見本:スタンダードは、一般的な細胞試料及び組織試料を表示する即ち、真のイメージングファントムを提供するべきである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】B.W.POGUE,M.S.PATTERSON、「Review of tissue simulating phantoms for optical spectroscopy,imaging,dosimetry」、JOURNAL OF BIOMEDICAL OPTICS、11巻、4号、2006、041102−1〜041102−16ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、強度情報しか提供しない、フローサイトメトリー用に設計されたビーズ、又は細胞若しくは組織の顕微鏡観察において使用するのに適した、適当な複雑性若しくは寸法を提供しない、マイクロアレイスキャナー用に設計された平面状の蛍光スタンダードを使用することの制約を克服する、HCS/HCAイメージング計測装置及び画像解析ソフトウェア用の試験及び較正スタンダードを形成するのに十分な複雑性を提供する、厳しい許容誤差で大量に製造することができる、安定で再現可能な試料が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
第1の態様では、顕微鏡観察によってイメージングすると細胞又は組織を表示する1以上の検出可能な内部要素を含む、固体既製ポリマーマトリックス材料が用意される。
【0020】
本発明はしたがって、ハイコンテント分析用イメージング用途において使用する、特に、画像解析計測装置及びソフトウェアを較正するのに適したイメージングスタンダードに関する。イメージングスタンダードは、安定マトリックス材料中に分散した様々な検出可能な(例えば、蛍光の)材料の組合せに基づき、これは、HCS/HCAプラットフォームに適用するのに適した寸法スケールのイメージングファントムにおいて、強度及び空間的標準化の両方を提供する。
【0021】
本発明による一実施形態では、ポリマーマトリックス材料は、長尺固体構造体(又はブロック)であり、この長尺構造体の断面は、細胞又は組織の1以上の特色的特徴を含み、これは、長尺構造体を通して長手方向に延在している。この実施形態では、検出可能な内部要素は、真核細胞を表示する製作された複合構造を含むことが好ましい。
【0022】
細胞又は組織の「特色的特徴」という表現は、本明細書で使用する場合、典型的な細胞構造及び細胞内構造、例えば、核、ミトコンドリア、又は顕微鏡観察によってイメージングすることができる任意の他の細胞構造を意味することが意図され、そのような構造は、本発明の様々な実施形態では、検出可能な要素の適当な配列によって表される。例えば、本発明の一実施形態では、細胞は、第2のポリマーでコーティングされた円形断面のポリマーロッドによって表すことができ、その結果、断面で切断したとき、2種のポリマーの複合構造は、それぞれ細胞核及び細胞質を表示する中心のコア及び同心の環を有する円形ディスクを含む。
【0023】
用語「複合構造」とは、細胞又はその一部を表すように意図及び設計された、1以上の要素を含む任意の構造体を意味する。複合構造は、表される生物学的構造の複雑性に応じて、単純であっても、複雑であってもよい。単細胞の細部に至らない表示の場合では、複合構造は、核及び細胞質を表す2つの要素のみを含む場合がある。より複雑な表示では、複合構造は、イメージングファントムの目的とする用途において望まれ、要求される場合、例えば、細胞質、核、ミトコンドリア、ゴルジ、小胞体、及び他の細胞内細胞小器官を表示する多くの要素を含む場合がある。
【0024】
検出可能な内部要素の各々は、可視化剤を含むことが好ましく、各々の可視化剤は、内部要素の各々において、検出可能な程度に異なることがより好ましい。適当な可視化剤は、有色色素、蛍光色素、又は屈折率調節剤から選択することができる。
【0025】
長尺固体構造体は、2以上、好ましくは2つより多く、場合によっては、3つ又は4以上の検出可能な内部要素を含むことが好ましい。検出可能な内部要素は、イメージングファントムの特定の所望の細胞表示又は組織表示に応じて、同じ又は異なる寸法を有することも可能である。例えば、イメージングファントムが、顕微鏡観察によってイメージングされる培養細胞の集団を表す場合、長尺構造体は、単細胞を各々表示するいくつかの内部複合要素を含むブロックを含み、この内部複合要素は、培養物中の単離された細胞を表すのに、適当な数、配置、及びサイズを備える。ブロックの寸法は、イメージング用途及び計測装置に合うように選択される。例えば、標準的な実験室顕微鏡でのイメージングについては、ブロックの寸法は、顕微鏡スライド(一般的に76mm×26mm)に合うように選択される。マルチウェルプレート、例えば、96−ウェルマイクロタイタープレートをイメージングするように設計された自動顕微鏡及び他の計測装置でのイメージングについては、ブロックの寸法は、ブロックの断面が、イメージングに使用される1以上のプレートのウェルの底部で合うことが可能になるように選択される。内部複合要素の寸法は、イメージング用途で必要な1以上の細胞構造と釣り合いが取れるように、例えば、細胞核及び細胞質を表すように選択される。顕微鏡スライドとともに使用するためのイメージングファントムを作製するために使用されるブロックの適当な寸法は、0.2〜2立方cmであり、好適な寸法は、0.5立方cm〜1立方cmである。内部複合要素に適した寸法は、イメージングファントムにおいて表される生物学的構造に非常に依存し、例えば、哺乳動物細胞を表すファントムにおいて、寸法は、一般的に0.5μm〜200μmの範囲であり、好適な寸法は、1μm〜50μmの範囲である。真核細胞及び哺乳動物細胞は、細胞型によってそのサイズが相当に変化し、同じ細胞型内では、クローン変異及び突然変異を通じて、又は細胞が、細胞分裂の準備において細胞周期を経るにつれて、細胞サイズが変化することにより、著しいサイズ変化が起こり得ることが、当業者によって周知となるであろう。内部複合要素に使用される寸法を適当に選択することによって、内部要素の集団内で実質的に一様であるものから、非常に広いサイズ分布を有するものまでの範囲のイメージファントムを作製することができ、これは、特定の生物試料を表し、又は広範囲の寸法にわたってイメージング性能を評価するために必要とされる。
【0026】
ポリマーマトリックス材料の組成物は、極めて重要ではないが、ただしこれは、長尺固体構造体において長手方向に内部要素の位置を固定するのに十分強固であり、しかもなおミクロトーミング(microtoming)又は他の適当な技術によって適当な厚さに切断してスライスにすることができるという条件がある。ポリマーマトリックス材料は、合成ポリマー、例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、エポキシ樹脂などから適当に選択される透明又は半透明のポリマーであることが好ましい(Histochem J.(1999)、、495〜505)。或いは、ポリマーマトリックスは、天然又は合成ワックス、例えば、パラフィン又はエステルワックスなど、例えば、切断するために生体物質を埋め込むのに一般に使用されるものなどを含むことができる(Methods Mol.Biol.、(1999)、115、275〜9)。ある特定の用途については、天然に存在するポリマー又はバイオポリマー、例えば、ゴム、ゼラチン、並びに多糖のデキストラン、並びにセルロース、及び酢酸セルロースなどのその誘導体を使用することも有利となり得る。膨張又は歪みを防止し、内部要素が、しっかりと適所に保たれることを確実にするために、架橋剤を使用することが好ましい。或いは、ポリマーは、フォトポリマーを含んでもよく、これは、露光するか、光の作用によって重合開始剤を活性化することによって、モノマー溶液から重合するためにもたらされたポリマーである。適当なフォトポリマーには、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド及びポリアクリルアミド(Biomacromolecules、(2005)、(1)、414〜24)、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(Biomaterials、(2001)、22(9)、929〜41)が含まれるが、それだけに限らない。
【0027】
好適な実施形態では、クランプするのに適した強固な材料を含む基材を伴った長尺固体構造体(又はブロック)が用意される。これにより、長尺構造体全体が、適当な厚さのスライスにミクロトームすることに利用可能になる。
【0028】
第2の実施形態では、ポリマーマトリックス材料は実質的に球状であり、検出可能な内部要素は、封入されたビーズを含む。この実施形態では、検出可能な内部要素は、真核細胞の細胞小器官を表すことが好ましい。
【0029】
この実施形態では、マトリックス材料及び1以上の検出可能な内部要素の各々は、可視化剤を含むことが好ましい。各々の可視化剤は、内部要素の各々において検出可能な程度に異なることがより好ましい。適当な可視化剤は、有色色素、蛍光色素、又は屈折率調節剤から選択することができる。
【0030】
2以上、好ましくは2超、場合によっては、3又は4以上の検出可能な内部要素が存在することが好ましく、細胞の構成要素を表す各々の内部要素は、実質的に球状の複合体によって表される。例えば、実質的に球状のマトリックスは、4つの検出可能で、個々に区別可能な内部要素を含む細胞質を表すことができ、1つの検出可能な要素は細胞核を表し、2つの要素はミトコンドリアを表し、1つの要素は小胞体を表す。実質的に球状で検出可能な内部要素のいずれか、又は両方は、表される特定の細胞要素に応じて、同じ又は異なる寸法を有することも可能である。例えば、典型的な哺乳動物細胞の表示において、実質的に球状のマトリックスは、直径10μm〜100μmとすることができ、サイズが5μm〜50μmの核、及び直径が0.1μm〜50μmのミトコンドリアを表す内部要素を含む。真核細胞及び哺乳動物細胞は、細胞型によってそのサイズが相当に変化し、同じ細胞型内では、クローン変異及び突然変異を通じて、又は細胞が、細胞分裂の準備において細胞周期を経るにつれて、細胞サイズが変化することにより、著しいサイズ変化が起こることが、当業者によって周知となるであろう。実質的に球状のマトリックス及び内部要素に使用される寸法を適当に選択することによって、集団内で実質的に一様であるものから、非常に広いサイズ分布を有するものまでの範囲のイメージングファントムを作製することができ、これは、特定の生物試料を表し、又は広範囲の寸法にわたってイメージング性能を評価するために必要とされる。
【0031】
本明細書で使用する場合、用語「有色色素」は、基質に固定することができ、光分解に耐性である特性を更に有する有色化合物を指す。本発明において使用するのに適した例には、シアンブルー、赤紫色、黄色、又は場合により黒色を有する色素が含まれる。
【0032】
本明細書で使用する場合、用語「蛍光色素」は、特定波長の光に露光されて励起されると、異なる波長で光を放出する化合物を指す。フルオロフォアは、その放出特性、又は「色」の観点から記述することができる。例えば、緑色フルオロフォア(例えば、Cy3(商標)及びFITC)は、一般に515〜540ナノメートルの範囲の波長でのその放出によって特徴づけることができる。赤色フルオロフォア(例えば、Cy5及びテトラメチルローダミン)は、590〜690ナノメートルの範囲の波長でのその放出によって特徴づけることができる。本明細書で記載される発明において、可視化剤として使用するためのフルオロフォアの適当な例として、アクリドン色素及び誘導体;クマリン色素及び誘導体、例えば、7−アミノ−4−メチルクマリン(AMC、クマリン120)、7−アミノ−トリフルオロメチルクマリン);フルオレセイン及び誘導体、例えば、5−カルボキシフルオレセイン(FAM)など;ローダミン及び誘導体、例えば、5−カルボキシローダミン(ローダミン110−5)、6−カルボキシローダミン(ローダミン110−6)、5−カルボキシローダミン−6G(R6G−5又はREG−5)、6−カルボキシローダミン−6G(R6G−6又はREG−6)、N,N,N’,N’−テトラメチル−5−カルボキシローダミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA又はTMR)、5−カルボキシ−X−ローダミン、6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX);G−5)、6−カルボキシローダミン−6G(R6G−6又はREG−6)、N,N,N’,N’−テトラメチル−5−カルボキシローダミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA又はTMR)、5−カルボキシ−X−ローダミン、6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)など、並びにシアニン色素、例えばCy3(3−(ε−カルボキシペンチル)−1’−エチル−3,3,3’,3’−テトラメチル−5,5’−ジスルホナト−カルボシアニン)、Cy3.5(3−(ε−カルボキシペンチル)−1’−エチル−3,3,3’,3’−テトラメチル−4,5,4’,5’−(1,3−ジスルホナト)ジベンゾ−カルボシアニン)、Cy5(1−(ε−カルボキシペンチル)−1’−エチル−3,3,3’,3’−テトラメチル−5,5’−ジスルホナト−ジカルボシアニン、Cy5.5(1−(ε−カルボキシペンチル)−1’−エチル−3,3,3’,3’−テトラメチル−4,5,4’,5’−(1,3−ジスルホナト)−ジベンゾ−ジカルボシアニン、Cy7(1−(ε−カルボキシペンチル)−1’−エチル−3,3,3’,3’−テトラメチル−5,5’−ジスルホナト−トリカルボシアニンなどが挙げられる。上記及び追加の色素は、例えば、米国特許第4,268,486号(Waggonerら);Southwickら、Cytometry、11、418〜430(1990);Mujumdarら、Bioconjugate Chemistry 、105〜111、(1993);Waggoner,A.S.、Fluorescent Probes for Analysis of Cell Structure and Function and Health by Flow and Imaging Cytometry、Alan R.Liss(1986)、及びMolecular Probes Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals、Molecular Inc.6版(1996)Hauglandに記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれている。
【0033】
本明細書で使用する場合、用語「屈折画像調節剤(refractive image modifier)」は、材料の屈折率を改変するのに有用な任意の物質を広く指すことが意図され、そのような物質は、例えば、ポリマーの屈折率を変更することにより、ポリマーの光学的性質を変化させることによって、位相差顕微鏡観察又は関連する光学顕微鏡観察技術で見たとき、ポリマーをある程度目に見えるようにするために、ポリマーの屈折率を変化させるためにポリマーに添加することができる、任意の化学物質、化合物、単量体、微粒子、又は他の物質である。フッ化ポリマーは、屈折率を増加させる化学物質の例であり、塩素化ポリマーは、屈折率を減少させる化学物質の例である。
【0034】
米国特許出願公開第2006/0063880号(Khanna)には、屈折率調節剤としてナノ粒子を使用することが記載されている。可視光の波長未満の直径を有するナノ粒子は、透明なポリマーを通る光の伝搬に対して注目に値する作用を有さないが、より小さい直径、即ち、約400nm未満、好ましくは約200nm未満のナノ粒子は、これらが懸濁した材料の屈折率を変化させる。そのようなナノ粒子は、他の適当な材料に加えて、金属酸化物、例えば酸化チタン及び/又は二酸化チタンなど、セラミック製とすることができる。
【0035】
第2の態様では、既製ポリマーマトリックス材料及び1以上の検出可能な内部要素を含む、長尺固体構造体(又はブロック)からスライスされた均一な切片を含むイメージングファントムが用意され、この長尺構造体の断面は、細胞又は組織の1以上の特色的特徴を含み、これは、長尺構造体を通して長手方向に延在しており、イメージングファントムは、顕微鏡観察技術によって検出可能である。
【0036】
本発明によるイメージングファントムの厚さは、約1μm〜30μm、より好ましくは2μm〜15μmの範囲にすることができることが適当である。
【0037】
第3の態様では、第1の態様の第2の実施形態によるイメージングファントムが用意され、このイメージングファントムは、好ましくは、各々が1以上の検出可能な内部要素を含む、2以上の実質的に球状のポリマーマトリックスを含み、内部要素は、封入されたビーズを含み、イメージングファントムは、顕微鏡観察技術によって検出可能である。
【0038】
本発明のイメージングファントムは、顕微鏡観察による検出に適しており、単純な手動卓上顕微鏡から、複数のレンズ、照明光源、フィルター及びカメラを組み込んだ、洗練された自動イメージング計測装置まで利用可能な、広範囲の顕微鏡観察機器で使用することができる。寸法スケール、色、蛍光、屈折率、及び複合体複雑性の適切な自由度を導入することによって、様々な顕微鏡観察技術によりイメージングすることによって適した非常に広い範囲の生物試料を表し、模倣するように、イメージングファントムを設計及び構築することができることが容易に理解されるであろう。
【0039】
イメージングファントムの要素内に様々な有色色素又は他の有色剤を含めることにより、ファントムが光学顕微鏡によるイメージングに適するようになり、ファントムの有色材料による透過光の吸収により顕微鏡画像が生じ、これは、目で見るか、顕微鏡に取り付けられた適切なカメラを使用して捕獲することができる。イメージングファントムの要素内に様々な屈折率調節剤を含めることにより、ファントムが、位相差、又は関連した、特殊化した照明技術を使用する光学顕微鏡によるイメージングに適するようになり、ファントムの材料による透過光の非一様な屈折により、暗領域及び明領域を含む顕微鏡画像が生じ、これは、目で見るか、顕微鏡に取り付けられた適切なカメラを使用して捕獲することができる。イメージングファントムの要素内に様々な蛍光色素又は他の蛍光物質を含めることにより、ファントムが蛍光顕微鏡観察によるイメージングに適するようになり、ファントムの蛍光物質による励起光の吸収、及びそれに続くより長い波長の蛍光の放出により、顕微鏡画像が生じ、これは、目で見るか、顕微鏡に取り付けられた適切なカメラを使用して捕獲することができる。イメージングファントムは、1つの種類の可視化剤を使用して構築することができ、即ち、これらは単に有色色素、屈折率調節剤又は蛍光色素を含むことができる。或いは、イメージングファントムが、1種以上の顕微鏡、又は1以上の照明モード、例えば、位相差及び蛍光でイメージングすることができる複雑な顕微鏡で使用されることが要求される場合、イメージングファントムは、異なる種類の可視化剤の混合物を含むことができる。例えば、可能な限り蛍光染色した培養細胞を密接に表すイメージングファントムを有することが望まれる場合、屈折率調節剤と蛍光色素の組合せは、染色した細胞と非常に類似した特性を有するイメージングファントムを用意するのに使用することができ、即ち、位相差又は蛍光モードで照明される場合、顕微鏡画像を生じる。
【0040】
本発明によるイメージングファントムは、イメージング顕微鏡の1以上のパラメータを測定及び/若しくは較正及び/若しくはバリデーションし、又は代わりに画像解析ソフトウェアをバリデーション及び/若しくは最適化するための方法に使用することができる。したがって、第4の態様では、イメージング顕微鏡の1以上のパラメータを較正又はバリデーションするための方法が提供される。この方法は一般に、第1の時間(T)及び第2の時間(T)で、本明細書に記載された1以上、好ましくは2以上のイメージングファントムの1以上の画像を取得し、次いでそのように作製された画像を使用することによって、イメージングファントムの既知の特徴を参照して、第1及び第2の時間でのイメージング顕微鏡の性能を定量的に比較することを含むことになる。本発明によるイメージングファントムのそのような既知の特徴は、データベース又は他の電子形式中に対照値として電子的に記憶することができる。
【0041】
イメージング顕微鏡のパラメータは、所定の機器設定、例えば、照明強度又は濾過などであるように選択されることが適当である。任意の顕微鏡において、最適な分解能、感度及び画像品質を得ることは、試料の照明にさえも非常に依存する。視野全体にわたる照明強度のいずれの勾配も、得られる画像の品質を低下させる可能性を有し、試料の完全な可視化を制限する。イメージングファントムを使用して、様々な時間に照明強度及び均一性を定期的にチェックすることにより、顕微鏡の使用者が、最適な構成で装置を維持することが可能になる。イメージングファントムは、退色の損傷を受けやすく、再現可能なイメージングを妨げる場合のある生物試料と異なり、安定で不変であるため、画像を様々な時間で記録し、適切な画像解析ソフトウェアを使用して定量的に比較することによって、顕微鏡が所望のパラメータで動作していることを保証することができる。例えば、検出可能な複合要素の群又は集まりを含むイメージングファントムは、撮像領域にわたって分散した細胞の集団を表すように構築することができる。ファントムのイメージングは、最適な照明を提供する顕微鏡セットを使用して行われ、1以上の画像がデジタルで捕獲され、画像解析ソフトウェアを使用して処理されることによって、定量的データ、例えば、物体/画像の数、物体の平均サイズなどが生成される。後の時間にイメージングプロセスを繰り返し、同じデータを生成することにより、2つのデータセットの間で定量的な比較をすることが可能になり、これにより、オペレーターが、顕微鏡は、依然として最適に動作しているか、又は何らかの調節が必要であるかどうかを判定することが可能になる。例えば、第2のデータセットが、第1のデータセットより少ない物体が検出されたことを示す場合、これは、顕微鏡照明が最適以下となり、システムの感度又は分解能を低下させていることを示す場合がある。
【0042】
機器較正に同じイメージングファントムを使用することにより、信頼できるルミネセンス測定が可能になり、1以上の機器を、同じ較正基準に設定することが可能になる。したがって、本明細書に記載されるイメージングファントムにおいて使用される可視化剤は、安定であり、物理的若しくは化学的な分解又は光退色を受けにくいことが好適である。
【0043】
第5の態様では、本発明は、画像解析ソフトウェアを較正及び/又はバリデーション及び/又は最適化するための方法を提供する。この方法は、イメージング顕微鏡を用意し、顕微鏡によって生成される画像を定量分析するのに適した画像解析ソフトウェアを用意し、本明細書に記載される、1以上のイメージングファントムを用意し、上記又は各イメージングファントムの1以上の画像を取得し、解析ソフトウェアを使用することによって、1以上の画像から定量的データを生成し、このデータを使用することによって、イメージングファントムの既知の特徴を参照して、画像解析用のソフトウェアの性能を定量的に求めることを含んでなる。例えば、構築方法によって決定される既知の範囲内で一定又は異なる間隔(例えば、検出可能な要素間のスペーサー要素のサイズ)を有する、所定密度の検出可能な内部要素を含むイメージングファントムを作製することができる。そのようなファントムは、平面上で成長している培養細胞を表すことができる。画像解析ソフトウェアを最適化又はバリデーションするために、ファントムがイメージングされ、試験下のソフトウェアを使用して、得られた画像が分析されることによって、このソフトウェアによって生成された定量的データが、ファントムの既知のパラメータと相関するかどうかが判定される。例えば、既知の頻度/単位面積での既知の面積の分散した検出可能な要素の集団を含む蛍光ファントムのイメージング、物体を描写するために画像内で強度値を閾値化することによる画像の分割、並びに物体面積及び頻度/面積の計算、並びに既知の値とのデータの比較は、ファントムによって表される特定の生物試料を分析するための画像解析ソフトウェアの性能をバリデーションするための定量的な手段を提供する。更に、最適な結果、即ち、可能な限り既知の値に近い結果を生成するための画像解析ソフトウェア内で、同じ手順を使用することによって設定、例えば、画像分割に使用される閾値設定を最適化することができる。この態様において、ファントムは、所定の仕様に対して構築されるので、ファントムは、物体のサイズ、密度などに関して既知の値を有するということにおいて生物試料に対して利点を有する。
【0044】
本発明の以下の説明において、図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】ロッドの浸漬、回転、及び延伸による、イメージングファントム構造体又はブロックの製作を例示する図である。
【図2】ロッドアレイのセルフアセンブリーによる、イメージングファントム構造体又はブロックの製作を例示する図である。
【図3】平面アセンブリーの回転による、イメージングファントム構造体又はブロックの製作を例示する図である。
【図4】押出成形による、イメージングファントム構造体又はブロックの製作を例示する図である。
【図5】ロッドアレイのランダムアセンブリーによる、イメージングファントム構造体又はブロックの製作を例示する図である。
【図6】ポリマー液滴中にビーズを封入することによる、イメージングファントム構造体又はブロックの製作を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
長尺固体構造体(又はブロック)の形態でのポリマーマトリックス材料は、規則的な(整った)配列の内部要素が望まれているか、内部要素がランダム又は不規則な様式でマトリックス中に配置されているかに応じて、いくつかの代替の技術によって作製することができる。例えば、一手順では、イメージングブロックは、図1に示すように、連続した浸漬及び回転プロセスによって作製することができる。ポリマーロッド[1]は、ファントムのコアとして使用されることによって細胞核を表す。このロッドは、有色色素、蛍光色素、屈折率調節剤、又はファントムのイメージングで使用される顕微鏡観察技術による可視化に適した任意の他の作用剤を含有するプラスチック又は他のポリマーを含むことができる。例えば、蛍光顕微鏡観察に使用される細胞ファントムについては、ロッドは、Cy5(商標、GE Healthcare)を含有するポリマーを含むことができる。
【0047】
コアロッドは、第2のポリマー[2]の融液又は粘性溶液中に1回以上浸漬することによって、第2のポリマーの外側層でコアロッドを所望の厚さにコーティングする。このコーティングは、細胞ファントムの内側の細胞質領域を表す。第2のポリマー中にコアロッドを浸漬する回数は、天然細胞の変形を表す様々なコーティング厚さを実現するために変更することができる。第1のポリマーと同様に、第2のポリマーは、ファントムをイメージングすることにおいて使用される顕微鏡観察技術に適した可視化剤を含み、この作用剤は、第1のポリマー中に使用される作用剤と異なり、その結果、核及び細胞質を表す2つの層は、イメージングによって分解することができる。例えば、蛍光顕微鏡観察に使用される細胞ファントムについては、コーティングは、Cy(商標)3(GE Healthcare)を含有するポリマーを含むことができる。
【0048】
所望の厚さの第2のコーティングポリマーを実現したら、得られたコーティングされたロッドを、より小さい直径の更なるポリマーコーティングロッド[3]、[4]と一緒に巻き、細胞内細胞小器官、例えば、ミトコンドリアを表すロッドで核及び細胞質のファントムをコーティングする。細胞内細胞小器官を表すのに使用されるコーティングロッドは、同じサイズであっても、異なるサイズであってもよく、同じ又は異なる可視化剤を含むことができ、これらの作用剤は、コアロッド及びコーティング層で使用された作用剤と異なる。本明細書に記載するように、コーティングロッドとコアロッドの比を変更することによって、細胞の生物学的変化を表すことができる。
【0049】
ロッド[3]及び[4]でコーティングした後、得られた層形成したロッド複合体を、第2のポリマー融液又は溶液中に再び再浸漬し、細胞質の外側領域を表すポリマー[5]を更にコーティングする。複合体をコーティングポリマー中に浸漬する回数を変更することによって、細胞サイズの変化を表す様々なコーティング厚さを実現することができる。
【0050】
複合ロッドの製作が完了したら、ロッドを加熱し、引き伸ばすことによって、複合体の直径を、顕微鏡イメージングにおいて細胞を表すのに適した直径に縮小する。最終の細胞スケールのファントムを作製するのに必要とされる延伸の程度は、製作の間に使用された要素の直径に依存することになる。典型的な哺乳動物細胞核は、直径で10μm〜30μmを示し、したがって、直径が10mmのコアロッド[1]を用いて製作プロセスを開始すると、複合ロッドを細胞スケールに縮小する延伸プロセスの間に、1:1000のスケールの縮小を実現することが必要になる。
【0051】
ロッドを引き伸ばし、適当な直径に縮小したら、ロッドを好都合な長さに切断する。同じ又は異なる複合ロッドからの複数の切断長体[50]を、支持マトリックス[6]中に埋め込む。支持マトリックスは、組織試料を埋め込んだ樹脂から切片を切断するのに日常的に使用されるものなどのミクロトームを使用して切断するのに適したポリマー又は樹脂を含む。埋め込んだファントムのイメージングを妨げない特性を有する樹脂が選択される。支持マトリックスが硬化したら、複合ロッドを含む得られたブロックを、イメージングに適した厚さ、一般的に2μm〜20μmの横断切片[64]に切断する。
【0052】
支持マトリックスは、使用される顕微鏡イメージングの種類に適合した適当な特性を有するように選択され、例えば、蛍光顕微鏡観察については、マトリックスは、細胞ファントム内で蛍光体を励起するのに使用される波長で、ゼロ又は最小の蛍光を有するように選択される。
【0053】
マトリックスブロックから取った、得られたスライスは、複数の細胞ファントムを含み、その結果、スライスは適当なイメージング支持体(imaging support)、例えば、ガラススライド又はマルチウェルイメージングプレートに施し、同じイメージング支持体上で単層の培養細胞をイメージングするのに使用するのと同じ機器設定及び条件を使用してイメージングする。製作方法は、設計、例えば、ポリマーロッド[1]、[3]、[4]の開始直径、及びランダムな変化、例えば、コーティングロッド[3]、[4]の径方向の配置の両方によって、最終形態に変化を導入する多くの機会を有する。したがって、いくつかの複合ロッドを製作し、一般的なマトリックス[6]中にこれらを埋め込むことによって、細胞中に観察される広範囲の生物学的変化を表す最終のイメージングファントムを作製することが可能であり、その結果、ファントムは、不変の試料を使用して、広範囲の顕微鏡観察及び解析手順を実施するのに使用することができる。
【0054】
本発明によるイメージングファントムを作製するための構造体又はブロックは、図2に示すように、セルフアセンブリープロセスを使用しても製作することができる。適当な寸法のポリマーロッド[7]及び[8]を、最密充填配列を使用して積み重ねることによってアセンブルし、ここで小さいロッド[8]は、大きいロッド[7]同士の間隙に配置する。この充填配列は、スペーサーロッド[7]によって規則的な間隔で配置されたターゲットロッド[8]の規則的な配列を提供する。ターゲットロッドは、有色色素、蛍光色素、屈折率調節剤、又はファントムのイメージングで使用される顕微鏡観察技術による可視化に適した任意の他の作用剤を含有するプラスチック又は他のポリマーを含むことができる。スペーサーロッドは、可視化剤を含まないターゲットロッドと同じ又は異なるポリマーを含むことができ、その結果、得られた配列が顕微鏡観察によってイメージングされると、ターゲットロッドのみが可視化される。
【0055】
ファントムをアセンブルするために、ターゲットロッド及びスペーサーロッドを、所望の幅及び高さに交互層で適当な容器中に配置する。アセンブリーの後、容器を支持マトリックスで満たしてアレイを埋め込む。支持マトリックスは、組織試料を埋め込んだ樹脂から切片を切断するのに日常的に使用されるものなどのミクロトームを使用して切断するのに適したポリマー又は樹脂を含む。樹脂は、埋め込んだファントムのイメージングを妨げない特性を有するように選択される。ロッドアレイは、最終の所望のサイズのロッドを使用してアセンブルすることができ、又は代わりに、アレイは、最終のファントムにおいて望まれるものより大きいロッドを使用してアセンブルすることができ、アレイのサイズは、引き伸ばして縮小し、寸法を最終の要求されるサイズに縮小する。アレイが最終所望サイズになったら、埋め込まれたターゲットロッド及びスペーサーロッドのブロックは、イメージングに適した厚さ、一般的に2μm〜20μmの横断切片[65]に切断することができる。
【0056】
直径(D)のスペーサーロッド及び直径(d)のターゲットロッドを有する、そのようなセルフアセンブリングアレイでは、ターゲットロッド[8]の中心間距離は、スペーサーロッド[7]の直径(D)に等しく、ターゲットロッド同士間の縁部間間隔(x)は、2つのサイズのロッド間の直径の差異に等しい。したがって、そのようなアレイは、規定された間隔で物体を分解するための顕微鏡及び関連する画像解析ソフトウェアの能力を判定するのに使用することができる。
【0057】
ロッドサイズは、様々な構造を生じるように選択することができ、ターゲットロッド同士間の間隔は、様々な寸法に対するイメージングを試験及びバリデーションするため、又は生物学的寸法、例えば、培養細胞若しくは組織切片における細胞核同士間の間隔を模倣するために変更される。ロッドの最密配列に関して、直径(D)の大きいロッドと直径(d)の小さいロッドの相対的な直径は、以下の式によって与えられる。
【0058】
【数1】

例えば、直径10mmのスペーサーロッドについては、4.14mmのターゲットロッドにより、10mmのターゲットロッドの中心間間隔、及び5.86mmのターゲットロッドの縁部間間隔を有する最密配列が形成されることになる。そのようなアレイのアセンブリー及び延伸によって結果として起こる1000分の1の縮尺により、5.86μmのターゲットロッド間隔を有するアレイが生じる。
【0059】
ターゲットロッド及びスペーサーロッドは、すべてのターゲットロッドが同じサイズであり、すべてのスペーサーロッドが同じサイズであるように選択することができる。代替の配列では、ターゲットロッド及びスペーサーロッドは、2つのサイズとすることができ、この2つのサイズのロッドは、ターゲットロッド及びスペーサーロッドに対して互換的に使用される。そのような構成では、ターゲットロッドは、大きく[51]ても小さく[52]てもよく、スペーサーロッドは大きく[53]ても小さく[54]てもよく、ロッドのレイアウトを変更することによって、ターゲットロッド[51]と[52]の間隔を変更することが可能である。このアプローチは、生物学的変化を表示する構築されるイメージングファントムについて多種多様の構造を可能にするが、寸法は、ターゲットロッド及びスペーサーロッドの相対的なサイズ及び間隔によって厳密に画定される。
【0060】
イメージングファントムを作製するための構造体又はブロックは、図3に示すように、回転プロセスによってもアセンブルすることができる。1以上のスペーサー層[9]、及び1以上のターゲット層[10]を含み、スペーサー層は、厚さ(X)を有する平面サンドイッチをアセンブルする。ターゲット層は、有色色素、蛍光色素、屈折率調節剤、又はファントムのイメージングで使用される顕微鏡観察技術による可視化に適した任意の他の作用剤を含有するプラスチック又は他のポリマーを含むことができる。スペーサー層は、可視化剤を含まないターゲット層と同じ又は異なるポリマーを含むことができ、その結果、得られたファントムが顕微鏡観察によってイメージングされると、ターゲット層のみが可視化される。
【0061】
イメージングファントムを構築するために、サンドイッチを回転することによって、スペーサー層とターゲット層が交互配置されたらせんを含む断面[11]で示された管を形成し、この管においてターゲット層は、スペーサー層の厚さ(X)によって示された距離によって分離される。回転した後、らせん管を加熱、又は他の方法で処理することによって層を結合し、その結果、管は、薄い横断切片に切断することによってイメージングファントムを形成することができる。これらのファントムは、ターゲット層とスペーサー層の一連の交互層を有するディスクを含み、これは、画像、及びイメージングデバイスが、決定された360°にわたる任意の方向で別々のターゲット層を分解する能力となり得る。
【0062】
出発平面サンドイッチ中の材料の寸法は、顕微鏡計測装置及び/又は画像解析ソフトウェアを評価及びバリデーションすることにおいて、ファントムの要求される最終用途に合うように選択することができる。例えば、20μm離れた5μmの物体の解像力を試験することが望まれる場合、平面サンドイッチは、5μmの厚さのターゲット層及び20μmの厚さのスペーサー層を使用してアセンブルする。
【0063】
更に洗練されたものでは平面サンドイッチは、ターゲット層及びスペーサー層のいずれか、又は両方の様々な厚さのいくつかの層を含むことによって、上述した、即ち、最終のファントムにおいて360°にわたって平面サンドイッチ中の任意のパターンが複数回繰り返される同じ原理を使用して、様々な分解能でイメージングを評価することができる。例えば、50μmのスペーサー、20μmのターゲット、20μmのスペーサー及び20μmのターゲットの積み重ねを含む平面サンドイッチは、50μm及び20μm離れた繰り返しのペアでターゲット層を有するイメージングファントムを生じる。
【0064】
ターゲット層は、連続であっても不連続であってもよく、1以上の造影剤を含むことができる。一実施形態では、一次スペーサー層[55]は、イメージングファントムにおいて細胞構造を表すターゲットロッドが埋め込まれた二次スペーサー層[56]を支持することができる。ターゲットロッドは、細胞内構造の寸法を表すために選択された様々なサイズとすることができる。例えば、大きいターゲットロッド[57]は、細胞核を表すのに使用することができ、更なるターゲットロッド[58]は、細胞小器官を表すのに使用することができる。適宜、異なる造影剤、例えば、異なる蛍光色素を含む更なるターゲットロッド[59]を使用することによって、異なる細胞小器官を表すことができる。コアターゲットロッド[61]の周囲に平面アセンブリーを回転させてらせん[60]にすることにより、イメージングに適した厚さの横断切片に切断されたとき、細胞小器官[62]及び[63]によって包囲された中心核[61]を有する細胞を表すイメージングファントムを形成する構造が生じる。
【0065】
イメージングファントムを作製するための構造体又はブロックは、図4に示すように、ターゲットロッド及びスペーサーロッドのランダムアセンブリーによっても製作することができる。一連のターゲットロッド[25]、[26]を一連のスペーサーロッド[27]、[28]及び[29]と、適当な容器中で混合し、その結果、ロッドをランダムアレイにアセンブルする。ターゲットロッドは、有色色素、蛍光色素、屈折率調節剤、又はファントムのイメージングで使用される顕微鏡観察技術による可視化に適した任意の他の作用剤を含有するプラスチック又は他のポリマーを含むことができる。スペーサーロッドは、可視化剤を含まないターゲットロッドと同じ又は異なるポリマーを含むことができ、その結果、得られたファントムが顕微鏡観察によってイメージングされると、ターゲットロッドのみが可視化される。
【0066】
ターゲットロッドは、例えば、大きい直径のロッド[26]及び小さい直径のロッド[25]を使用することによって、異なるサイズであるように選択することできる。得られたファントムは、大きいロッドによって表される核、及び小さいロッドによって表される細胞内細胞小器官を含む細胞標本を模倣することができる。ターゲットロッド中に使用される可視化剤は、すべてのロッドにおいて同じとすることができ、又は異なる作用剤をそれぞれのロッド中に使用することができる。例えば、一集団のロッド[26]に赤色蛍光色素を使用し、第2の集団のロッド[25]に緑色蛍光色素を使用することによって、得られたファントムは、それぞれ赤色及び緑色蛍光色素で染色された核及び細胞内細胞小器官を含む、蛍光染色細胞標本を模倣することができる。
【0067】
スペーサーロッドは、ターゲットロッドについて選択された直径を補完するように選択された様々な直径を含み、その結果、スペーサーロッドは、ランダムアレイ中のターゲットロッド同士間の間隙を満たす。ランダムアレイは、容器にターゲットロッド及びスペーサーロッドを連続的に追加し、又はロッドの混合物で容器を満たし、容器を撹拌し、若しくは振動させることによってアセンブルすることができ、その結果、様々なサイズのロッドが一緒に納まり、小さいスペーサーロッド及びターゲットロッドが、大きいスペーサーロッド及びターゲットロッドの間隙を満たす。ターゲットロッド及びスペーサーロッドのサイズの変化は、各々のロッドタイプの相対的な数の変化とともに、アセンブルされる非常に多様なイメージングファントム構成を提供する。
【0068】
ロッドをランダムアレイで一緒に詰めたら、配列されたロッドを含む容器[55]を支持マトリックス[30]で満たすことによってアレイを封入する。支持マトリックスは、組織試料を埋め込んだ樹脂から切片を切断するのに日常的に使用されるものなどのミクロトームを使用して切断するのに適したポリマー又は樹脂を含む。マトリックスは、スペーサーロッドのポリマーの光学的性質と同一又は同様の光学的性質を有するように選択される。引き続いて埋め込まれたアレイを横断切断することにより、イメージングファントム[31]として使用することができるスライスが得られ、この中でターゲット範囲のみが目に見える。
【0069】
イメージングファントムを作製するための構造体又はブロックは、図5に例示するように、押出プロセスを使用しても作製することができる。更なるノズル[13]及び[14]を包囲するノズル[12]を備え、各ノズルは液体の、又は融解したマトリックス材料、適切には、異なるイメージング特性を有するポリマー材料が供給される、押出装置。マトリックスは、任意の融解したポリマー又は触媒樹脂とすることができ、これは硬化すると、切断してイメージングに適したスライスにすることができる。
【0070】
装置への流入口[66]、[15]及び[16]の各々に供給されるマトリックス混合物は、有色色素、蛍光色素、屈折率調節剤、又はファントムのイメージングで使用される顕微鏡観察技術による可視化に適した任意の他の作用剤を含むことができ、各々のマトリックス混合物は、異なる作用剤を含む。例えば、蛍光染色した細胞を表すイメージングファントムを作製することが望まれる場合、マトリックス混合物は、3つの異なる蛍光色素を含み、即ち、押出成形品の外殻[17]を形成するマトリックス[66]は、蛍光染色した細胞質を表す蛍光色素を含み、押出成形品のコア[18]を形成するマトリックス[15]は、蛍光染色した細胞核を表示する第2のスペクトル的に異なる蛍光色素を含み、押出成形品の殻内の封入物[19]を形成するマトリックス[16]は、蛍光標識した細胞小器官を表示する第3のスペクトル的に異なる蛍光色素を含む。
【0071】
ノズルからマトリックスを押し出すと、線形の押出成形品が生じ、これは、断面で見ると殻[20]、コア[21]、及び封入物[22]の3つの異なる領域を含む。押出成形品が冷却又は樹脂重合によって硬化したら、1以上の押出成形品を、支持マトリックス中に埋め込むことができ、支持マトリックスは、切断して薄い横断切片にするのに適した物理的特性、及び埋め込まれたファントムのイメージングを妨げないイメージング特性を有するように選択される。押出成形品を埋め込んだ後、得られたブロックは、引き伸ばすことによって、顕微鏡イメージングにおいて細胞を表すのに適した直径にファントムのサイズを縮小することができる。最後に、縮小したブロックを切断して、各々がイメージングに適したいくつかのイメージングファントム[23]を含む横断切片[24]にする。
【0072】
イメージングファントムは、図6に示すように、封入によっても製作することができる。最終のイメージングファントムの所望の直径に等しい直径の管を備えるマイクロ流体チャネル[32]に、一定流量の担体液体[C]を供給し、ここでこの担体液体は、光によって重合することができるフォトポリマー[P]の溶液と不混和性であるように選択する。一般的に、フォトポリマーは水溶液を含み、担体流体は不混和性の油を含む。
【0073】
マイクロ流体チャネル[32]は、割り込みサイドチャネル(intercepting side channel)[33]、[34]、[35]及び[36]を更に備え、これらは、メインチャネル中に構成要素を付加することを可能にする。サイドチャネル[33]からメインチャネル中にポリマー溶液[P]を導入すると、ポリマー[P]が担体液体と不混和性である場合、ポリマーの流入[33]によって担体液体が置換され、担体に加えるポリマーの量を制御することによって、別々のポリマーの丸いボーラス(bolus)[38]を形成することができる。ボーラスは、担体液体の流れによってメインチャネルに沿って移動し、第2のサイドチャネル[34]を通り、この地点でサイドチャネル中の流体の流れは、担体液体[B1]中のビーズの懸濁液から1個のビーズ[39]をメインチャネル中に送達するように促進され、その結果、ビーズ[40]は、ポリマーのボーラス[41]によって封入される。このプロセスは、更なるサイドチャネルで繰り返され、ボーラスに更なるビーズが加えられる。チャネル[35]において、第2の集団のビーズ[B2]を、通過中のボーラス[42]に加えることができ、その結果、ポリマーボーラスは、ここで2つのビーズ[43]及び[44]を含み、サイドチャネル[36]において、第3の集団のビーズ[B3]がボーラス[45]に加えられ、その結果ボーラスは3個のビーズを含む。
【0074】
担体流体が更に流れることによって、ボーラスが光重合領域に運ばれ、ここでボーラス[46]のポリマーは、チャネルを包囲する適当な光源[47]からの光[48]によって重合する。得られるポリマービーズ[49]は、マイクロ流体チャネルを出て洗浄の準備が整った収集チャンバーに入り、3次元イメージングファントムとして使用される。
【0075】
装置のメインチャネルの直径、サイドチャネル、及びプロセスにおいて使用されるビーズを適切に選択することによって、得られるファントムを、様々な生物学的構造を模倣するように製作することができる。例えば、直径10μm、5μm、及び2μmの3つのビーズタイプとともに、直径30μmのメインチャネル、及び10μm、5μm、及び2μmのサイドチャネルを備える装置を使用することにより、顕微鏡イメージングにおいて典型的な哺乳動物細胞を表すのに適した、10μm、5μm、及び2μmのビーズを含む、直径30μmの球状ファントムの作製が可能になる。そのようなイメージングファントムにおいて、ポリマー殻は細胞質を表し、10μmのビーズは核を表し、5μm及び2μmのビーズは細胞内細胞小器官を表す。
【0076】
イメージングファントムの作製に関して、ポリマー[P]、並びにビーズ[B1]、[B2]及び[B3]は、有色色素、蛍光色素、屈折率調節剤、又はファントムのイメージングで使用される顕微鏡観察技術による可視化に適した任意の他の作用剤を含み、ポリマー及びビーズ集団の各々は、異なる造影剤を含む。
【0077】
本発明の好適な例示的実施形態が記載されているが、当業者は、記載された実施形態以外によって本発明を実践することができ、これらの実施形態は、単に例示の目的で、限定することによってではなく示されていることを理解するであろう。本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡観察によってイメージングすると細胞又は組織を表示する1以上の検出可能な内部要素を含む固体既製ポリマーマトリックス材料。
【請求項2】
前記マトリックス材料が長尺固体構造体であり、長尺構造体の断面が細胞又は組織の特色的特徴を含んでいて、該特徴が、長尺構造体を通して長手方向に延在する、請求項1記載のポリマーマトリックス材料。
【請求項3】
前記検出可能な内部要素が、真核細胞を表示する製作された複合構造を含む、請求項1又は請求項2記載のポリマーマトリックス材料。
【請求項4】
前記検出可能な内部要素の各々が可視化剤を含む、請求項1又は請求項2記載のポリマーマトリックス材料。
【請求項5】
前記可視化剤が、内部要素の各々において検出可能な程度に異なる、請求項4記載のポリマーマトリックス材料。
【請求項6】
前記可視化剤が、有色色素、蛍光色素、又は屈折率調節剤から選択される、請求項4又は請求項5記載のポリマーマトリックス材料。
【請求項7】
前記透明又は半透明のポリマーである、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載のポリマーマトリックス材料。
【請求項8】
実質的に球状であり、検出可能な内部要素が封入されたビーズを含む、請求項1記載のポリマーマトリックス材料。
【請求項9】
前記検出可能な内部要素が真核細胞の細胞小器官を表示する請求項8記載のポリマーマトリックス材料。
【請求項10】
前記マトリックス材料及び1以上の検出可能な内部要素の各々が可視化剤を含む、請求項8又は請求項9記載のポリマーマトリックス材料。
【請求項11】
前記可視化剤が、マトリックス及び1以上の検出可能な要素の各々において検出可能な程度に異なる、請求項10記載のポリマーマトリックス。
【請求項12】
前記可視化剤が、有色色素、蛍光色素又は屈折率調節剤から選択される、請求項10又は請求項11記載のポリマーマトリックス。
【請求項13】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の固体ポリマーマトリックスからスライスされた均一な切片を含み、顕微鏡観察技術によって検出可能であるイメージングファントム。
【請求項14】
請求項8乃至請求項12のいずれか1項記載の、1以上の実質的に球状のポリマーマトリックスを含み、顕微鏡観察技術によって検出可能であるイメージングファントム。
【請求項15】
前記顕微鏡観察技術が光学顕微鏡観察である、請求項13又は請求項14記載のイメージングファントム。
【請求項16】
前記顕微鏡観察技術が蛍光顕微鏡観察である、請求項15記載のイメージングファントム。
【請求項17】
前記顕微鏡観察技術が位相差顕微鏡観察である、請求項13又は請求項14記載のイメージングファントム。
【請求項18】
イメージング顕微鏡を較正及び/又はバリデーションするための方法であって、
a)イメージング顕微鏡を用意し、
b)顕微鏡観察によってイメージングすると細胞又は組織を表示する1以上の検出可能な内部要素を含む固体既製ポリマーマトリックスを含む、請求項13乃至請求項17のいずれか1項記載の1以上のイメージングファントムを用意し、
c)第1の時間(T)に1以上のイメージングファントムの1以上の画像を取得し、
d)第2の時間(T)に1以上のイメージングファントムの1以上の画像を取得し、
e)画像を使用することによって、イメージングファントムの既知の特徴を参照して、第1の時間(T)及び第2の時間(T)でのイメージング顕微鏡の性能を定量的に比較する
ことを含んでなる方法。
【請求項19】
イメージング顕微鏡の設定を最適化するための方法であって、
a)イメージング顕微鏡を用意し、
b)顕微鏡観察によってイメージングすると細胞又は組織を表示する1以上の検出可能な内部要素を含む固体既製ポリマーマトリックスを含む、請求項13乃至請求項17のいずれか1項記載の1以上のイメージングファントムを用意し、
c)第1の選択の設定(S)を使用して、1以上のイメージングファントムの1以上の画像を取得し、
d)第1の選択の設定(S)を使用して、イメージングファントムの1以上の画像を取得し、
e)画像を使用することによって、イメージングファントムの既知の特徴を参照して、第1の設定(S)及び第2の設定(S)でのイメージング顕微鏡の性能を定量的に比較する
ことを含んでなる方法。
【請求項20】
画像解析ソフトウェアを較正及び/又はバリデーション及び/又は最適化するための方法であって、
a)イメージング顕微鏡を用意し、
b)顕微鏡によって生成する画像を定量分析するのに適した画像解析ソフトウェアを用意し、
c)顕微鏡観察によってイメージングすると細胞又は組織を表示する1以上の検出可能な内部要素を含む固体既製ポリマーマトリックスを含む、請求項13乃至請求項17のいずれか1項記載の1以上のイメージングファントムを用意し
d)上記又は各イメージングファントムの1以上の画像を取得し、
e)解析ソフトウェアを使用することによって、画像から定量的データを生成し、
f)データを使用することによって、イメージングファントムの既知の特徴を参照して、画像解析用ソフトウェアの性能を定量的に求める
ことを含んでなる方法。
【請求項21】
1以上のイメージングファントムの各々が他と異なるものである、請求項18乃至請求項20のいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−503532(P2011−503532A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531517(P2010−531517)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2008/064656
【国際公開番号】WO2009/056560
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(398048914)ジーイー・ヘルスケア・ユーケイ・リミテッド (30)
【Fターム(参考)】