説明

駆動制御装置

【課題】 加速度センサの動作及び取付け方向についての異常の有無を判定することができる駆動制御装置を提供する。
【解決手段】 駆動装置10を介して被駆動体12の動作を制御する駆動制御装置が、被駆動体の位置又は速度を検出する位置又は速度検出手段20,22と、被駆動体に取り付けられ、位置又は速度検出手段とは別に被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段26とに加えて、加速度検出手段からの加速度情報に基づいて加速度検出手段の動作又は被駆動体への取付けについての異常の有無を判定する判定手段130を具備するように構成される。判定手段からの判定情報が異常を示すときには、加速度検出手段からの加速度情報を使用することなく、位置又は速度検出手段からの位置又は速度に基づいて、被駆動体の動作を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置を介して被駆動体の動作を制御する駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被駆動体を駆動する駆動装置を制御する制御装置においては、被駆動体の位置又は速度を感知して、その位置又は速度を制御することが行われている。さらに、本願出願人は、位置センサ又は加速度センサとは別に加速度センサを設け、被駆動体の加速度を感知して、その加速度(又は減速度)を制御することについても現在特許出願中である。その加速度センサは、被駆動体の異常振動を検出する手段を有する場合はあるが、自己の異常や取付け方向の異常を検出する手段を有していない。
【0003】
したがって、加速度センサが壊れると、正常な加速度情報が得られず、被駆動体の動作が不安定になってしまう。また、加速度センサによる加速度の検出方向が被駆動体の移動方向と異なるときにも、やはり、正常な加速度情報が得られず、被駆動体の動作が不安定になってしまう。そして、被駆動体が異常な動作をすることで、被駆動体等が破損する事態に到るおそれもある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、加速度センサで検出される加速度情報に基づいて、加速度センサの動作が正常かどうか、及び加速度センサの取付け方向が正しいかどうかを判定することができる駆動制御装置を提供することにより、駆動システムの安全性の向上に寄与することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明によれば、駆動装置を介して被駆動体の動作を制御する駆動制御装置であって、被駆動体の位置又は速度を検出する位置又は速度検出手段と、被駆動体に取り付けられ、前記位置又は速度検出手段とは別に被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段からの加速度情報に基づいて、前記加速度検出手段の動作又は被駆動体への取付けについての異常の有無を判定する判定手段と、を具備する駆動制御装置が提供される。
【0006】
一つの好適な態様では、前記判定手段は駆動制御装置本体内の信号処理回路上に設けられる。
【0007】
あるいは、前記判定手段は、前記加速度検出手段が形成される回路と同一の回路上に設けられる。
【0008】
一つの好適な態様では、前記判定手段からの判定情報に基づき異常に関する情報を出力して作業者に報知する報知手段が更に具備される。
【0009】
一つの好適な態様では、この駆動制御装置は、前記判定手段からの判定情報が異常を示すときに、前記加速度検出手段からの加速度情報を使用することなく、前記位置又は速度検出手段からの位置又は速度に基づいて、被駆動体の動作を制御する。
【0010】
あるいは、この駆動制御装置は、前記判定手段からの判定情報が異常を示すときに、被駆動体の動作を停止させる。
【0011】
一つの好適な態様では、前記加速度検出手段は、直交する3軸についての加速度X、Y及びZを検出し、前記判定手段は、当該加速度X、Y又はZの値が所定の範囲内にないときに異常と判定する。
【0012】
あるいは、前記加速度検出手段は、直交する3軸についての加速度X、Y及びZを検出し、前記判定手段は、当該加速度の値に基づき演算(X2+Y2+Z21/2を行い、該演算値が所定の範囲内にないときに異常と判定する。
【0013】
あるいは、前記加速度検出手段は、直交する3軸についての加速度X、Y及びZを検出し、前記判定手段は、当該加速度の値に基づき演算X+Y+Zを行い、該演算値が所定の範囲内にないときに異常と判定する。
【0014】
一つの好適な態様では、前記判定手段は、前記加速度検出手段からの出力値に基づく所定の演算による演算値を所定の時間にわたって平均化し、得られる平均値が所定の範囲内にないときに異常と判定する。
【0015】
あるいは、前記判定手段は、前記加速度検出手段からの出力値に基づく所定の演算による演算値が所定の範囲内にない状態が所定の時間以上継続するときに異常と判定する。
【発明の効果】
【0016】
上述のように構成された、本発明による駆動制御装置にあっては、加速度検出手段で検出される加速度情報に基づいて、当該加速度センサの動作が正常かどうか、及び当該加速度センサの取付け方向が正しいかどうかを判定することができるため、駆動システムの安全性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明による駆動制御装置が適用されるシステムの一例を示すブロック図である。同図において、駆動装置としてのモータ10は、ボールネジ14を回転させることによって被駆動体12を直線的に移動させる。駆動制御装置は、制御装置本体100並びに位置センサ20、速度センサ22、電流センサ24及び加速度センサ26を備える。
【0018】
なお、位置センサ20は、被駆動体12の経路上の位置を検出して、その位置検出値を位置情報として出力するスケールである。また、速度センサ22は、モータ10に取り付けられ、被駆動体12の速度を検出して、その速度検出値を速度情報として出力する。また、電流センサ24は、モータ10に流れる電流を検出して、その電流検出値を電流情報として出力する。また、加速度センサ26は、直交する3軸の加速度を検出して、その加速度検出値を加速度情報として出力する。制御装置本体100内の信号処理回路は、検出される位置情報、速度情報、電流情報及び加速度情報に基づき、駆動装置に対する駆動指令としてモータ10に対する移動指令値を演算して出力する。
【0019】
ここで、本発明の理解を容易にすべく、従来技術の一例について説明する。図2は、従来の駆動制御装置における装置本体内信号処理の内容を示すブロック図である。同図に示されるように、制御系は、位置制御ループ、速度制御ループ及び電流制御ループの三つのフィードバック制御ループから構成される。すなわち、外部から入力される位置指令値は補正回路102を経て加算器104において位置検出値と比較され、位置偏差が算出されて位置制御処理部106に供給される。位置制御処理部106は、その位置偏差に基づく、例えば、比例・積分(PI)動作により、速度指令値を算出して出力する。
【0020】
次いで、その速度指令値は補正回路112を経て加算器114において速度検出値と比較され、速度偏差が算出されて速度制御処理部116に供給される。速度制御処理部116は、その速度偏差に基づく、例えば、比例・積分(PI)動作により、電流指令値を算出して出力する。次いで、その電流指令値は補正回路122を経て加算器124において電流検出値と比較され、電流偏差が算出されて電流制御処理部126に供給される。電流制御処理部126は、その電流偏差に基づく、例えば、比例・積分(PI)動作により、モータ10に対する移動指令信号を算出して出力する。
【0021】
そして、補正回路102、補正回路112及び補正回路122は、被駆動体12の加速度(又は減速度)を制御するために、それぞれ、位置指令値、速度指令値及び電流指令値を加速度検出値に基づいて補正するものである。
【0022】
ところで、前述したように、加速度センサ26の動作や取付け方向に異常がある場合には、正常な加速度情報が得られず、被駆動体12の動作が不安定になり、最悪のケースでは、被駆動体12が異常な動作をするという問題がある。そこで、本発明は、かかる異常の有無を判定することができる駆動制御装置を提供しようというものである。
【0023】
図3は、本発明による駆動制御装置の一実施形態における装置本体内信号処理の内容を示すブロック図である。同図に示されるように、この実施形態も、図2に示される処理と同様に、位置制御ループ、速度制御ループ及び電流制御ループの三つのフィードバック制御ループを備えており、これらについては、構成要素に同一の参照符号を付すことにより、その説明を省略する。
【0024】
そして、この実施形態においては、制御装置本体100内の信号処理回路に、加速度情報についての異常判定回路130及び異常情報出力回路132並びに加速度情報遮断用スイッチ134が設けられている。
【0025】
そして、異常判定回路130は、直交する3軸の加速度を検出する加速度センサ26の異常の有無を検出する。具体的には、異常判定回路130は、電源投入時に被駆動体12が停止している状態で、地球の重力加速度が正常に検出されているか、重力方向に対する取付けが正しいかどうかについて、加速度センサ26から出力される加速度検出値に基づき異常の有無を判定する。また、異常判定回路130は、被駆動体12の動作中に、位置指令値と加速度検出値との関係に基づいて、異常の有無を判定する。
【0026】
すなわち、加速度センサ26が直交する3軸についての加速度X、Y及びZを検出するのに応じて、異常判定回路130は、その加速度X、Y又はZの値が所定の範囲内にないときに異常と判定する。
【0027】
あるいは、加速度センサ26が直交する3軸についての加速度X、Y及びZを検出するのに応じて、異常判定回路130は、当該加速度の値に基づき演算(X2+Y2+Z21/2を行い、その演算値が所定の範囲内にないときに異常と判定する。
【0028】
あるいは、加速度センサ26が直交する3軸についての加速度X、Y及びZを検出するのに応じて、異常判定回路130は、当該加速度の値に基づき演算X+Y+Zを行い、その演算値が所定の範囲内にないときに異常と判定する。
【0029】
さらに、異常判定回路130は、加速度センサ26からの出力値に基づく上述の如き所定の演算による演算値を所定の時間にわたって平均化し、得られる平均値が所定の範囲内にないときに異常と判定するようにしてもよい。これにより、判定の信頼度が向上する。
【0030】
あるいは、異常判定回路130は、加速度センサ26からの出力値に基づく上述の如き所定の演算による演算値が所定の範囲内にない状態が所定の時間以上継続するときに異常と判定するようにすることも可能である。この場合にも、判定の信頼度が向上する。
【0031】
そして、異常判定回路130は、加速度センサ26の動作又は取付け方向に異常があると判定した場合、異常情報出力回路132を介してその異常の状態を表示する制御を行うことで、異常の発生を作業者に報知する。さらに、また、異常判定回路130は、加速度情報遮断用スイッチ134を制御して、加速度検出値が補正回路102、112及び122に入力されるのを阻止することで、位置センサ20からの位置情報及び速度センサ22からの速度情報のみに基づく駆動制御が実行されるようにする。あるいは、位置情報又は速度情報のいずれかのみによる制御を実行するようにしてもよい。
【0032】
図4は、本発明による駆動制御装置の他の実施形態における装置本体内信号処理の内容を示すブロック図である。この実施形態も、図2に示される処理と同様に、位置制御ループ、速度制御ループ及び電流制御ループの三つのフィードバック制御ループを備えており、これらについては、構成要素に同一の参照符号を付すことにより、その説明を省略する。
【0033】
この実施形態においては、図3における異常判定回路130が、制御装置本体100内ではなく、加速度センサ26の回路内に設けられる。すなわち、加速度検出回路が形成される回路と同一の回路上に異常判定回路も形成される。そして、異常判定情報が加速度センサ26から制御装置本体100内の信号処理回路に送信されるように構成される。
【0034】
具体的には、加速度センサ26内の異常判定回路は、電源投入時に被駆動体12が停止している状態で、地球の重力加速度が正常に検出されているか、重力方向に対する取付けが正しいかどうかについて、加速度センサ自体の検出値に基づき異常の有無を判定する。具体的な異常判定のための演算方法は、前述した実施形態の場合と同様である。
【0035】
そして、加速度センサ26から、加速度センサ26の動作又は取付け方向に異常があるとの判定情報が、制御装置本体100に送信されてきた場合には、異常情報出力回路132が、その異常の状態を表示する。さらに、この実施形態においては、停止処理回路140が、当該判定情報を受けて、モータ10が被駆動体12を駆動するのを停止させる処理を行うことで、安全性を確保する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明による駆動制御装置が適用されるシステムの一例を示すブロック図である。
【図2】従来の駆動制御装置における装置本体内信号処理の内容を示すブロック図である。
【図3】本発明による駆動制御装置の一実施形態における装置本体内信号処理の内容を示すブロック図である。
【図4】本発明による駆動制御装置の他の実施形態における装置本体内信号処理の内容を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0037】
10 モータ
12 被駆動体
14 ボールネジ
20 位置センサ
22 速度センサ
24 電流センサ
26 加速度センサ
100 制御装置本体
102 補正回路
104 加算器
106 位置制御処理部
112 補正回路
114 加算器
116 速度制御処理部
122 補正回路
124 加算器
126 電流制御処理部
130 異常判定回路
132 異常情報出力回路
134 加速度情報遮断用スイッチ
140 停止処理回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置を介して被駆動体の動作を制御する駆動制御装置であって、
被駆動体の位置又は速度を検出する位置又は速度検出手段と、
被駆動体に取り付けられ、前記位置又は速度検出手段とは別に被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、
前記加速度検出手段からの加速度情報に基づいて、前記加速度検出手段の動作又は被駆動体への取付けについての異常の有無を判定する判定手段と、
を具備する駆動制御装置。
【請求項2】
前記判定手段が、駆動制御装置本体内の信号処理回路上に設けられている、請求項1に記載の駆動制御装置。
【請求項3】
前記判定手段が、前記加速度検出手段が形成される回路と同一の回路上に設けられている、請求項1に記載の駆動制御装置。
【請求項4】
前記判定手段からの判定情報に基づき異常に関する情報を出力して作業者に報知する報知手段を更に具備する、請求項1に記載の駆動制御装置。
【請求項5】
前記判定手段からの判定情報が異常を示すときに、前記加速度検出手段からの加速度情報を使用することなく、前記位置又は速度検出手段からの位置又は速度に基づいて、被駆動体の動作を制御する、請求項1に記載の駆動制御装置。
【請求項6】
前記判定手段からの判定情報が異常を示すときに、被駆動体の動作を停止させる、請求項1に記載の駆動制御装置。
【請求項7】
前記加速度検出手段は、直交する3軸についての加速度X、Y及びZを検出し、前記判定手段は、当該加速度X、Y又はZの値が所定の範囲内にないときに異常と判定する、請求項1に記載の駆動制御装置。
【請求項8】
前記加速度検出手段は、直交する3軸についての加速度X、Y及びZを検出し、前記判定手段は、当該加速度の値に基づき演算(X2+Y2+Z21/2を行い、該演算値が所定の範囲内にないときに異常と判定する、請求項1に記載の駆動制御装置。
【請求項9】
前記加速度検出手段は、直交する3軸についての加速度X、Y及びZを検出し、前記判定手段は、当該加速度の値に基づき演算X+Y+Zを行い、該演算値が所定の範囲内にないときに異常と判定する、請求項1に記載の駆動制御装置。
【請求項10】
前記判定手段は、前記加速度検出手段からの出力値に基づく所定の演算による演算値を所定の時間にわたって平均化し、得られる平均値が所定の範囲内にないときに異常と判定する、請求項1に記載の駆動制御装置。
【請求項11】
前記判定手段は、前記加速度検出手段からの出力値に基づく所定の演算による演算値が所定の範囲内にない状態が所定の時間以上継続するときに異常と判定する、請求項1に記載の駆動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−155180(P2006−155180A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−344080(P2004−344080)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】