説明

騒音低減構造

【課題】気体流路内で発生する騒音を効率良く低減することができ、気体の漏出も発生しない騒音低減構造を提供する。
【解決手段】騒音低減構造10は、エアコンダクトを形成する隔壁11aに開設された複数の開口部12と、開口部12を閉塞するように付設された多孔質部材13と、多孔質部材13の外面を被覆するように付設された気密性部材14と、気密性部材14の外面を被覆するように付設された多孔質部材15と、を備えている。多孔質部材13、気密性部材14及び多孔質部材15は積層状態で隔壁11a表面に付設され、それぞれの周縁部13a,15a,14aを互いに接着若しくは溶着するとともに、多孔質部材15の周縁部15aを覆うフレーム材16を隔壁11aに接着若しくは溶着することによって隔壁11aに固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の吸気ダクトやエアコンダクトなどの各種気体流路から発生する騒音を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の吸気ダクトやエアコンダクトの内部を気体が通過する際に発生する騒音を低減する技術については、従来、様々な方式が提案されているが、代表的なものとして、レゾネータ方式あるいは無反射方式がある(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0003】
特許文献1記載のレゾネータ方式は、気体流路の一部に設けられた分岐路にレゾネータという共鳴部材を接続したものであり、特許文献2記載の無反射方式は、気体流路を構成する隔壁の一部に設けられた開口部に不織布などの通気性部材を付設したものである。レゾネータ方式及び無反射方式はいずれも一長一短であるが、省スペースや軽量化の面から見ると無反射方式の方が優れているといわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−203901号公報
【特許文献2】特開2008−128168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、レゾネータ方式と無反射方式とを対比すると、省スペースや軽量化の面においては無反射方式の方が優れているが、無反射方式の場合、ダクト内を通過する気体が、開口部に付設された不織布などを通過して漏出することがあるため、吸気ダクトの場合は吸気効率の低下を招き、エアコンダクトの場合は空調効率の低下を招いている。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、気体流路内で発生する騒音を効率良く低減することができ、気体の漏出も発生しない騒音低減構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の騒音低減構造は、気体流路を形成する隔壁に開設された開口部と、前記開口部を閉塞するように付設された多孔質部材と、前記多孔質部材の外面を被覆するように付設された気密性部材と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
このような構成とすれば、気体流路内で発生する音は開口部の多孔質部材及び気密性部材を透過可能であり、気体流路内を移動する気体は開口部の気密性部材によって遮断されるため、開口部は、音は通すが、気体は通さない機能を有することとなる。従って、気体流路内で発生する騒音を効率良く低減することができ、気体の漏出も発生しない。
【0009】
ここで、前記気密性部材の外面を多孔質部材で被覆することが望ましい。
【0010】
このような構成とすれば、二枚の多孔質部材の間に気密性部材を挟持した状態となるため、騒音低減作用が高まるほか、気体流路内における風圧、風量及び風流の変化を無くすことができる。
【0011】
また、前記多孔質部材としては、発泡合成樹脂製のシート材若しくは合成樹脂製の網状材あるいはこれらを組み合わせた部材が好適である。この場合、多孔質部材の気体透過率85%以上であることが望ましい。
【0012】
さらに、前記気密性部材としては、合成樹脂製のフィルム材が好適である。なお、フィルム材の厚みは0.1mm以下であることが望ましい。
【0013】
一方、気体流路を形成する前記隔壁、前記多孔質部材及び前記気密性部材を略同一素材で形成することが望ましい。このような構成とすれば、使い終わった後の前記隔壁、前記多孔質部材及び前記気密性部材を個々に分解することなく、一括して再生使用することが可能となるため、リサイクル性が向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、気体流路内で発生する騒音を効率良く低減することができ、気体の漏出も発生しない騒音低減構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態である騒音低減構造を示す斜視図である。
【図2】図1に示す騒音低減構造の構成を示す分解斜視図である。
【図3】図1に示す騒音低減構造の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すように、本実施形態の騒音低減構造10は、自動車のインストゥルメントパネルの背面側に装備される気体流路であるエアコンダクト11において実施したものである。図2に示すように、騒音低減構造10は、エアコンダクト11を形成する隔壁11aに開設された複数の開口部12と、開口部12を閉塞するように付設された多孔質部材13と、多孔質部材13の外面を被覆するように付設された気密性部材14と、気密性部材14の外面を被覆するように付設された多孔質部材15と、を備えている。
【0017】
図2,図3に示すように、多孔質部材13、気密性部材14及び多孔質部材15は積層状態で隔壁11a表面に付設され、それぞれの周縁部13a,15a,14aを互いに接着若しくは溶着するとともに、多孔質部材15の周縁部15aを覆うフレーム材16を隔壁11aに接着若しくは溶着することによって隔壁11aに固定されている。
【0018】
図3に示すように、エアコンダクト11で発生する音Sは開口部12の多孔質部材13,15及び気密性部材14を透過して外部へ拡散可能であり、エアコンダクト11内を移動する空気Aは開口部12の気密性部材14によって遮断されるため、開口部12は、音Sは通すが、空気Aは通さない機能を発揮する。従って、エアコンダクト11内で発生する騒音を効率良く低減することができ、空気の漏出も発生しない。
【0019】
騒音低減構造10においては、気密性部材14の外面をさらに多孔質部材15で被覆することにより、二枚の多孔質部材13,15の間に気密性部材14を挟持した状態が形成されている。このため、優れた騒音低減作用を発揮するだけでなく、エアコンダクト11内における風圧、風量及び風流の変化を無くすことができる。
【0020】
また、図2に示すように、騒音低減構造10において、エアコンダクト11の隔壁11aに開設されている複数の開口部12はいずれも円形であるが、これに限定するものではないので、開口部の形状、サイズ、個数などは実施状況に応じて任意に設定することができる。
【0021】
さらに、多孔質部材13,15として合成樹脂製のスポンジシートを使用し、気密性部材として合成樹脂製のラップフィルムを使用しているが、これに限定するものではないので、同様の性質を有する他の素材を使用することもできる。
【0022】
図1に示すように、エアコンダクト11の複数箇所に騒音低減構造10を配置しているが、その場所やサイズは限定しないので、空気の流動方向が変化している部分や流路が狭隘化している部分など、騒音が発生し易い部分に配置することが望ましい。
【0023】
また、本実施形態においては、エアコンダクト11を形成する隔壁11a、多孔質部材13,15及び気密性部材14を全て略同一素材(略同一の合成樹脂材)で形成しているため、使い終えたエアコンダクト11を再生利用する場合、壁11a、多孔質部材13,15及び気密性部材14を個々に分解することなく、一括してリサイクルすることができる。
【0024】
なお、騒音低減構造10は自動車のエアコンダクト11において実施しているが、本発明の用途、利用分野をこれに限定するものではないので、隔壁で区画された気体流路を有する空調設備あるいは各種機械装置などにおける騒音低減手段として広く利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の騒音低減構造は、自動車の吸気ダクトやエアコンダクトあるいは空調用ダクトなどの各種気体流路から発生する騒音を低減する手段として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0026】
10 騒音低減構造
11 エアコンダクト
11a 隔壁
12 開口部
13,15 多孔質部材
14 気密性部材
13a,14a,15a 周縁部
16 フレーム材
A 空気
S 音

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体流路を形成する隔壁に開設された開口部と、前記開口部を閉塞するように付設された多孔質部材と、前記多孔質部材の外面を被覆するように付設された気密性部材と、を備えたことを特徴とする騒音低減構造。
【請求項2】
前記気密性部材の外面を多孔質部材で被覆した請求項1記載の騒音低減構造。
【請求項3】
前記多孔質部材が、発泡合成樹脂製のシート材若しくは合成樹脂製の網状材である請求項1または2記載の騒音低減構造。
【請求項4】
前記気密性部材が、合成樹脂製のフィルム材である請求項1〜3のいずれかに記載の騒音低減構造。
【請求項5】
気体流路を形成する前記隔壁、前記多孔質部材及び前記気密性部材を略同一素材で形成した請求項1〜4のいずれかに記載の騒音低減構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−159020(P2012−159020A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18522(P2011−18522)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(593044481)株式会社ミトヨ (2)
【Fターム(参考)】