説明

骨髄異形成症候群を治療および管理するための免疫調節化合物の使用方法およびそれを含む組成物

【課題】骨髄異形成症候群を治療、予防または管理する方法の提供。
【解決手段】免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグを単独で、あるいは第2の有効成分、および/または血液もしくは細胞の移植と組み合わせて投与することを包含する。特定の第2の有効成分は、血球形成に作用し得る。また、本発明の方法での使用に適した医薬組成物、単一用量剤形、およびキットも記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫調節化合物を単独で、あるいは既知の治療薬と組み合わせて投与することを含んでなる、骨髄異形成症候群とその関連症候群を治療、予防および/または管理する方法に関する。また、本発明は、医薬組成物および投薬計画にも関する。特に、本発明は、免疫調節化合物の使用と、骨髄異形成症候群に関する標準的な治療法および/または移植治療法との組み合わせを包含する。
【背景技術】
【0002】
2. 発明の背景
2.1 MDSの病理生物学
骨髄異形成症候群(MDS)は、造血幹細胞疾患のさまざまな群を意味する。MDSは、形態および成熟(髄鞘形成:dysmyelopoiesis)に障害のある骨髄細胞、末梢血血球減少症、ならびに急性白血病に進行する可変リスクを特徴とし、結果として血球形成が困難となる。The Merck Manual 953 (第17版、1999年)、およびListら、1990年、J. Clin. Oncol. S :1424。
【0003】
初期の造血幹細胞損傷は、これらに限定されるものではないが、細胞傷害性化学療法、照射線、ウイルス、化学薬品への暴露および遺伝的疾病素因等に起因し得る。骨髄にクローン変異が生じ、健常幹細胞が抑制される。MDSの初期段階では、血球減少症の主な要因は、プログラムされた細胞死(アポトーシス)の増加である。この疾患が白血病へ進行および変化した場合には、遺伝子変異の発生は稀であり、白血病細胞の増殖によって健全な骨髄が壊滅される。疾患経過は、緩慢性疾患として特性を示す一部の症例と、急性白血病の形態に変化する、臨床経過が非常に短かい進行性疾患として特性を示すそれ以外の症例とで異なる。
【0004】
MDSの米国における実際の発病率は不明である。MDSは1976年に初めて明確な疾患と見なされ、その新たに発生する症例は、毎年1500件と推定された。その時点では、芽球細胞が5パーセント未満である患者だけがこの疾患に罹患していると考えられていた。1999年以降の統計では、新規症例が1年に13,000件に達すると推定され、子供においては1年に約1,000件の症例が報告されている。この件数は、西欧諸国における白血病の最も一般的な形態である慢性リンパ球性白血病を上回るものである。発病率が増加しているという認識は、診断に対する識別や基準の向上によるものであるかもしれない。この疾患は世界中で確認されている。
【0005】
血液病専門医の国際グループであるフランス・アメリカ・イギリス(FAB)の共同グループは、MDS疾患を5つのサブグループに分類し、急性骨髄白血病と区別した。The Merck Manual 954 (第17版、1999年);Bennett J. M.ら、Ann. Intern. Med. 1985年10月, 103 (4): 620-5;およびBesa E. C., Med. Clin. North Am. 1992年5月, 76 (3): 599-617。患者の骨髄細胞でみられる基本的な3系統の異形成変化がすべてのサブタイプで確認されている。
【0006】
骨髄芽球が骨髄中5パーセント以下であることを特徴とする、不応性貧血のサブグループは2つある:(1)不応性貧血(RA)と、(2)環状鉄芽球を伴うRA(RARS)(ミトコンドリア内での異常な鉄の沈着に起因する、異常環状鉄芽球を伴う赤血球系細胞を15%有するものとして形態学的に定義されている)である。両サブグループは、臨床経過が長く、急性白血病への移行発病率は低い。Besa E. C., Med. Clin. North Am. 1992年5月, 76 (3): 599-617。
【0007】
また、5パーセントを超える骨髄芽球を伴う不応性貧血に関するサブグループは2つある:(1)過剰芽球を伴うRA(RAEB)(骨髄芽球6〜20%として定義されている)と、(2)骨髄芽球21〜30%を伴う急性転化を来たしたRAEB(RAEB-T)である。骨髄芽球の比率が高いほど、臨床経過は短くなり、この疾患は急性骨髄性白血病に近づく。初期段階から進行段階に至る患者の変化は、これらのサブタイプが別個に存在するというのではなく、疾患の単なる段階にすぎないということを示唆している。3系統異形成症であり、かつ骨髄芽球が30%を越えるMDSの高齢患者(急性白血病に移行する)は、化学療法に対する患者の反応率がde novo急性骨髄白血病患者よりも低いことから、予後不良であると考えられる場合が多い。近年の世界保健機構(WHO)の分類(1999)は、患者が類似の予後結果を有するとの理由で、RAEB-Tのすべての症例、または骨髄芽球が20%を超える患者急性白血病のカテゴリーに含めることを提案している。しかし、治療に対するそれら疾病の応答は、de novo急性非リンパ球白血病またはより典型的な急性骨髄性白血病(ANLL)患者に比べて悪い。同上。
【0008】
最も分類が困難であるMDSの5番目のタイプは、慢性骨髄単球性白血病(CMML)と呼ばれるものである。このサブタイプは、骨髄芽球はいかなる比率でもよいが、単球増多が1,000/dL以上を示すものである。このサブタイプは脾腫に関係している可能性がある。また、このサブタイプは骨髄増殖性疾患と重複し、中間の臨床経過を有し得る。このサブタイプは、Ph染色体陰性を特徴とする古典的慢性骨髄性白血病(CML)と区別されている。近年のWHO分類(1999年)は、若年性CMMLと増殖性CMMLは、脾腫があり、全WBCが13,000を超えるMDS/骨髄増殖性疾患(MPD)に基づいて、FABとは別にリストアップすることを提案している。CMMLは、全白血球が13,000個/mm3未満であり、かつ3系統異形成症を必須とする、単球増多症に限定される。同上。Harris N. L.ら, J. Clin. Oncol. 1999年12月,17 (12): 3835-49。最後に、WHOを含む他のいくつかの国際組織によって、del(5q)異常を特徴とするMDS患者の第6番目の分類が示唆されている。
【0009】
MDSは主として高齢者の疾患であり、70歳代に発症のピークがある。MDS患者の平均年齢は65歳であり、その年齢範囲は30歳代前半から80歳以上に及んでいる。またこの症候群は、いかなる年齢群でも発症する可能性があり、小児集団も含まれる。アルキル化剤を使用した副作用のある治療(放射線療法の併用あり、または併用なし)を経た患者は、MDSまたは二次性急性白血病を発症する発病率が高い。患者の約60〜70%は、MDSに関連する明白な曝露または原因はなく、一次性MDS患者として分類される。
【0010】
MDSの中で最も一般的な症例は、一次性MDSまたは特発性MDSである。しかし、患者の約50%には、疾患発症10〜15年前に確認不可能な化学薬品または照射に対して曝露された非特異性履歴がある可能性がある。この病因への関連性は未確認のままである。ベンゼン、殺虫剤、除草剤および防カビ剤等の化合物(これに限定されるものではない)は、MDS発症の原因となる可能性がある。Goldberg H.ら、Cancer Res., 1990年11月1日; 50 (21):6876-81。二次性MDSは、骨髄損傷を発生し得る化学療法剤に対する明らかな曝露の後に、MDSまたは急性白血病が発症することが記載されている。これらの医薬品は、曝露後のMDSまたは急性白血病診断時における染色体異常の高い発病率に関係している。
【0011】
さらに、MDSは、重篤な血球減少症に随伴した合併症に関係している。他の合併症は、骨髄繊維症の発症である。これは血球数の減少を加速し、輸血の必要性を高め得る。急性白血病へ移行すると、貧血、出血および感染等の合併症の発症が早くなる。
【0012】
近年、国際MDSリスク分析(International MDS Risk Analysis:IMRA)ワークショップは、MDS患者における生存とAMLリスクを予測する際の不正確性を低減するため、国際予後診断スコアリングシステム(International Prognosis Scoring System:IPSS)を提案した。IPSSは、血球減少数、BM芽球の割合、および細胞遺伝学的異常のタイプに基づいている(表1)。Greenberg P, Cox C, Le Beau MMら、Blood、1997, 89:2079-88。最後のタイプは、良好サブグループ(正常、-Y、del(5q)、del(20q))、中間サブグループ、および不良サブグループ(複合または7番染色体異常)に分類されている。
【表1】

【0013】
2.2 MDS治療
現時点におけるMDSの治療は、疾患プロセスの特定フェーズに主に現れる疾患の段階および機序に基づいている。骨髄移植は、予後不良患者または後期MDS患者で用いられてきている。EpsteinおよびSlease、1985, Surg. Ann. 17: 125。しかし、この種の治療は、侵襲的方法を伴うことからドナーおよび被移植者双方にとって苦痛であるとともに、特に同種移植した被移植者に重篤かつ致命的な合併症をもたらし、関連の移植片対宿主疾患(GVHD)が起こる可能性がある。従って、GVHDのリスクから、他に重大な疾患を患っている患者に対しては骨髄移植の使用は制限される。さらに、患者のほとんどが高齢であり、少数の若年MDS患者にしか一致のドナーがいないので、骨髄移植の使用は制限される。
【0014】
MDSの治療に関する代替手法は、被移植者の血球形成を刺激する造血成長因子またはサイトカインの使用である。Dexter、1987, J. Cell Sci. 88: 1;Moore、1991, Annu. Rev. Immunol. 9: 159;およびBesa E. C., Med. Clin. North Am., 1992年5月, 76 (3): 599-617。血球形成のプロセスによって、少数の自己更新幹細胞は細胞系特異的始原細胞を生じさせ、引き続いて増殖と分化が起こり、成熟した循環系血球が製造されるが、このプロセスは少なくとも一部では特定のホルモンによって調節されていることが明らかになっている。これらのホルモンは、総称して造血成長因子として知られている。Metcalf, 1985, Science 229: 16;Dexter, 1987, J. Cell Sci. 88: 1;GoldeおよびGasson, 1988, Scientific American, 7月: 62;TabbaraおよびRobinson, 1991, Anti-Cancer Res. 11: 81;Ogawa, 1989, Environ. Health Presp. 80: 199;ならびにDexter, 1989, Br. Med. Bull. 45: 337。最もよく特徴を表す成長因子としては、エリスロポエチン(EPO)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、および顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)が挙げられる。造血始原細胞の増殖および分化の誘導とは別に、かかるサイトカインもまた、多数の成熟血球の機能を活性化すること(成熟造血細胞の移動を促すことを含む)が明らかになっている。Stanleyら, 1976, J. Exp. Med. 143: 631;Schraderら, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78: 323;Mooreら, 1980, J. Immunol. 125: 1302;Kurlandら, 1979, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 76: 2326;HandmanおよびBurgess, 1979, J. Immunol. 122: 1134;Vadasら, 1983, Blood 61: 1232;Vadasら, 1983, J. Immunol. 130: 795;ならびにWeibartら, 1986, J. Immunol. 137: 3584。
【0015】
しかし残念ながら、造血成長因子は、多くの臨床設定で有効であることは証明されていない。組換えヒトGM-CSFおよびG-CSFで治療したMDS患者の臨床試験では、これらのサイトカインが治療患者の顆粒球生成を回復させることはできたが、ヘモグロビン数または血小板数ではほとんど改善がないか、全く改善が見られず、顆粒球系または単球系に対してはこれらの有効性が限定的であることがわかった。Schusterら, 1990, Blood 76(補遺1):318a。かかる患者を組換えヒトEPOで治療した場合、ヘモグロビンの持続性改善または輸血必要性の低減は、わずか25%未満の患者において達成されたにすぎない。Besaら, 1990, 76(補遺1): 133a;Hellstromら, 1990, 76 (補遺1): 279a;Bowenら, 1991, B7. J Haematol. 77: 419。従って、MDSを治療および管理する安全かつ効果的な方法が今なお必要とされている。
【0016】
2.3. 疾患の治療に有用なサリドマイドおよび他の化合物
サリドマイドは、サロミド(登録商標)の商標名で販売されており、化学名称がα-(N-フタルイミド)-グルタルイミドまたは2-(2,6-ジオキソ-3-ピペリジニル)-1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオンであるラセミ化合物である。サリドマイドは、当初、つわりを治療する目的で1950年代に開発されたものであるが、その催奇形性作用からその使用が中止された。サリドマイドは、米国では、ハンセン病における癩性結節性紅斑の皮膚症状の急性期治療で承認されている。Physicians' Desk Reference, 1154-1158 (第56版, 2002)を参照されたい。妊婦にサリドマイドを投与すると先天性異常が発生する可能性があるので、その販売は厳密に規制されている(同上)。報告によれば、サリドマイドは慢性移植片対宿主病、慢性関節リウマチ、サルコイドーシス、複数の炎症性皮膚病、および炎症性腸疾患等の他の疾患の治療で研究されている。一般には、Koch, H. P., Prog. Med. Chem. 22: 165-242 (1985)を参照されたい。また、Moller, D. R.ら, J. Immunol. 159: 5157-5161 (1997); Vasiliauskas, E. A.ら, Gastroenterology 117: 1278-1287 (1999); Ehrenpreis, E. D.ら, Gastroenterology 117: 1271-1277 (1999)も参照されたい。さらに、サリドマイドは、冠状動脈閉塞および大脳閉塞に随伴する乏血/影響を治療するための他の薬剤と組み合わせることができることが報告されている。米国特許第5,643,915号を参照されたい。なお、この特許は参照により本明細書に組み入れるものとする。
【0017】
さらに最近では、サリドマイドは、後天性免疫不全症候群の各種疾患症状、悪液質、および後天性免疫不全症候群の日和見感染で免疫調節作用および抗炎症作用があることが確認された。サリドマイドの生理学上の標的を明らかにする研究では、この薬剤は、その鎮静作用を除く種々の生物活性、例えば、神経毒性、催奇形性、単球/マクロファージによるTNF-α産生の抑制、高濃度のTNF-αに随伴する炎症毒性、ならびに血管形成および新血管新生の阻害をはじめとする活性を有することが確認された。
【0018】
さらに、薬効が種々の皮膚症状、潰瘍性大腸炎、クローン病、ベーチェット症候群、全身性エリテマトーデス、アフター性潰瘍および狼瘡で認められている。in vivoモデルにおけるサリドマイドの抗血管形成特性が報告されている。D'Amatoら, Thalidomide Is An Inhibitor Of Angiogenesis, 1994, PNAS, USA 91: 4082-4085。
【0019】
サリドマイドの治療上最も重要である有望な用途の1つは、癌治療における用途である。この化合物は、難治性多発性骨髄腫、脳腫瘍、乳癌、結腸癌および前立腺癌、ならびに黒色腫、中皮腫および腎細胞癌等の様々なタイプの癌治療で研究されてきている。例えば、Singhal, S.ら, New England J Med. 341 (21): 1565-1571 (1999);およびMarx, G. M.ら, Proc. Am. Soc. Clin. Oncology 18: 454a (1999)を参照されたい。また報告によれば、サリドマイドを用いて、ドキソルビシン誘発のラットの慢性心筋症の発症を予防することができる。Costa, P. T.ら, Blood 92(10: 補遺1): 235b (1998)。特定の癌治療におけるサリドマイドの使用に関する他の報告としては、多形膠芽腫の治療におけるサリドマイドのカルボプラチンとの併用が挙げられる。McCann, J., Drug Topics 41-42 (1999年6月21日)。また報告によると、デキサメタゾンとの併用におけるサリドマイドの使用は、支持療法として、ヒト果粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、シプロフロキサシン、および非吸収性抗真菌剤をさらに投与されている多発性骨髄腫患者の治療で有効であった。Kropff, M. H., Blood 96 (11 第1部): 168a (2000);さらに、Munshi, N.ら, Blood 94 (10 第1部): 578a (1999)も参照されたい。サリドマイドを含む他の化学療法との組み合わせは、R. GovindarjanおよびA. Zeitlanの国際出願第PCT/US01/15326号とJ. B. Zeldisらの国際出願第PCT/US01/15327号に記載されている。
【0020】
サリドマイドよりも治療上の安全性および有効性が高い化合物を提供するために、研究者は、多数の他の化合物(その一部はサリドマイドの誘導体である)を研究し始めている。例えば、Marriott, J. B.ら, Expert Opin. Biol. Ther. 1 (4): 1-8 (2001); G. W. Mullerら, Journal of Medicinal Chemistry 39 (17): 3238-3240 (1996);およびG. W. Mullerら, Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 8: 2669-2674 (1998)を参照されたい。例としては、これらに限定されるものではないが、置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)フタルイミドおよび置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドールが挙げられる。これらは、ともにG. W. Mullerらの米国特許第6,281,230号および第6,316,471号に記載されている。
【0021】
LPS刺激PBMCによるTNF-α産生を強く阻害するそれらの効能に関して選択された一連の化合物が研究されている。L. G. Corralら, Ann. Rheum. Dis. 58 (補遺I):1107-1113 (1999)。これらの化合物は、IMiDs(商標)または免疫調節剤と呼称されているが、TNF-αを強く阻害するだけでなく、LPS誘導単球IL1βおよびIL12産生を著しく阻害することが明らかにされている。またLPS誘導IL6も部分的ではあるがIMiDs(商標)によって阻害される。またこれらの化合物はLPS誘導IL10の強力な刺激剤であり、IL10濃度を200〜300%まで上昇させる(同上)。
【0022】
かかる多数の化合物が治療薬として期待されることが明らかとなったが、それらの作用機序と有効性については今なお研究途中である。さらにまた治療薬には、MDSとその関連疾患を治療することが求められている。
【発明の開示】
【0023】
3. 発明の概要
本発明は、骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome, 「MDS」)を治療または予防する方法であって、かかる治療または予防が必要な患者に、治療上または予防上有効な量の免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグを投与することを含んでなる、前記方法を包含する。また本発明は、MDSを管理する(例えば、鎮静時間を延長する)方法であって、かかる管理が必要な患者に、治療上または予防上有効な量の免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグを投与することを含んでなる、前記方法を包含する。
【0024】
本発明の一実施形態は、造血成長因子、サイトカイン、癌化学療法剤、幹細胞移植およびその他の移植のような現在MDSの治療、予防または管理に使用されている慣用の治療法と組み合わせて、1種以上の免疫調節化合物を使用することを包含する。
【0025】
さらに本発明は、本発明の免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグを含む、MDSの治療、予防または管理における使用に好適な医薬組成物、1回用量製剤(single unit dosage form)およびキットを包含する。
【0026】
4. 発明の詳細な説明
本発明の第1の実施形態は、MDSを治療または予防する方法であって、かかる治療または予防が必要な患者に、治療上または予防上有効な量の免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグを投与することを含んでなる、前記方法を包含する。この実施形態は、不応性貧血、環状鉄芽球を伴う不応性貧血、過剰芽球を伴う不応性貧血、急性転化を来たした過剰芽球を伴う不応性貧血、および慢性骨髄単球性白血病のようなMDSの特異的なサブタイプの治療、予防または管理を包含する。
【0027】
本明細書では、「骨髄異形成症候群」または「MDS」という用語は、下記の1つまたは複数を特徴とする造血幹細胞障害を意味する:血球形成不良、進行性血球減少、急性白血病への移行のリスク、または形態および成熟(髄鞘形成:dysmyelopoiesis)に障害のある骨髄細胞。「骨髄異形成症候群」または「MDS」という用語は、特に断りのない限り、不応性貧血、環状鉄芽球を伴う不応性貧血、過剰芽球を伴う不応性貧血、急性転化を来たした過剰芽球を伴う不応性貧血、および慢性骨髄単球性白血病を含んでいる。
【0028】
本発明の別の実施形態は、MDSを管理方法であって、かかる管理が必要な患者に、予防上有効な量の免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグを投与することを含んでなる、前記方法を包含する。
【0029】
さらに本発明の別の実施形態は、免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグとを含む医薬組成物を包含する。
【0030】
さらに、本発明は、免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグを含んでなる1回用量製剤を包含する。
【0031】
本発明の別の実施形態は、免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグを含む医薬組成物および第2の有効成分またはデキサメタゾンまたは使用説明書を含んでなるキットを包含する。
【0032】
本発明の一実施形態は、MDSを治療、予防または管理する方法であって、かかる治療、予防および/または管理が必要な患者に、治療上または予防上有効な量の免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグと、治療上または予防上有効な量の第2の有効成分とを投与することを含んでなる、前記方法を包含する。
【0033】
第2の有効成分は、好ましくは、造血成長因子、サイトカイン、抗癌剤、抗生物質、抗真菌剤、抗炎症剤、サイクロスポリン等の免疫抑制物質、MDS用の従来の治療剤、または例えばPhysician's Desk Reference 2002に記載されている他の化学療法剤である。好ましい抗癌剤または癌化学療法剤は、アポトーシス誘導因子、トポイソメラーゼ阻害剤、抗血管形成化合物、微小管安定化剤、アルキル化剤、および他の既知の従来の癌化学療法剤である。最も好ましい第2の有効成分は、血液形成に作用しまたはそれを改善し得るものである。第2の有効成分は、巨大分子(例えば、タンパク質)または小分子(例えば、合成無機分子、有機金属分子、または有機分子)であってよい。第2の有効成分の例としては、これらに限定されるものではないが、エタネルセプト(Enbrel(登録商標))、イマチニブ(Glivec(登録商標))、抗TNF-α抗体、インフリキシマブ(Remicade(登録商標))、G-CSF、GM-CSF、EPO、トポテカン、イリノテカン、ペントキシフィリン、シプロフロキサシン、デキサメタゾン、IL2、IL8、IL18、Ara-C、ビノレルビン、イソトレチノイン、および13-cis-レチノイン酸が挙げられる。また本発明は、自然タンパク質、天然タンパク質、および組換えタンパク質の使用を包含する。さらに本発明は、天然タンパク質の変異体および誘導体(例えば変性形態)であって、in vivoにおいて、それらのベースとなっているタンパク質の少なくとも一部の薬理活性を示すものを包含する。変異体の例としては、これらに限定されるものではないが、天然形態のタンパク質の対応する残基とは異なる1種または複数のアミノ酸残基を有するタンパク質が挙げられる。さらに「変異体」という用語には、天然形態のタンパク質において通常存在する糖成分を欠いているタンパク質も含まれている(例えば、非グリコシル化形態)。誘導体の例としては、これらに限定されるものではないが、ペジール化(pegylated)誘導体および融合タンパク質、例えば、目的のタンパク質またはタンパク質の活性部分にIgG1またはIgG3を融合させることにより形成されたタンパク質等が挙げられる。例えば、Penichet, M. L.およびMorrison, S. L., J. Immunol. Methods 248: 91-101 (2001)を参照されたい。本明細書に記載されているタンパク質の分泌物が得られるワクチン、ならびにその薬理学的に有効な変異体、誘導体、および融合体も本発明に包含される。
【0034】
理論を限定するものではないが、免疫調節化合物およびタンパク質は、MDSの治療または管理において補完的様式または相乗的様式で作用し得ると考えられる。また、特定のタンパク質は、一部の免疫調節化合物に関連性がある特定の副作用を低下または消失させることができ、結果として、患者への免疫調節化合物の大量投与、および/または患者の服薬遵守の向上が可能となると考えられる。さらに、一部の免疫調節化合物は、一部のタンパク質系MDS治療剤に関連性がある特定の副作用を低下または消失させることができ、結果として、患者へのタンパク質の大量投与、および/または患者の服薬遵守の向上が可能となると考えられる。
【0035】
本発明の別の実施形態は、MDS患者において癌またはMDSの治療に使用される化学療法剤または治療剤の投与に関連性のある副作用を後退、低減または回避する方法であって、かかる後退、低減または回避が必要な患者に、治療上または予防上有効な量の免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグを投与することを含んでなる、前記方法を包含する。
【0036】
不可避である白血病への移行がMDSの特定の段階に発症した場合、末梢血幹細胞、造血幹細胞調製物、または骨髄の移植が必要となり得る。MDS患者に対して、免疫調節化合物と幹細胞等の移植治療とを組み合わせて使用すると、特有で予期しない相助作用が得られると考えられる。特に、理論に限定されるものではないが、免疫調節化合物は、移植治療と同時に投与された場合、相加効果または相助効果を提供し得る免疫調節活性を示すと考えられる。免疫調節化合物は、移植治療との組み合わせで機能し、その結果、移植の侵襲法に随伴する合併症および関連の移植片対宿主疾患(GVHD)のリスクを低減することができる。従って、本発明は、MDSを治療、予防または管理する方法であって、患者(ヒト)に、移植治療する前、途中または後に、免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグを投与することを含んでなる、前記方法を包含する。
【0037】
また本発明は、1種以上の免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグと、第2の有効成分と、および/または移植治療用の血液もしくは細胞とを含んでなる、医薬組成物、1回用量製剤、およびキットを包含する。例えば、本キットは、本発明の1種または複数の化合物、移植用幹細胞、および免疫抑制剤、抗生物質または他の薬剤(前記各薬剤はMDS患者の治療に用いられているものである)を含み得る。
【0038】
4.1. 免疫調節化合物
本発明で使用される化合物としては、ラセミであるか、立体異性体が濃縮されているか、あるい立体異性体的に純粋である免疫調節化合物、ならびにその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、およびプロドラッグが挙げられる。本発明で使用される好ましい化合物は、分子量が約1000g/mol以下の小型有機分子であって、かつタンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、少糖類または他の高分子ではない。
【0039】
本明細書では、また特段の記載がない限り、「立体異性体的に純粋な」という用語は、化合物の立体異性体を1つ含み、かつその化合物のその他の立体異性体を実質的に含んでいない組成物を意味する。例えば、1個のキラル中心を有する化合物の立体異性体的に純粋な組成物は、その化合物の対称の鏡像異性体を実質的に含んでいない。2個のキラル中心を有する化合物の立体異性体的に純粋な組成物は、その化合物の別のジアステレオマーを実質的には含んでいない。典型的な立体異性体的に純粋な化合物は、化合物の1つの立体異性体を約80重量%以上、その化合物の別の立体異性体を約20重量%未満含んでいる。さらに好ましくは、化合物の1つの立体異性体を約90重量%以上、その化合物の別の立体異性体を約10重量%未満含んでいる。さらにより好ましくは、化合物の1つの立体異性体を約95重量%以上、その化合物の別の立体異性体を約5重量%未満含んでいる。また最も好ましくは、化合物の1つの立体異性体を約97重量%以上、その化合物の別の立体異性体を約3重量%未満含んでいる。本明細書では、また特段の記載のない限り、「立体異性体が濃縮された」という用語は、化合物の1つの立体異性体を約60重量%を超えて、好ましくは、化合物の1つの立体異性体を約70重量%を超えて、さらに好ましくは、約80重量%を超えて含んでいる組成物を意味する。本明細書では、また特段の記載のない限り、「鏡像異性体的に純粋な」という用語は、1つのキラル中心を有する化合物の立体異性体的に純粋な組成物を意味する。同様に、「立体異性体が濃縮された」という用語は、1つのキラル中心を有する化合物の立体異性体が濃縮された組成物を意味する。
【0040】
本明細書では、また特段の記載がない限り、本明細書で用いられている「免疫調節化合物」または「IMiDs(商標)」(Celgene Corporation)という用語は、TNF-α、LPS誘導単球IL1βおよびIL12を著しく阻害し、IL6産生を部分的に抑制する小型有機分子を包含する。本発明の特定の免疫調節化合物については下記に記載されている。
【0041】
TNF-αは、急性炎症中にマクロファージと単球によって産生される炎症性サイトカインである。TNF-αは、細胞内のさまざまな範囲のシグナル伝達現象に関与する。TNF-αは、癌において病理学的機能を果たし得る。特定の理論に限定されるものではないが、本発明の免疫調節化合物がもたらす生物学的作用の1つは、TNF-αの合成を低下させることである。本発明の免疫調節化合物は、TNF-αmRNAの分解を促進する。
【0042】
さらに、特定の理論に限定されるものではないが、本発明で用いられる免疫調節化合物はT細胞の有効な共刺激剤でもあり、投与依存法において細胞増殖を劇的に高め得る。本発明の免疫調節化合物は、CD4+T細胞サブセットに比べてCD8+T細胞サブセットに対してより強い共刺激作用を有し得る。さらに本化合物は、好ましくは抗炎症特性を有し、T細胞を効率的に共刺激する。
【0043】
本発明の免疫調節化合物の特定の例としては、これらに限定されるものではないが、例えば、米国特許第5,929,117号に記載されているような置換スチレンのシアノ誘導体およびカルボキシ誘導体;米国特許第5,874,448号に記載されているような1-オキソ-2-(2,6-ジオキソ-3-フルオロピペリジン-3-イル)イソインドリン、および1,3-ジオキソ-2-(2,6-ジオキソ-3-フルオロピペリジン-3-イル)イソインドリン;米国特許第5,798,368号に記載されているテトラ置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリン;これに限定されるものではないが、米国特許第5,635,517号に記載されているものをはじめとする、1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)イソインドリンおよび1,3-ジオキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)イソインドリン(例えば、サリドマイドの4-メチル誘導体およびEM-12);ならびに米国特許第5,698,579号および第5,877,200号に記載されている非ポリペプチド環状アミドのクラス;サリドマイドの加水分解生成物、代謝産物、誘導体および前駆体をはじめとするサリドマイドの類似体および誘導体、例えば、D'Amatoの米国特許第5,593,990号、第5,629,327号および第6,071,948号に記載されているもの;アミノサリドマイド、ならびに、アミノサリドマイドの類似体、加水分解生成物、代謝産物、誘導体および前駆体、ならびに、置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)フタルイミドおよび置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドール、例えば、米国特許第6,281,230号および第6,316,471号に記載されたているもの;イソインドールイミド化合物、例えば、2001年10月5日出願の米国特許出願第09/972,487号、2001年12月21日出願の米国特許第10/032,286号、および国際出願第PCT/US01/50401号(国際公開第WO 02/059106号)に記載されているものが挙げられる。本明細書で公表している各特許の全体は、参照により本明細書に組み入れるものとする。なお、本発明の免疫調節化合物にはサリドマイドは含まれない。
【0044】
本発明の他の特定の免疫調節化合物としては、これらに限定されるものではないが、米国特許第5,635,517号(本明細書に組み入れるものとする)に記載されている、ベンゾ環内でアミノにより置換されている1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)イソインドリンおよび1,3-ジオキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)イソインドリンが挙げられる。これらの化合物は、構造I:
【化1】

(式中、XおよびYのうちの一方はC=Oであり、XおよびYのうちの他方はC=OまたはCH2であり、R2は水素または低級アルキル(特にメチル)である)
を有している。特定の免疫調節化合物としては、これらに限定されるものではないが、
1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-4-アミノイソインドリン;
1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-5-アミノイソインドリン;
1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-6-アミノイソインドリン;
1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-7-アミノイソインドリン;
1,3-ジオキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-4-アミノイソインドリン;および
1,3-ジオキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-5-アミノイソインドリン
が挙げられる。
【0045】
本発明の他の特定の免疫調節化合物は、置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)フタルイミドおよび置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドールのクラス、例えば、米国特許第6,281,230号、第6,316,471号、第6,335,349号、および第6,476,052号、ならびに国際特許出願第PCT/US97/13375号(国際公開第WO98/03502号)(各特許および出願は本明細書に組み入れるものとする)に記載されているものに属する。このクラスの代表的化合物は、式:
【化2】

(式中、R1は水素またはメチルである)
である。別の実施形態では、本発明は、これらの化合物の鏡像異性体的に純粋な形態(例えば光学的に純粋な(R)または(S)鏡像異性体)の使用を包含する。
【0046】
また、本発明の他の特定の免疫調節化合物は、米国特許出願第10/032,286号および第09/972,487号、ならびに国際出願第PCT/US01/50401号(国際公開第WO02/059106号)(各出願は本明細書に組み入れるものとする)に記載されているイソインドール-イミドのクラスに属する。代表的な化合物は、式II:
【化3】

(式中、
XおよびYののうちの一方はC=Oであり、他方はCH2またはC=Oであり;
R1は、H、(C1-C8)アルキル、(C3-C7)シクロアルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(C0-C4)アルキル-(C1-C6)ヘテロシクロアルキル、(C0-C4)アルキル-(C2-C5)ヘテロアリール、C(O)R3、C(S)R3、C(O)OR4、(C1-C8)アルキル-N(R6)2、(C1-C8)アルキル-OR5、(C1-C8)アルキル-C(O)OR5、C(O)NHR3、C(S)NHR3、C(O)NR3R3'、C(S)NR3R3'、または(C1-C8)アルキル-O(CO)R5であり;
R2は、H、F、ベンジル、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、または(C2-C8)アルキニルであり;
R3およびR3’は、独立して、(C1-C8)アルキル、(C3-C7)シクロアルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(C0-C4)アルキル-(C1-C6)ヘテロシクロアルキル、(C0-C4)アルキル-(C2-C5)ヘテロアリール、(C0-C8)アルキル-N(R6)2、(C1-C8)アルキル-OR5、(C1-C8)アルキル-C(O)OR5、(C1-C8)アルキル-O(CO)R5、またはC(O)OR5であり;
R4は、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、(C1-C4)アルキル-OR5、ベンジル、アリール、(C0-C4)アルキル-(C1-C6)ヘテロシクロアルキル、または(C0-C4)アルキル-(C2-C5)ヘテロアリールであり;
R5は、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリール、または(C2-C5)ヘテロアリールであり;
R6は、それぞれ独立して、H、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(C2-C5)ヘテロアリール、または(C0-C8)アルキル-C(O)O-R5であるか、あるいはR6基が結合してヘテロシクロアルキル基を形成することができ;
nは0または1であり;
*はキラル炭素中心を表す)
で表される化合物、およびその製薬上許容可能な塩、水和物、溶媒和物、包接化合物、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ化合物、ならびにその立体異性体の混合物である。
【0047】
式IIの特定の化合物では、nが0である場合、R1は、(C3-C7)シクロアルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(CO-C4)アルキル-(C1-C6)ヘテロシクロアルキル、(C0-C4)アルキル-(C2-C5)ヘテロアリール、C(O)R3、C(O)OR4、(C1-C8)アルキル-N(R6)2、(C1-C8)アルキル-OR5、(C1-C8)アルキル-C(O)OR5、C(S)NHR3、または(C1-C8)アルキル-O(CO)R5であり;
R2は、Hまたは(C1-C8)アルキルであり;
R3は、(C1-C8)アルキル、(C3-C7)シクロアルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(C0-C4)アルキル-(C1-C6)ヘテロシクロアルキル、(C0-C4)アルキル-(C2-C5)ヘテロアリール、(C5-C8)アルキル-N(R6)2;(C0-C8)アルキル-NH-C(O)O-R5;(C1-C8)アルキル-OR5、(C1-C8)アルキル-C(O)OR5、(C1-C8)アルキル-O(CO)R5またはC(O)OR5であり;
他の可変部は同一の定義を有している。
【0048】
式IIの他の特定の化合物では、R2はHまたは(C1-C4)アルキルである。
【0049】
式IIの他の特定の化合物では、R1は(C1-C8)アルキルまたはベンジルである。
【0050】
式IIの他の特定の化合物では、R1はH、(C1-C8)アルキル、ベンジル、CH2OCH3、CH2CH2OCH3、または
【化4】

である。
【0051】
式IIの化合物の別の実施形態では、R1は、
【化5】

(式中、Qは、OまたはSであり、R7は、それぞれ独立して、H、(C1-C8)アルキル、ベンジル、CH2OCH3、またはCH2CH2OCH3である)
である。
【0052】
式IIの他の特定の化合物では、R1はC(O)R3である。
【0053】
式IIの他の特定の化合物では、R3は、(C0-C4)アルキル-(C2-C5)ヘテロアリール、(C1-C8)アルキル、アリール、または(C0-C4)アルキル-OR5である。
【0054】
式IIの他の特定の化合物では、ヘテロアリールはピリジル、フリルまたはチエニルである。
【0055】
式IIの他の特定の化合物では、R1はC(O)OR4である。
【0056】
式IIの他の特定の化合物では、C(O)NHC(O)のHは、(C1-C4)アルキル、アリールまたはベンジルで置換され得る。
【0057】
また本発明の他の特定の免疫調節化合物は、米国特許出願第09/781,179号、国際公開番号第WO98/54170号、および米国特許第6,395,754号(各出願および特許は参照により本明細書に組み入れるものとする)に記載されているイソインドール-イミドのクラスに属する。代表的な化合物は、式III:
【化6】

(式中、
XおよびYのうちの一方はC=Oであり、他方はCH2またはC=Oであり;
Rは、HまたはCH2OCOR'であり;
(i)R1、R2、R3またはR4の各基は、互いに独立して、ハロゲン、炭素原子が1〜4個のアルキル、または炭素原子が1〜4個のアルコキシであるか、あるいは、(ii)R1、R2、R3またはR4の1つの基はニトロまたは-NHR5であり、残りのR1、R2、R3またはR4は水素であり;
R5は、水素、または炭素が1〜8個のアルキルであり;
R6は、水素、炭素原子が1〜8個のアルキル、ベンゾ、クロロまたはフルオロであり;
R'は、R7-CHR10-N(R8R9)であり;
R7は、m-フェニレンまたはp-フェニレンであるか、あるいはnの値が0〜4の-(CnH2n)-であり;
R8およびR9の各基は、他の基から独立して、水素、または炭素原子が1〜8個のアルキルであるか、あるいはR8およびR9は、互いに一緒になって、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、または-CH2CH2[X]X1CH2CH2-(式中、[X]X1は、-O-、-S-または-NH-である)であり;
R10は、水素、炭素原子が8個のアルキル、またはフェニルであり;
*はキラル炭素中心を表す)
で表される化合物、およびその製薬上許容可能な塩、水和物、溶媒和物、包接化合物、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ化合物、ならびにその立体異性体の混合物である。
【0058】
本発明で最も好ましい免疫調節化合物は、4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオン、および3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンである。これらの化合物は、標準の合成法によって得ることができる(例えば、米国特許第5,635,517号(参照によって本明細書に組み入れるものとする)を参照されたい。またこれらの化合物は、Celgene Corporation, Warren, NJから購入することができる。4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオン(ACTIMID(商標))は、以下の化学構造:
【化7】

を有している。
【0059】
3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオン(REVIMID(商標))は、以下の化学構造:
【化8】

を有している。
【0060】
本発明の化合物は、購入可能であるか、あるいは本明細書に記載されている特許または特許刊行物に記載されている方法に従って調製することができる。さらに光学的に純粋な組成物は、周知の分割剤またはキラルカラム、並びに他の標準的な有機合成化学技術用いて、非対称的に合成することができる。
【0061】
本明細書では、また特段の記載のない限り、「製薬上許容可能な塩」という用語は、この用語が意味するものとして、本化合物の無毒の酸付加塩および塩付加塩が包含する。許容可能な無毒の酸性の添加塩類としては、当技術分野で周知の有機または無機の酸または塩から誘導されるものが含まれ、例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、メタンスルホン酸、酢酸、酒石酸、乳酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、ソルビン酸、アコニット酸、サリチル酸、フタル酸、エンボリック酸(embolic acid)、エナント酸等が挙げられる。
【0062】
天然の酸性化合物は、様々な製薬上許容可能な塩基と塩を形成することができる。かかる酸性化合物の製薬上許容可能な塩基付加塩類を調製するのに使用可能な塩基としては、無毒の塩基付加塩、すなわち、薬理学的に許容可能な陽イオンを含有している塩、例えば、これらに限定されるものではないが、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、特にカルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウ塩またはカリウム塩を形成するものである。好適な有機塩としては、これらに限定されるものではないが、N,N-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N-メチルグルカミン)、リジンおよびプロカインが挙げられる。
【0063】
本明細書では、また特段の記載のない限り、「プロドラッグ」という用語は、生物学的な条件下で(in vitroまたはin vivoにおいて)、加水分解、酸化または反応し、本化合物を提供することができる化合物の誘導体を意味する。プロドラッグの例としては、これらに限定されるものではないが、生加水分解性アミド、生加水分解性エステル、生加水分解性カルバメート、生加水分解性カーボネート、生加水分解性ウレイドおよび生加水分解性ホスフェート類似体等の生加水分解性成分を含む、本発明の免疫調節化合物の誘導体が挙げられる。プロドラッグの他の例としては、-NO、-NO2、-ONO、または-ONO2成分を含む、本発明の免疫調節化合物の誘導体が挙げられる。プロドラッグは、一般的には、1 Burger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery, 172-178, 949-982 (Manfred E. Wolffed.、第5版、1995)、およびDesign of Prodrugs (H. Bundgaard編、Elselvier, New York 1985)に記載されているような周知の方法を用いて調製することができる。
【0064】
本明細書では、また特段の記載のない限り、「生加水分解性アミド」、「生加水分解性エステル」、「生加水分解性カルバメート」、「生加水分解性カーボネート」、「生加水分解性ウレイド」、「生加水分解性ホスフェート」という用語は、それぞれ、1)化合物の生物活性は阻害せず、in vivoにおいて、その化合物の有利な特性(吸収、作用持続、または作用開始等)を付与することができるか;あるいは、2)生物学的に不活性であるが、in vivoにおいて、生物活性のある化合物に変換される、前記1)または2)のいずれかの化合物のアミド、エステル、カルバメート、カーボネート、ウレイドまたはホスフェートを意味する。生加水分解性エステルの例としては、これらに限定されるものではないが、低級アルキルエステル、低級アシルオキシアルキルエステル(アセトキシルメチルエステル、アセトキシエチルエステル、アミノカルボニルオキシメチルエステル、ピバロイルオキシメチルエステル、およびピバロイルオキシエチルエステル等)、ラクトニルエステル(フタリジルエステルおよびチオフタリジルエステル等)、低級アルコキシアシルオキシアルキルエステル(メトキシカルボニルオキシメチルエステル、エトキシカルボニルオキシエチルエステル、およびイソプロポキシカルボニルオキシエチルエステル等)、アルコキシアルキルエステル、コリンエステル、およびアシルアミノアルキルエステル(アセトアミドメチルエステル等)が挙げられる。生加水分解性アミドの例としては、これらに限定されるものではないが、低級アルキルアミド、α-アミノ酸アミド、アルコキシアシルアミド、およびアルキルアミノアルキルカルボニルアミドが挙げられる。生加水分解性カルバメートの例としては、これらに限定されるものではないが、低級アルキルアミン、置換エチレンジアミン、アミノ酸、ヒドロキシアルキルアミン、複素環式アミンおよび複素環式芳香族アミン、ならびにポリエーテルアミンが挙げられる。
【0065】
記載されている構造と、その構造に付けられている名称の間に相違がある場合、記載されている構造の分子量が大きなものになっていることに留意されたい。さらに、例えば、構造または構造の一部の立体化学が太線または破線等で示されていない場合には、構造または構造の一部は、そのすべての立体異性体を包含していると解釈されたい。
【0066】
4.2 第2の有効成分
1種以上の第2の有効成分または薬剤を、本発明の免疫調節化合物と一緒に本発明の方法および組成物において用いることができる。この第2の有効成分は、血球形成のプロセスを転換させることができるのが好ましい。また、特定の第2の有効成分は、in vitroまたはin vivoにおいて、細胞中の関連の赤血球前駆体の分裂および分化を刺激する。
【0067】
第2の有効成分は、巨大分子(タンパク質等)または小分子(合成分子、無機分子、有機金属分子、または有機分子等)であってよい。第2の有効成分としては、限定するものではないが、造血成長因子、サイトカイン、抗癌剤、抗生物質、プロテアーゼ阻害剤、免疫抑制剤および本明細書で論じた他の治療剤が挙げられる。特定の薬剤としては、これらに限定されるものではないが、G-CSF、GM-CSF、EPO、デキサメタゾン、トポテカン、ペントキシフィリン、イリノテカン、シプロフロキサシン、ビノレルビン、IL2、IL8、IL18、Ara-C、イソトレチノイン、13-cis-レチノイン酸、12-O-テトラデカノイルホルボール-13-アセテート(TPA)、5-AZA2'-デオキシシチジン、9-ニトロカンプ(nitrocamp)-トセチン(tothecin)、トランスレチノイン酸、アミホスチン(amifostine)、アンフォテリシンBおよびリポソームアンフォテリシンB、抗CD-20モノクローナル抗体、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、三酸化ヒ素、アザシチジン、ベバシズマブ、ビスマスモノクローナル抗体、ブリオスタチン、ブスルファン、カスポファンギンアセテート、セロコキシブ(celocoxib)、クラドリビン、シクロホスファミド、サイクロスポリン、シタラビン、シトシン、ダウノルビシン、デプシペプチド、エトポシド、ファレシィ(farresy)トランスフェラーゼ阻害剤、フラボピリドール、Flt3リガンド、フルダラビン、ゲンツズマブオゾゴミシン(gentuzumab ozogomicin)(mylotarg)、エタネルセプト(Enbrel(登録商標))、イマチニブ(Glivec(登録商標))、抗TNF-α抗体、インフリキシマブ(Remicade(登録商標))、ヒト化モノクローナル抗VEGF抗体、イダルビシン、ロイコボリン、メルファラン、ミトキサントロン、モノクローナル抗体ABX-CBL、モノクローナル抗体CD52、ミコフェノール酸モフェチル、ω-3脂肪酸、オブリメルセン(oblimersen)、ペントスタチン、フェニル酪酸、PR1白血病ペプチドワクチン、モンタニド、ペンタソーム阻害剤、フェニル酪酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、テモゾロミド、チモグロブリン、トロキサチル、腫瘍壊死因子受容体IgGキメラ、イットリウムY90ヒト化モノクローナル抗体M195が挙げられる。本発明の特定の実施形態では、本発明の免疫調節化合物は、ペントキシフィリン、シプロフロキサシン、および/またはデキサメタゾンと組み合わせて用いられる。
【0068】
また本発明は、自然タンパク質、天然タンパク質、および組換えタンパク質の使用も包含する。さらに本発明は、天然タンパク質の変異体および誘導体(例えば変性形態)であって、in vivoにおいて、それらのベースとなっているタンパク質の少なくとも一部の薬理活性を示すものを包含する。変異体の例としては、これらに限定されるものではないが、天然形態のタンパク質の対応する残基とは異なる1種または複数のアミノ酸残基を有するタンパク質が挙げられる。さらに「変異体」という用語には、天然形態のタンパク質において通常存在する糖成分を欠いているタンパク質も含まれている(例えば、非グリコシル化形態)。誘導体の例としては、これらに限定されるものではないが、ペジール化(pegylated)誘導体および融合タンパク質、例えば、目的のタンパク質またはタンパク質の活性部分にIgG1またはIgG3を融合させることにより形成されたタンパク質等が挙げられる。例えば、Penichet, M. L.およびMorrison, S. L., J. Immunol. Methods 248: 91-101 (2001)を参照されたい。
【0069】
G-CSFの組換え型および変異型は、米国特許第4,810,643号、第4,999,291号、第5,528,823号、および第5,580,755号に記載されているようにして調製することができる。なお、前記のすべての特許は、参照により本明細書に組み入れるものとする。GM-CSFの組換え型および変異型は、米国特許第5,391,485号、第5,393,870号、および第5,229,496号に記載されているようにして調製することができる。なお、前記のすべての特許は、参照により本明細書に組み入れるものとする。実際、組換え型のG-CSFおよびGM-CSFは、現在、特定の化学療法に随伴する症状の治療を目的として米国内で販売されている。フィルグラスチムとして知られている組換え型G-CSFは、Neupogen(登録商標)という商標名で米国内で販売されている。Neupogen(登録商標)は、MDS患者の顆粒球(通常、好中球)の分裂および成熟とを刺激し、EPOとの組み合わせで赤血球の応答を亢進することが知られている。Physicians' Desk Reference, 587-592 (第56版, 2002)。サルグラモスチムとして知られている組換え型GM-CSFもまた、Leukine(登録商標)という商標名で米国内で販売されている。Leukine(登録商標)は、初期の骨髄細胞とマクロファージ前駆細胞の分裂および成熟を刺激することが知られており、顆粒球を増加させることも報告されている。Physicians' Desk Reference, 1755-1760 (第56版, 2002)。エポエチンアルファとして知られている組換え型EPOは、Epogen(登録商標)という商標名で米国内で販売されている。Epogen(登録商標)は、関係する赤血球前駆細胞の分裂および成熟を刺激することにより、赤血球形成を刺激するために用いられる。Epogen(登録商標)は、単独投与の場合、MDS患者の20〜26%に効果があり、G-CSFまたはGM-CSFと組み合わせた場合、48%もの患者に効果があったことが報告されている。Physicians' Desk Reference, 582-587 (第56版, 2002)。
【0070】
成長因子またはサイトカイン(G-CSF、GM-CSFおよびEPO等)は、ワクチンの剤形で投与することができる。例えば、G-CSFおよびGM-CSF等のサイトカインを分泌するワクチン、あるいはそれらの分泌物をもたらすワクチンを本発明の方法、医薬組成物およびキットで使用することができる。例えば、Emens, L.A.ら, Curr. Opinion Mol. Ther. 3(1):77-84 (2001)を参照されたい。
【0071】
本発明の免疫調節化合物と組み合わせて投与または使用することができる他の化合物としては、2002年5月17日出願の米国仮特許出願第60/380,842号、および2002年5月17日出願の米国仮特許出願第60/380,843号に記載されているものが挙げられる(これらの両出願は、参照により本明細書に組み入れるものとする)。
【0072】
4.3 治療方法および処置
本発明の方法は、様々なタイプのMDSを予防、治療および/または管理する方法を包含する。本明細書では、また特段の記載のない限り、「予防(する)」という用語は、これらに限定されるものではないが、MDSに随伴する症状を抑制または予防することが含まれる。MDSに随伴する症状としては、これらに限定されるものではないが、貧血、血小板減少症、好中球減少症、血球減少、二血球減少症(2細胞系における減少症)および汎血球減少症(3細胞系における減少症)が挙げられる。本明細書では、また特段の記載のない限り、「予防(する)」とは、特にMDSのリスクのある患者に対して症状発症前に投与することを意味し、一方、「治療(する)」という用語は、MDSの症状発症後に組成物を投与することを意味する。本明細書では、また特段の記載のない限り、「管理(する)」という用語は、MDSに罹患していた患者のMDSの再発の予防、MDSに罹患していた患者の小康状態にある時間の延長、またはMDS罹患のリスクのある患者のMDSの発生の予防を包含する。
【0073】
本発明は、一次性MDSおよび二次性MDSの患者の治療または予防方法を包含する。さらに本発明は、過去にMDSの治療を受けた患者、並びに過去にMDSの治療を受けていない患者を治療する方法を包含する。MDS患者は異なる臨床症状と様々な臨床転帰を有しているので、患者の予後診断に従って患者を監督し、重症度と段階に応じて治療に取り組むことが必要であることが明らかとなっている。実際、本発明の方法および組成物は、これらに限定されるものではないが、不応性貧血(RA)、環状鉄芽球を伴うRA(RARS)、過剰芽球を伴うRA(RAEB)、急性転化を来たしたRAEB(RAEBT)、または慢性骨髄単球性白血病(CMML)を含む、1種または複数のタイプのMDSに罹患している患者の治療における様々な段階で用いることができる。本発明はまた、上記MDSについてIPSSを用いて診断した患者を治療することも意図する。Greenbergら, Blood 1997(89):2079-88。
【0074】
本発明に包含される方法は、本発明の免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグをMDSに罹患している患者またはMDSに罹患する可能性のある患者(例えば、ヒト)に投与することを含んでいる。特定の患者集団は、高齢者(すなわち、60歳以上の人)ならびに35歳以上の人である。MDSまたは白血病の家族暦を有する患者も予防計画に望ましい候補者である。
【0075】
本発明の一実施形態では、本発明の免疫調節化合物は経口投与され、1日当たり約0.10〜約150mgの量で、1日1回または1日に分割して投与される。特定の実施形態では、4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオン(ActimidTM)が、1日当たり約0.1〜約1mgの量、あるいは一日おきに約5mgの量で投与される。3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオン(RevimidTM)は、好ましくは1日当たり約5〜約25mgの量、あるいは一日おきに約25mg〜約50mgの量で投与される。
【0076】
4.3.1 第2有効成分との組み合わせ療法
別の方法は、1)本発明の免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグと、2)第2の有効剤または有効成分とを投与することを含んでいる。本発明の免疫調節化合物の例は、本明細書に記載されており(例えば、4.1節を参照)、第2の有効成分の例も本明細書に記載されている(例えば、4.2節を参照)。
【0077】
免疫調節化合物および第2の有効成分の患者への投与は、同一投与経路または異なる投与経路によって、同時にまたは連続して行なうことができる。特定の有効成分に用いられる特定の投与経路の適合性は、有効成分それ自体(例えば、有効成分が経口投与され、血流へ流入する前に分解されることないかどうか)と治療対象の疾患によって決まる。免疫調節化合物に関する好ましい投与経路は、経口投与である。第2の有効成分または本発明の成分に関する好ましい投与経路は、当業者に周知である。例えば、Physicians' Desk Reference, 1755-1760 (第56版, 2002)を参照されたい。
【0078】
一実施形態では、第2の有効成分は、1日に1回または2回、約1〜約1000mg、約5〜約500mg、約10〜約350mg、または約50〜約200mgの量で静脈内投与、または皮下投与する。第2の有効成分の特定の量は、使用する特定の薬剤、治療または管理するMDSのタイプ、MDSの重症度および段階、ならびに本発明の免疫調節化合物および患者に同時に投与するすべての任意の追加有効成分の量によって決まる。特定の実施形態では、第2の有効成分は、GM-CSF、G-CSF、EPO、トランスレチノイン酸、デクサメタゾン、トポテカン、ペントキシフィリン、シプロフロキサシン、デキサメタゾン、IL2、IL8、IL18、Ara-C、ビノレルビン、またはその組み合わせである。GM-CSFは、2時間かけて約60〜約500mcg/m2の量を静脈内投与するか、あるいは約5〜約12mcg/m2/日の量で皮下投与する。G-CSFは、最初に、約1mcg/kg/日の量で皮下投与し、全顆粒球数の増加に応じて調節することができる。維持量は、皮下投与で300mcg(小柄な患者)または480mcgである。EPOは、1週間に3回10,000ユニットの量で皮下投与する。
【0079】
4.3.2 移植療法との併用
さらに別の実施形態では、本発明は、MDSを治療、予防または管理する方法であって、移植治療と併用して、本発明の免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグを投与することを含んでなる、前記方法を包含する。本明細書の他の箇所に記載されているように、MDSの治療は、疾患の段階および機序によって決まる。回避不可能な白血病の移行がMDSの特定の段階で発症する場合、末梢血幹細胞、造血幹細胞調製物、または骨髄の移植が必要となり得る。本発明の免疫調節化合物と移植治療とを併用すると、予期しない特有の相助作用が得られる。特に、本発明の免疫調節化合物は、MDS患者の移植治療と同時に投与した場合、相加効果または相乗効果を提供し得る免疫調節活性を示す。移植治療と組み合わせた本発明の免疫調節化合物は、移植侵襲法に随伴する合併症および関連の移植片対宿主疾患(GVHD)のリスクを低減するように機能し得る。本発明は、MDSを治療、予防または管理する方法であって、患者(例えばヒト)に、臍帯血、胎盤血、末梢血幹細胞、造血幹細胞調製物、または骨髄を移植する前、途中または後に、本発明の免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグを投与することを含んでなる、前記方法を包含する。本発明の方法での使用に好適な幹細胞の例は、R. Haririらによって2002年4月12日に出願された、米国仮特許出願第60/372,348号に記載されている。なお、この出願の全体は参照により本明細書に組み入れるものとする。
【0080】
4.3.3 周期療法
特定の実施形態では、本発明の予防薬または治療薬は、患者に周期的に投与する。周期療法には、一定の期間に第1の薬剤を投与し、続いて一定の期間に前記薬剤および/または第2の薬剤を投与すること、ならびにこれらの連続投与を繰り返すことが含まれている。周期療法によって、1つまたは複数の治療に対して耐性が強くなることを低下させ、1つの治療に伴う副作用を回避または低減し、かつ/または治療の有効性を改善することができる。
【0081】
特定の実施形態では、予防薬または治療薬は、約16週のサイクルで毎日約1回または2回投与する。1サイクルは、治療薬または予防薬の投与と、少なくとも1週間または3週間の休止を含み得る。投薬周期の数は、約1〜約12サイクル、さらに詳しくは約2〜約10サイクル、より詳しくは約2〜約8サイクルである。
【0082】
4.4 医薬組成物および1回用量製剤
医薬組成物は、個別の1回用量製剤の調製において用いることができる。本発明の医薬組成物および製剤は、本発明の免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグを含んでいる。さらに、本発明の医薬組成物および製剤は、1種または複数の賦形剤を含み得る。
【0083】
また本発明の医薬組成物および製剤は、1種または複数の追加有効成分を含み得る。従って、本発明の医薬組成物および製剤は、本明細書に記載されている有効成分(例えば、本発明の免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグと、第2の有効成分)を含んでいる。任意の追加有効成分の例は本明細書に記載されている(例えば、4.2節を参照されたい)。
【0084】
本発明の1回用量製剤は、患者に対する経口投与、粘膜投与(例えば、鼻腔内投与、舌下投与、膣内投与、口腔内投与または直腸内投与)、あるいは非経口投与(例えば、皮下投与、静脈内投与、ボーラス注射、筋肉内投与、または動脈内投与)、経皮投与(transdermal administration)または経皮的投与(transcutaneous administration)に好適である。製剤の例としては、これらに限定されるものではないが、錠剤;カプレット;カプセル(弾性のある軟性ゼラチンカプセル等);カシェ剤;トローチ;ロゼンジ;分散物(dispersion);坐剤;粉末;エアロゾル(例えば、鼻内噴霧剤または鼻吸入器);ゲル剤;患者への経口投与または粘膜投与に好適な液体製剤、例えば懸濁液(水溶性または非水性液体懸濁液、水中油滴型エマルジョン、または油中水滴型エマルジョン等)、溶液、及びエリキシル剤;患者への非経口投与に好適な液体製剤;元に戻して、患者への非経口投与に好適な液体製剤を提供することができる、殺菌済み固形物(例えば、結晶性固体または非晶質固体)が挙げられる。
【0085】
本発明の製剤の組成、形状およびタイプは、一般に、製剤の使用に応じて変わる。例えば、疾患の急性期治療で用いられる製剤の場合、その製剤が含んでいる1種または複数の有効成分の量は、同じ疾患の慢性期治療で用いられる製剤に比べて多く含まれ得る。同様に、非経口製剤の場合、その製剤が含んでいる1種または複数の有効成分の量は、同じ疾患の治療で用いられる経口製剤に比べて少量であってよい。これらの方法および他の方法(この場合、本発明に包含されている特定の投与形態は互いに異なる)は、当業者には容易に明らかであろう。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第18版, Mack Publishing, Easton PA (1990)を参照されたい。
【0086】
一般的な医薬組成物および製剤は、1種または複数の賦形剤を含んでいる。好適な賦形剤は、薬学分野の当業者には周知であり、好適な賦形剤の例(これらに限定されるものではない)は本明細書に記載されている。特定の賦形剤が医薬組成物または製剤への混合に好適であるかどうかについては、これらに限定されるものではないが、製剤を患者に投与する方法をはじめとする、当技術分野で周知の数々の要因によって決まる。例えば、錠剤等の経口製剤は、非経口製剤での使用に不適である賦形剤を含有することができる。また、特定の賦形剤の適合性は、製剤中の特定の有効成分によって決まる。例えば、一部の有効成分の分解は、ラクトース等の一部の賦形剤によって、すなわち水に暴露された場合に促進され得る。第一級アミンまたは第二級アミンを含む有効成分は、促進されたかかる分解に特に影響を受けやすい。従って、本発明は、ラクトース、他の単糖類または二糖類がもし含まれていてもその量が微量である医薬組成物および製剤を包含する。本明細書では、「ラクトース非含有の」という用語は、ラクトースの含有量が、もし含まれていたとしても、有効成分の分解速度を実質的に促進させるのには不十分であることを意味する。
【0087】
本発明のラクトース非含有組成物は、当技術分野では周知であって、例えば、米国薬局方(USP)25-NF20(2002)に列挙されている賦形剤を含むことができる。一般に、ラクトース非含有組成物は、有効成分、バインダー/充填剤、および製薬上適合し、かつ製薬上許容可能な量の滑剤を含む。好ましいラクトース非含有製剤は、有効成分、微結晶性セルロース、α化デンプン、およびステアリン酸マグネシウムを含む。
【0088】
また本発明は、水が一部の化合物の分解を促進し得るとの理由から、有効成分を含む無水医薬組成物および無水製剤を包含する。例えば、品質保持または経時的な製剤の安定性等の特性を測定するために、長期保存をシミュレートする手段として水の添加(例えば、5%)が製剤分野で広く認められている。例えば、Jens T. Carstensen, Drug Stability: Principles & Practice, 第2版, Marcel Dekker, NY, NY, 1995, pp. 379-80を参照されたい。事実、水と熱によって一部の化合物の分解が促進される。従って、一般に、水分および/または湿度が製剤の製造時、操作時、包装時、保存時、出荷時、および使用時に係り合うことから、製剤時の水の与える影響は非常に重要となり得る。
【0089】
本発明の無水医薬組成物および無水製剤は、無水成分または低水分含有成分、および低水分条件または低湿度条件を用いて調製することができる。ラクトースと、第一級アミンまたは第二級アミンを含む少なくとも1つの有効成分とを含む医薬組成物および製剤は、製造時、包装時、および/または保存時に水分および/または湿度との実質的な接触が想定される場合には、無水であるのが好ましい。
【0090】
無水医薬組成物は、その無水の性質が維持されるように調製、保存されるべきである。従って、無水組成物は、好適な医薬品キットに入れることが可能な、水への暴露を防ぐことが知られている材料を用いて包装するのが好ましい。好適な包装の例としては、これらに限定されるものではないが、空気を通さない密閉箔、プラスチック、単位投与量容器(例えばバイアル)、ブリスターパック、およびストリップパックが挙げられる。
【0091】
さらに本発明は、有効成分が分解する速度を遅くする1種または複数の化合物を含む、医薬組成物と製剤を包含する。かかる化合物(本明細書では「安定剤」と呼称する)としては、これらに限定されるものではないが、酸化防止剤(アスコルビン酸等)、pHバッファー、または塩バッファーが挙げられる。
【0092】
賦形剤の量および種類と同様に、製剤中の有効成分の量と特定の種類は、これらに限定されるものではないが、患者に投与する経路等の要因によって異なり得る。しかし、本発明の典型的製剤は、約0.10〜約150mgの量の本発明の免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグを含む。典型的製剤は、約0.1、1、2、5、7.5、10、12.5、15、17.5、20、25、50、100、150または200mgの量の本発明の免疫調節化合物、または製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグを含む。特定の実施形態では、好ましい製剤は、4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオン(ActimidTM)を約1、2、5、10、25または50mgの量で含む。特定の実施形態では、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオン(RevimidTM)を約5、10、25または50mgの量で含む。典型的製剤は、第2の有効成分を1〜約1000mg、約5〜約500mg、約10〜約350mg、約50〜約200mgの量で含む。もちろん、第2の有効成分の特定の量は、使用する特定の薬剤、治療または管理するMDSのタイプ、ならびに患者に同時投与される本発明の免疫調節化合物およびすべての任意の追加有効成分の量によって決まる。
【0093】
4.4.1 経口製剤
経口投与に好適な本発明の医薬組成物は、これらに限定されるものではないが、錠剤(例えばチュアブル錠)、カプレット、カプセル、および液剤(例えば、風味付けシロップ剤)等の個別の剤形として提供することができる。かかる製剤は所定量の有効成分を含有しており、当業者に周知の製剤方法によって調製することができる。一般に、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第18版, Mack Publishing, Easton PA (1990)を参照されたい。
【0094】
本発明の典型的な経口製剤は、慣用の製薬配合技術に従って、有効成分を少なくとも1種の賦形剤との十分な混合で組み合わせることにより調製する。賦形剤は、投与に関して所望する調製物の形態に応じて、種々の形態をとることができる。例えば、経口液剤またはエアロゾル製剤での使用に好適な賦形剤としては、これらに限定されるものではないが、水、グリコール、油、アルコール、香料、防腐剤および着色剤が挙げられる。固形経口製剤(例えば、粉末、錠剤、カプセルおよびカプレット)での使用に好適な賦形剤の例としては、これらに限定されるものではないが、デンプン、糖、微晶質セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤および崩壊剤が挙げられる。
【0095】
錠剤とカプセルは、投与が容易なことから最も便利な経口製剤であるが、この場合、固形賦形剤が用いらる。所望するならば、標準の水性技術または非水性技術により錠剤をコーティングすることができる。かかる製剤は、任意の製剤方法によって調製することができる。一般に、医薬組成物および製剤は、有効成分を液体担体、微粉固体担体、またはその両方と均一に、かつ密に混合し、次いで、必要に応じて生成物を所望の形態に成形することによって調製する。
【0096】
例えば、錠剤は圧縮またはモールディング(molding)によって調製することができる。圧縮錠剤は、場合により賦形剤を混合した粉末または顆粒などの非流動形態の有効成分を好適な機械で圧縮することによって調製することができる。湿製錠剤(molded tablet)は、不活性の液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を好適な機械で成形することにより調製することができる。
【0097】
本発明の経口製剤で使用可能な賦形剤の例としては、これらに限定されるものではないが、結合剤、充填剤、崩壊剤および滑沢剤が挙げられる。医薬組成物および製剤での使用に好適な結合剤としては、これらに限定されるものではないが、コーンスターチ、ジャガイモデンプンまたは他のデンプン、ゼラチン、天然ゴムおよび合成ゴム(アラビアゴム等)、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギン酸塩、トラガント末、グアーガム、セルロースおよびその誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシルメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、α化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、2208番、2906番、2910番)、微結晶セルロース、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0098】
微結晶セルロースの好適な形態は、これらに限定されるものではないが、AVICEL-PH-101、AVICEL-PH-103、AVICEL RC-581、AVICEL-PH-105(FMC Corporation, American Viscose Division, Avicel Sales, Marcus Hook, PAから購入可能)として販売されている物質、およびそれらの混合物が挙げられる。特定の結合剤は、微結晶セルロース、およびカルボキシルメチルセルロースナトリウムの混合物(AVICEL RC-581として販売されている)である。好適な無水または低水分の賦形剤または添加剤としては、AVICEL-PH-103(登録商標)、およびStarch 1500 LMが挙げられる。
【0099】
本明細書に記載されている医薬組成物および製剤での使用に好適な充填剤の例としては、これらに限定されるものではないが、タルク、炭酸カルシウム(例えば顆粒剤または粉末剤)、微結晶セルロース、粉末セルロース、デキストレート(dextrate)、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、α化デンプン、およびそれらの混合物が挙げられる。本発明の医薬組成物の結合剤または充填剤は、一般には、医薬組成物または製剤の約50〜約99重量パーセントで存在する。
【0100】
崩壊剤は、水溶性環境に暴露された際に崩壊する錠剤を提供するために本発明の組成物に用いられる。過剰の崩壊剤を含有している錠剤は保存中に崩壊するかもしれないが、崩壊剤の量が少なすぎる錠剤は、所望の速度で、あるいは所望の条件下で崩壊しない可能性がある。従って、有効成分の放出に悪影響を及ぼすような過剰量または過少量ではない十分な量の崩壊剤を用いて本発明の固形経口製剤を成形すべきである。使用する崩壊剤の量は製剤の種類に応じて変えられるが、当業者には容易に認識されるであろう。典型的な医薬組成物は、崩壊剤を約0.5〜約15重量パーセント、好ましくは約1〜約5重量パーセント含む。
【0101】
本発明の医薬組成物および製剤で使用な可能な崩壊剤は、これらに限定されるものではないが、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリン(polacrilin)カリウム、ナトリウムスターチグリコレート、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、他のデンプン、α化デンプン、他のデンプン、粘土、他のアルギン、他のセルロース、ガム、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0102】
本発明の医薬組成物および製剤で使用可能な滑沢剤としては、これらに限定されるものではないが、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、水素化植物油(例えば、落花生油、綿実油、ひまわり油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、エチルラウレート、寒天、およびそれらの混合物が挙げられる。さらなる滑沢剤としては、例えば、サイロイド(syloid)シリカゲル(W. R. Grace Co. of Baltimore, MD製造によるAEROSIL200)、合成シリカの凝固エアロゾル (Degussa Co. of Plano, TXにより販売)、CAB-O-SIL(Cabot Co. of Boston, MAによって販売されている発熱性二酸化ケイ素生成物)、およびそれらの混合物が挙げられる。滑沢剤は、仮に用いる場合、典型的には、それらを混合する医薬組成物または製剤の約1重量パーセント未満の量で使用する。
【0103】
本発明の好ましい固形経口製剤は、免疫調節化合物、無水乳糖、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸、コロイド性無水シリカおよびゼラチンを含む。
【0104】
4.4.2 遅延放出型製剤
本発明の有効成分は、当業者に周知の徐放性手段または送達器具によって投与することができる。一例としては、これらに限定されるものではないが、米国特許第3,845,770号、第3,916,899号、第3,536,809号、第3,598,123号、および第4,008,719号、第5,674,533号、第5,059,595号、第5,591,767号、第5,120,548号、第5,073,543号、第5,639,476号、第5,354,556号、および第5,733,566号に記載されているものが挙げられる。なお、これらの各特許は参照により本明細書に組み入れるものとする。かかる製剤は、所望の放出プロファイルを得るためのヒドロプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリクス、ゲル剤、透析膜、浸透系、多層コーティング剤、微粒子、リポソーム、ミクロスフェア、またはそれらの組み合わせ等を様々な割合で使用し、1種または複数の有効成分を徐放または放出制御するために利用することができる。本明細書に記載されているものをはじめとする当業者に周知の好適な徐放製剤は、本発明の有効成分との併用にあたって容易に選択することができる。従って、本発明は、放出制御に好適な錠剤、カプセル、ジェルキャップ、およびカプレット等(これらに限定されるものでない)の経口投与に好適な1回用量製剤を包含する。
【0105】
すべての放出制御剤には、放出非制御剤によって達成される薬物治療よりも優れた薬物治療に改善するという共通の目的を有している。理想的には、内科療法において最良設計の放出制御剤を使用することには、その症状を最短時間で治療または調節するよう用いられている薬物成分が最小限であるという特徴がある。放出制御剤の長所としては、薬剤活性の延長、投与頻度の低減、および患者の服薬遵守の向上が挙げられる。さらに、放出制御剤を用いることによって作用の発現時間または他の特性、例えば薬剤の血中濃度等に影響を及ぼし、従って、副作用(例えば、悪影響)の発生に影響を及ぼし得る。
【0106】
ほとんどの放出制御剤は、最初に、所望の治療効果を速やかに発生させる薬剤(有効成分)の量を放出し、徐々に、かつ継続的に、長期間にわたってこの治療効果または予防効果のレベルを維持する別の量の薬剤を放出するように設計されている。身体中の薬剤をこの一定レベルに維持するためには、代謝され、身体から排泄される薬剤の量を補充する割合でその薬剤が製剤から放出されなければならない。有効成分の放出制御は、これらに限定されるものではないが、pH、温度、酵素、水、または他の生理学的条件もしくは化合物をはじめとする様々な条件によって刺激され得る。
【0107】
4.4.3 非経口製剤
非経口製剤は、これらに限定されるものではないが、皮下投与、静脈内投与(ボーラス注射を含む)、筋肉内投与、および動脈内投与をはじめとする、様々な経路によって患者に投与することができる。一般に、これらの投与は患者本来の不純物に対する防御系を通さないものであるので、非経口製剤は、殺菌されているか、あるいは患者に投与する前に殺菌可能なものであるのが好ましい。非経口製剤の例としては、これらに限定されるものではないが、注射用溶液、注射用の製薬上許容可能なビヒクル中に溶解または懸濁可能な乾燥製剤、注射用懸濁液、およびエマルジョンが挙げられる。
【0108】
本発明の非経口製剤を提供するのに使用可能な好適なビヒクルは、当業者に周知である。例としては、これらに限定されるものではないが、注射用水USP;水溶性ビヒクル、例えば、これらに限定されるものではないが、生食注射液、リンガー液、デキストロース注射液、デキストロースおよび生食注射液、および乳酸加ゲル液;水混和性ビヒクル、例えば、これらに限定されるものではないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコール;ならびに非水性ビヒクル、例えば、これらに限定されるものではないが、トウモロコシ油、綿実油、落花生油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、および安息香酸ベンジルが挙げられる。
【0109】
本明細書に記載されている1種または複数の有効成分の溶解性を高める化合物もまた、本発明の非経口製剤へ加えることができる。例えば、シクロデキストリンおよびその誘導体の使用により免疫調節化合物およびその誘導体の溶解性を高めることができる。例えば、米国特許第5,134,127号(この特許は参照により本明細書に組み入れるものとする)を参照されたい。
【0110】
4.4.4 局所製剤および粘膜製剤
本発明の局所製剤および粘膜製剤としては、これらに限定されるものではないが、スプレー、エアロゾル、溶液、エマルジョン、懸濁液または当業者に周知の他の製剤が挙げられる。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第16版および第18版, Mack Publishing, Easton PA (1980および1990);およびIntroduction to Pharmaceutical Dosage Forms, 第4版, Lea & Febiger, Philadelphia (1985)を参照されたい。口腔内の粘膜組織の治療に好適な製剤は、口内洗浄液として、または経口ゲル剤として製剤化することができる。
【0111】
本発明に包含されている局所製剤および粘膜製剤を提供するのに使用可能な好適な賦形剤(例えば、担体および希釈剤)ならびに他の原料は製薬分野の当業者には周知であり、所与の医薬組成物または製剤を適用する特定組織によって決まる。この事実を念頭に置いた場合、典型的な賦形剤としては、これらに限定されるものではないが、溶液、エマルジョンまたはゲル剤形成用の水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱油、およびこれらの混合物が挙げられる。これらは無毒であって、かつ製薬上許容可能である。所望の場合、モイスチャライザーまたは湿潤剤もまた医薬組成物および製剤に添加することができる。かかる追加成分の例は当技術分野で周知である。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第16版および第18版, Mack Publishing, Easton PA (1980および1990)を参照されたい。
【0112】
また、医薬組成物または製剤のpH値を調整して、1種または複数の有効成分の送達を改善することもできる。同様に、溶媒担体の極性、そのイオン強度、または等張性を調整して送達を改善することができる。また、ステアリン酸塩等の化合物を医薬組成物または製剤に添加して、送達が改善されるように1種または複数の有効成分の親水性または親油性を有利に変更することができる。この点に関して、ステアリン酸塩は、製剤の脂質ビヒクルとして、乳化剤または界面活性剤として、および送達増強剤または浸透促進剤として有用である。さらに、本有効成分の種々の塩、水和物または溶媒和物を用いて、得られる組成物の特性を調節することができる。
【0113】
4.4.5 キット
一般には、本発明の有効成分は、患者に同時に、または同一の投与経路により投与されないことが望ましい。従って、本発明は、医師によって用いられる場合に、患者への適当量の有効成分の投与を簡素化することができるキットを包含する。
【0114】
本発明の一般的なキットは、本発明の免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、プロドラッグ、もしくは包接化合物の製剤を含む。さらに本発明が包含するキットは、G-CSF、GM-CSF、EPO、トポテカン、ペントキシフィリン、シプロフロキサシン、デキサメタゾン、IL2、IL8、IL18、Ara-C、ビノレルビン、イソトレチノイン、13-cis-レチノイン酸等の追加有効成分、またはそれらの薬理学的に有効な変異体もしくは誘導体、またはそれらの組み合わせを含み得る。追加有効成分の例としては、これらに限定されるものではないが、本明細書に記載されているもの(例えば、4.2節を参照されたい)が挙げられる。
【0115】
さらに本発明のキットは、有効成分を投与するのに使用する器具を含む。かかる器具の例としては、これらに限定されるものではないが、注射器、ドリップバッグ、貼付剤および吸入器が挙げられる。
【0116】
さらに本発明のキットには、移植用の細胞または血液、ならびに1種または複数の有効成分を投与するのに使用可能な製薬上許容可能なビヒクルが含まれる。例えば、有効成分を非経口投与において復元する必要がある固形製剤で提供する場合、キットには、有効成分を溶解させて非経口投与に好適な粒子非含有滅菌溶液を形成し得る、好適なビヒクルの密閉容器を含めることができる。製薬上許容可能なビヒクルの例としては、これらに限定されるものではないが、注射用水USP;水溶性ビヒクル、例えば、これらに限定されるものではないが、生食注射液、リンガー液、デキストロース注射液、デキストロースおよび生食注射液、および乳酸加ゲル液;水混和性ビヒクル、例えば、これらに限定されるものではないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコール;および非水性ビヒクル、例えば、これらに限定されるものではないが、トウモロコシ油、綿実油、落花生油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、および安息香酸ベンジルが挙げられる。
【実施例】
【0117】
以下の研究は本発明をさらに詳しく説明することを目的とし、その範囲に限定するものでない。
【0118】
5. 実施例
MDS患者の骨髄血漿では、増殖阻害サイトカインであるTNF-αの過剰産生が実証されている。TNF-αはMDS疾患で赤血球前駆体の残存に関する重要な負のレギュレーターとしてが関与している。その結果として、免疫調節化合物を用いた試験を実施した。
【0119】
5.1 薬物試験
ヒト被験者における本発明の免疫調節化合物の臨床評価の立証を目的として、一連の非臨床薬理試験および毒性試験を実施した。これらの試験は、特に断りのない限り、研究計画用の国際的に認可されているガイドラインに従い、かつ安全性試験の実施に関する基準(GLP)の要件に従って実施する。
【0120】
3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンの薬理特性(サリドマイドとの活性比較を含む)をin vitro試験で明らかにする。試験では、種々のサイトカイン産生に対する3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンまたはサリドマイドの効果を検討する。すべての試験で、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンはサリドマイドよりも少なくとも50倍効力があった。さらに、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンの安全薬理試験をイヌで行ない、さらに、ECGパラメーターに対する3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンの効果を霊長類において3回反復投与毒性試験の一環として試験した。結果を下記に示す。
【0121】
5.2 サイトカイン産生のモジュレーション
3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンによるヒトPBMCおよびヒト全血におけるLPS刺激後のTNF-α産生の阻害をin vitroで調べた(Mullerら, Bioorg. Med. Chem. Lett. 9: 1625-1630, 1999)。PBMCおよびヒト全血におけるLPS刺激後のTNF-α産生の阻害については3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンのIC50はそれぞれ〜100nM(25.9ng/mL)および〜480nM(103.6ng/ml)であった。対照的に、サリドマイドのPBMCのLPS刺激後のTNF-α産生の阻害のIC50は〜194μM(50.2μg/ml)であった。
【0122】
in vitro試験によれば、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンに関する薬理活性プロファイルは、サリドマイドに似ているが、その効力は50〜2000倍であることが示唆されている。3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンの薬理作用は、受容体誘起栄養性シグナル(trophic signal)(例えば、IGF-1、VEGF、シクロオキシゲナーゼ-2)に対する細胞応答および他の活性の阻害剤としてのその作用に基づいている。その結果、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンは、炎症性サイトカインの産生を抑制し、接着分子およびアポトーシス抑制タンパク質(例えば、cFLIP、cIAP)をダウンレギュレートし、死−受容体誘起プログラム細胞死に対する感度を高め、血管形成応答を抑制する。この試験から、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンは、リガント(ligant)誘導型Aktリン酸化を消失させることによりAML細胞におけるVEGFへの細胞分裂誘起反応を停止させ、プレ臨床モデルでのMDS対正常骨髄前駆体形成を選択的に抑制することが明らかである。
【0123】
5.3 MDS患者における臨床試験
プロトコル
4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンのような本発明の免疫調節化合物を、MDS患者に対して、16週間1日当たり約0.1mgから約25mgの量で投与し、続いて患者の血液応答について評価する。応答速度は、リスク群について定義されている国際的予後スコアリングシステム(International Prognostic Scoring System:IPSS)に従って、白血病に移行するMDSサブタイプの可能性によって階層化された群(cohort)(すなわち、IPSS 低リスクおよび中間リスクI;対 IPSS 中間リスクIIおよび高リスク)で評価する。
【0124】
例えば、15人の患者を第1群に登録し、1日当たり25mgの3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンによる治療を受ける。続いて16週まで赤血球応答(大きな応答または小さな応答)が現れた患者の数を評価する。応答が認められなかった場合、この試験は効果がないものと結論する。しかし、4名以上の患者に応答があった場合には、この試験が臨床活性の見込みがあるものと結論する。中間のケース(例えば、1名、2名または3名の患者に応答がある)では、10名の患者からなる第2群を登録する。第2群による治療が終了した後、治療を受けた25名の患者のうち4名以上の患者に応答があった場合、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンには臨床活性の見込みが示唆されるものと結論づける。
【0125】
臨床試験
赤血球輸血依存症(red blood cell transfusion-dependence)(>4単位/8週)または続発性貧血(Hgb<10g/dl)のMDS患者における3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンの寛解効力についての臨床試験を行った。1日に25mgの経口用量で3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンによる連続処置を患者に施した。処置を16週間行った後、応答をIWG基準にしたがって評価した。処置を受けている15人の患者の中で、11人の患者については毒性評価可能であり、9人の患者については応答評価可能であり(>8週間の治療)、3人の患者については胆嚢炎、自己免疫性溶血性貧血、または患者拒絶のために早期に治療を中止した(<2週間)。患者の中央年齢は、78歳であった(51〜82歳の範囲)。MDS患者のFABタイプには、RA[4人の患者]、RARS [4人の患者]、RAEB [6人の患者]およびRAEB-T[l人の患者]があり、11人の患者におけるLow/Int-1および4人の患者におけるInt-2/HighのIPSSカテゴリーに対応している。最初の10人の患者において、骨髄抑制(グレード3を超える通常の毒性基準または白血球および血小板の数の50%減少(9人の患者)、およびグレード3の疲労度(1人の患者)を特徴とする)で、10mgまで用量を低減することを余儀なくされた。それに続く患者すべてに、1日に10mgの経口投与を開始した。グレード1、2の薬物関連副作用は25mgの用量に限定され、かかる副作用には、かゆみ症(pruritus)または頭皮痒み(itchy scalp)(6人の患者)および筋肉痛(1人の患者)があった。9人の評価可能な患者のうち6人(66%)が、血液学的利益(二重系統(dual lineage)、1人の患者)を受け、6/7(86%)の患者がIPSS Low/Int-lであった。血液学的応答には、RBC輸血非依存性[4人の患者]、50%を超えるRBC輸血の減少[1人の患者]、1.5gを超えるHgbの上昇[1人の患者]、および1人のマイナーな血小板応答(30000μLを超える上昇)があった。細胞遺伝学的応答について評価可能な5人の患者の中で、3人の患者が完全または部分的な(50%を超える異常な中期の減少)寛解を受けた。応答は、芽球のパーセンテージの正常化(1人の患者)、BM細胞学的異形成のグレード低下、BM多能前駆体(multipotent progenitor)(CFU-GEMM)の40倍を超える改善50%、および赤血球バースト((BFU-E)形成に関連していた。アポトーシス指数、血管形成性(細胞/血漿VEGF、微小管密度)、サイトカイン産生および増殖率(Ki67)における変化との相関は進行中である。この試験の結果から、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンが、MDSの低/中間-1リスクを有する患者において、顕著な赤血球新生および細胞遺伝学的寛解活性を有することがわかる。臨床的利益は、細胞学的異形成の消散(resolution)に関連した、低/中間-1の疾患または5q-シンドロームの患者において最大を示す。アポトーシス指数の上昇、CFCの回復、および核型異常性の抑制は、化合物が骨髄異形成クローンの消滅を促進することを示唆している。これらのデータに基づき、この試験をさらなる被検者の治療に広げた。連続的な経口1日用量としての10mgでの処置は、最小の骨髄抑制で十分許容された。
【0126】
拡大試験
臨床試験を、さらに16人のMDS患者に拡大して少なくとも8週間行った。IPSSによれば、これらの患者のうちの13人は、低リスクまたは中間-1リスクの患者に分類され、3人の患者は中間-2リスクまたは高リスクの患者に分類された。FAB分類によれば、不応性貧血(RA)または環状鉄芽球を伴うRA(RARS)を有する患者が11人、過剰芽球を伴うRA(RAEB)、急性転化を来たしたRAEB(RAEB-T)の患者が5人であった。最初の13人の患者についての3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンの出発用量は1日25mgであり、残りの3人の患者については1日10mgであった。出発用量25mgを投与された全患者が、8週間治療の完了までに用量を減少する必要があった。少なくとも8週間のモニタリングを終えたこれらの16人の中で、9人の患者が、国際MDSワーキンググループ基準によって評価されたとおりの赤血球応答を達成した。赤血球応答は、以前から輸血依存症の患者7人における輸血依存症、輸血非依存性貧血患者1人における血中ヘモグロビン濃度の>2g/dLの上昇、および輸血依存性患者1人におけるRBC輸血必要量の>50%の減少からなっていた。したがって、16人の患者のうちの8人で大きな赤血球応答が生じ、1人の患者において小さな赤血球応答が観察された。赤血球応答を示した9人の患者全員が低リスク患者または中間-1リスク患者であった。1人の患者は小さな血小板応答も示した。さらに、ベースラインにて異常な核型を有する8人の患者のうちの5人において完全な細胞遺伝学的応答が生じた。完全な細胞遺伝学的応答を示したこれらの5人の患者全員が、Del5q31-33異常を有しており、これはMDSについての良好な予後因子であることが見出されている。実際、この試験で5q-シンドロームに登録されている5人の患者全員が、完全な細胞遺伝学的応答および大きな赤血球応答を達成した。この試験から、この治療と骨髄異形成前駆体についてのアポトーシス指数の上昇および正常な造血前駆細胞の回復との関連性が示された。
【0127】
5.4 MDS患者における周期治療
上記のとおり、MDS患者に本発明の免疫調節化合物を周期的に投与する。周期治療には、一定の期間第1の薬剤を投与し、続いて一定の期間前記薬剤および/または第2の薬剤を投与すること、ならびにこれらの連続投与を繰り返すことが含まれている。周期治療によって、1つまたは複数の治療に対して耐性が強くなることを低下させ、1つの治療に伴う副作用を回避または低減し、かつ/または治療の有効性を改善することができる。
【0128】
実施例1
特定の実施形態では、予防薬または治療薬を約16週のサイクルで毎日1回または2回投与する。1サイクルは、治療薬または予防薬の投与と、少なくとも1週間、2週間または3週間の休止を含み得る。投与する周期数は、約1〜約12サイクル、さらに詳しくは約2〜約10サイクル、より詳しくは約2〜約8サイクルである。
【0129】
実施例2
本試験の目的は、MDS患者における3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンの経口投与の有効性および安全性を評価することである。患者に、16週間に4週のサイクル(4サイクル)または24週間に4週のサイクル(6サイクル)で、28日間毎に21日間10mg/dまたは15mg/dの量の化合物を投与する。対象の群には、基準(治療試験の第1日目)の8週以内に少なくとも2ユニットのRBCが投与されている、赤血球輸血依存貧血のある低リスクMDS患者または中間リスク1のMDS患者(国際的予後スコアリングシステム)が含まれている。血液検査のモニタリングの他に、細胞発生分析を含む骨髄穿刺/生検を基準時と3サイクルの終了後および6サイクルの終了後に行なう。この試験を通して、骨髄所見、安全性および有効性データを検討し、リスクに対する有益性を評価する。この試験は、国際MDSワーキンググループ分類(International MDS Working Group Criteria)に従って、赤血球輸血非依存性(red blood cell transfusion independence)および大きな赤血球応答を検討する。さらに、本試験では、8週間にわたって、5q欠失細胞遺伝学的異常を有する患者のサブグループにおける赤血球輸血非依存性;血小板応答、好中性応答、骨髄応答および細胞遺伝学的応答;赤血球輸血必要量における50%(ただし<100%)の減少という小さな赤血球応答を観察する。さらに本試験では、有害事象、血液試験、血清化学、TSH、尿検査、尿または血清妊娠試験、バイタルサイン、ECGおよび生理学的検査をモニターする。
【0130】
実施例3
本試験の目的は、MDS患者において、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンの経口投与の有効性と安全性とを偽薬および標準治療の場合と比較することである。患者は、16週間に4週のサイクル(4サイクル)または24週間に4週のサイクル(6サイクル)で治療を受ける。対象の群には、基準(治療試験の第1日目)の8週以内に少なくとも2ユニットのRBCが投与されている、赤血球輸血依存貧血のある低リスクMDS患者または中間リスク1のMDS患者(国際的予後スコアリングシステム)が含まれている。安全性と有効性を評価する試験臨検を4週間毎に行い、血液検査のモニタリングは2週間毎に行なう。細胞発生分析を含む骨髄穿刺/生検を基準時と3サイクルの終了後および6サイクルの終了後に行なう。この試験を通して、骨髄所見、安全性および有効性データを検討し、リスクに対する有益性を評価する。本化合物の投与による継続治療に関する延長試験は、6サイクルの治療から臨床上の有効性を得ている患者に対して可能であり、偽薬に関して任意抽出した被験体に本治療にクロスオーバーする機会を提供するものである。
【0131】
本明細書に記述されている本発明の実施形態は、本発明の範囲の単なる例示に過ぎない。本発明の完全なる範囲は、添付の特許請求の範囲を参照することにより理解するのがより望ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグを有効成分として含有する、骨髄異形成症候群の治療または予防のための組成物。
【請求項2】
免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグを有効成分として含有する、骨髄異形成症候群の管理のための組成物。
【請求項3】
有効成分として、免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグと、少なくとも1つの第2の有効成分とを含有する、骨髄異形成症候群の治療、予防または管理のための組成物。
【請求項4】
組成物を投与される患者がDel5q31-33異常を有している、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
第2の有効成分が血球形成を改善し得るものである、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
第2の有効成分が、サイトカイン、造血成長因子、抗癌剤、抗生物質、プロテアソーム阻害剤、または免疫抑制剤である、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
第2の有効成分が、エタネルセプト、イマチニブ、抗TNF-α抗体、インフリキシマブ、G-CSF、GM-CSF、EPO、トポテカン、ペントキシフィリン、シプロフロキサシン、イリノテカン、ビンブラスチン、デキサメタゾン、IL2、IL8、IL18、Ara-C、ビノレルビン、イソトレチノイン、13-cis-レチノイン酸、またはその薬理学的に有効な変異体もしくは誘導体である、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
骨髄異形成症候群が、不応性貧血、環状鉄芽球を伴う不応性貧血、過剰芽球を伴う不応性貧血、急性転化を来たした過剰芽球を伴う不応性貧血、または慢性骨髄単球性白血病である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
骨髄異形成症候群が一次性または二次性である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
免疫調節化合物の立体異性体が鏡像異性体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
免疫調節化合物が式(II):
【化1】

(式中、
XおよびYのうちの一方はC=Oであり、他方はCH2またはC=Oであり;
R1は、H、(C1-C8)アルキル、(C3-C7)シクロアルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(C0-C4)アルキル-(C1-C6)ヘテロシクロアルキル、(C0-C4)アルキル-(C2-C5)ヘテロアリール、C(O)R3、C(S)R3、C(O)OR4、(C1-C8)アルキル-N(R6)2、(C1-C8)アルキル-OR5、(C1-C8)アルキル-C(O)OR5、C(O)NHR3、C(S)NHR3、C(O)NR3R3'、C(S)NR3R3'、または(C1-C8)アルキル-O(CO)R5であり;
R2は、H、F、ベンジル、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、または(C2-C8)アルキニルであり;
R3およびR3’は、独立して、(C1-C8)アルキル、(C3-C7)シクロアルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(C0-C4)アルキル-(C1-C6)ヘテロシクロアルキル、(C0-C4)アルキル-(C2-C5)ヘテロアリール、(C0-C8)アルキル-N(R6)2、(C1-C8)アルキル-OR5、(C1-C8)アルキル-C(O)OR5、(C1-C8)アルキル-O(CO)R5、またはC(O)OR5であり;
R4は、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、(C1-C4)アルキル-OR5、ベンジル、アリール、(C0-C4)アルキル-(C1-C6)ヘテロシクロアルキル、または(C0-C4)アルキル-(C2-C5)ヘテロアリールであり;
R5は、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリール、または(C2-C5)ヘテロアリールであり;
R6は、それぞれ独立して、H、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(C2-C5)ヘテロアリール、または(C0-C8)アルキル-C(O)O-R5であるか、あるいはR6基が結合してヘテロシクロアルキル基を形成し;
nは0または1であり;
*はキラル炭素中心を表す)
を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
免疫調節化合物が鏡像異性体的に純粋である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
免疫調節化合物が、置換スチレンのシアノ誘導体またはカルボキシ誘導体、1-オキソ-2-(2,6-ジオキソ-3-フルオロピペリジン-3-イル)イソインドリン、1,3-ジオキソ-2-(2,6-ジオキソ-3-フルオロピペリジン-3-イル)イソインドリン、およびテトラ置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
免疫調節化合物が鏡像異性体的に純粋である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグを有効成分として含有し、臍帯血、胎盤血、末梢血幹細胞、造血幹細胞調製物、または骨髄を患者へ移植する前、途中または後に投与される、骨髄異形成症候群の治療、予防または管理のための組成物。
【請求項16】
有効成分として免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグと、第2の有効成分とを含有する、骨髄異形成症候群に罹患している患者における第2の有効成分の投与に伴う副作用の低減または回避のための組成物。
【請求項17】
第2の有効成分が血球形成を改善し得るものである、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
第2の有効成分が、サイトカイン、造血成長因子、抗癌剤、抗生物質、プロテアソーム阻害剤、または免疫抑制剤である、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
第2の有効成分が、エタネルセプト、イマチニブ、抗TNF-α抗体、インフリキシマブ、G-CSF、GM-CSF、EPO、トポテカン、ペントキシフィリン、シプロフロキサシン、イリノテカン、ビンブラスチン、デキサメタゾン、IL2、IL8、IL18、Ara-C、ビノレルビン、イソトレチノイン、13-cis-レチノイン酸、またはその薬理学的に有効な変異体もしくは誘導体、あるいはそれらの組み合わせである、請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグと、血球形成を改善し得る第2の有効成分とを含んでなる1回用量製剤。
【請求項21】
免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグと、第2の有効成分とを含んでなる1回用量製剤であって、第2の有効成分が、サイトカイン、造血成長因子、抗癌剤、抗生物質、プロテアソーム阻害剤、または免疫抑制剤である、前記製剤。
【請求項22】
免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグと、エタネルセプト、イマチニブ、抗TNF-α抗体、インフリキシマブ、G-CSF、GM-CSF、EPO、トポテカン、ペントキシフィリン、シプロフロキサシン、イリノテカン、ビンブラスチン、デキサメタゾン、IL2、IL8、IL18、Ara-C、ビノレルビン、イソトレチノイン、13-cis-レチノイン酸、またはその薬理学的に有効な変異体もしくは誘導体、あるいはそれらの組み合わせとを含んでなる1回用量製剤。
【請求項23】
製剤が患者への静脈内投与または皮下投与に適しているものである、請求項20、21または22に記載の1回用量製剤。
【請求項24】
免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグを含む医薬組成物と;
臍帯血、胎盤血、末梢血幹細胞、造血幹細胞調製物、または骨髄
とを含んでなるキット。
【請求項25】
免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグを含む医薬組成物と;
サイトカイン、造血成長因子、抗癌剤、抗生物質、プロテアソーム阻害剤、および免疫抑制剤からなる群から選択される第2の有効成分を含む医薬組成物と;
臍帯血、胎盤血、末梢血幹細胞、造血幹細胞調製物、または骨髄
とを含んでなるキット。
【請求項26】
医薬組成物または1回用量製剤を投与するための器具をさらに含んでなる、請求項24または25に記載のキット。
【請求項27】
患者の骨髄異形成症候群の治療、予防または管理のための組成物の製造における、免疫調節化合物、またはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、もしくはプロドラッグの使用であって、該組成物が、
(a)患者がDel5q31-33異常を有するかどうかを測定するステップと;
(b)患者に該組成物を投与するステップ
とを含んでなる方法において使用されるためのものである、前記使用。

【公開番号】特開2007−45839(P2007−45839A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278102(P2006−278102)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【分割の表示】特願2004−545192(P2004−545192)の分割
【原出願日】平成15年4月13日(2003.4.13)
【出願人】(591120033)セルジーン・コーポレーション (84)
【氏名又は名称原語表記】CELGENE CORPORATION
【Fターム(参考)】