説明

骨粉砕装置及び散骨方法

【課題】
遺骨を十分な衛生状態のもとで粉砕する骨粉砕装置を提供する
【解決手段】
骨粉砕装置は、骨を殺菌・乾燥させるために加熱する加熱手段と、加熱手段により加熱された骨を破砕する破砕手段と、破砕手段により破砕された骨をさらに細かく粉状に粉砕する粉砕手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人骨や動物の遺骨などを粉状に粉砕する骨粉砕装置及びそれを用いて粉砕された骨を散骨する散骨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、故人の霊を弔うために、火葬により処理された遺骨を骨壺に納め、骨壺は墓地や納骨堂に保存され、遺族により供養されている。
【0003】
一方で、近年は、「家」制度の崩壊、核家族化、少子化などの影響により家系が絶えたり、また、家系を継ぐという意識の薄れから、墓の維持が困難な社会情勢となりつつある。さらに、大都市圏では、地価の高騰により、墓を建立したくとも墓を建立することが経済的に困難なものとなっている現実もある。
【0004】
さらに、死生観の多様化から、火葬処理された骨を埋葬せずに、故人にゆかりのある場所(海、山など)に遺灰を撒く散骨を希望する人々が増加してきている。散骨する場合は、遺骨を人骨と判断できない程度の大きさ(2〜3mm以下の粉末、好ましくは1mm以下)に砕かなければならず、例えば、下記特許文献1及び2は、散骨用に遺骨を粉砕する骨粉砕装置について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−040684号公報
【特許文献2】特開2006−206791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
遺骨を散骨用に粉砕する場合、火葬直後の遺骨であれば、衛生上の問題はない。しかしながら、一旦墓地に埋葬された遺骨をその後遺族の事情等によって散骨する事例も見られる。墓地のような湿気を帯びた地下の暗室に長期間埋葬されていた遺骨を取り出して散骨するような場合、遺骨にカビが付着していたり、細菌が繁殖しているなど遺骨の衛生状態が悪化している可能性がある。そのような状態で粉末化した遺骨を散骨すると、カビや細菌が飛散することで人体に健康被害を与えたり、散骨場所の環境悪化を招くおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、遺骨を十分な衛生状態のもとで粉砕する骨粉砕装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の骨粉砕装置は、骨を加熱する加熱手段と、加熱手段により加熱された骨を破砕する破砕手段と、破砕手段により破砕された骨をより細かく粉状に粉砕する粉砕手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、加熱手段は加熱された熱風を骨に供給し、破砕手段は加熱手段により加熱された骨を、粉砕手段の投入口を通過できる程度以下の大きさに破砕する。
【0010】
例えば、上記本発明の骨粉砕装置では、破砕手段は加熱手段の下部に設けられ、粉砕手段は破砕手段の下部に設けられ、破砕手段を動作させない状態で破砕手段上に載置された骨を上側から加熱手段により加熱した後、破砕手段を動作させて骨を破砕し、破砕手段により破砕された骨を前記粉砕手段に落下させて粉砕する構成である。
【0011】
または、上記本発明の骨粉砕装置は、破砕手段が加熱手段の下部に設けられ、加熱手段により加熱された骨が破砕手段に落下して破砕され、粉砕手段が破砕手段の下部に設けられ、破砕手段により破砕された骨が粉砕手段に落下して粉砕される構成である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の骨粉砕装置によれば、粉砕される遺骨を加熱により殺菌・乾燥することができ、衛生的な散骨を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態における骨粉砕装置の構成例を示す図(正面図)である。
【図2】本発明の実施の形態における骨粉砕装置の構成例を示す図(側面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0015】
図1及び図2は、本発明の実施の形態における骨粉砕装置の構成例を示す図であり、図1は骨粉砕装置の正面図、図2は骨粉砕装置の側面図を示す。
【0016】
骨粉砕装置は、キャスター10が付いた箱体12で覆われている。箱体12は、アルミニウムやステンレスなどの金属、木製又はプラスチック樹脂などさまざまな材質で形成可能であり、箱体12の外面には、葬儀に適した装飾が施されてもよい。箱体12の上面には、遺骨を投入するための開閉可能は開口部14が設けられる。骨粉砕装置は、開口部14から投入された遺骨を収容する受け皿部16と、受け皿部16の遺骨を殺菌のために加熱する加熱部18と、圧縮空気を生成するエアコンプレッサ20とを備える。
【0017】
加熱部18は、例えば加熱された空気(熱風)を送り出すヒーターガンであり、エアコンプレッサ20により生成された圧縮空気をヒータ(例えば800W程度)により加熱し、先端部から受け皿部16上の遺骨に向けて放出する。受け皿部16上の遺骨は、加熱により十分に殺菌・乾燥される。加熱温度は、例えば400℃程度である。加熱時間は、遺骨の量や保存状態等に応じて適宜決定される。オペレータによる操作パネル22の操作により加熱時間が設定される。熱風を骨にあてることにより、単にヒーターで加熱する場合よりも、殺菌・乾燥のための加熱時間を短縮することができる。
【0018】
操作パネル22は、制御部40に対して指示信号を送る。制御部40は、操作パネル22から入力される各種指示信号に従って、骨粉砕装置の各部の動作を制御し、好ましくはコンピュータによる制御を実行する。
【0019】
受け皿部16の下部には、破砕部24が設けられている。破砕部24は、2つの破砕回転刃24aと24bが互いに噛み合うように形成され、ギアモータ26により回転駆動される。受け皿部16の底面は抜けており、破砕回転刃24aと24bが実質的に受け皿部16の底部を形成する。すなわち、受け皿部16の底部を破砕回転刃14aと24bが兼ねる構成となるので、受け皿部16上の骨は、破砕部14に載置された骨と実質的に同義となる。受け皿部16に投入された遺骨は、破砕回転刃24aと24b上で加熱・乾燥される。本構成により、装置全体の高さを抑えることができ、装置の小型化に寄与する。加熱部18による加熱中は、破砕回転刃24aと24bは回転させない。加熱時間はタイマーセットされ、タイマー時間が満了すると、破砕回転刃24aと4bとを回転させることで、遺骨は破砕される。
【0020】
本実施の形態例では、受け皿部16の底部を破砕回転刃14aと24bが兼ねる構成例を示したが、この構成に限られない。例えば、受け皿部16は開閉可能に構成された底部を備え、加熱部16により所定時間加熱・殺菌された後、受け皿部16の底部を開くことで、殺菌された遺骨は破砕部24の破砕回転刃24a、24b上に落下するようにしてもよい。加熱時間はタイマーセットされ、タイマー時間が満了すると、受け皿部16の底面が例えば下向きに観音開きのように開き、遺骨が破砕部24に落ちる。
【0021】
破砕回転刃24a、24bは、遺骨を破砕回転刃の噛み合わせ部分に導くように互いに反対方向に回転し(矢印参照)、遺骨を噛み合わせ部分で破砕する。破砕部24により、遺骨は一辺が例えば15mm程度以下になるように砕かれる。破砕部24では、その下に設けられる粉砕部30の投入口を通過できる程度の大きさに遺骨を砕けばよい。
【0022】
破砕部24により破砕された遺骨は、回転刃24a、24bの噛み合わせ部分から落下し、それを受け取る角錐状の集積部28を介して粉砕部30の投入口に導かれる。
【0023】
粉砕部30は、破砕部24により破砕された遺骨を粉状に粉砕する。粉砕部30は、さまざまな種類の既知の粉砕機を採用することができるが、好ましくは、回転打撃部材を有する衝撃式粉砕機(いわゆるハンマークラッシャー)である。衝撃式粉砕機は、例えば、外周に打撃子(ハンマー)が取り付けられたロータ(回転子)を円筒状の粉砕室内で高速回転させて、粉砕室内に投入された被粉砕物(本実施の形態では遺骨)をハンマーの打撃と粉砕室の内壁への衝突などの衝撃力による粉砕動作で粉砕するように形成されている。
【0024】
破砕部30内の排出口への通路には、メッシュスクリーンが配置され、メッシュスクリーンの網目を通過したものが粉末として排出・回収される。メッシュスクリーンの網目の大きさを調整することにより粉末の粒径を調整することができる。遺骨に湿気が残っていると、目詰まりを起こし可能性があるが、粉砕前に加熱部18により十分乾燥させることで、目詰まりを防止できる。
【0025】
本実施の形態例では、粉砕部30として、三庄インダストリー株式会社製のハンマークラッシャー(形式NH−34)が用いられる。骨粉砕装置を卓上型程度にまで小型化できる。当該ハンマークラッシャーを用いる場合、箱体12の寸法は、高さ1200mm×幅600mm×奥行き680mm程度まで小型化でき、省スペースに寄与する。
【0026】
粉砕部30の下側の排出口32には、捕集袋(図示せず)が取り付けられ、下側の排出口32から排出される粉状の遺骨は捕集袋により回収される。なお、上側の排出口は空気抜き口であるが、下側の排出口32と同様に、捕集袋が取り付けられる。
【0027】
箱体12の側面には、図示されない扉又は引き出しが設けられ、捕集袋に回収された粉末状の遺骨がそこから取り出される。そして、本実施の形態の骨粉砕装置を用いて粉砕された骨が散骨される。
【0028】
このようにして、本実施の形態例における骨粉砕装置は、散骨に適するように、遺骨を粉末状に粉砕することができる。遺骨は十分に加熱、殺菌されているため、散骨されても、人体への健康被害、環境悪化の懸念はない。また、遺骨は散骨されるとともに、納骨堂や自宅での供養のために一部を専用の骨壺に納め、保存されてもよい。遺骨を粉末状にすることで、遺骨をより小さな容積の壺(容器)に納めることができ、保存場所の省スペース化を図ることができる。
【0029】
本実施の形態の骨粉砕装置は、上述したように、上下方向に加熱部16、破砕部24及び粉砕部30が設けられる3段縦型構造となっており、各部で処理された遺骨を順次下方向に落下させながら、次の処理を行う構造であるので、各部で処理された遺骨を自動的に次の処理に送ることができ、簡易且つ卓上型程度の超小型化された構成とすることができる。
【0030】
なお、本実施の形態の骨粉砕装置は、人骨に限らず、ペットなどの動物の骨にも適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
10:キャスター、12:箱体、14:開口部、16:受け皿部、18:加熱部、20:エアコンプレッサ、22:操作パネル、24:破砕部、24a及び24b:破砕回転刃、26:ギアモータ、28:集積部、30:粉砕部、32:排出口、40:制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段により加熱された骨を破砕する破砕手段と、
前記破砕手段により破砕された骨をさらに細かく粉状に粉砕する粉砕手段とを備えることを特徴とする骨粉砕装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記加熱手段は、加熱された熱風を骨に供給し、
前記破砕手段は、前記加熱手段により加熱された骨を、前記粉砕手段の投入口を通過できる程度以下の大きさに破砕することを特徴とする骨粉砕装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記破砕手段は前記加熱手段の下部に設けられ、前記粉砕手段は前記破砕手段の下部に設けられ、
前記破砕手段を動作させない状態で前記破砕手段上に載置された骨を上側から前記加熱手段により加熱した後、前記破砕手段を動作させて骨を破砕し、前記破砕手段により破砕された骨を前記粉砕手段に落下させて粉砕することを特徴とする骨粉砕装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の骨粉砕装置により粉砕された骨を散骨する散骨方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−269257(P2010−269257A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123705(P2009−123705)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(509033778)
【Fターム(参考)】