説明

高ホモシステイン血症の治療へのプロバイオティクス細菌の使用

本発明は、高ホモシステイン血症治療へのプロバイオティクス細菌の使用に関する。
本発明は、さらに、ビタミンB群からなる群から選択される少なくとも一つのビタミンとともに、プロバイオティクス細菌を含む血漿高ホモシステイン血症治療用の組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高ホモシステイン血症の治療へのプロバイオティクス細菌の使用に関する。本発明は、さらに、血漿高ホモシステイン血症の治療用のビタミンB群からなる群から選択される少なくとも一つのビタミンとともにプロバイオティクス細菌を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
イタリアをはじめとする先進国においては、肥満、糖尿病、動脈性高血圧症、循環器疾患、および全身性変性・神経変性疾患等の特定の代謝性疾患が、急速に増加しつつある。
【0003】
トリガー因子は、遺伝的素因のほか、飽和脂肪および精製食品の大量摂取、水溶性・不溶性繊維の摂取低下、デスクワーク中心の生活習慣、喫煙および環境汚染に加えて、一般にストレスの多い生活環境などを伴う、栄養状態(alimentary regimes)と「先進」社会のライフスタイルに見られる。
【0004】
統計学的には、代謝性疾患に罹る人は、平均余命が低下するのみならず、生活の質も下がる。
【0005】
これらの疾患のなかには、アルツハイマー病およびパーキンソン病などのように、人々の平均余命の上昇に平行してさらに増加することになるものもある。この現象は、患者の家族のみならず、国の保険医療サービスにとっても、既に深刻な社会的・経済的損害となりつつある。
【0006】
循環器疾患および神経変性疾患の場合、科学界は、ホモシステインという警告パラメータの存在を注目してきた。ホモシステインの血中濃度が高いことは、発作、閉塞性動脈病変、静脈血栓症、アテローム性動脈硬化心疾患の立証済みの危険因子であるとともに、おそらくはアルツハイマー病および血管性認知症の危険因子でもある。高濃度のホモシステインは、ほとんどの場合において、バランスの悪い食事および/または不完全な食事に起因する栄養欠乏症に原因がある。
【0007】
したがって、高ホモシステイン血症などの代謝性疾患に罹った人々の生活の質を向上するためには、高濃度の血漿ホモシステインに起因する病状に取り組む必要がある。
【0008】
特に、重篤な疾患および病状の原因となる血漿ホモシステイン濃度を低減する必要性がある。
【0009】
最終的には、血漿中の高濃度のホモシステインを低減する目的のある製剤を得る必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本出願人は、現在の技術水準でこうした必要性に対して効果的な回答を提供することが可能な多くの細菌株を選び出した。
【0011】
本発明の第一の目的は、ビフィドバクテリウム アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis) No. DSM 16594、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 16595、ビフィドバクテリウム ブレーベ(Bifidobacterium breve) No. DSM 16596、ビフィドバクテリウム シュードカテニュレイタム(Bifidobacterium pseudocatenulatum) No. DSM 16597、ビフィドバクテリウム シュードカテニュレイタム DSM 16598、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18350、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18352、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18353およびビフィドバクテリウム シュードカテニュレイタム No. DSM 21444からなる群から選択される、血漿高ホモシステイン血症治療に使用される細菌株に関する。
【0012】
また、本発明は、血漿高ホモシステイン血症治療用の医薬組成物の調製への上述の菌株の少なくとも一つの使用を目的とする。
【0013】
本出願人は、ビタミンB群からなる群から選択される少なくとも一つのビタミンと、少なくとも一つの特定細菌株との組合せが、血漿高ホモシステイン血症のレベルを低減するとともに正常化できることを見出した。
【0014】
ビタミンB群(生命体に直ちに利用可能なビタミン類)からなる群から選択される一つのビタミンと、選択された細菌株によりin situ生成される葉酸との組合せにより、より高効率で、血漿ホモシステインのレベルの低減および正常化が行われる。
【0015】
したがって、本発明の目的は、ビタミンB群からなる群から選択される少なくとも一つのビタミンとともに、上述した細菌株のうちの少なくとも一つを含む、血漿高ホモシステイン血症治療用の組成物に関する。
【0016】
また、本発明は、血漿高ホモシステイン血症治療用の医薬組成物の調製への、ビタミンB群からなる群から選択される少なくとも一つのビタミンを伴う、上述した細菌株のうちの少なくとも一つの使用を目的とする。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のその他の好適な実施形態について、以下に記載するとともに、添付の特許請求の範囲において従属請求項とした。
【0018】
好適な実施形態において、ビタミンB群は、ビタミンB2(リボフラビン5−リン酸ナトリウム;riboflavin 5−phosphate sodium)、ビタミンB6(塩酸ピリドキシン)、ビタミンB9(葉酸)およびビタミンB12(シアノコバラミン;cyanocobalamine)からなる群から選択される。
【0019】
本発明において、葉酸および葉酸塩は、同義語として用いられることがあり、共通のビタミン活性を有し、かつ一分子のプテロイン酸および一分子以上のグルタミン酸からなる同一の基本的な化学式(プテロイルモノグルタミン酸葉酸またはプテロイルポリグルタミン酸葉酸)を有する一連の化合物を示す。
【0020】
本出願人は、GRAS(Generally Recognized as Safe;一般に安全と認められる)菌株に属する葉酸生成株を分離、同定した。本出願人は、葉酸を「インビトロ(in vitro)」生成可能な特定のビフィズス菌株を確認・同定した。
【0021】
「インビトロ」試験
比濁的に他の細菌株(エンテロコッカス ヒラエ;Enterococcus hirae ATCC 8043等)の成長を評価することにより、微生物学的測定法を用いて、試験対象の菌株が生成した葉酸のスクリーニングおよび定量を行った。なお、他の細菌株の成長は、使用するブロス培地に存在する葉酸の量を示す関数となる。
【0022】
本出願人は、この研究の第一フェーズから、葉酸を生成可能な細菌株9株を同定し、ドイツ国際微生物細胞培養コレクション(DSMZ)に寄託した。
【0023】
【表1】

【0024】
菌株DSM 21444については、培養条件は以下のとおりである:トリプチケース(trypticase)10g/L、ファイトン(phytone)5g/L、酵母エキス5g/L、グルコース10g/L、トゥイーン(tween)80 1ml/L、KHPO 2g/L、MgCl 0.5g/L、ZnSO 0.25g/L、CaCl 0.15g/L、L−塩酸システイン1水和物0.5g/Lを含むTPY培地。15分間121℃で滅菌する。なお、この際の初期pHは、7.10±0.1、最終pHは6.6であった。培養温度は37℃であり、培養時間は17±1時間であった。長期保存条件−25℃である。37℃、強制嫌気状態にてTPYブロス培地中で成長させる。グラム陽性菌株は嫌気性であり、さまざまな形の棒状で存在する。酸消費性はなく、胞子は形成されず、非移動性である。培地に存在するグルコースは、フルクトース−6−リン酸の代謝経路(シャント;shunt)によってのみ分解される。
【0025】
その後、上述した菌株について、遺伝子型および表現型安定性、後天性および/または遺伝性の抗生物質に対する耐性がないこと、胃液、膵臓分泌物および胆汁塩に対する耐性、および各菌株の工業スケールでの生産可能性を確認した。
【0026】
上述した菌株は、少数のグルタミル残基(1、2および3分子のグルタミン酸)から構成されるために腸細胞に吸収されやすい葉酸の生成株である。
【0027】
菌株が48時間内にブロス培地中で生産可能な葉酸の平均数量は、約10ng/ml以上100ng/ml超であり、好ましくは25〜100ng/ml、さらにより好ましくは40〜85ng/mlである。また、葉酸の生成は、混合糞便培養でもみられ、複雑な微生物叢の存在する腸内レベルでも起きうることを示す結果となった。なお、多くの場合、腸内の微生物叢は、ラクトバシラス科(Lactobacillaceae)、クロストリジウム科(Clostrildiaceae)、ビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)、バクテロイデス属(Bacterioides)、エンテロコッカス科(Enterococcaceae)、ストレプトコッカス科(Streptococcaceae)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、エンテロバクター科(Enterobacteriaceae)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、マイクロコッカス科(Micrococcaceae)、ブドウ球菌科(Staphilococcaceae)などの特徴ある属および/または科に属する1,000以上の異なる種で構成される。
【0028】
動物モデルを使用した試験
同様に、本出願人は、ウィスター系ラットを使用したインビボ検査も行った。これらのラットには、葉酸塩を完全に欠損した栄養制限食が与えられた。本インビボ検査の目的は、欠損状態を誘引し、同時に上述した葉酸生成ビフィドバクテリウム菌株の投与が、ラット内の葉酸/葉酸塩量を増加させることができるかどうかを確認することである。
【0029】
ラットを4群に分け、下表に示すとおり餌を与えた。
【表2】

【0030】
全4群について、試験期間中は葉酸塩を欠損した同じ餌が与えられた。グループ2(PRO群)の餌には、葉酸生成プロバイオティック菌株3種(DSM 18350、DSM 18352 およびDSM 18353)の混合物が、1菌株、1日当たり2×10細胞ずつ添加された。グループ3(PRE群)には、10グラム/リットル水溶液と等量のフラクトオリゴ糖(FOS)が与えられた。グループ4(SYM)には、グループ2およびグループ3についての上記の量のプロバイオティック菌株3種およびFOSの両方が与えられた。菌株は、混合比1:1:1で、1菌株、1日当たり2×10細胞ずつの量が与えられた。
【0031】
14日後に、ラットを屠殺し、血液サンプルおよび生検標本を分析した。試験微生物、カセイ菌亜種ラムノサス(Lactobacillus casei subsp. rhamnosus)ATCC 7469を使用した高感度かつ高精度の生物学的方法により、葉酸を測定した。既存の文献データから、この微生物は葉酸塩存在下、具体的には葉酸存在下でのみ生育可能であるが、この場合の葉酸はそのままの状態(native state)でもよく、ジヒドロ葉酸(DHF)、テトラヒドロ葉酸(THF)およびメチル化または蟻酸化された(formilated)誘導体などのさまざまな還元型でもよい。該菌株は、効果的にモノグルタミン酸型を使用し、効果は劣るものの、ジグルタミン酸型およびトリグルタミン酸型も使用できる。ただし、ポリグルタミン酸型に対しては、若干の感度が示された。
【0032】
結果を以下の表にまとめた。下表は、異なる栄養状態での14日後の葉酸濃度を示す。
【表3】

【0033】
表中の数値は、各群を構成する個体について得られる数値の平均である。
【0034】
葉酸の血漿内濃度は、グループ2(PRO群)で2倍超増加しており、グループ4(SYM群)で4倍超増加していた。SYM群の場合、菌株が使用するエネルギー源となるプレバイオティック繊維(prebiotic fibre)の重要性が明らかであった。
【0035】
結論として、動物モデルを用いて実行した試験は、菌株はラットの腸内に短時間定着して、腸上皮を通じて吸収される量で、かつ実質的に血漿の経路を通じて流通されることになる量のビタミンBを合成できることを示した。なお、該ビタミンBは、ヒトにおいても同じ機能を有する臓器である肝臓に蓄積される。
【0036】
また、本出願人は、「インビボ」試験も実施しており、ビフィドバクテリウム アドレセンティスおよびビフィドバクテリウム シュードカテニュレイタムという2つの種に属するプロバイオティック菌株3種について、ヒトの腸内環境における葉酸塩の生成能力を評価した。本評価は、平均的なさまざまな食生活をとってきた合計23名の健常者で構成される無作為化試験により行われた。
【0037】
具体的には、被験者は以下の3群に分けられた。グループA(5名)は、プロバイオティック菌株であるビフィドバクテリウム アドレセンティス DSM 18350が5×10CFU/日与えられ;グループB(13名)には、プロバイオティック菌株であるビフィドバクテリウム アドレセンティスDSM 18352が5×10CFU/日与えられ;グループC(5名)は、菌株ビフィドバクテリウム シュードカテニュレイタムDSM 18353を5×10CFU/日摂取した。
【0038】
これらの菌株の腸内定着能および葉酸生成能は、プロバイオティック菌株による治療前後の48時間にわたり排泄された便中のビフィドバクテリウム属の微生物数と葉酸塩量とを比較することで評価した。
【0039】
予備試験として、特に葉酸塩を豊富に含む食品の消費に関し、本試験に参加する被験者らの食習慣の観察調査が行われた。次に、便1gあたりの葉酸濃度について基準値が決定され、この基準値は48時間で排出されるビタミンの総量の計算に使用される。被験者には、治療開始時に、外因性の葉酸の摂取量を変化させないために可能な限り食習慣(dietary regime)を変えないことが求められた。
【0040】
プロバイオティック菌株の投与の30日後に、便中の葉酸濃度を新たに分析し、48時間以内に排泄されたビタミン量を再度計算した。これら2つの数値の差(d30−d0)は、腸内に定着したビフィドバクテリウム菌株による内因性の葉酸の生成によるものである。
【0041】
ビタミン定量化は、上述の動物モデルによる試験で採用されたものと同様の手順で行った。ただし、本手順では試験生物としてラクトバチルス ラムノサス ATCC 7469が使用された。
【0042】
下表に、3群において、24時間にわたり便とともに排泄される葉酸量の平均値を示す。
【表4】

【0043】
この結果から、葉酸の生成が可能な特定のプロバイオティック菌株を摂取することが、全治療群、特にB群に属する群の便中では、当該ビタミン濃度の統計学的に有意な増加に関わることが示された。便中に存在するビフィドバクテリウム類の数値評価により、これら全菌株の腸内環境への定着能、特にB.アドレセンティス DSM 18352の腸内環境への定着能が確認できた。
【0044】
行った試験から、ヒトの腸環境内に含まれる葉酸塩の合成・分泌のための本発明の細菌類の菌株の有効容量が示され、これらの菌株に基づく製剤が、内因性の補完的なビタミンB源となりうることが裏付けられた。これは、経口でのビタミン摂取時と比較して、大腸の粘膜細胞のホメオスタシスおよびビタミンの一定のバイオアベイラビリティに対し特に有用である。
【0045】
本発明の別の目的は、血漿高ホモシステイン血症治療に使用する、プロバイオティック成分および前生物的成分からなる共生サプリメント(symbiotic supplement)である。
【0046】
プロバイオティック成分には、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 16594、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 16595、ビフィドバクテリウム ブレーベ No. DSM 16596、ビフィドバクテリウムシュードカテニュレイタム No. DSM 16597、ビフィドバクテリウムシュードカテニュレイタム DSM 16598、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18350、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18352、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18353、またはビフィドバクテリウム シュードカテニュレイタム No. DSM 21444から構成される群から選択される少なくとも一つの細菌株が含まれる。
【0047】
前生物的成分には、この分野の専門家に既知の少なくとも一つのプレバイオティック繊維が含まれる。プレバイオティック繊維として、例えば、イヌリン、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、グルコオリゴ糖(glucooligosaccharide)、キシロオリゴ糖、アラビノガラクタン、グルコマンナン、ガラクトマンナンおよび/またはそれらの組合せなどが挙げられる。
【0048】
本出願人は、直接または間接的にホモシステイン回路を統轄する全てのビタミンおよび元素を供給できるビタミンB群複合体が、直ちに利用可能な形態で存在することにより、高ホモシステイン血症治療が可能であることを見出した。
【0049】
共生サプリメントには、0.1〜100×10CFU/用量の細菌類と、0.1〜10CFU/用量のプレバイオティック繊維とが含まれる可能性がある。また、このサプリメントには、RDAの5〜100%のさまざまな比率で一以上のビタミンB群が含まれる可能性がある。
【0050】
細菌により生成される葉酸は、組成物中に存在するビタミンB群とともに、多くの重篤な病状の発現リスクの上昇に関与するホモシステイン濃度の調節に寄与する。
【0051】
本発明の好ましい実施形態は、栄養補助食品(サプリメント)の形態であり、直ちに利用可能な形態で、ホモシステインサイクルに対して直接的または間接的に統轄する、全ビタミンおよび元素のRDA(Recommended Dietary Allowance)の50%に等しい量を確保できるビタミンB群の少なくとも一つを含む。また、この栄養補助食品には、葉酸を大腸レベルで合成可能な少なくとも一つの細菌株も含まれ、該細菌株は、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 16594、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 16595、ビフィドバクテリウム ブレーベ No. DSM 16596、ビフィドバクテリウム シュードカテニュレイタム No. DSM 16597、ビフィドバクテリウム シュードカテニュレイタム No. DSM 16598、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18350、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18352、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18353およびビフィドバクテリウム シュードカテニュレイタム No. DSM 21444からなる群から選択される。
【0052】
好適な一実施形態において、この栄養補助食品には、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18350、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18352およびビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18353などの3つの菌株の混合物が含まれる。
【0053】
別の実施形態においては、この栄養補助食品には、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18352が含まれる。
【0054】
ビタミンB群および細菌株に加えて、この栄養補助食品は、前生物的ビフィズス菌特異的活性(bifidogenic activity)を有する少なくとも一つの繊維を含む。この繊維は、存在する細菌株による迅速かつ継続的な定着を保証するのに十分な量で、重合度(DP)が9〜12のイヌリンおよび重合度(DP)が2〜4のFOS(フラクトオリゴ糖類)からなる群から選択される。
【0055】
上述のいずれの繊維も、末端にグルコース単位を有する、さまざまな重合度のフルクトースの線状重合体の混合物からなる多糖類であるフルクタン類に属する。
【0056】
上述した栄養補助食品の有効性は、局所的な腸レベルにおいても全身性レベルにおいても明示される。局所的な腸レベルでは、前記細菌株、特にB.アドレセンティス DSM 18352により大腸内の腸細胞に分泌される葉酸により誘発される基礎栄養(trophism)のおかげで、全身性レベルでは、5−メチルテトラヒドロ葉酸により引き起こされるメチル化によるホモシステインの血漿濃度の低下により、有効性が明示される。
【0057】
上述の栄養補助食品の製剤には、以下の利点がある。
1A) 直ちに生物学的に利用可能な形態で適正な量(50%RDA)存在するビタミンB成分による血中のホモシステイン濃度の迅速な低減。特に、5−メチルテトラヒドロ葉酸は、L−グルタミン転移酵素および葉酸/ジヒドロ葉酸−還元酵素が欠乏する個体でさえ利用可能な葉酸の一種を代表する。
1B) さまざまなプレバイオティック繊維のビフィズス菌特異的活性のおかげで、さまざまな腸部分に定着することができた細菌株により大腸内で達成される葉酸合成によるホモシステインの基準血漿濃度の標準化。
【0058】
この合成機構が、腸管腔内でのビタミンBの有意な濃度の達成を可能とする。なお、このビタミンBは、限られた数のグルタミン残基を有する構造で構成され、能動輸送のみならず、側底膜を通じた受動拡散により腸細胞に侵入することができる。
【0059】
外因性の葉酸と同様の経路で代謝される内因性の葉酸の持続的投入により、全身性レベルでの葉酸塩の継続的補給を保証され、ホモシステインの血漿濃度が標準化される。
【0060】
したがって、動脈硬化症、発作、心筋梗塞、ならびに、血管性認知症、老年期鬱病およびアルツハイマー病などの社会的に非常に重大な神経変性疾患などの重篤な病状の発現リスクが低減する。
【0061】
下表に、本発明の対象となる栄養補助食品(サプリメント)の処方の非限定的な例を示す。
【表5】

【0062】
RDAの50%に等しい量のビタミンBが存在することで、重篤な病状の発現リスクの低減に有効な量が直ちに保証される。プロバイオティック菌株による生物学的に有意な量の葉酸の生成は、わずか10〜15日後に始まるが、これは、これら菌株が増殖および腸内での定着に10〜15日を必要とするためである。個体数が特定の閾値を超えた場合に限り、ビタミンの生成が有意かつ重要になり、食品で摂取した量とは無関係に継続的な投入を保証する。
【0063】
本発明の細菌類の菌株、特にDSM 18350、18352および18353の菌株は、その葉酸生成能故に選択された。
【0064】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンB群から選択される少なくとも一つのビタミンとともに、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No.DSM 16594、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 16595、ビフィドバクテリウム ブレーベ No. DSM 16596、ビフィドバクテリウム シュードカテニュレイタム No. DSM 16597、ビフィドバクテリウム シュードカテニュレイタム DSM 16598、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18350、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18352、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18353およびビフィドバクテリウム シュードカテニュレイタム No. DSM 21444からなる群から選択される少なくとも一つの細菌株を含む、血漿高ホモシステイン血症の治療用の栄養補助食品用の組成物。
【請求項2】
前記組成物が、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 16594、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 16595、ビフィドバクテリウム ブレーベ No. DSM 16596、ビフィドバクテリウム シュードカテニュレイタム No. DSM 16597、ビフィドバクテリウム シュードカテニュレイタム DSM 16598、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18350、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18353およびビフィドバクテリウム シュードカテニュレイタム No. DSM 21444からなる群から選択される少なくとも一つの細菌株とともに、前記ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18352を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、前記ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18350、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18352およびビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18353を含む請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18352からなる請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ビタミンが、ビタミンB2(リボフラビン5−リン酸ナトリウム)、ビタミンB6(塩酸ピリドキシン)、ビタミンB9(葉酸)およびビタミンB12(シアノコバラミン)からなる群から選択される請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、さらに、前生物的ビフィズス菌特異的活性を有する少なくとも一つの繊維を含む請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記繊維が、イヌリンおよびフラクトオリゴ糖類からなる群から選択される請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記イヌリンの重合度は9〜12であり、前記フラクトオリゴ糖類の重合度は2〜4である請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、さらに、亜鉛およびセレンからなる群から選択される少なくとも一つの必須元素を含む請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記亜鉛が、グルコン酸亜鉛等の有機塩由来、または、亜鉛を内在可能な酵母若しくは細菌由来である請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記セレンが、グルコン酸セレン等の有機塩由来、または、セレンを内在可能な酵母若しくは細菌由来である請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
血漿高ホモシステイン血症の治療用の医薬組成物の調製への細菌株の使用であって、前記細菌株は、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 16594、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 16595、ビフィドバクテリウム ブレーベ No. DSM 16596、ビフィドバクテリウム シュードカテニュレイタム No. DSM 16597、ビフィドバクテリウム シュードカテニュレイタム DSM 16598、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18350、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18352、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18353およびビフィドバクテリウム シュードカテニュレイタム No. DSM 21444からなる群から選択される少なくとも一つであり、ビタミンB群から選択される少なくとも一つのビタミンとともに使用される細菌株の使用。
【請求項13】
前記組成物は、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 16594、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 16595、ビフィドバクテリウム ブレーベ No. DSM 16596、ビフィドバクテリウム シュードカテニュレイタム No. DSM 16597、ビフィドバクテリウム シュードカテニュレイタム DSM 16598、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18350、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18353およびビフィドバクテリウム シュードカテニュレイタム No. DSM 21444からなる群から選択される少なくとも一つの細菌株と、前記細菌株ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18352とを含む請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記組成物は、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18350、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18352およびビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18353を含む請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記組成物は、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18352からなる請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記ビタミンは、ビタミンB2(リボフラビン5−リン酸ナトリウム)、ビタミンB6(塩酸ピリドキシン)、ビタミンB9(葉酸)およびビタミンB12(シアノコバラミン)からなる群から選択される請求項12〜15のいずれかに記載の使用。
【請求項17】
前記組成物は、さらに、前生物的ビフィズス菌特異的活性を有する少なくとも一つの繊維を含む請求項12〜16のいずれかに記載の使用。
【請求項18】
前記繊維は、イヌリンおよびフラクトオリゴ糖類からなる群から選択される請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記イヌリンの重合度は、9〜12であり、前記フラクトオリゴ糖類の重合度は、2〜4である請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記組成物は、さらに、亜鉛およびセレンからなる群から選択される少なくとも一つの必須元素を含む請求項12〜19に記載の使用。
【請求項21】
前記亜鉛は、グルコン酸亜鉛等の有機塩由来、または、亜鉛を内在可能な酵母若しくは細菌由来である請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記セレンは、セレングルコン酸塩等の有機塩由来、または、セレンを内在可能な酵母若しくは細菌由来である請求項20に記載の使用。
【請求項23】
フィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 16594、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 16595、ビフィドバクテリウム jブレーベ No. DSM 16596、ビフィドバクテリウム シュードカテニュレイタム No. DSM 16597、ビフィドバクテリウム pseudocatenuiatum DSM 16598、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18350、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18352、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18353およびビフィドバクテリウム シュードカテニュレイタム No. DSM 21444からなる群から選択される、血漿高ホモシステイン血症治療に用いられる細菌株。
【請求項24】
血漿高ホモシステイン血症治療用の医薬組成物の調製への細菌株の使用であって、前記細菌株は、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 16594、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 16595、ビフィドバクテリウム ブレーベ No. DSM 16596、ビフィドバクテリウム シュードカテニュレイタム No. DSM 16597、ビフィドバクテリウム シュードカテニュレイタム DSM 16598、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18350、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18352、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18353およびビフィドバクテリウム シュードカテニュレイタム No. DSM 21444 からなる群から選択される少なくとも一つである細菌株の使用。
【請求項25】
前記医薬組成物は、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 16594、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 16595、ビフィドバクテリウム ブレーベ No. DSM 16596、ビフィドバクテリウム シュードカテニュレイタム No. DSM 16597、ビフィドバクテリウム シュードカテニュレイタム DSM 16598、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18350、ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18353およびビフィドバクテリウム シュードカテニュレイタム No. DSM 21444からなる群から選択される少なくとも一つの細菌株と、前記ビフィドバクテリウム アドレセンティス No. DSM 18352とを含む請求項24に記載の使用。

【公表番号】特表2011−520821(P2011−520821A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508854(P2011−508854)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【国際出願番号】PCT/EP2009/054221
【国際公開番号】WO2009/138300
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(309038720)
【氏名又は名称原語表記】PROBIOTICAL S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Via Mattei,3,I−28100 Novara,Italy
【Fターム(参考)】