説明

駆動回路のための供給電圧スイッチの性能を検査する方法、および装置

【課題】駆動回路の供給電圧スイッチの性能を検査する方法及び装置を提供する。
【解決手段】ポジショナシステム1は、アクチュエータ2と、アクチュエータ2を駆動する駆動回路3と、駆動回路3に電気的エネルギーが供給されるように駆動回路3に直列に接続された供給電圧スイッチ4と、供給電圧スイッチ4が閉じるよう駆動される場合に、アクチュエータ2の駆動のために十分な電圧が駆動回路3内で検出されるかによって、供給電圧スイッチ4の性能を確認するための制御ユニット5を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータのための駆動回路に関し、特に、セキュリティクリティカルな適用における駆動回路の停止可能性を検査するための装置に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
近代的な車両では、例えば電動機を用いて構成されうる複数のアクチュエータが使用されている。通常では、適切な駆動回路を用いて、アクチュエータに電気的エネルギーが供給される。特にセーフティクリティカルな適用においては、駆動回路を確実に停止しうることが必要であり、したがって、この駆動回路は供給電圧から完全に分離される。この停止能力(Abschaltfaehigkeit)を保障しうるために、検査は、対処しえない状況を回避するために可能な限り走行開始前に行う必要がある。
【0003】
独国特許第6977971(T2)号明細書は、駆動段を検査する回路を開示しており、ここでは、最初に、低減された電流が駆動段に印加され、低減された電流の印加の間に、駆動段の少なくとも1つのアクティブな(aktiv)構成要素が作動される。駆動段内の電気的パラメータが測定され、測定された電気的パラメータは、駆動段の電流特性に対応する所定値と比較される。電気的パラメータが所定値と異なる場合には、エラーの発生がシグナリングされる。
【0004】
独国特許第19510835(C1)号明細書には、直流機を有する駆動回路構成を検査する方法が開示されている。直流機は、駆動回路によって制御されるPWM(Pulse Width Modulation)変調器を介して切り替えられうる。コンデンサは、PWMスイッチと並列に接続され、スイッチ接点は、所定電流で遮断する抵抗の低い直列抵抗器によって橋絡され、その際に、PWM変調器、および、接触器のスイッチ接点またはその性能を検査するために、接触器が作動しない際または作動する際に、供給電圧および/またはコンデンサでの電圧が並行して測定され、比較される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に基づいて、請求項1に記載の電気機械的な変換器(Steller)の駆動回路の電圧供給を制御する供給電圧回路の性能を検査する方法、および、並列される請求項に記載の装置および構成が構想される。
【0006】
本発明のさらなる有利な実施形態は、従属請求項に示される。
【0007】
第1の観点によれば、駆動回路のための供給電圧スイッチの性能(Funktionsfaehigkeit)を検査する方法であって、供給電圧スイッチの性能は、当該供給電圧スイッチが閉じるよう駆動される場合に、アクチュエータの駆動のために十分な電圧が駆動回路内で検出されるかどうかにしたがって確認される、上記方法が構想される。
【0008】
上記方法の構想は、駆動回路内の電圧を監視することで、駆動回路のための供給電圧スイッチを検査することにある。検査の間、供給電圧スイッチは、開くおよび閉じるよう駆動され、対応して、駆動回路内の電圧の測定によって、供給電圧が駆動回路に印加されているか否かが検査される。疑義(Implausibilitaet)が生じる場合には、例えば、開くよう駆動されたにも関わらず供給電圧スイッチが閉じたままであり、または、閉じるよう駆動されたにも関わらず供給電圧スイッチが開いたままであるというエラーのような、対応するエラーが検出される可能性がある。
【0009】
従来では、駆動回路内に存在する機能について停止能力が検査されている。その際に、少なくとも、「駆動回路が停止している」という診断結果が評価される。しかしながら、この情報は、駆動モジュールの出力口の実際の物理的状態に関しては意味を有さない。上記の方法によって、このような欠如を取り除くことが可能であり、供給電圧スイッチ内でのエラーの発生が確認されうる。
【0010】
駆動回路内で利用される半導体スイッチには、通常、駆動回路が良好に機能しえない(funktionsfaehig)場合に確認するために、不足電圧検出部が設けられる。この不足電圧検出部は、好適に、駆動回路の供給電圧の停止の検査のために利用されうる。不足電圧検出部の利用によって、供給電圧スイッチの駆動信号が直接的に検証される。その際に、検査は、ポジショナ上およびその配線上での外部の電気的エラーに依存しない。さらに、純粋に制御装置内部の信号に基づく堅牢な停止検査が実現可能であり、加えて、制御装置のマイクロコントローラ上に、追加的なアナログデジタル入力口またはデジタル入力口は必要ではない。
【0011】
さらなる別の実施形態によれば、供給電圧スイッチの性能は、当該供給電圧スイッチが開くよう駆動される場合に、駆動回路内で不足電圧が検出されるかどうかにしたがって確認されうる。
【0012】
さらに、不足電圧または十分な電圧の検出は、駆動回路の選択された電圧と、電圧閾値と、の比較を用いて実行されうる。
【0013】
さらなる別の観点によれば、駆動回路のための供給電圧スイッチの性能を検査する装置であって、装置は、供給電圧スイッチが閉じるよう駆動される場合に、アクチュエータの駆動のために十分な電圧が駆動回路内で検出されるかどうかにしたがって、供給電圧スイッチの性能を確認するように構成される、上記装置が構想される。
【0014】
さらなる別の観点によれば、ポジショナシステムが構想される。このポジショナシステムは、
−アクチュエータと、
−アクチュエータを駆動するための駆動回路と、
−供給電圧スイッチであって、当該供給電圧スイッチの切り替え状態によって駆動回路に電気的エネルギーが供給されるように駆動回路と直列に接続される、上記供給電圧スイッチと、
−供給電圧スイッチが閉じるよう駆動される場合に、アクチュエータの駆動のために十分な電圧が駆動回路内で検出されるかどうかにしたがって、供給電圧スイッチの性能を確認するための制御ユニットと、
を備える。
【0015】
さらなる別の観点によれば、データ処理装置(コンピュータ)上で実行される場合に上記方法を実施するプログラムコードを含むコンピュータプログラム製品が構想される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の好適な実施形態が、以下では、添付の図面を用いてより詳細に解説される。
【図1】アクチュエータおよび駆動回路を備えたポジショナシステムの概略図を示す。
【図2】駆動回路を切り替える供給電圧スイッチの性能を検査する方法を具体的に説明するためのフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、例えば、電動機、または、電気機械的もしくは電気的に駆動される他の変換器を有しうるアクチュエータ2を備えた、ポジショナシステム1の構造を概略的に示している。アクチュエータ2は、制御ユニット5により適切な形態で制御される駆動回路3によって駆動される。
【0018】
詳細には、駆動回路3は、半導体スイッチブリッジ、特にHブリッジ、B6ブリッジ等を有し、ブリッジ内で利用される半導体スイッチは、対応する制御信号Sによって、制御ユニット5により駆動される。半導体スイッチブリッジは、通常、2つ(Hブリッジ)、3つ(B6ブリッジ)、または、3つ以上の半ブリッジを有し、これら半ブリッジはそれぞれ、通常では、切り替え可能な電流経路、例えば、2つの半導体スイッチの直列接続を有する。この切り替え可能な電流経路内には、半ブリッジがそれを介してアクチュエータ2と接続される節点が存在する。半導体スイッチは、サイリスタ、パワーMOSFET(Metal-Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、IGCT(Integrated Gate Commutated Thyristor)として構成可能であり、公知の形態で、電流フローの案内および遮断のために駆動されうる。
【0019】
駆動回路3は、アクチュエータ2を駆動するための電気的エネルギーを、高い供給電位Vと、低い供給電位V、好適に大地電位との間で印加される供給電圧UVersから獲得する。高い供給電位Vと低い供給電位VL、の間の電流経路では、駆動回路3に供給電圧UVersを印加するために、または、供給電圧UVersから駆動回路3を分離するために、供給電圧スイッチ4が駆動回路3に対して直列に配置される。供給電圧スイッチ4は、例えば離散型スイッチとして、半導体スイッチとしても、リレーまたは接触器としても構成されうる。
【0020】
アクチュエータ2を作動または停止し、および/または、エラーの場合にアクチュエータ2に対する給電を中断しうるために、供給電圧スイッチ4も同様に制御ユニット5によって制御される。
【0021】
さらに、高い供給電位Vは、測定線6を介して制御ユニット5と接続されているため、制御ユニット5内に設けられるアナログデジタル変換器51は、印加された供給電圧UVersを測定することが可能である。
【0022】
駆動回路3はさらに、不足電圧検査ユニット31を有し、この不足電圧検査ユニット31は、駆動回路3の1つまたは複数の半導体スイッチに印加された電圧が低すぎないかを確認する。このことは、所定の電圧閾値との比較を用いて確認される。この比較は、不足電圧検出ユニット31内で実行することが可能であり、不足電圧検出ユニット31は、その後、検査線7を介して、比較結果を制御ユニット5へとシグナリングする。代替的に、検査線7を介して、駆動回路3の1つまたは複数の半導体スイッチに印加された電圧についての表示も伝達可能であり、その際に、上記比較は、制御ユニット内で、例えば、制御ユニット内に設けられる比較ユニット内で実行される。
【0023】
図2は、供給電圧スイッチ4の性能を検査する方法を具体的に説明するためのフロー図を示す。ステップS1では、供給電圧スイッチ4は最初に、自身が開くように、すなわち、通電されないように駆動される。
【0024】
その後、ステップS2では、測定線6を用いて、印加された供給電圧UVersが十分な高さを有するかどうかが検査される。さらに、印加された供給電圧UVersが、制御ユニット5のアナログデジタル変換器51内でデジタル化され、したがって、制御装置5内に存在するマイクロコントローラは、供給電圧閾値との閾値比較によって、印加された供給電圧UVersが十分に高いかどうかを確認することが可能である。
【0025】
十分に高い供給電圧UVersが確認された場合には(選択肢:YES)、本方法は、ステップS3に進む。十分に高い供給電圧UVersが確認されない場合には(選択肢:NO)、ステップS9において、供給電圧が十分に高くないというエラーが検出される。
【0026】
ステップS3において、駆動回路3の不足電圧検査ユニット31上で、駆動回路3内で不足電圧が印加されているかが検査される。不足電圧が示される場合には(選択肢:YES)、制御ユニット5は、ステップS1で行った、供給電圧スイッチ4による停止が有効であることを検出し、本方法は、ステップS4に進む。不足電圧が示されない場合には(選択肢:NO)、ステップ7において補正措置が実行される。
【0027】
ステップS4において、すなわち、供給電圧スイッチによる供給電圧UVersの停止が有効である場合には、供給電圧スイッチ4は閉鎖され、したがって、駆動回路3には、供給電圧UVersが印加される。不足電圧が印加されているかについての検査は、駆動回路3内にもはや不足電圧が存在しないことを示すことになる(ステップS5)。
【0028】
ステップS5において、不足電圧が未だに存在する場合には(選択肢:NO)、供給電圧スイッチ4は高い確率で破損しており、この供給電圧スイッチ4が永続的に開いた状態にあることが確認される。このことが確認された場合には、ステップS7の補正措置が実行される。不足電圧が存在しない場合には(選択肢:YES)、ステップS6において、供給電圧スイッチ4の性能が確認され、適切なシグナリングにより肯定応答される。
【0029】
不足電圧検査ブロック31の代わりに、供給電圧スイッチ4と駆動回路3との間の電圧の測定によって、および、当該電圧と制御ユニット5内の所定の閾値電圧との比較によっても、駆動回路3内の不足電圧は確認されうる。制御ユニット5内での電圧の読み込みは、アナログデジタル変換器51を用いて行われうる。
【0030】
上記の実施例において、供給電圧回路4と駆動回路3とは別体で実現される。しかしながら、駆動回路3と供給電圧回路4とが1つのモジュールに組み込まれて構成されることも可能である。
【0031】
代替的に、駆動回路3内での電圧の測定のために、当該駆動回路3内での不足電圧を確認するためにアクチュエータ2への駆動回路3の出力電圧を測定してもよい。静的ではないことが多い出力電圧を適切に評価することによって、対応して、駆動回路3に供給電圧UVersが印加されたかまたは印加されていないかが確認されうる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動回路(3)のための供給電圧スイッチ(4)の性能を検査する方法であって、
前記供給電圧スイッチ(4)の性能は、前記供給電圧スイッチ(4)が閉じるよう駆動される場合に、アクチュエータ(2)の駆動のために十分な電圧が前記駆動回路(3)内で検出されるかどうかにしたがって確認される、方法。
【請求項2】
前記供給電圧スイッチ(4)の性能は、前記供給電圧スイッチ(4)が開くよう駆動される場合に、前記駆動回路(3)内で不足電圧が検出されるかどうかにしたがって確認される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
不足電圧または十分な電圧の前記検出は、前記駆動回路(3)の選択された電圧と、電圧閾値との比較を用いて実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
駆動回路(3)のための供給電圧スイッチ(4)の性能を検査する装置であって、
前記装置は、前記供給電圧スイッチ(4)が閉じるよう駆動される場合に、アクチュエータ(2)の駆動のために十分な電圧が前記駆動回路(3)内で検出されるかどうかにしたがって、前記供給電圧スイッチ(4)の性能を確認するよう構成される、装置。
【請求項5】
−アクチュエータ(2)と、
−前記アクチュエータ(2)を駆動するための駆動回路(3)と、
−供給電圧スイッチ(4)であって、前記供給電圧スイッチ(4)の切り替え状態によって前記駆動回路(3)に電気的エネルギーが供給されるように前記駆動回路(3)と直列に接続される、前記供給電圧スイッチ(4)と、
−前記供給電圧スイッチ(4)が閉じるよう駆動される場合に、前記アクチュエータ(2)の駆動のために十分な電圧が前記駆動回路(3)内で検出されるかどうかにしたがって、前記供給電圧スイッチ(4)の性能を確認するための制御ユニット(5)と、
を備えたポジショナシステム(1)。
【請求項6】
データ処理装置上で実行される場合に請求項1〜3にいずれか1項の方法を実施するプログラムコードを含むコンピュータプログラム製品。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−74626(P2013−74626A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−211927(P2012−211927)
【出願日】平成24年9月26日(2012.9.26)
【出願人】(501125231)ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (329)
【Fターム(参考)】