説明

風力発電システムの発電出力スケジュール制御方法

【課題】発電出力スケジュール設定を簡易にして、風車発電機の脱落またはその運転再開にも所期の発電出力を確保できる。
【解決手段】風車発電機#1〜#10をグループ化し、サーバ装置100は風車発電機グループ単位での発電出力スケジュールを設定する。各風車発電機別にそれぞれ設けた各情報通信制御端末は、同じグループ内の情報通信制御端末の1つをマスタ、他をスレーブとするマスタ/スレーブの設定とマスタ/スレーブの切替えができ、サーバ装置で設定した自端末が所属する風車発電機の発電出力スケジュール制御情報および他の端末が所属する各風車発電機の発電出力スケジュール制御情報をそれぞれ取得し、現在のマスタによるグループ内各風車発電機の発電出力の分担制御およびグループ内の風車発電機の脱落とその運転再開に対する分担制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電システム(Wind Farm Management System)に係り、特に風車発電機の発電出力スケジュール制御に関する。
【背景技術】
【0002】
大規模の風力発電システムは、風車と発電機を組み合わせた風車発電機を多数台設備し、各風車発電機の発電出力を電力系統に連系させる。風力発電システムの発電出力は、気象予報などから予測した発電出力スケジュールに従って制御、さらには風車発電機の運転・停止で制御し、電力の需要と供給のバランスを調整する。
【0003】
発電出力スケジュールに従った風車発電機の出力制御には、風車発電機毎にスケジュール設定してその発電出力を制御する方式、または多数の風車発電機を複数のグループに分け、各グループをそれぞれ1基の風車発電機とみなしてグループ単位でスケジュール設定してその発電出力を制御する方式がある(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3817124号
【特許文献2】特開2009−219315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の発電出力スケジュール制御には以下の問題があった。
【0006】
(1)風車発電機の発電出力スケジュールを風車発電機毎に設定する場合、大規模な風力発電システムにおいては風車発電機毎に同様の設定を繰り返す必要があり、スケジュール設定および制御が煩雑になる。
【0007】
また、風車発電機毎のスケジュール制御では、当該風車発電機が故障等により脱落した場合、風力発電システム全体の発電計画に影響を与えると共に、連系する電力系統の送配電計画の変更も必要となる。
【0008】
(2)風車発電機グループのグループ単位の出力制御方式においては、上記のスケジュール設定の「煩雑さ」は軽減される。しかし、風車発電機グループ内の1基の風車発電機に発電不能や故障等が発生すると、当該グループの発電出力が設定されたスケジュールとは異なるものになり、システム全体の発電計画に影響を与える。
【0009】
(3)発電出力スケジュールは、発電系統全体の運用計画や運転指令を生成する上位コンピュータシステムの発電指令用サーバ装置などで設定され、このサーバ装置から風力発電システムの監視制御所のコンピュータに与える指令に従って該コンピュータによる風車の監視制御がなされる。このような制御システムでは、サーバ装置の異常発生が風力発電システムの発電出力制御にも影響を及ぼす。
【0010】
本発明の目的は、発電出力スケジュール設定を簡易にして、風車発電機の脱落またはその運転再開にも所期の発電出力を確保でき、システム全体の発電計画への影響を回避できる発電出力スケジュール制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記の課題を解決するため、風力発電システム内の風車発電機をグループ化し、サーバ装置は風車発電機グループ単位での発電出力スケジュールを設定し、各風車発電機別にそれぞれ設けた各情報通信制御端末は、同じグループ内の情報通信制御端末の1つをマスタ、他をスレーブとするマスタ/スレーブの設定とマスタ/スレーブの切替えができ、サーバ装置で設定した自端末が所属する風車発電機の発電出力スケジュール制御情報および他の端末が所属する各風車発電機の発電出力スケジュール制御情報をそれぞれ取得し、現在のマスタによるグループ内各風車発電機の発電出力の分担制御およびグループ内の風車発電機の脱落とその運転再開に対する分担制御を行うようにしたもので、以下の方法を特徴とする。
【0012】
(1)風車発電機を多数台設備し、各風車発電機の発電出力を予測した発電出力スケジュール制御して電力系統に連系させる風力発電システムの発電出力スケジュール制御方法であって、
前記各風車発電機の発電出力スケジュールを設定するサーバ装置と、
各風車発電機別にそれぞれ設けられ、前記サーバ装置から通信回線を通して設定された前記発電出力スケジュールに従って所属する風車発電機の発電出力を制御できる情報通信制御端末を備え、
前記サーバ装置は、複数台の風車発電機をグループ化し、この風車発電機グループ単位で前記発電出力スケジュールを設定する過程を備え、
前記各情報通信制御端末は、同じグループ内の情報通信制御端末の1つをマスタ、他をスレーブとするマスタ/スレーブの設定とマスタ/スレーブの切替えができる過程と、サーバ装置で設定した自端末が所属する風車発電機の発電出力スケジュール制御情報および他の端末が所属する各風車発電機の発電出力スケジュール制御情報をそれぞれ取得する過程と、現在のマスタによるグループ内各風車発電機の発電出力を分担制御する過程を備えたことを特徴とする。
【0013】
(2)前記サーバ装置は、
グループ化する風車発電機のグループ番号とそれに属する風車発電機番号を設定する過程と、
風力発電システムに共通の発電出力スケジュール制御の開始から終了までの年月日時分情報をスケジュール制御期間として設定する過程と、
風車発電機別にした制御内容(発電電力、運転期間などの情報)をグループ別に設定する過程と、
同一時間帯にあって、同一の風車発電機または風車発電機グループに対して発電出力スケジュールの重複の有無をチェックする過程と、
前記発電出力スケジュールに重なりがあった場合にどちらの発電出力スケジュールを優先するかを設定する過程と、
設定された風車発電機別の発電出力スケジュールを、任意の時間間隔の制御に展開する過程と、
前記設定した発電出力スケジュール情報を各風車発電機に所属する前記情報通信制御端末にそれぞれ送信する過程と、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
(3)前記サーバ装置が1基の風車発電機を複数のグループに所属させた場合、
前記情報通信制御端末は、グループに設定した発電出力スケジュールの優先順位に従って、当該風車発電機の発電出力スケジュール制御を行う過程を備えたことを特徴とする。
【0015】
(4)グループ内の風車発電機に脱落が発生した場合、脱落した風車発電機の情報通信制御端末がマスタの場合には他のスレーブをマスタに切り替えて発電出力スケジュール制御を継続し、脱落した風車発電機の情報通信制御端末がスレーブの場合には脱落した風車発電機の発電出力スケジュール分をグループ内の他の風車発電機に分担させて制御を継続する過程を備えたことを特徴とする。
【0016】
(5)前記マスタとなる情報通信制御端末は、脱落していた風車発電機が運転再開した場合、当該風車発電機が脱落する前の発電出力スケジュール分に戻す分担制御を行う過程を備えたことを特徴とする。
【0017】
(6)前記マスタとなる情報通信制御端末は、風車発電機の発電出力スケジュール制御は、各風車発電機が正常な場合、脱落した風車発電機がある場合、または運転再開した風車発電機がある場合、それぞれ設定または演算した分担量を制御目標値にしてフィードバック制御する過程を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上のとおり、本発明によれば、風力発電システム内の風車発電機をグループ化し、サーバ装置は風車発電機グループ単位での発電出力スケジュールを設定し、各風車発電機別にそれぞれ設けた各情報通信制御端末は、同じグループ内の情報通信制御端末の1つをマスタ、他をスレーブとするマスタ/スレーブの設定とマスタ/スレーブの切替えができ、サーバ装置で設定した自端末が所属する風車発電機の発電出力スケジュール制御情報および他の端末が所属する各風車発電機の発電出力スケジュール制御情報をそれぞれ取得し、現在のマスタによるグループ内各風車発電機の発電出力の分担制御およびグループ内の風車発電機の脱落とその運転再開に対する分担制御を行うようにしたため、発電出力スケジュール設定を簡易にして、風車発電機の脱落またはその運転再開にも所期の発電出力を確保でき、システム全体の発電計画への影響を回避できる。
【0019】
具体的には、
・風車発電機単体ではなく、グルーピングされた数台の風車発電機に対する発電出力スケジュールを設定できるため、多数台の風車発電機を設備するシステムにおける発電出力スケジュール設定が簡易になる。
【0020】
・発電出力スケジュールに優先順位を持たせるため、発電出力スケジュール設定時の制約をなるべく減らすことができる。
【0021】
・グループに対する発電出力スケジュール制御ができ、グループ内の風車発電機のいずれかが制御不可(脱落)となった場合に、正常な風車発電機が制御不可となった風車発電機の発電出力を分担することで、安定した電力供給が実現できる。
【0022】
・情報通信制御端末で発電出力スケジュール制御を実現することで、発電計画を立てるサーバ装置に異常が発生しても、送信済み分の発電出力スケジュール分については自律分散によるスケジュール制御が可能となる。
【0023】
・発電出力スケジュールのグループ単位でマスタ/スレーブを構成する情報通信制御端末でスケジュール制御を実現することで、グループ内のマスタに異常が発生しても、スレーブがマスタに切り替わり、マルチバックアップによるスケジュール制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態を示す風力発電システムの構成例。
【図2】サーバ装置の発電出力スケジュールの設定フロー。
【図3】情報通信制御端末の発電出力スケジュールの取得フロー。
【図4】情報通信制御端末のマスタ/スレーブ切替えによる制御フロー。
【図5】各情報通信制御端末の制御フロー。
【図6】脱落した風車発電機の発電出力振り分けの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の実施形態を示す風力発電システムの構成例である。地域別や区域別に分散配置される風車発電機#1〜#10は、例えば、それらの各発電機の発電出力を整流器で直流に変換し、この直流電力をDC/DCコンバータで昇圧して二次電池の充電電力またはパワーコンディショナに直流電源として供給し、パワーコンディショナの交流出力を電力系統に連系させるための電力変換装置をそれぞれ備える。
【0026】
各風車発電機#1〜#10は、上記の発電電力を制御するためのパワーコンディショナ等の電力変換装置の制御手段として、それぞれ情報通信制御端末(図1中の黒丸印)を備える。これらの情報通信制御端末は、通信ネットワーク(図示ではLAN)を通してサーバ装置100との間の情報通信機能を備え、サーバ装置100から発電出力スケジュール制御情報を取得し、この発電出力スケジュールに従った電力変換装置の制御によって風車発電機#1〜#10に所期の発電出力を得る。
【0027】
ここで、各風車発電機#1〜#10は1基から数基で任意にグルーピングを可能とし、複数台の風車発電機でグルーピングした場合は、グループ内の各風車発電機で発電出力を分担可能とする。図1には、風車発電機グループG1、G2、G3を設定し、風車発電機グループG1では風車発電機#4〜#6でグループ化し、風車発電機グループG2では風車発電機#1〜#4でグループ化し、風車発電機グループG3では風車発電機#9と#10でグループ化した場合を示す。
【0028】
また、1基の風車発電機を複数のグループに所属させることも可能とする。図1では、風車発電機#4をグループG1とG2の両グループに所属させた場合を示す。このような場合にはスケジュールの優先順位に従っていずれかのスケジュールを実行する。例えば、風車グループG1のスケジュールの優先順位が高ければ風車#4は風車グループG1に所属して風車グループG1の制御を実行する。風車グループG2は風車#4を脱落した風車として扱い、風車#1〜#3でスケジュール制御を行う。
【0029】
これらグループG1〜G3には、グループ単位で、各情報通信制御端末による発電出力スケジュール制御を行う。以下、発電出力スケジュール制御の詳細を、特にグループの発電出力スケジュール制御の詳細を説明する。
【0030】
(1)サーバ装置による発電出力スケジュール設定
サーバ装置100は、風車発電機等の基本設備情報(発電能力、運転可/不可など)と、気象条件(風向、風速予報等)が入力されることで、風車発電機別に発電出力スケジュールを設定する。図2はサーバ装置に制御機能として組み込まれる発電出力スケジュール設定フローを示す。
【0031】
(S1)風車発電機グループの設定:サーバ装置100は、風力発電システム内の数十基の風車発電機を1基から数基で任意にグルーピングする場合のグループ番号とそれに属する風車発電機番号を設定する。
【0032】
(S2)スケジュール制御期間の設定:サーバ装置100は、風力発電システムに共通の発電出力スケジュール制御の開始から終了までの年月日時分情報をスケジュール制御期間として設定する(例えば10分単位とする)。この制御期間は1回のスケジュールだけでなく、繰り返し設定も可能とする。
【0033】
(S3)制御内容の設定:風車発電機別にした制御内容(発電電力、運転期間などの情報)を設定し、この設定をグループ別にした設定を行う。
【0034】
(S4)スケジュールの重複チェック:同一時間帯にあって、同一の風車発電機または風車発電機グループに対してスケジュールの重なりの有無をチェックする。
【0035】
(S5)スケジュールの優先順位設定:スケジュールに重なりがあった場合にどちらのスケジュールを優先するかを設定する。
【0036】
この優先順位設定は、新しく設定したスケジュールを最も優先順位を高くすることで、チェックを簡略化するとともに、設定の自由度も高めることができる。なお、上記の重複チェック機能(S4)を利用して、ユーザ判定による優先順位の変更も可能とする。また、処理(S4)と(S5)は必要に応じて実施可能とする。
【0037】
(S6)発電出力スケジュール内容の展開:サーバ装置100は設定された風車発電機別の発電出力スケジュールを、任意の時間間隔の制御、例えば10分間隔の制御に展開する。展開した風車発電機別の発電出力スケジュールを画面表示して、ユーザが確認可能とする。
【0038】
(S7)発電出力スケジュール情報の送信:サーバ装置100は、風車発電機別に展開した発電出力スケジュール情報を各風車発電機#1〜#10に実装された情報通信制御端末にそれぞれ送信する。
【0039】
この送信は、自律分散、マルチバックアップを実現するため、風車発電機単位に展開したスケジュールを全風車発電機に付属の情報通信制御端末にそれぞれ送信する。この情報送信により、サーバ装置100が一時的に異常となった場合にも、情報通信制御端末間で発電出力スケジュール制御をスケジュール送信日数分だけ継続可能にする。
【0040】
また、スケジュール情報の送信は、その変更時及び定周期(10分毎)送信とすることで、通信負荷を軽減する。
【0041】
(2)情報通信制御端末側の発電出力スケジュール制御
各情報通信制御端末は、風車発電機単位に展開された発電出力スケジュール情報を基にスケジュール制御を実施する。図3は情報通信制御端末に制御機能として組み込まれる発電出力スケジュールの取得フローを示す。
【0042】
(S11)全風車発電機のスケジュール受信:各情報通信制御端末は自身の風車発電機の発電出力スケジュールをサーバ装置側から受信する他に、他の風車発電機の発電出力スケジュールも受信する。
【0043】
(S12)スケジュールの上書き保存:各情報通信制御端末はサーバ装置側から受信した発電出力スケジュールを前回受信したスケジュールに上書き保存する。この保存は他の風車発電機に対するスケジュールも同様に上書き保存する。
【0044】
これら発電出力のスケジュール設定は、自身宛のスケジュールの他に、他の風車発電機に対するスケジュールを設定するのは、後述の同じ風車発電機グループ内におけるマスタ/スレーブ切り替えによるスケジュール制御に対応可能とするものである。
【0045】
(3)風車発電機グループの発電出力スケジュール制御
グルーピングされた風車発電機グループの発電出力スケジュール制御の場合には、当該グループに属する風車発電機に付属の情報通信制御端末のうち、任意の1つの端末をマスタとして設定し、他の端末をスレーブとして設定し、マスタの情報通信制御端末から他のスレーブの情報通信制御端末に対して制御要求を行なう。
【0046】
そして、マスタが脱落した場合には、同一グループ内の最若番のスレーブがマスタになって処理を継続し、脱落した元マスタ分の発電出力をグループ内の他の風車発電機に振り分けて制御する。また、スレーブが脱落した場合には、脱落した風車発電機の発電出力スケジュール分をグループ内の他の風車発電機に振り分けて制御を継続する。
【0047】
図4は情報通信制御端末によるマスタ/スレーブ切替えによる制御フローである。
【0048】
(S21)スケジュール有無:各情報通信制御端末は、周期起動毎に、サーバ装置100から発電出力スケジュール制御情報を受信しているか否かをチェックする。
【0049】
(S22)グループ内正常装置の最若番:各情報通信制御端末は、各端末についてグループ内の正常装置のうちの最若番装置か否かをチェックする。
【0050】
(S23)マスタ設定:最若番装置の情報通信制御端末をマスタに切替える。
【0051】
(S24)スレーブ設定:最若番装置でない情報通信制御端末を全てスレーブに切替える。
【0052】
(S25)グループ内風車発電機の発電出力の振り分け:マスタとなった情報通信制御端末はグループ内に脱落(故障、運転停止)した風車発電機がある場合、当該脱落風車発電機に設定された発電出力スケジュール制御量を残りの健全な風車発電機に振り分け、当該グループにスケジュール設定された発電出力を確保する。
【0053】
この振り分けは、風車発電機に所属する情報通信制御端末がマスタ/スレーブに関係なく行うことにより、マスタ/スレーブ切替時に等価処理や引き継ぎ処理を行わずに済むようにする。
【0054】
(S26)自装置のグループ内マスタ判定:各情報通信制御端末は、自装置がグループ内マスタか否かをチェックする。
【0055】
(S27)グループ内マスタによる制御要求:マスタの情報通信制御端末は、自端末も含めたグループ内情報通信制御端末に対して演算した発電出力を制御要求する。
【0056】
図5は各情報通信制御端末の制御フローである。(S31)マスタまたはスレーブの情報通信制御端末は、グループ内マスタからの制御要求を受信し、(S32)スレーブまたはマスタは、受信した制御要求で自風車発電機に対する発電出力制御を実行する。
【0057】
(4)グループ内の風車発電機が脱落した場合の発電出力振り分け
図6に示す風車発電機グループ化について、脱落した風車発電機の発電出力振り分けの例を説明する。図6は、風車発電機#2〜#4と風車発電機#9、#10が風車発電機グループAとしてグルーピングされており、5台の風車で有効電力を5000kWに出力制限する場合の発電出力振り分けを説明する。なお、各風車発電機の最大出力は2000kWとする。また、風車発電機の場合、風なりに運転している状態から、受電点の一定制御をコントロールするために出力制限をかけるようなスケジュールが組まれる。
【0058】
(4A)風車発電機グループAに所属している風車発電機が全て正常である場合の発電出力振り分け
この場合、最若番の風車発電機#2がグループA内マスタとなり、全ての風車発電機が正常であるため5台の風車発電機で5000kWの出力とすればよいので、単純計算では1基当たりを1000kWに出力制限すればよいが、風車グループAの中には出力制限をかける前の状態で1000kWに達していない風車が存在する場合もある(各風車とも目標値はあっても実出力値はバラバラ)。
【0059】
ここで、風車発電機に個別に目標指令値を与えてフィードバック制御を行い、合計を5000kWに出力制限する方法もあるが、この方式は煩雑となる。
【0060】
そこで、風車発電機グループAに所属する5台の風車発電機の合計出力が5000kWとなるような出力制限目標値(5台の風車ともに同一の値)を演算してフィードバック制御する。この演算自体はマスタ、スレーブに関係なく風車発電機グループAに所属している風車発電機で全て実施しているので、マスタ/スレーブ切替が発生した場合のフィードバック制御の演算も問題とならない。
【0061】
例えば、5台の風車発電機が正常で5台合わせて5000kWに出力制限する際、直前までは実出力値はバラバラである場合(例えば、700kW、900kW、1000kW、1100kW、1500kWの場合)、基本的な演算は5000kW÷5台=1000kW/台をフィードバック制御の目標値とするが、この目標値による制御をした結果、5台の合計実出力値が5000kWに満たなければ、次回の制御タイミングでは、基本的な平均で求められる1000kW/台より、高めの値(例えば1050kW/台)といった制御目標値とする。このように、前回の制御目標値と、その結果の実出力値によりフィードバック演算を繰り返し、実出力値がグループ合計で5000kWとなるように制御目標値を変えながら制御を繰り返す。
【0062】
(4B)風車発電機が全て正常である状態から風車発電機#2が故障停止した場合の発電出力振り分け
風車発電機グループAのうち、正常な最若番である風車発電機#3が新しいグループ内マスタとなる。この場合、風車発電機グループAは風車発電機#2を除く、4台の風車発電機で構成されることになる。スケジュール自体は5000kWの出力制限のままなので、4台の風車発電機で5000kWに出力制限できればよい。
【0063】
そこで、5台の時に多めにかけていた出力制限の値を緩和して、各風車発電機がそれぞれ出力を上げた運転となるような出力制限目標値(4台の風車発電機ともに同一の値)に変更してフィードバック制御を継続する。例えば、5000kW÷4台=1250kW/台を各風車発電機の制御目標値とし、制御目標値によるフィードバック制御には前記のように、各制御タイミングで徐々に変更し、最終的にはグループAの発電出力を5000kWにする。
【0064】
(4C)脱落していた風車発電機#2が運転再開した場合の発電出力振り分け
風車発電機グループAのうち、正常な最若番である風車発電機#2がグループA内の新しいマスタとなる。この場合、風車発電機グループAは最初の5台の風車発電機で構成されることになる。スケジュール自体は5000kWの出力制限のままなので、5台の風車発電機で5000kWに出力制限できればよい。そこで、4台の時には少なめであった出力制限の値を強化して、各風車発電機がそれぞれ出力を下げた運転となるような出力制限目標値(5台の風車発電機ともに同一の値)に変更してフィードバック制御を継続する。
【0065】
例えば、故障停止した風車発電機#2が運転再開した場合、5台の風車発電機で5000kWに出力制限できれば良いため、基本的な演算は5000kW÷5台=1000kW/台を各風車発電機の制御目標値とするが、この制御目標値によるフィードバック制御には前記のように、各制御タイミングで徐々に変更し、最終的にはグループAの発電出力を5000kWにする。
【符号の説明】
【0066】
#1〜#10 風車発電機
100 サーバ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車発電機を多数台設備し、各風車発電機の発電出力を予測した発電出力スケジュール制御して電力系統に連系させる風力発電システムの発電出力スケジュール制御方法であって、
前記各風車発電機の発電出力スケジュールを設定するサーバ装置と、
各風車発電機別にそれぞれ設けられ、前記サーバ装置から通信回線を通して設定された前記発電出力スケジュールに従って所属する風車発電機の発電出力を制御できる情報通信制御端末を備え、
前記サーバ装置は、複数台の風車発電機をグループ化し、この風車発電機グループ単位で前記発電出力スケジュールを設定する過程を備え、
前記各情報通信制御端末は、同じグループ内の情報通信制御端末の1つをマスタ、他をスレーブとするマスタ/スレーブの設定とマスタ/スレーブの切替えができる過程と、サーバ装置で設定した自端末が所属する風車発電機の発電出力スケジュール制御情報および他の端末が所属する各風車発電機の発電出力スケジュール制御情報をそれぞれ取得する過程と、現在のマスタによるグループ内各風車発電機の発電出力を分担制御する過程を備えたことを特徴とする発電出力スケジュール制御方法。
【請求項2】
前記サーバ装置は、
グループ化する風車発電機のグループ番号とそれに属する風車発電機番号を設定する過程と、
風力発電システムに共通の発電出力スケジュール制御の開始から終了までの年月日時分情報をスケジュール制御期間として設定する過程と、
風車発電機別にした制御内容(発電電力、運転期間などの情報)をグループ別に設定する過程と、
同一時間帯にあって、同一の風車発電機または風車発電機グループに対して発電出力スケジュールの重複の有無をチェックする過程と、
前記発電出力スケジュールに重なりがあった場合にどちらの発電出力スケジュールを優先するかを設定する過程と、
設定された風車発電機別の発電出力スケジュールを、任意の時間間隔の制御に展開する過程と、
前記設定した発電出力スケジュール情報を各風車発電機に所属する前記情報通信制御端末にそれぞれ送信する過程と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の発電出力スケジュール制御方法。
【請求項3】
前記サーバ装置が1基の風車発電機を複数のグループに所属させた場合、
前記情報通信制御端末は、グループに設定した発電出力スケジュールの優先順位に従って、当該風車発電機の発電出力スケジュール制御を行う過程を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の発電出力スケジュール制御方法。
【請求項4】
グループ内の風車発電機に脱落が発生した場合、脱落した風車発電機の情報通信制御端末がマスタの場合には他のスレーブをマスタに切り替えて発電出力スケジュール制御を継続し、脱落した風車発電機の情報通信制御端末がスレーブの場合には脱落した風車発電機の発電出力スケジュール分をグループ内の他の風車発電機に分担させて制御を継続する過程を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の発電出力スケジュール制御方法。
【請求項5】
前記マスタとなる情報通信制御端末は、脱落していた風車発電機が運転再開した場合、当該風車発電機が脱落する前の発電出力スケジュール分に戻す分担制御を行う過程を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の発電出力スケジュール制御方法。
【請求項6】
前記マスタとなる情報通信制御端末は、風車発電機の発電出力スケジュール制御は、各風車発電機が正常な場合、脱落した風車発電機がある場合、または運転再開した風車発電機がある場合、それぞれ設定または演算した分担量を制御目標値にしてフィードバック制御する過程を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の発電出力スケジュール制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−39802(P2012−39802A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179158(P2010−179158)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】