説明

飲酒運転防止システム

【課題】融通性を持たせることが可能な飲酒運転防止システムを提供すること。
【解決手段】飲酒運転防止制御装置5は、アイドリングスイッチ8が操作されたとき、アルコール検知器4によるアルコール検知の結果を問わず、エンジンの始動を許可するとともに、ステアリングロックについてはその解除を許可せず、これにより車両の走行を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲酒運転を防止するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、この種のシステムとして、基準値を超えるアルコールがアルコール検知器で検出されたとき、エンジンの始動を禁止するものが開示されている。
【特許文献1】特開昭63−53120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1で開示されているシステムでは、エンジン始動前のアルコール検知がいわば義務付けられている。
このため、飲酒状態にない者に車両を運転する気がなく、その者が車内でくつろぐことを目的としてエンジンを始動させたいと望むような場合でも、わざわざアルコール検知を行う必要があり、よってこうした者に対してエンジン始動の度に煩雑感を与えることとなる。
【0004】
一方、飲酒状態にある者に車両を運転する気がなく、その者が車内で暖をとることを目的としてエンジンを始動させたいと望むような場合、アルコール検知の結果次第ではエンジンの始動が許可されず、よってこのような場合、走行を目的としないエンジン始動までもが禁止されてしまう。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、その目的は、融通性を持たせることが可能な飲酒運転防止システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、基準値を超えるアルコールがアルコール検知器で検出されたとき、車両の運転を禁止する飲酒運転防止システムにおいて、アイドリングを要求するために操作されるアイドリング用操作手段と、前記アイドリング用操作手段が操作されたとき、前記アルコール検知器によるアルコール検知の結果を問わず、エンジンの始動を許可するアイドリング許容手段とを備えていることをその要旨としている。
【0007】
同構成によると、アイドリング用操作手段を操作することで、アルコール検知器によるアルコール検知を行うことなく、エンジンの始動が許可される。このため、飲酒状態にない者が車内でくつろぐことを目的としてエンジンを始動させたいと望むような場合、アイドリング用操作手段を操作することでそれが許容されるから都合がよい。一方、飲酒状態にある者が車内で暖をとることを目的としてエンジンを始動させたいと望むような場合、アイドリング用操作手段を操作することでそれが許容されるから都合がよい。従って、融通性を持たせることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の飲酒運転防止システムにおいて、前記アイドリング用操作手段が操作されたことに伴って、前記アイドリング許容手段によりエンジンの始動が許可されたとき、車両の走行を禁止する走行禁止制御手段を備えていることをその要旨としている。
【0009】
同構成によると、アイドリング用操作手段が操作されたとき、エンジンの始動は許可されるものの、車両の走行は禁止される。このため、例えば、飲酒状態にある者がアイドリング用操作手段を操作した場合、エンジンを始動させることはできるものの、車両を走行させることはできない。従って、飲酒運転を未然に防止することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の飲酒運転防止システムにおいて、前記走行禁止制御手段は、前記アイドリング用操作手段が操作されたことに伴って、前記アイドリング許容手段によりエンジンの始動が許可されたとき、ハンドル操作を禁止或いは無効化することで車両の走行を禁止することをその要旨としている。
【0011】
同構成によると、アイドリング用操作手段が操作されたことに伴って、エンジンの始動が許可された場合に、ハンドル操作を機械的に禁止したり、或いは、いわゆるステアバイワイヤが搭載された車両にあってハンドル操作を電気的に無効にしたりすることで、車両の走行が禁止される。このため、例えば、飲酒状態にある者がアイドリング用操作手段を操作した場合、エンジンを始動させることはできるものの、車両を走行させることはできない。従って、飲酒運転を未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
本発明によれば、融通性を持たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の自動車には、電子キーシステム1が適用されている。電子キーシステム1は、車両ユーザが所持する電子キー2と、車両側に設けられるセキュリティ装置3とを備えるとともに、両者間で双方向通信が可能となっている。尚、前記電子キー2は、その所持態様から携帯機と称されている。
【0014】
電子キー2は、無線通信による受信機能及び無線通信による送信機能を有するとともに、受信アンテナ21、受信回路22、マイコン23、送信回路24、送信アンテナ25を備えている。
【0015】
受信アンテナ21は、セキュリティ装置3から送信されてくるリクエスト信号を受信するための媒体である。受信回路22は、受信アンテナ21により受信されたリクエスト信号を復調して受信信号を生成するとともに、その受信信号をマイコン23に出力する。
【0016】
マイコン23は、不揮発性のメモリ23aを備えるとともに、そのメモリ23aには、当該電子キー2に対して個別に設定されたIDコード(電子キー2のIDコード)が記憶されている。そして、マイコン23は、受信回路22からリクエスト信号に関する受信信号が入力されたとき、リクエスト信号に応答するために、電子キー2のIDコードを含む信号(IDコード信号)を生成するとともに、そのIDコード信号を送信回路24に出力する。
【0017】
送信回路24は、マイコン23から入力されたIDコード信号を所定周波数(本実施形態では300MHz)の電波に変調する。送信アンテナ25は、送信回路24により変調されたIDコード信号を送信するための媒体である。
【0018】
セキュリティ装置3は、無線通信による送信機能及び無線通信による受信機能を有するとともに、送信回路31、送信アンテナ32、受信アンテナ33、受信回路34、照合装置35を備えている。
【0019】
送信回路31は、照合装置35から入力されるリクエスト信号を所定周波数(本実施形態では134KHz)の電波に変調する。送信アンテナ32は、送信回路31により変調されたリクエスト信号を送信するための媒体である。
【0020】
ここで、送信アンテナ32から送信されるリクエスト信号は、車内の略全域に及んで且つ車外に殆ど及ばないようになっている。図2には、その領域が車内の所定領域A32として2点鎖線で示されている。そして、この車内の所定領域A32内において、電子キー2とセキュリティ装置3との間での双方向通信が可能となっている。つまり、車内の所定領域A32内にリクエスト信号が送信されている状態で、その車内の所定領域A32内に電子キー2が持ち込まれたとき、その電子キー2によりリクエスト信号が受信されて同電子キー2からIDコード信号が送信されるようになっている。
【0021】
図1に戻って、受信アンテナ33は、リクエスト信号に対する応答信号として電子キー2から送信されてくるIDコード信号を受信するための媒体である。受信回路34は、受信アンテナ33により受信されたIDコード信号を復調して受信信号を生成するとともに、その受信信号を照合装置35に出力する。
【0022】
照合装置35は、不揮発性のメモリ35aを備えるとともに、そのメモリ35aには、セキュリティ装置3が搭載されている車両に適合する電子キー2(=正規の電子キー2)のIDコードと同一のIDコード(基準IDコード)が記憶されている。
【0023】
照合装置35は、ドアが開けられたとき、正規の電子キー2の所持者による乗車(車内の所定領域A32に対する進入)を監視するため、送信回路31にリクエスト信号を出力する。つまり、この場合、照合装置35は、車内通信制御を実行する。その結果、送信アンテナ32から車内の所定領域A32内にリクエスト信号が送信される。
【0024】
照合装置35は、車内通信制御を実行したことに伴って、受信回路34からIDコード信号に関する受信信号が入力されたとき、その受信信号に含まれているIDコードと基準IDコードとが一致しているか否かを判断する。つまり、この場合、照合装置35は、IDコード照合を実行する。そして、照合装置35は、このIDコード照合により両IDコードが一致したとき、正規の電子キー2が利用された旨を認識する。そして、照合装置35は、このように認識したとき、正規の電子キー2が利用された旨を示唆する信号(IDコード一致信号)を飲酒運転防止制御装置5に出力する。その結果、正規の電子キー2が利用されたとき、エンジンの始動が許可されるために必要な条件の1つが満たされる。
【0025】
次に、本実施形態の自動車における特徴点について説明する。
本実施形態の自動車では、エンジンの始動が許可されるための条件として、正規の電子キー2が利用されることに加えて、アルコール検知器4によるアルコール検知が行われた結果、基準値を下回るアルコールが検出されることが必要となっている。
【0026】
アルコール検知器4は、車内に設置されるとともに、呼気吹き込み口41、マイコン42、アルコール検知スイッチ43、アルコールセンサ44を備えている。
呼気吹き込み口41は、アルコール被験者が呼気を吹き込むためのものである。そして、この呼気吹き込み口41から吹き込まれた呼気の風量が図示しない風量センサで検出されるとともに、それが基準風量に達するものであるとき、マイコン42は、アルコール被験者によるアルコール検知が適切に行われたものとして扱うようになっている。
【0027】
アルコール検知スイッチ43は、アルコール検知器4によるアルコール検知を開始するために操作されるものである。そして、マイコン42は、アルコール検知スイッチ43が操作されたことをトリガとして、アルコール検知器4によるアルコール検知に必要な準備を開始するようになっている。
【0028】
アルコールセンサ44は、センサエレメントが加熱されることでそれが所定の温度に達した段階で、つまり加熱が完了した段階で、呼気中のアルコール量を検出することができるとともに、アルコール量に応じた検出信号をマイコン42に出力するようになっている。尚、マイコン42は、アルコール検知スイッチ43が操作されたことをトリガとして、アルコール検知器4によるアルコール検知に必要な準備として、アルコールセンサ44の加熱を開始する。そして、マイコン42は、アルコールセンサ44の加熱が完了すると、呼気の風量を監視しつつ、アルコールセンサ44から入力される検出信号を有効化するようになっている。
【0029】
マイコン42は、アルコールセンサ44からの検出信号を有効化したとき、その検出信号を解析することで、呼気吹き込み口41から吹き込まれた呼気中のアルコール量を認識する。そして、マイコン42は、呼気中のアルコール量に関する情報を含む信号(アルコール検知結果信号)を生成し、それを飲酒運転防止制御装置5に出力する。
【0030】
飲酒運転防止制御装置5は、このアルコール検知結果信号に含まれている呼気中のアルコール量に関する情報を解析することで、呼気中のアルコール量が基準アルコール量を下回っているか否かを判断する。尚、基準アルコール量に関するデータは、図示しない不揮発性のメモリに記憶されるとともに、例えば、呼気1リットルあたりのアルコール量が0.15ミリグラム(=0.15mg/L)に設定されている。その結果、呼気中のアルコール量が基準アルコール量を下回っているとき、エンジンの始動が許可されるために必要な条件の1つが満たされる。
【0031】
そして、飲酒運転防止制御装置5は、呼気中のアルコール量が基準アルコール量を下回り、且つ正規の電子キー2が利用されたとき、エンジン制御装置6にエンジン始動許可信号を出力するとともに、ステアリングロック制御装置7にロック解除許可信号を出力する。その結果、このようにエンジンの始動が許可されている状態でエンジン始動ボタン(図示略)を押すと、エンジン制御装置6によりエンジンが始動されるとともに、ステアリングロック制御装置7によりステアリングロックが解除されてハンドル操作が可能となり、これにより飲酒状態にない者による運転が許容されることとなる。
【0032】
一方、基準アルコール量を超えるアルコール量がアルコール検知器4で検出されたとき、正規の電子キー2が利用されたか否かに拘わらず、飲酒運転防止制御装置5は、前記エンジン始動許可信号や前記ロック解除許可信号を出力しないようになっている。その結果、こうした場合には、車両の運転が禁止されることとなり、よって飲酒状態にある者による車両の運転、つまり飲酒運転が未然に防止されるようになっている。ちなみに、正規の電子キー2が利用されるも、基準値を超えるアルコールがアルコール検知器4で検出されたとき、エンジンの始動は許可する一方で、ステアリングロックについては解除しないようにし、これにより車両を走行できないようにしてもよい。
【0033】
尚、ここまでの動作は、後述するアイドリングスイッチ8が操作されないことを前提とするものであり、よってアイドリングスイッチ8が操作された場合には、この限りではない。以下、アイドリングスイッチ8が操作された場合の動作について説明する。
【0034】
飲酒運転防止制御装置5には、アイドリングを要求するために操作されるアイドリングスイッチ8が電気的に接続されている。尚、アイドリングスイッチ8は、カバーのような遮蔽物によって隠蔽された状態で、運転席から手の届く場所に設けられるとともに、その遮蔽物を取り除く或いは開けることによって、隠蔽状態が解除されたとき、それを操作することが可能となっている。勿論、常に目に付くような配置構成であってもよい。ちなみに、前記遮蔽物にキー穴を設け、正規のメカニカルキーをそれに差し込んで回動操作することで、該遮蔽物によるアイドリングスイッチ8の隠蔽状態を解除できるようにしてもよい。このようにすれば、第三者によるアイドリングスイッチ8の操作を規制できることとなり、よってセキュリティレベルを向上できる。
【0035】
飲酒運転防止制御装置5は、正規の電子キー2が利用された(車内の所定領域A32に持ち込まれた)ことを前提として、アイドリングスイッチ8が操作されたとき、アルコール検知器4によるアルコール検知の結果を問わず、エンジン制御装置6にエンジン始動許可信号を出力する。ただし、このとき、飲酒運転防止制御装置5は、ステアリングロック制御装置7に対してロック解除許可信号を出力しないようになっている。その結果、こうした場合、エンジン始動ボタン(図示略)を押すと、エンジン制御装置6によりエンジンは始動されるものの、ステアリングロックは解除されず、よって車両を走行させることはできないようになっている。
【0036】
ちなみに、本実施形態とは異なり、電子キーシステム1が適用されていない車両にあっては、正規の電子キー2が利用された(車内の所定領域A32に持ち込まれた)ことを前提とすることなく、単にアイドリングスイッチ8が操作されたとき、アルコール検知器4によるアルコール検知の結果を問わず、エンジンの始動を許可するようにしてもよい。この場合、本実施形態と同様に、ステアリングロックについては解除しないようにし、これにより車両を走行できないようにすればよい。
【0037】
また、ハンドルと駆動輪とが機構的に分離されたバイワイヤ方式の操舵装置(いわゆるステアバイワイヤ)が搭載された車両にあっては、アイドリングスイッチ8が操作されたとき、エンジンの始動を許可するとともに、ハンドル操作を電気的に無効にすることで車両の走行を禁止するようにすればよい。
【0038】
尚、本実施形態では、アルコール検知器4、飲酒運転防止制御装置5、アイドリングスイッチ8により飲酒運転防止システムが構築されている。つまり、本実施形態の自動車には、こうした飲酒運転防止システムが適用されるとともに、これにより飲酒運転が未然に防止され、しかも走行を目的としないエンジン始動については、アルコール検知を行わなくてもそれを可能とするような特例が設けられ、これにより車両利用者に対する利便性が高められている。
【0039】
本実施形態においてアイドリングスイッチ8は、アイドリング用操作手段に相当する。一方、飲酒運転防止制御装置5は、アイドリング許容手段及び走行禁止制御手段に相当する。
【0040】
以上、詳述したように本実施形態によれば、次のような作用、効果を得ることができる。
(1)アイドリングスイッチ8を操作することで、アルコール検知器4によるアルコール検知を行うことなく、エンジンの始動が許可される。このため、飲酒状態にない者が車内でくつろぐことを目的としてエンジンを始動させたいと望むような場合、アイドリングスイッチ8を操作することでそれが許容されるから都合がよい。一方、飲酒状態にある者が車内で暖をとることを目的としてエンジンを始動させたいと望むような場合、アイドリングスイッチ8を操作することでそれが許容されるから都合がよい。従って、融通性を持たせることができる。
【0041】
(2)アイドリングスイッチ8が操作されたとき、エンジンの始動は許可されるものの、車両の走行は禁止される。このため、例えば、飲酒状態にある者がアイドリングスイッチ8を操作した場合、エンジンを始動させることはできるものの、車両を走行させることはできない。従って、飲酒運転を未然に防止することができる。
【0042】
(3)アイドリングスイッチ8が操作されたことに伴って、エンジンの始動が許可された場合に、ハンドル操作を機械的に禁止(ステアリングロック)することで車両の走行が禁止される。このため、例えば、飲酒状態にある者がアイドリングスイッチ8を操作した場合、エンジンを始動させることはできるものの、車両を走行させることはできない。従って、飲酒運転を未然に防止することができる。
【0043】
(4)走行を目的としないエンジン始動の頻度は、走行を目的とするエンジン始動の頻度よりも低いものと考えられる。従って、走行を目的とするエンジン始動時には用いられないアイドリングスイッチ8を隠蔽して普段は目に付かないようにすることで、運転席周りの見栄えを向上することができる。
【0044】
(5)飲酒状態にない者に車両を運転する気がなく、その者が車内でくつろぐことを目的としてエンジンを始動させたいと望むような場合、アルコール検知を行うことなく、アイドリングスイッチ8を操作するだけで事が足りる。従って、こうした者に対する負担を軽減できる。
【0045】
(6)飲酒状態にある者に車両を運転する気がなく、その者が車内で暖をとることを目的としてエンジンを始動させたいと望むような場合、アルコール検知を行うことなく、アイドリングスイッチ8を操作するだけで事が足りる。従って、どれだけアルコールを摂取していようとも、エンジンの始動は許可されるので、その者に対して車内で暖をとらせることができる。
【0046】
(7)正規の電子キー2が利用されなければ、エンジンの始動が許可されない。従って、第三者によるエンジン始動が規制されるので、セキュリティレベルを向上できる。
(8)アルコール検知器4は、呼気吹き込み口41から呼気が直接吹き込まれる方式であるので、アルコール検知の検出精度を向上できる。尚、アルコール被験者によって直接口付けられる呼気吹き込み口41を着脱自在に設けることで、他人用のものから自分専用のものに付け替えできるようにすれば、衛生面の観点から都合がよくなり、よって好適である。
【0047】
(9)照合装置35とは別に飲酒運転防止制御装置5が設けられているので、既存の照合装置35をほぼそのまま利用することができる。従って、電子キーシステム1が適用されている車両に対して飲酒運転防止システムを容易に後付することができる。
【0048】
尚、前記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・前記実施形態では、アイドリングスイッチ8が操作されたとき、エンジンの始動を許可するとともに、ハンドル操作を禁止或いは無効化することで車両の走行を禁止するようにしたが、ハンドル操作に代えて又は加えて、シフト操作を禁止或いは無効化することで車両の走行を禁止するようにしてもよい。
【0049】
同構成によると、アイドリングスイッチ8が操作されたことに伴って、エンジンの始動が許可された場合に、シフト操作を機械的に禁止したり、或いは、いわゆるシフトバイワイヤが搭載された車両にあってシフト操作を電気的に無効にしたりすることで、車両の走行が禁止される。このため、例えば、飲酒状態にある者がアイドリングスイッチ8を操作した場合、エンジンを始動させることはできるものの、車両を走行させることはできない。従って、飲酒運転を未然に防止することができる。
【0050】
・アルコール検知器4と飲酒運転防止制御装置5との間で互いの認証に関する暗号化通信を行うことで、セキュリティレベルを向上するようにしてもよい。
・飲酒運転防止制御装置5とエンジン制御装置6との間で互いの認証に関する暗号化通信を行うことで、セキュリティレベルを向上するようにしてもよい。
【0051】
・飲酒運転防止制御装置5とステアリングロック制御装置7との間で互いの認証に関する暗号化通信を行うことで、セキュリティレベルを向上するようにしてもよい。
・アルコール検知器4は、車内に設置されるものに限定されない。例えば、アルコール検知器4のようなアルコール検知機能を電子キー2に持たせることで、車両キーとアルコール検知器とを単一の電子キー2で兼用してもよい。この場合、電子キー2と飲酒運転防止制御装置5との間で無線通信を行うとともに、それを通じてアルコール検知結果を飲酒運転防止制御装置5に送信すればよい。
【0052】
・アルコール検知器4は、車両ユーザ本人やその者から許可を受けた者によって電子キー2と併せて所持されるものであってもよい。この場合、アルコール検知器4は、無線通信による送信機能を有するとともに、それを用いてアルコール検知結果を飲酒運転防止制御装置5に送信すればよい。
【0053】
・飲酒運転防止制御装置5のような飲酒運転防止制御機能を照合装置35に持たせることで、照合装置35とは別体の飲酒運転防止制御装置5を割愛してもよい。このように統合すれば、システム構成が簡素化されることとなり、車両の小型軽量化に貢献できる。
【0054】
・アイドリング用操作手段は、アイドリングスイッチ8に限定されない。例えば、既存のスイッチ類を単独で或いは組み合わせて特殊操作することで、それをアイドリングを要求するための操作としてもよい。このようにすれば、新たにアイドリングスイッチ8を設けることなく、既存のスイッチ類によってアイドリング用操作手段を賄うことができ、よって部品点数の増加をなくすることができる。
【0055】
・基準アルコール量に関するデータ(前記実施形態では、0.15mg/L)は、飲酒運転防止制御装置5のメモリでなく、アルコール検知器4のマイコン42のメモリに記憶されていてもよい。この場合、呼気中のアルコール量が基準アルコール量を下回っているか否かの判断は、マイコン42により行われ、マイコン42から飲酒運転防止制御装置5へは、その判断結果を示唆する信号が出力されることになる。このようにすれば、飲酒運転防止制御装置5の負担を軽減できる。
【0056】
尚、呼気中のアルコール量が基準アルコール量を下回っているか否かの判断結果や、判断結果とまではいかないまでも呼気中のアルコール量の検出結果を報知する報知手段、例えば、音声による報知を行うスピーカ等の鳴動手段や、表示による報知を行うディスプレイ等の表示手段をアルコール検知器4に設けてもよい。
【0057】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について記載する。
〔1〕請求項2に記載の飲酒運転防止システムにおいて、
前記走行禁止制御手段は、前記アイドリング用操作手段が操作されたことに伴って、前記アイドリング許容手段によりエンジンの始動が許可されたとき、シフト操作を禁止或いは無効化することで車両の走行を禁止することを特徴とする飲酒運転防止システム。
【0058】
同構成によると、アイドリング用操作手段が操作されたことに伴って、エンジンの始動が許可された場合に、シフト操作を機械的に禁止したり、或いは、いわゆるシフトバイワイヤが搭載された車両にあってシフト操作を電気的に無効にしたりすることで、車両の走行が禁止される。このため、例えば、飲酒状態にある者がアイドリング用操作手段を操作した場合、エンジンを始動させることはできるものの、車両を走行させることはできない。従って、飲酒運転を未然に防止することができる。
【0059】
〔2〕請求項1〜請求項3、上記技術的思想〔1〕のいずれか1項に記載の飲酒運転防止システムにおいて、
前記アイドリング用操作手段は、隠蔽された状態で設けられるとともに、その隠蔽状態が解除されたとき、それを操作することが可能となっていることを特徴とする飲酒運転防止システム。
【0060】
同構成によると、走行を目的としないエンジン始動の頻度は、走行を目的とするエンジン始動の頻度よりも低いものと考えられる。従って、走行を目的とするエンジン始動時には用いられないアイドリング用操作手段を隠蔽して普段は目に付かないようにすることで、運転席周りの見栄えを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本実施形態の自動車に適用されている電子キーシステムの構成及び飲酒運転防止システムの構成を示すブロック図。
【図2】車内の所定領域を示す説明図。
【符号の説明】
【0062】
4…アルコール検知器、5…飲酒運転防止制御装置(アイドリング許容手段、走行禁止制御手段)、8…アイドリングスイッチ(アイドリング用操作手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準値を超えるアルコールがアルコール検知器で検出されたとき、車両の運転を禁止する飲酒運転防止システムにおいて、
アイドリングを要求するために操作されるアイドリング用操作手段と、
前記アイドリング用操作手段が操作されたとき、前記アルコール検知器によるアルコール検知の結果を問わず、エンジンの始動を許可するアイドリング許容手段とを備えていることを特徴とする飲酒運転防止システム。
【請求項2】
請求項1に記載の飲酒運転防止システムにおいて、
前記アイドリング用操作手段が操作されたことに伴って、前記アイドリング許容手段によりエンジンの始動が許可されたとき、車両の走行を禁止する走行禁止制御手段を備えていることを特徴とする飲酒運転防止システム。
【請求項3】
請求項2に記載の飲酒運転防止システムにおいて、
前記走行禁止制御手段は、前記アイドリング用操作手段が操作されたことに伴って、前記アイドリング許容手段によりエンジンの始動が許可されたとき、ハンドル操作を禁止或いは無効化することで車両の走行を禁止することを特徴とする飲酒運転防止システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−1101(P2009−1101A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162712(P2007−162712)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】