説明

騒音性難聴防止装置

【課題】 騒音レベルが変動しつつある閾値を超え、長時間に渡って継続する場合にあっても、十分に危険性を認識できるよう警告できる騒音性難聴防止装置を提供する。
【解決手段】 マイクロホン2と、音圧測定部31、制御処理部32、集積記憶部33、累積算出部34及び表示出力部35から構成される警告・分析装置3と、ディスプレイ4と、から騒音性難聴防止装置1を構成する。制御処理部32によって、所定時間毎に測定した音圧レベルを測定時刻に対応させて音圧データとして集積記憶部33に記憶させ、累積算出部34によって、集積記憶部33から取り出した音圧データに時間間隔を乗算して音圧レベルの累積値を算出し、さらに、制御処理部32によって、騒音レベルに対する曝露時間との関係から、危険経過時間を算出していき、安全係数を掛けた上で、表示出力部35によって、ディスプレイ4画面上に規定の表示をさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下鉄駅構内、工場、建築現場、ライブハウス等の騒音が長時間発生している場所で作業又は勤務する者が聴覚器に障害を受け、聴力が低下して、難聴になるのを防止する騒音性難聴防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地下鉄駅構内では、到着、出発時等に電車による騒音が発生し、工場、建築現場では、作業時に製造機械、建設機械等による騒音が発生している。又、ライブハウスでは、演奏時等に歌声、楽器等による音響が発生している。このような環境において長時間作業又は勤務する者は、継続的に作業又は勤務を続けることによって、聴覚器に障害を受け、聴力が低下して、難聴になり易い、と言われている。
【0003】
このような騒音が原因でなる難聴は騒音性難聴と呼ばれるが、騒音性難聴は数か月、数年後に症状が発現し、その後、急速に悪化していくと言われている。そして、一旦症状が発現してしまうと、現在の医療技術では、効果的治療法はない、とされている。よって、騒音性難聴に関しては、如何に聴力管理を行うかが非常に大切になるのである。
【0004】
このような騒音性難聴を予防するため、マイクロホンによって騒音レベルを測定し、騒音レベルがある閾値を超えているか否か判定し、その閾値を超えた場合には、視覚的又は聴覚的に警告を実行する装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−336251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された装置は、騒音レベルがある閾値を瞬間的に超える場合、又、ある閾値以上を一定して所定時間以上超える場合には、有効性のあるものと言えるが、騒音レベルが変動しつつある閾値を超え、長時間に渡って継続する場合には、実際の危険性とはかけ離れた情報を与えることとなり、有効性に問題がある。
【0007】
又、騒音レベルがある閾値を超えた場合、騒音レベルがある閾値を所定時間以上超えた場合に、作業者にメッセージを表示して視覚的に警告したり、ブザー音を出力して聴覚的に警告したりするが、メッセージの表示又はブザー音の出力では、作業者が十分に危険性を認識できるか、警告方法に問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するために為されたものであって、その目的とするところは、騒音レベルが変動しつつある閾値を超え、長時間に渡って継続する場合にあっても、実際の危険性に近い有効な情報を与えることができ、又、作業者が十分に危険性を認識できるように警告することができる騒音性難聴防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の騒音性難聴防止装置は、マイクロホンと、音圧測定部、制御処理部、集積記憶部、累積算出部及び表示出力部から構成される警告・分析装置と、ディスプレイとから構成され、前記マイクロホンによって、騒音を収集して音圧信号に変換し、前記音圧測定部によって、マイクロホンから入力した音圧信号から音圧レベルを測定し、前記制御処理部によって、所定時間毎に測定した音圧レベルを測定時刻に対応させて音圧データとして前記集積記憶部に記憶させ、前記累積算出部によって、前記集積記憶部から取り出した音圧データに時間間隔Δtを乗算して音圧レベルの累積値を算出し、さらに、前記制御処理部によって、騒音レベルに対する曝露時間との関係から、危険経過時間を算出していき、安全係数を掛けた上で、表示出力部によってディスプレイの画面上に規定の表示をさせるようにしたことを特徴とする。
【0010】
ここで、前記ディスプレイは、作業者が十分に危険性の認識を得ることができる警告画面と、分析者が騒音レベルの経時的変化を分析できる分析画面と、を表示することができることを特徴とする。
【0011】
前記警告画面では、累積表示部において、危険経過時間が累積していくに従って、順次、青色、黄色、赤色の表示がされるようにしてあり、警告表示部において、危険経過時間が累積していくに従って、順次、青色、黄色、赤色の表示が点灯されるようにしてある。
【0012】
又、前記分析画面では、音圧レベル表記部において、所定時間経過毎の音圧レベルが記載され、音圧レベル図示部において、所定時間経過毎の音圧レベルが図示されるようになっている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の騒音性難聴防止装置は、所定時間毎に測定した音圧レベルに時間間隔を乗算して音圧レベルの累積値を算出すると共に、騒音レベルに対する曝露時間との関係から、危険経過時間を算出するようにしたから、騒音レベルが変動しつつある閾値を超え、長時間に渡って継続する場合にあっても、実際の危険性に近い有効な情報を作業者等に与えることができる。
【0014】
又、算出した危険経過時間に安全係数を掛けた上で、ディスプレイの画面上の累積表示部において、危険経過時間が累積していくに従って、順次、青色、黄色、赤色の表示を、又、警告表示部において、危険経過時間が累積していくに従って、順次、青色、黄色、赤色の表示が点灯するようにしたから、作業者が視覚によって十分に危険性の程度を認識することができ、効果的に警告することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の騒音性難聴防止装置の概略構成図である。
【図2】本発明の騒音性難聴防止装置の警告・分析装置の概略構成図である。
【図3】本発明の騒音性難聴防止装置のディスプレイにおいて、警告画面を表示した状態を示す一実施例の説明図である。
【図4】本発明の騒音性難聴防止装置のディスプレイにおいて、分析画面を表示した状態を示す説明図である。
【図5】マイクロホン入力設定画面を示す説明図である。
【図6】曝露時間と許容騒音レベルとの関係を示す説明図である。
【図7】本発明の騒音性難聴防止装置のディスプレイにおいて、警告画面を表示した状態を示す他実施例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の騒音性難聴防止装置の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明の騒音性難聴防止装置1は、図1に示すように、マイクロホン2、警告・分析装置3及びディスプレイ4から構成される。
【0017】
マイクロホン2は、地下鉄駅構内、工場、建築現場、ライブハウス等において、作業又は勤務する者が実際に騒音を聴取すると同様の条件に近い場所に設置されると共に、接続コードによって警告・分析装置3に接続されている。そして、騒音を収集して音圧信号に変換するものである。
【0018】
ここで、マイクロホン2は、騒音を聴取する領域内に複数本設置してもよい。特に面積が広い場所においては、長さ方向両端部、四隅部等、又は、その他の部所に適宜設置するようにしてもよい。
【0019】
警告・分析装置3は、図2に示すように、音圧測定部31、制御処理部32、集積記憶部33、累積算出部34及び表示出力部35から構成される。
【0020】
音圧測定部31は、マイクロホン2から入力した音圧信号から音圧レベル(dB)を測定するものである。
【0021】
制御処理部32は、所定時間毎に音圧測定部31を作動させて音圧レベルA(dB)を測定すると共に、測定した音圧レベルA(dB)を測定時刻に対応させて音圧データとして集積記憶部33に記憶させる。
【0022】
制御処理部32は、又、累積算出部34を作動させて集積記憶部33から順次、音圧データを取り出し、累積算出部34を作動させて、時間間隔Δtを乗算して音圧レベルAの累積値Lを算出する。
【0023】
制御処理部32は、さらに、図6に示すように、騒音レベルに対する曝露時間との関係から、危険経過時間を算出していき、安全係数を掛けた上で、表示出力部35を作動させて、ディスプレイ4の画面上に規定の表示をさせる。
【0024】
ディスプレイ4に警告画面5を表示させた場合には、図3に示すように、累積表示部51において、危険経過時間が累積していくに従って、順次、青色、黄色、赤色の表示がされるようにしてある。
又、警告表示部52において、危険経過時間が累積していくに従って、順次、青色、黄色、赤色の表示が点灯されるようにしてある。
【0025】
又、警告画面5では、図3に示すように、現在音圧レベル表示部53に現時点での音圧レベルを、最大音圧レベル表示部54に所定時間内における最大音圧レベルを、平均音圧レベル表示部55に所定時間内における平均音圧レベルを、最小音圧レベル表示部56に所定時間内における最小音圧レベルを表示するようにしてある。
【0026】
ディスプレイ4に分析画面6を表示させた場合には、図4に示すように、音圧レベル表記部61において、所定時間経過毎の音圧レベルが記載され、音圧レベル図示部62において、所定時間経過毎の音圧レベルが図示されるようになっている。
【0027】
又、分析画面6でも、図4に示すように、現在音圧レベル表示部63に現時点での音圧レベルを、最大音圧レベル表示部64に所定時間内における最大音圧レベルを、平均音圧レベル表示部65に所定時間内における平均音圧レベルを、最小音圧レベル表示部66に所定時間内における最小音圧レベルを表示するようにしてある。
【0028】
尚、分析画面6において、設定表示部67をクリックすれば、図5に示すように、マイクロホン設定画面7が表示され、マイクムホン2の入力レベルを適宜設定することができるようになっている。
【0029】
以上のように、本発明の騒音性難聴防止装置は、所定時間毎に測定した音圧レベルAに時間間隔Δtを乗算して音圧レベルAの累積値Lを算出すると共に、騒音レベルに対する曝露時間との関係から、危険経過時間を算出するようにしたから、騒音レベルが変動しつつある閾値を超え、長時間に渡って継続する場合にあっても、実際の危険性に近い有効な情報を与えることができる。
【0030】
又、算出した危険経過時間に安全係数を掛けた上で、累積表示部41において、危険経過時間が累積していくに従って、順次、青色、黄色、赤色の表示を、又、警告表示部42において、危険経過時間が累積していくに従って、順次、青色、黄色、赤色の表示が点灯するようにしたから、作業者が視覚によって十分に危険性の程度を認識することができ、効果的に警告することができる。
【0031】
又、ディスプレイ4に、図7に示す警告画面8を表示させるようにしてもよい。この警告画面では、図7に示すように、累積表示部81の下部に騒音スペクトル表示部87を配置してあり、現時点の騒音スペクトルが表示されるようになっており、作業者に危険性の程度を強烈に認識させることができると共に、高音、低音の別を非常に明確に認識させることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 騒音性難聴防止装置
2 マイクロホン
3 警告・分析装置
31 音圧測定部
32 制御処理部
33 集積記憶部
34 累積算出部
35 表示出力部
4 ディスプレイ
5 警告画面
51 累積表示部
52 警告表示部
6 分析画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロホンと、音圧測定部、制御処理部、集積記憶部、累積算出部及び表示出力部から構成される警告・分析装置と、ディスプレイと、から構成され、前記マイクロホンによって、騒音を収集して音圧信号に変換し、前記音圧測定部によって、マイクロホンから入力した音圧信号から音圧レベルを測定し、前記制御処理部によって、所定時間毎に測定した音圧レベルを測定時刻に対応させて音圧データとして前記集積記憶部に記憶させ、前記累積算出部によって、前記集積記憶部から取り出した音圧データに時間間隔を乗算して音圧レベルの累積値を算出し、さらに、前記制御処理部によって、騒音レベルに対する曝露時間との関係から、危険経過時間を算出していき、安全係数を掛けた上で、前記表示出力部によって、ディスプレイの画面上に規定の表示をさせるようにしたことを特徴とする騒音性難聴防止装置。
【請求項2】
前記ディスプレイは、作業者が十分に危険性の認識を得ることができる警告画面と、分析者が騒音レベルの経時的変化を分析できる分析画面と、を表示、出力することができることを特徴とする請求項1に記載の騒音性難聴防止装置。
【請求項3】
前記警告画面では、累積表示部において、危険経過時間が累積していくに従って、順次、青色、黄色、赤色の表示がされるようにしてあり、警告表示部において、危険経過時間が累積していくに従って、順次、青色、黄色、赤色の表示が点灯されるようにしてあることを特徴とする請求項2に記載の騒音性難聴防止装置。
【請求項4】
前記分析画面では、音圧レベル表記部において、所定時間経過毎の音圧レベルが記載され、音圧レベル図示部において、所定時間経過毎の音圧レベルが図示されるようになっていることを特徴とする請求項2又は3に記載の騒音性難聴防止装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−112396(P2011−112396A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266689(P2009−266689)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(505123332)株式会社エヌエスイー (3)
【Fターム(参考)】