説明

顕微鏡装置

【課題】顕微鏡装置を構成する光学系により生じる偏光状態の変化を補正することが可能な顕微鏡装置を提供する。
【解決手段】顕微鏡装置100を、照明光L1を射出する光源1と、NAが1以上の領域を透過する照明光L1を試料30に照射する対物レンズ4と、照明光L1を直線偏光状態に変換するポラライザ5と、ポラライザ5を透過した照明光L1を対物レンズ4の瞳面4aに集光する集光レンズ6と、試料30を出射し、対物レンズ4を透過した観察光L2を集光して試料30の像Iを結像する結像レンズ8と、透過する光の偏光面がポラライザ5と直交するように配置されたアナライザ9と、ポラライザ5と集光レンズ6との間に配置された第1のコンペンセータ7と、から構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生物学の研究において、全反射を利用した照明(TIRF照明)が蛍光色素の励起方法に多く用いられ、これを利用した全反射照明蛍光顕微鏡装置(TIRF顕微鏡)に係る発明が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、偏光を利用して複屈折性を有する試料の観察に用いられる偏光顕微鏡装置が知られている。このような偏光顕微鏡装置は、照明側と結像側に2つのポラライザ(偏光子)がその透過軸(光学軸)を直交させた状態で配置されて構成されており(この配置を「クロスニコル」と呼ぶ)、これらの2つのポラライザ(偏光子)の間に偏光状態を変化させる物、すなわち複屈折性を有する試料を配置し、偏光状態を変化させて結像側のポラライザ(偏光子)(これを「検光子(アナライザ)」と呼ぶ)を通り抜けた光を観察することにより試料の特性を観察するように構成されている。
【特許文献1】特開2004−85796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1を含めた従来の手法では、TIRF照明若しくは落射照明における照明光や観察光の偏光状態を維持する方法が明示されていない。したがって、照明光学系のレンズ及び対物レンズ等の光学素子を偏光が通過するときに、これらのレンズの影響で、位相変化などの偏光状態の変化が生じていた。その結果、直線偏光が楕円偏光化してしまい、画像のコントラスト低下を起こすと言う課題があった。この偏光状態の変化は、特に、レンズに施されたコーティング(反射防止膜等)の影響により顕著である。
【0004】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、集光レンズとポラライザとの間にコンペンセータを配置することにより、集光レンズや対物レンズ等の光学系を構成する光学素子による照明光の楕円偏光化を補正して、この集光レンズや対物レンズを透過した照明光の直線偏光状態を維持することで、偏光状態の良い照明を実現することができる顕微鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明に係る顕微鏡装置は、照明光を射出する光源と、所定のNAより大きい位置を透過する照明光を試料に照射する対物レンズと、光源と対物レンズとの間に配置され、照明光を直線偏光状態に変換するポラライザと、ポラライザを透過した照明光を対物レンズの瞳面に集光する集光レンズと、試料を出射し、対物レンズを透過した観察光を集光して試料の像を結像する結像レンズと、結像レンズと像との間に配置され、透過する光の偏光面がポラライザと直交するように配置されたアナライザと、集光レンズとポラライザとの間に配置され、照明光が通過する光学素子による照明光の楕円偏光化を補正して、試料に照射する照明光の直線偏光状態を維持する第1のコンペンセータと、から構成される。
【0006】
また、本発明に係る顕微鏡装置において、照明光は、対物レンズにおけるNAが1以上の領域を透過することが好ましい。
【0007】
また、本発明に係る顕微鏡装置は、対物レンズを透過した照明光の偏光状態を検出する照明光検出部と、照明光検出部で検出された照明光の楕円偏光化の程度を算出する楕円偏光化状態算出部と、を有し、楕円偏光化状態算出部で算出された照明光の楕円偏光化のずれ量を打ち消すように、第1のコンペンセータにより照明光に位相差を与えることが好ましい。
【0008】
このとき、本発明に係る顕微鏡装置において、第1のコンペンセータは、バビネ−ソレイユの補償器で構成されることが好ましい。
【0009】
あるいは、本発明に係る顕微鏡装置において、第1のコンペンセータは、ブレース−ケーラーの補償器で構成されることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る顕微鏡装置において、結像レンズとアナライザとの間に配置され、対物レンズによる観察光の楕円偏光化を補正する第2のコンペンセータを有することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る顕微鏡装置において、第2のコンペンセータの補正量は、第1のコンペセータと同じ量とすることが好ましい。
【0012】
このとき、本発明に係る顕微鏡装置において、第2のコンペンセータは、バビネ−ソレイユの補償器で構成されることが好ましい。
【0013】
あるいは、本発明に係る顕微鏡装置において、第2のコンペンセータは、ブレース−ケーラーの補償器で構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る顕微鏡装置を以上のように構成すると、偏斜の落斜照明と偏光とで照明を行う場合に、照明光学系に備えた第1のコンペンセータによって照明光が通過する光学素子による照明光の楕円偏光化を補正して、照明光の直線偏光状態を維持することで、偏光状態の良い照明を実現することができ、蛍光偏光観察を高いコントラストで行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態の顕微鏡装置100における光学系の配置を示している。この顕微鏡装置100は、光源1から放射された照明光(レーザー光)L1を対物レンズ4を介して試料30に落射照明する照明光学系2と、試料30から放射された観察光L2を対物レンズ4で集光して結像する観察光学系3とから構成されており、全反射照明を利用して試料30から放射される蛍光(観察光L2)によりこの試料30の像を観察するものである。
【0016】
この顕微鏡装置100を構成する照明光学系2は、光源1から射出された略平行光束である照明光L1を試料30に照射する対物レンズ4と、光源1と対物レンズ4との間に配置され、照明光L1を直線偏光状態に変換するポラライザ5と、このポラライザ5を透過した照明光L1を対物レンズ4の瞳面4aに集光する集光レンズ6と、ポラライザ5と集光レンズ6との間に配置された第1のコンペンセータ7と、を有して構成される。一方、観察光学系3は、試料30を出射した観察光L2を集光して略平行光束にする対物レンズ4と、この対物レンズ4を透過した観察光L2を集光して試料30の像Iを結像する結像レンズ8と、結像レンズ8と像Iとの間に配置され、透過する光の偏光面がポラライザ5と直交するように配置されたアナライザ9と、結像レンズ8とアナライザ9との間に配置された、第2のコンペンセータ10とを有して構成される。
【0017】
観察対象となる試料30は、図示しないステージ上に置かれたシャーレ31内に、培養液32とともに収容されている。試料30の上面に、カバーグラス33が貼り付けられ、このカバーグラス33と対物レンズ4との間は、液浸用の油34が満たされている。
【0018】
図2に示すように、この顕微鏡装置100において、光源1から放射された照明光(レーザー光)L1は、径の小さな光束として対物レンズ4の外周部、具体的には開口数(NA)が1以上の領域を通過して試料30を偏射照明するように構成されている。このとき、この照明光L1が試料30に照射されるときの光軸とのなす角度は、カバーグラス33と試料30との境界で全反射が発生するような角度に設定されている。但し、照明光L1はこの境界で全て反射されるのではなく、一部のごくわずかの光はカバーグラス33から試料30側へにじみ出る。この境界側へにじみ出た光がエバネッセント光で、試料30の深さ方向へにじみ出す量は使用する光源の波長程度となる。そこで、エバネッセント光を照明光として利用した場合、照明範囲は使用する光源の波長程度の深さに限られることから、蛍光(観察光L2)を発する部分が極めて狭くそれ以外は蛍光を発しなくなり、通常の落射照明時と異なりバックグラウンドとなる蛍光が非常に少なくなる。従って、全反射照明では極めて高いS/N比を実現でき、特に、細胞膜表面の観察やカバーグラス表面付近に局在する蛍光色素一分子の可視化に有効である。
【0019】
なお、この顕微鏡装置100の照明光学系2には、光源1からの照明光L1の透過と遮断を制御するシャッター11と、略平行光束である照明光L1を一定の径の平行光束に拡張するためのエキスパンダーレンズ12と、照明光L1の光量を調節するNDフィルタ13と、ポラライザ5を透過した直線偏光状態の照明光L1の方位を変えるための波長板(1/2波長)14と、光軸の平行移動を行うハービングガラス15,16と、集光レンズ6により集光された照明光L1を対物レンズ4の方向に反射する第1のミラー17と、が設けられている。また、観察光学系3には、対物レンズ4を透過した略平行光束である観察光L2を通過させる絞り18と、この絞り18を通過した観察光L2を結像レンズ8の方向に反射する第2のミラー19と、が設けられている。ここで、ハービングガラス15,16や第1のミラー17は、図示しない適宜の駆動機構により光軸と平行な方向への移動及び固定が可能に構成されている。
【0020】
このような顕微鏡装置100では、図1に示すように、光源1から射出した略平行光束である照明光L1は、シャッター11を通過した後、エクスパンダーレンズ12によって所定の径の平行光束に拡張され、NDフィルタ13を透過し、ポラライザ5によって直線偏光状態に変換される。このポラライザ5を透過した直線偏光状態の照明光L1は、波長板14によって方位が変えられた後、第1のコンペンセータ7を透過し、集光レンズ6によって集光され、ハービングガラス15,16により光軸からの位置が調整された後、第1のミラー17によって反射され、対物レンズ4に向かう。このようにして、照明光L1は集光レンズ6によって対物レンズ4の瞳面4aに集光され、対物レンズ4を介して上述のように試料30を照明する。
【0021】
対物レンズ4を介して試料30に照射される照明光L1により、試料30内の蛍光物質が蛍光(観察光)を発するが、この観察光L2を結像レンズ8で集光して試料30の像Iを結像させて観察する。この場合、試料30を出射した観察光L2は、対物レンズ4を透過した後、絞り18を通過し、第2のミラー19によって反射され、結像レンズ8により集光される。集光された観察光L2は、さらに、第2のコンペンセータ10及びアナライザ9を透過し、撮像面上に像Iを結像する。
【0022】
このような顕微鏡装置100において、ポラライザ5とアナライザ9とは、その透過軸が直交するように配置されており(上述の「クロスニコル」)、これらのポラライザ5とアナライザ9との間に偏光状態(偏光面の傾き及びリタデーション)を変化させる物体がなければ、ポラライザ5を透過した直線偏光はアナライザ9を透過することができない。一方、試料30から発せられた蛍光(観察光L2)は偏光状態が異なるので、アナライザ9を通り抜け、観察者はその像Iを観察することができる。
【0023】
しかし、上述のように、ポラライザ5とアナライザ9との間に配置された集光レンズ6や対物レンズ4を偏光が通過することで、これらのレンズの影響で照明光L1や観察光L2に偏光状態の変化が生じ、アナライザ9からの照明光L1の漏れなどにより画像のコントラストの低下を生じてしまう。特に高倍の対物レンズ4においては、図2(a)に示すように試料30側に近いレンズのレンズ面には、曲率が強い面が含まれ、そのようなレンズ面に塗布される反射防止膜は光軸から離れた位置(NAが1以上の光線が通過する位置)では所定の膜厚が確保できないケースが多い。そのため、NAが1以上の領域を透過する光線は楕円偏光化の程度が著しくなるため、補正が必要となる。このようなことから、本実施形態に係る顕微鏡装置100においては、第1及び第2のコンペンセータ7,10を用いてこれらの集光レンズ9及び対物レンズ13で生ずる偏光状態の変化を補正するように構成されている。この補正のための、第1及び第2のコンペンセータ7,10の位置の調整方法について以下に説明する。
【0024】
なお、照明光束が通常の落射照明のように光路全体になると、対物レンズ4を構成するレンズ全体を通過することになる。その場合、レンズの異なる位置で、異なる位相変化が生じ、これらが合成されてしまう。この状態では、一つのコンペンセータで位相補償することは困難である。これに対して、本実施形態の顕微鏡装置100においては、図2のように、照明光束の大きさを限定し、対物レンズ4の外周部の一部の領域(具体的には、図2に斜線で示すNAが1以上の領域)を透過するように構成されているため、対物レンズ4等による影響はほぼ同じ量となり、一つのコンペンセータで補償することが可能となる。すなわち、照明光学系2と観察光学系3とに一つずつ配置した第1及び第2のコンペンセータ7,10により照明光L1及び観察光L2の楕円偏光化を補正することにより、偏光状態の良い照明及び観察を実現するものである。
【0025】
照明光学系2に配置された第1のコンペンセータ7は、対物レンズ4等による照明光L1の楕円偏光化を補正するために、この対物レンズ4等による楕円偏光化の量を打ち消すような楕円偏光化の程度となるように照明光L1を楕円偏光化するものであり、これにより対物レンズ4を透過した照明光L1の直線偏光状態を維持する。また、観察光学系3に配置された第2のコンペンセータ10は、対物レンズ4により楕円偏光化された観察光L2を元の直線偏光状態に補正するものである。なお、本光学系100による照明光L1の楕円偏光化は、位相量にして1/10波長程度であるため、第1及び第2のコンペンセータ7,10として、バビネ−ソレイユの補償器、若しくは、ブレース−ケーラーの補償器などを用いるのが良い。
【0026】
ここで、図3を用いてバビネ−ソレイユの補償器及びブレース−ケーラーの補償器の原理について説明する。バビネ−ソレイユの補償器は、図3(a)に示すように、右水晶Lと、2つのプリズムに分割された左水晶R1,R2とから構成される。ここで、右水晶Lと、左水晶R1,R2とは、厚さの等しい2枚の、光学軸に平行に研磨した水晶板L,Rを光学軸が直交する方向に配置、左水晶RをプリズムR1,R2に分割した構造になっている。そして、左水晶R1,R2の一方を光学軸方向に移動させることにより、この補償器を通過する光の楕円偏光化量を調整するように構成されている。一方、ブレース−ケーラーの補償器は、非常に小さな位相差を測定するものであり、波長板Cとして位相差ε=(1/20〜1/60)×(2π/λ0)を持つマイカ板を使用する。このブレース−ケーラーの補償器は、図3(b)に示すように、光学軸が直交するように配置された偏光板P,Aの間に波長板Cを挿入し、この波長板Cを回転させて未知の直線複屈折材料Mの位相差を測定するものであるが、この原理を応用することにより、通過する光線の楕円偏光化量を調整することができる。
【0027】
なお、本実施形態の顕微鏡装置100においては、第1及び第2のコンペンセータ7,10は、それぞれアクチュエータなどの適宜の駆動部51,52により、光軸を回転中心として回転可能に構成されている。これらの駆動部51,52の動作を制御する制御部50では、照明光L1や観察光L2の楕円偏光化の状態に応じて駆動部51,52を駆動して、楕円偏光化を打ち消す方向に第1及び第2のコンペンセータ7,10を回転させて補正を行うように構成されている。
【0028】
このような本実施形態の顕微鏡装置100は、更に、対物レンズ4を透過した照明光L1を検出する照明光検出部40を有している。この照明光検出部40と対物レンズ4との間には、駆動部53により回転可能に制御された偏光板41が配置されている。この駆動部53の動作の制御は制御部50により行われるが、この制御部50は、照明光検出部40で検出された照明光L1の楕円偏光化の量を算出する楕円偏光化状態算出部としての機能も有している。そして、制御部50では、駆動部53を動作させて偏光板41を回転させて照明光L1の楕円偏光化の量を算出し、算出された照明光L1の楕円偏光化の量を打ち消すように、駆動部51,52を動作させて第1及び第2のコンペンセータ7,10の位置を調整するよう構成されている。以下に、制御部(楕円偏光化状態算出部)50による調整の手順を説明する。
【0029】
まず、第1のミラー17を光軸方向に移動させることで、照明光L1の照射方向を変化させて、照明光検出部40によりこの照明光L1を検出可能な状態にする(この状態の照明光を透過光L3と呼ぶ)。偏光板41を透過した透過光L3を照明光検出部40で受光し、透過光L3の長軸と短軸の信号強度を測定する。制御部50ではこの信号強度の情報をもとに楕円偏光化の量を算出し、この楕円偏光化の量を打ち消す方向に、駆動部53を駆動させて偏光板41を少量回転させる。さらに、この回転後の信号強度を照明光検出部40測定し、制御部50で楕円偏光化の程度を再び算出し、この楕円偏光化の程度に応じて偏光板41を回転させる。
【0030】
このように、照明光検出部40で信号強度を測定し、制御部50により算出された楕円偏光化の程度に応じて偏光板41を回転させることを繰り返し、最終的に楕円偏光化の程度が「ほぼ0」となる位置まで偏光板41を回転させる。そして、駆動部51,52により、この偏光板41の回転量と同じ量だけ第1及び第2のコンペンセータ7,10を回転させることにより、対物レンズ4や集光レンズ6等による照明光L1及び観察光L2の楕円偏光化を補正して、照明光L1や観察光L2の直線偏光状態を維持することができる。その結果、偏斜の落斜照明と偏光とで照明を行う場合に、偏光状態の良い照明を実現することができ、蛍光偏光観察を高いコントラストで行うことができる。ここで、補正のために、第1のコンペセータ7の回転量と第2のコンペンセータ10の回転量とを同じ量とするのは、照明光や観察光の偏光状態の変化は主に対物レンズ4により発生し、この対物レンズ4による照明光L1及び観察光L3に対する楕円偏光化の量は、ほぼ同じ値だと想定されるからである。なお、楕円偏光化量を測定して第1及び第2のコンペンセータ7,10の位置を調整した後は、第1のミラー17を元の位置に戻して試料30の観察が行われる。
【0031】
また、上記の実施の形態では、代表的な偏光顕微鏡光学系について述べた。しかし、この発明は偏光顕微鏡に限定されるものではなく、偏光を利用する各種光学機器、例えばエリプソメータ、微分干渉顕微鏡などの偏光特性の変化を補償することが可能である。また、上述の実施形態は一例に過ぎず、上述の構成に限られるものでなく、本発明の効果範囲内において適切に変更が可能である。また、以上の説明では、第1のコンペンセータ7により照明光学系2における照明光L1の楕円偏光化量を補正し、第2のコンペンセータ10により観察光学系3における観察光L2の楕円偏光化量の補正を行ったが、第1のコンペンセータ7だけを設けた構成にしても良いことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の顕微鏡装置の光学系の構成を示す説明図である。
【図2】NAが1以上の領域を透過する照明光を説明するための説明図であり、(a)は対物レンズを側面から見た際の照明光の経路を示し、(b)は対物レンズを上面から見た際の照明光の経路を示す。
【図3】第1及び第2のコンペセータの原理を説明するための説明図であって、(a)はバビネ−ソレイユの補償器の構成を示し、(b)はブレース−ケーラーの補償器の構成を示す。
【符号の説明】
【0033】
1 光源 4 対物レンズ 4a 瞳面 5 ポラライザ
6 集光レンズ 7 第1のコンペンセータ
8 結像レンズ 9 アナライザ 10 第2のコンペンセータ
30 試料 L1 照明光 L2 観察光
40 照明光検出部 50 制御部(楕円偏光化状態算出部)
100 顕微鏡装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光を射出する光源と、
所定のNAより大きい位置を透過する前記照明光を試料に照射する対物レンズと、
前記光源と前記対物レンズとの間に配置され、前記照明光を直線偏光状態に変換するポラライザと、
前記ポラライザを透過した前記照明光を前記対物レンズの瞳面に集光する集光レンズと、
前記試料を出射し、前記対物レンズを透過した観察光を集光して前記試料の像を結像する結像レンズと、
前記結像レンズと前記像との間に配置され、透過する光の偏光面が前記ポラライザと直交するように配置されたアナライザと、
前記集光レンズと前記ポラライザとの間に配置され、前記照明光が通過する光学素子による前記照明光の楕円偏光化を補正して、前記試料に照射する前記照明光の直線偏光状態を維持する第1のコンペンセータと、を有する顕微鏡装置。
【請求項2】
前記照明光は、前記対物レンズにおけるNAが1以上の領域を透過する請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項3】
前記対物レンズを透過した前記照明光の偏光状態を検出する照明光検出部と、
前記照明光検出部で検出された前記照明光の楕円偏光化の程度を算出する楕円偏光化状態算出部と、を有し、
前記楕円偏光化状態算出部で算出された前記照明光の楕円偏光化のずれ量を打ち消すように、前記第1のコンペンセータにより前記照明光に位相差を与える請求項1または2に記載の顕微鏡装置。
【請求項4】
前記第1のコンペンセータは、バビネ−ソレイユの補償器で構成された請求項1〜3いずれか一項に記載の顕微鏡装置。
【請求項5】
前記第1のコンペンセータは、ブレース−ケーラーの補償器で構成された請求項1〜3いずれか一項に記載の顕微鏡装置。
【請求項6】
前記結像レンズと前記アナライザとの間に配置され、前記対物レンズによる前記観察光の楕円偏光化を補正する第2のコンペンセータを有する請求項1〜5いずれか一項に記載の顕微鏡装置。
【請求項7】
前記第2のコンペンセータの補正量は、前記第1のコンペセータと同じ量とする請求項6に記載の顕微鏡装置。
【請求項8】
前記第2のコンペンセータは、バビネ−ソレイユの補償器で構成された請求項6または7に記載の顕微鏡装置。
【請求項9】
前記第2のコンペンセータは、ブレース−ケーラーの補償器で構成された請求項6または7に記載の顕微鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−60854(P2010−60854A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226580(P2008−226580)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】