説明

駆動装置、撮像装置及び携帯電話

【課題】圧電素子の後端部のダミー層を利用することにより、圧電素子の後端面が前端面よりも変位することを防止でき、製造面で優れた駆動装置を提供し、その駆動装置を搭載した撮像装置及び携帯電話を提供すること。
【解決手段】圧電素子14の伸縮方向の一端に駆動棒18を取り付け、その駆動棒18に被駆動部材20を摩擦係合して構成され、圧電素子14の重心Gが伸縮方向において伸縮部の幾何中心位置Cより他端側に位置している。これにより、圧電素子14の伸縮の際にその一端側を他端側より大きく変位させることができ、被駆動部材20を効率よく移動させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置、その駆動装置を備えた撮像装置及び携帯電話に関するものであり、特にカメラのズームレンズやフォーカスレンズを駆動する駆動装置、その駆動装置を備えた撮像装置及び携帯電話に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等のレンズ部の駆動装置として圧電素子を用いたアクチュエータがある。例えば特許文献1のアクチュエータは、圧電素子の伸縮方向の前端面に駆動棒が固着され、圧電素子の後端面が装置本体に固定される。駆動棒にはレンズの保持枠がスライド自在に支持されており、保持枠は板ばねの付勢力を利用して駆動棒に摩擦係合される。圧電素子には、略鋸歯状の波形をした駆動パルスが印加され、圧電素子は伸び方向と縮み方向で異なる速度で変形する。例えば圧電素子が緩やかに変形すると、保持枠は駆動棒とともに移動する。逆に、圧電素子が速く変形すると、保持枠はその質量の慣性によって同じ位置に停まる。したがって、圧電素子に略鋸歯状の波形をした駆動パルスを繰り返し印加することによって、レンズを細かなピッチで間欠的に移動させることができる。
【特許文献1】特許第2633066号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のアクチュエータは、圧電素子の後端面が変位することを防止するために、後端面を装置本体に強固に固定する必要があり、その固定構造のために装置が大型化するという問題があった。
【0004】
また、圧電素子の後端面を固定する代わりに後端面に錘部材を取り付け、後端面が前端面よりも変位することを防止する方法が考えられる。しかし、この方法は、錘部材を別途設ける必要があるだけでなく、錘部材と圧電素子との結合に高剛性が必要になるという問題があった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、電気機械変換素子の伸縮時に駆動摩擦部材を取り付けた一端側を大きく変位させて被駆動部材を効率よく移動させることができ、製造性の優れた駆動装置、そのような駆動装置を用いた撮像装置及び携帯電話を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る駆動装置は、電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の伸縮方向の一端に取り付けられた駆動摩擦部材と、前記駆動摩擦部材に摩擦係合された被駆動部材とを備えた駆動装置において、前記電気機械変換素子は、伸縮動作する伸縮部の少なくとも他端側に形成された伸縮に寄与しないダミー層を備え、前記ダミー層を含む前記電気機械変換素子全体の重心が、伸縮方向において前記伸縮部の幾何中心位置に一致していないことを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、電気機械変換素子全体の重心位置が伸縮方向において伸縮部の幾何中心位置と一致していないことにより、電気機械変換素子の伸縮の際にその一端側を大きく変位させることができ、被駆動部材を効率よく移動させることができる。
【0008】
また本発明に係る駆動装置において、前記ダミー層を含む前記電気機械変換素子全体の重心が、伸縮方向において前記伸縮部の幾何中心位置より他端側に位置していることが好ましい。
【0009】
この発明によれば、電気機械変換素子の重心が伸縮方向において伸縮部の幾何中心位置より他端側に位置していることにより、電気機械変換素子の伸縮の際にその一端側を他端側より大きく変位させることができ、被駆動部材を効率よく移動させることができる。
【0010】
また本発明に係る駆動装置は、電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の伸縮方向の一端に取り付けられた駆動摩擦部材と、前記駆動摩擦部材に摩擦係合された被駆動部材とを備えた駆動装置において、前記電気機械変換素子は、伸縮動作する伸縮部の少なくとも他端側に形成された伸縮に寄与しないダミー層を備え、前記ダミー層の重量をM、前記駆動摩擦部材の重量をM1、前記被駆動部材と前記駆動摩擦部材との結合力をM2、前記被駆動部材と前記駆動摩擦部材との摩擦係数をμとした際に、M1≦M≦(M1+μM2)の関係を満たすことを特徴とする。
【0011】
また本発明に係る駆動装置は、電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の伸縮方向の一端に取り付けられた駆動摩擦部材と、前記駆動摩擦部材に摩擦係合された被駆動部材とを備えた駆動装置において、前記電気機械変換素子は、伸縮動作する伸縮部の少なくとも他端側に形成された伸縮に寄与しないダミー層を備え、前記ダミー層の伸縮方向の長さをL1、前記電気機械変換素子の伸縮方向の長さをLとした際に、L/8≦L1≦L/2、の関係を満たすことを特徴とする。
【0012】
これらの発明によれば、上記の関係を満たすダミー層を設けることによって、ダミー層が電気機械変換素子の後端面の変位を抑制する錘部材としての役目を果たし、電気機械変換素子の後端面の変位量が前端面の変位量よりも大きくなることを防止できる。したがって、電気機械変換素子の前端面に取り付けた駆動摩擦部材を介して被駆動部材を精度良く移動させることができる。また、電気機械変換素子の後端部に一体的に形成されるダミー層を錘部材として利用したので、錘部材を別途設けて結合させる必要がなく、装置構成を簡略化することができる。
【0013】
また本発明に係る駆動装置において、前記電気変換素子は、その伸縮方向に対して側方から筐体に支持されていることが好ましい。この場合、前記電気変換素子の他端は、前記筐体に支持されておらず自由端になっていることが好ましい。
【0014】
この発明によれば、電気機械変換素子の伸縮による振動が筐体側へ伝達されにくいため、その伸縮による共振を防止することができる。
【0015】
また本発明に係る駆動装置において、前記電気機械変換素子は、その一端が筐体に支持されていることが好ましい。
【0016】
また本発明に係る駆動装置において、前記電気機械変換素子は、前記筐体に対して弾性支持されていることが好ましい。
【0017】
また本発明に係る撮像装置は、前記被駆動部材に連結された光学部材を上述したいずれかに記載の駆動装置によって移動させることを特徴とする。
【0018】
また本発明に係る携帯電話は、上述したいずれかに記載の駆動装置又は上述した撮像装置を備えて構成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る駆動装置、撮像装置及び携帯電話によれば、電気機械変換素子の伸縮時に駆動摩擦部材を取り付けた電気機械変換素子の一端側を他端側より大きく変位させて被駆動部材を効率よく移動させることができる。また、電気機械変換素子の他端側に錘部材を別途設ける必要がなく、装置構成の簡略化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下添付図面に従って本発明に係る駆動装置、撮像装置及び携帯電話の好ましい実施の形態について詳述する。
(第一実施形態)
【0021】
図1は本発明の第一実施形態に係る駆動装置を示す斜視図であり、図2はその構成を模式的に示す平面図である。
【0022】
これらの図に示す駆動装置10は、携帯電話機等の小型精密機器に搭載され、ズームレンズやフォーカスレンズ等の移動レンズ11を矢印A方向に移動させるための駆動装置として用いられる。
【0023】
駆動装置10は、小型精密機器の本体12に取り付けられており、主として圧電素子14、駆動棒(駆動摩擦部材に相当)18、被駆動部材20、及び駆動パルス供給装置15によって構成される。
【0024】
圧電素子14は、矢印A方向に長い矩形状に形成されており、電圧を印加することによって長手方向に変形(伸縮)するように構成される。したがって、圧電素子14は、電圧を印加することによって、長手方向の端面(以下、変位面という)14A、14Bが変位する。
【0025】
圧電素子14の変位面14A、14Bのうち、一方の変位面(以下、前端の変位面という)14Aには駆動棒18の基端が固着される。駆動棒18は円柱状に形成されており、その先端は、本体12に形成された孔13に挿通され、軸方向にスライド自在に支持される。駆動棒18の材質は、黒鉛結晶を強固に複合させた黒鉛結晶複合体、例えばカーボングラファイトが用いられる。
【0026】
駆動棒18には被駆動部材20が矢印A方向にスライド自在に取り付けられる。被駆動部材20は、移動レンズ11の保持枠21と一体的に形成される。保持枠21は、駆動棒18と平行に配置されたガイド棒(不図示)によってガイドされ、駆動軸18周りの回転が防止される。
【0027】
また、被駆動部材20には、U状の溝22が形成され、この溝22に駆動棒18が係合される。被駆動部材20の四つの各コーナー部には上方に突出した突出部24、24…が設けられ、この突出部24、24…に囲まれた領域内に摩擦板26が設けられる。摩擦板26は、駆動棒18の側面形状に合わせて円弧状に湾曲して形成される。また、摩擦板26の各コーナー部は被駆動部材20の突出部24、24…に合わせて切り欠かれている。したがって、摩擦板26を突出部24、24…で囲まれた領域内に配置した際に、摩擦板26が脱落することが防止される。
【0028】
被駆動部材20には押えばね28が取り付けられる。押えばね28は、摩擦板26を被駆動部材20側に付勢するように構成されている。したがって、被駆動部材20のU状の溝22に駆動棒18を配置し、その上に摩擦板26を配置すると、摩擦板26が押えばね28によって駆動棒18に押しつけられ、摩擦板26と被駆動部材20とで駆動棒18を挟持して、被駆動部材20を駆動棒18に摩擦係合させることができる。
【0029】
摩擦板26と駆動棒18との摩擦力は、圧電素子14に緩やかな電圧変化の駆動パルスを印加した際にその駆動力よりも静摩擦力が大きくなるように、且つ、圧電素子14に急激な電圧変化の駆動パルスを印加した際にその駆動力よりも静摩擦力が小さくなるように設定される。なお、押えばね28の代わりに他の付勢手段、例えば圧縮ばねやゴム等の弾性体を用いて摩擦板26を駆動棒18に摩擦係合させてもよい。
【0030】
圧電素子14の後端の変位面14Bには取付金具30が接着され、この取付金具30を介して圧電素子14が本体12に支持される。取付金具30は薄い金属板を屈曲させることによってコ状に形成されており、その両端の屈曲部分が本体12に嵌合固定される。このように薄い金属板から成る取付金具30によって圧電素子14を支持したので、取付金具30が撓むことによって、圧電素子14の後端の変位面14Bが矢印A方向に変位可能に支持される。
【0031】
圧電素子14の後端部分には、ダミー層14Cが設けられている。ダミー層14Cは圧電素子14の伸縮に寄与しない非伸縮部である。すなわち、圧電素子14のうち伸縮部(活性層)が伸縮動作するのに対し、ダミー層14Cは伸縮動作に寄与しない。
【0032】
また、ダミー層14Cが設けられることにより、圧電素子14は、その重心Gの位置が伸縮方向において伸縮部の幾何中心位置Cと一致していないものとなっている。例えば、圧電素子14の重心Gが伸縮方向において伸縮部の幾何中心位置Cより後端側に位置している。つまり、圧電素子14の後端にダミー層14Cが設けられることにより伸縮部の中心位置に対し圧電素子14の重心が後端側に位置している。
【0033】
このダミー層14Cとしては、例えば、圧電素子と同一材質のセラミックスが用いられる。また、圧電素子14に占めるダミー層14Cの割合としては、ダミー層14Cの重量をM、駆動棒18の重量をM1、被駆動部材20と駆動棒18との結合力をM2、被駆動部材20と駆動棒18との摩擦係数をμとした際に、M1≦M≦(M1+μM2)、の関係式を満たすようにダミー層14Cが形成される。
【0034】
圧電素子14は、駆動パルス供給装置15に電気的に接続されており、この駆動パルス供給装置15によって圧電素子14に電圧が印加される。
【0035】
図3(A)、図3(B)は圧電素子14に印加する駆動パルスの例を示したものである。図3(A)は、図1の保持枠21を矢印A方向の右方向に移動させる際の駆動パルスであり、図3(B)は図1の保持枠21を矢印A方向の左方向に移動させる際の駆動パルスである。図3(A)の駆動パルスと図3(B)の駆動パルスは、波形の立ち上がりと立ち下がりが非対称なパルス信号である。図3(A)の駆動パルスは波形の立ち上がりが立ち下がりに比べて緩やかであり、図3(B)の駆動パルスは波形の立ち下がりが立ち上がりに比べて緩やかである。
【0036】
図3(A)の場合、圧電素子14には、時刻α1から時刻α2にかけて緩やかに立ち上がり、時刻α3で急激に立ち下がる略鋸歯状の駆動パルスを印加している。したがって、時刻α1から時刻α2では、圧電素子14が緩やかに伸長する。その際、駆動棒18が緩やかな速度で移動するので、被駆動部材20は駆動棒18とともに移動する。これにより、被駆動部材20を図1の右方向に移動させることができる。時刻α3では、圧電素子14が急激に縮まるので、駆動棒18は図1の左方向に移動する。その際、駆動棒18が急激に移動するので、被駆動部材20は慣性によってその位置に停止したまま、駆動棒18だけが移動する。したがって、図3(A)に示した鋸歯状の駆動パルスを繰り返し印加することによって、図1の被駆動部材20は右方向への移動と停止を繰り返すので、保持枠21を右方向に移動させることができる。
【0037】
図3(B)の場合、圧電素子14には、時刻β1から時刻β2にかけて緩やかに立ち下がり、時刻β3で急激に立ち上がる略鋸歯状の駆動パルスを印加している。したがって、時刻β1から時刻β2では、圧電素子14が緩やかに縮まる。その際、駆動棒18が緩やかに変位するので、被駆動部材20は駆動棒18とともに移動する。これにより、被駆動部材20を図1の左方向に移動させることができる。時刻β3では、圧電素子14が急激に伸長し、駆動棒18は図1の右方向に移動する。その際、駆動棒18が急激に移動するので、被駆動部材20は慣性によってその位置に停止したまま、駆動棒18だけが移動する。したがって、図3(B)に示した鋸歯状の駆動パルスを繰り返し印加することによって、図1の被駆動部材20は左方向への移動と停止を繰り返すので、保持枠21を左右方向に移動させることができる。
【0038】
上記の如く構成された駆動装置10は、圧電素子14の後端の変位面14Bが薄板状の取付金具30によって本体12に取り付けられている。したがって、圧電素子14の後端の変位面14Bは図4(A)〜図4(C)に示すように変位可能に支持されている。すなわち、図4(A)に示す如く圧電素子14に電圧が印加されてない状態で、圧電素子14に電圧を印加して伸長させると、図4(B)に示すように、取付金具30が弾性変形して外側に撓み、圧電素子14の変位面14Bが矢印Aの左方向に変位する。反対に、圧電素子14を収縮させると、図4(C)に示すように、取付金具30が弾性変形して内側に撓み、圧電素子14の変位面14Bが矢印Aの右方向に変位する。したがって、圧電素子14の後端の変位面14Bは矢印A方向に変位可能に支持される。
【0039】
このように圧電素子14の後端の変位面14Bが自由端に近い状態で変位可能に支持されると、装置構成系による共振周波数fを低下させることができる。例えば変位面14Bを固定端として支持した場合には200kHz程度であった共振周波数fを、20〜30kHzまで下げることができる。これにより、通常使用される50kHz以上の駆動周波数fは、f≧21/2・fを満たす防振領域で使用されることになり、圧電素子14自身の共振を防止することができる。よって、常に安定した駆動量を確保することができるとともに、広い範囲の周波数で駆動装置10を駆動することができるので、環境負荷や製品ばらつき等の影響を防止することができる。
【0040】
なお、共振周波数fは、圧電素子14の自由端に錘部材を付けた場合、その錘部材のヤング率をE、錘部材の圧電素子14側の面積をA、錘部材の厚さをh、圧電素子14の質量をMa、駆動棒18の質量をMb、錘部材の質量をMcとした際に下式で表される。
【数1】

【0041】
ところで、圧電素子14の後端部のダミー層14Cは、上述したように、M1≦M≦(M1+μM2)、の関係式を満たすように形成されている。このような関係式を満たすダミー層14Cは、圧電素子14の前端の変位面14Aに取り付けた駆動棒18の重量M1よりも、圧電素子14の後端部のダミー層14Cの重量Mが大きいので、前端の変位面14Aよりも後端の変位面14Bの方が変位量が小さくなる。したがって、ダミー層14Cは錘部材として作用し、圧電素子14を伸縮させた際に、前端の変位面14Aと駆動棒18を効率よく変位させることができる。
【0042】
また、ダミー層14Cの重量Mよりも、圧電素子14の前端の変位面14Aにかかる負荷(M1+μM2)が大きいので、圧電素子14の後端部は自由端に近い状態で変位可能に支持され、装置構成系の共振を防止することができる。すなわち、ダミー層14Cの重量Mが、変位面14Aにかかる負荷(M1+μM2)よりも大きい場合には、圧電素子14の後端部が重すぎて固定端の如く振る舞うので、装置構成の共振周波数fが高くなり、その結果、駆動周波数fがfよりも低くなって、装置構成系の共振を頻繁に発生することになる。したがって、本実施の形態のように、M≦(M1+μM2)としたことによって、圧電素子14の後端部が自由端に近い状態で振る舞い、装置構成系の共振を防止することができる。
【0043】
このように本実施の形態によれば、圧電素子14の後端部に上述した関係式を満たす重量のダミー層14Cを設けたので、圧電素子14の後端の変位面14Bに錘部材を設けた場合と同様の効果が得られる。したがって、駆動棒18を正確に変位させることができ、且つ装置構成系の共振を防止することができる。
【0044】
なお、上述した実施の形態は、ダミー層14Cを圧電素子14と同じ材質によって構成したが、ダミー層14Cの材質はこれに限定するものではなく、例えば、圧電素子14よりもヤング率の小さい材質でダミー層14Cを構成するようにしてもよい。このようにヤング率の小さい材質でダミー層14Cを構成することによって、装置構成系の共振周波数fを下げることができ、駆動周波数fをより広い範囲で使用することができる。
【0045】
また、本実施形態では、圧電素子14を軸方向から取付金具30によって本体12に取り付ける場合について説明したが、圧電素子14を側方側から本体12に取り付けてもよい。例えば、後述する第三実施形態に示すように、圧電素子14を側方から弾性部材によって取り付ける。この場合、圧電素子14及び駆動棒18が圧電素子14の伸縮方向へ移動可能に保持できるように取り付けられる。
【0046】
また、本実施形態において、図1、2では、圧電素子14の後端側のダミー層14Cのみが図示されているが、圧電素子14において前端側にダミー層が設けられていてもよい。
【0047】
また、本実施形態では、圧電素子14を用いた駆動装置について説明したが、この駆動装置を撮像装置に搭載して用いることが好ましい。例えば、駆動装置により撮影光学系のレンズを移動制御することにより、小型で焦点調整動作に優れた撮像装置を構成することができる。
【0048】
また、その撮像装置を携帯電話のカメラ部分に用いることが好ましい。この場合、撮像機能を備えた小型な携帯電話を構成することができる。
(第二実施形態)
【0049】
次に本発明に係る駆動装置、撮像装置および携帯電話の第2の実施形態について図5に基づいて説明する。上述した第1の実施の形態ではダミー層14Cを重量で規定したのに対し、第2の実施形態ではダミー層14Cを伸縮方向の長さで規定している。
【0050】
第2の実施の形態に係る駆動装置は、ダミー層14Cが圧電素子14と同じ材質で一体的に形成されており、圧電素子14の伸縮方向の長さをL、ダミー層14Cの長さをL1とした際に、L/8≦L1≦L/2、の関係を満たすようにダミー層14Cが形成される。
【0051】
上記の如く構成された第2の実施形態によれば、L/8≦L1としたので、ダミー層14Cが十分な重さを有し、錘部材として作用する。また、L1≦L/2としたので、ダミー層14Cが大き過ぎて圧電素子14が無意味に大型化することを防止することができる。また、ダミー層14Cを錘部材としての作用を高めるために、ダミー層14Cの長さ関係をL/6≦L1≦L/2としてもよい。さらに好ましくは、ダミー層14Cの長さ関係をL/4≦L1≦L/2としてもよい。
【0052】
なお、第2の実施形態で示したダミー層14Cの長さ条件と、第1の実施形態で示したダミー層14Cの重量条件とを同時に満たすダミー層14Cを形成することが好ましい。これにより、ダミー層14Cが錘部材として作用し、被駆動部材20を正確に移動させることができるとともに、圧電素子14が大型化することを防止することができる。
【0053】
また、本実施形態に係る駆動装置の用途としては、例えばデジタルカメラや携帯電話機等の小型精密機器に適用することができる。特に携帯電話機は、3V以下の低い電圧で駆動する必要があるが、本実施形態に係る駆動装置を用いることによって、20kHz程度の高周波で駆動することができ、レンズ枠20を2mm/s以上の高速度で移動させることができる。よって、10mm程度の移動が必要となるズームレンズであっても、迅速に移動させることができる。また、本実施形態に係る駆動装置の用途としてはフォーカスレンズやズームレンズ等の移動レンズ11を移動する用途に限定されず、CCDを移動する用途等に用いても良い。
(第三実施形態)
【0054】
次に本発明の第三実施形態に係る駆動装置、撮像装置および携帯電話について説明する。
【0055】
図6は本発明の第三実施形態に係る駆動装置の断面図である。
【0056】
図6に示すように、本実施形態に係る駆動装置は、移動レンズ170を移動対象物とし移動レンズ170の駆動を行うものであり、圧電素子112、駆動軸114及び被駆動部材116を有するアクチュエータ110と、そのアクチュエータ110を支持する支持部材160とを備えて構成されている。
【0057】
圧電素子112は、電気信号の入力により伸縮可能な電気機械変換素子であり、所定の方向へ伸長及び収縮可能となっている。この圧電素子112は、制御部171に接続され、その制御部171により電気信号を入力されることにより伸縮する。例えば、圧電素子112には、二つの入力端子172A、172Bが設置される。この入力端子172A、172Bに印加される電圧を繰り返して増減させることにより、圧電素子112が伸長及び収縮を繰り返すこととなる。
【0058】
圧電素子112は、伸縮部112Aの両側にダミー層112B、112Cが設けられている。伸縮部112Aは、電気信号の入力により伸縮する部分であり、活性層とも称される。この伸縮部112Aは、例えば軸方向に複数の金属板が並設され、それらの金属板の間にセラミックスが配設されて構成される。ダミー層112B、112Cは、伸縮に寄与しない非伸縮部である。ダミー層112Bは、圧電素子112における駆動軸114取付側の端部に形成されている。ダミー層112Cは、圧電素子112の自由端側に形成されている。
【0059】
圧電素子112は、その重心の位置が伸縮方向において伸縮部112Aの幾何中心位置と一致していないものとなっている。例えば、圧電素子112は、その重心が伸縮方向において伸縮部112Aの幾何中心位置より後端側に位置するように構成されている。具体的には、後端側のダミー層112Cを前端側のダミー層112Bより質量の大きい部材により構成することにより、圧電素子112の重心が伸縮部112Aの幾何中心位置より後端側に位置するように構成することができる。ダミー層112Cは、例えば金属部材により構成される。その際、絶縁性を有する接着剤を用いてダミー層112Cを伸縮部112Aに取り付けたり、ダミー層112Cと伸縮部112Aの間に絶縁層を設けたり、金属部材に絶縁膜をコーティングしてダミー層112Cとしたりして絶縁処理を施すことが好ましい。
【0060】
駆動軸114は、圧電素子112の伸縮方向に長手方向を向けて圧電素子112に取り付けられている。例えば、駆動軸114の一端が圧電素子112に当接され接着剤127を用いて接着されている。この駆動軸114は、圧電素子112の伸縮方向の一端に取り付けられる駆動摩擦部材であって、長尺状に形成され、例えば円柱状のものが用いられる。駆動軸114は、固定枠124から内側へ延びる仕切り部124B、仕切り部124Cにより長手方向に沿って移動可能に支持されている。仕切り部124B、仕切り部124Cは、被駆動部材116の移動領域を仕切るための部材であり、駆動軸114の支持部材としても機能している。固定枠124は、アクチュエータ110を収容するための筐体として機能する。
【0061】
仕切り部124B、仕切り部124Cには、駆動軸114を貫通させる貫通孔124Aがそれぞれ形成されている。仕切り部124Bは、駆動軸114の圧電素子112取付部分の近傍箇所、すなわち駆動軸114の基端箇所を支持している。仕切り部124Cは、駆動軸114の先端箇所を支持している。固定枠124は、アクチュエータ110を組み付けるための枠体若しくはフレーム部材として機能するものである。駆動軸114は、圧電素子112に取り付けられることにより、圧電素子112の伸長及び収縮の繰り返し動作に応じて、その長手方向に沿って往復移動する。
【0062】
なお、図6では、駆動軸114を仕切り部124B、124Cによりその先端側と基端側の二箇所で支持する場合を示しているが、駆動軸114をその先端側又は基端側の一方で支持する場合もある。例えば、仕切り部124Bの貫通孔124Aを駆動軸114の外径より大きく形成することにより、駆動軸114が仕切り部124Cにより先端箇所のみで支持されることとなる。また、仕切り部124Cの貫通孔124Aを駆動軸114の外径より大きく形成することにより、駆動軸114が仕切り部124Bにより基端箇所のみで支持されることとなる。
【0063】
また、図6では、駆動軸114を支持する仕切り部124B、124Cが固定枠124と一体になっている場合について示したが、これらの仕切り部124B、124cは固定枠124と別体のものを固定枠124に取り付けて設けてもよい。別体の場合であっても、一体となっている場合と同様な機能、効果が得られる。
【0064】
被駆動部材116は、駆動軸114に移動可能に取り付けられている。この被駆動部材116は、駆動軸114に対し摩擦係合されて取り付けられ、その長手方向に沿って移動可能となっている。例えば、被駆動部材116は、駆動軸114に対し所定の摩擦係数で係合しており、一定の押圧力で駆動軸114に押し付けられることによってその移動の際に一定の摩擦力が生ずるように取り付けられている。被駆動部材116にこの摩擦力を超える移動力が付与されることにより、摩擦力に抗して被駆動部材116が駆動軸114に沿って移動する。
【0065】
アクチュエータ110は、支持部材160により固定枠124に支持されている。支持部材160は、アクチュエータ110を圧電素子112の伸縮方向に対して側方から支持するものであり、アクチュエータ110を収容する固定枠124と圧電素子112と間に配設されている。この場合、アクチュエータ110を圧電素子112の伸縮方向と直交する方向から支持することが好ましい。この支持部材160は、アクチュエータ110を側方から支持して取り付ける取付部材として機能している。
【0066】
支持部材160は、所定以上の弾性特性を有する弾性体により形成され、例えばシリコーン樹脂により形成される。支持部材160は、圧電素子112を挿通させる挿通孔160Aを形成して構成され、その挿通孔160Aに圧電素子112を挿通させた状態で固定枠124に組み付けられている。支持部材160の固定枠124への固着は、接着剤161による接着により行われる。また、支持部材160と圧電素子112の間の固着も、接着剤による接着により行われる。この支持部材160を弾性体によって構成することにより、アクチュエータ110を圧電素子112の伸縮方向に移動可能に支持することができる。図6において、支持部材160が圧電素子112の両側に二つ図示されているが、この支持部材160、160は一つの連続する支持部材160の断面をとることによって二つに図示されたものである。
【0067】
なお、支持部材160の固定枠124への固着及び圧電素子12への固着は、固定枠124と圧電素子112の間に支持部材160を圧入し、支持部材160の押圧によって行ってもよい。例えば、支持部材160を弾性体により構成し、かつ、固定枠124と圧電素子112の間より大きく形成して、その間に圧入して設置する。これにより、支持部材160は、固定枠124及び圧電素子112に密着して配設される。この場合、圧電素子112は、支持部材160により伸縮方向に直交する方向の両側から押圧される。これによって、アクチュエータ110が支持される。
【0068】
また、ここでは支持部材160をシリコーン樹脂で形成する場合について説明したが、支持部材160をバネ部材により構成してもよい。例えば、固定枠124と圧電素子112の間にバネ部材を配置し、このバネ部材によってアクチュエータ110を固定枠124に対し支持してもよい。
【0069】
被駆動部材116には、レンズ枠168を介して移動レンズ170が取り付けられている。移動レンズ170は、カメラの撮影光学系を構成するものであり、駆動装置の移動対象物となるものである。この移動レンズ170は、被駆動部材116と一体的に結合され、被駆動部材116と共に移動するように設けられている。移動レンズ170の光軸O上には、図示しない固定レンズなどが配設され、カメラの撮影光学系を構成している。また、光軸O上には、撮像素子165が配設されている。撮像素子165は、撮影光学系により結像された画像を電気信号に変換する撮像手段であり、例えばCCDにより構成される。撮像素子165は、制御部171と接続されており、画像信号を制御部171に出力する。
【0070】
駆動装置には、被駆動部材116の移動位置を検出する検出器175が設けられている。検出器175としては、例えば光学式の検出器が用いられ、フォトリフレクタ、フォトインタラプタなどが用いられる。具体的には、検出器175としてリフレクタ175A、検出部175Bを備えたものを用いる場合、被駆動部材116と一体に形成されるレンズ枠168にリフレクタ175Aを取り付け、検出部175Bからリフレクタ175A側へ検出光を出射し、リフレクタ175A側で反射してくる反射光を検出部175Bで検出することにより被駆動部材116及び移動レンズ170の移動位置を検出する。
【0071】
検出器175は、制御部171に接続されている。検出器175の出力信号は制御部171に入力される。制御部171は、駆動装置全体の制御を行うものであり、例えばCPU、ROM、RAM、入力信号回路、出力信号回路などにより構成される。また、制御部171は、圧電素子112を作動させるための駆動回路を備えており、圧電素子112に対し駆動のための電気信号を出力する。
【0072】
図7、8は、本実施形態に係る駆動装置における検出器の具体例を示した図である。
【0073】
図7に示すように、検出器175は、例えば、リフレクタ175A、検出部175B、インタラプタ175C、検出部175Dを備えて構成されている。リフレクタ175A及びインタラプタ175Cは、レンズ枠168に取り付けられており、レンズ枠168及び移動レンズ170と共に移動する。リフレクタ175Aに対向する位置には、検出部175Bが配置されている。検出部175Bは、移動レンズ170の移動に伴って変化するリフレクタ175Aからの光の反射量を検知し、移動レンズ170の移動量を検出する。インタラプタ175Cが通過する位置には、検出部175Dが配置されている。検出部175Dは、インタラプタ175Cの通過を検知し、移動レンズ170の所定位置の通過を検出する。
【0074】
また、図8に示すように、移動レンズ170の移動に応じてリフレクタ175Aが検出部175Bに対し接近又は離間するようにリフレクタ175A及び検出部175Bを配置し、検出部175Bに対するリフレクタ175Aの相対距離に応じて移動レンズ170の移動位置を検出するようにしてもよい。この場合、移動レンズ170の位置がリニアに検出することができる。
【0075】
また、移動レンズ170の移動制御する手法として、撮像素子165の出力信号に基づいて移動レンズ170を移動させてもよい。例えば、撮像素子165から出力される映像信号の高周波成分を検出し、そのレベルが最大となる位置に移動レンズ170を移動させる。このように移動レンズ170の移動制御を行うことにより、検出器175による位置検出が不要となる。
【0076】
図9は、図6のIX−IXにおける被駆動部材116の断面図である。
【0077】
図9に示すように、被駆動部材116は、例えば、本体部116A、押圧部116B及び摺動部116Cを備えて構成される。本体部116Aは、押圧部116Bにより駆動軸114に一定の力で押圧されている。本体部116Aには、V字状の溝116Dが形成されている。この溝116Dの内には、二つの摺動部116C、116Cに挟持された状態で駆動軸114が収容されている。摺動部116C、116Cは、断面V字状の板体であり、互いに凹部側を向き合わせて配置され、駆動軸114を挟んで設けられている。このようにV字状の溝116D内に駆動軸14を収容することにより、被駆動部材116を安定して駆動軸114に取り付けることができる。
【0078】
押圧部116Bとしては、例えば、断面L字状の板バネ材が用いられる。押圧部116Bの一辺を本体部116Aに掛止させ、他の一辺を溝116Dの対向位置に配することにより、他の一辺により溝116Dに収容される駆動軸114を本体部116A及び摺動部116Cと共に挟み込むことができる。これにより、本体部116Aを駆動軸114側へ押圧することができる。
【0079】
このように、被駆動部材116は、押圧部116Bにより本体部116Aを駆動軸114側に一定の力で押圧して取り付けられることにより、駆動軸114に対し摩擦係合される。すなわち、被駆動部材116は、駆動軸114に対し本体部116A及び押圧部116Bが一定の押圧力で押し付けられ、その移動に際し一定の摩擦力が生ずるように取り付けられる。
【0080】
また、断面V字状の摺動部116C、116Cにより駆動軸114を挟み込むことにより、被駆動部材116が駆動軸114に複数箇所で線接触することになり、駆動軸114に対し安定して摩擦係合させることができる。また、複数箇所の線接触状態により被駆動部材116が駆動軸114に係合しているため、実質的に被駆動部材116が駆動軸114に面接触状態で係合していると同様な係合状態となり、安定した摩擦係合が実現できる。
【0081】
なお、図9においては摺動部116Cが断面V状の板体で構成されているが、摺動部116Cを断面円弧状の板体として構成して、駆動軸114に面接触させてもよい。この場合、被駆動部材116が駆動軸114に面接触状態で係合するため、被駆動部材116を駆動軸114に対しより安定して摩擦係合することができる。
【0082】
図10は、圧電素子112を作動させる駆動回路の回路図である。
【0083】
図10に示すように、駆動回路177は、制御部171内に配置されて設けられている。この駆動回路177は、圧電素子112のドライブ回路として機能するものであり、圧電素子112に対し駆動用の電気信号を出力する。駆動回路177は、制御部171の制御信号生成部(図示なし)から制御信号を入力し、その制御信号を電圧増幅又は電流増幅して圧電素子112の駆動用電気信号を出力する。駆動回路177は、例えば入力段を論理回路U1〜U3により構成し、出力段に電界効果型のトランジスタ(FET)Q1、Q2を備えたものが用いられる。トランジスタQ1、Q2は、出力信号として、H出力(高電位出力)、L出力(低電位出力)及びOFF出力(オープン出力)を出力可能に構成されている。
【0084】
図11に駆動回路177に入力される入力信号、図12に駆動回路177から出力される出力信号を示す。図11(A)は、被駆動部材116を圧電素子112に接近させる方向(図6において右方向)に移動させる際に入力される入力信号であり、図11(B)は、被駆動部材116を圧電素子112から離間させる方向(図6において左方向)に移動させる際に入力される入力信号である。また、図12(A)は、被駆動部材116を圧電素子112に接近させる方向(図6において右方向)に移動させる際に出力される出力信号であり、図12(B)は、被駆動部材116を圧電素子112から離間させる方向(図6において左方向)に移動させる際に出力される出力信号である。
【0085】
図12(A)、(B)の出力信号は、図11(A)、(B)の入力信号と同一タイミングでオンオフするパルス信号となっている。図12(A)、(B)における二つの信号は、圧電素子112の入力端子172A、172Bに入力される。この入力端子172A、172Bには、図3に示すような台形波形からなる信号を入力してもよいが、図12に示す矩形状のパルス信号を入力して圧電素子112を作動させることができる。この場合、圧電素子112の駆動信号が矩形状のパルス信号でよいため、信号生成が容易となる。
【0086】
図12(A)、(B)の出力信号は、同一周波数となる二つの矩形状のパルス信号により構成されている。この二つのパルス信号は、互いの位相を異ならせることにより、互いの信号の電位差が段階的に大きくなり急激に小さくなる信号又は電位差が急激に大きくなって段階的に小さくなる信号となっている。このような二つの信号を入力することにより、圧電素子112の伸長速度と収縮速度を異ならせることができ、被駆動部材116を移動させることができる。
【0087】
例えば、図12(A)、(B)において、一方の信号がH(ハイ)となりL(ロー)に低下した後に他方の信号がHとなるように設定されている。それらの信号において、一方の信号がLになった際に一定のタイムラグtOFFの経過後、他方の信号がHとなるように設定される。また、二つの信号が両方ともLの場合には、出力としてはオフ状態(オープン状態)とされる。
【0088】
この図12の(A)、(B)の出力信号、すなわち圧電素子12を作動させる電気信号は、可聴周波数を超える周波数の信号が用いられる。図12(A)、(B)において、二つの信号の周波数は、可聴周波数を超える周波数信号とされ、例えば、30〜80kHzの周波数信号とされ、より好ましくは40〜60kHzとされる。このようは周波数の信号を用いることにより、圧電素子112の可聴領域における作動音を低減することができる。
【0089】
次に、本実施形態に係る駆動装置の動作について説明する。
【0090】
図6において、圧電素子112に電気信号が入力され、その電気信号の入力により圧電素子112が伸長及び収縮を繰り返す。この伸長及び収縮に応じて駆動軸114が往復運動する。このとき、圧電素子112の伸長速度と収縮速度を異ならせることにより、駆動軸114が一定の方向へ移動する速度とその逆方向へ移動する速度が異なることとなる。これにより、被駆動部材116及び移動レンズ170を所望の方向へ移動させることができる。
【0091】
圧電素子112が伸縮する際に、圧電素子112の重心が後端側に位置しているので、その前端側の方が後端側より伸縮による変位量が大きくなる。このため、圧電素子112の伸縮により駆動軸114を大きく移動させることができ、被駆動部材116及び移動レンズ170を効率よく移動させることができる。
【0092】
また、圧電素子112が伸縮する際に、その伸縮による振動が生ずるが、圧電素子112を含むアクチュエータ110が支持部材160によって伸縮方向に対し側方から支持されているため、圧電素子112の伸縮により生ずる振動がアクチュエータ110の外部へ伝達されにくい。このため、アクチュエータ110が固定枠124などの外部の部材と共振することが抑制され、その共振の影響を低減することができる。従って、被駆動部材116及び移動レンズ170を正確に移動させることができる。
【0093】
以上のように、本実施形態に係る駆動装置によれば、圧電素子112の重心が伸縮方向において伸縮部112Aの幾何中心位置より後端側(自由端側)に位置している。このため、圧電素子112の伸縮の際にその前端側を後端側より大きく変位させることができ、被駆動部材116を効率よく移動させることができる。
【0094】
本実施形態では、圧電素子112の重心が伸縮方向において伸縮部112Aの幾何中心位置より後端側に位置している場合について説明したが、圧電素子112の重心が伸縮方向において伸縮部112Aの幾何中心位置より前端側に位置していてもよい。この場合であっても、圧電素子112の重心位置が伸縮部112Aの幾何中心位置と一致していないため、圧電素子112の伸縮により後端側が大きく変位すると共に、圧電素子112全体が伸縮方向に往復運動し、それに応じて圧電素子112の前端側が変位する。これにより、被駆動部材116を効率よく移動させることができる。
【0095】
また、圧電素子112のダミー層112Cを利用して圧電素子112の重心を後端側に位置させることにより、圧電素子112の後端(自由端)に錘部材を取り付けなくても被駆動部材20を効率よく移動させることができる。このため、錘部材の取り付けが不要となり、装置の低コスト化、小型化が図れる。
【0096】
また、本実施形態に係る駆動装置によれば、アクチュエータ110を圧電素子112の伸縮方向に対し側方から支持することにより、アクチュエータ110と外部の部材との間で振動が伝達しにくくなり、共振の影響を低減することができる。従って、被駆動部材116及び移動レンズ170を正確に移動させることができる。
【0097】
上述した本実施形態では、圧電素子14を用いた駆動装置について説明したが、この駆動装置を撮像装置に搭載して用いることが好ましい。例えば、駆動装置により撮影光学系のレンズを移動制御することにより、小型で焦点調整動作に優れた撮像装置を構成することができる。
【0098】
また、その撮像装置を携帯電話のカメラ部分に用いることが好ましい。この場合、撮像機能を備えた小型な携帯電話を構成することができる。
【0099】
なお、上述した各実施形態は本発明に係る駆動装置、撮像装置及び携帯電話の一例を示すものである。本発明に係る駆動装置、撮像装置及び携帯電話は、これらの実施形態に係る駆動装置、撮像装置及び携帯電話に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、実施形態に係る駆動装置、撮像装置及び携帯電話を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。例えば、本実施形態では、移動レンズを駆動する駆動装置に適用した装置について説明したが、移動レンズ以外の物を駆動する駆動装置に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の第一実施形態に係る駆動装置の概要を示す斜視図である。
【図2】図1の駆動装置の構成を模式的に示す平面図である。
【図3】図1の駆動装置において圧電素子に印加される駆動パルスの波形図である。
【図4】図1の駆動装置の動作を示す説明図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係る駆動装置を説明するための平面図である。
【図6】本発明の第三実施形態に係る駆動装置を示す概要構成図である。
【図7】図6の駆動装置における検出器の説明図である。
【図8】図6の駆動装置における検出器の説明図である。
【図9】図6のIX−IXにおける被駆動部材の断面図である。
【図10】図6の駆動装置における駆動回路を示す回路図である。
【図11】図10の駆動回路に入力される入力信号の波形図である。
【図12】図10の駆動回路から出力される出力信号の波形図である。
【符号の説明】
【0101】
10…駆動装置、11…移動レンズ、12…本体、14…圧電素子、14C…ダミー層、18…駆動棒、20…被駆動部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の伸縮方向の一端に取り付けられた駆動摩擦部材と、前記駆動摩擦部材に摩擦係合された被駆動部材とを備えた駆動装置において、
前記電気機械変換素子は、伸縮動作する伸縮部の少なくとも他端側に形成された伸縮に寄与しないダミー層を備え、
前記ダミー層を含む前記電気機械変換素子全体の重心が、伸縮方向において前記伸縮部の幾何中心位置に一致していないこと、
を特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記ダミー層を含む前記電気機械変換素子全体の重心が、伸縮方向において前記伸縮部の幾何中心位置より他端側に位置していること、
を特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の伸縮方向の一端に取り付けられた駆動摩擦部材と、前記駆動摩擦部材に摩擦係合された被駆動部材とを備えた駆動装置において、
前記電気機械変換素子は、伸縮動作する伸縮部の少なくとも他端側に形成された伸縮に寄与しないダミー層を備え、
前記ダミー層の重量をM、前記駆動摩擦部材の重量をM1、前記被駆動部材と前記駆動摩擦部材との結合力をM2、前記被駆動部材と前記駆動摩擦部材との摩擦係数をμとした際に、M1≦M≦(M1+μM2)の関係を満たすこと、
を特徴とする駆動装置。
【請求項4】
電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の伸縮方向の一端に取り付けられた駆動摩擦部材と、前記駆動摩擦部材に摩擦係合された被駆動部材とを備えた駆動装置において、
前記電気機械変換素子は、伸縮動作する伸縮部の少なくとも他端側に形成された伸縮に寄与しないダミー層を備え、
前記ダミー層の伸縮方向の長さをL1、前記電気機械変換素子の伸縮方向の長さをLとした際に、L/8≦L1≦L/2、の関係を満たすこと、
を特徴とする駆動装置。
【請求項5】
前記電気変換素子は、その伸縮方向に対して側方から筐体に支持されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記電気変換素子の他端は、前記筐体に支持されておらず自由端になっていることを特徴とする請求項5に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記電気機械変換素子は、その一端が筐体に支持されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記電気機械変換素子は、前記筐体に対して弾性支持されていることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記被駆動部材に連結された光学部材を請求項1〜8のいずれかに記載の駆動装置によって移動させることを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の駆動装置又は請求項9に記載の撮像装置を備えた携帯電話。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−311789(P2006−311789A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−39794(P2006−39794)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】