説明

駆動伝達装置および画像形成装置

【課題】非連結状態から連結状態への切り換え時に掛かる回転方向の衝撃を緩和して耐久性を向上させた駆動伝達装置およびそれを用いた画像形成装置を提供すること。
【解決手段】支持軸に対して軸方向には固定され回転は可能な第1ドッキングギアと,支持軸に対して軸方向にスライド可能で回転も可能な第2ドッキングギアとの連結状態の切り替えを,第2ドッキングギア側に設けたカムホイールの軸方向カムにより,連結部材を介して第2ドッキングギアをスライド移動させて行うクラッチ装置において,一端が支持軸のピン穴にはめ込まれ,他端が連結部材のガイド溝の中に位置して連結部材の回転を阻止するガイドピン4として,他端側の頭部41に,ガイド溝の両内壁面に接するとともに軸方向に有限の長さを有する第1滑り面42および第2滑り面43が形成されているものを用いて衝撃を分散することにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,画像形成装置およびその感光体ドラム等の回転体への駆動伝達装置に関する。さらに詳細には,駆動源から回転体へ駆動を伝達する状態と伝達しない状態とを切り替えることができる駆動伝達装置およびこれを用いた画像形成装置に関するものである。特には,感光体ドラムや現像ローラといった複数の回転体の駆動を1つの駆動源でまかなうとともに,一方の回転体(現像ローラ等)に対しては伝達する状態と伝達しない状態とを状況により切り替える画像形成装置に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,画像形成装置においては,感光体ドラムや現像ローラなど多数の回転体を有している。これらが回転駆動されるべきタイミングは,その機能の違いにより異なる。しかしそれぞれに1つずつ専用の駆動源を備えるのではコストや装置構成上の問題がある。そこで,複数の回転体の駆動を1つの駆動源でまかなうことが考えられる。そのためには,駆動源から回転体へ駆動を伝達する状態と伝達しない状態とを切り替えることができる駆動伝達装置が必要となる。回転体を停止させておくべきタイミングでも,その駆動源が他の回転体のために回転していることがあるからである。
【0003】
特許文献1にそのような駆動伝達装置の例が記載されている。同文献の駆動装置の機械式クラッチは,駆動側係合部品と従動側係合部品とを有している。そして,従動側係合部品を軸方向に移動させることにより,両係合部品が互いに係合する連結状態と係合が解除された非連結状態とを切り替えるようにしている。この機械式クラッチではさらに,従動側係合部品の内周面に溝を設けている。また,回転軸には平行ピンが固定して設けられている。この平行ピンが従動側係合部品の溝にはめ込まれるようになっている。これにより,従動側係合部品は,回転軸に対して軸方向にはスライド移動でき,回転方向には固定されている。
【特許文献1】特開2003-208024号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,前記した従来の駆動伝達装置には,次のような問題点があった。すなわち,非連結状態から連結状態への切り換え時の衝撃に弱いのである。こうしたクラッチ機構では当然に,非連結状態から連結状態への切り換え時にはある程度の衝撃が掛かる。その衝撃には,軸方向の成分と,回転方向の成分とが含まれる。特許文献1の機械式クラッチでは,軸方向の衝撃に関してはコイルバネによりある程度緩和されると思われる。しかしながら回転方向に関しては,平行ピンと従動側係合部品の内周面の溝との間にまともに衝撃が掛かってしまう。しかも,両者の接触は事実上の線接触(平行ピンの先端から回転軸の中心を見る方向に見れば点接触)である。このため衝撃が1箇所に集中するので,衝撃の反復により従動側係合部品の溝の部分が破損することがある。
【0005】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,非連結状態から連結状態への切り換え時に掛かる回転方向の衝撃を緩和して耐久性を向上させた駆動伝達装置およびそれを用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の画像形成装置の駆動伝達装置は,側部にピン穴が形成された支持軸と,支持軸に対して軸方向には固定されかつ回転可能に設けられた第1ギアと,支持軸に対して軸方向にスライド可能にかつ回転可能に設けられた第2ギアと,第2ギアから見て第1ギアとは反対側に位置し,支持軸に対して軸方向には固定されかつ回転可能に設けられ,回転により第2ギアを軸方向にスライドさせる軸方向カム部を有するカムホイールと,第2ギアとカムホイールとの間に位置し,支持軸に対して軸方向にスライド可能に取り付けられ,カムホイール側の端部が軸方向カム部に接し,軸方向と平行なガイド溝が支持軸側の面に形成された連結部材と,一端が支持軸のピン穴にはめ込まれ,他端がガイド溝の中に位置して連結部材の回転を阻止するガイドピンとを有し,第2ギアが第1ギアに接近する向きにスライドした状態では,第1ギアと第2ギアとが接触して一体的に回転することにより,第1ギアおよび第2ギアを介して駆動源から被駆動部へ回転を伝達し,第2ギアが第1ギアから離間する向きにスライドした状態では,駆動源から被駆動部への回転の伝達を遮断する駆動伝達装置であって,ガイドピンの他端には,ガイド溝の両内壁面に接するとともに軸方向に有限の長さを有する第1スライド部および第2スライド部が形成されているものである。
【0007】
この画像形成装置の駆動伝達装置では,第2ギアが第1ギアから離れているときには,両ギアの回転は互いに独立である。このため,両ギアを介して駆動源から被駆動部へ回転が伝達されない。第2ギアが第1ギアに接近する向きにスライドした状態では,第1ギアと第2ギアとが接触して一体的に回転することにより,第1ギアおよび第2ギアを介して駆動源から被駆動部へ回転が伝達される。第2ギアのスライド移動は,カムホイールの回転により,軸方向カム部が連結部材を押すことを通じて行われる。ここで,連結部材の回転は,ガイドピンの第1スライド部および第2スライド部と,連結部材のガイド溝の両内壁面との干渉により阻止されている。
【0008】
第1スライド部および第2スライド部と内壁面との接触箇所には,特に,非伝達状態から伝達状態への切り換え時に衝撃が掛かる。しかし,第1スライド部および第2スライド部が軸方向に有限の長さを有することから,これらの接触箇所は面接触となっている。このため,衝撃が一箇所に集中せず緩和される。よって,切り替えを反復しても接触箇所の損傷がなく,長寿命である。
【0009】
ここにおいて,第1ギアにおける第2ギア側の端面には第1噛み合い爪が,第2ギアにおける第1ギア側の端面には第2噛み合い爪がそれぞれ形成されており,第2ギアが第1ギアに接近する向きにスライドした状態では,第1噛み合い爪と第2噛み合い爪とが噛み合い,第2ギアが第1ギアから離間する向きにスライドした状態では,第1噛み合い爪と第2噛み合い爪との噛み合いが外れることが望ましい。
【0010】
このようなものであれば,両噛み合い爪の噛み合いにより,伝達状態での回転の伝達がより確実である。一方,切り換え時の衝撃も大きいので,第1スライド部および第2スライド部による衝撃分散の意義がより大きい。
【0011】
また,本発明は,画像形成装置に適用し,第1ギアが,現像ローラへ回転駆動を伝達するギアであり,第2ギアが,画像形成装置の感光体用駆動源から回転駆動を受けるギアであることとすることが好ましい。この場合には,現像ローラは常時回転するわけではないので,本発明の駆動伝達装置により,感光体用駆動源からの回転の伝達を断続することが適当である。
【0012】
また,本発明のカムホイールの周面には,カム駆動用モータからウォームを介して駆動を受けるウォームギア歯が形成されていることが望ましい。これにより,第1ギアおよび第2ギアを介しての被駆動部への駆動とは別にカムホイールを駆動できる。
【0013】
本発明は,前記の駆動伝達装置を用い,感光体用の駆動源を現像ローラの駆動にも共用し,第2ギアから現像ローラへ回転駆動を伝達するようにした画像形成装置にも及ぶ。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば,非連結状態から連結状態への切り換え時に掛かる回転方向の衝撃を緩和して耐久性を向上させた駆動伝達装置およびそれを用いた画像形成装置が提供されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下,本発明を具体化した最良の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態に係る画像形成装置の駆動伝達系は,図1のように構成されている。図1は,タンデム式4色画像形成装置における,Y(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン)の3色の部分の感光体ドラムと現像ローラへの駆動伝達系を示している。
【0016】
図1の画像形成装置は,感光体ドラム80Y,80M,80C,現像ローラ81Y,81M,81Cを有している。そして,これらの回転体の駆動源であるモータのモータ軸82が備えられている。この駆動伝達系にはさらに,感光体ドラム系列駆動軸83と,現像ローラ系列駆動軸84とが設けられている。感光体ドラム系列駆動軸83を介して,モータ軸82から感光体ドラム80Y,80M,80Cへ駆動が伝達されるようになっている。また,現像ローラ系列駆動軸84を介して,モータ軸82から現像ローラ81Y,81M,81Cへ駆動が伝達されるようになっている。なお図1には現れていないが,この画像形成装置には,ブラック色の感光体ドラムおよび現像ローラへの駆動伝達系も備えられている。
【0017】
図1中の現像ローラ系列駆動軸84には,図2〜図4に示すクラッチ装置1が備えられている。図2は非連結時の正面図であり,図3は連結時の正面図であり,図4は分解斜視図である。クラッチ装置1は,第1ドッキングギア2,第2ドッキングギア3,ガイドピン4,連結部材5,カムホイール6を有している。現像ローラ系列駆動軸(以下,「支持軸」という。)84は,画像形成装置に固定して設けられている。その側面には,ガイドピン4を差し込むためのピン穴85が形成されている。
【0018】
第1ドッキングギア2は,支持軸84に対して,軸方向には固定されており,回転は可能に設けられている。第1ドッキングギア2の一方の端面には,第1噛み合い爪20が形成されている。第1噛み合い爪20は,第1ドッキングギア2における,第2ドッキングギア3側の端面に設けられている。第1ドッキングギア2は,図1中の現像ローラ81Y,81M,81Cに繋がるギアであり,クラッチ装置1の中ではドリブンギアである。
【0019】
第2ドッキングギア3は,支持軸84に対して,軸方向にはスライド可能であり,回転も可能である。第2ドッキングギア3は,第1ドッキングギア2から見て,第1噛み合い爪20の側に位置している。第2ドッキングギア3の一方の端面には,第2噛み合い爪30が形成されている。第2噛み合い爪30は,第2ドッキングギア3における,第1ドッキングギア2側の端面に設けられている。第2ドッキングギア3における第2噛み合い爪30の反対側の端面は,連結部材5と接触する滑り面31である。第2ドッキングギア3は,図1中のモータ軸82に繋がるギアであり,クラッチ装置1の中ではドライブギアである。
【0020】
クラッチ装置1においては,第2ドッキングギア3のスライド移動により,図2の非連結状態と図3の連結状態とを切り替えられるようになっている。すなわち,第2ドッキングギア3が第1ドッキングギア2から遠ざかる向きに移動した状態が,図2の非連結状態である。この非連結状態では,第1噛み合い爪20と第2噛み合い爪30とが噛み合っていない。このため,第1ドッキングギア2と第2ドッキングギア3との間で駆動が伝達されない状態である。
【0021】
一方,第2ドッキングギア3が第1ドッキングギア2に近づく向きに移動した状態が,図3の連結状態である。この連結状態では,第1噛み合い爪20と第2噛み合い爪30とが噛み合っている。このため,第1ドッキングギア2と第2ドッキングギア3とは一体的にしか回転できない状態である。すなわち,第1ドッキングギア2と第2ドッキングギア3との間で駆動が伝達される状態である。
【0022】
なお,第1ドッキングギア2,第2ドッキングギア3ともに,そのギア歯は斜歯である。第2ドッキングギア3の斜歯の向きは,スラスト力の向きが連結解除側となるように設定されている。すなわち,モータ軸82側からの駆動によるスラスト力が,第2ドッキングギア3を,図3の連結状態から図2の非連結状態へ向けて押し付けるようにされている。ただし図2等においては,第1ドッキングギア2の周面のギア歯の図示を省略している。
【0023】
カムホイール6は,支持軸84に対して,軸方向には固定されており,回転は可能に設けられている。カムホイール6は,第2ドッキングギア3から見て第1ドッキングギア2とは反対側に位置する。カムホイール6における第2ドッキングギア3側の面には,支持軸84の周囲の位置に,軸方向カム部60が形成されている。軸方向カム部60は,傾斜面であり,第2ドッキングギア3をスライド移動させる面である。
【0024】
カムホイール6にはさらに,ギア歯61と半月傘部62とを有している。ギア歯61は,駆動源から回転駆動を受けるためのものである。ただしその駆動源は,モータ軸82のモータとは別のものであり,第2ドッキングギア3をスライド移動させることのみを目的とするものである。ギア歯61は通常,ウォームを介してその駆動源から駆動を受けるように配置される。よってカムホイール6は,ウォームホイールとも呼ばれる。
【0025】
半月傘部62は,カムホイール6の回転に伴い位置を変えるものである。半月傘部62は,画像形成装置の本体制御部にてその位置を検知することにより,カムホイール6の回転角度を認識するためのものである。言い替えると半月傘部62は,第2ドッキングギア3の位置を本体制御部に認識させるものである。
【0026】
連結部材5は,第2ドッキングギア3とカムホイール6との間に配置される部材である。連結部材5は図5に示すように,全体としてほぼ円筒形状の部材である。図5に示す連結部材5は,スリーブ部50と,ガイド溝52とを有している。スリーブ部50の内面51は,支持軸84の側面にスライド可能に接触する面である。ガイド溝52は,支持軸84の軸方向と平行に形成されておいる。ガイド溝52には,2つの内壁面53,54が形成されている。内壁面53,54は当然,支持軸84の軸方向と平行である。
【0027】
連結部材5における一方の端面55は,第2ドッキングギア3の滑り面31と摺動可能に接触する滑り面である。連結部材5における他方の端面56は,カムホイール6の軸方向カム部60と摺動可能に接触するカム面である。カム面56は,傾斜面であり,その傾斜の程度は軸方向カム部60の傾斜と合わせられている。
【0028】
ガイドピン4は,図6に示すように,全体としてハンマーのような形状のものである。図6のガイドピン4は,ピン部40と頭部41とを有している。ピン部40は,支持軸84のピン穴85に差し込まれる部分である。頭部41は,連結部材5のガイド溝52の中に位置する部分である。頭部41には,2つの滑り面42,43が形成されている。滑り面42,43は,ガイド溝52の内壁面53,54と摺動可能に接触する面である。滑り面42,43はまた,図6中矢印Xの方向に有限の長さを有している。
【0029】
クラッチ装置1の組み立ては,次のようにして行う。まず,支持軸84のピン穴85に,ガイドピン4のピン部40を差し込む。次いで支持軸84を連結部材5のスリーブ部50に挿入する。そしてガイドピン4の頭部41を支持軸84の軸方向と平行にして,連結部材5を摺動させて頭部41をガイド溝52の中に入れる。そして支持軸84における連結部材5の両側に第2ドッキングギア3とカムホイール6とを取り付ける。最後に支持軸84に第1ドッキングギア2を取り付ければ出来上がりである。
【0030】
この状態ではガイドピン4は,連結部材5の中に隠れており,外部からは見えない。また,ガイドピン4の頭部41の滑り面42,43は,支持軸84の軸方向と平行であり,その方向に有限の長さを有している。また,滑り面42,43と内壁面53,54とは,摺動可能に接触している。これにより連結部材5は,支持軸84の軸方向にはスライドできるが,回転は頭部41とガイド溝52との干渉により阻止されている状態となっている。ここで,滑り面42,43と内壁面53,54との接触は,面接触(ガイドピン4の頭部41から支持軸84の中心を見る方向に見れば図7に示すように線接触)である。
【0031】
上記の構成を有するクラッチ装置1は,次のように動作する。まず,クラッチ装置1が,図2に示した非連結状態にあるものとする。このとき,前述のように第1噛み合い爪20と第2噛み合い爪30とが噛み合っておらず,第1ドッキングギア2と第2ドッキングギア3とが互いに自由な状態にある。このため,図1中のモータ軸82からの駆動の伝達は,第2ドッキングギア3までに止まり,第1ドッキングギア2には及ばない。よって,モータ軸82の回転は現像ローラ81Y,81M,81Cへ伝達されない。
【0032】
この状態からカムホイール6を回転させる。回転の向きは,カムホイール6の軸方向カム部60が連結部材5のカム面56を押し付ける向きである。ここで,連結部材5は前述のように,スライド移動のみ可能で回転はできない。このため連結部材5は,軸方向カム部60に押し上げられて図2中上向きにスライド移動していく。この連結部材5の上昇により,第2ドッキングギア3も押し上げられる。これにより,第1噛み合い爪20と第2噛み合い爪30とが噛み合い,第1ドッキングギア2と第2ドッキングギア3とが一体的に回転する状態となる。
【0033】
この状態が図3の連結状態である。この状態になったらカムホイール6の回転を止める。この状態では,モータ軸82の回転が,クラッチ装置1を介して現像ローラ81Y,81M,81Cへ伝達される。また,この状態では,連結部材5の滑り面55と第2ドッキングギア3の滑り面31とが接触して,回転方向に滑っている。
【0034】
なお,図3の連結状態では前述のように,斜歯によるスラスト力が,第2ドッキングギア3を第1ドッキングギア2から引き離す向きに働く。しかしながら,カムホイール6が停止していることにより,そのような動きを押さえている。前述のようにカムホイール6はウォームで駆動源と結合されているので,スラスト力程度では回転することはない。また,図2の状態と図3の状態とでは,カムホイール6の半月傘部62の位置が異なる。このため画像形成装置の本体制御部は,半月傘部62の位置を検知することにより,クラッチ装置1が図2と図3とのいずれの状態にあるかを認識できる。
【0035】
図3の状態から,カムホイール6を前記と逆向きに回転させると,軸方向カム部60が連結部材5のカム面56から後退していく。すると,第2ドッキングギア3の斜歯のスラスト力により,第2ドッキングギア3および連結部材5が,図3中下向きに移動していく。これにより第1噛み合い爪20と第2噛み合い爪30との噛み合いが外れ,図2の非連結状態になる。図2の状態になったらカムホイール6の回転を止める。
【0036】
以上の動きにおいて,連結部材5には,第2ドッキングギア3との摩擦により,第2ドッキングギア3の回転と同じ向きに回転しようとするトルクが掛かっている。特に,図3の連結状態においては,図2の非連結状態と比べてそのトルクが強い。連結部材5と第2ドッキングギア3との圧接力が,非連結状態よりも連結状態において強いからである。実際には前述のように,ガイドピン4の頭部41と連結部材5のガイド溝52との干渉により回転が阻止されている。
【0037】
連結部材5を回転させない理由は,軸方向カム部60のカム機能のためである。すなわち,連結部材5がカムホイール6とともに回ってしまうと,軸方向カム部60による連結部材5および第2ドッキングギア3のスライド移動ができないことになってしまう。また,カムホイール6の停止中に連結部材5が第2ドッキングギア3につられて回ってしまうと,連結部材5および第2ドッキングギア3のスライド方向の位置が,軸方向カム部60の傾斜により変化してしまう。特に,軸方向カム部60とカム面56とが互いの山を越えるときには,連結部材5および第2ドッキングギア3が瞬間的に踊ってしまうことも考えられる。これらの事態を防ぐために,連結部材5の回転は阻止されているのである。
【0038】
その一方で頭部41とガイド溝52とは,第2ドッキングギア3が回転しているときには常時,上記のトルクによるストレスを受けているのである。特に,クラッチ装置1が図2の非連結状態から図3の連結状態へ切り替えられる瞬間には,ストレスが急激に増大して衝撃を受けることになる。しかしながら本形態のクラッチ装置1では前述のように,頭部41の滑り面42,43とガイド溝52の内壁面53,54とが面接触している。このため,衝撃が面で受け止められて分散されるので,衝撃により具体的な弊害が発生することはない。
【0039】
もし,図6のガイドピン4の代わりに図8のような頭部を持たない従来型のガイドピン9が用いられていると,前記の衝撃が1箇所に集中して掛かることになる。ガイドピン9と内壁面53,54との接触が線接触(ガイドピン9の先端から回転軸の中心を見る方向に見れば図9に示すように点接触)だからである。このために耐久使用により内壁面53,54のうちガイドピン9と接触している箇所が破損することがある。本形態では図6のガイドピン4を用いることにより,このような弊害を排除しているのである。これにより本形態のクラッチ装置1は,耐久性に優れるのである。
【0040】
なお一般的には,図1のような画像形成装置では,現像ローラ81Y,81M,81Cが駆動されるべき期間は,感光体ドラム80Y,80M,80Cが駆動されるべき期間の一部である。すなわち,図10に示すように,まず感光体ドラムの回転が始まり(t1),その後に現像ローラの回転が始まる(t2)。回転終了の際には逆に,現像ローラの回転が先に終了して(t3),それから感光体ドラムの回転が終了する(t4)。このため,図10中のt1からt2までの期間およびt3からt4までの期間において,クラッチ装置1を図2の非連結状態とする。一方,t2からt3までの期間においては,クラッチ装置1を図3の連結状態とする。t1以前の期間およびt4以後の期間においては,駆動源自体を止めてしまえばよい。
【0041】
以上詳細に説明したように本形態では,カムホイール6の軸方向カム部60によるカム作用を第2ドッキングギア3に伝える連結部材5の回転を,ガイドピン4により阻止している。そしてその,切り替え時に衝撃が掛かる部分である,ガイドピン4と連結部材5との接触箇所を,滑り面42,43と内壁面53,54とによる面接触とした。これにより,衝撃が一箇所に集中しないようにして,切り替えを反復しても各部が損傷しないようにした。こうして,非連結状態から連結状態への切り換え時に掛かる回転方向の衝撃を緩和して耐久性を向上させた画像形成装置の駆動伝達装置,およびそれを用いた画像形成装置が実現されている。
【0042】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。むろん,図1に示したY,M,Cの3色の駆動系に限らず,ブラック色の駆動系にも同様に本発明を適用可能である。よって当然に,カラー機に限らずモノクロ機にも適用可能である。
【0043】
例えば各部材の材質は,樹脂または金属など,特段の制限はない。また,第1ドッキングギア2と第2ドッキングギア3とでドライブとドリブンの関係を入れ替えてもよい。また,第1ドッキングギア2と第2ドッキングギア3との互いの接触面の摩擦係数が十分に大きければ,第1噛み合い爪20や第2噛み合い爪30は不要である。また,連結部材5のガイド溝52は,有底でなくてもよい。
【0044】
また,第1ドッキングギア2と第2ドッキングギア3との間に圧縮バネを設けてもよい。圧縮バネがあるとその弾力は,図3の連結状態から図2の非連結状態への切り換え時に,第2ドッキングギア3を押し付ける向きに働く。これにより,上記の説明では第2ドッキングギア3の斜歯のスラスト力によっていた,第2ドッキングギア3を第1ドッキングギア2から引き離す動きが加勢される。その場合には第2ドッキングギア3のギア歯は斜歯でなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施の形態に係る画像形成装置の駆動伝達系を示す構成図である。
【図2】実施の形態に係るクラッチ装置を示す正面図(非連結時)である。
【図3】実施の形態に係るクラッチ装置を示す正面図(連結時)である。
【図4】実施の形態に係るクラッチ装置を示す分解斜視図である。
【図5】実施の形態に係るクラッチ装置における連結部材を示す透視斜視図である。
【図6】実施の形態に係るクラッチ装置におけるガイドピンを示す斜視図である。
【図7】実施の形態に係るクラッチ装置におけるガイドピンの頭部と連結部材の溝部との接触状況を示す正面図である。
【図8】従来のクラッチ装置におけるガイドピンを示す斜視図である。
【図9】従来のクラッチ装置におけるガイドピンと連結部材の溝部との接触状況を示す正面図である。
【図10】実施の形態に係る画像形成装置における感光体ドラムおよび現像ローラの駆動タイミングを示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0046】
1 クラッチ装置
2 第1ドッキングギア
20 第1噛み合い爪
3 第2ドッキングギア
30 第2噛み合い爪
4 ガイドピン
40 ガイドピンのピン部
41 ガイドピンの頭部
42,43 頭部の滑り面
5 連結部材
52 連結部材のガイド溝
53,54 ガイド溝の壁面
56 連結部材のカム面
6 カムホイール
60 軸方向カム部
61 ウォームギア歯
80Y等 感光体ドラム
81Y等 現像ローラ
82 モータ軸
84 支持軸
85 ピン穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側部にピン穴が形成された支持軸と,
前記支持軸に対して軸方向には固定されかつ回転可能に設けられた第1ギアと,
前記支持軸に対して軸方向にスライド可能にかつ回転可能に設けられた第2ギアと,
前記第2ギアから見て前記第1ギアとは反対側に位置し,前記支持軸に対して軸方向には固定されかつ回転可能に設けられ,回転により前記第2ギアを軸方向にスライドさせる軸方向カム部を有するカムホイールと,
前記第2ギアと前記カムホイールとの間に位置し,前記支持軸に対して軸方向にスライド可能に取り付けられ,前記カムホイール側の端部が前記軸方向カム部に接し,軸方向と平行なガイド溝が支持軸側の面に形成された連結部材と,
一端が前記支持軸のピン穴にはめ込まれ,他端が前記ガイド溝の中に位置して前記連結部材の回転を阻止するガイドピンとを有し,
前記第2ギアが前記第1ギアに接近する向きにスライドした状態では,前記第1ギアと前記第2ギアとが接触して一体的に回転することにより,前記第1ギアおよび前記第2ギアを介して駆動源から被駆動部へ回転を伝達し,
前記第2ギアが前記第1ギアから離間する向きにスライドした状態では,駆動源から被駆動部への回転の伝達を遮断する駆動伝達装置において,
前記ガイドピンの他端には,ガイド溝の両内壁面に接するとともに軸方向に有限の長さを有する第1スライド部および第2スライド部が形成されていることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動伝達装置において,
前記第1ギアにおける前記第2ギア側の端面には第1噛み合い爪が形成されており,
前記第2ギアにおける前記第1ギア側の端面には第2噛み合い爪が形成されており,
前記第2ギアが前記第1ギアに接近する向きにスライドした状態では,前記第1噛み合い爪と前記第2噛み合い爪とが噛み合い,
前記第2ギアが前記第1ギアから離間する向きにスライドした状態では,前記第1噛み合い爪と前記第2噛み合い爪との噛み合いが外れることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の駆動伝達装置において,
前記第1ギアが,画像形成装置の現像ローラへ回転駆動を伝達するギアであり,
前記第2ギアが,画像形成装置の感光体用駆動源から回転駆動を受けるギアであることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載の駆動伝達装置において,
前記カムホイールの周面に,カム用駆動源からウォームを介して駆動を受けるウォームギア歯が形成されていることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項5】
側部にピン穴が形成された支持軸と,
前記支持軸に対して軸方向には固定されかつ回転可能に設けられた第1ギアと,
前記支持軸に対して軸方向にスライド可能にかつ回転可能に設けられた第2ギアと,
前記第2ギアから見て前記第1ギアとは反対側に位置し,前記支持軸に対して軸方向には固定されかつ回転可能に設けられ,回転により前記第2ギアを軸方向にスライドさせる軸方向カム部を有するカムホイールと,
前記第2ギアと前記カムホイールとの間に位置し,前記支持軸に対して軸方向にスライド可能に取り付けられ,前記カムホイール側の端部が前記軸方向カム部に接し,軸方向と平行なガイド溝が支持軸側の面に形成された連結部材と,
一端が前記支持軸のピン穴にはめ込まれ,他端が前記ガイド溝の中に位置して前記連結部材の回転を阻止するガイドピンと,
前記第2ギアから回転駆動の伝達を受ける現像ローラと,
感光体と,
前記第1ギアおよび前記感光体を回転駆動する駆動源とを有し,
前記第2ギアが前記第1ギアに接近する向きにスライドした状態では,前記第1ギアと前記第2ギアとが接触して一体的に回転することにより,前記第1ギアおよび前記第2ギアを介して前記駆動源から前記現像ローラへ回転を伝達し,
前記第2ギアが前記第1ギアから離間する向きにスライドした状態では,前記駆動源から前記現像ローラへの回転の伝達を遮断する画像形成装置において,
前記ガイドピンの他端には,ガイド溝の両内壁面に接するとともに軸方向に有限の長さを有する第1スライド部および第2スライド部が形成されていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−19716(P2009−19716A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−183489(P2007−183489)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】