説明

駆動力伝達装置及びこれを備えた画像形成装置

【課題】駆動入力部と駆動出力部とを回転軸部とともに一体成形した駆動力伝達部材を用いる場合に、熱膨張による駆動力伝達部材の回転負荷の増大を抑制する。
【解決手段】側板110a,110bに対して大径ボス部133bと小径ボス部133cとで回転自在に支持された感光体ギヤ133の線膨張係数がスリーブ軸受部材134bの線膨張係数よりも大きい材料で成形され、基準温度におけるスリーブ軸受部材の内半径R1と感光体ギヤにおける回転軸部の外半径r1との差Δx1が、下記の式(1)を満たすように構成した。
Δx1 > r1×Δt×a−R1×Δt×b ・・・(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体等の駆動対象に対して駆動源からの回転駆動力を伝達する駆動力伝達装置、及び、これを備えた、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の駆動力伝達装置においては、ローラ等の回転体(駆動対象部材)が着脱可能な構成である場合、一般に、モータ等の駆動源からの回転駆動力の入力を受ける歯車(駆動入力部)と、この歯車に取り付けられる回転軸と、この回転軸に取り付けられかつ回転体の被結合部と結合する結合部材(カップリング)とから構成される。このような構成の駆動力伝達装置を開示した文献としては、例えば特許文献1がある。このような構成において、回転体に生じる回転速度変動は、歯車の影響と結合部材の影響によるところが大きい。歯車の影響としては、主に、歯車自体の偏心、歯車の回転軸への取り付け偏心誤差が挙げられる。また、結合部材の影響としては、主に、結合部材自体の偏心、結合部材の回転軸への取り付け偏心誤差、結合部材と被結合部との嵌め合い隙間が挙げられる。
【0003】
これらの影響のうち、歯車自体の偏心や結合部材自体の偏心の影響については、成形精度を高めることにより抑制することになる。
また、結合部材と被結合部との嵌め合い隙間の影響については、形状誤差を少なく抑えて成形でき、かつ、着脱が容易なスプライン係合を採用することで、抑制できる。なお、ここでいうスプライン係合とは、回転体の回転軸及び駆動力伝達部材のボス部のいずれか一方をスプライン軸とし、これを他方のスプライン穴に挿入することで、スプライン軸上の外歯とスプライン穴の内歯とが噛み合って係合するものである。
また、歯車や結合部材の回転軸への取り付け偏心誤差の影響については、歯車や結合部材を回転軸へガタつきなく取り付けることにより抑制することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2002−328499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、歯車や結合部材については、振動、騒音、価格の面で有利なことから、樹脂で成形されることが多く、一方で、回転軸については、ねじり剛性で有利なことから金属で成形されることが多い。しかし、このような材料を用いて各部材を成形した場合、各部材の間で線膨張係数の差があるため、使用環境の温度変化や装置内部におけるモータ等の熱源からの熱による影響で、回転軸と歯車との取り付け部分や回転軸と結合部材との取り付け部分に隙間が生じてしまう。その結果、回転軸に対して歯車や結合部材がガタついてしまい、歯車や結合部材が偏心回転し、回転体に回転速度変動が発生するという不具合があった。
【0006】
そこで、本発明者らは、回転軸と歯車と結合部材を同一材料(樹脂)で一体成形した駆動力伝達部材を用いる駆動力伝達装置を開発した。この駆動力伝達装置によれば、駆動力伝達部材が熱膨張しても、上述したようなガタつきが生じることがないので、歯車や結合部材の偏心回転を十分に抑制することができ、上記不具合を解消できる。
ところが、このような駆動力伝達装置では、次のような新たな問題が生じることが判明した。
【0007】
歯車に入力された回転駆動力を結合部材から駆動対象部材へ伝達するためには、上述した駆動力伝達部材を装置内において回転自在な状態で支持しなければならない。樹脂で成形された駆動力伝達部材を回転自在に支持するためには、少なくとも2つの支持箇所で、装置側板等の支持部材に対して金属製のスリーブ軸受部材を介して回転自在に支持する必要がある。このようなスリーブ軸受部材を用いることで、駆動力伝達部材の回転軸部の外周面とスリーブ軸受部材の内周面とを長期にわたって低摩擦で摺動させることができ、通常は、駆動力伝達部材を長期にわたって支持部材で回転自在に支持できる。しかし、駆動力伝達部材を構成する樹脂は、スリーブ軸受部材を構成する金属に比べて、線膨張係数が大きい。そのため、使用環境の温度変化や装置内部におけるモータ等の熱源からの熱による影響で駆動力伝達部材が熱膨張すると、駆動力伝達部材の回転軸部の外周面とスリーブ軸受部材の内周面との隙間が小さくなり、これらの間の摩擦負荷が増大して駆動力伝達部材の回転負荷が増大し、モータが過負荷で停止してしまう事態が起こり得る。
【0008】
このような事態を防ぐためには、駆動力伝達部材の回転軸部上における支持箇所の径をなるべく小さくして、駆動力伝達部材が熱膨張したときの回転軸部の径変化を小さくすることが望まれる。しかし、上記結合部材や上記歯車の構成として、回転軸部の同軸上に配置される係合対象と回転軸部の一端部で係合する構成(例えばスプライン係合する構成)を採用した駆動力伝達部材においては、その一端部の強度を確保するなどの目的で、その一端部の径を十分大きくする必要がある。そのため、その一端部(大径部)側における回転軸部の支持箇所においては、駆動力伝達部材が熱膨張したときの回転軸部の径変化が大きいものとなってしまい、モータが過負荷で停止してしまう事態が起こった。
また、大径部側の支持箇所においては、駆動力伝達部材の回転軸部の外周面とスリーブ軸受部材の内周面との間の摩擦熱で駆動力伝達部材が溶けて駆動力伝達部材の回転軸部とスリーブ軸受部材とが溶着してしまう事態も起こった。この場合、スリーブ軸受部材が支持部材に対して回転規制されていると(スリーブ軸受部材が熱膨張してスリーブ軸受部材と支持部材との間の摩擦力が増大し、これらが相対的に回転できない状態も含む。)、駆動力伝達部材が回転できなくなり、モータが過負荷で停止してしまう。
【0009】
以上の問題は、駆動力伝達部材が樹脂で成形され、スリーブ軸受部材が金属で成形されている場合に限らず、駆動力伝達部材が、スリーブ軸受部材の線膨張係数よりも線膨張係数が大きい材料で成形されている場合には、同様に生じ得る。
また、以上の問題は、駆動力伝達部材とスリーブ軸受部材との間での問題であるが、スリーブ軸受部材と支持部材との間でも同様の問題が生じる。すなわち、スリーブ軸受部材が、支持部材の線膨張係数よりも線膨張係数が大きい材料で成形されていると、スリーブ軸受部材の熱膨張により、これらの間の摩擦負荷が増大し、モータが過負荷で停止してしまう事態が起こり得る。また、スリーブ軸受部材が駆動力伝達部材に対して回転規制されていると(駆動力伝達部材が熱膨張して駆動力伝達部材とスリーブ軸受部材とが相対的に回転できない状態も含む。)、駆動力伝達部材が回転できなくなり、モータが過負荷で停止するおそれもある。
【0010】
本発明は、以上の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、駆動入力部と駆動出力部とを回転軸部とともに一体成形した駆動力伝達部材を用いる場合に、熱膨張による駆動力伝達部材の回転負荷の増大を抑制し得る駆動力伝達装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、一端が大径部で他端が小径部で形成された回転軸部と、駆動源に接続された駆動部と係合して回転駆動力の入力を受ける駆動入力部と、駆動対象部材と係合して該駆動入力部に入力された回転駆動力を該駆動対象部材へ出力する駆動出力部とが一体成形され、該駆動入力部及び該駆動出力部の一方が、上記回転軸部における大径部側の端部に形成され、該回転軸部の同軸上に配置される係合対象と係合するものであり、他方が該回転軸部の外周部に形成されるものである駆動力伝達部材と、該駆動力伝達部材の回転軸部を上記大径部の支持箇所及び上記小径部の支持箇所で回転自在に支持する支持部材と、該駆動力伝達部材の回転軸部における大径部の支持箇所と該支持部材との間に取り付けられ、該支持部材に対する該駆動力伝達部材の回転方向への回転が規制されたスリーブ軸受部材とを備えた駆動力伝達装置において、上記駆動力伝達部材は、線膨張係数が上記スリーブ軸受部材の線膨張係数よりも大きい材料で成形されたものであり、基準温度における上記スリーブ軸受部材の内半径R1と上記駆動力伝達部材における回転軸部の外半径r1との差Δx1が、下記の式(1)を満たすように構成したことを特徴とするものである。
Δx1>r1×Δt×a−R1×Δt×b ・・・(1)
ただし、「Δt」は上記基準温度に対する駆動力伝達装置の温度の最大変化量であり、「a」はスリーブ軸受部材の線膨張係数であり、「b」は駆動力伝達部材の線膨張係数である。
また、請求項2の発明は、請求項1の駆動力伝達装置において、上記回転軸部における大径部側の端部に形成され、該回転軸部の同軸上に配置される係合対象と係合する部分は、スプライン軸をスプライン穴に挿入することでスプライン軸上の外歯とスプライン穴の内歯とが噛み合ってスプライン係合する構成であることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の駆動力伝達装置において、上記2つの支持箇所をそれぞれ支持する各支持部材は、一体成形されていない別部材であり、上記差Δx1が下記の式(2)を満たすように構成したことを特徴とするものである。
Δx1>r1×Δt×a−R1×Δt×b+y×(c/d) ・・・(2)
ただし、「y」は上記2つの支持箇所間における偏心量であり、「c」は上記スプライン係合する部分と該部分に近い側の支持箇所との距離であり、「d」は上記スプライン係合する部分と該部分から遠い側の支持箇所との距離である。
また、請求項4の発明は、一端が大径部で他端が小径部で形成された回転軸部と、駆動源に接続された駆動部と係合して回転駆動力の入力を受ける駆動入力部と、駆動対象部材と係合して該駆動入力部に入力された回転駆動力を該駆動対象部材へ出力する駆動出力部とが一体成形され、該駆動入力部及び該駆動出力部の一方が、上記回転軸部における大径部側の端部に形成され、該回転軸部の同軸上に配置される係合対象と係合するものであり、他方が該回転軸部の外周部に形成されるものである駆動力伝達部材と、該駆動力伝達部材の回転軸部を上記大径部の支持箇所及び上記小径部の支持箇所で回転自在に支持する支持部材と、該駆動力伝達部材の回転軸部における大径部の支持箇所と該支持部材との間に取り付けられるスリーブ軸受部材とを備えた駆動力伝達装置において、上記駆動力伝達部材は、線膨張係数が、上記大径部の支持箇所を支持する支持部材の線膨張係数よりも大きい材料で成形されたものであり、基準温度におけるスリーブ軸受部材が取り付けられる支持部材部分の内半径R2と上記駆動力伝達部材における回転軸部の外半径r2との差Δx2が、下記の式(3)を満たすように構成したことを特徴とするものである。
Δx2>r2×Δt×e−R2×Δt×b ・・・(3)
ただし、「Δt」は上記基準温度に対する駆動力伝達装置の温度の最大変化量であり、「e」は大径部の支持箇所を支持する支持部材の線膨張係数であり、「b」は駆動力伝達部材の線膨張係数である。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の駆動力伝達装置において、上記Δtは、上記駆動力伝達装置の最大温度が50℃である場合のものであることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、駆動源からの回転駆動力を駆動力伝達装置を用いて像担持体に伝達して該像担持体を表面移動させ、該像担持体の表面に画像を形成して該画像を最終的に記録材上に転写することにより、該記録材上に画像を形成する画像形成装置において、上記駆動力伝達装置として、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の駆動力伝達装置を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6の画像形成装置において、上記像担持体を複数設け、像担持体表面に平行な方向であって像担持体表面移動方向に対して直交する方向が互いに一致するように各像担持体を配置し、各像担持体の表面に形成される画像を重ね合わせた最終画像を記録材上に転写することにより、該記録材上に画像を形成することを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項7の画像形成装置において、上記駆動力伝達装置として、請求項3の駆動力伝達装置を用い、各像担持体に対応する各駆動力伝達部材を支持する支持部材が、各駆動力伝達部材間で同一のものであり、上記「y」は、各駆動力伝達部材についての上記2つの支持箇所間における偏心量のうち最大の偏心量であることを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項6乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記像担持体は、画像形成装置本体に対して着脱自在に構成されたプロセスカートリッジ内に位置決めされていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明においては、駆動力伝達装置の温度が通常想定される範囲内において最も高い温度になった状況下でも、熱膨張した駆動力伝達部材の回転軸部の大径部とこれに取り付けられるスリーブ軸受部材との隙間が確保される。したがって、通常想定される範囲内では、熱膨張による駆動力伝達部材の回転負荷の増大が抑制される。
ここで、駆動力伝達装置の温度が比較的低温である状況下においては、駆動力伝達部材の回転軸部の大径部とこれに取り付けられるスリーブ軸受部材との隙間が比較的広くなるので、ガタつきが大きくなるおそれがある。しかし、本発明では、回転軸部の大径部側の端部には、この回転軸部の同軸上に配置される係合対象と係合する駆動入力部又は駆動出力部が形成される。そのため、係合対象を別途ガタつき無く支持しておくことで、この係合対象と係合した状態では回転軸部の大径部側の端部のガタつきを抑えることができる。また、回転軸部の小径部は、小径なので、熱膨張による径変化が少なく、従来同様、ガタつき無く軸受を介して支持部材で支持しても駆動力伝達部材の回転負荷が増大するおそれが少ない。よって、本発明によれば、回転軸部の大径部の端部に形成される駆動入力部又は駆動出力部が係合対象(駆動部又は駆動対象部材)と係合した状態では、駆動力伝達部材を安定して位置決めでき、駆動力伝達部材をガタつき無く支持することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上、本発明によれば、駆動入力部と駆動出力部とを回転軸部とともに一体成形した駆動力伝達部材を用いる場合に、熱膨張による駆動力伝達部材の回転負荷の増大を抑制することが可能となるという優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を、画像形成装置としての電子写真方式のプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)に適用した一実施形態について説明する。
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。
図1は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。
同図のプリンタは、トナー像形成手段であるプロセスユニットとして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック(以下、Y、C、M、Kと記す。)用の4つのプロセスユニット1Y,1C,1M,1Kを備えている。これらは、画像を形成する画像形成物質として、互いに異なる色のトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっている。Yトナー像を生成するためのプロセスユニット1Yを例にすると、これは図2に示すように、感光体ユニット2Yと現像ユニット7Yとを有している。これら感光体ユニット2Y及び現像ユニット7Yは、図3に示すようにプロセスユニット1Yとして一体的にプリンタ本体に対して着脱される。ただし、プリンタ本体から取り外した状態では、図4に示すように現像ユニット7Yを図示しない感光体ユニットに対して着脱することができる。なお、感光体ユニット2Y及び現像ユニット7Yを互いに着脱できないような一体構成としてもよい。
【0015】
プロセスユニット1Yには、プリンタ本体に対して着脱する際の基準として、感光体両端部のフランジに設けた穴が位置決め主基準部として設けられている。また、プロセスユニット1Yには、着脱方向の手前側と奥側のケーシングに図示しない位置決め従基準部が設けられている。現像ユニット7Yとともに感光体ユニット2Yをプリンタ本体に装着する場合、それらの基準部をプリンタ本体に設けた被係合部に係合させることにより、感光体ユニット2Yをプリンタ本体内の所定の装着位置に確実に位置決めできるようになっている。
【0016】
先に示した図2において、感光体ユニット2Yは、ドラム状の感光体3Y、ドラムクリーニング装置4Y、図示しない除電装置、帯電装置5Yなどを有している。
【0017】
帯電手段としての帯電装置5Yは、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される感光体3Yの表面を一様帯電させる。図2には、図示しない電源によって帯電バイアスが印加されながら図中反時計回りに回転駆動される帯電ローラ6Yを、感光体3Yに近接させることで、感光体3Yを一様帯電させる方式の帯電装置5Yを示した。帯電ローラ6Yの代わりに、帯電ブラシを当接させるものを用いてもよい。また、スコロトロンチャージャーのように、チャージャー方式によって感光体3Yを一様帯電させるものを用いてもよい。帯電装置5Yによって一様帯電させられた感光体3Yの表面は、後述する光書込ユニットから発せられるレーザー光によって露光走査されてY用の静電潜像を担持する。
【0018】
現像手段としての現像ユニット7Yは、第1搬送スクリュー8Yが配設された第1剤収容部9Yを有している。また、透磁率センサからなるトナー濃度センサ(以下、トナー濃度センサという)10Y、第2搬送スクリュー11Y、現像ロール12Y、ドクターブレード13Yなどが配設された第2剤収容部14Yも有している。これら2つの剤収容部内には、磁性キャリアとマイナス帯電性のYトナーとからなる図示しないY現像剤が内包されている。第1搬送スクリュー8Yは、図示しない駆動手段によって回転駆動させられることで、第1剤収容部9Y内のY現像剤を図紙面に直交する方向における手前側から奥側へと搬送する。そして、第1剤収容部9Yと第2剤収容部14Yとの間の仕切壁に設けられた図示しない連通口を経て、第2剤収容部14Y内に進入する。
【0019】
第2剤収容部14Y内の第2搬送スクリュー11Yは、図示しない駆動手段によって回転駆動させられることで、Y現像剤を図中奥側から手前側へと搬送する。搬送途中のY現像剤は、第1剤収容部14Yの底部に固定されたトナー濃度センサ10Yによってそのトナー濃度が検知される。このようにしてY現像剤を搬送する第2搬送スクリュー11Yの図中上方には、現像ロール12Yが第2搬送スクリュー11Yと平行な姿勢で配設されている。この現像ロール12Yは、図中反時計回り方向に回転駆動させられる非磁性パイプからなる現像スリーブ15Y内にマグネットローラ16Yを内包している。第2搬送スクリュー11Yによって搬送されるY現像剤の一部は、マグネットローラ16Yの発する磁力によって現像スリーブ15Y表面に汲み上げられる。そして、現像剤担持体としての現像スリーブ15Yと所定の間隙を保持するように配設されたドクターブレード13Yによってその層厚が規制された後、感光体3Yと対向する現像領域まで搬送され、感光体3Y上のY用の静電潜像にYトナーを付着させる。この付着により、感光体3Y上にYトナー像が形成される。現像によってYトナーを消費したY現像剤は、現像ロール12Yの現像スリーブ15Yの回転に伴って第2搬送スクリュー11Y上に戻される。そして、図中手前端まで搬送されると、図示しない連通口を経て第1剤収容部9Y内に戻る。
【0020】
トナー濃度センサ10YによるY現像剤の透磁率の検知結果は、電圧信号として図示しない制御部に送られる。Y現像剤の透磁率は、Y現像剤のYトナー濃度と相関を示すため、トナー濃度センサ10YはYトナー濃度に応じた値の電圧を出力することになる。上記制御部はRAMを備えており、この中にトナー濃度センサ10Yからの出力電圧の目標値であるY用Vtrefや、他の現像ユニットに搭載されたC、M、K用のトナー濃度センサからの出力電圧の目標値であるC用Vtref、M用Vtref、K用Vtrefのデータを格納している。Y用の現像ユニット7Yについては、トナー濃度センサ10Yからの出力電圧の値とY用Vtrefを比較し、図示しないY用のトナー供給装置を比較結果に応じた時間だけ駆動させる。この駆動により、現像に伴うYトナー消費によってYトナー濃度を低下させたY現像剤に対し、第1剤収容部9Yで適量のYトナーが供給される。このため、第2剤収容部14Y内のY現像剤のYトナー濃度が所定の範囲内に維持される。他色用のプロセスユニット1C,1M,1K内における現像剤についても、同様のトナー供給制御が実施される。
【0021】
像担持体としての潜像担持体である感光体3Y上に形成されたYトナー像は、後述する像担持体としての中間転写体である中間転写ベルトに中間転写される。感光体ユニット2Yのドラムクリーニング装置4Yは、中間転写工程を経た後の感光体3Yの表面に残留したトナーを除去する。これによってクリーニング処理が施された感光体3Yの表面は、図示しない除電装置によって除電される。この除電により、感光体3Yの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。先に示した図1において、他色用のプロセスユニット1C,1M,1Kにおいても、同様にして感光体3C,3M,3K上にC、M、Kトナー像が形成されて、中間転写ベルト上に中間転写される。
【0022】
プロセスユニット1Y,1C,1M,1Kの図中下方には、光書込ユニット20が配設されている。潜像形成手段としての光書込ユニット20は、画像情報に基づいて発したレーザー光Lを、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Kの感光体3Y,3C,3M,3Kに照射する。これにより、感光体3Y,3C,3M,3K上にY、C、M、K用の静電潜像が形成される。なお、光書込ユニット20は、光源から発したレーザー光Lを、モータによって回転駆動されるポリゴンミラー21によって偏向させながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体3Y,3C,3M,3Kに照射するものである。かかる構成のものに代えて、LDEアレイによる光走査を行うものを採用することもできる。
【0023】
光書込ユニット20の下方には、第1給紙カセット31、第2給紙カセット32が鉛直方向に重なるように配設されている。これら給紙カセット内には、それぞれ、記録材としての記録紙Pが複数枚重ねられた記録紙束の状態で収容されており、一番上の記録紙Pには、第1給紙ローラ31a、第2給紙ローラ32aがそれぞれ当接している。第1給紙ローラ31aが図示しない駆動手段によって図中反時計回りに回転駆動させられると、第1給紙カセット31内の一番上の記録紙Pが、カセットの図中右側方において鉛直方向に延在するように配設された給紙路33に向けて排出される。また、第2給紙ローラ32aが図示しない駆動手段によって図中反時計回りに回転駆動させられると、第2給紙カセット32内の一番上の記録紙Pが、給紙路33に向けて排出される。給紙路33内には、複数の搬送ローラ対34が配設されており、給紙路33に送り込まれた記録紙Pは、これら搬送ローラ対34のローラ間に挟み込まれながら、給紙路33内を図中下側から上側に向けて搬送される。
【0024】
給紙路33の末端には、レジストローラ対35が配設されている。レジストローラ対35は、記録紙Pを搬送ローラ対34から送られてくる記録紙Pをローラ間に挟み込むとすぐに、両ローラの回転を一旦停止させる。そして、記録紙Pを適切なタイミングで後述の2次転写ニップに向けて送り出す。
【0025】
各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Kの図中上方には、中間転写ベルト41を張架しながら図中反時計回りに表面移動させる転写ユニット40が配設されている。転写手段としての転写ユニット40は、中間転写ベルト41のほかベルトクリーニングユニット42、第1ブラケット43、第2ブラケット44などを備えている。また、4つの1次転写ローラ45Y,45C,45M,45K、2次転写バックアップローラ46、駆動ローラ47、補助ローラ48、テンションローラ49なども備えている。中間転写ベルト41は、これら8つのローラに張架されながら、駆動ローラ47の回転駆動によって図中反時計回りに無端移動させられる。4つの1次転写ローラ45Y,45C,45M,45Kは、このように無端移動させられる中間転写ベルト41を感光体3Y,3C,3M,3Kとの間に挟み込んでそれぞれ1次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト41の裏面(ループ内周面)にトナーとは逆極性(例えばプラス)の転写バイアスを印加する。中間転写ベルト41は、その無端移動に伴ってY、C、M、K用の1次転写ニップを順次通過していく過程で、そのおもて面に感光体3Y,3C,3M,3K上のY、C、M、Kトナー像が重ね合わせて1次転写される。これにより、中間転写ベルト41上に最終画像である4色重ね合わせトナー像(以下、「4色トナー像」という。)が形成される。
【0026】
2次転写バックアップローラ46は、中間転写ベルト41のループ外側に配設された2次転写ローラ50との間に中間転写ベルト41を挟み込んで2次転写ニップを形成している。先に説明したレジストローラ対35は、ローラ間に挟み込んだ記録紙Pを、中間転写ベルト41上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで、2次転写ニップに向けて送り出す。中間転写ベルト41上の4色トナー像は、2次転写バイアスが印加される2次転写ローラ50と2次転写バックアップローラ46との間に形成される2次転写電界や、ニップ圧の影響により、2次転写ニップ内で記録紙Pに一括2次転写される。そして、記録紙Pの白色と相まって、フルカラートナー像となる。
【0027】
2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト41には、記録紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、ベルトクリーニングユニット42によってクリーニングされる。なお、ベルトクリーニングユニット42は、クリーニングブレード42aを中間転写ベルト41のおもて面に当接させており、これによってベルト上の転写残トナーを掻き取って除去するものである。
【0028】
なお、転写ユニット40の第1ブラケット43は、図示しないソレノイドの駆動のオンオフに伴って、補助ローラ48の回転軸線を中心にして所定の回転角度で揺動するようになっている。本画像形成システムのプリンタは、モノクロ画像を形成する場合には、前述のソレノイドの駆動によって第1ブラケット43を図中反時計回りに少しだけ回転させる。この回転により、補助ローラ48の回転軸線を中心にしてY、C、M用の1次転写ローラ45Y,45C,45Mを図中反時計回りに公転させることで、中間転写ベルト41をY、C、M用の感光体3Y,3C,3Mから離間させる。そして、4つのプロセスユニット1Y,1C,1M,1Kのうち、K用のプロセスユニット1Kだけを駆動して、モノクロ画像を形成する。これにより、モノクロ画像形成時にY、C、M用のプロセスユニットを無駄に駆動させることによるそれらプロセスユニットの消耗を回避することができる。
【0029】
2次転写ニップの図中上方には、定着ユニット60が配設されている。この定着ユニット60は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する加圧加熱ローラ61と、定着ベルトユニット62とを備えている。定着ベルトユニット62は、定着部材としての定着ベルト64、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する加熱ローラ63、テンションローラ65、駆動ローラ66、図示しない温度センサ等を有している。そして、無端状の定着ベルト64を加熱ローラ63、テンションローラ65及び駆動ローラ66によって張架しながら、図中反時計回り方向に無端移動させる。この無端移動の過程で、定着ベルト64は加熱ローラ63によって裏面側から加熱される。このようにして加熱される定着ベルト64の加熱ローラ63掛け回し箇所には、図中時計回り方向に回転駆動される加圧加熱ローラ61がおもて面側から当接している。これにより、加圧加熱ローラ61と定着ベルト64とが当接する定着ニップが形成されている。
【0030】
定着ベルト64のループ外側には、図示しない温度センサが定着ベルト64のおもて面と所定の間隙を介して対向するように配設されており、定着ニップに進入する直前の定着ベルト64の表面温度を検知する。この検知結果は、図示しない定着電源回路に送られる。定着電源回路は、温度センサによる検知結果に基づいて、加熱ローラ63に内包される発熱源や、加圧加熱ローラ61に内包される発熱源に対する電源の供給をオンオフ制御する。これにより、定着ベルト64の表面温度が約140[°]に維持される。
【0031】
先に示した図1において、2次転写ニップを通過した記録紙Pは、中間転写ベルト41から分離した後、定着ユニット60内に送られる。そして、定着ユニット60内の定着ニップに挟まれながら図中下側から上側に向けて搬送される過程で、定着ベルト64によって加熱されたり、押圧されたりして、フルカラートナー像が定着させられる。
【0032】
このようにして定着処理が施された記録紙Pは、排紙ローラ対67のローラ間を経た後、機外へと排出される。プリンタ本体の筺体の上面には、スタック部68が形成されており、排紙ローラ対67によって機外に排出された記録紙Pは、このスタック部68に順次スタックされる。
【0033】
転写ユニット40の上方には、Y、C、M、Kトナーを収容する4つのトナーカートリッジ100Y,100C,100M,100Kが配設されている。トナーカートリッジ100Y,100C,100M,100K内のY、C、M、Kトナーは、プロセスユニット1Y,1C,1M,1Kの現像ユニット7Y,7C,7M,7Kに適宜供給される。これらトナーカートリッジ100Y,100C,100M,100Kは、プロセスユニット1Y,1C,1M,1Kとは独立してプリンタ本体に脱着可能である。
【0034】
図5は、プリンタの筺体内に固定された駆動力伝達装置である本体側駆動伝達部を示す斜視図である。
図6は、この本体側駆動伝達部を上方から示す平面図である。
プリンタの筺体内には、本体フレームを構成する支持部材としての第1側板が設けられており、これには4つのプロセス駆動モータ120Y,120C,120M,120Kが固定されている。駆動源としてのプロセス駆動モータ120Y,120C,120M,120Kの回転軸には、原動ギヤ121Y,121C,121M,121Kがその回転軸と同一軸線上で回転するように接続されている。プロセス駆動モータ120Y,120C,120M,120Kは、DCブラシレスモータの一種であるDCサーボモータや、ステッピングモータなどからなる。
【0035】
プロセス駆動モータ120Y,120C,120M,120Kの回転軸の下方には、上記第1側板に突設させられた図示しない固定軸に係合しながら摺動回転可能な現像ギヤ122Y,122C,122M,122Kが配設されている。この現像ギヤ122Y,122C,122M,122Kは、互いに同じ回転軸線上で回転する第1ギヤ部123Y,123C,123M,123Kと第2ギヤ部124Y,124C,124M,124Kとを有している。第2ギヤ部124Y,124C,124M,124Kの方が、第1ギヤ部123Y,123C,123M,123Kよりもプロセス駆動モータ120Y,120C,120M,120Kの回転軸の先端側に位置している。現像ギヤ122Y,122M,122C,122Kは、その第1ギヤ部123Y,123M,123C,123Kをプロセス駆動モータ120Y,120C,120M,120Kの原動ギヤ121Y,121C,121M,121Kに噛み合わせながら、プロセス駆動モータ120Y,120C,120M,120Kの回転によって固定軸上で摺動回転する。
【0036】
プロセス駆動モータ120Y,120C,120M,120Kの回転軸の上方には、図示を省略した駆動力伝達部材としての感光体ギヤ133Y,133C,133M,133Kが配設されている。原動ギヤ121Y,121C,121M,121Kと感光体ギヤ133Y,133C,133M,133Kとの減速比は、例えば1:20になっている。原動ギヤから感光体ギヤに至るまでの減速段数を1段としたのは、部品点数を少なくし低コストにするためのほか、ギヤを2つにして噛み合い誤差や偏心による伝達誤差の要因を少なくする狙いからである。1段減速にしたことで、1:20という比較的大きい減速比では、感光体ギヤが感光体よりも大径となる。このような大径の感光体ギヤを用いることで、噛み合いに対応する感光体表面上でのピッチ誤差を小さくして、副走査方向の印字濃度むら(バンディング)の影響を少なくするという狙いもある。減速比は、感光体の目標速度とモータ特性との関係から、高効率、高回転精度が得られる速度領域に基づいて決定される。
なお、感光体ギヤ133Y,133C,133M,133Kの詳細な構成については後述する。
【0037】
現像ギヤ122Y,122C,122M,122Kの左側方には、図示しない固定軸に係合しながら摺動回転する第1中継ギヤ125Y,125C,125M,125Kが配設されている。これらは、現像ギヤ122Y,122C,122M,122Kの第2ギヤ部124Y,124C,124M,124Kに噛み合うことで、現像ギヤ122Y,122C,122M,122Kから回転駆動力を受けて、固定軸上で摺動回転する。第1中継ギヤ125Y,125C,125M,125Kには、駆動伝達方向上流側で第2ギヤ部124Y,124C,124M,124Kが噛み合っているほかに、駆動伝達方向下流側でクラッチ入力ギヤ126Y,126C,126M,126Kが噛み合っている。これらクラッチ入力ギヤ126Y,126C,126M,126Kは、現像クラッチ127Y,127C,127M,127Kに支持されている。現像クラッチ127Y,127C,127M,127Kは、図示しない制御部によって電源供給がオンオフ制御されるのに伴って、クラッチ入力ギヤ126Y,126C,126M,126Kの回転駆動力をクラッチ軸に繋いだり、クラッチ入力ギヤ126Y,126C,126M,126Kを空転させたりする。現像クラッチ127Y,127C,127M,127Kのクラッチ軸の先端側には、クラッチ出力ギヤ128Y,128C,128M,128Kが固定されている。現像クラッチ127Y,127C,127M,127Kに電源が供給されると、クラッチ入力ギヤ126Y,126C,126M,126Kの回転駆動力がクラッチ軸に繋がれて、クラッチ出力ギヤ128Y,128C,128M,128Kが回転する。これに対し、現像クラッチ127Y,127C,127M,127Kへの電源供給が切られると、たとえプロセス駆動モータ120Y,120C,120M,120Kが回転していても、クラッチ入力ギヤ126Y,126C,126M,126Kがクラッチ軸上で空転するため、クラッチ出力ギヤ128Y,128C,128M,128Kの回転が停止する。
【0038】
クラッチ出力ギヤ128Y,128C,128M,128Kの図中左側方には、図示しない固定軸に係合しながら摺動回転可能な第2中継ギヤ129Y,129C,129M,129Kが配設されており、クラッチ出力ギヤ128Y,128C,128M,128Kに噛み合いながら回転する。
【0039】
図7は、Y用のプロセスユニット1Yの一端部を示す部分斜視図である。
現像ユニット7Yのケーシング内の現像スリーブ15Yは、その軸部材をケーシング側面に貫通させて外部に突出させている。このように突出した軸部材箇所には、スリーブ上流ギヤ131Yが固定されている。また、ケーシング側面には固定軸132Yが突設させられており、これに対して第3中継ギヤ130Yが摺動回転可能に係合しながら、スリーブ上流ギヤ131Yに噛み合っている。
また、感光体3Yの回転軸(駆動対象部材)も、その一端部をケーシング側面に貫通させて外部に突出させている。感光体3Yの回転軸は、プロセスユニット1Yのケーシングに対して回転自在に支持されているため、感光体3Yはプロセスユニット1Yに対して位置決めされている。プロセスユニット1Yのケーシング側面から突出した感光体3Yの回転軸部分は、本体側駆動伝達部の感光体ギヤ133Yに設けられたスプライン穴に入り込んでスプライン係合するスプライン軸135Yで構成されている。
【0040】
Y用のプロセスユニット1Yがプリンタ本体にセットされて位置決めされた状態では、第3中継ギヤ130Yに対し、スリーブ上流ギヤ131Yのほか、図5や図6に示した第2中継ギヤ129Yが噛み合う。そして、第2中継ギヤ129Yの回転駆動力が、第3中継ギヤ130Y、スリーブ上流ギヤ131Yに順次伝達されて、現像スリーブ15Yが回転駆動される。
また、Y用のプロセスユニット1Yがプリンタ本体にセットされて位置決めされた状態では、感光体3Yの回転軸のスプライン軸135Yに対し、本体側駆動伝達部の感光体ギヤ133Yに設けられたスプライン穴が噛み合う。
なお、Y用のプロセスユニット1Yについてだけ、図を示して説明したが、他色用のプロセスユニットにおいても、同様にして現像スリーブに回転駆動力が伝達される。
【0041】
また、図7では、Y用のプロセスユニット1Yの一端部だけを示したが、現像スリーブ15Yの他端側の軸部材は、ケーシングの他端側の側面に貫通して外部に突出しており、その突出箇所には図示しないスリーブ下流ギヤが固定されている。また、先に図2に示した第1搬送スクリュー8Y、第2搬送スクリュー11Yも、その軸部材をケーシング他端側の側面に貫通させており、その突出箇所には図示しない第1スクリューギヤ、第2スクリューギヤが固定されている。現像スリーブ15Yがスリーブ上流ギヤ131Yによる駆動伝達によって回転すると、それに伴い、他端側においてスリーブ下流ギヤが回転する。そして、スリーブ下流ギヤに噛み合っている第2スクリューギヤで駆動力を受ける第2搬送スクリュー11Yが回転するとともに、第2スクリューギヤに噛み合っている第1スクリューギヤで駆動力を受ける第1搬送スクリュー8Yが回転する。他色用のプロセスユニットも同様の構成である。
【0042】
図8は、Y用の感光体ギヤ133Y及びその周囲構成を示す斜視図である。
図9は、感光体ギヤ133Yの拡大斜視図である。
図10は、感光体ギヤ133Yの正面図である。
図11は、感光体ギヤ133Y及びその周囲構成を、感光体ギヤ133Yの回転軸方向に沿って切断したときの断面図である。
なお、以下の説明では、色分け符号Yの記載を省略する。
【0043】
プロセス駆動モータ120のモータ軸に固定された駆動部である原動ギヤ121には、現像ギヤ122の第1ギヤ部123のほか、駆動力伝達部材としての感光体ギヤ133が噛み合っている。感光体ギヤ133は、駆動入力部である円盤状のギヤ部133aと、回転軸部を構成する大径部である大径ボス部133b及び小径部である小径ボス部133cと、駆動出力部としてのスプライン穴133dとを有し、これらは同じ材料(例えば樹脂材料)で一体成形されたものである。感光体ギヤ133のギヤ部133aの直径は、感光体3の直径よりも大きくなっている。
【0044】
感光体ギヤ133の大径ボス部133b及び小径ボス部133cは、それぞれ、プリンタの本体フレームを構成する支持部材としての第1側板110a及び第2側板110bに対し、金属製のスリーブ軸受部材134a,134bを介して回転自在に支持されている。2つのスリーブ軸受部材134a,134bのうち、少なくとも大径ボス部133bに取り付けられるスリーブ軸受部材134bについては、第2側板110bに対する感光体ギヤ133の回転方向への回転が規制されている。具体的には、スリーブ軸受部材134bの外周面にはその径方向へ突出した突出部が設けられており、スリーブ軸受部材134bを第2側板110bに取り付ける際には、この突出部が第2側板110bに設けられた回転規制穴に嵌り込み、スリーブ軸受部材134bの第2側板110bに対する回転が規制される。
【0045】
感光体ギヤ133の大径ボス部133bの端面には、スプライン穴133dが開口している。このスプライン穴133dの内周面に複数の歯を有する内歯車が形成されている。図示しない感光体3の回転軸(駆動対象部材)の一端部は、図7に示したように、スプライン軸135で構成されており、プロセスユニット1がプリンタ本体にセットされて位置決めされた状態では、そのスプライン軸135の外歯車がスプライン穴133dの内歯車と噛み合ってスプライン係合する。これにより、プロセス駆動モータ120の回転駆動力が感光体ギヤ133を介して感光体3に伝達される。
【0046】
なお、本実施形態では、感光体ギヤ133の大径ボス部133bにスプライン穴133dを形成し、感光体3の回転軸にスプライン軸135を形成する場合について説明したが、逆に、感光体ギヤ133の大径ボス部133bにスプライン軸を形成し、感光体3の回転軸にスプライン穴を形成するようにしてもよい。
【0047】
以上の構成を有する本実施形態のプリンタにおいては、感光体ギヤ133を構成するギヤ部133aと回転軸部133b,133cとスプライン穴133dとが同一材料(樹脂)で一体成形されているので、これらの間でガタつきが発生することがなく、そのガタつきに起因した感光体3の回転速度変動が生じることがない。
ところが、感光体ギヤ133を構成する樹脂は、スリーブ軸受部材134bを構成する金属に比べて線膨張係数が大きい。そのため、使用環境の温度変化や装置内部におけるモータや定着装置等の熱源からの熱による影響で感光体ギヤ133が熱膨張すると、感光体ギヤ133の大径ボス部133bとスリーブ軸受部材134bの内周面との隙間が小さくなり、これらの間の摩擦負荷が増大して感光体ギヤ133の回転負荷が増大し、プロセス駆動モータ120が過負荷で停止してしまう事態が起こり得る。
【0048】
なお、感光体ギヤ133の熱膨張により感光体ギヤ133の小径ボス部133cとスリーブ軸受部材134aの内周面との隙間も多少は小さくなるが、大径ボス部133bに比べて小径ボス部133cの径変化は小さいので、プロセス駆動モータ120が過負荷で停止してしまうほどの回転負荷が感光体ギヤ133に生じることはない。
【0049】
〔実験例〕
以下、本発明者らが行った各種実験例について説明する。
本実験例では、感光体ギヤ133の回転軸部133b,133cとスリーブ軸受部材134a,134bとの接触(摩擦)がプロセス駆動モータ120に与える影響(回転負荷)を検討したものである。
本実験例において、定電圧で駆動するDCサーボモータからなるプロセス駆動モータ120の駆動電流量にモータ駆動時間を乗じたプロセス駆動モータ120の仕事量を、プロセス駆動モータ120の回転負荷の評価に用いた。ここで、感光体ギヤ133の回転軸部133b,133cとスリーブ軸受部材134a,134bとの接触(摩擦)がプロセス駆動モータ120の回転負荷に与える影響が無い理想状態を、図12に示すものとする。この理想状態におけるグラフの傾き(モータ仕事量/モータ駆動時間)は、0.04[W/sec]である。この理想状態のグラフ傾きよりも大きい状態においては、感光体ギヤ133の回転軸部133b,133cとスリーブ軸受部材134a,134bとの接触(摩擦)がプロセス駆動モータ120に回転負荷を生じさせているものと言える。
【0050】
図13(a)及び(b)は、周囲温度を25[℃]に維持した状態で、スリーブ軸受部材134aが取り付けられる第1側板110aの取付穴とスリーブ軸受部材134bが取り付けられる第2側板110bの取付穴との同軸度を変化させたときの実験結果を示すグラフである。ここでいう同軸度とは、第1側板110a及び第2側板110bを互いに平行な状態で対向させた状態において各側板における取付穴間の中心位置のズレ量を意味するものである。
なお、図13(a)は、感光体ギヤ133の大径ボス部133bの外半径とスリーブ軸受部材134bの内半径との差(以下「ギャップ」という。)Δx1を、0.03[mm]とした場合の実験結果を示したものであり、図13(b)は、上記ギャップΔx1を0.1[mm]とした場合の実験結果を示したものである。
【0051】
図13(a)に示すグラフを見ると、ギャップΔx1を0.03[mm]と狭く設定した場合には、同軸度が0[mm]であるときであっても、そのグラフの傾きは理想状態の傾きよりも大きく、プロセス駆動モータ120に回転負荷を生じさせている。そして、同軸度が0.2[mm]、0.4[mm]と悪くなるにつれて、グラフの傾きが大きくなっており、プロセス駆動モータ120に回転負荷が大きくなっている。
一方、図13(b)に示すグラフを見ると、ギャップΔx1を0.1[mm]と比較的広く設定した場合には、同軸度が0.4[mm]と最も悪い条件において、僅かにグラフの傾きが理想状態の傾きよりも大きくなっており、プロセス駆動モータ120に回転負荷を生じさせているが、同軸度が0[mm]、0.2[mm]の場合には、グラフの傾きが理想状態の傾きとほぼ一致しており、プロセス駆動モータ120に回転負荷をほとんど生じさせていない。
以上の実験により、ギャップΔx1を広く設定することで、プロセス駆動モータ120に与える回転負荷を軽減することができることが分かる。
【0052】
図14(a)及び(b)は、同軸度を0[mm]に設定した状態で、周囲温度が25℃である場合と50℃である場合について実験を行った結果を示すグラフである。
なお、図14(a)は、上記ギャップΔx1を0.03[mm]とした場合の実験結果を示したものであり、図14(b)は、上記ギャップΔx1を0.1[mm]とした場合の実験結果を示したものである。
【0053】
図14(a)に示すグラフを見ると、ギャップΔx1を0.03[mm]と狭く設定した場合には、周囲温度が25℃である場合と50℃である場合のいずれの場合も、そのグラフの傾きは理想状態の傾きよりも大きく、プロセス駆動モータ120に回転負荷を生じさせている。そして、周囲温度が高くなるにつれて、グラフの傾きが大きくなっており、プロセス駆動モータ120に回転負荷が大きくなっている。これは、感光体ギヤ133が熱膨張して大径ボス部133bの外周面とスリーブ軸受部材134bの内周面との隙間が狭くなり、これらの間の摺動負荷が増大したためである。
一方、図14(b)に示すグラフを見ると、ギャップΔx1を0.1[mm]と比較的広く設定した場合には、周囲温度が25℃である場合と50℃である場合のいずれの場合も、グラフの傾きが理想状態の傾きとほぼ一致しており、プロセス駆動モータ120に回転負荷をほとんど生じさせていない。
【0054】
図15(a)及び(b)は、周囲温度を50[℃]に維持した状態で、同軸度を変化させたときの実験結果を示すグラフである。
なお、図15(a)は、上記ギャップΔx1を0.03[mm]とした場合の実験結果を示したものであり、図15(b)は、上記ギャップΔx1を0.1[mm]とした場合の実験結果を示したものである。
【0055】
図15(a)に示すグラフを見ると、ギャップΔx1を0.03[mm]と狭く設定した場合には、同軸度が0.4[mm]のときはモータ駆動時間がおよそ40分に到達した際に感光体ギヤ133の大径ボス部133bとスリーブ軸受部材134bとが溶着してしまい、プロセス駆動モータ120が停止した。また、同軸度が0.2[mm]のときはモータ駆動時間がおよそ75分に到達した際に感光体ギヤ133の大径ボス部133bとスリーブ軸受部材134bとが溶着してしまい、プロセス駆動モータ120が停止した。
一方、図15(b)に示すグラフを見ると、ギャップΔx1を0.1[mm]と比較的広く設定した場合には、同軸度が0[mm]の条件では、グラフの傾きが理想状態の傾きとほぼ一致しており、プロセス駆動モータ120に回転負荷をほとんど生じさせていない。同軸度が0.2[mm]、0.4[mm]の条件においても、グラフの傾きが理想状態の傾きよりも大きく、プロセス駆動モータ120に回転負荷を生じさせているが、プロセス駆動モータ120が停止するほどの回転負荷は生じさせていない。
【0056】
本実施形態に係るプリンタは、想定される周囲温度が最大でも50℃であるように設計されているので、以上の実験結果を踏まえ、ギャップΔx1を、周囲温度が50℃の場合でもプロセス駆動モータ120に回転負荷が生じないように設定した。
なお、感光体ギヤ133は、その線膨張係数bがスリーブ軸受部材134bの線膨張係数aよりも大きい材料で成形されたものであるため、上記ギャップΔx1が下記の式(1)を満たすように構成することで、周囲温度が50℃まで上昇した場合でも、熱膨張した感光体ギヤ133の大径ボス部133bとこれに取り付けられるスリーブ軸受部材134bとの隙間を確保できる。したがって、周囲温度が50℃まで上昇した場合でも、プロセス駆動モータ120が停止するほどの回転負荷を生じさせることはない。
Δx1 > r1×Δt×a−R1×Δt×b ・・・(1)
【0057】
ただし、上記ギャップΔx1が上記式(1)を満足する場合であっても、感光体ギヤ133を支持する各側板110a,110bの同軸度が悪いと、感光体ギヤ133の大径ボス部133bの外周面とスリーブ軸受部材134bの内周面とが接触して、摺動負荷を生じさせ、プロセス駆動モータ120に大きな負荷が加わるおそれがある。よって、各側板110a,110b間の同軸度が悪い場合には、その同軸度も考慮して上記ギャップΔx1を設定するのが好ましい。
【0058】
図16は、各側板110a,110b間の同軸度が悪い場合における、感光体ギヤ133Y及びその周囲構成の断面を示す説明図である。
各側板110a,110b間の同軸度を「y」とし、感光体ギヤ133のスプライン穴133dのスプライン軸135との係合部分とスリーブ軸受部材134bによる軸受部分との距離を「c」とし、感光体ギヤ133のスプライン穴133dのスプライン軸135との係合部分とスリーブ軸受部材134aによる軸受部分との距離を「d」としたとき、スリーブ軸受部材134bに軸受けされる大径ボス部133bの被軸受部分が、側板110a,110b間の同軸度が0[mm]の場合から変位する量は、およそy×(c/d)から求めることができる。
よって、同軸度も考慮してギャップΔx1を設定する場合には、ギャップΔx1が下記の式(2)を満たすように構成する。
Δx1 > r1×Δt×a−R1×Δt×b+y×(c/d) ・・・(2)
【0059】
ここで、本実施形態においては、周囲温度が比較的低温である状況下においては、感光体ギヤ133の大径ボス部133bとスリーブ軸受部材134bとの隙間が比較的広くなるので、この部分にガタつきが生じ得る。しかし、本実施形態では、感光体ギヤ133の回転軸部における大径ボス部側の端部は、感光体3の回転軸とスプライン係合する。そして、感光体3は、上述したように、プリンタ本体に位置決めされているプロセスユニット1のケーシングに位置決めされている。したがって、プロセスユニット1をプリンタ本体にセットして感光体3の回転軸と感光体ギヤ133の回転軸部とをスプライン係合した状態においては、感光体ギヤ133の大径ボス部側の回転軸部端部がガタつくことなく位置決めされる。一方、感光体ギヤ133の小径ボス部側の回転軸部端部は、従来同様、ガタつき無くスリーブ軸受部材134aを介して第1側板110aに回転自在に支持されている。よって、本実施形態によれば、周囲温度が比較的低温であり、感光体ギヤ133の大径ボス部133bとスリーブ軸受部材134bとの隙間が比較的広い状態であっても、感光体ギヤ133のガタつきなく位置決めされる。したがって、そのようなガタつきに起因した感光体3の回転速度変動が生じることはない。
【0060】
以上、本実施形態に係るプリンタは、駆動源であるプロセス駆動モータ120からの回転駆動力を駆動力伝達装置(本体側駆動伝達部)を用いて像担持体としての感光体3に伝達して感光体3を表面移動させ、感光体3の表面に画像(トナー像)を形成して画像を最終的に記録材としての記録紙P上に転写することにより、記録紙P上に画像を形成する画像形成装置である。そして、これに用いられる駆動力伝達装置は、一端が大径部としての大径ボス部133bで他端が小径部としての小径ボス部133cで形成された回転軸部と、プロセス駆動モータ120に接続された駆動部である原動ギヤ121と係合して回転駆動力の入力を受ける駆動入力部としてのギヤ部133aと、駆動対象部材である感光体3の回転軸と係合してギヤ部133aに入力された回転駆動力を感光体3の回転軸へ出力する駆動出力部としてのスプライン穴133dが一体成形され、スプライン穴133dが回転軸部における大径ボス部133b側の端部に形成され、その回転軸部の同軸上に配置される係合対象である感光体3の回転軸に形成されたスプライン軸135と係合し、ギヤ部133aが回転軸部の外周部に形成されている駆動力伝達部材としての感光体ギヤ133を有する。また、駆動力伝達装置は、感光体ギヤ133の回転軸部を大径ボス部133bの支持箇所及び小径ボス部133cの支持箇所で回転自在に支持する支持部材としての側板110a,110bと、感光体ギヤ133の回転軸部における大径ボス部133bの支持箇所と側板110bとの間に取り付けられ、その側板110bに対する感光体ギヤ133の回転方向への回転が規制されたスリーブ軸受部材134bとを備えている。上記感光体ギヤ133は、線膨張係数が金属製のスリーブ軸受部材134bの線膨張係数よりも大きい樹脂で成形されたものである。そして、基準温度におけるスリーブ軸受部材134bの内半径R1と感光体ギヤ133における回転軸部の外半径r1との差Δx1が、上記式(1)を満たすように構成されている。このような構成により、上述したとおり、駆動力伝達装置の温度が通常想定される範囲内において最も高い温度(本実施形態では50℃)になった状況下でも、熱膨張した感光体ギヤ133の回転軸部の大径ボス部133bとこれに取り付けられるスリーブ軸受部材134bとの隙間が確保される。したがって、通常想定される範囲内では、熱膨張による感光体ギヤ133の回転負荷の増大が抑制される。しかも、本実施形態によれば、感光体ギヤ133の大径ボス部133bとスリーブ軸受部材134bとの間にこのような隙間が存在しても、プロセスユニット1がプリンタ本体にセットされた状態では感光体ギヤ133がガタつくことなく位置決めされる。したがって、その隙間によるガタつきに起因した感光体3の回転速度変動が生じることはない。
また、本実施形態では、回転軸部における大径ボス部133b側の端部に形成され、その回転軸部の同軸上に配置される感光体3の回転軸のスプライン軸135と係合する部分は、そのスプライン軸135をスプライン穴133dに挿入することでスプライン軸135上の外歯とスプライン穴133dの内歯とが噛み合ってスプライン係合する構成である。これにより、感光体ギヤ133の大径ボス部133bとスリーブ軸受部材134bとの間に上述のような隙間が存在しても、位置決めされたスプライン軸135に感光体ギヤ133のスプライン穴133dが係合することにより、感光体ギヤ133をガタつきなく位置決めすることができる。
また、本実施形態では、感光体ギヤ133を支持する各側板110a,110bは、一体成形されていない別部材であるため、上記差Δx1が上記式(2)を満たすように構成するのが好ましい。これにより、各側板110a,110b間の同軸度が悪い場合でも、上述したように熱膨張による感光体ギヤ133の回転負荷の増大を安定して抑制できる。
また、本実施形態に係るプリンタにおいては、感光体を複数設け、感光体表面に平行な方向であって感光体表面移動方向に対して直交する方向(感光体回転軸方向)が互いに一致するように各感光体3Y,3C,3M,3Kを配置し、各感光体3Y,3C,3M,3Kの表面に形成される画像(トナー像)を重ね合わせた最終画像(4色トナー像)を記録紙P上に転写することにより、記録紙P上に画像を形成するものである。このようなタンデム型の画像形成装置においては、感光体3の回転速度変動が色ズレとなって画質に大きく影響するため、感光体ギヤ133の回転負荷を極力少なくして感光体3の回転速度変動の要因を排除することが望まれる。よって、このようなタンデム型の画像形成装置には上述した駆動力伝達装置を採用することが特に有効である。
ここで、本実施形態では、各感光体3Y,3C,3M,3Kに対応する各感光体ギヤ133Y,133C,133M,133Kを支持する側板110a,110bは、各感光体ギヤ133Y,133C,133M,133K間で同一のものである。この場合、上記差Δx1を上記式(2)に基づいて設定する際に用いる側板110a,110b間の偏心量yとしては、各感光体ギヤ133Y,133C,133M,133Kについての偏心量のうち最大の偏心量を用いる。これにより、製造コストを抑えるために各感光体ギヤ133Y,133C,133M,133Kについての各差Δx1を同一に設定しても、すべての感光体ギヤで回転負荷の増大を抑制できる。
また、本実施形態では、駆動力伝達装置による駆動力伝達対象である感光体3を、プリンタ本体に対して着脱自在に構成されたプロセスカートリッジ内に位置決めされているので、感光体ギヤ133のスプライン穴133dが位置決めされた感光体3の回転軸のスプライン軸135と係合することにより、感光体ギヤ133がガタつきなく位置決めされる。
【0061】
なお、本実施形態では、感光体ギヤ133の熱膨張により感光体ギヤ133の大径ボス部133bとスリーブ軸受部材134bとの隙間が狭くなって感光体ギヤ133の回転負荷が増大することによるプロセス駆動モータ120の過負荷を抑制する場合について説明した。しかし、他の構成でも、同様に感光体ギヤ133の回転負荷が増大し、プロセス駆動モータ120に過負荷が生じるおそれがある。具体的には、スリーブ軸受部材134bを、側板110bに対してではなく感光体ギヤ133の大径ボス部133bに対して回転を規制してスリーブ軸受部材134bを感光体ギヤ133の大径ボス部133bと一体成形した構成においては、感光体ギヤ133の線膨張係数bが、側板110bの線膨張係数eよりも大きい材料で成形されている場合、熱膨張した感光体ギヤ133の大径ボス部133bと側板110bとの隙間が小さくなり、感光体ギヤ133の回転負荷が増大し得る。このような構成においては、基準温度における感光体ギヤ133の大径ボス部133bが取り付けられる側板110bの部分の内半径R2と感光体ギヤ133の大径ボス部133bの外半径r2との差Δx2が、下記の式(3)を満たすように構成する。
Δx2 > r2×Δt×e−R2×Δt×b ・・・(3)
この場合も、通常想定される範囲内では、熱膨張による感光体ギヤ133の回転負荷の増大を抑制できる。
【0062】
なお、本発明は、タンデム型の画像形成装置でなく、他の型のカラー画像形成装置やモノクロ画像形成装置にも有効に適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第1実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。
【図2】同プリンタのY用のプロセスユニットを示す拡大構成図である。
【図3】同プロセスユニットを示す斜視図である。
【図4】同プロセスユニットの現像ユニットを示す斜視図である。
【図5】同プリンタ本体内の本体側駆動伝達部を示す斜視図である。
【図6】同本体側駆動伝達部を上方から示す平面図である。
【図7】Y用のプロセスユニットの一端部を示す部分斜視図である。
【図8】同プリンタにおけるY用の感光体ギヤ及びその周囲構成を示す斜視図である。
【図9】同感光体ギヤの拡大斜視図である。
【図10】同感光体ギヤの正面図である。
【図11】同感光体ギヤ及びその周囲構成を、感光体ギヤ回転軸方向に沿って切断したときの断面図である。
【図12】実験例における、感光体ギヤの回転軸部とスリーブ軸受部材との接触(摩擦)がプロセス駆動モータの回転負荷に与える影響が無い理想状態を示すグラフである。
【図13】(a)及び(b)は、周囲温度を25[℃]に維持した状態で、スリーブ軸受部材が取り付けられる第1側板の取付穴とスリーブ軸受部材が取り付けられる第2側板の取付穴との同軸度を変化させたときの実験結果を示すグラフである。
【図14】(a)及び(b)は、同軸度を0[mm]に設定した状態で、周囲温度が25℃である場合と50℃である場合について実験を行った結果を示すグラフである。
【図15】(a)及び(b)は、周囲温度を50[℃]に維持した状態で、同軸度を変化させたときの実験結果を示すグラフである。
【図16】各側板間の同軸度が悪い場合における、感光体ギヤ及びその周囲構成の断面を示す説明図である。
【符号の説明】
【0064】
1Y,1C,1M,1K プロセスユニット
3Y,3C,3M,3K 感光体
110a,110b 側板
120Y,120C,120M,120K プロセス駆動モータ
121Y,121C,121M,121K 原動ギヤ
133Y,133C,133M,133K 感光体ギヤ
133a ギヤ部
133b 大径ボス部
133c 小径ボス部
133d スプライン穴
135Y,135C,135M,135K スプライン軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が大径部で他端が小径部で形成された回転軸部と、駆動源に接続された駆動部と係合して回転駆動力の入力を受ける駆動入力部と、駆動対象部材と係合して該駆動入力部に入力された回転駆動力を該駆動対象部材へ出力する駆動出力部とが一体成形され、該駆動入力部及び該駆動出力部の一方が、上記回転軸部における大径部側の端部に形成され、該回転軸部の同軸上に配置される係合対象と係合するものであり、他方が該回転軸部の外周部に形成されるものである駆動力伝達部材と、
該駆動力伝達部材の回転軸部を上記大径部の支持箇所及び上記小径部の支持箇所で回転自在に支持する支持部材と、
該駆動力伝達部材の回転軸部における大径部の支持箇所と該支持部材との間に取り付けられ、該支持部材に対する該駆動力伝達部材の回転方向への回転が規制されたスリーブ軸受部材とを備えた駆動力伝達装置において、
上記駆動力伝達部材は、線膨張係数が上記スリーブ軸受部材の線膨張係数よりも大きい材料で成形されたものであり、
基準温度における上記スリーブ軸受部材の内半径R1と上記駆動力伝達部材における回転軸部の外半径r1との差Δx1が、下記の式(1)を満たすように構成したことを特徴とする駆動力伝達装置。
Δx1 > r1×Δt×a−R1×Δt×b ・・・(1)
ただし、「Δt」は上記基準温度に対する駆動力伝達装置の温度の最大変化量であり、「a」はスリーブ軸受部材の線膨張係数であり、「b」は駆動力伝達部材の線膨張係数である。
【請求項2】
請求項1の駆動力伝達装置において、
上記回転軸部における大径部側の端部に形成され、該回転軸部の同軸上に配置される係合対象と係合する部分は、スプライン軸をスプライン穴に挿入することでスプライン軸上の外歯とスプライン穴の内歯とが噛み合ってスプライン係合する構成であることを特徴とする駆動力伝達装置。
【請求項3】
請求項2の駆動力伝達装置において、
上記2つの支持箇所をそれぞれ支持する各支持部材は、一体成形されていない別部材であり、
上記差Δx1が下記の式(2)を満たすように構成したことを特徴とする駆動力伝達装置。
Δx1 > r1×Δt×a−R1×Δt×b+y×(c/d) ・・・(2)
ただし、「y」は上記2つの支持箇所間における偏心量であり、「c」は上記スプライン係合する部分と該部分に近い側の支持箇所との距離であり、「d」は上記スプライン係合する部分と該部分から遠い側の支持箇所との距離である。
【請求項4】
一端が大径部で他端が小径部で形成された回転軸部と、駆動源に接続された駆動部と係合して回転駆動力の入力を受ける駆動入力部と、駆動対象部材と係合して該駆動入力部に入力された回転駆動力を該駆動対象部材へ出力する駆動出力部とが一体成形され、該駆動入力部及び該駆動出力部の一方が、上記回転軸部における大径部側の端部に形成され、該回転軸部の同軸上に配置される係合対象と係合するものであり、他方が該回転軸部の外周部に形成されるものである駆動力伝達部材と、
該駆動力伝達部材の回転軸部を上記大径部の支持箇所及び上記小径部の支持箇所で回転自在に支持する支持部材とを備えた駆動力伝達装置において、
上記駆動力伝達部材は、線膨張係数が、上記大径部の支持箇所を支持する支持部材の線膨張係数よりも大きい材料で成形されたものであり、
基準温度における上記駆動力伝達部材の回転軸部が取り付けられる支持部材部分の内半径R2と該駆動力伝達部材における回転軸部の外半径r2との差Δx2が、下記の式(3)を満たすように構成したことを特徴とする駆動力伝達装置。
Δx2 > r2×Δt×e−R2×Δt×b ・・・(3)
ただし、「Δt」は上記基準温度に対する駆動力伝達装置の温度の最大変化量であり、「e」は大径部の支持箇所を支持する支持部材の線膨張係数であり、「b」は駆動力伝達部材の線膨張係数である。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の駆動力伝達装置において、
上記Δtは、上記駆動力伝達装置の最大温度が50℃である場合のものであることを特徴とする駆動力伝達装置。
【請求項6】
駆動源からの回転駆動力を駆動力伝達装置を用いて像担持体に伝達して該像担持体を表面移動させ、該像担持体の表面に画像を形成して該画像を最終的に記録材上に転写することにより、該記録材上に画像を形成する画像形成装置において、
上記駆動力伝達装置として、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の駆動力伝達装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6の画像形成装置において、
上記像担持体を複数設け、像担持体表面に平行な方向であって像担持体表面移動方向に対して直交する方向が互いに一致するように各像担持体を配置し、各像担持体の表面に形成される画像を重ね合わせた最終画像を記録材上に転写することにより、該記録材上に画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項7の画像形成装置において、
上記駆動力伝達装置として、請求項3の駆動力伝達装置を用い、
各像担持体に対応する各駆動力伝達部材を支持する支持部材が、各駆動力伝達部材間で同一のものであり、
上記「y」は、各駆動力伝達部材についての上記2つの支持箇所間における偏心量のうち最大の偏心量であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記像担持体は、画像形成装置本体に対して着脱自在に構成されたプロセスカートリッジ内に位置決めされていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−175667(P2009−175667A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226844(P2008−226844)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】