説明

駆動装置

【課題】ロータの回転を機械的に停止させて基準位置を求める突当学習時の突当トルクの精度を高める。
【解決手段】通電開始時にロータが回転する状態で電動モータを通電して励磁相の飽和電流値を検出し、検出した飽和電流値に応じて突当学習の実行時のデューティ比を算出して、突当学習を実施する際における電動モータの出力を「予め設定した目標トルク」に低減させる。これにより、諸条件により電動モータの電流の流れ易さが変化しても、突当トルクを目標トルクにコントロールすることができ、突当トルクの精度を高めることができる。突当トルクが与えられる電動アクチュエータの出力系や、パーキング切替機構のディテント機構等の機械的な負担の変動を抑えることができ、シフトバイワイヤ(パーキングバイワイヤ)の耐久性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータを用いて駆動対象物を駆動する駆動装置に関し、特にロータの回転が機械的に停止した角度、あるいは機械的に停止した角度を補正した角度を、基準位置として設定する突当学習(壁当学習)の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータのロータを目標回転位置まで回転させる際、ロータの回転角度を検出するエンコーダのカウント値が、目標回転位置に対応した目標カウント値に達するまでロータを回転させるモータ制御装置が知られている。
【0003】
ロータの回転角度を正確に制御するには、「ロータの実際の回転角(実回転角)」と「エンコーダを介してモータ制御装置が認識するロータの回転角(推定回転角)」とを一致させる必要がある。
「ロータの実際の回転角」と「エンコーダを介してモータ制御装置が認識するロータの回転角」とを対応させる技術として、モータ制御装置には、ロータの回転が機械的に停止した角度、あるいは機械的に停止した角度を補正した角度を、基準位置として設定する突当学習手段(突当学習を行う手段)が搭載される。
【0004】
突当学習では、電動モータを通電してロータを回転させ、ロータが機械的に停止した時のロータの角度を求めるものであるため、ロータが機械的に停止する時の電動モータの出力トルク(以下、「突当トルク」と称する)が与えられる範囲の部材に機械的な負担を加える。
【0005】
突当学習が実施される際の機械的な負担を軽減する技術として、特許文献1に開示される技術が提案されている。
この特許文献1に開示される技術は、ロータが機械的に停止する時の電動モータの駆動電流値を、予め定めた一定デューティ比によって低下させることで突当トルクを低減するものである。
【0006】
しかるに、電動モータ(具体的には励磁コイル等)は、温度(環境温度、受熱温度、予熱温度等)などの諸条件により、電流の流れ易さが変化する。
このため、一定デューティ比による駆動電流を電動モータに与えても、実際に電動モータを流れる実電流値が増減する可能性があり、突当トルクが変動して、機械的な負担が変動する不具合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−141811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、突当トルクの精度を高めることのできる駆動装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[請求項1の手段]
モータ制御装置は、
(a)ロータが機械的に停止する以前に、電動モータを通電した際における実際に電動モータを流れる実電流値を検出し、
(b)検出した実電流値に応じて突当学習の実施時における電動モータの出力トルクを低減させる。
このため、温度などの諸条件により電動モータの電流の流れ易さが変化しても、突当トルクを目標トルクにコントロールすることができ、突当トルクの精度を高めることができる。
その結果、突当トルクが与えられる部材の機械的な負担が変動する不具合がなく、駆動装置(電動モータを用いて駆動対象物を駆動する装置:例えば、シフトバイワイヤ等)の信頼性を高めることができる。
【0010】
[請求項2の手段]
モータ制御装置が検出する実電流値は、電動モータを所定時間以上通電した時の励磁コイルの電流値である。
電動モータを所定時間以上通電することで、励磁コイルの飽和電流値を検出することができる。その結果、飽和電流値に基づいて電動モータの出力トルクを低減させることができるため、突当トルクの精度を高めることができる。
【0011】
[請求項3の手段]
モータ制御装置は、電動モータに与える駆動電流値を調整することで、電動モータの出力トルクを低減させるものである。
【0012】
[請求項4の手段]
モータ制御装置は、検出した実電流値が大きいほど、電動モータに与えられる駆動電流値を小さくするものである。
これにより、温度などの諸条件により電動モータの電流の流れ易さが変化しても、突当トルクを略一定に調整できる。
【0013】
[請求項5の手段]
モータ制御装置は、電動モータに与える駆動電流値のパルス制御により、電動モータの出力トルクを低減させるものである。
即ち、PWM(パルス幅変調)制御、PAM(パルス振幅変調)制御、PPM(パルス位置変調)制御、PCM(パルス符号変調)制御などのパルス制御を用いて、電動モータの出力トルクを低減させるものである。
【0014】
[請求項6の手段]
モータ制御装置は、電動モータに電流を与えるパルスのON時間と、電動モータに電流を与えないパルスのOFF時間との比率により、電動モータの出力トルクを低減させるものである。
即ち、PWM制御を用いて、電動モータの出力トルクを低減させるものである。
【0015】
[請求項7の手段]
モータ制御装置は、検出した実電流値が大きいほど、電動モータに電流を与えるパルスのON時間の比率を小さくするものである。
これにより、温度などの諸条件により電動モータの電流の流れ易さが変化しても、突当トルクを略一定に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】車両のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】パーキング切替機構の説明用斜視図である。
【図3】ディテントプレートの平面図である。
【図4】ディテント機構の説明図である。
【図5】電動モータの回転量の説明図である。
【図6】電動モータの駆動回路の構成図である。
【図7】初期学習で実施される励磁相の通電制御と実電流値との関係を示すタイムチャートである。
【図8】初期学習で検出される実電流値と駆動電流制御に用いられるデューティ比との関係を示すグラフである。
【図9】制御例を示すフローチャートである。
【図10】電源スイッチのON後の作動を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照して[発明を実施するための形態(実施形態)]を説明する。
駆動装置は、電動モータ1(例えば、SRモータ等のステッピングモータ)を用いて駆動対象物2(例えば、パーキング切替機構、シフトレンジ切替機構など)を駆動するものであり、電動モータ1の通電制御を行うモータ制御装置3を備えて構成される。
【0018】
このモータ制御装置3は、駆動対象物2を駆動する際、エンコーダ4のカウント値が目標カウント値に達するまでロータを回転させる。
このため、モータ制御装置3は、「ロータの実際の回転角」と「エンコーダ4を介してモータ制御装置3が認識するロータの回転角」とを一致させるために、ロータの回転が機械的に停止した角度、あるいは機械的に停止した角度を補正した角度を、基準位置として設定する突当学習を行う機能を備える。
【0019】
そして、モータ制御装置3は、突当学習を行う際に、
(a)ロータが機械的に停止する以前に電動モータ1を通電した際において実際に電動モータ1を流れる実電流値を検出し、
(b)検出した実電流値に応じて突当学習の実施時における電動モータ1の出力トルクを低減させる。
【0020】
突当学習の実施時に電動モータ1の出力トルクを低減させる一例を説明する。
突当学習の開始条件が成立した場合(例えば、通電開始時など)、あるいは突当学習の開始指示が与えられた場合、モータ制御装置3は、電動モータ1を所定時間通電して電動モータ1の実電流値(飽和電流値)を電流センサ5によって検出する。
次に、モータ制御装置3は、検出した実電流値に基づいて、突当学習の実施時における電動モータ1の駆動電流値を決定する。具体的には、検出した実電流値が大きいほど、電動モータ1の駆動電流の制御を行うデューティ比(PWM制御に用いるパルスのON−OFFの比率)におけるON時間の比率を小さくして、突当学習の実施時における電動モータ1の出力トルクを低減させる。
【0021】
これにより、温度などの諸条件により電動モータ1の電流の流れ易さが変化しても、突当トルクを目標トルク(ほぼ一定のトルク)にコントロールすることができ、突当トルクの精度を高めることができる。
その結果、突当トルクが与えられる部材の機械的な負担が変動する不具合がなく、駆動装置および駆動対象物の信頼性を高めることができる。
【実施例】
【0022】
以下において本発明をパーキングバイワイヤ(シフトバイワイヤの一形態)に適用した一例(実施例)を図面を参照して説明する。以下における実施例は具体的な一例を開示するものであって、本発明が実施例に限定されないことは言うまでもない。なお、以下の実施例において、上記[発明を実施するための形態]と同一符号は、同一機能物を示すものである。
【0023】
(車両のシステム構成の説明)
先ず、図1を参照して車両のシステム構成を説明する。
この車両は、
・車両走行用の回転出力を発生するエンジン6(電気自動車用電動モータ、あるいは内燃機関等)と、
・エンジン6の回転出力を変速して出力する自動変速機7(無段変速機、あるいは有段変速機)と、
を搭載する。
【0024】
また、図1に示す車両は、
・エンジン6の駆動制御を行うE/G−ECU11と、
・パーキングバイワイヤの制御(具体的には後述する電動アクチュエータ27の駆動制御)を行うSBW−ECU3(モータ制御装置の一例)と、
・自動変速機7の変速制御を行うA/T−ECU13と、
・車両乗員に視覚表示を行うメータの作動制御を行うメータECU14と、
を搭載する。
【0025】
これらの各ECUは、電源供給ライン15および信号受渡ライン16と接続されている。
電源供給ライン15は、例えば、乗員(ドライバ)によって操作される車両電源スイッチ(スタートスイッチ)を介して、車両に搭載されたバッテリ17の電源端子(プラス端子)に接続されるものである。
このため、車両電源スイッチがONされることにより、バッテリ17から各ECUへ電力が供給されて、各ECUが起動する。即ち、車両電源スイッチがONされることにより、パーキングバイワイヤも起動するものである。
【0026】
ここで、図1に示す各符号について説明する。
エンジン6には、エンジン6の回転状態を検出する回転センサ21が搭載されており、この回転センサ21の出力がE/G−ECU11に付与される。
自動変速機7には、パーキング切替機構2の実際の切替状態がPレンジであるか非Pレンジであるかの検出を行うニュートラルスイッチ22(パーキング状態検出スイッチ)が搭載されており、このニュートラルスイッチ22の出力がE/G−ECU11、SBW−ECU3、メータECU14に付与される。
【0027】
自動変速機7には、変速状態を切り替えるための電動バルブ(電磁弁等)23が搭載されており、この電動バルブ23はA/T−ECU13によって通電制御される。
自動変速機7には、変速状態の切り替えを実行する摩擦係合装置への供給油圧の検出を行う油圧センサ24が搭載されており、この油圧センサ24の出力がA/T−ECU13に付与される。
【0028】
SBW−ECU3には、乗員(ドライバ)によって操作されるシフトスイッチ25が接続されている。
具体的な一例として、シフトスイッチ25は、乗員(ドライバ)による手動操作によってシフトレンジをドライブレンジ(D)、ニュートラルレンジ(N)、リバースレンジ(R)、パーキングレンジ(P)などの各レンジに切り替えるスイッチである。
【0029】
なお、シフトスイッチ25の出力は、SBW−ECU3を介してA/T−ECU13にも出力される。
A/T−ECU13は、シフトスイッチ25の指示(シフトレンジの切替指示)に基づき、自動変速機7内の駆動機構(無段変速ベルト等を用いた無段変速機構、あるいは遊星歯車等を用いた有段変速機構)の実レンジの切り替え制御を行うとともに、現在のシフトレンジの状態をメータECU14に出力する。
一方、車両における乗員(ドライバ)の視認範囲(メータパネル等)には、現状のシフトレンジの状態を乗員に視覚表示するレンジ表示器26が設けられており、このレンジ表示器26がメータECU14によって表示状態が制御される。
【0030】
(パーキングバイワイヤの説明)
パーキングバイワイヤは、シフトスイッチ25の指示に基づいて、自動変速機7に搭載されたパーキング切替機構2を、Pレンジ(パーキングポジション)または非Pレンジ(ノットパーキングポジション)の一方に切り替えるものであり、
・上述したSBW−ECU3と、
・パーキング切替機構2に機械的な駆動力を付与する電動アクチュエータ27と、
を用いて構成される。
【0031】
この電動アクチュエータ27は、
・励磁相の通電状態を切り替えることにより回転する電動モータ1と、
・この電動モータ1の回転出力を増大させる減速機(例えば、サイクロイド減速機、遊星歯車減速機等)と、
を備える。
なお、減速機を搭載しない電動アクチュエータ27であっても良い。
【0032】
また、電動アクチュエータ27には、電動モータ1(即ち、ロータおよびモータ出力軸)の回転角度を検出するエンコーダ4が搭載されており、エンコーダ4の検出信号をSBW−ECU3に出力している。
【0033】
エンコーダ4は、ロータの回転角度を非接触で検出するロータリーエンコーダであり、・電動モータ1の回転部材(ロータ、モータ出力軸等)に直接または部材を介して取り付けられる磁束発生部(例えば、周方向にN極とS極が交互に多数並んで着磁されたフェライト樹脂マグネット等)と、
・電動モータ1の固定部材(ステータ、モータハウジング等)に直接または部材を介して取り付けられ、磁束発生部に対向配置される磁束検出部(ホールIC等)と、
から構成されて、電動モータ1の回転状態の検出を行う。
なお、具体的な一例として、エンコーダ4は、複数相信号(A相、B相あるいはA相、B相、Z相の信号)を出力するタイプのロータリーエンコーダである。
【0034】
(パーキング切替機構2の説明)
次に、図2を参照してパーキング切替機構2を説明する。
パーキング切替機構2は、車両の駆動軸(ドライブシャフト等)と連動して回転するパーキングギヤ31に、固定部材(自動変速機7のハウジング等)によって回動可能に支持されるパークポール32の噛合および噛合解除を実行させて、パーキングギヤ31のロック(Pレンジ)とアンロック(非Pレンジ)の切り替えを実行するものである。
具体的に、パーキングギヤ31の凹部31aとパークポール32の凸部32aの係脱によってパーキング切替機構2のPレンジと非Pレンジの切り替えが実行されるものである。
【0035】
パーキング切替機構2には、パークポール32を駆動するためのパークロッド33が設けられている。
このパークロッド33の先端には、自動変速機7のハウジングに設けられた突出部34とパークポール32の間に介在配置される円錐部35が設けられている。
図2の状態(非Pレンジの状態)からパークロッド33を図2中矢印A方向へ操作すると、円錐部35がパークポール32を押し上げる。すると、パークポール32が軸32bを中心に図2中矢印B方向に押し上げ、パークポール32の凸部32aがパーキングギヤ31の凹部31aに噛合して、パーキング切替機構2におけるPレンジが達成される。
【0036】
逆に、Pレンジの状態からパークロッド33を図2中矢印A方向とは反対側に操作すると、円錐部35がパークポール32を押し上げる力が無くなる。ここで、パークポール32は、図示しないねじりコイルバネにより、図2中矢印B方向とは反対方向に常に付勢されている。このため、円錐部35によるパークポール32の押し上げる力が無くなると、パークポール32の凸部32aがパーキングギヤ31の凹部31aから外れ、パーキングギヤ31がフリーになり、パーキング切替機構2における非Pレンジが達成される。
【0037】
パーキング切替機構2には、パークロッド33の操作位置を、Pレンジの位置、あるいは非Pレンジの位置のいずれか一方に保持するためのディテント機構36が設けられている。
【0038】
ディテント機構36は、
・パークロッド33と結合されて、パークロッド33を、図2中矢印A方向または反対方向に操作するディテントプレート37と、
・ディテントプレート37の回動端に形成された2つの凹部(Pレンジ凹部Xと非Pレンジ凹部Y:図3参照)の一方にローラピン(コロ)38を嵌め合わせてディテントプレート37の回動を規制するディテントスプリング39と、
を備えて構成される。
【0039】
ディテントプレート37は、電動アクチュエータ27によって駆動されるコントロールロッド41に結合され、コントロールロッド41を中心に回動操作される。
【0040】
そして、非Pレンジから電動アクチュエータ27の出力により、コントロールロッド41を図2中矢印C方向から見て右回りに回転させると、パークロッド33が図2中矢印A方向へ操作され、円錐部35がパークポール32を押し上げてPレンジが達成される。
このとき、ローラピン38がPレンジ凹部Xに嵌まり合うことで、パーキング切替機構2のPレンジが保持される。
【0041】
逆に、Pレンジから電動アクチュエータ27の出力により、コントロールロッド41を図2中矢印C方向から見て左回りに回転させると、パークロッド33が図2中矢印A方向とは反対側に操作され、円錐部35によるパークポール32の押し上げが解除されて非Pレンジが達成される。
このとき、ローラピン38が非Pレンジ凹部Yに嵌まり合うことで、パーキング切替機構2の非Pレンジが保持される。
【0042】
この実施例では、ディテントスプリング39の一例として、板バネを用いる例を示す。ディテントスプリング39の一端は、固定部材42(自動変速機7のハウジング等)に固定支持されるものであり、ローラピン38はディテントスプリング39の自由端側に設けられるものである。
なお、この実施例では、ディテントスプリング39の一例としては板バネを用いるが、限定されるものではなく、ディテントスプリング39にコイルスプリングを用いるなど他のディテント構造であっても良い。
【0043】
(SBW−ECU3の説明)
電動アクチュエータ27(具体的には電動モータ1)の通電制御を行うSBW−ECU3を図6を参照して説明する。
SBW−ECU3が通電制御する電動モータ1は、複数の励磁相(励磁コイル)が搭載されるステータと、各励磁相の通電状態に応じて発生する磁気により駆動されるロータとを備える周知のSRモータである。なお、以下では、具体的な励磁相としてU相コイル、V相コイル、W相コイルを用いるものであり(限定されるものではない)、SBW−ECU3が各励磁相の通電状態(磁気の発生状態)を切り替えることでロータが駆動される。
【0044】
電動モータ1を通電制御するSBW−ECU3は、
・各励磁相の通電状態を決定するマイコン43と、
・このマイコン43の出力信号に基づいて各励磁相の通電状態の切り替えを実行する駆動回路44と、
を備えて構成される。
【0045】
マイコン43は、各種演算処理を行うCPU、各種プログラムおよびデータを保存するメモリ、入力回路、出力回路、電源回路等を用いた周知構造のマイクロコンピュータであり、
・シフトスイッチ25の操作状態を読み取る『指示レンジ読取手段』、
・エンコーダ4の出力(A相、B相、Z相等によるカウント値)からロータの回転速度、回転量(回転した数量)、回転角度を把握する『エンコーダ読取手段』、
・『指示レンジ読取手段』と『エンコーダ読取手段』に基づき「乗員(ドライバ)により指示されるPレンジまたは非Pレンジ」と「パーキング切替機構2における実際の切替レンジ」が一致するように各励磁相を通電制御する『励磁相制御手段』、
・現在のパーキング切替機構2の切替状態を識別する『シフトレンジ識別手段』など、
種々の制御プログラムが搭載されている。
【0046】
駆動回路44は、
・U相コイルの通電状態の切り替えを行うスイッチング素子44a(例えば、MOSFET等のパワートランジスタ)、
・V相コイルの通電状態の切り替えを行うスイッチング素子44b(例えば、MOSFET等のパワートランジスタ)、
・W相コイルの通電状態の切り替えを行うスイッチング素子44c(例えば、MOSFET等のパワートランジスタ)、
を備える。
そして、各スイッチング素子44a〜44cがマイコン43から与えられる指示信号(マイコン43によってデューティ比制御されるPWMのパルス信号)に応じてON−OFFするものである。
【0047】
(励磁相制御手段の説明)
上述した『励磁相制御手段』は、電動モータ1のロータを目標回転位置まで回転させる際、エンコーダ4のカウント値が、目標回転位置に対応した目標カウント値に達するまでロータを回転させる制御を含むものである。
即ち、『励磁相制御手段』は、
・非Pレンジの状態からPレンジに切り替える際、エンコーダ4のカウント値がPレンジに応じて設定された目標カウント値に達するまでロータを回転させ、
・逆に、Pレンジの状態から非Pレンジに切り替える際、エンコーダ4のカウント値が非Pレンジに応じて設定された目標カウント値に達するまでロータを回転させる制御を行うものである。
【0048】
この技術をさらに具体的に説明する。
ディテントプレート37の回動端には、図3に示すように、ロータの回転を機械的に停止させる2つの壁(「P壁X’」と「非P壁Y’」)が設けられている。
P壁X’は、Pレンジの状態(Pレンジ凹部Xにローラピン38が嵌まり合った状態)で、ディテントプレート37に、図3の右回りの駆動力を与えても、ローラピン38を機械的にPレンジ凹部Xにとどめる壁である。
また、非P壁Y’は、非Pレンジの状態(非Pレンジ凹部Yにローラピン38が嵌まり合った状態)で、ディテントプレート37に、図3の左回りの駆動力を与えても、ローラピン38を機械的に非Pレンジ凹部Yにとどめる壁である。
【0049】
そして、『励磁相制御手段』は、非Pレンジの状態からPレンジに切り替える際、P壁X’がローラピン38に衝突しないように電動モータ1を制御する。具体的には、P壁X’がローラピン38に衝突する手前の位置でロータの回転を停止する。この時のエンコーダ4のカウント値を「P目標回転位置(図5参照)」と称する。
【0050】
同様に、『励磁相制御手段』は、Pレンジの状態から非Pレンジに切り替える際、非P壁Y’がローラピン38に衝突しないように電動モータ1を制御する。具体的には、非P壁Y’がローラピン38に衝突する手前の位置でロータの回転を停止する。この時のエンコーダ4のカウント値を「非P目標回転位置(図5参照)」と称する。
この制御により、切り替え毎におけるローラピン38の衝突が防がれるため、機械的な負荷を大幅に低減することができ、機械的部品の軽量化や低コスト化を図ることが可能になる。
【0051】
(シフトレンジ識別手段の説明)
上述した『シフトレンジ識別手段』は、
・ニュートラルスイッチ22によって検出されるパーキング切替機構2の切替状態、
・あるいはエンコーダ4のカウント値(ディテントプレート37の回動角度)、
の少なくとも一方に基づいて現在のシフトレンジ(Pレンジまたは非Pレンジ)を決定する。
【0052】
エンコーダ4のカウント値から現在のシフトレンジ(Pレンジまたは非Pレンジ)を決定する具体例を説明する。
シフトレンジの判定基準として、図5に示すように、エンコーダ4のカウント値(ロータの回転量+回転角度)に応じた「Pロック判定位置」および「P解除判定位置」を設定する。
【0053】
「Pロック判定位置」は、「P目標回転位置」から所定カウント値だけ非Pレンジ側に設定した判定値である。そして、エンコーダ4のカウント値が、「P壁位置(P壁X’側の機械的な停止位置)」から「Pロック判定位置」の範囲にあるときに、シフトレンジがPレンジであると判定する。
「P解除判定位置」は、「非P目標回転位置」から所定カウント値だけPレンジ側に設定した判定値である。そして、エンコーダ4のカウント値が、「非P壁位置(非P壁Y’側の機械的な停止位置)」から「P解除判定位置」の範囲にあるときに、シフトレンジが非Pレンジであると判定する。
なお、電動モータ1の回転量がPロック判定位置からP解除判定位置の間にあるときは、シフトレンジが不定、またはシフトレンジが切替中であると判定する。
【0054】
(SBW−ECU3の通電開始時のシフトレンジの設定の説明)
また、『シフトレンジ識別手段』は、SBW−ECU3の通電が開始された時も、
・ニュートラルスイッチ22によって検出されるパーキング切替機構2の切替状態、
・あるいはSBW−ECU3の記憶値や車両の状態、
の少なくとも一方に基づいて現在のシフトレンジ(Pレンジまたは非Pレンジ)を決定する。
【0055】
ニュートラルスイッチ22の検出結果を用いずに、現在のシフトレンジを決定する具体例を説明する。
SBW−ECU3は、前回の車両電源スイッチのOFF時におけるシフトレンジ(Pレンジまたは非Pレンジ)を記憶する。
そして、SBW−ECU3の通電が開始された際、『シフトレンジ識別手段』はSBW−ECU3の記憶するシフトレンジを現在のシフトレンジに設定する。
【0056】
また、SBW−ECU3が前回のシフトレンジを記憶していない場合は、『シフトレンジ識別手段』が車速に基づいて現在のシフトレンジを定める。
具体的な一例として、車速が3km/h以下の場合には現在のシフトレンジをPレンジと定め、車速が3km/hより速い場合(前進または後退の走行中)には現在のシフトレンジを非Pレンジと定める。
なお、前回のシフトレンジを記憶していない状態で車速が3km/hより速い場合は、例えば車両の走行中に電源が瞬断されるなど、現在のシフトレンジのデータが消失したような状況を想定したものである。
【0057】
(突当学習手段の説明)
ディテントプレート37とローラピン38の位置関係をSBW−ECU3によって正確に制御するためには、「ロータの実際の回転角(実回転角)」と「エンコーダ4を介してSBW−ECU3が識別するロータの回転角(推定回転角)」とを一致させる必要がある。
即ち、「ディテント機構36がP目標回転位置(および非P目標回転位置)におけるロータの回転角」と、「エンコーダ4を介してSBW−ECU3が識別するロータの回転角」とを一致させる必要がある。
【0058】
そこで、SBW−ECU3(具体的にはマイコン43)には、「ロータの実際の回転角」と「エンコーダ4を介してSBW−ECU3が識別するロータの回転角」とを対応させる『突当学習手段』が搭載されている。
この『突当学習手段』は、ロータの回転が機械的に停止した角度、あるいは機械的に停止した角度を補正した角度を、基準位置として設定する突当学習を実行する制御プログラムである。
【0059】
突当学習は、SBW−ECU3の通電が開始された際(通常は車両電源スイッチがONされた際)に実施される。
具体的に、この実施例では、SBW−ECU3の通電が開始された際に、
・シフトレンジがPレンジの場合には、『P壁突当学習』を実施し、
・シフトレンジが非Pレンジの場合には、『非P壁突当学習』を実施する。
【0060】
『P壁突当学習』および『非P壁突当学習』を説明する。
図4(a)は、『P壁突当学習』を説明するための図である。
『P壁突当学習』では、
・P壁X’がローラピン38に押し付けられる方向に電動モータ1を通電制御し、
・P壁X’をローラピン38に押し当てることでロータの回転を機械的に停止させ、
・ロータの回転が所定時間停止した角度(エンコーダ4により読み込まれるロータの回転角)からディテントスプリング39の撓みによる回転角分(図中、実線と破線との角度差参照)を補正した角度(エンコーダ4のカウント値)を、P側の基準位置(例えば、P目標回転位置)に設定し、
・ロータを、機械的な停止角度からP目標回転位置に制御して『P壁突当学習』を終了するものである。
【0061】
なお、図4(a)における矢印F1は電動アクチュエータ27による回転力、矢印F2はディテントスプリング39のバネ力(復元力)、矢印F3はパークロッド33の押し戻し力を示す。また、点線で示すディテントプレート37は、P壁X’とローラピン38の接触位置を示す。そして、実線で示すディテントプレート37は、ディテントプレート37に付与される図示右回転力(矢印F1)と図示左回転力(矢印F2+F3)が釣り合って機械的に停止した位置を示す。
【0062】
図4(b)は、『非P壁突当学習』を説明するための図である。
『非P壁突当学習』では、
・非P壁Y’がローラピン38に押し付けられる方向に電動モータ1を通電制御し、
・非P壁Y’をローラピン38に押し当てることでロータの回転を機械的に停止させ、
・ロータの回転が所定時間停止した角度(エンコーダ4により読み込まれるロータの回転角)からディテントスプリング39の撓みによる回転角分(図中、実線と破線との角度差参照)を補正した角度(エンコーダ4のカウント値)を、非P側の基準位置(例えば、非P目標回転位置)に設定し、
・ロータを、機械的な停止角度から非P目標回転位置に制御して『非P壁突当学習』を終了するものである。
【0063】
なお、図4(b)における矢印F1は電動アクチュエータ27による回転力、矢印F2はディテントスプリング39のバネ力(復元力)、矢印F3はパークロッド33の引っ張り力を示す。また、点線で示すディテントプレート37は、非P壁Y’とローラピン38の接触位置を示す。そして、実線で示すディテントプレート37は、ディテントプレート37に付与される図示左回転力(矢印F1)と図示右回転力(矢印F2+F3)が釣り合って機械的に停止した位置を示す。
【0064】
上述した『P壁突当学習』および『非P壁突当学習』は、ともに突当学習の具体的な一例であり、少なくとも高い頻度で実施される『P壁突当学習』の実施時に本発明が適用される。もちろん『P壁突当学習』と『非P壁突当学習』の両方に本発明を適用して良いことは言うまでもない。
以下では、『P壁突当学習』の実施時に、本発明を適用した例を説明する。
【0065】
SBW−ECU3は、SBW−ECU3の通電が開始され、『シフトレンジ識別手段』が現在のシフトレンジがPレンジであると識別した場合、
(a)ロータが機械的に停止する以前(ローラピン38がP壁X’に当たる以前)において電動モータ1を通電して、実際に電動モータ1を流れる実電流値を検出し、
(b)検出した実電流値に応じて『P壁突当学習』の実行時における電動モータ1の出力トルクを低減させる。
【0066】
具体的な制御例と作動を、図9のフローチャート、図10のタイムチャートおよび関連図面を参照して説明する。
SBW−ECU3の通電が開始され(図10の「システム起動」参照)、『シフトレンジ識別手段』が現在のシフトレンジがPレンジであると識別した場合、『P壁突当学習』を実施する制御ルーチンに進入する(スタート)。
この制御ルーチンでは、先ず、ロータが回転する状態で電動モータ1を通電して、電動モータ1を流れる実電流値を検出して記憶する『初期学習』を実施する(ステップS1〜S4)。
【0067】
『初期学習』(ステップS1〜S4)を図6、図7を参照して説明する。
ステップS1では、図7の上側段に示すように、P壁X’がローラピン38から離間する方向にロータを少量回転させるものであり(図10の符号a参照)、2相通電を3回実施してステータ(通電相)に対するロータの位置を確定させる。
ステップS2では、3回目の2相通電(デューティ比制御しない通電)が所定時間経過したか否かの判断を行う。即ち、図7の下側段に示すように、モータ電流が飽和状態に達したか否かの判断を行う。
【0068】
ステップS3では、3回目の2相通電が所定時間経過した時(ステップS2がYes)に実電流値を読み取る。具体的に、図6に示すように、各励磁相の通電経路には、各励磁相を流れた電流値を検出する電流センサ5(電流検出用抵抗体5a+抵抗間電圧に応じた出力をマイコン43に付与するオペアンプ5b等)を設けている。そして、3回目の2相通電が所定時間経過した時の電流センサ5の値(飽和電流値)をマイコン43で読み取り、検出した実電流値(飽和電流値)をMax電流値としてメモリに記憶する(図10の符号b参照)。
ステップS4では、『初期学習』が完了したか否かの判断を行う。即ち、『初期学習』によりMax電流値を記憶したか否かの判断を行う。
【0069】
『初期学習』が完了すると(ステップS4がYes)、検出した実電流値(記憶したMax電流値)に応じて『P壁突当学習』の実行時に用いる駆動電流(電動モータ1の出力トルクを低減させるための電流値)を算出する(ステップS5)。
このステップS5を図8を参照して説明する。
【0070】
この実施例のSBW−ECU3(具体的にはマイコン43)は、通常制御時においてディテントプレート37の回動角度等に応じて各スイッチング素子44a〜44cをデューティ比制御(PWMのパルス信号による制御)して電動モータ1の駆動電流(出力トルク)を制御するように設けられている。
そこで、SBW−ECU3は、駆動電流のデューティ比制御を用いて『P壁突当学習』を実施する際における電動モータ1の出力を低下させるものであり、ステップS5では、検出した実電流値(記憶したMax電流値)から電動モータ1の出力トルクを「予め設定した目標トルク(所定値)」に低減させるためのデューティ比を求める。
【0071】
具体的にマイコン43には、図8に示すマップ、あるいは図8に相当する近似式が搭載されており、メモリに記憶したMax電流値から『P壁突当学習』の実行時のデューティ比を算出するように設けられている。
さらに具体的に説明すると、図8に示すように、検出した実電流値(記憶したMax電流値)が大きいほど、デューティ比(ON−OFFの比率制御)のON時間の比率を小さくして、『P壁突当学習』の実行時に用いる電動モータ1の出力トルクを「予め設定した目標トルク」に低減させるものである。
【0072】
ステップS5が実行されると、ステップS5で算出したデューティ比による駆動電流で電動モータ1を通電制御して上述した『P壁突当学習』を実施する(ステップS6、S7)。
具体的に、ステップS6による『P壁突当学習』は以下の如く実施される。
(i)Max電流値から求めたデューティ比によって電動モータ1を通電制御して、P壁X’がローラピン38に押し付けられる方向に電動モータ1を駆動する(図10の符号c参照)。
(ii)P壁X’がローラピン38に押し付けられることでロータの回転が機械的に停止する(図10の符号d参照)。
(iii)ロータの回転が所定時間停止した時(図10の符号e参照)、エンコーダ4により読み込まれるロータの回転角からディテントスプリング39の撓みによる回転角分だけ補正した角度をP側の基準位置(例えば「P目標回転位置」)に設定する。
(iv)ロータを、機械的な停止角度から「P目標回転位置」に駆動し(図10の符号f参照)、『P壁突当学習』を完了する(図10の符号g参照)。
なお、ステップS7は、『P壁突当学習』が完了したか否かを判定するものである。
【0073】
そして、『P壁突当学習』が完了すると(ステップS7がYes)、通常制御に移行する(ステップS8)。
ステップS8の通常制御は、上述した『励磁相制御手段』によりパーキング切替機構2の切替制御を実行する。
【0074】
具体的に、シフトスイッチ25によりPレンジから非Pレンジに切り替える指示が与えられると、エンコーダ4のカウント値が「P側の基準位置」に基づいて設定した「非P目標回転位置(目標カウント値)」に達するまでロータを回転させる(図10の符号h参照)。これにより、パーキング切替機構2がPレンジから非Pレンジに切り替えられる。
逆に、シフトスイッチ25により非PレンジからPレンジに切り替える指示が与えられると、エンコーダ4のカウント値が「P側の基準位置」に基づいて設定した「P目標回転位置(目標カウント値)」に達するまでロータを回転させる(図10の符号i参照)。これにより、パーキング切替機構2が非PレンジからPレンジに切り替えられる。
【0075】
(実施例1の効果)
実施例1のパーキングバイワイヤ(駆動装置の一例)は、上述したように、
(a)SBW−ECU3の通電開始時に『初期学習』を実施して、ロータが回転する状態で電動モータ1の励磁相を通電制御して電動モータ1を流れる実電流値(飽和電流)を検出し、
(b)検出した実電流値(飽和電流:記憶したMax電流値)に基づいて『P壁突当学習』の実行時のデューティ比を算出して、『P壁突当学習』を実施する際における電動モータ1の出力を「予め設定した目標トルク」に低減させる。
【0076】
これにより、温度などの諸条件により電動モータ1の電流の流れ易さが変化しても、突当トルクを目標トルク(「突当トルクが与えられる部材の機械的な負担軽減(耐久性向上)」と「突当制御の応答性」の両立を図った目標トルク:電動モータ1の出力トルクを低減した所定値)にコントロールすることができ、突当トルクの精度を高めることができる。
【0077】
その結果、突当トルクが与えられる部材(電動アクチュエータ27の減速機や、パーキング切替機構2におけるディテント機構36など)の機械的な負担の変動を抑えることができ、従来技術よりも突当トルクを抑制することができる。このため、パーキングバイワイヤの耐久性を高め、パーキングバイワイヤの信頼性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
上記の実施例では、駆動装置の具体的な一例としてパーキング切替機構2(駆動対象物)を駆動するパーキングバイワイヤ(駆動装置の一例)に本発明を適用したが、限定されるものではなく、例えば、シフトレンジ切替機構(駆動対象物)を駆動するシフトバイワイヤ(駆動装置の一例)に本発明を適用して良いことは言うまでもない。
具体的に、駆動対象物は限定されるものではなく、種々の駆動装置で用いられる電動モータ1の突当制御に本発明を適用しても良い。
【0079】
上記の実施例では、電動モータ1の一例としてSRモータ(スイッチド・リラクタンス・モータ)を用いる例を示したが、電動モータ1の形式は限定されるものではない。
【符号の説明】
【0080】
1 電動モータ
2 パーキング切替機構(駆動対象物)
3 SBW−ECU(モータ制御装置)
4 エンコーダ
5 電流センサ
27 電動アクチュエータ
36 ディテント機構
37 ディテントプレート
38 ローラピン
39 ディテントスプリング
X’ P壁(電動モータのロータの一方の回転を機械的に停止させる手段)
Y’ 非P壁(電動モータのロータの他方の回転を機械的に停止させる手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータ(1)におけるロータの回転が機械的に停止した角度、あるいは機械的に停止した角度を補正した角度を、基準位置として設定する突当学習を実施するモータ制御装置(3)を備える駆動装置において、
前記モータ制御装置(3)は、
(a)前記ロータが機械的に停止する以前に前記電動モータ(1)を通電した際において実際に前記電動モータ(1)を流れる実電流値を検出し、
(b)検出した実電流値に応じて突当学習時における前記電動モータ(1)の出力トルクを低減させる
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動装置において、
前記モータ制御装置(3)が検出する実電流値は、前記電動モータ(1)を所定時間以上通電した時の励磁コイルの電流値であることを特徴とする駆動装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の駆動装置において、
前記モータ制御装置(3)は、前記電動モータ(1)に与える駆動電流値を調整することで、前記電動モータ(1)の出力トルクを低減させることを特徴とする駆動装置。
【請求項4】
請求項3に記載の駆動装置において、
前記モータ制御装置(3)は、検出した実電流値が大きいほど、前記電動モータ(1)に与えられる駆動電流値を小さくすることを特徴とする駆動装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の駆動装置において、
前記モータ制御装置(3)は、前記電動モータ(1)に与える駆動電流値のパルス制御により、前記電動モータ(1)の出力トルクを低減させることを特徴とする駆動装置。
【請求項6】
請求項5に記載の駆動装置において、
前記モータ制御装置(3)は、前記電動モータ(1)に電流を与えるパルスのオン時間と、前記電動モータ(1)に電流を与えないパルスのオフ時間との比率により、前記電動モータ(1)の出力トルクを低減させることを特徴とする駆動装置。
【請求項7】
請求項6に記載の駆動装置において、
前記モータ制御装置(3)は、検出した実電流値が大きいほど、前記電動モータ(1)に電流を与えるパルスのオン時間の比率を小さくすることを特徴とする駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−59162(P2013−59162A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194951(P2011−194951)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】