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高いサンプル利用度での質量分光法のための方法および装置
説明

高いサンプル利用度での質量分光法のための方法および装置

高いサンプル利用度で質量スペクトルを測定する方法は、第1の所定の範囲の質量電荷比を持つ質量スペクトルから第1の群の前駆イオンを質量フィルタするステップを含む。第1の群の前駆イオン中の少なくとも1種類の前駆イオンが、次に選択的にフラグメント化される。第1の群の前駆イオン中のフラグメント化された前駆イオンの第1のフラグメント質量スペクトルが測定され、一方では第1の所定の範囲内の質量電荷比の他の前駆イオンが保持される。第2の所定の範囲の質量電荷比を持つ第2の群の前駆イオンが質量スペクトルから質量フィルタされる。第2の群の前駆イオン中で、少なくとも1種類の前駆イオンが選択的にフラグメント化される。第2の群の前駆イオン中でフラグメント化された前駆イオンの第2のフラグメント質量スペクトルが次に測定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で使用される項の見出しは、組織化の目的のためのみにあり、いかなる方法においても本出願に記載される発明を限定するように解釈されるべきではない。
【0002】
関連出願の項
本出願は、2009年7月7日に出願された米国仮特許出願第61/223,542号(発明の名称「Methods and Apparatus for Mass Spectrometry with High Sample Utilization」)に対して、優先権を主張する。この出願の全体は本明細書において参照として援用される。
【背景技術】
【0003】
序論
タンデム質量分光計は、複数の質量分析ステップを実行することが可能な質量分光計であり、時にはMSn機器と呼ばれる。2つの質量分析ステップを実行することが可能な質量分光計がMS−MS質量分光計と呼ばれ、n個の質量分析ステップを実行することが可能なタンデム質量分光計がMSn質量分光計と呼ばれる。タンデム質量分光計は、空間的タンデムもしくは時間的タンデムのいずれかを特徴とすることができる。空間的タンデム質量分光計は、物理的に分離された質量分析器を持つ。時間的タンデム質量分光計は、同じ質量分析器(単数または複数)を何度も繰り返し使用して、選択および読み出しのすべてのステップを順次実行する。当分野では、様々なタイプの質量分析セクションを持つ多種多様なタンデム質量分光計が知られている。タンデム質量分光計における質量分析セクションは、同じタイプの質量分析器であってもよく、あるいは異なったタイプの質量分析器であってもよい。例えば、四重極−四重極、磁場セクター−四重極、四重極−リニアイオントラップ、および四重極−飛行時間型の質量分析器を持つタンデム質量分光計がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
タンデム質量分光計は、(典型的に生体材料に由来する)調査中のイオンの構造および配列に関する情報を提供し、サンプル中の未知種の正確な同定を可能にする。タンデム質量分光計は、対象とする物質と重なる可能性のある多くの他の成分を含んだサンプル中の既知物質の量を定量化するためにも使用される。タンデム質量分光計は、イオンを調査するために複数のステップを含む質量分光測定を実行するが、通常はこれらのステップが、分子フラグメンテーションもしくは化学反応の何らかの形態によって分離される。多段階の質量分光測定により、研究者は分子の多種多様な構造およびシークエンシング研究を実行することが可能である。
【0005】
添付図面と併せて理解される次の詳細な説明では、本教示が、好ましい例となる実施形態に従ってそのさらなる利点とともにより詳しく記載される。当業者は、以下に記載される図面が例示のみを目的とすることを理解するであろう。図面は、必ずしも縮尺通りではなく、むしろ本教示の原理を例示することに重点が置かれる。いずれにしても、図面が出願人の教示の範囲を制限することは意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、本教示に従って高いサンプル利用度で質量スペクトルを測定する方法を実行するために使用できる、イオントラップを含んだMSn質量分光計の機能ブロック図を示す。
【図2】図2は、本教示に従って高いサンプル利用度で質量スペクトルを測定する方法を実行するために使用できる、質量フィルタおよびイオントラップを含んだMSn質量分光計の機能ブロック図を示す。
【図3】図3は、本教示に従って高いサンプル利用度で質量スペクトルを測定する方法を実行するために使用できる、質量フィルタ、フラグメンテーション手段、およびイオントラップを含んだMSn質量分光計の別の機能ブロック図を示す。
【図4】図4は、本教示に従って高いサンプル利用度で質量スペクトルを測定する方法を実行するために使用できる、FT−ICR質量分光計を含んだMSn質量分光計のまた別の機能ブロック図を示す。
【図5】図5は、衝突セルおよびイオントラップを有する分析セクションを含む、本教示によるサンプル利用度が高い質量分光計のブロック図を示す。
【図6】図6は、前駆イオンを質量フィルタするステップ、前駆イオンを選択的にフラグメント化するステップ、およびフラグメント質量スペクトルを測定するステップからなる1つ以上のシークエンスを実行するステップを含む、本発明に従って高いサンプル利用度で質量スペクトルを測定する方法の例となる質量スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
様々な実施形態の記載
本明細書において「一実施形態」または「実施形態(単数)」への言及は、その実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造または特性が、本教示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書において様々な箇所に現れる語句「一実施形態において」は、必ずしもすべてが同じ実施形態を参照するわけではない。
【0008】
当然のことながら、本教示が実施可能である限り、本教示の方法の個々のステップは、任意の順序で、および/または同時に実行することができる。さらに、当然のことながら、本教示が実施可能である限り、本教示の装置および方法は、任意の数またはすべての記載される実施形態を含むことができる。
【0009】
添付図面に示されるように、その例となる実施形態を参照して、本教示がここでより詳細に記載される。本教示は、様々な実施形態および例とともに記載されるが、かかる実施形態に本教示が限定されることは意図されない。むしろ、当業者によって理解されるであろうように、本教示は、様々な代替物、変更および均等物を包含する。本明細書の教示にアクセスできる当業者は、本明細書に記載される開示の範囲内にある追加的な実現、変更および実施形態、ならびに他の使用分野を認識するであろう。
【0010】
最新機器で実行されるタンデム質量分光計の実験は、複数の成分を調査するときにイオンを非効率的に利用する。典型的なMS−MS機器において、第1のステップは、対象とする単一成分をフィルタし、一方ではすべての他の成分を捨てるステップを含む。結果として、捨てられる成分はさらなる分析に利用することができず、それ故に測定効率が低下する。
【0011】
本教示は、サンプル利用度が高い質量分光法のための方法および装置に関する。本教示の一様態は、前駆イオンのセットを適切なイオントラップ中にトラップして、その後、有用なイオンを捨てることなくフラグメントイオン・スペクトルが得られるように、このセットの前駆イオンを操作する方法および装置を使用することである。本教示を実現するために、多くのタイプの質量分光計を使用することができる。本教示を実現するために、時間的タンデム質量分光計、たとえばRFイオントラップ(リニアおよび3D)、(ペニングトラップおよびフーリエ変換質量分光計−FTMS:Fourier Transform Mass Spectrometerとしても知られる)イオンサイクロトロン共鳴、および四重極−リニアイオントラップまたは四重極−FTMSのようなハイブリッド質量分光計を使用することができる。同様に、本教示を実現するために、いくつかの空間的タンデム質量分光計を使用することもできる。
【0012】
図1は、本教示に従って高いサンプル利用度で質量スペクトルを測定する方法を実行するために使用できる、イオントラップを含んだMSn質量分光計10の機能ブロック図を示す。MSn質量分光計10は、時間的タンデム質量分光計である。質量分光計10は、分析のために複数の前駆イオンを生成するイオン源12を含む。エレクトロスプレーおよびレーザ脱離イオン源のような、多くのタイプのイオン源を使用することができる。一実施形態において、イオン源は、MALDIイオン源である。
【0013】
インターフェースイオン光学部14は、イオントラップ16を含む分析セクション中へ前駆イオンを集束させるために使用される。インターフェースイオン光学部14は、イオントラップ16に入るイオンの数を制御するオリフィスプレートのような、様々な部品を含むことができる。中間圧力チャンバを形成するために、オリフィスプレートに隣接してスキマープレートを配置することができる。スキマープレートは、通常、イオンがスキマープレートを通過してイオントラップ16へ入るように設計される。スキマープレートを通過する前駆イオンを収集しかつ集束させて、質量分光計10のイオントラップ16へイオンを導くために、イオンガイドを使用することができる。不要な中性物質のイオントラップ16への流入を低減するために、カーテンガスを含むように設計されたカーテンチャンバを提供することができる。
【0014】
様々な実施形態において、イオントラップ16は、選択的衝突誘起解離フラグメンテーションおよび共鳴励起フィルタリング(SWIFTまたはFNFスウィフト)を用いた四重極イオントラップ(リニアまたは三次元)、質量選択的な排出を用いたリニアイオントラップ、あるいは選択的衝突誘起解離フラグメンテーションおよび共鳴励起フィルタリング(CID:collision induced dissociationまたはSORI CID)を用いたペニングイオントラップ(Penning ion trap)とすることができる。MSn質量分光計10中のイオントラップ16は、様々な機能を実行するために使用することができる。イオントラップ16は、イオン光学部14を通過したイオンを初めにトラップして冷却する。イオントラップ16は、いくつかの対象とする前駆イオンを分離するためにも使用することができる。分離されたこれらの対象とする前駆イオンは、次に衝突誘起解離、フォトフラグメンテーション(photofragmentation)、または他の手段を用いてフラグメント化することができる。フォトフラグメンテーションは、すべてまたはいくつかの種類の前駆イオンをフラグメント化するために用いることができる。次にイオントラップ16は、イオン検出器18がフラグメンテーション・スペクトルを読み取るかまたは検出できるようにフラグメントイオンを引き出し、一方ではさらなる分析のために少なくともいくつかの他の前駆イオンをイオントラップ16中に留める。
【0015】
これらのイオントラップ機能を繰り返して、対象とする第2の群の前駆イオンを分離することができる。対象とする第2の群の前駆イオンは、次に衝突誘起解離、フォトフラグメンテーション、または他の手段を用いてフラグメント化することができる。次にイオントラップ16は、検出器18が第2のフラグメンテーション・スペクトルを検出できるようにそれを引き出し、一方ではさらなる分析のために少なくともいくつかの他の前駆イオンをイオントラップ16中に留める。任意の数またはすべての前駆イオンがフラグメント化されて引き出されるまで、この方法を繰り返すことができる。
【0016】
図2は、本教示に従って高いサンプル利用度で質量スペクトルを測定する方法を実行するために使用できる、質量フィルタおよびイオントラップを含んだMSn質量分光計50の機能ブロック図を示す。図2は、空間的タンデムおよび時間的タンデム混合型質量分光計である。第1のフィルタリング機構は、第2の質量分光計(イオントラップ)から物理的に分離される。質量分光計50は、図1に関連して記載されたように、分析のために複数の前駆イオンを生成するイオン源52を含む。同様に、質量分光計50は、質量フィルタ56およびイオントラップ58を含む分析セクション中へ前駆イオンを集束させるために使用される、図1に関連して記載されたインターフェースイオン光学部14のような、インターフェースイオン光学部54を含む。
【0017】
質量フィルタ56は、分析のために対象とする前駆イオンを分離するために使用される。当業者は、多くのタイプの質量フィルタの1つ以上を質量フィルタ56中に使用できることを理解するであろう。例えば、質量フィルタ56は、対象とする前駆イオンのみをイオントラップ58へ送るように設計された四重極質量フィルタを含むことができる。質量フィルタ56は、対象とする質量範囲内にないすべての前駆イオンを除くことによって、イオントラップ58における空間電荷を実質的に減少させるために使用することができる。
【0018】
イオントラップ58は、質量フィルタ56の後に配置される。イオントラップ58は、フラグメント化された対象とする前駆イオンをトラップして冷却する。当業者は、任意の数のイオントラップを使用できることを理解するであろう。同様に、当業者は、多くのタイプのイオントラップを使用できることを理解するであろう。イオントラップ58は、図1の質量分光計10に関連して記載されたように、質量選択的なフラグメンテーションを実行すること、質量スペクトルのいくつかの質量電荷比領域におけるイオン集団を除去すること、およびフラグメントイオンの質量スペクトルを読み取ることに適した、任意のタイプのイオントラップとすることができる。
【0019】
図1に関連して記載されたように、MSn質量分光計50中のイオントラップ58は、様々な機能を実行するために使用される。イオントラップ58は、イオン光学部54を通過したイオンを初めにトラップして冷却する。イオントラップ58は、いくつかの対象とする前駆イオンを分離するためにも使用することができる。分離されたこれらの対象とする前駆イオンのいくつかまたはすべては、次に衝突誘起解離、フォトフラグメンテーションまたは他の手段を用いて、フラグメント化することができる。次にイオントラップ58は、イオン検出器60がフラグメンテーション・スペクトルを読み取るかまたは検出できるようにフラグメントイオンを引き出し、一方ではさらなる分析のために少なくともいくつかの他の前駆イオンをイオントラップ58中に留める。加えて、イオントラップは、さらなる処理のために前駆イオンを質量フィルタ56へ戻すことができ、あるいはこれらの前駆イオンがイオントラップ中でフラグメント化されるのを防ぐために前駆イオンを質量フィルタ56へ戻すことができる。
【0020】
これらのイオントラップ機能を繰り返して、対象とする第2の群の前駆イオンを分離することができる。対象とする第2の群の前駆イオンは、次に衝突誘起解離、フォトフラグメンテーション、または他の手段を用いてフラグメント化することができる。次にイオントラップ58は、イオン検出器60が第2のフラグメンテーション・スペクトルを検出できるようにそれを引き出し、一方ではさらなる分析のために少なくともいくつかの他の前駆イオンをイオントラップ58中に留める。イオントラップは、前駆イオンを質量フィルタ56へ戻すこともできる。任意の数またはすべての前駆イオンがフラグメント化されて引き出されるまで、この方法を繰り返すことができる。
【0021】
図3は、本教示に従って高いサンプル利用度で質量スペクトルを測定する方法を実行するために使用できる、質量フィルタ、フラグメンテーション手段、およびイオントラップを含んだMSn質量分光計100の別の機能ブロック図を示す。図3に示されるMSn質量分光計100は、空間的タンデムおよび時間的タンデム混合型質量分光計である。質量分光計100は、図1に関連して記載されたように、分析のために複数の前駆イオンを生成するイオン源102を含む。同様に、質量分光計100は、質量フィルタ106、フラグメンテーション手段108およびイオントラップ110を含む分析セクション中へ前駆イオンを集束させるために使用される、図1に関連して記載されたイオン光学部14のような、インターフェースイオン光学部104を含む。
【0022】
質量フィルタ106は、分析用に対象とする前駆イオンを分離するために使用される。当業者は、図1に関連して記載されるように、多くのタイプの質量フィルタの1つ以上を質量フィルタ106中に使用できることを理解するであろう。質量フィルタ106は、対象とする質量範囲内にないすべての前駆イオンを除くことによって、分析セクションにおける空間電荷を実質的に減少させるために使用することができる。
【0023】
前駆イオンをフラグメント化するために、衝突セルのようなフラグメンテーション手段108が、質量フィルタ106の後に配置される。フラグメンテーション手段108は、フィルタされた前駆イオンを選択的または非選択的にフラグメント化することができる。当業者は、(CIDとしても知られる)CAD、選択的または非選択的フォトフラグメンテーション、ECD、ETD、および準安定原子衝撃フラグメンテーションのような、多くの他のタイプのフラグメンテーション手段があることを理解するであろう。
【0024】
本教示の一様態は、フラグメンテーション手段108によって生じるフラグメンテーションが質量選択的でありうることである。例えば、対象とする前駆イオンの共鳴励起とともに、質量選択的な衝突活性化解離(CAD:Collision−Activated Dissociation)を用いることができる。加えて、選択されたイオンの軌道の少なくとも一部を残りの成分から遠ざけるために当分野で知られる質量選択的なツールを用い、次に選択されたイオンに固有の軌道部分にフラグメンテーション用レーザ光線を重ね合わせることによって、フラグメンテーションを引き起こすことができる。フォトフラグメンテーションも同じく質量選択的でありうる。例えば、1つまたはいくつかの種類の前駆イオンは選択的に励起するが他は励起しないように、フォトフラグメンテーションに使用される光の波長を変化させることができる。
【0025】
1つ以上のイオントラップ110が、フラグメンテーション手段108の後に配置される。イオントラップ110は、フラグメント化された対象とする前駆イオンをトラップして冷却する。当業者は、任意の数のイオントラップを使用できることを理解するであろう。同様に、当業者は、多くのタイプのイオントラップを使用できることを理解するであろう。イオントラップ110は、図1に関連して記載されたように、質量選択的なフラグメンテーションを実行すること、質量スペクトルのいくつかの質量電荷比領域におけるイオン集団を除去すること、およびフラグメントイオンの質量スペクトルを読み取ることに適した、任意のタイプのイオントラップとすることができる。加えて、イオントラップ110は、さらなる処理のために前駆イオンをフラグメンテーション手段108および/または質量フィルタ106へ戻すことができ、あるいはこれらの前駆イオンがイオントラップ110中でフラグメント化されるのを防ぐために前駆イオンをフラグメンテーション手段108および/または質量フィルタ106へ戻すことができる。
【0026】
様々な動作モードにおいて、イオントラップ110は、所望もしくは非所望のフラグメントイオンをイオントラップ110から分離して排出する様々な機能を実行するために使用される。例えば、イオントラップ110は、分析中の前駆イオン、あるいは分析を受けるであろう将来の前駆イオンの予想されるフラグメントと重なる質量電荷比を持つイオンを排出するために使用することができる。これらのイオンを排出することは、さもなければフラグメントイオン・スペクトルを複雑にしかねない干渉を取り除くことになろう。
【0027】
さらなる質量フィルタリングおよび/またはフラグメンテーションのために、前駆イオンをイオントラップ外へ移すこともできる。ある動作モードでは、イオントラップ110がイオンの一部を、追加的なフラグメンテーションのためにもとのフラグメント化手段108へ排出する、および/またはさらなる質量フィルタリングのためにもとの質量フィルタ106へ排出する。追加的なフラグメンテーションおよび質量フィルタリングをイオンが受けた後、これらのイオンは、さらなる分析のためにイオントラップ110へ再び移される。追加的なフラグメンテーションおよび/または質量フィルタリングのために前駆イオンをイオントラップ110外へ移し、次に処理されたイオンをさらなる分析のためにイオントラップ110中へ戻すこの能力は、フラグメンテーション方法の選択肢とフラグメンテーション機構における条件の範囲とを大きく広げる。かかる性能は、多くの応用、特に1つのフラグメンテーション方法では十分な情報を提供しないこともある応用にとって重要な可能性がある。
【0028】
そのうえ、質量フィルタリングおよび/またはフラグメンテーションは、イオントラップ110自体で物理的に生じることもできる。例えば、いくつかの実施形態では、不要なイオンがトラップされて、その後イオントラップ110から引き出される。質量分光計100のいくつかの実施形態では、フラグメンテーションの少なくともいくらかが、イオントラップ110中で生じる。これらの実施形態では、対象とする質量電荷比を持つ前駆イオンが、分析のために選択的にフラグメント化される。
【0029】
次に、イオン検出器112によって読み出すかまたは検出できるように、所望の前駆イオンおよびそのフラグメントが引き出される。例えば、リニアイオントラップでは、質量選択的な軸方向の排出または半径方向の排出によって、所望の前駆イオンおよびそのフラグメントを読み出すことができる。イオントラップ110から排出されるイオンを検出するために、イオントラップ110に近接してイオン検出器112が配置される。当業者は、多くのタイプのイオン検出システムが使用できることを理解するであろう。例えば、フーリエ変換分析を用いた典型的なイオン電荷ピックアップ検出システムによって、フラグメントイオンおよびその前駆体のイオンサイクロトロン共鳴(ICR:Ion Cyclotron Resonance)質量分析スペクトルを読み出すことができる。
【0030】
図4は、本教示に従って高いサンプル利用度で質量スペクトルを測定する方法を実行するために使用できる、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FT−ICR:Fourier transform ion cyclotron resonance)質量分光計を含んだMSn質量分光計200のまた別の機能ブロック図を示す。MSn質量分光計200は、図1に関連して記載されたMSn質量分光計10をより具体的に記載したものであり、イオントラップは、ペニング・イオントラップである。
【0031】
質量分光計200は、図1に関連して記載されたように、分析のために複数の前駆イオンを生成するイオン源202を含む。同様に、質量分光計200は、図1に関連して記載されたイオン光学部14のような、インターフェースイオン光学部204を含み、この光学部は、FT−ICR質量分光計206を含む分析セクション中へ前駆イオンを集束させるために使用される。
【0032】
フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分光法は、一定磁界におけるイオンのサイクロトロン周波数に基づいてイオンの質量電荷比(m/z)を測定するタイプの質量分光計である。イオンは、ペニングトラップにトラップされて、磁界に垂直な振動電界によってサイクロトロン半径へ励起される。この励起は、1対のプレートを横切ってイオンを伝播させる。この1対のプレート上で電流信号が、正弦波の重ね合わせとして検出される。結果として生じた正弦波の重ね合わせをフーリエ変換し、質量を周波数に分解することによって質量スペクトルが得られる。ある一定の時間にわたって、すべてのイオンを同時に検出することができる。
【0033】
FT−ICR質量分光計206は、前駆イオンをフラグメント化するための衝突セルとしても機能することができる。バッファもしくは衝突ガス源208が制御バルブを通じて衝突セルに連結される。時には衝突活性化解離(CAD:collisionally activated dissociation)と呼ばれる衝突誘起解離(CID)のためのAC励起電源210が衝突セルに連結される。AC励起電源210は、AC電界を発生させて前駆イオンを比較的高い運動エネルギーまで選択的に加速して、次に衝突ガス(しばしばヘリウム、窒素またはアルゴン)を含む中性ガス分子とそれらが衝突することを可能にする。衝突の間に運動エネルギーのいくらかがイオンの内部エネルギーに変換されて、前駆イオンの結合切断、およびより小さい部分へのフラグメンテーションがもたらされる。これらのフラグメントイオンが、次にFT-ICR質量分光計206中で分析される。
【0034】
いくつかの実施形態において、レーザもしくはフォトフラグメンテーション・デバイス212が、ウィンドウを通してFT-ICR質量分光計206の内部に結合される。例えば、レーザをFT-ICR質量分光計206に結合して赤外多光子解離(IRMPD:infrared multi−photon dissociation)を実行し、前駆体をフラグメント化することができる。赤外多光子解離は、赤外放射を用いて複数の赤外フォトンを前駆イオンに吸収させることによって、前駆イオンをよりエネルギーの高い振動状態へ励起し、この振動状態において最終的に結合(単数または複数)が切断されて、前駆イオンの気相フラグメントが生じる。
【0035】
図5は、衝突セル304およびイオントラップ306を持つ分析セクション302を含む、本教示によるサンプル利用度が高い質量分光計300のブロック図を示す。質量分析もフィルタリングもともにイオントラップ306を使用するので、質量分光計300は、主として時間的タンデム質量分光計である。しかしながら、この実施形態では選択的なフラグメンテーションが衝突セル304を用いて行われるので、フラグメンテーションは、空間的タンデムで行われる。
図1の質量分光計に関連して記載されたように、質量分光計300は、分析のために複数の前駆イオンを生成するイオン源308を含む。加えて、質量分光計300は、前駆イオンを質量分光計300の分析セクション302中へ集束するために使用されるインターフェースイオン光学部310を含む。
【0036】
図5に示される衝突セル304は、選択的なフラグメンテーションを実行する気相衝突活性化解離(CAD)セルである。衝突セル304は、前駆イオンをインターフェースイオン光学部310から受け取る入力部312を含む。衝突セル304は、CAD衝突セル304へのCADガスの流入を制御するCADガス源コントローラ316に連結されたガス注入口314も含む。衝突セル304は、対象とする前駆イオンを励起するエネルギーを提供して、選ばれた前駆イオンとCADガス分子との間のエネルギー衝突を促進する電源318も含む。例えば、電源318は、RF電源が発生したRF電圧に加えて重畳されるAC電圧を発生させるAC励起電源を含むことができる。対象とする前駆イオンの運動エネルギーをAC成分が増大させる間に、電源318のRF成分は、軸に沿ったすべてのイオンの閉じ込めを提供し、それによって選ばれた前駆イオンとの高いエネルギーでの衝突を誘起する。衝突セル304は、前駆イオンおよびそのフラグメントを通過させる出力部320も含む。
【0037】
イオントラップ306は、衝突セル304からの前駆イオンおよびそのフラグメントを受け取るように配置された入力部322を含む。図1のイオントラップ16に関連して記載されたように、多くのイオントラップを使用することができる。イオントラップ306は、様々なフィルタリングおよび/またはフラグメンテーション機能を実行することができる。イオントラップ306は、所望の測定を受ける前駆イオンおよびそのフラグメントを引き出す前に、不要なイオンをイオントラップ306から排出することによってそれらをフィルタすることができる。イオントラップ306は、さらなるフラグメンテーションのために前駆イオンおよびそのフラグメントを分離して、CAD衝突セル304へ戻すことができる。その後、これらのフラグメント化されたイオンは、イオントラップ306へ戻されて、前駆イオンおよびそのフラグメントが検出できるように分離、フィルタされ、最終的に引き出される。
【0038】
イオントラップ306中の緩衝ガスの圧力は、緩衝ガス制御装置を使用して所望のレベルに調節することができる。いくつかの動作モードでは、トラッピングを促進するために、緩衝ガスの圧力を比較的高く(例えば、0.1〜100mTorrの範囲内に)設定することが有利である。他の動作モードでは、読み出しスキャンの分解能および/または効率を改善するために、読み出し部分が分析する間に圧力を低下させることが有利である。
【0039】
当業者は、任意の数のイオントラップを使用できることを理解するであろう。さらなる処理用にいくつかの前駆イオンおよび/またはそのフラグメントを分離するため、あるいはこれらのイオンおよびそのフラグメントがフラグメント化されるのを防ぐために、複数のイオントラップを使用することができる。閉じたプロセスループでイオントラップ間を往復してイオンを移動させるために、複数のイオントラップを使用することもできる。
【0040】
イオン検出器324は、イオントラップ306から排出されたイオンを検出するために、イオントラップ306の出力部326に近接して配置される。イオン検出器324は、イオントラップ306の動作にシンクロナイズされる。所望の前駆イオンおよびそのフラグメントをイオントラップ306が引き出すかまたは読み出し、これらのイオンおよびそのフラグメントが、イオン検出器324によって検出される。例えば、リニアイオントラップでは、質量選択的な軸方向の排出または半径の方向の排出によって、所望の前駆イオンおよびそのフラグメントを読み出すことができる。
【0041】
当業者は、本教示に従って高いサンプル利用度で質量スペクトルを測定する方法を実行するために、多くの他のMSn質量分光計およびそのバリエーションを使用できることを理解するであろう。例えば、当業者は、質量分光計300が任意の数のMSn処理シークエンスを持ちうることを理解するであろう。複数のMSnシークエンスを用いるときに、前のフラグメンテーション・サイクルからのフラグメントイオンは、次のMSnシークエンスにおける前駆イオンとして使用される。
【0042】
本教示に従って高いサンプル利用度で質量スペクトルを測定する方法は、様々な質量電荷比を持つ前駆イオンをトラップするステップを含む。前駆イオン・フラグメントの質量電荷比に対応する質量電荷比を持つ前駆イオンが除去され、一方で他の前駆イオンが分析のために保持される。次に第1のセットの前駆イオンが、選択的にフラグメント化される。フラグメント化されたイオンのスペクトルが次に検出される。さらなるセットの前駆イオンに対して、この方法を繰り返すことができる。
【0043】
より具体的に、本教示に従って高いサンプル利用度で質量スペクトルを測定する方法は、分析のために前駆イオンを生成するステップを含む。本教示によるいくつかの方法において、前駆イオンは、ほとんど一価のイオンを含む。同様に、本教示によるいくつかの方法において、第1の群の前駆イオンは、MALDIイオン源を用いて生成される。MALDIは、要求に応じてイオンを生成する。これらの方法において、レーザフルエンスおよびイオントラップサイクル当たりのレーザパルス数のような、MALDIイオン源のパラメータは、イオントラップにおける空間電荷を制御するために調節することができる。MALDIは、主に一価のイオンを生成する。それ故に、これらのイオンのフラグメントは、前駆イオンの質量電荷比より低い質量電荷比を持つ傾向があり、それによって所望のイオン・フラグメントが正確に検出されるようにイオントラップから特定の質量電荷比領域を一掃することが容易になる。
【0044】
第1の所定の範囲の質量電荷比を持つ第1の群の前駆イオンが、質量スペクトルからフィルタされる。第1の群の前駆イオンの質量フィルタリングは、第1の群の前駆イオン中のフラグメント化された前駆イオンの質量電荷比の範囲に対応する範囲の質量電荷比を持つイオンを除去するステップを含む。当業者は、第1の群のイオンが多くの方法で質量フィルタされうることを理解するであろう。例えば、第1の群のイオンは、イオンを四重極またはリニアイオントラップ中にトラップすることによって質量フィルタされうる、および/または共鳴励起を実行することによって質量フィルタされうる。
【0045】
第1の群の前駆イオン中の少なくとも1種類の前駆イオンが、次に選択的にフラグメント化される。当業者は、第1の群の前駆イオン中の前駆イオンを選択的にフラグメント化する多くの方法があることを理解するであろう。例えば、前駆イオンを選択的にフラグメント化する方法は、少なくとも1種類の前駆イオンの一部を物理的に分離し、物理的に分離した部分を次にフラグメント化するステップを含む。前駆イオンの選択的なフラグメンテーションは、前駆イオンの共鳴励起を実行することによって、質量選択的な衝突誘起解離フラグメンテーションを実行することによって、および特定の波長を用いてフォトフラグメンテーションを実行することによって達成することができる。第1の群の前駆イオン中のフラグメント化された前駆イオンの第1のフラグメント質量スペクトルが測定され、一方では第1の所定の範囲内の質量電荷比の他の前駆イオンが、さらなる分析のために保持される。第1の質量スペクトルの測定は、破壊的な測定であっても非破壊的な測定であってもよい。
【0046】
第2の所定の範囲の質量電荷比を持つ第2の群の前駆イオンが、次に質量フィルタされる。当業者は、第2の群のイオンが多くの方法で質量フィルタされうることも理解するであろう。例えば、第2の群のイオンは、イオンを四重極またはリニアイオントラップ中にトラップすることによって質量フィルタされうる、あるいは共鳴励起を実行することによって質量フィルタされうる。
【0047】
第2の群の前駆イオン中の少なくとも1種類の前駆イオンが、次に選択的にフラグメント化される。当業者は、第2の群中の前駆イオンを選択的にフラグメント化する多くの方法があることも理解するであろう。例えば、前駆イオンを選択的にフラグメント化する方法は、少なくとも1種類の前駆イオンの一部を物理的に分離し、物理的に分離した部分を次にフラグメント化するステップを含む。前駆イオンの選択的なフラグメンテーションは、前駆イオンの共鳴励起を実行することによって、質量選択的な衝突誘起解離フラグメンテーションを実行することによって、およびフォトフラグメンテーションを実行することによって同様に達成することができる。第2の群の前駆イオン中のフラグメント化された前駆イオンから生じる、第2のフラグメント質量スペクトルが次に測定される。質量スペクトルの測定は、破壊的な測定であっても非破壊的な測定であってもよい。
【0048】
本教示の1つの方法では、第1の群の前駆イオンを質量フィルタすること、第1の群の前駆イオン中の前駆イオンを選択的にフラグメント化すること、および第1のフラグメント質量スペクトルを測定することは、第1のイオントラップ中で行なわれ、一方で第2の群の前駆イオンを質量フィルタすること、第2の群の前駆イオン中の前駆イオンを選択的にフラグメント化すること、および第2のフラグメント質量スペクトルを測定することは、第1のイオントラップから物理的に分離された第2のイオントラップ中で行なわれる。
【0049】
本教示に従って高いサンプル利用度で質量スペクトルを測定するこの方法は、1つ以上の追加的な群の前駆イオンを質量フィルタすること、これらの追加的な群の前駆イオン中の前駆イオンを選択的にフラグメント化すること、および結果として生じたフラグメント質量スペクトルを次に測定することによって継続することができる。例えば、高いサンプル利用度で質量スペクトルを測定するこの方法は、第3の所定の範囲の質量電荷比を持つ質量スペクトルから第3の群の前駆イオンを質量フィルタするステップ、第3の群の前駆イオン中の前駆イオンを選択的にフラグメント化するステップ、およびフラグメント化された前駆イオンの第3のフラグメント質量スペクトルを測定するステップを含むことができる。かくして、本教示の方法は、質量フィルタリング・ステップ、選択的なフラグメンテーション・ステップ、および結果として生じるフラグメント質量スペクトルの測定ステップを繰り返すことによって、任意のレベルの質量フィルタリングにより高いサンプル利用度で質量スペクトルを発生させるために用いることができる。
【0050】
図6は、前駆イオンを質量フィルタすること、前駆イオンを選択的にフラグメント化すること、およびフラグメント質量スペクトルを測定することからなる1つ以上のシークエンスを実行することを含む、本発明に従って高いサンプル利用度で質量スペクトルを測定する方法の例となる質量スペクトル400を示す。第1の質量スペクトル402は、分析のために生成された前駆イオンの集団の質量スペクトルを示す。例えば、前駆イオンは、ほとんど一価のイオンを含むようにMALDIによって生成することができる。第1の質量スペクトル402は、イオントラップ中におけるイオン集団を表し、かつ対象とする前駆イオンの質量電荷比の範囲404を特定する。第2の質量スペクトル406は、フィルタされたイオン集団の質量スペクトルを示し、フィルタリング後にイオントラップ中に残った対象とする前駆イオンのみが見られる。
【0051】
第3の質量スペクトル408は、最も低い質量電荷比を持つ前駆イオンがフラグメント化された後の第2の質量スペクトル406に見られる、フィルタされたイオン集団の質量スペクトルを示す。とりわけ、第3の質量スペクトル408は、最も低い質量電荷比を持つ対象とする前駆イオンがフラグメント化されたことを示す。加えて、第3の質量スペクトル408は、最も低い質量電荷比を持つ対象とする前駆イオンに対応するフラグメント化されたスペクトルを示す。第4の質量スペクトル410は、最も低い質量電荷比を持つ対象とする前駆イオンに対するフラグメント・スペクトルのみを示す。質量スペクトル410は、破壊的もしくは非破壊的な検出を利用して記録することができる。第5の質量スペクトル412は、フラグメント化されないで残った対象とするイオンのみを示す。第5の質量スペクトル412は、第2の質量スペクトル406と似ているが、最も低い質量電荷比を持つ対象とする前駆イオンは、処理済みであり、それ故に存在しない。いくつかの動作モードにおいて、対象とする追加的な前駆イオンがフラグメントされて、フラグメント化された追加的な前駆イオンに対して第3の質量スペクトル408、第4の質量スペクトル410、および第5の質量スペクトル412が繰り返される。
【0052】
高いサンプル利用度でフラグメント質量スペクトルを測定する別の方法は、所定の範囲の質量電荷比を持つある群の前駆イオンをトラップするステップを含む。当業者は、多くのタイプのイオントラッピングを使用できることを理解するであろう。例えば、イオントラッピングは、注入されたイオンを減速させるために緩衝ガスを用いて、リニアRFイオントラップ中で実行することができる。イオン集団は、共鳴励起フィルタリングを用いて予め選択することができる。残った前駆イオンは、選択的な衝突誘起解離によって順にフラグメント化することができる。
【0053】
対象とする前駆イオンの将来のフラグメントの質量電荷比に対応する質量電荷比を持つ前駆イオンが、質量フィルタされる。この質量フィルタリングは、質量電荷比がフラグメントイオンと同じ前駆イオンの存在に起因して、フラグメントイオン信号が誤って検出される確率を低下させる。
【0054】
上記群の前駆イオン中の少なくとも1種類の前駆イオンが、次に選択的にフラグメント化される。当業者は、前駆イオンを選択的にフラグメント化する多くの方法があることを理解するであろう。例えば、前駆イオンを選択的にフラグメント化するいくつかの方法は、前駆イオンの一部を物理的に分離し、物理的に分離した部分を次にフラグメント化するステップを含む。前駆イオンの選択的なフラグメンテーションは、前駆イオンの共鳴励起を実行することによって、質量選択的な衝突誘起解離フラグメンテーションを実行することによって、およびフォトフラグメンテーションを実行することによって同様に達成することができる。
【0055】
上記群の前駆イオン中のフラグメント化された前駆イオンの質量スペクトルが測定される。質量スペクトルの測定は、破壊的もしくは非破壊的に実行することができる。次に、異なった群の前駆イオンに対して、前駆イオンをトラップするステップ、前駆イオンを質量フィルタするステップ、少なくとも1種類の前駆イオンを選択的にフラグメント化するステップ、および質量スペクトルを測定するステップが、所望の質量スペクトルが所望の質量分解能で測定されるまで繰り返される。いくつかの実施形態において、前駆イオンをトラップするステップ、前駆イオンを質量フィルタするステップ、選択的にフラグメント化するステップ、および質量スペクトルを測定するステップは、すべて1つのイオントラップ中でプリフォームされる。他の実施形態において、前駆イオンをトラップするステップ、前駆イオンを質量フィルタするステップ、選択的にフラグメント化するステップ、および質量スペクトルを測定するステップは、複数のイオントラップ中でプリフォームされる。
【0056】
研究者は、一般に複雑な混合物を含むサンプルを扱っており、それ故に1つより多い前駆イオン・フラグメントに関する情報を得ることに興味を持つ。加えて、様々な理由から研究者が有するサンプル量はしばしば限られる。さらなる分析のために他の前駆イオンを保持しつつ、前駆イオンをトラップし、前駆イオンを質量フィルタし、選択的にフラグメント化して、質量スペクトルを測定する本方法のステップは、サンプル利用度を著しく向上させる。本教示の方法および装置を用いることによって、サンプル材料の限られた量から、より多くの情報が引き出されるであろう。サンプル利用度は、フラグメント化される前駆イオンの数に比例して向上する。たとえ調査中のサンプルが1つの成分しか含まないときでも、(MS−MSまたはMS2フラグメントとも呼ばれる)第1世代のフラグメントが十分な情報をもたらさない測定がある。それ故に、研究者は、フラグメントイオンのさらなるフラグメンテーションが必要なMSn測定を頼りにする。本発明のアプローチを用いると、実質的により高い効率で対象とする成分のMSnスペクトルを得ることができる。
【0057】
均等物
本出願人の教示は、様々な実施形態とともに記載されるが、本出願人の教示がかかる実施形態に限定されることは意図されない。むしろ、当業者によって理解されるであろうように、本出願人の教示は、本教示の精神および範囲から逸脱することなくそこに作られうる、様々な代替物、変更および均等物を包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高いサンプル利用度で質量スペクトルを測定する方法であって、前記方法は、
a.質量スペクトルから第1の群の前駆イオンを質量フィルタするステップであって、前記第1の群の前駆イオンは、第1の所定の範囲の質量電荷比を持つ、ステップ;
b.前記第1の群の前駆イオン中の少なくとも1種類の前駆イオンを選択的にフラグメント化するステップ;
c.前記第1の群の前駆イオン中のフラグメント化された前駆イオンの第1のフラグメント質量スペクトルを測定し、一方では前記第1の所定の範囲内の質量電荷比の他の前駆イオンを保持するステップ;
d.前記質量スペクトルから第2の群の前駆イオンを質量フィルタするステップであって、前記第2の群の前駆イオンは、第2の所定の範囲の質量電荷比を持つ、ステップ;
e.前記第2の群の前駆イオン中の少なくとも1種類の前駆イオンを選択的にフラグメント化するステップ;および
f.前記第2の群の前駆イオン中の前記フラグメント化された前駆イオンの第2のフラグメント質量スペクトルを測定するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1および前記第2の群の前駆イオンの前記質量フィルタリングの少なくとも1つは、四重極イオントラップ中にイオンをトラップするステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1および前記第2の群の前駆イオンの前記質量フィルタリングの少なくとも1つは、リニアイオントラップ中にイオンをトラップするステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1および前記第2の群の前駆イオンの前記質量フィルタリングの少なくとも1つは、ペニングイオントラップ中にイオンをトラップするステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1および前記第2の群の前駆イオンの前記質量フィルタリングの少なくとも1つは、共鳴励起を実行するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の群の前駆イオンの前記質量フィルタリングは、前記第1の群の前駆イオン中のフラグメント化された前駆イオンの質量電荷比の範囲に対応する範囲の質量電荷比を持つイオンを除去するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1および前記第2の群の前駆イオン中の前記少なくとも1種類の前駆イオンを選択的にフラグメント化するステップは、前記前駆イオンの共鳴励起を実行するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1および前記第2の群の前駆イオン中の前記少なくとも1種類の前駆イオンを選択的にフラグメント化するステップは、質量選択的な衝突誘起解離フラグメンテーションを実行するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1および前記第2の群の前駆イオン中の少なくとも1種類の前駆イオンを選択的にフラグメント化するステップは、フォトフラグメンテーションを実行するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1および前記第2の群の前駆イオン中の少なくとも1種類の前駆イオンを選択的にフラグメント化するステップは、前記少なくとも1種類の前駆イオンの一部を物理的に分離し、次に前記物理的に分離した部分をフラグメント化するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のフラグメント質量スペクトルおよび前記第2のフラグメント質量スペクトルの少なくとも1つを測定するステップは、非破壊的な測定を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のフラグメント質量スペクトルおよび前記第2のフラグメント質量スペクトルの少なくとも1つを測定するステップは、破壊的な測定を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第1および前記第2の群の前駆イオンの少なくとも1つは、実質的に一価のイオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
MALDIイオン源を用いて前記第1および第2の群の前駆イオンを生成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
所望の第1および第2の群の前駆イオンを生成するために、前記MAILDIイオン源におけるレーザフルエンスおよびイオントラップサイクル当たりのレーザパルス数の少なくとも1つを調節するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の群の前駆イオンを質量フィルタするステップ、前記第1の群の前駆イオン中の前記少なくとも1種類の前駆イオンを選択的にフラグメント化するステップ、および前記第1の群の前駆イオン中の前記フラグメント化された前駆イオンの前記第1のフラグメント質量スペクトルを測定するステップは、第1のイオントラップ中で行なわれ、そして前記第2の群の前駆イオンを質量フィルタするステップ、前記第2の群の前駆イオン中の前記少なくとも1種類の前駆イオンを選択的にフラグメント化するステップ、および前記第2の群の前駆イオン中の前記フラグメント化された前駆イオンの前記第2のフラグメント質量スペクトルを測定するステップは、第2のイオントラップ中で行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
a.前記質量スペクトルから第3の群の前駆イオンを質量フィルタするステップであって、前記第3の群の前駆イオンは、第3の所定の範囲の質量電荷比を持つ、ステップ;
b.前記第3の群の前駆イオン中の少なくとも1種類の前駆イオンを選択的にフラグメント化するステップ;および
c.前記第3の群の前駆イオン中の前記フラグメント化された前駆イオンの第3のフラグメント質量スペクトルを測定するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
高いサンプル利用度で質量スペクトルを測定する方法であって、前記方法は、
a.ある群の前駆イオンをトラップするステップであって、前記群の前駆イオンは、所定の範囲の質量電荷比を持つ、ステップ;
b.前記前駆イオンのフラグメントの質量電荷比に対応する質量電荷比を持つ前駆イオンを質量フィルタするステップ;
c.前記群の前駆イオン中の少なくとも1種類の前駆イオンを選択的にフラグメント化するステップ;
d.前記群の前駆イオン中の前記フラグメント化された前駆イオンの質量スペクトルを測定するステップ、および
e.異なった群の前駆イオンに対して、前駆イオンをトラップするステップ、前駆イオンを質量フィルタするステップ、少なくとも1種類の前駆イオンを選択的にフラグメント化するステップ、および質量スペクトルを測定するステップを、すべての所望の質量スペクトルが測定されるまで繰り返すステップ
を含む、方法。
【請求項19】
異なった群の前駆イオンに対して、前記群の前駆イオンをトラップするステップ、前記前駆イオンを質量フィルタするステップ、少なくとも1種類の前駆イオンを選択的にフラグメント化するステップ、および質量スペクトルを測定するステップは、イオントラップ中で実行される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記イオントラップは、選択的な衝突誘起解離フラグメンテーションおよび共鳴励起フィルタリングを用いた四重極イオントラップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記イオントラップは、質量選択的な排出を用いたリニアイオントラップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記イオントラップは、選択的な衝突誘起解離フラグメンテーションおよび共鳴励起フィルタリングを用いたペニングイオントラップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記群の前駆イオン中の前記少なくとも1種類の前駆イオンを選択的にフラグメント化するステップは、フォトフラグメンテーションを実行するステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記群の前駆イオン中の前記少なくとも1種類の前駆イオンを選択的にフラグメント化するステップは、質量選択的な衝突誘起解離フラグメンテーションを実行するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記群の前駆イオン中の前記少なくとも1種類の前駆イオンを選択的にフラグメント化するステップは、前記前駆イオンの共鳴励起を実行するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記群の前駆イオン中の前記フラグメント化された前駆イオンの質量スペクトルを測定するステップは、前記質量スペクトルを非破壊的に測定するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記群の前駆イオン中の前記フラグメント化された前駆イオンの質量スペクトルを測定するステップは、前記質量スペクトルを破壊的に測定するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
サンプル利用度の高い質量分光計であって、前記質量分光計は、
a.質量スペクトルにおけるある群の前駆イオンをトラップするための手段であって、前記群の前駆イオンは、所定の範囲の質量電荷比を持つ、手段;
b.前記前駆イオンのフラグメントの質量電荷比に対応する質量電荷比を持つ前駆イオンをフィルタするための手段;
c.前記群の前駆イオン中の少なくとも1種類の前駆イオンを選択的にフラグメント化するための手段;および
d.前記群の前駆イオン中の前記フラグメント化された前駆イオンの質量スペクトルを測定し、一方では前記所定の範囲内の質量電荷比の他の前駆イオンを保持するための手段
を備える、質量分光計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−533059(P2012−533059A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519074(P2012−519074)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【国際出願番号】PCT/IB2010/001615
【国際公開番号】WO2011/004236
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(510075457)ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド (35)
【Fターム(参考)】