説明

食品包装体の加熱方法

【課題】加熱電極を食品包装体の形状に追従させながら加圧雰囲気下において容器詰め内容物または包装内容物等の食品包装体を均一に加熱(殺菌)することが可能な食品包装体の加熱方法を提供する。
【解決手段】食品Pが充填された容器1の胴部外形を型取った2つの割型ピン支持電極38',38'によって、その容器1を絶縁部材46を介して狭持した状態で加圧チャンバー21に載置する。次に、飽和蒸気又は過熱蒸気によって加圧チャンバー21の内部を加圧しながら、高周波電源47によって高周波電界を割型ピン支持電極38',38'に印加しながら食品Pを誘電加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品包装体の加熱方法、特に、加熱電極を食品包装体の形状に追従させながら加圧雰囲気下において容器詰め内容物または包装内容物等の被加熱材を均一に加熱(殺菌)することが可能な食品包装体の加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食材を電気的に加熱する方法の一つである誘電加熱法は、被加熱材(誘電体)に高周波電圧を印加し、被加熱材を構成する各分子の極性を高周波で変化させ、それに伴う分子の回転・衝突・振動・摩擦等に起因する内部発熱によって被加熱材を加熱する方法である。従って、誘電加熱法は食材の表面を過加熱することなく食材の内部まで深く加熱することが出来る利点を有している。
また、被加熱材(包装食品)を収容する加熱室を加圧しながら被加熱材を誘電加熱することにより、包装食品を100℃以上にまで加熱する加熱方法が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−163961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記加熱方法を実施する高周波加熱殺菌装置は、平板電極と平板電極との間の外周部をシール部材によってシールしながら密閉空間を形成し、被加熱材が置かれたその密閉空間を圧縮空気で加圧しながら被加熱材を高周波誘電加熱している。
しかし、平板電極によって被加熱材を誘電加熱する上記従来技術は、被加熱材が不定形の場合、平行電極が不定形な被加熱材の形状に追従することが出来ないため、その結果、被加熱材を均一に加熱することが難しいという問題点がある。
そこで、本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、加熱電極を被加熱材の形状に追従させながら加圧雰囲気下において容器詰め内容物または包装内容物等の被加熱材を均一に加熱(殺菌)することが可能な被加熱材の加熱方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために請求項1に記載の食品包装体の加熱方法では、食品包装体を加圧雰囲気下で該食品包装体の形状に沿った対向電極で保持し高周波誘電加熱することを特徴とする。
上記食品包装体の加熱方法では、食品包装体の保持手段が食品包装体の形状に沿った対向電極であるため、食品包装体の形状に追従させて対向電極を食品包装体に当接することが可能となる。従って、後述するように対向電極に高周波電圧が印加される場合には、食品包装体を好適に誘電加熱することが可能となる。また対向電極に熱媒体を供給する場合には、熱伝導によって食品包装体を好適に加熱することが可能となる。或いは、これら誘電加熱および熱伝導加熱を組み合わせることにより食品包装体を均一に加熱することが可能となる。
また、食品包装体を対向電極によって保持・加熱しながら食品包装体の置かれた環境を加圧することによって食品包装体をより高温かつ均一に加熱することが可能となる。これにより、不定形な食品包装体、即ち、容器詰め内容物または包装内容物等を従来よりも高温かつ均一に誘電加熱することが可能となる。
【0006】
請求項2に記載の食品包装体の加熱方法では、蒸気によって前記加圧雰囲気を形成することとした。
上記食品包装体の加熱方法では、上記構成とすることにより、蒸気の潜熱によって食品包装体を加熱しながら加圧雰囲気を形成することが可能となる。
【0007】
請求項3、請求項4に記載の食品包装体の加熱方法では、前記蒸気は飽和蒸気又は過熱蒸気であることとした。
上記食品包装体の加熱方法では、蒸気として飽和蒸気又は過熱蒸気を使用することにより、食品包装体をドライに加熱しながら加圧雰囲気を形成することが可能となる。
【0008】
請求項5に記載の食品包装体の加熱方法では、前記電極がピン電極であることとした。
上記食品包装体の加熱方法では、電極をピン電極とすることにより、電極を食品包装体の形状に追従させて食品包装体を保持・加熱することが可能となる。これにより、食品包装体、特に不定形な食品包装体を従来よりも高温かつ均一に誘電加熱することが可能となる
【0009】
請求項6に記載の食品包装体の加熱方法では、前記電極が割型であることとした。
上記食品包装体の加熱方法では、電極を割型にすることにより、電極の食品包装体に対する当接部位を食品包装体の容器外部形状を型取った曲面(複合面)にすることが可能となる。これにより、カップ又はトレー等の容器詰め内容物または樹脂フィルム等の包装体によってカバーされた包装内容物に対し、電極を食品包装体の形状に好適に追従させて食品包装体を保持・加熱することが可能となる。
【0010】
請求項7に記載の食品包装体の加熱方法では、複数の導電性ピンと前記導電性ピンを支持するための複数の貫通穴を有する割型からなることとした。
上記食品包装体の加熱方法では、ピン支持台を上記構成(割型)とすることにより、食品包装体に対する誘電加熱は、割型電極による誘電加熱とピン電極による2種類の誘電加熱から成る。ピン及び割型(ピン支持台)を同時に食品包装体形状に沿わせ当接させることによって、更に、効率的に加熱可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の食品包装体の加熱方法によれば、電極を食品包装体の形状に追従させながら加圧雰囲気下において食品包装体、即ち、容器詰め内容物または包装内容物等の不定形な食品包装体を従来よりも高温かつ均一に加熱することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る食品包装体の加熱方法の実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る食品包装体の加熱方法を示す模式図である。
【図3】本発明に係る食品包装体の加熱方法を実施するための加熱殺菌装置の実施形態を示す平面概略図である。
【図4】図3のA−A矢視図である。
【図5】図4における加熱部の要部拡大図である。
【図6】図5のB−B矢視図である。
【図7】(a)はピン支持台に装着した状態でのピン電極の正面図、(b)はその変形例のピン電極の正面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る食品包装体の製造方法のフローチャートである。
【図9】従来の誘電加熱による食品包装体の加熱方法を示す模式図である。
【図10】図9の方法による固形部の内部と表面の加熱時間−温度曲線を示すグラフである。
【図11】本発明の実施例2に係る加熱装置を示す要部断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の実施形態に係る食品包装体の加熱方法の概略を示す模式図であり、合成樹脂製のカップ状成形容器(以下、単に容器という。)1に里芋等の固形食品を収納して、開口部2をシールしないで開口した状態で、食品包装体としての食品包装体15を形状追従電極としてのピン電極によって誘電加熱する状態を示している。
本実施形態では、容器の側壁3を対向する2方向から複数のピン電極10群から構成される対向加熱電極11a、11bで挟持され、収納された固形食品(以下、単に食品という。)Pと容器側壁3を介して当接している状態になっており、その状態で対向加熱電極11a、11bに高周波電界を印加することにより、食品Pが誘電加熱により所定温度に昇温するまで加熱される。誘電加熱と同時あるいは前後において、蒸気、熱風或いは加熱(沸騰)した調味液等の汁等からなる加熱媒体を容器の開口部から図1に矢印13で示すように容器1内に吹き込む(あるいはかける)ことによって、食品の外周面を加熱すると共に容器内周面を加熱する。それによって、前述したように電極を介しての放熱さらに容器や食品表面からの外部雰囲気への放熱のために、食品内部と外周面との温度差が生じ加熱ムラが生じるという欠点を是正して、食品の内外面を短時間で均一に加熱することができる。その場合、図1に示す実施形態では容器の底壁4および側壁3の外周面にも矢印13で示すように加熱媒体を吹き付けているのは、それにより容器全体を加熱することによって、それに接する食品外周面をより短時間に加熱できるようにするためである。前記のように加熱媒体の吹き込みによる食品表面の加熱工程は、誘電加熱工程の前、同時、或いは後の何れであっても良いが、処理時間の短縮には同時に行なった方が望ましい。また、加熱媒体が蒸気(120℃〜150℃の飽和蒸気又は過熱蒸気が望ましい)或いは熱風の場合は、容器の内外周面に向けて噴射するのが望ましいが、加熱媒体として熱い調味液等の液体を使用する場合は、当然容器内にのみ供給するが必要に応じて熱風又は蒸気加熱と組合せて容器の内外面から加熱するようにしてもよい。
【0015】
以上のように、本発明では、誘電加熱と外周面を加熱する熱媒体による加熱を併用することによって、誘電加熱の欠点を補い汁のない固形食品の容器包装体であっても短時間に均一に加熱することができる。しかも本発明では、対向加熱電極が後述するように軸方向に突出自在に変形するピン電極群で構成しているので、電極が容器に密着し、且つ容器を食品の形状に応じて部分的に弾性に抗して変形させることができ、容器側壁内周面を固形食品に接触させて、電極との間の隙間をなくして、良好に誘電加熱できるとともに、電極と容器の間にスパークが発生することなく、容器にスパーク痕を発生させるという不良も防ぐことができる。
【0016】
図2は、本発明に係る食品包装体の加熱方法の他の実施形態を示すものであり、本実施形態では、図1に示すと同様な対向加熱電極11a、11bを上下に配置し、上方に配置した対向加熱電極のピン電極10の先端が容器開口部に進入して直接食品Pに接触するように配置してある。したがって、本実施形態によれば、対向加熱電極が上記のように個々に軸方向に移動自在のピン電極10より構成されているために、電極を内容物である固形食品の形状に応じて変位させて接触させることが可能となり、より効率的に誘電加熱することができる。本実施形態でも前記実施形態と同様に、容器の内外面に矢印13に示すように加熱媒体を吹き込んで固形食品の外周面に接触させ外部から加熱するようにしてある。
【0017】
図3〜5は、上記加熱方法による食品包装体の加熱殺菌装置の一具体例(実施形態)を示している。本実施形態では、密閉開閉可能な加圧チャンバー21内に一対の対向加熱電極22a、22bを配置した構造となっており、図3は加圧チャンバー上蓋を除去した状態での平面図、図4は加圧チャンバー上蓋を装着した状態での図3におけるA−A断面矢視図、図5は加圧チャンバー内の誘電加熱部の正面断面図である。
【0018】
本実施例に係る食品包装体の加熱殺菌装置20は、主に加圧チャンバー21、一対の対向加熱電極22a、22b、電極駆動装置23a、23b、容器載置台24、加圧チャンバーへの加熱媒体及び冷却媒体給排手段から構成されている。加圧チャンバー21は、本実施例では円筒形状に形成され、上壁27、底壁28、円筒側壁29から形成され、上壁27が開閉可能となっており、それぞれの壁に加熱媒体を供給する加熱媒体供給管を接続する加熱媒体供給口30及び後述する加熱殺菌後に食品包装体を冷却する冷却媒体(例えば水)を供給・排出するため冷却媒体供給排口31が適宜形成されている。しかし、それらの配置は本実施形態に限るものでなく、その目的を達成可能に適宜配置することができる。
【0019】
底壁28には、包装体15を載置する載置台24が固定され、該載置台に載置される包装体を挟むように両側に一対の対向加熱電極22a、22bが図3〜5において左右動可能に配置されている。対向加熱電極22a、22bは、本発明者らの発明に係る先願であるPCT/JP2008/62323号で提案したピン電極と同様に多数のピン電極10から構成されている。
【0020】
即ち、対向加熱電極22a、22bを構成するピン電極10は、図7に拡大して示すように、食品(容器)に当接するピンヘッド35、ピンヘッド35に結合しピン支持台38との電気的または熱的接点となるロッド36、ピンヘッド35の端位置を規定するピンキャップ37で構成される。ロッド36は、後述のピン支持台38の貫通孔34に挿通されピン支持台38との電気的または熱的接点となる。図3〜5ではピン支持台38にピン電極10が集合状態で挿通されているよう見えるが、実際は図6に示すようにピン支持台38には多数の独立した挿通孔が千鳥状又は賽の目状に縦横に間隔をおいて配置され、該挿通孔にピン電極10が差し込まれて保持されている。この挿通孔の内径は、ピン電極10のロッド36の外径より僅かに大きい程度である。これにより、各ピン電極10はピン支持台38と通電または伝熱しながらピン支持台38に対し軸方向に別個独立に伸縮可能に相対変位し、食品の形状に好適に追従することが可能となる。ピン支持台38には端子39(図5)を介して高周波電界を印加できるようになっている。なお、ピンヘッド35、ロッド36およびピンキャップ37の材質としては、アルミ、銅、カーボン、チタン、白金等の導電材が好適である。なお、図7(b)に示すピン電極10は、ピンヘッド35の部分がロッド36の部分よりも径大となっている変形例であり、例えばピンヘッド35の段差面とピン支持台との間にスプリングを配置することによって、ピン電極を常に突出方向に付勢することができる。
【0021】
ピン電極10を容器形状に応じて突出するためのピン電極駆動は、後述するように、圧力可変ガスチャンバー40の内圧を変えることにより行われる。なお、ピン電極10の駆動は、圧力可変ガスチャンバー以外に、バネやゴムなどの弾性工具を用いることでも容易に実現できる。また、ピン支持台38はピン電極10に対する通電または伝熱手段となるため、その材質としては、ピン電極10と同等か若しくはそれ以上の導電率および熱伝導率を有する材質が好ましい。また、ピン支持台38の形状は平板の他、曲面を有する複合形、或いは後述する割型タイプ(後述の実施例2)であっても良い。
【0022】
圧力可変ガスチャンバー40は、ピン支持台38と該ピン支持台と開口端面が当接して一体に固定された直方体状のチャンバー本体41によって形成され、該チャンバー本体41のピン支持台と対向する頂壁が電極駆動装置23のピストン42に固定された駆動ロッド43に連結され、電極駆動装置23のシリンダ46が駆動することによって、対向加熱電極を容器載置台24に載置されている食品包装体15に対して進退するようになっている。図3において、右側の対向加熱電極22aが駆動されて食品包装体に各ピン電極10が当接している状態を示し、左側の対向電極は退避して食品包装体の外周面と離反している状態を示している。電極駆動装置23a、23bは、図3に示すように加圧チャンバー21の外周壁の外側面に固定されている。
【0023】
圧力可変ガスチャンバー40は、前記駆動ロッド43を貫通して形成されたガス流路44を介して図示しない外部の高圧ガス源(圧縮機)と連結され、ガス流路44を介してガスを供給することにより、圧力可変ガスチャンバー40内が加圧され、ピン電極を押し出す方向に付勢し、図3の左側に示すようにピン電極23bが容器載置台側から退避している状態では、電極ピンは圧力可変ガスチャンバー40の内圧によりそのピンヘッド35がピン支持台に当接するまで押し出されている状態にある。その状態で電極駆動装置が駆動されてシリンダにより対向加熱電極が圧力可変ガスチャンバーごと食品包装体に向かって押し出されることにより、個々のピン電極のピンヘッド35の先端が容器外周面に当接し、ピン電極は圧力可変ガスチャンバーの圧力に抗して圧力可変ガスチャンバー内に押込まれ、圧力可変ガスチャンバー内のガス圧に対応する圧力で包装体外周面を押圧し、容器外周面と密着する状態となる。ピン電極は図6に示すように縦横に多数配置され、上記のように個々のピン電極が軸方向に伸縮可能であるので、容器の形状に追従して容器外周面の所定範囲に亘って均一に接触することができる。また、圧力可変ガスチャンバー内のガス圧力を調整することによって、食品包装体への当接圧力を任意に調整することができる。なお、使用されるガスについては、例えば清浄な空気および窒素ガス等の不活性ガスであり、必要に応じて温調を行なうことも可能である。
【0024】
しかしながら、対向加熱電極は上記実施例に限るものでなく、例えば図3の右側に示す位置に容器載置台を挟んで対向加熱電極を固定配置し、圧力可変ガスチャンバー内の圧力を負圧から陽圧に可変可能とし、通常は圧力可変ガスチャンバー内を負圧状態にすることによって全てのピン電極が引っ込んだ状態に保持しておき、載置台に載置された食品包装体を誘電加熱する場合に圧力可変ガスチャンバー内に加圧ガスを導入することによって、各ピン電極が包装容器体の外周面を両側から所定の圧力で当接して誘電加熱を可能とし、加熱終了後は圧力可変ガスチャンバー内を負圧にすることによって、全てのピン電極を退避させるようにしてもよい。したがって、本実施例では上記実施例のようにシリンダ装置等の対向加熱電極全体を変位させる駆動手段を必要とせず、圧力可変ガスチャンバーに該チャンバー内に加圧ガスを供給する高圧源としての圧縮機又はガスチャンバー内を負圧にする真空ポンプを切替接続可能にすればよい。
【0025】
なお、図3において、45は容器載置台24に固定された端子39と高周波電源とを接続する伝送路であり、図5に示すように、端子39にピン支持台38が当接することにより、ピン支持台を介して各ピン電極に高周波電圧が印加される。
【0026】
本実施例の食品包装体の加熱殺菌装置は以上のように構成され、それによって食品包装体は次のようにして加熱される。
加圧チャンバー21内の容器載置台24上に、内容物(固形食品)が充填され開口部を有して未封状態の例えばカップ詰食品を載置し、加圧チャンバーを密閉する。この状態で加熱媒体としてたとえば過熱蒸気を加熱媒体供給口30より供給してチャンバー内を加圧加熱する。加圧することによって、温度を100℃以上に上昇させることができ、より短時間に加熱することができる。また、圧力可変ガスチャンバー40内に加圧ガスを供給して陽圧にしてピン電極を突出させ、同時に電極駆動装置23a、23bを駆動することによって、駆動ロッド43が容器に向かって前進することによって、容器の側面形状に応じてピン電極10の先端が容器外周面に所定の圧力をもって当接する。これにより、ピン電極を介して容器外周壁と固形食品が当接して、ピン電極から固形食品に高周波電圧が印加されて、誘電加熱が行われるとともに、加圧チャンバーに供給された加熱媒体が包装体内に進入して固形食品表面も直接加熱され、内外面から均一かつ短時間で加熱することができる。
【0027】
図8は本発明に係る食品包装体の製造方法の実施形態を示すフローチャートである。本実施形態に係る食品包装体の製造方法は、容器への食品充填工程50、食品が充填されて開口部を有する未封の食品包装体を前記加熱方法によって殺菌する加熱殺菌工程51、加熱された前記食品包装体を冷却する冷却工程52、前記食品包装体内に不活性ガスを吹き込んでヘッドスペースのガスを不活性ガスと置換する不活性ガス置換工程53、前記食品包装体の開口部を蓋材で密封シールする密封工程54からなっている。以上により、長期保存可能な加熱殺菌された食品包装体が得られる。
なお、本発明における加熱殺菌工程は、食品包装体を密封してから行っても良い。この場合においての食品包装体の製造方法は、容器への食品充填工程50、前記食品包装体内に不活性ガスを吹き込んでヘッドスペースのガスを不活性ガスと置換する不活性ガス置換工程53、前記食品包装体の開口部を蓋材で密封シールする密封工程54、密封済みの食品包装体を前記加熱方法によって殺菌する加熱殺菌工程51、加熱された前記食品包装体を冷却する冷却工程52からなっている。
【実施例1】
【0028】
実施例1:
容器:合成樹脂製丸形カップ(筒部内径=78mm、高さ=30mm)
食品:筑前煮の具(汁無し)50g
電源:出力200W、周波数40MHz
加熱媒体:過熱蒸気(130℃)
加熱時間:2分
図3〜7に示す加熱殺菌装置を用いて、上記条件の開口部が開口した食品包装体を誘電加熱と過熱蒸気による加熱を同時に行なった。加圧チャンバー内への過熱蒸気の供給は、加圧チャンバーに設けられた加熱媒体供給口を通じて行なった。加熱開始から加熱終了まで加熱時間に対する固形食品の内部と表面の温度上昇を測定した。温度測定は、食品表面と食品内部に光ファイバー温度計を接触または挿入して行った。その結果、温度ムラを生じることなく、食品内部と食品表面が短時間かつ均一に加熱された。
【実施例2】
【0029】
図11は、本発明の実施例2に係る加熱装置を示す要部断面説明図である。図11(a)は装置の平面図を示し、同(b)は同(a)のA−A断面を示している。なお、説明の都合上、ピン電極10の駆動機構および食品包装体を収容する加圧チャンバー21等の上記実施例の加熱装置と同一機構については省略されている。
上記実施例の加熱装置では食品包装体の形状に当接する電極としてピン電極10が使用されていたが、この加熱装置では、ピン電極10に加えて、食品包装体の形状を型取った、いわゆる割型ピン支持電極38'が使用されている。割型ピン支持電極38'では、ピン支持台の容器1に当接する部位が容器1の胴部形状を型取った曲面(複合面)を成している。従って、容器1(食品P)に対する誘電加熱は、絶縁部材46を介して2つの割型ピン支持電極38',38'によって容器1を狭持し、高周波電源47から高周波電界を割型ピン支持電極38',38'に印加する形態で行われる。また、割型ピン支持電極38'の内部にはピン電極10が摺動する貫通穴が設けられている。従って、この加熱装置では食品Pは、誘電加熱として、ピン電極10,10による誘電加熱と、割型ピン支持電極38',38'による誘電加熱を同時に受けることになる。更に、容器1が載置されている加圧チャンバー21(図示せず)を飽和蒸気又は過熱蒸気によって加熱・加圧することによって、食品Pを高温・加圧雰囲気下に置きながら誘電加熱することが可能となる。これにより、食品包装体が不定形な容器詰め食品または包装食品であっても短時間に均一に加熱(殺菌)することが出来るようになる。
【0030】
なお、誘電加熱の形態は、上記のピン電極および割型ピン支持電極の併用以外に、割型ピン支持電極単体による誘電加熱でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の食品包装体の加熱方法及び食品包装体の製造方法は、プラスチック製容器等誘電体材料で形成された容器に充填された食品を短時間に均一に加熱するのに好適に利用でき、特にカップやトレー入り固形食品にも好適に利用でき産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0032】
1 カップ状成形容器 2 開口部
3 側壁 4 底壁
10 ピン電極
11a、11b、22a、22b 対向加熱電極
12 ピン電極間の空間
13 矢印 15 食品包装体
20 加熱装置 21 加圧チャンバー
23a、23b 電極駆動装置 24 容器載置台
27 上壁 28 下壁
29 円筒側壁 30 加熱媒体供給口
31 冷却媒体供給排出口 35 ピンヘッド
36 ロッド 37 ピンキャップ
38 ピン支持台 39 端子
40 圧力可変ガスチャンバー 41 チャンバー本体
42 ピストン 43 駆動ロッド
44 ガス流路 45 伝送路
46 絶縁部材 47 高周波電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品包装体を加圧雰囲気下で該食品包装体の形状に沿った対向電極で保持し高周波誘電加熱することを特徴とする食品包装体の加熱方法。
【請求項2】
蒸気によって前記加圧雰囲気を形成する請求項1に記載の食品包装体の加熱方法。
【請求項3】
前記蒸気は飽和蒸気である請求項2に記載の食品包装体の加熱方法。
【請求項4】
前記蒸気は過熱蒸気である請求項2に記載の食品包装体の加熱方法。
【請求項5】
前記電極がピン電極である請求項1から4の何れかに記載の食品包装体の加熱方法。
【請求項6】
前記電極が割型である請求項1から4の何れかに記載の食品包装体の加熱方法。
【請求項7】
前記電極が複数の導電性ピンと前記導電性ピンを支持するための複数の貫通穴を有する割型からなる請求項1から4の何れかに記載の食品包装体の加熱方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−24424(P2011−24424A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170159(P2009−170159)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】