駆動力伝達装置及びこれを備えた画像記録装置
【課題】モータを大型化することなく、切替機構なしで2つのモータ(LFモータ及びCRモータ)それぞれの出力を互いに融通しあうことができる駆動力伝達装置及びこれを備えた画像記録装置を提供すること。
【解決手段】伝達機構110は、第1遊星歯車機構161と第2遊星歯車機構181とを有する。それぞれの機構161,181は、太陽ギヤ、遊星ギヤ、キャリア、複合ギヤを有する。第1遊星歯車機構161の第1キャリア164に第1モータ71が駆動接続され、第1複合ギヤ165に第2モータ72が駆動接続されている。また、第1遊星歯車機構161の第1太陽ギヤ162から搬送ローラ87を駆動させる駆動力が取り出され、第2遊星歯車機構181の第2キャリア184からキャリッジ38を駆動させる駆動力が取り出される。
【解決手段】伝達機構110は、第1遊星歯車機構161と第2遊星歯車機構181とを有する。それぞれの機構161,181は、太陽ギヤ、遊星ギヤ、キャリア、複合ギヤを有する。第1遊星歯車機構161の第1キャリア164に第1モータ71が駆動接続され、第1複合ギヤ165に第2モータ72が駆動接続されている。また、第1遊星歯車機構161の第1太陽ギヤ162から搬送ローラ87を駆動させる駆動力が取り出され、第2遊星歯車機構181の第2キャリア184からキャリッジ38を駆動させる駆動力が取り出される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのモータの駆動力を第1被駆動体及び第2被駆動体に伝達する駆動力伝達装置、及びこの駆動力伝達装置を備えた画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インク滴を記録用紙に付着させることにより該記録用紙に画像を記録する、所謂インクジェット記録方式の画像記録装置が公知である。この画像記録装置は、記録用紙を搬送するための搬送ローラと、キャリッジと、キャリッジを記録用紙の搬送方向と直交する向きに移動させるためのキャリッジ移動機構とを備えている。キャリッジは記録ヘッドを備えている。記録ヘッドはインク滴を吐出するノズルを備えている。
【0003】
上述した従来の画像記録装置においては、次のようにして画像記録が行われる。まず、記録用紙における記録領域の先端が記録ヘッドの下方に到達するまで、搬送ローラが記録用紙を搬送する。記録用紙上の記録領域の先端が記録ヘッドの下方に到達すると、搬送ローラが停止し、記録用紙も停止する。この状態で、キャリッジ移動機構は、待機位置で停止していたキャリッジを搬送方向と直交する向きに移動させる。この移動過程において、記録ヘッドのノズルからインク滴を選択的に吐出すると、キャリッジが移動するにつれて1ライン分の画像が記録用紙に記録される。そして、キャリッジが1ライン分の画像の記録を終えて待機位置に到達すると、キャリッジ移動機構はキャリッジの移動を停止し、搬送ローラは記録用紙を1ラインに相当する所定幅だけ搬送する。このように、1ライン分の印刷と1ライン幅分の用紙搬送が交互に繰り返されることにより、連続した画像が記録用紙に記録される。このように、従来の画像記録装置においては、搬送ローラとキャリッジ移動機構はほぼ交互に駆動される。
【0004】
このような従来の画像記録装置においては、搬送ローラ駆動用のモータ(以下「LFモータ」という。)とキャリッジ移動機構駆動用のモータ(以下「CRモータ」という。)とをそれぞれ独立に備えて駆動する構成(特許文献1参照)と、1つのモータからの駆動力を切替機構によって搬送ローラとキャリッジ駆動機構へ交互に伝えて駆動する構成(特許文献2参照)とが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−213301号公報
【特許文献2】特開平6−123337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
1ライン印刷中は記録用紙を静止させていることより、搬送ローラとキャリッジ移動機構とがほぼ交互に駆動されるから、搬送ローラの仕事率が最大になる時間帯とキャリッジ移動機構の仕事率が最大になる時間帯とはずれている。しかし、LFモータとCRモータをそれぞれ独立に備え、それぞれを独立に駆動させる構成では、LFモータの出力とCRモータの出力とを互いに融通しあうことができない。そのため、LFモータは搬送ローラで必要とされる仕事率以上の仕事率を単独で出力可能である必要があり、CRモータはキャリッジ移動機構で必要とされる仕事率以上の仕事率を単独で出力可能である必要があるので、結果的にLFモータの最大出力とCRモータの最大出力の合計は画像記録装置が必要とする最大出力よりも大きくなってしまう。その結果、画像記録装置が必要とする最大出力を出力できる程度のモータよりも大出力の、言い換えると大型のモータを搭載する必要が生じ、画像記録装置全体を小型化しにくいという問題があった。
【0007】
また、1つのモータからの駆動力を切替機構で搬送ローラとキャリッジ駆動機構へ交互に伝えて駆動する構成では、切替機構の構造が複雑になり、画像記録装置全体を小型化しにくいうえに騒音も発生しやすくなる。切替機構の制御も複雑である。また1ライン印刷するごとに切り替え動作が必要になるため、印刷速度を向上しにくいという問題があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、切替機構なしでLFモータの出力とCRモータの出力とを互いに融通しあうことができる駆動力伝達装置及びこれを備えた画像記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明は、所定の制御手段によって回転速度が独立に制御される第1モータ及び第2モータの駆動力を第1被駆動体及び第2被駆動体に伝達する駆動力伝達装置として構成されている。この駆動伝達装置は、第1遊星歯車機構と、第2遊星歯車機構と、第1駆動伝達機構と、第2駆動伝達機構とを具備する。
上記第1遊星歯車機構は、第1回転軸の周りを回転可能に設けられた第1太陽歯車と、上記第1回転軸の周りを回転可能に設けられた第1遊星キャリアと、上記第1遊星キャリアに支持され、上記第1回転軸と平行な第2回転軸の周りを回転可能であり、且つ上記第1太陽歯車と噛合して上記第1太陽歯車の外周を公転可能な第1遊星歯車と、上記第1遊星歯車と噛合して上記第1回転軸の周りを回転可能に設けられた第1外輪歯車と、により構成されている。
上記第2遊星歯車機構は、上記第1回転軸の周りを回転可能に設けられた第2太陽歯車と、上記第1回転軸の周りを回転可能に設けられた第2遊星キャリアと、上記第2遊星キャリアに支持され、上記第1回転軸と平行な第3回転軸の周りを回転可能であり、且つ上記第2太陽歯車と噛合して上記第2太陽歯車の外周を公転可能な第2遊星歯車と、上記第2遊星歯車と噛合して上記第1回転軸の周りを回転可能に設けられた第2外輪歯車と、により構成されている。
上記第1駆動伝達機構は、上記第1太陽歯車、上記第1遊星キャリア、及び上記第1外輪歯車のいずれか1つの第1要素と、上記第2太陽歯車、上記第2遊星キャリア、及び上記第2外輪歯車のいずれか1つの第2要素とを所定の第1伝達比で接続するものである。
上記第2駆動伝達機構は、上記第1太陽歯車、上記第1遊星キャリア、及び上記第1外輪歯車のうち上記第1要素を除くいずれか1つの第3要素と、上記第2太陽歯車、上記第2遊星キャリア、及び上記第2外輪歯車のうち上記第2要素を除くいずれか1つの第4要素とを所定の第2伝達比で接続するものである。
上記第1要素又は上記第2要素のいずれか一方の要素と、上記第3要素又は上記第4要素のいずれか一方の要素と、上記第1太陽歯車、上記第1遊星キャリア、上記第1外輪歯車、上記第2太陽歯車、上記第2遊星キャリア、及び上記第2外輪歯車のうち上記第1駆動伝達機構及び上記第2駆動伝達機構が接続されていない2つの要素と、を含む4つの要素から選択された2つの要素のそれぞれに上記第1モータ及び上記第2モータが所定の伝達比でそれぞれ接続され、上記4つの要素のうちの残りの2つの要素のそれぞれに上記第1被駆動体及び上記第2被駆動体が所定の伝達比でそれぞれ接続されている。
【0010】
上述したように、本発明の駆動力伝達装置においては、上記4つの要素のいずれか2つの要素のそれぞれに上記第1モータ及び上記第2モータがそれぞれ接続されており、また、上記4つの要素のうちの残りの2つの要素のそれぞれに上記第1被駆動体及び上記第2被駆動体がそれぞれ接続されている。このとき、第1被駆動体に対する任意の速度と第2被駆動体に対する任意の速度との組み合わせを実現するような第1モータ及び第2モータそれぞれの回転速度の組み合わせが1つだけ存在する。換言すれば、本発明の駆動力伝達装置によれば、第1被駆動体及び第2被駆動体に接続される2つの要素それぞれの回転速度の制御、つまり、第1被駆動体及び第2被駆動体それぞれの速度制御を独立に行うことが可能となる。
【0011】
例えば、インクジェット記録方式の画像記録装置のように、第1被駆動体としての搬送ローラと第2被駆動体としてのキャリッジとが概ね交互に駆動される場合、換言すれば、搬送ローラとキャリッジとが同時に駆動されない場合は、キャリッジの速度が最大のときに、搬送ローラは低速又は停止している。このように、モータが駆動する対象物の一方が高速度のときに他方が低速度または停止するという状態で第1モータ及び第2モータが駆動されるという状況においては、本発明の駆動力伝達装置では、第1被駆動体及び第2被駆動体それぞれで消費される仕事率の差よりも、第1モータ及び第2モータそれぞれで消費される電力の差のほうが小さくなるように、第1モータ及び第2モータの必要回転速度が分配される。つまり、2つの被駆動体の仕事が平均化されて2つのモータに分配される。これにより、第1モータ及び第2モータの片方だけから大きな回転速度を取り出すアンバランスな使用を避けて、両方のモータの回転速度をバランスよく効率よく利用することができる。その結果、モータを大型化することなく所望の回転速度を第1被駆動体及び第2被駆動体それぞれに伝達することが可能となる。
【0012】
また、本発明の駆動力伝達装置によれば、第1被駆動体及び第2被駆動体それぞれの速度は、第1モータ及び第2モータそれぞれの回転速度の線形和となるため、第1被駆動体の速度又は第2被駆動体の速度が非常に小さくても、第1モータ及び第2モータそれぞれの回転速度を比較的安定な高回転域であるように構成することが可能である。このため、本発明の駆動力伝達装置は、大きなトルクを必要とする立ち上がり時や低速駆動時に特に有効である。
【0013】
また、第1被駆動体の伝達機構と第2被駆動体の伝達機構とが独立している従来機構では、第1被駆動体及び第2被駆動体それぞれの減速時に各被駆動体が有する運動エネルギーを熱などに変換させて無駄に消費していたが、本発明の駆動力伝達装置においては、一方の被駆動体が減速する際に、その被駆動体が有する運動エネルギーが他方の被駆動体の駆動力として転用される。そのため、当該駆動力伝達装置において、エネルギーを有効に利用することが可能となる。また、従来に比べて、加減速時の電力消費量を省減することができる。
【0014】
(2) 上記第1モータの回転情報を取得する第1回転情報取得手段と、上記第2モータの回転情報を取得する第2回転情報取得手段とを更に備え、上記制御手段は、上記第1回転情報取得手段及び上記第2回転情報取得手段それぞれの取得結果に基づいて上記第1モータ及び上記第2モータをフィードバック制御するものであることが好ましい。
本発明は、このようなフィードバック制御に好ましく適用され得る。
【0015】
(3) 上記第1被駆動体の位置情報を取得する第1位置情報取得手段と、上記第2被駆動体の位置情報を取得する第2位置情報取得手段とを更に備え、上記制御手段は、上記第1位置情報取得手段及び上記第2位置情報取得手段それぞれの取得結果に基づいて上記第1モータ及び上記第2モータをフィードバック制御するものであってもよい。
このような構成であっても、本発明は好ましく適用され得る。
【0016】
(4) 本発明は、上述の駆動力伝達装置を備えたインクジェット記録方式の画像記録装置として捉えることもできる。この場合、上記第1被駆動体が、被記録媒体の搬送方向と交差する方向へ往復動されるキャリッジであり、上記第2被駆動体が、記録ヘッドによる画像記録領域へ向けて被記録媒体を搬送する搬送ローラである。このような画像記録装置において、各モータの駆動力を最も効率よく利用することが可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、第1出力軸及び第2出力軸それぞれの回転速度の制御、つまり、第1被駆動体及び第2被駆動体それぞれの速度制御を独立に行うことが可能であり、且つ、一方が高速度のときに他方が低速度または停止するという状態で第1モータ及び第2モータが駆動されるという状況において、第1被駆動体及び第2被駆動体それぞれで消費される仕事率の差よりも、第1モータ及び第2モータそれぞれで消費される電力の差のほうが小さくなるように、第1モータ及び第2モータの必要回転速度が分配される。つまり、2つの被駆動体の仕事が平均化されて2つのモータに分配される。これにより、第1モータ及び第2モータそれぞれの回転速度を持て余すことなくバランス良く効率よく利用することができる。その結果、モータを大型化することなく所望の回転速度を得ることが可能となる。
【0018】
また、第1被駆動体及び第2被駆動体それぞれの速度は、第1モータ及び第2モータそれぞれの回転速度の線形和となるため、第1被駆動体の速度又は第2被駆動体の速度が非常に小さくても、第1モータ及び第2モータそれぞれの回転速度を比較的安定な高回転域であるように構成することが可能となる。このため、本発明の駆動力伝達装置は、大きなトルクを必要とする立ち上がり時や低速駆動時に特に有効である。
【0019】
また、一方の被駆動体が減速する際に、その被駆動体が有する運動エネルギーが他方の被駆動体の駆動力として転用される。そのため、当該駆動力伝達装置において、エネルギーを有効に利用することが可能となる。また、従来に比べて、加減速時の電力消費量を省減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、複合機1の外観構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、プリンタ部2の主要構成を示す部分拡大断面図である。
【図3】図3は、プリンタ部2の主要構成を示す平面図であり、主としてプリンタ部2の略中央から装置背面側の構成が示されている。
【図4】図4は、伝達機構110の構成を示す斜視図である。
【図5】図5は、図4の切断面V−Vの断面図であり、伝達機構110の中央断面構造が詳細に示されている。
【図6】図6は、伝達機構110を構成する第1太陽ギヤ162を示す図であり、(A)は側面図、(B)は正面図である。
【図7】図7は、伝達機構110を構成する第1キャリア164を示す図であり、(A)は側面図、(B)は正面図である。
【図8】図8は、伝達機構110を構成する第1複合ギヤ165を示す図であり、(A)は側面図、(B)は正面図である。
【図9】図9は、伝達機構110を構成する第2キャリア184を示す図であり、(A)は側面図、(B)は正面図である。
【図10】図10は、伝達機構110を構成する第2複合ギヤ185を示す図であり、(A)は側面図、(B)は正面図である。
【図11】図11は、伝達機構110を構成するアイドルギヤ153,154を示す図であり、(A)は中央断面図、(B)は正面図である。
【図12】図12は、プリンタ部2の制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【図13】図13は、制御装置100の構成を示すブロック図である。
【図14】図14は、プリンタ部2の制御システムの概略構成の変形例を示すブロック図である。
【図15】図15は、制御装置100の構成の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0022】
[複合機1]
複合機1は、プリンタ部2とスキャナ部3とを一体的に備えた多機能装置(MFP:Multi Function Product)であり、プリント機能、スキャン機能、コピー機能、ファクシミリ機能等を有する。複合機1のうちプリンタ部2が、本発明に係るインクジェット方式の画像記録装置に相当する。したがって、プリント機能以外の機能は任意のものであり、例えば、スキャナ部3が省略されたプリント機能のみを有するプリンタとして本発明に係る画像記録装置が実施されてもよい。
【0023】
図1に示されるように、複合機1は概ね直方体に形成されている。複合機1の下部がプリンタ部2であり、上部がスキャナ部3である。
【0024】
複合機1のプリンタ部2は、主にコンピュータ等の外部情報機器と接続されて、該コンピュータ等から送信された画像データや文書データを含む印刷データに基づいて、記録用紙に画像や文書を記録する。プリンタ部2は、正面に開口9が形成されている。給紙トレイ20及び排紙トレイ21は、開口9の内側に上下2段に設けられている。給紙トレイ20に収容された記録用紙がプリンタ部2の内部へ給送されて、その記録用紙に所望の画像が記録されると、その後、画像記録済みの記録用紙が排紙トレイ21へ排出される。
【0025】
スキャナ部3は、所謂フラットベッドスキャナとして構成されている。複合機1の天板としての原稿カバー30がスキャナ部3の上部に開閉自在に設けられている。原稿カバー30の下側に、図示しないコンタクトガラス及びイメージセンサが設けられている。コンタクトガラスに載置された原稿の画像がイメージセンサによって読み取られる。なお、本発明を実現するうえでスキャナ部3は関係しないため、ここでは、スキャナ部3の詳細な説明を省略する。
【0026】
図1に示されるように、複合機1の正面上部には、プリンタ部2やスキャナ部3を操作するための操作パネル4が設けられている。操作パネル4は、各種操作ボタンや液晶表示部から構成されている。複合機1は、操作パネル4からの操作指示に基づいて動作する。複合機1が外部のコンピュータに接続されている場合には、該コンピュータからプリンタドライバ又はスキャナドライバを介して送信される指示に基づいても複合機1が動作する。
【0027】
[プリンタ部2]
以下、複合機1の内部構成、特にプリンタ部2の構成について説明する。
【0028】
図2に示されるように、複合機1の底側に給紙トレイ20が設けられている。給紙トレイ20の上側に給紙ローラ25が設けられている。給紙ローラ25は、一端が基軸29に回動可能に軸支された給紙アーム26の先端に回転可能に軸支されている。給紙アーム26には、基軸29から入力された回転駆動力を給紙ローラ25に伝達するギヤ駆動機構27が設けられている。プリンタ部2の内部には、第1モータ71及び第2モータ72(図4参照、本発明の第1モータ及び第2モータの一例)が配設されている。これら各モータ71,72は、正逆転方向への駆動が可能に構成されている。各モータ71,72の回転駆動力は、後述する伝達機構110(図4参照)、基軸29、及びギヤ駆動機構27を介して給紙ローラ25に伝達される。これにより、給紙ローラ25が回転駆動される。なお、これらのモータ71,72は、給紙ローラ25のみならず、後述するように、搬送ローラ87(本発明の第2被駆動体、搬送ローラの一例)及びキャリッジ38(本発明の第1被駆動体、キャリッジの一例)を駆動させるための駆動源としても用いられる。
【0029】
給紙トレイ20の奥側に傾斜板22が設けられている。給紙ローラ25が給紙トレイ20上の記録用紙に圧接された状態で、給紙ローラ25が回転されると、給紙ローラ25のローラ面と記録用紙との間の摩擦力により、最上位置の記録用紙が傾斜板22側へ送り出される。記録用紙は、その先端が傾斜板22に当接して上方へ案内される。傾斜板22から上方へ用紙搬送路23が延出されている。具体的には、用紙搬送路23は、傾斜板22から上方へ向けられ、そして、複合機1の正面側へ曲げられてから、複合機1の背面側から正面側へと延ばされて、画像記録ユニット24の下部を通って、排紙トレイ21まで延びている。したがって、給紙トレイ20に収容された記録用紙は、用紙搬送路23により下方から上方へUターンするように案内されて画像記録ユニット24に至り、画像記録ユニット24によって画像記録が行われた後、排紙トレイ21に排出される。
【0030】
図2に示されるように、用紙搬送路23には、画像記録ユニット24が配置されている。画像記録ユニット24は、インクジェット方式の記録ヘッド39(本発明の記録ヘッドの一例)と、この記録ヘッド39を搭載するキャリッジ38とを備えている。キャリッジ38は、記録用紙の搬送方向と直交する主走査方向(図2の紙面に垂直な方向)へ移動可能に支持されている。
【0031】
記録ヘッド39は、キャリッジ38の底面に配置されており、記録ヘッド39のノズルがキャリッジ38の下面に露出されている。複合機1の内部に配置されたインクカートリッジ(不図示)から各色のインクが記録ヘッド39へ供給される。キャリッジ38が往復して移動される間に、記録ヘッド39のノズルから各色インクが微小なインク滴として選択的に吐出される。これにより、プラテン42上を搬送される記録用紙に画像記録が行われる。
【0032】
図3に示されるように、用紙搬送路23の上側において一対のガイドレール43,44が配置されている。これらガイドレール43,44は、記録用紙の搬送方向(図3の上側から下側方向)に所定距離を隔てられて対向しており、且つ記録用紙の搬送方向と直交する主走査方向(図3の左右方向)に延設されている。ガイドレール43,44は、プリンタ部2の筐体内に設けられ、プリンタ部2を構成する各部材を支持するフレームの一部を構成している。キャリッジ38は、ガイドレール43,44を跨ぐようにして上記主走査方向に摺動可能に載置されている。
【0033】
ガイドレール43は、記録用紙の搬送方向上流側に配設されている。このガイドレール43は、用紙搬送路23の幅方向(図3の左右方向)の長さがキャリッジ38の往復動範囲より長い平板状のものである。また、ガイドレール44は、記録用紙の搬送方向下流側に配設されている。このガイドレール44は、用紙搬送路23の幅方向の長さがガイドレール43とほぼ同じ長さの平板状のものである。キャリッジ38の搬送方向上流側の端部がガイドレール43に載置され、キャリッジ38の搬送方向下流側の端部がガイドレール44に載置されており、キャリッジ38は、各ガイドレール43,44の長手方向に摺動されるようになっている。
【0034】
ガイドレール44の搬送方向下流側の縁部45は、上方へ向かって略直角に曲折されている。ガイドレール43,44に担持されたキャリッジ38は、縁部45をローラ対等の狭持部材により摺動可能に狭持している。これにより、キャリッジ38は、記録用紙の搬送方向に対して位置決めされ、且つ、記録用紙の搬送方向と直交する方向に摺動することができる。つまり、キャリッジ38は、ガイドレール43,44上に摺動自在に担持され、ガイドレール44の縁部45を基準として、記録用紙の搬送方向と直交する方向に往復動する。
【0035】
ガイドレール43の上面には、図3に示されるように、ベルト駆動機構46が配設されている。ベルト駆動機構46は、駆動プーリ47と、笠歯車58(図4参照)と、従動プーリ48と、無端環状のベルト49とを有している。駆動プーリ47と笠歯車58とは、回転軸59(図4参照)で連結されており、これらは一体に回転可能に支持されている。図4に示されるように、回転軸59は、後述する中間プレート152に設けられた支持部152Aで回転可能に支持されている。このように支持された笠歯車58に、後述する伝達機構110(図4参照)から出力された回転駆動力が入力(伝達)される。本実施形態では、説明の便宜上、ベルト駆動機構46の出力を入力で除算して得られるベルト駆動機構46の速度伝達比pが「5/44」に設定されているものとする。なお、言うまでもなく、速度伝達比pは、要求されるキャリッジ38の動作や速度に応じて任意の値に適宜変更可能である。
【0036】
駆動プーリ47及び従動プーリ48は、用紙搬送路23の幅方向の両端付近にそれぞれ設けられている。駆動プーリ47と従動プーリ48との間に、無端環状のベルト49が張架されている。第1モータ71及び第2モータ72(図4参照)の回転駆動力は、後述する伝達機構110(図4参照)を介して駆動プーリ47の軸に伝達される。これにより、駆動プーリ47が回転駆動される。駆動プーリ47の回転によってベルト49が周運動する。なお、ベルト49は無端環状のもののほか、有端のベルトの両端部をキャリッジ38に固着するものも採用され得る。
【0037】
キャリッジ38は、その底面側においてベルト49に連結されている。したがって、ベルト49の周運動に基づいて、キャリッジ38が縁部45を基準としてガイドレール43,44上を移動する。このようなキャリッジ38に記録ヘッド39が搭載されて、記録ヘッド39が、用紙搬送路23の幅方向を主走査方向として往復動される。
【0038】
図3に示されるように、ガイドレール44には、エンコーダストリップ50が配設されている。エンコーダストリップ50は、透明な樹脂からなる帯状のものである。エンコーダストリップ50には、遮光部と透光部とが等ピッチで配置されたパターンが記されている。ガイドレール44の幅方向(キャリッジ38の移動方向)の両端それぞれには、その上面から起立するように一対の支持用リブが形成されている。エンコーダストリップ50は、その両端部それぞれが支持用リブに係止されて、縁部45に沿って架設されている。なお、エンコーダストリップ50はバネなどによって張力が付与されている。
【0039】
キャリッジ38の上面において、エンコーダストリップ50に対応する位置には、透過型センサであるフォトインタラプタなどの光学センサ35が設けられている。光学センサ35の発光素子と受光素子との間にエンコーダストリップ50が挿入されている。エンコーダストリップ50と光学センサ35とによって、キャリッジ38の位置を検出するためのリニアエンコーダ150(本発明の第1位置情報取得手段の一例、図12及び図13参照)が構成される。本実施形態では、エンコーダストリップ50のパターンを光学センサ35が読み取ることにより、キャリッジ38の位置情報を示す検出信号が得られる。この検出信号は、後述する制御装置100(図12及び図13参照、本発明の制御手段の一例)に入力されて、第1モータ71及び第2モータ72(図4参照)の駆動制御に用いられる。
【0040】
図2及び図3に示されるように、用紙搬送路23の下側には、記録ヘッド39と対向してプラテン42が配設されている。プラテン42は、キャリッジ38の移動範囲のうち、記録用紙が通過する中央部分に渡って配設されている。プラテン42の幅は、搬送可能な記録用紙の最大幅より十分に大きいものであり、記録用紙の両端は常にプラテン42の上を通過する。
【0041】
図3に示されるように、記録用紙が通過しない範囲、すなわち記録ヘッド39による画像記録領域の外側には、メンテナンス機構(不図示)が配設されている。具体的には、メンテナンス機構は、図3においてプラテン42の右端部に配置されている。メンテナンス機構は、記録ヘッド39のノズル内のインクの乾燥を防止したり、ノズルから気泡や異物を吸引除去するものである。本実施形態では、画像記録を行わない場合は、キャリッジ38は、画像記録指示が入力されるまでメンテナンス機構の上方で待機している。
【0042】
図2に示されるように、画像記録ユニット24の上流側には、搬送ローラ87とピンチローラ88とを有する一対の搬送ローラ対89が設けられている。画像記録ユニット24の下流側には、排紙ローラ90と該排紙ローラ90の上方に設けられた拍車91とを有する一対の排出ローラ対92が設けられている。搬送ローラ87の回転軸87Aの一端に、後述する伝達機構110(図4参照)から出力された回転駆動力が入力(伝達)される。伝達機構110から搬送ローラ87の回転軸87Aへは、一定の速度伝達比qを有するギヤ列やベルトなどを介して連結されていてもよい。本実施形態では、伝達機構110から搬送ローラ87の回転軸87Aへの連結は直接連結であるので、伝達機構110の出力軸の回転速度と搬送ローラ87の回転速度との速度伝達比qは「1」に設定されているものとする。
【0043】
第1モータ71及び第2モータ72(図4参照)の回転駆動力は、後述する伝達機構110(図4参照)を介して搬送ローラ87の回転軸87Aに伝達される。これにより、搬送ローラ87が所定の回転速度で回転されて、記録用紙が用紙搬送路23中を搬送される。搬送ローラ87と排紙ローラ90とはギヤなどの伝達機構により連結されており、該伝達機構を介して搬送ローラ87からの駆動力が排紙ローラ90に伝達される。これにより、搬送ローラ87と排紙ローラ90とが同期駆動される。
【0044】
用紙搬送路23を搬送されている記録用紙は、搬送ローラ対89によってプラテン42上へ搬送される。そして、プラテン42上で画像が記録された記録済みの記録用紙は、排出ローラ対92によって排紙トレイ21へ搬送される。
【0045】
搬送ローラ87の回転軸87Aの一端にエンコーダディスク52(図4の波線参照)が設けられている。エンコーダディスク52の周縁には、遮光部と透光部とが等ピッチで交互に配置されたパターンが記されている。エンコーダディスク52の周縁に対応する位置にフォトインタラプタなどの光学センサ(不図示)が配設されている。光学センサの発光素子と受光素子との間にエンコーダディスク52の周縁が挿入されている。エンコーダディスク52と光学センサとによって、搬送ローラ87の回転位置を検出するためのロータリーエンコーダ160(本発明の第2位置情報取得手段の一例、図12及び図13参照)が構成される。本実施形態では、搬送ローラ87とともに回転するエンコーダディスク52のパターンは、光学センサによって読み取られる。エンコーダディスク52のパターンを光学センサが読み取ることにより、搬送ローラ87の回転位置情報を示す検出信号が得られる。この検出信号は、後述する制御装置100(図12及び図13参照)に入力されて、第1モータ71及び第2モータ72(図4参照)の駆動制御に用いられる。
【0046】
本実施形態では、複合機1に画像記録指示が入力されて、記録用紙における記録領域の先端が記録ヘッド39の下方に到達すると、搬送ローラ87が所定の改行幅で間欠的に回転駆動されて、記録用紙が同じ幅で間欠的に搬送される。
【0047】
一方、キャリッジ38は、待機位置から移動を開始して、プラテン42上を往復移動する。具体的には、一方向への移動とその逆方向への移動とが繰り返される。以降、この動作が繰り返されることにより、キャリッジ38はプラテン42上を往復移動する。
【0048】
本実施形態では、キャリッジ38が記録用紙における記録領域から外れて、キャリッジ38の移動速度が低下しているとき、若しくは停止しているときに、搬送ローラ87が定速駆動される。また、搬送ローラ87の回転速度が低下しているとき、若しくは停止しているときに、キャリッジ38が定速駆動される。つまり、搬送ローラ87とキャリッジ38とは概ね交互に駆動される。
【0049】
[伝達機構110]
プリンタ部2には、第1モータ71及び第2モータ72それぞれの回転駆動力を搬送ローラ87やキャリッジ38などに伝達するための伝達機構110(本発明の駆動力伝達装置の一例)が設けられている。以下、図4から図11を参照して、伝達機構110について説明する。なお、図4から図11では、各ギヤのピッチ円だけが図示されており、歯先円とギヤ歯の図示は省略されている。
【0050】
図4に示されるように、伝達機構110は、回転軸87Aの一端に取り付けられている。回転軸87Aの端部には、支持軸94(本発明の第1回転軸の一例)が接続されている。支持軸94には、エンドプレート151が設けられている。エンドプレート151に上述したエンコーダディスク52が取り付けられている。伝達機構110は、エンドプレート151と、回転軸87Aの端部付近でガイドレール43に固定された中間プレート152との間に設けられている。
【0051】
図5に示されるように、伝達機構110は、第1遊星歯車機構161(本発明の第1遊星歯車機構の一例)と、第2遊星歯車機構181(本発明の第2遊星歯車機構の一例)と、これらを連結する連結機構とを備える。
本実施形態では、第1遊星歯車機構161は、
支持軸94を介して駆動対象(搬送ローラ87)に連結される第1太陽ギヤ162(本発明の第1太陽歯車の一例)、
4つの第1遊星ギヤ163(本発明の第1遊星歯車の一例)と、第1モータ71に連結される第1入力ギヤ164Dとを備えた第1キャリア164(本発明の第1遊星キャリアの一例)、
第1複合ギヤ165に一体に形成された第1リングギヤ165C1(本発明の第1外輪歯車の一例)、
第1複合ギヤ165に一体に形成され、第2モータ72に連結される第2入力ギヤ165D、により構成されている。
また、第2遊星歯車機構181は、
第1複合ギヤ165に一体に形成された第2太陽ギヤ165C2(本発明の第2太陽ギヤの一例)、
4つの第2遊星ギヤ183(本発明の第2遊星歯車の一例)を備えた第2キャリア184(本発明の第2遊星キャリアの一例)、
第2複合ギヤ185と一体に形成された第2リングギヤ185E1(本発明の第2外輪歯車の一例)、により構成されている。
第2複合ギヤ185には連結ギヤ185E2が一体に形成されており、連結ギヤ185E2はアイドルギヤ153及びアイドルギヤ154を介して第1太陽ギヤ162に連結されている。この構成により第2遊星歯車機構181の第2リングギヤ185E1の回転が第1遊星歯車機構161の第1太陽ギヤ162へ伝達される。
【0052】
[第1遊星歯車機構161]
図6に示されるように、第1遊星歯車機構161の第1太陽ギヤ162は、支持軸94に固定されている。支持軸94は、回転軸87A及び搬送ローラ87と連結されており、第1太陽ギヤ162の回転は支持軸94と回転軸87Aを介して搬送ローラ87に伝達される。第1太陽ギヤ162は、軸心線155周りに自転可能に支持される。
【0053】
図7に示されるように、第1キャリア164の中央部には、貫通孔164Cが形成されている。貫通孔164Cにエンドプレート151の筒状部151Aが挿入され、第1キャリア164が筒状部151Aによって軸心線155周り回転可能に支持される。
【0054】
第1キャリア164は、貫通孔164Cの軸方向に突出する円筒状の筒状部164Aを有する。この筒状部164Aの突出端には、更に軸方向へ突出する1つ以上の支持軸164B(本発明の第2回転軸の一例)が形成されている。これらの支持軸164Bは、支持軸94と平行である。支持軸164Bは、貫通孔164Cの周囲にほぼ均等に配置されている。各支持軸164Bそれぞれに第1遊星ギヤ163が支持軸164Bの周りを回転可能に支持される。支持軸164B及び第1遊星ギヤ163の数は、一般に1つでも複数でもよいが、2つ以上の支持軸164B及び第1遊星ギヤ163を等間隔に配置することが好ましい。支持軸164B及び第1遊星ギヤ163の数は、遊星歯車機構の組立条件やスペース、コスト、伝達トルクなどによって決定される。本実施形態では、図7に示されるように、4組の支持軸164B及び第1遊星ギヤ163が設けられている。
【0055】
第1キャリア164の外周部には、第1入力ギヤ164Dが形成されている。この第1入力ギヤ164Dに第1モータ71の出力ギヤ77(図4参照)が噛合されている。第1モータ71の出力ギヤ77から第1入力ギヤ164Dへは、一定の速度伝達比rを有するギヤ列やベルトなどを介して連結されていてもよい。本実施形態では、第1モータ71の出力ギヤ77から第1入力ギヤ164Dへの連結は直接連結であるので、速度伝達比rは出力ギヤ77と第1入力ギヤ164Dとのギヤ比で定まり、「44/15」に設定されているものとする。
【0056】
図8に示されるように、第1複合ギヤ165の中央部には、貫通孔165Cが形成されている。貫通孔165Cに第1キャリア164の筒状部164Aが挿入されることにより、第1複合ギヤ165は軸心線155周りを回転可能に支持される。
【0057】
第1複合ギヤ165は、貫通孔165Cの軸方向に突出する円筒状の筒状部165Aを有する。この筒状部165Aの突出端側の内周面に第1リングギヤ165C1が形成されている。第1複合ギヤ165が筒状部164Aによって支持された状態で、支軸164Bに支持された第1遊星ギヤ163が第1リングギヤ165C1にもかみ合う。つまり、第1遊星ギヤ163は、第1太陽ギヤ162及び第1リングギヤ165C1の両方とかみ合って回転を伝達する。そして、第1遊星ギヤ163は、支持軸164Bの周りを自転しながら第1太陽ギヤ162の周りを公転する。この第1遊星ギヤ163の公転により第1キャリア164が回転する。
【0058】
なお、第1複合ギヤ165の外周部には、第2入力ギヤ165Dが形成されている。この第2入力ギヤ165Dに第2モータ72の出力ギヤ78(図4参照)が噛合されている。第2モータ72の出力ギヤ78から第2入力ギヤ165Dへは、一定の速度伝達比sを有するギヤ列やベルトなどを介して連結されていてもよい。本実施形態では、第2モータ72の出力ギヤ78から第2入力ギヤ165Dへの連結は直接連結であるので、速度伝達比sは出力ギヤ78と第2入力ギヤ165Dとのギヤ比で定まり、「22/5」に設定されているものとする。
【0059】
[第2遊星歯車機構181]
図8に示されるように、第1複合ギヤ165の筒状部165Aの突出端側の外周面に第2太陽ギヤ165C2が形成されている。つまり、第2太陽ギヤ165C2は、第1リングギヤ165C1と一体に形成されている。これにより、第1リングギヤ165C1に伝達された駆動力が第2太陽ギヤ165C2に伝達する。このように、第2太陽ギヤ165C2が第1リングギヤ165C1と共に第1複合ギヤ165と一体に形成された構成が、本発明の第1駆動伝達機構の一例であり、第1リングギヤ165C1が本発明の第1要素に相当し、第2太陽ギヤ165C2が本発明の第2要素に相当する。
【0060】
図9に示されるように、第2キャリア184の中央部には、貫通孔184Cが形成されている。貫通孔184Cには第1複合ギヤ165の筒状部165Aが挿入される。これにより、第2キャリア184は筒状部165Aによって軸心線155周りを回転可能に支持される。
【0061】
第2キャリア184の側面には、貫通孔184Cの軸方向外側へ突出する1つ以上の支持軸184B(本発明の第3回転軸の一例)が形成されている。これらの支持軸184Bは、支持軸94と平行である。支持軸184Bは、貫通孔184Cの周囲にほぼ均等に配置されている。各支持軸184Bそれぞれに第2遊星ギヤ183が支持軸184Bの周りを回転可能に支持されている。支持軸184B及び第2遊星ギヤ183の数は、一般に1つでも複数でもよいが、2つ以上の支持軸184B及び第2遊星ギヤ183を等間隔に配置することが好ましい。支持軸184B及び第2遊星ギヤ183の数は、遊星歯車機構の組立条件やスペース、コスト、伝達トルクなどによって決定される。本実施形態では、図9に示されるように、4組の支持軸184B及び第2遊星ギヤ183が設けられている。
【0062】
なお、第2キャリア184の外周部には、出力ギヤ184Dが形成されている。この出力ギヤ184Dは傘歯車であり、キャリッジ移動機構と連結されている笠歯車58(図4参照)が噛み合わされている。
【0063】
図10に示されるように、第2複合ギヤ185には、第2リングギヤ185E1と連結ギヤ185E2とが形成されている。第2キャリア184が筒状部165Aによって支持された状態で、支軸184Bに支持された第2遊星ギヤ183は第2リングギヤ185E1にかみ合う。つまり、第2遊星ギヤ183は、第2太陽ギヤ165C2及び第2リングギヤ185E1の両方とかみ合って回転を伝達する。そして、第2遊星ギヤ183は、支持軸184Bの周りを自転しながら第2太陽ギヤ165C2の周りを公転する。この第2遊星ギヤ183の公転により第2キャリア184が回転する。
【0064】
図11に示されるように、アイドルギヤ153は、中間プレート152に設けられた支持軸153Aに回転可能に支持されている。また、アイドルギヤ154は、中間プレート152に設けられた支持軸154Aに回転可能に支持されている。アイドルギヤ153は、アイドルギヤ154と第1遊星歯車機構161の第1太陽ギヤ162の両方に噛合している。また、アイドルギヤ154は、連結ギヤ185E2(図10参照)とアイドルギヤ153の両方に噛合している。これにより、第2複合ギヤ185と第1太陽ギヤとの間でアイドルギヤ153及びアイドルギヤ154を介して所定の速度伝達比(第1太陽ギヤ162と連結ギヤ185E2のギヤ比)で駆動力が伝達される。このように第2複合ギヤ185がアイドルギヤ153及びアイドルギヤ154を介して第1太陽ギヤ162と接続する構成は、本発明の第2駆動伝達機構の一例であり、連結ギヤ185E2が本発明の第4要素に相当し、第1太陽ギヤ162が本発明の第3要素に相当する。なお支持軸153A、アイドルギヤ153、支持軸154A、アイドルギヤ154の数は一般に一組でも複数組でもよいが、二組以上を等間隔に配置することが好ましい。これらの組数は、遊星歯車機構の組立条件やスペース、コスト、伝達トルクなどにより決定される。本実施形態では、図9に示されるように、4組の支持軸153A、アイドルギヤ153、支持軸154A、アイドルギヤ154が設けられている。なおアイドルギヤ153は、第1太陽ギヤ162でなく、第1太陽ギヤ162と一体で回転する、異なる径の第3太陽ギヤに連結されていてもよい。本実施形態は、第1太陽ギヤと第3太陽ギヤの大きさと形状を一致させ、1つのギヤで兼ねている場合の例である。
【0065】
以下、伝達機構110の入力と出力との関係について説明する。
遊星歯車機構を含む差動歯車機構は、一般に3つの回転体の間で回転量の変換を行い、その伝達比は他の要素の回転量に依存するため、3つの回転体のうち2つの回転体の回転量が決まれば残り1つの回転量が決まるという性質を持っている。
第1モータ71から第1入力ギヤ164Dへ動力を伝達して第1キャリア164を回転させ、第1モータ72から第2入力ギヤ165Dへ動力を伝達して第1複合ギヤ165を介して第1リングギヤ165C1を回転させると、第1遊星歯車機構の第1キャリア164及び第1リングギヤ165C1が所定の回転量で回転されることになるので、残る第1太陽ギヤ162の回転量が決まり、第1太陽ギヤ162と一体で回転する搬送ローラ87を所望の回転量で回転させることができる。
また、第1太陽ギヤ162が回転すると、アイドルギヤ153を介して連結ギヤ185E2が回転し、第2リングギヤ185E1が所定の回転量で回転する。第2太陽ギヤ165C2は第1複合ギヤ165の一部であるからその回転量は定まっている。したがって第2遊星歯車機構の第2太陽ギヤ165C2、第2リングギヤ185E1が所定の回転量で回転されることになるので、残る第2キャリア184を所望の回転量で回転させることができる。第2キャリア184の回転量は出力ギヤ184Dを介してその先に連結されたキャリッジ38を移動させる。
搬送ローラ87を所望の回転量で回転させることのできる第1モータ71と第2モータ72の回転量の組み合わせは無数に存在し、またキャリッジ38を所望の量移動させることのできる第1モータ71と第2モータ72の回転量の組み合わせも無数に存在するが、搬送ローラ87の回転量とキャリッジ38の移動量を同時に所望の量とするような第1モータ71と第2モータ72の回転量の組み合わせはただ1つしか存在しないのである。
【0066】
ここで、
搬送ローラに連結される第1太陽ギヤ162の回転角度をθA、
第1モータ71に連結される第1キャリア164の回転角度をθB、
第2モータ72に連結される第1複合ギヤ165の回転角度をθC、
キャリッジに連結される第2キャリア184の回転角度をθD、
第2複合ギヤ185の回転角度をθE、とする。
また、
第1太陽ギヤ162のピッチ円半径をRA、
第1リングギヤ165C1のピッチ円半径をRC1、
第1遊星ギヤ163のピッチ円半径をRB、
第2太陽ギヤ165C2のピッチ円半径をRC2、
第2遊星ギヤ183のピッチ円半径をRD、
第2リングギヤ185E1のピッチ円半径をRE1、
連結ギヤ185E2のピッチ円半径をRE2、
アイドルギヤ153のピッチ円半径をRF1、
アイドルギヤ154のピッチ円半径をRF2、とする。
【0067】
この場合、第1遊星歯車機構161における各回転角は、次式(1)の関係を有する。
【0068】
【数1】
【0069】
また、第2遊星歯車機構181における各回転角は、次式(2)の関係を有する。
【0070】
【数2】
【0071】
更に、RE2、θE、RA、及びθAには、次式(3)の関係を有する。
【0072】
【数3】
【0073】
上記各関係を整理すると、次の関係式(4)が得られる。
【0074】
【数4】
【0075】
ここで、RA〜RE2は、歯車のピッチ円半径、つまり0でない正の実数であることとから、関係式(5)が常に成立することがいえる。
【数5】
【0076】
ただし、detAは行列Aの行列式を表し、2×2の行列については一般に式(6)で定義される。
【数6】
【0077】
上記関係式(5)によって、関係式(4)には次の逆変換式(7)が存在することが保証される。
【数7】
【0078】
また、関係式(4)から、任意の入力の組み合わせ(θB、θC)に対して、その結果としての出力の組み合わせ(θA、θD)がただ1つ決まる。また関係式(7)から、所望する任意の出力の組み合わせ(θA、θD)に対して、それを実現するような入力の組み合わせ(θB、θC)が存在する。したがって、第1太陽ギヤ162の回転角θAと第2キャリア184の回転角θDは、第1キャリア164の回転角θBと第1複合ギヤ165の回転角θCとを変更することで、任意の角度に変更することが可能である。
【0079】
また、以下の関係式(8)が常に成立することが自明である。つまり、回転量のθAとθDを互いに独立な任意の値に変更可能であるのだから、回転角速度も独立な任意の値に変更可能である。
【数8】
【0080】
アイドルギヤや遊星ギヤのピッチ円半径は伝達機構110の入力と出力の関係に直接影響しないが、各歯車が標準歯車の場合は、以下の条件(9)〜(11)を満たす必要がある。
【数9】
【数10】
【数11】
【0081】
ここで、本実施形態では、各歯車は標準歯車であり、
モジュールM=1(すべてのギヤで共通)、
第1太陽ギヤ162の歯数ZA=40、
第1リングギヤ165C1の歯数ZC1=80、
第1遊星ギヤ163の歯数ZB=20、
第2太陽ギヤ165C2の歯数ZC2=100、
第2遊星ギヤ183の歯数ZD=10、
第2リングギヤ185E1の歯数ZE1=120、
連結ギヤ185E2の歯数ZE2=192、
アイドルギヤ153の歯数ZF1=38、
アイドルギヤ154の歯数ZF2=38、である。
標準歯車のモジュールMと歯数Z、ピッチ円半径Rの間には次式(12)の関係がある。
【数12】
【0082】
上記式(12)の関係から計算した各ギヤのピッチ円半径を上述の式(4)へ代入して整理すると、本実施例におけるθA〜θDに関する以下の関係式(13)、(14)が得られる。
【数13】
【数14】
【0083】
[制御装置100]
図12及び図13に示されるように、プリンタ部2には、制御手段の一例である制御装置100が設けられている。制御装置100は、図13に示されるように、現在値検出手段102、目標値生成手段103、モータドライバ170、を備えている。現在値検出手段102は、リニアエンコーダ150からの信号を基にキャリッジ38の位置を求め、ロータリーエンコーダ160からの信号を基に搬送ローラ87の角度を求める。目標値生成手段103は、印刷内容と現在値検出手段102が求めたキャリッジ38の位置と搬送ローラ87の角度を基にモータドライバ170を制御し、第1モータ71及び第2モータ72それぞれの回転を制御する。
【0084】
第1モータ71はギヤ列Qを介して伝達装置110の第1キャリア164を角度θB回転させる。同様に第2モータ72はギヤ列Rを介して伝達装置110の第1複合ギヤ165を角度θC回転させる。
第1キャリア164の回転θB、第1複合ギヤ165の回転θCに応じて、伝達装置110の第1太陽ギヤ162は角度θA、第1太陽ギヤ162は角度θD回転する。
第1太陽ギヤ162の回転θAはギヤ列Pを介してキャリッジ38を所定の位置へ移動させる。同様に第1太陽ギヤ162の回転θDはギヤ列Sを介して搬送ローラ87を所定の角度へ回転させる。
【0085】
ここで、ギヤ列P、Q、R、Sの速度伝達比p,q,r,sについての前述の定義により、第1モータ71の回転角度をX、第2モータ72の回転角度をY、キャリッジ38の移動量をU、搬送ローラ87の回転角度をVとすると、これらの間には、U=pθA、V=qθD、θB=rX、θC=sY、の関係が成立している。また、本実施形態では、p=5/44、q=1、r=44/5、s=22/5であるから、これらを関係式(13)、(14)に適用すると、以下の式(15)、(16)が得られる。
【数15】
【数16】
【0086】
キャリッジ38に連結されたリニアエンコーダ150によりキャリッジ38の移動に応じた信号が生成され、制御装置100の現在値検出手段102に入力される。同様に搬送ローラ87に連結されたロータリーエンコーダ160により搬送ローラ87の回転角度に応じた信号が生成され、制御装置100の現在値検出手段102に入力される。現在値検出手段102はリニアエンコーダ150およびロータリーエンコーダ160から入力された信号を基にキャリッジ38と搬送ローラ87の現在位置及び現在速度を演算し、その値を演算部104及び目標値生成手段103へ出力する。目標値生成手段103は、印刷内容と、現在値生成手段102から入力されたキャリッジ38と搬送ローラ87の現在位置及び現在速度を基に、演算部104における次回演算時のキャリッジ38と搬送ローラ87の位置及び速度の目標値を演算し、その値を演算部104へ出力する。演算部104は一定時間間隔で演算を行う。演算部104は、現在値生成手段102から入力されたキャリッジ38と搬送ローラ87の現在位置及び現在速度を、関係式(16)を用いて、第1モータ71の現在の回転角度及び回転速度と、第2モータ72の現在の回転角度及び回転速度に変換する。また演算部104は目標値生成手段103から入力されたキャリッジ38と搬送ローラ87の位置及び速度の前回の目標値を、関係式(16)を用いて第1モータ71の前回の回転角度目標値及び前回の回転速度目標値と、第2モータ72の前回の回転角度目標値及び回転速度目標値に変換する。演算部104は、第1モータ71と第2モータ72のそれぞれについて、回転角度目標値と現在の回転角度との偏差や回転速度目標値と現在の回転速度との偏差に基づいて、各モータに与えるべき制御量を算出してモータドライバ170へ出力する。モータドライバ170は、演算部104から入力された制御量に対応した電流を第1モータ71及び第2モータ72に出力する。第1モータ71及び第2モータ72の回転は関係式(15)の関係によってキャリッジ38と搬送ローラ87の運動に変換されてキャリッジ38と搬送ローラ87を動かす。このようにしてキャリッジ38と搬送ローラ87の位置や速度が所望の状態に制御される。
【0087】
なお、上述の実施形態では、リニアエンコーダ150でキャリッジ38の位置情報を検出し、ロータリーエンコーダ160で搬送ローラ87の位置情報を検出し、それらの検出結果を制御装置100へフィードバックして第1モータ71及び第2モータ72を制御することとしたが、例えば、図14及び図15に示されるように、第1モータ71の回転速度をロータリーエンコーダ180で測定(取得)し、第2モータ72の回転速度をロータリーエンコーダ190で測定(取得)し、これらの測定結果を制御装置100へフィードバックして第1モータ71及び第2モータ72を制御する構成を採用することも可能である。ここで、ロータリーエンコーダ180,190は、上述したロータリーエンコーダ160と同じように、エンコーダディスクと光学センサとから構成されたものであり、ロータリーエンコーダ180のエンコーダディスクは、第1モータ71の出力ギヤ77と同心で回転するように出力ギヤ77に取り付けられており、ロータリーエンコーダ190のエンコーダディスクは、第2モータ72の出力ギヤ78と同心で回転するように出力ギヤ78に取り付けられている。この構成では、第1モータ71に連結されたロータリーエンコーダ180により第1モータ71の回転に応じた信号が生成され、制御装置100の現在値検出手段102へ入力される。同様に第2モータ72に連結されたロータリーエンコーダ190により第2モータ72の回転角度に応じた信号が生成され、制御装置100の現在値検出手段102へ入力される。現在値検出手段102はロータリーエンコーダ180及びロータリーエンコーダ190から入力された信号を基に第1モータ71と第2モータ72の現在回転量及び現在回転速度を演算し、演算部104及び目標値生成手段103へ出力する。目標値生成手段103は、印刷内容と、現在値生成手段102から入力された第1モータ71と第2モータ72の現在回転量及び現在回転速度を関係式(15)によって変換して得られたキャリッジ38と搬送ローラ87の現在位置及び現在速度を基に、演算部104における次回演算時のキャリッジ38と搬送ローラ87の位置及び速度の目標値を演算し、その値を演算部104へ出力する。演算部104は一定時間間隔で演算を行う。演算部104は、目標値生成手段103から入力されたキャリッジ38と搬送ローラ87の位置及び速度の前回の目標値を、関係式(16)を用いて第1モータ71の前回の回転角度目標値及び前回の回転速度目標値と、第2モータ72の前回の回転角度目標値及び回転速度目標値に変換する。演算部104は、第1モータ71と第2モータ72のそれぞれについて、回転角度目標値と現在の回転角度との偏差や回転速度目標値と現在の回転速度との偏差に基づいて、各モータに与えるべき制御量を算出してモータドライバ170へ出力する。モータドライバ170は、演算部104から入力された制御量に対応した電流を第1モータ71及び第2モータ72に出力する。第1モータ71及び第2モータ72の回転は関係式(15)の関係によってキャリッジ38と搬送ローラ87の運動に変換されてキャリッジ38と搬送ローラ87を動かす。このようにしてキャリッジ38と搬送ローラ87の位置や速度が所望の状態に制御される。
【0088】
また、上述した実施形態では、プリンタ部2におけるキャリッジ38及び搬送ローラ87の駆動に用いられる第1モータ71及び第2モータ72に本発明を適用した例について説明したが、本発明は、各モータ71,72で駆動制御される2つの被駆動体のうち、一方の被駆動体の負荷が大きいときに他方の被駆動体の負荷が小さくなるといった駆動機構全般に適用可能である。したがって、例えば、二足歩行ロボットにおいて、各脚部が2つのモータで駆動されている場合に、一方の脚部が前進方向へ駆動され、他方の脚部でロボットの自重を支持する二足歩行機構においても本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0089】
1・・・複合機
2・・・プリンタ部
24・・・画像記録ユニット
25・・・給紙ローラ
35・・・光学センサ
46・・・ベルト駆動機構
71・・・第1モータ
72・・・第2モータ
87・・・搬送ローラ
100・・・制御装置
102・・・現在値検出手段
103・・・目標値生成手段
110・・・伝達機構
150・・・リニアエンコーダ
160・・・ロータリーエンコーダ
161・・・第1遊星歯車機構
162・・・第1太陽ギヤ
163・・・第1遊星ギヤ
164・・・第1キャリア
165・・・第1複合ギヤ
170・・・モータドライバ
181・・・第2遊星歯車機構
165C2・・・第2太陽ギヤ
183・・・第2遊星ギヤ
184・・・第2キャリア
185・・・第2複合ギヤ
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのモータの駆動力を第1被駆動体及び第2被駆動体に伝達する駆動力伝達装置、及びこの駆動力伝達装置を備えた画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インク滴を記録用紙に付着させることにより該記録用紙に画像を記録する、所謂インクジェット記録方式の画像記録装置が公知である。この画像記録装置は、記録用紙を搬送するための搬送ローラと、キャリッジと、キャリッジを記録用紙の搬送方向と直交する向きに移動させるためのキャリッジ移動機構とを備えている。キャリッジは記録ヘッドを備えている。記録ヘッドはインク滴を吐出するノズルを備えている。
【0003】
上述した従来の画像記録装置においては、次のようにして画像記録が行われる。まず、記録用紙における記録領域の先端が記録ヘッドの下方に到達するまで、搬送ローラが記録用紙を搬送する。記録用紙上の記録領域の先端が記録ヘッドの下方に到達すると、搬送ローラが停止し、記録用紙も停止する。この状態で、キャリッジ移動機構は、待機位置で停止していたキャリッジを搬送方向と直交する向きに移動させる。この移動過程において、記録ヘッドのノズルからインク滴を選択的に吐出すると、キャリッジが移動するにつれて1ライン分の画像が記録用紙に記録される。そして、キャリッジが1ライン分の画像の記録を終えて待機位置に到達すると、キャリッジ移動機構はキャリッジの移動を停止し、搬送ローラは記録用紙を1ラインに相当する所定幅だけ搬送する。このように、1ライン分の印刷と1ライン幅分の用紙搬送が交互に繰り返されることにより、連続した画像が記録用紙に記録される。このように、従来の画像記録装置においては、搬送ローラとキャリッジ移動機構はほぼ交互に駆動される。
【0004】
このような従来の画像記録装置においては、搬送ローラ駆動用のモータ(以下「LFモータ」という。)とキャリッジ移動機構駆動用のモータ(以下「CRモータ」という。)とをそれぞれ独立に備えて駆動する構成(特許文献1参照)と、1つのモータからの駆動力を切替機構によって搬送ローラとキャリッジ駆動機構へ交互に伝えて駆動する構成(特許文献2参照)とが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−213301号公報
【特許文献2】特開平6−123337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
1ライン印刷中は記録用紙を静止させていることより、搬送ローラとキャリッジ移動機構とがほぼ交互に駆動されるから、搬送ローラの仕事率が最大になる時間帯とキャリッジ移動機構の仕事率が最大になる時間帯とはずれている。しかし、LFモータとCRモータをそれぞれ独立に備え、それぞれを独立に駆動させる構成では、LFモータの出力とCRモータの出力とを互いに融通しあうことができない。そのため、LFモータは搬送ローラで必要とされる仕事率以上の仕事率を単独で出力可能である必要があり、CRモータはキャリッジ移動機構で必要とされる仕事率以上の仕事率を単独で出力可能である必要があるので、結果的にLFモータの最大出力とCRモータの最大出力の合計は画像記録装置が必要とする最大出力よりも大きくなってしまう。その結果、画像記録装置が必要とする最大出力を出力できる程度のモータよりも大出力の、言い換えると大型のモータを搭載する必要が生じ、画像記録装置全体を小型化しにくいという問題があった。
【0007】
また、1つのモータからの駆動力を切替機構で搬送ローラとキャリッジ駆動機構へ交互に伝えて駆動する構成では、切替機構の構造が複雑になり、画像記録装置全体を小型化しにくいうえに騒音も発生しやすくなる。切替機構の制御も複雑である。また1ライン印刷するごとに切り替え動作が必要になるため、印刷速度を向上しにくいという問題があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、切替機構なしでLFモータの出力とCRモータの出力とを互いに融通しあうことができる駆動力伝達装置及びこれを備えた画像記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明は、所定の制御手段によって回転速度が独立に制御される第1モータ及び第2モータの駆動力を第1被駆動体及び第2被駆動体に伝達する駆動力伝達装置として構成されている。この駆動伝達装置は、第1遊星歯車機構と、第2遊星歯車機構と、第1駆動伝達機構と、第2駆動伝達機構とを具備する。
上記第1遊星歯車機構は、第1回転軸の周りを回転可能に設けられた第1太陽歯車と、上記第1回転軸の周りを回転可能に設けられた第1遊星キャリアと、上記第1遊星キャリアに支持され、上記第1回転軸と平行な第2回転軸の周りを回転可能であり、且つ上記第1太陽歯車と噛合して上記第1太陽歯車の外周を公転可能な第1遊星歯車と、上記第1遊星歯車と噛合して上記第1回転軸の周りを回転可能に設けられた第1外輪歯車と、により構成されている。
上記第2遊星歯車機構は、上記第1回転軸の周りを回転可能に設けられた第2太陽歯車と、上記第1回転軸の周りを回転可能に設けられた第2遊星キャリアと、上記第2遊星キャリアに支持され、上記第1回転軸と平行な第3回転軸の周りを回転可能であり、且つ上記第2太陽歯車と噛合して上記第2太陽歯車の外周を公転可能な第2遊星歯車と、上記第2遊星歯車と噛合して上記第1回転軸の周りを回転可能に設けられた第2外輪歯車と、により構成されている。
上記第1駆動伝達機構は、上記第1太陽歯車、上記第1遊星キャリア、及び上記第1外輪歯車のいずれか1つの第1要素と、上記第2太陽歯車、上記第2遊星キャリア、及び上記第2外輪歯車のいずれか1つの第2要素とを所定の第1伝達比で接続するものである。
上記第2駆動伝達機構は、上記第1太陽歯車、上記第1遊星キャリア、及び上記第1外輪歯車のうち上記第1要素を除くいずれか1つの第3要素と、上記第2太陽歯車、上記第2遊星キャリア、及び上記第2外輪歯車のうち上記第2要素を除くいずれか1つの第4要素とを所定の第2伝達比で接続するものである。
上記第1要素又は上記第2要素のいずれか一方の要素と、上記第3要素又は上記第4要素のいずれか一方の要素と、上記第1太陽歯車、上記第1遊星キャリア、上記第1外輪歯車、上記第2太陽歯車、上記第2遊星キャリア、及び上記第2外輪歯車のうち上記第1駆動伝達機構及び上記第2駆動伝達機構が接続されていない2つの要素と、を含む4つの要素から選択された2つの要素のそれぞれに上記第1モータ及び上記第2モータが所定の伝達比でそれぞれ接続され、上記4つの要素のうちの残りの2つの要素のそれぞれに上記第1被駆動体及び上記第2被駆動体が所定の伝達比でそれぞれ接続されている。
【0010】
上述したように、本発明の駆動力伝達装置においては、上記4つの要素のいずれか2つの要素のそれぞれに上記第1モータ及び上記第2モータがそれぞれ接続されており、また、上記4つの要素のうちの残りの2つの要素のそれぞれに上記第1被駆動体及び上記第2被駆動体がそれぞれ接続されている。このとき、第1被駆動体に対する任意の速度と第2被駆動体に対する任意の速度との組み合わせを実現するような第1モータ及び第2モータそれぞれの回転速度の組み合わせが1つだけ存在する。換言すれば、本発明の駆動力伝達装置によれば、第1被駆動体及び第2被駆動体に接続される2つの要素それぞれの回転速度の制御、つまり、第1被駆動体及び第2被駆動体それぞれの速度制御を独立に行うことが可能となる。
【0011】
例えば、インクジェット記録方式の画像記録装置のように、第1被駆動体としての搬送ローラと第2被駆動体としてのキャリッジとが概ね交互に駆動される場合、換言すれば、搬送ローラとキャリッジとが同時に駆動されない場合は、キャリッジの速度が最大のときに、搬送ローラは低速又は停止している。このように、モータが駆動する対象物の一方が高速度のときに他方が低速度または停止するという状態で第1モータ及び第2モータが駆動されるという状況においては、本発明の駆動力伝達装置では、第1被駆動体及び第2被駆動体それぞれで消費される仕事率の差よりも、第1モータ及び第2モータそれぞれで消費される電力の差のほうが小さくなるように、第1モータ及び第2モータの必要回転速度が分配される。つまり、2つの被駆動体の仕事が平均化されて2つのモータに分配される。これにより、第1モータ及び第2モータの片方だけから大きな回転速度を取り出すアンバランスな使用を避けて、両方のモータの回転速度をバランスよく効率よく利用することができる。その結果、モータを大型化することなく所望の回転速度を第1被駆動体及び第2被駆動体それぞれに伝達することが可能となる。
【0012】
また、本発明の駆動力伝達装置によれば、第1被駆動体及び第2被駆動体それぞれの速度は、第1モータ及び第2モータそれぞれの回転速度の線形和となるため、第1被駆動体の速度又は第2被駆動体の速度が非常に小さくても、第1モータ及び第2モータそれぞれの回転速度を比較的安定な高回転域であるように構成することが可能である。このため、本発明の駆動力伝達装置は、大きなトルクを必要とする立ち上がり時や低速駆動時に特に有効である。
【0013】
また、第1被駆動体の伝達機構と第2被駆動体の伝達機構とが独立している従来機構では、第1被駆動体及び第2被駆動体それぞれの減速時に各被駆動体が有する運動エネルギーを熱などに変換させて無駄に消費していたが、本発明の駆動力伝達装置においては、一方の被駆動体が減速する際に、その被駆動体が有する運動エネルギーが他方の被駆動体の駆動力として転用される。そのため、当該駆動力伝達装置において、エネルギーを有効に利用することが可能となる。また、従来に比べて、加減速時の電力消費量を省減することができる。
【0014】
(2) 上記第1モータの回転情報を取得する第1回転情報取得手段と、上記第2モータの回転情報を取得する第2回転情報取得手段とを更に備え、上記制御手段は、上記第1回転情報取得手段及び上記第2回転情報取得手段それぞれの取得結果に基づいて上記第1モータ及び上記第2モータをフィードバック制御するものであることが好ましい。
本発明は、このようなフィードバック制御に好ましく適用され得る。
【0015】
(3) 上記第1被駆動体の位置情報を取得する第1位置情報取得手段と、上記第2被駆動体の位置情報を取得する第2位置情報取得手段とを更に備え、上記制御手段は、上記第1位置情報取得手段及び上記第2位置情報取得手段それぞれの取得結果に基づいて上記第1モータ及び上記第2モータをフィードバック制御するものであってもよい。
このような構成であっても、本発明は好ましく適用され得る。
【0016】
(4) 本発明は、上述の駆動力伝達装置を備えたインクジェット記録方式の画像記録装置として捉えることもできる。この場合、上記第1被駆動体が、被記録媒体の搬送方向と交差する方向へ往復動されるキャリッジであり、上記第2被駆動体が、記録ヘッドによる画像記録領域へ向けて被記録媒体を搬送する搬送ローラである。このような画像記録装置において、各モータの駆動力を最も効率よく利用することが可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、第1出力軸及び第2出力軸それぞれの回転速度の制御、つまり、第1被駆動体及び第2被駆動体それぞれの速度制御を独立に行うことが可能であり、且つ、一方が高速度のときに他方が低速度または停止するという状態で第1モータ及び第2モータが駆動されるという状況において、第1被駆動体及び第2被駆動体それぞれで消費される仕事率の差よりも、第1モータ及び第2モータそれぞれで消費される電力の差のほうが小さくなるように、第1モータ及び第2モータの必要回転速度が分配される。つまり、2つの被駆動体の仕事が平均化されて2つのモータに分配される。これにより、第1モータ及び第2モータそれぞれの回転速度を持て余すことなくバランス良く効率よく利用することができる。その結果、モータを大型化することなく所望の回転速度を得ることが可能となる。
【0018】
また、第1被駆動体及び第2被駆動体それぞれの速度は、第1モータ及び第2モータそれぞれの回転速度の線形和となるため、第1被駆動体の速度又は第2被駆動体の速度が非常に小さくても、第1モータ及び第2モータそれぞれの回転速度を比較的安定な高回転域であるように構成することが可能となる。このため、本発明の駆動力伝達装置は、大きなトルクを必要とする立ち上がり時や低速駆動時に特に有効である。
【0019】
また、一方の被駆動体が減速する際に、その被駆動体が有する運動エネルギーが他方の被駆動体の駆動力として転用される。そのため、当該駆動力伝達装置において、エネルギーを有効に利用することが可能となる。また、従来に比べて、加減速時の電力消費量を省減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、複合機1の外観構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、プリンタ部2の主要構成を示す部分拡大断面図である。
【図3】図3は、プリンタ部2の主要構成を示す平面図であり、主としてプリンタ部2の略中央から装置背面側の構成が示されている。
【図4】図4は、伝達機構110の構成を示す斜視図である。
【図5】図5は、図4の切断面V−Vの断面図であり、伝達機構110の中央断面構造が詳細に示されている。
【図6】図6は、伝達機構110を構成する第1太陽ギヤ162を示す図であり、(A)は側面図、(B)は正面図である。
【図7】図7は、伝達機構110を構成する第1キャリア164を示す図であり、(A)は側面図、(B)は正面図である。
【図8】図8は、伝達機構110を構成する第1複合ギヤ165を示す図であり、(A)は側面図、(B)は正面図である。
【図9】図9は、伝達機構110を構成する第2キャリア184を示す図であり、(A)は側面図、(B)は正面図である。
【図10】図10は、伝達機構110を構成する第2複合ギヤ185を示す図であり、(A)は側面図、(B)は正面図である。
【図11】図11は、伝達機構110を構成するアイドルギヤ153,154を示す図であり、(A)は中央断面図、(B)は正面図である。
【図12】図12は、プリンタ部2の制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【図13】図13は、制御装置100の構成を示すブロック図である。
【図14】図14は、プリンタ部2の制御システムの概略構成の変形例を示すブロック図である。
【図15】図15は、制御装置100の構成の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0022】
[複合機1]
複合機1は、プリンタ部2とスキャナ部3とを一体的に備えた多機能装置(MFP:Multi Function Product)であり、プリント機能、スキャン機能、コピー機能、ファクシミリ機能等を有する。複合機1のうちプリンタ部2が、本発明に係るインクジェット方式の画像記録装置に相当する。したがって、プリント機能以外の機能は任意のものであり、例えば、スキャナ部3が省略されたプリント機能のみを有するプリンタとして本発明に係る画像記録装置が実施されてもよい。
【0023】
図1に示されるように、複合機1は概ね直方体に形成されている。複合機1の下部がプリンタ部2であり、上部がスキャナ部3である。
【0024】
複合機1のプリンタ部2は、主にコンピュータ等の外部情報機器と接続されて、該コンピュータ等から送信された画像データや文書データを含む印刷データに基づいて、記録用紙に画像や文書を記録する。プリンタ部2は、正面に開口9が形成されている。給紙トレイ20及び排紙トレイ21は、開口9の内側に上下2段に設けられている。給紙トレイ20に収容された記録用紙がプリンタ部2の内部へ給送されて、その記録用紙に所望の画像が記録されると、その後、画像記録済みの記録用紙が排紙トレイ21へ排出される。
【0025】
スキャナ部3は、所謂フラットベッドスキャナとして構成されている。複合機1の天板としての原稿カバー30がスキャナ部3の上部に開閉自在に設けられている。原稿カバー30の下側に、図示しないコンタクトガラス及びイメージセンサが設けられている。コンタクトガラスに載置された原稿の画像がイメージセンサによって読み取られる。なお、本発明を実現するうえでスキャナ部3は関係しないため、ここでは、スキャナ部3の詳細な説明を省略する。
【0026】
図1に示されるように、複合機1の正面上部には、プリンタ部2やスキャナ部3を操作するための操作パネル4が設けられている。操作パネル4は、各種操作ボタンや液晶表示部から構成されている。複合機1は、操作パネル4からの操作指示に基づいて動作する。複合機1が外部のコンピュータに接続されている場合には、該コンピュータからプリンタドライバ又はスキャナドライバを介して送信される指示に基づいても複合機1が動作する。
【0027】
[プリンタ部2]
以下、複合機1の内部構成、特にプリンタ部2の構成について説明する。
【0028】
図2に示されるように、複合機1の底側に給紙トレイ20が設けられている。給紙トレイ20の上側に給紙ローラ25が設けられている。給紙ローラ25は、一端が基軸29に回動可能に軸支された給紙アーム26の先端に回転可能に軸支されている。給紙アーム26には、基軸29から入力された回転駆動力を給紙ローラ25に伝達するギヤ駆動機構27が設けられている。プリンタ部2の内部には、第1モータ71及び第2モータ72(図4参照、本発明の第1モータ及び第2モータの一例)が配設されている。これら各モータ71,72は、正逆転方向への駆動が可能に構成されている。各モータ71,72の回転駆動力は、後述する伝達機構110(図4参照)、基軸29、及びギヤ駆動機構27を介して給紙ローラ25に伝達される。これにより、給紙ローラ25が回転駆動される。なお、これらのモータ71,72は、給紙ローラ25のみならず、後述するように、搬送ローラ87(本発明の第2被駆動体、搬送ローラの一例)及びキャリッジ38(本発明の第1被駆動体、キャリッジの一例)を駆動させるための駆動源としても用いられる。
【0029】
給紙トレイ20の奥側に傾斜板22が設けられている。給紙ローラ25が給紙トレイ20上の記録用紙に圧接された状態で、給紙ローラ25が回転されると、給紙ローラ25のローラ面と記録用紙との間の摩擦力により、最上位置の記録用紙が傾斜板22側へ送り出される。記録用紙は、その先端が傾斜板22に当接して上方へ案内される。傾斜板22から上方へ用紙搬送路23が延出されている。具体的には、用紙搬送路23は、傾斜板22から上方へ向けられ、そして、複合機1の正面側へ曲げられてから、複合機1の背面側から正面側へと延ばされて、画像記録ユニット24の下部を通って、排紙トレイ21まで延びている。したがって、給紙トレイ20に収容された記録用紙は、用紙搬送路23により下方から上方へUターンするように案内されて画像記録ユニット24に至り、画像記録ユニット24によって画像記録が行われた後、排紙トレイ21に排出される。
【0030】
図2に示されるように、用紙搬送路23には、画像記録ユニット24が配置されている。画像記録ユニット24は、インクジェット方式の記録ヘッド39(本発明の記録ヘッドの一例)と、この記録ヘッド39を搭載するキャリッジ38とを備えている。キャリッジ38は、記録用紙の搬送方向と直交する主走査方向(図2の紙面に垂直な方向)へ移動可能に支持されている。
【0031】
記録ヘッド39は、キャリッジ38の底面に配置されており、記録ヘッド39のノズルがキャリッジ38の下面に露出されている。複合機1の内部に配置されたインクカートリッジ(不図示)から各色のインクが記録ヘッド39へ供給される。キャリッジ38が往復して移動される間に、記録ヘッド39のノズルから各色インクが微小なインク滴として選択的に吐出される。これにより、プラテン42上を搬送される記録用紙に画像記録が行われる。
【0032】
図3に示されるように、用紙搬送路23の上側において一対のガイドレール43,44が配置されている。これらガイドレール43,44は、記録用紙の搬送方向(図3の上側から下側方向)に所定距離を隔てられて対向しており、且つ記録用紙の搬送方向と直交する主走査方向(図3の左右方向)に延設されている。ガイドレール43,44は、プリンタ部2の筐体内に設けられ、プリンタ部2を構成する各部材を支持するフレームの一部を構成している。キャリッジ38は、ガイドレール43,44を跨ぐようにして上記主走査方向に摺動可能に載置されている。
【0033】
ガイドレール43は、記録用紙の搬送方向上流側に配設されている。このガイドレール43は、用紙搬送路23の幅方向(図3の左右方向)の長さがキャリッジ38の往復動範囲より長い平板状のものである。また、ガイドレール44は、記録用紙の搬送方向下流側に配設されている。このガイドレール44は、用紙搬送路23の幅方向の長さがガイドレール43とほぼ同じ長さの平板状のものである。キャリッジ38の搬送方向上流側の端部がガイドレール43に載置され、キャリッジ38の搬送方向下流側の端部がガイドレール44に載置されており、キャリッジ38は、各ガイドレール43,44の長手方向に摺動されるようになっている。
【0034】
ガイドレール44の搬送方向下流側の縁部45は、上方へ向かって略直角に曲折されている。ガイドレール43,44に担持されたキャリッジ38は、縁部45をローラ対等の狭持部材により摺動可能に狭持している。これにより、キャリッジ38は、記録用紙の搬送方向に対して位置決めされ、且つ、記録用紙の搬送方向と直交する方向に摺動することができる。つまり、キャリッジ38は、ガイドレール43,44上に摺動自在に担持され、ガイドレール44の縁部45を基準として、記録用紙の搬送方向と直交する方向に往復動する。
【0035】
ガイドレール43の上面には、図3に示されるように、ベルト駆動機構46が配設されている。ベルト駆動機構46は、駆動プーリ47と、笠歯車58(図4参照)と、従動プーリ48と、無端環状のベルト49とを有している。駆動プーリ47と笠歯車58とは、回転軸59(図4参照)で連結されており、これらは一体に回転可能に支持されている。図4に示されるように、回転軸59は、後述する中間プレート152に設けられた支持部152Aで回転可能に支持されている。このように支持された笠歯車58に、後述する伝達機構110(図4参照)から出力された回転駆動力が入力(伝達)される。本実施形態では、説明の便宜上、ベルト駆動機構46の出力を入力で除算して得られるベルト駆動機構46の速度伝達比pが「5/44」に設定されているものとする。なお、言うまでもなく、速度伝達比pは、要求されるキャリッジ38の動作や速度に応じて任意の値に適宜変更可能である。
【0036】
駆動プーリ47及び従動プーリ48は、用紙搬送路23の幅方向の両端付近にそれぞれ設けられている。駆動プーリ47と従動プーリ48との間に、無端環状のベルト49が張架されている。第1モータ71及び第2モータ72(図4参照)の回転駆動力は、後述する伝達機構110(図4参照)を介して駆動プーリ47の軸に伝達される。これにより、駆動プーリ47が回転駆動される。駆動プーリ47の回転によってベルト49が周運動する。なお、ベルト49は無端環状のもののほか、有端のベルトの両端部をキャリッジ38に固着するものも採用され得る。
【0037】
キャリッジ38は、その底面側においてベルト49に連結されている。したがって、ベルト49の周運動に基づいて、キャリッジ38が縁部45を基準としてガイドレール43,44上を移動する。このようなキャリッジ38に記録ヘッド39が搭載されて、記録ヘッド39が、用紙搬送路23の幅方向を主走査方向として往復動される。
【0038】
図3に示されるように、ガイドレール44には、エンコーダストリップ50が配設されている。エンコーダストリップ50は、透明な樹脂からなる帯状のものである。エンコーダストリップ50には、遮光部と透光部とが等ピッチで配置されたパターンが記されている。ガイドレール44の幅方向(キャリッジ38の移動方向)の両端それぞれには、その上面から起立するように一対の支持用リブが形成されている。エンコーダストリップ50は、その両端部それぞれが支持用リブに係止されて、縁部45に沿って架設されている。なお、エンコーダストリップ50はバネなどによって張力が付与されている。
【0039】
キャリッジ38の上面において、エンコーダストリップ50に対応する位置には、透過型センサであるフォトインタラプタなどの光学センサ35が設けられている。光学センサ35の発光素子と受光素子との間にエンコーダストリップ50が挿入されている。エンコーダストリップ50と光学センサ35とによって、キャリッジ38の位置を検出するためのリニアエンコーダ150(本発明の第1位置情報取得手段の一例、図12及び図13参照)が構成される。本実施形態では、エンコーダストリップ50のパターンを光学センサ35が読み取ることにより、キャリッジ38の位置情報を示す検出信号が得られる。この検出信号は、後述する制御装置100(図12及び図13参照、本発明の制御手段の一例)に入力されて、第1モータ71及び第2モータ72(図4参照)の駆動制御に用いられる。
【0040】
図2及び図3に示されるように、用紙搬送路23の下側には、記録ヘッド39と対向してプラテン42が配設されている。プラテン42は、キャリッジ38の移動範囲のうち、記録用紙が通過する中央部分に渡って配設されている。プラテン42の幅は、搬送可能な記録用紙の最大幅より十分に大きいものであり、記録用紙の両端は常にプラテン42の上を通過する。
【0041】
図3に示されるように、記録用紙が通過しない範囲、すなわち記録ヘッド39による画像記録領域の外側には、メンテナンス機構(不図示)が配設されている。具体的には、メンテナンス機構は、図3においてプラテン42の右端部に配置されている。メンテナンス機構は、記録ヘッド39のノズル内のインクの乾燥を防止したり、ノズルから気泡や異物を吸引除去するものである。本実施形態では、画像記録を行わない場合は、キャリッジ38は、画像記録指示が入力されるまでメンテナンス機構の上方で待機している。
【0042】
図2に示されるように、画像記録ユニット24の上流側には、搬送ローラ87とピンチローラ88とを有する一対の搬送ローラ対89が設けられている。画像記録ユニット24の下流側には、排紙ローラ90と該排紙ローラ90の上方に設けられた拍車91とを有する一対の排出ローラ対92が設けられている。搬送ローラ87の回転軸87Aの一端に、後述する伝達機構110(図4参照)から出力された回転駆動力が入力(伝達)される。伝達機構110から搬送ローラ87の回転軸87Aへは、一定の速度伝達比qを有するギヤ列やベルトなどを介して連結されていてもよい。本実施形態では、伝達機構110から搬送ローラ87の回転軸87Aへの連結は直接連結であるので、伝達機構110の出力軸の回転速度と搬送ローラ87の回転速度との速度伝達比qは「1」に設定されているものとする。
【0043】
第1モータ71及び第2モータ72(図4参照)の回転駆動力は、後述する伝達機構110(図4参照)を介して搬送ローラ87の回転軸87Aに伝達される。これにより、搬送ローラ87が所定の回転速度で回転されて、記録用紙が用紙搬送路23中を搬送される。搬送ローラ87と排紙ローラ90とはギヤなどの伝達機構により連結されており、該伝達機構を介して搬送ローラ87からの駆動力が排紙ローラ90に伝達される。これにより、搬送ローラ87と排紙ローラ90とが同期駆動される。
【0044】
用紙搬送路23を搬送されている記録用紙は、搬送ローラ対89によってプラテン42上へ搬送される。そして、プラテン42上で画像が記録された記録済みの記録用紙は、排出ローラ対92によって排紙トレイ21へ搬送される。
【0045】
搬送ローラ87の回転軸87Aの一端にエンコーダディスク52(図4の波線参照)が設けられている。エンコーダディスク52の周縁には、遮光部と透光部とが等ピッチで交互に配置されたパターンが記されている。エンコーダディスク52の周縁に対応する位置にフォトインタラプタなどの光学センサ(不図示)が配設されている。光学センサの発光素子と受光素子との間にエンコーダディスク52の周縁が挿入されている。エンコーダディスク52と光学センサとによって、搬送ローラ87の回転位置を検出するためのロータリーエンコーダ160(本発明の第2位置情報取得手段の一例、図12及び図13参照)が構成される。本実施形態では、搬送ローラ87とともに回転するエンコーダディスク52のパターンは、光学センサによって読み取られる。エンコーダディスク52のパターンを光学センサが読み取ることにより、搬送ローラ87の回転位置情報を示す検出信号が得られる。この検出信号は、後述する制御装置100(図12及び図13参照)に入力されて、第1モータ71及び第2モータ72(図4参照)の駆動制御に用いられる。
【0046】
本実施形態では、複合機1に画像記録指示が入力されて、記録用紙における記録領域の先端が記録ヘッド39の下方に到達すると、搬送ローラ87が所定の改行幅で間欠的に回転駆動されて、記録用紙が同じ幅で間欠的に搬送される。
【0047】
一方、キャリッジ38は、待機位置から移動を開始して、プラテン42上を往復移動する。具体的には、一方向への移動とその逆方向への移動とが繰り返される。以降、この動作が繰り返されることにより、キャリッジ38はプラテン42上を往復移動する。
【0048】
本実施形態では、キャリッジ38が記録用紙における記録領域から外れて、キャリッジ38の移動速度が低下しているとき、若しくは停止しているときに、搬送ローラ87が定速駆動される。また、搬送ローラ87の回転速度が低下しているとき、若しくは停止しているときに、キャリッジ38が定速駆動される。つまり、搬送ローラ87とキャリッジ38とは概ね交互に駆動される。
【0049】
[伝達機構110]
プリンタ部2には、第1モータ71及び第2モータ72それぞれの回転駆動力を搬送ローラ87やキャリッジ38などに伝達するための伝達機構110(本発明の駆動力伝達装置の一例)が設けられている。以下、図4から図11を参照して、伝達機構110について説明する。なお、図4から図11では、各ギヤのピッチ円だけが図示されており、歯先円とギヤ歯の図示は省略されている。
【0050】
図4に示されるように、伝達機構110は、回転軸87Aの一端に取り付けられている。回転軸87Aの端部には、支持軸94(本発明の第1回転軸の一例)が接続されている。支持軸94には、エンドプレート151が設けられている。エンドプレート151に上述したエンコーダディスク52が取り付けられている。伝達機構110は、エンドプレート151と、回転軸87Aの端部付近でガイドレール43に固定された中間プレート152との間に設けられている。
【0051】
図5に示されるように、伝達機構110は、第1遊星歯車機構161(本発明の第1遊星歯車機構の一例)と、第2遊星歯車機構181(本発明の第2遊星歯車機構の一例)と、これらを連結する連結機構とを備える。
本実施形態では、第1遊星歯車機構161は、
支持軸94を介して駆動対象(搬送ローラ87)に連結される第1太陽ギヤ162(本発明の第1太陽歯車の一例)、
4つの第1遊星ギヤ163(本発明の第1遊星歯車の一例)と、第1モータ71に連結される第1入力ギヤ164Dとを備えた第1キャリア164(本発明の第1遊星キャリアの一例)、
第1複合ギヤ165に一体に形成された第1リングギヤ165C1(本発明の第1外輪歯車の一例)、
第1複合ギヤ165に一体に形成され、第2モータ72に連結される第2入力ギヤ165D、により構成されている。
また、第2遊星歯車機構181は、
第1複合ギヤ165に一体に形成された第2太陽ギヤ165C2(本発明の第2太陽ギヤの一例)、
4つの第2遊星ギヤ183(本発明の第2遊星歯車の一例)を備えた第2キャリア184(本発明の第2遊星キャリアの一例)、
第2複合ギヤ185と一体に形成された第2リングギヤ185E1(本発明の第2外輪歯車の一例)、により構成されている。
第2複合ギヤ185には連結ギヤ185E2が一体に形成されており、連結ギヤ185E2はアイドルギヤ153及びアイドルギヤ154を介して第1太陽ギヤ162に連結されている。この構成により第2遊星歯車機構181の第2リングギヤ185E1の回転が第1遊星歯車機構161の第1太陽ギヤ162へ伝達される。
【0052】
[第1遊星歯車機構161]
図6に示されるように、第1遊星歯車機構161の第1太陽ギヤ162は、支持軸94に固定されている。支持軸94は、回転軸87A及び搬送ローラ87と連結されており、第1太陽ギヤ162の回転は支持軸94と回転軸87Aを介して搬送ローラ87に伝達される。第1太陽ギヤ162は、軸心線155周りに自転可能に支持される。
【0053】
図7に示されるように、第1キャリア164の中央部には、貫通孔164Cが形成されている。貫通孔164Cにエンドプレート151の筒状部151Aが挿入され、第1キャリア164が筒状部151Aによって軸心線155周り回転可能に支持される。
【0054】
第1キャリア164は、貫通孔164Cの軸方向に突出する円筒状の筒状部164Aを有する。この筒状部164Aの突出端には、更に軸方向へ突出する1つ以上の支持軸164B(本発明の第2回転軸の一例)が形成されている。これらの支持軸164Bは、支持軸94と平行である。支持軸164Bは、貫通孔164Cの周囲にほぼ均等に配置されている。各支持軸164Bそれぞれに第1遊星ギヤ163が支持軸164Bの周りを回転可能に支持される。支持軸164B及び第1遊星ギヤ163の数は、一般に1つでも複数でもよいが、2つ以上の支持軸164B及び第1遊星ギヤ163を等間隔に配置することが好ましい。支持軸164B及び第1遊星ギヤ163の数は、遊星歯車機構の組立条件やスペース、コスト、伝達トルクなどによって決定される。本実施形態では、図7に示されるように、4組の支持軸164B及び第1遊星ギヤ163が設けられている。
【0055】
第1キャリア164の外周部には、第1入力ギヤ164Dが形成されている。この第1入力ギヤ164Dに第1モータ71の出力ギヤ77(図4参照)が噛合されている。第1モータ71の出力ギヤ77から第1入力ギヤ164Dへは、一定の速度伝達比rを有するギヤ列やベルトなどを介して連結されていてもよい。本実施形態では、第1モータ71の出力ギヤ77から第1入力ギヤ164Dへの連結は直接連結であるので、速度伝達比rは出力ギヤ77と第1入力ギヤ164Dとのギヤ比で定まり、「44/15」に設定されているものとする。
【0056】
図8に示されるように、第1複合ギヤ165の中央部には、貫通孔165Cが形成されている。貫通孔165Cに第1キャリア164の筒状部164Aが挿入されることにより、第1複合ギヤ165は軸心線155周りを回転可能に支持される。
【0057】
第1複合ギヤ165は、貫通孔165Cの軸方向に突出する円筒状の筒状部165Aを有する。この筒状部165Aの突出端側の内周面に第1リングギヤ165C1が形成されている。第1複合ギヤ165が筒状部164Aによって支持された状態で、支軸164Bに支持された第1遊星ギヤ163が第1リングギヤ165C1にもかみ合う。つまり、第1遊星ギヤ163は、第1太陽ギヤ162及び第1リングギヤ165C1の両方とかみ合って回転を伝達する。そして、第1遊星ギヤ163は、支持軸164Bの周りを自転しながら第1太陽ギヤ162の周りを公転する。この第1遊星ギヤ163の公転により第1キャリア164が回転する。
【0058】
なお、第1複合ギヤ165の外周部には、第2入力ギヤ165Dが形成されている。この第2入力ギヤ165Dに第2モータ72の出力ギヤ78(図4参照)が噛合されている。第2モータ72の出力ギヤ78から第2入力ギヤ165Dへは、一定の速度伝達比sを有するギヤ列やベルトなどを介して連結されていてもよい。本実施形態では、第2モータ72の出力ギヤ78から第2入力ギヤ165Dへの連結は直接連結であるので、速度伝達比sは出力ギヤ78と第2入力ギヤ165Dとのギヤ比で定まり、「22/5」に設定されているものとする。
【0059】
[第2遊星歯車機構181]
図8に示されるように、第1複合ギヤ165の筒状部165Aの突出端側の外周面に第2太陽ギヤ165C2が形成されている。つまり、第2太陽ギヤ165C2は、第1リングギヤ165C1と一体に形成されている。これにより、第1リングギヤ165C1に伝達された駆動力が第2太陽ギヤ165C2に伝達する。このように、第2太陽ギヤ165C2が第1リングギヤ165C1と共に第1複合ギヤ165と一体に形成された構成が、本発明の第1駆動伝達機構の一例であり、第1リングギヤ165C1が本発明の第1要素に相当し、第2太陽ギヤ165C2が本発明の第2要素に相当する。
【0060】
図9に示されるように、第2キャリア184の中央部には、貫通孔184Cが形成されている。貫通孔184Cには第1複合ギヤ165の筒状部165Aが挿入される。これにより、第2キャリア184は筒状部165Aによって軸心線155周りを回転可能に支持される。
【0061】
第2キャリア184の側面には、貫通孔184Cの軸方向外側へ突出する1つ以上の支持軸184B(本発明の第3回転軸の一例)が形成されている。これらの支持軸184Bは、支持軸94と平行である。支持軸184Bは、貫通孔184Cの周囲にほぼ均等に配置されている。各支持軸184Bそれぞれに第2遊星ギヤ183が支持軸184Bの周りを回転可能に支持されている。支持軸184B及び第2遊星ギヤ183の数は、一般に1つでも複数でもよいが、2つ以上の支持軸184B及び第2遊星ギヤ183を等間隔に配置することが好ましい。支持軸184B及び第2遊星ギヤ183の数は、遊星歯車機構の組立条件やスペース、コスト、伝達トルクなどによって決定される。本実施形態では、図9に示されるように、4組の支持軸184B及び第2遊星ギヤ183が設けられている。
【0062】
なお、第2キャリア184の外周部には、出力ギヤ184Dが形成されている。この出力ギヤ184Dは傘歯車であり、キャリッジ移動機構と連結されている笠歯車58(図4参照)が噛み合わされている。
【0063】
図10に示されるように、第2複合ギヤ185には、第2リングギヤ185E1と連結ギヤ185E2とが形成されている。第2キャリア184が筒状部165Aによって支持された状態で、支軸184Bに支持された第2遊星ギヤ183は第2リングギヤ185E1にかみ合う。つまり、第2遊星ギヤ183は、第2太陽ギヤ165C2及び第2リングギヤ185E1の両方とかみ合って回転を伝達する。そして、第2遊星ギヤ183は、支持軸184Bの周りを自転しながら第2太陽ギヤ165C2の周りを公転する。この第2遊星ギヤ183の公転により第2キャリア184が回転する。
【0064】
図11に示されるように、アイドルギヤ153は、中間プレート152に設けられた支持軸153Aに回転可能に支持されている。また、アイドルギヤ154は、中間プレート152に設けられた支持軸154Aに回転可能に支持されている。アイドルギヤ153は、アイドルギヤ154と第1遊星歯車機構161の第1太陽ギヤ162の両方に噛合している。また、アイドルギヤ154は、連結ギヤ185E2(図10参照)とアイドルギヤ153の両方に噛合している。これにより、第2複合ギヤ185と第1太陽ギヤとの間でアイドルギヤ153及びアイドルギヤ154を介して所定の速度伝達比(第1太陽ギヤ162と連結ギヤ185E2のギヤ比)で駆動力が伝達される。このように第2複合ギヤ185がアイドルギヤ153及びアイドルギヤ154を介して第1太陽ギヤ162と接続する構成は、本発明の第2駆動伝達機構の一例であり、連結ギヤ185E2が本発明の第4要素に相当し、第1太陽ギヤ162が本発明の第3要素に相当する。なお支持軸153A、アイドルギヤ153、支持軸154A、アイドルギヤ154の数は一般に一組でも複数組でもよいが、二組以上を等間隔に配置することが好ましい。これらの組数は、遊星歯車機構の組立条件やスペース、コスト、伝達トルクなどにより決定される。本実施形態では、図9に示されるように、4組の支持軸153A、アイドルギヤ153、支持軸154A、アイドルギヤ154が設けられている。なおアイドルギヤ153は、第1太陽ギヤ162でなく、第1太陽ギヤ162と一体で回転する、異なる径の第3太陽ギヤに連結されていてもよい。本実施形態は、第1太陽ギヤと第3太陽ギヤの大きさと形状を一致させ、1つのギヤで兼ねている場合の例である。
【0065】
以下、伝達機構110の入力と出力との関係について説明する。
遊星歯車機構を含む差動歯車機構は、一般に3つの回転体の間で回転量の変換を行い、その伝達比は他の要素の回転量に依存するため、3つの回転体のうち2つの回転体の回転量が決まれば残り1つの回転量が決まるという性質を持っている。
第1モータ71から第1入力ギヤ164Dへ動力を伝達して第1キャリア164を回転させ、第1モータ72から第2入力ギヤ165Dへ動力を伝達して第1複合ギヤ165を介して第1リングギヤ165C1を回転させると、第1遊星歯車機構の第1キャリア164及び第1リングギヤ165C1が所定の回転量で回転されることになるので、残る第1太陽ギヤ162の回転量が決まり、第1太陽ギヤ162と一体で回転する搬送ローラ87を所望の回転量で回転させることができる。
また、第1太陽ギヤ162が回転すると、アイドルギヤ153を介して連結ギヤ185E2が回転し、第2リングギヤ185E1が所定の回転量で回転する。第2太陽ギヤ165C2は第1複合ギヤ165の一部であるからその回転量は定まっている。したがって第2遊星歯車機構の第2太陽ギヤ165C2、第2リングギヤ185E1が所定の回転量で回転されることになるので、残る第2キャリア184を所望の回転量で回転させることができる。第2キャリア184の回転量は出力ギヤ184Dを介してその先に連結されたキャリッジ38を移動させる。
搬送ローラ87を所望の回転量で回転させることのできる第1モータ71と第2モータ72の回転量の組み合わせは無数に存在し、またキャリッジ38を所望の量移動させることのできる第1モータ71と第2モータ72の回転量の組み合わせも無数に存在するが、搬送ローラ87の回転量とキャリッジ38の移動量を同時に所望の量とするような第1モータ71と第2モータ72の回転量の組み合わせはただ1つしか存在しないのである。
【0066】
ここで、
搬送ローラに連結される第1太陽ギヤ162の回転角度をθA、
第1モータ71に連結される第1キャリア164の回転角度をθB、
第2モータ72に連結される第1複合ギヤ165の回転角度をθC、
キャリッジに連結される第2キャリア184の回転角度をθD、
第2複合ギヤ185の回転角度をθE、とする。
また、
第1太陽ギヤ162のピッチ円半径をRA、
第1リングギヤ165C1のピッチ円半径をRC1、
第1遊星ギヤ163のピッチ円半径をRB、
第2太陽ギヤ165C2のピッチ円半径をRC2、
第2遊星ギヤ183のピッチ円半径をRD、
第2リングギヤ185E1のピッチ円半径をRE1、
連結ギヤ185E2のピッチ円半径をRE2、
アイドルギヤ153のピッチ円半径をRF1、
アイドルギヤ154のピッチ円半径をRF2、とする。
【0067】
この場合、第1遊星歯車機構161における各回転角は、次式(1)の関係を有する。
【0068】
【数1】
【0069】
また、第2遊星歯車機構181における各回転角は、次式(2)の関係を有する。
【0070】
【数2】
【0071】
更に、RE2、θE、RA、及びθAには、次式(3)の関係を有する。
【0072】
【数3】
【0073】
上記各関係を整理すると、次の関係式(4)が得られる。
【0074】
【数4】
【0075】
ここで、RA〜RE2は、歯車のピッチ円半径、つまり0でない正の実数であることとから、関係式(5)が常に成立することがいえる。
【数5】
【0076】
ただし、detAは行列Aの行列式を表し、2×2の行列については一般に式(6)で定義される。
【数6】
【0077】
上記関係式(5)によって、関係式(4)には次の逆変換式(7)が存在することが保証される。
【数7】
【0078】
また、関係式(4)から、任意の入力の組み合わせ(θB、θC)に対して、その結果としての出力の組み合わせ(θA、θD)がただ1つ決まる。また関係式(7)から、所望する任意の出力の組み合わせ(θA、θD)に対して、それを実現するような入力の組み合わせ(θB、θC)が存在する。したがって、第1太陽ギヤ162の回転角θAと第2キャリア184の回転角θDは、第1キャリア164の回転角θBと第1複合ギヤ165の回転角θCとを変更することで、任意の角度に変更することが可能である。
【0079】
また、以下の関係式(8)が常に成立することが自明である。つまり、回転量のθAとθDを互いに独立な任意の値に変更可能であるのだから、回転角速度も独立な任意の値に変更可能である。
【数8】
【0080】
アイドルギヤや遊星ギヤのピッチ円半径は伝達機構110の入力と出力の関係に直接影響しないが、各歯車が標準歯車の場合は、以下の条件(9)〜(11)を満たす必要がある。
【数9】
【数10】
【数11】
【0081】
ここで、本実施形態では、各歯車は標準歯車であり、
モジュールM=1(すべてのギヤで共通)、
第1太陽ギヤ162の歯数ZA=40、
第1リングギヤ165C1の歯数ZC1=80、
第1遊星ギヤ163の歯数ZB=20、
第2太陽ギヤ165C2の歯数ZC2=100、
第2遊星ギヤ183の歯数ZD=10、
第2リングギヤ185E1の歯数ZE1=120、
連結ギヤ185E2の歯数ZE2=192、
アイドルギヤ153の歯数ZF1=38、
アイドルギヤ154の歯数ZF2=38、である。
標準歯車のモジュールMと歯数Z、ピッチ円半径Rの間には次式(12)の関係がある。
【数12】
【0082】
上記式(12)の関係から計算した各ギヤのピッチ円半径を上述の式(4)へ代入して整理すると、本実施例におけるθA〜θDに関する以下の関係式(13)、(14)が得られる。
【数13】
【数14】
【0083】
[制御装置100]
図12及び図13に示されるように、プリンタ部2には、制御手段の一例である制御装置100が設けられている。制御装置100は、図13に示されるように、現在値検出手段102、目標値生成手段103、モータドライバ170、を備えている。現在値検出手段102は、リニアエンコーダ150からの信号を基にキャリッジ38の位置を求め、ロータリーエンコーダ160からの信号を基に搬送ローラ87の角度を求める。目標値生成手段103は、印刷内容と現在値検出手段102が求めたキャリッジ38の位置と搬送ローラ87の角度を基にモータドライバ170を制御し、第1モータ71及び第2モータ72それぞれの回転を制御する。
【0084】
第1モータ71はギヤ列Qを介して伝達装置110の第1キャリア164を角度θB回転させる。同様に第2モータ72はギヤ列Rを介して伝達装置110の第1複合ギヤ165を角度θC回転させる。
第1キャリア164の回転θB、第1複合ギヤ165の回転θCに応じて、伝達装置110の第1太陽ギヤ162は角度θA、第1太陽ギヤ162は角度θD回転する。
第1太陽ギヤ162の回転θAはギヤ列Pを介してキャリッジ38を所定の位置へ移動させる。同様に第1太陽ギヤ162の回転θDはギヤ列Sを介して搬送ローラ87を所定の角度へ回転させる。
【0085】
ここで、ギヤ列P、Q、R、Sの速度伝達比p,q,r,sについての前述の定義により、第1モータ71の回転角度をX、第2モータ72の回転角度をY、キャリッジ38の移動量をU、搬送ローラ87の回転角度をVとすると、これらの間には、U=pθA、V=qθD、θB=rX、θC=sY、の関係が成立している。また、本実施形態では、p=5/44、q=1、r=44/5、s=22/5であるから、これらを関係式(13)、(14)に適用すると、以下の式(15)、(16)が得られる。
【数15】
【数16】
【0086】
キャリッジ38に連結されたリニアエンコーダ150によりキャリッジ38の移動に応じた信号が生成され、制御装置100の現在値検出手段102に入力される。同様に搬送ローラ87に連結されたロータリーエンコーダ160により搬送ローラ87の回転角度に応じた信号が生成され、制御装置100の現在値検出手段102に入力される。現在値検出手段102はリニアエンコーダ150およびロータリーエンコーダ160から入力された信号を基にキャリッジ38と搬送ローラ87の現在位置及び現在速度を演算し、その値を演算部104及び目標値生成手段103へ出力する。目標値生成手段103は、印刷内容と、現在値生成手段102から入力されたキャリッジ38と搬送ローラ87の現在位置及び現在速度を基に、演算部104における次回演算時のキャリッジ38と搬送ローラ87の位置及び速度の目標値を演算し、その値を演算部104へ出力する。演算部104は一定時間間隔で演算を行う。演算部104は、現在値生成手段102から入力されたキャリッジ38と搬送ローラ87の現在位置及び現在速度を、関係式(16)を用いて、第1モータ71の現在の回転角度及び回転速度と、第2モータ72の現在の回転角度及び回転速度に変換する。また演算部104は目標値生成手段103から入力されたキャリッジ38と搬送ローラ87の位置及び速度の前回の目標値を、関係式(16)を用いて第1モータ71の前回の回転角度目標値及び前回の回転速度目標値と、第2モータ72の前回の回転角度目標値及び回転速度目標値に変換する。演算部104は、第1モータ71と第2モータ72のそれぞれについて、回転角度目標値と現在の回転角度との偏差や回転速度目標値と現在の回転速度との偏差に基づいて、各モータに与えるべき制御量を算出してモータドライバ170へ出力する。モータドライバ170は、演算部104から入力された制御量に対応した電流を第1モータ71及び第2モータ72に出力する。第1モータ71及び第2モータ72の回転は関係式(15)の関係によってキャリッジ38と搬送ローラ87の運動に変換されてキャリッジ38と搬送ローラ87を動かす。このようにしてキャリッジ38と搬送ローラ87の位置や速度が所望の状態に制御される。
【0087】
なお、上述の実施形態では、リニアエンコーダ150でキャリッジ38の位置情報を検出し、ロータリーエンコーダ160で搬送ローラ87の位置情報を検出し、それらの検出結果を制御装置100へフィードバックして第1モータ71及び第2モータ72を制御することとしたが、例えば、図14及び図15に示されるように、第1モータ71の回転速度をロータリーエンコーダ180で測定(取得)し、第2モータ72の回転速度をロータリーエンコーダ190で測定(取得)し、これらの測定結果を制御装置100へフィードバックして第1モータ71及び第2モータ72を制御する構成を採用することも可能である。ここで、ロータリーエンコーダ180,190は、上述したロータリーエンコーダ160と同じように、エンコーダディスクと光学センサとから構成されたものであり、ロータリーエンコーダ180のエンコーダディスクは、第1モータ71の出力ギヤ77と同心で回転するように出力ギヤ77に取り付けられており、ロータリーエンコーダ190のエンコーダディスクは、第2モータ72の出力ギヤ78と同心で回転するように出力ギヤ78に取り付けられている。この構成では、第1モータ71に連結されたロータリーエンコーダ180により第1モータ71の回転に応じた信号が生成され、制御装置100の現在値検出手段102へ入力される。同様に第2モータ72に連結されたロータリーエンコーダ190により第2モータ72の回転角度に応じた信号が生成され、制御装置100の現在値検出手段102へ入力される。現在値検出手段102はロータリーエンコーダ180及びロータリーエンコーダ190から入力された信号を基に第1モータ71と第2モータ72の現在回転量及び現在回転速度を演算し、演算部104及び目標値生成手段103へ出力する。目標値生成手段103は、印刷内容と、現在値生成手段102から入力された第1モータ71と第2モータ72の現在回転量及び現在回転速度を関係式(15)によって変換して得られたキャリッジ38と搬送ローラ87の現在位置及び現在速度を基に、演算部104における次回演算時のキャリッジ38と搬送ローラ87の位置及び速度の目標値を演算し、その値を演算部104へ出力する。演算部104は一定時間間隔で演算を行う。演算部104は、目標値生成手段103から入力されたキャリッジ38と搬送ローラ87の位置及び速度の前回の目標値を、関係式(16)を用いて第1モータ71の前回の回転角度目標値及び前回の回転速度目標値と、第2モータ72の前回の回転角度目標値及び回転速度目標値に変換する。演算部104は、第1モータ71と第2モータ72のそれぞれについて、回転角度目標値と現在の回転角度との偏差や回転速度目標値と現在の回転速度との偏差に基づいて、各モータに与えるべき制御量を算出してモータドライバ170へ出力する。モータドライバ170は、演算部104から入力された制御量に対応した電流を第1モータ71及び第2モータ72に出力する。第1モータ71及び第2モータ72の回転は関係式(15)の関係によってキャリッジ38と搬送ローラ87の運動に変換されてキャリッジ38と搬送ローラ87を動かす。このようにしてキャリッジ38と搬送ローラ87の位置や速度が所望の状態に制御される。
【0088】
また、上述した実施形態では、プリンタ部2におけるキャリッジ38及び搬送ローラ87の駆動に用いられる第1モータ71及び第2モータ72に本発明を適用した例について説明したが、本発明は、各モータ71,72で駆動制御される2つの被駆動体のうち、一方の被駆動体の負荷が大きいときに他方の被駆動体の負荷が小さくなるといった駆動機構全般に適用可能である。したがって、例えば、二足歩行ロボットにおいて、各脚部が2つのモータで駆動されている場合に、一方の脚部が前進方向へ駆動され、他方の脚部でロボットの自重を支持する二足歩行機構においても本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0089】
1・・・複合機
2・・・プリンタ部
24・・・画像記録ユニット
25・・・給紙ローラ
35・・・光学センサ
46・・・ベルト駆動機構
71・・・第1モータ
72・・・第2モータ
87・・・搬送ローラ
100・・・制御装置
102・・・現在値検出手段
103・・・目標値生成手段
110・・・伝達機構
150・・・リニアエンコーダ
160・・・ロータリーエンコーダ
161・・・第1遊星歯車機構
162・・・第1太陽ギヤ
163・・・第1遊星ギヤ
164・・・第1キャリア
165・・・第1複合ギヤ
170・・・モータドライバ
181・・・第2遊星歯車機構
165C2・・・第2太陽ギヤ
183・・・第2遊星ギヤ
184・・・第2キャリア
185・・・第2複合ギヤ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の制御手段によって回転速度が独立に制御される第1モータ及び第2モータの駆動力を第1被駆動体及び第2被駆動体に伝達する駆動力伝達装置であって、
第1遊星歯車機構と、第2遊星歯車機構と、第1駆動伝達機構と、第2駆動伝達機構とを具備し、
上記第1遊星歯車機構は、
第1回転軸の周りを回転可能に設けられた第1太陽歯車と、
上記第1回転軸の周りを回転可能に設けられた第1遊星キャリアと、
上記第1遊星キャリアに支持され、上記第1回転軸と平行な第2回転軸の周りを回転可能であり、且つ上記第1太陽歯車と噛合して上記第1太陽歯車の外周を公転可能な第1遊星歯車と、
上記第1遊星歯車と噛合して上記第1回転軸の周りを回転可能に設けられた第1外輪歯車と、により構成され、
上記第2遊星歯車機構は、
上記第1回転軸の周りを回転可能に設けられた第2太陽歯車と、
上記第1回転軸の周りを回転可能に設けられた第2遊星キャリアと、
上記第2遊星キャリアに支持され、上記第1回転軸と平行な第3回転軸の周りを回転可能であり、且つ上記第2太陽歯車と噛合して上記第2太陽歯車の外周を公転可能な第2遊星歯車と、
上記第2遊星歯車と噛合して上記第1回転軸の周りを回転可能に設けられた第2外輪歯車と、により構成され、
上記第1駆動伝達機構は、
上記第1太陽歯車、上記第1遊星キャリア、及び上記第1外輪歯車のいずれか1つの第1要素と、上記第2太陽歯車、上記第2遊星キャリア、及び上記第2外輪歯車のいずれか1つの第2要素とを所定の第1伝達比で接続するものであり、
上記第2駆動伝達機構は、
上記第1太陽歯車、上記第1遊星キャリア、及び上記第1外輪歯車のうち上記第1要素を除くいずれか1つの第3要素と、上記第2太陽歯車、上記第2遊星キャリア、及び上記第2外輪歯車のうち上記第2要素を除くいずれか1つの第4要素とを所定の第2伝達比で接続するものであり、
上記第1要素又は上記第2要素のいずれか一方の要素と、上記第3要素又は上記第4要素のいずれか一方の要素と、上記第1太陽歯車、上記第1遊星キャリア、上記第1外輪歯車、上記第2太陽歯車、上記第2遊星キャリア、及び上記第2外輪歯車のうち上記第1駆動伝達機構及び上記第2駆動伝達機構が接続されていない2つの要素と、を含む4つの要素から選択された2つの要素のそれぞれに上記第1モータ及び上記第2モータがそれぞれ接続され、上記4つの要素のうちの残りの2つの要素のそれぞれに上記第1被駆動体及び上記第2被駆動体がそれぞれ接続されている駆動力伝達装置。
【請求項2】
上記第1モータの回転情報を取得する第1回転情報取得手段と、
上記第2モータの回転情報を取得する第2回転情報取得手段と、を更に備え、
上記制御手段は、上記第1回転情報取得手段及び上記第2回転情報取得手段それぞれの取得結果に基づいて上記第1モータ及び上記第2モータをフィードバック制御するものである請求項1に記載の駆動力伝達装置。
【請求項3】
上記第1被駆動体の位置情報を取得する第1位置情報取得手段と、
上記第2被駆動体の位置情報を取得する第2位置情報取得手段と、を更に備え、
上記制御手段は、上記第1位置情報取得手段及び上記第2位置情報取得手段それぞれの取得結果に基づいて上記第1モータ及び上記第2モータをフィードバック制御するものである請求項1に記載の駆動力伝達装置。
【請求項4】
上記請求項1から3のいずれかに記載の駆動力伝達装置を備えたインクジェット記録方式の画像記録装置であって、
上記第1被駆動体が、被記録媒体の搬送方向と交差する方向へ往復動されるキャリッジであり、
上記第2被駆動体が、記録ヘッドによる画像記録領域へ向けて被記録媒体を搬送する搬送ローラである画像記録装置。
【請求項1】
所定の制御手段によって回転速度が独立に制御される第1モータ及び第2モータの駆動力を第1被駆動体及び第2被駆動体に伝達する駆動力伝達装置であって、
第1遊星歯車機構と、第2遊星歯車機構と、第1駆動伝達機構と、第2駆動伝達機構とを具備し、
上記第1遊星歯車機構は、
第1回転軸の周りを回転可能に設けられた第1太陽歯車と、
上記第1回転軸の周りを回転可能に設けられた第1遊星キャリアと、
上記第1遊星キャリアに支持され、上記第1回転軸と平行な第2回転軸の周りを回転可能であり、且つ上記第1太陽歯車と噛合して上記第1太陽歯車の外周を公転可能な第1遊星歯車と、
上記第1遊星歯車と噛合して上記第1回転軸の周りを回転可能に設けられた第1外輪歯車と、により構成され、
上記第2遊星歯車機構は、
上記第1回転軸の周りを回転可能に設けられた第2太陽歯車と、
上記第1回転軸の周りを回転可能に設けられた第2遊星キャリアと、
上記第2遊星キャリアに支持され、上記第1回転軸と平行な第3回転軸の周りを回転可能であり、且つ上記第2太陽歯車と噛合して上記第2太陽歯車の外周を公転可能な第2遊星歯車と、
上記第2遊星歯車と噛合して上記第1回転軸の周りを回転可能に設けられた第2外輪歯車と、により構成され、
上記第1駆動伝達機構は、
上記第1太陽歯車、上記第1遊星キャリア、及び上記第1外輪歯車のいずれか1つの第1要素と、上記第2太陽歯車、上記第2遊星キャリア、及び上記第2外輪歯車のいずれか1つの第2要素とを所定の第1伝達比で接続するものであり、
上記第2駆動伝達機構は、
上記第1太陽歯車、上記第1遊星キャリア、及び上記第1外輪歯車のうち上記第1要素を除くいずれか1つの第3要素と、上記第2太陽歯車、上記第2遊星キャリア、及び上記第2外輪歯車のうち上記第2要素を除くいずれか1つの第4要素とを所定の第2伝達比で接続するものであり、
上記第1要素又は上記第2要素のいずれか一方の要素と、上記第3要素又は上記第4要素のいずれか一方の要素と、上記第1太陽歯車、上記第1遊星キャリア、上記第1外輪歯車、上記第2太陽歯車、上記第2遊星キャリア、及び上記第2外輪歯車のうち上記第1駆動伝達機構及び上記第2駆動伝達機構が接続されていない2つの要素と、を含む4つの要素から選択された2つの要素のそれぞれに上記第1モータ及び上記第2モータがそれぞれ接続され、上記4つの要素のうちの残りの2つの要素のそれぞれに上記第1被駆動体及び上記第2被駆動体がそれぞれ接続されている駆動力伝達装置。
【請求項2】
上記第1モータの回転情報を取得する第1回転情報取得手段と、
上記第2モータの回転情報を取得する第2回転情報取得手段と、を更に備え、
上記制御手段は、上記第1回転情報取得手段及び上記第2回転情報取得手段それぞれの取得結果に基づいて上記第1モータ及び上記第2モータをフィードバック制御するものである請求項1に記載の駆動力伝達装置。
【請求項3】
上記第1被駆動体の位置情報を取得する第1位置情報取得手段と、
上記第2被駆動体の位置情報を取得する第2位置情報取得手段と、を更に備え、
上記制御手段は、上記第1位置情報取得手段及び上記第2位置情報取得手段それぞれの取得結果に基づいて上記第1モータ及び上記第2モータをフィードバック制御するものである請求項1に記載の駆動力伝達装置。
【請求項4】
上記請求項1から3のいずれかに記載の駆動力伝達装置を備えたインクジェット記録方式の画像記録装置であって、
上記第1被駆動体が、被記録媒体の搬送方向と交差する方向へ往復動されるキャリッジであり、
上記第2被駆動体が、記録ヘッドによる画像記録領域へ向けて被記録媒体を搬送する搬送ローラである画像記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−75063(P2011−75063A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228785(P2009−228785)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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