説明

風力タービンブレードの製造方法

【課題】風力タービンブレードの製造方法を簡略化すること。
【解決手段】第1の金型部品の第1の金型表面に配置された第1の複合繊維層に、収縮された状態の袋体を配置するステップと、前記袋体と前記第1の複合繊維層とを前記第1の金型表面に固定するステップと、前記第1の金型表面と、第2の複合繊維層が配置された第2の金型部品の第2の金型表面とが中空部材の形状になるように、該第1の金型部品と該第2の金型部品とを結合させるステップと、前記第1の複合繊維層が前記第1の金型表面に押し付けられ、かつ前記第2の複合繊維層が前記第2の金型表面に押し付けられ、該第1の複合繊維層と該第2の複合繊維層とが結合されて前記中空部材の形状を成すように、前記袋体を膨張させるステップと、を有する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合繊維から作製された中空部材を製造するための形状を成形するための方法に関し、とりわけ風力タービン用の中空ブレードの形状を成形するための方法に関する。さらに本発明は、風力タービン用のブレードと、成形システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
風力タービン用の風力タービンブレードのサイズは大きくなってきているので、最近の風力タービンブレードの多くは複合繊維から製造され、とりわけガラス繊維から製造される。大型の風力タービンブレードを製造するために使用される製造方法は幾つかあり、たとえばレジントランスファモールド法がある。
【0003】
EP1310351A1に、風力タービン用ブレードの製造方法が開示されている。ブレードの下側を形成する金型部品に設けられたガラス繊維の層に、金型コアを配置する。金型コアの頂部に、別のガラス繊維層を配置し、最後に上側金型部品を前記金型コアの上に配置し、繊維層を該金型コアに押し付けることにより、ブレードの形状が形成される。
【0004】
金型部品内の繊維層が硬化したら、金型コアを取り外さなければならない。風力タービンブレードのサイズが大きく、風力タービンブレードの形状が複雑である場合、この金型コアの取り外しは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】EP1310351A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、風力タービンブレードの製造方法を簡略化することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、複合繊維から成る中空部品、とりわけ風力タービン用の中空ブレードを製造するための形状を成形するための、独立請求項に記載の形成方法と、独立請求項に記載の風力タービン用のブレードと、独立請求項に記載の方法を実施するための成型システムとによって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例を、第1の金型部品と第2の金型部品とが分解された状態で示す。
【図2】第1の金型部品に袋体が配置された本発明の一実施例を示す。
【図3】第1の金型部品がひっくり返された、本発明の一実施例を示す。
【図4】第1の金型部品と第2の金型部品とが結合された、本発明の別の実施例を示す。
【図5】第1の金型部品と第2の金型部品とが結合された状態にある、本発明の一実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の1つの側面では、複合繊維から作製される中空部材を製造するための形状を成形するための方法を開示し、とりわけ風力タービン用の中空ブレードの形状を成形するための方法を開示する。本発明の製造方法では、作製される中空部材の第1の形状部分に相当する、第1の金型部品の第1の金型表面上に、第1の複合繊維層を配置し、該中空部材の第2の形状部分に相当する、第2の部分の第2の金型表面に、第2の複合繊維層を配置する。前記第1の複合繊維層上に、収縮した状態で袋体を配置する。
【0010】
前記袋体および前記第1の複合繊維層を前記第1の金型表面に固定する。前記第1の金型表面および前記第2の金型表面が、作製される前記中空部材(たとえば風力タービンブレード)の形状になるように、前記第1の金型部品を前記第2の金型部品に結合させる。前記第1の複合繊維層が前記第1の金型表面に押し付けられ、かつ前記第2の複合繊維層が前記第2の金型表面に押し付けられるように、前記袋体を膨張させることにより、該第1の複合繊維層および該第2の複合繊維層が結合され、作製される前記中空部材の形状を成すようにする。
【0011】
別の実施例では、上記製造方法によって作製された風力タービン用ブレードを開示する。
【0012】
さらに本発明の別の側面では、複合繊維から成る中空部材を作製するための上記製造方法を実施するための成形システムを開示する。
【0013】
前記第1の金型部品は、成形装置の上側金型部品とすることができ、前記第2の金型部品は該成形装置の下側金型部品とすることができる。前記第1の金型部品は前記第1の金型表面を含むことができる。その際には、この第1の金型表面はたとえば、形成すべき中空部材の形状の第1の領域の雌型を成す。第1の金型部品内の第1の金型表面に第1の複合繊維層を配置すると、該第1の複合繊維は中空部材の第1の形状領域を成す。たとえば、前記第1の金型部品が上半分であり、かつ前記第2の金型部品が下半分である場合、該第1の金型表面は、作製される前記中空部材の上半分(たとえばブレードの上半分)の雌型となり、該第2の金型表面は、該中空部材の下半分(ブレードの下半分)の雌型となる。さらに、成形装置が前記第1の金型部品と前記第2の金型部品と、さらに別の金型部品を有し、前記第1の金型表面と前記第2の金型表面と別の金型表面とによって金型表面が構成され、これらの金型表面に2つ以上の個別の複合繊維層を配置することができる。換言すると、作製される中空部材の最終形状は、2つ以上の形状領域に分割することができる。
【0014】
前記複合繊維層の繊維の相互間の配向を一方向または多方向にして、該複合繊維層を形成することができる。さらに、前記複合繊維をウェブ形状、織布状とすることができ、たとえば繊維マットやプリプレグとすることができる。第1の複合繊維層は、第1の金型部品に配置される1つの複合繊維層とするか、または、前記第1の金型部品に配置され相互に重ねられる複数の複合繊維層とすることができ、第2の複合繊維層は、第2の金型部品に配置される1つの複合繊維層とするか、または、前記第2の金型部品に配置され相互に重ねられる複数の複合繊維層とすることができる。
【0015】
前記複合繊維はガラス繊維、炭素繊維、または別のポリマー繊維材料を含むことができる。
【0016】
前記袋体はフレキシブルな中空体、すなわち膨張可能かつ折畳み可能な中空体であり、たとえばゴムや別の弾性材料から作製された中空体である。前記袋体は、収縮可能かつ膨張可能な材質とすることができる。収縮した状態では袋体は折り畳まれて該袋体のサイズは最小になり、膨張された状態では該袋体のサイズは最大になる。中空の袋体内部に加圧された空気を送るか、または該袋体の周囲で減圧を行うことによって、該袋体を膨張状態にすることができる。袋体はたとえば液体に対して、すなわち樹脂に対して不浸透性であり、かつ気密性である。
【0017】
本発明により、従来技術の製法では複合繊維層が配置された金型コアピンを不要にし、たとえば風力タービン用ブレード等である中空部材を一工程で作製することができる。このことは、収縮した袋体および前記第1の複合繊維層を第1の金型部品に固定(secure)することによって実現される。前記袋体と前記第1の複合繊維層との間に接着材(たとえば樹脂)を適用するか、または該袋体と該前記第1の金型表面との間で減圧を行うことにより、該袋体および該第1の複合繊維層を固定することができる。このようにして、前記袋体および第1の複合繊維層が金型表面に固定されると、第1の金型部品を扱うのが非常に簡単になり、該第1の複合繊維層は該袋体によって前記第1の金型表面に押し付けられているので、該第1の複合繊維層が滑って該第1の金型表面に対して相対的に動くことがなくなる。それゆえ、第1の金型部品から袋体および第1の複合繊維層が出てくることなく、該第1の金型部品をひっくり返すことができ、該第1の金型部品と該第2の金型部品とを簡単に組み立てることができ、両金型部品が結合された後、形成すべき中空部材の形状の仕上げを行うための仕上げ工程、たとえば樹脂射出成形や樹脂硬化工程を実施することができる。
【0018】
従来技術の製法では、金型部品内の複合繊維層に中実のコアピンを配置し、その後、該中実のコアピンの上に第2の複合繊維層を配置し、最後に、第2の金型部品を前記第1の金型部品に結合させなければならない。このような製法では、第2の複合繊維層が滑り出してしまうおそれがある。さらに、金型部品のすべての部分を調整するのは複雑である。本発明の製造方法では、第1の金型部品が第2の金型部品に結合されるときには、第1の複合繊維層および膨張可能な袋体はすでに固定されており、該第1の金型部品に位置整合されている。それゆえ、第1の金型部品に対して相対的に第1の複合繊維層が滑るのを防止することができる。膨張可能な袋体によって、複合繊維層を金型部品の表面に押し付けることができ、袋体および第1の複合繊維層を第1の上側金型部品に固定するために中実のコアピンを使用する必要はなくなる。
【0019】
さらに、複合繊維層が硬化した後は、袋体を収縮させて該袋体のサイズを縮小することにより、作製された中空部材の内部空洞から該袋体を取り外すのを容易にすることができる。
【0020】
このことは、たとえば風力タービン用のブレード等である複雑な部材を製造するとき、たとえば複雑な部材を長さ方向にねじるときに有利である。風力タービンブレードをねじる工程を行う場合、従来の中実のコアピンを取り外すのが複雑になってしまう。膨張可能な袋体を使用することにより、完成した風力タービンブレードの内部空洞からこの袋体を取り外すのが容易になる。
【0021】
本発明の別の実施例では、袋体および第1の複合繊維層が減圧(すなわち真空)によって第1の金型表面に固定されるように、該袋体と該第1の金型表面との間の空気を吸出することによって、該袋体を固定する。この実施例ではこのことによって、空気の吸出を停止したときに袋体を容易に取り外せるようになる。付加的または択一的に、袋体および/または第1の複合繊維層をたとえば接着材(たとえば樹脂)によって第1の金型表面に固定することができる。固定するためにさらに付加的に外部から、たとえば中実のコアピンによって押さえつけるのを、不要にすることができる。
【0022】
別の実施例では、第1の複合繊維層が第1の金型表面の縁辺からはみ出す余剰部分を成すように、該第1の複合繊維層を第1の金型表面より大きくする。この余剰部分は、余剰長さ、突出部分またははみ出し部分となる。とりわけ第1の複合繊維層のマージン部分において余剰部分を使用することにより、第1の金型表面の領域を画定し各形状部分の寸法に相当する金型部品の縁辺と、第2の複合繊維層とを重ねることができる。前記余剰部分は動くことができ(たとえば折畳み可能)、袋体によって第1の金型表面に固定されることはない。
【0023】
別の実施例では、第1の金型部品と第2の金型部品とを結合させる際に、前記余剰部分が該第2の金型部品内の第2の複合繊維層に部分的に重なるように、該第1の金型部品を該第2の金型部品に整合させる。このことにより、第1の複合繊維層と第2の複合繊維層とが接触する接触領域(境界領域)が強化され、その結果、より頑強な部材を製造することができる。第1の金型部品を第2の金型部品に整合させる際には、結合される両金型部品間に形成された空洞内部に該余剰部分が曲げられ、その結果、余剰部分が第2の複合繊維層と重なる。
【0024】
本発明の別の実施例では、前記第1の金型部品を前記第2の金型部品に整合させる際に、前記余剰部分が重力によって所定の位置に整合するように該第1の金型部品を配置する。次に、前記第1の金型部品と前記第2の金型部品とを組み合わせ、前記余剰部分が前記所定の位置にきたときに、該余剰部分が部分的に、該第2の金型部品内の第2の複合繊維層に重なるようにする。たとえば、第1の金型部品をひっくり返すと、該第1の金型部品に固定されていない余剰部分は、重力によってほぼ垂直方向に整合され、第1の金型部品と第2の金型部品とを組み合わせたときに、前記余剰部分の端部は第2の複合繊維層に接触する。第1の金型部品と第2の金型部品とをさらにくっつけると、前記余剰部分の端部は、該第1の金型部品と該第2の金型部品との間に形成された内部空洞に向かって、第2の複合繊維層に沿ってスライドし、最終的な状態では、第1の金型部品と第2の金型部品とが最終的に固定されると、前記余剰部分は第2の複合繊維層と重なるオーバーラップ部分を形成する。
【0025】
別の実施例では、前記袋体を膨張させる際に、前記余剰部分が前記第2の金型部品内の第2の複合繊維層に部分的に重なるように、該袋体を膨張させて該余剰部分を持ち上げる。この実施例では、前記袋体の潰れた表面に前記余剰部分が来るように、該余剰部分を折り畳むことができる。袋体を膨張させると、該袋体が最終位置まで膨張するまで前記余剰部分は該袋体の表面と一緒に動き、最終位置では、該余剰部分は第2の複合繊維層に押し付けられる。
【0026】
本発明の製造方法の別の実施例では、第2の複合繊維層が第2の金型表面の縁辺からはみ出す別の余剰部分を成すように、該第2の複合繊維層を第2の金型表面より大きくする。第1の金型部品と第2の金型部品とを結合させる際にはさらに、前記別の余剰部分が該第1の金型部品内の第1の複合繊維層に部分的に重なるように、該第1の金型部品を該第2の金型部品に整合させる。
【0027】
本発明の製造方法の別の実施例では、第1の金型部品と第2の金型部品とを結合させる前に、ウェブを第1の複合繊維層または第2の複合繊維層に取り付け、該第1の金型部品と該第2の金型部品とが結合されたときにウェブが第1の複合繊維層と第2の複合繊維層とに結合されて、作製される中空部材が強化されるようにする。
【0028】
前記ウェブは頑強または硬質の部材であり、たとえば木材、金属、複合繊維材料または別の硬質かつ非弾性の材料から作製される。前記ウェブを作製される中空部材の内部空洞内に取り付け、前記第1の複合繊維層および前記第2の複合繊維層に接触させることにより、両複合繊維層間に力が伝達し、このことによって複合繊維部材を強化することができる。
【0029】
前記ウェブは、たとえば溶接や接着によって第1の複合繊維層に固定することができる。さらに、第1の複合繊維層および/または第2の複合繊維層の複合繊維材料にウェブを包み込むこともできる。
【0030】
本発明の製造方法の別の実施例では、第1の金型部品と第2の金型部品とを結合させる前に、第1の複合繊維層にウェブを取り付け、かつ第2の複合繊維層にウェブを取り付けることにより、該第1の金型部品と該第2の金型部品とが結合されたときに前記ウェブと前記別のウェブとが結合され、作製される中空部材が強化されるようにする。前記ウェブおよび前記別のウェブはそれぞれ、たとえば、各複合繊維層が取り付けられる第1の面を含む。前記ウェブおよび前記別のウェブはさらに、両ウェブが相互に接触する際に接触部分となる別の面を含むこともできる。このことにより、前記ウェブと前記別のウェブとの間に力が伝達し、両複合繊維層間に力が伝達して、作製される中空部材を強化することができる。
【0031】
別の実施例では、袋体を膨張させる際に、a)該袋体と第1の金型表面との間の空気を吸出し、b)該袋体と第2の金型表面との間の空気を吸出する。このことにより、袋体は第1の複合繊維層を第1の金型表面に押し付け、第2の複合繊維層を第2の金型表面に押し付ける。前記袋体は膨張された状態になったとき、作製される中空部材の形状になるようにすることができる。代わりの方法として、前記袋体を弾性とし、その結果、該袋体の形状は任意の形状を有し、かつ、作製すべき中空部材の最終形状が得られるまで、かつ、該(弾性の)袋体の形状がそれ自体で第1の金型表面の形状と第2の金型表面の形状とに合うまで、該袋体から空気を吸出するかまたは該袋体に空気を送り込むことによって、該弾性の袋体を膨張させたときの該袋体の形状がそれ自体で調整可能となる。
【0032】
第1の金型部品および/または第2の金型部品は、各金型表面から空気を吸出するための真空ポンプを接続するための接続部を有することができる。これにより、たとえば袋体と第1の金型表面との間の空気を吸出することによって、該袋体が膨張する。換言すると、袋体の内部と外部との間の圧力差を用いて袋体を膨張させることができる。
【0033】
別の実施例では、袋体を膨張させる際に、該袋体が第1の複合繊維層を第1の金型表面に押し付け、第2の複合繊維層を第2の金型表面に押し付けるように、加圧された空気を該袋体内に送り込む。加圧された空気を送り込むことにより、袋体の内部と外部との間に圧力差が得られる。
【0034】
さらに本発明の別の側面では、複合繊維から成る中空部材を作製するための上記製造方法を実施するための成形システムを開示する。前記成形システムは、第1の金型部品と第2の金型部品と袋体とを含む。
【0035】
本発明では、たとえばタービン中空ブレード等である部材を1つの成形工程だけで作製できる次のような製造方法、すなわち、製造のために中空部材内に設けられる中実のコアピンを不要にできる製造方法を提供する。
【0036】
第1のステップでは、ブレードを成すたとえばガラス繊維層等である複合繊維層を、2つの別個の金型部品内に配置する。これら2つの金型部品はそれぞれ近似的に、前記ブレードの形状の半分を成すことができる。たとえば、タービンブレードの前縁と後縁とを結ぶ翼形中心線(main line)で風力タービンブレードの形状を分割し、第1の金型部品はタービンブレード形状の上半分に相当する金型表面を含み、第2の金型部品の第2の金型表面はタービンブレードの下半分に相当するようにすることができる。
【0037】
ブレードの各半分に対応する各金型部品に、ガラス繊維層を配置する。これらのブレード半部に1つまたは複数のウェブを取り付けることができる。このウェブにたとえばガラス繊維材料が巻きつけられることにより、該ウェブがブレード構造体の他の部分に確実に固定される。
【0038】
さらに、金型表面のうち1つの辺からはみ出す余剰ガラス繊維材料を設けることもできる。
【0039】
本発明の製造方法の第2のステップでは、実質的に複合繊維層の金型表面全体に、樹脂を通さない気密の1つまたは複数の袋体を、とりわけ第1の金型部品に設ける。これはたとえば、ガラス繊維材料の余剰部分も含む。
【0040】
袋体は少なくとも、第1の複合繊維層の主要部分をカバーするが、とりわけ袋体は、第1の複合繊維層の余剰部分をカバーしない。その結果、該余剰部分が未だ動けるようにする。
【0041】
袋体の表面または複数の袋体の合計の表面は、第1の複合繊維層に接触する面積の少なくとも2倍である表面積を有し、袋体が膨張したときに、第2の複合繊維層の相応の部分もカバーするようにしなければならない。
【0042】
第3のステップではとりわけ、第1の金型表面と袋体との間のスペースを真空にする。第1の金型表面と袋体との間のスペースを真空にする(減圧する)ことにより、該袋体は第1の金型表面へ引っ張られ、第1の複合繊維層を該第1の金型表面に押し付け、該袋体が第1の複合繊維層の表面積全体をカバーするのが完全でなくても、該第1の複合繊維層および該袋体は第1の金型に定位置で固定されて保持される。
【0043】
第4のステップでは、第1の金型部品を回転させてひっくり返し、たとえば該第1の金型部品の長手軸を中心として180°回転させて、たとえば袋体と第1の複合繊維層とを含めて該第1の金型部品を上下反対にする。このことにより、自由に動くことができる余剰部分は重力によって、第1の金型部品からほぼ垂直方向にぶら下がる。
【0044】
第5のステップでは、第1の金型部品を下降させて、第2の金型部品に対して位置決めする。このことによって余剰部分は、第1の金型部品と第2の金型部品との間に形成された空洞内に折り込まれ、該余剰部分は第2の金型内の第2の複合繊維材料の内表面に対して位置整合される。
【0045】
第6のステップでは、袋体を広げて膨張させ、第1の金型部品と第2の金型部品との間の内部空洞全体、すなわち、第1の複合繊維層と第2の複合繊維層との間の内部空洞全体を満たす。このことにより、袋体はこれらの複合繊維層を各金型表面に保持する。
【0046】
とりわけ袋体の表面と第1の金型表面および第2の金型表面との間の空洞を減圧することにより(真空にすることにより)、袋体を広げることができる。また、加圧された空気を袋体内部に送り込むことによっても、袋体を膨張させることができる。
【0047】
第1の金型部品と第2の金型部品とを気密接続し、内部空洞を気密封止するために、該第1の金型部品と該第2の金型部品との間にシールを挿入することができる。
【0048】
袋体を広げて膨張させる際、第1の金型表面と第2の金型表面と該袋体との間のスペースを減圧すること(真空にすること)により、樹脂射出成形法によって第1の複合繊維層と第2の複合繊維層とに樹脂が射出されるようにすることができる。最後に、中空部材の硬化およびキャスティングを行い、完成された中空部材を金型部品から容易に取り外すことができる。
【0049】
たとえば袋体を膨張させて広げることにより、前記余剰部分を最終位置まで持ち上げることができる。余剰繊維部分は、両複合繊維層のいずれにも形成することができる。中空部材が風力タービンのブレードである場合、たとえば第1の複合繊維層および/または第2の複合繊維層に、たとえば成形すべきブレードの前縁または後縁に、余剰部分を形成することができる。
【0050】
本発明の実施形態は、異なる対象に関連して記載されたものであることに留意されたい。特に、いくつかの実施形態については装置に関する請求項を参照して説明したが、他の実施形態については方法に関する請求項を参照して説明した。しかしながら当業者であれば、前述の記載および後述の記載から、ことわりが無い限り、1つの対象に関連する特徴のあらゆる組み合わせの他に、それとは異なる対象に関連する複数の特徴の組み合わせ、殊に装置を特定する請求項に記載の特徴と、方法を特定する請求項に記載の特徴の組み合わせも本願の開示内容と見なせることが分かる。
【実施例】
【0051】
以下で説明する実施例から、本発明の上述の側面および別の側面を理解することができる。実施例を参照してこれらを説明する。以下では実施例を参照して本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0052】
各図は概略的に示したものである。複数の異なる図において、類似または同一の構成要素には同じ参照番号を付してあることに留意されたい。
【0053】
図1〜図5に、複合繊維から作製された中空部材を製造するための形状を成形するための方法を示しており、とりわけ風力タービン用の中空ブレードの形状を成形するための方法を開示する。
【0054】
図1に、第1の金型部品110と第2の金型部品120とを示す。第1の金型部品110の第1の金型表面に、第1の複合繊維層101が配置されている。第1の金型表面は、作製される中空部材の第1の形状部分に相当する。たとえば中空部材は風力タービンのブレードであり、第1の形状部分は、作製される風力タービン用ブレードの(上)半分を成すことができる。
【0055】
第2の金型部分120の第2の金型表面に第2の複合繊維層102を配置することができる。この第2の金型表面は、作製される中空部材の第2の形状部分に相当する。第2の形状部分は、作製される風力タービン用ブレードの(下)半分を成すことができる。
【0056】
さらに、図1に示されているように、作製される中空部材を強化するためのウェブ105を、第1の金型部品に取り付けることができる。第1の金型部品110に1つまたは複数のウェブ105を取り付け、第2の金型部品120に1つまたは複数の別のウェブ106を取り付けることができる。ウェブ105,106は、各複合繊維層101,102に接着、溶接または織り込むことができる。第1の金型表面および第2の金型表面は、各縁辺104によって画定されている。図1に示されているように、第1の複合繊維層101は、各金型表面から外側の方向に縁辺104からはみ出す余剰部分103を有することができる。第1の金型表面によって決定される第1の形状部分より第1の複合繊維層101を大きく作製すると、余剰部分103が形成される。
【0057】
図2に、後続のステップにおける第1の金型部品110を示す。第3の複合繊維層101に袋体201を収縮した状態で配置する。図2に示されているように、第1の複合繊維層101に、収縮した状態の袋体201を複数配置することもできる。余剰部分103は袋体201によって被覆されることはなく、該余剰部分103は自由に動くことができる。ウェブ105は、第2の複合繊維層102の表面に接触するように形成することができる。またはウェブ105は、第2の複合繊維層102に取り付けられた別のウェブ106に接触する面を含むことができる。前記ウェブ105の面または前記別のウェブ106の面が袋体201によって被覆されることはない。
【0058】
図3に、ひっくり返され上下逆さまになった第1の金型部品110を示す。自由に動くことができる余剰部分103は一般的に、たとえば重力によって、垂直方向に位置整合される。袋体201および第1の複合繊維層101は第1の金型部品110の第1の金型表面に固定されている。前記袋体201および第1の複合繊維層101は、たとえば両部材を(樹脂によって)接着するか、または該袋体201と第1の金型表面との間を減圧することによって固定することができる。したがって、袋体201、ウェブ105および第1の複合繊維層101が重力によって第1の金型部品110から落ちることはない。さらに、袋体201とウェブ105と第1の複合繊維層101とが相対的に動くことが阻止されるので、後で再調整する必要がなくなる。
【0059】
図4に、第1の金型部品110と第2の金型部品120とが接触する前の状態を示す。余剰部分103はいずれも、別の装置によって内側に折り畳まれている。さらに、余剰部分103の端部面は第2の複合繊維部分102に接触することができる。このことにより、第1の金型部品110を第2の金型部品120に向かって動かす間、余剰部分103は、第1の金型部品110と第2の金型部品120との間に形成された内部空洞の方向に自然に動く(滑り落ちる)。
【0060】
図5に、相互に接触する第1の金型部品110と第2の金型部品120とを示す。図5に示されているように、第1の複合繊維層101の余剰部分103が第2の複合繊維層102に重なる。とりわけ余剰部分103は、第1の金型部品110および第2の金型部品120との境界領域が存在する位置において、第2の複合繊維層102に重なる。とりわけ、第1の金型表面が、作製されるブレードの上半分を形成し、かつ第2の金型表面が該ブレードの下半分を形成する場合、第1の金型部品110と第2の金型部品120とが接触する境界領域は該ブレードの前縁および後縁の領域に形成される。
【0061】
図5に示されているように、第1の金型部品110と第2の金型部品120とが結合された状態では、ウェブ105と別のウェブ106とが接触しており、このことにより、第1の複合繊維層101から第2の複合繊維層102へ力が伝達することができるので、ウェブ105と別のウェブ106とによって、作製される中空部材が強化される。第1の金型表面と第2の金型表面との間のスペースに形成された内部空洞、袋体201が膨張され、該袋体201は第1の複合繊維層101および第2の複合繊維層102をそれぞれの金型表面に押し付ける。袋体201は、たとえば、加圧された空気を各袋体201内部に噴射することによって膨張させることができる。別の有利な実施形態では、真空ポンプを金型部品110,120に接続し、袋体201の表面と第1の金型表面との間のスペース、および、該袋体201の表面と第2の金型表面との間のスペース(および、袋体201と各ウェブ表面との間のスペース)から、空気を吸出することができる。このことにより、各袋体201の内部容積内の圧力と、該袋体201と各金型表面との間の外側スペース内の圧力との間に圧力差が発生し、この圧力差によって該袋体201は膨張し、各複合繊維層を金型表面に向かって押圧する。空気の吸出を最大限にするために、第1の金型部品110と第2の金型部品120とが接触する境界領域に封止部材501を取り付け、該第1の金型部品110と第2の金型部品120との間に形成された内部空洞を封止することができる。
【0062】
さらに、袋体201と第1の金型表面との間、該袋体201と第2の金型表面との間、および、該袋体201とウェブ105,106との間を減圧する場合、樹脂を射出して複合繊維層101,102に該樹脂を浸透させることができる。
【0063】
樹脂を射出した後は、複合繊維層101,102を硬化して、最終形状と、最終製品である頑強なたとえばブレード等の中空部材を作製することができる。複合繊維層101,102の硬化後、袋体201と第1の金型表面および第2の金型表面との間の減圧を低下させて該袋体201を潰すことができる。袋体201が潰れた状態では、袋体201の容積は縮小されて小さくなるので、作製された中空部材の内部空洞から該袋体201を容易に取り出すことができる。
【0064】
本明細書中、"〜を有する"なる語はそれ以外の要素を有することを排除せず、"1つの"なる語は当該の要素が複数個設けられることを排除しない。異なる実施形態に関して説明した要素を組み合わせることもできる。また、特許請求の範囲に記載されている参照番号は請求の範囲を制限するものではないと解すべきである。
【符号の説明】
【0065】
101 第1の複合繊維層
102 第2の複合繊維層
103 余剰部分
105 ウェブ
110 第1の金型部品
120 第2の金型部品
201 袋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合繊維から作製される中空部材の形状を成形するための方法であって、
前記中空部材はとりわけ、風力タービン用の中空ブレードであり、
前記方法は、
・前記中空部材の第1の形状部分に相当する、第1の金型部品(110)の第1の金型表面に、第1の複合繊維層(101)を配置する、第1の複合繊維層配置ステップと、
・前記中空部材の第2の形状部分に相当する、第2の金型部品(120)の第2の金型表面に、第2の複合繊維層(102)を配置する、第2の複合繊維層配置ステップと、
・前記第1の複合繊維層(101)上に、収縮された状態の袋体(201)を配置する袋体配置ステップと、
・前記袋体(201)と前記第1の複合繊維層(101)とを前記第1の金型表面に固定する、固定ステップと、
・前記第1の金型表面と前記第2の金型表面とが前記作製すべき中空部材の形状になるように、前記第1の金型部品(110)を前記第2の金型部品(120)に結合させる、結合ステップと、
・前記第1の複合繊維層(101)が前記第1の金型表面に押し付けられ、かつ前記第2の複合繊維層(102)が前記第2の金型表面に押し付けられ、該第1の複合繊維層(101)と該第2の複合繊維層(102)とが結合されて前記作製すべき中空部材の形状を成すように前記袋体(201)を膨張させる、膨張ステップと
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記固定ステップは、前記袋体(201)と前記第1の複合繊維層(101)とが減圧によって前記第1の金型表面に固定されるように該袋体(201)と前記第1の金型表面との間の空気を吸出する、第1の空気吸出ステップを有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の複合繊維層(101)は前記第1の金型表面より大きく、該第1の金型表面の縁辺(104)からはみ出る余剰部分(103)を成す、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記結合ステップは、
・前記余剰部分(103)が、前記第2の金型部品(120)内の前記第2の複合繊維層(102)に部分的に重なるように、前記第1の金型部品(110)を前記第2の金型部品(120)に整合させる、第1の整合ステップ
を有する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記第1の整合ステップは、
・前記余剰部分(103)が重力によって所定の位置に整合されるように前記第1の金型部品(110)を配置する、第1金型部品配置ステップと、
・前記余剰部分(103)が前記所定の位置にきたときに該余剰部分(103)が、前記第2の金型部品(120)内の前記第2の複合繊維層(102)に部分的に重なるように、前記第1の金型部品(110)と該第2の金型部品(120)とを組み合わせる、金型部品組み合わせステップと
を有する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記膨張ステップは、
・前記余剰部分(103)が、前記第2の金型部品(120)内の前記第2の複合繊維層(102)に部分的に重なるように、前記袋体(201)を膨張させることによって該余剰部分(103)を持ち上げる、余剰部分持ち上げステップ
を有する、請求項3記載の方法。
【請求項7】
前記第2の複合繊維層(102)は前記第2の金型表面より大きく、該第2の金型表面の縁辺(104)からはみ出る別の余剰部分(103)を成し、
前記結合ステップは、
・前記別の余剰部分(103)が部分的に、前記第1の金型部品(120)内の前記第1の複合繊維層(102)に重なるように、前記第1の金型部品(110)を前記第2の金型部品(120)に整合させる、第2の整合ステップ
を更に有する、請求項3から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記結合ステップの前に、
・前記第1の金型部品(110)と前記第2の金型部品(120)とが結合されたときにウェブ(105)が前記第1の複合繊維層(101)および前記第2の複合繊維層(102)に結合されて前記中空部材が補強されるように、該ウェブ(105)を前記第1の複合繊維層(101)または前記第2の複合繊維層(102)に取り付ける、ウェブ取り付けステップ
を更に有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記結合ステップの前に、
・前記第1の金型部品(110)と前記第2の金型部品(120)とが結合されたときにウェブ(105)と別のウェブ(106)とが結合されて前記中空部材が補強されるように、該ウェブ(105)を該第1の複合繊維層(101)に取り付け、該別のウェブ(106)を該第2の複合繊維層(102)に取り付ける、ウェブ取り付けステップ
を更に有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記膨張ステップは、
・前記袋体(201)が前記第1の複合繊維層(101)を前記第1の金型表面に押し付け、かつ前記第2の複合繊維層(102)を前記第2の金型表面に押し付けるように、
a)該袋体(201)と前記第1の金型表面との間の空気と、
b)該袋体(201)と前記第2の金型表面との間の空気と
を吸出する、第2の空気吸出ステップ
を有する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記膨張ステップは、
・前記袋体(201)が前記第1の複合繊維層(101)を前記第1の金型表面に押し付け、かつ前記第2の複合繊維層(102)を前記第2の金型表面に押し付けるように、加圧された空気を該袋体(201)内に送り込む、空気送入ステップ
を有する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載の方法によって作成された、風力タービン用のブレード。
【請求項13】
・第1の金型部品(110)と、
・第2の金型部品(120)と、
・袋体(201)と
を有する、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法を実施するための成形システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−82832(P2012−82832A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225821(P2011−225821)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】