説明

食品中のアクリルアミドを低減させる方法、低減させられた濃度のアクリルアミドを有する食品、及び商品

食品製品中のアクリルアミドの低減方法、低減させられた濃度のアクリルアミドを有する食品製品、及び商品。一態様では、当該方法は、最終的な加熱(例えば、調理)の前に食品材料中のアスパラギン濃度を低減させる工程を含む。もう1つの態様では、当該方法は、遊離アスパラギンのアミド基を加水分解可能な酵素を食品材料に添加する工程を含む。さらに別の態様では、商品は、食品製品のアクリルアミド濃度若しくはアスパラギン濃度が低減されていること又は低いことを消費者に伝える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品製品中のアクリルアミドの低減、及び低減させられた濃度のアクリルアミドを有する食品製品に関する。本発明は、さらに、商品に関する。
【背景技術】
【0002】
文明が始まって以来、炭水化物含有食品は、人間の主食となっている。今日では、パン、朝食用シリアル、ビスケット、クラッカー、クッキー、フライドポテト、調理されたデンプン質野菜、タコスの皮、及びスナック食品のような炭水化物含有食品が、広く消費されている。このような食品は、数え切れないほどの年月にわたって人間の食餌の一部となってきたが、これらの食品の多くがアクリルアミドを含有することを研究者らが発見したのは、ごく最近のことである。
【0003】
2002年4月、スウェーデン国立食品局、並びにストックホルム大学の研究者らが、潜在的な癌誘発化学物質であるアクリルアミドが、多くの種類の調理済み食品において形成されるという調査結果を発表した。アクリルアミドは、ラットでは、食品中の他の発癌物質に類似した発癌作用を有するが、ヒトの場合の食品中における相対作用はわかっていない。アクリルアミドについては限られた人口集団のデータしかなく、これらのデータは、職業曝露に起因した癌の危険の証拠を示していない。(食品中のアクリルアミドが健康に及ぼす影響に関するFAO/WHO会議:概要報告書(FAO/WHO Consultation on the Health Implications of Acrylamide in Food:Summary Report);スイス、ジュネーブ、2002年6月25〜27日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのような食品中に通常見られる濃度でヒトがアクリルアミドを消費した結果として、生じるとすればどのような健康上の影響が生じ得るのかを評価する、さらなる研究が必要であるが、多くの消費者は懸念を表明している。したがって、本発明の目的は、食品中のアクリルアミド濃度を低減させる方法を提供することである。また、本発明の目的は、低減させられた濃度のアクリルアミドを有する食品製品を提供することである。さらに、本発明の目的は、低減させられた又は低い濃度のアクリルアミドを有する食品製品を消費者に伝える商品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、本発明は、食品製品中のアクリルアミド濃度を低減させる方法を提供する。一実施形態では、当該方法は、加熱前に食品材料にアスパラギン低減酵素を添加する工程を含む。
もう1つの態様では、本発明は、食品材料中のアスパラギン濃度を低減させる方法を提供する。一実施形態では、当該方法は、加熱前に食品材料にアスパラギン低減酵素を添加する工程を含む。
もう1つの態様では、本発明は、低減させられた濃度のアクリルアミドを有する食品製品を提供する。
さらに別の態様において本発明は、低減させられた又は低い濃度のアクリルアミド又はアスパラギンを有する食品製品を消費者に伝える商品を提供する。
【0006】
本明細書で引用されるすべての文献は、その関連部分において本明細書に参考として組み込まれており、いかなる文献の引用も、それが本発明に対する先行技術であることを容認するものと解釈すべきではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本出願人らは、事実上すべての生物システムに見られる天然由来のアミノ酸であるアスパラギンが、加熱されたときにアクリルアミドを形成する可能性があることを見出した。したがって、アスパラギンを豊富に含む食品ほど、加熱されたときに、より高濃度のアクリルアミドを含有する傾向にあり、これは、アスパラギン含有食品が還元糖類の存在下で加熱されるときに特に言えることである。また、最終的な湿分含量がより低くなるように食品が調理されるときに、アクリルアミドの形成が増加することが見出されている。
【0008】
理論に制限されるものではないが、アクリルアミドは、食品製品中で図1に示した反応機構を介して生成すると考えられている。遊離アスパラギンのα−アミン基がカルボニル源と反応して、シッフ塩基を形成すると考えられている。熱が加わると、このシッフ塩基付加物が脱炭酸化して生成物を形成する。この生成物は、(1)加水分解してβ−アラニンアミドを形成し(熱が加わるとこれがさらに分解(degrade)してアクリルアミドを形成し得る)、又は(2)腐敗分解(decompose)してアクリルアミドとそれに対応するイミンとを形成する可能性がある。(本出願人らは、丸で囲んだ前駆原子がアクリルアミド中の炭素及び窒素を含むことを見出した。)
それ故に、本出願人らはさらに、調理前に食品中のアスパラギンを除去するか、又は当該アスパラギンを別の物質に変化させることによって、加熱された食品中のアクリルアミドの形成を低減できることを見出した。アスパラギン含有濃度が低減されたこのような食品が加熱されるときには、形成されるアクリルアミドの量が減少する。
【0009】
本出願人らは、食品を加熱(例えば、調理)する前に、アスパラギンの側鎖上にあるアミド基を加水分解する酵素を添加すると、完成食品製品中に存在するアクリルアミドの濃度が減少されることを見出した。理論に制限されるものではないが、このような酵素の添加が、アスパラギンの側鎖を分解し、それによってアスパラギンがアクリルアミドを形成するのを妨げると考えられている。その際、アミド結合が加水分解され、アスパラギンがアスパラギン酸に変化する。この反応機構は、図2に示されている。
【0010】
本明細書の方法に使用するのに好ましい酵素類には、これだけに限定するものではないが、アスパラギナーゼが含まれる。ただし、遊離アスパラギンのアミド基を加水分解してアクリルアミドの形成を防ぐことが可能な酵素は、いずれも本発明の範囲内である。
【0011】
食品加工において酵素を使用する多数の利点がある。これらの利点には、(a)それらが天然の非毒性物質であること;(b)それらが一般に、不要な副反応を引き起こさずに所与の反応を触媒すること;(c)それらが非常に穏やかな温度及びpH条件下で活性であること;(d)それらが低濃度で活性であること;(e)温度、pH、及び使用する酵素の量を調整することによって、反応速度を制御できること;並びに(f)反応が所望の程度まで進んだ後にそれらを不活性化できることが含まれる。(食品化学(Food Chemistry)、第4版、オーウェンR.フェネマ(Owen R.Fennema)編、マーセル・デッカー社(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク、1985、427ページ、433ページ。)
【0012】
A.(食品製品中のアクリルアミドの低減方法)
一態様では、本発明は、食品製品中のアクリルアミドの低減方法を提供する。一実施形態では、当該方法は、最終的な加熱(例えば、調理)の前に食品材料中のアスパラギン濃度を低減させる工程を含む。もう1つの態様では、当該方法は、遊離アスパラギンのアミド基を加水分解可能な酵素を、食品材料に添加する工程を含む。好ましい酵素は、アスパラギナーゼである。
【0013】
もう1つの態様では、本発明は、食品製品中のアスパラギンの低減方法を提供する。一実施形態では、当該方法は、遊離アスパラギンのアミド基を加水分解可能な酵素を、食品材料に添加する工程を含む。好ましい酵素は、アスパラギナーゼである。
好ましい実施形態では、本発明は、食品中のアクリルアミド濃度を低減させる方法であって:
(1)食品材料にアスパラギン低減酵素を添加する工程であって、前記食品材料がアスパラギンを含む工程と;
(2)任意選択的に酵素と食品材料とを混合する工程と;
(3)酵素にとって十分な時間、アスパラギンと反応させる工程と;
(4)任意選択的に酵素を不活性化させる又は任意選択的に酵素を除去する工程と;
(5)食品材料を加熱して完成した食品製品を形成する工程とを含む方法を提供する。
【0014】
1.(食品材料にアスパラギン低減酵素を添加する工程であって、前記食品材料がアスパラギンを含む工程)
本明細書で使用するとき、「アスパラギン低減酵素」には、食品製品中のアスパラギン濃度を低減可能なあらゆる酵素が含まれる。一実施形態では、アスパラギン低減酵素は、遊離アスパラギンのアミド基を加水分解可能な酵素である。本明細書に用いるのに好ましい酵素は、アスパラギナーゼである。アスパラギナーゼの好ましい供給元は、シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、カタログ#A2925である。
【0015】
本明細書で使用するとき、用語「アスパラギン低減酵素」及び「酵素」には、1つ又は複数の酵素が含まれており;例えば、2つ以上の酵素の混合物は、この用語に含まれる。例えば、アスパラギン低減作用を有するデアミダーゼ類がこの用語に含まれる。
【0016】
本明細書で使用するとき、「食品材料」には、これだけに限定するものではないが、2つ以上の食品の混合物を含めて、食品の調製に使用されるあらゆる食用材料が含まれる。「食品材料」には、あらゆる種類のアスパラギン含有食品、食品製品、食品成分、又はこれらの混合物が含まれる。食品材料は、生の形態又は予備処理された形態を含め、いずれか好適な形態にすることができる。食品材料の好適な予備処理方法には、これだけに限定するものではないが、湯通し(blanching)、蒸気処理、ボイル、切り刻み、浸け込み(macerating)、粉砕、粒径の縮小、熱による乾燥、及びこれらの組み合わせが含まれる。
【0017】
酵素は、いずれか好適な形態で食品材料に添加してよい。例えば、酵素を、粉末として、又は溶液の形態で添加してよい。さらに、酵素を、直接的な方式(例えば、食品材料に振りかけ、注ぎ、若しくは吹き付ける方式)又は間接的な方式のようないずれか好適な方式で、食品材料に添加してよい。一実施形態では、酵素は、アスパラギンを含有しない食品と混合され、次いで、得られる混合物がアスパラギン含有食品に添加される。もう1つの実施形態では、アスパラギンの少なくとも一部分が食品材料から抽出され、得られる抽出物が酵素で処理され、次いで抽出物の少なくとも一部分が食品材料の少なくとも一部分に戻される;例えば、酵素を流れに添加してよく、あるいは、ポンプ作用によって流れを固定化酵素のベッド若しくはカラム(酵素が、基材、好ましくは不活性基材、例えばカラム内のプラスチック片若しくはビーズに吸着され、又は化学結合している)に通過させてもよい。本明細書で使用するとき、食品材料に酵素を「添加する」には、これだけに限定するものではないが、アスパラギンと酵素を1つに合わせるいずれかの手段が含まれる。
【0018】
酵素は、当該方法のいずれか好適な段階で食品材料に添加してよい。例えば、生地の混合の間に、酵素を他の成分とともに添加してよい。一実施形態では、浸け込みの前、浸け込みの間、若しくは浸け込みの後に、食品材料に酵素を添加することができる。もう1つの実施形態では、食品材料が水に浸されてから、酵素が添加される。
酵素類は、重量又は体積ではなく、活性単位によって販売される。したがって、完成食品製品において所望のアクリルアミド低減レベルを達成するのに必要な酵素の有効量は、使用される特定の酵素製品の活性に左右される。
【0019】
添加すべき酵素の量は、望ましいアスパラギン低減レベル、したがって、望ましいアクリルアミド低減レベルに左右されることがある。また、添加すべき酵素の量は、食品材料中に存在するアスパラギンの量に左右されることもあり、アスパラギンを多く含む食品材料ほど、一般に、同一のアクリルアミド低減レベルを達成するのに、より高い濃度の酵素、又はより長い反応時間を必要とする。また、添加すべき酵素の量は、使用される特定の酵素(例えば、特定の酵素がアスパラギンを分解する能力)並びに処理される特定の食品材料に左右されることもある。当業者は、具体的な食品材料、具体的な酵素、酵素の具体的な活性、及び所望の成果に基づいて、酵素の有効量を決定することができる。
【0020】
2.(任意選択的に酵素と食品材料とを混合する工程)
任意選択的ではあるが、好ましくは、酵素は、食品材料と完全に混合される。いずれか好適な混合方法を使用することができる。一実施形態では、混合は、食品材料の浸け込み及び酵素の添加と同時に実施される。もう1つの実施形態では、酵素を水に溶解させてから、食品材料に添加する。
【0021】
3.(酵素にとって十分な時間、アスパラギンと反応させることが可能な工程)
酵素がアスパラギンと反応するのに必要な時間量は、これだけに限定するものではないが、所望のアクリルアミド低減レベル、特定の食品材料の特徴(例えば、化学的組成、存在するアスパラギンの量、粒径)、及び添加される特定の酵素を含めた因子に左右される。好ましくは、アスパラギン濃度が少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約50%、さらに好ましくは少なくとも約70%、さらに好ましくは少なくとも約90%低減された食品材料をもたらすのに十分な時間量にわたって、酵素を反応させる。一般に、酵素を長く反応させるほど、アスパラギン低減レベルが大きく、したがってアクリルアミド低減レベルが大きい。酵素にとって十分な時間反応させる工程は、いずれか好適な方式で実施することができる;例えば、食品材料に酵素を添加する工程と同時に、若しくは酵素と食品材料とを混合する工程と同時に、又はこれらの組み合わせで実施することができる。
【0022】
当該技術分野において既知のように、pH及び温度は、酵素活性に影響を及ぼす因子である。当業者は、これら及び他のパラメータ(例えば、水分含量)の最適条件を容易に決定できるはずである。加えて、具体的な酵素類に最適なpH及び温度条件は、通常、文献及び/又は酵素の供給元から入手可能である。
【0023】
4.(任意選択的に酵素を不活性化させる又は任意選択的に酵素を除去する工程)
酵素が所望の程度まで反応した後、任意選択的に当該酵素を不活性化させ、又は食品材料から除去することができる。消費に安全な(例えば、天然に存在し、一般的な食品に見られる)酵素が使用されるときには、酵素を不活性化又は除去しないことを選択してもよい。あるいは、酵素を不活性化させるいずれか好適な手段によって、当該酵素を不活性化させることもできる。例えば、熱の使用、pH調整、プロテアーゼによる処理、又はこれらの組み合わせを通じて、酵素を不活性化させることができる。さらに、これだけに限定するものではないが、抽出を含めたいずれか好適な手段によって、酵素を食品材料から除去することができる。酵素を不活性化させ、若しくは除去することができ、又は、酵素に不活性化と除去との組み合わせを実施することができる。
【0024】
5.(食品材料を加熱して完成した食品製品を形成する工程)
次いで、焼く、揚げる、押し出す、乾燥させる(例えば、真空オーブン若しくはドラム乾燥機による)、膨らませる、又は電子レンジにかけるような通常の方式で、食品材料を加熱することができる。加熱工程の間に、酵素の少なくとも一部分を食品材料に添加してよい。酵素の不活性化は、加熱を通じて起こってもよく、したがって任意の不活性化工程及び調理工程を同時に実施してよい。調理を介した熱加工は、酵素を変性且つ不活性化させることができるので、食品材料は、継続的な酵素活性にさらされない。さらに、酵素反応に見込まれた時間の少なくとも一部分を、加熱工程の間に実施してもよい。
【0025】
本明細書で使用するとき、用語「完成食品製品」又は「食品製品」には、これだけに限定するものではないが、すぐに消費できる食品、及び他の食品を調製するための成分として使用される食品が含まれる。
好ましくは、完成食品製品中のアクリルアミド濃度は、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約50%、さらに好ましくは少なくとも約70%、さらに好ましくは少なくとも約90%低減させられる。
【0026】
B.(方法を実施する手段)
本発明は、いずれか好適な手段によって実施することができる。例えば、本明細書の方法は、バッチ、セミバッチ、又は連続モードで実施することができる。
【0027】
C.(低減させられた濃度のアクリルアミドを有する食品製品)
本明細書の方法によって調製される食品製品は、アクリルアミド濃度が少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約50%、さらに好ましくは少なくとも約70%、さらに好ましくは少なくとも約90%低減させられたものにすることができる。
【0028】
本明細書の方法は、調製の間に加熱される、これだけに限定するものではないが、炭水化物含有食品、特に低湿分食品(例えば、約10%未満)を含めた、いずれか好適な食品製品の生成に適用することができる。例えば、当該方法を使用して、マッシュポテト、ポテトチップ、加工スナック食品、フライドポテト、朝食用シリアル、パン、クッキー、クラッカー、トースターペストリー、ピザクラスト、プレッツェル、ハッシュブラウン、テイタートット(tater tots)、コーントルティーヤ、及びタコスの皮に見られるアクリルアミドの濃度を低減させることができる。
【0029】
一実施形態では、揚げた加工ポテトクリスプは、約400ppb未満、好ましくは約300ppb未満、より好ましくは約200ppb未満、さらに好ましくは約50ppb未満、最も好ましくは約10ppb未満のアクリルアミドを有する。
さらにもう1つの実施形態では、切ったジャガイモから製造されるフライドポテトは、約40ppb未満、好ましくは約30ppb未満、より好ましくは約20ppb未満、最も好ましくは約10ppb未満のアクリルアミドを有する。
さらにもう1つの実施形態では、トルティーヤチップ及びコーンチップは、約75ppb未満、好ましくは約50ppb未満、より好ましくは約10ppb未満のアクリルアミドを有する。
【0030】
本明細書の方法は、一般に、好ましいジャガイモ食品製品及びトルティーヤチップの点から記載されるが、本明細書の方法を好適な食品製品のいずれにも適用できることが当業者には理解されるはずである。その非限定例には、クラッカー、パン(例えば、ライ麦、小麦、オート麦、ジャガイモ、精白小麦粉(white)、全粒製品、混合粉、ローフ、ツイスト、バンズ、ロール、ピタ、マツァ、フォカッチャ、メルバトースト、ツビーバック、クルトン、ソフトプレッツェル、ソフトブレッドスティック及びハードブレッドスティック、温めるだけのパン(heat and serves))、トースターペストリー、クッキー、デニッシュ、クロワッサン、タルト、パイクラスト、ペストリー、マフィン、ブラウニー、シートケーキ、ドーナツ、スナック食品(例えば、プレッツェル、トルティーヤチップ、コーンチップ、ポテトチップ、加工スナック、加工ポテトクリスプ、押出スナック、押し出されて詰め物をされたスナック、トレイルミックス、グラノーラ、スナックミックス、シューストリングポテト)、小麦粉、コーンミール、ポレンタ、ミックス(例えば、ケーキミックス、ビスケットミックス、ブラウニーミックス、ブレッドミックス、パンケーキミックス、クレープミックス、衣用ミックス、ピザ生地)、冷蔵生地(例えば、ビスケット、パン、ブレッドスティック、クロワッサン、ディナーロール、ピザ生地、クッキー、デニッシュ、ブラウニー、パイクラスト)、冷凍食品(例えば、パイクラスト、パイ、タルト、ターンオーバー、ピザ、フードポケット、ケーキ、フライドポテト、ハッシュブラウン、鶏肉や魚のようなパン粉付き製品、パン粉付き野菜)、ベーグル、朝食用シリアル、ビスケット、フライドポテト、野菜(例えば、乾燥野菜、グリルした野菜、ローストした野菜、直火で焼いた(broiled)野菜、揚げた野菜、真空乾燥野菜)、タコシェル、ハッシュブラウン、マッシュポテト、トースト、グリルしたサンドイッチ、フラワトルティーヤ及びコーントルティーヤ、クレープ、パンケーキ、ワッフル、バッター、ピザクラスト、米、ハーブ、スパイス、ナッツ、ナッツ系食品(例えば、ピーナッツバター、刻んだナッツを含む食品)、果物(例えば、乾燥果物、グリルした果物、ローストした果物、直火で焼いた果物、揚げた果物、真空乾燥果物、焼いた果物、ジャム、パイの詰め物、フランベ、レーズン)、ハシュパピー、アルコール飲料(例えば、ビール及びエール)、ローストしたカカオ豆を含む製品(例えば、ココア、チョコレート、菓子のコーティング、ホットチョコレート、ホットチョコレートミックス、キャンディバー)、並びに動物用食品(例えば、ドッグフード、キャットフード、フェレットフード、ギニアピッグフード、スナネズミフード、ハムスターフード、バードフード、ラマフード、ダチョウフード、エミューフード、ウシフード、シカフード、ヘラジカフード、バッファローフード、ラビットフード、ラットフード、マウスフード、ニワトリフード、シチメンチョウフード、ブタフード、ウマフード、ヤギフード、ヒツジフード、サルフード、フィッシュフード)が含まれる。
【0031】
1.(脱水ジャガイモ製品)
本発明を使用して、低減させられた濃度のアクリルアミドを有する脱水ジャガイモ製品を製造することができる。以下は、そのような脱水ジャガイモ製品を製造する好ましい方法を示すが、本発明は、この特定の実施形態だけに限定されない。以下で詳細に示される実施形態は、調理されたジャガイモが粉砕される前に酵素を添加することを記載しているが、脱水ジャガイモ製品を製造するいずれか好適なプロセスのいずれの好適な段階で酵素を添加してもよいことを理解すべきである。例えば、調理前、調理後、粉砕前、粉砕後、又は最終的な脱水ジャガイモ製品が形成される前のいずれか好適な他の加工工程の間に、ジャガイモに酵素を添加してよい。さらに、他の実施形態の非限定例は、(a)生のジャガイモに酵素を添加した後、従来の脱水ジャガイモ加工を実施する工程、(b)生のジャガイモに酵素を添加した後、千切り若しくは薄切りにして、従来の加工を実施する工程、(c)生のジャガイモに酵素を添加した後、千切り若しくは薄切りして、湯通し(blanching)してから、従来の加工を実施する工程、(d)湯通しした、千切りした、若しくは薄切りしたジャガイモに酵素を添加した後、従来の加工を実施する工程、又は(e)酵素を添加するいずれかの好適な他の手段を含んでよい。本明細書の方法は、また、ジャガイモの加工(Potato Processing)、第4版、タルバート(Talburt)及びスミス(Smith)編、AVIブックス(AVI Books)、ファン・ノストランド・ラインホールド社(Van Nostrand Reinhold Co.)、ニューヨーク、1987[以後「ジャガイモの加工(Potato Processing)」]、535〜646ページに示されているような、当該技術分野において既知の、脱水ジャガイモ製品を製造するいずれか好適な方法によって実施してもよい。
【0032】
好ましい実施形態では、ポテトフレーク、ポテトフラニュール、若しくはポテトグラニュールのような脱水ジャガイモ製品を、以下の方法に従って製造することができる。当該方法は、概ね、(1)ジャガイモを調理する工程;(2)アスパラギン低減酵素を調理済みのジャガイモに添加する工程;(3)水分を含んだマッシュを形成する工程;及び(4)マッシュを乾燥させて脱水ジャガイモ製品を形成する工程を含む。
【0033】
従来のポテトフレーク、ポテトフラニュール、若しくはポテトグラニュールを調製するのに使用されるようないずれか好適なジャガイモを使用して、本明細書の脱水ジャガイモ製品を調製することができる。好ましくは、脱水ジャガイモ製品は、これだけに限定するものではないが、ノールチップ(Norchip)、ノールゴールド(Norgold)、ラセットバーバンク(Russet Burbank)、レディロゼッタ(Lady Rosetta)、ノールコター(Norkotah)、セベーゴ(Sebago)、ビンチェ(Bintje)、オーロラ(Aurora)、サターナ(Saturna)、キネベック(Kinnebec)、アイダホラセット(Idaho Russet)、アルチュラ(Altura)、ラセットノールコター(Russet Norkotah)、アトランティック(Atlantic)、シェポディー(Shepody)、アステリクス(Asterix)、及びメントール(Mentor)のようなジャガイモから調製される。
【0034】
還元糖類を約5%未満(脱水ジャガイモを基準に計算)、好ましくは約3%未満、より好ましくは約2%未満有するジャガイモが好ましい。例えば、低濃度の還元糖類(すなわち、<1.5%)を有するジャガイモは、フライドポテトスナックに特に好ましい。
【0035】
ジャガイモには、マッシュするためにジャガイモを柔らかくする調理が実施される。ジャガイモは、皮をむいても、部分的に皮をむいても、皮をむかなくてもよい。ジャガイモは、丸ごとでも、調理前に薄切りしていずれかのサイズの小片にしてもよい。調理手順は、マッシュするためにジャガイモを柔らかくする、いずれかの熱的調理プロセス又は他のタイプの調理プロセスにすることができる。例えば、水に沈めることによって、又は蒸気によって、ジャガイモを調理してよい。
【0036】
例えば、平均厚さが約0.95センチ〜約1.27センチ(約3/8インチ〜約1/2インチ)のポテトスライスは、通常、温度約93℃(200°F)〜約121℃(250°F)の蒸気で、約12〜約45分、より具体的には約14〜約18分にわたって調理される。シューストリングカットされたジャガイモ片は、通常、所望の硬さを達成するために、温度約93℃(200°F)〜約121℃(250°F)の蒸気で、約7〜約18分、より具体的には約9〜約12分にわたって調理される。
【0037】
次に、有効量の酵素、好ましくはアスパラギナーゼが、調理済みのジャガイモに添加される。使用されるアスパラギン低減酵素の機能的温度範囲に応じて、調理済みのジャガイモには、酵素の添加前に、初めに温度調整が必要なことがある。次いで、調理済みのジャガイモが粉砕されて、水分を含んだマッシュを生成する。調理済みのジャガイモの粉砕は、これだけに限定するものではないが、搾り出し(ricing)、マッシュ、千切り、又はこれらの組み合わせのような、いずれか好適な手段によって達成してよい。
【0038】
水分を含んだマッシュに任意成分を添加して混合することができる。このような任意成分には、デンプンを含めることができる。デンプンには、これだけに限定するものではないが、マッシュに添加される若しくは戻される乾燥ジャガイモ製品を含んだ、いずれか好適な天然のデンプン又は加工デンプンを含むことができる。また、水分を含んだマッシュに、加工助剤として任意選択的に乳化剤を添加することもできる。
【0039】
マッシュが形成された後、それをさらに後述のように乾燥させて加工して、脱水ジャガイモ製品を形成することができる。あるいは、水分を含んだマッシュを使用して、これだけに限定するものではないが、マッシュポテト、ポテトパティ、ポテトパンケーキ、並びに、押出フレンチフライ、ポテトスティック、スナックチップのようなポテトスナックなどの製品を生成することもできる。
【0040】
例えば、水分を含んだポテトマッシュを使用して、米国特許第3,085,020号(バッキンガー(Backinger)ら、1963年4月9日発行)に記載のような、押出フレンチフライドポテト製品を生成することができる。
マッシュの形成後、このマッシュを乾燥させて脱水ジャガイモ製品を形成する。これらの脱水ジャガイモ製品は、これだけに限定するものではないが、フレーク、フラニュール、グラニュール、粒塊、シート、小片、一口大、粉、又は粒子のようないずれかの形態にすることができる。
【0041】
当該技術分野において既知の手順のような、マッシュからこのような脱水ジャガイモ製品を生成するいずれの好適な手順を使用してもよく、いずれの好適な機器を使用してもよい。例えば、米国特許第6,066,353号(ビラグラン(Villagran)ら、2000年5月23日発行)に記載のプロセスや、米国特許第2,759,832号(コーディング(Cording)ら、1956年8月19日発行)及び同第2,780,552号(ウィラード(Willard)ら、1957年2月5日発行)に記載のプロセスのような既知のプロセスに従って、マッシュを乾燥させて、フレークを生成することができる。米国特許第6,287,622号(ビラグラン(Villagran)ら、2001年9月11日発行)に示されているプロセスに従って、マッシュを乾燥させて、フラニュールを製造することができる。米国特許第3,917,866号(パーヴズ(Purves)ら、1975年11月4日発行)に記載のプロセスに従って、又は、米国特許第2,490,431号(グリーン(Greene)ら、1949年12月6日発行)に記載のプロセスのような他の既知のプロセスにより、マッシュを加工することによって、グラニュールを生成することができる。好適な乾燥機は、これだけに限定するものではないが、流動床乾燥機、掻き取り壁式熱交換器、ドラム乾燥機、凍結乾燥機、エアリフト乾燥機などを含めた周知の乾燥装置から選択することができる。
【0042】
好ましい乾燥方法には、熱の全投入量を低減させる方法が含まれる。例えば、フレークを生成するときには、凍結乾燥、ドラム乾燥、共鳴若しくはパルスフロー乾燥、赤外線乾燥、又はこれらの組み合わせが好ましく、グラニュールを生成するときには、エアリフト乾燥、流動床乾燥、又はこれらの組み合わせが好ましい。
本明細書の脱水ジャガイモ製品は、主にフレークの点から記載されるが、本発明のポテトマッシュを脱水して、マッシュから得ることのできるあらゆる望ましい脱水ジャガイモ製品を生成できることが、当業者には容易に明らかなはずである。
【0043】
ジャガイモ製品産業で一般に使用されるドラム乾燥機によるようなドラム乾燥は、ポテトマッシュを乾燥させてフレークを形成する好ましい方法である。好ましいプロセスは、単一ドラム乾燥機を使用し、その際、水分を含んだポテトマッシュが、厚さ約0.127mm(0.005”)〜約2.54mm(0.1”)、好ましくは約0.127mm(0.005”)〜約1.27mm(0.05”)、より好ましくは約0.254mm(0.01”)の薄いシート状でドラム上に広げられる。通常、ドラム乾燥機が使用されるときには、マッシュは、コンベヤ手段によってドラムの上面に送られる。加熱されていない直径の小さいロールが、新しいポテトマッシュを既にドラム上にある部分へと押し当て、それによって所定の厚さを有するシート又は層を構築する。小さいロールの周辺速度は、ドラムの周辺速度と同一である。マッシュの層がドラム周囲の一部の周りを移動した後、ドクターナイフが乾燥したシートをドラムから剥がすことによって当該シートを取り外す。通常、ドラム乾燥機自体は、ドラム内に入っている圧力約483kPa(70psig)〜約965kPa(140psig)の加圧蒸気によって、約121℃(250°F)〜約191℃(375°F)、好ましくは約154℃(310°F)〜約177℃(350°F)、より好ましくは約160℃(320°F)〜約167℃(333°F)の範囲の温度に加熱される。最良の結果を得るために、乾燥機のドラムの回転速度及びその内部温度は、湿分含量約5%〜約14%、好ましくは約5%〜約12%の最終製品をもたらすように好適に制御される。通常、約9秒/回転〜約25秒/回転、好ましくは約11秒/回転〜約20秒/回転の回転速度で十分である。
【0044】
水分を含んだマッシュがシート状にされて乾燥された後、望むなら、得られた乾燥フレークシートを小さい断片に砕くことができる。これら小さい断片は、所望のいずれのサイズにすることもできる。破砕する、挽く、砕く、切る、粉末化するなど、デンプン及びジャガイモ細胞の損傷を最小限に抑える、シートを砕くあらゆる方法を使用することができる。例えば、アーシェル・ラボラトリーズ社(Urschel Laboratories,Inc.)(米国インディアナ州バルパライソ(Valparaiso))製の、シートを破壊するアーシェル・コミトロール(Urschel Comitrol)(商標)を用いて、シートを粉砕することができる。あるいは、フレークシートを粉砕せずにそのままにしておくこともできる。本明細書で使用するとき、元のままのフレークシートと小さなシート断片の両方が、用語「ポテトフレーク」に含まれる。
【0045】
2.(脱水ジャガイモ製品から製造される食品)
アスパラギンが低減された脱水ジャガイモ製品を使用して、いずれか好適な食品製品を製造することができる。脱水ジャガイモ製品の特に好ましい用途は、生地から製造される加工スナック、好ましくは加工チップの生成における用途である。そのような加工チップの例には、米国特許第3,988,975号(リエパ(Liepa)、1976年12月21日発行)、米国特許第5,464,642号(ビラグラン(Villagran)ら、1995年11月7日発行)、米国特許第5,464,643号(ロッジ(Lodge)、1995年11月7日発行)、及びPCT国際公開特許WO96/01572(ドーズ(Dawes)ら、1996年1月25日公開)に記載のものが含まれる。
【0046】
また、生地成分に追加的な酵素を添加することもできる。一実施形態では、加工スナックは、
(1)アスパラギン低減酵素を生地に添加する工程と;
(2)生地からスナック片を形成する工程と;
(3)スナック片を調理して加工スナックを形成する工程とを含む方法によって製造される。
【0047】
調理は、いずれか好適な方法によって、例えば、揚げることによって、若しくは焼くことによって、又は揚げることと焼くことの組み合わせによって、実施することができる。さらに、形成工程及び調理工程は、押出スナック製品の場合のように、同時に実施することもできる。
【0048】
もう1つの実施形態では、加工スナックは、
(1)乾燥成分をブレンドする工程と;
(2)任意選択的に乾燥成分に乳化剤を添加する工程と;
(3)水を添加する工程と;
(4)混合して生地を形成する工程と;
(5)生地シートを形成する工程と;
(6)生地シートからスナック片を形成する工程と;
(7)スナック片を調理して加工スナックを形成する工程とを含む方法によって製造される。
【0049】
酵素は、当該プロセスのいずれか好適な段階で添加することができ、例えば、ブレンドする工程の間、任意選択的に乳化剤を添加する工程の間、水を添加する工程の間、混合する工程の間、及び/又は形成する工程の間に、酵素を添加してよい。あるいは、酵素を、好ましくは溶液として、生地表面に適用することもでき、この適用は、生地シートからスナック片が形成される前又は後のいずれかに実施することができる。一実施形態では、酵素溶液が生地シートの表面に添加される。
【0050】
また、脱水ジャガイモ製品に水を加えて戻し、それを使用して、マッシュポテト、ポテトパティ、ポテトパンケーキ、並びに、押出フライドポテトやポテトスティックなどの他のポテトスナックのような食品製品を生成することもできる。例えば、脱水ジャガイモ製品を使用して、米国特許第3,085,020号(バッキンガー(Backinger)ら、1963年4月9日発行)、及び米国特許第3,987,210号(クレマー(Cremer)、1976年10月18日発行)に記載のような押出フレンチフライドポテト製品を生成することができる。また、脱水ジャガイモ製品は、パン、グレービー、ソース、ベビーフード、又は他のいずれか好適な食品製品に使用することもできる。
【0051】
もう1つの実施形態では、従来の脱水ジャガイモ製品を使用して、生地から加工スナック、好ましくは加工チップを製造する。この実施形態では、アスパラギン低減酵素が生地成分に添加され、次いで、加工スナックを製造するいずれか好適な手段によって、生地が加工される。
【0052】
3.(ポテトチップ)
本発明を使用して、低減させられた濃度のアクリルアミドを有するポテトチップを製造することができる。以下は、そのようなポテトチップ製品を製造する好ましい方法を示すが、本発明は、この特定の実施形態だけに限定されない。例えば、酵素は、ジャガイモの加工(Potato Processing)の371〜489ページに示されるような、当該技術分野で認められているポテトチップ作製方法のいずれか好適な加工段階で添加してよい。
【0053】
好ましい実施形態では、本発明は、
(1)任意選択的にジャガイモの皮をむく工程と;
(2)任意選択的にジャガイモを洗う工程と;
(3)ジャガイモを薄切りしてポテトスライスを形成する工程と;
(4)任意選択的にポテトスライスをすすぐ工程と;
(5)任意選択的にポテトスライスを湯通しする工程と;
(6)任意選択的にポテトスライスを冷却する工程と;
(7)ポテトスライスにアクリルアミド低減酵素を添加する工程と;
(8)任意選択的にポテトスライスを乾燥させる工程と;
(9)ポテトスライスを揚げてポテトチップを形成する工程とを含む、ポテトチップ中のアクリルアミド濃度を低減させる方法を提供する。
【0054】
最も好ましくは、ポテトスライスが湯通しされてから酵素が添加される。以上では、上記工程(7)での酵素の添加を記載しているが、酵素を当該プロセスのいずれの好適な段階で添加してもよいことを理解すべきである。例えば、薄切りの前、薄切りの後、すすぎの後、湯通しする間、冷却する間、又は、任意の乾燥工程が実施される場合には乾燥前のいずれか好適な他の段階で、あるいは、ポテトスライスが任意選択的に乾燥されない場合には揚げる前のいずれか好適な他の段階で、酵素をジャガイモに添加してよい。
【0055】
もう1つの実施形態では、アスパラギンを含有する、ポテトスライスの湯通し及び浸漬溶液が、固定化されたアスパラギン低減酵素を含むカラム内にポンプで送り込まれる。カラムからの流出液は、ポテトスライスに戻される。ポテトスライスは、次いで、典型的な加工手順に従って加工される。この方式で当該方法を実施すると、湯通し工程及び酵素処理工程の間に失われることのあるジャガイモの自然な風味の少なくとも一部をチップに戻すことができる。
【0056】
本明細書の方法によって製造されるポテトチップのアクリルアミド含量は、約150ppb未満、好ましくは約100ppb未満、より好ましくは約50ppb未満、さらに好ましくは約10ppb未満、最も好ましくは約5ppb未満にすることができる。
【0057】
4.(フライドポテト)
本発明を使用して、低減させられた濃度のアクリルアミドを有するフライドポテトを製造することができる。以下は、そのようなフライドポテトを製造する好ましい方法を示すが、本発明は、この特定の実施形態だけに限定されない。例えば、酵素は、ジャガイモの加工(Potato Processing)の491〜534ページに示されている方法、又は米国特許第6,001,411号及び同第6,013,296号に記載の方法のような、当該技術分野で認められているフライドポテト製造方法のいずれか好適な加工段階で添加してよい。
【0058】
好ましい実施形態では、本発明は、
(1)任意選択的にジャガイモの皮をむく工程と;
(2)任意選択的にジャガイモを洗う工程と;
(3)ジャガイモを切ってポテトストリップを形成する工程と;
(4)任意選択的にポテトストリップをすすぐ工程と;
(5)任意選択的にポテトストリップを湯通しする工程と;
(6)任意選択的にポテトストリップを冷却する工程と;
(7)ポテトストリップにアクリルアミド低減酵素を添加する工程と;
(8)任意選択的にポテトストリップを乾燥させる工程と;
(9)任意選択的にポテトストリップをコーティングする工程と;
(10)ポテトストリップを低温の油で揚げて(par-frying)パーフライ(par-fries)を形成する工程とを含む、フライドポテト中のアクリルアミド濃度を低減させる方法を提供する。
【0059】
次いでこのパーフライを、後で揚げて最終的なフライドポテトを形成するために、冷凍し、包装し、且つ保管することができる。
最も好ましくは、ポテトストリップが湯通しされてから酵素が添加される。コーティングされたフライドポテトが望ましい場合、デンプンや、1以上のデンプンを含む物質のブレンドのような、好適なコーティング物質を使用して、低温の油で揚げる前にポテトストリップをコーティングすることができる。以上では、上記工程(7)での酵素の添加を記載しているが、酵素を当該プロセスのいずれの好適な段階で添加してもよいことを理解すべきである。例えば、切る前、切った後、すすぎの後、湯通しする間、冷却する間、又は、任意の乾燥工程が実施される場合には乾燥前のいずれか好適な他の段階で、あるいは、ポテトストリップが任意選択的に乾燥されない場合には低温の油で揚げる前のいずれか好適な他の段階で、酵素をジャガイモに添加してよい。あまり好ましくないが、低温の油で揚げる工程と、最終的なフライドポテトを形成するために最後に揚げる工程との間に、酵素を添加してもよい。
【0060】
本発明のパーフライから製造される完成フライドポテトのアクリルアミド含量は、約40ppb未満、好ましくは約30ppb未満、より好ましくは約20ppb未満、最も好ましくは約10ppb未満にすることができる。
【0061】
5.(トルティーヤチップ)
トルティーヤチップは、特に人気のある消費者スナック製品である。トルティーヤチップは、伝統的には、高温の石灰溶液中で約5〜約50分調理されてから一晩浸された全穀粒トウモロコシから製造される。この調理から浸すまでのプロセスは、外皮を柔らかくし、トウモロコシの胚乳中のデンプンを部分的にゼラチン化させる。この調理されて浸されたトウモロコシは、「ニシュタマル(nixtamal)」と呼ばれ、これが次に洗われて外皮を除去され、挽かれて、「マサ(masa)」として知られる湿分含量約50%の柔軟性のある生地を形成する。挽かれたばかりのマサは、シート状にされ、スナック片に切断され、湿分含量が約20%〜約35%に減少するように温度302℃〜316℃(約575°F〜約600°F)で約15〜約30秒焼かれる。焼かれたスナック片は、次いで、高温の油の中で揚げられて、湿分含量約3%未満のトルティーヤチップを形成する。例えば、米国特許第2,905,559号(アンダーソン(Anderson)ら、1958年11月1日発行)、米国特許第3,690,895号(アマドン(Amadon)ら、1972年9月12日発行)、及びトウモロコシ:化学と技術(Corn:Chemistry and Technology)、米国穀物化学者学会(American Association of Cereal Chemists)、スタンリーA.ワトソン(Stanley A.Watson)他編、410〜420ページ(1987)を参照のこと。
【0062】
トルティーヤチップは、また、乾燥マサ粉末から製造することもできる。そのような乾燥マサ粉末を製造する、米国特許第2,704,257号(デ・ソラノ(de Sollano)ら、1955年3月1日発行)及び米国特許第3,369,908号(ゴンザレス(Gonzales)ら、1968年2月20日発行)に記載のプロセスのような典型的なプロセスでは、石灰で処理されたトウモロコシが挽かれ、脱水されて、安定な形態にされる。この乾燥マサ粉末を後で水で戻して、マサ生地を形成することができ、次いでこれを使用して、PCT国際公開特許WO01/91581(ジマーマン(Zimmerman)ら、2001年12月6日公開)に記載されているようなトルティーヤチップを生成する。
【0063】
一実施形態では、マサから製造されるトルティーヤチップは、
(1)マサを含む生地にアスパラギン低減酵素を添加する工程と;
(2)生地からスナック片を形成する工程と;
(3)スナック片を調理してトルティーヤチップを形成する工程とを含む方法によって製造される。
【0064】
もう1つの実施形態では、ニシュタマルから製造されるトルティーヤチップは、
(1)ニシュタマルにアスパラギン低減酵素を添加する工程と;
(2)ニシュタマルからスナック片を形成する工程と;
(3)スナック片を調理してトルティーヤチップを形成する工程とを含む方法によって製造される。
酵素は、当該プロセスのいずれか好適な段階で添加することができる。一実施形態では、酵素溶液が生地シートの表面に添加される。
【0065】
調理は、いずれか好適な方法によって、例えば、揚げることによって、若しくは焼くことによって、又は揚げることと焼くことの組み合わせによって、実施することができる。さらに、形成工程及び調理工程は、押出による工程のように、同時に実施することができる。
一実施形態では、トルティーヤチップは、約75ppb未満、好ましくは約50ppb未満、より好ましくは約10ppb未満のアクリルアミドを有する。
【0066】
D.(商品)
本発明のもう1つの実施形態は、
(a)食品製品であって、低減させられた濃度のアクリルアミドを有する食品製品と;
(b)食品製品を入れるための容器と;
(c)容器と一緒になったメッセージとを含む商品である。
【0067】
このメッセージは、当該食品製品が低濃度のアクリルアミドを含有することを消費者に知らせる。好適なメッセージには、これだけに限定するものではないが、アクリルアミドが「低減された」若しくは「低い」濃度であることを知らせるメッセージ、規定量未満(例えば、5ppb未満)のアクリルアミドが存在することを知らせるメッセージ、並びに食品製品が推奨レベル若しくは必須レベル(例えば、規制閾値若しくはシグナルレベル(signal level))を満たす又は上回ることを知らせるメッセージが含まれる。一実施形態において当該メッセージは、当該食品製品が低減させられた濃度又は低い濃度のアスパラギンを有する1つ若しくは複数の成分で製造されていることを消費者に知らせ、したがって当該食品製品が低減させられた濃度のアクリルアミド又は濃度が低いアクリルアミドを有することを暗示する。
【0068】
もう1つの実施形態では、当該商品は、
(a)食品製品であって、低減させられた濃度のアスパラギンを有する食品製品と;
(b)食品製品を入れるための容器と;
(c)容器容器と一緒になったメッセージとを含む。
【0069】
このメッセージは、当該食品製品が、低減された濃度又は低濃度のアスパラギンを含有することを消費者に知らせる。
メッセージは、容器に直接若しくは間接的に取り付けられた、又は容器付近に直接若しくは間接的に取り付けられた印刷物にすることができ、あるいは代替的に、容器容器と一緒になった、印刷メッセージ、電子メッセージ、又は放送メッセージにすることもできる。
食品製品をそれから分配、提示、展示、又は保管することのできる、あらゆる容器が適している。好適な容器には、これだけに限定するものではないが、袋、キャニスタ、箱、ボウル、皿、桶、及び缶が含まれる。
【0070】
(分析方法)
本発明の要素を特性評価するために使用されるパラメータは、特定の分析方法によって定量化される。これらの方法を以下で詳細に説明する。
【0071】
1.(アクリルアミド)
(食品製品中のアクリルアミド(AA)を測定する方法)
(要約)
食品製品に1−13C−アクリルアミド(13C−AA)を加え、熱水で抽出する。水性の上澄みをエチルアセテートで3回抽出し、このエチルアセテート抽出物を組み合わせ、濃縮し、AA及び13C−AAの特異的検出のための選択イオンモニタリングを用いたLC/MSによって分析する。
【0072】
(試料の抽出)
1.6.00±0.01gの試料を計量して125mL三角フラスコに入れる。注意:試料をフードプロセッサに入れ、30秒間パルス運転して、粒径が約3.175mm(1/8インチ)以下になるようにする。試料が小さすぎてフードプロセッサでは効果的に挽くことができない場合、試料を新しいビニール袋(例えば、ワールパック(Whirl-Pak)(商標)又は同等のもの)に入れ、粒径が3.175mm(1/8インチ)以下になるまでゴム製マレットで粉末状にする。
2.脱イオン蒸留水中100ng/μL13C−AA(ISTD2)、120μLを、調整型1000μLピペット(目盛り付き)を用いて直接試料上に加える。
3.ディスペンサを使用して、脱イオン蒸留水40mLをフラスコに加え、ホイルで覆う。
4.65℃の水浴に30分入れる。
5.ディスペンサを用いて、エチレンジクロリド10mLをフラスコに加え、テクマー・ティシュマイザー(Tekmar Tissumizer)(商標)(SDT−1810)若しくはウルトラ・テュレックス(Ultra-Turrax)(登録商標)(T18ベーシック)を用いて30秒、又は均一になるまで均質化させる。脱イオン蒸留水を用いてプローブをすすぎ、フラスコ内に入れる。
6.均質化試料25gを8ドラムバイアルに入れる。
7.チューブにきつく蓋をして、261〜544rad/s(2500〜5200rpm)で30分遠心分離にかける。
8.固体粒子を避けるように注意して、上澄み8gを別の8ドラムバイアルに移す。
9.ディスペンサを用いてエチルアセテート10mLを加え、蓋をして、10秒攪拌する。
10.エマルションを分散させる;1回若しくは2回かき混ぜ又は振盪させてから層を分けることによって分散を助ける。
11.境界面から液体(水)を移さずに、できるだけ多くの上層(エチルアセテート)をシンチレーションバイアルに移す。エチルアセテート5mL部分でさらに2回抽出し、同一のシンチレーションバイアルに加える。次いで、約2gの無水硫酸ナトリウムを加える。
12.60〜65℃の水浴中で、窒素をゆっくり流しながら抽出物を約1mLに濃縮する。抽出物をピアスREACTI−VIAL(Pierce REACTI-VIAL)(商標)又は同等の円錐形ガラスバイアルに移し、抽出物をさらに濃縮して、最終体積を約100〜200μLにする。この抽出物を、円錐形スリーブによってオートサンプラーバイアルに入れる。
【0073】
(標準物質の調製)
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
(ホモジナイザー洗浄手順)
各試料の間にこの洗浄手順を使用する。
1.1L三角フラスコを高温の水道水で満たし(満杯の80%)、ドーン(Dawn)(商標)食器洗い液(プロクター・アンド・ギャンブル社(Procter & Gamble Co.)から入手可能)又は同等物を1滴加える。
2.分散要素プローブを可能な範囲まで水に入れる。
3.溶液を約10〜15秒均質化させる。
4.洗浄溶液を出して三角フラスコを空にし、当該フラスコを高温の水道水ですすいで再び高温の水道水で満たす。
5.再び約10〜15秒均質化させる。
6.フラスコを空にして再び高温の水道水で満たす;再び約10〜15秒均質化させる。
7.水が微粒子を含まない透明な状態でなければ、この状態を達成するのに必要な回数だけ、きれいな高温の水道水の均質化を継続する。
8.高温の水道水が透明で微粒子を含まなくなったら、プローブを脱イオン蒸留水ですすぐ。
【0078】
(LC/MSによる分析)
マイクロマス(Micromass)LCZ質量分析計にインターフェース接続されたウォーターズ(Waters)2690LCを使用して、試料を分析する。
【0079】
【表4】

【0080】
(データ分析)
一連の5つのエチルアセテート中標準物質について、レスポンス比(AAピークの面積/13C−AAピークの面積)を、対応する濃度比に対してプロットする。すべての標準物質が4.5μg/mLの13C−AAを含有し、AAの濃度範囲は0〜5g/mLである。線形回帰によって較正曲線が得られ、この較正曲線により、測定されたレスポンス比から抽出物中の濃度比が決定される。この濃度比に、抽出手順の第2工程で試料に添加された精確に既知の13C−AAの濃度(公称2ppm)を乗じると、AAの濃度がppmで得られる。
【0081】
LC/MSのための試料の較正:
較正曲線は、x軸に濃度比([AA]/[13C−AA])、y軸にレスポンス比(m/z72の面積/m/z73の面積)をプロットすることによって得られる。この実施例では、その直線の式は、y=0.899x+0.0123である。
4.0分におけるAAピーク(m/z72)の面積測定値:100,000
4.0分における13C−AAピーク(m/z73)の面積測定値:500,000
レスポンス比Rr=0.200。較正曲線の傾き及び切片から、濃度比Rcが計算される:Rc=(0.200−0.0123)/0.899=0.209
試料中の13C−AAのスパイク濃度(spike level)(2ppm)を考慮すると、測定されるAA濃度は、0.209×2ppm=0.418ppmである。
【0082】
(品質保証/品質管理(QA/QC))
1.標準及び/又は試料の調製に使用されるすべての天秤は、週に1度、1組の認定分銅を用いてその較正を検査されなければならない。測定すべき試料/標準物質の重量範囲にわたる少なくとも3つの分銅を用いて、天秤を検査すべきである。
2.毎日、6点較正曲線を実施すべきである。
3.各組の試料とともに作業標準物質(WRM:working reference material)を分析すべきである。この物質の濃度は、移動平均の2σ以内に入るはずである。そうでない場合、器具を再較正し、WRMを再計算すべきである。
【0083】
2.(アスパラギン)
(食品及び飲料製品中のアスパラギン及びアスパラギン酸の測定)
(原理)
一定量の試料を5%HClと混合し、30分加熱してから均質化させる。均質化試料の一部を遠心分離にかけてから、上澄みの一部を希釈し、FMOC試薬(9−フルオレニルメチルクロロホルメート)で処理する。これがアスパラギン及びアスパラギン酸と反応して、高い蛍光性をもつ誘導体を形成する。次いで、逆相HPLCを使用して、他の試料マトリックス構成成分からFMOC−アスパラギンを分離する。260ナノメートル(nm)で励起して、313nmにおける蛍光放射によって検出を行う。濃度既知の標準物質の分析によって、定量化が可能になる。
【0084】
(線形性)
4つの標準物質(50〜600ppm)の作業較正曲線は、0.998以上の相関を与える。また、2000ppmまでから得られる曲線も0.998の相関を与える。
【0085】
(精度)
ジャガイモ製品:
ジャガイモデンプンには、アスパラギン及びアスパラギン酸の両方を4つの濃度(40、200、400、及び600ppm)で加えた。アスパラギンの回収は、100%(相対標準偏差4%未満)であり、アスパラギン酸の回収は、110%(相対標準偏差4%未満)である。
【0086】
(参考文献)
1.ハーバート,P.(Herbert,P.);サントス,L(Santos,L);アルベス,A.(Alves,A.)、食品科学雑誌(Journal of Food Science)(2001)、66(9)、1319〜1325。
2.ヘームス、デニー(Heems,Dany);ラック、ジェネビュー(Luck,Geneviewe);フラウデュー、クリソフ(Fraudeau,Chrisophe);ベレッテ、エリック(Verette,Eric)、クロマトグラフィー誌(Journal of Chromatography)、A(1998)、798(1+2)、9〜17。
【0087】
(系の再現性)
ポテトチップの作業標準物質は、複製して5日にわたって実行される。結果は、次の通りである:
【0088】
【表5】

【0089】
以下は、推奨される化学物質及び機器であるが、同等物質の代用も許容可能である。
【0090】
(化学物質)
【0091】
【表6】

【0092】
(機器)
トランスファーピペット、ポリエチレン(サムコ(Samco)#222)
容積測定フラスコ(25、100、250、1000mL)
容積測定ピペット(10mL)
メスシリンダー(100〜1000mL)
HPLCリザーバ(500mL、1L、又は2L)
ビーカー
磁性攪拌器/攪拌子
分析用(4桁)天秤
シンチレーションバイアル
遠心管、蓋付きスクリューキャップ(100×16mm)
オートサンプラーバイアル(8×30mm、1mL)、クリンプキャップ付き
安全性:この方法は、ドラフト(fume hood)の使用を必要とし、化学物質への曝露を伴う。ドラフトの使用及び化学物質の流出に関する安全規定を再検討されたい。
【0093】
【表7】

【0094】
(カラム)
フェノメネックス・ルナ(Phenomenex Luna)100×4.6mm C−18(2) 3μm #00D−4251−EO
(試薬の調製)
希釈剤(pH8.3〜8.5;1000mL)。
【0095】
1.ホウ酸ナトリウム3.0g、ホウ酸3.0g、重炭酸ナトリウム8.0gを計量して、自重を計った乾いたビーカーに入れる。
2.空の800mLビーカーを磁性攪拌器上に置く。ミリ−Q(Milli-Q)(商標)水約500mL及び攪拌子を加える。しぶきを立てずに水を激しく攪拌する。
3.工程1の試薬を水へと定量的に移し、試薬が完全に溶解するまで攪拌する。
4.工程3の溶液を1L容積測定フラスコへと定量的に移し、ミリ−Q(Milli-Q)(商標)水で体積を希釈し、十分に混合する。6ヶ月まで安定である。
【0096】
(塩化カルシウム溶液(100g)。)
1.塩化カルシウム二水和物40gを計量し、自重を計った250mLビーカーに入れる。
2.ミリ−Q(Milli-Q)(商標)水60gを加える。十分に混合する。蓋付きガラス瓶内で周囲条件で保管する。1年まで安定である。
【0097】
(抽出溶媒(ペンタン:エチルアセテート=80:20;500mL))
安全性:ペンタン及びエチルアセテートは、揮発性・可燃性である。以下の操作は、ドラフト内で実施する。
1.ペンタン400mLを500mLのHPLCリザーバ瓶に移す。
2.エチルアセテート100mLを加える。十分に混合する。蓋をしてドラフト内/ドラフト下で保管する。
【0098】
(移動相(バッファ:メタノール:アセトニトリル=60:5:35、pH3.2、2L))
1.テトラメチルアンモニウムクロリド1.35g、クエン酸3.65g、クエン酸ナトリウム1.60gを計量し、自重を計った乾いたビーカーに入れる。
2.空の800mLビーカーを磁性攪拌器上に置く。ミリ−Q(Milli-Q)(商標)水約500mL及び攪拌子を加える。しぶきを立てずに水を激しく攪拌する。
3.工程1の試薬を水へと定量的に移し、試薬が完全に溶解するまで攪拌する。
4.工程3の溶液を1Lメスシリンダーへと定量的に移し、ミリ−Q(Milli-Q)(商標)水で1000mlに希釈し、十分に混合する。
5.2LのHPLC移動相リザーバに移す。
6.ミリ−Q(Milli-Q)(商標)水200mL、メタノール100mL、及びアセトニトリル700mLを加える。最後の2つの溶媒は、激しく攪拌しながらゆっくり加える。この操作はフード内で実施し、個人用保護具を着用する。具体的詳細については、物質安全データシート(MSDS)を参照のこと。
7.攪拌しながら真空吸引によって移動相を脱気する。
【0099】
(FMOC試薬溶液(アセトン中))
1.FMOC試薬0.10gを計量し、自重を計った100mLの容積測定フラスコに入れる。
2.アセトンを加えて溶解させ、アセトンで体積を希釈する。十分に混合する。この操作はフード内で実施する。当該化学物質についてMSDSで指定されるPPEを着用する。
3.6ヶ月まで冷蔵保存する。
【0100】
(試料抽出のための酸溶液(5%HCl))
1.ミリ−Q(Milli-Q)(商標)水100mLを200mL容積測定容器に入れる。
2.1NのHCl4mLを容積測定容器に加える。
ミリ−Q(Milli-Q)(商標)水で体積を増やす。
【0101】
(内部標準(アミノイソ酪酸)の調製)
(ISTD A−内部標準原液A)
1.アミノイソ酪酸0.5gを計量し、自重を計った250mL容積測定容器に入れる。
2.1.0NのHCl25mL及びミリ−Q(Milli-Q)(商標)水約100mLを加える。かき混ぜることによって溶解するまで混合する。
ミリ−Q(Milli-Q)(商標)水で体積を希釈し、十分に混合する。6ヶ月まで冷蔵保存する。
【0102】
(ISTD B−作業内部標準溶液B(この溶液を較正標準に添加する))
1.ピペットを用いて内部標準原液A1mLを100mL容積測定フラスコに入れる。
2.ミリ−Q(Milli-Q)(商標)水で体積を希釈する。1ヶ月間は安定である。
【0103】
(較正標準(1又は複数)の調製)
較正溶液原液
自重を計った50mL容積測定容器に、アスパラギン0.100g(+/−0.001g)及びアスパラギン酸0.100g(+/−0.001g)を計量して入れる。ミリ−Q(Milli-Q)(商標)水25mL及び1NのHCl1mLを加える。溶解するまで超音波浴に入れてから、ミリ−Q(Milli-Q)(商標)H2Oで体積を増やす。この溶液は、6ヶ月の冷蔵が可能である。
【0104】
作業標準
以下の作業較正標準を調製する:
【0105】
【表8】

これらの溶液は、1ヶ月の冷蔵が可能である。
【0106】
(試料の調製)
1.試料1gを計量して125mL三角フラスコに入れる。
2.5%HCl溶液48.0mLを各試料に加える。
3.ISTD A2mLを各試料に加える。
4.各フラスコをアルミニウム箔で覆い、60℃の水浴に30分入れる。
5.ジクロロエタン10mLを各試料に加える。
6.試料を60秒均質化させる。
7.試料の一部を30mL遠心管に注ぐ。
8.5℃で32分間、1047rad/s(10000rpm)の遠心分離にかける。上澄みは、「試料−希釈」の工程1で使用される。
【0107】
(標準物質及び試料の調製)
3つのマイクロラボ(Microlab)(登録商標)方法を実行して、試料/標準物質を希釈し、内部標準を加え、FMOC誘導体を形成する。これらを以下に要約する。
【0108】
【表9】

【0109】
(マイクロラボ(MICROLAB)(登録商標)ロボットを使用した試料及び標準物質の調製)
工程1:標準物質−ISTD添加及び希釈工程
1.各標準物質に2組のチューブを準備する。標準物質約2mLをチューブの1つの組に入れ、これら満たされたチューブをマイクロラボ(Microlab)(登録商標)の最も左側の位置に置く。
2.空のチューブを備えたラックをマイクロラボ(Microlab)(登録商標)の最も右側のラック位置に置く。
3.20mLガラス(シンチレーション)バイアルを作業内部標準溶液Bで満たし、マイクロラボ(Microlab)(登録商標)の作業空間上に置く。
4.ADDISTD方法を選択する。(ISTD B200μL、標準溶液50μLを混合して、ミリ−Q(Milli-Q)(商標)水で全体積を4000μLにする。)
5.方法を実行する。
6.左側の位置からチューブの組を取り出し、取っておいて廃棄する。
7.マイクロラボ(Microlab)(登録商標)作業空間から作業内部標準溶液を取り出し、冷蔵する。
右側のチューブは、工程3のために取っておく。
【0110】
工程2:試料−希釈工程(ISTDは、試料調製の間に既に添加されている)
1.各試料に2組のチューブを準備する。試料約2mLをチューブの1つの組に入れ、これら満たされたチューブをマイクロラボ(Microlab)(登録商標)の最も左側の位置に置く。
2.空のチューブを備えたラックをマイクロラボ(Microlab)(登録商標)の最も右側のラック位置に置く。
3.TRANSDIL方法を選択する。(試料の番号を設定する。試料の量には50μL、ミリ−Q(Milli-Q)(登録商標)水による最終希釈の量には4000μL。)
4.方法を実行する。
5.左側の位置からチューブの組を取り出し、取っておいて廃棄する。
右側のチューブは、工程3のために取っておく。
【0111】
工程3:FMOC試薬の添加−蛍光性誘導体の作製
1.100×16mmスクリューキャップチューブのラックを準備する。
2.ラックをマイクロラボ(Microlab)(登録商標)の最も右側のラック位置に置く。
3.前述の希釈工程で得られた標準物質及び試料のチューブを、マイクロラボ(Microlab)(登録商標)の最も左側のラック位置に置く。
4.FMOC試薬溶液のアリコート(22mL)をガラスのシンチレーションバイアルに移す。40%塩化カルシウム溶液約100μLを加え、十分に混合する。(塩化カルシウムは、FMOC試薬を「荷電」させるために加えられる−これはマイクロラボ(Microlab)(登録商標)による検出に必要である。)
5.バイアルをマイクロラボ(Microlab)(登録商標)作業空間上に置く。
6.ADDFMOC方法を選択する。
7.注射器1及び2を水から希釈剤(pH8.3〜8.5)へと切り替える。
8.希釈剤(pH8.3〜8.5)を使用して注射器1及び2について少なくとも5サイクルの洗いを実施する。
9.ADDFMOC方法を実行する。(FMOC溶液450μL、前述のADDISTDで得られた試料250μLを混合し、希釈溶液によって最終体積を1300μLにする)。
10.SAMPLEラック位置からチューブの組を取り出し、取っておく。
11.マイクロラボ(Microlab)(登録商標)作業空間からFMOC試薬溶液を取り出し、冷蔵する。
13.最も右側の位置からチューブの組を取り出し、ドラフトに入れる。少なくとも10分、又は溶液が澄むまで(ただし20分を超えずに)おいておく。
14.各チューブに抽出溶媒2mLを加える。蓋をして高速で2分攪拌して、未反応のFMOC試薬を抽出する。
15.55×16mmチューブの別の組を準備する。各チューブに移動相溶液1mlを加える。
16.遠心管から水性(下)層1.0mLを、55×16mmチューブに移す。
17.上(有機)層を廃棄する。
18.試料をオートサンプラーバイアルに移し、密封する。
【0112】
(クロマトグラフィー)
運転条件
HP1100、ケムステーション(Chem Station)ソフトウェア使用
検出器:ウォーターズ(Waters)474走査型蛍光検出器
モード:標準
信号 :0.0000
波長 :Ex260
Em313
ゲイン:10
減衰 :1
応答 :FST
カラム:フェノメネックス・ルナ(Phenomenex Luna)C18(2)100×4.6mm、3μm
【0113】
(LC方法)
流速:1.000ml/分
アイソクラチック運転(試薬の調製−移動相を参照)
注入体積:10.0μL
温度設定:管理せず
【0114】
(計算)
試料溶液は、面積カウントを使用し、既知量の標準曲線に対して計算される:
y=mx+b
y(アスパラギン/ISTD比)=m(傾き)×(アスパラギン濃度)+b(y−切片)
(y−b)/m=x
アスパラギン(ppm)=(アスパラギン面積/ISTD面積−切片)/傾き
例:
アスパラギン(ppm)=(215.45436/551.828 − −0.0165)/0.0023=176.93ppm
[ppm=μg/mL]
試料調製工程における希釈/均質化の補正
【0115】
【数1】

[ppm=μg/mL]
例:
【0116】
【数2】

【0117】
(運転許容基準):
作業標準物質の試料検査精度が、アスパラギンについての既知の結果の10%以内でなければならない。
較正曲線の線形性(r2)が、0.995以上でなければならない。
【0118】
(LC分析のサンプルクロマトグラム)
図3は、LC分析のサンプルクロマトグラムを示す。
【0119】
【表10】

【0120】
3.(アクリルアミドの減少(%))
アクリルアミドの減少(%)=[(対照試料中のアクリルアミド濃度−酵素で処理された試料中のアクリルアミド濃度)/対照試料中のアクリルアミド濃度]×100
対照試料は、酵素が添加されないことを除いて、酵素で処理された試料と正確に同一の方式で調製される。
【0121】
4.(アスパラギンの減少(%))
アスパラギンの減少(%)=[(対照試料中のアスパラギン濃度−酵素で処理された試料中のアスパラギン濃度)/対照試料中のアスパラギン濃度]×100
対照試料は、酵素が添加されないことを除いて、酵素で処理された試料と正確に同一の方式で調製される。
【実施例】
【0122】
以下の実施例は、本発明を例示するものであって、本発明を制限しようとするものではない。
【0123】
(実施例1−脱水ジャガイモ製品)
ラセット(Russet)ベーキング用ジャガイモを、水ですすいでから、沸騰している鍋一杯の湯に入れる。ジャガイモを1時間ゆでる(湯に沈める)。ゆでたジャガイモを湯から取り出し、皮をむいてから実をマッシュする。マッシュポテト15gに水45gを加え、その混合物を均一になるまで均質化させて、塊が存在しないようにする。
【0124】
アスパラギナーゼ(シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)から購入、カタログ#A2925)50単位をこの均質化した溶液に加え、合計30分のインキュベートの間、5分ごとに試料を揺する。
【0125】
添加されるアスパラギナーゼの量は、次のことに基づいている:酵素類は、活性単位で販売される。1活性単位は、次のように定義される:1単位は、37℃、pH8.6において、1分間にL−アスパラギンからアンモニア1.0μモルを遊離させる。ジャガイモは、一般に約0.2%〜約0.4%の遊離アスパラギンを含有する。したがって、ジャガイモ15gは、アスパラギン約0.03g〜約0.06gを含有しており、これは、アスパラギン約227〜約454μモルに等しい。したがって、最適条件下では、アスパラギナーゼ50単位は、約10分でアスパラギン約500μモルを消費する。ただし、マッシュポテトのマトリックスが酵素に最適な条件を提供しないことがあるので、できる限り多くのアスパラギンを分解させて、最終的な調理済み製品中のアクリルアミド濃度をより低くさせるために、インキュベーション時間に30分を見込む。
【0126】
30分のインキュベーションの後、製品を、乾燥するまで(且つ茶色になるまで)2分ずつ増やして合計10分間、強の設定で電子レンジ(パナソニック(Panasonic)電子レンジ、モデルNN−S5488A)にかける。酵素を含まないこと以外は正確に同一のプロセスによって調製される脱水ジャガイモ製品(対照試料)と比較して、酵素で処理された脱水ジャガイモ製品は、本明細書に示した方法を使用してアクリルアミドについて分析されたときに、99%を超えるアクリルアミドの減少をもたらす。
【0127】
【表11】

【0128】
(実施例2−ポテトチップ)
生のポテトスライスを使用して、低減させられた濃度のアクリルアミドを有するポテトチップを製造することができる。
【0129】
アトランティック(Atlantic)ジャガイモの皮をむき、厚さ1.1mm未満に薄切りする。すすいで、パッド乾燥させる。ポテトスライスを73℃(165°F)の温水で15秒湯通しする。湯通ししたスライスを冷まし、水気を切る。湯通ししたポテトスライス100gを、100活性単位のアスパラギナーゼを含有する蒸留/脱イオン水250mL中に1時間浸漬させる。8分ごとに1分かき混ぜることによって試料を攪拌する。電子レンジ(パナソニック(Panasonic)電子レンジ、モデルNN−S5488A)を使用して、強の設定で2分加熱し、その後、冷たい水道水約800mLで10秒間の洗いを3回実施する。処理されたポテトスライスを、190℃(375°F)に設定された揚げ鍋で60秒揚げる。(実施例2A)ポテトチップのさらに2つのバッチを、前述のように、ただし湯通し時間を60秒(実施例2B)及び180秒(実施例2C)に変更して製造する。
【0130】
浸漬溶液にアスパラギナーゼが添加されないことを除いて、前述の実施例2A、2B、及び2Cを調製するのに使用したのと同一の方式で、対照試料を調製する。
試料及び対照試料を、本明細書に示した方法を使用してアクリルアミドについて分析する。
【0131】
【表12】

【0132】
従来のポテトチップには、湯通し工程は実施されない。したがって、湯通し工程を有するポテトチップは、当該技術分野では知られていない。前述の実施例は、ポテトチップ製造プロセスに湯通し工程と酵素添加工程との新規組み合わせを採用することによって、優れた結果が得られることを実証している。商業的に生産されるポテトチップは、前述で使用した対照試料よりもアクリルアミド濃度がはるかに高い。前述の対照試料は、酵素処理がプロセスに及ぼす追加的な影響をより詳細に実証するために、新規の湯通し工程(及び、酵素の代わりに水による浸漬工程)を採用した。
【0133】
新規の湯通し工程及び酵素処理工程がないことを除いて正確に前述のように製造されるポテトチップは、アクリルアミド濃度1079ppbのポテトチップをもたらす。したがって、酵素処理は、特に湯通し工程が採用されるときには、アクリルアミド濃度の低減に特に有効であることがわかる。
【0134】
(実施例3−フライドポテト)
生のポテトストリップを使用して、低減させられた濃度のアクリルアミドを有するフライドポテトを製造することができる。
【0135】
アトランティック(Atlantic)ジャガイモの皮をむき、断面積約8mm×8mmのストリップに切る。すすいで、パッド乾燥させる。ポテトストリップを73℃(165°F)の温水で1分湯通しする。湯通ししたストリップを冷まし、水気を切る。湯通ししたポテトストリップ100gを、100活性単位のアスパラギナーゼを含有する蒸留/脱イオン水250mL中に1時間浸漬させる。8分ごとに1分かき混ぜることによって試料を攪拌する。電子レンジ(パナソニック(Panasonic)電子レンジ、モデルNN−S5488A)を使用して、強の設定で2分加熱し、その後、冷たい水道水約800mLで10秒間の洗いを3回実施する。処理されたポテトストリップを、190℃(375°F)に設定された揚げ鍋で60秒揚げる。(実施例3A)フライドポテトのさらに2つのバッチを、前述のように、ただし湯通し時間を3.5分(実施例3B)及び7分(実施例3C)に変更して製造する。
【0136】
アスパラギナーゼが添加されないことを除いて、前述の実施例3A、3B、及び3Cを調製するのに使用したのと同一の方式で、対照試料を調製する。
試料及び対照試料を、本明細書に示した方法を使用してアクリルアミドについて分析する。
【0137】
【表13】

【0138】
(実施例4−商品)
実施例2Aのポテトチップは、消費者販売用の袋内に包装される。袋の上には、「アクリルアミドを含まない製品!」と書いたメッセージが印刷される。
【0139】
(実施例5−商品)
実施例2Bのポテトチップは、消費者販売用の袋内に包装される。袋の上には、「低アクリルアミド!」と書いたメッセージが印刷される。
【0140】
(実施例6−商品)
実施例2Cのポテトチップは、消費者販売用の袋内に包装される。袋の上には、「アクリルアミド分90%以上低減!」と書いたメッセージが印刷される。このチップ用のテレビコマーシャルは、「当社のチップは、アクリルアミド分が少ない!」というメッセージを伝える。
【0141】
(実施例7−商品)
100ppb未満のアクリルアミドを有する均一な形状をした加工ポテトクリスプは、消費者販売用の円筒形のキャニスタ内に包装される。このクリスプ用のテレビコマーシャルは、「アクリルアミド低減!」というメッセージを伝える。
【0142】
(実施例8−商品)
実施例3Bのフライドポテトは、端部が開口して、そこからフライドポテトが突き出る、消費者販売用の紙製スリーブ内に包装される。このフフライドポテトが販売される小売店内に貼られる張り紙には、「当社のポテトフライは、アクリルアミド含有濃度低減!」と書かれる。
【0143】
(実施例9−商品)
実施例3Cのフレンチフライは、端部が開口して、そこからフライドポテトが突き出る、消費者販売用の紙製スリーブ内に包装される。このフレンチフライが販売される小売店内に貼られる張り紙には、「当社のポテトフライは、アクリルアミド含有濃度低減!」と書かれる。
【0144】
(実施例10−商品)
実施例2Cのポテトチップは、消費者販売用の袋内に包装される。袋の上には、「低アスパラギン成分から製造!」と書いたメッセージが印刷される。
【0145】
(実施例11−脱水ジャガイモ製品)
ラセット(Russet)ベーキング用ジャガイモを、水ですすいでから、沸騰している鍋一杯の湯に入れる。ジャガイモを1時間ゆでる(湯に沈める)。ゆでたジャガイモを湯から取り出し、皮をむいてから実をマッシュする。マッシュポテト15gに水45gを加え、その混合物を均一になるまで均質化させて、塊が存在しないようにする。
グルタミナーゼ200単位をこの均質化した溶液に加え、合計30分のインキュベートの間、5分ごとに試料を揺する。
【0146】
30分のインキュベーションの後、製品を、乾燥するまで(且つ茶色になるまで)2分ずつ増やして合計10分間、強の設定で電子レンジ(パナソニック(Panasonic)電子レンジ、モデルNN−S5488A)にかける。酵素を含まないこと以外は正確に同一のプロセスによって調製される脱水ジャガイモ(対照試料)と比較して、酵素で処理された脱水ジャガイモ製品は、本明細書に示した方法を使用してアクリルアミドについて分析されたときに、10%を超えるアクリルアミドの減少をもたらす。
【0147】
本発明の特定の実施形態を例示し記載したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を実施できることが、当業者には自明であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】それによってアクリルアミドがアスパラギン及びカルボニル源(グルコースなど)から形成される、提案される反応機構を示す。R1及びR2は、H、CH3、CH2OH、CH2(CH2nCH3、又は還元糖を構成する他のいずれかの構成要素にすることができ、nは、10未満の任意の整数にすることができる。
【図2】それによってアスパラギナーゼがアスパラギンと反応してアクリルアミドの形成を妨げる、提案される反応機構を示す。
【図3】アスパラギン及びアスパラギン酸のLC分析についてのサンプルクロマトグラムを示す。x軸は、保持時間を表し、y軸は、応答を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品材料中のアスパラギン濃度を低減させる方法であって、加熱前に当該食品材料にアスパラギン低減酵素を添加する工程を含む方法。
【請求項2】
前記アスパラギン低減酵素は、アスパラギナーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アスパラギン濃度は、少なくとも約10%低減させられる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アスパラギン低減酵素は、遊離アスパラギンのアミド基を加水分解可能な酵素である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
食品材料中のアスパラギン濃度を低減させる方法であって:
(1)食品材料にアスパラギン低減酵素を添加する工程であって、前記食品材料がアスパラギンを含む工程と;
(2)任意選択的に酵素と食品材料とを混合する工程と;
(3)酵素にとって十分な時間、アスパラギンと反応させることが可能な工程と;
(4)任意選択的に酵素を不活性化させる又は任意選択的に酵素を除去する工程とを含む方法。
【請求項6】
食品材料中のアクリルアミド濃度を低減させる方法であって、加熱前に当該食品材料中のアスパラギン濃度を低減させる工程を含む方法。
【請求項7】
食品製品中のアスパラギン濃度を低減させる工程は、当該食品材料にアスパラギン低減酵素を添加する工程を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アスパラギン低減酵素は、アスパラギナーゼである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アスパラギン低減酵素は、遊離アスパラギンのアミド基を加水分解可能な酵素である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
食品中のアクリルアミド濃度を低減させる方法であって:
(1)食品材料にアスパラギン低減酵素を添加する工程であって、前記食品材料がアスパラギンを含む工程と;
(2)任意選択的に酵素と食品材料とを混合する工程と;
(3)酵素にとって十分な時間、アスパラギンと反応させることが可能な工程と;
(4)任意選択的に酵素を不活性化させる又は任意選択的に酵素を除去する工程と;
(5)食品材料を加熱して完成した食品製品を形成する工程とを含む方法。
【請求項11】
食品材料であって、前記食品材料中のアスパラギン濃度は、少なくとも約10%低減させられる食品材料。
【請求項12】
前記食品材料中のアスパラギン濃度は、少なくとも約30%低減させられる、請求項11に記載の食品材料。
【請求項13】
前記食品材料中のアスパラギン濃度は、少なくとも約50%低減させられる、請求項12に記載の食品材料。
【請求項14】
前記食品材料中のアスパラギン濃度は、少なくとも約70%低減させられる、請求項13に記載の食品材料。
【請求項15】
前記食品材料中のアスパラギン濃度は、少なくとも約90%低減させられる、請求項14に記載の食品材料。
【請求項16】
食品材料を含む食品製品であって、前記食品材料中のアスパラギン濃度は、少なくとも約10%低減させられる、食品製品。
【請求項17】
前記食品材料中のアスパラギン濃度は、少なくとも約30%低減させられる、請求項16に記載の食品製品。
【請求項18】
前記食品材料中のアスパラギン濃度は、少なくとも約50%低減させられる、請求項17に記載の食品製品。
【請求項19】
前記食品材料中のアスパラギン濃度は、少なくとも約70%低減させられる、請求項18に記載の食品製品。
【請求項20】
前記食品材料中のアスパラギン濃度は、少なくとも約90%低減させられる、請求項19に記載の食品製品。
【請求項21】
前記食品製品は、ポテトクリスプ、ポテトチップ、トルティーヤチップ、及びコーンチップから成る群から選択される、請求項16に記載の食品製品。
【請求項22】
食品材料であって、前記食品材料中のアクリルアミド濃度は、少なくとも約10%低減させられる食品材料。
【請求項23】
前記食品材料中のアクリルアミド濃度は、少なくとも約30%低減させられる、請求項22に記載の食品材料。
【請求項24】
前記食品材料中のアクリルアミド濃度は、少なくとも約50%低減させられる、請求項23に記載の食品材料。
【請求項25】
前記食品材料中のアクリルアミド濃度は、少なくとも約70%低減させられる、請求項24に記載の食品材料。
【請求項26】
前記食品材料中のアクリルアミド濃度は、少なくとも約90%低減させられる、請求項25に記載の食品材料。
【請求項27】
食品材料を含む食品製品であって、前記食品材料中のアクリルアミド濃度は、少なくとも約10%低減させられる、食品製品。
【請求項28】
前記食品材料中のアクリルアミド濃度は、少なくとも約30%低減させられる、請求項27に記載の食品製品。
【請求項29】
前記食品材料中のアクリルアミド濃度は、少なくとも約50%低減させられる、請求項28に記載の食品製品。
【請求項30】
前記食品材料中のアクリルアミド濃度は、少なくとも約70%低減させられる、請求項29に記載の食品製品。
【請求項31】
前記食品材料中のアクリルアミド濃度は、少なくとも約90%低減させられる、請求項30に記載の食品製品。
【請求項32】
前記食品製品は、ポテトクリスプ、ポテトチップ、トルティーヤチップ、及びコーンチップから成る群から選択される、請求項27に記載の食品製品。
【請求項33】
約400ppb未満のアクリルアミドを含む、加工ポテトクリスプ。
【請求項34】
約300ppb未満のアクリルアミドを含む、請求項33に記載の加工ポテトクリスプ。
【請求項35】
約200ppb未満のアクリルアミドを含む、請求項34に記載の加工ポテトクリスプ。
【請求項36】
約50ppb未満のアクリルアミドを含む、請求項35に記載の加工ポテトクリスプ。
【請求項37】
約10ppb未満のアクリルアミドを含む、請求項36に記載の加工ポテトクリスプ。
【請求項38】
約40ppb未満のアクリルアミドを含む、ポテトチップ。
【請求項39】
約30ppb未満のアクリルアミドを含む、請求項38に記載のポテトチップ。
【請求項40】
約20ppb未満のアクリルアミドを含む、請求項39に記載のポテトチップ。
【請求項41】
約10ppb未満のアクリルアミドを含む、請求項40に記載のポテトチップ。
【請求項42】
約75ppb未満のアクリルアミドを含む、トルティーヤチップ。
【請求項43】
約50ppb未満のアクリルアミドを含む、請求項42に記載のトルティーヤチップ。
【請求項44】
約10ppb未満のアクリルアミドを含む、請求項43に記載のトルティーヤチップ。
【請求項45】
商品であって:
(a)食品製品であって、低減させられた濃度のアクリルアミドを有する食品製品と;
(b)食品製品を入れるための容器と;
(c)容器と一緒になったメッセージと;を含んでおり
容器と一緒になった前記メッセージは、当該食品製品が低減させられた濃度のアクリルアミドを含有することを消費者に知らせる、商品。
【請求項46】
前記メッセージは、当該食品製品が低アクリルアミドであることを消費者に知らせる、請求項45に記載の商品。
【請求項47】
商品であって:
(a)食品製品であって、低減させられた濃度のアスパラギンを有する食品製品と;
(b)食品製品を入れるための容器と;
(c)容器と一緒になったメッセージと;を含んでおり
容器と一緒になった前記メッセージは、当該食品製品が低減させられた濃度のアスパラギンを含有することを消費者に知らせる、商品。
【請求項48】
前記メッセージは、当該食品製品が低アスパラギンであることを消費者に知らせる、請求項47に記載の商品。
【請求項49】
前記食品製品は、食品成分である、請求項45に記載の商品。
【請求項50】
前記食品製品は、食品成分である、請求項47に記載の商品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−500071(P2006−500071A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−568942(P2004−568942)
【出願日】平成15年9月20日(2003.9.20)
【国際出願番号】PCT/US2003/029478
【国際公開番号】WO2004/026043
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】