説明

骨成長の誘発及び骨損失の抑制のための組成物及び方法

動物における骨成長の誘発又は骨損失の抑制に有用な組成物であって、1種以上のイソフラボン又はイソフラボン代謝物を含む組成物、及び動物における骨成長の誘発又は骨損失の抑制のための方法であって、前記組成物を使用する方法。当該組成物及び方法は、閉経後、アンドロポーズ後、性腺摘出後、不妊処置後又は去勢後の動物に特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野:
[0001] 本発明は、概して、骨成長の誘発又は骨損失の抑制のための組成物及び方法に関する。特に、骨成長の誘発又は骨損失の抑制のためのイソフラボン又はその代謝物の使用に関する。
【0002】
関連技術の説明:
[0002] 骨のリモデリングは継続的なサイクルである。このサイクルは、破骨細胞が媒介する骨吸収とともに始まり、その後、骨芽細胞による骨量回復が起こる。骨のリモデリング過程は、主に性ホルモン、特にエストロゲンによって調節される。ただし、遺伝因子、栄養因子及び環境因子が、骨の代謝回転に影響しうる。女性はもとより、男性における骨のリモデリングでも、エストロゲンが主要な役割を果たすことが示されている。エストロゲンは、骨髄前駆体からの破骨細胞形成及び骨芽細胞形成を抑制することで骨のリモデリングを低下させ、吸収促進性サイトカインの低減により骨吸収を抑制し、骨芽細胞の寿命及び活性を調節する。
【0003】
[0003] 骨のリモデリングサイクルの調節異常は高頻度で生じる。高齢者では、骨組織の回復よりも速い速度での骨組織の分解及び損失が一般に観察される。病理学的な骨損失を骨粗鬆症という。加速的な骨損失及び骨粗鬆症は、女性に偏って生じる。エストロゲンの欠乏は女性における閉経の開始によって生じるが、それが骨損失の主要な原因であることは十分に認められている。それにもかかわらず、骨損失及び骨粗鬆症は男性においても観察される。
【0004】
[0004] 男性における、閉経の生理学的等価物は存在しないが、多くの男性では、加齢に伴って性ホルモン循環の減少及び性腺機能の低下が生じる。これらの変化はアンドロポーズと呼ばれる。性腺機能の低下及びエストロゲンの減少が、男性における骨損失及び骨粗鬆症の原因となる。このように、閉経及びアンドロポーズのいずれも、骨損失の危険因子である。
【0005】
[0005] 閉経及びアンドロポーズに加えて、手術による生殖器官の切除がエストロゲン等の性ホルモンレベルに影響を及ぼす。この切除は、骨サイズ、骨量及び骨密度に影響を及ぼしうる。動物においては、去勢、不妊処置、卵巣摘出、性腺摘除等の手術が、頭数制御のために実施されることが多い。雌の成体動物における性腺摘出の実際的な影響は、この手術が性ホルモンの循環レベルを事実上低下させることから、高齢の雌動物において自然に生じる閉経と外科的に等価である。閉経後、雌動物におけるエストロゲンの性腺外生合成は、副腎皮質由来の前駆体ステロイドの利用可能性に依存する。エストロゲンの性腺外生合成は、雄動物における骨を含む多くの組織及び系の正常な機能にとっても重要である。睾丸からの循環テストステロンが、性腺外におけるエストロゲン生合成の主要な前駆体と考えられる。雄動物は、一生を通じて、循環テストステロンの十分な濃度を維持することで、エストロゲンの性腺外における生合成をサポートする。したがって、雄動物は、通常、晩年になって初めて骨粗鬆症に罹患する。しかし、雄の成体動物において、手術により生殖器官を切除すると、睾丸によるアンドロゲン及びエストロゲンの産生が完全に失われる。この切除はまた、雄動物において自然には生じない、性腺外におけるエストロゲン生合成のための主要な前駆体の喪失をもたらす。
【0006】
[0006] 骨の強度は、大部分、骨密度及び骨質に依存する。ヒトにおいては、小児期及び青年期に骨量がピークに達しないと、後年に骨粗鬆症のリスクが生じる。幼若及び発育中の雌雄の動物において、手術による生殖器官の切除は、骨ミネラルの密度及び含量の蓄積を低減することによってピーク骨量への到達を妨げる。このように、性腺摘出は、幼若な発育中の動物における骨の成長及び発達を損なう危険因子と考えることができる。
【0007】
[0007] 性ホルモン循環の低下が骨のリモデリング、特に骨損失に及ぼす影響に対抗するために、ホルモン補充療法及び食事補給を用いることが多い。食事補給に関しては、食餌中の植物エストロゲンが骨量及び骨代謝回転を改善し、骨形成において役割を果たす可能性がある。さらに、食餌中の植物エストロゲンは、骨損失の遅延化又は抑制に有益な影響を及ぼすと考えられる。ただし、大豆イソフラボンのような植物エストロゲンの骨に対する有益な効果に関する研究のほとんどすべては、手術が誘発する閉経状態にある雌動物又は閉経後のヒト女性のいずれかにおいて実施されている。発育中の動物及び雄動物における骨成長に対するイソフラボンの効果については、データが不足している。
【0008】
[0008] 植物エストロゲンは、植物が産生する化学物質で、哺乳類エストロゲンと類似の構造を有する。植物エストロゲンは、クメスタン、リグナン及びイソフラボンの3つに大別される。イソフラボンは、骨の健康に対して正の効果を有する。
【0009】
[0009] 閉経又はアンドロポーズにある動物、又は、特に発育中及び骨格系が未成熟な時期に性腺摘出を受けた動物における、(1)骨成長及び骨発達の障害、及び(2)骨損失及び骨粗鬆症加速化、のリスクを踏まえると、従来のホルモン補充療法に関連する危険な副作用のリスクなしに、動物において健常な骨成長を促進し、骨損失を低減又は抑制する、新規の組成物及び方法が求められている。
【発明の概要】
【0010】
[0010] そこで、本発明は、骨成長の誘発又は骨損失の抑制のための組成物及び方法を提供することを目的とする。
【0011】
[0011] 本発明はまた、閉経後、アンドロポーズ後、性腺摘出後、不妊処置後又は去勢後の動物における骨成長の誘発又は骨損失の抑制のための組成物及び方法を提供することを目的とする。
【0012】
[0012] 本発明はさらに、動物における骨成長の誘発又は骨損失の抑制に有用な、本発明のイソフラボン又はその代謝物、食品組成物、化合物及び機器の組合せ、を含む製品をキットの形で提供することを目的とする。
【0013】
[0013] これらの目的の1つ又は複数は、骨成長の誘発又は骨損失の抑制のための新規の組成物及び方法を用いて達成される。一般に、この組成物は、1種以上のイソフラボン又はその代謝物を、骨成長の誘発又は骨損失の抑制に有効な量で含む。このイソフラボンは、ダイゼイン、6−O−マロニルダイゼイン、6−O−アセチルダイゼイン、ゲニステイン、6−O−マロニルゲニステイン、6−O−アセチルゲニステイン、グリシテイン、6−O−マロニルグリシテイン、6−O−アセチルグリシテイン、バイオチャニンA又はフォルモノネチンの少なくとも1種を含む。また、このイソフラボン又はその代謝物は、大豆イソフラボン又はその代謝物(例えば、エコール)である。上記組成物は、全般的で健常な骨成長を促進又は維持し、又は骨損失を抑制する物質(DT56a、アンドロステンジオン、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、ケイ素、共役リノール酸(CLA)、オルトケイ酸等)のような付加的成分を含んでもよい。
【0014】
[0014] 本発明の他の目的、特徴及び利点は当業者には自明であろう。
【発明の詳細な説明】
【0015】
定義:
[0015] 本明細書では、以下の略語を用いることがある。CLA:共役リノール酸;BCS:ボディコンディションスコア;BMR:基礎代謝率;MER:維持エネルギー要求量;DEXA:二重エネルギーX線吸収法;BMC:骨ミネラル含量;BMD:骨ミネラル密度;BW:体重;SGM:大豆胚芽粉。
【0016】
[0016] 「動物」という語は、骨成長の誘発又は骨損失の抑制が有益となりうる、ヒト又は他の動物(鳥類、ウシ、イヌ、ウマ、ネコ、ヤギ、マウス、ヒツジ、ブタ等)を意味する。
【0017】
[0017] 「骨作用物質」という語は、本発明のイソフラボン又はその代謝物以外で、動物における骨成長の誘発又は骨損失の抑制に有用な任意の化合物、組成物又は薬剤(例えば、ビスホスフォネート、ラロキシフェン、エストロゲン、カルシトニン、リセドロネート及びアレンドロネート)を意味する。
【0018】
[0018] 「骨成長」という語は、当技術分野において適切な任意の手段により測定した、骨細胞又は骨組織の任意の増大、骨量の増大、骨ミネラルの増大、骨密度の増大、骨長の増大、又は骨幅の増大を意味する。
【0019】
[0019] 「骨損失」という語は、当技術分野において適切な任意の手段により測定した、被験体の骨細胞又は骨組織の任意の減少、骨量の減少、骨ミネラルの減少、又は骨密度の減少を意味する。
【0020】
[0020] 「共役リノール酸」又は「CLA」という語は、必須(n−6)脂肪酸であるリノール酸の位置異性体及び幾何異性体の混合物を指すために用いる総称的用語である。
【0021】
[0021] 「コンパニオン動物」という語は、ネコ、イヌ、ウサギ、モルモット、フェレット、ハムスター、マウス、アレチネズミ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ロバ、ブタ等を含む(それらに限定されない)任意の家畜を意味する。
【0022】
[0022] 「完全かつ栄養的にバランスのとれたペットフード」という語は、必要な全ての既知の栄養素を、コンパニオンアニマル栄養学の分野の第一人者の推奨に基づいて、適切な量及び割合で含有するものである。したがって、そのような食品は、補足的な栄養源を添加することなく、生命を維持し、又は繁殖を促進するための食餌摂取の唯一の供給源としての機能を果たすことができる。栄養的にバランスのとれたペットフード組成物は、当技術分野で広く知られており、広く使用されている。
【0023】
[0023] 「栄養補助食品」という語は、動物の通常の食餌に加えて摂取されることが意図された食品を意味する。
【0024】
[0024] 「有効量」という語は、本明細書に記載の化合物、物質、組成物及び/又は剤形の量であって、特定の生物学的結果を達成するのに有効でありうる量を意味する。当該結果としては、性腺摘出後の幼若な発育中の動物における健常な骨成長を誘発すること、及び閉経後又はアンドロポーズ後又は性腺摘出後の成体動物における骨損失を抑制することが挙げられるが、それらに限定されない。そのような有効な活性は、例えば、本発明の組成物を摂取させることで達成される。
【0025】
[0025] 「性腺摘出後」という語は、動物が生殖器官(精巣又は卵巣)を手術により除去されたことを意味する。
【0026】
[0026] 「ヒト用食品組成物」という語は、ヒトによる摂取が意図された任意の組成物を意味する。
【0027】
[0027] 「併用」という語は、(1)食品組成物中に一緒にして、或いは(2)ほぼ同時又は定期的に、同一又は異なる投与経路を用いて、同一又は異なる頻度で個別に、イソフラボン又はその代謝物、食品組成物、骨作用物質、又は本発明の他の化合物若しくは組成物を動物に投与することを意味する。「定期的」とは、特定の薬剤を、当該薬剤について容認可能な投与スケジュールにより投与すること、及び当該動物に応じた適切な方法で食物を与えることを意味する。「ほぼ同時」とは、一般に、食物と薬剤とを同時に、或いは一方を他方の約72時間以内に投与することを意味する。「併用」には、特に、骨作用物質を所定期間にわたって投与し、1種以上のイソフラボン又はその代謝物を含む組成物を不定期間にわたって投与する投与計画を含む。
【0028】
[0028] 「イソフラボン」という語は、ベンゼン基が、ベンゾピラン環の2位ではなく3位に結合したフラボンの異性体である3−フェニルクロモン、及びその代謝物を意味する。本明細書において、「イソフラボン」という語は、本明細書に記載のイソフラボン誘導体の特定例を含む、イソフラボンの誘導体及び代謝物を包含する。イソフラボンは、大豆を含む(これに限定されない)多数の供給源において見出される。イソフラボンの非限定的な例としては、ダイゼイン、6−O−マロニルダイゼイン、6−O−アセチルダイゼイン、ゲニステイン、6−O−マロニルゲニステイン、6−O−アセチルゲニステイン、グリシテイン、6−O−マロニルグリシテイン、6−O−アセチルグリシテイン、バイオチャニンA、フォルモノネチン又はイソフラボンの任意の代謝物が挙げられる。イソフラボン、及び様々な健康上の有益性のためのその使用は既知である。例えば、大豆は、心血管疾患のリスクを低下させる;乳癌及び前立腺癌のリスクを低下させる;閉経期のエストロゲン欠乏に伴う顔面紅潮を緩和する;閉経後女性における骨粗鬆症を遅延させる;血漿中のコレステロール、LDLコレステロール及びトリグリセリドの総量を低減する;閉経後女性における認知機能を維持する;高血圧の症状を改善する;及び体重減少を促進する、ことが判明している。
【0029】
[0029] 「L−カルニチン」という語は、N8,N8,N8−トリメチルリシンとγ−ブチロベタインとから生成されるγ−アミノ−β−ヒドロキシブチル酸の、トリメチルアンモニウム(ベタイン)誘導体を意味する。L−カルニチンは、脂肪酸の酸化を刺激するミトコンドリア膜のアシルキャリアーである。ビタミンBt又はビタミンB7と呼ばれることもある。
【0030】
[0030] 「去勢後」という語は、先天的に生じたか、自然の発達過程により生じたか、介入的手術により生じたかを問わず、動物が、生殖器官を欠き、或いは発達の不完全な生殖器官又は機能しない生殖器官を有することを意味する。
【0031】
[0031] 「経口投与」又は「経口で投与する」という語は、動物が食物又は他の組成物を経口摂取することを意味する。
【0032】
[0032] 「ペットフード」又は「ペットフード組成物」という語は、動物、好ましくはコンパニオン動物、による摂取が意図された組成物を意味する。
【0033】
[0033] 「単一パッケージ」という語は、キット構成成分が、1つ以上の容器内で、又は1つ以上の容器により物理的に関連付けられて、製造、流通、販売又は使用のための単位をなしているとみなされることを意味する。容器としては、バッグ、箱、ボトル、シュリンクラップパッケージ、ステープル、又は他の手段で固定された構成成分、或いはそれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。単一パッケージとは、製造、流通、販売又は使用のための単位とみなされるように物理的に関連付けられた、個々の食品組成物の容器であってもよい。
【0034】
[0034] 「不妊処置」という語は、雌動物の卵巣の除去を意味する。
【0035】
[0035] 「仮想パッケージ」という語は、使用者に他の構成成分の入手法を知らせる、1種以上の物理的又は仮想的なキット構成成分に関する説明書により、キット構成成分が関連付けられていること、例えば、1種の構成成分と、使用者に、ウェブサイトを訪れ、記録されたメッセージを読み、視覚的メッセージを閲覧し、又は世話人若しくはインストラクターに会って、このキットの使用法に関する指示を得るよう指示する説明書と、を含むバッグの形で関連付けられていることを意味する。
【0036】
[0036] 本明細書で表記される百分率は、特に断らない限り、乾燥時の組成物重量による。「乾燥時」という語は、組成物中の成分濃度を、組成物中のすべての水分を除去した後に測定することを意味する。
【0037】
[0037] 本明細書を通じて、数値範囲は、各値及びすべての値が当該範囲内にあることを説明するために用いる。当該範囲内にある任意の適切な値を、当該範囲の上限値又は下限値として選択することができる。
【0038】
[0038] 方法論、プロトコール及び試薬は様々であり、本発明は、本明細書に記載の特定のものに限定されない。さらに、本明細書で用いる用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明の適用範囲を限定することを意図するものではない。本明細書及び添付の特許請求の範囲において、単数形の「a」、「an」、「the」は、文脈上明らかに他の意味に解すべき場合でない限り、複数のものを含む。同様に、「comprise」、「comprises」、「comprising」等の文言は、排他的でなく包括的に解釈されるべきである。
【0039】
[0039] 特に断らない限り、本明細書で用いる技術用語、科学用語及び頭字語はすべて、本発明の分野における当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。本明細書に記載するのと同様又は同等な、いずれの組成物、方法、製品又は他の手段若しくは物質も、本発明の実施において使用することができるが、本明細書では、好ましい組成物、方法、製品又は他の手段若しくは物質について説明する。
【0040】
[0040] 本明細書で引用又は参照する、すべての特許、特許出願、刊行物及び他の参照文献は、法律が許容する範囲で、参照されることにより本明細書に組み込まれる。参照文献に関する考察は、当該参照文献の主張内容の要約を目的としたものにすぎない。このような特許、特許出願、刊行物、参照文献又はこれらの任意の一部が本発明の関連先行技術であることを自認するものではない。これらの特許、特許出願、刊行物及び他の参照文献の正確性及び適切性に異議を申し立てる権利は特に留保されている。
【0041】
発明:
[0041] 一態様において、本発明は、動物における骨成長の誘発又は骨損失の抑制に適した組成物を提供する。この組成物は、1種以上のイソフラボン又はその代謝物を、動物における骨成長の誘発又は骨損失の抑制に有効な量で含む。本発明は、イソフラボン及びその各種の代謝物が、動物における健常な骨成長及び骨発達の促進、並びに骨損失の抑制に有効であるという発見に基づく。本発明は、幼若な発育中の動物における健常な骨成長を促進し、成体動物における骨損失を低下させるのに有用である。上記組成物は、閉経後、アンドロポーズ後、性腺摘出後、不妊処置後又は去勢後の動物において、特に動物の骨格系が成長、成熟しつつある場合において、骨成長を誘発し、又は骨損失を抑制するために特に有効であることが判明している。
【0042】
[0042] イソフラボン又はその代謝物は、上記組成物中において、成分又は添加物として存在しうる。一実施形態において、イソフラボンは、大豆イソフラボンである。別の一実施形態において、イソフラボンは、ダイゼイン、6−O−マロニルダイゼイン、6−O−アセチルダイゼイン、ゲニステイン、6−O−マロニルゲニステイン、6−O−アセチルゲニステイン、グリシテイン、6−O−マロニルグリシテイン、6−O−アセチルグリシテイン、バイオチャニンA又はフォルモノネチン、又はその代謝物である。好ましい一実施形態において、イソフラボン代謝物は、ジヒドロダイゼイン又はエコールである。一実施形態において、上記組成物はさらに、L−カルニチン及び/又は共役リノール酸を含む。
【0043】
[0043] 一実施形態において、上記組成物はペットフード組成物である。そのような組成物は、動物に必要な食餌要求量の供給を目的とした食品、動物用間食(例えば、ビスケット)又は栄養補助食品を含む。この組成物は、乾燥組成物(例えば、キブル)、半湿潤組成物、湿潤組成物、又はこれらの任意の混合物であってもよい。別の一実施形態において、上記組成物は、肉汁、飲用水、飲料、ヨーグルト、粉末、顆粒、ペースト、懸濁物、咀嚼物、チップ、間食、スナック、ペレット、丸薬、カプセル、錠剤又は他の適切な送達形態の栄養補助食品である。栄養補助食品は、当該食品を動物に少量投与できるように、或いは動物への投与前に希釈できるように、高濃度のイソフラボン又はその代謝物を含むことができる。栄養補助食品は、動物に投与する前に水と混合することを必要とするものであってもよい。
【0044】
[0044] 上記組成物は、冷蔵又は冷凍してもよい。イソフラボン又はその代謝物を、組成物の他の成分と予め混合して必要な有効量を提供してもよいし、ペットフード組成物上に被覆してもよいし、或いは、動物に与える前に、例えば、粉末の散布又は混合を用いて組成物に添加してもよい。
【0045】
[0045] 一実施形態において、本発明の組成物は、イソフラボン又はその代謝物を、動物における骨成長を誘発するのに有効な量で含む。別の一実施形態において、組成物は、イソフラボン又はその代謝物を、動物における骨損失を抑制するのに有効な量で含む。これらの実施形態において、組成物は、約0.1%〜約100%のイソフラボン又はその代謝物を含むことが好ましく、約0.1%〜約50%のイソフラボン又はその代謝物を含むことが最も好ましい。食品組成物の場合、組成物は、約0.01%〜約50%を含むことが好ましく、約0.01%〜約30%を含むことが好ましい。様々な実施形態において、組成物は、当該組成物の約1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%、8.0%、8.5%、9.0%、9.5%、10.0%、10.5%、11.0%、11.5%、12.0%、12.5%、13.0%、13.5%、14.0%、14.5%、15.0%、15.5%、16.0%、16.5%、17.0%、17.5%、18.0%、18.5%、19.0%、19.5%、20.0%、20.5%、21.0%、21.5%、22.0%、22.5%、23.0%、23.5%、24.0%、24.5%、25.0%、25.5%、26.0%、26.5%、27.0%、27.5%、28.0%、28.5%、29.0%、29.5%、30.0%、40.0%、50.0%以上を含む。例えば、栄養補助食品は、典型的な組成物よりも数倍以上高濃度のイソフラボン又はその代謝物を含み、錠剤、カプセル、濃縮液又は他の類似の剤形の形で動物に投与しやすいように、或いは水での希釈、ペットフード上への噴霧又は散布、及び他の類似の投与形態により、投与前に希釈されるように処方してもよい。この補助食品は、100%のイソフラボン又はその代謝物を含んでもよいが、担体、賦形剤等とともに処方されることが多い。
【0046】
[0046] イソフラボン又はその代謝物の供給源は、合成又は天然の任意の適切な供給源でありうる。イソフラボンの好ましい供給源としては、イソフラボンを含有する任意の植物、植物性材料又は植物抽出物(例えば、マメ科植物、クローバー類、葛の根。これらに限定されない。)が挙げられる。イソフラボンの好ましいマメ科植物供給源としては、ヒヨコマメ、ヒラマメ、大豆、又はイソフラボンを含む他の種類の豆又はエンドウ豆が挙げられる。大豆粉、大豆胚芽粉等を使用してもよい。イソフラボンの好ましいクローバーの供給源としては、ムラサキツメクサ及びジモグリツメクサが挙げられる。或いは、イソフラボン又はその代謝物は、当技術分野に適した任意の手段により新規に合成してもよい。
【0047】
[0047] L−カルニチンは、動物体内のエネルギー産生において重要な役割を果たす天然化合物である。他の組織と比べ、脂肪酸を主要エネルギー源として用いる組織(骨格筋、心筋等)において、高濃度のL−カルニチンが見出される。L−カルニチンは、破骨細胞の分化を刺激することができ、骨損失の抑制において役割を果たすことができる。L−カルニチン源は、哺乳類、魚類、鳥類等から単離された組織を含む、任意の動物組織でありうる。L−カルニチンはまた、任意の哺乳類から単離した乳汁からも得られる。或いは、L−カルニチンは、当技術分野において適切な任意の手段により新規に合成してもよい。
【0048】
[0048] CLAは、骨のリモデリング及び成長において役割を果たす。さらに、CLAは、閉経後女性におけるBMDに有益であることが示されている。CLA源は、哺乳類、鳥類、魚類等から単離された組織を含む、任意の動物組織でありうる。CLAはまた、任意の哺乳類から単離した乳汁からも得られる。CLAは、植物又は植物油(ヒマワリ油等)からも得ることができる。或いは、CLAは、当技術分野において適切な任意の手段により新規に合成してもよい。CLAは、CLAの合成異性体又は合成アナログから抽出してもよい。上記組成物はさらに、単独で、又は本発明のイソフラボン又はその代謝物と一緒になって、動物における骨成長の誘発又は骨損失の抑制に有効である量の骨作用物質を含んでもよい。
【0049】
[0049] 様々な実施形態において、動物は、ヒト、又は閉経後、アンドロポーズ後、性腺摘出後、不妊処置後又は去勢後動物のようなコンパニオン動物である。他の実施形態において、動物は、骨発達が進行している幼若又は発育中の動物である。
【0050】
[0050] 上記組成物は、場合により、ミネラル、ビタミン、塩、調味料、着色料、防腐剤のような補助物質を含む。補充ミネラルの非限定的な例としては、カルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、鉄、塩化物、ホウ素、銅、亜鉛、マンガン、ヨウ素、セレンが挙げられる。補充ビタミンの非限定的な例としては、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKが挙げられる。追加の栄養補助食品は、例えば、ナイアシン、パントテン酸、イヌリン、葉酸、ビオチン、アミノ酸等を含んでもよい。
【0051】
[0051] 上記組成物は、場合により、全般的で健常な骨成長を促進又は維持し、又は骨損失を抑制する、1種以上の補助物質を含む。そのような物質としては、DT56a、アンドロステンジオン、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、ケイ素、CLA、オルトケイ酸が挙げられるが、それらに限定されない。
【0052】
[0052] 様々な実施形態において、ペットフード又はペット用間食の組成物は、約15%〜約50%の粗タンパク質を含む。粗タンパク質材料は、大豆粉、大豆タンパク質濃縮物、トウモロコシグルテン粉、小麦グルテン、綿実、落花生粉等の植物性タンパク質、又はカゼイン、アルブミン、食肉タンパク質等の動物性タンパク質を含んでもよい。本発明において有用な食肉タンパク質の非限定的な例としては、豚肉、仔羊肉、馬肉、鶏肉、魚肉、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0053】
[0053] 上記組成物はさらに、約5%〜約40%の脂肪を含んでもよい。組成物はさらに、炭水化物源を含んでもよい。上記組成物は、約15%〜約60%の炭水化物を含んでもよい。そのような炭水化物の非限定的な例としては、米、トウモロコシ、ミロ、モロコシ、アルファルファ、オオムギ、大豆、キャノーラ、エンバク、小麦、及びそれらの混合物が挙げられる。組成物は、場合により、乳製品副産物(乾燥乳清等)のような他の材料を含んでもよい。
【0054】
[0054] 上記組成物は、少なくとも1種の繊維源を含んでもよい。当業者に知られているように、各種の水溶性又は不水溶性の繊維を用いてもよい。繊維源としては、ビートパルプ(テンサイ由来)、アラビアゴム、タルハゴム、オオバコ、米ぬか、イナゴマメガム、シトラスパルプ、ペクチン、短鎖オリゴフルクトースに付加されるフルクトオリゴ糖、マンナンオリゴフルクトース、大豆繊維、アラビノガラクタン、ガラクトオリゴ糖、アラビノキシラン、又はそれらの混合物が挙げられる。或いは、繊維源は発酵性繊維であってもよい。発酵性繊維は、コンパニオン動物の免疫系に有益性をもたらすことが文献に記載されている。小腸内におけるプロバイオティック微生物の成長を促進するプレバイオティック組成物をもたらす、当業者に既知の発酵性繊維又は他の組成物を上記組成物に組み込んで、本発明が動物の免疫系にもたらす有益性を高める一助としてもよい。さらに、例えば、腸球菌(Enterococcus)種、乳酸菌(Lactobacillus)種、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)種、サッカロミセス(Saccharomyces)種等のプロバイオティック微生物を上記組成物に添加してもよい。
【0055】
[0055] 好ましい一実施形態において、上記組成物は、完全かつ栄養的にバランスのとれたペットフードである。本実施形態において、ペットフードは、ペットフードの処方及び製造の分野の当業者に理解されるように、ウェットフード、ドライフード、又は水分含量が中程度の食品であってもよい。「ウェットフード」とは、缶又はホイルバッグ詰めで販売されることが典型的で、水分含量が約70%〜約90%の範囲にあることが典型的なペットフードを表す。「ドライフード」とは、ウェットフードと同様の組成を有するが、水分含量が限定され、典型的には約5%〜約15%の範囲にあるため、例えば、小型のビスケット様キブルとして提示されるペットフードを表す。上記組成物及び栄養補助食品は、成体動物用、又は高齢動物若しくは幼若動物用に特別に処方してもよい。例えば、「子イヌ用食品」、「子ネコ用食品」、「老齢期」用処方物である。一般に、特別な処方物は、異なる発達段階又は年齢にある動物に適したエネルギー及び栄養所要量を含む。
【0056】
[0056] 本発明の特定の態様は、完全でバランスのとれた食品と併用することが望ましい。すなわち、本発明の特定の実施形態によるイソフラボン又はその代謝物は、高品質の市販食品と併用することが好ましい。本明細書において、「高品質の市販食品」とは、例えば、イヌについては下記の米国学術研究会議の提言で述べられ、また、米国飼料検査官協会の指針で述べられているが、主要栄養素の消化率として80%以上を実現するよう製造された食餌を指す。他の動物にも、同様の高栄養素基準が用いられる。
【0057】
[0057] 当業者は、所与の組成物に添加すべきイソフラボン又はその代謝物の適正量をどのように決定すべきかを理解するであろう。考慮に入れてもよいそのような因子には、組成物のタイプ(例えば、栄養補助食品に対するペットフード組成物)、種々の動物による特定のタイプの組成物の平均摂取量、及び組成物を調製する製造条件が含まれる。組成物に添加すべきイソフラボン又はその代謝物の濃度は、動物のエネルギー及び栄養所要量に基づいて計算することが好ましい。本発明の特定の態様では、イソフラボン又はその代謝物は、組成物の製造及び/又は加工中の任意の時点において添加することができる。添加は、ペットフード組成物又は栄養補助食品の処方の一部として、又はペットフード組成物又は栄養補助食品に添加されるコーティングとして行うことができるが、それらに限定されない。上記組成物は、当技術分野において適切な任意の方法により作製することができる。
【0058】
[0058] 別の一態様において、本発明は、動物における骨成長の誘発又は骨損失の抑制のための方法を提供する。この方法は、1種以上のイソフラボン又はその代謝物を、動物における骨成長の誘発又は骨損失の抑制に有効な量で動物に投与するステップを含む。様々な実施形態において、イソフラボンは、ダイゼイン、6−O−マロニルダイゼイン、6−O−アセチルダイゼイン、ゲニステイン、6−O−マロニルゲニステイン、6−O−アセチルゲニステイン、グリシテイン、6−O−マロニルグリシテイン、6−O−アセチルグリシテイン、バイオチャニンA又はフォルモノネチン、又はその代謝物である。一実施形態において、イソフラボン代謝物は、ジヒドロダイゼイン又はエコールである。一実施形態において、上記組成物は、さらに、L−カルニチン及び/又は共役リノール酸を含む。
【0059】
[0059] 様々な実施形態において、上記組成物は、本明細書に記載の、ヒト用食品組成物、ペットフード組成物又は栄養補助食品である。様々な実施形態において、イソフラボンは、ダイゼイン、6−O−マロニルダイゼイン、6−O−アセチルダイゼイン、ゲニステイン、6−O−マロニルゲニステイン、6−O−アセチルゲニステイン、グリシテイン、6−O−マロニルグリシテイン、6−O−アセチルグリシテイン、バイオチャニンA又はフォルモノネチン、又はその代謝物である。一実施形態において、イソフラボン代謝物は、ジヒドロダイゼイン又はエコールである。一実施形態において、この方法は、さらに、イソフラボン又はその代謝物との併用で、L−カルニチン及び/又は共役リノール酸を投与するステップを含む。別の一実施形態において、この方法は、さらに、イソフラボン又はその代謝物を、動物における骨成長の誘発又は骨損失の抑制に有効な量で、骨作用物質と併用して投与するステップを含む。
【0060】
[0060] 様々な実施形態において、動物は、ヒト又はコンパニオン動物(イヌ、ネコ等)である。特定の実施形態において、動物は、閉経後、アンドロポーズ後又は性腺摘出後の動物である。他の実施形態において、動物は、幼若又は発育中の動物である。
【0061】
[0061] イソフラボン又はその代謝物は、各種投与経路を用いて動物に投与される。そのような経路には、経口、経鼻、静脈内、筋肉内、胃内、経幽門、皮下、直腸が含まれるが、それらに限定されない。上記組成物は、経口投与することが好ましい。
【0062】
[0062] 投与は、必要又は所望に応じて、例えば、月に1回、週に1回、毎日、又は毎日複数回であってもよい。同様に、投与は、隔日、隔週、隔月、3日毎、3週間毎、3カ月毎、4日毎、4週間毎、4カ月毎、等であってもよい。投与は、1日当たり複数回であってもよい。通常の食餌必要量に対する補助食品として用いる場合、上記組成物は、動物に直接投与してもよいし、また、これとは別に、毎日の飼料又は食品とともに、或いは飼料又は食品に混ぜて投与してもよい。毎日の飼料又は食品として用いる場合、投与方法は当業者に周知である。
【0063】
[0063] 投与は、動物の食餌療法の一部としても実施しうる。例えば、食餌療法は、動物における骨成長を誘発するために有効な量で、或いは動物における骨損失を抑制するために有効な量で、1種以上のイソフラボン又はその代謝物を含む組成物を、動物に定期的に摂取させるステップを含んでもよい。定期的な摂取は、1日1回、又は1日当たり2、3、4回以上、或いは毎日でありうる。定期的摂取の目的は、動物に、本明細書で例示するイソフラボン又はその代謝物の好ましい毎日の用量を与えることである。
【0064】
[0064] イソフラボン及び/又はその代謝物の好ましい日用量の範囲は、1個体当たり約5mg/日〜約5000mg/日である。イソフラボン及び/又はその代謝物の毎日の用量は、1個体当たり約30mg/日〜約500mg/日であることが好ましく、1個体当たり約80mg/日〜約300mg/日であることがより好ましい。イソフラボン又はその代謝物の毎日の用量は、動物BW kg当たりのイソフラボン又はその代謝物のグラム数で測定しうる。イソフラボン又はその代謝物の毎日の用量は、対動物BW比約0.001g/kg〜約50g/kgの範囲でありうるが、より高用量又はより低用量を与えることができる。イソフラボン又はその代謝物の毎日の用量は、対動物BW比約0.001g/kg〜約25g/kgであることが好ましい。イソフラボン又はその代謝物の毎日の用量は、対動物BW比約0.001g/kg〜約10g/kgであることがより好ましい。イソフラボン又はその代謝物の毎日の用量は、対動物BW比約0.001g/kg〜約5g/kgであることがより好ましい。イソフラボン又はその代謝物の毎日の用量は、対動物BW比約0.001g/kg〜約1g/kgであることがより好ましい。イソフラボン又はその代謝物の毎日の用量は、対動物BW比約0.001g/kg〜約0.15g/kgであることがより好ましい。
【0065】
[0065] L−カルニチンの好ましい日用量の範囲は、1個体当たり約50mg/日〜約5000mg/日である。L−カルニチンの毎日の用量は、1個体当たり約80mg/日〜約500mg/日であることが好ましく、1個体当たり約100mg/日〜約300mg/日であることがより好ましい。L−カルニチンの毎日の用量は、動物BW kg当たりのL−カルニチングラム数で測定しうる。L−カルニチンの毎日の用量は、対動物BW比約0.001g/kg〜約50g/kgの範囲でありうるが、より高用量又はより低用量を与えることができる。L−カルニチンの毎日の用量は、対動物BW比約0.001g/kg〜約25g/kgであることが好ましい。L−カルニチンの毎日の用量は、対動物BW比約0.001g/kg〜約10g/kgであることがより好ましい。L−カルニチンの毎日の用量は、対動物BW比約0.001g/kg〜約5g/kgであることがより好ましい。L−カルニチンの毎日の用量は、対動物BW比約0.001g/kg〜約1g/kgであることがより好ましい。CLAの好ましい日用量の範囲は、1個体当たり約50mg/日〜約10,000mg/日である。CLAの毎日の用量は、1個体当たり約500mg/日〜約6000mg/日であることが好ましく、1個体当たり約1000mg/日〜約4000mg/日であることがより好ましい。
【0066】
[0066] CLAの毎日の用量は、動物BW kg当たりのCLAグラム数で測定しうる。CLAの毎日の用量は、対動物BW比約0.001g/kg〜約50g/kgの範囲でありうるが、より高用量又はより低用量を与えることができる。CLAの毎日の用量は、対動物BW比約0.001g/kg〜約25g/kgであることが好ましい。CLAの毎日の用量は、対動物BW比約0.001g/kg〜約10g/kgであることがより好ましい。CLAの毎日の用量は、対動物BW比約0.001g/kg〜約5g/kgであることがより好ましい。CLAの毎日の用量は、対動物BW比約0.001g/kg〜約1g/kgであることがより好ましい。
【0067】
[0067] 本発明の組成物を処方するとき、当業者は、上述の投与法及び動物の特性、例えば、動物の種、年齢、サイズ、体重、健康等に基づき、イソフラボン又はその代謝物、及び他の化合物又は成分の量を決定することができる。
【0068】
[0068] 本発明の方法により、食餌療法の一部としての投与を含む、イソフラボン又はその代謝物の投与は、動物の出産から成体寿命の全体にわたる期間に及びうる。
【0069】
[0069] さらなる一態様において、本発明は、1種以上のイソフラボン又はその代謝物を含む組成物を動物に投与するのに適したキットを提供する。このキットは、キット構成成分に応じて、単一パッケージ中の別々の容器内、又は仮想パッケージ中の別々の容器内に、1種以上のイソフラボン又はその代謝物と、(1)動物による摂取に適した1種以上の成分、(2)骨成長の誘発又は骨損失の抑制に適した1種以上の骨作用物質、(3)イソフラボン又はその代謝物と他のキット構成成分との混合法(特に、イソフラボン又はその代謝物を動物に投与するのに有用な食品組成物を生じるような混合法)に関する説明書、及び(4)イソフラボン又はその代謝物及び本発明の他の構成成分の使用法(特に、動物における骨成長の誘発又は骨損失の抑制によって動物に利益を生じるような使用法)に関する説明書、の少なくとも1つと、を含む。
【0070】
[0070] このキットが仮想パッケージを含む場合、キットは、1種以上の物理的なキット構成成分と組み合わされた仮想環境内の説明書に限定される。このキットは、イソフラボン又はその代謝物及び他の構成成分を、動物における骨成長の誘発又は骨損失の抑制に有効な量で含む。イソフラボン又はその代謝物及び他の適切なキット構成成分(例えば、食品組成物)は、動物による摂取直前に混合するのが典型的である。このキットは、キット構成成分を種々の組合せ及び/又は混合形態で含むことができる。一実施形態において、キットは、1種以上のイソフラボン又はその代謝物、及び動物による摂取のための食品容器を含むパケットを含む。このキットは、イソフラボン又はその代謝物と成分とを混合するための用具、又は混合物を入れるための用具、例えばフードボールのような追加品目を含んでもよい。別の一実施形態においては、イソフラボン又はその代謝物は、動物において良好な健康を促進する追加栄養補助食品(ビタミン、ミネラル等)と混合される。
【0071】
[0071] 上記説明書は、利用者、医師、ペット飼い主、獣医、食品供給者等に対し、イソフラボン又はその代謝物を用いて、動物において骨成長を誘発し、又は骨損失を抑制することができることを指示及び/又は告知することができる。この説明書は、使用者に、イソフラボン又はその代謝物を、動物の食物又は水に付加又は混合する方法を指示してもよい。
【0072】
[0072] 別の一態様において、本発明は、(1)イソフラボン又はその代謝物を用いて、動物において骨成長を誘発し、又は骨損失を抑制すること、(2)イソフラボン又はその代謝物を本発明の他の構成成分(食品組成物)と混合すること、(3)イソフラボン又はその代謝物を単独で、又は本発明の他の構成要素と共に動物に投与すること、及び(4)本発明のキットを用いてイソフラボン又はその代謝物を動物に投与し、特に、動物において骨成長を誘発し、又は骨損失を抑制すること、の1つ又は複数に関する情報又は指示を伝達するための手段を提供する。この手段は、当該情報又は指示を含む、文書、デジタル記憶媒体、光学的記憶媒体、音声表示又は画像表示を備える。特定の実施形態において、この伝達手段は、当該情報又は指示を含む、表示されるウェブサイト、画像表示キオスク、冊子、製品ラベル、添付文書、広告、ハンドアウト、公示、オーディオテープ、ビデオテープ、DVD、CD−ROM、コンピュータ読み取り可能なチップ、コンピュータ読み取り可能なカード、コンピュータ読み取り可能なディスク、コンピュータメモリ、又はそれらの組合せである。有用な情報は、(1)イソフラボン若しくはその代謝物及び/又は他の構成成分を併用及び投与するための方法及び技術、及び(2)動物又はその介護者が本発明及びその使用について疑問を持つ場合に用いるための連絡先情報、の1つ又は複数を含む。有用な指示は、混合のための量、並びに投与量及び投与回数を含む。この伝達手段は、本発明を用いることの有益性について指導し、本発明を動物に投与するために承認された方法を伝達するのに有用である。
【0073】
[0073] 別の一態様において、本発明は、イソフラボン又はその代謝物を含む食品組成物の製造法を提供する。この方法は、動物による摂取に適した1種以上の成分と、イソフラボン又はその代謝物と、を混合するステップ、又はイソフラボン又はその代謝物をこの食品組成物に添加するステップ、を含む。さらに別の一態様において、本発明は、本方法を用いて製造された食品組成物を提供する。
【0074】
[0074] さらに別の一態様において、本発明は、薬剤を調製するための、イソフラボン又はその代謝物の使用を提供する。別の一実施形態において、本発明は、動物における骨成長の誘発又は骨損失の抑制用の薬剤を調製するための、そのようなイソフラボン又はその代謝物の使用を提供する。一般に、薬剤は、化合物又は組成物を、動物への投与に好適な薬剤を製造、処方するのに有用であることが当業者に知られている、賦形剤、緩衝剤、結合剤、可塑剤、着色剤、希釈剤、圧縮剤、潤滑剤、芳香剤、保湿剤、その他の成分と混合することにより調製する。
【実施例】
【0075】
[0075] 本発明は、以下の実施例によりさらに例示できるが、これらの実施例は、例示の目的で含まれるにすぎず、特に断らない限り、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0076】
実施例1. 性腺摘出後の正常なイヌにおける骨成長に対する食餌用大豆イソフラボンの効果:
[0076] イヌと食餌:正常、非肥満で、新規に性腺摘出した、4〜5カ月齢のラブラドールレトリーバー犬30匹を、試験に用いた。仔犬を同腹子に基づき以下の3群に無作為化し、骨格筋の成長及び健康に対する遺伝的影響を最小化した。第1群は、新規に性腺摘出した雌雄のラブラドールレトリーバー犬10匹からなり、これには、29〜30%のタンパク質及び20%の脂肪を含む、バランスの良い仔犬用食餌(対照食餌)を与えた。第2群は、新規に性腺摘出した雌雄のラブラドールレトリーバー犬10匹からなり、これには、対照食餌に10%の大豆胚芽粉(SGM)を補充して与えた。第3群は、新規に性腺摘出した雌雄のラブラドールレトリーバー犬10匹からなり、これには、対照食餌に10%のSGM、100ppmのL−カルニチン、及び1.5%のCLAを補充して与えた。SGMは、以下の大豆イソフラボンを含む。17%のゲニステイン、52%のダイゼイン、及び31%のグリシテイン。食物摂取を調整することにより、仔犬すべてに食事を与え、ボディコンディションスコア5を維持した。試験期間は、70週間であった。
【0077】
[0077] イヌすべてに、試験前のMER測定を行った。試験前、及び試験開始後から試験終了までの毎週、各動物のBWを測定した。試験前、及び試験開始後から試験終了までの隔月、各動物について以下の測定を行った。体脂肪についてのDEXA、除脂肪体重、骨化学反応、拡張甲状腺プロファイル、全血球数、BMC、腰椎骨ミネラル含量、腰椎骨ミネラル密度。
【0078】
[0078] 70週間の成長試験後、3群間で、BW、除脂肪体重又は体脂肪に差は認められなかった。血液化学反応、拡張甲状腺プロファイル及び全血球数において測定したすべてのパラメータも、正常範囲内にあると判定された。骨格成長に関する結果を、表1〜4に示す。BMC及びBMDは、各試験群における各仔犬の第1〜第7腰椎において評価した。
【0079】
[0079] 表1〜4に結果を示す。全般的に、この表は、BMC及びBMDに対するイソフラボンの効果を示す。仔犬には、29〜30%のタンパク質と20%の脂肪とを含む対照食餌(食餌1)、イソフラボン食餌(食餌2)(対照食餌に10%のSGMを補充)、又はカクテル食餌(食餌3)(対照食餌に10%のSGM、100ppmのL−カルニチン、及び1.5%のCLAを補充)を与えた。この表において、食餌1=対照、食餌2=イソフラボン、食餌3=イソフラボン、CLA及びL−カルニチンである。
【0080】
[0080] この表を参照すると、表1は、70週間の成長試験中において、性腺を摘出した発育中の雌雄の仔犬(4カ月齢)における第1〜第4腰椎(lumbar spines 1−4)のBMCに対する食餌用大豆イソフラボンの効果を示す。食物摂取を調整することにより、仔犬に食事を与え、ボディコンディションスコア5を維持した。結果を参照すると、70週間の試験の過程にわたって、対照イヌのBMCも上昇したが、調べたほとんどすべての時点、及び試験終了時において、イソフラボン又はイソフラボン含有カクテル食餌を摂取する仔犬におけるBMCの方が、対照食餌を摂取する仔犬におけるBMCよりも高値であることが分かった。以上のデータは、既存のバランスの良い、高品質の仔犬用食餌が、性腺を摘出した発育中の雌雄の仔犬におけるBMCの最適な上昇を促進できなかったことを明確に示す。
【0081】
[0081] 表2は、70週間の試験期間中における、性腺を摘出した発育中の雌雄の仔犬(4カ月齢)における第1〜第4腰椎(lumbar spines 1−4)のBMD変化を示す。結果を参照すると、70週間の試験の過程にわたって、対照イヌの第1〜第4腰椎のBMDも上昇したが、イソフラボン又はイソフラボン含有カクテル食餌を摂取するイヌの方が、対照イヌよりも高値のBMDを示した。これらのデータは、既存のバランスの良い、高品質の仔犬用食餌が、性腺を摘出した発育中の雌雄の仔犬におけるBMDの最適な上昇を促進できなかったことを示す。
【0082】
[0082] 表3は、70週間の成長試験中において、性腺を摘出した発育中の雌雄の仔犬(4カ月齢)における第4〜第7腰椎(lumbar spines 4−7)のBMCに対する食餌用の大豆イソフラボンの効果を示す。結果を参照すると、70週間の試験の過程にわたって、対照イヌのBMCも上昇したが、試験終了時において、イソフラボン又はイソフラボン含有カクテル食餌を摂取する仔犬におけるBMCの方が、対照食餌を摂取する仔犬におけるBMCよりも高値であることが分かった。このカクテル食餌を与えたイヌとイソフラボン食餌を与えたイヌとの間でBMCが全般的に同一である、第1〜第4腰椎において観察される結果と対照的に、第4〜第7腰椎において観察される結果は、概して、カクテル食餌を与えたイヌの方が、イソフラボン食餌を与えたイヌよりもBMCが高値であったことを示す。
【0083】
[0083] 表4は、70週間の試験期間中における、性腺を摘出した発育中の雌雄の仔犬(4カ月齢)における第4〜第7腰椎(lumbar spines 4−7)のBMD変化を示す。結果を参照すると、70週間の試験の過程にわたって、対照イヌの第4〜第7腰椎のBMDも上昇したが、イヌの骨格系が成熟に達する試験終了時において、イソフラボン又はイソフラボン含有カクテル食餌を摂取するイヌの方が、対照イヌよりも高値のBMDを示した。これらのデータは、既存のバランスの良い、高品質の仔犬用食餌が、性腺摘出後に失われたエストロゲンの成長促進効果の喪失を補完できなかったことを示す。結果が示す通り、骨格系が成熟に達するときに、対照仔犬は、最適となるBMC及びBMDのピーク値に達しなかった。逆に、イソフラボン及びイソフラボン含有カクテルの方が、性腺を摘出した発育中の仔犬において、より良好な骨成長(より高値のBMC及びBMD)を促進するのに有効である。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
【表3】

【0087】
【表4】

【0088】
[0084] 本明細書において、本発明の典型的な好ましい実施形態を開示し、特定の用語を用いているが、それらは限定のためではなく、一般的かつ説明的な意味で用いているにすぎない。本発明の範囲は、特許請求の範囲で示されている。上記の教示に照らせば、本発明の多数の改変及び変形が可能であることは明らかである。したがって、添付の特許請求の範囲で、具体的に説明したのとは別の形で本発明を実施することができることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上のイソフラボン又はその代謝物を、動物における骨成長の誘発又は骨損失の抑制に有効な量で含む組成物。
【請求項2】
ヒト用食品組成物、ペットフード組成物又は栄養補助食品である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
約0.1%〜約50%のイソフラボン又はその代謝物を含有する、請求項2に記載の食品組成物。
【請求項4】
イソフラボンが、ダイゼイン、6−O−マロニルダイゼイン、6−O−アセチルダイゼイン、ゲニステイン、6−O−マロニルゲニステイン、6−O−アセチルゲニステイン、グリシテイン、6−O−マロニルグリシテイン、6−O−アセチルグリシテイン、バイオチャニンA又はフォルモノネチンの少なくとも1種を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
イソフラボン又はその代謝物が大豆イソフラボン又はその代謝物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
大豆イソフラボンの代謝物がエコールである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記動物がイヌ又はネコである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記動物が、閉経後、アンドロポーズ後、性腺摘出後、不妊処置後又は去勢後の動物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
DT56a、アンドロステンジオン、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、ケイ素、L−カルニチン、共役リノール酸及びオルトケイ酸の少なくとも1種をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
動物における骨成長の誘発又は骨損失の抑制のための方法であって、
1種以上のイソフラボン又はその代謝物を、動物における骨成長の誘発又は骨損失の抑制に有効な量で含む組成物、を動物に投与するステップを含む方法。
【請求項11】
前記組成物が、ヒト用食品組成物、ペットフード組成物又は栄養補助食品である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
食品組成物が、約0.1%〜約50%のイソフラボン又はその代謝物を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
イソフラボンが、ダイゼイン、6−O−マロニルダイゼイン、6−O−アセチルダイゼイン、ゲニステイン、6−O−マロニルゲニステイン、6−O−アセチルゲニステイン、グリシテイン、6−O−マロニルグリシテイン、6−O−アセチルグリシテイン、バイオチャニンA又はフォルモノネチンの少なくとも1種を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
イソフラボンが大豆イソフラボン又はその代謝物である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
大豆イソフラボンの代謝物がエコールである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記動物が、閉経後、アンドロポーズ後、性腺摘出後、不妊処置後又は去勢後の動物である、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物が動物に毎日投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物が、DT56a、アンドロステンジオン、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、ケイ素、L−カルニチン、共役リノール酸及びオルトケイ酸の少なくとも1種をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
イソフラボン又はその代謝物が、1種以上の骨作用物質と併用して投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記動物がイヌ又はネコである、請求項10に記載の方法。
【請求項21】
1種以上のイソフラボン又はその代謝物を含む組成物を動物に投与するのに適したキットであって、
キット構成成分に応じて、単一パッケージ中の別々の容器内、又は仮想パッケージ中の別々の容器内に、1種以上のイソフラボン又はその代謝物と、(1)動物による摂取に適した1種以上の成分、(2)骨成長の誘発又は骨損失の抑制に適した1種以上の骨作用物質、(3)イソフラボン又はその代謝物と他のキット構成成分との混合法に関する説明書、及び(4)イソフラボン又はその代謝物及び本発明の他の構成成分の使用法に関する説明書、の少なくとも1つと、を含むキット。
【請求項22】
(1)イソフラボン又はその代謝物を用いて、動物において骨成長を誘発し、又は骨損失を抑制すること、(2)イソフラボン又はその代謝物を本発明の他の構成成分と混合すること、(3)イソフラボン又はその代謝物を単独で、又は本発明の他の構成要素とともに動物に投与すること、及び(4)本発明のキットを用いてイソフラボン又はその代謝物を動物に投与すること、の1つ又は複数に関する情報又は指示を伝達するための手段であって、
前記情報又は指示を含む、文書、デジタル記憶媒体、光学的記憶媒体、音声表示又は画像表示、を備える手段。
【請求項23】
表示されるウェブサイト、画像表示キオスク、冊子、製品ラベル、添付文書、広告、ハンドアウト、公示、オーディオテープ、ビデオテープ、DVD、CD−ROM、コンピュータ読み取り可能なチップ、コンピュータ読み取り可能なカード、コンピュータ読み取り可能なディスク、コンピュータメモリ、又はそれらの組合せ、からなる群より選択される、請求項21に記載の手段。
【請求項24】
イソフラボン又はその代謝物を含有する食品組成物を製造するための方法であって、
動物による摂取に適した1種以上の成分と、イソフラボン又はその代謝物と、を混合するステップ、又はイソフラボン又はその代謝物を食品組成物に添加するステップ、を含む方法。
【請求項25】
動物における骨成長の誘発又は骨損失の抑制用の薬剤を調製するための、イソフラボン又はその代謝物の使用。

【公表番号】特表2009−533319(P2009−533319A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557305(P2008−557305)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/004747
【国際公開番号】WO2007/100671
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】