説明

高エネルギー密度弾性アキュムレータ及びその使用の方法

本発明は、加圧流体の流れに応えて、その元の形状から変形することによってエネルギーを貯蔵するアキュムレータである。貯蔵されたエネルギーは、流体流れが逆向きに進められたときに戻され、アキュムレータはその元の形状に戻る。本アキュムレータの新奇性の少なくとも一部は、従来型のアキュムレータに通常見られる様にエネルギー貯蔵のためにガスや金属に頼るのとは対照的に、伸張したブラダの弾性的な歪みエネルギーを捕捉することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧流体の流れに応えて、その元の形状から変形することによってエネルギーを貯蔵するアキュムレータである。
本出願は、2009年4月6日に「高エネルギー貯蔵密度弾性アキュムレータ」という名称で出願されている米国仮特許出願第61/167,073号の恩典を主張し、同仮特許出願をこれにより参考文献としてそっくりそのまま援用する。
【0002】
我々、4601 Park Ave., Nashville, TN 37209に居住する米国市民であるEric J. Barth、513 Cedar Brook Lane, Nolensville, TN 37135に居住する米国市民であるAlexander V. Pedchenko、846 Shoreline Circle, Ponte Vedra Beach, FL 32082に居住する米国市民であるKarl Brandt、そして1130 South Tamarisk Drive, Anaheim Hills, CA 92807に居住する米国市民であるOliver E. Tanが、新しく有用な「高エネルギー密度弾性アキュムレータ及びその使用の方法」を発明したことを、本書を以って証する。
【0003】
(連邦の後援による研究又は開発に関する表明)
本発明は、一部、国立科学財団の工学研究センターの下での小型高効率流体動力のための連邦助成金、認可番号0540834、を使ってなされた。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0004】
(マイクロフィッシュ付録への参照)
該当なし
【背景技術】
【0005】
アキュムレータの設計で最も差し迫った課題の1つは、様々な産業で使用することのできる軽量な装置の製作である。油圧アキュムレータは、補助的な流体動力を提供し衝撃を吸収するのによく使用されるエネルギー貯蔵装置である。これらの装置の最近の用途として特に興味深いものの1つに回生制動がある。油圧回生制動(HRB)は、理論的には興味をそそる概念であるが、従来型のアキュムレータに付きまとう幾つかの大きな制限及びその無策特質のせいで、実施するのは難しい。
【0006】
ガスブラダアキュムレータ及びガス事前装填式ピストンアキュムレータ(PAGP)は、エネルギー貯蔵のためにガスを使用しており、従ってばねピストン型の対照物より随分と軽量である。これらのアキュムレータでは、ブラダ又はピストンによって隔てられているガスは、他のやり方であれば非圧縮性流体が充填されている容器の或る一定の体積を占めている。流体がこの容器の中へ押し入れられてゆくと、隔てられた体積内部のガスが圧縮され、エネルギーが熱ドメインに貯蔵される(気体分子運動論)。その様なアキュムレータは、1)熱損失に起因する非効率と、2)ブラダを介した油圧流体へのガス拡散、という2つの深刻な欠点を免れない。熱損失による非効率の欠点は解消努力できるが、ガス拡散の問題は、ガスを流体から度々「抜く」ことに附随する高額な保守費用を生じさせる。
【0007】
非効率に関して、その様なアキュムレータの圧縮されたガス中に貯蔵されたエネルギーが直ぐに回収されなければ、ガスからその直近の周囲物へ熱が流れてしまうことにより、回収されるエネルギーはずっと少なくなってしまう。ガスの圧縮と膨張の間に僅か50秒程が経過すれば、ピストン型式のガスアキュムレータの効率は約60%まで落ち込む可能性のあることが示されている。Pourmovahed, A., Baum, S.A., Fronczak, F.J., and Beachley, N.H., 1988. “Experimental Evaluation of Hydraulic Accumulator Efficiency With and Without Elastomeric Foam”. Journal of Propulsion and Power, 4(2), March-April, pp. 188。車両は停止信号では上記程度の長さか又はそれより長い時間に亘って不動状態に置かれることから、これにより、ガスブラダアキュムレータ及びガス事前装填式ピストンアキュムレータはHRB用途に不向きとされる。これらの熱損失を軽減する幾つかの方法が提案されている。ガス事前装填式ピストンアキュムレータでは、1つの方法はエラストマーフォームをガスエンクロージャ内へ設置することを伴う。このフォームはガス圧縮中に発生した熱を吸収することを目的に供されており、そうでなければ発生した熱はガスエンクロージャの壁に伝わり最終的に失われることになろう。フォームはこの発生した熱を多量に収集して、それを、ガスが膨張するときにガスに戻すことができる。Pourmovahedによれば、「適量のエラストマーフォームをガスエンクロージャ内へ挿入すれば・・・実質的に熱損失は排除され[得る]」。Pourmovahed, A., Baum, S.A., Fronczak, F.J., and Beachley, N.H., 1988. “Experimental Evaluation of Hydraulic Accumulator Efficiency With and Without Elastomeric Foam”. Journal of Propulsion and Power, 4(2), March-April, pp. 188。エラストマーフォームを組み入れることは、どの様にアキュムレータの効率が改善され得るかを示しはしたが、この修正は、既存のアキュムレータに付随する他の問題を依然として解消していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国仮特許出願第61/167,073号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Pourmovahed, A., Baum, S.A., Fronczak, F.J., and Beachley, N.H., 1988. “Experimental Evaluation of Hydraulic Accumulator Efficiency With and Without Elastomeric Foam”. Journal of Propulsion and Power, 4(2), March-April, pp. 188
【発明の概要】
【0010】
本発明は、材料を歪ませることによって油圧エネルギーを貯蔵するためのアキュムレータを開示している。開示されているアキュムレータは、アキュムレータ内の弾性ブラダを膨張させるために、油圧流体の様な流体を受け入れるのに使用することができる。本アキュムレータは、貯蔵された歪みエネルギーを、流体が放出され、そうして弾性ブラダが第1形態に戻るまで、保持することになる。一部の特定の実施形態では、アキュムレータは、一定した非伸張時直径を有する、ブラダの様な管状の膨張可能部材であって、開口端と閉鎖端を有し、約1000psiの最小降伏強さを有し、約100%の最小伸び率を有している膨張可能部材と、膨張した膨張可能部材が内部に収容されるように膨張可能部材を取り囲むハウジングであって、前記部材の半径方向膨張を当該材料の最大非拘束時半径方向膨張より小さい膨張度に制限しているハウジングと、を含んでいる。アキュムレータの他の実施形態は、管状の膨張可能膜と流体連通している油圧流体源を含んでいる。本発明の別の実施形態は、ブラダとシュラウドを含んでいるアキュムレータにおいて、ブラダは、第1端を有し、第1端は流体がブラダに進入してブラダを半径方向及び軸方向に膨張させることができるように開口部を画定していて、ブラダはエラストマーであり、シュラウドは、第1端と第2端を有し、ブラダを取り囲み、ブラダがその最大非拘束時半径方向膨張まで伸張しないようにブラダの半径方向膨張を制限していて、シュラウドの第1端は、流体がシュラウドのブラダの中へ進入することができるようにブラダの開口部の周りに第1開口部を画定しており、シュラウドは、ブラダが流体を充填されてシュラウド内で膨張する際に空気がシュラウドを脱出することができるように第2開口部を画定している、アキュムレータである。アキュムレータの他の実施形態は、ブラダとシュラウドの間の接触が潤滑されるようにシュラウド上に潤滑剤を含んでいる。アキュムレータの更に他の実施形態では、ブラダはポリウレタン又はニトリルゴムの様なエラストマーである。アキュムレータの更に他の実施形態では、ブラダは円形の断面形状を有している。本発明の別の実施形態は、アキュムレータにおいて、流体源の入出口用の開口部を画定していて、内面と外面を有し、流体連通に応えて第1形態から第2形態へ膨張し、その後第1形態へ戻るように適合されている膨張部材と、膨張部材を取り囲み、膨張部材が最大非拘束時半径方向膨張まで膨張したときの膨張部材の外面の直径より小さい内径を有する弾性支持構造と、膨張部材と流体連通している流体源と、膨張部材と流体源の間に流体接続を提供するための導管と、を含んでいるアキュムレータである。アキュムレータの更に他の実施形態では、膨張部材は、反復的に膨張できる。アキュムレータの他の実施形態では、膨張部材の内面は、同部材が膨張すると膨張するように、同部材の長さに亘って延びる軸方向溝を有している。アキュムレータの更に他の実施形態では、膨張部材の厚さが当該部材の開口部付近で削減されており、その結果、流体が進入すると当該位置から部材の膨張が始まるため、部材が横揺れの助長により剛性支持構造上を滑ることが低減される。本発明の更に別の実施形態では、剛性支持構造は円形断面形状を有している。本発明の更に別の実施形態では、剛性支持構造は、少なくとも2000psiの圧力定格を有している。本発明の更に別の実施形態では、剛性支持構造は脱気孔付きである。
【0011】
而して、本発明の1つの対策は、油圧エネルギーを貯蔵するために歪みエネルギーを利用したアキュムレータを提供することである。
本発明の更に別の対策は、エネルギーを、膨張可能なアキュムレータの使用によって、貯蔵するための方法を提供することである。
【0012】
本発明の更に別の対策は、乗用車で使用できるように小型軽量のアキュムレータを提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の或る実施形態の分解組み立て図の斜視図である。本図には、管状の膨張可能なブラダが剛性のハウジング装置によって取り囲まれていることが示されている。
【図2】本発明のある実施形態の断面図である。ブラダを有するアキュムレータが示されている。ブラダは、保護ハウジングによって取り囲まれている。ブラダは、空で、非膨張形態にある。その様な形態は、ブラダが加圧流体を充填され、膨張してゆくにつれ、図3及び図4に示されている様に変化してゆく。
【図3】幾らかの加圧流体がブラダを膨張させ始めた後の、図2に示されている実施形態の断面図である。本図及び図4は、加圧流体を提供している流体源も流体導管も示していない。これらの品目は図7に示されている。
【図4】更に多くの加圧流体がブラダを膨張させた後の、図3に示されている実施形態の断面図である。本図には、流体に満たされ一杯まで膨張したブラダが示されている。ブラダが収縮してゆく逆行過程で、流体は圧力下に強制的に追い出されることになる。保護ハウジングがブラダの半径方向膨張を制限していることも示されている。
【図5】本明細書に説明されているブラダの或る実施形態の断面図である。本図には、ブラダの開口部付近の軸対称又はそれ以外の様式のノッチであって、当該場所からのブラダの半径方向膨張の開始を促進するためにブラダの壁厚さを削減しているノッチが示されている。
【図6】流体導管へのブラダ接続の或る実施形態の側面図である。本図には、圧縮リングと連結ナットによって取り囲まれているブラダの頚部が示されている。ブラダの径部は、連結ナットが流体導管のねじ部分に締結されると、流体導管と流体接続する。
【図7】本発明の或る実施形態の側面図である。本図には、アキュムレータと流体連通している、車両の油圧流体システムの様な流体源が示されている。油圧流体が、流体導管を通って、保護シュラウド内に在るブラダの中へ入ってゆくと、歪みエネルギーが貯蔵される。本発明は、取り付けられている油圧システムが、流体がブラダの強制収縮によって供給される圧力下にブラダから出てゆくことを許容すれば、その貯蔵された歪みエネルギーを油圧エネルギーの形で放出することになる。シュラウドを安定配置するために、2つのブラケットが、シュラウドを車両の別の部分(図示せず)に取り付けている。
【図8】図7に示されている本発明の実施形態の、図中に示されている線に沿った断面図である。本図にはシュラウドとブラダが示されている。
【図9】ブラダの或る代わりの実施形態の断面図である。図8のブラダ実施形態で示されている様に円形の内面を有しているのではなく、この代わりの実施形態は溝付きの内面を有している。
【図10】更に本明細書に説明されている様にブラダを試験するためのシステムの或る実施形態の配線図である。
【図11】図10に開示されているシステムを作動させる方法の工程の模式図である。
【図12】更に本明細書に説明されている様に、NBR6212と呼ばれる材料の3つの試料についての3つの応力−歪み曲線を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、疲労なしに、反復的に、膨張し次いで認め得る程にその元の形状に戻る、管状の膨張可能なブラダ12を有する弾性アキュムレータ10を開示している。アキュムレータ10のブラダ12をハウジング14が取り囲んでおり、ハウジング14は、ブラダ12が過剰膨張から塑性変形することのないように、ブラダ12の半径方向膨張を制限している。使用時、加圧された油圧流体の様な流体がブラダ12に進入し、ブラダ12をハウジング14に接するところまで膨張させる。貯蔵されたエネルギーを回収するのが望ましければ、流体流れを逆行させ強制的に追い出し、その結果、ブラダ12がその元の形状及び形態へ復帰することで、歪みエネルギーを油圧エネルギーに変換する。
【0015】
図1を参照すると、本発明の或る実施形態の分解組み立て図が示されている。アキュムレータ10は、ハウジング14内に管状の膨張可能なブラダ12を含んでいる。ブラダ12の頚部18は、ブラダ12の本体22がここに開示されている様に膨張収縮することができるように、流体導管38に取り付けられている。ハウジング14の第1端24は、流体流れのために使用されているブラダ12の開口部28と整列している開口部26を含んでいる。一部の特定の実施形態では、ブラダ12は、開口部26を通してハウジング14の中へ挿入することができる。
【0016】
油圧アキュムレータ
背景として、油圧アキュムレータについて、最高実現可能体積システムエネルギー密度は次式を用いて導き出すことができる。
【0017】
【数1】

【0018】
【数2】

【0019】
ここに、Vfluidはエネルギー貯蔵に使用される流体の体積、Estoredはシステムに貯蔵されるエネルギーの量、Pはエネルギー貯蔵を起こす圧力、Vstorage_deviceはエネルギー貯蔵装置の体積(ここにエネルギー貯蔵装置は加圧流体以外のすべてのものとして定義されている)、そしてestorage_deviceはエネルギー貯蔵装置の体積エネルギー密度である。体積エネルギー密度の定義と関連付けて式(1)と(2)を用いれば、システム体積エネルギー密度esystemが得られる。
【0020】
【数3】

【0021】
本発明は、小型軽量のエネルギー貯蔵装置である。本発明は、製造費用が安く、保守の必要性が低いか又は保守が全く不要である。本発明の一部の特定の実施形態では、高エネルギー密度アキュムレータ10は、油圧動力駆動自動車の、油圧駆動システムに連係されている回生制動システム(油圧ハイブリッド)に使用することができる。その様な高エネルギー密度アキュムレータ10は、直列であろうと並列であろうと、油圧ハイブリッド車両に適する。小型乃至中型の乗用車用の許容され得る重量及び体積のパッケージ(アキュムレータシステムエネルギー密度>10kJ/リットル)では、ピークパワー90kW(4.5秒で35mphからゼロ)におけるエネルギー(35mphで3500lbs)である200kJのエネルギー貯蔵が必要とされる。本発明は、従来型のアキュムレータの問題を、(i)製造費用を縮小すること、(ii)ガス事前装填の使用を回避することによりガス拡散によって生じる保守の必要性をなくすこと、(iii)周囲環境への熱移動に起因するエネルギーの損失を大幅に低減すること、によって打開することを目指している。従来型のアキュムレータの問題は、一つには、本発明が既存のアキュムレータでは従来利用されていなかったエネルギー貯蔵のメカニズムを使用していることで回避される。
【0022】
背景として、従来型の制動システムは、車両を減速させるのにブレーキパッドとブレーキディスクの間の摩擦を使用している。この方法では、結果的に、エネルギーが熱として浪費されることになる。対照的に、回生制動は、制動時の車両の運動エネルギーを熱の形で散逸させるのではなく、運動エネルギーを活かす。この収集されたエネルギーは、次に車両の加速に利用することができ、それにより燃料効率が高まる。特に、油圧回生制動(HRB)は、車輪に流体を装置の中へ送り込ませ、すると装置がこの流体の流れに抵抗することによって車輪回転を減速させ、装置は車両の運動エネルギーの得られた減少分を貯蔵する。油圧回生制動は、理論的には興味をそそる概念であるが、従来型のアキュムレータに付きまとう幾つかの大きな弱点のせいで、実施するのは難しい。
【0023】
ばねピストンアキュムレータがHRBで使用されることを阻んでいる主な弱点は、その低い重量エネルギー密度にある。線形分析を使用すると、ばね鋼及びチタン合金は、重量エネルギー密度が約1から1.5kJ/kgである。M.F. Ashby, Materials Selection in Mechanical Design, Pergamon, Oxford, 1992。然るに、中型4ドアセダン(質量=3500lb(1590kg))を35mph(15.65m/s)から静止させるのに十分なエネルギーを貯蔵するためには、アキュムレータばねは、130kgから195kgの何処かの重量を持たなくてはならないことになる。車両重量を最小限にすることが不可欠な自動車製造では、その様な重量の重い構成要素を含めることは凡そ非現実的である。
【0024】
本発明の設計
本発明の設計は、乗用車用のHRBでの実装に適していることを確約するため、(i)ピークパワー90kWのエネルギーである200kJの貯蔵が可能、(ii)体積エネルギー密度5MJ/m以上、(iii)重量エネルギー密度5kJ/kg以上、を含む大凡の性能判定基準が存在する。200kJの貯蔵容量という要件は、運動エネルギーの古典力学方程式である以下の式4(「(4)」)を使用して至ったものであり、ここに、Ekはジュール(「J」)を単位とする運動エネルギー、mはkgを単位とする質量、vはメートル毎秒(m/s)を単位とする速度である。
【0025】
【数4】

【0026】
平均的な4ドアセダンは、近似的に、m=3500lbs(1590kg)の質量を有している。この重量の車両が回転のないv=35mph(56.3km/h)の並進剛体運動をしている質点であるとの単純化された仮定の下に考えてみる(式(4)を使用することができ、すると、Ek=194,713J≒200kJとなる)。この数字は、従来の制動での車両を停止させるのに熱として放散されてしまうことになるエネルギーの量を表している。HRBでは、これは、100%の効率を想定すれば、システムが捕捉するべきエネルギーの量である。
【0027】
アキュムレータ10が車両の重量を著しく増やすものではないことを確約するために、重量エネルギー密度要件は5kJ/kgに規定された。この制約下では、エネルギー200kJの貯蔵能力を有するアキュムレータ10は、重さが、作動流体がなければ40kgを上回ることはないはずである。重量エネルギー密度制約は、チタン合金の体積エネルギー密度と同様になるように選定された。この制限は、アキュムレータ10が、作動流体を除外して、0.04mより多くを占めないことを保証する。
【0028】
どの材料がエネルギー密度要件を満たすかを見るために、例えばGranta Design Limited社から商業的に容易に入手できるCESマテリアルセレクタ、バージョン4.8.0を使用した。CESマテリアルセレクタは、広範な材料及び製造プロセスデータベースを有するソフトウェアパッケージであり、とりわけユーザーによって定義された材料特質をグラフィック的に比較する能力があるとの理由から採用された。最初の選択プロセスでは、全ての材料群を考察した。一部の特定の群の材料体積エネルギー密度値を、線形弾性の仮定の下に、式(5)、
【0029】
【数5】

【0030】
を使用して計算し、ここに、uはJ/mを単位とする材料の体積エネルギー密度、σはPaを単位とする材料の降伏応力、EはPaを単位とする材料の弾性係数である。次に、wで表わされている、J/kgを単位とする材料の体積エネルギー密度を、式(6)に示されている様に、式(5)から得られた所与の材料のJ/mを単位とする体積エネルギーであるuをkg/mを単位とするその質量密度であるρで単純に割ることによって計算した。
【0031】
【数6】

【0032】
幾つかのエラストマー系材料は、体積エネルギー密度と重量エネルギー密度の両方について、他の材料類に見られるより相当に高い値を持っている。これらのエラストマー系材料のうち、ポリウレタンと天然ゴムは、エネルギー密度の特定の目標数的指標を裕に越えているに留まらず、これらの分類種中の他のあらゆる材料に優っている。事実、ポリウレタンの重量エネルギー密度は、チタン合金のそれより約2桁高い。ゴムとポリウレタンはどちらも、より大きな最大値が見込めることと商業的な入手のし易さから、ブラダ12の作製には適した材料である様に見えるが、ここに記載の発明については、一部の特定の実施形態では、ポリウレタンが材料として最適な選択肢である。ここで、歪み硬化のせいで、線形弾性のエラストマーへの適用は、実際に用いるには慎重でなくてはならないことに気づくことが重要である。エネルギー貯蔵能力の更に精密な推定値を得るためには、材料の応力−歪み曲線を検討しなくてはならない。
【0033】
予備試験による結果から、フルスケールのアキュムレータ10の体積と重量並びにブラダ12を作製するのに適した材料の初期予測が可能である。最初の予備試験は、ラテックスチュービングの使用を含んでおり、チュービングはその一端を塞ぎ他端から圧力ゲージを有するポンプを使って加圧した。最初、空気がこの円筒形のエラストマー容器の中へ押し入れられてゆくと、圧力上昇により体積が極僅かに増加した。圧力がほぼ17psig(218.6kPa)に達したとき、チュービングは第1領域が急激に膨張した。この直後、圧力は大凡13psig(191.0kPa)まで降下した。ラテックス円筒体の中へ更に多くの空気が押し入れられてゆくと、圧力はこの新しい値に留まり、一方で体積は増加し続けた。即ち、半径方向の膨張は軸方向に沿って継続した。この種の膨張挙動は、以下に、ブラダ12用の作製材料の選択に関係して、概念的に更に論じている。この種の膨張挙動に従うアキュムレータ10では、式(7)を用いて推定されたエネルギーを貯蔵させることができる。
【0034】
【数7】

【0035】
estは、Jを単位とする貯蔵エネルギーの推定値、Pholdは、Paを単位とする半径方向膨張を伝播させる一定したゲージ圧力であり、Vinitは、作動流体注入前の作動流体収容アキュムレータ10によって占められている初期体積、Vfは、作動流体注入終了時の作動流体収容アキュムレータによって占められている最大体積で、共に単位はmである。
【0036】
式(7)を使用し、Eestが195kJに等しいとして、(V−Vinit)の推定値を異なったPhold値について得た。また、作動流体は油圧流体と同様の密度であると仮定して(ρhyd=890kg/mとした)、得られた(V−Vinit)推定値を次に使用して、kgを単位とするシステム質量近似値の変化であるMfを得た。異なったPhold値について、195kJのエネルギー貯蔵をもたらすことになる(V−Vinit)とMfの値を以下に示す。値は、作動流体についての体積及び質量の推定値である。
【0037】
【表1】

【0038】
以上から分かる様に、3000psigから5000psigを範囲とするPholdで機能することのできるアキュムレータシステムについては、注入前のブラダ12の外の作動流体は、重量が大凡11lbsから19lbsの間(5kgから9kgの間)で、0.2ftから0.33ftの間(0.006mから0.009mの間)を占めると推定される。これらの質量と体積の値は、ブラダの初期体積と質量を勘定に入れていないが、それらの規模の小ささから、エラストマーアキュムレータ10は理論的にはHRB用途にとって実行可能な選択肢となるはずであることが示唆される。
【0039】
ブラダの特質
作製されたブラダ12の第1の実施形態の特質を調べるために、システム100を作製した。本発明の或る実施形態では、ブラダ12は、ミシガン州エイドリアンのAnderson Development Company社から商業的に入手可能なポリウレタンであるAndur RT9002APで作製された。ブラダ12は、室温硬化性ポリウレタンであり、そのおかげでブラダ12は使い捨て可能なろう型を使用して鋳込むことができ、その後ろう型は出来上がったブラダ12から溶かして外される。製造業者によって規格化されている、Andur AR材料の幾つかある機械的特質を以下に掲載する。材料は、高い最大伸び率を持ち、また一方で比較的高い弾性係数を維持しているので、アキュムレータ10にとって実行可能な材料候補となり得る。
【0040】
【表2】

【0041】
次にAndur RT9002APで作製されるブラダ12の寸法であるが、長さは3.5インチ(約8.89cm)、厚さは約1.5から約1.8インチ(約3.81から約4.572cm)である。
【0042】
単位体積当たりの貯蔵エネルギーを求める方程式である式(8)を、応力−歪み曲線の多項式推定法と関連付けて用いると、材料の異なった伸展比について、理論上の体積エネルギー密度値を得ることができる。
【0043】
【数8】

【0044】
式(8)では、σは応力(Pa)、εは伸展比、εfは体積エネルギー密度を計算しようとする伸展比である。約400%から600%の間(εf=4からεf=6の間)の伸展について、この式では、ブラダ12が25.6MJ/mから45.0MJ/mの間の体積エネルギー密度を有すると予測される。次に図10を参照すると、本図には、ブラダ12のための試験システム100が示されており、同システムは125psigの圧力源102を含み、圧力源102は第1のソレノイド弁104に取り付けられ、第1のソレノイド弁104は第2のソレノイド弁106に取り付けられ、第2のソレノイド弁106は2つの2リットル圧力タンク108と110それぞれに取り付けられている。タンク108及び110には第3のソレノイドベン112が取り付けられており、第3のソレノイド弁112は、オリフィス弁114に取り付けられ、流量計116、圧力センサー118、安全放出弁120、シュレイダー弁122、そしてブラダ12へとつながっている。125psig(963kPa)の駆動圧力が、水をブラダ12の中へ押し入れるように作用する。最初は、ソレノイド弁(SV)1である104から2つの2L圧力タンク108及び110へ至るラインは切り離されており、タンクからブラダ12までのシステムには水が充填されている。正確な結果を確保するために、システムの水充填部分は、シュレイダー弁122に取り付けられた手持ち式真空ポンプを使用することによって空気が抜かれる。タンク108、110には、空気抜きプロセスによって生じる損失を埋め合わせるために追加の水が注ぎ込まれる。次いで全SVが閉じられ、SV1である104から続くラインが圧力タンクに再度取り付けられる。
【0045】
弁制御とセンサーデータの取得は全て、当業者に知られている様に、コンピュータを使用して完遂される。手動調節可能なオリフィス弁114は、別々の試験実施回毎に特定の位置に設定される。この弁を増分式に調節することにより、エネルギー貯蔵に対する異なった注入/吸い戻し速度の効果を見極めることができる。それぞれの個々の試験実施回は、図11に示されている方法の工程に従って実施された。簡単にいうと、本方法は200で開始され、そこから表示されている各工程が以下の様に起こってゆき、即ち、(1)202でSV1、2、及び3を閉じ、(2)204でSV1を開き、(3)206でSV3を閉じ、(4)208で一定の時間(T3)が経過した後SV3を閉じ、(5)210でSV1を閉じ、(6)212でSV2を開き、(7)214で規定の保持時間(Th)が経過した後SV3を開いて作動流体を放出させ、(8)216でシステムが圧の抜けた状態になるように一定の時間(Td)待つ。
【0046】
ブラダ12に貯蔵され、そしてそこから回収されるエネルギー、を得るために、流量計(Q)116及び圧力センサー(P)118からの瞬間示度を、式(9)、
【0047】
【数9】

【0048】
に示されている様に積分し、ここにt0はSV3である112が開かれる時間、tfはSV3である112が閉じられる時間である。水がブラダ12の中へ流入しているとき、式(7)のEは貯蔵エネルギー(Ein)を表し、tf−t0=T3である。水がブラダ12から流出しているとき、式(7)のEは回収エネルギー(Eout)を表し、tf−t0=Tdである。
【0049】
これらを値を使用して、体積アキュムレータエネルギー密度(Evρ)、重量アキュムレータエネルギー密度(E)、及びシステムのエネルギー効率(η)を計算する。アキュムレータ10のそれらエネルギー密度値とアキュムレータ材料のそれらエネルギー密度値の間に区別を引くことが重要である。アキュムレータ10のそれらエネルギー密度は計算に作動流体の重量と体積を含んでいるのに対し、アキュムレータ材料のそれらエネルギー密度は含んでいないことに相違がある。Eを、式(10)、
【0050】
【数10】

【0051】
を用いて求め、ここに、V0は、アキュムレータが加圧される前のブラダ12及び作動流体の元の体積である。Eを、式(11)、
【0052】
【数11】

【0053】
によって求め、ここに、mは、加圧される前の作動流体を含めたアキュムレータの元の質量であり、ρwは、水の密度である。最後に、ηを、式(12)、
【0054】
【数12】

【0055】
を用いて求める。何回もの注入/吸い戻しサイクルが、ブラダ12のエネルギー貯蔵能力と効率に有意な有害効果を有するかどうかを判定するため、E、E、及びηを、手動調節可能なオリフィス弁のそれぞれの位置毎に数回測定する。
【0056】
上述のAndur RT9002AP(ρPUa≒1039kg/m)で作製されているブラダ12の伸展及び質量密度について得られた体積エネルギー密度の推定値を使用して、195kJを貯蔵することができるブラダの体積及び質量を概算した。ブラダ12は、0.0043mから0.0076mの材料で製造され、重量は、使用されている伸展比に応じて4.50kgから7.90kgの間の何処かにあるものと予測した。これらの値を先に論じた作動流体見積もりに加え、システムエネルギー密度の推定値を出した。概算されたパラメータを以下に示しているが、それらの導出には、注入前のブラダ12の作動流体の初期体積(ブラダに貯蔵されることになる油圧流体の最終体積に比べ小さいと予想される)及び作動流体の流れの制御に必要な機器の様な他のシステム構成要素が含まれていないことから、それらパラメータは推定値として見るべきである。推定されたシステムエネルギー密度(システムはエラストマー材料及びエネルギー貯蔵のために使用される油圧流体分として定義):システム体積(リットル):10.3(上限)、16.6(下限);システム質量(kg):9.57(上限)、16.27(下限);システム体積エネルギー密度(MJ/m):18.93(上限)、11.27(下限);システム重量エネルギー密度(kJ/kg):20.38(上限)、11.99(下限)である。
【0057】
次に図12を参照すると、Gates Corporation社製でNBR6212と識別されている既存のニトリルゴム銘柄の3つの別々の試料についての応力−歪み曲線が示されている。この材料についての応力−歪み曲線は、材料の有効体積歪みエネルギー密度が、「星」の印を付けた33MJ/mであることを示している。この材料から製造されていて、34.5MPaに加圧された流体を貯蔵することができるブラダは、ゴムの様な他の超弾性材料と同じ比較的一定の圧力体積膨張を見せることを前提とすると、式3を用いて、以下のやり方でシステムエネルギー密度に到達することができ、即ち、
200kJを貯蔵するには:
所要材料体積:200kJ/33MJ/m=0.0061m(6.1L)
所要流体体積:200kJ/34.5MJ/m=0.00565m(5.65L)
所要総体積:0.0061m+0.00565m=0.01175m(11.75L)
理想体積システムエネルギー密度:200kJ/0.01175m≒17MJ/m
である。NBR6212で構成されているアキュムレータ10についての理想体積システムエネルギー密度は、体積システムエネルギーに関して表明されている上限より僅かに小さい。
【0058】
本発明の実施形態
次に図2を参照すると、アキュムレータ10の断面図が示されている。図2−図4には、流体30が加圧されて膨張ブラダ12に進入してゆく際の、ブラダ12の膨張の伝搬が示されている。一般に、ブラダ12の半径方向膨張は、ブラダ12の頚部18付近で始まる。ブラダ12の半径方向膨張は、ハウジング14によって制限される。図2−図4の進行具合に示されている様に、ブラダ12の半径方向膨張は、軸方向にブラダ12に沿って拡がる。ブラダ12の本体22は、図2に示されている、その元の形状である第1形態から、図4に示されている、エネルギーを貯蔵している第2形態へ膨張させられる。本発明の一部の特定の実施形態では、ハウジング14は、ブラダ12の本体22が第2形態へ膨張してゆく間、空気がハウジング14を脱出できるようにする脱気孔32を有していてもよい。その様な脱気孔32の或る実施形態が図7に示されている。一部の特定の実施形態では、脱気孔32は、表明されている目的にとって適正な大きさの開口部である。脱気孔32の具体的な場所は決定的ではない。一部の特定の実施形態では、ハウジング14は複数の脱気孔32を有することができる。更に他の実施形態では、脱気孔32は、GORE-TEX(登録商標)の様な濾過材料を含んでいてもよく、そうすればブラダ12への損傷をもたらしかねない粒子やぼたはハウジング14に進入しないであろう。
【0059】
ここで使用される場合、ブラダ12は、膨張部材又はここに開示されている機能を記述している他の適した用語で呼称されることもある。一部の特定の実施形態では、ブラダ12は、ここに説明されている機能を果たすことができる材料で作製されている。本発明の一部の特定の実施形態では、ブラダ12はエラストマーである。他の実施形態では、ブラダ12は、ポリウレタン、ニトリルゴム、ポリイソプレン、又は天然ゴムである。その様な材料は、コロラド州デンバーのGates Rubber Corporation社などから、容易に、商業的に入手可能である。本発明の一部の特定の実施形態では、ブラダ12は、Gates Rubber Corporation社のNBR6212ニトリルゴムで作製されていてもよい。本発明の更に他の実施形態では、ブラダ12として適切なエネルギー貯蔵材料は、高体積エネルギー密度、高重量エネルギー密度(又は質量特定)エネルギー密度、及び捕捉されたエネルギーを分単位幅の持続時間に亘って効率的に貯蔵する能力を有する材料である。本発明の更に他の実施形態では、ブラダ12は、当業者に知られている材料で適した別の既知の材料で作製されていてもよい。当業者は、ここで説明されている品質と特性を有するブラダ12を製造するのに使用される成形及び作製の技法に精通している。また、それらの製造サービスは、容易に、商業的に入手可能である。
【0060】
ブラダによる効率的なエネルギー貯蔵
ここで使用される場合、降伏強さは、当業者に知られている意味と同じ意味を持つ。即ち、材料の降伏強さは、材料が可塑的に変形し始める応力である。最小降伏強さは、材料が少なくとも所与のpsiの降伏強さを有していることを意味する。例えば、本発明の一部の特定の実施形態では、ブラダ12は、約1000psiの最小降伏強さを有している。
【0061】
本発明の一部の特定の実施形態では、ブラダ12の作製材料は、少なくとも1の歪みに対し弾性挙動を見せる材料である。応力−歪み曲線は、本出願の中で最初に既に論じた。応力−歪み曲線は、材料の膨張挙動についての情報を提供する。数多くのエラストマー系材料は、超弾性膨張挙動を示している。その様な材料は、ブラダ12として使用するのに極めて望ましい。これらの材料は、充填体積の範囲について、比較的平坦な圧力−体積曲線を作り出すことができる伸張性の高いブラダに製作することができる。即ち、体積が増加しても圧力は一定のままである。超弾性材料で作られている、より小さいブラダに観測される別の好ましい特性であって、ブラダ12では極めて望ましいとされる特性は、エネルギー密度及び失陥に至るまでのラウンドトリップ効率に統計学的に有意な減少がないことである。より小さいスケールのブラダ12の試作品の疲れ試験は、失陥に至るまでに性能特性の劣化がないことを示している。初期有限要素分析モデルの構築には、ロードアイランド州プロビデンスに社屋を有するDassault Systems S.A.社よりSIMULIAの商標で市販されているABAQUSソフトウェアを使用する。従って、概ね平坦な圧力−体積曲線を有する流体容器を創出するのに使用することのできる材料は、ブラダ12の作製に使用するのに望ましい材料ということになる。
【0062】
図1−図4から最もよく分かる様に、ブラダ12はハウジング14内に収納されていて、略円筒形状をしていてもよい。本発明の更に他の実施形態では、ブラダ12は、当業者に一般的に知られている様に、楕円や、八角形、六角形などの様な類似の形状をしていてもよい。従って、本発明の一部の特定の実施形態では、ハウジング14も同様にその様な類似の形状を有していてもよい。
【0063】
本発明の一部の特定の実施形態では、ブラダ12は、約30インチ(76.2cm)から約40インチ(101.6cm)の長さを有していてもよい。他の実施形態では、長さは、約31(78.74cm)インチから約35インチ(88.9cm)とすることができる。本発明の一部の特定の実施形態では、ブラダ12は、約4インチ(10.16cm)の非膨張時外面直径と約2インチ(5.08cm)の内面直径を有していてもよく、それはつまり、ブラダ12が約1インチ(2.54cm)の厚さを有しているということである。本発明の他の実施形態では、ブラダ12の厚さは、閉鎖端36で、約4インチ(10.16cm)の厚さを有している。
【0064】
本発明の一部の特定の実施形態では、シュラウド又は剛性支持構造とも呼称されるハウジング14の比率はブラダ12の大きさ特性に関係している。ハウジング14は、ブラダ12の半径方向膨張を、ブラダ12の最大非拘束時半径方向膨張より小さい膨張度に制限する働きをする。ハウジング14の使用は、小スケールブラダの疲れ寿命について、ハウジング14がブラダ12の膨張中の最大外径を膨張が絞られていない場合に実現される外径の約63%に制限している場合では、疲れ寿命を4.5倍延長させることが示されている。従って、本発明の一部の特定の実施形態では、ハウジング14は、ブラダ12の膨張中の最大外径を、膨張が絞られていない場合に実現される外径の約50%から約70%に制限している。本発明の更に他の実施形態では、ハウジング14は、ブラダ12の膨張中の最大外径を、膨張が絞られていない場合に実現される外径の約60%から約65%に制限している。本発明の更に他の実施形態では、ハウジング14は、ブラダ12の膨張中の最大外径を、膨張が絞られていない場合に実現される外径の約63%に制限している。更に、ハウジング14の使用は、より高い保持圧力、より高いエネルギー密度を実現し、応力をブラダ12全体に均一に分散させる働きをする。従って、上段に開示されているブラダ12の大きさ特性に関係して、一部の特定の実施形態では、ハウジング14は約55インチ(139.7cm)から約65インチ(165.1cm)の長さを有していてもよい。本発明の他の実施形態では、ハウジング14の長さは、約59インチ(149.86cm)から約63インチ(160.02cm)とすることもできる。本発明一部の特定の実施形態では、ハウジング14の直径は約8.25インチ(20.955)である。本発明の更に他の実施形態では、ハウジング14の直径は、約7インチ(17.78cm)から約9インチ(22.86cm)とすることができる。本発明の更に他の実施形態では、ハウジング14の厚さは、約0.12インチ(0.3048cm)から約0.14インチ(0.3556cm)とすることができる。本発明の更に他の実施形態では、ハウジング14の厚さは、約8分の1インチ(0.3175cm)から約4分の1インチ(0.635cm)とすることができる。当業者には知られている様に、ハウジング14の厚さは、ハウジング14についての所望の最大定格圧力に依存する。本発明の一部の特定の実施形態では、ハウジング14は、少なくとも2000psiの圧力定格を有している。以下に更に指摘されている様に、当業者には、本発明の寸法は、所望のエネルギー貯蔵容量が変わるのに合わせて変わり得ることが理解される。
【0065】
更にハウジング14に関して、厚さの他に、作製材料が関係する。本発明の一部の特定の実施形態では、ハウジング14の作製材料は、剛性構造材料である。本発明の他の特定の実施形態では、ハウジング14は、鋼、炭素繊維、ポリカーボネート、織られた圧力容器材料、繊維ガラス、アルミニウムなどから作製されている。その様な材料からハウジング14を製作する方法は、当業者にはよく知られており、その様な製作サービスは、容易に、商業的に入手可能である。当業者には知られている様に、ここに開示されている発明は、所望のエネルギー貯蔵度合いを達成するべくスケール合わせできる。従って、ここには特定の寸法が提供されているが、当業者には、アキュムレータ10にそれが適用される産業に基づいた特定のエネルギー貯蔵特性を達成させるために、それらの寸法が修正されることは熟知されている。
【0066】
次に図5を参照すると、ブラダ12を横から見た断面図が示されている。図示されているブラダ12の実施形態では、ブラダ12の厚さを削減するために、ブラダ12の頚部18付近に切り欠け34が設けられている。当該の特定の場所では壁が薄いことにより、そこがブラダ12の半径方向膨張の開始点となる。従って、図2−図4から最もよく分かる様に、半径方向膨張は、ブラダ12の頚部18付近から始まり、軸方向にブラダ12の長さを下って進行する。その様な膨張は、ブラダ12の予測し得ない膨張に付随する、曲げ、捩じれ、又は閊えの様な、好ましくない影響の起こる可能性を低減する。楕円などの様な、切り欠け34の特定の形状は当業者に知られている。
【0067】
次に図6を参照すると、ブラダ12が、ハウジング14を越えて伸びている頚部18を有している、本発明の或る実施形態が示されている。本発明の一部の特定の実施形態では、頚部18は、長さが約1と2分の1インチ(3.81cm)から約3と2分の1インチ(8.89cm)であってもよい。図6は、ブラダ12の頚部18を流体導管38に取り付けている締め付け部40の個々の部品を示している。具体的には、圧縮リング42の上を滑らせて流体導管38のねじ要素に螺合させる連結ナット44の側面図が示されている。連結ナット44を回すと、ブラダ12は、流体導管38と流体連通する。流体連通を生じさせる締め付け部の他の型式も当業者には知られている。
【0068】
次にハウジング14、頚部18に関し、ハウジング14は開口部26を有しており、開口部26は一部の特定の実施形態では約4.25インチ(10.795cm)から約6.25インチ(15.875cm)の直径を有している。ハウジング14の開口部26は、ブラダ12内の開口部28より広い大きさである。本発明の一部の特定の実施形態では、ブラダの頚部18はハウジング14の開口部26に接していてもよいとされるが、ブラダ12とハウジング14は直接的に接続されてはいない。ブラダ12は、ハウジング14内に配置されている。ハウジング14は、ブラダ12が折り曲がったり捩じれたり、或いはそれ以外に好ましくない歪みを生じさせたりして、ここに説明されているその機能を妨げることのないように、別の構造部材に取り付けられている。本発明の一部の特定の実施形態では、ハウジング14が取り付けられる当該構造部材は、アキュムレータが機能している、例えば車両又は他の装置の内部の、ハウジング14の位置付近に設置されている支持構造などであろう。本発明の更に他の実施形態では、アキュムレータ10は、車両で、ハウジング14がその付近の車両の構造構成要素に固定的に取り付けられるような格好で使用されていてもよい。本発明の更に他の実施形態では、ハウジング14は、締め付け部40に取り付けられていてもよい。
【0069】
次に図7を参照すると、車両で使用することができるアキュムレータ10の或る実施形態が示されている。アキュムレータ10は、作動させるために流体源37が必要である。流体源37は、流れを望ましい圧力で提供することのできる油圧ポンプ又は別の機構であるものとされ、この流体源37が、アキュムレータ10に、アキュムレータ10が歪みエネルギーとして貯蔵することになる、流体流れによるエネルギーを提供する働きをすることになる。同様に、アキュムレータ10は、その貯蔵されたエネルギーを、流れを高圧で油圧モーター又は他の流体動力装置へ提供することによって返還する。車両システムでは、その様な流体源37は、油圧流体であろう。図7に示されている実施形態では、流体源37は、油圧流体と油圧を流体導管38を通してアキュムレータ10のブラダ12の中へ押し出すのに十分な圧力の供給源となっている。本発明の一部の特定の実施形態では、ブラダ12は、流体導管38に、それと流体連通に、取り付けられている。ハウジング14は、単一のブラケット46に取り付けられてもよいし、又は複数のブラケット46に取り付けられてもよく、そうして、ハウジング14は、その様なブラケット46を介して車両(図示せず)に取り付けられている。
【0070】
次に図8を参照すると、ブラダ12の厚さが示されている。ブラダ12は、更に、内面52と外面54を有している。ブラダ12は、ブラダ内腔部50を画定している。図8は、図7に示されている切断線に沿った断面図である。本発明の一部の特定の実施形態では、ブラダ12の内面52は、図8に示されている様に円形である。本発明の代わりの実施形態では、ブラダ12の内面52は円形ではなくて、図9から最もよく分かる様に複数の丸い突出部のある長円形を有していてもよい。ブラダ12は反復的に第1形態から第2形態へ膨張してその後第1形態へ戻ることから、本発明の一部の特定の実施形態では、ブラダ12の内面52は、そういうものとしてのブラダ12の長寿を支援することができる溝56を有している。
【0071】
ここに開示されているあらゆる文献、出版物、及び特許を、明示的に、参考文献として援用している。
以上より、本発明のアキュムレータは、本来の備わっている利点はもとより、ここで言及されている目的及び利点を容易に実現することが理解される。本開示の目的から、本発明の一部の特定の好適な実施形態を図示し、説明してきたが、諸部分の配置構成及び構造には多数の変更が当業者によって加えられる余地があり、その様な変更は、次に続く特許請求の範囲によって定義されている本発明の範囲と精神の中に包含される。
【符号の説明】
【0072】
10 弾性アキュムレータ
12 ブラダ
14 ハウジング
18 ブラダの頚部
22 ブラダの本体
24 ハウジングの第1端
26 ハウジングの開口部
28 ブラダの開口部
30 流体
32 脱気孔
36 ブラダの閉鎖端
37 流体源
38 流体導管
40 締め付け部
42 圧縮リング
44 連結ナット
46 ブラケット
50 ブラダ内腔部
52 内面
54 外面
56 溝
100 ブラダのための試験システム
102 圧力源
104、106、112 ソレノイド弁
108、110 圧力タンク
114 オリフィス弁
116 流量計
118 圧力
120 安全放出弁
122 シュレイダー弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定した非伸張時直径を有する管状の膨張可能部材であって、開口端と閉鎖端とを有し、約1000psiの最小降伏強さを有し、約100%の最小伸び率を有し、最小20kJのエネルギーを貯蔵することができる、膨張可能部材と、
膨張した前記部材が内部に収容されるように、前記部材を取り囲むハウジングであって、前記部材の半径方向膨張を、当該部材の最大非拘束時半径方向膨張より小さい膨張度に制限しているハウジングと、を備えているアキュムレータ。
【請求項2】
前記管状の膨張可能な膜と流体連通している油圧流体源を更に備えている、請求項1に記載のアキュムレータ。
【請求項3】
ブラダであって、第1端を有し、前記第1端は流体が前記ブラダに進入して当該ブラダを半径方向及び軸方向に膨張させることができるように開口部を画定していて、前記ブラダはエラストマーである、ブラダと、
第1端を有するシュラウドであって、前記ブラダを取り囲み、当該ブラダがその最大非拘束時半径方向膨張まで伸張しないように当該ブラダの半径方向膨張を制限していて、前記シュラウドの前記第1端は、流体が当該シュラウドの前記ブラダの中へ進入することができるように前記ブラダの前記開口部の周りに第1開口部を画定している、シュラウドと、を備えているアキュミュレータにおいて、
前記シュラウドは、前記ブラダが流体を充填されて前記シュラウド内で膨張する際に空気が前記シュラウドを脱出することができるように第2開口部を画定している、アキュムレータ。
【請求項4】
前記ブラダと前記シュラウドの間の接触が潤滑されるように、前記シュラウド上に潤滑剤を更に備えている、請求項3に記載のアキュムレータ。
【請求項5】
前記ブラダはポリウレタンである、請求項3に記載のアキュムレータ。
【請求項6】
前記ブラダはニトリルゴムである、請求項3に記載のアキュムレータ。
【請求項7】
前記ブラダは円形の断面形状を有している、請求項3に記載のアキュムレータ。
【請求項8】
膨張部材であって、流体源の入出口用の開口部を画定していて、内面と外面を有し、流体連通に応えて第1形態から第2形態へ膨張し、その後第1形態へ戻るように適合されている膨張部材と、
前記膨張部材を取り囲む剛性支持構造であって、前記膨張部材が最大非拘束時半径方向膨張まで膨張したときの当該膨張部材の外面の直径より小さい内径を有する弾性支持構造と、
前記膨張部材と流体連通している流体源と、
前記膨張部材と前記流体源の間に流体接続を提供するための導管と、を備えているアキュムレータ。
【請求項9】
前記膨張部材は、反復的に膨張可能な材料である、請求項8に記載のアキュムレータ。
【請求項10】
前記膨張部材の前記内面は、当該部材が膨張すると膨張するように、当該部材の長さに亘って延びる軸方向溝を有している、請求項8に記載のアキュムレータ。
【請求項11】
前記膨張部材の厚さが当該部材の前記開口部付近で削減されており、流体が当該部材に進入すると当該位置から当該部材の膨張が始まるようにしている、請求項8に記載のアキュムレータ。
【請求項12】
前記剛性支持構造は円形断面形状を有している、請求項8に記載のアキュムレータ。
【請求項13】
前記剛性支持構造は、約2000psiの最小圧力定格を有している、請求項8に記載のアキュムレータ。
【請求項14】
前記剛性支持構造は脱気孔付きである、請求項8に記載のアキュムレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−522955(P2012−522955A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504710(P2012−504710)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2010/029361
【国際公開番号】WO2010/117853
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(507357885)ヴァンダービルト ユニバーシティ (3)
【氏名又は名称原語表記】VANDERBILT UNIVERSITY
【Fターム(参考)】