説明

駆動装置および画像形成装置

【課題】
本発明は、封筒等で顕著になる画像擦れの発生を抑えた駆動装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】
記録媒体上にトナー像を定着する定着器よりも記録媒体の搬送方向下流側における記録媒体の搬送路を挟んだ位置に互いに平行に配置されて回転駆動される第1および第2の回転軸と、第1および第2の回転軸のそれぞれに固定され定着器を通過してきた記録媒体をさらなる下流側に送り出す第1および第2の駆動ロールと、第1および第2の回転軸を、第1および第2の駆動ロールが互いに異なる周面速度となるように回転駆動する駆動部とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば封筒などに代表されるような一部が接続されて複数枚重ねられた記録媒体に画像を形成したときに皺が発生することが知られている。
【0003】
特許文献1には、未定着トナー像を保持した記録媒体を加熱および加圧してそのトナー像を記録媒体に定着する定着器における加圧力を、封筒モードでは普通紙の場合と比べ弱めることが提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、その定着器の直後の搬送ローラで、記録媒体を、その定着器内での搬送速度よりも速い搬送速度で搬送することが提案されている。
【0005】
さらに特許文献3には、定着器の材質や記録媒体表裏面それぞれに接する部分の記録媒体通過方向の長さなどの工夫により皺の発生を抑えることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−279702号公報
【特許文献2】特開2010−145620号公報
【特許文献3】特開2010−262137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、封筒等で顕著になる画像擦れの発生を抑えた駆動装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1は、
トナー像が形成されて搬送されてきた記録媒体を挟んで加熱および加圧することにより記録媒体上にトナー像を定着する定着器よりも記録媒体の搬送方向下流側における記録媒体の搬送路を挟んだ位置に互いに平行に配置されて回転駆動される第1および第2の回転軸と、
第1および第2の回転軸のそれぞれに固定され定着器を通過してきた記録媒体をさらなる下流側に送り出す第1および第2の駆動ロールと、
第1および第2の駆動ロールのうち、記録媒体の厚みを考慮したときの記録媒体の、定着器における搬送路の長さが相対的に長い第1面に接する一方の駆動ロールの周面速度よりも定着器における搬送路の長さが相対的に短い第2面に接する他方の駆動ロールの周面速度の方が相対的に高速となるように、第1および第2の回転軸を回転駆動する駆動部とを備えたことを特徴とする駆動装置である。
【0009】
請求項2は、請求項1の駆動装置において、モード切替信号を受信する受信部を有し、上記駆動部が、第1のモードにおいて第1および第2の駆動ロールが互いに異なる周面速度となるように第1および第2の回転軸を回転駆動し、第2のモードにおいて第1および第2の駆動ロールが互いに同一の周面速度となるように第1および第2の回転軸を回転駆動するものであることを特徴とする。
【0010】
請求項3は、請求項1又は2記載の駆動装置において、第1および第2の駆動ロールが、第1および第2の回転軸の、その回転軸が延びる方向について互いに重なりを避けた位置にそれぞれ固定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4は、請求項3記載の駆動装置において、第1および第2の回転軸それぞれに相対回転自在に支持され、記録媒体を、第1および第2の駆動ロールのうちの各一方の駆動ロールとの間に挟んでさらなる下流側に送り出す従動ロールを備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項5は、請求項3又は4記載の駆動装置において、第1および第2の駆動ロールのうちの少なくとも一方の駆動ロールを複数個有し、第1および第2の駆動ロールが、第1および第2の回転軸の、その回転軸が延びる方向について左右対称の位置に固定されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6は、
搬送中の記録媒体上にトナー像を形成するトナー像形成部と、
トナー像が形成されて搬送されてきた記録媒体を挟んで加熱および加圧することにより記録媒体上にトナー像を定着する定着器と、
定着器よりも記録媒体搬送方向下流側における記録媒体の搬送路を挟んだ位置に互いに平行に配置されて回転駆動される第1および第2の回転軸と、
第1および第2の回転軸のそれぞれに固定され定着器を通過してきた記録媒体をさらなる下流側に送り出す第1および第2の駆動ロールと、
第1および第2の駆動ロールのうち、記録媒体の厚みを考慮したときの記録媒体の、定着器における搬送路の長さが相対的に長い第1面に接する一方の駆動ロールの周面速度よりも定着器における搬送路の長さが相対的に短い第2面に接する他方の駆動ロールの周面速度の方が相対的に高速となるように、第1および第2の回転軸を回転駆動する駆動部とを備えたことを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の駆動装置および請求項6の画像形成装置によれば、本構成を有しない場合と比べ、封筒等での画像擦れの発生が抑えられる。
【0015】
請求項2の駆動装置によれば、封筒等での画像擦れの発生を抑えるとともに封筒等以外の記録媒体についてもそれに適した搬送が行われる。
【0016】
請求項3の駆動装置によれば、第1および第2の回転軸の間に記録媒体が存在しないときの、周面速度の違いによる第1の駆動ロールと第2の駆動ロールとの干渉が避けられる。
【0017】
請求項4の駆動装置によれば、本構成を有しない場合と比べ、記録媒体を一層確実に搬送することができる。
【0018】
請求項5の駆動装置によれば、本構成を有しない場合と比べ、記録媒体搬送の際の搬送力の左右の均衡が保たれる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】画像形成装置の一例としての複写機の内部構成図である。
【図2】図1に示す複写機の画像形成部の、定着器以降の用紙の搬送路を示す図である。
【図3】デカーラの構造を示した模式図である。
【図4】わん曲した搬送路の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0021】
図1は、画像形成装置の一例としての複写機の内部構成図である。
【0022】
この複写機1は、原稿読取部1Aと画像形成部1Bとを有し、さらにその画像形成部1Bの下には、この複写機1を移動可能とする車輪1Cと、安易には移動しないようにするための固定足1Dが取り付けられている。
【0023】
原稿読取部1Aには、原稿が重ねられた状態に置かれる原稿給紙台11が備えられている。この原稿給紙台11上に置かれた原稿Sは1枚ずつ送り出され、その原稿Sに記録されている文字や画像が読み取られて原稿排紙台12上に排出される。
【0024】
また、この原稿読取部1Aは、奥側を左右に延びるヒンジを有し、そのヒンジを回転中心として、原稿給紙台11および原稿排紙台12を一体的に持ち上げることができ、その下には、透明ガラス製の原稿読取板13が広がっている。この原稿読取部1Aでは、原稿給紙台11に原稿を置くことに代えて原稿読取板13上に原稿を1枚だけ下向きに置き、その原稿読取板13上の原稿から文字や画像を読み取ることもできる。
【0025】
この原稿読取板13の前側には、ユーザに向けて様々なメッセージを表示し、また、様々な操作ボタンを表示して、ユーザからの、原稿読取りや画像形成の指示等の操作を受ける表示操作部(図示せず)が備えられている。
【0026】
原稿読取板13の下には、原稿読取光学系30が配備されている。この原稿読取光学系30は、ランプ311とミラー312とを有する第1ブロック31と、2枚のミラー321,322を有する第2ブロック32と、画像を表わす光を読み取って画像信号を生成する光電センサ33とを有する。
【0027】
第1ブロック31と第2ブロック32は、原稿読取板13に沿って矢印A−A’方向に移動可能であり、初期状態では、図1に示す左寄りの位置にある。
【0028】
原稿給紙台11上に置かれた原稿Sは、1枚ずつ送り込まれ、搬送ローラ16により原稿読取板13に接する搬送路17上を搬送される。原稿Sは、原稿読取板13に接して搬送される際にランプ311により照射され、原稿Sからの反射光がミラー312,321,322で反射されて光電センサ33で読み取られ、その原稿Sに記録されていた文字や画像を表わす画像信号が生成される。ランプ311による照射を受けた原稿Sはさらに搬送されて原稿排紙台12上に送り出される。
【0029】
原稿が原稿読取板13上に置かれたときは、第1ブロック31および第2ブロック32が、原稿読取板13上の原稿の読取位置と光電センサ33との間の光学的な距離を常に同一に保つように矢印A方向に移動する。そして、その間、ランプ311が原稿を照射し、光電センサ33でその原稿上の文字や画像が読み取られて画像信号に変換される。
【0030】
光電センサ33で得られた画像信号は画像処理部34に入力される。光電センサ33で得られた画像信号はR(レッド)、G(グリーン)、およびB(ブルー)の各色を表わす画像信号であり、画像処理部34は、このRGBの画像信号をY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、およびK(黒)の4色分からなる画像データに変換して一時的に記憶する。そして、後述する潜像形成のための露光の時期に合わせて画像形成部1Bに備えられた露光制御部41に送信される。
【0031】
画像形成部1Bは、その上部に、2段に構成された、画像が形成された後の用紙が排出される排紙台21_1,21_2が設けられている。排紙台21_1,21_2が2段に構成されているのは、そのユーザの用途に応じて、例えばその一方の排紙台上に、ホッチキス止めなどの後処理機を配置することがあるからである。あるいは、2段の排紙台21_1,21_2をそのまま排紙台として用いて、例えば別々の画像が形成された用紙を別々に分けて排紙することなどに使用することができる。
【0032】
また、画像形成部1Bの下部には、4台の給紙台23_1,23_2,23_3,23_4が左右の案内レール24_1,24_2,24_3,24_4に支持されて収容されている。各給紙台23_1,23_2,23_3,23_4には、用紙Pが積み重なった状態に収容されている。各給紙台23_1,23_2,23_3,23_4は、用紙Pの補給のために、案内レール24_1,24_2,24_3,24_4に案内されて引出し自在に構成されている。
【0033】
それら4台の給紙台23_1,23_2,23_3,23_4のうちの、例えば原稿Sの寸法に適合した寸法の用紙Pが収容されている給紙台(ここでは一例として給紙台23_1とする)からは、用紙Pがピックアップロール25により送り出され、さばきロール26により1枚ずつに分離され、その1枚の用紙Pが搬送ロール27により上方に搬送され、待機ロール28によりそれ以降の搬送のタイミングが調整されて、さらに上方に搬送される。この待機ロール28以降の用紙の搬送については後述する。
【0034】
上述した通り、原稿読取部1Aで得られた画像信号は、画像形成部1Bの露光制御部41に送信される。
【0035】
この画像形成部1Bには露光器42Y,42M,42C,42Kが備えられており、潜像形式にあたっては、露光制御部41から各露光器42Y,42M,42C,42KにY、M,C,Kの画像データがそれぞれ送り込まれ、露光器42Y,42M,42C,42Kから、各Y,M,C,Kの各画像データにより変調された各露光光が発せられる。
【0036】
また、この画像形成部1Bには、露光制御部41に隣接した位置に主制御部40が示されている。この主制御部40は、マイクロコンピュータと、そのマイクロコンピュータで実行されるプログラムとで構成されていて、露光制御部41、表示操作部(図示せず)、画像処理部34、その他図示しない各種電源回路や駆動回路等に接続され、この複写機1の全体の制御を担っている。
【0037】
この画像形成部1Bの中央部分には、Y,M,C,Kの各色のトナーによるトナー像を形成する4つの像形成ユニット50Y,50M,50C,50Kが配置されている。これら4つの像形成ユニット50Y,50M,50C,50Kは、使用するトナーの色が異なることを除き、互いに同一の構成を有するため、ここでは像形成ユニット50Yを取り挙げてその構成を説明する。
【0038】
この像形成ユニット50Yは、図1に矢印Rで示す向きに回転する感光体51Yを有し、その感光体51Yの周囲に、帯電器52Y、現像器53Y、上述の露光器42Y、およびクリーナ55Yが配置されている。また、後述する中間転写ベルト61を感光体51Yとの間に挟んだ位置には、転写器54Yが置かれている。
【0039】
感光体51Yはロール形状を有し、帯電により電荷を保持し露光によりその電荷を放出してその表面に静電潜像を保持する。
【0040】
帯電器52Yは、感光体51Yの表面をある帯電電位に帯電する。
【0041】
また、露光器42Yには、前述した通り、露光制御部41からY色に対応した画像データが入力され、露光器42Yからは、その入力された画像データに応じて変調された露光光が出力される。感光体51Yは、帯電器52Yによる帯電を受けた後、露光器42Yからの露光光の照射を受け、感光体51Yの表面に静電潜像が形成される。
【0042】
感光体51Yは、露光光の照射を受けて表面に静電潜像が形成された後、現像器53Yにより現像され、その感光体51Yの表面にトナー像(この像形成ユニット50Yではイエロー(Y)のトナーによるトナー像)が形成される。
【0043】
現像器53Yは、内部にトナーとキャリアとからなる現像剤を収容したケース531内に、現像剤を攪拌する2本のオーガ532_1,532_2と、現像剤を感光体51Yに対向した位置に運ぶ現像ロール533とを有する。感光体51Y上に形成された静電潜像の現像にあたっては、現像ロール533にバイアス電圧が印加され、そのバイアス電圧の作用により、現像剤中のトナーが、感光体51Y上に形成された静電潜像に従って感光体51Y上に付着し、トナー像が形成される。
【0044】
現像器53Yによる現像により感光体51Y上に形成されたトナー像は、転写器54Yの作用により中間転写ベルト61上に転写される。
【0045】
この転写後に感光体51Y上に残存するトナーは、クリーナ55Yによって感光体51Y上から取り除かれる。
【0046】
中間転写ベルト61は、駆動ロール62やその他の複数のロール63に架け回された、無端の、矢印B方向に循環移動するベルトである。
【0047】
像形成ユニット50Y,50M,50C,50Kのそれぞれで形成された各色トナーによるトナー像は、順次重なるように中間転写ベルト61上に転写され、転写器64が配置された二次転写位置に搬送される。これと同期して、待機ロール28にまで搬送されてきていた用紙が二次転写位置に搬送され、転写器64の作用により、中間転写ベルト61上のトナー像が、搬送されてきた用紙上に転写される。このトナー像の転写を受けた用紙は、さらに搬送され、定着器65による加圧および加熱により用紙上のトナー像がその用紙上に定着され、定着されたトナー像からなる画像が用紙上に形成される。画像が形成された用紙はデカーラ66によりそのカールが緩和され、さらに搬送されて、2台の排紙台21_1,21_2のうちの一方の排紙台に向かい、排出ロール67_1,67_2のうちの一方の排出ロールにより、その排出ロールに対応した排紙台上に排出される。
【0048】
転写器64によりトナー像を用紙上に転写した後の中間転写ベルト61はさらに循環移動し、その表面に残存するトナーがクリーナ68によって中間転写ベルト61上から取り除かれる。
【0049】
また、画像形成部1Bの、中間転写ベルト61よりも上方には容器装着部29Y,29M,29C,29Kが設けられている。これらの容器装着部29Y,29M,29C,29Kには、イエロー(Y)、マゼンタ(M),シアン(C)、および黒(K)の各色トナーを収容するトナー容器69Y,69M,69C,69Kが装着されている。これらのトナー容器69Y,69M,69C,69Kに収容されている各色トナーは、現像器53Yなど、対応する像形成ユニット50Y,50M,50C、50Kにそれぞれ備えられた各現像器におけるトナーの消費量に応じて各現像器に補給される。
【0050】
また、この複写機1は、通常の1枚の用紙の片面のみにコピーを行なう通常モードのほか、1枚の用紙の両面に画像を形成する両面コピーモードを有する。この両面コピーモードでは、片面にのみ画像が形成された用紙が上段の排紙台21_1に向かって進んでその用紙の前端部が排紙台21_1の上にまで進み、その用紙の後端部が排出ロール67_1に挟まれた状態で排出ロール67_1の回転が反転してその用紙が今度は搬送路294を進み、再度待機ロール28に至る。その後、タイミングを合わせて再度、転写器64に向かって進み、転写器64により、その用紙のもう片面にトナー像が転写される。トナー像の転写を受けた用紙は定着器65でその用紙にトナー像が定着されさらに搬送されて2段の排紙台21_1,21_2のうちのいずれかの排紙台上に排出される。
【0051】
図2は、図1に示す複写機の画像形成部の、定着器以降の用紙の搬送路を示す図である。
【0052】
定着器65は、加圧ロール651と、加熱器652と、用紙剥離部材653とを有する。
【0053】
加圧ロール651は矢印C方向に回転するゴムロールであり、以下に説明する加熱ベルト652aを挟んで受けブロック652bを押圧する。一方、加熱器652は、加熱ベルト652aと、受けブロック652bと、加熱コイル652cとを有する。加熱ベルト652aは、無端のベルトであって、加圧ロール651により受けブロック652bに押し当てられながら、加圧ロール651の矢印C方向への回転に伴って矢印D方向に回転する。受けブロック652bは、加圧ロール651の押圧を受ける部材である。また、加熱ベルト652aは、金属層を有し、加熱コイル652cからの磁力で誘導加熱される。
【0054】
転写器64(図1参照)の作用によりトナー像の転写を受けた用紙は、そのトナー像を加熱ベルト652a側に保持した状態で、加圧ロール651と加熱ベルト652aとの間を通る搬送路291上を進み、定着器65により加熱および加圧を受けてそのトナー像がその用紙上に定着される。定着器65を通過した用紙は用紙剥離部材653により加熱ベルト652aから剥離されてさらに搬送路291上を進み、デカーラ66により、その用紙のカールが矯正されてさらに進む。このデカーラ66についてはその詳細を後述する。
【0055】
デカーラ66を通過した用紙は、案内部材71により案内され、ゲート72を通る。このゲート72はその角度を変えることにより、搬送されてきた用紙を、2つの排紙台21_1,21_2のいずれかに排出させるかを切り替える部材である。
【0056】
このゲート72は、図2では、搬送されてきた用紙を排紙台21_2に排出させる向きにあり、搬送路291上を搬送されてきた用紙はそのゲート72に導かれて搬送路292上を進み、排出ロール67_2を通過して排紙台21_2の上に排出される。ゲート72の向きを変えると、搬送路291上を搬送されてきた用紙はゲート72に案内されて搬送路293上に進み、搬送ロール73によりさらに下流側に搬送され排出ロール67_1により、排紙台21_1上に排出される。
【0057】
両面コピーモードのときは、その用紙の第1面のみに画像が形成された用紙が搬送路293上を進み、排出ロール67_1により排紙台21_1上に途中まで排出される。その後ゲート72がこの図2に示す向きに角度が変更されて、排出ロール67_1および搬送ロール73が逆回転する。すると、その用紙は、これまでの後端を先頭にして搬送路294上を進む。その後、上述した通り、その先頭になった後端が待機ロール28(図1参照)にまで進み、その待機ロール28によりタイミング調整されて第1面に画像が形成されたときと同じ経路を進み、今度は第2面に画像が形成され、排紙台21_1又は排紙台21_2の上に排出される。
【0058】
この複写機1は、通常のモードおよび両面コピーモードのほか、さらに封筒モードを有する。この封筒モードは、封筒、すなわち周縁で繋がった2枚重ねの用紙上に画像を形成するモードである。ここで、定着器65は、図2に示すように、ゴム製の加圧ロール651を加熱ベルト652aを介して受けブロック652bに押し当てる構造であり、加圧ロール651の押し当てにより一部がわん曲した搬送路となる。このため、そこを通過する用紙の厚みを考慮したとき、その用紙の表面と裏面との間で用紙搬送路の長さが異なる。
【0059】
本実施形態の場合は表側(加熱ベルト652a側)の搬送路が長く、裏側(加圧ロール651側)の搬送路が短い。このように表裏面で搬送路の長さが異なると、そこを封筒が通過したときに皺が発生することがある。この皺の発生を抑えるためには、定着器65における加圧ロール651の加熱ベルト652a側への押し当て力を下げることが有効である。これは、押圧力が強いと封筒を形成している2枚の用紙の搬送量に差ができ、このことによって加圧ロール651が加熱ベルト652aに押し当てられているニップ部内で用紙が変形してしまい、用紙を押しつぶす押圧力が用紙の弾性力に勝ることによって用紙がつぶれて皺となるためである。
【0060】
一方、この押圧力を下げると、用紙がニップ部内で変形してもそれを押しつぶす押圧力よりも用紙の弾性力が勝ることになり、用紙はつぶれず、皺の発生が抑えられる。しかしながら、この押圧力を皺の発生を抑える程度まで下げると、表裏面での搬送路の長さの違いから生じる封筒の表裏面の2枚の用紙のずれをその封筒の弾性力で封筒自身が修正しようとして定着器内で画像面が擦れ、画像が乱れるという現象が生じることがある。
【0061】
本実施形態では、加圧ロール651の押圧力を皺が発生しない程度にまで下げておき、その定着器65の、用紙搬送方向下流側にあるデカーラ66の工夫により画像擦れを防いでいる。
【0062】
以下では、このデカーラ66についてその詳細を説明する。
【0063】
図3は、デカーラの構造を示した模式図である。
【0064】
このデカーラ66は、図1に示すように、定着器65よりも用紙搬送方向下流側に配置されている。このデカーラ66は、互いに平行に配置された2本の回転軸661,662を有し、それら2本の回転軸661,662のそれぞれに3個ずつのロール661a,661b,661c;662a,662b,662cが支持されている。本実施形態では、これらのロール661a,661b,661c;662a,662b,662cはいずれも同一径のロールである。定着器65から出てきた用紙は、これら2本の回転軸661,662の間を通り、ロール661a,661b,661c;662a,662b,662cに挟まれながらさらに下流側に進む。ここで、定着器65を通過してきた用紙は、これら2本の回転軸661,662の間を通過するにあたり、定着器65における加熱ベルト652aに接していた表面が回転軸661側を向き、定着器65における加圧ロール651に接していた裏面が回転軸662側を向いた姿勢で通過する。これら2本の回転軸661,662は、それぞれ別個のモータ81,82で回転駆動される。これらのモータ81,82は、図1に示す主制御部40による、それぞれのモータ81,82への各制御に応じた各回転速度で回転する。回転軸661に支持された3個のロール661a,661b,661cのうち、図3に斜線を付して示した中央のロール661bは、その回転軸661に固定されており、回転軸661の回転に伴って一緒に回転する。また、その回転軸661に支持された3個のロールのうち661a,661b,661cのうちの、中央のロール661bを除く両側のロール661a,661cは、回転軸661に対し自由に相対回転可能なロールである。本実施形態では、これらのロール661a,661b,661cは、材質的には3個とも金属製の硬質ロールである。
【0065】
一方、もう1本の回転軸662に支持された3個のロール662a,662b,662cについては、それら3個のロール662a,662b,662cのうちの図3に斜線を付した両側の2つのロール662a,662cが回転軸662に固定されている。したがってこれら両側の2つのロール662a,662cは、回転軸662の回転に伴って一緒に回転する。その回転軸662に支持された3個のロールのうちの中央の1個のロール662bは、その回転軸662に対し自由に相対回転可能なロールである。
【0066】
本実施形態では、回転軸662に支持された3個のロール662a,662b,662cは、材質的には3個ともゴム製のロールであって、対向する3個の金属製のロール661a,661b,661cよりも軟質である。したがって互いに対向する3組のロール661a,661b,661c;662a,662b,662cが接するとゴム製のロール662a,662b,662cの方が金属製のロール661a,661b,661cの周面形状に倣って変形する。本実施形態では定着器65を通過してきた用紙は表面(加熱ベルト652a(図2参照)に接した面)が内側となる向きにカールしている。そこで、この図3に示すデカーラ66では、その用紙の裏面(加圧ロール651(図2参照)に接した面)が接する662a,662b,662cをゴム製のロールとすることによってそのカールを矯正している。
【0067】
また、上述の通り、2本の回転軸661,662はそれぞれ別個のモータ81,82で回転駆動される。このため、それら2本の回転軸661,662を互いに異なる回転速度で回転させることができる。この実施形態を示す例では、6個のロール661a,661b,661c;662a,662b,662cはいずれも同一径のロールである。このため2本の回転軸661,662を互いに異なる回転速度で回転させると、一方の回転軸661に固定されたロール661bともう一方の回転軸662に固定されたロール662a,662cは、互いに異なる周面速度で回転することになる。ここで、回転軸661,662に支持されている6個のロール661a,661b,661c;662a,662b,662cのうち互いに接するペアのロール661a,662a;661b,662b;661c,662cは、一方が駆動ロール、もう一方が従動ロールの組合せとなっている。このため2本の回転軸661,662は、ペアのロール661a,662a;661b,662b;661c,662cが互いに接したまま互いに異なる回転速度で不都合なく回転することができる。
【0068】
ここで、前述の通り、この実施形態における複写機1は封筒モードを有する。この封筒モードのときは、主制御部40(図1参照)による指示を受けた2つのモータ81,82の回転駆動により、定着器65を通過してきた封筒の裏面(加圧ロール651に接していた面)が向いた側の回転軸662が、封筒の表面(加熱ベルト652aに接していた面)が向いた側の回転軸661よりも高速に回転する。こうすると、封筒がこのデカーラ66を通過する際に、搬送路が短い封筒の裏面側が引っ張られることになる。こうすると、封筒の表裏の用紙の搬送量差が解消され、ニップ部内での用紙のズレがなくなることによって画像擦れの発生が抑えられる。
【0069】
また、このデカーラ66は、駆動ロール、すなわち回転軸661,662のいずれか一方に固定されたロール661b;662a,662cの固定位置は、その中央に引いた仮想対象線Eに関し左右対称となっている。したがってこのデカーラ66を通過する封筒は、その表面、裏面ともに左右に均等な力で搬送され、封筒の用紙が左右の一方に傾くことが防止される。
【0070】
ここで、用紙の搬送路が複雑にわん曲している場合の、用紙の表面側と裏面側の搬送路の長短について考察を加えておく。
【0071】
図4は、わん曲した搬送路の一例を示した図である。
【0072】
この図4に示す例では、搬送路の上流側から下流側に向かって、角度θoにわたって、そこを通過する用紙の表面側に円弧になった半径Roの搬送路が形成され、次いで裏面側に円弧になった、半径Ruの、角度θuにわたる搬送路が繋がり、さらに表面側に円弧になった、半径Ro2の、角度θo2にわたる搬送路が繋がっている。このとき、この搬送路を厚みdの用紙が通過するとすると、用紙表側の搬送路の長さLoは、
【0073】
【数1】

【0074】
となり、
用紙裏側の搬送路の長さLuは、
【0075】
【数2】

【0076】
となる。したがって用紙表側と裏側の搬送路の長さの差異Δは、
【0077】
【数3】

【0078】
となる。(1)〜(3)式を一般化すると、それぞれ、
【0079】
【数4】

【0080】
【数5】

【0081】
【数6】

【0082】
となる。つまり、用紙の表側と裏側の搬送路の長短は、円弧形状を成す角度の、表側と裏側それぞれの合計の大小によって決まることになる。
【0083】
本実施形態の複写機およびデカーラの説明に戻る。
【0084】
この複写機1では封筒モード以外では2本の回転軸661,662は互いに同一の速度で回転する。また、上述の通り、封筒モードでは、定着器65の加圧ロール651の、加熱ベルト652a側への押圧力は、封筒への皺の発生を抑えるために定着不良やその他の不具合が生じない程度に弱められている。これに対し、封筒モード以外のモードでは、封筒などと違い皺の発生を考慮する必要がないので、加圧ロール651の、加熱ベルト652a側への押圧力を高め、定着の余裕度を上げている。
【0085】
尚、本実施形態では6個のロール661a,661b,661c;662a,662b,662cはいずれも同一径のロールであるため、回転軸の回転速度で説明している。ただし、封筒モードのときに封筒の裏面側を引っ張ることになるのは回転軸の回転速度ではなく、回転軸に固定されたロール661b;662a,662cの周面速度差によるものである。したがって、2本の回転軸661,662に支持されたロール661a,661b,661c;662a,662b,662cの径が互いに異なるときは、その径の違いに応じてモータ81,82による各回転軸661,662の回転速度が調整される。
【0086】
また、本実施形態は、定着器65を通過する封筒の、表側の用紙と裏側の用紙の搬送路の長さは裏側(加圧ロール651が接する側)が短いとして説明したが、定着器65によっては、裏側の方が搬送路が短い場合もあり得る。この場合は、封筒モードにおいて、デカーラ66の、封筒の表側の用紙に接するロールの回転速度が裏側の用紙に接するロールの回転速度よりも速められる。
【0087】
また、本実施形態は、デカーラ66が図3に示す構成を有するとして説明したが、本発明の駆動装置は、デカーラである必要はなく、2本の回転軸やそれらの回転軸に支持されたロールを有する、デカーラとは無関係の駆動装置であってもよい。
【0088】
さらに、ここでは図1に示す複写機1について説明したが、本発明の画像形成装置は複写機に限られるものではなく、本発明は、例えばプリンタやファクシミリなど他の形態の画像形成装置にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 複写機
1A 原稿読取部
1B 画像形成部
50Y,50M,50C,50K 像形成ユニット
61 中間転写ベルト
65 定着器
66 デカーラ
71 案内部材
72 ゲート
81,82 モータ
651 加圧ロール
652 加熱器
652a 加熱ベルト
652b 受けブロック
652c 加熱コイル
653 用紙剥離部材
661,662 回転軸
661a,661b,661c;662a,662b,662c ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像が形成されて搬送されてきた記録媒体を挟んで加熱および加圧することにより該記録媒体上に該トナー像を定着する定着器よりも該記録媒体の搬送方向下流側における該記録媒体の搬送路を挟んだ位置に互いに平行に配置されて回転駆動される第1および第2の回転軸と、
前記第1および第2の回転軸のそれぞれに固定され該定着器を通過してきた該記録媒体をさらなる下流側に送り出す第1および第2の駆動ロールと、
前記第1および第2の駆動ロールのうち、前記記録媒体の厚みを考慮したときの該記録媒体の、前記定着器における搬送路の長さが相対的に長い第1面に接する一方の駆動ロールの周面速度よりも該定着器における搬送路の長さが相対的に短い第2面に接する他方の駆動ロールの周面速度の方が相対的に高速となるように、前記第1および第2の回転軸を回転駆動する駆動部とを備えたことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
モード切替信号を受信する受信部を有し、前記駆動部が、第1のモードにおいて前記第1および第2の駆動ロールが互いに異なる周面速度となるように前記第1および第2の回転軸を回転駆動し、第2のモードにおいて該第1および第2の駆動ロールが互いに同一の周面速度となるように該第1および第2の回転軸を回転駆動するものであることを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項3】
前記第1および第2の駆動ロールが、前記第1および第2の回転軸の、該回転軸が延びる方向について互いに重なりを避けた位置にそれぞれ固定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の駆動装置。
【請求項4】
前記第1および第2の回転軸それぞれに相対回転自在に支持され、前記記録媒体を、前記第1および第2の駆動ロールのうちの各一方の駆動ロールとの間に挟んでさらなる下流側に送り出す従動ロールを備えたことを特徴とする請求項3記載の駆動装置。
【請求項5】
前記第1および第2の駆動ロールのうちの少なくとも一方の駆動ロールを複数個有し、該第1および第2の駆動ロールが、前記第1および第2の回転軸の、該回転軸が延びる方向について左右対称の位置に固定されていることを特徴とする請求項3又は4記載の駆動装置。
【請求項6】
搬送中の記録媒体上にトナー像を形成するトナー像形成部と、
トナー像が形成されて搬送されてきた記録媒体を挟んで加熱および加圧することにより該記録媒体上に該トナー像を定着する定着器と、
前記定着器よりも前記記録媒体搬送方向下流側における該記録媒体の搬送路を挟んだ位置に互いに平行に配置されて回転駆動される第1および第2の回転軸と、
前記第1および第2の回転軸のそれぞれに固定され前記定着器を通過してきた前記記録媒体をさらなる下流側に送り出す第1および第2の駆動ロールと、
前記第1および第2の駆動ロールのうち、前記記録媒体の厚みを考慮したときの該記録媒体の、前記定着器における搬送路の長さが相対的に長い第1面に接する一方の駆動ロールの周面速度よりも該定着器における搬送路の長さが相対的に短い第2面に接する他方の駆動ロールの周面速度の方が相対的に高速となるように、前記第1および第2の回転軸を回転駆動する駆動部とを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−64830(P2013−64830A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202964(P2011−202964)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】