説明

高コレステロール血症の治療のためのコレステロール逆輸送メディエータ

本発明は、組成物を哺乳類のコレステロール逆輸送に好適な提供する。該組成物は経口送付に適し、高コレステロール症、アテローム性動脈硬化症、心血管系統関連の疾患の治療および/または予防に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高コレステロール血症およびそれに関連した循環器疾患を治療するためのコレステロール逆輸送(RCT)のペプチドおよび小さな分子メディエータに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高血清コレステロール(高コレステロール血症)がアテロームの発生、動脈内壁へのコレステロール蓄積の進行における原因となる因子であることは確実なことと認識されている。高コレステロール血症およびアテロームは、高血圧症、冠状動脈症、心臓発作および脳卒中をはじめとする循環器疾患の原因となる。合衆国だけでも毎年約110万の人々が心臓発作を患い、その費用は1170億ドルを超えると見られている。血中のコレステロール濃度を低下させる薬学的方法は数多くあるが、これらの多くは望ましくない副作用を有し、安全が懸念されている。さらに、コレステロール逆輸送、つまり体からコレステロールを取り除く重要な代謝経路を適切に刺激する市販薬治療は存在しない。
【0003】
コレステロールの循環は、血漿リポタンパク質粒子、すなわち血中の脂質類を転送する錯体脂質とタンパク質組成物とによって行われる。低比重リポタンパク質(LDL)および高比重リポタンパク質(HDL)は主要なコレステロールキャリアである。LDLはコレステロールを肝臓(ここでコレステロールは合成あるいは食物源から得られる)から体内にある肝臓外の組織へ送り出すことに関与しているとみられている。用語「コレステロール逆輸送」は、コレステロールを肝臓外の組織から異化し除去する、コレステロールの肝臓への転送である。血漿HDL粒子は細胞コレステロールのスカベンジャーとして作用し、逆輸送過程において大きな役割を果たすとみられている。
【0004】
確固とした証拠によって、アテローム性動脈硬化部に沈着した脂質が血漿LDLから主に誘導されるという考えが支持され、したがって、LDLは一般には「悪玉」コレステロールとして知られるようになった。これとは対照的に、血漿HDL濃度は、冠状動脈性心臓病と反比例の相関関係があり、実際、高HDL血漿濃度は負の危険因子とされている。高濃度の血漿HDLは、冠状動脈症からの保護ばかりでなく、実際に冠状動脈性プラークの退化を引き起こし得ると仮定される(たとえば、Badimonら、1992、Circulation、86(Suppl.III):86−94参照)。したがってHDLは一般には「善玉」コレステロールとして知られるようになった。
【0005】
LDLから遊離される細胞内コレステロールの量が、細胞コレステロール代謝を制御する。LDLから誘導される細胞コレステロールの蓄積は3つの過程を統制している。
(1)コレステロール生合成経路における鍵酵素であるHMGCoA還元酵素の合成を停止することによって細胞コレステロール合成が減らされ、
(2)次に入ってくるLDL誘導コレステロールが、LCATを活性化して、コレステロールの貯蔵を促進し、細胞酵素がコレステロールをコレステリルエステルに変換し、それが貯蔵液滴に沈着され、
(3)細胞内へのコレステロールの蓄積によって、新しいLDL受容体の細胞合成を抑制するフィードバックメカニズムが動く。したがって、細胞は、LDL受容体のそれらの補体を調節し、負担をかけすぎることなく、それらの代謝に必要なだけのコレステロールがもたらされる。(概説として、Brown&Goldstein、In:The Pharmacological Basis Of Therapeutics、第8版、Goodman & Gilman、Pergamon Press、NY、1990、 Ch.36、pp874−896参照)。
【0006】
コレステロール逆輸送(RCT)とは、体皮細胞コレステロールが、肝臓外の組織へ再循環するため、あるいは胆汁として腸へ分泌されるために肝臓へ戻されうる経路である。RCT経路は、ほとんどの肝臓外の組織からコレステロールを除去する手段としての意味しかない。RCTは主に3つのステップからなる。(1)コレステロール流出、体皮細胞からのコレステロールの初期除去、(2)レシチン−コレステロールアシル移行酵素(LCAT)の作用によるコレステロールのエステル化、流出されたコレステロールの体皮細胞への再突入の阻止、そして(3)肝細胞へのHDLコレステリルエステルの取り込み/送り出しである。LCATはRCT経路における鍵酵素であり、主に肝臓で産生され、そしてHDL画分と関連した血漿中で循環する。LCATはコレステロール誘導細胞を、HDL中に隔離され除去されることになるコレステリルエステルに変換する。RCT経路はHDLによって伝達される。
【0007】
HDLはリポタンパク質粒子の普通名詞であり、それらは高密度であるという特徴がある。HDL複合体の主な脂質構成成分は、種々のリン脂質、コレステロール(エステル)およびトリグリセリドである。最も重要なアポリポタンパク質成分は、HDLの機能特性を決定するA−IおよびA−IIである。
【0008】
HDL粒子は、それぞれアポリポタンパク質A−1(アポA−I)のコピーを少なくとも1つ(通常2〜4個のコピー)を含む。アポA−Iは、急速に開裂して243個のアミノ酸残基を持つ成熟ポリペプチドを産生するプロ蛋白として分泌されるプレプロアポリポタンパク質として、肝臓と小腸とで合成される。アポA−Iは主に、6〜8個の異なる22個のアミノ酸繰返しからなり、多くの場合プロリンであるリンカー部によって間隔をあけられており、時には、数個の残基で作られているストレッチからなる。アポA−Iは、脂質とともに3タイプの安定な複合体を形成する。すなわち、プレ−ベータ−1HDLと称される小さな貧脂肪複合体、プレ−ベータ−2HDLと称される、極性脂質(リン脂質とコレステロール)を含む扁平な円板状粒子、および球状あるいは成熟HDL(HDL3およびHDL2)と称される、極性、無極性脂質を両方含む球状粒子である。循環中のほとんどのHDLはアポA−IとアポA−IIとを両方含むが、アポA−I(AI−HDL)だけを含むHDLの画分がRCTにおいては、より効果的であるように見える。疫学の研究がAI−HDLは抗動脈硬化性であるという仮説を支持している(Parraら、1992、Arterioscler.Thromb.12:701−707、Decossinら、1997、Eur.J.Clin.Invest.27:299−307)。
【0009】
インビボで得られたデータに基づいた証拠のうちのいくつかが、HDLおよびその主タンパク質成分であるアポA−Iを、アテローム性動脈硬化部の予防、そしてプラークの回帰の可能性に、すなわち治療行為のためにこれらの魅力的な標的を作ることに関係している。まず、ヒトにおいて、血清アポA−I(HDL)濃度とアテローム発生との間には逆相関が存在する(Gordon & Rifkind、1989、N.Eng.J.Med.321:1311−1316、Gordonら、1989、Circulation79:8−15)。実際、HDLの特定の亜集団が、ヒトにおいて、アテロームの危険率を下げることに関連していた(Miller、1987、Amer.Heart113:589−597;Cheungら、1991、Lipid Res.32:383−394);Fruchart & Ailhaud、1992、Clin.Chem.38:79)。
【0010】
第2に、動物実験がアポA−I(HDL)の保護の役割を裏付ける。アポA−IまたはHDLを与えられたウサギのコレステロール処置で、コレステロールを与えられたウサギのプラーク(脂肪線条)の発生および進行を低減した(Koizumiら、1988、J.Lipid Res.、29:1405−1415、Badimonら、1989、L
ab.Invest.60:455−461、Badimonら、1990、J.Clin.Invest.85:1234−1241)。しかしながら、その効能はHDLソースによってまちまちであった(Beitzら、1992、Prostaglandins、Leukotrienes and Essential Fatty Acids、47:149−152;Mezdourら、1995、Atherosclerosis、113:237−246)。
【0011】
第3に、アポA−Iの役割に関する直接的な証拠が、トランスジェニック動物に関する実験から得られた。アポA−Iに関するヒト遺伝子の実験として、遺伝的に病気にかかりやすくされたマウスに、大動脈病巣の発生に対して保護する食物由来のアテロームを移植した(Rubinら、1991、Nature、353:265−267)。アポA−Iトランスジーンは、また、アポE−欠損マウスとアポ(a)トランスジェニックマウスにおけるアテロームを抑えることを示した(Pasztyら、1994、J.Clin.Ivest.、94:899−903、Plumpら、1994、PNAS.USA91:9607−9611、Liuら、1994、J.Lipid Res.35:2263−2266)。同様の結果が、ヒトアポA−Iが発現している、トランスジェニックウサギにおいて観察され(Duverger、1996、Circulation94:713−717、Duvergerら、1996、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.16:1424−1429)、そしてトランスジェニックラットにおいて、高いヒトアポA−I濃度が、アテロームに対し保護し、再狭窄、続いて起こるバルーン血管形成を抑制した(Burkeyら、1992、Circulation、Supplement I、86:I−472、Abstract No.1876;Burkeyら、1995、J.Lipid Res. 36:1463−1473)。
【0012】
高コレステロール血症および他の異常脂質血症に対する現行の治療
約20年前、コレステロール症の化合物のHDLおよびLDL調節因子への分離および血中のLDLの濃度が下がることが望ましいことであるという認識が数多くの薬物の開発を先導した。しかしながら、これらの薬物の多くが望ましくない副作用を持ちおよび/または、特に他の薬物と混合して投与された場合、ある患者には禁忌である。たとえば、これらの薬物と治療方針は次の通りである。
(1)胆汁−酸−結合樹脂、これは、腸から肝臓への胆汁酸の再循環を妨害する。(たとえば、コレスチラミン(QUESTRAN LIGHT、Bristol−Myers Squibb)およびコレスチポール塩酸塩(COLESTID、Pharmacia & Upjohn Company))
(2)スタチン、これは、HMGCoA(コレステロール生合成に関連する鍵酵素)をブロックすることによってコレステロール合成を抑制する。(たとえば、ロバスタチン(MEVACOR、 Merck & Co.Inc.)、アスペルギルス属の菌株に由来する天然物、プラバスタチン(PRAVACHOL、Bristol−Myers Squibb Co.)およびアトルバスタチン(LIPITOR、Warner Lambert))
(3)ナイアシンは水溶性ビタミンB−複合体であって、VLDLの生成を減少し、LDL減少に効果的である。
(4)フィブリン酸類は、VLDL画分を低下させることによって、血清トリグリセリドを低下させるために使用され、いくつかの患者集団において同じメカニズムを経て血漿コレステロールの穏やかな低減をもたらすこともある。(たとえば、クロフィブレート(ATROMID−S、Wyeth−Ayerst Laboratories)およびジェムフィブロジル(LOPID、Parke−Davis))
(5)エストロゲン補充療法は更年期後の女性のコレステロール濃度を下げ得る。
(6)長鎖α,ω−ジカルボン酸類は血清トリグリセリドとコレステロールを低下させると報告されている。(たとえば、Bisgaierら、1998、J.Lipid Re
s.39:17−30、国際公開98/30530号、米国特許第4,689,344号、国際公開99/00116号、米国特許第5,756,344号、米国特許第3,773,946号、米国特許第4,689,344号、米国特許第4,689,344号、米国特許第4,689,344号および米国特許第3,930,024号参照)
(7)エーテルを始めとする他の化合物(たとえば、米国特許第4,711,896号、米国特許第5,756,544号、米国特許第6,506,799号参照)、ドリコールのリン酸塩(米国特許第4,613,593号)およびアゾリジンジオン誘導体(米国特許第4,287,200号)は血清トリグリセリドとコレステロールの濃度を低下させると開示されている。)
これら現在入手しうる、コレステロールを低下する薬物は、どれもHDL濃度を充分に上昇させ、RCTを促進するものはない。実際、これら現在の治療方針のほとんどは、食事摂取量の調整と再循環とによるコレステロール転送経路、コレステロールの合成、およびVLDL集団において行っているようだ。
【0013】
高コレステロール血症の治療のためのアポA−1アゴニスト
動脈硬化症に対する保護におけるHDL、すなわちアポA−Iおよびそれに関連したリン脂質の両方の潜在的な役割に鑑みて、UCB(ベルギー)によって、組替え技術により造られたアポA−Iを利用した、ヒトに対する臨床試験が始められ、中断され、そして再開されたらしい(Pharmaprojects、1995年10月27日、IMS R
& D Focus、1997年6月30日、Drug Status Update、1997年、Atherosclerosis2(6):261−265)、また、議会でのM.Eriksson、「The Role of HDL in Disease Prevention」、1996年11月7−9日、フォートワース、Lacko
& Miller、1997、J.Lip.Res.38:1267−1273および国際公開94/13819号参照)、そしてバイオテクによっても始められ、中断された(Pharmaprojects、1989年4月7日)。試験は、また、敗血症性ショックを治療するために、アポA−Iを使って試みられた(Opal、「Reconstituted HDL as a Treatment Strategy for Sepsis」、IBCの第7回、敗血症国際会議、1997年4月28−30日、ワシントンD.C.、Gouniら、1993、J.Lipid Res.94:139−146、Levine、国際公開96/04916号)。しかしながら、アポA−1の製造および用途に関連して、これを薬物としては理想には満たないものにする多くの落とし穴がある。たとえば、アポA−Iは大きなタンパク質であり、製造が困難でかつ費用がかかり、製造および再現性にかかる克服しなければならない深刻な問題として、貯蔵時の安定性、活性生成物の配送、生体内での半減期がある。
【0014】
これらの欠点に鑑みて、模倣アポA−Iであるペプチドの製造が試みられている。アポA−Iの重要な活性は、タンパク質中にある独特な第2構造的特性−クラスA両親媒性α−螺旋の複数の繰り返しの存在にある(Segrest、1974、FEBS Lett.38:247−253、Segrestら、1990、PROTEINS:Structure,Function and Genetics 8:103−117)ので、アポA−Iの活性を模倣するペプチドを設計するほとんどの努力は、クラスAタイプ両親媒性α−螺旋ペプチドを形成するペプチドを設計することに焦点が当てられている。(たとえば、米国特許第6,376,464号および第6,506,799号の背景技術の説明を参照、なお、これら全ては参照として本明細書に組み込まれる)。
【0015】
研究の1つとして、Fukushimaらは、等親水性−疎水性面で両親媒性α−螺旋を形成するように、周期的に配置されたGlu、LysおよびLeu残基から構成される22−残基ペプチド化合物を合成した(「ELKペプチド」)(Fukushimaら、1979、J.Amer.Chem.Soc.101(13):3703−3704、F
ukushimaら、1980、J.Biol.Chem.255:10651−10657)。該ELKペプチドは、アポA−Iの198−219フラグメントを持つ41%配列相同性を占める。該ELKペプチドはリン脂質と効果的と関連して、アポA−Iの物理特性、化学特性のいくつか模倣することが示された(Kaiserら、1983、PNAS USA80:1137−1140、Kaiserら、1984、Science223:249−255、Fukushimaら、1980、前述、Nakagawaら、1985、J.Am.Chem.Soc.107:7087−7092)。この22−残基ペプチドの二量体は、後に、単量体よりアポA−Iにより近く類似することが発見され、これらの結果に基づいて、ヘリックス破壊剤(GlyかProのいずれか)によって中央を断ち切られた44−mer(アポA−Iにおける最小機能ドメインとして表される)であると示唆された(Nakagawaら、1985、前述)。
【0016】
別の研究として、「LAPペプチド」と呼ばれるモデル両親媒性ペプチドがある(Pownallら、1980、PNAS USA 77(6):3154−3158、Sparrowら、1981、In:Peptides:Synthesis−Structure−Function、Roch and Gross、Eds.、Pierce Chem.Co.、ロックフォード、イスラエル、253−256)。天然アポリポタンパク質フラグメントについての脂質結合に関する研究に基づいて、数種のLAPペプチドが設計され、LAP−16、LAP−20そしてLAP−24(それぞれ16、20、24個のアミノ酸残基含む)と名づけられた。これらのモデル両親媒性ペプチドは、アポリポタンパク質と配列相同性を共有せず、アポリポタンパク質と結合したクラスA型の両親媒性螺旋ドメインとは異なるように配列された親水性面を持つように設計された(Segrestら、1992、J.Lipid Res.33:141−166)。これらの研究から、著者らは、20個の残基の最小長さは、脂質結合特性を参照する必要があり、両親媒性ペプチドに倣って形成されると結論づけた。
【0017】
該配列において異なる位置にあるプロリン残基を含むLAP20の突然変異体に関する研究によって、脂質結合とLCAT活性との間に直接的な関係が存在するが、ペプチドだけの螺旋ではLCAT活性を導く可能性はない(Ponsinら、1986、J.Biol.Chem.261(20):9202−9205)ことが指摘された。さらに、ペプチドの中央近くに存在するこのヘリックス破壊剤(Pro)が、LCATを活性化する能力とともにそのリポ脂質面の親和性をも低減した。ある種のLAPペプチドがリン脂質に結合することが示された(Sparrowら、前述)が一方で、脂質の存在下LAPペプチドが螺旋であるということについては論争の余地がある(Buchkoら、1996、J.Biol.Chem.271(6):3039−3045、Zhongら、1994、Peptide Research7(2):99−106)。
【0018】
SegrestらがアポA−Iの螺旋と配列相同性を共有しない18〜24個のアミノ酸残基で構成されるペプチドを合成した(Kannelisら、1980、J.Biol.Chem.255(3):11464−11472、Segrestら、1983、J.Biol.Chem.258:2290−2295)。該配列は、疎水性モーメント(Eisenbergら、1982、Nature299:371−374)および電荷分布(Segrestら、1990、Proteins8:103−117、米国特許第4,643,988号)の点から、クラスA置換性アポリポタンパク質の両親媒性螺旋ドメインを模倣するように特別に設計された。1個の18−残基ペプチド、「18A」ペプチドは、モデルクラス−Aα−螺旋であるように設計された(Segrestら、1990、前述)。これらのペプチドおよび「18R」ペプチドのような逆電荷分布を持つ他のペプチドの研究によって、電荷分布が活性にとって重要であることが毅然として示された。逆電荷分布を持つペプチドが発現する脂質親和性は、前記18Aクラス−A模倣体と比較して低下しており、脂質の存在下螺旋含有率はより低い値を示す(Kanellisら、
1980、J.Biol.Chem:255:11464−11472、Anantharamaiahら、1985、J.Biol.Chem.260:10248−10255、Chungら、1985、J.Biol.Chem.260:10256−10262、Epandら、1987、J.Biol.Chem.262:9389−9396、Anantharamaiahら、1991、Adv.Exp.Med.Biol.285:131−140)。
【0019】
ヒトアポA−Iの螺旋の配列に基づく22−アミノ酸残基を含有する「コンセンサス」ペプチドもまた設計された(Anantharamaiahら、1990、Arteriosclerosis10(1):95−105、Venkatachalapathiら、1991、Mol.Conformation and Biol.Interactions、Indian Acad.Sci.B:585−596)。該配列はヒトアポA−Iの仮定された螺旋の各位置で最も優勢な残基を同定することによって構成された。該ペプチドのように、このペプチドによって形成された螺旋は、正に帯電し親水性−疎水性界面で房になったアミノ酸残基と、負に帯電し親水性面の中央で房になったアミノ酸残基と、180未満の疎水角とを有する。このペプチドの二量体はLCATを活性化するのにいくらか効果的であるが、単量体は脂質結合特性の発現が劣っていた(Venkatachalapathiら、1991、前述)。
【0020】
主として前記ペプチドに関する試験管内での研究に基づいてアポA−Iの機能を模倣するペプチドを設計するために、1組の「規則」が明らかになっている。注目すべきは、正に帯電し親水性−疎水性界面で房になったアミノ酸残基と、負に帯電し親水性面の中央で房になったアミノ酸残基とを持つ両親媒性α−螺旋とが、脂質親和性とLCAT活性化に必要であると考えられていることである(Venkatachalapathiら、1991、前述)。Anantharamaiahらはまた、α−螺旋の疎水性面内に位置する、コンセンサス22−merペプチドの13位にある負に帯電したGlu残基が活性化において重要な役割を担うことを指摘した(Anantharamaiahら、1991、前述)。さらに、Brasseurは疎水角(pho角)が180°未満であることが最適な脂質−アポリポタンパク質複合体の安定性のために必要であると指摘しており、また、脂質二重層の端の周りにペプチドを持つ円板状粒子が形成していると説明する(Brasseur、1991、J.Biol.Chem.66(24):16120−16127)。また、Rosseneuらは活性化のためには、疎水角は180°未満であることが必要であると断言している(国際公開93/25581号)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、アポA−Iアゴニストを設計するための「規則」の解明が進んでいるにもかかわらず、今日まで、最高のアポA−Iアゴニストでさえ、無傷アポA−Iの活性の40%未満しか持たないことが報告されている。文献に記載のどのペプチドアゴニストも薬物として有用であることを示しているものはない。したがって、アポA−Iの活性を模倣する安定な分子であって、製造するのが比較的簡単でコスト効率の良いものの開発の必要性がある。候補となる化合物としては、RCTに間接あるいは直接介入するのが好ましい。そのような分子は現存するペプチドアゴニストより小さく、より広い機能的なスペクトルを有しているであろう。RCTの有効なメディエータを設計するための「規則」は充分に明らかにされておらず、アポA−Iの機能に関する有機分子の設計のための原則は知られていない。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明のひとつの好ましい実施形態によれば、コレステロール逆輸送のメディエータであって、酸性領域と、親油性または芳香性領域と、塩基性領域とを含む分子を含むメディ
エータ(「分子モデル」)が開示される。最も単純な形での分子モデルは、酸性領域と塩基性領域とを親油性骨格とともに含む分子であり得る。該分子はHDLおよび/またはLDLコレステロールと複合するように構成された構造を持ち、それによってコレステロール逆輸送を増強する。
【0023】
該コレステロール逆輸送のメディエータは、好ましくは、3〜10個の間のアミノ酸残基、またはその類似体または塩基性基および酸性基と親油性骨格とを含む任意の非ペプチド化合物を持ち、そして配列:X1−X2−X3(式中、X1は酸性アミノ酸であり、X2は芳香族または親油性アミノ酸であり、X3は塩基性アミノ酸であり、アミノ末端はさらに第1保護基を含み、カルボキシ末端はさらに第2保護基を含む)を含む。第1および第2保護基は、独立して、アセチル、フェニルアセチル、ピボリル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、2−ナフチリック酸、ニコチン酸、CH3−(CH2n−CO−(式中、nは3〜20の範囲である)、およびアセチル、フェニルアセチル、ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル、ナフチル、置換ナフチル、f−MOC、ビフェニル、置換フェニル、置換複素環類、アルキル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、縮合シクロアルキル、飽和ヘテロアリールおよび置換飽和ヘテロアリールのアミド等からなる群から選択される。前記C−末端は、RNH2(式中Rはジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル、ナフチル、置換ナフチル、f−MOC、ビフェニル、置換フェニル、置換複素環類、アルキル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、縮合シクロアルキル、飽和ヘテロアリール、置換飽和ヘテロアリール等である)のようなアミンで覆われている。配列:X1−X2−X3は如何なる全ての可能な方法でスクランブルすることができ、分子モデルの基本的な特徴を保有する化合物を与え、3〜10個のアミノ酸残基で構成され得る。
【0024】
コレステロール逆輸送のアミノ酸誘導メディエータの実施形態ひとつにおいて、代謝的に安定な分子を与えるためには、X1、X2およびX3の1つ以上がD−アミノ酸残基または修飾された他の合成アミノ酸残基である。これはまた、疑似ペプチドアプローチ、たとえば骨格中のペプチド結合または類似した基を転換することによっても達成することができる。ある好ましい実施形態では、X2はビフェニルアラニンである。特に好ましい実施形態では、本発明のコレステロール逆輸送のメディエータは、SEQ ID NO:1〜176の何れのものでもよく、また表5に示された化合物から選択されてもよい。ある好ましい実施形態では、コレステロール逆輸送のメディエータは配列EFRまたは配列RFEを含む。
【0025】
動物においてRCTを増強する方法が本発明の他の好ましい態様として開示される。該方法は、動物に有効量のアミノ酸誘導組成物を投与することを含み、該組成物は、配列:X1−X2−X3〔式中、Xlは酸性アミノ酸であり、X2は芳香族または親油性アミノ酸であり、X3は塩基性アミノ酸であり、アミノ末端はさらに第1保護基を含み、カルボキシ末端はさらに第2保護基を含み、前記第1および第2保護基は独立して、アセチル、フェニルアセチル、ピボリル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、2−ナフトエ酸、ニコチン酸、CH3−(CH2n−CO−(式中、nは3〜20の範囲である)、ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル、ナフチル、置換ナフチル、f−MOC、ビフェニル、置換フェニル、置換複素環類、アルキル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、縮合シクロアルキル、飽和ヘテロアリール、および置換飽和ヘテロアリールなどからなる群から選択される〕を含む。前記C−末端は、RNH2(式中Rはジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル、ナフチル、置換ナフチル、f−MOC、ビフェニル、置換フェニル、置換複素環類、アルキル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、縮合シクロアルキル、飽和ヘテロアリール、置換飽和ヘテロアリール等である)のようなアミンで覆われている。配列:X1−X2−X3は如何なる全ての可能な方法でスクランブルすることができ、分子モデルの塩基性特徴を保有する化合物を与え、3〜10個のアミノ酸
残基で構成され得る。
【0026】
本発明の他の態様によれば、哺乳動物における高コレステロール血症および/またはアテロームの治療および/または予防のための実質的に純粋なアミノ酸誘導物質が開示される。該物質は、アミノおよびカルボキシ末端を有し、酸性アミノ酸残基または修飾された合成アミノ酸のLまたはD光学異性体、またはその誘導体、および親油性アミノ酸残基またはその誘導体のLまたはD光学異性体またはその修飾された合成アミノ酸、および塩基性アミノ酸残基またはその誘導体のLまたはD光学異性体またはその修飾された合成アミノ酸を含む。アミノ末端はさらに第1保護基を含み、カルボキシ末端はさらに第2保護基を含む。第1保護基および第2保護基は、独立して、アセチル、フェニルアセチル、ピボリル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、2−ナフトエ酸、ニコチン酸、ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル、ナフチル、置換ナフチル、f−MOC、ビフェニル、置換フェニル、置換複素環類、アルキル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、縮合シクロアルキル、飽和ヘテロアリール、および置換飽和ヘテロアリールなどからなる群から選択される。C−末端は、RNH2(式中、Rは、ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル、ナフチル、置換ナフチル、f−MOC、ビフェニル、置換フェニル、置換複素環類、アルキル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、縮合シクロアルキル、飽和ヘテロアリール、置換飽和ヘテロアリールなどである)のようなアミンで覆われている。配列:X1−X2−X3は如何なる全ての可能な方法でスクランブルすることができ、分子モデルの塩基性特徴を保有する化合物を与え、3〜10個のアミノ酸残基で構成され得る。
【0027】
該物質は、下記の特徴を少なくとも1つ有する。(1)LDLおよびHDLに結合するアポA−Iを模倣するLDLおよびHDLに結合する。(2)優先的に肝臓に結合する。(3)肝臓LDL−受容体によるLDL取り込みを増強する。(4)LDL、IDLおよびVLDLコレステロールの濃度を低下させる。(5)HDLコレステロールの濃度を上昇させる。(6)血漿リポタンパクのプロフィールを改善する。
【0028】
本発明の他の態様によれば、高コレステロール血症の症状の回復または予防のための経口投与に好適な組成物が開示される。該組成物は、酸性領域、親油性領域および塩基性領域を持つアミノ酸誘導分子を含む。アミノ酸誘導分子は、また、アミノ末端に結合された第1保護基とカルボキシ末端に結合された第2保護基とを持つ。アミノ酸誘導分子は任意で少なくとも1つのDアミノ酸残基を含んでもよい。
【0029】
本発明の他の態様によれば、RCTのペプチドメディエータが開示される。該メディエータは、配列:Xa−Xb−Xl−X2−X3−Xc−Xd(式中、Xaはアシル化アミノ酸残基、Xbは0〜10個の任意のアミノ酸残基、X1−X2−X3は、独立して、酸性アミノ酸残基またはその誘導体、親油性アミノ酸残基またはその誘導体、および塩基性アミノ酸残基またはその誘導体から選択され、Xaは0〜10個の任意のアミノ酸残基、およびXdは、アミド化アミノ酸残基である)を含む。ペプチドメディエータは、15個以下のアミノ酸残基を含むのが好ましく、任意で少なくとも1つのDアミノ酸残基または修飾された合成アミノ酸を含んでいてもよい。
【0030】
本発明の他の好ましい実施形態によれば、高コレステロール血症またはアテロームの治療および/または予防のための、酸性領域、親油性領域および塩基性領域を持つアミノ酸誘導分子を含む、経口投与に好適な組成物の投与が開示される。アミノ酸誘導する分子は、またアミノ末端に結合された第1保護基とカルボキシ末端に結合された第2保護基とを持つ。アミノ酸誘導分子は任意で少なくとも1つのDアミノ酸残基を含んでもよい。
【0031】
本発明の他の実施形態によれば、表5の合成化合物1〜96からなる群から選択される
化合物を含むRCTメディエータが開示される。
【0032】
本発明の他の実施形態によれば、SEQ ID NO:1および107〜117からなる群から選択される化合物を含むRCTメディエータが開示される。
本発明の他の実施形態によれば、SEQ ID NO:1、26−36、42、45〜47、56〜58、68〜70、72〜74、76、80、81、83〜90および92〜95からなる群から選択される化合物を含むRCTメディエータが開示される。
本発明の他の実施形態によれば、SEQ ID NO:1からなる群から選択される化合物を含むRCTメディエータが開示される。
本発明の他の実施形態によれば、SEQ ID NO:113からなる群から選択される化合物を含むRCTメディエータが開示される。
本発明の他の実施形態によれば、SEQ ID NO:34からなる群から選択される化合物を含むRCTメディエータが開示される。
本発明の他の実施形態によれば、SEQ ID NO:86からなる群から選択される化合物を含むRCTメディエータが開示される。
本発明の他の実施形態によれば、SEQ ID NO:91からなる群から選択される化合物を含むRCTメディエータが開示される。
【0033】
本発明の他の実施形態によれば、SEQ ID NO:96からなる群から選択される化合物を含むRCTメディエータが開示される。
【0034】
本発明の他の実施形態によれば、SEQ ID NO:145からなる群から選択される化合物を含むRCTメディエータが開示される。
【0035】
本発明の他の実施形態によれば、SEQ ID NO:146からなる群から選択される化合物を含むRCTメディエータが開示される。
【0036】
本発明の他の実施形態によれば、SEQ ID NO:118からなる群から選択される化合物を含むRCTメディエータが開示される。
【0037】
本発明の他の好ましい実施形態によれば、高コレステロール血症および/またはアテロームの治療または予防方法が開示される。該方法は、SEQ ID NO:1〜176(表3)および合成化合物1〜96(表5)から選択される組成物を、それを必要とする哺乳動物に、RCTを増強するおよび/または現存するアテローム性動脈硬化部の回帰を起こすあるいは病変の形成を低減するのに充分な量投与することを含む。高コレステロール血症および/またはアテロームの治療または予防のための組成物は、SEQ ID NO:1、113、34、86、91、96、145、146および118からなる群から選ばれ、投与量は、RCTを増強するおよび/または現存するアテローム性動脈硬化部の回帰を起こすあるいは病変の形成を低減するのに充分な量であるのが、より好ましい。該方法の1つの変法において、投与するステップは、経口経路によって達成される。該方法の他の変法においては、投与するステップは、胆汁酸結合樹脂、ナイアシン、スタチンまたはこれらの混合物の投与と組み合わされる。
【0038】
本発明の他の好ましい実施形態によれば、インビボでコレステロール逆輸送を増強し得る試験化合物を同定する、インビトロスクリーニング方法が開示される。該方法は、インビトロで、試験化合物の存在下または非存在下、肝臓胞に蓄積したコレステロールを測定し、インビトロで、試験化合物の存在下または非存在下、AcLDL負荷マクロファージ中のコレステロールの蓄積および/または流出を測定し、肝細胞中のコレステロール蓄積を増強し、マクロファージ中のコレステロール濃度を低減する試験化合物を同定することを含む。
【0039】
該スクリーニング方法の変法において、コレステロール濃度は、また、インビトロで、試験化合物の存在下または非存在下、OxLDL負荷血管平滑筋細胞中で測定される。従って、試験化合物の同定のステップは、さらに、肝細胞中のコレステロール蓄積を増強し、マクロファージ中のコレステロール濃度を低減および/または血管平滑筋細胞中のコレステロール濃度を低減する化合物を同定することを含む。
【0040】
スクリーニング方法の1つの実施形態において、肝細胞はヒトHepG2ヘパトーマ細胞である。他の実施形態において、マクロファージはヒトTHP−1細胞である。他の実施形態において、血管平滑筋細胞は主要大動脈主要大動脈平滑筋細胞である。
【0041】
他の変法において、インビトロスクリーニング方法は、インビトロで、試験化合物の存在下または非存在下、肝細胞内のコレステロール蓄積を測定するステップと、インビトロで、試験化合物の存在下または非存在下、AcLDL負荷血管平滑筋細胞内のコレステロール濃度を測定するステップと、肝細胞内のコレステロール蓄積を増強し、血管平滑筋細胞内のコレステロール濃度を低減する試験化合物を同定するステップと、を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明の好ましい実施形態におけるRCTのメディエータは、アポA−Iの機能および活性を模倣する。広い態様において、これらのメディエータは、3つの領域、すなわち、酸性領域、親油性(たとえば、芳香性)領域および塩基性領域を含む分子である。好ましくは、該分子は正に帯電した領域、負に帯電した領域、および帯電していない親油性領域を含む。お互いに関連する該領域の配置は、分子間で様々であり得る。したがって、好ましい実施形態においては、各分子内の3つの領域の位置関係にかかわりなく、該分子はRCTに介在する。ある好ましい実施形態においては、分子鋳型またはモデルは、酸性アミノ酸誘導残基、親油性アミノ酸誘導残基および塩基性アミノ酸誘導残基を含み、任意の順序でも結合し、RCTのメディエータを形成する一方で、他の好ましい実施形態においては、分子モデルは、酸性、親油性および塩基性領域を持つ、たとえば、アミノ酸、フェニルアラニン(SEQ ID NO:127)のような単一残基によって具現化され得る。
【0043】
いくつかの好ましい実施形態において、RCTの分子メディエータは、天然D−またはL−アミノ酸類、アミノ酸類似体(合成または半合成)およびアミノ酸誘導体の三量体を含む。たとえば、三量体として酸性アミノ酸残基またはその類似体、芳香族または親油性アミノ酸残基またはその類似体、および塩基性アミノ酸残基、またはその類似体が挙げられ、該残基はペプチドまたはアミド結合によってつなぎ合わせられている。たとえば、該三量体配列EFRは、酸性残基(グルタミン酸)、芳香族残基(フェニルアラニン)および塩基性アミノ酸残基(アルギニン)を含む。本発明の他の好ましい態様において、分子メディエータは、1つ以上のアミノ酸三量体を含む大きなアミノ酸系化合物でもよい。たとえば、デカペプチド、YEFRDRMRTHは、上記した、酸性−芳香性−塩基性三量体配列、EFR、またはefrあるいはrfe、すなわち、d−アミノ酸残基またはE−(4−フェニル)−FR、または修飾、合成あるいは半合成アミノ酸残基を含む。
【0044】
RCTの分子メディエータは、経路を直接および/または間接的に増強(たとえば、コレステロール流出物の増加)して血清コレステロールを減少させるという共通の態様を共にしているが、好ましいメディエータは、とりわけ、1つ以上の下記特定の機能的属性を発現してもよい。すなわち、脂質の存在下あるいは非存在下で両親媒性螺旋構造またはそのサブ構造を形成する能力、脂質類を結び付ける能力、プレ−β−様またはHDL−様複合体を形成する能力、LCATを活性化する能力、および、血清HDL濃度を上昇させる能力である。
【0045】
今日まで、アポA−Iアゴニストを設計する努力は、22−mer単位構造に向けられてきた。たとえば、Anantharamaiahらの「コンセンサス22−mer」、1990、Arteriosclerosis 10(1):95−105;Venkatachalapathiら、1991、Mol.Conformation and Biol.Interactions、Indian Acad.Sci.B:585−596、があり、これは、脂質の存在下で、両親媒性α−螺旋を形成することができる(たとえば、米国特許第6,376,464号はコンセンサス22−merの修飾体からペプチド模倣剤を誘導することに関する項参照)。本発明の好ましい態様によれば、複数の原型アポA−Iのα−螺旋状ドメインの任意のものからでも誘導される、比較的短い(約10個未満のアミノ酸残基)両親媒性α−螺旋状のサブ構造が合成され、RCTのメディエータとしてテストされた。22−merを超えるものと比較するとこのような比較的短いペプチドを使用すると、いくつかの利点がある。たとえば、RCTのより短いメディエータは、製造するのが簡単でかつ費用がかからない。これらは化学的および構造的により安定である。好ましい構造体は比較的固さを保っている。ペプチド鎖の中で分子内相互作用がほとんどあるいは全くない。より短いペプチドは、経口での可能性がより高い。これらのより短いペプチドの複数のコピーが、より抑制された大きなペプチドと同じ効果を生むHDLやLDLに結合された。アポA−I多機能性は、その複数のα−螺旋状のドメインに寄与するところであろうが、例えアポA−Iの単一の機能、たとえばLCAT活性化、であっても、1つ以上のα−螺旋状のドメインによる冗長な方法で介在することができるということも可能である。したがって本発明の好ましい態様おいて、アポA−Iの複数の機能は、単一サブドメインに関する、開示されたRCTのメディエータによって模倣されてもよい。
【0046】
アポA−Iの3つの機能的特長が、アポA−Iアゴニスト設計のための主たる判断基準として広く受け入れられている。(1)リン脂質と結合する能力、(2)LCATを活性化する能力、および(3)細胞からのコレステロールの流出を助長する能力である。コレステロール転送および代謝経路のいくつかを図30に示す。本発明のいくつかの態様によるRCT分子メディエータは、最後の機能的特長、すなわちRCTを増強する能力だけを発揮してもよい。しかし、よく見過ごされるが、アポA−Iの極めて少ない他の特徴は、アポA−Iを治療行為のための特に興味をそそる標的とする。たとえば、アポA−Iは、受容体−介在プロセスによって肝臓からのコレステロール流出を導き、そしてドレイン反応によるプレ−p−HDL(抹消組織からのコレステロールの第1受容体)産生の調子を整える。しかしながら、これらの特徴は、アポA−I模倣分子の将来有用性を広げることを可能にする。このアポA−Iの模倣機能の観察への全く新しい取組みが、ここで開示される、ペプチドまたはアミノ酸誘導小分子の用途を、間接RCT(たとえば、肝臓への流出先を変更することによって、循環からLDLを途中で押え除去する)ばかりでなく、直接RCT(HDL経路を経由する)をも促進することを可能にする。たとえば図30参照。間接RCTの増強を可能にするために、本発明の分子メディエータは、好ましくは(たとえば、肝臓リポタンパク質結合サイト用のリガンドとしての役目をはたすために)、リン脂質と連合でき、肝臓に結合できるであろう。
【0047】
したがって、本発明へ導く研究努力の目的は、優先的な脂質結合の確認を発揮し、直接および/または間接コレステロール逆輸送を助長することによって、肝臓へのコレステロールの流出を増加し、血漿リポタンパク質プロフィールを改善し、次いでアテローム性動脈硬化部の進行を予防しおよび/または回帰さえ進めさせる短い(約10個未満のアミノ酸残基)、安定なRCTのペプチドメディエータの同定、設計および合成であった。
【0048】
我々のペプチド設計戦略は、(1)アポA−Iの両親媒性α−螺旋ドメイン内の比較的短い(3〜15個のアミノ酸残基)相互領域を決定すること、(2)我々の最初のペプチドの産生を正確なアポA−I配列に置くこと、(3)アポA−Iの両親媒性α−螺旋ドメ
インの究明から浮かび上がる一般規則に従って、ペプチドを設計すること、(4)インビトロおよびインビボで、両親媒性α−螺旋状の第2構造とアポA−I活性の両方をまだ発揮する最も短いペプチド中のペプチド配列長さの下限、臨界的なアミノ酸残基、および正確なトポグラフィを定義すること、(5)定義された物理的・化学的特性を、より小さな小分子−様ペプチドおよび/または上記した分子モデルに関わる他の小さい分子の設計に組み入れることであった。
【0049】
本発明のRCTメディエータは、安定な固まりまたは単位錠剤で製造することができ、たとえば、凍結乾燥製品は、生体内で使用される前にあるいは改質する前に再構成できる。本発明は、医薬製剤および、高脂血症、高コレステロール血症、冠状動脈性心臓病、アテローム、などの他、敗血症性ショックを引き起こす内毒素症のような状態の治療における使用も含む。
【0050】
本発明のRCTメディエータが、血漿のHDLおよびLDL成分と結びつき、HDLおよびプレ−β−HDL粒子の濃度を増やすことができ、LDLの血漿濃度を低下することができることを実証する実施例によって、本発明を説明する。したがって、RCTを直接および間接に増強する。本発明のRCTメディエータは、ヒト肝細胞(HepG2細胞)中のヒトLDL介在コレステロール蓄積を増やす(図24に示すように)。該RCTのメディエータは、PLTPを活性化し、したがってプリ−β−HDL粒子の形成を進める点においてもまた効果的である。HDLコレステロールの増加は、RCTにおいてLCATが関与しているという間接的な証拠となった。(LCAT活性化は直接示されていない(試験管内))。動物モデルにおける、本発明のRCTメディエータの生体内での使用は、血清HDL濃度を上昇する結果となる。
【0051】
以下、RCTのメディエータの組成および構造、構造的および機能的特長;固まりあるいは単位錠剤の製造方法、および使用方法を説明することによって、本発明をさらに詳しく説明する。
【0052】
ペプチド構造および機能
本発明のRCTメディエータは、一般的に、ペプチドまたはその類似体であり、アポA−Iの活性を模倣する。該RCTのメディエータは、約10未満のアミノ酸残基またはその類似体で構成される。いくつかの実施形態において、ペプチド内の少なくとも1つのアミン結合が置換アミド、アミドの同配体またはアミド模倣体と置換している。さらに、1つ以上のアミド結合が、ペプチドの構造および活性には重篤な支障は与える部分ではないが、ペプチド模倣薬またはアミド模倣薬部分と置換しても良い。適切なアミド模倣薬部分として、たとえば、Olsonら、1993、J.Med.Chem.36:3039−3049に記載されたものが挙げられる。
【0053】
ペプチド好ましい特徴は、両親媒性α−螺旋またはサブ構造を形成する能力を持つことである。両親媒性とは、α−螺旋が、その長軸に沿って配向する対立する親水性面と疎水性面を持つ、すなわち、螺旋の一面は主に親水性側鎖を突出させ、一方反対の面は主に疎水性側鎖を突出させていることを意味する。
【0054】
後にさらに詳しく説明するが、ペプチドの変質体あるいは変異体と併せて、特定のアミノ酸残基は、他のアミノ酸残基と置換することができ、ペプチドによって形成されている螺旋の親水性面および疎水性面が、それぞれ完全な親水性アミノ酸および疎水性アミノ酸を構成していなくてもよい。したがって、本発明のペプチドによって形成された両親媒性α−螺旋という場合、用語「親水性面」というのは、総合的なネット親水性特性を持つ螺旋の面のことを言うと理解すべきである。特定の説によって拘束されるつもりはないが、ペプチドによって形成された、両親媒性の螺旋状構造の特定の構造および/または物理的
特性は、それらの活性に影響を与え得ると見られている。これらの特性として、両親媒性の程度、総合的な疎水性、平均疎水性、疎水角と親水角、疎水性モーメント、平均疎水性モーメントおよびα−螺旋の正味荷電などが挙げられる。両親媒性の程度(疎水性の非対称性の度合い)は、螺旋の疎水性モーメント(μH)を計算することによって、従来の方法で計量することができる。特定のペプチド配列のpHを計算する方法は当業界で周知であり、たとえば、Eisenberg、1984、Ann.Rev.Biochem.53:595−623に記載された方法がある。特定のペプチドで得られる実際のpHは、ペプチドを構成するアミノ酸残基の総数に依るであろう。従って、違う長さのペプチドのpHを直接比較するのは概して有益ではない。
【0055】
異なる長さを持つペプチドの両親媒性は平均疎水性モーメント(<μH>)を使用して、直接比較することもできる。平均疎水性モーメントは、螺旋内の残基の数によってpHを割ることで求めることができる(すなわち、<μH>=μH/N)。一般的に、好ましいペプチドは、Eisenbergの正規に合意された疎水性スケール(Eisenberg、1984、J.Mol.Biol.179:125−142)を使用して測定した<μH>が、0.45から0.65の範囲を示し、本発明の範囲内に入ると考えられる。<μH>の好ましい範囲は、0.50〜0.60である。
【0056】
ペプチドの総合的あるいは合計疎水性(Ho)は、ペプチド中の各アミノ酸残基の疎水性の代数和を取って、簡単に計算することができる。
【0057】
【数1】

【0058】
(式中、Nはペプチド中のアミノ酸残基の数であり、Hiはアミノ酸残基の疎水性である。)平均疎水性(<Ho>)は、疎水性をアミノ酸残基の数で割った値である(すなわち、<Ho>=Ho/N)。一般的に、ペプチドは、Eisenbergの正規に合意された疎水性スケール(Eisenberg、1984、J.Mol.Biol.179:125−142)を使用して測定した平均疎水性が−0.050から−0.070の範囲内を示し、本発明の範囲内に入り、好ましい平均疎水性の範囲は−0.030から−0.055である。
【0059】
両親媒性螺旋の疎水性面(Hopho)の合計疎水性は、下記の式で表される疎水角に分類される、疎水性アミノ酸残基の疎水性の合計を取ることによって得ることができる。
【0060】
【数2】

【0061】
(式中、Hiは先に定義した通り、NHは疎水性面の疎水性アミノ酸の合計数である。)疎水性面の平均疎水性(<HoPho>)は、HoPho/NH(式中、NHは上で定義した通り)である。一般的に、ペプチドは、Eisenbergの合意された疎水性スケール(Eisenberg、1984、前述、Eisenberg、1982、前述)を使用して測定した<HoPho>が0.90〜1.20の範囲を示し、本発明の範囲内に入ると考えられる。<HoPho>の好ましい範囲は0.94〜1.10である。
【0062】
疎水角(pho角)は、一般的に、ペプチドがSchiffer−Edmundson螺旋円板図(すなわち、円盤上にある隣接する疎水性残基の数×20°)中に配置されている時、最長のひと続きの疎水性アミノ酸残基が覆う角または円弧であると定義される。親水角(phi角)は360°とpho角との差である(すなわち、360°−pho角)。当業者であれば、ペプチドのアミノ酸残基の数において、pho角とphi角は、幾分依存するであろうことは理解するであろう。
【0063】
酸性、芳香性および塩基性領域を持つ両親媒性ペプチドと分子メディエータは、本発明の好ましい態様に従って、それらの疎水性面が脂質部位のアルキル鎖の方角を示すことにより、リン脂質を結合することが期待される。疎水性クラスタは、本発明のペプチドのための充分に強い脂質結合親和性を生み出すと見られている。また、脂質結合は、LCAT活性化にとって必要条件であるので、疎水性クラスタはLCAT活性を増強する得るとみられている。さらに、芳香族残基は、しばしば、脂質へのペプチドおよびタンパク質の固着を改善することが見受けられる(De Kruijff、1990、Biosci.Rep.10:127−130、O’NeilとDe Grado、1990、Science250:645−651、Blondelleら、1993、Biochim.Biophys.Acta 1202:331−336)。
【0064】
好ましい実施形態において、本発明のペプチドと脂質との間の相互作用が、ペプチド−脂質複合体の形成へと導く。得られる複合体のタイプは(コミ細胞、円盤、小胞または多層)は、脂質:ペプチドモル比によって決まり、コミ細胞は、一般的に低い脂質:ペプチドモル比で、円盤および小胞または多層複合体は、増加する脂質:ペプチドモル比で形成される。この特徴は、両親媒性ペプチド(Epand、The Amphipathic
Helix、1993)およびアポA−I(Jones、1992、Structure and Function of Apolipoproteins、第8章、pp.217−250)として記載がある。該脂質:ペプチドモル比は、また、複合体の大きさおよび組成も決定する。
【0065】
アポA−Iの一般的に受け入れられている構造モデルにおいて、両親媒性α−螺旋は、HDLの円盤状の端の周りに密集している。このモデルにおいて、螺旋は、その疎水性面を脂質アシル鎖の方角を向いて一直線に並んでいると推測される(Brasseurら、1990、Biochim.Bioplays.Acta1043:245−252)。螺旋は、逆平行で並び、螺旋どうしの間の共同的効果が、円盤状のHDL複合体の安定性に寄与していると考えられる(Brasseurら、前述)。HDLの円盤状複合体の安定性に寄与しているひとつの要因は、アポA−I中の酸性残基と塩基性残基との間のイオン性相互作用の存在による分子間塩架橋の形成、または逆平行螺旋に隣接する残基間の水素結合であると提案されているが、このような分子間相互作用は分子メディエータの活性に必ずしも必要ではない。したがって、RCTのいくつかのメディエータの付加的な特徴として、疎水性面が同じ方向を向いて整列している場合、メディエータが脂質に結合している場合のように、互いに分子間水素結合を形成する能力が挙げられる。
【0066】
分子間水素結合、またはそれぞれ螺旋のiおよびi+3の位置で起こっている酸性および塩基性残基間の塩架橋形成は、螺旋構造を安定化する(Marquseeら、1985、PNAS.USA84(24):8898−8902)ことは広く支持されている。しかしながら、このような分子間相互作用は、本発明の比較的小さな分子メディエータにおいてはわずかである。
【0067】
以下で用いられているように、遺伝的にコードされたL−光学異性体アミノ酸の略語は、従来式のものであり、以下の通りである。D−アミノ酸は小文字、たとえば、D−アラ
ニン=aと指定する。
【0068】
【表1】

【0069】
ペプチドメディエータ中の特定のアミノ酸残基は、重大な害を与えることなく、他のアミノ酸残基と置換することができ、多くの場合、ペプチドの活性を増強さえする。したがって、構造体内の少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基またはその誘導体および/または類似体で置換RCTのペプチドメディエータの変化体あるいは突然変異体も、本発明によって予期しえる。本発明のペプチドの活性に影響を与える特徴のひとつとして、両親媒性および前記他の特性を発現する、脂質の存在下でα−螺旋を形成する能力が挙げられ、本発明の好ましい実施形態において、アミノ酸置換は通例のもの、すなわち、アミノ酸残基の置換はアミノ酸残基が置換されるのと似た物理特性および化学特性を持つことになることは理解されるであろう。
【0070】
通例のアミノ酸置換を決定する目的のために、アミノ酸は便宜上2つのメインカテゴリー、アミノ酸側鎖の物理−化学的特長による親水性および疎水性に分類される。これら2つのカテゴリーは、さらに、アミノ酸側鎖の特徴をよりはっきりと定義するサブカテゴリーに分類できる。たとえば、親水性アミノ酸のクラスとして、さらに、酸性、塩基性および極性アミノ酸に再分類できる。疎水性アミノ酸のクラスとして、さらに、非極性および芳香族アミノ酸に再分割できる。アポA−Iを定義するアミノ酸の種々のカテゴリーの定義は以下の通りである。
【0071】
用語「親水性アミノ酸」は、Eisenbergら、1984、J.Mol.Biol.179:125−142の規格化された合意疎水性が0未満の疎水性を発現するアミノ酸をいう。遺伝的にコードされた親水性アミノ酸として、Thr(T)、Ser(S)、His(H)、Glu(E)、Asn(N)、Gin(Q)、Asp(D)、Lys(K)およびArg(R)が挙げられる。
【0072】
用語「疎水性アミノ酸」は、Eisenbergら、1984、J.Mol.Biol.179:125−142の規格化された合意疎水性が0を超える値を持つ疎水性を発現するアミノ酸をいう。遺伝的にコードされた疎水性アミノ酸として、Pro(P)、Ile(I)、Phe(F)、Val(V)、Leu(L)、Trp(W)、Met(M)、Ala(A)、Gly(G)およびTyr(Y)が挙げられる。
【0073】
用語「酸性アミノ酸」は、側鎖のpK値が7未満である親水性アミノ酸をいう。酸性アミノ酸は、典型的には、水素イオンを失ったことによる生理学的pHで、負に帯電した側鎖を持つ。遺伝的にコードされた酸性アミノ酸として、Glu(E)およびAsp(D)が挙げられる。
【0074】
用語「塩基性アミノ酸」は、側鎖のpK値が7を超える値を持つ親水性アミノ酸をいう。塩基性アミノ酸は、典型的には、ヒドロニウムイオンの関連による生理的pHで、正に帯電した側鎖を持つ。遺伝的にコードされた塩基性アミノ酸として、His(H)、Arg(R)およびLys(K)が挙げられる。
【0075】
用語「極性アミノ酸」は、生理的pHで帯電していない側鎖を持つが、2つの原子によって共有されている電子対が、前記原子中の1つによってより近くに保たれている結合を少なくとも1つ持つ親水性アミノ酸をいう。遺伝的にコードされた極性アミノ酸として、Asn(N)、Gin(Q)、Ser(S)およびThr(T)が挙げられる。
【0076】
用語「非極性アミノ酸」は、生理的pHで帯電していない側鎖を持ち、2つの原子によって共有されている電子対が、一般的に、2つの原子(たとえば側鎖が極性でない)のどちらかによって同等に保たれている構造を持つ疎水性アミノ酸をいう。遺伝的にコードされた非極性アミノ酸として、Leu(L)、Val(V)、Ile(I)、Met(M)、Gly(G)およびAla(A)が挙げられる。
【0077】
用語「芳香族アミノ酸」は、芳香族またはヘテロ芳香族環を少なくとも1つ有する側鎖を持つ疎水性アミノ酸をいう。芳香族またはヘテロ芳香族環として、−OH、−SH、−CN、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、−NO、−NH2、−NHR、−NRR、−C(O)R、−C(O)OH、−CO)OR、−C(O)NH2、−C(O)NHR、−C(O)NRRなど〔式中、各Rは独立して、(Cl−C6)アルキル、置換(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、置換(Cl−C6)アルケニル、(Cl−C6)アルキニル、置換(Cl−C6)アルキニル、(C5−C20)アリール、置換(C5−C20)アリール、(C6−C26)アルカリール、置換(C6−C26)アルカリール、5〜20員環ヘテロアリール、置換5〜20員環ヘテロアリール、6〜26員環アルクヘテロアリールまたは置換6〜26員環アルクヘテロアリールである〕のような置換基の1つ以上が挙げられる。遺伝的にコードされた芳香族アミノ酸として、Phe(F)、Tyr(Y)およびTrp(W)が挙げられる。
【0078】
用語「脂肪族アミノ酸」は、脂肪族炭化水素側鎖を持つ疎水性アミノ酸をいう。遺伝的にコードされた脂肪族アミノ酸として、Ala(A)、Val(V)、Leu(L)およびIle(I)が挙げられる。
【0079】
アミノ酸残基Cys(C)は、他のCys(C)残基または他のスファニル含有アミノ酸とともにジスルフィド結合を形成できるという点で異例である。還元された、遊離−SHまたは酸化されたジスルフィド結合形成体中のペプチド中に存在するCys(C)残基(および他の−SH含有側鎖を持つアミノ酸)の能力は、Cys(C)残基がネット疎水性または親水性特性をペプチドに与えるかどうかに影響する。Cys(C)が正規に合意
された疎水性スケール(Eisenberg,1984、supra)による疎水性が0.29を発揮しても、本発明の目的に関して、前記一般の分類にかかわらず、Cys(C)は、極性親水性アミノ酸として分類されると理解される。
【0080】
当業者には認識されているであろうが、上記のカテゴリーは相互に排除しあうものではない。したがって、2以上の物理−化学特性を発揮する側鎖を持つアミノ酸は、両方のカテゴリーに含まれうる。たとえば、芳香族部位をもつアミノ酸側鎖であって、さらにTyr(Y)のような極性置換基で置換されているものは、芳香性・疎水性特性と、極性または親水性特性とを両方発揮し、したがって、芳香族と極性の両方のカテゴリーに含まれる。どのようなアミノ酸でも当業者であれば、特に本明細書の詳細な説明に従って、適切なカテゴリー化を認識するであろう。
【0081】
「螺旋破壊」アミノ酸と呼ばれる特定のアミノ酸残基は、螺旋の内部に含まれる場合、α−螺旋の構造を崩壊する傾向がある。そのような螺旋崩壊特性を発揮するアミノ酸残基は、当業界ではよく知られており(たとえば、ChouとFasman、Ann.Rev.Biochem.47:251−276参照)、Pro(P)およびGly(G)が挙げられ、さらに、全てのD−アミノ酸も可能性がある(L−ペプチド内に含まれる場合、逆に言えば、L−アミノ酸がD−ペプチド内に含まれる場合、螺旋構造を崩壊する)。これらの螺旋崩壊アミノ酸残基は、Gly(G)を除き上記したカテゴリーに分類されるが、これらの置換基は、一般的に、螺旋内部位置にあるアミノ酸残基を置換するためには使用されず、一般的に、ペプチドのN−末端および/またはC−末端の1〜3個のアミノ酸残基を置換するために使用される。
【0082】
上記カテゴリーは遺伝的にコードされたアミノ酸の観点から例示したが、アミノ酸置換基は、遺伝的にコードされたアミノ酸に限定される必要はなく、特定の実施形態においては、限定されないのが好ましい。実際、好ましいRCTのペプチドメディエータの多くが、遺伝的にコードされていないアミノ酸を含む。したがって、天然素材である遺伝的にコードされたアミノ酸に加えて、RCTのペプチドメディエータにおけるアミノ酸残基は、天然素材であるがコードされていないアミノ酸および合成アミノ酸で置換されてもよい。
【0083】
RCTのペプチドメディエータの有用な置換基を提供する、いくつかの一般的なアミノ酸として、β−アラニン(β−Ala)および3−アミノプロピオン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸(Dpr)、4−アミノ酪酸などの他のω−アミノ酸;α−アミノイソ酪酸(Aib);e−アミノヘキサン酸(Aha);d−アミノ吉草酸(Ava);N−メチルグリシンまたはサルコシン(MeGly);オルニチン(Orn);シトルリン(Cit);t−ブチルアラニン(t−BuA);t−ブチルグリシン(t−BuG);N−メチルイソロイシン(MeIle);フェニルグリシン(Phg);シクロへキシルアラニン(Cha);ノルロイシン(Nle);ナフチルアラニン(Nal);4−フェニルフェニルアラニン、4−クロロフェニルアラニン(Phe(4−Cl));2−フルオロフェニルアラニン(Phe(2−F));3−フルオロフェニルアラニン(Phe(3−F));4−フルオロフェニルアラニン(Phe(4−F));ペニシラミン(Pen);1,2,3,4−テトラハイドロイソキノリン−3−カルボン酸(Tic);β−2−チエニルアラニン(Thi);メチオニンスルフォキシド(MSO);ホモアルギニン(hArg);N−アセチルリシン(AcLys);2,4−ジアミノ酪酸(Dbu);2,3−ジアミノ酪酸(Dab);p−アミノフェニルアラニン(Phe(pNH2));N−メチルバリン(MeVal);ホモシステイン(hCys)、ホモフェニルアラニン(hPhe)およびホモセリン(hSer);ヒドロキシプロリン(Hyp)、ホモプロリン(hPro)、N−メチル化アミノ酸およびペプトイド(N−置換グリシン)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
本明細書に特に記載しない他のアミノ酸残基は、本明細書で規定した定義に照らし、該残基の観察される物理的および化学的特性に基づいて、容易に分類することができる。
【0085】
前に定義したカテゴリーに従った一般的にコードされたアミノ酸および一般的にはコードされていないアミノ酸の分類を下記表2にまとめる。表2は、説明のためだけにあるものであり、本明細書に記載のRCTのペプチドメディエータを置換するために使用し得る、余すところのないアミノ酸残基および誘導体のリストを意味するものではないことは、理解すべきである。
【0086】
【表2】

【0087】
本明細書で特に記載していない他のアミノ酸残基も、ここで記載した定義に照らし、観察されるそれらの物理的および化学的特性に基づいて容易に分類できる。
【0088】
ほとんどの場合、CTのペプチドメディエータアミノ酸は、L−光学異性体アミノ酸で置換されるであろうが、置換基はL−光学異性体アミノ酸に限定されない。したがって、「変異」または「変質」型の定義において、L−アミノ酸が、相当するD−アミノ酸(たとえば、L−Arg(R)D−Arg)、あるいは同じカテゴリーまたはサブカテゴリーのD−アミノ酸(たとえば、L−Arg D−Lys)で置き換わった置換基、およびその逆も含む。実際、被験動物への経口投与に適する好ましい実施形態において、ペプチドが少なくとも1つのD−光学異性体アミノ酸で構成されたものが有利である。D−アミノ酸を含むペプチドは、口腔、内臓または血清における分解が、L−アミノ酸だけで構成されたペプチドより、より適切であると考えられる。
【0089】
前述の如く、D−アミノ酸は、内部位置にα−螺旋状L−ペプチドとともに含まれる場合、α−螺旋を崩壊する傾向がある。さらに、RCTのペプチドメディエータのD−アミノ酸全体を構成する特定の変異体は、本明細書で記載するアッセイにおいて、LCAT活性のかなりの低下を発現することが観察されている。結果として、D−アミノ酸は、一般的に、内部L−アミノ酸を置換するためには使用されず、D−アミノ酸置換基は、一般的に、ペプチドのN−末端および/またはC−末端で、1〜3個のアミノ酸残基に限定される。小さなd−アミノ酸ペプチドにおいてこの規則は、RCTに必要な立体構造を獲得するために、HDLまたはLDL関連し得るペプチドの複数のコピーのように、当てはまらない可能性がある。
【0090】
前述の如く、アミノ酸Gly(G)は、ペプチドの内部位置に含まれている場合、一般
的にα−螺旋−崩壊残基として作用する。したがって、Gly(G)は、一般的に、α−螺旋−崩壊残基として考えられているが、RCTのペプチドメディエータの内部位置では、アミノ酸を置換するために使用することができる。好ましくは、ペプチドの中心の約±1螺旋以内に位置する内部残基(特に偶数のアミノ酸で構成されるペプチド)が、Gly(G)で置換されている。さらに、ペプチド中の内部アミノ酸残基の1個のみのGly(G)で置換されているのも好ましい。
【0091】
アポA−Iの天然構造体は、脂質結合と関連するほうに作用すると考えられている(Nakagawaら.、1985、J.Am.Chem.Soc.107:7087−7092、Anantharamaiahら、1985、J.Biol.Chem.260:10248−10262、Vanlooら、1991、J.Lipid Res.32:1253−1264、Mendezら、1994、J.Clin.Invest.94:1698−1705、Palgunariら、1996、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.16:328−338;Demoorら、1996、Eur.J.Biochem.239:74−84)螺旋状の単位である。したがって、本発明には、本明細書で記載されている螺旋状のドメインの、二量体、三量体、四量体およびより高いオーダーのポリマー(「多重体」)で構成されているRCTのメディエータもまた含まれる。そのような多量体として、ネットワークが分岐されたタンデム繰り返しの形、またはその混合物が挙げられる。RCTのペプチドメディエータは、他のものと直接接してもよいし、1個以上のリンカーで分離されていてもよく、あるいは、独立して使用され、多重体化学量論的に、脂質と結びついてもよい(たとえば、メディエータ:脂質が2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、これ以上高い化学量論的比も可能である)。
【0092】
多重体を構成するRCTのペプチドメディエータは、アポA−Iのペプチド配列の領域、アポA−I配列の類似体、アポA−Iの変異体、アポA−Iの切取られたまたは内部的に削除された型、アポA−Iの拡張型および/またはこれらの混合物で構成されてもよい。RCTのペプチドメディエータの切取られた型は、RCTのメディエータのN−および/またはC−末端から1つ以上のアミノ酸を削除して得る。内部的に削除された型は、RCTのペプチドメディエータ内の内部位置から1つ以上のアミノ酸を削除して得る。内部アミノ酸残基は、従来の残基であってもよいし、従来の残基でなくてもよい。当業者であれば、RCTのペプチドメディエータからの内部アミノ酸残基削除は、螺旋の親水性−疎水性界面の削除点での回転を起こさせることは理解するであろう。このような回転は結果として得られる螺旋の両親媒性特性を大きく変化させ得るので、本発明の好ましい実施形態において、アミノ酸残基は、螺旋の長軸全体に沿った親水性−疎水性界面の配置を実質的に保つように削除される。
【0093】
リンカー
RCTのペプチドメディエータは、頭−尾形(すなわち、N−末端とC−末端)、頭−頭形(すなわち、N−末端とN−末端)、尾−尾形(すなわち、C−末端とC−末端)、あるいはこれらの混合の形で結合あるいはリンクすることができる。リンカーLLは、2つのペプチドを他の1つに共有結合的に結合しうる2官能性の分子であればすべて使用しうる。したがって、適切なリンカーとして、官能基がペプチドのN−および/またはC−末端に共有結合で付加可能である2官能性単量体が挙げられる。ペプチドのN−またはC−末端の結合として好ましい官能基、同様にこのような共有結合形成に効果的な化学薬品は、当業界でよく知られている。
【0094】
リンカーは、多量体の所望の特性に応じて可撓性、剛性、半剛性であってもよい。適切なリンカーとして、たとえば、ProまたはGly、または約2〜約5、10、15、20またはそれ以上のアミノ酸を含むペプチドセグメントのようなアミノ酸残基、H2N(
CH2nCOOH(式中、nは1から12の整数である)のような2官能性有機化合物などが挙げられる。そのようなリンカーの例示、そのようなリンカーの製造方法、およびそのようなリンカーのペプチドへの導入方法は、当業界でよく知られている(たとえば、Hunigら、1974、Chem.Ber.100:3039−3044、Basakら、1994、Bioconjug.Chem.5(4):301−305)参照)。
【0095】
選択的に開裂され得るペプチドおよびオリゴヌクレオチドリンカー、および該リンカーの開裂方法はよく知られ、当業者には容易に明らかになるであろう。選択的に開裂し得る適切な有機化合物リンカーも、当業者に容易に明らかになるであろう。たとえば、本明細書の記載ばかりでなく、国際公開94/08051号記載のものも含まれる。
【0096】
充分な長さおよび可撓性を持つリンカーとして、Pro(P)、Gly(G)、Cys−Cys、H2N−(CH2nCOOH(式中、nは1〜12、好ましくは4〜6)、H2N−アリール−COOH、および炭水化物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0097】
あるいは、天然アポリポタンパク質は逆平行螺旋状のセグメント間の共同的結合を容認するので、一次配列において、天然アポリポタンパク質の隣接する螺旋に結合するペプチドセグメントに対応するペプチドリンカー、たとえば、アポA−I、アポA−II、アポA−IV、アポC−I、アポC−II、アポC−III、アポD、アポEおよびアポJが、便宜上ペプチドを結合するのに用いられる。これらの配列は当業界ではよく知られている(たとえば、Rosseneuら、「Analysis of the Primary and of the Secondary Structure of the Apolipoproteins」、In:Structure and Function of Lipoproteins、Ch.6、159−183、CRC Press、Inc.、1992参照)。
【0098】
逆平行螺旋状セグメントの分子間水素結合または塩橋の形成を容認する他のリンカーとして、β−ターンおよびγ−ターンのようなペプチドリバースターン、ペプチドβ−ターンおよび/またはγ−ターンの構造を模倣する有機分子が挙げられる。一般的に、リバースターンは、単一ポリペプチド鎖を、逆平行性のβ−シートまたは逆平行性のα−螺旋状の構造の領域に適合させるように、ポリペプチドの方向を逆転させるペプチドのセグメントである。β−ターンは一般的に4個のアミノ酸残基で、γ−ターンは一般的に3個のアミノ酸残基で構成される。
【0099】
あるいは、リンカー(LL)は、ペプチドβ−ターンまたはγ−ターンの構造を模倣する有機分子または部位を含んでもよい。そのようなβ−ターンおよび/またはγ−ターンは模倣部位、およびそのような部位を含むペプチドの合成方法は、当業界でよく知られ、なかでも、Giannis and Kolter、1993、Angew.Chem.Intl.Ed.Eng.32:1244−1267、Kahnら、1988、J.Molecular Recognition1:75−79、Kahnら、1987、Tetrahedron Lett.28:1623−1626に記載されているものが含まれる。.
単一リンク部位に結合する螺旋状のセグメントは、同様の末端を介して結合する必要はない。実際、いくつかの実施形態において、螺旋状のセグメントは単一リンク部位に結合し、逆平行の形において配列されている。すなわち、螺旋のいくつかはそのN−末端介して、他はC−末端を介して結合している。
【0100】
螺旋状の部位は、リンク部位に直接結合することもでき、また、前記の如く、1つ以上の2官能性リンカー(LL)を用いてリンク部位から間を空けてもよい。
【0101】
ネットワークのノード数は、一般的に、螺旋状セグメントの所望の総数に依るが、典型的には、約1〜2である。もちろん、所望の螺旋状セグメントおよびネットワークがより高いオーダのリンク部位を持つものは、所定の数が数ノードになることは受け入れられるであろう。
【0102】
ネットワークは、同一のオーダ、すなわち、全てのノードがたとえば、3官能あるいは4官能リンク部位であるネットワークであってもよいし、ノードがたとえば、3官能性と4官能性リンク部位の混合物であるネットワークであってもよい。もちろん、単一オーダネットワークにおいてさえ、リンク部位は同一である必要はないことは理解される。第3オーダネットワークは、たとえば、2、3、4またはそれ以上の異なった3官能性リンク部位を使用してもよい。
【0103】
線状多重体と同様に、分岐状ネットワークを含む螺旋状セグメントも同一であってもよいが、その必要はない。
【0104】
構造および機能の分析
該多量体も含む本発明のRCTメディエータの構造と機能は、活性化合物を選択するために分析されうる。たとえば、ペプチドまたはペプチド類似体は、α−螺旋を形成する能力、脂質に結合する能力、脂質と複合体を形成する能力、LCATを活性化する能力、コレステロール流出を進める能力が分析されうる。
【0105】
ペプチドの構造および/または機能を分析する方法およびアッセイは、当業界でよく知られている。好ましい方法を以下の実施例に記載する。たとえば、後述する円偏光二色性(CD)および核磁気共鳴(NMR)分析は、ペプチドまたはペプチド類似体の構造、特に脂質の存在下でのヘリシティの度合いを分析するために使用することができる。脂質に結合する能力は、後述する光分光測定法を使用して測定することができる。ペプチドおよび/またはペプチド類似体のLCATを活性化する能力は、後述するLCAT活性化を使用して容易に測定することができる。後述するインビトロおよびインビボアッセイは、半減期、分布、コレステロール流出およびRCT上の効果を評価するために使用することができる。
【0106】
好ましい実施形態
本発明のRCTメディエータを好ましい実施形態を用いてさらに説明する。
【0107】
1つの好ましい実施形態において、3つの独立した領域:酸性領域、芳香性または親油性領域、および塩基性領域を持つアミノ酸系組成物を含む分子がある。したがって、EFR、またはerfあるいはfreのような、この好ましい実施形態による三量体ペプチドは、酸性アミノ酸残基、芳香族または親油性残基および塩基性残基を含む。特定の領域の他の領域に関する相対的位置は、分子メディエータ間で変化し、該分子は各分子内の3つの領域の位置にかかわらず、RCTを介在する。EFRまたはefrのような三量体ペプチドを含むメディエータにおいては、該三量体は、天然D−またはL−アミノ酸、アミノ酸類似体およびアミノ酸誘導体で構成されていてもよい。
【0108】
他の好ましい実施形態において、三量体の芳香性領域は酸性または塩基性側鎖を持つニコチン酸で構成されていてもよい。
【0109】
他の好ましい実施形態において、三量体の芳香性領域は、4−フェニルフェニルアラニンで構成されていてもよい。
【0110】
他の好ましい変異体において、アミノ酸系三量体の構造を含む分子メディエータは、RCTの分子メディエータの物理化学的特性を改善し、脂肪または親油性材料の体への自然なあるいは活性化した転送(吸収)システムを巧みに利用するために、任意で、一端または両端のアミノまたはカルボキシ末端上の親油性基で覆われ得る。覆う基は、DまたはL光学異性体または非−光学異性体分子または基でもよい。好ましい実施形態において、N−末端を覆う基は、アセチル、フェニルアセチル、ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル、ナフチル、置換ナフチル、f−MOC、ビフェニル、置換フェニル、置換複素環類、アルキル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、縮合シクロアルキル、飽和ヘテロアリール、置換飽和ヘテロアリールなどからなる群から選択される。C−末端は、RNH2(式中、Rは、ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル、ナフチル、置換ナフチル、f−MOC、ビフェニル、置換フェニル、置換複素環類、アルキル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、縮合シクロアルキル、飽和ヘテロアリール、置換飽和ヘテロアリールなどである)のようなアミンで覆われているのが好ましい。
【0111】
1つの好ましい実施形態において、本発明のRCTメディエータは、下記表3に記載するペプチドおよびペプチド 誘導体からなる群から選択される。表中、(特に断らない限り)ペプチドは全てN−末端上のアセチル基およびC−末端上のアミドによって覆われている。
【0112】
【表3】

【0113】
【表4】

【0114】
【表5】

【0115】
【表6】

【0116】
遺伝的にコードされたアミノ酸のD−光学異性体の略語は、表1に示された1文字記号の小文字体である。たとえば、「R」はL−アルギニンを指し、「r」はD−アルギニンを指す。特に断らない限り、(たとえば「OH」)、N−末端はアセチル化され、C−末端はアミド化されている。
【0117】
PhAcはフェニルアセチル化を表す。
【0118】
Pivはピボリル化を表す。
【0119】
1−Napおよび2−Napは、ナフトエ酸で覆われていることを表す。
【0120】
Fmocは、9−フルオレニルメチルオキシカルボニルで修飾されたN−末端を表す。
【0121】
NAはニコチン酸を表す。
【0122】
BIPはビフェニルアラニンを表す。
【0123】
Isoxazoleは、5−メチル−イソオキサゾール−3−カルボ酸誘導体を表す。
【0124】
アミノ酸置換基は、遺伝的にコードされたアミノ酸にされる必要はなく、特定の実施形態においては好ましくない。したがって、自然に存在する遺伝的にコードされたアミノ酸に加えて、RCTのペプチドメディエータ中のアミノ酸残基は、自然に存在するコードされていないアミノ酸および合成アミノ酸で置換されてもよい。
【0125】
合成方法
本発明のペプチドは、事実上、任意の公知のペプチドの製造技術を使って製造してよい。たとえば、ペプチドは、従来の段階的溶液合成、固相ペプチド合成または組み換えDNA技術を使用して製造してもよい。
【0126】
RCTのペプチドメディエータは、従来の段階的溶液合成または固相合成(たとえば、Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins、Williamsら、Eds.、1997、CRC Press、Boca Raton Fla.、 およびこれに挙げられている参考文献、Solid Phase Peptide Synthesis:A Practical Approach、Atherton & Sheppard、Eds.、1989、IRL Press、オックスフォード、イングランドおよびこれに挙げられている参考文献参照)。図1参照。
【0127】
従来の固相合成において、第1アミノ酸の結合は、そのカルボキシ末端(C−末端)と誘導樹脂との化学的反応を伴い、オリゴペプチドのカルボキシ−末端を形成する。アミノ酸のアルファ−アミノ末端は、t−ブトキシ−カルボニル基(t−Boc)または9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基(F−Moc)で、典型的にブロックされ、アミノ基を保護している。さもなければ、これは、カップリング反応において反応してまう。アミノ酸の側鎖基がもし反応性であれば、これもまた、エーテル、チオエーテル、エステルおよびカルバメートの形の種々のベンジル誘導する保護基によってブロックされる(あるいは保護される)。
【0128】
次のステップおよび続いて起こる繰り返しサイクルは、アミノ−末端(N−末端)樹脂−結合アミノ酸(またはペプチド鎖の末端残基)の脱ブロックであり、これによりアルファ−アミノブロック基を取り除き、次のブロックされたアミノ酸の化学的結合(カップリング)に続く。この過程は、利益のある完全なペプチド鎖を合成するためには、何度となくサイクルの繰り返しが必要である。カップリングおよびブロッキング工程の後、それぞれ、樹脂−結合ペプチドは完全に洗浄され、次の工程に進む前に全ての残存する試薬は取り除かれる。固形の支持粒子は、任意の所定のステップでも試薬の除去を容易にし、樹脂および樹脂−結合ペプチドは、多孔性の開口部を持つカラムまたは装置に保持されながら、容易にろ過され、洗浄され得る。
【0129】
合成されたペプチドは酸触媒(典型的には、フッ化水素酸またはトリフルオロ酢酸を伴う)によって樹脂から分離され、ペプチドを開裂し、樹脂からそのC−末端アミノ酸上アミドまたはカルボキシ基を放つ。アシドリシス分解は、また、合成されたペプチド中のアミノ酸の側鎖から保護基を取り除くことも行う。最終的なペプチドは、次いで、様々な任意のクロマトグラフ法の中の1つによって精製され得る。
【0130】
好ましい実施形態によれば、RCTのペプチドおよびプチド誘導体メディエータは、Na−Fmoc化学での固相合成方法によって合成された。Na−Fmoc保護アミノ酸、RinkアミドMBHA樹脂およびWang樹脂はNovabiochem(サンディエゴ、カリフォルニア)またはChem−Impex Intl(ウッドデール、イリノイ)
から購入した。他の試薬および溶剤は、下記の供給源:トリフルオロ酢酸(TFA)、アニソール、1,2−エタンジチオール、チオアニソール、ピペリジン、 無水酢酸、2−ナフトエ酸およびピバロイック酸(Aldrich、ミルウォーキー、ウィスコンシン)、HOBtおよびNMP(Chem−Impex Intl、ウッドデール、イリノイ)、ジクロロメタン、メタノールおよびFischer Scientific(ピッツバーグ、ペンシルベニア)から入手したHPLC等級溶剤から獲得した。ペプチドの純度は、LC/MSによって調べた。ペプチドの精製は、分取HPLCシステム(Agilent technologies、1100シリーズ)を用い、C18−結合シリカカラム(Tosoh Biospec分取カラム、ODS−80TM、寸法:21.5mmx30cm)上で行った。ペプチドは、勾配系で溶離した(50%〜90%のB溶剤(アセトニトリル:水が60:40および0.1%TFA)。
【0131】
全てのペプチドはRinkアミドMBHA樹脂(0.5−0.66mmol/g)またはWang樹脂(1.2mmol/g)を使用して、固相方法で、段階的に合成した。側鎖の保護基は、Arg(Pbf)、Glu(OtBu)およびTyr(tBu)であった。Fmoc−保護アミノ酸はそれぞれ保護アミノ酸の1.5から3倍を超える量を使用して、この樹脂にカップリングした。カップリング試薬は、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)およびジイソプロピルカルボジイミド(DIC)であり、カップリングはニンヒドリン試験でモニターした。Fmoc基は、NMP中の20%ピペリジンで、30〜60分処置して取り除いた後、CH2Cl2、CH2Cl2中の10%TEA、メタノール、そしてCH2Cl2の順序で洗浄した。カップリング工程に続いて、アセチル化または要すれば別のカップリング基とともにアセチル化を行った。
【0132】
TFA、チオアニソール、エタンジチオールおよびアニソール(90:5:3:2、v/v)の混合物を使用(室温で4〜5時間)し、ペプチドをペプチド樹脂から開裂し、側鎖の保護基を全て取り除いた。粗ペプチド混合物を焼結ロートでろ過し、TFAで(2〜3回)洗浄した。ろ液を濃縮し、どろどろした濃縮ろ液とし、冷エーテルに加えた。冷凍室で一晩放置すると、ペプチドが白い固体状で析出し、これを遠心分離した。溶液をデカントし、固体をエーテルで充分洗浄した。得られた粗ペプチド緩衝液(アセトニトリル:水 60:40、0.1%TFA中)に溶解し、乾燥した。粗ペプチドは、分取C−18カラム(逆相)を使用したHPLCによって、勾配系50−90%Bで40分(緩衝液A:0.1%(v/v)TFAを含む水、緩衝液B:0.1%(v/v)TFAを含むアセトニトリル:水(60:40))精製した。純粋な画分は、Speedvacで濃縮した。収率は5%〜20%であった。
【0133】
前記覆われている合成ペプチドを表4に示す。
【0134】
【表7】

【0135】
Acはアセチル化を表す。
【0136】
Pivはピボリル化を表す。
【0137】
1−Napおよび2−Napはナフトエ酸で覆われていることを示す。
【0138】
Fmocは9−フルオレニルメチルオキシカルボニルで修飾されたN−末端を表す。
【0139】
NAはニコチン酸を表す。
【0140】
BIPはジフェニルアラニンを表す。
【0141】
Isoxazoleは5−メチル−イソオキサゾール−3−カルボン酸誘導体を表す。
【0142】
あるいは、本発明のペプチドは、小さな構成成分ペプチド鎖を一緒にして、より大きなペプチド鎖を形成する、セグメント縮合の方法で生成してもよい。これは、たとえば、Liuら、1996、Tetrahedron Lett.37(7):933−936、Baca、ら、1995、J.Am.Chem.Soc.117:1881−1887、Tamら、1995、Int.J.Peptide Protein Res.45:209−216、SchnolzerおよびKent、1992、Science256:221−225、LiuおよびTam、1994、J.Am.Chem.Soc.116(10):4149−4153、LiuおよびTam、1994、PNAS USA91:6584−6588、YamashiroおよびLi、1988、Int.J.Peptide Protein Res.31:322−334、Nakagawa ら、1
985、J.Am Chem.Soc.107:7087−7083、Nokiharaら、1989、Peptides1988:166−168、Kneib−Cordonnierら、1990、Int.J.Pept.Protein Res.35:527−538(これらの開示は全て参照として本明細書に組み込まれる)に記載されている。本発明のペプチドの他の有用な合成法が、Nakagawaら、1985、J.Am.Chem.Soc.107:7087−7092に記載されている。
【0143】
セグメント縮合によって生成されたペプチドについて、縮合工程におけるカップリング効率を、カップリング時間を増やすことによって著しく上げることができる。概して、カップリング時間を増やせば生成物のラセミ化が増える(Sieberら、1970;Helv.Chim:Acta53:2135−2150)。しかしながら、グリシンは不斉中心を持たないので、ラセミ化は起こらない(プロリン残基も、立体障害のため、長いカップリング時間でもラセミ化はほとんどあるいは全く起こらない)。したがって、内部グリシン残基を含む実施形態は、グリシン残基はラセミ化されないという事実をうまく利用して構成成分を合成するセグメント縮合によって、高収率で大量に合成することができる。つまり、内部グリシン残基を含む実施形態は、大規模な大量生産に有益な重要な合成を提供する。
【0144】
N−および/またはC−末端ブロック基を含むRCTメディエータは、有機化学の標準的な技術を使って製造することができる。たとえば、ペプチドのN−末端をアシル化する方法、ペプチドのC−末端をアミド化またはエステル化する方法は業界で周知である。N−および/またはC−末端の他の修飾を行う態様、同様に、末端ブロック基を結合させるのに必要であり得る、任意の側鎖官能性を保護する態様も当業者には明らかであろう。
【0145】
医薬的に許容しうる塩(対イオン)は、イオン交換クロマトグラフィーまたは他の分野で周知の方法で都合よく製造することができる。
【0146】
本発明の化合物の二量体は、合成の適切な工程でペプチド鎖にリンカーを加えることによって都合よく合成することができる。あるいは、螺旋状セグメントは合成することができ、各リンカーと反応した。もちろん、実際行う合成方法は、リンカーの組成によって決まる。適切な保護計画および化学反応は周知であり、当業者には明らかであろう。
【0147】
本発明化合物の分岐したネットワーク型のものは、三量体および四量体樹脂を用い、Tam、1988、PNAS USA85:5409−5413およびDemoorら、1996、Eur.J.Biochem.239:74−84に記載の化学反応により、都合よく合成することができる。合成樹脂の修飾、およびより高いあるいは低いオーダーの分岐ネットワークを合成する戦略(これには異なったペプチド螺旋状セグメントの混合物も含まれる)は、ペプチド化学および/または有機化学の業界の当業者には充分に対応できる範囲内である。
【0148】
所望により、ジスルフィド結合の形成は、普通、穏やかな酸化剤の存在下で行われる。化学酸化剤を使用してもよいし、化合物を単に大気中の酸素に曝露するだけで結合を達成してもよい。たとえば、Tamら、1979、Synthesis955−957、Stewartら、1984、Solid Phase Peptide Synthesis2d Ed、Pierce Chemical Company Rockford、IL、Ahmedら、1975、J.Biol.Chem.250:8477−8482、およびPenningtonら、1991、Peptides1990:164−166、GiraltおよびAndreu、Eds.、ESCOM Leiden、The Netherlandsに記載されているものを始めとして、種々の方法が業界では知られている。付加的な他の方法が、Kamberら、1980、Helv.Claim.A
cta63:899−915によって記載されている。固体支持体上で行われる方法は、Albericio、1985、Int.J.Peptide Protein Res.26:92−97によって記載されている。これらの方法はどれも、本発明のペプチド中のジスルフィド結合を形成するために使用してもよい。さらに化学的に合成されたアミノ酸誘導化合物を下記表5に示す。
【0149】
【表8】

【0150】
【表9】

【0151】
【表10】

【0152】
遺伝的にコードされたアミノ酸のD−光学異性体の略語は、表1に示された1文字記号の小文字体である。たとえば、「R」はL−アルギニンを指し、「r」はD−アルギニンを指す。
【0153】
Acはアセチル化を表す。
【0154】
Pivはピボリル化を表す。
【0155】
1−Napおよび2−Napは、ナフトエ酸で覆われていることを表す。
【0156】
Fmocは、9−フルオレニルメチルオキシカルボニルで修飾されたN−末端を表す。
【0157】
NAはニコチン酸を表す。
【0158】
BIPはビフェニルアラニンを表す。
【0159】
Isoxazoleは、5−メチル−イソオキサゾール−3−カルボ酸誘導体を表す。
【0160】
ペプチドの全体または一部が遺伝子でコードされたアミノ酸で構成されている場合、該ペプチドあるいはそれに対応する部分は、従来の組み換え組み換え遺伝子工学の技術を用いて合成してもよい。
【0161】
組み換え製造については、ペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を、適切な発現ベヒクル、すなわち、挿入するコード配列の複写または翻訳に必要なエレメント、またRNAウィルスベクターの場合は複写または翻訳に必要なエレメントを含むビヒクルを挿入する。発現ビヒクルは、その後適切な標的細胞にトランスフェクトされ、それがペプチドを発現する。使用する発現システムにも依るが、発現したペプチドはその後業界で定着した手順によって単離される。組み換えタンパク質およびペプチド製造方法は、業界で周知である(たとえば、Sambrookら、1989、Molecular Cloning A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor
Laboratory、ニューヨーク、およびAusubelら、1989、Curr
ent Protocols in Molecular Biology、 Greene Publishing Associates and Wiley Interscience、ニューヨーク、参照、どちらも全体が参照として本明細書に組み込まれる)。
【0162】
製造効率を増加させるために、ポリヌクレオチドは、酵素的切断部位によって分離されたペプチドの複数単位をコードするように設計できる。すなわち、ホモポリマー(1種のペプチド単位の繰り返し)かヘテロポリマー(違う種類のペプチドが一緒につながっている)のどちらかをこの方法で設計することができる。得られたポリペプチドは、ペプチド単位を回収するために、開裂され得る(たとえば、適切な酵素による処置によって)。これは、単一のプロモータに動かされるペプチドの終了を増やすことができる。好ましい実施形態においては、ポリシストロンポリヌクレオチドは、単一mRNAが転写され、それが複数のペプチドをコード(すなわち、ホモポリマーまたはヘテロポリマー)し、各コード領域はキャップ−インディペンデント翻訳制御配列、たとえば内部リポゾーム侵入部位(IRES)に動作可能に結合するように設計され得る。適切なウィルス発現システムで使用された場合、mRNAによってコードされた各ペプチドの翻訳は、たとえばIRESによって、転写物の内部に向かう。したがって、ポリシストロニック構造は、単一の大きなポリシストロニックmRNAの転写を方向づけ、これは次に、複数の個別のペプチドの翻訳を方向づける。この方法は、ポリタンパク質の製造および酵素的手順をなくし、単一プロモータによって動かされるペプチドの収量を著しく増加させる。
【0163】
種々のホスト−発現ベクターシステムが、本明細書で記載したペプチドを発現させるために利用されてもよい。これらには、適切なコード配列を持つ、組み換えバクテリオファージDNAまたはプラスミドDNA発現ベクターで転換されたバクテリアのような微生物、適切なコード配列を含む組み換え酵母または菌類発現ベクターで転換でされた酵母または糸状菌、適切なコード配列を含む組み換えウィルス発現ベクターが感染した昆虫細胞システム(たとえば、バキュロウィルス)、適切なコード配列を含む、組み換えウィルス発現ベクター(たとえば、カリフラワーモザイクウィルスまたはタバコモザイクウィルス)に感染した、または組み換えプラスミド発現ベクター(たとえば、Tiプラスミド)に感染したあるいは転換された植物細胞システム、動物細胞システムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0164】
発現システムの発現エレメントは、その強度および特異性において変化する。利用するホスト/ベクターシステムに依っては、構造性および誘導性プロモータを含む、数多くの適切な転写および翻訳エレメントのどれでも、その発現ベクターにおいて使用してよい。たとえば、細菌系においてクローン作成する場合、バクテリオファージlのpL、plac、ptrp、ptac(ptrp−lacハイブリッドプロモータ)などのような誘導プロモータを、昆虫細胞システムにおいてクローン作成する場合、バキュロウィルスポリヒドロンプロモータのようなプロモータを、植物細胞システムにおいてクローン作成する場合、植物細胞の遺伝子から誘導されたプロモータ(たとえば、熱ショックプロモータ、RUBISCOの小サブユニット用プロモータ、クロロフィルa/b結合タンパク質用プロモータ)または植物ウィルスから誘導されたプロモータ(たとえば、CaMVの35SRNAプロモータ、TMVの外皮タンパク質プロモータ)を、哺乳動物細胞システムにおいてクローン作成する場合、哺乳動物細胞のゲノムから誘導されたプロモータ(たとえば、メタロチオネインプロモータ)、または哺乳動物ウィルスから誘導されたプロモータ(たとえば、アデノウィルス後期プロモータ、ワクシニアウィルス7.5Kプロモータ)を、発現産物の複数のコピーを含む細胞株で生成する場合、SV40−、BPV−およびEBV−系ベクターを、適切な選択可能なマーカーとともに、使用してもよい。
【0165】
植物発現ベクターが使用される場合、本発明のペプチドをコードする配列の発現は、数
多くのどのプロモータによっても行われてよい。たとえば、CaMVの35SRNAおよび19SRNAプロモータ(Brissonら、1984、Nature310:511−514)のようなウィルスプロモータ、またはTMVの外皮タンパク質プロモータ(Takamatsuら、1987、EMBOJ.6:307−311)を使用してもよく、あるいは、RUBISCOの小サブユニット(Coruzziら、1984、EMBOJ.3:1671−1680、Broglieら、1984、Science224:838−843)または熱ショックプロモータ、たとえば、大豆hspl7.5−Eまたはhspl7−3−B(Gurleyら.、1986、Mol.Cell.Biol.6:559−565)のような植物プロモータも使用してもよい。これらの構造は、Tiプラスミド、Riプラスミド、植物ウィルスベクター、直接DNA転換、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどを使用して、植物細胞に導入することができる。このような技術の再検討のために、たとえば、WeissbachとWeissbach、1988、Methods for Plant Molecular Biology、Academic Press、ニューヨーク、第VIII項、pp.421−463、およびGriersonとCorey、1988、Plant Molecular Biology、2d Ed.、ブラッキー、ロンドン、Ch.7−9を参照。
【0166】
本発明のペプチドを生産するために使用されてもよい昆虫発現システムの1つにおいて、オウトグラファカリフォルニア核多汗症ウィルス(AcNPV)を、外来遺伝子を発現するために、ベクターとして使用する。ウィルスはスポドブテラ・フルギペルダ細胞中で成長する。コード配列をウィルスの非必須領域(たとえばポリヒドロン遺伝子)にクローン化し、AcNPVプロモータ(たとえばポリヒドロンプロモータ)の制御のもとに置いてもよい。コード配列の挿入に成功すれば、ポリヒドロン遺伝子の非活性化および非閉寒性組み換えウィルス(すなわち、ポリヒドロン遺伝子によるコード化されたタンパク様外皮の欠けたウィルス)の生産という結果になるであろう。これらの組み換えウィルスは、その後、挿入された遺伝子が発現するスポドブテラ・フルギペルダ細胞を感染させるために使用される(たとえば、Smithら、1983、J.Virol.46:584、Smith、米国特許第4,215,051号を参照)。さらに、この発現システムの例を、Current Protocols in Molecular Biology、Vol.2、Ausubelら、eds.、Greene Publish.Assoc. & Wiley Interscience中に見つけてもよい。
【0167】
哺乳動物ホスト細胞においては、数多くのウィルス系の発現システムを使用してよい。アデノウィルスが発現ベクターとして使用される場合、コード配列は、アデノウィルス転写/翻訳制御複合体、たとえば、後期のプロモータおよび3連先行配列に結紮されていてもよい。このキメラ遺伝子は、その後、インビトロまたはインビボ組み換えによって、アデノウィルス遺伝子に挿入されてもよい。ウィルス遺伝子の非必須領域(たとえば、領域E1またはE3)における挿入は、感染したホストにおいてペプチドを発現することのできる組み換えウィルスとなるであろう(たとえば、LoganとShenk、1984、PNAS USA 81:3655−3659参照)。あるいは、ワクシニア7.5Kプロモータを使用してもよい(たとえば、Mackettら、1982、PNAS USA79:7415−7419、Mackettら、1984、J.Virol.49:857−864、Panicaliら、1982、PNAS USA79:4927−4931参照)。
【0168】
他の本発明のペプチドを生産する発現システムは、当業者には明らかであろう。
【0169】
ペプチドの精製
本発明のペプチドは、逆相高速液体クロマトグラフィー(たとえば、上記のNa−Fmoc化学反応での固相合成法により合成された粗ペプチドは、分取C−18カラムを使用
した逆相HPLCによって精製された)、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、親和性クロマトグラフィーなどの当分野で知られている技術で精製することができる。特定のペプチドを精製するために使用される実際の条件は、部分的に、合成戦略および正味荷電、疎水性、親水性などの因子に依り変わり、当業者には明らかであろう。多量体分岐ペプチドも、たとえば、イオン交換またはサイズ排除クロマトグラフィーによって精製される。
【0170】
親和性クロマトグラフィー精製に関して、ペプチドに特異的に結合する抗体は任意のものも使用してよい。抗体の製造に関して、ウサギ、マウス、ラットなど(これらに限定されない)を始めとする種々のホスト動物が、ペプチド注射によって免疫にされてもよい。ペプチドは、側鎖の官能基または側鎖の官能基に結合したリンカーによって、BSAのような適切なキャリアに結合する。種々のアジュバントが、フロイントアジュバント(完全、不完全)、水酸化アルミニウムのような鉱物ゲル、リソレシチンのような界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、およびBCG(カルメット・ゲラン菌)およびコリネバクテリウムパルブムのような潜在的に有用性のあるヒトアジュバント(これらに限定されない)などのホスト種によって決まる、免疫応答を改善するために、使用されてよい。
【0171】
ペプチドに対するモノクローナル抗体は、培養液中の連続継代細胞系による抗体分子を製造する任意の技術を使って製造してよい。これらの技術として、ハイブリドーマ技術(KohlerとMilsteinが最初に記載した技術、1975、Nature256:495−497、または、Kaprowski、米国特許第4,376、110、これらは参照として本明細書に組み込まれる)、ヒトB−細胞ハイブリドーマ技術(Kosborら、1983、Immunology Today4:72、Coteら、1983、PNAS USA80:2026−2030)およびEBV−ハイブリドーマ技術 (Coleら、1985、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、AlanR.Liss,Inc.、pp.77−96)が挙げられるがこれらに限定されない。さらに、適切な生物活性を持つヒト抗体からの遺伝子とともに、適切な抗原特異性を持つマウス抗体分子からの遺伝子からの遺伝子をつなぎ会わせることによる、「キメラ抗体」の製造のために開発された技術(Morrisonら、1984、PNAS USA81:6851−6855、Neubergerら、1984、Nature312:604−608、Takedaら、1985、Nature314:452−454、Boss、米国特許第4,816,397号、Cabilly、米国特許第4,816,567号、これらは参照として本明細書に組み込まれる)も使用することができる。あるいは、「ヒト化された」抗体を製造することもできる(たとえば、Queen、米国特許第5,585,089号参照。これは参照として本明細書に組み込まれる)。また、ペプチド−特定の一本鎖抗体を製造するために、一本鎖抗体の製造が記載された技術(米国特許第4,946,778号)も適用することができる。
【0172】
特定の結合部位の欠失を含む抗体断片は、公知の技術によって生産されてよい。たとえば、そのような断片として、抗体分子のペプシン消化によって生産することができるF(ab’)2断片、およびF(ab’)2断片のジスルフィド架橋を還元することによって生産できるが挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、関連するペプチドの所望の特異性をもつモノクローナルFab断片を迅速かつ簡便に同定可能にするために、Fab発現ライブラリを構築してもよい(Huseら、1989、Science246:1275−1281)。
【0173】
所望のペプチドに対して特異的な抗体または抗体断片は、たとえばアガロースに結合することができ、抗体−アガロース複合体は、本発明のペプチドを精製するためにイムノク
ロマトグラフィーにおいて使用される。Scopes、1984、Protein Purification:Principles and Practice、Springer−Verlag New York,Inc.、ニューヨーク、リビングストン、1974、 Methods In Enzymology:Immunoaffinity Chromatography of Proteins34:723−731を参照。
【0174】
医薬製剤および治療方法
本発明のRCTメディエータは、動物、特にヒトを始めとする哺乳動物における任意の疾患を治療するために使用することができる。該メディエータは、血清コレステロールの低下に有益であり、状態に制限されることなく、血清HDL濃度を上げ、LCATを活性化し、コレステロールの流出およびRCTを増進するのに有益である。このような状態として、高脂質血症、特に高コレステロール血症、およびアテローム(アテロームの治療および予防を含む)および冠状動脈症のような循環器疾患、再狭窄(たとえば、冠状動脈性プラークの予防または治療、これはバルーン血管形成のような医療処置の結果として発症する)、さらに敗血症性ショックの結果としてたびたび起こる拒血および内毒素症のような他の疾患も挙げられる。ただしこれらに限定されない。
【0175】
RCTのメディエータは単独で、前記状態の治療に使用される他の薬物との混合療法として使用することができる。そのような療法として、薬物の同時または逐次投与があげられるが、これに限定されない。
【0176】
たとえば、高コレステロール血症あるいはアテロームの治療において、RCTの分子メディエータ製剤は、たとえば胆汁酸樹脂、ナイアシン、および/またはスタチンのような、現在使用されている1つ以上のコレステロール低下治療薬とともに投与されることができる。このような組合せの治療投与法は、コレステロール合成および転送において各薬物は異なった標的に作用するので、特に有益な治療効果を生み出すことがある。すなわち、胆汁酸樹脂はコレステロール再循環、カイロミクロンおよびLDL集団に影響し、ナイアシンは主としてVLDLおよびLDL集団に影響し、スタチンはコレステロール合成を抑制し、LDL 集団を減少させ(そして、おそらく、LDL受容体発現を増加させる)、一方RCTメディエータは、RCTに影響し、HDLを増加させ、LCAT活性を改善し、コレステロール流出を進める。
【0177】
RCTメディエータは、高脂質血症、高コレステロール血症および/またはアテロームのような循環器疾患の治療のために、フィブラートと共に使用してもよい。
【0178】
本発明のRCTメディエータは、エンドトキシンによって引き起こされた敗血症性ショックを治療するために、現在使用されている抗菌薬および抗炎症薬とともに使用することができる。
【0179】
本発明のRCTメディエータは、循環させるためにRCTメディエータを肝臓に送る種々の方法、好ましくは経口投与によって、対象者に投与することのできるペプチド系組成物またはペプチド−脂質複合体として製剤化することができる。典型的な製剤および治療・投与法は後で述べる。
【0180】
本発明の他の好ましい実施形態において、高コレステロール血症および/またはアテロームの1つ以上の症状の回復および/または予防方法を提供する。該方法は、好ましくは、生物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトに本発明のペプチド(あるいはそのようなペプチドの模倣物)を1つ以上投与することを含む。ペプチドは、本明細書で記載するように、注射、座薬、点鼻用スプレー、持続放出インプラント、経皮貼布など(ただし
これらに限定されない)、数多くの任意の標準的な方法によって投与することができる。1つの特に好ましい実施形態において、ペプチドは経口(たとえば、シロップ、カプセル、または錠剤として)投与する。
【0181】
前記方法は本発明の単一のポリペプチドの投与、または2種以上の異なったポリペプチドの投与も含む。ポリペプチドは、単量体、または2量体、オリゴマーまたはポリマーの形で提供される。特定の実施形態において、多量体の形には、関連した単量体(たとえば、イオン的にあるいは疎水性敵に結合した)を含んでもよく、一方他の特定の多量体の形は、共有結合した単量体(直接あるいはリンカーを介して結合)を含んでもよい。
【0182】
本発明はヒトにおける用途を記載するが、動物、たとえば獣医学的用途にも適切である。このような好ましい生物として、ヒト、ヒト以外の霊長類、イヌ科の動物、ウマ科の動物、ネコ科の動物、ブタ科の動物、有蹄動物、ウサギ目、などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0183】
本発明の方法は、高コレステロール血症および/またはアテローム(たとえば、高血圧症、プラーク形成および破裂、心臓発作、アンギナまたは脳卒中のような臨床兆候における減退、高濃度低比重リポタンパク質、高濃度低比重リポタンパク質、あるいは炎症性タンパク質など)の1つ以上の症状を示すヒトまたはヒト以外の動物に適用されるのに限らず、予防的な意味においても有用である。したがって、高コレステロール血症および/またはアテロームの1つ以上の症状の始まり/発症の予防のために、本発明のペプチド(その模倣薬)を生物に投与してもよい。この意味において得に好ましい対象は、1つ以上のアテローム危険因子(たとえば、家族歴高血圧症、肥満症、多量のアルコール摂取、喫煙、高血液コレステロール、高血液トリグリセリド、高血液LDL、VLDL、IDLあるいは低HDL、糖尿病あるいは家族歴糖尿病、高血液脂質、心臓発作、アンギナまたは脳卒中など)を示すものである。
【0184】
1つの好ましい実施形態において、RCTのペプチドメディエータは、RCTメディエータの合成および精製に関連する先の部分に記載された技術の任意のものを使って合成または製造することができる。長い保存寿命を持つ安定な製造物として、ペプチドを凍結乾燥することによって造られてもよく、または改質のために固まりであるいは個々のアリコートまたは投薬単位として製造してもよい。これらは、対象物に投与する前に、滅菌水あるいは適切な滅菌緩衝液による再水和によって再構成することができる。
【0185】
他の好ましい実施形態において、RCTのメディエータは、ペプチド−脂質複合体の形で製剤化され、投与されてもよい。この手段は、特に複合体がHDLと類似した寸法および密度を持つ場合、とりわけプリ−β−lまたはプリ−β−2HDL集団の場合、複合体は循環において保存寿命を引き伸ばすので、いくつかの利点がある。ペプチド−脂質複合体は、下記する数多くの方法の任意のものによっても都合よく製造することができる。長い保存寿命をもつ適切な製造法は、凍結乾燥によって造られてもよい。下記する共凍結乾燥の手段は好ましいものである。凍結乾燥されたペプチド−脂質複合体は、改質のために固まりであるいは個々のアリコートまたは投薬単位として製造してもよい。これらは、対象物に投与する前に、滅菌水あるいは適切な滅菌緩衝液による再水和によって再構成することができる。
【0186】
ペプチド−脂質小胞または複合体を製造するために、当業者に周知の数多くの方法を使用することができる。このため、リポソームあるいはプロテオリポソームを製造する、数多くの入手しうる技術を使用してもよい。たとえば、ペプチドは、適切な脂質とともに、共超音波破壊(バスまたはプローブ超音波処理器を使用して)し、複合体を形成することができる。あるいは、ペプチドは、プリフォームされた脂質小胞と組み合わせて、ペプチ
ド−脂質複合体の自発的形成を行うこともできる。また他の態様として、ペプチド−脂質複合体は、洗浄剤透析法によって形成することもできる。たとえば、ペプチド、脂質および洗浄剤の混合物を透析し洗浄剤を除き、ペプチド−脂質複合体を再構成または形成する(たとえば、Jonasら、1986、Methods in Enzymol.128:553−582参照)。
【0187】
今まで記載した手段は実現可能であるが、各方法にはそれぞれ、コスト、収量、再生産性、および安全性の点からそれ特有の製造上の問題がある。好ましい1つの方法において、ペプチドおよび脂質が、各成分が共溶解し凍結乾燥によって完全に除去される溶剤系で組み合わされる。このため、溶剤ペアは、両親媒性ペプチドと脂質の両方の共溶解性を確保するために注意深く選択されるべきである。1つの実施形態において、タンパク質、ペプチドまたはその誘導体/類似体(粒子に組み込まれる)を、水性または有機性溶剤または混合溶剤(溶剤1)に溶解することができる。(リン)脂質成分は、水性または有機性溶剤または混合溶剤(溶剤2)に溶解される。溶剤2は溶剤1と混和性があり、2つの溶駅は混合する。あるいは、ペプチドと脂質は、たとえば、混和性の溶剤の混合物のような共溶剤システムに組み込まれることができる。ペプチド(タンパク質)の脂質に対する適切な割合は、得られる複合体が適切な物理的および化学的特性を持つように、先ず経験的に決定され、通常(しかし必ずしもこうではないが)HDLのサイズと類似する。得られた混合物は冷凍され、凍結乾燥される。付加的な溶剤を混合物に加え、凍結乾燥を容易にしなければならない場合もある。この凍結乾燥製品は、長期間保存することができ、安定性を保つ。
【0188】
凍結乾燥製品は、ペプチド−脂質複合体の溶液または懸濁液を得るために再構成することができる。このため、凍結乾燥粉末は、適切な容積(しばしばペプチド5mg/ml、これは静脈注射に都合がよい量)の水溶液で再水和してもよい。好ましい実施形態において、凍結乾燥粉末は、リン酸緩衝生理食塩水または生理食塩水で再水和されてもよい。混合物は、再水和を容易にするために、撹拌あるいは渦を作ってもよい。ほとんどの場合、再構成工程は、複合体の脂質成分の相転移温度以上の温度で行われるべきである。数分以内に、再構成された脂質−タンパク質 複合体の透明の生成物が得られる。
【0189】
結果として得られた、再構成された製品のアリコートは、製品中の複合体が所望のサイズ分布、たとえば、HDLのサイズ分布、を持つことを確認するために、特徴づけられることができる。ゲルろ過クロマトグラフィーは、この目的のために使用し得る。たとえば、Pharmacia Superose6FPLCゲルろ過クロマトグラフィーシステムを使用することができる。使用される緩衝液は、50mMリン酸緩衝液中の150mMのNaCl(pH7.4)を含む。典型的なサンプル容積は、ペプチドを5mg/ml含む複合体、20〜200マイクロリットルである。カラム流速は、0.5ml/minである。好ましくは、一連のタンパク質の公知の分子量およびストークス径、さらにヒトHDが標準として使用し、カラムを調整する。タンパク質およびリポタンパク質複合体は、波長が254または280nmの光の吸光または散乱によってモニターする。
【0190】
本発明のRCTメディエータは、飽和、不飽和飽和、天然および合成脂質および/またはリン脂質を始めとする種々の脂質と複合体となりうる。適切な脂質として、これらに限定されないが、小アルキル鎖リン脂質、卵ホスファチジルコリン、大豆ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、1−ミリストイル−2−パルミトイルホスファチジルコリン、1−パルミトイル−2−ミリストイルホスファチジルコリン、1−パルミトイル−2−ステアロイルホスファチジルコリン、l−ステアロイル−2−パルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリンジオレオホスファチジルエタノールアミン、ジラウロイルホスファチジルグリセロールホスファチジルコリン、ホスファチ
ジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、スフィンゴ脂質、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジン酸、ジパルミトイルホスファチジン酸、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルセリン、ジパルミトイルホスファチジルセリン、脳ホスファチジルセリン、脳スフィンゴミエリン、ジパルミトイルスフィンゴミエリン、ジステアロイルスフィンゴミエリン、ホスファチジン酸、ガラクトセレブロシド、ガングリオシド類、セレブロシド類、ジラウリルホスファチジルコリン、(1、3)−D−マンノシル−(1,3)ジグリセリド、アミノフェニルグリコシド、3−コレステリル−6’−(グリコシルチオ)ヘキシルエーテルグリコ脂質、コレステロールおよびその誘導体が挙げられる。
【0191】
本発明の医薬製剤は、RCTのペプチドメディエータまたはペプチド−脂質複合体が、投与および生体内で送出のに好適な医薬的に許容しうるキャリア中に活性成分として含まれる。ペプチドは酸性および/または塩基性末端および/または側鎖を含んでもよいので、ペプチドは、製剤中に遊離した酸や塩基の形、あるいは医薬的に許容しうる塩の形のどちらの形で出に含まれ得る。
【0192】
注射製剤は、水性または油性賦形剤中に活性成分の無菌懸濁液、溶液または乳液を含む。組成物は、また、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤のような形成剤を含んでもよい。注射製剤は、たとえばアンプル中に単位用量剤型で置いておいてもよいし、複数回投与容器中に置いておいてもよい。また保存料を加えてもよい。
【0193】
あるいは、注射製剤は、使用前に発熱性物質除去蒸留水、緩衝液、デキストロース溶液など(これらに限定されない)の適切な賦形剤で再構成するために、粉末の形で共されてもよい。このため、RCTメディエータは凍結乾燥されてもよく、共凍結乾燥されたペプチド−脂質複合体を製造してもよい。貯蔵製剤は、単位用量剤型で供給され、生体内に使用する前に再構成されてもよい。
【0194】
長期に渡って送り出すため、活性成分は、移植による投与用のデボー製剤たとえば、皮下、真皮内または筋肉内注射として製剤化することもできる。従って、たとえば、活性成分は、適切な高分子または疎水性材料(たとえば、許容しうる油内のエマルジョンとして)あるいはイオン交換樹脂とともに、またはやや溶けにくい誘導体として、たとえばRCTメディエータのやや溶けにくい塩の形で製剤化してもよい。
【0195】
あるいは、経皮吸収用の活性成分をゆっくり放出する付着盤あるいはパッチとして造られた経皮吸収システムを使用してもよい。このため、活性成分の経皮透過を容易にするために、透過増強剤が使用されてもよい。特に利益になる点は、虚血性心疾患と高コレステロール血症を患う患者に使用するために、本発明のRCTメディエータまたはペプチド−脂質複合体をニトログリセリンパッチに組み込むことにより達成してもよいことである。
【0196】
経口投与に関して、医薬組成物は、たとえば、結合剤(たとえば、プレゼラチン化トウモロコシでんぷん、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、フィラー(たとえば、ラクトース、微結晶セルロースまたはリン酸水素カルシウム)、潤滑剤(たとえば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ)、錠剤崩壊剤(たとえば、ジャガイモデンプンまたはグリコール酸ナトリウム澱粉)、または浸潤剤(たとえば、ラウリル硫酸ナトリウム)のような医薬的に許容し得る医薬添加物とともに、従来の方法によって製造される錠剤またはカプセルの形をとってもよい。錠剤は、業界で公知
の方法によって被覆される。経口投与用の液状製剤は、たとえば、溶液、シロップまたは懸濁液の形をとってよく、または、乾燥製品として提供され、使用前に水や適切な賦形剤で構成されてもよい。このような液状製剤は、懸濁剤(たとえば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素化食用脂)、乳化剤(たとえば、レシチンまたはアカシア)、非水性賦形剤(たとえば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコールまたは分画野菜油)、および防腐剤(たとえば、メチルまたはプロピル−p−ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)などの医薬的に許容しうる添加物とともに、従来の方法で製造することができる。製剤はまた、必要に応じて緩衝液塩、香料、着色料、甘味料を含んでもよい。経口投与用の製剤は適切に剤化し、活性化合物の徐放性が与えられてもよい。
【0197】
口腔投与に関して、組成物は従来の方法で、錠剤またはトローチ製剤の形で取る。直腸および膣経路投与は、活性成分を溶液剤(保持浣腸用)、座剤または軟膏剤として製剤化してもよい。
【0198】
吸入投与に関しては、たとえばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切なガスなどの適切な推進剤を用いて、圧力のかかったパックまたは噴霧器から、活性成分をエーロゾル噴霧投与の形で、都合よく送り出すことができる。圧力のかかったエアゾールの場合、投薬単位は計量した量を送り出す弁を備え付けることによって判断してもよい。呼吸保護器または吸入器で使用する、たとえば、ゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、化合物とラクトースまたはスターチのような適切な粉末ベースを含んで製剤化してもよい。
【0199】
組成物は、所望であれば、活性成分を含む1単位以上の用量を含んでもよいパックまたはディスペンサー容器中に入っていてもよい。パックは、たとえば、ブリスターパックのような金属あるいはプラスチック箔で構成されていてもよい。パックあるいはディスペンサー容器は、投与指示書が一緒に付いていてもよい。
【0200】
本発明のRCTのペプチドメディエータおよび/またはペプチド−脂質複合体は、循環において生体利用効率を保障する、適切な任意の経路によって投与されてよい。これは静脈(IV)、筋肉(IM)、真皮内、皮下(SC)および腹腔内(IP)注射を始めとする非経口ルートによる投与によって達成することができる。しかしながら、他の投与経路を使用してもよい。たとえば、消化管を経由する吸収は、経口投与経路(たとえば、経口摂取、舌下および舌下腺経路が挙げられるがこれに限定されない)によって達成される。ただし、口腔粘膜、胃および/または小腸の苛酷環境においては、活性成分の分解を避けるまたは最小にするために、適切な形態(たとえば腸溶性コーティング)が使用される。経口投与は、使用しやすくしたがって、順応性が高められやすいという利点がある。あるいは、消化管における分解を避けるあるいは最小限にするために、膣および直腸経路などの粘膜組織を経由した投与が利用されてもよい。さらに他のものとして、本発明製剤は、経皮的に(たとえば経皮投与)または吸入投与してもよい。好ましい経路は被投与者の状態、年齢、コンプライアンスによって様々に変化してよいことは了解されるであろう。
【0201】
使用されるRCTのペプチドメディエータまたはペプチド−脂質複合体の実際の用量は、投与の経路に応じて様々に変化し、循環血漿濃度1.0mg/1から2g/lを達成するように調整されるべきである。本明細書に記載した動物モデルシステムにおいて得られたデータは、本発明のアポA−IアゴニストはHDL成分に結合し、予測される半減期は約5日であることを示す。したがって、1つの実施形態において、RCTのメディエータは、1週間につき1回0.5mg/kgから100mg/kgの用量の注射で投与することができる。他の実施形態においては、約0.1mg/kg/hrから100mg/kg/hrの用量で、連続注入投与または間欠注入投与によって所望の血清濃度が保ち得る。
【0202】
RCTの種々のメディエータの毒性および治療効能は、LD50(集団の50%が死に至る量)およびED50(集団の50%が治療的に有効である量)を測定するための細胞培養または実験動物における標準的な医薬的手順を使用して測定することができる。毒性と治療的効果との用量比は、治療インデックスであり、LD50/ED50比と表すことができる。大きな治療指数を示すアポA−Iペプチドアゴニストは好ましい。
【0203】
他の用途
本発明のRCTアゴニストのメディエータは、インビトロで、たとえば、診断目的のために血清HDLを測定するアッセイにおいて使用することができる。RCTのメディエータは、血清のHDLおよびLDL成分と結合するので、アゴニストは、HDLおよびLDL集団の「マーカー」として使用することができる。さらに、アゴニストは、RCTにおいて効果的なHDLの亜集団のマーカーとしても使用することができる。この目的のために、アゴニストは患者の血清サンプルに加えるまたは混合することができ、適切な培養時間の後、組み込まれたRCTのメディエータを測定することによってHDL成分をアッセイすることができる。これは、標識アゴニスト(たとえば、放射能標識、蛍光色素標識、酵素標識、染料など)を使用することによって、あるいはアゴニストを特定する抗体(あるいは抗体断片)を使用したイムノアッセイによって成就することができる。
【0204】
あるいは、標識アゴニストは、循環システムを視覚化するために、RCTをモニターするために、または、脂肪線条やアテローム性動脈硬化部およびその他(ここでHDLは、コレステロール流出において活性であるべきである)でのHDLの蓄積を視覚化するために、画像検査(たとえば、CATスキャン、MRIスキャン)で使用することができる。
【0205】
コレステロール逆輸送メディエータの分析アッセイ
LCAT活性アッセイ
本発明の好ましい実施形態によるRCTのメディエータは、潜在的な臨床効果を種々のインビトロアッセイによって評価することができる。たとえばインビトロLCAT活性化能力をアッセイする。LCATアッセイにおいて、卵黄ホスファチジルコリン(EPC)または1−パルミトイル−2−オレイル−ホスファチジルコリン(POPC)と放射能標識コレステロールから構成される基質小胞体(小単ラメラ小胞、「SUVs」)をペプチドまたはアポA−I(ヒト血漿からされた)と等価質量で培養する。反応はLCAT(ヒト血漿から精製)を添加して始めた。陽性対照として用いられた天然アポA−Iは100% 活性として表す。分子メディエータの「比活性度」(すなわち、活性の単位(LCAT活性)/質量単位)は、最高LCAT活性を達成するメディエータの濃度として計算することができる。たとえば、一連のペプチド濃度(たとえば、限界希釈)はアッセイして、ペプチドの「比活性度」すなわち、アッセイ中のある特定の時間(たとえば1時間)の最高LCAT活性を達成する濃度(たとえば、コレステロールのコレステロールエステルへの変換比率)を測定することができる。ペプチド濃度に対する1時間でのコレステロールの変換比率をプロットすれば、「比活性度」は、プロットされた曲線上にプラトーを達成したペプチド濃度として同定することができる。
【0206】
基質小胞体の製造
LCATアッセイで使用される小胞体は、卵黄ホスファチジルコリン(EPC)またはl−パルミトイル−2−オレイル−ホスファチジルコリン(POPC)とコレステロールがモル比20:1で構成されるSUVである。40回のアッセイに差し支えない小胞体ストック溶液を製造するために、7.7mgのEPC(または7.6mgのPOPC、10μmol)、78μg(0.2μmol)の4−14C−コレステロール、および116μgのコレステロール(0.3μmol)をキシレン中に溶解し、凍結乾燥する。その後、4mlのアッセイ緩衝液を該乾燥粉末に加え、4℃窒素雰囲気下で超音波分解する。超音波分解条件:Branson250超音波処理器、10mmチップ、6´5分、アッセイ
バッファ:10mMのトリスバッファ、0.14MのNaCl、1mMのEDTA、pH7.4。超音波分解混合物は、毎回14,000rpm(16,000´g)、5分ずつ6回遠心分離し、チタニウム粒子を取り除く。得られた透明溶液を酵素アッセイに使用した。
【0207】
LCATの精製
LCAT精製は、ヒト血漿のデキストラン硫酸/Mg2+処理を使用してリポタンパク質欠損血清(LPDS)を得、これをフェニルセファロース、アフィゲルブルー、コンカナバリンAセファロースおよび抗−アポA−I親和性クロマトグラフィー上で逐次クロマトグラフィーに供した。
【0208】
LPDSの精製
LPDSを製造するため、500mlの血漿を50mlのデキストラン硫酸(MW=500,000)溶液に加え、20分撹拌した。4℃で3000rpm(16,000´g)30分遠心分離する。さらに精製するために、上澄み(LPDS)(約500ml)を使用する。
【0209】
フェニルセファロースクロマトグラフィー
下記の材料および条件は、フェニルセファロースクロマトグラフィーのために使用された。固相:フェニルセファロース高速流通、高品質基質、ファルマシアカラム:XK26/40、ゲル床の高さ:33 cm、V=ca、175ml流速:200ml/hr(サンプル)洗浄:200ml/hr(バッファ)溶離:80ml/hr(蒸留水)バッファ:10mMトリスバッファ、140mMのNaCl、1mMのEDTApH7.4、0.01%アジ化ナトリウム。
【0210】
トリスバッファ−バッファ中でカラムを平衡にし、29gのNaCIを500mlのLPDSに加え、前記カラムに適用した。280nm波長での吸収がほぼベースラインになるまで、数体積のトリスバッファで洗浄し、その後蒸留水での溶離を始める。タンパク質を含む画分をプールし(プールサイズ:180ml)、アフィゲルブルークロマトグラフィーを行う。
【0211】
アフィゲルブルークロマトグラフィー
フェニルセファロースプールを、20mMトリスバッファ−HCl、pH7.4、0.01%アジ化ナトリウムに対して4℃で一晩透析する。プール体積を、限外ろ過(AmiconYM30)によって50〜60mlに減らし、アフィゲルブルーカラムに乗せる。固相:アフィゲルブルー、バイオラド、153−7301カラム、XK26/20、ゲル床の高さ:約13cm、カラム体積:約70ml、流速:負荷:15ml/h洗浄:50ml/h。トリスバッファ−バッファ中でカラムを平衡にし、フェニルセファロースプールをカラムに適用し、画分を収集するのと平行して、始める。トリスバッファ−バッファで洗浄する。プールされた画分(170ml)wereはクロマトグラフィーに使用された。
【0212】
ConAクロマトグラフィー
アフィゲルブループールをAmicon(YM30)で、ConA出発バッファ(1mMトリスバッファHC1pH7.4、1mMのMgCl2、1mMのMnCl2、1mMのCaCl2、0.01%アジ化ナトリウム)に対して4℃で一晩透析して30〜40mlに減らした。固相:ConAセファロース(Pharmacia)カラム:XK26/20、ゲル床の高さ:14cm(75ml)。流速:負荷40ml/h洗浄(出発バッファで):90ml/h溶離:50ml/h、1mMトリスバッファ中の0.2Mメチル−a−D−マンノシド、pH7.4。マンノシド溶離液中のタンパク質画分を収集し(110
ml)、体積を限外ろ過(YM30)によって44mlに減らした。ConAプールを2mlアリコートに分け、それぞれ−20°Cで保存する。
【0213】
抗−アポA−1親和性クロマトグラフィー
抗−アポA−I親和性クロマトグラフィーは、抗−アポA−I 腹筋が共有結合しているAffigel−Hz材(バイオラボ)上で行った。カラム:XK16/20、V=16ml。カラムはPBSpH7.4で平衡にした。負荷をカラムにかける前に、2mlのConAプールをPBSに対して2時間透析した。流速:負荷:15ml/hour洗浄(PBS)40ml/時間。プールされたタンパク質画分(V=14ml)はLCATアッセイ用を使用する。カラムは0.1Mクエン酸塩バッファ(pH4.5)で再生し、結合A−1(100ml)を溶離し、この工程の直後に、PBSで再平衡する。
【0214】
RCTメディエータの薬物動態
以下の実験手順は、RCTのメディエータが循環において適切であり、血漿のHDL成分と結合することを示すために使用することができる。
【0215】
ペプチドアゴニストの合成および/または放射能標識
l25I−LDLを、一塩化ヨウ素法によって500〜900cpm/ngの比活性度に製造した(GoldsteinとBrown1974J.Biol.Chem.249:5153−5162)。培養ヒト線維芽細胞による低比重リポタンパク質の結合および分解を、最終比活性度500〜900cpm/ngで測定した(GoldsteinとBrown1974J.Biol.Chem.249:5153−5162)。全てのケースで、>99%の放射能は、4℃、10%(wt/vol)トリクロロ酢酸(TCA)リポタンパク質の培養によって沈殿性であった。Tyr残基は各ペプチドのN−末端に結合し、放射性ヨード化を可能にした。ペプチドは、ヨウ素ビーズのを使用しおよび製造業者プロトコルに従って、Na125I(ICN)で放射性ヨード化し(Pierce Chemicals)、比活性度800〜1000cpm/ngを得た。透析後、ペプチドの沈殿性放射能(10%TCA)は常に>97%であった。
【0216】
あるいは、N−末端アミノ酸である14C−標識Fmoc−Proをカップリングして放射性標識ペプチドは合成することができた。比活性度が9.25GBq/mmolであるL−〔U14−C〕Xを含む標識アゴニストの合成に使用することができる。合成は、Lapatsanis Synthesis、1983、671−173に従って行ってもよい。要約すると、250μM(29.6mg)の標識されていないL−Xを225μlの9%Na2C03溶液に溶解し、これを9.25MBq(250μM)の14C−標識L−Xの溶液(9%Na2C03)に加える。液を0℃に冷却し、0.75mlのDMF中の600μM(202mg)の9−フルオレニルメチル−N−スクシンイミジルカーボネート(Fmoc−OSu)と混合し、室温で4時間振盪する。その後、混合物をジエチルエーテル(2×5ml)およびクロロホルム(1´5ml)で抽出し、得られた水相を30%HC1で酸性にし、クロロホルム(5×8ml)で抽出する。有機層をNa2SO41上で乾燥し、ろ過し、窒素流下で体積を5mlに減らす。純度は、TLC(CHC13:MeOH:Hacが9:1:0.1、v/v/v、固定相HPTLCシリカゲル60、Merck、Germany)によって、UV検出法、たとえば放射化学純度:線型偏光器、Berthold、Germanyで判定し、反応収量はほぼ90%(aLSCによって測定)である。
【0217】
14C−ペプチドXを含むクロロホルム溶液は、ペプチド合成のために直接使用される。アミノ酸2〜22Aを含むペプチド樹脂は、上記したような習慣の方法で合成することができ、合成のために使用される。ペプチドの配列は、エドマン分解によって測定した。カップリングは、TBTUの代わりにHATU(O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−
イル)l,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェイト)が好ましく使用される以外は、先に記載した方法により行う。標識されていないFmoc−L−Xとの第2のカップリングは、マニュアルどおりに行われる。
【0218】
マウスにおける薬物動態
各実験において、300〜500μg/kg(0.3〜0.5mg/kg)(あるいはそれを超えるたとえば2.5mg/k)の放射性標識ペプチドを、マウス用の通常食餌あるいはアテローム生成用のThomas−Harcroft修飾された食餌(結果としてVLDLとIDLコレステロールが大幅に上昇する)を与えられたマウスに腹腔内注射する。血液サンプルを多重時間間隔で取り、血漿中の放射能を評価する。
【0219】
ヒト血清中の安定性
100μgの標識ペプチドを2mlの新鮮なヒト血漿(37℃)で混合し、即座に(コントロールサンプル)あるいは37℃で8日間の培養後(試験サンプル)、脱脂質する。脱脂質は、脂質を等容積の2:1(v/v)クロロホルム:メタノールで抽出することによって行う。サンプルを、逆相Cl8HPLCカラム上に乗せ、アセトニトリル(含0.1wt%TFA)の直線勾配(25−58%、33分を超える)で溶離する。次いで、溶離プロフィールをの吸光度(220nm)と放射能を測定する。
【0220】
Pre−β様粒子の形成
ヒトHDLはKBr密度超遠心分離によって、密度d=1.21g/mlで単離してトップ画分を得、次いで、Superose6ゲルろ過クロマトグラフィーで他のリポタンパク質からHDLを分離してもよい。単離されたHDLは、ブラッドフォードタンパク質アッセイによって測定されたタンパク質含量に基づいて、最終濃度として1.0mg/mlに調整する。300μlのアリコートは、単離されたHDL製剤から分離され、100μlの標識ペプチド(0.2〜1.0μg/μl)とともに、37℃で2時間培養する。複数の分離培養物は、100μlの生理食塩水を含むブランクと4つの標識ペプチドの希釈物、たとえば、(i)0.20μg/μlのペプチド:HDL比=1:15、(ii)0.30μg/μlのペプチド:HDL比=1:10、(iii)0.60μg/μlのプチド:HDL比=1:5および(iv)1.00μg/μlのペプチド:HDL比=1:3で分析される。2時間の培養後、サンプルの200μlのアリコート(総体積=400μl)をリポタンパク質分離用のSuperose6ゲルろ過カラムの上に乗せ、分析を行い、100μlを使用して乗っている総放射能を測定する。
【0221】
メディエータのヒトリポタンパク質との関連
ペプチドメディエータとヒトリポタンパク質画分との関連は、標識ペプチドと各リポタンパク質クラス(HDL、LDLおよびVLDL)および違う種類のリポタンパク質クラスの混合物を培養することによって測定することができる。HDL、LDLおよびVLDLはKBr密度勾配超遠心分離によって、密度d=1.21g/mlで単離してSuperose6Bカラムサイズ排除カラム(クロマトグラフィーは流速0.7ml/分および流バッファ、1mMのトリスバッファ(pH8)、115mMのNaCl、2mMのEDTAおよび0.0%NaN3で行われる)上のFPLCによって精製する。ヒトHDLはトップ画分を得、次いで、Superose6ゲルろ過クロマトグラフィーで他のリポタンパク質からHDLを分離してもよい。標識ペプチドは、37℃で2時間、HDL、LDLおよびVLDLとともにペプチド:リン脂質比が1:5(質量比)で培養される。リポタンパク質の定額(1000μgを得るのに必要な量を基にした体積)を0.2mlのペプチドストック溶液(1mg/ml)と混合し、該溶液を0.9%のNaClを使用して2.2mlとする。
【0222】
37℃で2時間培養した後、アリコート(0.1ml)を総放射能の測定(たとえば、
液体シンチレーションを使用して標識同位元素をカウントあるいはガンマカウントする)のために取り除き、残留培養混合物の密度をKBrで1.21g/mlに調整し、サンプルを、ベックマンテーブルトップ超遠心分離を使用したTLA100.3ローター中、4℃で2時間、100,000rpm(300,000g)遠心分離する。得られた上澄みは、画分され、0.3mlのアリコートを各サンプルの最上層から取り除き、全体で5画分を得、0.05mlの各画分をカウントのために使用する。最上層の2画分は浮遊リポタンパク質を含み、他の画分(3〜5)溶液中のタンパク質/ペプチドに対応する。
【0223】
HDL脂質への選択的結合
ヒト血漿(2ml)を20、40、60、80、および100μgの標識ペプチドとともに2時間37℃で培養した。リポタンパク質は密度を1.21g/mlに調整することによって分離し、遠心分離をTLA100.3ローター中、100,000rpm(300,000g)36時間4℃で行った。最上層900μl(画分300μl中)を分析のため取る。各300μl画分の50μlで放射能をカウントし、該画分の200μlをFPLC(Superose6/Superose12混合カラム)によって分析する。
【0224】
動物モデルシステムにおけるコレステロール逆輸送のメディエータの用途
本発明のRCTメディエータの効能は、ウサギまたは他の適切な動物モデルにおいて行うことができる。
【0225】
リン脂質/ペプチド複合体の製造
リン脂質(DPPC)とペプチドからなる小円板状の粒子を、以下のコール酸塩透析法によって製造する。リン脂質をクロロホルムに溶解し、窒素気流下で乾燥する。ペプチドをバッファ(生理食塩水)中に溶解し、濃度を1〜2mg/mlとする。脂質フィルムを、コール酸塩を含むバッファに再溶解し(43℃)、ペプチド溶液を加え、リン脂質/ペプチドの重量比を3:1とする。該混合物を43℃一晩培養し、温度点で3倍のバッファ(大量)を変えながら、43°℃(24時間)、室温(24時間)および4℃(24時間)透析する。複合体は注射用にフィルター滅菌(0.22μm)してもよく、4℃で保管される。
【0226】
ペプチド/リン脂質粒子の単離および特性分析
粒子はゲルろ過カラム(Superose6HR)で分離してもよい。粒子を含むピークの位置は、各画分におけるリン脂質濃度を測定することによって同定する。溶離体積から、ストークス半径を測定することができる。複合体におけるペプチド濃度は、16時間の酸加水分解の後、フェニルアラニン含量(HPLCによって)を測定することによって決定する。
【0227】
ウサギにおける注射
オスのニュージーランド白ウサギ(2.5〜3kg)に、リン脂質/ペプチド複合体を、単一ボーラス注射が10〜15mlを超えないで、1用量(5または10mg/kg体重、ペプチドとして発現)静脈内注射する。動物は処置する前に少し鎮静化させる。血液サンプル(EDTA上で集められる)を注射の前に取り、注射をした後5、15、30、60、240および1440分後に取る。ヘマトリック(Hct)を各サンプル毎に測定する。サンプルはアリコートとされ、分析前は−20℃で保存する。
【0228】
ウサギの血清の分析
総血漿コレステロール、血漿トリグリセリドおよび血漿リン脂質を、市販のアッセイを使用して、たとえば、製造会社の手順(Boehringer Mannheim、Mannheim、GermanyおよびBiomerieux、69280、Marcy−L’etoile、フランス)に従って酵素的に測定する。
【0229】
リポタンパク質画分への血漿の分離後に得られる画分の血漿リポタンパク質プロフィールは、ショ糖密度勾配中でのスピンニングによって測定してもよい。たとえば、画分を集め、リン脂質およびコレステロールの濃度を、VLDL、ILDL、LDLおよびHDLリポタンパク質密度に対応する画分において、従来の酵素分析によって測定することができる。
【0230】
実施例
短期間の目的は、肝臓へのHDL−介在コレステロール転送において機能するアポA−Iの化合物模倣のミミックの同定であった。長期の目的は、化合物を修飾し、それらを一部のリポタンパク質と相互に作用しあい、それらを肝臓への標的とし、コレステロールが豊富なリポタンパク質の異化代謝の速度(コレステロール逆輸送)を増幅することであった。抹消組織へのコレステロール転送を整える現在行われている治療(リシン、スタチン、フィブラート)と違い、ここで行われるアプローチは、HDLコレステロール(HDL−C)濃度とコレステロールが豊富な低比重リポタンパク質の異化代謝を増大させることによってRCTを増幅することを含む。このアプローチの論理的根拠は、長い間認知されているRCTの速度と心血管系のリスクとの間の反比例関係である。
【0231】
リポタンパク質単離−ヒト血漿リポタンパク質を、正常なドナーから血漿交換によって得られた、新鮮な空腹時の血漿から単離した。LDL(d=1.019〜1.063g/ml)を厳密な滅菌下、密度調整のためにKBrを使用する逐次超遠心分離によってエンドトキシンのない条件で単離した。それを3mMのEDTAを含む0.15mMのNaClおよびプロブコールに対してpH7.4で透析し、ろ過−滅菌し、4℃で保存した。
【0232】
放射性ヨード化−l25I−標識LDLを、一塩化ヨウ素法によって、最終比活性度を約500〜900cpm/ngとして製造した(GoldsteinとBrown、1974、J.Biol.Chem.249:5153−5162)。培養されたヒト線維芽細胞による低比重リポタンパク質の結合および分解は、最終比活性度を約500−900cpm/ngとして行われた(GoldsteinとBrown、1974、J.Biol.Chem.249:5153−5162)。全てのケースで、>99%の放射能は、4℃、10%(wt/vol)トリクロロ酢酸(TCA)リポタンパク質の培養によって沈殿性であった。Tyr残基は各ペプチドのN−末端に結合し、放射性ヨード化を可能にした。ペプチドは、ヨウ素ビーズを使用して、製造業者のプロトコルに従って、Na125I(ICN)で放射性ヨード化し(Pierce Chemicals)、比活性度800〜1000cpm/ngを得た。透析後、ペプチドの沈殿性放射能(10%TCA)は常に>97%であった。
【0233】
ペプチドの血漿安定性およびリポタンパク質分布−この試験に用いたLDLR−/−マウスは、オス、2ヶ月齢であり、固形飼料が与えられた。血液を非絶食マウスからヘパリン−外皮チューブを通して抜き、それを4℃で低速度遠心分離にかけ、血漿を得た。血漿安定性を測定するために、5〜6μgの放射性ヨード化ペプチドを0.25mlの血漿に加えた。37℃で培養後、アリコートを取り除き、10%TCAで沈殿させた。血漿中のアポA−Iペプチドと、リポタンパク質および/または他のタンパク質との関連を試験するため、6〜8μgの放射性ヨード化ペプチドを0.12mlのマウス血漿で37℃2時間培養した。培養後、混合物を1%アガロースゲル(パラゴンシステム、Beckman
Coulter)上で製造会社の指示に従って分離し、放射能をLDL、HDL、およびアルブミンを示すバンド中で定量した。
【0234】
ペプチドの組織分布−12μgの放射性ヨード化ペプチドをアポA−1欠損マウスの尾部静脈にメトファン麻酔下で静脈内注射した。注射後40分、マウスを屠殺し、血液をP
BSの灌流によりカニューレを使い左心室へ動かした。40分後マウスを後眼窩出血によりヘパリン化チューブに出血させた。
【0235】
メディエータ−LDL複合体−ペプチド/リポタンパク質複合体を、25℃2時間、モル比25:1のPBSで希釈したヒト血漿で過剰量の放射性標識ペプチド(SEQ ID
NO:1)を培養することによって形成した。該複合体を、遊離ペプチドを取り除くために、透析液においてカウントされる放射能が400〜600cpm/ml未満になるまで、少なくとも2時間、20μMのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含むPBSに対して4℃で何度も透析した。形成された複合体は直ちに使用した。
【0236】
血漿クリアランスおよびSEQ ID NO:1−LDL複合体の組織分布−125I−LDL(0.2nmol)を、37℃でPBS単独あるいは4nmolのSEQ ID NO:1との混合物中で培養した。2時間後、混合物を20mMのBHTを含むPBSに対して透析した。125I−LDL単独またはSEQ ID NO:1/121I−LDL複合体を、メトファン麻酔下で、非絶食マウスの尾部静脈に静脈内注射した。マウスは、注射後ある時点で、ヘパリン化チューブへの後眼窩出血によって出血させた。血液を低速度遠心分離(1800g、4℃)にかけ、血漿の10%TCA沈殿性放射能を測定した。注射後40分、マウスを屠殺し、血液および非特異的に結合した放射能を、冷PBSでカニューレを使い左心室へ動かした。下大静脈の切開術を行い、潅流液をきれいにした。15分以内に、肝臓、腎臓、脾臓、および心臓を取り除き、きれいにし、重さを量り、125I放射能をカウントした。肝臓を除き臓器全体をカウントし、肝臓は、粉にしてカウントした。臓器1個につきあるいは含水組織1gにつき測定した放射能は、注射した最初の総放射能に対するパーセントで示し、TCA沈殿性を表す。
【0237】
血漿リポタンパク質プロフィールにおけるペプチドの単一ボーラス注入の効果−相違するリポタンパク質クラスの間の血漿コレステロール濃度におけるペプチドの効果とその分布をモニターするために、非放射性ヨード化遊離ペプチド(PBS100μl中の100μg)を、非絶食C57BL/6J野生型マウス(実験の前に高脂肪コール酸塩含有食を4日間与えた)の尾部静脈に静脈内注射した。血漿リポタンパク質プロフィールにおける外部および/または内部非特異的要因(取り扱い、麻酔、血液流出によるストレス)の効果を制御するために、マウスの類似のグループにPBSだけを注射した。マウスの異なったグループを、注射の前と後の種々の時間に屠殺し、血液を後眼窩穿刺で流出させ、4℃で速遠心分離にかけ、血漿を得た。血漿サンプルを得、各グループ(4匹のマウス)内で組合せ、Superose6(HR10/30カラム、FPLC)上でゲルろ過クロマトグラフィーに供しコレステロールリポタンパク質分布をモニターし、アガロースゲル電気泳動(パラゴンシステム)でリン脂質リポタンパク質分布をモニターした。
【0238】
血漿リポタンパク質プロフィールにおける時間放出されるペプチドの効果−血漿リポタンパク質プロフィールにおけるSEQ ID NO:1およびその誘導体の比較的長時間にわたる効果を決定するために、種々のペプチドまたはPBSを含むAlzet Mini浸透圧ポンプ(220μl)を、カニューレが挿入され、C57BL/6Jを与えられたマウスに、外科的に挿入した。前記ポンプを使用して、8μl/hrと同じ流速でペプチドを20時間連続注入した。また前記ポンプを使用して、1μl/hrと同じ流速でペプチドを160時間連続注入した。終点で(ポンプの挿入から20または160時間後)マウスを屠殺し、血液を後眼窩穿刺によって取り出し、4℃で低速遠心分離に供し、血漿を得た。インスリン用注射筒を使用して、胆汁を直ちに胆嚢から取り出し、使用するまで氷上で保存した。
【0239】
インフィニティ比色定量−酵素法(Sigma401−25P)を使用して、示唆されていた37℃の培養時間を10分から15分に変更した以外は、製造業者の指示に従って
、サンプル分析−総血清コレステロールおよびHDLコレステロールを測定した。HDLコレステロールを測定するために、修正Burstein−Samaille法を使用して、試薬:水の比を4:1から4:2に変更した以外は、製造業者の指示(Boehringer Mannheim543004)に従って、低比重リポタンパク質を血漿から析出した。胆嚢誘導胆汁を脱イオン水で2倍に希釈し、インフィニティ試薬を使用して、比色定量−酵素法(Sigma450)で、コレステロールを測定した。比色定量−酵素法(Sigma450)を使用して、3α−ヒドロキシ胆汁酸を定量した。
【0240】
異なるリポタンパク質クラスの間でコレステロール分布をモニターするために、血漿サンプルを各グループ(グループ毎に通常4〜6匹のマウス)内で組合せ、定組成10mMのトリスバッファ/150mMのNaCl/1mMのEDTAバッファシステムを使用して、流速0.15ml/minで、Superose6(HR10/30カラム、Amersham−Pharmacia)におけるFPLCサイズ排除クロマトグラフィーに供した。画分(0.15ml)を、0.5%TritonX−100と20mMコール酸のナトリウム塩との1:1混合物0.055mlを含む96−ウェルプレートに集めた。W.Gambleらの蛍光色素法(Gambleら、1978、Journal Pipid Res.、16:1068−1070)を使用して、血漿画分中の総および遊離のコレステロールを測定した。96−ウェルプレートを、二重走査マイクロプレート蛍光分光光度計Gemini XS(Molecular Devices)上で読んた。ユニコーンソフト(バージョン3.21.02)を使用して、リポタンパク質ピーク下の範囲を定量した。エステル化コレステロールの量は、総コレステロールから遊離コレステロールを差し引いて求めた。
【0241】
リポタンパク質クラスの間でリン脂質の分布をモニターするために、血漿サンプルを各グループ(グループ毎に通常4〜6匹のマウス)内で組合せ、アガロースゲル電気泳動に供した。該電気泳動は、Paragonシステム(Beckman Coulter)を使用し、製造業者の指示に従って行い、次いでParagon Lipo Stain (Beckman Coulter 655910)染色を行った。一度乾燥し、ゲルはPersonal Densitometer SI(分子運動学)上で走査し、バンドはImageQuant(登録商標)ソフト(バージョン5.2)を使用して定量した。
【0242】
PLTP活性におけるペプチドの効果−PLTP活性を、蛍光色素キットを使用して(Cardiovascular Targets,Inc.、P7700)測定した。PLTP源は、固形飼料を与えられまたは4日間食餌を含んだ高脂肪コール酸塩を続けたC57BL/6Jオスの2ヶ月齢老マウスから得られた血清であった。1Xマウス血清を、RTで30分、PBSまたは0.4、2、5、および10μgのペプチドで、プレインキュベートした。プレインキュベートに次いで、混合物を10倍に希釈し、10μl(0.8nl巣血清)を直ちにアッセイシステム(Cardiovascular Targets,Inc.、P7700)を含む、予備冷却された96−ウェルプレートの反応ウェルに混ぜ入れた。マイクロプレートをSpectraMax190(Molecular
Devices)中、37℃、30分間読ませた。
【0243】
ヒトHepG2細胞内のLDL介在コレステロール蓄積−HepG2細胞を、10%FBSが補充されたDMEM中37℃で培養した。実験の24時間前、細胞は、血清のない溶媒(1%ニュートリドーマ−HUが補充されたRPMI(Roche、903454321))500μl中で、1ウェルにつき2.5´105密度の24ウェルプレート中に置き、LDL−受容体のアップレギュレーションを可能にした。実験の日、細胞をPBSで2回洗浄し、室温で1時間PBSまたはペプチドでプレインキュベートされた、単離ヒトLDL(Academy Bio−Medical Co.、20P−L101)25μgを500μlのSFM中の前記細胞に加え、37℃で6時間培養した。培養後、溶媒
を取り除き、細胞を室温下、PBSで2回洗浄し、ヘキサン−イソプロパノール混合物(3:2)によって総コレステロールを抽出し、窒素ガス下で乾燥した。乾燥サンプルは、0.1%TritonX−100と4mMのコール酸ナトリウム塩とを含むTEバッファ(10mMのトリスバッファ−HCL、150mMのNaCl、1mMのEDTA)160μl中で可溶化した。サンプル中の総コレステロールおよび遊離コレステロールを、W.Gambleらの蛍光色素法(Gambleら、1978、Journal LipidRes.、16:1068−1070)を使用して定量した。エステル化コレステロールの量は、総コレステロールから遊離コレステロールを差し引いて求めた。結果を図24に示す。
【0244】
ヒトマクロファージ内のAc−LDL介在コレステロール蓄積−THP−1細胞を10%FBSが補充されたRPMI中37℃で培養した。負荷実験の48時間前、細胞は、血清のない溶媒(1%ニュートリドーマ−HUが補充されたRPMI(Roche、ロット#903454324))500μl中、5´10-8MのPMAの存在下、1ウェルにつき1´106密度の24ウェルプレート中に置き、LDL−受容体のアップレギュレーションを可能にした。実験の日、室温で1時間、PBSまたはペプチドでプレインキュベートしたPBSまたは50μgのヒトアセチル化LDL(Biomedical technologies Inc.BT−906)を前記細胞に加えた。処理された細胞を、37℃で24時間、湿った5%C02インキュベータ内でインキュベートした。インキュベーション後、溶媒を取り除き、細胞を37℃、PBSで2回洗浄し、ヘキサン−イソプロパノール(3:2)混合物を該細胞に加え、コレステロールを抽出した。30分後、サンプルをガラスチューブに移し、窒素下で乾燥した。形成されたペレットを、0.l%Triton X−100と4mMのコール酸ナトリウム塩を含むTEバッファ(10mMのトリスバッファ−HCl、150mMのNaCl、1mMのEDTA)160μl中で可溶化した。総コレステロールおよび遊離コレステロールを、W.Gambleらの蛍光色素法(Gambleら、1978、Journal Lipid Res.、16:1068−1070)を使用して定量した。エステル化コレステロールの量は、総コレステロールから遊離コレステロールを差し引いて求めた。結果を図25に示す。
【0245】
ヒト血管平滑筋細胞内の酸化−LDL介在コレステロール蓄積−血管平滑筋細胞を、5%FBSが補充されたSmGm−2(Cambrex、cc−3182)中37℃で培養した。実験の24時間前、細胞は、血清のないアッセイ溶媒(1%ニュートリドーマ−HUが補充されたSmGM−2(Roche、ロット#903454321))500μl中で、1ウェルにつき85,000密度の24ウェルプレート中に置いた。実験の日、細胞をPBSで2回洗浄し、室温で1時間PBSまたはペプチドでプレインキュベートされた、酸化ヒトLDL(Biomedical technologies Inc.BT−906)25μgを500μlの血清のないアッセイ溶媒(SFM)中の前記細胞に加た。処理された細胞を、37℃で24時間、湿った5%CO2インキュベータ内でインキュベートした。インキュベーション後、溶媒を取り除き、細胞を37℃、PBSで2回洗浄し、ヘキサン−イソプロパノール(3:2)混合物で、コレステロールを抽出した。サンプルを窒素下で乾燥した。乾燥サンプルを、0.l%Triton X−100と4mMのコール酸ナトリウム塩を含むTEバッファ(10mMのトリスバッファ−HCl、150mMのNaCl、1mMのEDTA)160μl中で可溶化した。サンプル中の総コレステロールおよび遊離コレステロールを、W.Gambleらの蛍光色素法(Gambleら、1978、Journal Lipid Res.、16:1068−1070)を使用して定量した。エステル化コレステロールの量は、総コレステロールから遊離コレステロールを差し引いて求めた。結果を図26に示す。
【0246】
Ac−LDLがプレロードされたヒトマクロファージからのコレステロール効果−THP−1 細胞を、10%FBSが補充されたRPMI中37℃で培養した。負荷実験の4
8時間前、細胞は、血清のない溶媒(1%ニュートリドーマ−HUが補充されたRPMI(Roche、ロット#903454321))500μl中、5´10-8MのPMAの存在下、1ウェルにつきl´106密度の24ウェルプレート中に置いた。実験の日、PBSまたは50μgのヒトアセチル化LDL(Biomedical technologies Inc.BT−906)を、血清のない溶媒中、5´l0-8MのPMA存在下で前記細胞に加えた。処理された細胞を、37℃で24時間、湿った5%CO2インキュベータ内でインキュベートした。インキュベーション後、溶媒を取り除き、細胞を37℃、血清のない溶媒で2回洗浄し、PBSまたは化合物を血清のない溶媒(PMAなし)500μl中の該細胞に加えた。処理された細胞を、37℃でさらに48時間、湿った5%CO2インキュベータ内でインキュベートした。化合物を24時間毎に補給した。インキュベーション後、溶媒を取り除き、細胞を37°CでPBSを用いて2回洗浄し、ヘキサン−イソプロパノール(3:2)混合物を該細胞に加え、コレステロールを抽出した。30分後、サンプルをガラスチューブに移し、窒素下で乾燥した。形成されたペレットを、0.l%Triton X−100と4mMのコール酸ナトリウム塩を含むTEバッファ(10mMのトリスバッファ−HCl、150mMのNaCl、1mMのEDTA)160μl中で可溶化した。総コレステロールおよび遊離コレステロールを、W.Gambleらの蛍光色素法(Gambleら、1978、Journal Lipid Res.、16:1068−1070)を使用して定量した。エステル化コレステロールの量は、総コレステロールから遊離コレステロールを差し引いて求めた。結果を図27に示す。
【0247】
一連の化合物を設計するために、第1、第2および第3アポA−I構造を分析した。リポタンパク質代謝に影響する、優位の素質がある化合物としては、リポタンパク質に対し結合する能力と肝臓リポタンパク質結合部位に結合する能力とを発揮するものが好ましい。したがって、化合物全てを放射性標識し、生体内(マウス)での細胞組織分布とインビトロでのマウス血漿リポタンパク質への結合能力の検査を行った。
【0248】
インビトロにおけるRCTのペプチドメディエータの特性−12の化合物を放射性ヨード化し、LDL−受容体(LDLR−/−)欠損マウスから得た血漿でインキュベートした。これらのマウスは、ヒトのリポタンパク質プロフィールと似たリポタンパク質プロフィールを持つ。37℃で2時間のインキュベーション後、該混合物をアガロースゲルで分離し、放射能をLDL、HDL、およびアルブミンを表すバンドで計量した。結果を図2にまとめる。これらの結果に基づくと、リポタンパク質に有意な関連を示す化合物は、またインビボでも特徴的であった。
【0249】
インビボにおけるRCTのペプチドメディエータの特性−放射性標識された化合物をマウスに静脈内注射した。終点でマウスから血を抜き、大量の灌流を行い、循環(特定化していない)放射能を取り除いた。全血液と標的となりうる臓器収集し、カウントした。マウスの集めた臓器と全血液容積における総放射能を計算し、臓器に結合した放射能を、総放射能に対する比率として表した。注射後、臓器に結合した放射能の結果を図3に示す。これらのデータに基づいて、SEQ ID NO:1がさらなるインビボ特性を調べるために選ばれた。
【0250】
インビボにおけるSEQ ID NO:1のさらなる特性−図4はSEQID NO:1の臓器分布を示す。この化合物は、他の臓器およびペプチドと比べ、劇的なまでに肝臓に優先的に関連したので、この化合物を研究の対象として選んだ。
【0251】
SEQ ID NO:1がヒトLDLと結びつくことができるかどうか決定するため、125I−SEQ ID NO:1と単離ヒトLDLとの複合体の形成が試みられた。SEQ ID NO:1は安定な〔LDL−l25I−SEQ ID NO:1〕複合体、該複合体では約6から8コピーの〔l25I−SEQ ID NO:1〕がLDL粒子1個につ
き結合していた、を形成することは明らかにされていた。SEQ ID NO:1がリポタンパク質の肝臓への転送に影響するかどうか決定するため、l25I−LDL単独あるいはSEQ ID NO:1をもつ複合体中のl25I−LDLをLDLR−/−マウス(LDL−受容体なし)および機能的肝臓薬であるLDL−受容体を持つA−I−/−マウスに注射した。肝臓に関連した放射能を評価し、結果を図5に示す。両マウス遺伝子型において、注射前〔l25I−LDL〕とSEQ ID NO:1の複合は、肝臓−結合〔l25I−LDL〕における有意な増加という結果になった。これらのデータは、〔l25I−LDL−SEQ ID NO:1〕複合体の増強された肝臓結合(〔l25I−LDL〕に比べて)(a)まだ知られていない肝臓リポタンパク質結合サイトおよび(b)LDL−受容体によって介在されるということを指摘している。LDL−受容体単独の分布を評価するために、〔125I−LDL〕と〔125I−LDL−SEQ ID NO:1〕のLDLR−/−マウスの肝臓への結合を、A−I−/−マウスの肝臓へのそれらのそれぞれの結合から差し引き、データを含水組織1gあたりに正常化した。この引き算の結果を図6に示し、LDL−受容体に結合する複合体が、〔l25I−LDL〕単独と比べてかなり増加していることを示す。これらのデータは、アポAl−/−マウスに注射した場合、125I−LDL単独と比べて125I−LDL−SEQ ID NO:1複合体の増強された血漿クリアランスとのよく一致していた(図7)。腎臓、脾臓、肺、心臓、睾丸、副腎、および前立腺への125I−LDL結合におけるSEQ ID NO:1の効果を図8に示す。心臓に対する125I−LDL−SEQ ID NO:1複合体の結合の増加は観察されなかったことは注目すべきである。
【0252】
リポタンパク質代謝(単一ボーラス注射)におけるSEQ ID NO:1の効果−高脂肪食餌(HFC)を含むコール酸塩を与えられた、幾分高脂血症の野生型C57BL/6Jマウスで、コレステロール代謝上におけるSEQ ID NO:1の効果を試験した。マウスはコントロールと実験との2つのグループに分けた。それぞれのグループは4匹のマウスであった。実験マウスには、SEQ ID NO:1(100LのPBS中100g)を静脈内注射し、一方コントロールグループにはPBS100υlを注射した。異なるグループのマウスから、注射後0分(注射なし)、30、60、90、120、そして180分後に血を抜き、血漿を得、各グループ内で組み合わせ、FPLC分析に共した。異なるリポタンパク質クラスの間のコレステロール分布を評価し、データは、コレステロール含量(Act*ml)または、それぞれVLDLピーク、IDL/LDLピークおよびHDLピーク下の範囲として表した。結果を、図9、10および11に示す。全時間経過を通してVLDL濃度におけるSEQ ID NO:1の有意な効果はなかったが、肝臓応答の動態は、PBS コントロールに比べ著しく異なっていた(図9)。SEQ ID NO:1注射の後90、120、および180分でIDL/LDL(プロアテローム生成およびアテローム生成リポタンパク質)の有意な低下が、観察された(図10)。SEQ ID NO:1の効果は、180分まで持続し、240分の時点で完全に消滅した。これらのデータは、約2〜3時間というl25I−SEQ ID NO:1の生体内半減期データと一致している。SEQ ID NO:1の単一ボーラス注射の後、わずかではあるが有意なHDL−C濃度の減少を観察し図11)、これはHDLクリアランスの増加の可能性を示唆する。単一ボーラス注射データの線形回帰分析を図12〜14に示す。これは、血漿濃度のプロアテロームおよびアテローム生成リポタンパク質(IDLおよびLDL)においてSEQ ID NO:1効果が有意であることを示す。
【0253】
リポタンパク質代謝(単一ボーラス注射)における「フレームシフト」誘導ペプチドの硬化−SEQ ID NO:1を(螺旋6、Pro166〜Pro188、前駆体タンパク質)から誘導する、マウスアポリポタンパク質Alの全領域の機能的フレームシフトを行った。フレームシフトは両方向(N−末端からC−末端へ、およびC−末端からN−末端へ)で行った。16個の(16)ペプチドを設計し、合成し、高脂肪食餌(HFC)を含むコール酸塩を与えられた、幾分高脂血症のC57BL/6Jマウスで、可能性のある
効果を試験した。マウスはコントロールと実験との2つのグループに分けた。それぞれのグループは4匹のマウスであった。実験マウスには、各ペプチド(100μlのPBS中100μg)を静脈内注射し、一方コントロールグループにはPBS100μlを注射した。異なるグループのマウスから、注射後0分(注射なし)、90、および180分後に血を抜き、血漿を得、各グループ内で組み合わせ、FPLC分析に共した。異なるリポタンパク質クラスの間のコレステロール分布を評価し、コレステロール含量(Act*ml)または、それぞれVLDLピーク、IDL/LDLピークおよびHDLピーク下の範囲を定量した。データは、コントロール(PBS注射)マウスに対する実験マウスのにおける、VLDL、 IDL/LDL、およびHDLクラスの総コレステロール(TC)含量に対する変化の比率として示した。結果を表6および7に示す。表6および7から、螺旋6のN−末端部にあるSEQ ID NO:1は、他の配列に比べて、低比重リポタンパク質の血漿濃度において強い効果を持ち、一方、螺旋6のC−末端部にあるSEQ ID
NO:7は、マークされたHDL−C特性を上昇することが分かる。
【0254】
【表11】

【0255】
マウス血漿リポタンパク質プロフィールにおける、化学修飾された誘導SEQ ID NO:1と他のマウスアポA1領域から誘導されたペプチドとの効果(単一ボーラス注射)−SEQ ID NO:1の疎水性を増すために、フェニルアセチルまたはピバリック酸を、SEQ ID NO:1のN−末端Tyr残基に結合し、またはTyr残基をN−末端からはずした。これらのペプチドのコレステロール代謝における可能性のある効果を、高脂肪食餌(HFC)を含むコール酸塩を与えられた、幾分高脂血症のC57BL/6Jマウスで試験した。マウスはコントロールと実験との2つのグループに分けた。それぞれのグループは4匹のマウスであった。実験マウスには、各ペプチド(100μlのPBS中100μg)を静脈内注射し、一方コントロールグループにはPBS100μlを注
射した。異なるグループのマウスから、注射後0分(注射なし)、90、および180分後に血を抜き、血漿を得、各グループ内で組み合わせ、FPLC分析に共した。異なるリポタンパク質クラスの間のコレステロール分布を評価し、コレステロール含量(Act*ml)または、それぞれVLDLピーク、IDL/LDLピークおよびHDLピーク下の範囲を定量した。データは、コントロール(PBS注射)マウスに対する実験マウスにおける、VLDL、IDL/LDL、およびHDLクラスの総コレステロール(TC)含量に対する変化の比率として示した。結果を表8に示す。表から上記した修飾化合物は全てSEQ ID NO:1の有効性を増加していなかったことが分かる。マウスアポリポタンパク質Alの他の領域にある少数のペプチドもこの方法で試験し、特筆すべき活性も何も示さなかった(表8)。
【0256】
【表12】

【0257】
リポタンパク質代謝におけるSEQ ID NO:1の効果(20時間ポンプ)−血漿リポタンパク質プロフィールにおけるSEQ ID NO:1の比較的長時間の効果を測定するために、SEQ ID NO:1またはPBSを含むAlzet Mini浸透圧ポンプ(220μl)を、カニューレが挿入され、C57BL/6Jを与えられたマウスに、外科的に挿入した。ポンプ流速は8μl/hrと同じで、これは、図9に示すような1時間あたりのSEQ ID NO:1量を送り出した。術後マウスを直ちにHFC食餌に切り替えた。20時間後、血漿サンプルを得、各グループ(4〜6匹のマウス)内で組み合わせ、FPLC分析に供し、アガロースゲル電気泳動で、リポタンパク質クラスの間のコレステロールとリン脂質の分布を評価した。結果を図15に示す。結果は、SEQ ID NO:1を受け取ったことを示す、マウスの血漿中の低比重リポタンパク質濃度の劇的な減少を明示し、一方これらのマウスの血漿HDLコレステロール濃度は上昇した。LDL低下の効果は、SEQ ID NO: 1 濃度の上昇で弱められた。この減少は、肝臓リポタンパク質結合部位の遊離SEQ ID NO:1とLDL−結合型のSEQ
ID NO:1の間の自己競争によって説明することができる。それにひきかえ、HDLコレステロール濃度は、SEQ ID NO:1濃度に対し正の相互関連があった。血漿HDL−Cにおける増加は、LCAT(レシチン:コレステロールアシル移行酵素)の活性の可能性を、またはアポA−Iの産生を増やすことを示唆する。一方、HDL リン
脂質の血漿濃度の上昇(データ示さず)は、SEQ ID NO:1活性のメカニズムにおけるPLTP(リン脂質移行タンパク質)の関与を示唆する。したがって、得られたデータは、SEQ ID NO:1の多機能性を示唆し、これがHDL経路およびLDL経路の両方にかかわっていることを示唆する。
【0258】
リポタンパク質代謝におけるSEQ ID NO:1構造誘導体の効果(3〜13個のアミノ酸残基)(20時間ポンプ)−血漿リポタンパク質プロフィールにおける比較的長時間の効果を測定するために、SEQ ID NO:1またはPBSを含むAlzet Mini浸透圧ポンプを、カニューレが挿入され、C57BL/6Jを与えられたマウスに、外科的に挿入した。ポンプ流速は8μl/hrと同じで、1時間あたり30〜40μgのペプチドを肝臓に供給した。術後マウスを直ちにHFC食餌に切り替えた。20時間後、血漿サンプルを得、各グループ(4〜6匹のマウス)内で組み合わせ、FPLC分析に供し、アガロースゲル電気泳動で、リポタンパク質クラスの間のコレステロールとリン脂質の分布を評価した。HDL−Cのデータを図16に示す。該データは、ペプチド処置されたマウスにおいて、低比重リポタンパク質の血漿濃度の有意な減少を明示している。一方、これらのマウス中の血漿HDLコレステロール濃度は上昇した。しかしながら、ほとんどのペプチド(たとえば、SEQ ID NO:35および87など)は反対の効果、すなわち、低比重リポタンパク質の血漿レベの上昇と、高比重リポタンパク質コレステロールおよびリン脂質の減少を起こした。この逆転効果は、SAR目的にとっては、これらの「クリアランス結合する」ペプチドと「クリアランス増強する」ペプチドとの構造関係の点に照らして、貴重な情報である。血漿HDL−Cの穏やかな増加は、LCAT(レシチン:コレステロールアシル移行酵素)の活性の可能性またはアポA−Iの産生の増加を示唆し得る。一方、HDLリン脂質の血漿濃度の上昇は、ペプチド活性のメカニズムにおいて、PLTP(リン脂質移行タンパク質)の関与を示唆する。したがって、得られたデータは、SEQ ID NO:1誘導体が、HDL経路およびLDL経路の両方にかかわっていることを示唆する。
【0259】
リポタンパク質代謝における、SEQ ID NO:34(「テンプレート」、3個のアミノ酸残基を持つペプチド)およびその修飾誘導体(SEQ ID NO:8および91)の長期効果(7日間ポンプ)−血漿リポタンパク質プロフィールにおけるこれらペプチドの長期効果を測定するため、ペプチドまたはPBSを含むAlzet Mini浸透圧ポンプを、カニューレが挿入され、C57BL/6Jを与えられたマウスに、外科的に挿入した。ポンプ流速は1μl/hrと同じで、各ペプチドを1時間あたり図17に示す量、肝臓に供給した。術後マウスを直ちにHFC食餌に切り替えた。160時間後、マウスを屠殺し、血漿サンプルを得、各グループ(4〜6匹のマウス)内で組み合わせ、FPLC分析に供し、アガロースゲル電気泳動で、リポタンパク質クラスの間のコレステロールとリン脂質の分布を評価した。胆汁を直ちに胆嚢から取り出し、総コレステロール/胆汁酸含量を記載した方法で測定した。データを図17に示す。図は、ペプチド処置されたマウスにおける、低比重リポタンパク質の血漿濃度の有意な減少と、血漿HDLコレステロール(およびHDLリン脂質−データ示さず)の上昇と、胆嚢総コレステロールと胆汁酸量の劇的な増加を示唆する。血漿HDL−Cの穏やかな増加は、LCAT(レシチン:コレステロールアシル移行酵素)の活性の可能性またはアポA−Iの産生の増加を明示し、一方、HDLリン脂質の血漿濃度の上昇は、ペプチド活性のメカニズムにおいて、PLTP(リン脂質移行タンパク質)の関与を明示している。これは、血漿HDL濃度の維持と新生HDL粒子(第1コレステロール受容体)の発生とに関与するものとして知られている。図17から、SEQ ID NO:34、86および91のマウスへの投与は、HDLゾーンでのリン脂質の量の増加となり、これは通常、総コレステロールおよび胆嚢から回収される胆汁酸の増加を伴うことが理解し得る。血漿低比重リポタンパク質濃度(VLDL、IDL、LDL)の減少とHDL濃度の増加に伴い、コレステロール/胆嚢における胆汁酸の量が増加することは、増強された「血漿>肝臓>胆嚢」コレステロールの流
れ、すなわち、図17に示す、ペプチドの存在下、本発明の好ましい態様に従ったコレステロール逆輸送を示唆する。
【0260】
活性におけるペプチドの効果−SEQ ID No:34、86、91および96でマウス血漿を培養すると、PLTPが活性化されることが図18から理解できる。固形飼料を与えられたマウスおよび食餌を含む高脂肪コール酸塩を4日間与えられたマウスから得られたマウス血漿(酵素源)を、室温で30分PBSまたはSEQ ID No:34、86、91および96(0.4、2、5、および10μg)のペプチドを使用して培養した。反応は、0.3μlの血漿/PBSまたは血漿/SEQ ID NO混合物を、蛍光色素基質を含むアッセイ溶液を100μlに添加して始めた。PLTP活性は、37℃20分蛍光分光光度計上でモニターした。各バーが、3回の独立した実験から得られた平均SEMを表す。これらのデータは、マウス血漿HDL濃度におけるこれらのペプチドの長期効果の研究の結果とよく一致しており(たとえば、図17に示す7日間ポンプで得られた結果)、ペプチド活性の生体内メカニズムにおけるPLTP 関与を支持する強い証拠を提供する。SEQ ID No:35および36に対応するペプチドは、PLTP活性において有意な効果は持っていなかった。これら2つのペプチドは、また、マウスへの20時間注入においても有意な活性を示さなかったことは注目すべきことである(図16参照)。
【0261】
マウス血漿リポタンパク質プロフィールと胆汁中の胆汁酸/コレステロールにおけるSEQ ID NO 91(AVP−26249)の急性経口投与の効果−図19に関連して、2.5および20μgを示すバーは、2回の独立した、C57BL/6J供給HFD実験の平均±SEMを表し、5および10μgを示すバーは、3回の独立したC57BL/6J供給HFD実験の平均±SEMを表す。エラーバー単一実験はなし。効果は、PBSコントロール(0%)に対する変化の%として表す。
【0262】
血漿TC(総コレステロール)における、固形飼料供給アポ酵素−/−マウスへのSEQ ID NO:91(AVP−26249)のアドリブ経口投与の影響−図20を参照し、2ヶ月老アポ酵素−/−オスのマウスに固形飼料食餌を与えた。実験の日、TO(時間0)でマウスから血を抜き(50μl)、血漿TCを測定し、マウスをTOグループの平均コレステロール値と似た値を持つグループに分けた(1グループ毎4匹のマウス)。コントロールマウスは飲料水を飲み、実験マウスは化合物の水溶液を飲んだ。マウスから72〜96時間毎に血を抜き、血漿コレステロールを定量した。各バーは、4匹の平均±SEMを表し、2週間毎に行われた15回の測定の代表である。SEQ ID NO:91の量は24時間あたりに消費されたmg/kg(mpk)として表す。
【0263】
高脂肪食餌を与えられたアポ酵素−/−マウス中の血漿コレステロール濃度における、SEQ ID NO:91、145、146および118(それぞれAVP−26249、26451、26452および26355)の効果−図21を参照して、3ヶ月老アポ酵素−/−オスのマウスに固形飼料食餌を与えた。0日、マウスから血を抜き、血漿TCを測定し、マウスを平均コレステロール値と体重値が似た値を持つグループに分けた(1グループ毎4匹のマウス)。コントロールマウスは飲料水を飲み、実験マウスは化合物の水溶液を飲んだ。4週間後、マウスを高脂肪食餌に切り替えた。マウスから10日に1回血を抜き、総血漿コレステロールを定量した。各バーは、4匹の平均±SEMを表し、7回の測定の代表である。SEQ ID NOの量は24時間あたりに消費されたmg/kg(mpk)として表す。
【0264】
高脂肪食餌を与えられたアポ酵素−/−マウスによって分泌されるコレステロール量における、SEQ ID NO:91、145、146および118(それぞれ、AVP−26249、26451、26452および26355)の効果−図22を参照して、5
ヶ月老アポ酵素−/−オスのマウスの8つのグループ(各グループ毎に4匹のマウス)に固形飼料食餌を与えた。コントロールマウスは飲料水を飲み、一方、実験マウスは化合物の水溶液を「アドリブで」飲んだ。マウスを代謝ケージ中に一晩置いた。翌日、排出物を集め、72時間乾燥し、重さを計り、総コレステロールを抽出し、定量した。各バーは、マウスに高脂肪食餌が与えられた後2.4週間および3.4週間行われた、2つの独立した「代謝ケージ」実験の平均±SEMを表す。SEQ ID NOの量は24時間あたりに消費されたmg/kg(mpk)として表す。
【0265】
最後に、図2〜22および表6〜8にまとめられた結果は本発明の分子モデルに従って設計されたRCTのペプチドメディエータを投与された高脂血症マウスは、静脈経路を経ても経口送達経路を経ても、血漿リポタンパク質プロフィールにかなりの改善を発揮し、それは、低密度(アテローム性)リポタンパク質の増強されたクリアランスと抗動脈硬化性高比重リポタンパク質の血漿濃度の上昇によるということを明示している。
【0266】
図23を参照して、説明図は、スクリーニング法で試験化合物を同定するために使用された、生体内増強RCTで起こりそうなインビトロトライアングルを示す。培養マクロファージ細胞は、ac−LDLコレステロール蓄積およびプリロードされたマクロファージ細胞からのコレステロール流出(泡沫細胞形成と冠状動脈性プラーク形成との原因となるコレステロールを蓄積するマクロファージ)の両方において、テストRCTメディエータ化合物の効果を評価するために使用される。したがって、該トライアングルのこの区画は、RCTさらにアテロームの病因において、試験化合物の効果を評価するために使用される。培養された第1平滑筋細胞は、血管壁へのox−LDL蓄積(また、泡沫細胞の形成とアテロームの進行に関係し得る)においてテストRCTメディエータ化合物の効果を評価するために使用される。培養肝細胞は、肝臓によるコレステロール取り込みにおいて、テストRCTメディエータ化合物の効果を評価するするために使用される。体皮細胞(肝細胞と組合せてマクロファージおよび/または平滑筋細胞)を使用することによって、RCT−低減コレステロール蓄積と体皮細胞からの増強dコレステロール流出、さらに肝臓(代謝および排出のための)による取り込みのモニターを有利に提供する。
【0267】
HepG2細胞中の総コレステロールのLDL介在蓄積における、SEQ ID NO:91および146(それぞれAVP−26249およびAVP−26452)の効果。図24を参照して、ヒトHepG2細胞を、血清のない(リポタンパク質のない)アッセイ溶媒中、1ウェルあたり2.5´105の密度で24ウェルプレート中に置いた。48時間後、室温で1時間、PBSまたは化合物を使用してプレインキュベートしたヒトLDLd25μgを、血清のない溶媒500μl中の細胞に加えた。処理された細胞を、37℃で24時間、湿った5%CO2インキュベータ内でインキュベートした。各バーは、2〜3回の独立した実験の平均±SEMを表す。
【0268】
総コレステロールおよびマクロファージ中のコレステリルエステルのAc−LDL介在蓄積におけるSEQ ID NO:91(AVP−26249)の効果。図25を参照して、ヒトTHP−1細胞を、5×10-8MのPMAの存在下、アッセイ溶媒中、1ウェルあたり1´106の密度で24ウェルプレート中に置いた。48時間後、室温で1時間、PBS(コントロール)またはAVP−26249を使用してプレインキュベートしたヒトAcLDL50μgを、アッセイ溶媒500μl中の細胞に加えた。処理された細胞を、37℃で24時間、湿った5%CO2インキュベータ内でインキュベートした。各バーは、3〜9回の反復試験の平均±SEMを表す。
【0269】
総コレステロールおよび血管平滑筋細胞中のコレステリルエステルのOx−LDL介在蓄積における、SEQ ID NOS:91および146(それぞれ、AVP−26249および26452)の効果。図26を参照して、ヒト血管平滑筋細胞を血清のないアッ
セイ溶媒中、1ウェルあたり9x104の密度で24ウェルプレート中に置いた。24時間後、室温で1時間、PBSまたは化合物を使用して、プレインキュベートしたPBS単独またはヒト酸化LDLを、アッセイ溶媒500μl中の細胞に加えた。処理された細胞を、37℃で24時間、湿った5%CO2インキュベータ内で培養した。各バーは、4〜7回の独立した実験の平均±SEMを表す。
【0270】
AcLDL−負荷マクロファージからのコレステロール流出におけるSEQ ID NO:91および146(それぞれ、AVP−26249およびAVP−26452)の効果。図27を参照して、ヒトTHP−1細胞を、5´10-8MのPMAの存在下、アッセイ溶媒中、1ウェルあたり1x106の密度で24ウェルプレート中に置いた。48時間後、50μgのヒトアセチル化LDLまたはPBSをPMAを含むアッセイ溶媒500μl中の細胞に加えた。24時間後、細胞を洗浄し、PBSまたは化合物を500μlのアッセイ溶媒中の細胞に加えた。各処置の前後で細胞を、37℃で24時間、湿った5%C02インキュベータ内でインキュベートした。各バーは、5〜6回の独立した実験の平均±SEMを表す。
【0271】
1つの目的は、コレステロールクリアランスのために、コレステロールをマクロファージおよび大動脈細胞から肝臓へ動かすことである(図30参照)。表3〜5に示す化合物のような試験化合物のひとつのRCTに効果を及ぼす能力は、前記図24〜27に示すように行われるアッセイに基づいて、予測でき得る。すなわち、これら3種の細胞タイプが、生物内のコレステロールの状態のスナップショットを提供する。与えられた化合物の、(HepG2細胞)のような肝細胞におけるコレステロール濃度を増大させながら、THP−1細胞や血管平滑筋細胞のようなマクロファージ細胞中のコレステロールやCEの濃度を減少させる能力は、生体内における有効性を予測する。したがって、本発明の1つの実施形態として、テスト化合物を、前記したマクロファージ、平滑筋および肝細胞ラインを使用してインビトロでアッセイし、生体内RCTの兆候を提供するスクリーニング方法を含む。
【0272】
アポ酵素−/−高脂肪食餌を与えられたマウスの大動脈内のアテローム性動脈硬化部進行におけるSEQ ID NO:91(AVP−26249)の効果。図28を参照して、アポ酵素−/−オスのマウスに、固形飼料食餌を4週間続け、HFD(1.25%のコレステロール)上で9.3週間保った。マウスにSEQ ID NO:91(AVP−26249)を「アドリブ」で、飲料水から13.3週間与えた。SEQ ID NO:91の濃度は0(左のパネル)、1.4μg/kg(真ん中のパネル)および2.8μg/kg(右側のパネル)である。安楽死で動物にPBSを灌流し、続いてホルマリン−ショ糖(PBS中4%パラホルマリンアルデヒドおよび5%ショ糖、pH7.4)を灌流した。全マウス大動脈を、最も近い上行大動脈から回腸動脈の枝分かれ部へ解剖顕微鏡を使用して、解剖した。外膜脂肪を取り除き、動脈を縦方向に開き、黒の解剖ワックス上にピンで平らに止め、SudanIVで着色し、所定の倍率で写真を撮った。写真はデジタル化し、デジタル映像を示す。総大動脈範囲と大動脈病巣範囲をAdope Photoshop7.0とNIH Scion Imageソフトを使用して計算した(データは示さず)。
【0273】
アポ酵素−/−高脂肪食餌を与えられたマウスの大動脈内のアテローム性動脈硬化部進行におけるSEQ ID NO:146(AVP−26452)の効果図29を参照して、アポ酵素−/−オスのマウスに、固形飼料食餌を4週間続け、HFD(1.25%のコレステロール)上で9.3週間保った。マウスにSEQ ID NO:146 (AVP−26452)を「アドリブ」で、飲料水から13.3週間与えた。SEQ ID NO:146の濃度は、0(左側のパネル)、1.4μg(真ん中のパネル)および2.8μg/kg(左側のパネル)である。
[引用文献]

【0274】

【0275】

【0276】

【0277】

【図面の簡単な説明】
【0278】
【図1】固相ペプチド合成の概略図を示す。
【図2】本発明のアミノ酸誘導組成物のリポタンパク質およびアルブミンとの関連を説明する。放射性標識化合物は、LDLR−/−マウス血漿でRT中2時間培養した。培養の後、混合物をアガロースゲル電気泳動に供した。LDL、HDLおよびアルブミンを表すバンド中放射能で計量した。リポタンパク質およびアルブミンと結合した放射能の当てられた放射能に対する比率で表す。
【図3】アポAl−/−オスのマウスにおいて、本発明のアミノ酸誘導組成物が肝臓に結合することを示す。アポAl−/−オスのマウスに放射性標識化合物を12μg/マウス注射した。36分、肝臓を採取し、放射能定量し、含水組織1g毎に調整した。肝臓に結合した放射能を合計cpmに対する%で表す。それぞれの棒グラフは4匹のマウスの平均±SEMを表す。
【図4】SEQ ID NO:1の組織分布と肝臓による優先的な取り込みを示す。アポAl−/−オスのマウスに放射性標識SEQ ID NO:1を12μg注射した。36分後、組織を採取した。放射能定量し、含水組織1g毎に調整した。それぞれの棒グラフは4匹のマウスの平均±SEMを表す。
【図5】ヒト1251−LDLのSEQ ID NO:1への複合体化が肝臓への結合を改善したことを示す。肝臓へのLDL転送は、SEQ ID NO:1によって増強される。125I−LDL単体またはSEQ ID NO:1とl25I−LDLとの複合体を、指示する如く、欠損遺伝子型のオスのマウスに注射した。36分後、肝臓を収集し、放射能定量した。肝臓に結合した放射能を注射した放射能に対する%として表す。それぞれの棒グラフは4匹のマウスの平均±SEMを表す。
【図6】SEQ ID NO:1−LDL複合体が肝臓上のLDL受容体に結合することを示す。125I−LDL単独またはSEQ ID NO:1とl25I−LDLとの複合体のLDLR−/−マウス肝臓への結合は、A−I−/−マウスの肝臓へのそれぞれの結合からサブトラクションされた。サブトラクションの結果は、LDL−受容体への複合体の結合の劇的な増加を示す。それぞれの棒グラフは4匹のマウスの平均±SEMを表す。
【図7】アポA−I−欠損マウスの血液からのヒトLDLの浄化におけるSEQ ID NO:1の効果を示す。125I−LDL単独またはSEQ ID NO:1とl25I−LDLとの複合体をアポAl−/−マウスに注射した。表示時点ごとに、血漿を得、10%TCA沈殿性放射能を測定した。100%は注射後10分で測定した血中の放射能に等しい。それぞれの値は4匹の動物の平均±1SEMを表す
【図8】アポA−I欠損およびLDL受容体欠損マウス中のLDL組織分布におけるSEQ ID NO:1の効果を示す。放射能(%)=(組織結合放射能/血液放射能)×100%。検出された全放射能の約90%(36分時点で)が血液放射能である。
【図9】血漿VLDLコレステロール濃度におけるSEQ ID NO:1の効果を示す。マウスは2つのグループ(1グループについてそれぞれ4匹のマウス)に分けた。SEQ ID NO:1またはPBSを、実験またはコントロールマウスにそれぞれ静脈内注射した。表示時点ごとに血漿を得、それぞれのグループ内で組合せ、Superose6カラムに適用した。カーブ上のそれぞれの時点は、3個のクロマトグラフプロファイル以上から得られた平均±SEMを示す。
【図10】血漿IDL/LDLコレステロール濃度におけるSEQ ID NO:1の効果を示す。マウスは2つのグループ(1グループにそれぞれ4匹のマウス)に分けた。SEQ ID NO:1またはPBSを、実験またはコントロールマウスにそれぞれ静脈内注射した。表示時点ごとに血漿を得、それぞれのグループ内で組合せ、Superose6カラムに適用した。カーブ上のそれぞれの時点は、3個以上のクロマトグラフプロファイルから得られた平均±SEMを示す。
【図11】血漿HDL濃度におけるSEQ ID NO:1の効果を示す。マウスは2つのグループ(1グループにそれぞれ4匹のマウス)に分けた。SEQ ID NO:1またはPBSを、実験またはコントロールマウスにそれぞれ静脈内注射した。表示時点ごとに血漿を得、それぞれのグループ内で組合せ、Superose6カラムに適用した。カーブ上のそれぞれの時点は、3個のクロマトグラフプロファイル以上から得られた平均±SEMを示す。
【図12】血漿VLDLコレステロール濃度におけるSEQ ID NO:1の効果の線形回帰分析を示す。
【図13】血漿IDL/LDLコレステロール濃度におけるSEQ ID NO:1の効果の線形回帰分析を示す。
【図14】血漿HDL濃度におけるSEQ ID NO:1の効果の線形回帰分析を示す。
【図15】血漿リポタンパク質プロフィールにおける、徐々に放出されたSEQ ID NO:1の効果を示す。SEQ ID NO:1またはPBSを含むポンプを、カニューレが挿入された固形飼料を与えられたマウスに外科的に挿入した。ポンプの流速は8ul/hr、SEQ ID NO:1を1時間に図に示す量与えた。動物に、術後直ちにHFC食をセットした。20時間後、血漿を得、それぞれのグループ(4〜6匹のマウス)内で組合せ、FPLCおよびアガロースゲル電気泳動に供し、異なるリポタンパク質クラスの間で、コレステロールおよびリン脂質分布をモニターした(明確にするために、リン脂質データは示さず)。効果は、PBSコントロールに対する変化の%として示す。
【図16】血漿リポタンパク質プロフィールにおける、本発明の種々のアミノ酸誘導組成物の長時間(20時間)にわたる導入による効果を示す。SEQ ID NO:1またはPBSを含むポンプを、カニューレが挿入された固形飼料を与えられたマウスに外科的に挿入した。ポンプの流速は8ul/hr、1時間に30〜40ugのペプチドを与えた。動物に、術後直ちにHFC食をセットした。20時間後、血漿を得、それぞれのグループ(4〜6匹のマウス)内で組合せ、FPLCおよびアガロースゲル電気泳動に供し、異なるリポタンパク質クラスの間で、コレステロールおよびリン脂質分布をモニターした。効果は、PBSコントロールに対する変化の%として示す。
【図17】血漿リポタンパク質プロフィールにおける、本発明の種々のアミノ酸誘導組成物の長時間(160時間)にわたる導入による効果を示す。動物に術後直ちにHFC食をセットした。160時間後、血漿を得、それぞれのグループ(4〜6匹のマウス)内で組合せ、FPLCおよびアガロースゲル電気泳動に供し、異なるリポタンパク質クラスの間で、コレステロールおよびリン脂質分布をモニターした(明確にするために、リン脂質データは示さず)。効果は、PBSコントロールに対する変化の%として示す。
【図18】PLTP酵素活性における、本発明の種々のペプチド(SEQ ID NO:34、86、91、96、35および36)の効果を示す。SEQ ID NO:34、86、91および96はPLTPを活性化した結果を示した。
【図19】血漿リポタンパク質プロフィールと胆汁酸中のコレステロールの排出における、SEQ ID NO:91の経口投与急性効果を示す。
【図20】固形飼料を与えられたアポ酵素−/−マウスの血漿リポタンパク質プロフィールにおける、AVP−26249(SEQ ID NO:91)のアドリブ(飲料水を通じて)投与の効果を示す。
【図21】高脂肪食が与えられたアポ酵素−/−マウスの血漿リポタンパク質プロフィールにおける、AVP−26249(SEQ ID NO:91)、AVP−26451(SEQ ID NO:145)、AVP−26452(SEQ ID NO:146)およびAVP−26355(SEQ ID NO:118)のアドリブ(飲料水を通じて)投与の効果を示す。
【図22】高脂肪食が与えられたアポ酵素−/−マウスによって排出されたコレステロールの量における、AVP−26249(SEQ ID NO:91)、AVP−26451(SEQ ID NO:145)、AVP−26452(SEQ ID NO:146)およびAVP−26355(SEQ ID NO:118)のアドリブ(飲料水を通じて)投与の効果を示す。
【図23】生体内でRCTを増強し得る試験化合物のインビトロ細胞培養トライアングルスクリーニング方法を示す概略図である。
【図24】HepG2細胞内のコレステロールのLDL−介在蓄積における、AVP−26249(SEQID NO:91)およびAVP−26452(SEQ ID NO:146)の効果を示す。
【図25】ヒトマクロファージ中のコレステロール(TC)およびコレステリルエステル(CE)のAc−LDL−介在蓄積における、AVP−26249(SEQ ID NO:91)の効果を示す。
【図26】ヒト血管平滑筋細胞中のコレステロール(TC)およびコレステリルエステル(CE)の酸化−LDL(Ox−LDL)介在蓄積におけるAVP−26249(SEQ ID NO:91)およびAVP−26452(SEQ ID NO:146)の効果を示す。
【図27】あらかじめAc−LDL負荷ヒトマクロファージからのコレステロール流出における、AVP−26249(SEQ ID NO:91)およびAVP−26452(SEQ ID NO:146)の効果を示す。
【図28】アポ酵素−/−マウスの大動脈中のアテローム性動脈硬化部の発生おける、AVP−26249(SEQ ID NO:91)の効果を示す。アポ酵素−/−オスのマウスは、固形飼料を4週間およびHFD(1.25%のコレステロール)を9.3週間与え続けた。マウスは、飲料水を通じて0、1.4および2.8mpkの濃度のAVP−26249を「アドリブに」13.3週間受けた。実験の最後に、大動脈を分離し、アテローム性動脈硬化部の進行を評価した。
【図29】アポ酵素−/−マウスの大動脈中のアテローム性動脈硬化部の発生における、AVP−26452(SEQ ID NO:146)の効果を示す。アポ酵素−/−オスのマウスは、固形飼料を4週間およびHFD(1.25%のコレステロール)を9.3週間与え続けた。マウスは、飲料水を通じて0、1.4および2.8mpkの濃度のAVP−26452を「アドリブに」13.3週間受けた。実験の最後に、大動脈を分離し、アテローム性動脈硬化部の進行を評価した。
【図30】コレステロール転送および代謝における経路を示す概略図である。略語は、たとえば、CEはコレステロールエステル、PLTPはリン脂質転送タンパク質、TGはトリグリセリド、LDLは低比重リポタンパク質、HDLは高比重リポタンパク質、IDLは中間比重リポタンパク質、LCATはレシチンコレステロールアシル移行酵素である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性領域と、親油性または芳香性領域と、塩基性領域とを含む分子を含み、前記分子はHDLおよび/または低比重リポタンパク質−コレステロール(LDL)と複合するように構成された構造を持ち、それによってコレステロール逆輸送を増強するコレステロール逆輸送のメディエータ。
【請求項2】
前記分子が3〜10個のアミノ酸残基またはその類似体を有し、かつ配列:X1−X2−X3〔式中、X1は酸性アミノ酸であり、X2は親油性または芳香族アミノ酸であり、X3は塩基性アミノ酸であり、X1、X2およびX3は任意の配列順序で配列されていてもよく、アミノ末端はさらに、アセチル、フェニルアセチル、ピボリル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、2−ナフトエ酸、ニコチン酸、CH3−(CH2n−CO−(式中、nは3〜20の範囲である)、ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル、ナフチル、置換ナフチル、f−MOC、ビフェニル、置換フェニル、置換複素環類、アルキル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、縮合シクロアルキル、飽和ヘテロアリールおよび置換飽和ヘテロアリールからなる群から選択される第1保護基を含み、カルボキシ末端はさらに、RNH2(式中RはH、ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル、ナフチル、置換ナフチル、f−MOC、ビフェニル、置換フェニル、置換複素環類、アルキル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、縮合シクロアルキル、飽和ヘテロアリール、置換飽和ヘテロアリール)のようなアミンからなる群から選択される第2保護基を含む〕を含む、請求項1に記載のコレステロール逆輸送のメディエータ。
【請求項3】
X1、X2およびX3の1つ以上がD−アミノ酸残基である、請求項2に記載のコレステロール逆輸送のメディエータ。
【請求項4】
X1、X2およびX3の1つ以上が修飾された合成または半合成アミノ酸である、請求項2に記載のコレステロール逆輸送のメディエータ。
【請求項5】
該修飾された合成または半合成アミノ酸がビフェニルアラニンである、請求項4に記載のコレステロール逆輸送のメディエータ。
【請求項6】
哺乳動物における高コレステロール血症および/またはアテロームの治療および/または予防のための実質的に純粋なアミノ酸誘導物質であって、前記物質が、アミノおよびカルボキシ末端を持ち、酸性アミノ酸残基またはその誘導体のLまたはD光学異性体と、親油性または芳香族アミノ酸残基またはその誘導体と、塩基性アミノ酸残基またはその誘導体のLまたはD光学異性体と、を含み、該アミノ末端は、さらに、アセチル、フェニルアセチル、ピボリル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、2−ナフトエ酸、ニコチン酸、CH3−(CH2n−CO−(式中、nは3〜20の範囲である)、ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル、ナフチル、置換ナフチル、f−MOC、ビフェニル、置換フェニル、置換複素環類、アルキル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、縮合シクロアルキル、飽和ヘテロアリールおよび置換飽和ヘテロアリールなどからなる群から選択される第1保護基を含み、該カルボキシ末端は、さらに、RNH2(式中、RはH、ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル、ナフチル、置換ナフチル、f−MOC、ビフェニル、置換フェニル、置換複素環類、アルキル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、縮合シクロアルキル、飽和ヘテロアリール、および置換飽和ヘテロアリールなどである)のようなアミンからなる群から選択される第2保護基を含み、前記物質は、少なくとも1つの下記特性を有する、アミノ酸誘導物質:
(1)LDLおよびHDLに結合するアポA−Iを模倣する、
(2)肝臓に優先的に結合する、
(3)肝臓LDL−受容体によってLDL取り込みを増強する、
(4)LDL、IDL、およびVLDLコレステロールの濃度を低下させる、
(5)HDLコレステロールの濃度を上昇させる、および
(6)血漿リポタンパク質プロフィールを増強する。
【請求項7】
高コレステロール血症の症状を回復または予防する経口投与に好適な組成物であって、前記組成物は、酸性領域と、親油性または芳香性領域と、塩基性領域とをもつアミノ酸誘導分子を含み、前記アミノ酸誘導分子は、アミノ末端に結合する第1保護基とカルボキシル末端に結合する第2保護基とを有し、前記アミノ酸誘導分子は任意に少なくとも1つのDアミノ酸残基を含む、組成物。
【請求項8】
少なくとも1つのDアミノ酸残基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
配列 : Xa−Xb− (Xl−X2−X3)−Xc−Xd、(式中、Xaは、アシル化アミノ酸残基であり、Xbは、0〜10個の任意のアミノ酸残基であり、X1−X2−X3は、独立して、酸性アミノ酸残基、親油性アミノ酸残基、および塩基性アミノ酸残基またはその誘導体から選択されるアミノ酸残基またはその誘導体、ただし、前記Xl、X2またはX3の1つは酸性残基、記X1、 X2またはX3の1つは親油性残基、およびX1、X2またはX3の1つは塩基性残基であり、Xcは、0〜10個の任意のアミノ酸残基、Xdはアミド化アミノ酸残基である)を含み、15個以上のアミノ酸残基および任意で少なくとも1個のDアミノ酸残基を含む、RCTのペプチドメディエータ。
【請求項10】
表5の合成化合物1〜96からなる群から選択される化合物を含む、RCTメディエータ。
【請求項11】
SEQ ID NO:1および107〜117からなる群から選択される化合物を含む、RCTメディエータ。
【請求項12】
SEQ ID NO:1、26〜36、42、45−47、56〜58、68−70、72〜74、76、80、81、83〜90および92〜95からなる群から選択される化合物を含む、RCTメディエータ。
【請求項13】
SEQ ID NO:1を含む、医薬組成物。
【請求項14】
SEQ ID NO:113を含む、医薬組成物。
【請求項15】
SEQ ID NO:34を含む、医薬組成物。
【請求項16】
SEQ ID NO:86を含む、医薬組成物。
【請求項17】
SEQ ID NO:91を含む、医薬組成物。
【請求項18】
SEQ ID NO:96を含む、医薬組成物。
【請求項19】
SEQ ID NO:145を含む、医薬組成物。
【請求項20】
20. SEQ ID NO:146を含む、医薬組成物。
【請求項21】
SEQ ID NO:118を含む、医薬組成物。
【請求項22】
高コレステロール血症および/またはアテロームの治療のための投与に好適な薬品の製
造の用途のための前述の請求項のいずれか1項に記載の記載の組成物。
【請求項23】
前記薬品が経口投与に好適である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記薬品が、胆汁酸結合樹脂、ナイアシン、スタチンまたはこれらの混合物と組み合わされる、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
インビボでコレステロール逆輸送を増強し得る試験化合物を同定するインビトロスクリーニング方法であって、インビトロで、試験化合物の存在下および非存在下、肝細胞内のコレステロール蓄積を測定し、インビトロで、試験化合物の存在下および非存在下、AcLDL負荷マクロファージ中のコレステロール蓄積および/または流出を測定し、肝細胞中のコレステロール蓄積を増強し、マクロファージ中のコレステロール濃度を低減する試験化合物を同定することを含む、インビトロスクリーニング方法。
【請求項26】
さらに、インビトロで、試験化合物の存在下および非存在下、OxLDL負荷血管平滑筋細胞中のコレステロール濃度を測定することを含み、前記試験化合物を同定するステップは、さらに、肝細胞中のコレステロール蓄積を増強し、マクロファージ中のコレステロール濃度を低減および/または欠陥平滑筋細胞中のコレステロール濃度を低減する試験化合物を測定することを含む、請求項25に記載のインビトロスクリーニング方法。
【請求項27】
前記肝細胞がヒトHepG2ヘパトーマ細胞である、請求項25に記載のインビトロスクリーニング方法。
【請求項28】
前記マクロファージがヒトTHP−1細胞である、請求項25に記載のインビトロスクリーニング方法。
【請求項29】
前記血管平滑筋細胞が主要大動脈平滑筋細胞である、請求項26に記載のインビトロスクリーニング方法。
【請求項30】
インビボで、コレステロール逆輸送を増強し得る試験化合物を同定する、インビトロスクリーニング方法であって、
インビトロで、試験化合物の試験化合物の存在下および非存在下、肝細胞中のコレステロール蓄積を測定し、
インビトロで、試験化合物の試験化合物の存在下および非存在下、AcLDL負荷血管平滑筋細胞中のコレステロール濃度を測定し、肝細胞中のコレステロール蓄積を増強し、血管平滑筋細胞中のコレステロール濃度を低減する試験化合物を同定すること、を含む、インビトロスクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公表番号】特表2007−534612(P2007−534612A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−513224(P2006−513224)
【出願日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/012445
【国際公開番号】WO2004/094471
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(500539033)アバニール・ファーマシューティカルズ (15)
【Fターム(参考)】