説明

飽和ノルボルネン樹脂フィルムおよびその製造方法、偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルム並びに液晶表示装置

【課題】 延伸飽和ノルボルネン樹脂フィルムの寸法安定性向上とボーイング現象抑制という二つの課題を同時に解決すること。
【解決手段】 60℃・相対湿度90%の環境下か90℃ドライの環境下にて500時間吊したときの寸法変化率が遅相軸方向およびそれに直交する方向とも−0.1%〜0.1%であり、厚みのバラツキが0〜2μm、Reのバラツキが0〜5nm、Rthのバラツキが0〜10nmであり、遅相軸のズレが−0.5〜0.5°であることを特徴とする飽和ノルボルネン樹脂フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寸法安定性に優れ、且つ長手方向と幅方向におけるフィルムの物性が均一であり、レターデーションのムラおよび遅相軸ズレが極めて小さい飽和ノルボルネン樹脂フィルム、ならびにその製造方法に関するものである。また、本発明は、該飽和ノルボルネン樹脂フィルムを用いた偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルムおよび液晶表示装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来飽和ノルボルネン樹脂フィルムを延伸して、面内のレターデーション(Re)と厚み方向のレターデーション(Rth)を発現させ、これを液晶表示素子の位相差膜として使用して視野角拡大を図ることが実施されている。最近では、液晶表示装置は一段と大型化や高精細化されるようになっており、それに用いられる光学フィルムの寸法安定性も強く求められるようになっている。さらに、位相差フィルムについては、面内のレターデーション(Re)、厚み方向のレターデーション(Rth)、遅相軸方向等が、フィルムの広い範囲において均一にコントロールされていることが求められるようになっている。
【0003】
飽和ノルボルネン樹脂フィルムを延伸する方法には、縦(長手)方向に延伸する方法(縦延伸)、横(幅)方向に延伸する方法(横延伸)、および縦方向と横方向に同時に延伸する方法(同時延伸)がある。バーティカルアラインメント(VA)型などの液晶表示素子において位相差膜として飽和ノルボルネン樹脂フィルムを使用する場合は、飽和ノルボルネン樹脂フィルムの延伸方法として横延伸を採用することが好ましい。それは、横延伸した飽和ノルボルネン樹脂フィルムと長手方向に縦延伸された偏光子とを長尺ロール形態で直接ロールトゥロール(Roll to Roll)方式で貼り合わせることができるため、工程の手間を大幅に削減して生産性を上げることができるためである。
【0004】
このような飽和ノルボルネン樹脂フィルムを横延伸する方法は、特開2001−42130号公報に記載されている。この方法によれば、延伸中の温度ムラを小さくすることでReのバラツキを抑えることができる。
【特許文献1】特開2001−42130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この方法のようにフィルムをテンター方式で横延伸すれば、延伸による分子配向でレターデーションや弾性率などの特性を向上させることができる。しかしながら、延伸による歪みが分子鎖に残留するために、高温環境下や高湿環境下において分子鎖の熱収縮が引起し、寸法変化が増大してしまうという問題がある。このような延伸フィルムを用いて偏光板や位相差フィルムを作製し、粘着剤を介して液晶パネルと貼り合せると、温度や湿度変化による寸法変化でパネルのソリを誘発してしまう。特に液晶表示装置の大型化による光学フィルムの大面積化が進むと、その問題はより顕著となる。このように、偏光板と液晶セルとの間に配置される光学フィルムの寸法安定性は液晶表示装置の視認性に大きな影響を及ぼすものであり、寸法安定性が悪い従来の延伸フィルムを使用すると液晶画像表示ムラを引き起こしてしまうという致命的な問題があった。
【0006】
また、従来のテンター方式の横延伸は、ボーイング現象を引き起こし、フィルム幅方向の物性の均一性を乱してしまう。ボーイング現象は、テンター内でフィルムの幅方向に横延伸する際に生じるものであって、テンター延伸前にフィルム幅方向に引いた直線が、テンター延伸後にはフィルムの長手方向に対して凹状または凸状に変形する挙動を指すものである。このようなボーイング現象が生じるために、テンター方式で横延伸した従来のフィルムには、幅方向の分子配向軸にズレが発生する。具体的には、フィルム幅方向の中央部から端部へ向かうにつれて、遅相軸が傾き(遅相軸のズレ)、レターデーション(Re、Rth)のバラツキが大きく生じてしまう。
【0007】
フィルムの寸法安定性を向上させるために、延伸後に熱処理することが知られている。このとき、熱処理温度が高いほど熱収縮量は低下する。しかしながら、熱処理温度を高くすると、ボーイング現象と光学特性(特にRe、Rth)が悪化するという問題が発生する。
一方、ボーイングを小さくするには、延伸温度を高くして延伸応力をできるだけ低くし、かつ熱処理温度をできるだけ低くすることが望ましい。しかしながら、延伸温度を高くしすぎるとフィルムの光学特性(特にRe、Rth)が低下し、熱処理温度を低くすると寸法安定性が低下するという問題がある。
【0008】
このように、従来は延伸フィルムの寸法安定性向上とボーイング現象抑制という二つの課題を同時に解決する方法が無かったため、延伸フィルムを位相差フィルムとして液晶表示装置に組み込むと、高温環境下や高湿環境下で液晶表示画面に色ムラが発生してしまうという問題が生じていた。特に、液晶表示装置の大型化や高精細化に伴って、それに用いられる光学フィルムも大型化している近年では、寸法安定性向上とボーイング現象抑制の両立を図って液晶表示素子の視認性を改善することがますます強く求められている。
【0009】
以上に鑑みて、本発明は、延伸飽和ノルボルネン樹脂フィルムの寸法安定性向上とボーイング現象抑制という二つの課題を同時に解決することを目的とする。すなわち、温湿または乾熱における寸法安定性が優れ、且つフィルムの長手方向と幅方向における物性が均一であり、レターデーション(Re、Rth)のムラと幅方向の遅相軸ズレが極めて小さい飽和ノルボルネン樹脂フィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。また、そのような飽和ノルボルネン樹脂フィルムを用いて、優れた光学的性質を有する偏光板、位相差フィルム、光学補償フィルム、反射防止フィルムなどの光学フィルムを提供し、さらに高温環境下や高湿環境下における色ムラを改良した液晶表示装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は以下の構成を有する本発明により達成された。
[1] 60℃・相対湿度90%の環境下にて500時間吊したときの寸法変化率が遅相軸方向およびそれに直交する方向とも−0.1%〜0.1%であり、90℃ドライの環境下にて500時間吊したときの寸法変化率が遅相軸方向およびそれに直交する方向とも−0.1%〜0.1%であり、厚みのバラツキが0〜2μm、面内のレターデーション(Re)のバラツキが0〜5nm、厚み方向のレターデーション(Rth)のバラツキが0〜10nmであり、遅相軸のズレが−0.5〜0.5°であることを特徴とする飽和ノルボルネン樹脂フィルム。
[2] 飽和ノルボルネン樹脂フィルムがロール状であって、該フィルムの遅相軸方向と該フィルムの長手方向とのなす角度の絶対値が89.5°〜90.5°であることを特徴とする[1]に記載の飽和ノルボルネン樹脂フィルム。
【0011】
[3] 飽和ノルボルネン樹脂フィルムを、テンターを用いて幅方向に5%〜250%延伸した後、テンター内で少なくとも片側のチャックの拘束を除去した状態で熱処理することを特徴とする飽和ノルボルネン樹脂フィルムの製造方法。
[4] 前記延伸を、延伸後の飽和ノルボルネン樹脂フィルムのボーイング率が−1〜1%となるような条件で行うことを特徴とする[3]に記載の飽和ノルボルネン樹脂フィルムの製造方法。
[5] テンター内でチャックを外した後に1N/m〜70N/mの張力で搬送することを特徴とする[3]または[4]に記載の飽和ノルボルネン樹脂フィルムの製造方法。
[6] 前記幅方向への延伸後で前記熱処理前に、前記幅方向への延伸終了時の温度よりも0〜20℃低い温度で0.1%〜40%幅方向に緩和することを特徴とする[3]〜[5]のいずれか一項に記載の飽和ノルボルネン樹脂フィルムの製造方法。
[7] 前記テンター内の幅方向における延伸時の温度分布が下記式(1)を満足することを特徴とする[3]〜[6]のいずれか一項に記載の飽和ノルボルネン樹脂フィルムの製造方法。
1≦Ts−Tc≦5 (1)
(上式において、Tcはフィルムの中央部の平均温度、Tsは端部両側の平均温度である。)
[8] 前記延伸の前に、飽和ノルボルネン樹脂フィルムの長手方向に0%〜50%延伸することを特徴とする[3]〜[7]のいずれか一項に記載の飽和ノルボルネン樹脂フィルムの製造方法。
[9] 前記延伸を、飽和ノルボルネン樹脂フィルムの残留溶媒量が1質量%以下の状態で行うことを特徴とする[3]〜[8]のいずれか一項に記載飽和ノルボルネン樹脂フィルムの製造方法。
[10] 製造される飽和ノルボルネン樹脂フィルムが、60℃・相対湿度90%の環境下にて500時間吊したときの寸法変化率が遅相軸方向およびそれに直交する方向とも−0.1%〜0.1%であり、90℃ドライの環境下にて500時間吊したときの寸法変化率が遅相軸方向およびそれに直交する方向とも−0.1%〜0.1%であり、厚みのバラツキが0〜2μm、面内のレターデーション(Re)のバラツキが0〜5nm、厚み方向のレターデーション(Rth)のバラツキが0〜10nmであり、遅相軸のズレが−0.5〜0.5°であることを特徴とする[3]〜[9]のいずれか一項に記載の飽和ノルボルネン樹脂フィルムの製造方法。
[11] [3]〜[10]のいずれか一項に記載の製造方法で製造される飽和ノルボルネン樹脂フィルム。
【0012】
[12] 偏光膜に、[1]、[2]または[11]に記載の飽和ノルボルネン樹脂フィルムを1枚以上積層したことを特徴とする偏光板。
[13] [1]、[2]または[11]に記載の飽和ノルボルネン樹脂フィルムを基材に用いたことを特徴とする光学補償フィルム。
[14] [1]、[2]または[11]に記載の飽和ノルボルネン樹脂フィルムを基材に用いたことを特徴とする反射防止フィルム。
[15] [1]、[2]または[11]に記載の飽和ノルボルネン樹脂フィルム、[12]に記載の偏光板、[13]に記載の光学補償フィルムおよび[14]に記載の反射防止フィルムからなる群より選択される1枚以上のフィルムを用いて形成した液晶表示装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明の飽和ノルボルネン樹脂フィルムは、温湿または乾熱における寸法安定性が優れ、面内におけるレターデーションのバラツキおよび遅相軸の軸ズレが劇的に小さくすることができる。大型の液晶表示装置に要求される光学特性値の均一性を満たすことができる。該フィルムは、高品位な位相差フィルム、光学補償フィルム、反射防止フィルム等として用いることができ、またこれらを用いた画像表示装置の表示ムラを大幅に解消できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下において、本発明の飽和ノルボルネン樹脂フィルムおよび製造方法等について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0015】
本発明の延伸飽和ノルボルネン樹脂フィルムは、60℃・相対湿度90%の環境下にて500時間吊したときの寸法変化率が遅相軸方向およびそれに直交する方向とも−0.1%〜0.1%であり、90℃ドライの環境下にて500時間吊したときの寸法変化率が遅相軸方向およびそれに直交する方向とも−0.1%〜0.1%であり、厚みのバラツキが0〜2μm、面内のレターデーション(Re)のバラツキが0〜5nm、厚み方向のレターデーション(Rth)のバラツキが0〜10nmであり、遅相軸のズレが−0.5〜0.5°であることを特徴とする。
【0016】
本発明の飽和ノルボルネン樹脂フィルムの湿熱処理による寸法変化率と乾熱処理による寸法変化率は、ともに−0.1%〜0.1%であることが好ましく、−0.08%〜0.08%であることがより好ましく、−0.06%〜0.06%であることがより好ましい。
フィルムの湿熱処理による寸法変化率と乾熱処理による寸法変化は、自動ピンゲージ(新東科学(株)製)を用いて測定する。測定にあたっては、フィルムの面内の遅相軸方向およびそれと直交する方向に沿って、50mm幅×150mm長さのサンプル片を各5枚採取する。このとき、フィルムの遅相軸方向にバラツキがある場合は、その平均値をもって遅相軸方向を定める。フィルムがロール状である場合はフィルムの長手方向(MD:流延方向と同じ)および幅方向(TD:横方向)に沿って、50mm幅×150mm長さのサンプル片を各5枚採取すれば、フィルムの遅相軸方向およびそれと直交する方向に沿ってサンプル片を取得したのと同じことになる(以下においても、「遅相軸方向およびそれと直交する方向」をロール状フィルムに適用するときは同じように扱う)。各サンプル片の両端に6mmφの穴をパンチで100mm間隔で開け、25℃・相対湿度60%の室内で24時間以上調湿してから、ピンゲージを用いてパンチ間隔の原寸(L1)を最小目盛り1/1000mmまで測定する。次にサンプル片を60℃・相対湿度90%の恒温器または90℃ドライのオーブンに無荷重で吊して500時間熱処理し、その後25℃・相対湿度60%の室内で24時間以上調湿してから自動ピンゲージで熱処理後のパンチ間隔の寸法(L2)を測定する。ここでいうドライとは、相対湿度10%以下を意味する。これらの測定結果に基づいて、次式により寸法変化率を算出することができる。なお、ここで言う寸法変化率は各5枚のサンプルの平均値である。
寸法変化率(%)={(L2−L1)/L1}×100
【0017】
本発明の飽和ノルボルネン樹脂フィルムの面内のレターデーション(Re)のバラツキは、0〜5nmが好ましく、0〜4nmがより好ましく、0〜3nmが最も好ましい。また、本発明の飽和ノルボルネン樹脂フィルムの厚み方向のレターデーション(Rth)のバラツキは、0〜10nmが好ましく、0〜8nmがより好ましく、0〜5nmがさらに好ましい。
本明細書におけるReとRthの測定は、フィルムを25℃・相対湿度60%にて24時間調湿後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH:王子計測機器(株)製)を用いて25℃・相対湿度60%において行う。ReはKOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定する。Rthは前記Re、面内の遅相軸(KOBRA−21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して角度を変えて、傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定した複数のレターデーション値を基にKOBRA−21ADHが算出する。本明細書においては、特に断らない限りλとして590±5nmを使用している。
ReとRthのバラツキは、フィルムの遅相軸方向およびそれと直交する方向に沿って3cm×3cmのサンプル片を複数枚採取して上記方法によりReとRthを測定し、測定値と平均値との差の全平均を計算することにより得られる値である。
【0018】
本発明の飽和ノルボルネン樹脂フィルムのReとRthは下式を満足することが好ましい。
0≦Re≦300
20≦Rth≦500
より好ましくは下式を満足する場合である。
0≦Re≦200
30≦Rth≦400
さらに好ましくは下式を満足する場合である。
0≦Re≦150
40≦Rth≦350
【0019】
本発明の飽和ノルボルネン樹脂フィルムの遅相軸のズレは、−0.4〜0.4°であることがより好ましく、−0.3〜0.3°であることがさらに好ましく、−0.2〜0.2°であることが最も好ましい。
フィルムの遅相軸のズレは、フォルムの遅相軸方向に沿って3cm×3cmのサンプル片を複数枚採取し、各サンプルの遅相軸方向を測定して、測定値と平均値との差の全平均を計算することにより得られる値である。
飽和ノルボルネン樹脂フィルムがロール状であるとき、遅相軸角度(遅相軸方向と長手方向とのなす角度の絶対値)は89.5°〜90.5°であることが好ましく、89.6°〜90.4°であることがより好ましく、89.7°〜90.3°であることが最も好ましい。
【0020】
本発明の飽和ノルボルネン樹脂フィルムの膜厚は30〜200μmが好ましく、35μm〜150μmがより好ましく、35μm〜100μmが特に好ましい。本発明の飽和ノルボルネン樹脂フィルムの厚みムラは、0〜2μmが好ましく、より好ましくは0〜1.5μm、さらに好ましくは0〜1μmである。厚みは、フィルムのサンプル片を複数枚採取して厚みを測定して平均値を計算することにより得られる値であり、厚みムラは、各測定値と平均値との差の全平均を計算することにより得られる値である。
【0021】
本発明の飽和ノルボルネン樹脂フィルムの湿熱処理によるソリ量および乾熱処理によるソリ量は、いずれも2mm以下が好ましく、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1.0mm以下、さらに好ましくは0.5mm以下である。
ソリ量は、厚さ0.7mmの40インチのガラス板に貼り合せた飽和ノルボルネン樹脂フィルムの飽和ノルボルネン樹脂フィルムを60℃・相対湿度90%または90℃ドライで24時間放置直後、ガラスの長手方向の彎曲変形した高さである。測定精度0.001mmを有するノーキスで測定し、ガラス板長手方向の彎曲した部分の最大値をもってソリ量とする。
【0022】
《達成手段》
本発明の上記特徴を有する飽和ノルボルネン樹脂フィルムの製造方法は特に制限されない。例えば、下記の(1)および(2)を適宜選択して組み合わせることにより上記特徴を有する飽和ノルボルネン樹脂フィルムを製造することができる。特に、下記の(1)を必須とする本発明の製造方法によれば、湿熱処理や乾熱処理による寸法変化、遅相軸の軸ズレ、長手方向と幅方向におけるレターデーションのバラツキを同時抑えることができ、上記特徴を有する飽和ノルボルネン樹脂フィルムを簡便に製造することができる。
【0023】
(1)テンター内で少なくとも片側のチャックの拘束を除去して低張力の熱処理を実施する
本発明者らは、従来の延伸技術で製造した飽和ノルボルネン樹脂フィルムの湿熱処理や乾熱処理による寸法変化の発生原因を検討したところ、延伸による歪みが分子鎖に残留しているために、湿熱処理や乾熱処理により分子鎖の残存歪みが開放されて収縮することが判明した。そこで延伸による歪みが分子鎖に残留しないようにする延伸方法について鋭意検討を行った結果、延伸後にテンター内において、フィルム両端を把持するチャック(テンタークリップ)の拘束を少なくとも片側除去した状態で熱処理を行い、フィルムの縦方向および横方向の拘束力を低下させることによって、縦方向および横方向の残存歪を同時に低下させうることを見出した。チャックの拘束を除去するのは、片側だけチャックを外してもよいし、両側ともチャックを外してもよい。また、フィルムの端部の片側だけをスリットしてもよいし、フィルム端部の両側ともスリットしてもよい。さらに、フィルム両端を把持するチャックの間の距離を狭めることにより、実質的にチャックの拘束を除去する状態にしてもよい。具体的には、チャックの移動ルートをガイドするテンタークリップレールの間隔が狭くなるように設計したテンターを用いてもよい。このようにテンター内で少なくとも片側のチャックの拘束を除去して低張力の熱処理を実施することによって、湿熱処理や乾熱処理によるフィルムの寸法変化を抑制し、同時にボーイング現象も低減することができる。
【0024】
(2)延伸テンター内の温度を制御する
本発明者らは、ボーイング現象の抑制法について鋭意検討した結果、延伸テンター内における長手方向の各ゾーンの温度分布および幅方向の温度分布が、ボーイング現象を制御するキーポイントであることを見出した。本発明で好ましく用いることができる延伸テンターは、予熱ゾーン、延伸ゾーン、緩和ゾーン、熱処理ゾーンを少なくとも含む。このうち、延伸ゾーン、緩和ゾーン、熱処理ゾーンのそれぞれの温度分布を制御すれば、ボーイング現象を低減することができる。また、各ゾーンにおいてフィルム幅方向に温度差を設け、フィルム中央部の温度をフィルム端部の温度よりも若干低くなるように温度勾配をつければ、フィルム幅方向の延伸応力の均一化を図ることができ、ボーイング現象を一段と低減することができる。
【0025】
《テンターによる延伸処理》
以下において、テンターによる飽和ノルボルネン樹脂フィルムの処理条件を詳細に説明する。本発明で好ましく用いることができるテンターの概略図を図1に示す。図1のテンターは、順に予熱ゾーン(E)、延伸ゾーン(F)、緩和ゾーン(G)、熱処理ゾーン(H)により構成されている。テンター内において、延伸される飽和ノルボルネン樹脂フィルム(以下、流延により調製された飽和ノルボルネン樹脂膜状物ということもある)はテンタークリップレール6上を走行するチャック(テンタークリップ)5によって両端を挟まれ、矢印の方向に送られる。本発明で用いるテンターでは、熱処理ゾーンHに設置されたチャックの拘束を除去する装置4により少なくとも片側のチャックの拘束が外されて熱処理されるようになっている。延伸前の飽和ノルボルネン樹脂フィルムに引いたボーイング標線2は、延伸に伴ってボーイング線3のように非直線状に変形するが、テンションカットロール7から得られる延伸後の飽和ノルボルネン樹脂フィルム1は、ボーイング線の歪みが小さくなっている。本発明では、ボーイング線の歪みの程度を表すボーイング率が−1〜1%であることが好ましく、−0.8〜0.8%であることがより好ましく、−0.5〜0.5%であることがさらに好ましい。ここでいうボーイング率とは、横方向の延伸を行う前のフィルムの表面に幅方向に引いた直線状のボーイング線が、テンター延伸後にフィルムの長手方向に対して凹状または凸状に引き戻された弓状形に変形するときの最大凸量または最大凹量から以下の式により算出される。このとき、フィルムの進行方向に対して凸状の弓状ボーイング線を負(−)とし、凹状の弓状ボーイング線を正(+)とする。
ボーイング率(%)=ボーイング線の最大凸量または凹量(mm)/全幅(mm)×100(%)
以下に、テンター内のゾーンの順に従って、横延伸工程を詳細に説明する。
【0026】
(予熱ゾーン)
予熱ゾーンは、飽和ノルボルネン樹脂フィルムの両端をチャック(テンタークリップ)で挟み、フィルムの両端を挟んだ各チャックを平行に移動させて、フィルムを延伸せずに搬送しながら予熱するゾーンである。
予熱ゾーンの温度は、(Tg−30℃)〜(Tg+30℃)の範囲に設定することが好ましく、ボーイング現象の状況に応じて予熱ゾーンの温度を調整することができる。ボーイング線がテンター出口で進行方向に凸状になる場合、予熱ゾーンの温度を延伸ゾーン温度より低くすることが好ましく、(Tg−30℃)〜(Tg+10℃)の範囲に設定することがより好ましく、(Tg−30℃)〜(Tg+5℃)の範囲に設定することがさらに好ましい。予熱温度をこのように設定することで凸状になるボーイング現象を小さくすることができる。また、ボーイング線がテンター出口で進行方向に凹状になる場合、予熱ゾーンの温度を延伸ゾーン温度より高くすることが好ましく、(Tg−10℃)〜(Tg+30℃)の範囲に設定することがより好ましく、(Tg−5℃)〜(Tg+30℃)の範囲に設定することがさらに好ましい。予熱温度をこのように設定することで凹状になるボーイング現象を小さくすることができる。なお、ここでいうTgは、残留溶媒量が1質量%以下の飽和ノルボルネン樹脂フィルムのガラス転移温度である。
【0027】
(延伸ゾーン)
延伸ゾーンは、フィルムの両端を挟んだ各チャック間の距離が広がるようにしてフィルムを搬送することによりフィルムを延伸するゾーンである。
本発明では、溶液流延または溶融流延によって形成される飽和ノルボルネン樹脂膜状物を残留溶媒量が1質量%以下の状態でドライ延伸することが好ましい。溶媒含有量が多いウェット延伸を行うと、延伸工程中の加熱によって溶媒の急激な蒸発が起こり微小な気泡が発生する問題が起こる他、延伸処理後にも溶媒が残りやすく、この残存溶媒が液晶表示装置用の部品を作成するときに悪影響を及ぼしやすい。また、残留溶媒量の多い状態でウェット延伸を行うと、溶媒の可塑化効果によりレターデーション(Re、Rth)が上がりにくくなったり、視野角特性の改良が不十分になったりするという問題もある。これらの中で特に大きい問題は、局部溶媒の蒸発速度の差によってフィルム延伸性が不均一になり、レターデーション(Re、Rth)のバラツキ、配向遅相軸のズレが起こり易いということである。上記のようにドライ延伸すれば、溶媒を含有するウェット延伸工程で発生するような前述の諸問題を回避することができる。延伸工程に供せられる飽和ノルボルネン樹脂膜状物の残留溶媒量は1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.8質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下、最も好ましくは0.2質量%以下である。
【0028】
本発明における横延伸の温度は、(Tg−10℃)〜(Tg+35℃)の範囲に設定することが好ましく、(Tg−10℃)〜(Tg+30℃)の範囲に設定することがより好ましく、(Tg−5℃)〜(Tg+30℃)の範囲に設定することが最も好ましい。延伸ゾーン内の温度は必ずしも一定である必要はなく、徐々に変化させてもよい。延伸ゾーン内では、一段延伸を実施してもよいし、多段延伸を実施してもよい。多段延伸を実施する場合、延伸ゾーン後段部の温度が前段部の温度よりも若干低くなるように温度勾配をつけることが好ましく、具体的には1〜10℃低い温度で実施することが好ましく、1〜8℃低い温度で実施することがより好ましく、1〜5℃低い温度で実施することが最も好ましい。多段延伸の温度差をつける方法には特に制限はないが、例えば、熱風加熱の場合は、延伸ゾーン前段部と延伸ゾーン後段部の送風量を変えることにより温度差をつける方法を採用することができ、また、遠赤外線やマイクロ波加熱装置等の輻射加熱の場合は、延伸ゾーン前段部と延伸ゾーン後段部のヒーター本数やヒーター能力を変えることにより温度差をつける方法を採用することができる。
【0029】
本発明においては、延伸ゾーンにおいて、フィルムの幅方向に温度差を設け、フィルム中央部の温度Tcをフィルム端部の温度Tsよりも若干低くなるように温度勾配をつけることが好ましい。このような温度勾配をつけることにより、フィルム幅方向の延伸応力の均一化が図られ、ボーイング現象が低減される。
本発明においては、幅方向の温度分布が1℃≦Ts−Tc≦5℃を満足するようにすることが好ましい。延伸ゾーンの温度分布は、両端の温度Tsを中央部温度Tcより1〜5℃高くして延伸することが好ましく、1〜4℃高くして延伸することがより好ましく、1〜3℃高くして延伸することが最も好ましい。Ts−Tcが5℃以下であれば、フィルム幅方向の光学特性のバランスを維持しやすく、また、Ts−Tcが1℃以上であればボーイング現象低減効果が得られやすい。このように両端部の温度を高くすることで、両端部の金属チャック(クリップ)の熱伝導により逃出す温度を補い、幅方向における遅相軸のズレおよびレターデーションのバラツキを最小化することができる。本発明では、左右両側の温度Tsを同じにすることが好ましい。
なお、本発明においてTs、Tcとは、図2に示すように、Tsがテンター内フィルムの幅方向の中央線11から両側に20〜45%(フィルムの全幅を100%とする)の範囲の部分の平均温度であり、Tcが中央から両側に20%以内の部分の平均温度である。
【0030】
端部の温度を高くする方法に特に制限はないが、例えば、高温の熱風を端部のみに吹き付ける方法、端部に遠赤外線あるいはマイクロ波等の加熱装置を設置し輻射により加熱する方法などがあり、何れも好ましく用いられる。生産性の観点からは、熱風加熱方式を採用することが好ましい。また、フィルム端部と中央部の温度差をつけるには、フィルム端部側の熱風吹出ノズルのスリット幅を広くするように、フィルム幅方向にノズルスリット幅の勾配をつける方法や、フィルム端部側に赤外線ヒーターを設置して追加加熱する方法などを用いることができる。赤外線ヒーターを設置して追加加熱する方法は、熱風吹出ノズルのスリット幅を広くする方法に比べて、装置の変更が容易であるという利点がある。このような送風量の調整は、熱処理ゾーン(熱処理機)内に複数の吹き込み口を設け、各吹き込み口に設置したダンパーを調整することで容易に達成できる。さらに、各吹き込み口に風量計を設置することで、風量を容易に検知できる。
【0031】
本発明における幅方向の延伸倍率は5%〜250%が好ましく、5%〜200%がより好ましく、5%〜150%が最も好ましい。多段延伸を実施する場合、延伸ゾーン後段部の延伸倍率と延伸ゾーン前段部の延伸倍率との比率が0.01〜1の範囲であることが好ましく、0.01〜0.9の範囲であることがより好ましく、0.01〜0.8の範囲であることがさらに好ましく、0.01〜0.5の範囲であることが最も好ましい。ここでいう延伸倍率とは、延伸ゾーン前段部と延伸ゾーン後段部において実際に延伸した倍率を意味する。
【0032】
光学特性(特にRe、Rth)を所望の範囲内にするために、縦延伸、横延伸、またはこれらを組み合わせて実施する。本発明では、幅方向の横延伸を行う前に、フィルムの長手方向に少なくとも0%〜50%の倍率で縦延伸することも好ましい。縦延伸の倍率は0%〜45%がより好ましく、0%〜40%がさらに好ましい。縦延伸と横延伸は、それぞれ単独で行ってもよく(1軸延伸)、組み合わせて行ってもよい(2軸延伸)。2軸延伸の場合、縦方向と横方向に逐次延伸してもよいし(逐次延伸)、同時に延伸してもよい(同時延伸)。
本発明における縦延伸/横延伸比は0〜0.5であることが好ましい。より好ましい縦延伸/横延伸比は0〜0.4、さらに好ましくは0〜0.3である。なお、縦延伸/横延伸比とは、縦方向の延伸倍率を横方向の延伸倍率で割った値であり、延伸倍率は下式で表わされる。
延伸倍率(%)=[100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ]]
延伸前にフィルム面に一定間隔の標線を描き入れておき、延伸前後の標線の間隔を測定することにより延伸前の長さおよび延伸後の長さをそれぞれ求めることができる。
【0033】
本発明における縦延伸および横延伸の延伸速度は、10%/分〜10000%/分が好ましく、より好ましくは20%/分〜1000%/分、特に好ましくは30%/分〜800%/分である。多段延伸の場合、各段の延伸速度の平均値を指す。
本発明における延伸は、製膜工程中、オン−ラインで実施しても良く、製膜完了後、一度巻き取った後にオフ−ラインで実施しても良い。
【0034】
(緩和ゾーン)
緩和ゾーンは、上記延伸ゾーンにより横延伸されたフィルムの両端を挟む各チャックの幅を狭めてフィルムを弛緩(緩和、リラックス)させるゾーンである。
緩和ゾーンは必ずしも設けなくてもよいが、緩和ゾーンが存在することが好ましい。幅方向の緩和処理は、フィルムをチャック(テンタークリップ)で把持しながら、横延伸後の左右レール上に走行するチャック間の最大幅に対してチャック間の幅を徐々に縮める(リラックス)ことにより行うのが好ましい。緩和処理を行うことにより、延伸する際に中央部と端部に生じたストレス(応力)の不平衡を解消させ、熱寸法変化およびボーイング現象を効果的に抑制することができる。緩和は、延伸総倍率(最大延伸率)に対して0.1%〜40%の比率、より好ましくは0.5%〜35%、さらに好ましくは1%〜30%の比率で延伸方向に実施する。緩和の比率は、次式で表される。
緩和の比率(%)=[100×{(緩和前の延伸倍率)−(緩和後の延伸倍率)}/緩和前の延伸倍率]]
すなわち、延伸前のフィルム幅が100cmであるとき、フィルムを30%延伸すればフィルム幅は130cmとなり、さらに緩和率20%で緩和すれば、最終の実質延伸倍率は24%となり、フィルム幅は124cmとなる。
【0035】
緩和ゾーンの温度は、延伸ゾーンの終了側の温度より0〜20℃低い温度に設定することが好ましく、1〜15℃低い温度に設定することがより好ましく、2〜12℃低い温度に設定することが最も好ましい。緩和ゾーンと延伸ゾーンの間に温度勾配を設けることにより、ボーイング現象が抑制でき、幅方向の光学物性が均一なフィルムを容易に得ることが可能となる。さらに、本発明における緩和ゾーンでは、フィルム両端の温度Tsが中央部の温度Tcより1〜5℃高い状態で延伸することが好ましく、1〜4℃高い状態で延伸することがより好ましく、1〜3℃高い状態で延伸することが最も好ましい。
【0036】
(熱処理ゾーン)
熱処理ゾーンは、緩和ゾーンの後(緩和ゾーンが存在しない場合は延伸ゾーンの後)においてテンター内でフィルムを熱処理するゾーンである。
本発明の製造方法では、テンター内でフィルムの両端を把持するチャック(テンタークリップ)の拘束を少なく片側除去することを特徴とする。フィルムの縦方向および横方向の拘束力を軽減することで、縦方向および横方向の両方の残存歪を除去することが可能になり、湿熱処理や乾熱処理によるフィルムの寸法変化を小さくすることができる。
本発明においてチャックを外した後のフィルム長手方向の搬送張力は1〜70N/mが好ましく、2〜60N/mがより好ましく、3〜50N/mがさらに好ましい。搬送張力が本発明の範囲を越えると熱収縮が大きくなりやすく好ましくない。一方、本発明の範囲未満では蛇行等の搬送トラブルが発生しやすく好ましくない。このような張力は熱処理ゾーン入口側、送り出し側の少なくとも一方に設置したテンションカットロールを調整することで達成できる。この時テンションピックアップを設置し、張力をモニターしながら調整するのが好ましい。但しこのような低張力で巻き取ると巻崩れ易いため、巻き取り部の前でテンションカットした後、高い張力で巻き取るのが好ましい。
【0037】
本発明の製造方法では、熱処理ゾーンの温度を(Tg−30℃)〜(Tg+20℃)に設定することが好ましく、(Tg−20℃)〜(Tg+15℃)に設定することがより好ましく、(Tg−20℃)〜(Tg+10℃)に設定することが最も好ましい。(Tg+20℃)以下であれば、延伸した飽和ノルボルネン樹脂フィルムの光学特性(特にRe、Rth)を所望の範囲に調整しやすい。また、(Tg−30℃)以上であれば、熱収縮を適度な範囲におさめやすい。好ましい搬送速度は2〜100m/分、より好ましくは3〜70m/分、さらに好ましくは5〜50m/分である。好ましい熱処理時間は1秒〜5分間、より好ましくは3秒〜4分、さらに好ましくは5秒〜3分間である。
【0038】
延伸テンター内の各ゾーンの温度管理は熱源調整により行うことが好ましい。熱源は特に限定されないが、赤外線パネルヒーター、熱風発生器等を、幅方向に適当な温度分布を形成する観点より好ましく用い得る。このうち、空気噴流式の熱風方式、小型赤外線パネルヒーターは、幅方向に適当な温度分布が得られるよう分割することが可能であるため、特に好ましい。これらの熱源は、延伸を行う炉内に設置しても、あるいは延伸炉と独立して設けた加熱炉内に設置しても良い。空気噴流式の熱風加熱の場合、テンター内に設置した複数のスリットノズルによって、フィルムの上下面に吹き付け、延伸テンター内フィルム走行方向に各ゾーンの設定温度に応じて、熱風の風速、熱風の温度を自由に変えてもよい。加熱する場合、延伸炉またはアニール炉内に配置する熱源として、延伸炉の後半部分にたとえば赤外線パネルヒーターを幅方向に複数個・複数列設置し、個々の設定温度をレターデーションの測定値により変化させることができる。また、冷却する場合には、具体的には、延伸炉またはアニール炉内にフィルムの幅方向に温度調節し得る冷却板を配置し、レターデーション分布に連動し温度調整を行うことができる。
【0039】
巻き取る前に、製品となる幅に端部をスリットして裁ち落とし、巻き中の密着やすり傷防止のために、ナール加工(エンボッシング加工)を両端に施してもよい。ナール加工の方法は凸凹のパターを側面に有する金属リングを加熱および/または加圧により加工することができる。なお、フィルム両端部のチャックの把持部分は通常、フィルムが変形しており製品として使用できないので、切除されて原料として再利用される。本発明では、少なくとも一端に高さ5μm〜50μmのナール加工を施すことが好ましい。より好ましい高さは10μm〜40μm、さらに好ましい高さは15μm〜35μmである。このようなナールは、低張力熱処理中に高さが低下しないのが好ましい。
【0040】
<飽和ノルボルネン樹脂フィルムの製造>
以下に、本発明の飽和ノルボルネン樹脂フィルムを製造する工程を手順にそって詳細に説明する。
【0041】
《飽和ノルボルネン樹脂》
本発明の飽和ノルボルネン樹脂フィルムの原料となる飽和ノルボルネン樹脂として、以下に記載する飽和ノルボルネン樹脂−Aと飽和ノルボルネン樹脂−Bを好ましい例として挙げることができる。これらの飽和ノルボルネン樹脂は、いずれも後述の溶液製膜法、溶融製膜法により製膜することができるが、飽和ノルボルネン樹脂−Aは溶融製膜法により製膜することがより好ましく、飽和ノルボルネン樹脂−Bは溶液製膜法により製膜することがより好ましい。これらの飽和ノルボルネンを原料とするフィルムは、延伸により適度なRe、Rthを発現する性質を有しているうえ、高温高湿環境下に長時間置いてもRe、Rthが変動しにくく、微細Reむらが発現しにくいという優れた性質も有している。
【0042】
(飽和ノルボルネン樹脂−A)
飽和ノルボルネン樹脂−Aとして、(1)ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体に対して、必要に応じてマレイン酸付加、シクロペンタジエン付加のようなポリマー変性を行ない、その後さらに水素添加して得られた樹脂、(2)ノルボルネン系モノマーを付加型重合させて得られた樹脂、(3)ノルボルネン系モノマーとエチレンやα−オレフィンなどのオレフィン系モノマーとを付加型共重合させて得られた樹脂などが挙げることができる。重合方法および水素添加方法は、常法により行なうことができる。
【0043】
ノルボルネン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、およびそのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体(例えば、5−メチル−2−ノルボルネン、5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等)、これらのハロゲン等の極性基置換体;ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン等;ジメタノオクタヒドロナフタレン、そのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、およびハロゲン等の極性基置換体(例えば、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−クロロ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−シアノ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−ピリジル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−メトキシカルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン等);シクロペンタジエンとテトラヒドロインデン等との付加物;シクロペンタジエンの3〜4量体(例えば、4,9:5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾインデン、4,11:5,10:6,9−トリメタノ−3a,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,11,11a−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタアントラセン)等が挙げられる。これらのノルボルネン系モノマーは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
(飽和ノルボルネン樹脂−B)
飽和ノルボルネン樹脂−Bとして、下記一般式(1)〜(4)で表わされるものを挙げることができる。これらのうち、下記一般式(1)で表されるものが特に好ましい。
【0045】
【化1】

【0046】
一般式(1)〜(4)中、R1〜R12は、各々独立に水素原子または1価の置換基(好ましくは有機基)を示し、これらのうち少なくとも1つは極性基であることが好ましい。これらの飽和ノルボルネン樹脂の質量平均分子量は、通常5,000〜1,000,000が好ましく、より好ましくは8,000〜200,000である。
【0047】
上記の置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、アルキル基(炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアルキル基で、例えばメチル基、エチル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、アルケニル基(炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアルケニル基で、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる。)、アルキニル基(炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアルキニル基で、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる。)、アリール基(炭素数6〜20、好ましくは6〜15のアリール基で、例えばフェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基などが挙げられる。)、アミノ基(炭素数0〜20、好ましくは0〜10のアミノ基で、例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシ基(炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアルコキシ基で、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。)、アリールオキシ基(炭素数6〜20、好ましくは6〜15のアリールオキシ基で、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(炭素数1〜20、好ましくは1〜10のヘテロ環オキシ基で、例えばピリジルオキシ基、ピリミジニルオキシ基、ピリダジニルオキシ基、ベンズイミダゾリルオキシ基などが挙げられる。)、シリルオキシ基(炭素数3〜20、好ましくは3〜10のシリルオキシ基で、例えばトリメチルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基などが挙げられる。)、アシル基(炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアシル基で、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(炭素数2〜20、好ましくは2〜10のアルコキシカルボニル基で、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(炭素数7〜20、好ましくは7〜15のアリールオキシカルボニル基で、例えばフェニルオキシカルボニル基などが挙げられる。)、アシルオキシ基(炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアシルオキシ基で、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。)、アシルアミノ基(炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアシルアミノ基で、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(炭素数2〜20、好ましくは2〜10のアルコキシカルボニルアミノ基で、例えばメトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(炭素数7〜20、好ましくは7〜15のアリールオキシカルボニルアミノ基で、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基(炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基で、例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる。)、スルファモイル基(炭素数0〜20、好ましくは0〜10のスルファモイル基で、例えばスルファモイル基、N−メチルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−フェニルスルファモイル基などが挙げられる。)、カルバモイル基(炭素数1〜20、好ましくは1〜10のカルバモイル基で、例えばカルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基などが挙げられる。)、アルキルチオ基(炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアルキルチオ基で、例えばメチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる。)、アリールチオ基(炭素数6〜20、好ましくは6〜15のアリールチオ基で、例えばフェニルチオ基などが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(炭素数1〜20、好ましくは1〜10のヘテロ環チオ基で、例えばピリジニルチオ基、ピリミジニルチオ基、ピリダジニルチオ基、ベンズイミダゾリルチオ基、チアジアゾリルチオ基などが挙げられる。)、アルキルもしくはアリールスルホニル基(炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアルキルもしくはアリールスルホニル基で、例えばメシル基、トシル基などが挙げられる。)、アルキルもしくはアリールスルフィニル基(炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアルキルもしくはアリールスルホニル基で、例えばメタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(炭素数1〜20、好ましくは1〜10のヘテロ環基で、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、チエニル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、カルバゾリル基、アゼピニル基などが挙げられる。)、シリル基(炭素数3〜20、好ましくは3〜10のシリル基で、例えばトリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる。)などが挙げられる。これらの置換基の水素原子は更に置換されてもよい。また、1分子中に置換基が二つ以上ある場合は、それらの置換基は同じであっても異なっていてもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、シリル基、アリール基、アルコキシ基及びアリールオキシ基が好ましく、メチル基、トリメチルシリル基、フェニル基およびメトキシ基が特に好ましい。
【0048】
上記の極性基とは、酸素、硫黄、窒素、ハロゲンなど電気陰性度の高い原子によって分極が生じている有機基のことをいう。具体的には、アミノ基(炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアミノ基で、例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシ基(炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアルコキシ基で、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。)、アリールオキシ基(炭素数6〜20、好ましくは6〜15のアリールオキシ基で、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(炭素数1〜20、好ましくは1〜10のヘテロ環オキシ基で、例えばピリジニルオキシ基、ピリミジニルオキシ基、ピリダジニルオキシ基、ベンズイミダゾリルオキシ基などが挙げられる。)、シリルオキシ基(炭素数3〜20、好ましくは3〜10のシリルオキシ基で、例えばトリメチルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基などが挙げられる。)、アシル基(炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアシル基で、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(炭素数2〜20、好ましくは2〜10のアルコキシカルボニル基で、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(炭素数6〜20、好ましくは6〜15のアリールオキシカルボニル基で、例えばフェニルオキシカルボニル基などが挙げられる。)、アシルオキシ基(炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアシルオキシ基で、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。)、アシルアミノ基(炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアシルアミノ基で、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(炭素数2〜20、好ましくは2〜10のアルコキシカルボニルアミノ基で、例えばメトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(炭素数6〜20、好ましくは6〜15アリールオキシカルボニルアミノ基で、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基(炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基で、例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる。)、スルファモイル基(炭素数0〜20、好ましくは0〜10のスルファモイル基で、例えばスルファモイル基、N−メチルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−フェニルスルファモイル基などが挙げられる。)、カルバモイル基(炭素数1〜20、好ましくは1〜10のカルバモイル基で、例えばカルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基などが挙げられる。)、ウレイド基(炭素数1〜20、好ましくは1〜10のウレイド基で、例えばウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる。)、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基などが挙げられる。これらの置換基は、ノルボルネン環に直接連結していてもよく、アルキレン基などで連結されていてもよく、更に置換されてもよい。また、1分子中に置換基が二つ以上ある場合は、それらの置換基は同じであっても異なっていてもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。極性基として好ましいものは、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、シリルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、およびアリールオキシカルボニルアミノ基であり、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基およびアルコキシカルボニルアミノ基がさらに好ましく、アルコキシカルボニル基が特に好ましい。
【0049】
本発明で用いることができる飽和ノルボルネン樹脂としては、例えば、特開昭60−168708号公報、特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報、特開平2−133413号公報、特開昭63−145324号公報、特開昭63−264626号公報、特開平1−240517号公報、特公昭57−8815号公報などに記載されている樹脂などを挙げることができる。
これらの樹脂の中でも、ノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加して得られる水添重合体が特に好ましい。
これらの飽和ノルボルネン樹脂のガラス転移温度(Tg)は120℃以上であることが好ましく、さらに好ましくは140℃以上であり、飽和吸水率は1質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.8質量%以下である。上記一般式(1)〜(4)で表わされる飽和ノルボルネン樹脂のガラス転移温度(Tg)および飽和吸水率は、R1〜R12の種類を選択することにより制御することができる。
【0050】
本発明では、飽和ノルボルネン樹脂として、下記一般式(5)で表わされる少なくとも1種のテトラシクロドデセン誘導体を単独で、あるいは、当該テトラシクロドデセン誘導体と、これと共重合体可能な不飽和環状化合物とをメタセシス重合して得られる重合体を水素添加して得られる水添重合体を用いることもできる。
【0051】
【化2】

【0052】
一般式(5)中、R13〜R16は、各々独立に水素原子または1価の置換基(好ましくは有機基)を示し、これらのうち少なくとも1つは極性基であることが好ましい。ここでいう置換基と極性基の具体例と好ましい範囲については、一般式(1)〜(4)について説明したのと同一である。
上記一般式(5)で表わされるテトラシクロドデセン誘導体において、R13〜R16のうち少なくとも1つが極性基であることにより、他の材料との密着性、耐熱性などに優れた偏光フィルムを得ることができる。さらに、この極性基が−(CH2 nCOOR(ここで、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、nは0〜10の整数を示す。)で表わされる基であることが、最終的に得られる水添重合体(偏光フィルムの基材)が高いガラス転移温度を有するものとなるので好ましい。特に、この−(CH2nCOORで表わされる極性置換基は、一般式(5)のテトラシクロドデセン誘導体の1分子あたりに1個含有されることが吸水率を低下させる点から好ましい。上記極性置換基において、Rで示される炭化水素基の炭素数が多くなるほど得られる水添重合体の吸湿性が小さくなる点では好ましいが、得られる水添重合体のガラス転移温度とのバランスの点から、当該炭化水素基は、炭素数1〜4の鎖状アルキル基または炭素数5以上の(多)環状アルキル基であることが好ましく、特にメチル基、エチル基、シクロヘキシル基であることが好ましい。
【0053】
さらに、−(CH2nCOORで表わされる基が結合した炭素原子に、炭素数1〜10の炭化水素基が置換基として結合されている一般式(5)のテトラシクロドデセン誘導体は、得られる水添重合体の吸湿性が低いものとなるので好ましい。特に、この置換基がメチル基またはエチル基である一般式(5)のテトラシクロドデセン誘導体は、その合成が容易な点で好ましい。具体的には、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ〔4,4,0,12.5,17.10〕ドデカ−3−エンが好ましい。これらのテトラシクロドデセン誘導体、およびこれと共重合可能な不飽和環状化合物の混合物は、例えば特開平4−77520号公報第4頁右上欄12行〜第6頁右下欄第6行に記載された方法によってメタセシス重合、水素添加することができる。
これらのノルボルネン樹脂は、クロロホルム中、30℃で測定される固有粘度(ηinh)が、0.1〜1.5dl/gであることが好ましく、さらに好ましくは0.4〜1.2dl/gである。また、水添重合体の水素添加率は、60MHz、1H−NMRで測定した値が50%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは98%以上である。水素添加率が高いほど、得られる飽和ノルボルネン樹脂フィルムは、熱や光に対する安定性が優れたものとなる。該水添重合体中に含まれるゲル含有量は5質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0054】
(その他の開環重合可能なシクロオレフィン類)
本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲内において、開環重合可能な他のシクロオレフィン類を併用することができる。このようなシクロオレフィンの具体例としては、例えば、シクロペンテン、シクロオクテン、5,6−ジヒドロジシクロペンタジエンなどのごとき反応性の二重結合を1個有する化合物が例示される。これらの開環重合可能なシクロオレフィン類の含有量は、上記ノルボルネン系モノマーに対して0モル%〜50モル%であることが好ましく、0.1モル%〜30モル%であることがより好ましく、0.3モル%〜10モル%であることが特に好ましい。
【0055】
≪添加剤≫
(1)微粒子
飽和ノルボルネン樹脂フィルム中には微粒子を含有させることが好ましい。特に、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウムを挙げることができる。また架橋高分子からなる微粒子なども用いることができる。
【0056】
これらの微粒子は、通常平均粒子サイズが0.1〜3.0μmの2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凹凸を形成させる。2次平均粒子サイズは0.2μm〜1.5μmが好ましく、0.4μm〜1.2μmがさらに好ましく、0.6μm〜1.1μmが最も好ましい。1次、2次粒子サイズは、フィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒子サイズとする。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子サイズとする。
【0057】
好ましい微粒子の量は飽和ノルボルネン樹脂に対し重量比で1ppm〜10000ppmが好ましく、より好ましくは5ppm〜7000ppm、さらに好ましくは10ppm〜5000ppmである。
【0058】
微粒子はケイ素を含むものが濁度を低くできるため好ましく、特に二酸化珪素を用いることが好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子サイズが20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができるため、より好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0059】
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976およびR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0060】
これらの中では、アエロジル200V、アエロジルR972Vが1次平均粒子サイズが20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましい。
【0061】
(2)酸化防止剤
本発明の飽和ノルボルネン樹脂には、公知の酸化防止剤、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2′−ジオキシ−3,3′−ジ−t−ブチル−5,5′−ジメチルフェニルメタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−ジオキシ−3,3′−ジ−t−ブチル−5,5′−ジエチルフェニルメタン、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−〔β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]、2,4,8,10−テトラオキスピロ[5,5]ウンデカン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト;紫外線吸収剤、例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどを添加することによって安定化することができる。また、加工性を向上させる目的で滑剤などの添加剤を添加することもできる。
これらの酸化防止剤の添加量は、飽和ノルボルネン樹脂100質量部に対して、通常0.1〜3質量部、好ましくは0.2〜2質量部である。
【0062】
(3)その他の添加剤
さらに飽和ノルボルネン樹脂には、所望により、フェノール系やリン系などの老化防止剤、耐電防止剤、紫外線吸収剤、上述の易滑剤などの各種添加剤を添加してもよい。特に、液晶は、通常、紫外線により劣化するので、ほかに紫外線防護フィルターを積層するなどの防護手段をとらない場合は、紫外線吸収剤を添加することが好ましい。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾル系紫外線吸収剤、アクリルニトリル系紫外線吸収剤などを用いることができ、それらの中でもベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、添加量は、飽和ノルボルネン樹脂に対して、通常10〜100,000質量ppm、好ましくは100〜10,000質量ppmである。また、溶液流延法によりシートを作製する場合は、表面粗さを小さくするため、レベリング剤を添加することが好ましい。レベリング剤としては、例えば、フッ素系ノニオン界面活性剤、特殊アクリル樹脂系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤など塗料用レベリング剤を用いることができ、それらの中でも溶媒との相溶性の良いものが好ましい。添加量は、飽和ノルボルネン樹脂に対して、通常5〜50,000質量ppm、好ましくは10〜20,000質量ppmである。
【0063】
《製膜》
飽和ノルボルネン樹脂フィルムは溶液製膜法、溶融製膜法いずれの方法でも製膜することができる。これらの製膜法について、以下に詳しく説明する。
【0064】
(溶融製膜)
(1)溶融
上記飽和ノルボルネン樹脂と添加物は溶融製膜に先立ち混合しペレット化するのが好ましい。ペレット化することによって、溶融押し出し機のホッパーでのサージングを抑制し、安定供給が可能となる。好ましいペレットの大きさは断面積が1mm2〜300mm2、長さが1mm〜30mmであり、より好ましくは断面積が2mm2〜100mm2、長さが1.5mm〜10mmである。
この飽和ノルボルネン樹脂のペレットを溶融押出し機に入れ、100℃〜200℃で1分〜10時間脱水した後、混練押出しする。混練は1軸あるいは2軸の押出し機を使用して行うことができる。
【0065】
この飽和ノルボルネン樹脂は押出機の供給口を介してシリンダー内に供給される。図3は、本発明で用いることができる典型的な押出機22の概略図を示したものである。シリンダー32内は供給口40側から順に、供給口から供給した飽和ノルボルネン樹脂を定量輸送する供給部(領域A)と、飽和ノルボルネン樹脂を溶融混練・圧縮する圧縮部(領域B)と、溶融混練・圧縮された飽和ノルボルネン樹脂を計量する計量部(領域C)とで構成される。残存する酸素による溶融樹脂の酸化を防止するために、押出機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出し機を用い真空排気しながら実施するのがより好ましい。押出機のスクリュー圧縮比は好ましくは2.5〜4.5に設定され、L/Dは20〜70に設定されている。ここでスクリュー圧縮比とは供給部Aと計量部Cとの容積比、即ち供給部Aの単位長さあたりの容積÷計量部Cの単位長さあたりの容積で表され、供給部Aのスクリュー軸の外径d1、計量部Cのスクリュー軸の外径d2、供給部Aの溝部径a1、および計量部Cの溝部径a2とを使用して算出される。また、L/Dとはシリンダー内径に対するシリンダー長さの比である。また、押出温度は好ましくは240〜320℃、より好ましくは250〜310℃、さらに好ましくは260℃〜300℃に設定される。
【0066】
押し出し機の種類として、一般的には設備コストの比較的安い単軸押し出し機が用いられることが多く、フルフライト、マドック、ダルメージ等のスクリュータイプがあるが、フルフライトタイプが好ましい。また、設備コストは効果であるが、スクリューセグメントを変更することにより、途中でベント口を設けて不要な揮発成分を脱揮させながら押出ができる二軸押出機を用いることが可能である、二軸押し出し機には大きく分類して同方向と異方向のタイプがありどちらも用いることが可能であるが、滞留部分が発生し難くセルフクリーニング性能の高い同方向回転のタイプが好ましい。二軸押出機は設備が効果であるが、混練性が高く、樹脂の供給性能が高いため、低温での押出が可能となるため、飽和ノルボルネン樹脂の製膜に適している。ベント口を適正に配置することにより、未乾燥状態での飽和ノルボルネン樹脂ペレットやパウダーをそのまま使用することも可能である。又、製膜途中で出たフィルムのミミ等も乾燥させることなしにそのまま再利用することもできる。
なお、好ましいスクリューの直径は目標とする単位時間あたりの押出量によって異なるが、10mm〜300mm、より好ましくは20mm〜250mm、さらに好ましくは30mm〜150mmである。
【0067】
(2)濾過
樹脂中の異物濾過のためや異物によるギアポンプ損傷を避けるために、押し出し機出口にフィルター濾材を設けるいわゆるブレーカープレート式の濾過を行うことが好ましい。またさらに精度高く異物濾過をするために、ギアポンプ通過後にいわゆるリーフ型ディスクフィルターを組み込んだ濾過装置を設けることが好ましい。濾過は、濾過部を1カ所設けて行うことができ、また複数カ所設けて行う多段濾過でも良い。フィルター濾材の濾過精度は高い方が好ましいが、濾材の耐圧や濾材の目詰まりによる濾圧上昇から、濾過精度は15μmm〜3μmmが好ましく、さらに好ましくは10μmm〜3μmmである。特に最終的に異物濾過を行うリーフ型ディスクフィルター装置を使用する場合では品質の上で濾過精度の高い濾材を使用することが好ましく、耐圧,フィルターライフの適性を確保するために装填枚数にて調整することが可能である。濾材の種類は、高温高圧下で使用される点から鉄鋼材料を用いることが好ましく、鉄鋼材料の中でも特にステンレス鋼,スチールなどを用いることが好ましく、腐食の点から特にステンレス鋼を用いることが望ましい。濾材の構成としては、線材を編んだものの他に、例えば金属長繊維あるいは金属粉末を焼結し形成する焼結濾材が使用でき、濾過精度,フィルターライフの点から焼結濾材が好ましい。
【0068】
(3)ギアポンプ
厚み精度を向上させるためには、吐出量の変動を減少させることが重要であり、押出機出機とダイスの間にギアポンプを設けて、ギアポンプから一定量の飽和ノルボルネン樹脂を供給することは効果がある。ギアポンプとは、ドライブギアとドリブンギアとからなる一対のギアが互いに噛み合った状態で収容され、ドライブギアを駆動して両ギアを噛み合い回転させることにより、ハウジングに形成された吸引口から溶融状態の樹脂をキャビティ内に吸引し、同じくハウジングに形成された吐出口からその樹脂を一定量吐出するものである。押出機先端部分の樹脂圧力が若干の変動があっても、ギアポンプを用いることにより変動を吸収し、製膜装置下流の樹脂圧力の変動は非常に小さなものとなり、厚み変動が改善される。ギアポンプを用いることにより、ダイ部分の樹脂圧力の変動巾を±1%以内にすることが可能である。
ギアポンプによる定量供給性能を向上させるために、スクリューの回転数を変化させて、ギアポンプ前の圧力を一定に制御する方法も用いることができる。また、ギアポンプのギアの変動を解消した3枚以上のギアを用いた高精度ギアポンプも有効である。
【0069】
ギアポンプを用いるその他のメリットとしては、スクリュー先端部の圧力を下げて製膜できることから、エネルギー消費の軽減・樹脂温上昇の防止・輸送効率の向上・押出機内での滞留時間の短縮・押出機のL/Dを短縮が期待できる。また、異物除去のために、フィルターを用いる場合には、ギアポンプが無いと、ろ圧の上昇と共に、スクリューから供給される樹脂量が変動したりすることがあるが、ギアポンプを組み合わせて用いることにより解消が可能である。一方、ギアポンプのデメリットとしては、設備の選定方法によっては、設備の長さが長くなり、樹脂の滞留時間が長くなることと、ギアポンプ部のせん断応力によって分子鎖の切断を引き起こすことがあり、注意が必要である。
樹脂が供給口から押出機に入ってからダイスから出るまでの樹脂の好ましい滞留時間は2分〜60分であり、より好ましくは3分〜40分であり、さらに好ましくは4分〜30分である。
【0070】
ギアポンプの軸受循環用ポリマーの流れが悪くなることにより、駆動部と軸受部におけるポリマーによるシールが悪くなり、計量および送液押し出し圧力の変動が大きくなったりする問題が発生するため、飽和ノルボルネン樹脂の溶融粘度に合わせたギアポンプの設計(特にクリアランス)が必要である。また、ギアポンプの滞留部分が飽和ノルボルネン樹脂の劣化の原因となるため、滞留のできるだけ少ない構造が好ましい。押出機とギアポンプあるいはギアポンプとダイ等をつなぐポリマー管やアダプタについても、できるだけ滞留の少ない設計が必要であり、押出圧力安定化のためには、温度の変動をできるだけ小さくすることが好ましい。一般的には、ポリマー管の加熱には設備コストの安価なバンドヒーターが用いられることが多いが、温度変動のより少ないアルミ鋳込みヒーターを用いることがより好ましい。
【0071】
(4)ダイ
上記の如く構成された押出機によって飽和ノルボルネン樹脂が溶融され、必要に応じ濾過機、ギアポンプを経由して溶融樹脂がダイに連続的に送られる。ダイはダイス内の溶融樹脂の滞留が少ない設計であれば、一般的に用いられるTダイ、フィッシュテールダイ、ハンガーコートダイの何れのタイプでも構わない。また、ダイの直前に樹脂温度の均一性アップのためのスタティックミキサーを入れることも問題ない。ダイ出口部分のクリアランスは一般的にフィルム厚みの1.0〜5.0倍が良く、好ましくは1.2〜3倍、さらに好ましくは1.3〜2倍である。リップクリアランスがフィルム厚みの1.0倍以上であれば、製膜により面状の良好なシートを得やすいため好ましい。また、リップクリアランスがフィルム厚みの5.0倍以下であれば、シートの厚み精度を高くしやすいため好ましい。ダイはフィルムの厚み精度を決定する非常に重要な設備であり、厚み調整が厳密にコントロールできるものが好ましい。通常厚み調整は40〜50mm間隔で調整可能であるが、好ましくは35mm間隔以下、さらに好ましくは25mm間隔以下でフィルム厚み調整が可能なタイプが好ましい。また、ダイの温度ムラや巾方向の流速ムラのできるだけ少ない設計が重要である。また、下流のフィルム厚みを計測して、厚み偏差を計算し、その結果をダイの厚み調整にフィードバックさせる自動厚み調整ダイも長期連続生産の厚み変動の低減に有効である。
フィルムの製造は設備コストの安い単層製膜装置が一般的に用いられるが、場合によっては機能層を外層に設けために多層製膜装置を用いて2種以上の構造を有するフィルムの製造も可能である。一般的には機能層を表層に薄く積層することが好ましいが、特に層比を限定するものではない。
【0072】
(5)キャスト
上記方法にて、ダイよりシート上に押し出された溶融樹脂をキャスティングドラム上で冷却固化し、フイルムを得る。この時、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法、タッチロール法等の方法を用い、キャスティングドラムと溶融押出ししたシートの密着を上げることが好ましい。このような密着向上法は、溶融押出しシートの全面に実施してもよく、一部に実施しても良い。特にエッジピニングと呼ばれる、フイルムの両端部にのみを密着させる方法が取られることも多いが、これに限定されるものではない。
キャスティングドラムは複数本用いて徐冷することがより好ましい、特に一般的には3本の冷却ロールを用いることが比較的よく行われているが、この限りではない。ロールの直径は50mm〜5000mmが好ましく、より好ましくは、100mm〜2000mm、さらに好ましくは150mm〜1000mmである。複数本あるロールの間隔は、面間で0.3mm〜300mmが好ましく、より好ましくは、1mm〜100mm、さらに好ましくは3mm〜30mmである。
キャスティングドラムは60℃〜160℃が好ましく、より好ましくは70℃〜150℃、さらに好ましくは80℃〜140℃である。この後、キャスティングドラムから剥ぎ取り、ニップロールを経た後巻き取る。巻き取り速度は10m/分〜100m/分が好ましく、より好ましくは15m/分〜80m/分、さらに好ましくは20m/分〜70m/分である。
【0073】
製膜幅は好ましくは0.7m〜5m、さらに好ましくは1m〜4m、さらに好ましくは1.3m〜3mである。このようにして得られた未延伸フィルムの厚みは30μm〜400μmが好ましく、より好ましくは40μm〜300μm、さらに好ましくは50μm〜200μmである。
製膜した飽和ノルボルネン樹脂フィルムの厚みむらは長手方向、幅方向いずれも0%〜2%が好ましく、より好ましくは0%〜1.5%、さらに好ましくは0%〜1%であり、これらを上述の方法で延伸することにより、本発明の飽和ノルボルネン樹脂フィルムを得ることができる。
また、いわゆるタッチロール法を用いる場合、タッチロール表面は、ゴム、テフロン等の樹脂でもよく、金属ロールでも良い。さらに、金属ロールの厚みを薄くすることでタッチしたときの圧力によりロール表面が若干くぼみ、圧着面積が広くなりフレキシブルロールと呼ばれる様なロールを用いることも可能である。
タッチロール温度は60℃〜160℃が好ましく、より好ましくは70℃〜150℃、さらに好ましくは80℃〜140℃である。
【0074】
(6)巻き取り
このようにして得たシートは両端をトリミングし、巻き取ることが好ましい。トリミングされた部分は、粉砕処理された後、或いは必要に応じて造粒処理や解重合・再重合等の処理を行った後、同じ品種のフィルム用原料としてまたは異なる品種のフィルム用原料として再利用してもよい。トリミングカッターはロータリーカッター、シャー刃、ナイフ等の何れのタイプの物を用いても構わない。材質についても、炭素鋼、ステンレス鋼何れを用いても構わない。一般的には、超硬刃、セラミック刃を用いると刃物の寿命が長く、また切り粉の発生が抑えられて好ましい。
また、巻き取り前に、少なくとも片面にラミフィルムを付けることも、傷防止の観点から好ましい。好ましい巻き取り張力は1kg/m幅〜50kg/幅、より好ましくは2kg/m幅〜40kg/幅、さらに好ましくは3kg/m幅〜20kg/幅である。巻き取り張力が1kg/m幅以上であれば、フィルムを均一に巻き取りやすいため好ましい。また、巻き取り張力が50kg/幅以下であれば、フィルムが堅巻きになることがなく、巻き外観が美しく、フィルムのコブの部分がクリープ現象により延びてフィルムの波うちの原因になったりフィルムの伸びによる残留複屈折が生じるようなこともない。巻き取り張力は、ラインの途中のテンションコントロールにより検知し、一定の巻き取り張力になるようにコントロールされながら巻き取ることが好ましい。製膜ラインの場所により、フィルム温度に差がある場合には熱膨張により、フィルムの長さが僅かに異なる場合があるため、ニップロール間のドロー比率を調整し、ライン途中でフィルムに規定以上の張力がかからない様にすることが必要である。
巻き取り張力はテンションコントロールの制御により、一定張力で巻き取ることもできるが、巻き取った直径に応じてテーパーをつけ、適正な巻取り張力にすることがより好ましい。一般的には巻き径が大きくなるにつれて張力を少しずつ小さくするが、場合によっては、巻き径が大きくなるにしたがって張力を大きくする方が好ましい場合もある。
このような巻き取り方法は、下述の溶液製膜法にも同様に適用できる。
【0075】
(溶液製膜)
飽和ノルボルネン樹脂フィルムを溶液製膜法により製膜するときには、まず飽和ノルボルネン樹脂を溶媒に溶解させる。溶媒に溶解させる際の飽和ノルボルネン樹脂の濃度は3〜50質量%が好ましく、より好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは10〜35質量%である。得られる溶液の室温における粘度は、通常は1〜1,000,000(mPa・s)、好ましくは10〜100,000(mPa・s)、さらに好ましくは100〜50,000(mPa・s)、特に好ましくは1,000〜40,000(mPa・s)である。
使用する溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、1−メトキシ−2−プロパノール等のセロソルブ系溶媒、ジアセトンアルコール、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン、エチルシクロヘキサノン、1,2−ジメチルシクロヘキサン等のケトン系溶媒、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル系溶媒、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン含有溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、1−ペンタノール、1−ブタノール等のアルコール系溶媒を挙げることができる。
【0076】
また、上記以外でも、SP値(溶解度パラメーター)が通常10〜30(MPa1/2)、好ましくは10〜25(MPa1/2)、さらに好ましくは15〜25(MPa1/2)、特に好ましくは15〜20(MPa1/2)の範囲の溶媒を使用するのが好ましい。上記溶媒は単独であるいは2種以上併用して使用することができる。溶媒を2種以上併用する場合には、混合物としてのSP値の範囲を上記範囲内とすることが好ましい。このとき、混合物としてのSP値の値は、その質量比から求めることができ、例えば二種の混合物の場合は、各溶媒の質量分率をW1,W2、また、SP値をSP1,SP2とすると混合溶媒のSP値は下記式により計算した値として求めることができる。
SP値=W1・SP1+W2・SP2
さらに飽和ノルボルネン樹脂フィルムの表面平滑性を向上させるためにレベリング剤を添加してもよい。一般的なレベリング剤であれば何れも使用できるが、例えば、フッ素系ノニオン界面活性剤、特殊アクリル樹脂系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤などを使用することができる。
【0077】
飽和ノルボルネン樹脂フィルムを溶剤キャスト法により製造する方法としては、上記溶液をダイスやコーターを使用して金属ドラム、スチールベルト、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム、ポリテトラフルオロエチレン製ベルトなどの基材の上に塗布し、その後溶剤を乾燥・除去して基材よりフィルムを剥離する方法が一般に挙げられる。
また、スプレー、ハケ、ロールスピンコート、ディッピングなどの手段を用いて,樹脂溶液を基材に塗布し、その後溶剤を乾燥・除去して基材よりフィルムを剥離することにより製造することもできる。なお、塗布の繰り返しにより厚みや表面平滑性等を制御してもよい。
また、基材としてポリエステルフィルムを使用する場合には、表面処理されたフィルムを使用してもよい。表面処理の方法としては、一般的に行われている親水化処理方法、例えばアクリル系樹脂やスルホン酸塩基含有樹脂をコーテイングやラミネートにより積層する方法、あるいは、コロナ放電処理等によりフィルム表面の親水性を向上させる方法等が挙げられる。
【0078】
上記溶剤キャスト法の乾燥(溶剤除去)工程については、特に制限はなく一般的に用いられる方法、例えば多数のローラーを介して乾燥炉中を通過させる方法等で実施できるが、乾燥工程において溶媒の蒸発に伴い気泡が発生すると、フィルムの特性を著しく低下させるので、これを避けるために、乾燥工程を2段以上の複数工程とし、各工程での温度あるいは風量を制御することが好ましい。
また、飽和ノルボルネン樹脂フィルム中の残留溶媒量は、通常は10質量%以下、好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下である。このように残留溶剤を少なくすることで、より一層粘着跡故障を軽減することができるため、好ましい。
本発明の飽和ノルボルネン樹脂フィルムの厚さは、10〜300μmが好ましく、より好ましくは20〜250μm、さらに好ましくは30〜200μmであり、厚み分布は、平均値に対して±8%以内が好ましく、より好ましくは±5%以内、さらに好ましくは±3%以内である。また、1cmあたりの厚みの変動は、通常は5%以下、好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下、特に好ましくは0.5%以下である。
【0079】
《延伸》
上述のようにして溶液製膜または溶融製膜した飽和ノルボルネン樹脂フィルムを、上述の方法で縦延伸、横延伸する。これらの縦延伸、横延伸は溶液製膜、溶融製膜と切り離して実施しても良いし、連続して行っても良い。すなわち、製膜後、一端巻き取ったものを再度送り出して延伸してもよいし、製膜後そのまま連続して延伸してもよい。
このような延伸は溶剤量が0.5質量%以下で実施するのが好ましく、より好ましくは0.3質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
【0080】
<飽和ノルボルネン樹脂フィルムの加工および使用>
このようにして得た飽和ノルボルネン樹脂フィルムは単独で使用してもよく、これらと偏光板とを組み合わせて使用してもよく、これらの上に液晶層や屈折率を制御した層(低反射層)やハードコート層を設けて使用しても良い。これらは以下の工程により達成できる。
【0081】
《表面処理》
飽和ノルボルネン樹脂フィルムは表面処理を行うことによって、各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上させることができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、0.13〜2.7x103Paの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、さらにまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類およびそれらの混合物などが挙げられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)30頁〜32頁に詳細に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10〜1000keV下で20〜500kGyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30〜500keV下で20〜300kGyの照射エネルギーが用いられる。
これらの中でも特に好ましくは、グロー放電処理、コロナ処理、火炎処理である。
機能層との接着のため下塗り層を設けることも好ましい。この層は上記表面処理をした後、塗設しても良く、表面処理なしで塗設しても良い。下塗層についての詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)32頁に記載されている。これらの表面処理、下塗り工程は、製膜工程の最後に組み込むこともでき、単独で実施することもでき、後述の機能層付与工程の中で実施することもできる。
【0082】
《機能層の付与》
本発明の飽和ノルボルネン樹脂フィルムに、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)32頁〜45頁に詳細に記載されている機能性層を組み合わせることが好ましい。中でも好ましいのが、偏光膜の付与(偏光板)、光学補償層の付与(光学補償シート)、反射防止層の付与(反射防止フィルム)である。以下にこれらの好ましい態様について、順に説明する。
【0083】
(イ)偏光膜の付与(偏光板の作成)
(イー1)使用素材
現在、市販の偏光膜は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素を浸透させることで作製されるのが一般的である。偏光膜は、Optiva Inc.に代表される塗布型偏光膜も利用できる。偏光膜におけるヨウ素および二色性色素は、バインダー中で配向することで偏光性能を発現する。二色性色素としては、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素あるいはアントラキノン系色素が用いられる。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。二色性色素は、親水性置換基(例えば、スルホ基、アミノ基、ヒドロキシル基)を有することが好ましい。例えば、発明協会公開技法(公技番号2001−1745号、2001年3月15日発行、発明協会)58頁に記載の化合物が挙げられる。
偏光膜のバインダーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができ、これらの組み合わせを複数使用することができる。バインダーには、例えば特開平8−338913号公報の段落番号[0022]記載のメタクリレート系共重合体、スチレン系共重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリカーボネート等が含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いることができる。水溶性ポリマー(例えば、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。重合度が異なるポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを2種類併用することが特に好ましい。ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がさらに好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5000であることが好ましい。変性ポリビニルアルコールについては、特開平8−338913号、同9−152509号および同9−316127号の各公報に記載がある。ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールは、二種以上を併用してもよい。
【0084】
バインダー厚みの下限は、10μmであることが好ましい。厚みの上限は、液晶表示装置の光漏れの観点からは、薄ければ薄い程よい。現在市販の偏光板の厚み(約30μm)以下であることが好ましく、25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがさらに好ましい。
偏光膜のバインダーは架橋していてもよい。架橋性の官能基を有するポリマー、モノマーをバインダー中に混合しても良く、バインダーポリマー自身に架橋性官能基を付与しても良い。架橋は、光、熱あるいはpH変化により行うことができ、架橋構造をもったバインダーを形成することができる。架橋剤については、米国再発行特許第23297号明細書に記載がある。また、ホウ素化合物(例えば、ホウ酸、硼砂)も、架橋剤として用いることができる。バインダーの架橋剤の添加量は、バインダーに対して、0.1〜20質量%が好ましい。偏光素子の配向性、偏光膜の耐湿熱性が良好となる。
架橋反応が終了後でも、未反応の架橋剤は1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。このようにすることで、耐候性が向上する。
【0085】
(イー2)偏光膜の延伸
偏光膜は、偏光膜を延伸するか(延伸法)、もしくはラビングした(ラビング法)後に、ヨウ素、二色性染料で染色することが好ましい。
延伸法の場合、延伸倍率は2.5〜30.0倍が好ましく、3.0〜10.0倍がさらに好ましい。延伸は、空気中でのドライ延伸で実施できる。また、水に浸漬した状態でのウェット延伸を実施してもよい。ドライ延伸の延伸倍率は、2.5〜5.0倍が好ましく、ウェット延伸の延伸倍率は、3.0〜10.0倍が好ましい。ここでいう延伸倍率は、(延伸後の長さ/延伸前の長さ)である。延伸はMD方向に平行に行っても良く(平行延伸)、斜め方向におこなっても良い(斜め延伸)。これらの延伸は、1回で行っても、数回に分けて行ってもよい。数回に分けることによって、高倍率延伸でもより均一に延伸することができる。
【0086】
a)平行延伸法
延伸に先立ち、PVAフィルムを膨潤させる。膨潤度は好ましくは1.2〜2.0倍(膨潤前と膨潤後の質量比)である。この後、ガイドロール等を介して連続搬送しつつ、水系媒体浴内や二色性物質溶解の染色浴内で、好ましくは15〜50℃、より好ましくは17〜40℃の浴温で延伸する。延伸は2対のニップロールで把持し、後段のニップロールの搬送速度を前段のそれより大きくすることで達成できる。延伸倍率は、延伸後/初期状態の長さ比(以下同じ)に基づくが前記作用効果の点より好ましい延伸倍率は好ましくは1.2〜3.5倍、より好ましくは1.5〜3.0倍である。この後、50℃〜90℃において乾燥させて偏光膜を得る。
【0087】
b)斜め延伸法
これには特開2002−86554号公報に記載の斜め方向に傾斜め方向に張り出したテンターを用い延伸する方法を用いることができる。この延伸は空気中で延伸するため、事前に含水させて延伸しやすくすることが必用である。好ましい含水率は5%〜100%、より好ましくは10%〜100%である。
延伸時の温度は40℃〜90℃が好ましく、より好ましくは50℃〜80℃である。相対湿度は50%〜100%が好ましく、より好ましくは70%〜100%、さらに好ましくは80%〜100%である。長手方向の進行速度は、1m/分以上が好ましく、より好ましくは3m/分以上である。
延伸の終了後、好ましくは50℃〜100℃、より好ましくは60℃〜90℃で、好ましくは0.5分〜10分乾燥する。乾燥時間は、より好ましくは1分〜5分である。
このようにして得られた偏光膜の吸収軸は10度〜80度が好ましく、より好ましくは30度〜60度であり、さらに好ましくは実質的に45度(40度〜50度)である。
【0088】
(イー3)貼り合せ
上記表面処理後の飽和ノルボルネン樹脂フィルムと、延伸して調製した偏光膜を貼り合わせ偏光板を調製する。張り合わせる方向は、飽和ノルボルネン樹脂フィルムの流延軸方向と偏光板の延伸軸方向が45度になるように行うのが好ましい。
貼り合わせの接着剤は特に限定されないが、PVA系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等の変性PVAを含む)やホウ素化合物水溶液、エポキシ系接着剤等が挙げられ、中でもPVA系樹脂、エポキシ系接着剤が好ましい。接着剤層厚みは乾燥後で0.01〜10μmが好ましく、0.05〜5μmが特に好ましい。
このようにして得た偏光板の光線透過率は高い方が好ましく、偏光度も高い方が好ましい。偏光板の透過率は、波長550nmの光において、30〜50%の範囲にあることが好ましく、35〜50%の範囲にあることがさらに好ましく、40〜50%の範囲にあることが最も好ましい。偏光度は、波長550nmの光において、90〜100%の範囲にあることが好ましく、95〜100%の範囲にあることがさらに好ましく、99〜100%の範囲にあることが最も好ましい。
さらに、このようにして得た偏光板はλ/4板と積層し、円偏光を作成することができる。この場合λ/4の遅相軸と偏光板の吸収軸を45度になるように積層する。この時、λ/4は特に限定されないが、より好ましくは低波長ほどレターデーションが小さくなるような波長依存性を有するものがより好ましい。さらには長手方向に対し20度〜70度傾いた吸収軸を有する偏光膜、および液晶性化合物からなる光学異方性層から成るλ/4板を用いることが好ましい。
【0089】
(ロ)光学補償層の付与(光学補償シートの作成)
光学異方性層は、液晶表示装置の黒表示における液晶セル中の液晶化合物を補償するためのものであり、飽和ノルボルネン樹脂フィルムの上に配向膜を形成し、さらに光学異方性層を付与することで形成される。
【0090】
(ロー1)配向膜
上記表面処理した飽和ノルボルネン樹脂フィルム上に配向膜を設ける。この膜は、液晶性分子の配向方向を規定する機能を有する。しかし、液晶性化合物を配向後にその配向状態を固定してしまえば、配向膜はその役割を果たしているために、本発明の構成要素としては必ずしも必須のものではない。即ち、配向状態が固定された配向膜上の光学異方性層のみを偏光子上に転写して本発明の偏光板を作製することも可能である。
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例えば、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。配向膜に使用するポリマーは、原則として、液晶性分子を配向させる機能のある分子構造を有する。
本発明では、液晶性分子を配向させる機能に加えて、架橋性官能基(例えば、二重結合)を有する側鎖を主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する架橋性官能基を側鎖に導入することが好ましい。
【0091】
配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができし、これらの組み合わせを複数使用することができる。ポリマーの例には、例えば特開平8−338913号公報の段落番号[0022]記載のメタクリレート系共重合体、スチレン系共重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリカーボネート等が含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いることができる。水溶性ポリマー(例えば、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。重合度が異なるポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを2種類併用することが特に好ましい。ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がさらに好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5000であることが好ましい。
【0092】
液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖は、一般に疎水性基を官能基として有する。具体的な官能基の種類は、液晶性分子の種類および必要とする配向状態に応じて決定する。例えば、変性ポリビニルアルコールの変性基としては、共重合変性、連鎖移動変性またはブロック重合変性により導入できる。変性基の例には、親水性基(カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、チオール基等)、炭素数10〜100個の炭化水素基、フッ素原子置換の炭化水素基、チオエーテル基、重合性基(不飽和重合性基、エポキシ基、アジリニジル基等)、アルコキシシリル基(トリアルコキシ、ジアルコキシ、モノアルコキシ)等が挙げられる。これらの変性ポリビニルアルコール化合物の具体例として、例えば特開2000−155216号公報の段落番号[0022]〜[0145]、同2002−62426号公報の段落番号[0018]〜[0022]に記載のもの等が挙げられる。
架橋性官能基を有する側鎖を配向膜ポリマーの主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖に架橋性官能基を導入すると、配向膜のポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを共重合させることができる。その結果、多官能モノマーと多官能モノマーとの間だけではなく、配向膜ポリマーと配向膜ポリマーとの間、そして多官能モノマーと配向膜ポリマーとの間も共有結合で強固に結合される。従って、架橋性官能基を配向膜ポリマーに導入することで、光学補償シートの強度を著しく改善することができる。
【0093】
配向膜ポリマーの架橋性官能基は、多官能モノマーと同様に、重合性基を含むことが好ましい。具体的には、例えば特開2000−155216号公報の段落番号[0080]〜[0100]記載のもの等が挙げられる。配向膜ポリマーは、上記の架橋性官能基とは別に、架橋剤を用いて架橋させることもできる。
架橋剤としては、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾールおよびジアルデヒド澱粉が含まれる。二種類以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、例えば特開2002−62426号公報の段落番号[0023]〜[0024]記載の化合物等が挙げられる。反応活性の高いアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが好ましい。
【0094】
架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がさらに好ましい。配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。このように調節することで、配向膜を液晶表示装置に長期使用、或は高温高湿の雰囲気下に長期間放置しても、レチキュレーション発生のない充分な耐久性が得られる。が発生することがある。
配向膜は、基本的に、配向膜形成材料である上記ポリマー、架橋剤を含む透明支持体上に塗布した後、加熱乾燥(架橋させ)し、ラビング処理することにより形成することができる。架橋反応は、前記のように、透明支持体上に塗布した後、任意の時期に行って良い。ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを配向膜形成材料として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例えば、メタノール)と水の混合溶媒とすることが好ましい。その比率は質量比で水:メタノールが0:100〜99:1が好ましく、0:100〜91:9であることがさらに好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、さらには光学異方性層の層表面の欠陥が著しく減少する。
【0095】
配向膜の塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法またはロールコーティング法が好ましい。特にロッドコーティング法が好ましい。また、乾燥後の膜厚は0.1〜10μmが好ましい。加熱乾燥は、20℃〜110℃で行なうことができる。充分な架橋を形成するためには60℃〜100℃が好ましく、特に80℃〜100℃が好ましい。乾燥時間は1分〜36時間で行なうことができるが、好ましくは1分〜30分である。pHも、使用する架橋剤に最適な値に設定することが好ましく、グルタルアルデヒドを使用した場合は、pH4.5〜5.5で、特に5が好ましい。
配向膜は、透明支持体上または上記下塗層上に設けられる。配向膜は、上記のようにポリマー層を架橋したのち、表面をラビング処理することにより得ることができる。
前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を適用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
【0096】
工業的に実施する場合、搬送している偏光膜のついたフィルムに対し、回転するラビングロールを接触させることで達成するが、ラビングロールの真円度、円筒度、振れ(偏芯)はいずれも30μm以下であることが好ましい。ラビングロールへのフィルムのラップ角度は、0.1〜90°が好ましい。ただし、特開平8−160430号公報に記載されているように、360°以上巻き付けることで、安定なラビング処理を得ることもできる。フィルムの搬送速度は1〜100m/minが好ましい。ラビング角は0〜60°の範囲で適切なラビング角度を選択することが好ましい。液晶表示装置に使用する場合は、40〜50°が好ましく、45°が特に好ましい。
このようにして得た配向膜の膜厚は、0.1〜10μmの範囲にあることが好ましい。
【0097】
次に、配向膜の上に光学異方性層の液晶性分子を配向させる。その後、必要に応じて、配向膜ポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを反応させるか、あるいは、架橋剤を用いて配向膜ポリマーを架橋させる。
光学異方性層に用いる液晶性分子には、棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子が含まれる。棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、さらに、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。
【0098】
(ロー2)棒状液晶性分子
棒状液晶性分子としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
なお、棒状液晶性分子には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶性分子を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも、棒状液晶性分子として用いることができる。言い換えると、棒状液晶性分子は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
棒状液晶性分子については、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、および液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。
棒状液晶性分子の複屈折率は、0.001〜0.7の範囲にあることが好ましい。
棒状液晶性分子は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、ラジカル重合性不飽基或はカチオン重合性基が好ましく、具体的には、例えば特開2002−62427号公報の段落番号[0064]〜[0086]記載の重合性基、重合性液晶化合物が挙げられる。
【0099】
(ロー3)円盤状液晶性分子
円盤状(ディスコティック)液晶性分子には、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
【0100】
円盤状液晶性分子としては、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造である液晶性を示す化合物も含まれる。分子または分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。円盤状液晶性分子から形成する光学異方性層は、最終的に光学異方性層に含まれる化合物が円盤状液晶性分子である必要はなく、例えば、低分子の円盤状液晶性分子が熱や光で反応する基を有しており、結果的に熱、光で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失った化合物も含まれる。円盤状液晶性分子の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、円盤状液晶性分子の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。
円盤状液晶性分子を重合により固定するためには、円盤状液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。円盤状コアと重合性基は、連結基を介して結合する化合物が好ましく、これにより重合反応においても配向状態を保つことができる。例えば、特開2000−155216号公報の段落番号[0151]〜[0168]記載の化合物等が挙げられる。
【0101】
光学異方性層の深さ方向でかつ偏光膜の面からの距離の増加と共に増加または減少している。角度は、距離の増加と共に減少することが好ましい。さらに、角度の変化としては、連続的増加、連続的減少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、あるいは、増加および減少を含む間欠的変化が可能である。間欠的変化は、厚さ方向の途中で傾斜角が変化しない領域を含んでいる。角度は、角度が変化しない領域を含んでいても、全体として増加または減少していればよい。さらに、角度は連続的に変化することが好ましい。
偏光膜側の円盤状液晶性分子の長軸の平均方向は、一般に円盤状液晶性分子あるいは配向膜の材料を選択することにより、またはラビング処理方法の選択することにより、調整することができる。また、表面側(空気側)の円盤状液晶性分子の長軸(円盤面)方向は、一般に円盤状液晶性分子あるいは円盤状液晶性分子と共に使用する添加剤の種類を選択することにより調整することができる。円盤状液晶性分子と共に使用する添加剤の例としては、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマーおよびポリマーなどを挙げることができる。長軸の配向方向の変化の程度も、上記と同様に、液晶性分子と添加剤との選択により調整できる。
【0102】
(ロー4)光学異方性層の他の組成物
上記の液晶性分子と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶分子の配向性等を向上することができる。液晶性分子と相溶性を有し、液晶性分子の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性若しくはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、上記の重合性基含有の液晶化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002−296423号公報の段落番号[0018]〜[0020]記載のものが挙げられる。上記化合物の添加量は、円盤状液晶性分子に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物が挙げられる。
【0103】
円盤状液晶性分子とともに使用するポリマーは、円盤状液晶性分子に傾斜角の変化を与えられることが好ましい。
ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、特開2000−155216号公報の段落番号[0178]記載のものが挙げられる。液晶性分子の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、液晶性分子に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。
円盤状液晶性分子のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がさらに好ましい。
【0104】
(ロー5)光学異方性層の形成
光学異方性層は、液晶性分子および必要に応じて後述の重合性開始剤や任意の成分を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジン)、炭化水素(例えば、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
塗布液の塗布は、公知の方法(例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜15μmであることがさらに好ましく、1〜10μmであることが最も好ましい。
【0105】
(ロー6)液晶性分子の配向状態の固定
配向させた液晶性分子を、配向状態を維持して固定することができる。固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2,367,661号、同2,367,670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2,448,828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2,722,512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3,046,127号、同2,951,758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3,549,367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4,239,850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4,212,970号明細書記載)が含まれる。
【0106】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2の範囲にあることが好ましく、20〜5000mJ/cm2の範囲にあることがより好ましく、100〜800mJ/cm2の範囲にあることがさらに好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
保護層を、光学異方性層の上に設けてもよい。
【0107】
この光学補償フィルムと偏光膜を組み合わせることも好ましい。具体的には、上記のような光学異方性層用塗布液を偏光膜の表面に塗布することにより光学異方性層を形成する。その結果、偏光膜と光学異方性層との間にポリマーフイルムを使用することなく、偏光膜の寸度変化にともなう応力(歪み×断面積×弾性率)が小さい薄い偏光板が作成される。本発明に従う偏光板を大型の液晶表示装置に取り付けると、光漏れなどの問題を生じることなく、表示品位の高い画像を表示することができる。
偏光膜と光学補償層の傾斜角度は、LCDを構成する液晶セルの両側に貼り合わされる2枚の偏光板の透過軸と液晶セルの縦または横方向のなす角度にあわせるように延伸することが好ましい。通常の傾斜角度は45°である。しかし、最近は、透過型、反射型および半透過型LCDにおいて必ずしも45°でない装置が開発されており、延伸方向はLCDの設計にあわせて任意に調整できることが好ましい。
【0108】
(ロー7)液晶表示装置
このような光学補償フィルムが用いられる各液晶モードについて説明する。
【0109】
(TNモード液晶表示装置)
カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。TNモードの黒表示における液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
【0110】
(OCBモード液晶表示装置)
棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許第4,583,825号、同5,410,422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensated Bend) 液晶モードとも呼ばれる。
OCBモードの液晶セルもTNモード同様、黒表示においては、液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
【0111】
(VAモード液晶表示装置)
電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向しているのが特徴であり、VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
【0112】
(IPSモード液晶表示装置)
電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に面内に水平に配向しているのが特徴であり、これが電圧印加の有無で液晶の配向方向を変えることでスイッチングするのが特徴である。具体的には特開2004−365941号、特開2004−12731号、特開2004−215620号、特開2002−221726号、特開2002−55341号、特開2003−195333号各公報に記載のものなどを使用できる。
【0113】
(その他液晶表示装置)
ECBモードおよびSTNモードの液晶表示装置に対しては、上記と同様の考え方で光学的に補償することができる。
【0114】
(ハ)反射防止層の付与(反射防止フィルム)
反射防止膜は、一般に、防汚性層でもある低屈折率層、および低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(即ち、高屈折率層、中屈折率層)とを透明基体上に設けて成る。
屈折率の異なる無機化合物(金属酸化物等)の透明薄膜を積層させた多層膜として、化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、金属アルコキシド等の金属化合物のゾルゲル方法でコロイド状金属酸化物粒子皮膜を形成後に後処理(紫外線照射:特開平9−157855号公報、プラズマ処理:特開2002−327310号公報)して薄膜を形成する方法が挙げられる。
一方、生産性が高い反射防止膜として、無機粒子をマトリックスに分散されてなる薄膜を積層塗布してなる反射防止膜が各種提案されている。
上述したような塗布による反射防止フィルムに最上層表面が微細な凹凸の形状を有する防眩性を付与した反射防止層から成る反射防止フィルムも挙げられる。
本発明の飽和ノルボルネン樹脂フィルムは上記いずれの方式にも適用できるが、特に好ましいのが塗布による方式(塗布型)である。
【0115】
(ハー1)塗布型反射防止フィルムの層構成
基体上に少なくとも中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層(最外層)の順序の層構成から成る反射防止膜は、以下の関係を満足する屈折率を有する様に設計される。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
また、透明支持体と中屈折率層の間に、ハードコート層を設けてもよい。さらには、中屈折率ハードコート層、高屈折率層および低屈折率層からなってもよい。
例えば、特開平8−122504号公報、同8−110401号公報、同10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等が挙げられる。
また、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例えば、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
反射防止膜のヘイズは、5%以下あることが好ましく、3%以下がさらに好ましい。また膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0116】
(ハー2)高屈折率層および中屈折率層
反射防止膜の高い屈折率を有する層は、平均粒子サイズ100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子およびマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化性膜から成る。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
このような超微粒子とするには、粒子表面が表面処理剤で処理されること(例えば、シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908、アニオン性化合物或は有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とすること(特開2001−166104号公報等)、特定の分散剤併用(例えば、特開平11−153703号公報、米国特許第6,210,858B1号明細書、特開2002−2776069号公報等)等挙げられる。
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。
【0117】
さらに、ラジカル重合性および/またはカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個以上含有の多官能性化合物含有組成物、加水分解性基を含有の有機金属化合物およびその部分縮合体組成物から選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。例えば、特開2000−47004号公報、同2001−315242号公報、同2001−31871号公報、同2001−296401号公報等に記載の化合物が挙げられる。
また、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されている。
高屈折率層の屈折率は、−般に1.70〜2.20である。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。
【0118】
(ハー3)低屈折率層
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層して成る。低屈折率層の屈折率は1.20〜1.55である。好ましくは1.30〜1.50である。
耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンの導入、フッ素の導入等から成る薄膜層の手段を適用できる。
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47である。また、含フッ素化合物はフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含む架橋性若しくは重合性の官能基を含む化合物が好ましい。
例えば、特開平9−222503号公報の段落番号[0018]〜[0026]、特開平11−38202号公報の段落番号[0019]〜[0030]、特開2001-40284号公報の段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報、特開2004−45462号公報の一般式1、一般式2、段落番号[0043]〜[0047]等に記載の化合物が挙げられる。
【0119】
シリコーン化合物としてはポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基あるいは重合性官能基を含有して、膜中で橋かけ構造を有するものが好ましい。例えば、反応性シリコーン(例えば、サイラプレーン(チッソ(株)製等)、両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)等が挙げられる。
架橋または重合性基を有する含フッ素および/またはシロキサンのポリマーの架橋または重合反応は、重合開始剤、増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時または塗布後に光照射や加熱することにより実施することが好ましい。
また、シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化するゾルゲル硬化膜も好ましい。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物またはその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、同58−147483号公報、同58−147484号公報、特開平9−1あ57582号公報、同11−106704号公報記載等記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、同2001−48590号公報、同2002−53804号公報記載の化合物等)等が挙げられる。
【0120】
低屈折率層は、上記以外の添加剤として充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1〜150nmの低屈折率無機化合物、特開平11−3820公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有することができる。
低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されても良い。安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがさらに好ましく、60〜120nmであることが最も好ましい。
【0121】
(ハー4)ハードコート層
ハードコート層は、反射防止フィルムに物理強度を付与するために、透明支持体の表面に設ける。特に、透明支持体と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。
ハードコート層は、光および/または熱の硬化性化合物の架橋反応、または、重合反応により形成されることが好ましい。 硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、また加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。
これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したと同様のものが挙げられる。
ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、国際公開第00/46617号パンフレット等記載のものが挙げられる。
【0122】
高屈折率層はハードコート層を兼ねることができる。このような場合、高屈折率層で記載した手法を用いて微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。
ハードコート層は、平均粒子サイズ0.2〜10μmの粒子を含有させて防眩機能(アンチグレア機能)を付与した防眩層(後述)を兼ねることもできる。
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmである。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0123】
(ハー5)前方散乱層
前方散乱層は、液晶表示装置に適用した場合の、上下左右方向に視角を傾斜させたときの視野角改良効果を付与するために設ける。上記ハードコート層中に屈折率の異なる微粒子を分散することで、ハードコート機能と兼ねることもできる。
例えば、前方散乱係数を特定化した特開11−38208号公報、透明樹脂と微粒子の相対屈折率を特定範囲とした特開2000−199809号公報、ヘイズ値を40%以上と規定した特開2002−107512号公報等が挙げられる。
【0124】
(ハー6)その他の層
上記の層以外に、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
【0125】
(ハー7)塗布方法
反射防止フィルムの各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法やエクストルージョンコート法(米国特許第2,681,294号明細書)により、塗布により形成することができる。
【0126】
(ハー8)アンチグレア機能
反射防止膜は、外光を散乱させるアンチグレア機能を有していてもよい。アンチグレア機能は、反射防止膜の表面に凹凸を形成することにより得られる。反射防止膜がアンチグレア機能を有する場合、反射防止膜のヘイズは、3〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがさらに好ましく、7〜20%であることが最も好ましい。
反射防止膜表面に凹凸を形成する方法は、これらの表面形状を充分に保持できる方法であればいずれの方法でも適用できる。例えば、低屈折率層中に微粒子を使用して膜表面に凹凸を形成する方法(例えば、特開2000−271878号公報等)、低屈折率層の下層(高屈折率層、中屈折率層またはハードコート層)に比較的大きな粒子(粒子サイズ0.05〜2μm)を少量(0.1〜50質量%)添加して表面凹凸膜を形成し、その上にこれらの形状を維持して低屈折率層を設ける方法(例えば、特開2000−281410号公報、同2000−95893号公報、同2001−100004号公報、同2001−281407号公報等)、最上層(防汚性層)を、塗設後の表面に物理的に凹凸形状を転写する方法(例えば、エンボス加工方法として、特開昭63−278839号公報、特開平11−183710号公報、特開2000−275401号公報等記載)等が挙げられる。
【0127】
<測定法>
以下に本発明で使用した測定法について記載する。
【0128】
(1)Re、Rth、幅方向と長手方向のReとRthのバラツキ、および遅相軸のズレ
フィルムの長手方向に0.5m間隔で100点、3×3cmの大きさのサンプル片に切り出した。また、フィルムの全幅にわたり、3×3cmの大きさに50点、等間隔で切り出した。
これらのサンプルフィルムを25℃・相対湿度60%に3時間以上調湿後、自動複屈折計(KOBRA-21ADH/PR:王子計測器(株)製)を用いて、25℃・相対湿度60%において、サンプルフィルム表面に対し垂直方向および遅相軸を回転軸としてフィルム面法線から+50°から−50°まで10°刻みで傾斜させた方向から波長590nmにおける面内レターデーション(Re)と遅相軸の傾きを測定した。垂直方向から面内のレターデーション(Re)、流れ方向に対する遅相軸の傾きを配向角として算出し、垂直方向、±40°方向の測定値からRthを算出した。本明細書において特に断らない場合には、ReおよびRthはこのようにして得た値をさす。上記サンプルの測定値の全平均をRe、Rth、遅相軸とした。また、長手方向(MD方向)のサンプル100点と幅方向(TD方向)のサンプル50点の測定値と平均値との差の全平均をReのバラツキ、Rthのバラツキ、遅相軸のズレとした。
【0129】
(2)ボーイング率の測定
横方向の延伸を行う前のフィルムの表面に幅方向に油性マジックインキで直線を引き、ボーイング線とした。このボーイング線は、テンター延伸後に、フィルムの長手移送方向に対して凹状または凸状に引き戻された形に変形された凸凹の弓状線となる。このときの弓状線のボーイング線の最大凸量または凹量を測定し、下記式にしたがってボーイング率(歪み)を算出した。なお、フィルムの進行方向に対して凸状の弓状ボーイング線を負(−)とし、凹状の弓状ボーイング線を正(+)とした。
ボーイング率(%)=ボーイング線の最大凸量または凹量(mm)/フィルム全幅(mm)×100(%)
【0130】
(3)Tgの測定
残留溶媒量が1質量%以下のフィルムを10mgサンプリングし、平衡含水率が1%以下になるまで乾燥し、DSCの測定パンに入れた。これを窒素気流中で、10℃/分で30℃から250℃まで昇温した後、30℃まで−20℃/分で冷却した。その後、再度30℃から250℃まで10℃/分で昇温し、ベースラインが低温側から偏奇し始める温度をDSC曲線からで求めて乾燥状態のTgとした。
(4)延伸前の膜状物の残留溶媒量
延伸前の膜状物の残留溶媒量をガスクロマトグラフィー(GC−18A島津製作所株式会社)により以下の手順で測定した。すなわち、延伸前の膜状物300mgを溶解溶媒30mlに溶解した(塩素系溶媒で溶液製膜した場合はトルエンに溶解し、非塩素系溶媒で溶液製膜した場合と溶融製膜した場合はジクロロメタンに溶解した)。この溶液を下記条件でガスクロマトグラフィー(GC)を用いて分析し、溶解溶媒以外のピークの面積から検量線を用いて定量し、この総和を残留溶媒量とした。
・カラム:DB−WAX(0.25mmφ×30m、膜厚0.25μm)
・カラム温度:50℃
・キャリアーガス:窒素
・分析時間:15分間
・サンプル注入量:1μl
【0131】
(5)延伸テンター内の長手方向の温度分布、幅方向の温度分布
延伸する前に、複数対の熱伝導温度センサーをフィルム幅方向の両端から中央部までの11箇所にテフロン(登録商標)テープで貼り付け、フィルムをチャック(テンタークリップ)で横延伸・搬送しながら、各ゾーンの温度および幅方向の温度を測定し、記録した。両端部の温度Tsと、中央部の温度Tcとの差を、幅方向の温度分布とした。Tsがフィルムの幅方向の中央から両側に向けて20〜45%(フィルムの全幅を100%とする)の部分の平均温度、Tcが中央から両側に20%以内の部分の平均温度である(図2参照)。
【0132】
(6)湿熱処理および乾熱処理によるフィルムの寸法変化
湿熱および乾熱におけるフィルムの寸法変化は自動ピンゲージ(新東科学(株)製)を用いて測定した。サンプルフィルムの流延方向(MD)および横方向(TD)より、50mm幅×150mm長さのサンプル片を各5枚ずつ採取した。サンプル片の両端に6mmφの穴をパンチを用いて100mm間隔で開けた。これを、25℃・相対湿度60%の室内で24時間以上調湿した。ピンゲージを用いて、パンチ間隔の原寸(L1)を最小目盛り1/1000mmまで測定した。次にサンプル片を60℃・相対湿度90%の恒温器または90℃ドライのオーブンに無荷重で吊して500時間熱処理し、その後25℃・相対湿度60%の室内で24時間以上調湿してから、自動ピンゲージで熱処理後のパンチ間隔の寸法(L2)を測定した。次式により湿熱寸法変化率を算出した。ここで言う寸法変化率は、測定した各5枚の測定値の平均値である。
寸法変化率(%)={(L2 −L1)/L1}×100
【実施例】
【0133】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0134】
1.飽和ノルボルネン樹脂
(1−1)飽和ノルボル樹脂−A
6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレンに、重合触媒としてトリエチルアルミニウムの15%シクロヘキサン溶液10質量部、トリエチルアミン5質量部、および四塩化チタンの20%シクロヘキサン溶液10質量部を添加して、シクロヘキサン中で開環重合し、得られた開環重合体をニッケル触媒で水素添加してポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をイソプロピルアルコール中で凝固させ、乾燥し、粉末状の樹脂を得た。この樹脂の数平均分子量は40,000、水素添加率は99.8%以上、Tgは139℃であった。
【0135】
(1−2)飽和ノルボル樹脂−B
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12.5,17.10]−3−ドデセン(特定単量体B)100質量部と、5−(4−ビフェニルカルボニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(特定単量体A)150質量部と、1−ヘキセン(分子量調節剤)18質量部と、トルエン750質量部とを窒素置換した反応容器に仕込み、この溶液を60℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒としてトリエチルアルミニウム(1.5モル/l)のトルエン溶液0.62質量部と、t−ブタノールおよびメタノールで変性した六塩化タングステン(t−ブタノール:メタノール:タングステン=0.35モル:0.3モル:1モル)のトルエン溶液(濃度0.05モル/l)3.7質量部とを添加し、この系を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環重合反応させて開環重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であり、得られた開環重合体について、30℃のクロロホルム中で測定した固有粘度(ηinh )は0.65dl/gであった。
このようにして得られた開環重合体溶液4,000質量部をオートクレーブに仕込み、この開環重合体溶液に、RuHCl(CO)[P(C6533 0.48質量部を添加し、水素ガス圧100kg/cm2、反応温度165℃の条件下で、3時間加熱攪拌して水素添加反応を行った。得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(特定の環状ポリオレフィン系樹脂)を得た。このようにして得られた水素添加重合体について400MHz、1H−NMRを用いてオレフィン性不飽和結合の水素添加率を測定したところ99.9%であった。このTgは110℃であり、GPC法(溶媒:テトラヒドロフラン)によりポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)および質量平均分子量(Mw)を測定したところ、数平均分子量(Mn)は39,000、質量平均分子量(Mw)は126,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.23であった。
【0136】
2.製膜
(2−1)溶融製膜
上記飽和ノルボルネン樹脂−Aに二酸化珪素からなる微粒子(アエロジルR972V)を0.02質量%添加し、直径3mm、長さ5mmの円柱状のペレットに成形した。これを110℃の真空乾燥機で乾燥し、含水率を0.1%以下とした後、(Tg−10℃)になるように調整したホッパーに投入した。
溶融粘度が5000Pa・sとなるように溶融温度を調整し、この温度で5分間かけて1軸混練機を用い溶融した後、溶融温度より10℃高く設定したT−ダイから(Tg−5℃)に設定したキャスティングドラム上に流延し固化しフィルムとした。この時、各水準静電印加法(10kVのワイヤーをメルトのキャスティングドラムへの着地点から10cmのところに設置)を用いた。固化したメルトを剥ぎ取り、巻き取った。なお、巻き取り直前に両端(全幅の各3%)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ50μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた。各水準とも、幅は1.5mで30m/分で3000m巻き取った。
併せて市販の飽和ノルボルネン樹脂フィルム(溶融製膜)のゼオノア(日本ゼオン(株)製ZF-14:表1中にZと記載)も用いた。なお、このフィルムのTgは136℃であった。
【0137】
(2−2)溶液製膜
上記飽和ノルボルネン樹脂−B 100質量部と二酸化珪素からなる微粒子(アエロジルR972V)0.02質量部を、トルエン中に30%濃度になるように撹拌しながら投入した。なお二酸化珪素の代わりに、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ等を用いた場合も同様の結果を得た。
投入が終わると撹拌を停止し、25℃で3時間膨潤させスラリーを作成した。これを再度撹拌し、完全に溶解した(この溶液をドープと呼ぶ)。この溶液の室温での粘度は30,000mPa・sであった)。これを、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)でろ過し、さらに絶対濾過精度2.5μmの濾紙(ポール社製、FH025)にて濾過した。
上述のドープを35℃に加温し、25℃に設定したバンド長60mの鏡面ステンレス支持体上に流延した。使用したギーサーは、特開平11−314233号公報に記載の形態に類似するものを用いた。なお流延スピードは60m/分でその流延幅は250cmとした。
残留溶剤が100質量%で剥ぎ取った後、130℃で乾燥した後、残留溶剤量が0.3質量%以下となったところで巻き取り、飽和ノルボルネン樹脂フィルムを得た。得られたフィルムは両端を3cmトリミングした後、両端から2〜10mmの部分に高さ100μmのナーリングを付与し、3000mロール状に巻き取った。
【0138】
3.飽和ノルボルネン樹脂フィルムの延伸
(3−1)延伸・緩和
上記溶融製膜法または溶液製膜法で得た飽和ノルボルネン樹脂の未延伸フィルムを表1に示す条件で、縦方向および横方向に延伸した。縦延伸は、Tgの温度で予熱ロールにて予熱した後、(Tg+5℃)の温度で縦方向(MD)にニップロール(ニップロール間距離5cm)の周速差を付け、20m/分の速度で延伸することにより行った。その後、パスロールにより冷却しながら横延伸テンターの入口に搬送し、フィルムの両端をチャック(テンタークリップ)にて挟み込んだ。横延伸は、延伸テンターを用い、飽和ノルボルネン樹脂フィルムの両端を複数対のチャックで把持させた状態で、20m/分の速度で表1に記載の延伸倍率で延伸することにより行った。その後、表1に記載の緩和率でフィルム両端をチャック把持しながら幅方向に緩和を実施した。
延伸テンター内の長手方向の温度分布を表1に示した。また各ゾーンの幅方向の温度分布はいずれも表1に記載されるように設定した。
【0139】
(3−2)熱処理
続いて、熱処理ゾーンの入口にチャックを外す装置又はフィルム端部のスリット装置を取り付けたテンター内で、延伸した飽和ノルボルネン樹脂フィルムの片側または両側のチャックの拘束を除去した後、Tgの温度で、表1に記載の搬送張力で熱処理を行った。その後巻き取り側にテンションカットした後、室温まで徐冷しながら100N/m(幅)の高い張力で巻き取った。なお、比較例1〜8では、表1に記載されるように延伸飽和ノルボルネン樹脂フィルムフィルムの両側のチャックの拘束を除去されてない状態で処理した。
【0140】
4.延伸フィルムの評価
このようにして得た延伸フィルムの湿熱および乾熱における寸法変化率、ボーイング量、Re、Rth(平均値)およびこれらのMD、TD方向のバラツキ、配向遅相軸の軸ズレを前述の方法で測定し、表1に記載した。本発明の条件を満たす延伸フィルムのその他の物性はヘイズが0.3%以内、透明度(透明性)が92.5%以上であった。また、輝点異物がなく、フィルム表面のダイスジや段ムラがなく、面状に優れ、光学用途に対しては優れた特性を有するものであった。
一方、比較例1〜8では、本発明の範囲外の延伸条件で延伸フィルムを製造した。すなわち、熱処理ゾーンのチャック拘束の除去の有無、延伸ゾーン内の幅方向の温度分布、緩和率をそれぞれ表1に示す通りに変更して実施した。得られた比較例のフィルム物性を前述と同様にして測定し、結果を表1に記載した。
表1の結果から分かるように、本発明の実施例1〜18のフィルムは、優れた寸法安定性を有し、長手方向、幅方向におけるRe、Rthのバラツキが少なく、且つボーイング率と配向遅相軸のズレが小さく、レターデーションの変動ムラと配向軸ズレが小さく、かつ液晶表示装置に取り組んだ時の黒表示における光漏れと視認性における色ムラが少なかった。一方、本発明の範囲外の条件下で製造した比較例1〜8のフィルムは、光学特性は劣った。特に、特開2001−42130号公報の実施例1に準じたもの(表1の比較例8)は、性能は明らかに悪かった。一方、比較例8に近い条件で本発明を実施した実施例16は良好な性能を示した。
【0141】
【表1】

【0142】
5.偏光板の作成
(5−1)偏光膜の作成
特開平2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸したで厚み20μmの偏光膜を調製した。なお、特開平2002−86554号公報の実施例1のように延伸軸が斜め45度となるように延伸した偏光膜も同様に作成したが、以降の評価結果は上述のものと同様な結果が得られた。
(5−2)貼り合わせ
このようにして得た偏光膜を、上記鹸化処理した延伸飽和ノルボルネン樹脂フィルム(位相差板)と鹸化処理した偏光板保護フィルム(商品名:フジタック)の間に挟み込んだ。この際、延伸飽和ノルボルネン樹脂フィルムと偏光膜の接着は、15μmのアクリレート系粘着剤を用い、鹸化処理したフジタックと偏光膜の接着はPVA((株)クラレ製PVA−117H)3%水溶液の接着剤を用いて貼り合せた。またフジタックと偏光膜の間は上述のPVA水溶液を接着剤として貼り合わせた。貼り合わせ方向は、偏光軸と位相差板の長手方向が0度、90度のいずれかになるようした。
延伸飽和ノルボルネン樹脂フィルムを用いて貼り合せした偏光板のフレッシュ品と、湿熱サーモ処理(60℃・相対湿度90%で500時間)または乾熱サーモ処理(80℃ドライで500時間)後の偏光板を、延伸飽和ノルボルネン樹脂フィルムを液晶側になるようにして、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載の方法に基づき、20インチおよび40インチの液晶表示装置(シャープ(株)製)に設けられている観察者側の偏光板を剥がし、代わりに評価対象となる偏光板をサンプルフィルムが液晶セル側となるように粘着剤を介して観察者側に貼り付けた。これをフレッシュ品の偏光板を用いたものと、湿熱サーモ品、乾熱サーモ品の偏光板を用いたものを比較し、黒表示状態のVA液晶装置の発生する光漏れ、色ムラおよび面内の視認均一性を目視にて評価した。
表示品位は以下のように3段階のランクで評価した。結果を表1に記載した。
〇 液晶装置四辺の縁に光漏れと色ムラがなかった。
視認均一性が良く、最高画質なパネルであった。
△ 液晶装置四辺の縁に僅かに光漏れと色ムラがあった。
画質が良好なパネルであった。
× 液晶装置四辺の縁に光漏れと色ムラが全面的に観察された。
視認均一性が悪く、商品としては好ましくないレベルであった。
本発明を実施したものは色ムラが無く、視認均一性に優れるものであった。また、特開平2002−86554号公報の実施例1に従い、テンターを用い延伸軸が斜め45°となるように延伸した偏光板についても同様に、本発明の延伸飽和ノルボルネン樹脂フィルムを用いて作製したものは、上記同様に良好な結果が得られた。
一方、比較例1〜8のフィルムを用いた液晶表示装置は、色ムラの発生が多く、光学特性が低下し、視認均一性に劣るパネルであった。
【0143】
4.光学補償フィルムの作成
特開平11−316378号公報の実施例1の液晶層を塗布したセルロースアセテートフィルムの代わりに、本発明の延伸飽和ノルボルネン樹脂フィルムを使用した。この時製膜、延伸直後のもの(フレッシュ品)を用いた場合と、湿熱サーモ処理(60℃・相対湿度90%で500時間)、乾熱サーモ処理(80℃ドライで500時間)後のものを用いた場合で、両者比較し色むらの発生している領域を目視評価した。本発明を用いたものは良好な光学補償フィルムを作成できた。
特開平7−333433号公報の実施例1の液晶層を塗布したセルロースアセテートフィルムに代わって、本発明の延伸飽和ノルボルネン樹脂フィルムに変更し光学補償フィルターフィルムを作製したものでも同様に良好な光学補償フィルムを作成できた。
【0144】
5.低反射フィルムの作成
本発明の延伸飽和ノルボルネン樹脂フィルムを発明協会公開技報(公技番号2001−1745)の実施例47に従い本発明の延伸飽和ノルボルネン樹脂フィルムを用いて低反射フィルムを作成したところ、良好な光学性能が得られた。
【0145】
6.液晶表示素子の作成
上記本発明の偏光板を、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572号公報の実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学的異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載の20インチVA型液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図10〜15に記載の20インチOCB型液晶表示装置、特開2004−12731号公報の図11に記載のIPS型液晶表示装置に用いた。さらに、本発明の低反射フィルムをこれらの液晶表示装置の最表層に貼り評価を行ったところ、高温、高湿経時後でも色むらの発生しない良好な液晶表示素子を得た。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明の飽和ノルボルネン樹脂フィルムは、湿熱処理や乾熱処理による寸法変化が小さく、長手方向と幅方向における物性が均一であり、レターデーション(Re、Rth)のバラツキおよび幅方向の遅相軸ズレが極めて小さい。本発明の飽和ノルボルネン樹脂フィルムは、高品位な偏光膜の保護フィルム、光学補償フィルム、反射防止フィルム等として用いることができ、さらにこれらを用いれば画像表示性能に優れる液晶画像装置を提供することができる。したがって本発明は、産業上の利用可能性が高い有用な発明である。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】本発明で好ましく用いることができるテンターの概略図である。
【図2】テンター内における飽和ノルボルネン樹脂フィルムの平面図である。
【図3】押出機の構成を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0148】
1 飽和ノルボルネン樹脂フィルム
2 ボーイング標線
3 ボーイング線
4 チャックを外す装置、又は、フィルム端部のスリット装置
5 チャック
6 テンタークリップレール
7 テンションカットロール
11 飽和ノルボルネン樹脂フィルムの中央線
E 予熱ゾーン
F 延伸ゾーン
G 緩和ゾーン
H 熱処理ゾーン
22 押出機
32 シリンダー
40 供給口
A 供給部
B 圧縮部
C 計量部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
60℃・相対湿度90%の環境下にて500時間吊したときの寸法変化率が遅相軸方向およびそれに直交する方向とも−0.1%〜0.1%であり、90℃ドライの環境下にて500時間吊したときの寸法変化率が遅相軸方向およびそれに直交する方向とも−0.1%〜0.1%であり、厚みのバラツキが0〜2μm、面内のレターデーション(Re)のバラツキが0〜5nm、厚み方向のレターデーション(Rth)のバラツキが0〜10nmであり、遅相軸のズレが−0.5〜0.5°であることを特徴とする飽和ノルボルネン樹脂フィルム。
【請求項2】
飽和ノルボルネン樹脂フィルムがロール状であって、該フィルムの遅相軸方向と該フィルムの長手方向とのなす角度の絶対値が89.5°〜90.5°であることを特徴とする請求項1に記載の飽和ノルボルネン樹脂フィルム。
【請求項3】
飽和ノルボルネン樹脂フィルムを、テンターを用いて幅方向に5%〜250%延伸した後、テンター内で少なくとも片側のチャックの拘束を除去した状態で熱処理することを特徴とする飽和ノルボルネン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記延伸を、延伸後の飽和ノルボルネン樹脂フィルムのボーイング率が−1〜1%となるような条件で行うことを特徴とする請求項3に記載の飽和ノルボルネン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項5】
テンター内でチャックを外した後に1N/m〜70N/mの張力で搬送することを特徴とする請求項3または4に記載の飽和ノルボルネン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記幅方向への延伸後で前記熱処理前に、前記幅方向への延伸終了時の温度よりも0〜20℃低い温度で0.1%〜40%幅方向に緩和することを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の飽和ノルボルネン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記テンター内の幅方向における延伸時の温度分布が下記式(1)を満足することを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載の飽和ノルボルネン樹脂フィルムの製造方法。
1≦Ts−Tc≦5 (1)
(上式において、Tcはフィルムの中央部の平均温度、Tsは端部両側の平均温度である。)
【請求項8】
前記延伸の前に、飽和ノルボルネン樹脂フィルムの長手方向に0%〜50%延伸することを特徴とする請求項3〜7のいずれか一項に記載の飽和ノルボルネン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記延伸を、飽和ノルボルネン樹脂フィルムの残留溶媒量が1質量%以下の状態で行うことを特徴とする請求項3〜8のいずれか一項に記載飽和ノルボルネン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項10】
製造される飽和ノルボルネン樹脂フィルムが、60℃・相対湿度90%の環境下にて500時間吊したときの寸法変化率が遅相軸方向およびそれに直交する方向とも−0.1%〜0.1%であり、90℃ドライの環境下にて500時間吊したときの寸法変化率が遅相軸方向およびそれに直交する方向とも−0.1%〜0.1%であり、厚みのバラツキが0〜2μm、面内のレターデーション(Re)のバラツキが0〜5nm、厚み方向のレターデーション(Rth)のバラツキが0〜10nmであり、遅相軸のズレが−0.5〜0.5°であることを特徴とする請求項3〜9のいずれか一項に記載の飽和ノルボルネン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項11】
請求項3〜10のいずれか一項に記載の製造方法で製造される飽和ノルボルネン樹脂フィルム。
【請求項12】
偏光膜に、請求項1、2または11に記載の飽和ノルボルネン樹脂フィルムを1枚以上積層したことを特徴とする偏光板。
【請求項13】
請求項1、2または11に記載の飽和ノルボルネン樹脂フィルムを基材に用いたことを特徴とする光学補償フィルム。
【請求項14】
請求項1、2または11に記載の飽和ノルボルネン樹脂フィルムを基材に用いたことを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項15】
請求項1、2または11に記載の飽和ノルボルネン樹脂フィルム、請求項12に記載の偏光板、請求項13に記載の光学補償フィルムおよび請求項14に記載の反射防止フィルムからなる群より選択される1枚以上のフィルムを用いて形成した液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−2027(P2007−2027A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−181129(P2005−181129)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】