説明

風力発電機用風車装置

【課題】翼部材を両持ち状態に取り付けうる構成とし、翼部材を軽量の簡易な部材で構成可能にし、これによって能率的に風力を利用することができるようにすること。
【解決手段】 鉛直方向の一定範囲内を周回動作すべく配置された一対の無端チェーン部材1、1と、これらを掛け渡す各一対の鎖車部材2、2と、一対の無端チェーン部材1、1に定間隔で両端を結合した多数の翼部材3、3…と、全鎖車部材2、2…を回転軸6、7を介して回転自在に支持する枠体4と、発電機5に二つの伝達鎖車5a、6a及び伝達チェーン部材5bを介して結合した上方の鎖車部材2、2の回転軸6と、下方の鎖車部材2、2の回転軸7と、枠体4を水平方向に回転自在に支持する支持部材8と、支持部材8及び枠体4との間に配した方向制御機構と、翼部材3、3…を所定の向き状態で周回動作させるべく案内するガイドレール機構9とで構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両端の鎖車に掛け渡した一対以上の無端チェーン部材と、これらに定間隔で両端を結合した複数の翼部材とを備え、該翼部材に風を当てることで該無端チェーン部材を両端の鎖車の間を周回動作させ、これによって回転させられる鎖車の回転を発電機に伝え、これによって発電することができるようにする風力発電機用風車装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このように無端チェーン部材を用いて風を受ける翼部材を周回動作させる風車装置は提案されていない。
若干の調査をしてみると、例えば、特許文献1のような垂直軸形の風力発電装置又は特許文献2のような水平軸形を基本とした風力発電装置の提案は多数ある。これらは、翼部材を周回動作させるものではなく、関連あるとは考えられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−261288号公報
【特許文献2】特許第4204661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、風力の作用を受ける翼部材を両持ち状態に取り付けうる構成とすることで、該翼部材を軽量の簡易な部材で構成可能にし、これによって能率的に風力を利用することができる風力発電機用風車装置をを提供することを解決の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1は、鉛直方向の一定範囲内を周回動作する平行に配置された一対の無端チェーン部材と、
前記一対の無端チェーン部材を掛け渡す、前記一定範囲の上下端に配した各一対の歯車部材と、
前記一対の無端チェーン部材に両端を結合した複数の翼部材であって、該無端チェーン部材に一定の周回方向の相互間間隔で全周に渡って配した複数の翼部材と、
前記全歯車部材を回転自在に支持する枠体と、
直接又は間接に発電機を結合しうるように構成したいずれかの歯車部材の回転軸と、
前記枠体を水平方向に回転自在に支持する支持部材と、
前記支持部材及び前記枠体との間に配した、前記翼部材に、風を、前記歯車の回転軸と直交する向きに導入すべく、該枠体を回動させる方向制御機構と、
で構成した風力発電機用風車装置であって、
更に前記翼部材を側面視部分円弧状に構成し、
前記一対の無端チェーン部材の風の導入側の位置において、該翼部材を、その凹面が下向きで、風の導入方向に向けて斜め上向きになるように取り付け、
該一対の無端チェーン部材の風の排出側において、該該翼部材を、その凹面が上向きで、風の導入方向に向けて斜め下向きになるように、前記枠体に、該翼部材の向きを制御するガイドレール機構を構成し、
該ガイドレール機構は、
前記翼部材の両外側端を側方に延長した延長部端に配した転動ローラと、
該転動ローラが前記無端チェーン部材の周回動作によって規制無く描く軌跡に近似する周回案内路であって、該無端チューン部材の周回路の風の導入側及び下部の途中から風の導入側に対応する部位においては、該規制無く描く軌跡に一致させ、かつ該無端チューン部材の周回路の上端途中から風の排出側及び風の排出側に対応する部位においては、該規制無く描く軌跡より内側に位置するように構成した、該転動ローラの案内用の周回案内路と、
で構成した風力発電機用風車装置である。
【0006】
本発明の2は、本発明の1の風力発電機用風車装置において、
前記一対の無端チェーン部材の風の導入側及び風の排出側の鉛直方向に直線的に移動動作する部位の内側に、その直線移動動作を支援する背面スライド板を近接状態に配したものである。
【0007】
本発明の3は、本発明の1の風力発電機用風車装置において、
前記一対の無端チェーン部材の風の導入側及び風の排出側の鉛直方向に直線的に移動動作する部位の内側に、その直線移動動作を支援する、転動自在な複数の背面支持ローラを当接状態に配したものである。
【0008】
本発明の4は、本発明の1、2又は3の風力発電機用風車装置において、
前記枠体に、前記無端チェーン部材の周回路の上端付近の内側を通過する翼部材の凹面側に風を導入すべく、風の導入側の前方からの風の向きを下向きに変える風向き変更板を配したものである。
【0009】
本発明の5は、本発明の1、2、3又は4の風力発電機用風車装置において、
前記枠体に、前記無端チェーン部材の周回路の下端付近の内側を通過する翼部材の凹面側に風を導入すべく、風の導入側の前方からの風の向きを上向きに変える風向き変更板を配したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の1の風力発電機用風車装置によれば、前記鎖車の回転軸に直交する向きで、かつ前記翼部材の凹面が下向きになっている側から風を導入すると、風は、この装置の風の導入側では、上下方向に所定間隔で並んだ前記複数の翼部材の、風の導入側が斜め上向きとなっている下向きの凹面にこれを押し上げるように作用し、該複数の翼部材を上昇させることになる。該翼部材は、以上のように、風の導入側に向かって上向き状態で、かつその凹面が斜め下向きとなっているため、その風を十分に受け、良好に押し上げられることになる。該翼部材は、その両端が無端チェーン部材に支持されているので、その作用が直ちに該無端チェーン部材に伝達され、該無端チェーン部材を風の導入側では上昇方向に動作させ、これに伴って風の排出側では下降動作をさせることになる。すなわち、該無端チェーン部材に周回動作をさせることになる。
【0011】
以上のように、風の導入側に位置する翼部材を上昇動作させつつ、その背後側の風の排出側に移動した風は、背後側の縦方向に所定間隔で並んだ翼部材の、風の導入側が斜め下向きとなっている上向きの凹面にこれを押し下げるように作用し、該翼部材を下降動作させることになる。こうして風の有する力を有効に翼部材に伝達することが可能となり、これらの両端に接続している一対の無端チェーン部材は周回動作を継続することになる。
【0012】
なお、翼部材は、一対のチェーン部材の、風の導入側に位置する場合に、その凹面が下向きかつ風の導入側に向かって斜め上向きに配してある場合には、何らの手段をも施さなければ、背後側、すなわち、風の排出側に移動した場合に、風の導入側に向かって斜め上向き状態になり、導入側から移動してくる風は、その凹面ではなく、凸面側に当たることになり、所定の押し下げ作用を受けることができなくなる。そこで、本発明の1に於いては、前記ガイドレール機構を採用し、以上のように、翼部材が適切な角度状態で周回動作するように構成したため、前記のように、風力を有効に受けて、翼部材が無端チェーン部材と共に周回動作できることになったものである。
【0013】
該ガイドレール機構は、前記のように配した転動ローラと、 該転動ローラがその中を周回動作する周回案内路を、該無端チューン部材の周回路の上端では、より径の小さな円弧を描き、風の排出側に対応する部位においては、その反対側の部位よりも装置の仮装縦中心線からの距離が短くなるようにした直線を描くように構成したため、前記のように、風の導入側に位置する翼部材を、風の導入方向に向かって斜め上向きになるように構成した場合であっても、風の排出側に位置する翼部材は、前記周回案内路の作用により、容易に風の導入側に向かって斜め下向きになるように制御されることになる。
【0014】
すなわち、一対の無端チェーン部材の上端に対応する周回案内路は、その描く円弧が下端側のそれより小径に構成してあるため、前記転動ローラは、該周回案内路を、該無端チェーン部材によって周回移動する翼部材の中間付近の部位より遅れて進むことになり、かつ背後側(風の排出側)では、背後側に位置する周回案内路の仮装縦中心線からの距離が、反対側(風の導入側)に位置する周回案内路の仮想縦中心線からの距離より短く構成してあるため、前記のような、転動ローラの遅れて移動する状態が保持されることとなるからである。
【0015】
こうして翼部材は、風の導入側に位置している場合は当然として、背後側(風の排出側)に位置している場合でも風力を有効に活用し、無端チェーン部材の周回動作に有効に利用することができることになる。こうして得られた風力による回転力は、無端チェーン部材の掛け渡してある鎖車部材のうちのいずれかの回転軸から取り出し、発電機を回転駆動することができる。
【0016】
以上の多数の翼部材、これらを固設した一対の無端チェーン部材及び該一対の無端チェーン部材を掛け渡した鎖車部材は枠体に支持され、該枠体は支持部材に水平方向回転自在に配してあり、該枠体は、前記翼部材に、風を、前記鎖車の回転軸と直交する水平方向に導入すべく、該枠体を回動させる方向制御機構を備えているため、風向きに対して常時適切な方向に向くようになっている。それ故、効率的に風力を回転力に変換することができる。
【0017】
なお、以上の方向制御機構は、現在一般的に採用されているそれを自由に採用することができるものである。
【0018】
本発明の2又は3の風力発電機用風車装置によれば、一対の無端チェーン部材の風の導入側及び風の排出側の鉛直方向に直線的に移動動作する部位の内側に、その直線移動動作を支援する背面スライド板を近接状態に配し、又はその直線移動動作を支援する、転動自在な複数の背面支持ローラを当接状態に配したものであり、それ故、その位置で、該一対の無端チェーン部材はほぼ直線状態を維持することができるため、該無端チェーン部材に結合している翼部材は、前記のような状態を良好に保持できる。風の排出側の鉛直方向に直線的に移動動作する部位では、該一対の無端チェーン部材は、翼部材が、前記したように、所定の傾きに制御されるため、それぞれの結合部で若干の変形をせざるを得ないが、それは、小さなものであり、以上の背面スライド板又は背面支持ローラで許容される範囲内のものである。結局、翼部材は、適切な状態を保持できることになり、風力を有効に利用して、前記のように、回転力として取り出すことができることになる。
【0019】
本発明の4の風力発電機用風車装置によれば、前記無端チェーン部材の周回路の上端付近の内側を通過する翼部材の凹面側に風を導入すべく、風の導入側の前方からの風の向きを下向きに変える風向き変更板を配したものであるため、この部位を通過する翼部材の凹面側に良好に風を導入することが可能になり、より能率的に風力を発電用の回転力に変換可能になったものである。
【0020】
本発明の5の風力発電機用風車装置によれば、前記無端チェーン部材の周回路の下端付近の内側を通過する翼部材の凹面側に風を導入すべく、風の導入側の前方からの風の向きを上向きに変える風向き変更板を配したものであるため、この部位を通過する翼部材の凹面側に良好に風を導入することが可能になり、より能率的に風力を発電用の回転力に変換可能になったものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例の風力発電機の要部の側面説明図。
【図2】翼部材を省略して示した実施例の風力発電機の要部の正面説明図。
【図3】実施例の風力発電機の要部の正面説明図。
【図4】(a)は翼部材とガイドレール機構の一部を示す拡大側面説明図、(b)は(a)のガイドレール機構部分の拡大図。
【図5】翼部材の一部とガイドレール機構の一部を示す拡大正面説明図。
【図6】翼部材を省略して示した実施例の風力発電機の正面説明図。
【図7】方向制御機構の風向き検出部を示す拡大平面図。
【図8】背面支持ローラの拡大側面説明図。
【図9】周回案内路の側面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態を実施例に基づき図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
<実施例>
この実施例の風力発電機用風車装置は、図1〜図3及び図6に示すように、基本的に、鉛直方向の一定範囲内を周回動作すべく配置された一対の無端チェーン部材1、1と、該一対の無端チェーン部材1、1を掛け渡す各一対の鎖車部材2、2と、該一対の無端チェーン部材1、1に定間隔で両端を結合した多数の翼部材3、3…と、前記全鎖車部材2、2…を後記回転軸6、7を介して回転自在に支持する枠体4と、発電機5に二つの伝達鎖車5a、6a及び伝達チェーン部材5bを介して結合した上方の鎖車部材2、2の回転軸6と、下方の鎖車部材2、2の回転軸7と、前記枠体4を水平方向に回転自在に支持する支持部材8と、該支持部材8及び該枠体4との間に配した方向制御機構と、前記翼部材3、3…を所定の向き状態で周回動作させるべく案内するガイドレール機構9とで構成したものである。すなわち、発電機5を含めて風力発電機に適用したものである。
【0024】
前記無端チェーン部材1、1は、図1〜図3及び図6に示すように、それらの周回路が相互に平行で、かつ前記のように、鉛直になるように配してあるものである。前記し、図1及び図3に示すように、それらの各々には、定間隔で翼部材3、3…の両端を結合するものであり、相応の強度を有する必要がある。またこの無端チェーン部材1、1は、図1、図2及び図6に示すように、その上下の鎖車部材2、2…に掛け渡した付近以外の鉛直方向に移動動作する付近では、その内側には、それぞれ近接状態に背面スライド板1a、1a…を配し、該無端チェーン部材1、1は、場合によってこれに接触し又は接触しないで上昇又は下降動作する。前記翼部材3、3…が風を受けると、該翼部材3、3…はその圧力により向きを変える虞があるが、その際に、該チェーン部材1、1が背後の背面スライド板1a、1a…に接触し、その直線的な昇降動作を確保することで、該翼部材3、3…の一定以上の向きの変動を抑えることができることになる。なお、該背面スライド板1a、1a…は、いずれも枠体4を構成する直近側方の側板4a、4aに固設したものである。
【0025】
また、図8に示すように、前記背面スライド板1a、1aに代えて、背面支持ローラ1b、1b…の群を採用することができる。これらは、該背面スライド板1a、1aを配した領域に於いて、枠体4を構成する直近側方の側板4a、4aに回転自在に取り付けたものである。背面スライド板1a、1aと、基本的には、同様に作用するが、無端チェーン部材1、1をより滑らかに昇降動作させうる。該無端チェーン部材1、1を上下方向に直線的な状態で移動動作させることにより、翼部材3、3…の向き乃至角度を適正に保持できるものである。
【0026】
前記鎖車部材2は、図1〜図3及び図6に示すように、該無端チェーン部材1、1の鉛直周回領域の上下端に各一対ずつ配する。上下端では、該領域の両側部付近にそれぞれ配置し、前記のように、上端の一対の鎖車部材2、2は、それぞれ前記上方の回転軸6の両端付近に固設し、下端の一対の鎖車部材2、2は、それぞれ前記下方の回転軸7の両端付近に固設し、いずれも同期して回転するようになっている。該回転軸6、7は、図2、図3及び図6に示すように、前記枠体4を構成する側板4a、4aに図示しない軸受けを介して回転自在に取り付けてある。
【0027】
前記翼部材3、3…は、前記し、かつ図1及び図3に示すように、その両端中間付近を定間隔で前記無端チェーン部材1、1に結合したものである。図1中、左側が風の導入側となり、右側が風の排出側となる。該翼部材3は、特に図1に示すように、側面視部分円弧状を基本形状とし、風の導入側ではその凹面側が下向きとなりつつ、風の導入方向に向かって斜め上向きになるように、該無端チェーン部材1、1に取り付けてある。なお、このような取付方の場合は、風の排出側では、該翼部材3、3…は、図1とは異なり、背後側、すなわち、風の排出側が下になった風の導入側に向かって斜め上向き状態となってしまう。これでは、具合が悪いので、前記ガイドレール機構9により、無端チェーン部材1、1の風の排出側では、翼部材3、3…は、図1に示すように、風の排出側が上となり、風の導入側に向かって斜め下向きとなるように調整するものである。これに関しては後述する。
【0028】
前記翼部材3、3…の両側外端には、図1、図3〜図5に示すように、それぞれ両側方に延長した延長部3a、3aが構成してあり、該延長部3a、3aの端部には、それぞれ前記ガイド機構9の一部を構成する転動ローラ9aが転動自在に配してあり、両端の転動ローラ9a、9aが該ガイド機構9の他の一部を構成する周回案内路9b、9b中を案内されて周回動作するようになっている。これによって翼部材3、3…は、前記したように、適切な角度を保持しながら周回動作できるようになっている。
【0029】
該ガイドレール機構9は、以上のように、転動ローラ9a、9a…及び周回案内路9b、9bで構成するものである。該周回案内路9b、9bは、基本的には、該転動ローラ9a、9a…が何らの規制を受けずに前記無端チェーン部材1、1の周回動作によって描く軌跡tに沿って配されるものであるが、該無端チューン部材1、1の周回路の上端及び風の排出側に対応する部位においては、図9に示すように、該周回案内路9b、9bのルートrは上記のように描かれる軌跡tよりも内側に位置させてあるものである。
【0030】
すなわち、該周回案内路9b、9bは、無端チェーン部材1、1の周回路に対応する上端の半円弧状の移動路部分においては、図9に示すように、該無端チェーン部材1、1に結合している翼部材3、3…の外端側が該無端チェーン部材1、1との結合部より徐々に遅れて進むこととなる程度に該軌跡tより内側を通過するように設定し、風の排出側(図1及び図9中右側)では、外端側の部位の以上の遅れて進む状態を維持できるように、同じ程度だけ該軌跡tより内側を通過するように設定する。無端チェーン部材1、1の周回路に対応する下端の半円弧状の移動路部分においては、同図に示すように、該無端チェーン部材1、1に結合している翼部材3、3…の外端側がこれまでは該無端チェーン部材1、1との結合部より遅れて進む状態になっていたところ、この範囲では、翼部材3、3…の外端側が無端チェーン部材1、1との結合部より徐々に前を進む状態になるように、徐々に前記軌跡tと同じルートを通過するようにその移動路を設定するものである。
【0031】
該周回案内路9b、9bは、図3に示すように、前記枠体4を構成する側板4a、4aに固設してあり、それぞれ図4(a)、(b)及び図5に示すように、相互に対面状態に配された断面コ字形又は逆コ字形の構成であり、各々の内側に、各翼部材3、3…の各延長部3a、3aの先端に回転自在に結合してある転動ローラ9a、9aが転動自在に配してあり、各翼部材3、3…が風を受けて無端チェーン部材1、1を周回動作させつつ移動動作する際に、先に述べ、図1に示すように、風の導入側(図1中左側)では、外端(左側端)側が無端チェーン部材1、1との結合部より先に進み、上部の半円弧状の部分では外端側が徐々に遅れ、右側の風の排出側では外端側が無端チェーン部材1、1との結合部より遅れて進み、下部の半円弧状の部分では、外端側が無端チェーン部材1、1との結合部に徐々に追いつき追い越して進むこととなるものである。
【0032】
前記枠体4は、図4に示すように、装置の両側の側板4a、4aと、下端で両側板4a、4aを接続する底板4bと、上端で両側板4a、4aを接続する上板4cとで構成したものである。前記のように、両側板4a、4aには、前記鎖車2、2…の回転軸6、7の両端をそれぞれ軸受けを介して回転自在に結合し、前記ガイド機構9の周回案内路9b、9bをそれらの内面に固設し、これらを支持するようになっている。
【0033】
該枠体4の両側板4a、4aには、図1、図2、図3及び図6に示すように、更に上部には、四枚の上部風向き変更板10a、10b、10c、10dを、下部には三枚の下部風向き変更板11a、11b、11cを固設したものである。
【0034】
上部風向き変更板10a、10b、10c、10dは、図2、図3及び図6に示すように、前記両側板4a、4aに両端を固設したものであり、特に図1に示すように、前記無端チェーン部材1、1の周回路の上端付近の内側を通過する翼部材3、3…の凹面側に風を導入すべく、風の導入側である前方からの風の向きを下向きに変えるべく、翼部材3、3…に近づくにつれて下方に滑らかに屈曲させた板状部材で構成したものである。枚数はこの実施例では、四枚としたが、これに限定されるわけではない。
【0035】
下部風向き変更板11a、11b、11cは、図2、図3及び図6に示すように、前記両側板4a、4aに両端を固設したものであり、特に図1に示すように、前記無端チェーン部材1、1の周回路の下端付近の内側を通過する翼部材3、3…の凹面側に風を導入すべく、風の導入側である前方からの風の向きを上向きに変えるべく、翼部材3、3…に近づくにつれて上方に滑らかに屈曲させた板状部材で構成したものである。枚数はこの実施例では、三枚としたが、これに限定されるわけではない。
【0036】
前記発電機5は、増速機を内蔵したものであり、図6に示すように、この実施例では、前記枠体4の上板4cの上に固設し、増速機の回転軸に固設した伝達鎖車5a、上方の鎖車部材2、2の回転軸6の一端に固設した伝達鎖車6a及び該伝達鎖車5a、6aに掛け渡した伝達チェーン部材5bを介して上方の回転軸6の回転を該発電機5に伝達するようになっている。
【0037】
前記支持部材8は、図6に示すように、円板状の下部支持板8aと、同様に円板状の上部支持板8bと、該下部支持板8a及び該上部支持板8bを90度の定角度間隔で連結する四本の連結棒8c、8c…と、下部支持板8aの下部中央に結合した支柱部材8dとで構成したものであり、該下部支持板8a、上部支持板8b及び連結棒8c、8c…の内側に枠体4及びこれで支持される構成要素を水平方向回転自在に配置する。
【0038】
この実施例では、前記枠体4の底板4bの下部中央に固設した下部中心軸4dを支持部材8の下部支持板8aの中央に配した下部軸受け8eで回転自在に支持し、かつ枠体4の上板4cの上部中央に固設した上部中心軸4eを支持部材8の上部支持板8bの中央に貫通状態に構成した上部軸受け8fに貫通状態に配し、枠体4及びこれに支持される構成要素を該支持部材8に水平方向回転自在に配したものである。
【0039】
前記方向制御機構は、図6及び図7に示すように、風向き検出部12aと、回転駆動部12bとで構成する。風向き検出部12aは、同図に示すように、前記枠体4の上板4cに立設した上部中心軸4eの内、支持部材8の上部支持板8bの上に突出した部分に基部円筒部12a1を回動自在に外装した風向き検出板12a2と、該上部中心軸4eの最上部に固設した二つの圧力検出部12a3、12a4を備えた検出部支持部12a5とで構成したものである。検出部支持部12a5は、平面視円板状の部材であるが、その外周に沿った一部に、図7に示すように、スリット状の切欠を構成し、その両側にそれぞれ前記圧力検出部12a3、12a4を配し、両圧力検出部12a3、12a4の隙間に前記風向き検出板12a2の基部近傍上部から検出片12a6を立ち上げ、風向き検出板12a2の風向きによる回転方向の動きを検出片12a6が両圧力検出部12a3、12a4のいずれかに圧接し又はニュートラル状態にあることで検出できるようにしたものである。
【0040】
前記回転駆動部12bは、図6に示すように、前記枠体4の底板4bの下部中央に固設した下部中心軸4dに外装固設した歯車12b1と、これにかみ合うウォームギア12b2と、該ウォームギア12b2をその回転駆動軸に固設した電動モータ12b3とで構成したものである。該電動モータ12b3は、前記支持部材8の下部支持板8a上に固設してあり、前記風向き検出部12aの圧力検出部12a3、12a4の検出結果に基づき図示しない制御手段によって正逆いずれかに相応する回転数だけ回転するように制御されるようになっている。
【0041】
前記風向き検出板12a2は、風が吹くと、その風向き対応する方向を向くように回転動し、これに応じて該風向き検出板12a2に立ち上げた検出片12a6が前記圧力検出部12a3、12a4のいずれかに圧接状態となり、これが圧力検出部12a3又は12a4のいずれで検出されたかに応じて、制御手段が風の導入側が風上を向くように電動モータ12b3の回転方向を制御する。ニュートラルになるまで、電動モータ12b3を相応する動作をすべく制御する訳である。
【0042】
なお、ここで示した方向制御機構は単なる一例であり、他の種々の機構を自由に採用することができる。
【0043】
この実施例の風力発電機用風車装置は、以上のように、風力発電機に適用したものであり、これは、例えば、ビルの屋上等に設置することも、丘の上に設置することも可能である。
【0044】
いずれかに設置して使用すると、先ず、前記のように、方向制御機構が動作して、装置の風の導入側が風上を向くことになる。この向きで風が導入されると、風は、この装置の風の導入側では、上下方向に一定間隔で並んだ前記複数の翼部材3、3…の、風の導入側が斜め上向きとなっている下向きの凹面にこれを押し上げるように作用し、該複数の翼部材3、3…を上昇させる。該翼部材3、3…は、以上のように、風上側に向かって上向き状態で、かつその凹面が斜め下向きとなっているため、その風を十分に受け、良好に押し上げられる。該翼部材3、3…は、その両端が無端チェーン部材1、1に支持されているので、その作用が直ちに該無端チェーン部材1、1に伝達され、該無端チェーン部材1、1を風の導入側では上昇方向に動作させ、これに伴って風の排出側では下降動作をさせることになる。すなわち、該無端チェーン部材1、1に周回動作をさせることになる。
【0045】
以上のように、風の導入側に位置する翼部材3、3…を上昇動作させつつ、その背後側の風の排出側に移動した風は、背後側の縦方向に一定間隔で並んだ翼部材3、3…の、風の導入側に向かって斜め下向きとなっている上向きの凹面にこれを押し下げるように作用し、該翼部材3、3…を下降動作させることになる。こうして風の有する力を有効に翼部材3、3…に伝達することが可能となり、これらの両端に接続している一対の無端チェーン部材1、1は周回動作を継続することになる。
【0046】
なお、以上の翼部材3、3…は、一対の無端チェーン部材1、1の、風の導入側に位置する場合に、その凹面が下向きかつ風の導入側に向かって斜め上向きに配してあるので、何らの手段をも施さなければ、背後側、すなわち、風の排出側に移動した場合に、風の導入側に向かって斜め上向き状態になり、導入側から移動してくる風は、その凹面ではなく、凸面側に当たることになり、所定の押し下げ作用を受けることができなくなる。しかし、この実施例に適用した本発明では、前記ガイドレール機構9を採用し、以上のように、翼部材3、3…が適切な状態で、すなわち、前記したように、風の導入の背後側では、その先端側が風上に向かって斜め下向き状態で周回動作するように構成したため、前記のように、風力を有効に受けて、翼部材3、3…が無端チェーン部材1、1と共に周回動作できることになっているものである。
【0047】
該ガイドレール機構9は、前記したように、転動ローラ9a、9a…と、該転動ローラ9a、9a…がその中を周回動作する一対の周回案内路9b、9bとで構成したものであり、該周回案内路9b、9bは、該無端チューン部材1、1の周回路の上端の半円弧状の部分では、該転動ローラ9a、9a…が何らの規制を受けずに前記無端チェーン部材1、1の周回動作によって描く軌跡tよりより径の小さな円弧を描き、風の排出側に対応する部位においても、該奇跡tより内側を通過する直線を描くように構成したため、前記のように、風の導入側に位置する翼部材3、3…を、風上に向かって斜め上向きになるように構成したこの実施例の場合であっても、風の排出側に位置する翼部材は、該周回案内路9b、9bの作用により、図1に示すように、容易に風上側に向かって斜め下向きになるように制御されることになる。
【0048】
すなわち、一対の無端チェーン部材1、1の上端に対応する周回案内路9b、9bはその描く円弧が下端側のそれより小径に構成してあるため、前記転動ローラ9a、9a…は、該周回案内路9b、9bの上部の半円弧状部を移動する際には、該無端チェーン部材1、1によって周回移動する翼部材3、3…の中間付近よりも遅れて進むことになり、かつ風の排出側では、該排出側に位置する周回案内路9b、9bは前記奇跡tより内側に位置しているので、前記のように、転動ローラ9a、9aの遅れて下降動作する状態が保持されることとなる。
【0049】
こうして翼部材3、3…は、風の導入側に位置している場合は当然として、風の排出側に位置している場合でも風力を有効に活用し、無端チェーン部材の周回動作に有効に利用することができることになる。こうして得られた風力による回転力は、無端チェーン部材1、1の掛け渡している上部の鎖車部材2、2の回転軸6から取り出し、前記のように、伝達鎖車5a、6a及び該伝達鎖車5a、6aに掛け渡した伝達チェーン部材5bを介して発電機5に伝達されるようになっている。
【0050】
以上の多数の翼部材3、3…、これらを固設した一対の無端チェーン部材1、1、該一対の無端チェーン部材1、1を掛け渡した鎖車部材2、2、及び該鎖車部材2、2を固設した回転軸6、7は、前記のように、枠体4に支持され、前記し、図6に示すように、該枠体4は支持部材8に水平方向回転自在に配してあり、該枠体4は、前記翼部材3、3…に、風を、前記鎖車2、2の回転軸6、7と直交する水平方向の向に導入すべく、該枠体4を回動させる方向制御機構を備えているため、風向きに対して常時適切な方向に向くようになっている。それ故、効率的に風力を回転力に変換することができる。そして効率的に発電することができる。
【0051】
なお、この実施例の風力発電機を、ビルの屋上等に設置した場合は、枠体4の側板4a、4aに広告の表示をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の風力発電機用風車装置は、風力発電機用風車装置の製造の分野又はこれを設置する分野等で有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 無端チェーン部材
1a 背面スライド板
1b 背面支持ローラ
2 鎖車部材
3 翼部材
3a 翼部材の延長部
4 枠体
4a 側板
4b 底板
4c 上板
4d 下部中心軸
4e 上部中心軸
5 発電機
5a 伝達鎖車
5b 伝達チェーン部材
6、7 鎖車の回転軸
6a 伝達鎖車
8 支持部材
8a 下部支持板
8b 上部支持板
8c 連結棒
8d 支柱部材
8e 下部軸受け
8f 上部軸受け
9 ガイドレール機構
9a 転動ローラ
9b 周回案内路
10a、10b、10c、10d 上部風向き変更板
11a、11b、11c 下部風向き変更板
12a 風向き検出部
12a1 基部円筒部
12a2 風向き検出板
12a3、12a4 圧力検出部
12a5 検出部支持部
12a6 検出片
12b 回転駆動部
12b1 歯車
12b2 ウォームギア
12b3 電動モータ
t 軌跡
r ルート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向の一定範囲内を周回動作する平行に配置された一対の無端チェーン部材と、
前記一対の無端チェーン部材を掛け渡す、前記一定範囲の上下端に配した各一対の歯車部材と、
前記一対の無端チェーン部材に両端を結合した複数の翼部材であって、該無端チェーン部材に一定の周回方向の相互間間隔で全周に渡って配した複数の翼部材と、
前記全歯車部材を回転自在に支持する枠体と、
直接又は間接に発電機を結合しうるように構成したいずれかの歯車部材の回転軸と、
前記枠体を水平方向に回転自在に支持する支持部材と、
前記支持部材及び前記枠体との間に配した、前記翼部材に、風を、前記歯車の回転軸と直交する向きに導入すべく、該枠体を回動させる方向制御機構と、
で構成した風力発電機用風車装置であって、
更に前記翼部材を側面視部分円弧状に構成し、
前記一対の無端チェーン部材の風の導入側の位置において、該翼部材を、その凹面が下向きで、風の導入方向に向けて斜め上向きになるように取り付け、
該一対の無端チェーン部材の風の排出側において、該該翼部材を、その凹面が上向きで、風の導入方向に向けて斜め下向きになるように、前記枠体に、該翼部材の向きを制御するガイドレール機構を構成し、
該ガイドレール機構は、
前記翼部材の両外側端を側方に延長した延長部端に配した転動ローラと、
該転動ローラが前記無端チェーン部材の周回動作によって規制無く描く軌跡に近似する周回案内路であって、該無端チューン部材の周回路の風の導入側及び下部の途中から風の導入側に対応する部位においては、該規制無く描く軌跡に一致させ、かつ該無端チューン部材の周回路の上端途中から風の排出側及び風の排出側に対応する部位においては、該規制無く描く軌跡より内側に位置するように構成した、該転動ローラの案内用の周回案内路と、
で構成した風力発電機用風車装置。
【請求項2】
前記一対の無端チェーン部材の風の導入側及び風の排出側の鉛直方向に直線的に移動動作する部位の内側に、その直線移動動作を支援する背面スライド板を近接状態に配した請求項1の風力発電機用風車装置。
【請求項3】
前記一対の無端チェーン部材の風の導入側及び風の排出側の鉛直方向に直線的に移動動作する部位の内側に、その直線移動動作を支援する、転動自在な複数の背面支持ローラを当接状態に配した請求項1の風力発電機用風車装置。
【請求項4】
前記枠体に、前記無端チェーン部材の周回路の上端付近の内側を通過する翼部材の凹面側に風を導入すべく、風の導入側の前方からの風の向きを下向きに変える風向き変更板を配した請求項1、2又は3の風力発電機用風車装置。
【請求項5】
前記枠体に、前記無端チェーン部材の周回路の下端付近の内側を通過する翼部材の凹面側に風を導入すべく、風の導入側の前方からの風の向きを上向きに変える風向き変更板を配した請求項1、2、3又は4の風力発電機用風車装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−19382(P2013−19382A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154887(P2011−154887)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【特許番号】特許第4917687号(P4917687)
【特許公報発行日】平成24年4月18日(2012.4.18)
【出願人】(511170906)
【Fターム(参考)】