説明

駆動回路及び駆動方法、並びに電気光学装置及び電子機器

【課題】液晶装置等の電気光学装置において高品質な画像を表示可能とする。
【解決手段】駆動回路は、互いに交差して延びる複数のデータ線(6a)及び複数の走査線(11a)と、複数の画素部(600)とを備えた電気光学装置(100)を駆動する。駆動回路は、複数のデータ線に対して、n本(但し、nは自然数)のデータ線毎に、画像信号線(300)を介して、画像に応じた画像信号を供給する画像信号供給手段(500)と、n本のデータ線に含まれる各データ線を時系列で選択することで、画像信号供給手段から供給された画像信号を、n本のデータ線の各々に振り分ける画像信号振分手段(7)と、n本のデータ線が画像信号振分手段に選択される前の期間に、画像信号線の電圧を所定の電圧とするための電圧を供給する調整電圧供給手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶装置等の電気光学装置を駆動する駆動回路及び駆動方法、並びに該駆動装置を備えた電気光学装置、及び該電気光学装置を備えた、例えば液晶プロジェクター等の電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の駆動回路によって駆動される電気光学装置として、例えば互いに交差するように設けられた複数の走査線及びデータ線によって各画素を制御することによって、電気光学パネル上に様々な画像を表示可能とするものがある。電気光学パネルは、例えばフレキシブル基板を介して外部の回路基板等と電気的に接続されている。このような電気光学装置では、電気光学パネルと接続されるフレキシブル基板上に駆動回路を備えており、複数のデータ線に対して同時に画像信号を供給する、所謂ハイブリッド駆動に関する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−43418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したハイブリッド駆動においては、各データ線に対して画像信号を時分割で振り分けるが、この際、すべてのデータ線のうち同時に画像信号を供給するデータ線の数は、正確な画像信号を供給することが困難になるので、あまり多くすることができない。よって、高精細な画像を表示させるようなデータ線の数が極めて多い装置を駆動する際には、時分割の数が増え、各画素に対して画像に応じた電圧を印加する期間(即ち、書込期間)が不足してしまうおそれがある。
【0005】
書込期間が不足すると、例えば意図した色調を表示することができず、画像にムラが生じてしまう場合がある。即ち、上述した技術には、高品質な画質を表示できないおそれがあるという技術的問題点がある。
【0006】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、高品質な画像を表示することが可能な駆動回路及び駆動方法、並びに電気光学装置及び電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の駆動回路は上記課題を解決するために、互いに交差して延びる複数のデータ線及び複数の走査線と、前記複数のデータ線及び前記複数の走査線に夫々電気的に接続された複数の画素部とを備えた電気光学装置を駆動する駆動回路であって、前記複数のデータ線に対して、n本(但し、nは自然数)のデータ線毎に、画像信号線を介して、画像に応じた画像信号を供給する画像信号供給手段と、前記n本のデータ線に含まれる各データ線を時系列で選択することで、前記画像信号供給手段から供給された前記画像信号を、前記n本のデータ線の各々に振り分ける画像信号振分手段と、前記n本のデータ線が前記画像信号振分手段に選択される前の期間に、前記画像信号線の電圧を所定の電圧とするための電圧を供給する調整電圧供給手段とを備える。
【0008】
本発明の駆動回路によれば、その動作時には、互いに交差して延びる複数のデータ線及び複数の走査線と、前記複数のデータ線及び前記複数の走査線に夫々電気的に接続された複数の画素部とを備えた電気光学装置が駆動される。具体的には、走査線から画素部におけるトランジスタに対して走査信号が供給され、データ線から画素部における画素電極への画像信号の供給が制御される。これにより、所謂アクティブマトリクス方式による画像表示が行われる。
【0009】
本発明では、電気光学装置の動作に際して、先ず画像信号供給手段から複数のデータ線に対し、画像信号線を介して、n本のデータ線毎に画像信号が供給される。即ち、画像信号はn本のデータ線に対して、1本の画像信号線からまとめて供給される。このため、データ線の前段における配線の数を効果的に低減することができる。
【0010】
画像信号供給手段から供給された画像信号は、例えばデマルチプレクサ等の画像信号振分手段がn本のデータ線に含まれる各データ線を時系列で選択することで、n本のデータ線の各々に振り分けられる。即ち、選択されているデータ線にのみ画像信号が供給されるような構成とされることで、まとめて供給された画像信号が、複数のデータ線の各々に順次振り分けられて供給される。
【0011】
ここで本発明では特に、n本のデータ線が振分手段に選択される前の期間に、調整電圧供給手段から電圧が供給されることで、画像信号線の電圧が所定の電圧とされる。即ち、各データ線に画像信号が供給される前に、画像信号線の電圧が変更される。尚、ここでの「画像信号線の電圧」とは、画像信号線自体に保持される電圧の他、画像信号線に発生する寄生容量や、画像信号線に対して付加された保持容量に保持された電圧をも包括する概念である。また、「所定の電圧」とは、後述するデータ線間における画像信号線の電圧の違いを小さくするための電圧であり、典型的には、中間調に対応する電圧や、直後に供給される画像信号と同じ電圧として設定される。
【0012】
仮に、上述した画像信号線の電圧の変更が行われないとすると、画像信号線には、例えば画像信号に先立って供給されるプリチャージ電圧や、1フレーム前の画像を表示させた際の電圧(以降、適宜「残存電圧」と称する)が保持された状態のままとされる。この場合、n本のデータ線のうち初めに選択されるデータ線に画像信号が供給される際には、画像信号線に残存電圧が保持された状態となり、以降のデータ線に画像信号が供給される際には、画像信号線に直前に選択されたデータ線に供給された画像信号が保持されている状態となる。よって、初めに選択されるデータ線と、以降に選択されるデータ線とで、画像信号を供給する際の画像信号線の電圧が互いに大きく異なってしまうおそれがある。特にベタ画像を表示させるような場合は、上述した画像信号線の電圧のデータ線毎の差異が明確になってしまう。
【0013】
データ線に画像信号が供給される際の画像信号線の電圧の違いは、実際に画素部に供給される電圧に影響する。具体的には、画像信号線の電圧が直後に供給される画像信号と比べて低い場合、初めに選択されるデータ線において書込不足が生じてしまうおそれがある。書込不足は、例えば表示される画像においてムラとして現われてしまう。そして特に、n本のデータ線毎に画像信号を供給する本発明では、このようなムラがn本のデータ線毎に周期的に現われてしまうため、非常に目立ってしまう。
【0014】
しかるに本発明では特に、調整電圧供給手段によって、書込開始時の画像信号線の電圧が所定の電圧とされるため、画像信号線の電圧がデータ線毎に異なってしまうことを低減することができる。即ち、n本のデータ線の各々に対して、概ね同様の条件で画像信号の供給が行えるようになる。よって、表示される画像にムラが生じてしまうことを低減することができる。尚、所定の電圧は、各データ線が選択される際の画像信号線の電圧の差をより小さくできるもの程効果が高いが、多少なりとも画像信号線の電圧の差を小さくできるものであれば、相応に効果は得られる。
【0015】
本発明の駆動回路は、典型的には、データ線及び走査線、並びに画素部が配列される表示領域を備える電気光学パネルに接続されるフレキシブル基板上に、集積回路として設けられる。但し、電気光学パネル上に、本発明の駆動回路の一部又は全部が設けられても構わない。
【0016】
以上説明したように、本発明の駆動回路によれば、電気光学装置において高品質な表示を行うことが可能である。
【0017】
本発明の駆動回路の一態様では、前記調整電圧供給手段は、前記画素部において中間調を表示させる電圧を供給する。
【0018】
この態様によれば、調整電圧供給手段によって、画素部に中間調を表示させる電圧が供給されるため、画像信号が供給される前に、画像信号線の電圧が中間調に対応した電圧に変更される。尚、「中間調」とは、装置が表示可能な階調のうち中間的な階調にあたるものであり、例えば白から黒までの階調を表示可能な装置におけるグレーに相当する。
【0019】
本発明の駆動回路によって駆動される電気光学装置では、中間調を表示させる場合、電圧に対する階調の変化が極めて大きくなる傾向にある。言い換えれば、中間調を表示させる場合、階調の変化に対して電圧の変化は小さくなる傾向にある。よって、予め画像信号線の電圧を中間調に対応する電圧にしておけば、直後に供給される画像信号の階調がどのような階調であったとしても、画像信号線の電圧と供給される画像信号の電圧の差は小さくなる。即ち、画像信号の電圧値によらず、効率的に画像信号線の電圧の違いを小さくすることができる。従って、表示される画像にムラが生じてしまうことを効果的に低減することができる。
【0020】
尚、どの程度の中間調において、上述したような傾向が見られるかは液晶の種類等によって異なる。よって、本発明の「中間調を表示させる電圧」とは、直後の画像信号の電圧の影響を効率的に緩和できる程度に、階調の変化に対する電圧の変化が小さくなるような階調に応じた電圧を意味している。
【0021】
本発明の駆動回路の他の態様では、前記調整電圧供給手段は、前記n本のデータ線のうち、初めに前記画像信号振分手段に選択されるデータ線に供給される前記画像信号と同じ電圧を供給する。
【0022】
この態様によれば、調整電圧供給手段によって、n本のデータ線のうち、初めに画像信号振分手段に選択されるデータ線に供給される画像信号と同じ電圧が供給されるため、画像信号が供給される前に、画像信号線の電圧が直後の画像信号に応じた電圧に変更される。尚、ここでの「同じ」とは、完全に同一であることを意味するものではなく、後述する本態様の効果が発揮される程度に電圧の値が近いことを意味している。
【0023】
本態様では、画像信号線に保持される電圧が直後の画像信号と同じ電圧とされるため、n本のデータ線のうち、初めに選択されるデータ線と、以降に選択されるデータ線とで、画像信号を供給する際の画像信号線の電圧が互いに大きく異なってしまうことを低減することができる。従って、表示される画像にムラが生じてしまうことを効果的に低減することができる。
【0024】
本発明の駆動回路の他の態様では、前記画像信号の供給に先立って、前記複数のデータ線の各々にプリチャージ電圧を供給するプリチャージ電圧供給手段を更に備え、前記調整電圧供給手段は、前記プリチャージ電圧が前記複数のデータ線の各々に供給された後に、前記プリチャージ電圧より前記画像信号に近い電圧を供給することを特徴とする。
【0025】
この態様によれば、画像信号が各データ線に供給される前に、プリチャージ電圧供給手段によって、各データ線にプリチャージ電圧が供給される。プリチャージ電圧を予め供給することにより、各データ線の電圧がプリチャージ電圧とされるため、書き込み時の負担を低減することができる。
【0026】
ここで本態様では特に、プリチャージ電圧が複数のデータ線の各々に供給された後に、調整電圧供給手段によって、プリチャージ電圧より画像信号に近い電圧が供給される。尚、ここでの「プリチャージ電圧より画像信号に近い電圧」とは、ある程度の幅を有する画像信号に対して平均的に近いことを意味している。即ち、調整電圧供給手段からは、プリチャージ電圧よりも画像信号の平均値、或いは中間値に近い電圧が供給される。
【0027】
上述したように調整電圧供給手段がどうさすることで、n本のデータ線のうち、初めに選択されるデータ線に画像信号が供給される際には、画像信号線の電圧は、プリチャージ電圧より画像信号に近い電圧とされる。よって、初めに選択されるデータ線と、以降に選択されるデータ線とで、画像信号を供給する際の画像信号線の電圧が互いに大きく異なってしまうことを低減することができる。従って、表示される画像にムラが生じてしまうことを効果的に低減することができる。
【0028】
本発明の電気光学装置は上記課題を解決するために、上述した本発明の駆動回路(但し、その各種態様も含む)を備える。
【0029】
本発明の電気光学装置によれば、上述した本発明に係る駆動回路を具備してなるので、各データ線の書込条件を概ね同様とすることができる。従って、表示される画像にムラが生じてしまうことを効果的に低減することができ、高品質な画像を表示させることが可能である。
【0030】
本発明の電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置を備える。
【0031】
本発明の電子機器によれば、上述した本発明に係る電気光学装置を具備してなるので、高品質な表示を行うことが可能な、投射型表示装置、テレビ、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサー、ビューファインダー型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。また、本発明の電子機器として、例えば電子ペーパーなどの電気泳動装置等も実現することも可能である。
【0032】
本発明の駆動方法は上記課題を解決するために、互いに交差して延びる複数のデータ線及び複数の走査線と、前記複数のデータ線及び前記複数の走査線に夫々電気的に接続された複数の画素部とを備えた電気光学装置を駆動する駆動方法であって、前記複数のデータ線に対して、n本(但し、nは自然数)のデータ線毎に、画像信号線を介して、画像に応じた画像信号を供給する画像信号供給工程と、前記n本のデータ線に含まれる各データ線を時系列で選択することで、前記画像信号供給手段から供給された前記画像信号を、前記n本のデータ線の各々に振り分ける画像信号振分工程と、前記n本のデータ線が前記画像信号振分工程において選択される前の期間に、前記画像信号線の電圧を所定の電圧とするための電圧を供給する調整電圧供給工程とを備える。
【0033】
本発明の駆動方法によれば、上述した本発明の駆動回路の場合と同様に、n本のデータ線のうち、初めに選択されるデータ線と、以降に選択されるデータ線とで、画像信号を供給する際の画像信号線の電圧が互いに大きく異なってしまうことを低減することができる。従って、表示される画像にムラが生じてしまうことを効果的に低減することができ、電気光学装置において高品質な画像を表示させることが可能である。
【0034】
尚、本発明の駆動方法においても、上述した本発明の駆動回路における各種態様と同様の態様を採ることが可能である。
【0035】
本発明の作用及び他の利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施形態に係る電気光学装置の構成を示す平面図である。
【図2】図1のH−H´線断面図である。
【図3】本実施形態に係る電気光学装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態に係る電気光学装置の画素部の等価回路図である。
【図5】本実施形態に係る駆動回路の構成を電気光学装置と共に示す斜視図である。
【図6】第1実施形態に係る駆動回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図7】第1実施形態に係る画像信号線の電圧の推移を示すグラフである。
【図8】比較例に係る駆動回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図9】比較例に係る画像信号線の電圧の推移を示すグラフである。
【図10】画素部に印加される電圧と表示される階調との関係を示すグラフである。
【図11】第2実施形態に係る駆動回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図12】第2実施形態に係る画像信号線の電圧の推移を示すグラフである。
【図13】電気光学装置を適用した電子機器の一例たるプロジェクターの構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0038】
<電気光学装置>
先ず、本発明の駆動回路によって駆動される電気光学装置について、図1から図4を参照して説明する。尚、以下の実施形態では、本発明の電気光学装置の一例である駆動回路内蔵型のTFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を例にとる。
【0039】
本実施形態に係る電気光学装置の構成について、図1及び図2を参照して説明する。ここに図1は、本実施形態に係る電気光学装置の構成を示す平面図であり、図2は、図1のH−H´線断面図である。
【0040】
図1及び図2において、本実施形態に係る電気光学装置100では、TFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10は、例えば石英基板、ガラス基板等の透明基板や、シリコン基板等である。対向基板20は、例えば石英基板、ガラス基板等の透明基板である。TFTアレイ基板10と対向基板20との間には、液晶層50が封入されている。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、一対の配向膜間で所定の配向状態をとる。
【0041】
TFTアレイ基板10と対向基板20とは、複数の画素電極が設けられた画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により、相互に接着されている。
【0042】
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(即ち、基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバー或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。尚、ギャップ材を、シール材52に混入されるものに加えて若しくは代えて、画像表示領域10a又は画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域に、配置するようにしてもよい。
【0043】
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。尚、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
【0044】
周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。更に、このように画像表示領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間をつなぐため、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして複数の配線105が設けられている。
【0045】
TFTアレイ基板10上における対向基板20の4つのコーナー部に対向する領域には、両基板間を上下導通材107で接続するための上下導通端子106が配置されている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
【0046】
図2において、TFTアレイ基板10上には、駆動素子である画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が作り込まれた積層構造が形成される。この積層構造の詳細な構成については図2では図示を省略してあるが、この積層構造の上に、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明材料からなる画素電極9aが、画素毎に所定のパターンで島状に形成されている。
【0047】
画素電極9aは、対向電極21に対向するように、TFTアレイ基板10上の画像表示領域10aに形成されている。TFTアレイ基板10における液晶層50の面する側の表面、即ち画素電極9a上には、配向膜16が画素電極9aを覆うように形成されている。
【0048】
対向基板20におけるTFTアレイ基板10との対向面上には、遮光膜23が形成されている。遮光膜23は、例えば対向基板20における対向面上に平面的に見て、格子状に形成されている。対向基板20において、遮光膜23によって非開口領域が規定され、遮光膜23によって区切られた領域が、例えばプロジェクター用のランプや直視用のバックライトから出射された光を透過させる開口領域となる。尚、遮光膜23をストライプ状に形成し、該遮光膜23と、TFTアレイ基板10側に設けられたデータ線等の各種構成要素とによって、非開口領域を規定するようにしてもよい。
【0049】
遮光膜23上には、ITO等の透明材料からなる対向電極21が複数の画素電極9aと対向するように形成されている。また遮光膜23上には、画像表示領域10aにおいてカラー表示を行うために、開口領域及び非開口領域の一部を含む領域に、図2には図示しないカラーフィルターが形成されるようにしてもよい。対向基板20の対向面上における、対向電極21上には、配向膜22が形成されている。
【0050】
尚、図1及び図2に示したTFTアレイ基板10上には、上述したデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等の駆動回路に加えて、画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置100の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
【0051】
次に、本実施形態に係る電気光学装置の電気的な構成について、図3及び図4を参照して説明する。ここに図3は、本実施形態に係る電気光学装置の電気的な構成を示すブロック図であり、図4は、本実施形態に係る電気光学装置の画素部の等価回路図である。
【0052】
図3において、電気光学装置100は、TFTアレイ基板10上に、デマルチプレクサ7及び走査線駆動回路104を備えている。TFTアレイ基板10上の外部回路接続端子102のうち画像信号端子102vには、外部回路としての画像信号供給回路500が電気的に接続されている。
【0053】
TFTアレイ基板10上の画像表示領域10aには、1088本の走査線11aが行方向(即ち、X方向)に延在するように設けられ、また、8本毎にグループ化された1984(=248×8)本のアルミニウム等の金属膜からなるデータ線6aが、列方向(即ち、Y方向)に延在するように、且つ、各走査線11aと互いに電気的な絶縁を保つように設けられている。尚、走査線11a及びデータ線6aの本数はそれぞれ1088本及び1984本に限定されるものではない。1グループを構成するデータ線数は、本実施形態では「8」としたが、「2」以上であればよい。
【0054】
画素部600は、1088本の走査線11aと1984本のデータ線6aとの交差に対応して、それぞれ配列されている。従って、本実施形態では、画素部600は、縦1088行×横1984列で、所定の画素ピッチでマトリクス状に配列することになる。
【0055】
図4に示すように、画素部600は、画素スイッチング用TFT30、液晶素子72及び蓄積容量70を備えている。
【0056】
画素スイッチング用TFT30は、ソースがデータ線6aに電気的に接続され、ゲートが走査線11aに電気的に接続され、ドレインが後述する液晶素子72の画素電極9aに電気的に接続されている。画素スイッチング用TFT30は、走査線駆動回路104から供給される走査信号によってオンオフが切り換えられる。
【0057】
液晶素子72は、画素電極9a、対向電極21並びに画素電極9a及び対向電極21間に狭持された液晶から構成されている。液晶素子72において、データ線6a及び画素電極9aを介して液晶に書き込まれた所定レベルのデータ信号は、対向電極21との間で一定期間保持される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として液晶装置100からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射する。
【0058】
蓄積容量70は、保持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極9aと対向電極との間に形成される液晶容量と並列に付加されている。
【0059】
以上のような画素部600が、画像表示領域10aにマトリクス状に配列されているので、アクティブマトリクス駆動が可能となっている。
【0060】
再び図3において、本実施形態では、1グループを構成する8列のデータ線6aを区別するために、右から順にそれぞれa、b、c、d、e、f、g、h系列と呼ぶ場合がある。詳細には、a系列とは1、9、17、・・・、1977列目のデータ線6aであり、b系列とは2、10、18、・・・、1978列目のデータ線6aであり、c系列とは3、11、19、・・・、1979列目のデータ線6aであり、d系列とは4、12、20、・・・、1980列目のデータ線6aであり、e系列とは5、13、21、・・・、1981列目のデータ線6aであり、f系列とは6、14、22、・・・、1982列目のデータ線6aであり、g系列とは7、15、23、・・・、1983列目のデータ線6aであり、h系列とは8、16、24、・・・、1984列目のデータ線6aである。
【0061】
走査線駆動回路104は、シフトレジスタを有しており、1、2、3、・・・、1088行目の走査線11aに、走査信号G1、G2、G3、・・・、G1088を供給する。詳細には、走査線駆動回路104は、1フレームの期間にわたって1、2、3、・・・、1088行目の走査線11aを順番に選択するとともに、選択した走査線への走査信号を選択電圧に相当するHレベルとし、それ以外の走査線への走査信号を非選択電圧に相当するLレベルとする。
【0062】
画像信号供給回路500は、TFTアレイ基板10とは別体構成であり、表示動作の際には、画像信号端子102vを介してTFTアレイ基板10と電気的に接続される。尚、画像信号供給回路500は、本発明の「画像信号供給手段」の一例である。画像信号供給回路500は、走査線駆動回路104によって選択された走査線11aと、各グループに属する8列のデータ線6aのうち、デマルチプレクサ7によって選ばれるデータ線6aとに対応する画素電極9aに対し、当該画素電極9aが含まれる画素の階調に応じた電圧の画像信号を出力する。画像信号供給回路500から画像信号端子102vに供給された画像信号は、画像信号線300を介してデマルチプレクサ7へ供給される。本実施形態では、上述したように、データ線6aの列数は「1984」であり、これらが8列毎にグループ化されているので、画像信号供給回路400によって248系統にシリアル−パラレル変換された画像信号VID1、VID2、・・・、VID248が、248個の画像信号端子102v及び248本の画像信号線300を介して、データ線6aのグループの各々に供給される。
【0063】
更に、本実施形態では、画像信号供給回路500は、画像信号VID1〜VID248を供給する画像信号供給期間に先立つ期間に、画像信号VID1〜VID248に代えて、データ線6aをプリチャージするためのプリチャージ信号を、248本の画像信号線300に一括して出力する。
【0064】
また、画像信号線300には、保持容量700が夫々設けられており、画像信号VID1〜VID248及びプリチャージ信号等を一時的に保持することが可能に構成されている。これにより、画像信号を各データ線6aに供給する期間(即ち、書込期間)の不足を効果的に低減することができる。尚、この保持容量700は、典型的には、画像信号線300の寄生容量として発生するものであり、意図的に容量として設けられたものではない。但し、保持容量700が、寄生容量であっても、意図的に設けられた容量であっても、後述する本実施形態に係る効果は発揮される。
【0065】
デマルチプレクサ7は、本発明の「振分手段」の一例であり、データ線6a毎に設けられた複数のトランジスタ71を含んで構成されている。トランジスタ71はnチャネル型であり、各ドレインはデータ線6aの一端に電気的に接続されている。同一グループに属するデータ線6aに対応する8個のトランジスタ71のソースは、当該グループに対応する画像信号線300と電気的に共通接続されている。
【0066】
即ち、m番目(但し、mは1以上248以下の整数)のグループは、a系列の(8m−7)列目、b系列の(8m−6)列目、c系列の(8m−5)列目、d系列の(8m−4)列目、e系列の(8m−3)列目、f系列の(8m−2)列目、g系列の(8m−1)列目及びh系列の(8m)列目のデータ線6aから構成されるので、これら8列のデータ線6aに対応するトランジスタ71のソースは電気的に共通接続されて、画像信号VID(m)が供給される。トランジスタ71のゲートには、8本の制御信号線SL(即ち、制御信号線SL1〜SL8)を介して制御信号Sel1〜Sel8が供給される。詳細には、(8m−7)列目のデータ線6aに対応するトランジスタ71のゲートには、制御信号線SL1を介して制御信号Sel1が供給され、同様に(8m−6)列目、(8m−5)列目、(8m−4)列目、(8m−3)列目、(8m−2)列目、(8m−1)列目及び(8m)列目のデータ線6aに対応するトランジスタ71のゲートには、引回配線90(図1参照)に含まれる制御信号線SL2、・・・、SL8の各々を介して制御信号Sel2、・・・、Sel8が供給される。制御信号Sel1〜Sel8は、図示しない外部回路としてのタイミング制御回路から外部回路接続端子102のうち制御信号端子102sを介して制御信号線SL1〜SL8に供給される。
【0067】
更に、本実施形態では、制御信号線SL1〜SL8に対し、制御信号Sel1〜Sel8とは別にプリチャージタイミング信号が外部回路としてのタイミング制御回路から入力可能な構成となっている。プリチャージタイミング信号は、画像信号VID1〜VID248の書き込み期間(即ち、画像信号供給期間)に先立つプリチャージ期間を規定し、制御信号線SL1〜SL8に一斉に供給される。従って、プリチャージタイミング信号によって全てのトランジスタ71は同時に導通し、全データ線6aが、一斉に画素信号線300に電気的に接続された導通状態とされる。ここで特に、全データ線6aには、プリチャージ期間において導通状態とされた画像信号線300を介して、画像信号VID1〜VID248の電位とは別の所定電位を有するプリチャージ信号が供給される。
【0068】
尚、プリチャージタイミング信号やクロック信号等の各種タイミング信号は、図示しない外部回路としてのタイミング制御回路にて生成され、電気光学装置100内に供給される。また、TFTアレイ基板10上の各駆動回路の駆動に必要な電源電圧等についても、外部回路から供給される。外部の駆動回路については、以下で詳細に説明する。
【0069】
<駆動回路及び駆動方法>
次に、上述した電気光学装置を駆動するための駆動回路及び駆動方法について、図5から図12を参照して説明する。
【0070】
先ず、本実施形態に係る駆動回路の構成について、図5を参照して説明する。ここに図5は、本実施形態に係る駆動回路の構成を電気光学装置と共に示す斜視図である。尚、図5では、図1及び図2において示した電気光学装置100における詳細な部材を、適宜省略して図示してある。
【0071】
図5において、本実施形態に係る電気光学装置100が各種電子機器に適用される際には、フレキシブル基板200を介して、電子機器側の回路基板400と電気的に接続される。
【0072】
電気光学装置100及びフレキシブル基板200は、電気光学装置100における外部回路接続端子102に、フレキシブル基板200の接続端子210が、例えば熱圧着等によって接着されることで、互いに電気的に接続されている。一方、フレキシブル基板及び回路基板400は、フレキシブル基板200の接続端子220が、回路基板400に設けられたコネクタ410に嵌合されることで、互いに電気的に接続されている。
【0073】
フレキシブル基板200上には、例えばTAB(Tape Automated Bonding)技術等を用いて集積回路250が設けられている。本実施形態に係る駆動回路は、典型的には、この集積回路250の一部又は全部として構成されている。但し、本実施形態に係る駆動回路は、電気光学装置100又は回路基板400上に設けられていても構わない。
【0074】
以下では、本実施形態に係る駆動回路の動作について、駆動方法別に2つの実施形態を例にとり説明する。
【0075】
<第1実施形態>
先ず、第1実施形態に係る駆動回路の動作について、図3に加えて、図6から図10を参照して説明する。ここに図6は、第1実施形態に係る駆動回路の動作を示すタイミングチャートであり、図7は、第1実施形態に係る画像信号線の電圧の推移を示すグラフである。また図8は、比較例に係る駆動回路の動作を示すタイミングチャートであり、図9は、比較例に係る画像信号線の電圧の推移を示すグラフである。図10は、画素部に印加される電圧と表示される階調との関係を示すグラフである。
【0076】
図3において、走査線駆動回路104は、ある1フレーム(第nフレーム)の期間にわたって走査信号G1、G2、・・・、G1088を1水平期間毎に順次排他的にHレベル(即ち、選択電圧)とするものとする。
【0077】
図6において、1水平期間における画像信号供給期間に先立つ期間では、制御信号線SL1〜SL8に対して同時にプリチャージタイミング信号が入力されると共に、画像信号線300の全てにプリチャージ信号が入力される。これにより、全てのトランジスタ71は、プリチャージタイミング信号のパルス幅によって規定されるプリチャージ期間だけ、導通状態(即ちオン状態)とされ、全てのデータ線6aにプリチャージ信号が供給される。即ち、1水平期間のうちプリチャージタイミング信号によって規定されるプリチャージ期間においてプリチャージが行われる。
【0078】
尚、プリチャージとは、書き込み不足を防止するために、データ線6aを充電もしくは放電させ、予めデータ線6aの電位を画像信号電位に近づけるような制御をいう。また、プリチャージには、各画素におけるリーク量のばらつきを平均化するという効果もある。プリチャージ電圧は、例えば実際に様々な画像パターンを表示させて、表示ムラが最小となるような電圧が設定される。このように決定されたプリチャージ電圧は、画像信号の電圧幅の中間値に対してずれる場合が多い。尚、本実施形態では、プリチャージ電圧が画像信号の電圧幅の中間値より低い場合を例にとり説明する。
【0079】
続いて、1水平期間におけるプリチャージ期間及び画像信号供給期間の間の期間では、画像信号線300の全てに調整電圧が供給される。調整電圧は、画像信号線300の電圧を変更させるための電圧であり、全てのトランジスタ71がオフとされた状態で供給される。よって、調整電圧は、画像信号線300の電圧を変更するのみで、各データ線6aには供給されない。尚、調整電圧は、画像信号供給回路400から供給される。即ち、画像信号供給回路は、本発明の「調整電圧供給手段」の一例でもある。調整電圧を供給することによる効果は、後に詳述する。
【0080】
1水平期間における画像信号供給期間では、制御信号線SL1〜SL8に対して制御信号Sel1〜Sel8が夫々入力されると共に、248本の画像信号線300には画像信号VID1〜VID248が夫々入力される。ここで、画像信号供給期間では、制御信号線SL1〜SL8の電位は、制御信号Sel1〜Sel8が供給されることで、この順番で排他的にHレベルとなり、この供給に合わせて画像信号供給回路400は、画像信号線300に画像信号VID1〜VID248を供給する。トランジスタ71は、制御信号Sel1〜Sel8のパルス幅によって規定される単位期間だけ、導通状態とされ、データ線6aに系列毎に画像信号VID1〜VID248が供給される。
【0081】
詳細には、画像信号供給回路400は、i行目の走査信号GiがHレベルとなる期間において、制御信号Sel1が供給されることで制御信号線SL1の電位がHレベルとなったとき、i行目の走査線11aとa系列のデータ線6aとの交差に対応する画素の階調に応じた電圧だけ対向電極電位LCCOMに対して高位または低位の画像信号VID1、VID2、VID3、・・・、VID248を、1、2、3、・・・、248番目のグループに対応させて一斉に出力する。この際、8本の制御信号線SLのうち制御信号線SL1だけがHレベルであるので、a系列のデータ線6aが選択される(即ち、a系列のデータ線6aに対応するトランジスタ71だけがオンする)結果、画像信号VID1、VID2、VID3、・・・、VID248は、それぞれa系列(1、9、17、・・・、1977列目)のデータ線6aに供給される。一方、走査信号GiがHレベルであると、i行目に位置する画素のすべてにおいて、画素スイッチング用TFT30がオン(導通)状態となるので、a系列のデータ線6aに供給された画像信号VID1、VID2、VID3、・・・、VID248は、それぞれi行1列、i行9列、i行17列、・・・、i行1977列の画素電極9aに印加されることになる。
【0082】
次に、画像信号供給回路400は、制御信号Sel2が供給されることで制御信号線SL2の電位がHレベルとなったとき、今度はi行目の走査線11aとb系列のデータ線6aとの交差に対応する画素の階調に応じた電圧の画像信号VID1、VID2、VID3、・・・、VID248を、1、2、3、・・・、248番目のグループに対応させて一斉に出力する。この際、制御信号線SL2だけがHレベルであるため、b系列のデータ線6aが選択される結果、画像信号VID1、VID2、VID3、・・・、VID248は、それぞれb系列(2、10、18、・・・、1978列目)のデータ線6aに供給されて、それぞれi行2列、i行10列、i行18列、・・・、i行1978列の画素電極9aに印加されることになる。
【0083】
同様に、画像信号供給回路400は、i行目の走査信号GiがHレベルとなる期間において、制御信号Sel3が供給されることで制御信号線SL3の電位がHレベルとなったときには、i行目の走査線11aとc系列のデータ線6aとの交差に対応する画素、制御信号Sel4が供給されることで制御信号線SL4の電位がHレベルとなったときには、i行目の走査線11aとd系列のデータ線6aとの交差に対応する画素、制御信号Sel5が供給されることで制御信号線SL5の電位がHレベルとなったときには、i行目の走査線11aとe系列のデータ線6aとの交差に対応する画素、制御信号Sel6が供給されることで制御信号線SL6の電位がHレベルとなったときには、i行目の走査線11aとf系列のデータ線6aとの交差に対応する画素、制御信号Sel7が供給されることで制御信号線SL7の電位がHレベルとなったときには、i行目の走査線11aとg系列のデータ線6aとの交差に対応する画素、制御信号Sel8が供給されることで制御信号線SL8の電位がHレベルとなったときには、i行目の走査線11aとh系列のデータ線6aとの交差に対応する画素、の階調に応じた電圧の画像信号VID1、VID2、VID3、・・・、VID248を、それぞれ1、2、3、・・・、248番目のグループに対応させて一斉に出力する。
【0084】
これにより、i行目の各画素の階調に応じた画像信号VID1、VID2、VID3、・・・、VID248が、c系列(3、11、19、・・・、1979列目)のデータ線6aに供給されて、それぞれi行3列、i行11列、i行19列、・・・、i行1979列の画素電極9aに印加され、引き続き、d系列(4、12、20、・・・、1980列目)のデータ線6aに供給されて、それぞれi行4列、i行12列、i行20列、・・・、i行1980列の画素電極9aに印加され、引き続き、e系列(5、13、21、・・・、1981列目)のデータ線6aに供給されて、それぞれi行5列、i行13列、i行21列、・・・、i行1981列の画素電極9aに印加され、引き続き、f系列(6、14、22、・・・、1982列目)のデータ線6aに供給されて、それぞれi行6列、i行14列、i行22列、・・・、i行1982列の画素電極9aに印加され、引き続き、g系列(7、15、23、・・・、1983列目)のデータ線6aに供給されて、それぞれi行7列、i行15列、i行23列、・・・、i行1983列の画素電極9aに印加され、引き続き、h系列(8、16、24、・・・、1984列目)のデータ線6aに供給されて、それぞれi行8列、i行16列、i行24列、・・・、i行1984列の画素電極9aに印加される。
【0085】
以上のような動作により、i行目の画素に対して、階調に応じた画像信号の電圧を書き込む動作が完了する。尚、図6では、各系列のデータ線6aに対して同じ階調を示す画像信号が供給される場合(即ち、ベタ画像等が表示される場合)について図示してある。
【0086】
ここで本実施形態では特に、上述したように、画像信号が供給される直前に調整電圧が画像信号線300に供給され、画像信号線300の電圧が変更される。尚、画像信号線の電圧とは、画像信号線300自体に保持される電圧だけを意味するものではなく、画像信号線300の寄生容量として設けられる保持容量700(図3参照)に保持されている電圧をも包括する概念である。
【0087】
調整電圧は、プリチャージ電圧より高い電圧であって、直後に供給される画像信号により近い電圧であり、例えば中間調を示す電圧に設定されている。但し、画像信号には表示させる階調によって幅があるため、調整電圧を、プリチャージ電圧より画像信号の幅の中間値に近い電圧にしてもよい。
【0088】
図7に示すように、画像信号線300の電圧は、先ず初期値であるV0から、プリチャージ信号が供給されることによって、プリチャージ信号に応じたプリチャージ電圧Vpに変更される。続いて、調整電圧Vcが供給されることにより、更に電圧が高められた後、a系列のデータ線6aに対応する画像信号が供給されることによって、画像信号に対応した電圧V1となる。尚、b系列以降のデータ線6aに対応する画像信号が供給される際には、画像信号線300には既に直前の画像信号に対応する電圧が保持されている。
【0089】
図8及び図9において、仮に調整電圧が供給されなかったとすると、画像信号線300の電圧は、先ず初期値であるV0から、プリチャージ信号が供給されることによって、プリチャージ信号に応じたプリチャージ電圧Vpに変更される。その後、画像信号線300の電圧は書込開始までプリチャージ電圧Vpのまま維持され、a系列のデータ線6aに対応する画像信号が供給されることによって、画像信号に対応した電圧V1となる。
【0090】
ここで特に、比較例に係る画像信号線300では、プリチャージ電圧Vpと画像信号に対応した電圧V1とに比較的大きな差があるため、a系列のデータ線6aへの画像信号が供給され始めてから画像信号線¥300の電圧がV1まで上昇するのに、ある程度の時間を要する。一方、b系列以降のデータ線6aに対応する画像信号が供給される際には、画像信号線300には既に直前の画像信号に対応する電圧が保持されているため、画像信号線300の電圧が画像信号に対応する電圧となるのに時間を要しない。
【0091】
このように、初めに画像信号が供給されるa系列のデータ線6aと、それ以降に画像信号が供給されるb〜h系列のデータ線6aとでは、書込時の画像信号線300の電圧に違いが生じてしまう。このような画像信号線300の電圧の違いは、表示画像に表示ムラとなって現われるおそれがある。具体的には、画像信号線300の電圧が上昇しきるまでに時間を要するa系列において書込不足が生じることにより、8本のデータ線毎にスジムラが生じてしまうおそれがある。
【0092】
図7に戻り、本実施形態によれば、書込開始時の画像信号線300の電圧は、調整電圧Vcにまで高められているため、書込が開始されてから画像信号線300の電圧がV1まで上昇するのに多くの時間を要しない。よって、a系列からh系列のデータ線6aに対して、概ね同様の条件で画像信号が供給される。従って、書込不足による表示ムラを低減することができる。
【0093】
図10において、電気光学装置100において表示される階調と、画像信号の電圧とは、図に示すような関係を有している。即ち、中間調を示す中間調エリアにおいて、電圧に対する階調の変化が著しく大きくなる。このような傾向があることから、調整電圧を中間調エリアに対応する電圧に設定しておけば、直後に供給される画像信号の階調がどのような階調であったとしても、画像信号線300の電圧と画像信号の電圧の差は小さくなる。即ち、画像信号の電圧値によらず、効率的に画像信号線300電圧の違いを小さくすることができる。従って、表示される画像にムラが生じてしまうことを効果的に低減することができる。
【0094】
以上説明したように、第1実施形態に係る駆動回路及び駆動方法によれば、電気光学装置において高品質な表示を行うことが可能である。
【0095】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る駆動回路及び駆動方法について、図11及び図12を参照して説明する。ここに図11は、第2実施形態に係る駆動回路の動作を示すタイミングチャートであり、図12は、第2実施形態に係る画像信号線の電圧の推移を示すグラフである。尚、第2実施形態は、上述の第1実施形態と比べて、調整電圧の値が異なり、その他の構成や動作については概ね同様である。このため第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、その他の重複する部分については適宜説明を省略する。
【0096】
図11において、第2実施形態に係る駆動回路では、第1実施形態と同様に画像信号が供給される直前に調整電圧が画像信号線300に供給され、画像信号線300の電圧が変更される。但し、調整電圧は、直後に供給される画像信号と同じ電圧とされている。
【0097】
図12に示すように、画像信号線300の電圧は、先ず初期値であるV0から、プリチャージ信号が供給されることによって、プリチャージ信号に応じたプリチャージ電圧Vpに変更される。続いて、画像信号に対応する電圧V1と同じ電圧である調整電圧が供給されることにより、a系列のデータ線6aに対応する画像信号が供給される前に、画像信号に対応した電圧V1となる。よって、第2実施形態では、a系列のデータ線6aに対応する画像信号が供給され始めてから、画像信号線300の電圧がV1となるまでの時間は実質的にゼロとなる。このため、a系列からh系列のデータ線6aに対して、概ね同様の条件で画像信号が供給される。従って、書込不足による表示ムラを低減することができる。
【0098】
尚、第2実施形態に係る調整電圧の値は、例えば供給される画像信号を予めモニタリングすることによって適宜設定することができる。
【0099】
以上説明したように、第2実施形態に係る駆動回路及び駆動方法によれば、上述した第1実施形態と同様に、電気光学装置において高品質な表示を行うことが可能である。
【0100】
<電子機器>
次に、上述した電気光学装置である液晶装置を各種の電子機器に適用する場合について説明する。ここに図13は、プロジェクターの構成例を示す平面図である。以下では、この液晶装置をライトバルブとして用いたプロジェクターについて説明する。
【0101】
図13に示されるように、プロジェクター1100内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット1102が設けられている。このランプユニット1102から射出された投射光は、ライトガイド1104内に配置された4枚のミラー1106及び2枚のダイクロイックミラー1108によってRGBの3原色に分離され、各原色に対応するライトバルブとしての液晶パネル1110R、1110B及び1110Gに入射される。
【0102】
液晶パネル1110R、1110B及び1110Gの構成は、上述した液晶装置と同等であり、画像信号処理回路から供給されるR、G、Bの原色信号でそれぞれ駆動されるものである。そして、これらの液晶パネルによって変調された光は、ダイクロイックプリズム1112に3方向から入射される。このダイクロイックプリズム1112においては、R及びBの光が90度に屈折する一方、Gの光が直進する。従って、各色の画像が合成される結果、投射レンズ1114を介して、スクリーン等にカラー画像が投写されることとなる。
【0103】
ここで、各液晶パネル1110R、1110B及び1110Gによる表示像について着目すると、液晶パネル1110Gによる表示像は、液晶パネル1110R、1110Bによる表示像に対して左右反転することが必要となる。
【0104】
尚、液晶パネル1110R、1110B及び1110Gには、ダイクロイックミラー1108によって、R、G、Bの各原色に対応する光が入射するので、カラーフィルターを設ける必要はない。
【0105】
尚、図13を参照して説明した電子機器の他にも、モバイル型のパーソナルコンピュータや、携帯電話、液晶テレビや、ビューファインダー型、モニタ直視型のビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等が挙げられる。そして、これらの各種電子機器に適用可能なのは言うまでもない。
【0106】
また、本発明は上述の各実施形態で説明した液晶装置以外にも反射型液晶装置(LCOS)、プラズマディスプレイ(PDP)、電界放出型ディスプレイ(FED、SED)、有機ELディスプレイ、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、電気泳動装置等にも適用可能である。
【0107】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う駆動回路及び駆動方法、並びに電気光学装置及び電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0108】
6a…データ線、7…デマルチプレクサ、10…TFTアレイ基板、10a…画像表示領域、11a…走査線、20…対向基板、30…TFT、50…液晶層、70…蓄積容量、71…トランジスタ、72…液晶素子、101…データ線駆動回路、102…外部回路接続端子、104…走査線駆動回路、200…フレキシブル基板、210,220…接続端子、250…集積回路、300…画像信号線、400…回路基板、410…コネクタ、500…画像信号供給回路、600…画素部、700…保持容量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差して延びる複数のデータ線及び複数の走査線と、前記複数のデータ線及び前記複数の走査線に夫々電気的に接続された複数の画素部とを備えた電気光学装置を駆動する駆動回路であって、
前記複数のデータ線に対して、n本(但し、nは自然数)のデータ線毎に、画像信号線を介して、画像に応じた画像信号を供給する画像信号供給手段と、
前記n本のデータ線に含まれる各データ線を時系列で選択することで、前記画像信号供給手段から供給された前記画像信号を、前記n本のデータ線の各々に振り分ける画像信号振分手段と、
前記n本のデータ線が前記画像信号振分手段に選択される前の期間に、前記画像信号線の電圧を所定の電圧とするための電圧を供給する調整電圧供給手段と
を備えることを特徴とする駆動回路。
【請求項2】
前記調整電圧供給手段は、前記画素部において中間調を表示させる電圧を供給することを特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項3】
前記調整電圧供給手段は、前記n本のデータ線のうち、初めに前記画像信号振分手段に選択されるデータ線に供給される前記画像信号と同じ電圧を供給することを特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項4】
前記画像信号の供給に先立って、前記複数のデータ線の各々にプリチャージ電圧を供給するプリチャージ電圧供給手段を更に備え、
前記調整電圧供給手段は、前記プリチャージ電圧が前記複数のデータ線の各々に供給された後に、前記プリチャージ電圧より前記画像信号に近い電圧を供給することを特徴とする
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の駆動回路。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の駆動回路を備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
互いに交差して延びる複数のデータ線及び複数の走査線と、前記複数のデータ線及び前記複数の走査線に夫々電気的に接続された複数の画素部とを備えた電気光学装置を駆動する駆動方法であって、
前記複数のデータ線に対して、n本(但し、nは自然数)のデータ線毎に、画像信号線を介して、画像に応じた画像信号を供給する画像信号供給工程と、
前記n本のデータ線に含まれる各データ線を時系列で選択することで、前記画像信号供給手段から供給された前記画像信号を、前記n本のデータ線の各々に振り分ける画像信号振分工程と、
前記n本のデータ線が前記画像信号振分工程において選択される前の期間に、前記画像信号線の電圧を所定の電圧とするための電圧を供給する調整電圧供給工程と
を備えることを特徴とする駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−224220(P2010−224220A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71462(P2009−71462)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】