説明

風車ブレード用避雷導線の断線検出装置

【課題】風車ブレードに内蔵された避雷導線の断線を電気的かつ簡単に検出できるようにした断線検出装置を提供する。
【解決手段】風車ブレードに内蔵された避雷導線の断線を検出するための断線検出装置において、避雷導線22の一端から他端のレセプタ21に向けてステップ波形状の検査信号を注入する検査信号発生器40と、この検査信号発生器40の避雷導線側の電圧または電流波形を観測してその波形が避雷導線22の非断線時における波形と異なることから避雷導線22の断線を検出する測定器50と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風車ブレードに内蔵された避雷導線(ダウンコンダクタ)の断線を検出するための断線検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、風力発電機における電気回路の断線を検出する先行技術として、特許文献1に記載されたメンテナンス回路が知られている。
このメンテナンス回路は、風力発電機に対して電気的な制動操作を行っているにも関わらず風車ブレードが例えば手動により簡単に回転するような場合には、発電機コイルまたは発電機に接続された電力変換器等の電気回路が断線していると判断する機能を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−238550号公報(段落[0011]、図2等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、図4は、風力発電機の主要部を示す構成図であり、図において10は発電機等の電気回路が収納されたナセル、20は風車ブレード、21は雷を捕捉するための導体からなるレセプタ、22は風車ブレード20に内蔵されてレセプタ21とナセル10との間を電気的に接続する避雷導線、30は風車タワーである。なお、ナセル10は風車タワー30を介して接地されており、レセプタ21により捕捉した雷電流は避雷導線22、ナセル10、風車タワー30を介して大地に放流されるようになっている。
【0005】
さて、前述した特許文献1に記載された先行技術によれば、ナセル10内の発電機コイルや電気回路等の断線検出が可能であるが、この特許文献1には、避雷導線22の断線を検出する技術について特に言及されていない。また、上記先行技術では、断線検出のために作業員が風車ブレード20を手動にて回転させる必要があり、多大な労力が必要であった。
【0006】
そこで、本発明の解決課題は、風車ブレードに内蔵された避雷導線の断線を簡単に検出できるようにした断線検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、風車ブレードに内蔵された避雷導線の断線を検出するための断線検出装置において、前記避雷導線の一端から他端のレセプタに向けてステップ波形状の検査信号を注入する検査信号発生器と、この検査信号発生器の前記避雷導線側の電圧または電流波形を観測してその波形が前記避雷導線の非断線時における波形と異なることから前記避雷導線の断線を検出する測定器と、を備えたものである。
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載した風車ブレード用避雷導線の断線検出装置において、前記測定器が前記避雷導線の断線を検出したときに、前記測定器は、前記電圧または電流波形が変化する時刻と光速とを用いて前記避雷導線の断線位置を求めるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、避雷導線にステップ波形状の検査信号を注入してその応答波形を観察することにより、避雷導線の断線の有無及び断線位置を確実かつ簡単に検出することができる。これにより、避雷導線の断線を事前に検出可能として雷撃による風車ブレードの破損を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る断線検出装置の主要部を示す構成図である。
【図2】図1における検査信号発生器の内部構成図である。
【図3】本発明の実施形態の動作説明図である。
【図4】風力発電機の主要部を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
まず、図1は本発明の実施形態に係る断線検出装置の主要部を示す構成図である。図1において、40は検査信号発生器であり、電圧、電流がステップ波形状の検査信号を発生する機能を備えている。この検査信号発生器40には、図4に示した風車ブレード20内の避雷導線22の一端が接続され、その他端は前記レセプタ21に接続されている。
検査信号発生器40の筐体は前記ナセル10の筐体11に接続(接地)されており、避雷導線22の検査信号発生器40側の一端とナセルの筐体11との間には、避雷導線22の断線の有無及び断線位置を検出するための測定器50が接続されている。
【0011】
図2は、図1における検査信号発生器40の内部構成図である。
図2に示すように、検査信号発生器40は、バッテリー等の直流電源42と、抵抗43,46と、コンデンサ45と、スイッチ44,47と、これらの部品を収納する筐体41とから構成されている。コンデンサ45を充電するためのスイッチ44、及び、検査信号出力用のスイッチ47は人為的な操作により、または所定のシーケンスにより自動的に、開閉可能となっている。なお、スイッチ44を閉じることにより(このとき、スイッチ47は開)、コンデンサ45が直流電源42によって充電され、スイッチ47を閉じることにより(このとき、スイッチ44は開)、コンデンサ45の電荷が放出されて避雷導線22にステップ波形状の検査信号が注入されるようになっている。
【0012】
ここで、検査信号発生器40の回路構成は図示の例に何ら限定されるものではなく、避雷導線22の一端からステップ波形状の検査信号を注入できる回路であれば特に限定されない。
また、測定器50は検査信号発生器40から出力される検査信号による避雷導線22の電圧Vまたは電流Iの波形から避雷導線22の断線の有無及び断線位置を検出する機能を備えているが、その回路構成も何ら限定されるものではない。
【0013】
次にこの実施形態の動作を、図3を参照しつつ説明する。
図3は、検査信号発生器40側の一端からレセプタ21までの長さがLの避雷導線22と、測定器50により観察される電圧V及び電流Iの概略的な波形を示しており、図3(a)は平常時(非断線時)、図3(b)は検査信号発生器40から長さLの位置で避雷導線22が断線している場合である。
【0014】
前述した検査信号発生器40のコンデンサ45をスイッチ44,47の開閉によって充放電させることにより、検査信号発生器40から避雷導線22にステップ波形状の検査信号が注入され、これによって避雷導線22にはレセプタ21方向に向かう進行波が発生する。いま、避雷導線22が断線していない平常時の電圧Vは、図3(a)に示すように、時刻t(=2L/c)においてレセプタ21から折り返された分が重畳され、電流Iは、同じく時刻tにおいてレセプタ21から折り返された分だけ減少するような波形となる。なお、上記数式において、cは光速(電磁波の速度)である。
【0015】
一方、避雷導線22が検査信号発生器40から長さLの位置で断線している場合の電圧Vは、同様の原理により、図3(b)に示すように、時刻t(=2L/c)においてレセプタ21から折り返された分が重畳され、電流Iは、同じく時刻tにおいて減少する波形となる。
【0016】
従って、測定器50によりオシロスコープ等を用いて電圧Vまたは電流Iの波形を観察し、その値が変化する時刻tを測定したときにt<tであれば避雷導線22が断線していると判断でき、同時に、t,cを用いて断線位置L(=t/2)を算出することができる。
こうして断線の有無、断線位置が判明したら、これらの断線情報を測定器50に設けられた周知の表示器等により表示し、または遠方の監視所等に伝送する。これにより、作業員による風車ブレードの点検、修理を促すことが可能になる。
【0017】
以上のように、この実施形態によれば、避雷導線22の一端から検査信号を注入してその電圧または電流波形を観察することにより、断線の有無及び断線位置を簡単に検出することができる。
また、必要に応じて、遠方の監視局から伝送路を介して検査信号発生器40及び測定器50を遠隔操作すれば、避雷導線22の導通・断線状態を遠隔監視することも可能である。
【符号の説明】
【0018】
10:ナセル
20:風車ブレード
21:レセプタ
22:避雷導線
30:風車タワー
40:検査信号発生器
41:筐体
42:直流電源
43,46:抵抗
44,47:スイッチ
45:コンデンサ
50:測定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車ブレードに内蔵された避雷導線の断線を検出するための断線検出装置において、
前記避雷導線の一端から他端のレセプタに向けてステップ波形状の検査信号を注入する検査信号発生器と、この検査信号発生器の前記避雷導線側の電圧または電流波形を観測してその波形が前記避雷導線の非断線時における波形と異なることから前記避雷導線の断線を検出する測定器と、を備えたことを特徴とする風車ブレード用避雷導線の断線検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載した風車ブレード用避雷導線の断線検出装置において、
前記測定器が前記避雷導線の断線を検出したときに、前記測定器は、前記電圧または電流波形が変化する時刻と光速とを用いて前記避雷導線の断線位置を求めることを特徴とする風車ブレード用避雷導線の断線検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−29351(P2013−29351A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164143(P2011−164143)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、次世代風力発電技術研究開発事業(自然環境対応技術等(落雷保護対策))、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(509155782)
【出願人】(505203999)株式会社東洋設計 (4)
【Fターム(参考)】