説明

骨髄性およびリンパ様免疫細胞への薬物の送達のための標的化脂質薬物製剤

被験体に脂質薬物複合体を投与することにより、活性剤を、骨髄系前駆細胞、樹状細胞、単球、マクロファージおよびTリンパ球からなる群より選択される、免疫細胞、または器官系もしくは解剖学的部分に限定される他の細胞型に優先的に送達する方法。該脂質薬物複合体は、薬物、感染因子に感染しているか、または感染し易い免疫細胞の表面上のマーカーに特異的に結合する標的化リガンドを有する外側表面などの活性剤から成り立つ。感染因子に感染しているか、または感染し易い、他の細胞型は、悪性腫瘍、または自己免疫疾患もしくは慢性の炎症性疾患の発生、維持、もしくは増悪細胞に寄与する免疫機構の一部に属し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1.発明の分野)
本発明は、医術に関し、特に、標的化されたリポソームによる薬物送達に関する。
【背景技術】
【0002】
(2.関連技術の記載)
骨髄性樹状細胞(My-DC)は、プロフェッショナル抗原提示細胞の最も強力な群に属し、一次細胞性および体液性免疫応答を誘導する特有の能力を有する(Banchereau J, Paczesny S, Blanco P, Bennett L, Pascual V, Fay J, Palucka AK, Dendritic cells: controllers of the immune system and a new promise for immunotherapy, Ann N Y Acad Sci 987: 180-7 [2003]に概説)。また、リンパ様器官および構造内のこれらの細胞は、他の主要な保護(sanctuary)集団、すなわち、濾胞樹状細胞、マクロファージ、休止/記憶T細胞および中枢神経系内の細胞とともに、HIV貯蔵庫の重要な成分である(例えば、Schrager LK, D'Souza MP, Cellular and anatomical reservoirs of HIV-1 in patients receiving potent antiretroviral combination therapy, JAMA 280: 67-71 [1998])貯蔵庫細胞の重要な特徴は、これが、HIVによって障害(compromise)され、利用されるが、死滅せず、したがって、感染したヒトの他の免疫および非免疫細胞の連続的感染がもたらされることである(Gieseler RK, Marquitan G, Scolaro MJ, Cohen MD, Lessons from history: dysfunctional APCs, inherent dangers of STI and an important goal, as yet unmet, Trends Immunol. 2003; 24: 11)。
【0003】
My-DCのインビトロ作製により、My-DCの包括的な表現型の特徴付けおよび機能の特徴付けならびにこれらの細胞の個体発生論の研究が可能になり、これらの細胞は、初期の共通の骨髄性前駆体であるマクロファージを共有することがわかった(Gieseler RK, Rober RA, Kuhn R, Weber K, Osborn M, Peters JH, Dendritic accessory cells derived from rat bone marrow precursors under chemically defined conditions in vitro belong to the myeloid lineage, Eur J Cell Biol 1991; 54: 171-81; Peters JH, Xu H, Ruppert J, Ostermeier D, Friedrichs D, Gieseler RK, Signals required for differentiating dendritic cells from human monocytes in vitro, Adv Exp Med Biol 1993; 329: 275-80; Peters JH, Gieseler R, Thiele B, Steinbach F, Dendritic cells: from ontogenetic orphans to myelomonocytic descendants, Immunol Today 1996; 17: 273-8; Gieseler R, Heise D, Soruri A, Schwartz P, Peters JH, In-vitro differentiation of mature dendritic cells from human blood monocytes, Dev Immunol 1998; 6: 25-39)。
【0004】
2000年におけるMy-DC特異的細胞間接着分子3-捕捉性非インテグリン(grabbing nonintegrin)(DC-SIGN)の発見は、免疫学的研究において画期的なことであった。数種類のC型レクチンの1つであるDC-SIGNは、特徴的で重要なDC分子であり、かつHIVの捕捉および移動性輸送において本質的な役割を果たす。My-DCによって生成される活性ウイルスのT細胞感染に加え、HIVとDC-SIGNの相互作用により、結果的に、My-DCがイントランス共働性(cooperating)T-ヘルパー細胞に感染するのが可能になる。また、DC-SIGNのバリアントは、マクロファージ(別の主要なHIV-1貯蔵庫)により発現されるとともに、いくつかの粘膜細胞型および胎盤細胞型によっても発現される(Soilleux, EJ ら Constitutive and induced expression of DC-SIGN on dendritic cell and macrophage subpopulations in situ and in vitro, J Leukoc Biol 71: 445-57 [2002]; Geijtenbeek, TBH ら, Marginal zone macrophages express a murine homologue of DC-SIGN that captures blood-borne antigens in vivo, Blood 100: 2908-16 [2002]; Soilleux EJ ら, Placental expression of DC-SIGN may mediate intrauterine vertical transmission of HIV, J Pathol. 195 (5): 586-92 [2001]; Soilleux EJ, Coleman N, Transplacental transmission of HIV: a potential role for HIV binding lectins, Int J Biochem Cell Biol.; 35 (3): 283-7 [2003]; Kammerer U ら , Unique appearance of proliferating antigen-presenting cells expressing DC-SIGN (CD209) in the decidua of early human pregnancy, Am J Pathol. 162 (3): 887-96 [2003])。したがって、これらのC型レクチンは、ある個体内でのHIV水平感染および垂直感染において主要な役割を果たすものとみなされている(Geijtenbeek TB, van Kooyk Y, DC-SIGN. a novel HIV receptor on DCs that mediates HIV-I transmission, Curr Top Microbiol Immunol 276: 31-54 [2003])。インビボでは、DC-SIGNは、骨髄性DCによって発現されるだけでなく、マクロファージの亜集団(これは、HIV貯蔵庫細胞の別の主要な群)によっても発現される(Soilleux EJ ら, Constitutive and induced expression of DC-SIGN on dendritic cell and macrophage subpopulations in situ and in vitro, J Leukoc Biol. 71 (3): 445-57 [2002])。
【0005】
DC-SIGNは、エンドサイトーシス性(endocytic)接着レセプターであることが知られている。
【0006】
第1に、DC-SIGN結合粒子は、MHCクラスII抗原プロセッシングおよび提示経路内にシャトル(shuttle)され、T細胞免疫(任意のウイルス感染の場合に望ましい)およびB細胞免疫(Fcレセプター媒介性食作用などの抗体の生成に副次的な機構によって、または細胞傷害性抗体、補体媒介性溶解の場合に、ウイルスのクリアランスで裏づけられる)を生じる機構に利用される(例えば、Schjetne KW ら, Mouse κ-specific T cell clone indicates that DC-SIGN is an efficient target for antibody-mediated delivery of T cell epitopes for MHC class II presentation, Int Immunol 14 (12): 1423-30 [2002]; Engering, A ら, The dendritic cell-specific adhesion receptor DC-SIGN internalizes antigen for presentation to T cells, J Immunol. 168 (5): 2118-26 [2002])。
【0007】
第2に、Turvilleらは、HIV-1を有するMyDCによるTh細胞感染が、DC発生段階(ウイルスの免疫学的シナプスへの指向性輸送およびプロウイルス系DNAからのHIV-1の活性な新規合成を含む)に依存する2期プロセスであることを示した(Turville SG, Santos JJ, Frank I ら Immunodeficiency virus uptake, turnover, and two-phase transfer in human dendritic cells, Blood; online publication ahead of print: DOI 10.1182/blood-2003-09-3129 [2003])。また、MyDC によるウイルスの移動性輸送(Geijtenbeek TBH, van Kooyk Y, DC-SIGN: a novel HIV receptor on DCs that mediates HIV-1 transmission, Curr Top Microbiol Immunol; 276: 31-54 [2003])およびTh細胞のイントランス感染(Geijtenbeek TBH, Kwon DS, Torensma R ら DC-SIGN, a dendritic cell-specific HIV-I-binding protein that enhances trans-infection of T cells, Cell; 100: 587-97 [2000])におけるDC-SIGNの重要な役割は、これらの細胞に関する病原性の重要な役割をかなり裏付ける。興味深いことに、現在、MyDCからTh細胞へのDC-SIGNを介する受動輸送は、HIV-1がまず、細胞内トリプシン抵抗性区画内に内在化されることを必要とすることが示されている(McDonald D, Wu L, Bohks SM, KewalRamani VN, Unutmaz D, Hope TJ, Recruitment of HIV and its receptors to dendritic cell-T cell junctions, Science; 300: 1295-7 [2003]; Kwon DS, Gregorio G, Bitton N, Hendrickson WA, Littman DR, DC-SIGN-mediated internalization of HIV is required for trans-enhancement of T cell infection, Immunity; 16: 135-44 [2002])。実際、HIV-1による感染後、蓄積された感染性ウイルスを有する細胞質内区画が、未成熟および成熟MyDCの両方において示され得る(Frank I, Piatak M Jr, Stoessel H, Romani N, Bonnyay D, Lifson JD, Pope M, Infectious and whole inactivated simian immunodeficiency viruses interact similarly with primate dendritic cells (DCs): differential intracellular fate of virions in mature and immature DCs, J Virol; 76: 2936-51 [2002])。
【0008】
活性の高い抗レトロウイルスウイルス系療法(HAART)は、HIVに感染した個体において血漿ウイルス負荷を検出不可能なレベルまで低減するのに、および二次リンパ様組織においてHIV-1 RNAコピー数を顕著に減少させるのに有効であることが示されている(Wong, J. K. ら, Recovery of replication-competent HIV despite prolonged suppression of plasma viremia, Science, 278: 1291-1295 [1997]; Cavert, W. ら, Kinetics of response in lymphoid tissues to antiretroviral therapy of HIV-1 infection, Science 276 (5314): 960-964 [1997])。しかしながら、HIV-1が潜在性感染を確立する能力は、免疫応答および抗レトロウイルス療法にもかかわらず、ウイルス系粒子が組織内に存続することを許容する(Gangne J-F, Desormeaux A, Perron S, Tremblay M. J, Bergeron M. G, Targeted delivery of indinavir to HIV-1 primary reservoirs with immunoliposomes, Biochim Biophys Acta, 1558: 198-210 [2002])。樹状細胞のHIV感染に対する感受性は、その非常に重要な免疫学的機能とともに、HIVの連続的播種をもたらすという仮説が立てられている。したがって、抗ウイルス剤のこれらの貯蔵庫細胞に対する標的化は、適応的免疫の永続的な再構築を達成するための重要な目標であることが示唆されている(Gieseler RK, Marquitan G, Scolaro MJ, Cohen MD, Lessons from history: dysfunctional APCs, inherent dangers of STI and an important goal, as yet unmet, Trends Immunol 24: 11 [2003])。
【0009】
リポソームは、適切な標的化構造の存在をともなう場合、封入された化合物を任意の所与の細胞型に特異的に送達するのに好適なビヒクルである。その高度に制限された細胞性発現のため、DC-SIGNは、標的化分子のようなものとして適当である。本発明者らは、以前に、HIV 5'tat スプライスアクセプター部位に指向されたセンスDNAのリポソームによる送達後の感染末梢血液単核白血球内でのHIV伝播の阻害を示した(Sullivan SM, Gieseler RK, Lenzner S, Ruppert J, Gabrysiak TG, Peters JH, Cox G, Richer L, Martin WJ, Scolaro MJ, Inhibition of human immunodeficiency virus-l proliferation by liposome-encapsulated sense DNA to the 5'tat splice acceptor site, Antisense Res Dev; 2: 187-97 [1992])。
【0010】
1960年代において、乾燥脂質膜の水和が、脂質二重層を有するミニチュア細胞性小器官に似た封入球形小胞すなわちリポソームを形成することが発見されて以来、治療剤の有効性を増強し、かつ毒性を低減する生分解性または生体適合性薬物担体としての脂質/薬物複合体の潜在的使用が認識された(例えば、Bangham AD, Liposomes: the Babraham connection, Chem Phys Lipids 64: 275-285 [1993])。脂質/薬物複合体は、長い間、特定の器官、組織または細胞へのその局在を増加させることによって薬物の治療指数(TI)を改善するための潜在的な方法と考えられてきた。TIは、特定の薬物のメジアン中毒量(TD50)およびメジアン有効量(ED50) の比である。しかしながら、脂質/薬物複合体の薬物送達系への適用は、30年後まで実現されず、そのとき始めて、最初の一連のリポソーム系治療剤ヒト使用が米食品医薬品局(FDA)によって承認された。リポソームは、1990年代半ば以来、医薬適用において薬物担体として使用されている(Lian, T. および Ho, R. J. Y., Trends and Developments in Liposome Drug Delivery Systems, J. Pharm. Sci. 90 (6): 667-80 [2001])。
【0011】
脂質構成成分は、種々であり得るが、多くの製剤では、天然リン脂質、主にホスファチジルコリンの合成生成物を使用する。ヒト使用が承認されているリポソーム製剤のほとんどは、種々の脂肪族アシル鎖長および飽和度を有するホスファチジルコリン(中性電荷)を、主要な膜構成ブロックとして含む。剛性を調節するため、および血清タンパク質のリポソーム膜への蓄積により引き起こされる血清誘導性不安定化を低減するため、ある割合(約30 mol%)のコレステロールが、しばしば、脂質製剤に含まれる。
【0012】
脂質の先端(head)基の組成およびpHに基づいて、リポソームは、負、中性または陽性の電荷をその表面に有し得る。リポソームの表面上の電荷の性質および密度は、安定性、速度論および生体分布(biodistribution)の程度ならびに標的細胞によるリポソームの取込みとの相互作用に影響する。表面電荷が中性のリポソームは、全身性投与後の網内系(RES)の細胞により浄化される傾向が低く、凝集する傾向が最も高い。負帯電リポソームは、凝集を低減し、懸濁液中において増大した安定性を有するが、その非特異的細胞性取込みがインビボで増加する。ホスファチジルセリン(PS)またはホスファチジルグリセロール(PG)を含有する負帯電リポソームは、中性リポソームよりも高速かつ高程度でエンドサイトーシスを受けることが観察された(Allen TM, ら, Liposomes containing synthetic lipid derivatives of poly (ethylene glycol) show prolonged circulation half-lives in vivo, Biochim Biophys Acta 1066: 29-36 [1991]; Lee RJ, ら, Folate-mediated tumor cell targeting of liposome-entrapped doxorubicin in vitro, Biochim. Biophys. Acta 1233: 134-144 [1995])。負の表面電荷は、種々の細胞型(マクロファージなど)上の種々のレセプターによって認識される(Allen TM ら [1991]; Lee RJ, ら, Delivery of liposomes into cultured KB cells via folate receptor-mediated endocytosis, J Biol Chem 269: 3198-3204 [1994])。
【0013】
ある種の糖脂質(例えば、ガングリオシドGM1またはホスホチジルイノシトール(PI))を含めることは、マクロファージおよびRES細胞による取込みを阻害し、長期循環時間をもたらす。少量の負帯電脂質は、凝集依存的取込み機構に対して中性リポソームを安定化することが示唆されている(Drummond DC, ら, Optimizing liposomes for delivery of chemotherapeutic agents to solid tumors, Pharmacol Rev 51: 691-743 [1999])。しばしば遺伝子療法における細胞内DNA送達のためのDNA濃縮試薬として使用される正帯電(すなわち、カチオン性)リポソームは、血清タンパク質と相互作用する傾向が強く、この相互作用は、RESによる取込みの向上および結果的に肺、肝臓または脾臓によるクリアランスをもたらす。RESクリアランスのこの機構は、低インビボトランスフェクション効率の説明の一部となる。DNA不安定性、免疫媒介性クリアランス、炎症性応答および組織への接近などの他の要因もまた、動物における低トランスフェクション効率に寄与し得る。実際、高投与量の正帯電リポソームは、さまざまな程度の組織炎症をもたらすことが示されている(Scheule RK, ら, Basis of pulmonary toxicity associated with cationic lipid-mediated gene transfer to the mammalian lung, Hum Gene Ther 8: 689-707 [1997])。
【0014】
リポソーム膜の表面は、凝集を低減し、かつRES による認識を回避するために、親水性ポリマーを用いて修飾し得る。このストラテジーは、しばしば、表面水和または立体的修飾と呼ばれる。表面修飾は、しばしば、ガングリオシド(GM1など)、または吸湿性または親水性ポリマー、通常、ポリエチレングリコール(PEG)に化学的に結合した脂質を組み込むことにより行なわれる。この技術は、タンパク質PEG化と類似する。免疫認識および急速なクリアランスを低減するため、PEGを治療用タンパク質(アデノシンデアミナーゼなど)(アルデラーゼ、重篤な合併免疫不全症候群の処置用)に結合する代わりに(Beauchamp C, ら, Properties of a novel PEG derivative of calf adenosine deaminase, Adv Exp Med Biol 165: 47-52 [1984])、PEG をホスファチジルエタノールアミンの末端アミンに結合させる。リポソーム膜表面上の親水性ポリマーのこの付加的存在により、さらなる表面水和層が提供される(Torchilin VP, Immunoliposomes and PEGylated immunoliposomes: possible use of targeted delivery of imaging agents, Immunomethods 4: 244-258 [1994])。得られるリポソームは、マクロファージによっても外来粒子としてのRESによっても認識され得ず、したがって、食作用によるクリアランスを回避し得る。いくつかの体系的な研究により、PEG ポリマーの至適サイズおよびリポソーム膜内でのそれぞれの高分子PEG脂質の密度が決定された。
【0015】
初期の研究により、リポソームサイズは、全身性投与後の小胞分布およびクリアランスに影響することが示された。RESによるリポソーム取込みの速度は、小胞のサイズとともに増大する(Hwang K, Liposome pharmacokinetics, In: Ostro MJ, editor, Liposomes: from biophysics to therapeutics, New York: Marcel Dekker, pp. 109-156 [1987])。RESインビボ取込みは、高投与量のリポソームにより、または大量の制御リポソームの予備投与により飽和させ得るが、このストラテジーは、RESの生理学的機能の持続的障害に関連する有害効果のため、ヒト使用には実用的でなかろう。同じような組成のリポソームの一般的な傾向は、サイズを大きくすると、RESによる取込み増大がもたらされることである(Senior J, ら, Tissue distribution of liposomes exhibiting long half-lives in the circulation after intravenous injection, Biochim Biophys Acta 839: 1-8 [1985])。つい最近の調査では、50〜100 nmのサイズの単層の小胞が全身性薬物送達適用に使用された。例えば、抗真菌リポソーム製品 AmBisome は、RES取込みを低減するため、45〜80 nmのサイズ規格に製剤化される。血清タンパク質結合は、リポソームサイズに影響し、かつインビボクリアランス速度を増大させる重要な要因である。リポソームおよびオプソニン作用による相補的な活性化は、リポソームのサイズに依存する(Devine DV, ら, Liposome-complement interactions in rat serum: Implications for liposome survival studies, Biochim Biophys Acta 1191: 43-51 [1994]; Liu D, ら, Recognition and clearance of liposomes containing phosphatidylserine are mediated by serum opsonin, Biochim Biophys Acta 1235: 140-146 [1995])。リポソームへの血清タンパク質結合を低減するためにリポソーム組成物にPEGを含めても、長期循環PEG-PEリポソームのサイズの上限は約200 nmである。生物学的制限により、立体的安定化法を用いた大きな(>500 nm)長期循環リポソームの開発は、成功していない。したがって、リポソームサイズおよび薬物開発の初期段階での製造におけるその制御の考慮事項は、薬物送達系の効率の最適化のための手段を提供する。
【0016】
インビボでの生体分布および配置の正確な機構は、脂質組成物、サイズ、電荷および表面水和/立体的障害の程度に依存して変わる。さらに、投与経路もまた、リポソームのインビボ配置に影響し得る。静脈内投与の直後、リポソームは、通常、血清タンパク質により被覆され、RESの細胞により取込まれ、最終的に排除される(Chonn A, ら, Association of blood proteins with large unilamellar liposomes in vivo. Relation to circulation lifetimes, J Biol Chem 267: 18759-18765 [1992]; Rao M, ら, Delivery of lipids and liposomal proteins to the cytoplasm and Golgi of antigen-presenting cells, Adv Drug Deliv Rev 41: 171-188 [2000])。リポソームと相互作用し得る血漿タンパク質としては、アルブミン、リポ蛋白(すなわち、高密度リポ蛋白[HDL]、低密度リポ蛋白[LDL]など)および細胞会合タンパク質が挙げられる。これらのタンパク質のいくつか(例えば、HDL)は、リポソーム二重層からリン脂質を除去し、それによりリポソームが不安定化され得る。 このプロセスは、潜在的にリポソームからの薬物の早期漏出または解離をもたらし得る。
【0017】
リポソームを非常に有益な薬物送達系とする重要な性質の1つは、リポソームに会合および封入された薬物の薬物動態を調節するその能力である(Hwang KJ, Padki MM, Chow DD, Essien HE, Lai JY, Beaumier PL, Uptake of small liposomes by non-reticuloendothelial tissues, Biochim Biophys Acta; 901 (1): 88-96 [1987]; Allen TM, Hansen C, Martin F, Redemann C, Yau-Young A, Liposomes containing synthetic lipid derivatives of poly (ethylene glycol) show prolonged circulation half-lives in vivo, Biochim Biophys Acta; 1066 (1): 29-36 [1991]; Allen TM, Austin GA, Chonn A, Lin L, Lee KC, Uptake of liposomes by cultured mouse bone marrow macrophages: influence of liposome composition and size, Biochim Biophys Acta; 1061 (1): 56-64 [1991]; Hwang, K. [1987]; Allen T, ら, Pharmacokinetics of long-circulating liposomes, Adv Drug Del Rev 16: 267-284 [1995])。水溶液中の同じ薬物に比べ、リポソームに会合した薬物の吸収、生体分布およびクリアランスにおける有意な変化が明白であり、封入された化合物の有効性および毒性の両方において劇的な効果をもたらす(Gabizon A, Liposome circulation time and tumor targeting: implications for cancer chemotherapy, Adv Drug Del Rev 16: 285-294 [1995]; Bethune C, ら, Lipid association increases the potency against primary medulloblastoma cells and systemic exposure of 1-(2-chloroethyl)-3-cyclohexyl-1-nitrosourea (CCNU) in rats, Pharm Res 16: 896-903 [1999])。しかしながら、全身性投与されるリポソームの治療適用は、血流からの急速なクリアランスおよびRESによる取込みにより制限されている(Alving C, ら, Complement-dependent phagocytosis of liposomes: suppression by ‘stealth' lipids, J Liposome Res 2: 383-395 [1992])。
【0018】
すでに記載のように、循環時間は、リポソームサイズを縮小し、PEG誘導体によって表面/立体的効果を修正することにより増加させ得る。また、RESによるクリアランスを回避する充分な安定性のために操作された膜を有するリポソームが今では利用可能である。したがって、長期循環リポソーム(これもそれぞれの薬物の毒物学的プロファイルを有意に低減する)は、血漿薬物レベルを維持および延長するために使用され得る。ほんの少数割合のリポソームが最終的に標的部位に蓄積されはするが、延長された循環は、リポソームに会合した薬物の標的化組織への蓄積を間接的に増大させる。
【0019】
RESによる実質的なクリアランスが起こる前に目的の細胞集団に指向されるようにリポソームの標的化を能動的に増大させることは、特に必要性がある。例えば、免疫リポソームは、細胞内マラリア原虫の赤血球貯蔵庫を標的化するために使用されている(Owais, M. ら, Chloroquine encapsulated in malaria-infected erythrocyte-specific antibody-bearing liposomes effectively controls chloroquine-resistant Plasmodium berghei infections in mice, Antimicrob Agents Chemother 39 (1): 180-4 [1995]; Singh, AM ら, Use of specific polyclonal antibodies for site specific drug targeting to malaria infected erythrocytes in vivo, Indian J Biochem Biophys30 (6): 411-3 [1993])。
【0020】
また、脂質-薬物送達系をHIV/AIDS流行に対する格闘に適用することも特に必要性がある。42百万人を超える人々が、現在、HIV/AIDSを保有して生活していると推定されている(UNAIDS [2002; 2003])。この世界的な特徴は、この感染を回避する改善された手段が開発され、国際社会に導入されなければ、かなり増えていくと予想(project)されている(Morens DM, Folkers GK, Fauci AS, The challenge of emerging and re-emerging infectious diseases, Nature; 430: 242-9 [2004])。
【0021】
抗HIV薬(例えば、ヌクレオシドアナログ(例えば、3'-アジド-3'-デオキシチミジン[AZT]、ddCおよびddIなどのジデオキシヌクレオシド誘導体)、プロテアーゼインヒビターまたはホスホノ酸(例えば、ホスホノギ酸およびホスホノ酢酸など)は、これまで、脂質誘導体化またはリポソーム内に取込まれていた (例えば、Hostetler, KY ら, Methods of treating viral infections using antiviral liponucleotides, 米国特許出願第09/846,398号、US 2001/0033862; 米国特許第5,223,263号; Hostetler, KY ら, Lipid derivatives of phosphonoacids for liposomal incorporation and method of use, 米国特許第5,194,654号; Gagne JF ら, Targeted delivery of indinavir to HIV-1 primary reservoirs with immunoliposomes, Biochim Biophys Acta 1558 (2): 198-210 [Feb. 2002])。なお、一報告において、リポソーム封入されたddIのC57BL/6マウスへの皮下注射は、静脈内注射と比べ、リンパ節においてリポソームの低い蓄積をもたらした(Harvie, P ら, Lymphoid tissues targeting of liposome-encapsulated 2', 3'-dideoxyinosine, AIDS 9 (7): 701-7 [1995])。
【0022】
リポソーム表面に結合させた、またはその内部に包埋した特異的ベクター分子の使用は、これ以外の場合では、細胞内に不十分にしか送達されず、かつ特に望ましい細胞内細胞小器官に効率的に送達されない化合物の増大した貫膜送達およびリポソームの取込み封入に関して記載されている(Torchilin VP, Lukyanov AN, Peptide and protein drug delivery to and into tumors: challenges and solutions, Drug Discov Today 2003 Mar 15; 8 (6): 259-66; Sehgal A, Delivering peptides and proteins to tumors, Drug Discov. Today 8 (14): 619 [2003]; Koning GA, Storm G, Targeted drug delivery systems for the intracellular delivery of macromolecular drugs, Drug Discov Today 2003 Jun 1; 8 (11): 482-3に概説)。かかるベクター分子としては、いわゆるタンパク質形質導入形質導入(PTD)が挙げられ、これは、種々の ウイルスまたはDrosophila antennapedia由来のものである。HIV疾患における適用に特に重要なのは、PTD として作用するHIV Tatおよびその誘導体である(例えば、Schwarze, S. R., ら, In vivo protein transduction: delivery of a biologically active protein into the mouse, Science 285: 1569-72 [1999])。
【0023】
抗HIV薬は、その外側表面上に抗原特異的標的化リガンドを含む免疫リポソームの水性コア内に封入されている(例えば、Bergeron, MG. ら, Targeting of infectious agents bearing host cell proteins, WO 00/66173 A3; Bergeron, MG. ら, Liposomes encapsulating antiviral drugs, 米国特許第5,773,027号; Bergeron, MG. ら, Liposome formulations for treatment of viral diseases,. WO 96/10399 Al; Gagne JF ら, Targeted delivery of indinavir to HIV-1 primary reservoirs with immunoliposomes, Biochim Biophys Acta 1558 (2): 198-210 [2002]; Dufresne I ら, Targeting lymph nodes with liposomes bearing anti-HLA-DR Fab' fragments, Biochim Biophys Acta 1421 (2): 284-94 [1999]; Bestman-Smith J ら, Sterically stabilized liposomes bearing anti-HLA-DR antibodies for targeting the primary cellular reservoirs of HIV-1 Biochim Biophys Acta 1468 (1-2): 161-74 [2000]; Bestman-Smith J ら, Targeting cell-free HIV and virally-infected cells with anti-HLA-DR immunoliposomes containing amphotericin B, AIDS 10; 14 (16): 2457-65 [2000])。
【0024】
動物モデルにおいて抗体標的化リポソームの多くの例がある。また、現在は、臨床的に評価されたDOXILと称する少なくとも1種類の抗体標的化リポソームがある。HER2/neuに対して生成させた単鎖抗体を用いることにより、これを、ある種の型の乳癌に標的化させる。UCSFのPapahadjopoulosおよび同僚らにより開発された、この抗体媒介性標的化バリアントは、現在、米国立がん研究所での臨床試験において評価中である(例えば、Park JW, Hong K, Kirpotin DB, Colbern G, Shalaby R, Baselga J, Shao Y, Nielsen UB, Marks JD, Moore D, Papahadjopoulos D, Benz CC, Anti-HER2 Immunoliposomes: enhanced efficacy attributable to targeted delivery, Clin Cancer Res. 2002 Apr; 8 (4): 1172-81 [2002])。
【0025】
リポソームを用いたリンパ様細胞集団の活性標的化に対する試みは、ある程度の成功を収めた。Bestman-Smithら (2000)は、抗HLA-DR Fab'断片を有する免疫リポソームのマウスへの皮下注射後、リンパ様組織内に免疫リポソームの蓄積が見られたことを報告した(Bestman-Smith J ら, Targeting cell-free HIV and virally-infected cells with anti-HLA-DR immunoliposomes containing amphotericin B, AIDS 10; 14 (16): 2457-65 [2000])。Gagne JFら [2002]は、免疫リポソーム封入された抗HIV薬の皮下注射が、遊離の薬物の投与と比べ、注射されたマウスのリンパ節内に相対的に低い毒性を伴った薬物の蓄積をもたらし、インジナビル(indinavir)を含有する抗HLA-DR標的化免疫リポソームが、感染したPM1細胞におけるHIV-1複製を阻害する能力において、遊離インジナビルまたは非標的化リポソームインジナビル複合体と比べ、報告される有意差はないことを報告した。Coplandらは、単球由来樹状細胞(Mo-DC)のマンノースレセプターを標的化し、マンノース導入(mannosylated)リポソームは、非マンノース導入中性リポソームおよび負帯電リポソームと比べ、37℃において、Mo-DCに優先的に結合され、取込まれることを報告した(Copland, MJ ら, Liposomal delivery of antigen to human dendritic cells, Vaccine 21: 883-90 [2003])。
【0026】
本発明は、活性剤(例えば、薬物、免疫調節剤、レクチンまたは他の植物由来物質など)を目的の骨髄性細胞集団に特異的に標的化させるのを容易にするリポソームによる送達系を提供する。したがって、本発明は、とりわけ、HIVに感染したヒトおよびAIDSを患うヒトまたはHCVに感染または同時感染したヒトおよび肝臓のHCV依存的病理的変性を患うヒトの骨髄性細胞、特に樹状細胞およびマクロファージならびに骨髄起源の濾胞上皮樹状細胞におけるHIV、C型肝炎ウイルス(HCV)の貯蔵庫を標的化する必要性に取り組むものである。また、本発明は、リンパ様細胞、特にT細胞を、その骨髄性細胞との物理的相互作用時に間接的に標的化させるのを可能にし得る。さらにまた、本発明は、悪性腫瘍細胞または免疫細胞媒介性自己免疫の特異的排除または下方調節;DC依存的自系腫瘍免疫化の増強; 自己免疫疾患の治療的下方調節;または一般的な病原または現在効率的な防御が存在しないバイオテロの病原体として使用され可能性のある病原に対する特異的適応免疫のDC好性刺激(ワクチン接種または処置の両方の点における)を可能にし得る。本発明はまた、バイオテクノロジーの進歩(例えば、とりわけ、モノクローナル抗体の産生を増加させるためにDCを標的化することにより、または誘導性リポソームによるDC標的化の非存在下では誘導され得ないような免疫グロブリンの産生を可能にすることにより)を可能にし得る。
【0027】
(発明の概要)
本発明は、薬物などの活性剤を、哺乳動物の免疫細胞にインビボまたはインビトロで優先的に、または「能動的に」標的化および送達する方法に関する。
【0028】
特に、本発明は、リポソームを哺乳動物の免疫細胞(例えば、骨髄性前駆細胞、単球、樹状細胞、マクロファージまたはT-リンパ球など)に優先的に標的化させる方法に関する。該方法は、免疫細胞に、インビトロまたはインビボで、活性剤を含有し、免疫細胞(CD209 (DC-SIGN)、CD45R0、CD4またはHLAクラスIIなど)の表面上のマーカー特異的に結合する少なくとも1種類の標的化リガンドを含有する外側表面をさらに含有するリポソームを投与することを含む。
【0029】
本発明はまた、特に、薬物を哺乳動物被験体(ヒトを含む)の免疫細胞に優先的に送達する方法に関する。標的される免疫細胞としては、骨髄性前駆細胞、単球、樹状細胞、マクロファージまたはT-リンパ球が挙げられる。該方法は、哺乳動物被験体に脂質/薬物複合体、例えば、限定されないが、薬剤を含有し、かつ免疫細胞(限定されないが、CD209 (DC-SIGN)、感染原(例えば、限定されないが、ヒト免疫不全ウイルス1型および2型(HIV-1;HIV-2)に感染しているか、または感染し易い免疫細胞など)の表面上のマーカー特異的に結合する少なくとも1種類の標的化リガンドを含有する外側表面をさらに含有するリポソームを注射することを含む。
【0030】
本発明はまた、本発明の標的されるリポソームに関する。標的されるリポソームの一態様は、その外側表面上に、CD209に特異的に結合する標的化リガンドを含有する。標的されるリポソームの別の態様は、その外側表面上に、CD209に特異的に結合する標的化リガンドおよびCD4に特異的に結合する標的化リガンドを含有する。本発明の標的されるリポソームは、標的化免疫細胞(樹状細胞など)に有用である。
【0031】
貯蔵庫細胞、例えば、樹状細胞内におけるHIV-1の存在は、感染したヒトのリンパ系器官および組織内で未処置T細胞の連続的な新たな感染をもたらす。かかる保護部位の根絶は、最終的に、個体からHIV-1を排除し得ると仮定されている。本発明は、樹状細胞特異的分子DC-SIGNなどの標的化リガンドにより、化合物を直接これらの細胞に送達する標的化系を提供する。したがって、本発明は、特に、排他的ではないが、免疫リポソーム内に封入された抗ウイルス系薬物のHIV-1またはHIV-2を有するリンパ系およびリンパ系由来免疫細胞(例えば、樹状細胞内のHIV貯蔵庫)への送達に有益である。本発明の別の利点は、免疫細胞を能動的に標的化させることにより、HIVに対するワクチン接種ストラテジーを提供することにある(例えば、Steinman RM, Granelli-Piperno A, Pope M, Trumpfheller C, Ignatius R, Arrode G, Racz P, Tenner-Racz K, The interaction of immunodeficiency viruses with dendritic cells, Curr Top Microbiol Immunol 276: 1-30 [2003]; Pope M, Dendritic cells as a conduit to improve HIV vaccines, Curr Mol Med 3: 229-42 [2003])。本発明によりもたらされるさらなる利点としては、免疫細胞、例えば、原発性および転移性リンパの癌(リンパ腫および白血病)の異常増殖、充実性腫瘍もしくはその術後の残余物に関与する症状、または自己免疫疾患の処置の有用性(遺伝子療法適用における免疫細胞の特異的な標的化を含む)が挙げられる。本発明はまた、抗感染ワクチン、抗バイオテロワクチン、抗癌ワクチンまたはバイオテクノロジーのおよび治療用ツール(モノクローナル抗体など)の作製を容易にするための樹状細胞の標的化方法を提供する。
【0032】
本発明はまた、本発明の標的化送達系の種々の変形型に関する。任意の種類の器官系(例えば、内分泌または神経系など)および任意の型の解剖学的部分(例えば、尿道または気道(respiratoy tract)など)内に存在する任意の型の細胞を、そのそれぞれの標的化リガンドおよび選択したその活性剤を外側表面上に含有するそれぞれのリポソームによるバリアントによって選択的に標的化し得る。
【0033】
(好ましい態様の詳細な説明)
本発明は、薬物などの活性剤を哺乳動物の免疫細胞に優先的に送達する方法に関する。いくつかのある態様において、送達はインビトロであり、他の態様では、活性剤の送達はインビボである。
【0034】
用語「優先的に」は、脂質/薬物複合体またはリポソームが細胞に送達され、活性剤(例えば、薬物)が該細胞に、本発明とは対照的に少なくとも1種類の標的化リガンドを含有しない外側表面を有する比較の脂質薬物複合体またはリポソームを用いた該薬剤の送達および取込みよりもより効果的に取込まれるという事実をいう。
【0035】
標的化される免疫細胞としては、骨髄性前駆細胞、単球、樹状細胞(DC)、マクロファージおよびT-リンパ球が挙げられうる。
【0036】
単球は、骨髄の骨髄分化系統により生成される細胞型の1つである。DCもまた同様に、骨髄性系統内で生成される単球または他の型の細胞(すなわち、主に前駆細胞)に由来し得ることが示されている(例えば、Peters JH, Ruhl S, Friedrichs D, Veiled accessory cells deduced from monocytes, Immunobiology 176 (1-2): 154-66 [1987]; Gieseler R, Heise D, Soruri A, Schwartz P, Peters JH, In-vitro differentiation of mature dendritic cells from human blood monocytes, Dev. Immunol. 6 (1-2): 25-39 [1998]; Gieseler RKH, Rober R-A, Kuhn R, Weber K, Osborn M, Peters JH, Dendritic accessory cells derived from rat bone marrow precursors under chemically defined conditions in vitro belong to the myeloid lineage, Eur J Cell Biol 54 (1) : 171-81 [1991])。したがって、単球由来樹状細胞 (MoDC)はMyDCの亜集団である。
【0037】
樹状細胞としては、「骨髄性樹状細胞」(My-DC)、すなわち、「骨髄性系統由来DC」が挙げられ、これには、単球由来樹状細胞(Mo-DC)ならびに他のDC型、例えば、前単球由来樹状細胞が含まれる。(例えば、Steinbach F, Gieseler R, Soruri A, Krause B, Peters JH, Myeloid DCs deduced from monocytes, In-vitro and in-vivo data support a monocytic origin of DCs, Adv Exp Med Biol. 1997 ; 417: 27-32 [1997])。また、樹状細胞としては、「リンパ系 樹状細胞」(Ly-DC)、すなわち「リンパ系 系統由来DC」が挙げられ、リンパ系系統に由来することが現在知られている唯一の型のDCは、血漿細胞様樹状細胞(pc-DC)である(Facchetti F, Vermi W, Mason D, Colonna M, The plasmacytoid monocyte/interferon producing cells, Virchows Arch; 443 (6): 703-17. Epub 2003 Oct 28 [2003])。樹状細胞としてはまた、濾胞上皮樹状細胞(FDC)が挙げられる。FDCが骨髄系統、リンパ系系統または別の系統のいずれに由来するのかは、現在も議論の的となっている(Haberman AM, Shlomchik MJ, Reassessing the function of immune-complex retention by follicular dendritic cells, Nat Rev Immunol; 3 (9): 757-64 [2003])。すべての型の樹状細胞のあらましについては、Donaghy H, Stebbing J, Patterson S, Antigen presentation and the role of dendritic cells in HIV, Curr Opin Infect Dis; 17 (1) : 1-6 [2004]を参照のこと。
【0038】
マクロファージは、種々の器官に存在するサブタイプ(さらに、リンパ系または非リンパ系の器官および組織により典型的なマクロファージが含まれる)を含む細胞クラスを表す(例えば、Barreda DR, Hanington PC, Belosevic M, Regulation of myeloid development and function by colony stimulating factors, Dev Comp Immunol 3; 28 (5): 509-54 [2004])。
【0039】
T-リンパ球としては、限定されないが、T-ヘルパー細胞またはT-記憶細胞が挙げられる(Woodland DL, Dutton RW, Heterogeneity of CD4+ and CD8+ T cells, Curr Opin Immunol ; 15 (3): 336-42 [2003])。
【0040】
本発明のいくつかのあるインビボ態様において、脂質/薬物複合体が、免疫細胞が存在する哺乳動物被験体に注射される。
【0041】
いくつかのある態様において、免疫細胞は、ウイルス、細菌、真菌、原生動物またはプリオンなどの感染原に感染しているか、または感染し易い。ウイルス系感染原の例は、HIV-1およびHIV-2 (すべてのそのクレードを組む)、HSV、EBV、CMV、エボラおよびマルブルクウイルス、HAV、HBV、HCVおよびHPVである。
【0042】
いくつかのある態様において、免疫細胞(感染あり、またはなし)は、器官特異的または全身性自己免疫疾患の発症に関連する。かかる疾患の実例は、グレーブス疾患、甲状腺に関連した眼障害(別名グレーブス眼症状; 別名内分泌性眼障害);および多発性硬化症(別名MS)である。
【0043】
「複合体」とは、その構成要素もしくは成分間の化学結合もしくは結合から生じる混合物または付加生成物であり、脂質、薬物および本発明の脂質薬物複合体の他の任意の成分を含む。化学結合または結合は、共有結合、イオン結合、水素結合、ファン・デル・ワァールス結合、疎水結合、または任意の部分もしくは一部分にて複合体の構成要素を連結するこれらの結合型の任意の組み合わせの性質を有し得、構成要素は1種以上の様々な種類の部分を有し得る。複合体のすべての構成要素が他のすべての構成要素と結合する必要はないが、各構成要素は複合体の少なくとも1つの他の構成要素との少なくとも1つの化学結合を有する。本発明にしたがって、脂質薬物複合体の例としては、リポソーム(脂質小胞)、または脂質薬物シートディスク複合体(sheet disk complex)が挙げられる。本発明にしたがって、脂質結合薬物もまた脂質薬物複合体の一部であり得る。しかしながら薬物はまた、任意の型の化学結合または結合がない場合でも、かかる場合は可溶性薬物をリポソームの含水内部空間に封じ込める場合に提供されるように、脂質または脂質複合体と会合し得る。
【0044】
脂質薬物複合体、例えばリポソームは、薬物等の活性剤を含む。本発明の目的のために該薬剤は、細胞増殖または目的の感染因子に対して活性であることが公知である、任意の薬剤である。
【0045】
活性剤または薬物は、抗ウィルス薬物またはウィルス静止剤(virostatic agent)(インターフェロン、ヌクレオシドアナログ、もしくは非ヌクレオシド抗ウィルス薬物)であり得る。例としては、抗HIV薬物(例えば、HIV逆プロテアーゼ阻害薬)が挙げられる(インジナビル(別名Crixivan(登録商標), Merck & Co., Inc., Rahway, NJ;サキナビル(N-tert-ブチル-デカヒドロ-2-[2(R)-ヒドロキシ-4-フェニル-3(S)-[[N-(2-キノリルカルボニル)-L-アスパラギニル]アミノ]ブチル]-(4aS,8aS)-イソキノリン-3(S)-カルボキサミド; MW=670.86, 別名Fortovase(登録商標), Roche Laboratories, Inc., Nutley, NJ);またはネルフィナビル(すなわち、ネルフィナビルメシレート、別名Viracept(登録商標);[3S-[2(2S*, 3S*), 3a, 4ab, 8ab]]-N-(1,1-ジメチルエチル)デカヒドロ-2-[2-ヒドロキシ-3-[(3-ヒドロキシ-2-メチルベンゾイル)アミノ]-4-(フェニルチオ)ブチル]-3-イソキノリンカルボキサミドモノ−メタンスルホネート(塩), MW=663.90 [567.79遊離塩基として]; Agouron Pharmaceuticals, Inc., La Jolla, CA)など)。抗ウィルス薬物の他の例としては、逆転写酵素阻害薬が挙げられる(フマル酸テノフォビルジソプロキシル (9-[(R)-2-[[ビス[[(イソプロポキシカルボニル)オキシ]メトキシ]ホスフィニル]メトキシ]プロピル]アデニンフマレート(1:1); MW=635.52; 別名Viread(登録商標), Gilead Sciences, Foster City, CA)など)。抗HIV薬物はまた、HIV−特異性低分子干渉性RNA(siRNA)、アンチセンスもしくはセンスDNAまたはRNA分子であり得る。
【0046】
他の態様において、活性剤は抗ガン薬物、抗菌薬物または抗細菌薬物である。他の態様において、活性剤はシクロスポリン、ステロイドおよびステロイド誘導体などの免疫調節剤(すなわち免疫活性化剤、イムノゲン、免疫抑制薬、または抗炎症性剤)である。他の有用な薬物の例としては、本発明にしたがって、治療細胞傷害性剤(例えばシスプラチン、カルボプラチン、メトトレキサート、5-フルオロウラシルおよびアンホテリシン)、裸のDNA発現ベクター、治療タンパク質、治療オリゴヌクレオチドもしくはヌクレオチドアナログ、インターフェロン、サイトカイン、またはサイトカインアゴニストもしくはアンタゴニストが挙げられる。また薬物として有用なのは、細胞傷害性アルキル化剤(限定されないが、ブスルファン(1,4-ブタネジオールジメタンスルホネート;Myleran, Glaxo Wellcome)、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、またはエチルエタンスルホン酸など)である。かかる薬物または薬剤は、免疫細胞の病理学的増殖、例えば、リンパ性ガンまたは自己免疫疾患を伴う状態の処置において特に有用である。
【0047】
他の態様において、活性剤は治療学的特性または利益を持つ天然物質(純粋または組み換え形態の植物由来の物質など)である。植物由来の物質の例としては、木の葉抽出物IDS30、根茎由来のUDAレクチン、およびMHLが挙げられる。
【0048】
本発明は天然物質の選択的使用を考慮に入れるが、その治療学的特性および可能性は世界規模の多くの培養物において古くから認知されている。かかる植物由来の物質の1つはサリチル酸であり、多くの木々の樹皮においてさまざまな濃度で見つかるが、現代の主な治療薬の1つ、アセチルサリチル酸(ASS)またはアスピリンそれぞれの最初の物質として供給される。本発明に関して、多刺毛植物(セイヨウイラクサ)は、何百年もの間主な治療的利益を有するとして公知である多数の植物の顕著な例である。セイヨウイラクサのいくつかの成分の作用に関する最近の科学的調査により、その目的の適用のための機会が与えられる。
【0049】
例えばMyDCは、自己免疫と炎症性状態との境界を超える疾患の例である慢性関節リウマチ(RA)のイニシエーションにおいて重要な役割を果たす。BroerおよびBehnkeは、セイヨウイラクサの葉抽出物IDS30(Hox-α)がRAのアジュバント療法に推薦され、MyDCの表現型/機能的成熟を妨げる;腫瘍壊死因子−αの分泌を減少させる;およびMyDCのT細胞刺激容量を減少させることを示し、一方で用量に応じてケモカイン受容体5およびCD36ならびにこれらの細胞のエンドサイトーシス容量の発現が増加する。本発明者らは、IDS30のこれらの効果がT細胞媒介自己免疫/RA等の炎症性疾患に対してその治療的効果の一因となり得ることを示唆した(Broer J, Behnke B, Immunosuppressant effect of IDS 30, a stinging nettle leaf extract, on myeloid dendritic cells in vitro, J Rheumatol;29(4):659-66[2002])。転写因子NF-κBの阻害がこの過程と関係あることを想定するのは妥当であり(Riehemann K, Behnke B, Schulze-Osthoff K, Plant extracts from stinging nettle (Urtica dioica), an antirheumatic remedy, inhibit the proinflammatory transcription factor NF-κB, FEBS Lett;442(1):89-94[1999])、この抽出物またはその活性精製成分は、NF-κBの過剰活性化に依存する大多数の消耗状態もしくは生命を脅かす病原状態を阻害し得るからである。
【0050】
レクチンは、治療学的特性および可能性を有する天然物質の別の例である。レクチン(すなわち、凝集特性を持つ炭水化物結合性タンパク質)は多数の植物、主としてその根または根茎により、自己免疫系の活力成分として産生される。Shibuyaらは、多刺毛植物レクチンの糖結合特性を最初に記載した(Shubuya N, Goldstein IJ, Shafer JA, Peumans WJ, Broekaert WF,(Carbohydrate binding properties of the stinging nettle (Urtica dioica) rhizome lectin, Arch Biochem Biophys;249(1):215-24[1986])。セイヨウイラクサ凝集素(UDA)と名付けられた多刺毛植物由来の(GlcNAc)n−特異的レクチンは、0.3〜9μg/ml範囲内のEC50ならびに持続的HIV-1-、HIV-2-感染HUT-78細胞およびCD4+Molt/4(クローン8)細胞(EC50: 0.2〜2μg/ml)の融合細胞形態にて、HIV-1-、HIV-2-、CMV-、RSV-およびインフルエンザAウィルス誘導型細胞傷害性を阻害することが示されている。UDAはビリオン/標的細胞融合阻害薬として作用し得ることが示唆されている(Balzarini J, Neyts J, Schols D, Hosoya M, Van Damme E, Peumans W, De Clercq E. The mannose-specific plant lectins from Cymbidium hybrid and Epipactis helleborine and the (N-acetylglucosamine)n-specific plant lectin from Urtica dioica are potent and selective inhibitors of human immunodeficiency virus and cytomegalovirus replication in vitro. Antiviral Res 18(2): 191-207[1992])。かかる作用は、実証される場合、UDAのスーパー抗原性質と関連があり得る(Galelli A, Truffa-Bachi P, Urtica dioica agglutinin. A superantigenic lectin from stinging nettle rhizome, J Immunol;151(4):1821-31[1993])。
【0051】
さらに根茎由来のUDAレクチンは、木の葉由来のIDS-30抽出物に加えて、ある自己免疫疾患に対して治療学的に作用する。このスーパー抗原は、T細胞受容体Vβ8.3−発現成熟T細胞の大画分の急速な削除を誘導することが示されている(Delcourt M, Peumans WJ, Wagner MC, Truffa-Bachi P, Vβ-specific deletion of mature thymocytes induced by the plant superantigen Urtica dioica agglutinin, Cell Immunol;168(2):158-64[1996])。UDA処置をした動物が狼瘡および腎炎の明白な臨床的徴候を発生させなかったのと同様に、マウスにおいてこの活性の全身性(狼瘡)エリテマトーデスの発生を妨げることが実証されている(Musette P, Galelli A, Chabre H, Callard P, Peumans W, Truffa-Bachi P, Kourilsky P, Gachelin G, Urtica dioica agglutinin, a Vβ8.3-specific superantigen, prevents the development of the systemic lupus erythematosus-like pathology of MRL lpr/lpr mice, Eur J Immunol;26(8):1707-11[1996])。
【0052】
これらはセイヨウイラクサ由来の物質のいくつかの例のほんの2例であり、多くの他の植物の構成要素と同様に、規定の免疫細胞(MyDCなど)上で単一分子としてかまたはオリゴマー、組み合わせで治療学的に作用する。これらの物質が干渉する病理学的状態は、感染性、腫瘍性および自己免疫性疾患を含む。本明細書中に記載されるリポソーム系は、精製された形態または組み換え形態のかかる分子植物成分を特異的に封じ込め、特定の標的として同定された、もしくは同定されるであろう細胞に送られ(address)得、その結果、毒性のある副作用の危険性をかなり減少させると同時に、劇的にその効果を増大させその可能性を活用する。
【0053】
さらに、細胞内の画分内へ輸送されるリポソーム(エンドソーム等)は、細胞内に蓄積された病原体(HIV-1、HCV、エボラウィルス、ヒト型結核菌、およびその他を含む)の凝集のためにレクチンを適切に送達し得、その結果大きなレクチン病原複合体を生じ、感染した細胞によって認められ得、続いて酵素的におよび/またはpH依存的に弱められ得る。例えばHIV-1保有宿主に送る場合、この目的のために大いに適する1つのレクチンは、タンザニアの植物であるミリアンサス・ホルスティ(Myrianthus holstii)の根から得られるミリアンサス・ホルスティ・レクチン (MHL, 別名ミリアンシン(Myrianthin))である。MHLはいくつかの好都合な特徴を含んでおり、すなわちHIV-1の凝集;感染細胞(EC50)の50%における有効用量が上記した2つの目的の大きさと比較して無毒性であること;およびヒト白血球の分裂促進性の欠乏である(Charan RD, Munro MH, O’Keefe BR, Sowder RCII, McKee TC, Currens MJ, Pannell LK, Boyd MR, Isolation and characterization of Myrianthus holstii lectin, a potent HIV-1 inhibitory protein from the plant Myrianthus holstii, J Nat Prod 2000 Aug;63(8) :1170-4)。
【0054】
UDA、MHLおよび多くの他のレクチンまたは凝集素等の化合物は、それぞれリポソーム内に封じ込められ得、その結果、所与の標的化細胞内で、より具体的には、明記されたかかる細胞または細胞型の細胞内画分(単数か複数)の内側で選択的にその特性を広げる。
【0055】
リポソームにより哺乳動物免疫細胞を優先的に標的化する本発明の方法のいくつかの態様は、向上したワクチン接種の手段と関連がある。この場合、樹状細胞の能動的標的化は、本発明にしたがって、ガンまたはHIV等のウィルスに対するワクチン接種のために使用される(例えば, Nair, Sら, Soluble proteins delivered to dendritic cells via pH-sensitive liposomes induce primary cytotoxic T lymphocyte responses in vitro, J. Exp. Med. 175(2):609-12[1992]; Philip, Rら, Transgene expression in dendritic cells to induce antigen-specific cytotoxic T cells in healty donors, Cancer Gene Ther. 5(4):236-46[1998]; Ludewig, Bら, Protective antiviral cytotoxic T cell memory is most efficiently maintained by restimulation via dendritic cells, J. Immunol. 163(4):1839-44[1999]; Chikh, GおよびSchultze-Redelmeier, MP, Liposomal delivery of CTL epitopes to dendritic cells, Biosci. Rep. 22(2):339-53[2002]; Gruenebach, Fら, Delivery of tumor-derived RNA for the induction of cytotoxic T-lymphocytes, Gene Ther. 10(5):367-74[2003])。
【0056】
本発明にしたがう樹状細胞の標的化はまた、一般的に、細胞内のエンドソームMHCクラスIおよび/またはMHCクラスII抗原プロセシング画分の接触を介するワクチン接種戦略を向上させるために有用である(例えばZhou FおよびHuang L, Liposome-mediated cytoplasmic delivery of proteins: an effective means of accessing the MHC class I-restricted antigen presentation pathway, Immunomethods 1994;4(3):229-35[1994]; Owais Mら, Use of liposomes as an immunopotentiating delivery system: in perspective of vaccine development, Scand. J. Immunol. 54(1-2):125-32[2001]; Mandal MおよびLee KD, Listeriolysin O-liposome-mediated cytosolic delivery of macromolecule antigen in vivo: enhancement of antigen-specific cytotoxic T lymphocyte frequency, activity, and tumor protection, Biochim. Biophys. Acta 1563(1-2):7-17[2002])。
【0057】
リポソームにより哺乳動物免疫細胞を優先的に標的化する本発明の方法はまた、モノクローナル抗体の産生を容易にするため樹状細胞の標的化に使用され得る(例えば、Berry JD ら, Rapid monoclonal antibody generation via dendritic cell targeting in vivo, Hybrid. Hybridomics 22(1):23-31[2003]を参照)。
【0058】
1つ以上の薬物が、本発明の方法にしたがって、脂質薬物複合体、またはリポソームに取り込まれ得、脂質薬物複合体、例えばリポソームは、医師の特定の要求に合うように、組み合わさった状態で第1の薬物および第2の薬物、またはより多くの薬物を取り込み得る。例えば、有用なリポソームは、抗HIV薬物および抗菌ならびに/または抗細菌薬物の組み合わせを含み得る。
【0059】
本発明は、脂質薬物複合体もしくはリポソームの有用な製剤が得られるか、または薬物が標的細胞に放出される、任意の特定の化学的または生物化学的機構に依存しない。
【0060】
リポソーム等の脂質薬物複合体を作るための有用な技術は、当該分野で公知である(例えば、Sullivan SM, Gieseler RKH, Lenzner S, Ruppert J, Gabrysiak TG, Peters JH, Cox G, Richer, L, Martin, WJ,およびScolaro, MJ, Inhibitation of human immunodeficiency virus-1 proliferation by liposome-encapsulated sense DNA to the 5’ TAT splice acceptor site, Antisense Res Develop 2:187-197[1992]; Laverman P, Boerman OC, Oyen WJG, Corstens FHM, Storm G, In vivo applications of PEG liposomes; unexpected observations, Crit Rev Ther Drug Carrier Syst 18(6):551-66[2001]; Oussoren C, Storm G, Liposomes to target the lymphatics by subcutaneous administration, Adv Drug Deliv Rev 50(1-2):143-56[2001]; Bestman-Smith J, Gourde P, Desormeaux A, Tremblay MJ, Bergeron MG, Sterically stabilized liposomes bearing anti-HLA-DR antibodies for targeting the primary cellular reservoirs of HIV-1, Biochim Biophys Acta 1468(1-2):161-74[2000]; Bestman-Smith J, Desormeaux A, Tremblay MJ, Bergeron MG, Targeting cell-free HIV and Virally-infected cells with anti-HLA-DR immunoliposomes containing amphotericin B, AIDS 14(16):2457-65[2000]; Mayer LD, Hope MJ, Cullis PR, Vesicles of variable sizes produced by a rapid extrusion procedure, Biochim Biophys Acta 858: 161-168[1986]; Kinman, L.ら, Lipid-drug associations enhanced HIV protease inhibitor indinovir localization in lymphoid tissues and viral load reduction: a proof of concept study in HIV-infected macaques, J AIDS;34:387-97[2003]; Harvie P, Desormeaux A, Gagne N, Tremblay M, Poulin L, Beauchamp D, Bergeron MG, Lymphoid tissues targeting of liposome-encapsulated 2’,3’-dideoxyinosine, AIDS;9;701-7[1995]; 米国特許第5,773,027号; 米国特許第5,223,263号; WO 96/10399 A1号)。
【0061】
リポソーム調製のいくつかの有用な方法としては、押し出し成形、均質化、リモートローディング、および逆相蒸発が挙げられる。押し出し成形において、リン脂質のみから構成される、またはコレステロールおよび/もしくは他の添加物との組み合わせから構成される脂質膜は、脂質溶液から有機溶媒(クロロホルムなど)を蒸発させることで形成される。疎水性薬剤は、溶媒が蒸発する前に脂質溶液に添加される。水溶性薬物を封入するために、乾燥脂質膜は、薬物を含む等張性含水溶液で(with and isotonic aqueuous solution)攪拌(超音波、渦、電動式攪拌装置など)して水和化される。脂質懸濁液を3〜4回凍結し解凍する。次いで懸濁液を、規定された直径(0.8μm、0.4μm、0.2μm、または0.1μmなど)の孔を含有する一連のポリカーボネートフィルターに通過させる。水溶性薬物のために、カプセル化されてない薬物をゲル浸透カラムクロマトグラフィー、透析または膜分離精製で取り除く。リポソームは(例えば、0.22μmフィルターを通して)滅菌濾過され得る。
【0062】
凍結防止剤(ラクトース、グルコース、サクロース、トレハロースまたはマルトース等)は、等張性が維持される限り滅菌化リポソームに添加され得る。次いで該リポソームを凍結、凍結乾燥し、凍結乾燥したケーキとして無期限に保存し得る(例えば、Mayer LD, Hope MJ, Cullis PR, Vesicles of variable sizes produced by a rapid extrusion procedure, Biochim Biophys Acta 858: 161-168[1986]; Tsvetkova NMら, Effect of sugars on headgroup mobility in freeze-dried dipalmitoylphosphatidylcholine bilayers: solid-state 31P NMR and FTIR studies, Biophys J 75: 2947-2955[1998]; Crowe JH, Oliver AE, Hoekstra FA, Crowe LM, Stabilization of dry membranes by mixtures of hydroxyethyl starch and glucose: the role of vitrification, Cryobiology 35: 20-30[1997]; Sun WQ, Leopold AC, Crowe LM, Crowe JH, Stability of dry liposomes in sugar glasses, Biophys J 70: 1769-1776[1996])。
【0063】
均質化は、大規模な製造に適している。脂質懸濁液は上記したように調製される。大規模な凍結および解凍工程は問題となり得る。リポソームの直径は、脂質懸濁液の新しい流れ(微流動)(microfluidization)か、または鋼板に対する流れ(グアリニゼーション(gualinization))として、脂質懸濁液を注射することで縮小される。この最近の技術は、牛乳の均質化のために乳製品産業にて使用される。未捕捉の水溶性薬物は、膜分離精製により取り除かれる。疎水性薬物は完全に封入(entrap)され、通常取り除かれる遊離薬物は存在しない(例えば、Paavola A, Kilpelainen I, Yliruusi J, Rosenberg P, Controlled release injectable liposomal gel of ibuprofen for epidural analgesia, Int J Pharm 199: 85-93[2000]; Zheng S, Zheng Y, Beissinger RL, Fresco R, Liposome-encapsulated hemoglobin processing methods, Biomater Artif Cells Immobilization Biotechnol 20: 355-364[1992])。
【0064】
薬物封入の別の方法はリモートローディングである。封入される薬物は電荷を帯びていなければならない。プロトン化または脱プロトン化の程度はイオン化可能な群のpKで制御される。共役酸または共役塩基はリポソームの内側で捕捉される。イオン化可能な薬物は、リポソームの外側に添加される。pHは低下し、薬物がリポソームの内側に補足されたイオン化可能な物質の中和塩として供されるほどである。pH変化のため、捕捉されたイオン化可能な分子に対する対イオンは、リポソームの中から拡散し得る。これにより、薬物がリポソーム内で拡散する原因となるのに十分なエネルギーでもって、勾配が創られる。例としては、前もって形成されたリポソーム内にドキソルビシンを充填することである。
【0065】
逆相蒸発において、脂質膜はジエチルエーテルに可溶し、典型的に約30mMの最終濃度にする。典型的に、封入した薬物とともに1部の水が3部のエーテル脂質溶液に添加される。音波処理形態におけるエネルギーは、懸濁液を強制的に均質エマルジョンにするのに適用される。安定したエマルジョンが形成された後(1〜3時間静置しても分離しない)、エーテルは蒸発により取り除かれ、典型的に直径が約200nmおよび高度な捕捉効率を持つリポソームを生じる。
【0066】
DNA封入のためのエタノール/カルシウムリポソームは、典型的に直径が50nmのリポソームを生じるが、上記のいずれかの方法で調製される(押し出し成形、均質化、音波処理)。リポソームは、プラスミドDNAまたは直鎖DNA断片に8mMの塩化カルシウムを加えて混合される。典型的に、エタノールが懸濁液に添加され、約40%の濃度を生じる。エタノールは透析により取り除かれ、結果として生じるリポソームは一般的に直径が200nm未満で、DNAの約75%がリポソーム中に封入される。
【0067】
本発明にしたがって、細胞の標的化のためにリポソームを上記のいずれかの方法で調製し得る。リポソームは、タンパク質が架橋(crosslink)され得る脂質を含有し得る。これらの脂質の例としては:N-グルタリル-ホスファチジルエタノールアミン(phosphatidylethnaolamine)、N-スクシニル-ホスパチジエタノールアミン(phospatidyethanolamine)、マレイミド-フェニル-ブチリル-ホスファチジルエタノールアミン、スクシニミジル-アセチルチオアセテート-ホスファチジルエタノールアミン、SPDP-ホスファチジルエタノールアミンである。グルタリルおよびスクシニミジルホスホスファチジルエタノールアミン(phosphosphatidylethanolamine)は、シクロカルボジイミドを使用して、アミン等の求核試薬と連結させ得る。マレイミド、アセチルチオアセテートおよびSPDPホスファチジルエタノールアミンは、タンパク質、ペプチドまたは1000g/mol未満の低分子量リガンド上でチオールと反応し得る。タンパク質は形成後リポソームへ誘導体化され得る。誘導体化されないタンパク質はゲル浸透クロマトグラフィーで取り除かれ得る。ペプチドおよび低分子量リガンドは脂質へ誘導され得、脂質膜の形成前に有機脂質溶液へ添加され得る。
【0068】
本発明にしたがって、有用な脂質の例としては、任意の小胞を形成する脂質(限定されないが、リン脂質、ホスファチジルコリン(下記で「PC」という)、両方とも天然由来で合成的に調製されるホスファチジン酸(下記で「PA」という)、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン(下記で「PS」という)、ホスファチジルエタノールアミン(下記で「PE」という)、スフィンゴ脂質、ホスファチジグリセロール(phosphatidyglycerol)(下記で「PG」という)、スピンゴミエリン(spingomyelin)、カルジオリピン、糖脂質、ガングリオシドまたはセレブロシド等)が含まれ、ダイズリン脂質など(例えば、アソレクチン、関連のある濃縮物)が単独かまたは混合されて使用される。PC、PG、PAおよびPEは精製された卵黄およびその水素添加誘導体から誘導され得る。
【0069】
任意に、他の脂質(ステロイド、異なるコレステロールイソマー、脂肪族アミン(長鎖脂肪族アミンおよびカルボン酸など)、長鎖硫酸塩およびリン酸塩、ジアセチルリン酸塩、ブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、レチノールおよびイソプレン化合物)は、リン脂質成分と混合され得、形成された小胞上に、ある所望で公知の特性が与えられる。さらに、改変された脂肪族部分(ヒドロキシル基、分枝炭素鎖、環式誘導体、芳香族誘導体、エーテル、アミド、多価不飽和誘導体、ハロゲン化誘導体)か、または改変された親水性部分(炭水化物、グリコール、リン酸塩、ホスホン酸塩、第四級アミン(quarternary amine)、硫酸塩、スルホン酸塩、カルボキシ、アミン、メルカプトまたはイミダゾール基、およびかかる基の組み合わせを含有する)を含有する合成リン脂質は、置換され得るか、または上記のリン脂質と混合され得、本発明にしたがって使用され得る。これらの成分のいくつかによって、リポソームの膜流動性が増大することは公知であり、したがってより効果的な取り込みを必要とし、他の成分は、例えば腫瘍細胞上にて分化の可能性に影響を与えることで、直接的な効果を有することが公知である。上記より、本発明の方法で調製された脂質成分の化学組成は、薬物捕捉割合のかなりの減少なく大きく変化させ得るが、小胞の大きさは脂質組成物の影響を受け得ることを理解されたい。
【0070】
ジパルミトイル等の飽和合成PCおよびPGもまた使用され得る。PCとともに有利に使用され得る他の両親媒性脂質は、ガングリオシド、グロボシド、脂肪酸、ステアリルアミン、長鎖アルコール等である。ポリエチレングリコール付加脂質、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドもまた含まれ得る。アシル化およびジアシル化リン脂質もまた有用である。
【0071】
さらなる例のために、いくつかの態様において、有用なリン脂質としては、卵黄ホスファチジルコリン(「EPC」)、ジラウリルオイルホスファチジルコリン(「DLPC」)、ジミリストイルホスファチジルコリン(「DOPC」)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(「DPPC」)、ジステアロイルホスファチジルコリン(「DSPC」)、1-ミリストイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(「MPPC」)、1-パルミトイル-2-ミリストイルホスファチジルコリン(「PMPC」)、1-パルミトイル-2-ステアロイルホスファチジルコリン(「PSPC」)、1-ステアロイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(「SPPC」)、ジオレオイルホスファチジルコリン(dioleoylphosphatidylycholine)(「DOPC」)、ジラウリルオイルホスファチジルグリセロール(「DLPG」)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(「DPPG」)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(「DSPG」)、ジステアロイルスフィンゴミエリン(「DSSP」)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(distearoylphophatidylethanolamine)(「DSPE」)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(「DOPG」)、ジミリストイルホスファチジン酸(「DMPA」)、ジパルミトイルホスファチジン酸(「DPPA」)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(「DMPE」)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(「DPPE」)、ジミリストイルホスファチジルセリン(「DMPS」)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(「DPPS」)、脳ホスファチジルセリン(「BPS」)、脳スフィンゴミエリン(「BSP」)、およびジパルミトイルスフィンゴミエリン(「DPSP」)が挙げられる。
【0072】
1つの態様において、ホスファチジルコリンおよびコレステロールが使用される。しかしながら、非ステロイド脂質のステロイド脂質(例えばコレステロール)に対するいかなる適切なモル比も、任意に使用され得、貯蔵および/または哺乳動物の被験体へ送達する間、特定の脂質薬物複合体の安定性を促進する。
【0073】
薬物および脂質の混合は、任意の有用な公知の技術、例えば、音波処理、渦、押し出し成形、微流動化、均質化、洗剤(例えば、透析で後に取り除く)の使用によりなし得る。薬物および脂質は、脂質対薬物モル比が約3:1〜約100:1またはそれ以上で混合され、特に比較的毒性が強い薬物に有用であり、より好ましくは約3:1〜約10:1、もっとも好ましいのは約5:1〜約7:1である。
【0074】
いくつかの薬物では、有機溶媒の使用でリポソーム等の脂質薬物複合体の産生が促進され得る。薬物および脂質の混合後、使用される温度にて脂質および薬物成分が安定している限り、有機溶媒を除去するための任意の適切な公知手段(真空または加熱による蒸発、例えば、ヘアードライヤーもしくはオーブンの使用、または熱エタノール注入(例えば、Deamer,米国特許第4,515,736号))によって取り除く。透析および/またはアフィニティクロマトグラフィーを含むクロマトグラフィーは、有機溶媒を取り除くために使用され得る。薬物の水和化は、水または生理学的に釣り合いのとれた容量オスモル濃度を維持する任意の生命適合性のある含水緩衝液、例えば、リン酸緩衝食塩水、HEPESもしくはTRISでもって実行される。リポソーム再水和化は、有機溶媒の除去と同時に達成され得るか、あるいはリポソームを使用するのにより都合の良い時間まで遅延され得る(例えば、Papahadjopoulosら,米国特許第4,235,871号)。再水和し得る(「乾燥」)リポソームの貯蔵寿命は、典型的に、約8ヶ月〜約1年である。この期間は凍結乾燥により長くなり得る。
【0075】
1つの態様において、脂質薬物複合体は単膜リポソームである。単膜リポソームは、薬物の最高度の曝露をリポソームの外側に提供し、標的細胞の表面で反応し得る。しかしながら、多膜リポソームもまた本発明にしたがって使用され得る。ポリエチレングリコール付加リポソームの使用はまた本発明の範囲内に包含される。
【0076】
脂質薬物複合体はさらに、具体的に免疫細胞表面のマーカーに結合する、少なくとも1つの標的化リガンドを含有する外部表面を含む。標的化リガンドの例は、具体的に目的のマーカーに結合する抗体(抗-CD209/DC-標識-特異性抗体、または抗-CD4、抗-CD45R0、もしくは抗-HLAクラスII等)を含む。「抗体」は、目的の特異的な標的結合性能力、すなわち、抗原特異性またはハプテン特異性標的化リガンドとともに、すべての抗体、ならびに抗体断片を含む。抗体断片としては、例えばFab、Fab’、F(ab’)2、またはF(v)断片が挙げられる。抗体はまた、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体であり得る。抗体はまた、脂質可溶リンカー部分と複合体を形成する抗原特異性またはハプテン特異性標的化リガンドを含む。いくつかの態様において、抗体は、黄色ブドウ球菌型のプロテインA、またはいくつかの他の細菌種の典型であるプロテインGを介して、リポソーム薬物複合体等の脂質薬物複合体と結合する。
【0077】
任意に、脂質薬物複合体はさらに、特異的な(すなわち活性のある)標的化能力、細胞傷害性、またはリポソームの他の治療パラメータをさらに高め得る1つ以上の生体膜成分を含む。かかる生体膜成分としては、膜関連のタンパク質、内在性または膜内外タンパク質(例えば、グリコホリンもしくは膜チャネル)、リポタンパク、糖タンパク、ペプチドトキシン(例えば、ハチトキシン)、細菌溶解素、黄色ブドウ球菌プロテインA、抗体、特異性表面受容体または表面受容体結合性リガンドが挙げられる。リポソームの表面に結合、またはリポソームの表面の内側に固定される特異性ベクター分子の使用はまた、膜内外送達およびリポソームカプセル化化合物の取り込みを高めるために本発明内に包含されるが、そうでない場合、該化合物は細胞へもしくは細胞内へ不十分に送達されるのみであるか、または具体的に望ましい細胞内小器官に効率よく送達されないであろう(例えば、Torchilin VP, Lukyanov AN, peptide and protein drug delivery to and into tumors: challenges and solutions, Drug Discov Today 2003 Mar 15; 8(6): 259-66; Sehgal A, Delivering peptides and proteins to tumors, Drug Discov Today 2003 Jul 15; 8(14): 619; Koning GA, Storm G, Targeted drug delivery system for the intracellular delivery of macromolecular drugs, Drug Discov Today 2003 Jun 1; 8(11): 482-3に概説)。かかるベクター分子は、種々のウィルスまたはショウジョウバエのアンテナペディア由来の、いわゆるタンパク質導入ドメイン(PTD)を含み得る。HIV疾患への適用のために、HIV Tatタンパク質、または誘導体、またはPTDとして作用する断片はまた有用である(例えば、Schwarze,S.R.,ら, In vivo protein transduction: delivery of a biologically active protein into the mouse, Science 285: 1569-72[1999])。
【0078】
リポソーム等の脂質薬物複合体は、必ずしもではないが、好ましくは直径が約30〜約150ナノメートルであり、より好ましくは、直径が約50〜約80ナノメートルである。
【0079】
本発明にしたがって、脂質薬物複合体は、後で使用するために、凍結乾燥等(例えば、Croweら,米国特許第4,857,319号)の任意の公知の保存方法によって保存し得る。典型的に、凍結乾燥または他の有用な低温保存技術は、二糖類等(例えば、トレハロース、マルトース、ラクトース、グルコースもしくはスクロース)の低温保存剤を含む。
【0080】
脂質薬物複合体、例えばリポソームは、任意の適切な手段(例えば注射等)により被験体へ投与される。投与および/または注射は、動脈内(intrarterial)、静脈内、クモ膜下腔内、眼球内、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、または特定のリンパ組織内もしくは腫瘍内もしくは他の外傷への直接(例えば定位)注射によりなし得る。脂質薬物複合体をリンパ管へ導入することは、好ましくは、皮下または筋肉内注射を介してである。
【0081】
本発明にしたがって、「リンパ組織」とは、鼡径部、腸間膜、回盲等のリンパ節、もしくは腋窩リンパ節、または脾臓、胸腺もしくは粘膜関連リンパ組織(例えば、肺内にて、腸壁の粘膜固有層、小腸のバイヤー斑、もしくは舌、口蓋および咽頭扁桃、またはヴァルダイアーの頚輪)である。
【0082】
注射はまた、血流とは対照的に、リンパ系内へ直接的または優先的に排出される任意の非静脈内方法によってなし得る。もっとも好ましいのは、典型的に脂質薬物複合体よりも大きい注射針ゲージを使用する皮下注射である。腹腔内注射もまた有用である。典型的に、注入量(injectate volume) (一般的に約1〜5cm3)の注射は、被験体の腕、脚または腹部内で行われるが、皮下注射のための任意の都合の良い部位が選択され得る。薬物は皮下投与されるので、本発明のいくつかの態様にしたがって、全身性血液循環に入る前にリンパ系に入り、その利点としては、
1)リンパ系全体への分布およびリンパ節における限局化;ならびに、
2)タンパク質介在による脂質薬物複合体の不安定化を回避または最小化、
が挙げられる。
【0083】
典型的にHIV/AIDSの処置において、注射の頻度は、もっとも好ましいのは週に1度であるが、それより多いまたは少ない(例えば毎月)頻度の注射が適正に与えられ得る。
【0084】
したがって本発明は、現在のAIDS処置計画において典型的に実践されているような、毎日における複数の薬物投薬よりむしろ簡便な週一回の注射を伴い得る処置計画を容易にする。この特徴は、数人の個々の患者にとって、処置の完全なる過程の向上した患者コンプライアンスを導き得る。
【0085】
本発明は、その好ましい態様に関して記載されるが、本明細書中に記載された方法および組成物の正確な例から外れて変形がなされ得、これらも本発明を具体化することを、当業者は理解されたい。
【実施例】
【0086】
実施例1 物質および方法
リポソームの調製
DOPC/Chol/DOPE-MBP(36.5:33.0:2.5 mol:mol:mol)から成る30μmol脂質フイルムを形成した(コレステロールは、Calbiochem,San Diego,CA,USAから購入され;DOPEおよびDOPE−MPBは、Avanti Polar Lipids,Alabaster,AL,USAから購入された)。脂質フィルムを、PBS(pH7.0)中の1ml 50mM カルセイン(Molecular Probes,Eugene,OR,USA)によって水和し、音波処理槽中で音波処理し(5分間)、手持ちサイズの押し出し成形機を使用して、0.1μm核孔フィルター(Avanti Polar Lipids)を通して、×5押し出した。また、凍解サイクルが使用され得る。平均リポソームサイズは、Nicomp380 ZLS Zeta-Potential Particle Sizer(Particle Sizing Systems,Santa Barbara,CA,USA)による、準電気散乱(quasielectric light scattering)によって決定され、146.7±31.0nmの平均直径を生じた。
【0087】
タンパク質Aリポソーム
標準化されたリポソームで異なる抗体の標的能力をテストすることを可能にするために、免疫グロブリン分子を、黄色ブドウ球菌プロテインAを介して、リポソームに結合させた。タンパク質Aは、42kDa分子量の単一ポリペプチド鎖からなるバクテリア細胞壁成分である。タンパク質Aは、免疫グロブリン分子のF領域、特にIgGに、特異的に結合する能力を有する。1つのタンパク質A分子は、IgGの少なくとも2つの分子と同時に結合し得る(Sjoquist J, Meloun B,Hjelm H,Protein A isolated from Staphylococcus aureus after digestion with lysostaphin,Eur J Biochem 29:572-578[1972])。リポソームを生じるタンパク質Aが形成され、抗体分子との結合におけるそれらの機能性をテストした。DC-SIGNの標的および他の膜マーカーは、いくつかのDC-SIGN-特異性mAbs(すべてIgG1κアイソタイプ)のどちらでもの確立された抗体濃度によりプレインキュベートされたタンパク質Aリポソーム、または関連性のないIgG1κ制御mAb(MOPC-21/P3)、もしくは他の膜マーカーのための抗体特性により得られた。
【0088】
タンパク質Aを、PBS中、10:1のSATA対タンパク質のモル比で、pH9.0で1時間、スクシニミジルアセチル-チオアセテート(SATA,Pierce Biotechnology,Rockford,IL,USA)で誘導した。無反応SATAを、PBS(pH=7.4)により平衡にされたセファデックス G-25 微細スピンカラムを使用してタンパク質Aから取り除いた。チオール保護基を、0.2ml 0.5M NH2OH(Sigma)、0.5M HEPES(pH=7.4)および25mM EDTA(Fisher)で15分間、誘導されたタンパク質Aをインキュベートすることにより取り除いた。反応物を取り除き、緩衝液をPBS(pH=6.5)で平衡させた セファデックス スピンカラムを通して変化させた。同時に、カルセイン含有リポソームをまた、PBS(pH=6.5)で平衡させた第2のG-25 セファデックス スピンカラムを通して遠心分離して、捕捉されないカルセインを取り除いた。誘導されたタンパク質Aを即時、タンパク質に対して100脂質のモル比でリポソームに加えた。RTでの2時間のインキュベートの後、リポソーム×タンパク質A接合体を、PBSにより平衡にしたセファロース(商品名)CL-4Bカラムを使用して、遊離タンパク質から分離した。チオール/タンパク質Aの数を、2mM5,5´-ジチオ-ビス(2-ニトロ安息香酸)(Aldrich,Milwaukee,WI,USA)によるそれらの反応により検証した。カルセインカプセル化効率およびリポソームの安定性についての測定としては、Triton Tx-100の不在および存在下で貯蔵された調製物のクエンチング(Q)[%]は、
【0089】
【数1】

【0090】
により決定された。
【0091】
免疫リポソームおよび抗体
カルセイン捕捉タンパク質Aリポソームを暗がりにて4℃で保存し、3ヶ月まで使用した。免疫リポソームを、テストモノクローナル抗体(mAb;以下参照)または関連性のない負の制御IgG(mAb MOPC-21/P3;eBioscience,San Diego,CA,USA);Reeves,JPら,Anti-Leu3a induces combining site-related anti-idiotypic antibody without inducing anti-HIV activity, AIDS Res Hum Retroviruses 7:55-63[1991])で、mAb:タンパク質Aを5:1のモル比で、RTにて30分間のタンパク質Aリポソームのインキュベートにより調製した。タンパク質Aに対する脂質のモル比は、およそ1000であった。結合していない抗体は、磁気タンパク質Aビーズ(New England Biolabs, Beverly, MA, USA)により取り除かれ得る。しかしながら、細胞の標識付けにおける著しい影響は、観察されなかった。
【0092】
タンパク質Aリポソームに結合するモノクローナル抗体を、Ficoll浮上法によりテストした。特異的に、抗体を、リポソーム(30分、RT)により、細胞標識のために使用されるmAb:脂質の比でインキュベートした。ポリクローナルウサギ抗-マウス Ab×アルカリ性ホスファターゼ(AP)をインキュベートに加えた。混合物を、最終容量0.4mlで、PBS中の30%フィコール貯蔵を使用して、20%フィコール400から作製し、マイクロヒュージ管に移し、0.4mlの10%フィコール/PBSを先端に重ね、続いてPBSの0.4-ml層に加えた。チューブをRTで15分間、15000rpmで遠心分離した。PBS/10%フィコール界面をAP活性に対して分析した。二次Ab×APによるインキュベートは、一次mAbおよび二次抗体によるインキュベートよりも10-フォールド(fold)低い活性を生じ、一次mAbが、リポソーム上のタンパク質Aに結合することを示した(結果は示されない)。
【0093】
DC-SIGNの標的のための最大効力を保証するmAbを同定するために、タンパク質Aリポソームを、クローン120507(IgG2b)、120526(IgG2a)(R&D Systems,Minneapolis,MN,USA)およびDCN46(IgG1κ)(BD Biosciences,San Jose,CA,USA)から誘導された3つの異なるCD209-特異的mAbsのどちらでもプレインキュベートした。mAb 120507による標的化は優れていることが判明し、本明細書に記載のその結果は、この抗体によって全面的に得られた。表現型(一次mAbsとして使用した)のためのおよび免疫リポソームを生じるための更なる抗体は、CD1a(BL6;Coulter immunotech,Miami,FL,USA)、CD4(SIM.4)(NIH/McKesson;cf.Acknowlegments)、CD14(UCHM-1)、CD45R0(UCHL1)およびCD83(HB15a17.11)(すべてSerotec,Oxford,UKから購入)に対して特異的であった。
【0094】
細胞結合/摂取調査
上澄み液から非結合性ベール細胞を小さくまとめて、4℃にて30分間PBS中1%EDTAで弱く結合した細胞を引き離すことによって、成熟細胞を7日目に採取し;穏やかに細胞スクレーパー(TPP)を適用することによって、強く結合した細胞が得られた。使用されるまですべての分画を貯留し、PBSで洗浄して、氷上にて80/20プラス1%FBS培地中で保持した。テストのために、細胞を、2×10細胞/ウェルの密度で、1%FBSで、新鮮な培養培地中で培養した。樹状細胞に対する標的の時間依存を得るために、同じ培地中のウェルあたり2×10MoDCまたは始まりは、以下に記載のように、1、3、および24時間、37℃においてもしくは他の時間および温度において50μM脂質で、リポソームによりインキュベートされた。インキュベートの後、該細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.2;二価のカチオンなしで)で3回洗浄し、蛍光活性細胞分離(FACS;すなわち、以下に記載の「フローサイトメトリー」)によって分析した。すべての実験では、リポソーム対細胞比は一定であった。
【0095】
フローサイトメトリー
(1)DCをHIV-1の選択M-および/もしくはT−指向性菌株によって感染させたまたはさせない、および/またはDC-SIGN-特異性もしくは制御リポソームによって処置されてまたは処理されない状態で、異なる時間にて、DC分化およびDC/T-細胞共培養(すなわち、混合された白血球培養または抗原特異的刺激)を通してMy-DCおよびT-細胞の表現型を決定するために;ならびに(2)カルセイン/薬物の、感染されたMy-DCもしくはより詳細には感染されたMoDCsへの送達を決定するために、フローサイトメトリーを使用し得る。(i)一次mAbsおよびフルオレセイン-5-イソチオシアネート(FITC)(eBioscience)(Gieseler,Rら,In-vitro differentiation of mature dendritic cells from human blood monocytes,Dev.Immunol.6:25-39[1998])で接合された二次ポリクローナルIgG、(ii)それぞれのカルセイン含有免疫リポソームによるインキュベート、または(iii)負の制御による間接的な染色の後ですぐに、製造者の指示書に従ったCoulter Epics XL-MCL(Beckman Coulter, Fullerton,CA)フローサイトメーターで、標識されたMoDCを分析した。フローサイトメトリーを行った;リポソームの標的および摂取調査に対してと同様に抗原発現に対して、ゲート細胞(gated cell)のみを評価した。簡潔に、細胞は、前方および側面拡散ドット製図によってゲートされ(gated)、残屑を排除した。ヒストグラムを、FITCおよびカルセインに対して適するようにゲート細胞に対して確立した(すなわち、λEX=488nmおよびλEM=525nm)。データをダウンロードし、試験サンプルおよび制御に対して一致するヒストグラムを、WinMDI 2.8 ソフトウェア(J.Trotter;facs.scripps.edu)でオーバーレイして分析した。それぞれのリポソーム/タンパク質 A/mAb構築によって、または関連性のないアイソタイプ制御抗体MOPC-21/P3を使用するリポソームの負の制御によって、DC(または、使用される場合、マクロファージ)をインキュベートした後、標的効力を、直接決定した。mAbsで充填していないタンパク質Aを使用する負の制御の結果は、関連のない制御IgGで得られたものと同一であった。MyDCによるリポソームの非特異的摂取による影響は、かくして排除され得る。
【0096】
免疫リポソームの標的効力
特異性mAbによる所与のマーカーの発現を決定するために、その有効な平均蛍光強度(ΔMFImAb)を、その測定されたMFI(MFImAb)と負の制御IgG(MFICo-IgG)に対して測定されたMFIとの差異として計算した。すなわち、
【0097】
【数2】

【0098】
および、このマーカー(MyDCmAb+[%])を発現するMyDCの割合として発現した。
【0099】
所与のmAb-結合免疫リポソーム(ILSmAb)の摂取を決定するために、その有効なMFI(ΔMFIILS)は、その測定されたMFI(MFIILS-mAb)および、免疫リポソーム負の制御(MFIILS-Co-IgG)に対して得られたMFIの差異から生じ、すなわち、
【0100】
【数3】

【0101】
かくして免疫リポソーム-陽性MyDCs(MyDCILS+[%])の割合を提供する。
【0102】
マーカー発現ならびに免疫リポソーム結合および摂取は、必ずしも対応しない。例えば、特異性mAbにより同定される場合、所与の抗原をはっきりと発現する一方、同じmAb特異性で標識された、より大きい免疫リポソームによる同じ抗原の相互作用は、表面マーカーの発散を導き得、信号蛍光(signal fluorescence)の損失を生じるであろう。式(II)および(III)に基づき、免疫リポソームのネット標的効率(TEILS)をかくして、
【0103】
【数4】

【0104】
として決定した(式中、100%に近い結果は、mAbおよびその一致する免疫リポソームの類似した結合を示し、;より低い結果は、リポソームの結合における信号の損失を示し;およびはっきりと100%より大きい結果は、リポソーム的に送達された発色光団の蓄積を示す。この故に、免疫リポソームのそれぞれの型の活性的摂取を示唆する式(IV)は、免疫リポソーム対蛍光的に標識されたmAbs(RFILS)の相対蛍光に対して容易に変換される)。
【0105】
【数5】

【0106】
(式中、信号蛍光において、マイナスの結果は損失を示し、およびプラスの結果は、利得を示す。)
【0107】
末梢血液白血球(PBL)
単核性白血球(MNLs)および/またはT細胞を前記のように調製した(Gieseler,R,ら,In-vitro differentiation of mature dendritic cells from human blood monocytes,Dev. Immunol.6:25-39[1998])。簡潔に、リンホプレップ(Lymphoprep)(p=1.077g/cm3;Nyegaard,Oslo,Norway)上で、密度勾配遠心分離法により、Ca2+/Mg2+(Cambrex,Walkersville,MD,USA)なしのリン酸緩衝食塩水(PBS)で1:1に希釈された全体の血液から、MLSを濃縮した。バッフィコートを採取して貯蔵し、残りの血小板を、PBSによる3〜4回の洗浄によって取り除いた。これらの手順は、260xgおよびセ氏4度で、数回の10−分の遠心分離工程を含む。
【0108】
単核細胞、CD4+およびCD8+T細胞の磁気活性化細胞分離(MACS)
単核細胞を、mAb-コート磁性マイクロビーズでCD3+、CD7+、CD19+、CD45RA+、CD56+およびmIgE+細胞を取り除くことによって、陰性磁気活性化細胞分離(MACS;Miltenyi,Bergisch-Gladbach,Germany and Auburn,CA,USA)により単離した。陰性単核細胞分離は、細胞活性化を避けるために選択され、製造業者の指示書に従って行われた。簡潔に、該手順は、0.5%ウシ血清アルブミン(BSA;細胞-培養等級、<0.1ng/mg エンドトキシン;ICN,Irvine,CA,USA)および2mM EDTA(Sigma,St.Louis,MO,USA)が追加されたPBSでの2度の洗浄を含み、洗浄された細胞を、規定された磁場(Miltenyi)中に配置されたLS磁性マイクロカラムに通過させ、CD14に対するフローサイトメトリーで決定されるように、該単核細胞を、98.6〜99.9%純度(n=3の範囲)にまで濃縮した。
【0109】
骨髄性樹状細胞の分化
成熟したおよび未成熟のMyDCを末梢血液単核細胞から生成した。簡潔に、ィンホプレップ(p=1.077g/cm3)(Nyegaard,Oslo,Norway)上のPBS-希釈全体血液の継続的な密度勾配遠心分離法により、引き続いて、陰性磁化細胞分離(MACS)により、製造者の指示書(Miltenyi)に従って、単核細胞を単離した。次いで、単核細胞を、96-ウェルマイクロタイタープレート(TPP,Trasadingen,Switzerland)中で、1×10/200μlで接種した。2つの一般的に受け入れられるプロトコルに従って、本発明者は、2つの異なる機能的要素DCの表現型を分化する。両方のプロトコルは、基本的DC分化因子として、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、およびインターロイキン4(IL-4)を使用し、かくして未成熟な抗原-捕捉DC段階(Peters JH,Xu H,Ruppert J,Ostermeier D&Gieseler RK, Signals required for differentiating dendritic cells from human monocytes in vitro, Adv Exp Med Biol;329:275-80[1993];Ruppert J,Schutt C,Ostermeier D&Peters JH,Down-regulation and release of CD14 on human monocytes by IL-4 depends on the presence of serum or GM-CSF,Adv Exp Med Biol;329:281-6[1993])を導く。
【0110】
次いで、成熟抗原を示すDCは、腫瘍壊死因子(TNF)-αを加えることによって得られ、T-ヘルパー(Th)1-およびTh2-依存免疫の両方の始まりとなり得るDC型を導く。(Caux C,Dezutter-Dambuyant C,Schmitt D &Banchereau J,GM-CSF およびTNF-α cooperate in the generation of dendritic Langerhans cells, Nature;360:258-61[1992];Sallusto F&Lanzavecchia A,Efficient presentation of soluble antigen by cultured human dendritic cells is maintained by granulocyte/macrophage colony-stimulating factor plus interleukin 4 and downregulated by tumor necrosis factor alpha, J Exp Med;179:1109-18[1994];Banchereau J & Steinman RM, Dendritic cells and the control of immunity, Nature;392:245-52[1998])。
【0111】
あるいは、成熟DCをインターフェロン(IFN)-γの存在下で生成した。(Gieseler R, Heise D,Soruri A, Schwartz P & Peters JH, In-vitro differentiation of mature dendritic cells from human blood monocytes, Develop Immunol; 6:25-39[1998])。かかるDCは、主にTh1細胞を誘導することが明らかであり、細胞傷害性T-細胞は、抗腫瘍免疫(Soruri, A.ら,Specific autologous anti-melanoma T cell response in vitro using monocyte-derived dendritic cells, Immunobiology;198:527-38[1998])、および、おそらく、MHC クラス I-制限抗原プレゼンテーションによる抗ウイルス性免疫反応を顕在化させる。ほとんどの場合では、DCは7日間で分化された。しかしながら、DCを、選択実験中で21日間まで保存した。すべての分化因子は、Sigma(St.Louis,MO,USA)より得られた。
【0112】
DC採取およびリポソームインキュベーション
採取されたMyDCおよびリポソーム調製物は、異なる相対的濃度(実験的背景による)で3時間、室温でインキュベーションし、遺伝子型、表現型および機能(PCR、フローサイトメトリー、ELISA、混合された白血球培養および想起(recall)抗原に対する刺激)評価が続いた。成熟した非結合および結合DCを7日目に採取した。
【0113】
はじめに、分化媒質が採集、遠心分離され、該小さくまとめられた非結合ベール細胞のDC画分を採取した。次に、結合DCを、PBS/EDTAにて30分間4℃でそれらをインキュベートすることにより、続いてゴム製のポリスマンを使用することによってウェルから分離した。分離した結合DCを、非結合画分と貯留し、細胞数を調整して、それぞれの実験を示すリポソーム濃度でインキュベートした。
【0114】
上記のように、TNF-αまたはIFN−γを使用するプロトコルにより得られた骨髄性樹状細胞を、マウス抗-ヒトIgG1κ mAbs(対照としてMOPC-21/P3)によるCD1a、CD4、CD14、CD40、CD45RA、CD45R0、CD68、CD69、CD83、CD184、CD195、CD206、CD207、CD208、および/またはCD209(すなわち、DC-SIGN)の発現に対してフローサイトメトリー的に分析した。ただ1つまたは2つのmAbsが使用されたかどうかによって、抗原は、FITC-、PE-、もしくはPC5-標識抗体により直接染色されたか、または非標識一次mAbsプラス二次ポリクローナルIgG×FITC(eBioscienceより入手可能)により間接的に染色された。
【0115】
MOPC-21/P3をIgG1κアイソタイプ制御として使用した。結果は、3つの目的(すなわち
(a)インビトロで分化した細胞が真性DC表現型を示すことを検証するため
(b)それらの表現型および個体間の差異を明確にするため、ならびに
(c)同じ抗体により標的化されたリポソームでのインキュベートの後に表示されるヒストグラムパターンによる所与のマーカーの発現を比較するため)を満たした。
【0116】
DC標的の前に、それぞれのテスト開始について、20μl抗-CD209(DC-SIGN)および/または作動希釈液(working dilution)での他の抗体を、RTでの1時間の回転における30μlリポソームによりインキュベートした。少なくとも5×10DCの細胞懸濁液の部分(または、使用される場合、マクロファージ)を、連続攪拌の下RTで3時間飽和条件下で、リポソームによりインキュベートし、次いで、フローサイトメトリーにより検査した(テスト条件は、1時間、3時間、および24時間であった。もっとも信頼し得るおよび再現できる結果は、3−時間共インキュベートにより得られた。)。
【0117】
HIV菌株
HIV菌株をNIH貯蔵所(Rockville Pike,Bethesda,MD)(すなわち、M-(R5-)tropic Ada-M およびBa-L;ならびにT-(X4-)tropic HXB3,Lai,Lai/IIIB および HTLV-IIIB)から入手した。HIV菌株を、当該分野で公知のプロトコルによるそれらの「組織-培養50%感染を起こす用量」(TCID50)に対してテストした。TCID50の結果によると、ウイルス性の上澄み液を、異なる用量感染速動性(dose-infection kinetics)での感染に対して使用されるまで、希釈、等分、および−80℃で冷凍した。
【0118】
T細胞の冷凍保存
分離されたCD4+もしくはCD8+T細胞、完全なT細胞、もしくは総リンパ球(TおよびB細胞を含む)を、当該技術分野で公知の方法に従って、個別に、または、2〜4つのドナー(同種異型の刺激に対して)からの-80℃もしくは−196℃にて蓄えた。自己のもしくは同種異系の混合された白血球培養、または想起抗原テストに対して必要である場合、かかる細胞は、解凍された。
【0119】
リポソームおよび抗ウイルス性薬物
1次の実験目的については、リポソームを、異なる抗原に対して特異的な抗体と交換可能に結合するように、タンパク質Aで表面標識した。これらのリポソームを、蛍光トレーサー色素として、カルセインを捕捉していた。適する薬物標的システムを発見するために、HIV増殖によって干渉される単一によって干渉される単一のもしくは組み合わされた薬物の範囲(例えば、Viread(登録商標)[テノフォビル]、Retrovir(登録商標)[AZT]、Epivir(登録商標)[3-TC]、Zerit(登録商標)[d4T]、Videx(登録商標)[ジダノシン]、Emtriva(登録商標)[エムトリシタビン]、Sustiva(登録商標)[エファビレンツ]、Viramun(登録商標)[ネビラピン]、Rescriptor(登録商標)[デラビルジン]、Norvir(登録商標)[リトナビル]、Agenerase(登録商標)[アンプレナビル]、Hivid(登録商標)[ddC]、lopinavir、Kaletra(登録商標)、[ロピナビル+リトナビル]、Viracept(登録商標)[ネルフィナビル]、Crixivan(登録商標)[インジナビル(indinovir) スルファート]、Fortovase(登録商標)[サキナビル]、Invirase(登録商標)[サキナビルメシレート]および/またはAtazanavir(登録商標))、ならびに、まだ治療的調査の実験的段階である他の薬物が、抗−HIV効力の証拠を得るために使用され得る。
【0120】
HIV p24コア抗原に対するELISA
上澄み液は、商業的に入手可能なELISA(Abbott Laboratories)によるp24の存在に対し、製造者の指示書に従ってテストされ得る。
【0121】
HIVに対する量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)
樹状細胞宿主DNA中へのHIVプロウイルス性DNAの組み込みの程度は、以下のような、HIVプロウイルス性配列に対する、ネステッドプライマー対(ネステッドセミ−qPCR)を使用することによって決定され得る。
外側のプライマー: 5'-agt-ggg-ggg-aca-tca-agc-agc-cat-gca-aat-3'//(配列番号:1)
5'-tca-tct-ggc-ctg-gtg-caa-3'//(配列番号:2)
内側のプライマー:5'-cag-ctt-aga-gac-cat-caa-tga-gga-agc-5g-3'(5-FAM)//(配列番号:3);
これは、5-カルボキシフルオレセインで標識されたLUX-プライマーである(すなわち、5-FAM;「5」=5-FAM)。
5'-ggt-gca-ata-ggc-cct-gca-t-3'//(配列番号:4)。
DNAの単離は、製造者の指示に従って(「Easy-DNA-kit」、プロトコル♯3中の「Small Amounts of Cells, Tissues, or Plant Leaves」、Invitrogen)達成され得る。PCR反応混合物は、一般的に以下のものを含む:緩衝剤(5μlの10X PCR Rxn 緩衝剤,Invitrogen);MgCl2(3μlの50mM MgCl2,Invitrogen);dNTP(1μのdATP、dCTP、dGTP、dTTPの混合物:それぞれ10μM);外側のプライマー(配列番号1;1μlの10 pmol/μl); 外側のプライマー(配列番号2;1μlの10 pmol/μl);Taq(0.2μlの5 Unit/μl、白金Taq DNA ポリメラーゼ、Invitrogen);2倍蒸留水(37μl);DNA試料(2μl)。1つの標準熱サイクルプロフィールは、以下のものであった:95℃で5分間;(95℃で20秒;55℃で30秒; 72℃で30秒)×25;72℃で2分間;4℃を保つ。PCRは、一般的に、外側のプライマーの代わりに内側のプライマー(配列番号3および配列番号4)を使用する以外に、新鮮なPCR反応混合物中の第1反応から転移した、増幅されたDNAの2つのマイクロリットルを使用し、異なる熱サイクルプロフィール:95℃で5分間;(95℃で20秒;55℃で30秒; 72℃で30秒)×35;72℃で2分間(0.5℃の工程中、融解曲線が95℃から55℃まで下がった)を使用して繰り返される。
【0122】
所与の試料において、DNA定量化は、HIVプロウイルス性DNAの公知の量のDNA試料の連続希釈溶液で比較することによって、得られうる。総細胞DNA(例えば、樹状細胞から)の異なる内容物による試料からHIVプロウイルス性DNAを定量化するために、複合−PCRが行われ得る。簡潔に、第2ネステッドPCRは、ヒト染色体配列(ゲノム当量)に対して6-カルボキシ-4',5'-ジクロロ-2’,7'-ジメトキシフルオレセインスクシニミジルエステルで標識されたLUXプライマーで、同様の反応中で行われ得る。これは、試料当たりの総DNA内容物の定量化を可能にする。ヒトゲノム当量あたりのプロウイルス性コピーの数は、かかるデータから算出され得る。
【0123】
実施例2 単一特異的または両特異的免疫リポソームによる免疫細胞の活性標的
末梢血液単核細胞(PBMNC)はそれらの大きさ(前方散乱)および粒状度(側方散乱)に従って評価され、かくして、未処理T細胞およびB細胞、ならびに単核細胞としてゲート化され;T細胞およびB細胞を活性化し;ならびに単核細胞は血液樹状細胞を小さい割合で含む(データは示されない)。培養された単核細胞-誘導樹状細胞(MoDC)を、DC亜型マーカーに対してと同様に、それらの発生段階(成熟)を描写するマーカーの発現に対してテストした。該DCは、HIV感染において重要な役割を果たすと考えられる、皮膚および粘膜のDC表現型に対して、典型的なマーカーを発現する。粘膜の経路によって感染される場合、粘膜のDCは、HIVにより直接感染される第1の免疫細胞型であり(およびプロウイルス性DNAとしてその遺伝子情報を統合する)および/またはDC-SIGNによりそれらの表面上のHIVを採取し、および/または細胞質内の画分(例えば、エンドソーム、融解された食作用-エンドソーム、またはファゴリソソーム)中でそれを保持する様々な機構のいずれかによってHIVを吸収する。次いで、かかる細胞は、局所領域リンパ節を移動し、ここでHIVを他の細胞型に移し、もっとも顕著なのは、他のレザーバー(reservoir)細胞と同様に、T-ヘルパー細胞(すなわち、「CD4細胞」)が次のリンパ節安定DCの発生を含むことである。これをすべて考慮すると、インビトロ系中で発生するDCは、かくしてインビボのかかる細胞に対する仮定の標的効力をテストするための理想的なモデルを提供する。
【0124】
GM-CSF、IL-4および続くTNF-αにより7日間の培養によって成熟したMoDCを、DCまたはその副次集団により一般的に発現されるマーカーの発現に対するフローサイトメトリーによってテストした。DC-SIGN(CD-209)は別として、表皮の(CD1a)および腸の(CD4)樹状ランゲルハンス細胞、ならびに鼻の粘膜(CD14)と同様に、インビトロおよびインビボの成熟DC(CD40、CD45R0、CD83)を描写するマーカーを選択した。表現型は、かくして、(i)成熟としてインビトロで発生するMoDCを検証するために;(ii)MyDCへの免疫リポソーム化合物送達に対する予想の標的としてDC-SIGN(CD209)の強い発現を証明するために;(iii)一貫した高い発現の要求に適合する、更なる潜在的なターゲット抗原の位置を示すため、および(iv)発生したMoDCが、インビボの表皮のおよび粘膜のランゲルハンス細胞により発現する、潜在的な標的構造として、CD1aおよび/またはCD14を発現したかどうかを決定するためにということを、満足させる。
【0125】
テスト状態対負の制御(n=3)の相対平均蛍光強度(ΔMFI)は、CD1a+++、CD4±、CD14±to+++、CD40++to+++、CD45R0+to+++、CD83+、およびCD209+++としての成熟したMoDCの表現型プロフィールを特徴付けた[(-)は負の制御と一致するテスト抗体;(±)は負の制御より大きいΔMFIピーク≦×5;(+)は、負の制御より大きいΔMFIピーク≦×10;および(+++)は、ΔMFIピーク≧×250負の制御を示す]。テストされたすべてのマーカー中、CD14の発現は、ドナーの間で最も著しく変異した。対照的に、DC-SIGN(CD209)およびCD1a(ランゲルハンス細胞マーカー)は、検査されたすべてのドナー中で一貫して高い発現を示した。
【0126】
図1は、DC-SIGNまたは他の標的リガンドによって媒介された、MoDCに対するカルセイン標識リポソームの標的を示す。成熟したMoDCはインビトロで7日間発生した。単一特異的な(monocpecific)リポソーム(CD1a、CD83、もしくはCD209に対して)または両特異的なリポソーム(CD1a+CD83、CD1a+CD209、もしくはCD83+CD209に対して)を得るために、MoDCにより発現された重要なマーカーに対して特異的な1つもしくは2つのモノクローナル抗体(mAbs)のいずれかによって、リポソームをインキュベートした(Zhou LJ, Tedder TF, CD14+ blood monocytes can differentiate into functionally mature CD83+ dendritic cells, Proc Natl Acad Sci USA;93(6):2588-92[1996];Gieseler R, Heise D,Soruri A,Schwartz P,Peters JH,In-vitro differentiation of mature dendritic cells from Human blood monocytes, Develop Immunol.;6(1-2):25-39[1998].Geijtenbeek TB, Torensma R,van Vliet SJ, van Duijnhoven GC, Adema GJ, van Kooyk Y, Figdor CG, Identification of DC-SIGN, a novel dendritic cell-secific ICAM-3 receptor that supports primary immune responses, Cell;100(5):575-85[2000];Geijtenbeek TB,Kwon DS, Torensma R, van Vliet SJ, van Duijnhoven GC, Middel J,Cornelissen IL, Nottet HS, KewalRamani VN, Littman DR, Figdor CG, van Kooyk Y, DC-SIGN, a dendritic cell-specific HIV-1-binding protein that enhances trans-infection of T cells, Cell;100(5):587-97[2000])。
【0127】
成熟したMoDCが、連続的で穏やかな攪拌下で、37℃、3時間リポソームでインキュベートされた場合、最も良い結果が得られた。上記のプロトコルを使用して、更なる標的変異体が今日では、表面形成組織中のランゲルハンス細胞により発現された潜在的標的としてCD1aおよびCD83(Teunissen MBM, Dynamic nature and function of epidermal Langerhans cells in vivo and in vitro:a review, with emphasis on human Langerhans cells, Histochem. J. 24:697-716[1992])ならびに成熟リンパ系内MyDC(Zhou LJ, Tedder TF, CD14+ blood monocytes can differentiate into functionally mature CD83+ dendritic cells, Proc Natl Acad Sci USA 93:2588-92[1996]; Gieseler R ら,In-vitro differentiation of mature dendritic cells from human blood monocytes, Dev Immunol 1998;6:25-39[1998])を含む。CD1aおよびCD83マーカーは、比較的あり得ない標的構造であることが判明した。対照的に、DC-SIGNの標的は、さらに高いリポソーム的結合およびフルオロクロムの摂取を示した(図2)。
【0128】
モノクロナール抗体(mAbs)およびテストされたmAb-標識免疫リポソームは、CD4、CD45R0およびCD209(DC-SIGN)に対して特異的であった。実験は、免疫リポソームによる成熟MyDCに対する最も好ましいインキュベーションの時間を示し、1つまたは2つの型のいずれかの免疫リポソームによる(単一標的において使用された濃縮物の後半分)インキュベーションが決定的な利点を提供し得るかどうかを調査した。FITC-標識二次抗体(左手カラム)により視覚化された特異性mAbsの結合は、抗原(Ag)発現の程度を明らかにした。同じドナーから生じた成熟MyDCを、37℃[仮実験では、37℃が4℃もしくはRTよりも優れていることが証明された(示されない)]で免疫リポソームにより、1、3または24時間インキュベートした(図1、右側の列)。表現型または標的に対するフローサイトメトリー的ヒストグラム(陰をつけた曲線)および負の制御(白の(empty)曲線)は、ノイズに対する最も良い信号の比、最も一貫した(consistent)摂取、および3時間のインキュベーションに対して最も高い再生能力を示す。最も強い染色は、抗-CD209に対してであり、二番目には、抗-CD45R0に対して発見された。両方の状態の組み合わせは、DC-SIGNの単一特異的標的をこえる実質的な利点を有さなかった。図1中に示されるように、最も効果的な標的およびリポソーム内容物の送達は、CD209(DC-SIGN)の単一特異的リポソームの標的により得られた。mAbsのみの標的効力、およびLS結合mAbの標的効力が比較された場合、リポソームの送達が、増加した(内部)細胞蛍光を導くことは明らかであった。リポソームのカルセインの送達は、抗体-接合FITCに比べて右側シフトへと導いたことを示した。
【0129】
図2は、運動性および効力に関しての単一特異的リポソームの標的を示す。前の実験(図1参照)に対して、採取および測定の前に2時間リポソームにより、細胞をインキュベートし、ここで、リポソームの摂取の時間運動性(すなわち、24時間をこえていくつかの時間点におけるカルセインの摂取)を調査した。MoDCは、CD14を膜密度の幅広い範囲をこえて発現したが(左手のグラフを参照)、この表現型パターンは、標的の後に反映されなかった。対照的に、CD209(DC-SIGN)標的は再び、摂取の最も高い割合を示した;また、抗原発現(左手のグラフ)および標的効率(3-hグラフ)のパターンは非常に類似していた。これは、CD209-標的リポソームの結合において、DC-SIGN-リポソーム複合体は明らかに、ほぼ完全に内面化されることを意味し、かくしてリポソーム内容物を細胞内区画へ送達する。この結論は、CD209受容体(すなわち、抗原、HIV、Candida albicans、およびLeishmania amastigotes)に対して公知の1つの主な機能と一貫している(例えば、Engering A, Geijtenbeek TBH,van Vliet SJ, Wijers M, van Liempt E, Demaurex N, Lanzavecchia A, Fransen J, Figdor CG, Piguet V, van KooyK Y., The dendritic cell-specific adhesion receptor DC-SIGN internalizes antigen for presentation to T cells, J Immunol. 168(5):2118-26[2002];Kwon DS, Gregorio G, Bitton N, Hendrickson WA, Littman DR, DC-SIGN-mediated internalization of HIV is required for trans-enhancement of T cell infection, Immunity 16(1):135-44[2002]; Cambi A, Gijzen K, de Vries JM, Torensma R, Joosten B, Adema GJ, Netea MG, Kullberg BJ, Romani L, Figdor CG, The C-type lectin DC-SIGN(CD209) is an antigen-uptake receptor for Candida albicans on dendritic cells, Eur J Immunol. 33(2):532-8[2003]; Colmenares M, Puig-Kroger A, Pello OM, Corbi AL, Rivas L, Dendritic cell(DC)-specific intercellular adhesion molecule 3 (ICAM-3-)grabbing nonintegrin(DC-SIGN,CD209), a C-type surface lectin in human DCs, is a receptor for Leishmania amastigotes, J Biol Chem. 277(39):36766-69[2002])。
【0130】
図4A(左パネル)および図4B(左パネル)は、標的の計算された値およびMoDCに適用される単一特異的免疫リポソームの表面結合を示す;記載された結果は、少なくとも3つの独立した実験の見本である。図4A中で提供されるのは、MoDCが選択マーカー(FITC 蛍光)を発現する割合、および対応する免疫リポソーム(カルセイン蛍光)で標的化されたMoDCの割合である。FITCおよびカルセイン濃度は、すべてのmAbまたはリポソーム条件下で等モルであったので、免疫リポソームのネット標的効力(TEILS)および免疫リポソーム対mAbの相対蛍光(RFILS)は、決定され得る(式IVおよびV;図4B)。すべてのテストされた変異体の中で、単一特異的免疫リポソームの標的DC-SIGNは、最も高いTEILSを示し、正のRFILS値を示す唯一の調製物であった(標的MoDC上または内のリポソームの蓄積を示す)。
【0131】
CD209-結合リポソームのリポソーム的標的効力は、83.31%であった(図4A、左パネル)、そして図1中のそれぞれのLS 結合/摂取グラフは、制御ピーク(開いたカーブ)と比較して、すべての細胞に対して右シフト(陰をつけた曲線)を実証する。これは、ほんのわずかにDC-SIGNを発現する場合でも、100%の細胞が効率的に標的されたことを示す。一見すると、第二の、抗-CD1aまたは抗-CD83リポソーム(両特異的リポソーム)による抗-DC-SIGNリポソームの組み合わせは、増加した摂取に影響を与えなかった。しかしながら、結合の開始において、抗体濃度は、ただ1つの抗体により標的する場合に使用された濃度のただ半分であった。従って、更なる調査は、単一特異的標的と比較した場合、両特異的標的が実際に標的効力を高め得るかどうかを決定することを、保証するものである。
【0132】
図3は、2つの細胞マーカー(「両特異的標的」と称する)によるDCのリポソームの標的を示し、24時間を超える標的効力の時間依存性を含む。両特異的標的を、CD4、CD45R0およびCD209の全ての2−メンバー(member)の組み合わせ、または入れ替えで実行した。図2中で、最も良い結果は、ここで再び、標的化リポソームによる細胞の3時間のインキュベーションで得られた。
【0133】
図3Aは、抗-CD4プラス抗-CD45R0標的リガンドの組み合わせに対する結果を示す。インキュベーションの時間に関わらず、図2中で示された実験と比較する場合、リポソームの摂取における負の効果が得られた。抗-CD4-および抗-CD45R0-特異性標的の組み合わせは、それゆえ、2倍-正の細胞部分集合(例えば、リンパ系器官中に存在する(residing)静止(resting)T-記憶細胞集団)による高められた摂取を支持することがはっきりしなかった。類似した結果が、抗-CD209プラス抗-CD45R0標的リガンドの組み合わせを生じるリポソームについて観察された(図3C)。
【0134】
図3Bは、抗-CD4プラス抗-CD209標的リガンドの組み合わせについての結果を示す。図2中で示された実験と比較する場合、標的リガンドの組み合わせの結果として、リポソームの摂取における更なる効果が存在した。注目すると、図3B中の横座標は、蛍光中の対数の増加として、リポソームの摂取を示す。従って、CD4およびCD209の組み合わさった標的による摂取の向上は、少なくとも2つの要因によるものであり、かくして、本発明に従って、抗-CD4および抗-CD209標的リガンドの組み合わせを使用するリポソームの標的樹状細胞は、例えば、HIV疾患を処置する際の、有用な選択肢であり得る。別のHIV貯蔵所である脂肪細胞はまた、CD4およびCD45で標的することによって、標的され得る(例えば、Hazan, U. ら,Human adipose cells express CD4, CXCR4, and CCR5receptors: a new target cell type for the immunodeficiency virus-1? FASEB J. 16, 1254-1256[2002; Erratum in: FASEB J. 16:4(2000); Kannisto,K. ら, Expression of adipogenic transcription factors, peroxisome proliferator-activated receptor γ co-activator 1, IL-6 and CD45 in subcutaneous adipose tissue in lipodystrophy associated with highly active antiretroviral therapy, AIDS 17,1753-1762[2003])。
【0135】
両特異性開始における半飽和濃度にて、CD209に対する標的は、CD1a-またはCD83-指向変異体(B;両特異的:固体直線バー(solid-lined bars)の欠乏している標的効力の多くの埋め合わせをすると考えられる。しかしながら、CD209(図4A)に対する単一特異的および両特異的開始の間の比較は、半飽和状態であっても、DC-SIGNを発現する全ての細胞が標識されたことを明らかにし、CD1a/CD209に対する107.46%のTEILSおよびCD83/CD209に対する112.17%のTEILSを生じた(図4B;両特異的:ダッシュバー(dashed bars);図4A中の抗-CD209参照状態を飽和することによる近似)。飽和および非飽和CD209-特異的リポソームに対する両方の結果は、約110%のTEILSにて摂取動態を制限するMyDCについて示唆する。
【0136】
図4B(右側のパネル)中で、正(+)の値によるネット標的効力は、効果的に標的化された細胞の割合が、抗体のみにより認識される割合よりも高かったことを示す;負(-)の値は、抗体よりも、効率的な標的が低いことを示す;-100%の値は、細胞が全く標的化されなかったことを示す。全ての値は、細胞および標的化されたリポソームの3時間の共インキュベーションをいう。3つの最も良い標的状態は、CD209>CD83+CD209>CD1a+CD209であった。CD4+CD45R0を標的する両特異的免疫リポソームに対する標的効力は、58.54%であった;CD4+CD209を標的する両特異的免疫リポソームに対する標的効力は、68.74%であった;CD45R0+CD209を標的する両特異的免疫リポソームに対する標的効力は、62.21%であった。
【0137】
本明細書中で表わされるデータは、DC-SIGN標的系が、現在公知であるいずれかまたは全ての型のHIV-阻害化合物を送達するために、異なるHIVレザーバー集団(すなわち、脊髄性樹状細胞およびマクロファージ部分集合)を標的し得ることを示す。本発明にしたがって、これらのレザーバー母集団を、連続的な免疫の発生に対するDC-SIGN-結合ウイルスを統合するため、同様に細胞の表面からウイルスを取り除くために標的し得、妊娠中の母から子へのウイルス転移を防止し得る。DC-SIGNは、ヒトおよびマカークにおける粘膜および皮膚の樹状細胞の型によって強く発現される(Geijtenbeek, TB ら、DC-SIGN: a novel HIV receptor on DCs that mediates HIV-1 transmission, Curr Top Microbiol Immunol. 2003; 276:31-54[2003]; Yu Kimata MT ら, Capture and transfer of simian immunodeficiency virus by macaque dendritic cells is enhanced by DC-SIGN, J Virol. 76(23):11827-36[2002])。かくして、DC-SIGN-標的リポソームでHIV-感染個体を処置することは、本発明によれば、HIV疾患の病因学的に感染した、および影響を受けた第一の細胞集団を活発に標的する利益を提供する。
【0138】
DC-SIGNは更に、ある胎盤の解剖学的構造内に位置する、樹状および他の細胞により発現される(例えば、 Soilleux EJ ら, Placental expression of DC-SIGN may mediate intrauterine vertical transmission of HIV, J Pathol. 195(5):586-92; Soilleux EJ, Coleman N, Transplacental transmission of HIV: a potential role for HIV binding lectins, Int J Biochem Cell Biol. 2003 Mar;35(3):283-7[2003]; Kammerer U ら, Unique appearance of proliferating antigen-presenting cells expressing DC-SIGN(CD209) in the decidua of early human pregnancy, Am J Pathol.162(3):887-96[2003])。かくして、静脈内、皮下または直接的な子宮内の適用で投与された場合、本発明の方法は、母から子へのHIV転移において明らかに重要な役割を果たし、また、垂直伝播と称されるこれらの細胞の標的化の利益を提供する。
【0139】
実施例3 蛍光-顕微鏡による摂取調査
HIV-1に感染後、蓄積された感染性ウイルスでの細胞質内区画は、未成熟および成熟MyDCの両方で、実証可能である(Frank, I ら, Infectious and whole inactivated simian immunodeficiency viruses interact similarly with primate dendritic cells(DCs): differential intracellular fate of virions in mature and immature DCs, J Virol 76:2936-51[2002])。従って、比較のために、未成熟または成熟DCを、抗-CD209-標識リポソームで37℃において、3、4または5時間インキュベートした(それぞれn=3で)。次いで、該細胞を、上記のように採取し、分離した同型クラスターへ穏やかにピペットで移した(位相差顕微鏡検査により制御されて)。小さくまとめられた単一の細胞を連続的に100μlのProLong 抗消滅マウンティング培地中に溶解させ、5μMの積極的に充填されたAT-結合DNA染色、4',6-ジアミノ-2-フェニルインドール(DAPI)(両方、Molecular Probes, Eugene, OR, USAから購入)を、そこに加えた。50μlのそれぞれの調製物を、ポリ-L-リシン-コートスライド(Labscientific, Livingston, NY, USA)に移し、カバーグラスし、密閉して、検分される前の少なくとも15分間、暗闇で保存した。次いで、調製物あたり約100の細胞をふるい分けし、MoDCを、Zeiss Axioskop microscope(Carl Zeiss, Thornwood, NY, USA)で、カルセイン(グリーン)およびDNA/核(ブルー)の表面および細胞内蛍光に対してスクリーニングした。典型的な染色を表示するMyDCの顕微鏡写真の断層撮影は、0.5μmステップで行われ、細胞あたり27〜35の連続薄片を得た(このように、n=12にて、13.5〜17.5μmのMyDCに対する直径の範囲を示す)。デジタル写真撮影は、ORCA-1 CCD カメラで実行された(Hamamatsu, Bridgewater, NJ, USA)。写真の現像、グリーンおよびブルーの蛍光のマージング(merging)、ならびに、光学的な深さでMyDCを覆うフィルムクリップを発生することに関連するマイクロトモグラフィーを、Nothern Elite V.6.0 ソフトウェアパッケージ(Empix Imaging, Cheek towaga, NY, USA)で行った。ヨウ化プロピジウムでの核染色、同様に極度に鮮明な核のDAPI染色による評価から、死んだ細胞を排除した。mAb MOPC-21/P3を運ぶ免疫リポソームを、負の制御;抗-CD209 mAb×FITCを使用した正の制御として採取した。
【0140】
図5は、上記のように蛍光顕微鏡検査によって決定された表面結合対標的化されたリポソームの内面化を説明する。光を放つ膜蛍光から細胞内を識別するために、次いで、0.5μmのステップで、MoDC体あたり27〜35のマイクロトモグラフィーを撮影した。CD209-特異的リポソームによる3時間のインキュベーションの後(図4B中のCD209状態に対応する)、グリーンのカルセイン標識は、細胞の表面上でのみ見られ、主に、より大きいDC-SIGN-リッチ脂質ラフト(rich lipid rafts)に限定された(図5、パネル1;培地の光学的薄片の描写)。同じ細胞の全ての連続薄片のオーバーレイは、より低いフォアグラウンド中の、他の重ね合わされたDC-SIGN脂質ラフト(raft)を示し、いくつかの散乱した蛍光は、リポソームの大きさに一致する(図5、パネル2)。しかしながら、5時間のインキュベーションの後、リポソーム的に捕捉されるカルセインを、完全に内面化した。状態あたりで検査された約100のMoDCの全ての中で、該細胞は、細胞内蛍光の拡散性および濃縮された領域の両方を示した(図5、パネル3−8)。重要なことに、かなり低い蛍光強度を表示する領域(図5、3;矢じり形のもの)は、常に核として同定され、はっきりとトレーサー化合物の細胞内送達を証明する(図5、パネル4;図5中で示される細胞を描写し、パネル3,ブルーの核DAPI染色で溶け込む)。時折、ほとんどのカルセインが内面化される一方(図5、パネル5;矢じり型のもの)、いくつかのリポソームの結合は、なお、CD209-リッチ表面ラフト(図5、パネル5;矢型のもの)中で見られる。この時、カルセイン中で大いに濃縮された区分が、全てのMoDC中で見られ(図5、パネル6;矢じり形のもの)、それらの約四分の一が、顕著な核周囲の蛍光を示した(図5、パネル7)。摂取の量によって、この領域は、時に核外の空間の大部分をカバーする(図5、パネル8)。同様の条件下でインキュベートされた未成熟MyDCにより得られた結果は、本質的に同一であったが、細胞内リポソーム/カルセイン摂取は、4時間のインキュベーションの後にすでに見られた(個別には示されない)。細胞が3時間インキュベートされた場合、トリパンブルーによる細胞外蛍光のクエンチングは、完全に蛍光をさえぎったが、5時間のインキュベーションの後に影響を有さず、それによって図5中で描写された結果を確認した。
【0141】
正の制御が非常に急速に結合され、内面化されたが、負の制御は表面結合または摂取を示さなかった(示されない)。DC-SIGN-特異的FITC-接合 mAbを、リポポリサッカライド-成熟ヒトMyDCに加える場合、Schjetneらは、それが15分後、細胞外に位置することを示し、45分後、細胞内に位置することを示した(Schjetne KW ら, A mouse Cκ-specific T cell clone indicates that DC-SIGN is an efficient target for antibody-mediated delivery of T cell epitopes for MHC class II presentation, Int Immunol 14:1423-30[2002])。わずかに異なるプロトコルによって生じたDCを使用すると、FITC-標識 抗-DC-SIGN mAbによる正の制御の結果は、類似していた。
【0142】
対照的に、より大きく標的化されたリポソームの細胞内摂取は、MoDCの成熟段階によって、より長く5時間までかかった。これらの結果は、DC-SIGN-結合粒子の大きさが、細胞摂取に対して要求される時間と逆に対応することを意味するが、本明細書で使用されるリポソームの大きさ(約150nmの平均直径で)は、それらの摂取を妨げない。従って、トレーサー化合物を適した薬物と交換することによって、これらのリポソームは、本明細書に従うと、価値のあるDC-特異的標的ビヒクルとなる。この理論は、例えば、未成熟MoDCあたり少なくとも1×10の分子によるCD209(DC-SIGN)の、一貫して高い表面発現によりさらに支持され、かくして、非常に信頼できる標的を供給する(Baribaud F ら, Quantitative expression and virus transmission analysis of DC-SIGN on monocyte-derived dendritic cells, J Virol 76:9135-42[2002])。重要なことに、実証した標的効力は、肝臓由来の物質として(Downing, I ら, Immature dendritic cells possess a sugar-sensitive receptor for human mannan-binding lectin, Immunology 109:360-4[2003])培養およびインキュベーションの間に使用される胎児ウシの血清の少量の成分をおそらく構成するマンナン-またはマンノース-結合レクチンの(MBL)存在下で得られた。いずれの事象においても、MBLでさえ、未成熟ヒトMoDCによって、自己由来的に分泌される(secrete)ことが、近頃示された(Downing I ら, Immature dendritic cells possess a sugar-sensitive receptor for human mannan-binding lectin, Immunology 2003;109;360-4[2003])。更に、自己のC-型レクチンドメインを媒介として、MBLは、HIVがDC-SIGNへ結合するのを予防し得る(Spear GT ら, Inhibition of DC-SIGN-mediated trans infection of T cells by mannose-binding lectin, Immunology 2003;110:80-5[2003])。従って、可溶性 MBL(おそらく類似する特徴を示す、他の同定されない分子)は、本発明のDC-SIGN-特異的リポソームが膜結合C型レクチンと相互に作用するのを防げなかった。
【0143】
リポソームに封入されたトレーサー、カルセインを使用することによって、選択した他のMyDCマーカー(CD1a、CD4、CD45R0、CD83)と比較して、DC-SIGNに対する優れた標的効力を、フローサイトメトリー的におよび数学的に実証した。蛍光顕微鏡検査は、さらに未成熟および成熟MyDCの両方によって、DC-SIGN-特異的リポソームの時間依存性表面結合および細胞内摂取を示した。DC-SIGN-特異的免疫リポソームに対して発見したネット標的効力、および蛍光顕微鏡検査的な摂取の調査は、明確に有効な結合、内面化および細胞内化合物の送達を示す。DC-SIGN-標的免疫リポソーム(すなわち、CD209に特異的に結合する標的リガンドを含む)が、それらの内容物を、未成熟および成熟MyDCの両方に送達すること、および細胞質の分布に加えて、それらの内容物は、分離した細胞内区画(図5)、またはエンドソームのそれぞれ中で、強く蓄積することが示された。HIV-1および投与されたリポソームは、大きさにおいて比較可能であるという事実と共に、これらの観察は、発明の送達系が正確に同じ区分に到達するのを可能にし、ここで、大いに感染性のあるHIV-1が保存されて、いずれの全身性の攻撃から救出される。適切な免疫リポソーム的に送達された薬剤は、本発明に従って、かくして、いずれの治療的戦略によってもまだ送られていない、重要な聖域に到達するであろう。別の重要な利益は、これらのリポソームが延長された時間に対する、MyDCの表面において保持されるという事実によって、抗原特異的刺激中の、リンパ器官および組織内のDCで相互に作用するTh細胞がまた、この戦略によって治療的に到達し得るということである(Gieseler RK, Marquitan G, Hahn MJ, Perdon LA, Driessen WHP, Sullivan SM, Scolaro MJ, DC-SIGN-specific liposomal targeting and selective intracellular compound delivery to human myeloid dendritic cells: implications for HIV disease, Scand J Immunol;59:415-24[2004];Marquitan G, Gieseler RK, Driessen WHP, Perdon LA, Hahn MJ, Wader T, Sullivan SM, Scolaro MJ, Intacellular compound delivery to human monocyte-derived dendritic cells by immunoliposomal targeting of the C-type lectin DC-SIGN. MACS & MORE, in press[2004])。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】図1は、DC-SIGNまたは他の標的化リガンド(二重特異的組合せを含む)に媒介されるMo-DCに対するカルセイン標識リポソームの時間依存的標的化を示す。「抗原発現」の項目の欄は、mAbのみで試験したそれぞれのマーカー(1つまたは複数)の表現型の発現を示す。検出は、mAb結合蛍光色素, フルオレセイン-5-イオチオシアネート(iothiocyanate)(FITC)を用いてフローサイトメトリーにより行ない、「LS結合/取込み」の欄は、リポソーム封入された蛍光色素カルセインの細胞内送達により証明される成功裡の標的化および取込みを示す。
【図2】図2は、速度論および有効性に関する単一特異的リポソームによる標的化を示す。成熟MoDCを、本明細書に記載のプロトコルにしたがって作製し、CD4、CD14、CD45R0またはCD209に対するmAbが提供された標的化されたタンパク質Aリポソームの異なる構築物の取込みについて調べた。MoDCを、リポソームと1、3または24時間同時インキュベートした後、回収し、フローサイトメトリーにより試験した。対照mAbを用い、それぞれの抗原の細胞性表面発現を検出した(「マーカー発現」の項目の欄)。白(empty)の曲線はイソタイプ対照を示し、灰色(shaded)の曲線は試験状態を示す。太線の十字形を有する2つのパネルは、最大平均蛍光強度を示し、これは、カルセイン取込みの最高速度を示す。
【図3】図3は、2つの細胞マーカーによるDCのリポソームによる標的化(二重特異的標的化とよぶ)を示し、24時間の期間にわたる時間依存性の標的化有効性が含まれる。成熟MoDCを本明細書に記載のプロトコルにしたがって作製し、抗CD4、抗CD45R0および抗CD209 mAbの2つの構成員の組合せを有する標的化プロテインAリポソームの異なる構築物の取込みについて調べた。MoDCを、リポソームとともに1、3または24時間同時インキュベートし、次いで、回収し、フローサイトメトリーにより試験した。対照mAbを用い、それぞれの抗原の細胞性表面発現を検出した(「マーカー発現」の項目の欄)。白の曲線はイソタイプ対照を示し、灰色の曲線は試験状態を示す。図3Aは、抗CD4標的化リガンドと抗CD45R0標的化リガンドの組合せの結果を示す。図3Bは、抗CD4標的化リガンドと抗CD209標的化リガンドの組合せの結果を示す。図3Cは、抗CD45R0標的化リガンドと抗CD209標的化リガンドの組合せの結果を示す。
【図4】図4は、MoDCに負荷した免疫リポソームの標的化および表面結合に関する計算値を示す。図4Aおよび図4Bに、選択マーカーを発現するMoDCのパーセンテージ (FITC 蛍光; 図4Aは、n = 2の独立した実験の相加平均および上限を示す; 図4Bは相加平均から誘導した因子(factor)を示す)および対応する免疫リポソーム(カルセイン蛍光)により標的化されたMoDCを提供する。
【図5】図5は、蛍光顕微鏡で測定した、標的化リポソームの表面結合対内在化を示す。元の倍率:×1000(パネル1および2)および×400(パネル3〜8)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物を、骨髄系前駆細胞、樹状細胞、単球、マクロファージおよびTリンパ球からなる群より選択される、哺乳動物被験体の免疫細胞に優先的に送達する方法であって、薬物を含有し、かつ感染因子に感染しているか、または感染し易い免疫細胞の表面上のマーカーに特異的に結合する少なくとも1つの標的化リガンドを含有する外側表面をさらに含有する脂質薬物複合体を哺乳動物被験体に投与することを含む、方法。
【請求項2】
感染因子がウイルスである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
感染因子が、細菌、真菌、原生動物またはプリオンである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ウイルスが、HIV、HSV、EBV、CMV、エボラウイルスおよびマルブルクウイルス、HAV、HBV、HCVおよびHPVからなる群より選択される、請求項2記載の方法。
【請求項5】
脂質薬物複合体がリポソーム薬物複合体である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
薬物が抗ウイルス薬である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
薬物が抗HIV薬である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
抗HIV薬がHIV特異的低分子干渉性RNA(siRNA)である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
抗HIV薬がHIV特異的アンチセンスDNAである、請求項7記載の方法。
【請求項10】
抗HIV薬がHIV特異的センスDNAである、請求項7記載の方法。
【請求項11】
抗HIV薬がHIV特異的アンチセンスRNAである、請求項7記載の方法。
【請求項12】
抗HIV薬がHIV特異的センスRNAである、請求項7記載の方法。
【請求項13】
薬物が、インジナビル、サキナビル、ネルフィナビル、またはフマル酸テノフォビルジソプロキシルである、請求項1記載の方法。
【請求項14】
薬物が、抗癌薬、抗真菌薬、抗菌薬または免疫調節剤である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
脂質薬物複合体が、1種類以上の第2の薬物をさらに含有する、請求項1記載の方法。
【請求項16】
薬物が細胞傷害剤である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
薬物が免疫細胞中で活性のある免疫調節剤である、請求項1記載の方法。
【請求項18】
感染因子が薬物に感受性である、請求項1記載の方法。
【請求項19】
投与が血管横断経路による、請求項1記載の方法。
【請求項20】
投与が皮下、皮内、腹腔内または非経口経路による、請求項1記載の方法。
【請求項21】
免疫細胞が樹状細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項22】
樹状細胞が骨髄性樹状細胞、形質細胞様樹状細胞または小胞樹状細胞である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
標的リガンドが特異的にCD209(DC−SIGN)に結合する、請求項21記載の方法。
【請求項24】
Tリンパ球がT記憶細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項25】
脂質薬物複合体が、CD4に特異的に結合する標的化リガンドおよびCD45R0に特異的に結合する標的化リガンドを含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
脂質薬物複合体の外部表面が、IgGに特異的に結合するよう適合された黄色ブドウ球菌プロテインAをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項27】
標的化リガンドが、黄色ブドウ球菌プロテインAによって特異的に結合されるモノクローナルまたはポリクローナル抗体である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
マーカーが、病理学的に変化したまたは突然変異した主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の転写物である、請求項1記載の方法。
【請求項29】
薬物が、樹状細胞媒介ワクチン接種に対する発現ベクターである、請求項1記載の方法。
【請求項30】
薬物が天然物質である、請求項1記載の方法。
【請求項31】
天然物質が植物由来の精製物である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
天然物質が組み換えによって産生される、請求項30記載の方法。
【請求項33】
天然物質が葉由来のIDS-30抽出物である、請求項30記載の方法。
【請求項34】
天然物質が根茎由来のUDAレクチンである、請求項30記載の方法。
【請求項35】
天然物質がMHLである、請求項30記載の方法。
【請求項36】
外側表面上に、CD209に特異的に結合する標的化リガンドを含有する、標的されるリポソーム。
【請求項37】
外側表面上に、CD209に特異的に結合する標的化リガンド、およびCD4に特異的に結合する標的化リガンドを含有する、標的されるリポソーム。
【請求項38】
標的化リガンドが、黄色ブドウ球菌プロテインAによって特異的に結合されるモノクロナール抗体である、請求項36または37記載の標的されるリポソーム。
【請求項39】
骨髄系前駆細胞、樹状細胞、単球、マクロファージおよびTリンパ球からなる群より選択される、哺乳動物の免疫細胞にリポソームを優先的に標的化する方法であって、活性剤を含有し、かつ、免疫細胞の表面上のマーカー(該マーカーは、CD209、CD45R0、およびCD4からなる群より選択される)に特異的に結合する少なくとも1つの標的化リガンドを含有する外側表面をさらに含有するリポソームを免疫細胞に投与することを含む、方法。
【請求項40】
活性剤が薬物である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
薬物が抗HIV薬である、請求項40記載の方法。
【請求項42】
薬物が、インジナビル、サキナビル、ネルフィナビル、またはフマル酸テノフォビルジソプロキシルである、請求項40記載の方法。
【請求項43】
薬物が、抗ウイルス薬、抗癌薬、抗真菌薬、抗菌薬または免疫調節剤である、請求項40記載の方法。
【請求項44】
薬物が、細胞傷害剤である、請求項40記載の方法。
【請求項45】
活性剤が、免疫細胞中で活性のある免疫調節剤である、請求項39記載の方法。
【請求項46】
免疫調節剤が、免疫抑制剤である、請求項45記載の方法。
【請求項47】
免疫調節剤が、免疫賦活剤である、請求項45記載の方法。
【請求項48】
リポソームが、その外側表面上に、CD209に特異的に結合する標的化リガンド、およびCD4に特異的に結合する標的化リガンドを含有する、請求項39記載の方法。
【請求項49】
薬物を、哺乳動物被験体の器官系または解剖学的部分の細胞型に優先的に送達する方法であって、薬物を含有し、かつ、該細胞型(器官系または解剖学的部分が感染因子に感染しているか、または感染し易い)の表面上のマーカーに特異的に結合する少なくとも1つの標的化リガンドを含有する外側表面をさらに含有する脂質薬物複合体を哺乳動物被験体に投与することを含む、方法。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2007−505925(P2007−505925A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527075(P2006−527075)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/030578
【国際公開番号】WO2005/027979
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(506092499)レット ゼア ビー ホープ メディカル リサーチ インスティチュート (1)
【Fターム(参考)】